以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、一酸化窒素投与装置1の概略図である。一酸化窒素投与装置1は、吸気口101a及び酸素供給口101bを備えた第1流路101と、第1流路101に配置され、吸気口101aを介して流入した空気から濃縮酸素を生成する酸素生成部100と、第1流路101から分岐し且つNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、第1流路101から分配されたガスからNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。酸素生成部100とNO生成部200と制御部300とは、同一の筐体400の内部に収容される。酸素生成部100で生成された濃縮酸素は、酸素供給口101b及びカニューラ410を介して供給される。NO生成部200で生成されたNOは、NO供給口201b及びカニューラ410を介して供給される。酸素生成部100及びNO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。一酸化窒素投与装置1は、図示しない電源ケーブルを介して電源に接続される。
一般に、酸素濃縮装置は、空気中の酸素を、窒素から分離して濃縮することを可能にした装置である。酸素濃縮装置の構成としては、窒素よりも酸素が多く透過する分離膜を用いることによって空気中の酸素と窒素とを分離する酸素富化膜式や、窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を1個又は複数の吸着床に充填して加圧と減圧を繰り返すことによって空気中の酸素と窒素とを分離するPSA式(例えば、特開2008-238076号公報)等がある。酸素生成部100は、PSA式によって濃縮酸素を生成するように構成されている。しかしながら、酸素富化膜式やその他の方法で濃縮酸素を生成してもよい。また、酸素ボンベから、第2流路201とは異なる流路を介して、直接的に酸素を供給するようにしてもよい。
酸素生成部100は、空気圧縮部としてのコンプレッサ102と、コンプレッサ102の下流に配置された加圧弁103及び減圧弁104からなるガス流路切替部と、ガス流路切替部の下流に配置された吸着筒105とを有している。吸着筒105は、窒素を酸素よりも優先的に吸着する吸着剤を収容している。ガス流路切替部によって、吸着筒105と排気口101cとの間の流路が選択的に切り替えられる。コンプレッサ102の下流において、第1流路101は2つに分岐し、酸素生成部100は、2組のガス流路切替部及び吸着筒105を有している。酸素生成部100は、3組以上のガス流路切替部及び吸着筒105を有していてもよい。酸素生成部100は、2つの吸着筒105の下流において、分岐した第1流路101間を連結する均圧弁106と、均圧弁106の下流であって2つの吸着筒105の下流の各々に配置された逆止弁107と、逆止弁107の下流において合流した第1流路101に配置されたバッファタンク108と、バッファタンク108の下流に配置された流量制御器109と、流量制御器109の下流に配置されたO2濃度計110と、O2濃度計110の下流に配置された流量計111とを有している。
酸素生成部100による濃縮酸素の生成プロセスについて説明する。
吸気口101aを介して流入した空気は、コンプレッサ102によって圧縮される。コンプレッサ102による圧縮空気(加圧空気)は、ガス流路切替部によって一方の吸着筒105へ供給される。具体的には、当該一方の吸着筒105に対応する加圧弁103は開き、減圧弁104は閉じている。圧縮空気によって吸着筒105の内部が加圧されると、供給された圧縮空気中の窒素が吸着筒105に吸着される。これを吸着工程と称する。圧縮空気中の酸素は、吸着筒105に吸着されることなく吸着筒105から下流に流出し、逆止弁107を介してバッファタンク108に蓄えられる。
このとき、他方の吸着筒105に対応する加圧弁103は閉じ、減圧弁104は開いていることから、当該他方の吸着筒105の上流側は、排気口101cを介して大気に開放され、吸着筒105の内部は減圧される。吸着剤は、ガスの圧力が低下すると吸着した窒素を放出する性質があるため、吸着剤から放出された窒素は、排気口101cを介して排気される。これを脱着工程と称する。
次いで、2つの加圧弁103及び2つの減圧弁104の状態を維持したまま、均圧弁106を開く。それによって、吸着工程にある一方の吸着筒105から下流に流出された酸素が、均圧弁106を介して、脱着工程にある他方の吸着筒105へ還流される。濃縮酸素の還流が行われることによって、当該他方の吸着筒105の内部における窒素の分圧が低下し、吸着剤からの窒素の放出が促進される。
酸素生成部100は、ガス流路切替部によって、2つの吸着筒105間で吸着工程及び脱着工程を繰り返し切り替えることによって、空気から濃縮酸素を得ることができる。バッファタンク108に蓄えられた濃縮酸素は、O2濃度計110及び流量計111の値に基づき、流量制御器109によってその流量が制御されながら、酸素供給口101bを介して供給される。
NO生成部200は、コンプレッサ102の下流の第1流路101から分岐した第2流路201において、流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された流量計203と、流量計203の下流に配置された逆止弁204と、逆止弁204の下流に配置された放電部205と、放電部205の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置されたNO濃度計208とを有している。
コンプレッサ102による圧縮空気の一部が、第1流路101から第2流路201に分配される。分配された圧縮空気としてのガスは、流量計203の値に基づき、流量制御器202によってその流量が制御されながら、逆止弁204を介して放電部205に供給される。酸素生成部100において、上述したPSA式による濃縮酸素の生成は、圧力変動を伴う。したがって、第1流路101から第2流路201に分配されたガスも、その圧力変動の影響を受けるが、流量制御器202によって、第2流路201における圧力変動が抑制される。
放電部205は、図示しないが、高電圧発生源と少なくとも1つの電極対を有している。放電部205は、高電圧発生源によって電極対間に放電(コロナ放電等)を生じさせることによって、第2流路201を流れるガス中に存在する酸素(O2)及び窒素(N2)から、NOを生成することができる。NOの生成方法は、例えば特開2004-167284号公報や特表2017-531539号公報に記載されているように公知である。高電圧発生源として、イグニッションコイルのように誘導コイルの原理を利用した変圧器を用いても良いし、コッククロフト・ウォルトン回路を用いてもよい。
生成したNOは、ガス中の酸素と反応し、毒性の高いNO2を生成する。さらに、NO2は放電によってNOを生成する反応の際にも生成される。そのため、放電部205の下流において、NO2除去部であるNO2吸着部206によって、NO2を吸着し、除去する。NO2吸着部206は、例えば、ソーダ石灰(主として水酸化カルシウム)、活性炭、ゼオライト等を含んでいる。NO2除去部は、吸着以外、その他の態様によって、ガス中のNO2を除去するように構成してもよい。
NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタである。フィルタ207は、ガス中のゴミ及び塵埃を除去する。ガス中のゴミ及び塵埃とは、例えば、放電部205から意図せず放出される摩耗した電極の微粒子や、NO2吸着部206から意図せず放出されるソーダ石灰等の粉体等が挙げられる。
NO濃度計208は、患者に対する投与に際して問題のないNO濃度であるか否かを判断するため、第2流路201の最下流におけるNO濃度を測定する。測定結果は、制御部300に収集され、例えば流量制御器202や放電部205に対してフィードバックされる。すなわち、制御部300から流量制御器202や放電部205に対して制御信号が伝達され、NOの生成量又は濃度が調整される。
制御部300は、1つ又は複数のプロセッサ及びその周辺回路を有し、一酸化窒素投与装置1の全体的な動作を統括的に制御する。制御部300は、予め記憶部(図示せず)に記憶されているコンピュータプログラムに基づいて処理を行う。その処理の際に、制御部300は、O2濃度計110や流量計111、NO濃度計208等の各種センサから信号を受信し、コンプレッサ102や加圧弁103、放電部205等へ制御信号を送信する。制御部300は、入出力部、例えば、ディスプレイ等の表示部や、操作ボタンやタッチパネル等の入力インターフェースを有していてもよい。
第3群の肺高血圧症の患者に対して、NOの吸入と、濃縮酸素の吸入とを併用することに効果があることが報告されている。一酸化窒素投与装置1によれば、酸素生成部100によって第1流路101において生成された濃縮酸素は、酸素供給口101bを介して、また、NO生成部200によって第2流路201において生成されたNOは、NO供給口201bを介して、患者に投与することができる。具体的には、酸素供給口101b及びNO供給口201bに対して接続され且つ独立の流路を有するカニューラ410を用いて、患者に投与することができる。したがって、患者に投与される前に、NOと濃縮酸素とが混合され、NOと濃縮酸素との反応によるNO2の生成が抑制される。なお、濃縮酸素及びNOを、患者の吸入の直前に混合して投与するように、カニューラ410を構成してもよい。
酸素生成部100及びNO生成部200が、筐体400の内部に収容されていることから、制御部300や電源を共有化することができ、小型で軽量、さらには省電力な単一のシステムとして構成することができる。また、一酸化窒素投与装置1では、酸素生成部100及びNO生成部200が、コンプレッサ102を共有していることから、各々の生成に必要な加圧されたガスを同時に供給することができる。
ところで、図1に示された一酸化窒素投与装置1の動作は患者の呼吸とは連動していない。すなわち、一酸化窒素投与装置1は、稼働状態において、常にNOが供給される連続流モードで動作する。しかしながら、一酸化窒素投与装置1は、一酸化窒素投与装置1の動作を患者の呼吸と同調させる同調流モードで動作するように構成することもできる。この場合、例えば、図2に示される一酸化窒素投与装置2のように、NO濃度計208の下流に微差圧センサ209を配置する。微差圧センサ209によって患者の呼吸による陰圧を検出し、これに同調して放電部205を制御することによってNOの生成又は停止を制御し、NOの投与又は停止を制御することができる。すなわち、患者の吸気のときにNOが供給され、患者の呼気のときにNOの供給が停止される。
なお、同調流モードを採用するに際し、微差圧センサ以外の呼吸検出部によって患者の呼吸を検出するようにしてもよい。他の呼吸検出部として、例えば、患者の口鼻に設置して呼吸時の気流による温度変化を測定する口鼻サーミスタ、患者の胸囲や腹囲の変動を検出する胸腹バンド、などが挙げられる。なお、呼吸検出部は、本明細書に記載の他の一酸化窒素投与装置に適用してもよい。また、フィルタ207とNO濃度計208との間に、遮断弁をさらに配置することによって、NOの投与又は停止を制御するようにしてもよい。遮断弁を配置することによって、遮断弁よりも上流の第2流路201内をより高圧に保つことができる。遮断弁が閉じているとき上流及び下流間に圧力差があることによって、NOの患者の吸気のときのNO供給再開直後の流量を増大させることができ、比較的短時間で投与を完了することができる。すなわち、吸気の有効時間内に適切に投与を完了することができる。
一酸化窒素投与装置1において、NO濃度計208に代えて、NO及びNO2の濃度を測定可能な単一の又は別体のNO/NO2濃度計を配置してもよい。それによって、毒性の高いNO2を測定することもできる。また、NO濃度計208に代えて、NOの濃度又は物質量を測定するNO測定部を配置してもよい。また、NO2濃度計は、NO2の濃度又は物質量を測定するNO2測定部としてもよい。また、流量計203に代えて又はこれに加えて、圧力計を配置してもよい。圧力計を用いて第2流路201の圧力監視を行うことによって、一酸化窒素投与装置1の運転状態、例えば流路の異常の有無等を把握することができる。また、流量制御器202の上流の第2流路201に、減圧弁を配置してもよい。減圧弁を配置することによって、コンプレッサ102によって圧縮されたガスを、NOの生成及び供給に最適な圧力に調整することができる。また、流量制御器202の上流の第2流路201に、バッファタンクを配置してもよい。バッファタンクを配置することによって、上述したPSA式による濃縮酸素の生成に伴う圧力変動を抑制することができる。
特に連続流モードにおいて、患者が吸入しなかったNOを含むガスは、カニューラ410から室内に放出される。放出されたNOは、空気中の酸素と反応し、毒性の高いNO2を生成する。そこで、図3に示されるように、一酸化窒素投与装置3において、コンプレッサ102の上流の第1流路101に、NO及びNO2のいずれか一方又は両方を吸着可能なNO/NO2吸着部112、すなわちNO/NO2除去部を配置してもよい。NO/NO2除去部は、例えば、上述のソーダ石灰(主として水酸化カルシウム)、活性炭、ゼオライト等と粉体フィルタを組み合わせた構成とすることができる。吸気口101aを介して一酸化窒素投与装置3に流入した空気に含まれるNO及びNO2は、NO/NO2吸着部112によって除去されることから、室内のNOの濃度及びNO2の濃度を低下させることができる。
NO/NO2吸着部112を、コンプレッサ102の上流の第1流路101ではなく、図4に示される一酸化窒素投与装置4のように、コンプレッサ102の下流の第1流路101に配置してもよい。NO生成部200は、NO2吸着部206を有していることから、NO/NO2吸着部112を、酸素生成部100に配置することによって、機能的重複を避けることができる。要するに、NO又はNO2の除去剤が、第1流路101の上流又は吸気口101aの近傍において配置されている。NO/NO2吸着部112は、本明細書に記載の他の酸素生成部100に適用してもよい。
NO又はNO2の除去剤について、さらに詳細に説明すると、患者に投与されるNOの量は、患者に投与される濃縮酸素の量に比べて非常に少ない。また、濃縮酸素及びNOそれぞれの生成プロセスの特性上、治療に必要な量の濃縮酸素の生成に使用される空気量は、治療に必要な量のNOの生成に使用される空気量に比べて非常に多い。したがって、NO又はNO2の除去剤を、濃縮酸素の生成のための空気が通過する流路、すなわち第1流路101の上流又は吸気口101aの近傍に配置することによって、効率的にNO及びNO2を除去することができる。
一酸化窒素投与装置4は、NOをNO2に酸化する酸化手段又はNO2をNOに還元する還元手段をさらに有していてもよい。一酸化窒素投与装置4が酸化手段又は還元手段を有することによって、NO/NO2吸着部112における吸着をより促進させることができる。酸化手段としては、空気中よりも高濃度の酸素を含むガスを使用してもよく、空気中よりも高濃度のオゾンを含むガスを使用してもよい。そのため、一酸化窒素投与装置4は、オゾン発生手段をさらに有していてもよい。また、還元手段としては、加熱装置や紫外線発生装置などを使用してもよい。なお、酸化手段及び還元手段は、本明細書に記載の他の一酸化窒素投与装置に適用してもよい。
図5は、さらに別の一酸化窒素投与装置5の概略図である。例えば、図1に示された一酸化窒素投与装置1では、第2流路201は、コンプレッサ102とガス流路切替部との間の第1流路101から分岐していた。図5に示された一酸化窒素投与装置5では、第2流路201は、ガス流路切替部の減圧弁104の下流の第1流路101から分岐している。したがって、酸素生成部100における脱着工程で、吸着筒105の吸着剤から放出された窒素を多く含むガス(低酸素ガス)が、第1流路101から第2流路201に分配される。したがって、第2流路201中のガスの酸素濃度が、全体として低くなることから、放電部205によってNOが生成されたとしても、NOと酸素との反応によるNO2の生成を抑制することができる。
一酸化窒素投与装置5のNO生成部200は、図1に示された一酸化窒素投与装置1のNO生成部200と比較して、流量制御器202の上流に配置されたバッファタンク210と、バッファタンク210の上流に配置されたポンプ211とを有する点において、さらに異なる。一酸化窒素投与装置5のNO生成部200がポンプ211を有することによって、上流に配置された酸素生成部100の脱着工程において、吸着筒105から放出された低酸素ガスを十分に排気することができる。また、NO生成部200において、第2流路201中のガスを、NOの生成及び供給のために適切な圧力に加圧することができる。一酸化窒素投与装置5のNO生成部200がバッファタンク210を有することによって、第1流路101から分配されたガスを蓄えることができる。
なお、ポンプ211を、放電部205よりも下流の第2流路201、例えばNO2吸着部206の下流に配置してもよい。この場合、上述したように、より上流に配置された酸素生成部100の脱着工程において、吸着筒105から放出された低酸素ガスを十分に排気することができると共に、放電部205までのガスの移動をより低圧で行うことができる。より低圧でガスを移動させることによって、NOと酸素との反応によるNO2の生成が抑制される。なお、一酸化窒素投与装置5は、ポンプ211を有していなくてもよい。
図6は、さらに別の一酸化窒素投与装置6の概略図である。一酸化窒素投与装置6は、図5に示された一酸化窒素投与装置5と比較して、ポンプ211を有していない点、及び、リーク弁212を有している点において異なる。リーク弁212は、バッファタンク210に接続されており、バッファタンク210に蓄えられた余剰のガスを排気口201cから排気することができる。
図7は、さらに別の一酸化窒素投与装置7の概略図である。一酸化窒素投与装置7は、図5に示された一酸化窒素投与装置5と比較して、ポンプ211を有していない点、及び、第2流路201がコンプレッサ102の下流の第1流路101からも分岐している点において異なる。コンプレッサ102の下流の第1流路101から分岐した第2流路201と、ガス流路切替部の減圧弁104の下流の第1流路101から分岐した第2流路201とは、逆止弁204の上流で合流している。コンプレッサ102の下流の第1流路101から分岐した第2流路201には、流量制御器202及び流量計203が配置されている。第2流路201がコンプレッサ102の下流の第1流路101からも分岐していることによって、上述した低酸素ガスと圧縮空気としてのガスとを混合させることができ、放電部205に到達させる酸素濃度及びNO濃度を調整することができる。
一酸化窒素投与装置7において、コンプレッサ102と流量制御器202との間の第2流路201に減圧弁を配置してもよい。それによって、低酸素ガスと圧縮空気としてのガスとの混合の割合を変化させ、酸素濃度及びNO濃度を調整することができると共に、NOの生成及び供給のために適切な圧力に調整することができる。さらに、図5に示された一酸化窒素投与装置5のように、バッファタンク210の上流の第2流路201にポンプ211を配置してもよい。
図8は、さらに別の一酸化窒素投与装置8の概略図である。一酸化窒素投与装置8では、第2流路201は、バッファタンク108と流量制御器109との間の第1流路101から分岐している。したがって、酸素生成部100において生成された濃縮酸素を多く含むガス(濃縮酸素ガス)が、第1流路101から第2流路201に分配される。一般的な成人用途の酸素濃縮装置では、濃度が90%程度かそれ以上の濃縮酸素が供給されるが、小児用途など一部の酸素濃縮装置では、40%程度の濃縮酸素が供給される。そのような比較的低濃度の酸素濃縮装置においては、濃縮酸素とNOとの接触により生成するNO2のリスクが比較的低く、また、放電部の構成や放電条件によってはNOの生成効率を高めることができる。
流量制御器202の上流の第2流路201に、ポンプ211を配置してもよい。また、ポンプ211を、放電部205よりも下流の第2流路201、例えばNO2吸着部206の下流に配置してもよい。
図9は、さらに別の一酸化窒素投与装置9の概略図である。一酸化窒素投与装置9は、図8に示された一酸化窒素投与装置5と比較して、第2流路201がコンプレッサ102の下流の第1流路101からも分岐している点において異なる。コンプレッサ102の下流の第1流路101から分岐した第2流路201には、流量制御器202及び流量計203が配置されている。第2流路201がコンプレッサ102の下流の第1流路101からも分岐していることによって、上述した濃縮酸素ガスと圧縮空気としてのガスとを混合させることができ、放電部205に到達させる酸素濃度及びNO濃度を調整することができる。
一酸化窒素投与装置9において、コンプレッサ102と流量制御器202との間の第2流路201に減圧弁を配置してもよい。また、バッファタンク108と流量制御器109との間の第1流路101から分岐した第2流路201における流量制御器202の上流において、ポンプ211を配置してもよい。
図10は、さらに別の一酸化窒素投与装置10の概略図である。一酸化窒素投与装置10では、図7に示された一酸化窒素投与装置7と同様に、第2流路201は、コンプレッサ102とガス流路切替部との間の第1流路101から分岐すると共に、ガス流路切替部の減圧弁104の下流の第1流路101から分岐している。したがって、酸素生成部100における脱着工程で吸着剤から放出された低酸素ガスが、第1流路101から第2流路201に分配される。
一酸化窒素投与装置10は、図7に示された一酸化窒素投与装置7と比較して、ガス流路切替部の減圧弁104の下流の第1流路101から分岐した第2流路201において、流量計203が逆止弁204を介して放電部205とNO2吸着部206との間で他方の第2流路201と合流している点において異なる。したがって、酸素生成部100において濃縮酸素の生成に伴い生成された低酸素ガスは、放電部205の下流の第2流路201において、生成されたNOに対して混合される。
放電部205の下流の第2流路201において、低酸素ガスが混合されることによって、第2流路201中のガスの酸素濃度が、全体として低くなる。したがって、NOと酸素との反応によるNO2の生成が抑制される。図10に示された一酸化窒素投与装置10では、コンプレッサ102による酸素を含んだ圧縮空気の一部を使用して、放電部205においてNOが生成される。そのため、例えば図5に示された一酸化窒素投与装置5のように、低酸素ガス下でNOを生成する場合に比べて、NOの生成効率も高い。よって、一酸化窒素投与装置10によれば、NOの生成効率を低下させることなく、且つ、NOと酸素との反応によるNO2の生成を抑制することができる。
一酸化窒素投与装置10において、コンプレッサ102と流量制御器202との間の第2流路201に減圧弁を配置してもよい。フィルタ207とNO濃度計208との間の第2流路201において、微差圧センサ209を配置してもよい。さらに、図5に示された一酸化窒素投与装置5のように、バッファタンク210の上流の第2流路201にポンプ211を配置してもよい。
図11は、さらに別の一酸化窒素投与装置11の概略図である。一酸化窒素投与装置11は、図10に示された一酸化窒素投与装置10と比較して、リーク弁212を有している点において異なる。リーク弁212は、バッファタンク210に接続されており、バッファタンク210に蓄えられた余剰のガスを排気口201cから排気することができる。
図12は、さらに別の一酸化窒素投与装置12の概略図である。一酸化窒素投与装置12は、図5に示された一酸化窒素投与装置5と比較して、ポンプ211の上流に三方弁213が配置されている点、及び、三方弁213から分岐した第2流路201が逆止弁204を介して排気口201cに延びている点において異なる。すなわち、第2流路201において、三方弁213によって、NO供給口201bへの流路と排気口201cへの流路とが選択的に切り替えられる。よって、三方弁213は、第1流路101から第2流路201への低酸素ガスの流路の開閉を切り替える流路切替弁を構成する。
ここで、ガス流路切替部によって第2流路201に分配されるガスの酸素濃度、すなわち酸素生成部100における脱着工程で、吸着筒105の吸着剤から放出された窒素を多く含むガス(低酸素ガス)の酸素濃度は、一定ではない。第2流路201に分配されるガスの酸素濃度は、PSA式の濃縮酸素の生成に伴う圧力変動と同様に、周期的に上下に変動する。
したがって、酸素濃度が比較的に高いタイミングでは、三方弁213を排気口201c側に切り替えることによってガスを排気口201cから排気する。他方、酸素濃度が比較的に低いタイミングでは、三方弁213をNO供給口201b側に切り替えることによって、ガスをバッファタンク210に蓄える。その結果、第2流路201における圧力変動及び酸素濃度の変動が抑制される。三方弁213の下流にポンプ211が配置されていることによって、第2流路201へのガスの分配を促進することができる。ポンプ211は、三方弁213の下流の第2流路201であれば、任意の位置に配置することができる。
図13は、さらに別の一酸化窒素投与装置13の概略図である。一酸化窒素投与装置13は、図11に示された一酸化窒素投与装置11と比較して、リーク弁212に代えて逆止弁204が配置されている点、バッファタンク210の上流に三方弁213が配置されている点において異なる。すなわち、ガス流路切替部の下流の第1流路101から分岐した第2流路201において、三方弁213によって、NO供給口201bへの流路と排気口201cへの流路とが選択的に切り替えられる。その結果、図12を参照しながら説明したように、第2流路201における圧力変動及び酸素濃度の変動が抑制される。
さらに、一酸化窒素投与装置13は、図11に示された一酸化窒素投与装置11と比較して、コンプレッサ102とガス流路切替部との間の第1流路101から分岐する第2流路201に代えて、吸気口201aを備えた第2流路201がコンプレッサ214を介して流量制御器202に接続されている点において、大きく異なる。すなわち、一酸化窒素投与装置13では、酸素生成部100及びNO生成部200が、それぞれ独立したコンプレッサ102及びコンプレッサ214を有している。
NO生成部200におけるNOの生成に用いられるガスの圧力及び流量は、酸素生成部100における濃縮酸素の生成に用いられるガスの圧力及び流量よりも小さい。したがって、NO生成部200のコンプレッサ214の方が、酸素生成部100のコンプレッサ102よりも、必要とされる圧力及び流量が少なく、よって小型にすることができる。コンプレッサ102及びコンプレッサ214を、それぞれ独立して制御することによって、濃縮酸素の生成及びNOの生成に適した圧力及び流量で以て空気を流入させることができる。
一酸化窒素投与装置13は、酸素生成部100における第1吸気口としての吸気口101aに加え、第2吸気口として吸気口201aを有することによって、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成することができる。さらに、一酸化窒素投与装置13において、第1流路101から第2流路201に分配された低酸素ガスによって、NOと酸素との反応によるNO2の生成を抑制することができる。
上述した図1乃至図13に示された一酸化窒素投与装置によれば、NOと濃縮酸素とが別々に生成され、患者に投与されることから、NO2の生成が抑制されるという共通の効果を奏する。
図14は、さらに別の一酸化窒素投与装置14の概略図である。
一酸化窒素投与装置14は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200で生成されたNOは、NO供給口201bを介して供給される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された三方弁213と、三方弁213の下流に配置された空気圧縮部としてのコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された圧力計215と、圧力計215の下流に配置された上述した放電部205と、放電部205の下流に配置された上述したNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置された上述したフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置された三方弁216とを有している。
上述したように、NO2は、毒性が高く、生成されたNOが、患者によって吸入されるまでの間に、放電部205での放電時に未反応の酸素と反応することによっても生成される。そのため、例えば、放電部205でNOが生成された後、第2流路201内で滞留してしまうと、その間にNO2が生成されてしまう。一酸化窒素投与装置14では、三方弁213及び三方弁216を有することによって、一酸化窒素投与装置14の内部においてガスを還流させ、ガスに含有するNO2の濃度上昇を抑制している。すなわち、NO2吸着部206の下流からNO供給口201bへの流路とNO2吸着部206の下流から放電部205の上流への流路との切り替えが、好ましくは選択的に、行われる。
具体的には、放電部205で生成されたNOを含有するガスは、放電部205の下流に配置されたNO2吸着部206によって、ガス中のNO2が吸着される。NO2吸着部206の下流において、NOを含有するガスがすぐに患者に投与されない場合には、三方弁216が切り替えられ、第2流路201の下流とバイパス流路217とが連通する。これと同時に、三方弁213が切り替えられ、バイパス流路217と第2流路201の上流とが連通する。したがって、放電部205で生成されたNOを含有するガスは、フィルタ207の下流からバイパス流路217を経由して第2流路201の上流に流入した後、コンプレッサ214によって加圧されながら、一酸化窒素投与装置14の内部を還流する。他方、三方弁216をNO供給口201b側に切り替え、且つ、三方弁213を吸気口201a側に切り替えることで、患者への投与を開始することができる。
なお、一酸化窒素投与装置14において、三方弁213及び三方弁216の切り替え、すなわち還流は、間欠的に、所定のタイミングで行われる。しかしながら、一酸化窒素投与装置14は、患者の呼吸に同調して行われるようにしてもよい。この場合、例えば、図15に示される一酸化窒素投与装置15のように、三方弁216とNO供給口201bとの間に微差圧センサ209を配置する。微差圧センサ209によって患者の呼吸を検出し、三方弁213及び三方弁216の切り替えを行うことができる。微差圧センサ209を利用して、放電部205の制御を行ってもよい。
また、図14に示された一酸化窒素投与装置14において、流量制御器202を三方弁213の上流に配置し、放電部205を三方弁213とコンプレッサ214との間の第2流路201に配置してもよい。放電部205がより上流に配置されることによって、生成されたNOを含むガスが低圧で移動する区間が長くなるため、NOと酸素との反応によるNO2の生成が抑制される。
図16に示される一酸化窒素投与装置16のように、フィルタ207と三方弁216との間の第2流路201にNO濃度計208を配置してもよい。また、三方弁216とNO供給口201bとの間に、NO濃度計208を配置してもよい。NO濃度計208は、第2流路201の最下流におけるNO濃度を測定し、患者に対する投与に際して問題のないNO濃度であるか否かを測定する。その結果は、例えば流量制御器202や放電部205にフィードバックされ、NOの生成量又は濃度が調整される。
図17は、さらに別の一酸化窒素投与装置17の概略図である。一酸化窒素投与装置17は、図14に示された一酸化窒素投与装置14と比較して、コンプレッサ214と流量制御器202との間の第2流路201、及び、三方弁216の下流に、それぞれ二方弁218がさらに配置されている点において異なる。呼吸の頻度が高い患者の場合、同調流モードでは、呼吸の頻度が低い患者の場合と比較して、生成されたNOを含むガスの滞留時間は低くなる。そのため、一酸化窒素投与装置の内部においてガスを還流させ、ガスに含有するNO2の濃度上昇を抑制する必要がない場合がある。そこで、図17に示された一酸化窒素投与装置17は、三方弁216の下流、すなわちNO供給口201bの上流に二方弁218がさらに配置されていることによって、呼吸の頻度が高い患者の場合には、三方弁216をNO供給口201b側の流路に切り替え、且つ、NO供給口201bの上流の二方弁218の開閉を切り替えることによって、ガスを還流させることなく、NOを含むガスを患者に投与することができる。また、吸気待ちの時間は、呼吸毎に毎回僅かばかり変化するため、投与前の流路の最大圧力も呼吸毎に毎回変化する。図17に示されるように、コンプレッサ214とコンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202との間の第2流路201に二方弁218を配置することによって、第2流路201における投与前のガスの最大圧力が一定となるように制御することができる。したがって、流路内の圧力の変動に応じてNO供給口201bの上流の二方弁218又は三方弁216の開度及び開時間を制御しなくても、患者への投与量を所望の量に制御することができる。なお、コンプレッサ214と流量制御器202との間の第2流路201に二方弁218を配置しなくてもよい。他方、本明細書に記載のバイパス流路を有する他の一酸化窒素投与装置において、図17に示された一酸化窒素投与装置17と同様に、コンプレッサ214の下流の流路に二方弁218を配置してもよい。
なお、呼吸の頻度が高いか低いかの判断は、呼吸の頻度、例えば1分間又は単位時間当たりの呼吸数が、予め定められた呼吸数より多いか少ないかで判断される。予め定められた呼吸数は、NO濃度の減少又はNO2の濃度の上昇における許容値から判断される。
図18は、さらに別の一酸化窒素投与装置18の概略図である。一酸化窒素投与装置18は、図14に示された一酸化窒素投与装置14と比較して、流量制御器202を三方弁213の上流に配置し、放電部205を三方弁213とコンプレッサ214との間の第2流路201に配置している点において異なる。さらに一酸化窒素投与装置18では、バイパス流路217に三方弁220が配置され、バイパス流路217からさらにバイパス流路221が分岐している。
上述したように、NO2吸着部206の下流において、NOを含有するガスがすぐに患者に投与されない場合には、三方弁216が切り替えられ、第2流路201の下流とバイパス流路217とが連通する。このとき、NO及びNO2の濃度の変動が少なく、さらなるNOの生成が不要な場合は、三方弁220が切り替えられ、バイパス流路217と、バイパス流路221を介して放電部205の下流の第2流路201とが連通する。放電部205の下流に対して還流させることによって、還流経路を短縮することができる。
図19は、さらに別の一酸化窒素投与装置19の概略図である。一酸化窒素投与装置19は、図14に示された一酸化窒素投与装置14と比較して、吸気口201aの下流に流量制御器202を配置し、コンプレッサ214と圧力計215との間に放電部205を配置している点において異なる。さらに、一酸化窒素投与装置19では、NO2吸着部206と圧力計215との間に三方弁213が配置されている。
上述したように、NO2吸着部206の下流において、NOを含有するガスがすぐに患者に投与されない場合には、三方弁216が切り替えられ、第2流路201の下流とバイパス流路217とが連通する。これと同時に、三方弁213が切り替えられ、ポンプ211を介して、バイパス流路217と第2流路201とが連通する。したがって、放電部205で生成されたNOを含有するガスは、一酸化窒素投与装置19は、図18に示された一酸化窒素投与装置18と比較して、還流の経路をより短くすることができる。
NO及びNO2の濃度の変動が少なく、さらなるNOの生成が不要な場合に、放電部205の下流に対して還流させることによって、還流経路を短縮することができ、NOと酸素との反応によるNO2の生成が抑制される。特に、図18に示された一酸化窒素投与装置18では、還流する際に、放電部205を介す必要がある場合と放電部205を介す必要がない場合の両方に対応することが可能となる。
上述した図14乃至図19に示された一酸化窒素投与装置は、NO2吸着部206の下流からNO供給口201bへの流路と、NO2吸着部206の下流からNO2吸着部206の上流への流路とを選択的に切り替える三方弁216を有している。したがって、三方弁216は、少なくともNO2除去部の下流から前記供給口への流路の開閉を切り替える第1流路切替部を構成する。例えば、第1流路切替部によって、患者の吸気のときに、例えば吸気開始をトリガとして、NO2除去部の下流から供給口への流路への切り替えが行われ、患者の呼気のときに、例えば呼気開始をトリガとして、NO2除去部の下流からNO2除去部の上流への流路への切り替えが行われる。患者の吸気開始のトリガから、所定時間経過後にNO2除去部の下流からNO2除去部の上流への流路への切り替えが行われるようにしてもよい。なお、吸気終了間際に吸気されたガスは、肺胞まで到達しないことから治療効果に寄与せず、さらには呼気時に室内に排気されてしまう。したがって、吸気が終了するよりも前に、NO2除去部の下流からNO2除去部の上流への流路への切り替えが行われるようにしてもよい。
また、第1流路切替部の開時間又は吸気口201aからの空気の取り込み量が、患者の単位時間当たりの呼吸数が所定の値よりも少ない場合には多くなるように調整され、患者の単位時間当たりの呼吸数が所定の値よりも多い場合には少なくなるように調整されるようにしてもよい。NOの患者への投与に応じて、吸気口201aからの空気の取り込みが行われるようにしてもよい。NOの患者への投与又は吸気口201aからの空気の取り込みに応じて、放電部205による放電が行われるようにしてもよい。NOの患者への投与時又は吸気口201aからの空気の取り込み時に、それ以外の時に比べて、より多くNOを生成するように放電部205による放電が行われるようにしてもよい。NOの患者への投与時以外の時又は吸気口201aからの空気の取り込み時以外の時に、NO濃度を維持するように放電部205による放電が行われるようにしてもよい。吸気口201aからの空気の取り込み量が所定の値よりも多いときに、又は、ガスの滞留時間が所定の値よりも長いときに、より多くNOを生成するように、放電部205による放電が行われるようにしてもよい。流路の全体の容積に応じて、放電部205NO供給口201bとの間の流路の少なくとも一部の流速が調整されるようにしてもよい。
さらに、図18に示された一酸化窒素投与装置18では、NO2吸着部206の下流から、放電部205の上流への流路及び放電部205の下流への流路を選択的に切り替える三方弁220を有している。したがって、三方弁220は、第2流路切替部を構成する。第2流路切替部によって、患者の呼吸の頻度が予め定められた頻度よりも低いときに放電部205の上流への流路への切り替えが行われ、患者の呼吸の頻度が予め定められた頻度よりも高いときに放電部205より下流への流路への切り替えが行われる。
流路中のNO2の濃度又は物質量を測定するNO2測定部をさらに具備し、NO2測定部によって測定されたNO2の濃度又は物質量が予め定められた第1値よりも低いときにNO2除去部の下流からNO供給口201bへの流路への切り替えが第1流路切替部によって行われ、NO2測定部によって測定されたNO2の濃度又は物質量が予め定められた第1値よりも高いときにNO2除去部の下流からNO2除去部の上流への流路への切り替えが第1流路切替部によって行われるようにしてもよい。
流路中のNOの濃度又は物質量を測定するNO測定部をさらに具備し、NO測定部によって測定されたNOの濃度又は物質量が予め定められた第2値よりも低いときに放電部205の上流への流路への切り替えが第2流路切替部によって行われ、NO測定部によって測定されたNOの濃度又は物質量が予め定められた第2値よりも高いときに放電部205の下流への流路への切り替えが第2流路切替部によって行われるようにしてもよい。
図16に示されたNO濃度計208のように、NO測定部又はNO2測定部は、フィルタ207と三方弁216との間に配置されていることが好ましい。その結果、患者に投与される直前に、NO又はNO2の濃度又は物質量を測定することができ、より適切に投与量を調整することができる。なお、三方弁216とNO供給口201bとの間にNO測定部又はNO2測定部を配置してもよい。
上述した図14乃至図19に示された一酸化窒素投与装置によれば、NO2の濃度上昇を抑制するという共通の効果を奏する。図14乃至図19に示された一酸化窒素投与装置は、酸素生成部100を有していないが、図1に示された一酸化窒素投与装置1等と同様に、酸素生成部100を有していてもよい。さらに、図25を参照しながら後述する一酸化窒素投与装置のように、NO供給口201bよりも下流の流路にNO2吸着部を配置してもよい。この場合、NO2吸着部の上流側は、延長チューブを介してNO供給口201bと接続され、NO2吸着部の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。
図20は、一酸化窒素投与装置20及び中継投与装置50の概略図である。中継投与装置50は、空気から生成されたNOを供給する一酸化窒素投与装置20に接続される。
一酸化窒素投与装置20は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200で生成されたNOは、NO供給口201bを介して供給される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された空気圧縮部としてのコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された流量計203と、流量計203の下流に配置された上述した放電部205と、放電部205の下流に配置された上述したNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置された上述したフィルタ207と、を有している。
中継投与装置50の上流側は、延長チューブ430を介してNO供給口201bと接続され、中継投与装置50の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。中継投与装置50は、上流側接続端501a及び下流側接続端501bを備えた第3流路501と、第3流路501に配置され、上流側接続端501aを介して流入したガスの投与量を調整する投与量調整部500と、制御部600と、筐体700とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。
投与量調整部500で調整されたガスは、下流側接続端501bを介して供給される。投与量調整部500の各種動作は、制御部600によって制御される。中継投与装置50は、図示しない電源ケーブルを介して電源に接続される。しかしながら、中継投与装置50が、筐体700に収納可能な電池を有し、それを電源としてもよい。なお、制御部600に代えて、一酸化窒素投与装置20及び中継投与装置50を電気的に接続し、投与量調整部500の各種動作が、制御部300によって制御されるようにしてもよい。
投与量調整部500は、第3流路501において、上流側接続端501aの下流に配置されたNO2吸着部502と、NO2吸着部502の下流に配置されたフィルタ503と、フィルタ503の下流に配置された圧力計504と、圧力計504の下流に配置された調整弁である二方弁505と、二方弁505の下流に配置されたNO濃度計506とを有している。NO2吸着部502及びフィルタ503は、上述したNO2吸着部206及びフィルタ207とそれぞれ同一である。
上述したように、NO2は、毒性が高く、生成されたNOが、患者によって吸入されるまでの間に放電時に未反応の酸素と反応することによっても生成される。そのため、一酸化窒素投与装置の使用環境等によって、カニューラの長さが長ければ長いほど、NOと酸素とが反応する可能性のある時間が長くなることから、同一流量下では、実際に患者に投与されるNOの量が減少してしまう。そこで、一酸化窒素投与装置20と共に、中継投与装置50を使用されることによって、患者への投与の直前に投与量を調整し、患者に投与されるNOの絶対量を調整することができる。
すなわち、中継投与装置50において最も下流に配置されたNO濃度計506によって、患者への投与直前のNO濃度が測定される。制御部600によって、投与量が少ないと判断された場合には、圧力計504の値に基づき二方弁505の開度及び時間を調整し、流量を増やすことによって投与量を上げる。他方、制御部600によって、投与量が多いと判断された場合には、圧力計504の値に基づき二方弁505の開度及び時間を調整し、流量を減らすことによって投与量を下げる。
中継投与装置50が、NO2吸着部502を有することによって、一酸化窒素投与装置20のNO2吸着部206でNO2が吸着された後に発生したNO2を吸着することができる。また、中継投与装置50が、フィルタ503を有することによって、延長チューブ430を介して中継投与装置50に流入したガス中のゴミ及び塵埃を除去することができる。
図2で示したような、微差圧センサ209を有する一酸化窒素投与装置2において、中継投与装置50なしで、カニューラ410及び延長チューブ430を一酸化窒素投与装置2に接続した場合、延長チューブ430の長さ応じて呼吸検出までの時間及び投与の遅れ時間が長くなり、有効な吸気期間中にNOの投与が完了しない場合がある。そのため、NO濃度計506の下流に微差圧センサを配置して、患者の呼吸による陰圧等を検出し、これに同調して二方弁505を制御することによってNOの通過又は停止を制御し、NOの投与又は停止を制御してもよい。それにより、延長チューブ長に応じた呼吸検出及び投与の遅れ時間を短縮することができる。微差圧センサに代えて、口鼻サーミスタ等の他の呼吸検出部を使用してもよい。呼吸検出部によって検出された患者の呼吸を、呼吸情報の信号として有線又は無線によって中継投与装置50に送信し、二方弁505を制御してもよい。
NO濃度計506に代えて、NO/NO2濃度計を配置してもよい。また、二方弁505の上流の第3流路501に、ポンプを配置してもよい。ポンプを配置することによって、NOの供給のために適切な圧力に加圧することができる。
図21は、別の一酸化窒素投与装置21及び中継投与装置51の概略図である。中継投与装置51は、図20に示された中継投与装置50と比較して、圧力計504を有していない代わりに、NO濃度計506の下流の第3流路501に、流量計507を有している点において異なる。流量計507を有することによって、投与量を適切に制御することができる。なお、流量計507と共に、圧力計504を有していてもよい。
上述した図20及び図21に示された中継投与装置は、NO濃度測定部と、流量計又は圧力計と、NO濃度測定部によって測定されたNO濃度と、流量計又は圧力計の値とに基づき、患者へ投与されるNOの投与量を算出する制御部と、算出された投与量が予め定められた値よりも少ないとき流量を増やし、算出された投与量が予め定められた値よりも多いとき流量が減らすように構成された調整弁と、を有している。調整弁によって、患者の吸気のときにNOが供給され、患者の呼気のときにNOの供給が停止されるようにしてもよい。
上述した図20及び図21に示された中継投与装置によれば、NOの投与量が調整可能となるという共通の効果を奏する。NO2吸着部をさらに備えることにより、患者が吸入するNO2を低減するという共通の効果を奏する。特に、中継投与装置は、上述した図20及び図21に示された一酸化窒素投与装置のみならず、空気から生成されたNOを供給する任意の一酸化窒素投与装置に接続して使用することができる。さらに、中継投与装置は、患者へ投与されなかったNOを含む余剰ガスを排出する排出口を別途有していてもよい。余剰ガス中のNO又はNO2を除去する除去部をさらに有していてもよい。図20及び図21に示された一酸化窒素投与装置は、酸素生成部100を有していないが、図1に示された一酸化窒素投与装置1等と同様に、酸素生成部100を有していてもよい。
一酸化窒素投与装置及び中継投与装置を、全体として1つの一酸化窒素投与システムとすることができる。この場合、一酸化窒素投与システムは、第2流路201と、放電部205とを備えたNO生成部200とを有する一酸化窒素投与装置と、第3流路501を有する中継投与装置と、延長チューブ430と、カニューラ410と、患者の呼吸を検出するための呼吸検出部、すなわち呼吸検出装置とを具備する。中継投与装置は、第3流路501に配置され、呼吸検出装置で検出された患者の呼吸に応じて、開度及び開時間が制御されて、NOの投与量を調整するための二方弁、すなわち調整弁をさらに有する。
中継投与装置のNO濃度計を、中継投与装置ではなく、一酸化窒素投与装置の放電部205の下流に配置してもよい。この場合、二方弁505の開度及び開時間を、一酸化窒素投与装置に配置されたNO濃度計によって測定されたNO濃度に応じて制御してもよい。また、二方弁505の開度及び開時間を、予め定められたNO濃度又は接続されている延長チューブ430の長さに応じて制御してもよい。なお、一酸化窒素投与装置及び中継投与装置の各種制御パラメータの設定又は変更のために、使用者に対して延長チューブ430の流路仕様の入力を促し又は選択させるような、上述した入力インターフェースを有していてもよい。
図22は、さらに別の一酸化窒素投与装置22及び中継投与装置52の概略図であり、図23は、さらに別の一酸化窒素投与装置23及び中継投与装置53の概略図であり、図24は、さらに別の一酸化窒素投与装置24及び中継投与装置54の概略図である。図22乃至図24に示された一酸化窒素投与装置及び中継投与装置は、全体として、図20及び図21に示された一酸化窒素投与装置及び中継投与装置と比較して、バイパス流路を有していることによって中継投与装置からガスを一酸化窒素投与装置に還流している点において異なる。言い換えると、図22乃至図24に示された一酸化窒素投与装置は、図14乃至図19に示された一酸化窒素投与装置と比較して、中継投与装置を有しており、中継投与装置からガスを、バイパス流路を介して一酸化窒素投与装置に還流している点において異なる。したがって、図22乃至図24に示された一酸化窒素投与装置及び中継投与装置は、上述した、中継投与装置の利点、及び、バイパス流路を介した還流による利点の両方を備えている。
図22に示された一酸化窒素投与装置22は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された放電部205と、放電部205の下流に配置されたコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置された上述したフィルタ207と、放電部205の上流の第2流路201及び放電部205の下流の第2流路201間を選択的に切り替える三方弁220とを有している。
中継投与装置52の上流側は、延長チューブ430を介してNO供給口201bと接続され、中継投与装置52の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。中継投与装置52は、上流側接続端501a及び下流側接続端501bを備えた第3流路501と、第3流路501に配置され、上流側接続端501aを介して流入したガスの投与量を調整する投与量調整部500と、制御部600と、筐体700とを有している。
投与量調整部500で調整されたガスは、下流側接続端501bを介して供給される。投与量調整部500の各種動作は、制御部600によって制御される。一酸化窒素投与装置22の制御部300及び中継投与装置52の制御部600間には、有線又は無線によって通信経路610が確立されている。中継投与装置52は、図示しない電源ケーブルを介して電源に接続される。しかしながら、中継投与装置52が、筐体700に収納可能な電池を有し、それを電源としてもよい。なお、制御部600に代えて、一酸化窒素投与装置22及び中継投与装置52を電気的に接続し、投与量調整部500の各種動作が、制御部300によって制御されるようにしてもよい。
中継投与装置52は、第3流路501において、上流側接続端501aの下流に配置されたNO2吸着部502と、NO2吸着部502の下流に配置されたフィルタ503と、フィルタ503の下流に配置されたNO/NO2濃度計508と、NO/NO2濃度計508の下流に配置された三方弁509と、三方弁509の下流に配置された微差圧センサ510とを有している。さらに、第3流路501において、三方弁509から分岐したバイパス流路511は、バイパス上流側接続端501cまで延びている。第3流路501において、三方弁509によって、下流側接続端501bへの流路とバイパス上流側接続端501cへの流路とが選択的に切り替えられる。中継投与装置52のバイパス上流側接続端501cは、バイパスチューブ520を介して、一酸化窒素投与装置22のバイパス下流側接続端201dに接続されている。バイパス下流側接続端201dから延びる第2流路201は、三方弁220に接続されている。三方弁509は、少なくともNO2除去部の下流からカニューラ410への流路の開閉を切り替える第1流路切替部を構成する。また、三方弁220は、第2流路切替部を構成する。
上述したように、中継投与装置52のNO2吸着部502の下流において、NOを含有するガスがすぐに患者に投与されない場合には、三方弁509が切り替えられ、第3流路501と第2流路201とが、バイパスチューブ520を介して連通する。すなわち、三方弁509を切り替えることによって、中継投与装置52のガスを一酸化窒素投与装置22に還流させることができる。このとき、NO及びNO2の濃度の変動が少なく、さらなるNOの生成が不要な場合は、三方弁220が切り替えられ、バイパス流路221を介して放電部205の下流の第2流路201が連通する。放電部205の下流に対して還流させることによって、還流経路を短縮することができる。他方、さらなるNOの生成が必要な場合には、三方弁220が切り替えられ、バイパス流路217を介して放電部205の上流の第2流路201が連通する。
一酸化窒素投与装置23及び中継投与装置53は、図22に示された一酸化窒素投与装置22及び中継投与装置52と比較して、三方弁220に代えて2つの二方弁、すなわち二方弁222及び二方弁223を有する点、及び、三方弁509に代えて別の2つの二方弁、すなわち二方弁512及び二方弁513を有する点において異なる。
すなわち、一酸化窒素投与装置23において、バイパス下流側接続端201dから延びる第2流路201は、二方弁222及び二方弁223間の流路に連通する。その結果、バイパス下流側接続端201dから延びる第2流路201を、放電部205の上流の第2流路201及び放電部205の下流の第2流路201間を選択的に連通させるのみならず、両方に連通させない又は両方に連通させることが可能となる。同様に、中継投与装置53において、上流側接続端501aから延びる第3流路501は、二方弁512及び二方弁513間の流路に連通する。その結果、上流側接続端501aから延びる第3流路501を、下流側接続端501bへの流路及びバイパス上流側接続端501cへの流路間を選択的に連通させるのみならず、両方に連通させない又は両方に連通させることが可能となる。二方弁512及び二方弁513は、少なくともNO2除去部の下流からカニューラ410への流路の開閉を切り替える第1流路切替部を構成する。また、二方弁222及び二方弁223は、第2流路切替部を構成する。
一酸化窒素投与装置24及び中継投与装置54は、図23に示された一酸化窒素投与装置23及び中継投与装置53と比較して、二方弁513を有さない点においてのみ異なる。中継投与装置54が二方弁513を有さないことによって、二方弁512の開閉に依らず、中継投与装置52のガスを一酸化窒素投与装置22に常に還流させることができる。二方弁512は、第1流路切替部を構成する。また、二方弁222及び二方弁223は、第2流路切替部を構成する。第1流路切替部を1つの二方弁512で構成することによって、バイパスチューブ520を介した第3流路501と第2流路201との間の還流用の流路自体がバッファタンクとして機能させることができる。その結果、二方弁513を開いて中継投与装置54内のガスを患者に投与する際に、還流用の流路にあるガスも同時に放出されるため、投与時間を短縮することができる。
なお、図23を参照しながら説明した、2つの三方弁の各々を2つの二方弁に置き換える構成、及び、図24を参照しながら説明した、上流側の三方弁を2つの二方弁に置き換え、下流側の三方弁を1つの二方弁に置き換えて且つ上流側の流路に常に還流させる構成は、図14乃至図19に示された一酸化窒素投与装置に対しても適用可能である。言い換えると、第1流路切替部は、1つの三方弁又は1つ若しくは2つの二方弁で構成してもよく、第2流路切替部は、1つの三方弁又は2つの二方弁で構成してもよい。特に、図17に示された一酸化窒素投与装置17において、三方弁216のみを省略してもよい。それによって、NO供給口201bの上流に配置された二方弁218の開閉に依らず、一酸化窒素投与装置17のガスを常に還流させることができる。この場合、NO供給口201bの上流に配置された二方弁218が、NO2除去部の下流から供給口への流路の開閉を切り替える第1流路切替部を構成する。また、一酸化窒素投与装置及び中継投与装置の少なくとも一方が、NO2を除去するNO2除去部を有していることが好ましい。言い換えると、中継投与装置がNO2除去部を有していなくてもよい。
一酸化窒素投与装置及び中継投与装置を、全体として1つの一酸化窒素投与システムとした場合、一酸化窒素投与システムは、NO2除去部の上流へと還流する流路を具備し、中継投与装置が、NO2除去部の下流からカニューラへの流路の開閉を切り替える第1流路切替部と、を有している。第1流路切替部が、上述した調整弁に相当する。
上述したように、第1流路切替部の切り替え、又は、第1流路切替部及び第2流路切替部の切り替え、すなわち還流は、間欠的に、所定のタイミングで行われる。しかしながら、還流を、患者の呼吸に同調して行うようにしてもよい。この場合、微差圧センサ、例えば微差圧センサ510によって患者の呼吸を検出し、第1流路切替部の切り替え、又は、第1流路切替部及び第2流路切替部の切り替えを行うことができる。微差圧センサを利用して、放電部205の制御を行ってもよい。これに関して、図14を参照しながら以下説明する。
少なくとも投与時に、すなわち患者への投与に応じて、吸気口201aから空気が流入され、空気の取り込みが行われる。具体的には、バイパス流路217を閉鎖するように、三方弁213及び三方弁216が切り替えられ、より空気が流入されるようにコンプレッサ214又は流量制御器202が制御される。それによって、投与時の流路の圧力及び流量の低下を緩和し、投与時間を短縮することができる。また、少なくとも投与時に、すなわち患者への投与に応じて、放電部205による放電が行われる。空気の流入と併せて放電を行うことによって、NOの濃度の変動を抑制することができ、より安定したNO濃度のガスを短時間で投与することができる。
投与時又は空気の取り込み時には、それ以外の時に比べて、NOがより多く生成されるように、制御部300によって放電部205の放電が制御される。すなわち、放電の頻度(周波数、すなわち単位時間当たりの放電回数)を上げるか、1放電(1パルス)当たりのエネルギー(電流及び電圧)を上げるか、1放電当たりの放電時間を長くするか、投与1回あたりの総放電回数を増やすか、放電させる電極の数を増やすことによって、NOをより多く生成することができる。他方、投与時以外又は空気の取り込み時以外の時には、経時的なNO濃度の低下分を補うため、すなわちNO濃度を維持するための放電を行ってもよい。当然のことながら、投与時以外又は空気の取り込み時以外の時のNOの生成量よりも、投与時のNOの生成量の方が多い。また、投与時又は空気の取り込み時において、吸気口201aからの空気の取り込み量に応じて、NOの生成量を決定することによって、NO濃度は安定する。
微差圧センサによって検出された患者の呼吸と同調して、すなわち投与に同調して、吸気口201aからの空気の取り込み量が制御される。具体的には、投与時に空気の取り込み量を増やすことで、流路の圧力低下を緩和し、投与時間を短くすることができる。さらに、投与しないときは空気の取り込み量を減らし、還流量を上げることで、ガスの滞留時間を短くすることができる。その結果、NO2濃度の上昇を抑制することができる。還流量を上げるためには、バイパス流路217を開放するように、三方弁213及び三方弁216が切り替えられる。
以上より、微差圧センサによって検出された患者の呼吸と同調して、バイパス流路217の閉鎖又は開放が行われ、それに応じて、コンプレッサ214又は流量制御器202の制御、並びに、放電部205の制御が行われる。
カニューラ410の長さや中継投与装置の有無等に応じて、流路全体の容積が増加し、結果として、流路内でガスが滞留する時間が増加する。その結果、生成されたNOと酸素とが反応してNO2となることによって、NOの濃度が減少する可能性がある。これを補うために、NOの全体の生成量を増やすか、又は、流路内のガスの滞留時間を減らすように、制御される。特に、流路内のガスの滞留時間を減らすために、少なくとも放電部205からカニューラ410の出口までの間の流路の一部の流速を上げるか、好ましくは、流路全体の流速を上げて還流量が増加するように、コンプレッサ214の回転数を上げるか、又は、流量制御器202において還流時の空気取り込み量を減らし、非還流時すなわち投与時に空気の取り込み量を増やすように制御が行われる。これによって、流路全体の容積が増加しても、放電部205からカニューラ410の出口までのガスの滞留時間が一定に保たれるので、NOの生成量は、流路全体の容積増加前後で一定とすることができるというメリットがある。一方、還流量を増加させても滞留時間が増加する場合には、さらにNOの生成量を増やすことによって補うことができる。また、患者への投与量が増えた場合には、1回当たりの投与量を増やすか又は投与時のNO濃度を上げる。この場合、患者に投与されるNO2の量が増えないように、流路内のNO2の濃度が増加しないことが望ましい。そのため、流路内のガスの滞留時間を減らすように、上述したとおり、少なくとも放電部205からカニューラ410の出口までの間の流路の一部の流速を上げるか、好ましくは流路全体の流速を上げて還流量を増加させる。
要するに、流路全体の容積に応じたNOを生成するように放電部205による放電が行われる。また、流路全体の容積に応じたガスの滞留時間が決定される。また、患者への投与量に応じたガスの滞留時間が決定される。
図25は、さらに別の一酸化窒素投与装置25の概略図である。
一酸化窒素投与装置25は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200で生成されたNOは、NO供給口201bを介して供給される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された空気圧縮部としてのコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された圧力計215と、圧力計215の下流に配置された上述した放電部205と、放電部205の下流に配置された上述したNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置された上述したフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置された二方弁218と、二方弁218の下流に配置されたNO濃度計208と、NO濃度計208の下流に配置された微差圧センサ209と、を有している。二方弁は、その他の流量等が調整可能な調整弁に置き換えてもよい。
一酸化窒素投与装置25は、さらにNO2吸着部420を有している。NO2吸着部420の上流側は、延長チューブ430を介してNO供給口201bと接続され、NO2吸着部420の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。
一酸化窒素投与装置25の内部において流れるガスの流路、すなわち第2流路201の長さは通常一定であるが、一酸化窒素投与装置25の外部において流れるガスの流路の長さ、すなわち一酸化窒素投与装置に接続されたカニューラ、すなわち延長チューブ430を含むカニューラ410の長さは、一酸化窒素投与装置の使用環境等によって可変である。カニューラの長さが長ければ長いほど、NOと酸素とが反応する可能性のある時間が長くなることから、NO2の生成量も多くなる可能性がある。そのため、カニューラの長さも考慮した、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する方法について、以下説明する。
一酸化窒素投与装置25の制御部300は、酸素濃度と、NO濃度測定部であるNO濃度計208によって測定されたNO濃度と、NO2吸着部206から所定位置までの間のガスの滞留時間とに基づき、所定位置におけるNO及びNO2の濃度を推定する濃度推定部301を有している。
濃度を推定するために、以下の前提条件を設定する。まず、NO2吸着部206及びNO2吸着部420は、通過するガス中のNO2をすべて吸着する能力を有することとし、したがって通過直後のガス中のNO2の濃度をゼロとする。言い換えると、こうした十分な吸着能力を有するように、NO2吸着部206及びNO2吸着部420が設計されるか、又は、濃度推定部301がガス中のNO2の濃度をゼロとして推定を行う。このとき、NO2吸着部206及びNO2吸着部420の作用として、吸着されたNO2と等量のNOが、ガス中より減少する。
ガスの滞留時間の算出のため、一酸化窒素投与装置25の内部の容積等の流路仕様(特に、NO2吸着部206及びNO濃度計208間、並びに、NO2吸着部206及びNO供給口201b間)は、既知とする。連続流モードでは、滞留時間は、流路容積を流量で割ることによって求められる。同調流モードでは、流路容積を、1回の投与量に1分間又は単位時間当たりの呼吸数を掛けることによって得られる流量で割ることによって求められる。なお、連続流モード及び同調流モードにおいて、例えば、コンプレッサ214の運転状態、又は、圧力計215若しくは微差圧センサ209の出力値と、流量計の実測値との関係に基づくテーブルを予め作成し、それを参照し又は補正することによって、滞留時間を求めてもよい。
患者に投与されるNO2の許容値(限界値)を所定の値、例えば0.5ppm以下とする。さらに、放電部205によって生成されるNOは、非常に微量、例えば100ppmであり、放電時の主な副生成物であるNO2はNO生成量の10%程度である。よって、放電により空気からNOを生成する際に減少する酸素、及び、NOと反応することによってNO2を生成する際に減少する酸素は、非常に微量である。したがって、ガス中の酸素の濃度の変化は無視することができることから、酸素の濃度は、一般的に知られている大気中の酸素濃度の値、例えば21%とする。なお、酸素濃度測定部を配置して流路の少なくとも1か所で酸素濃度を測定し、その値を流路の任意の点における濃度として用いてもよい。
一酸化窒素投与装置25の使用時において、連続流モードでは、流量の履歴を保持しておく。一酸化窒素投与装置25の使用時において、患者の呼吸と同調させる同調流モードでは、1回投与量、投与時間、投与間隔(吸気待ち)時間の履歴を保持しておく。1回投与量は、二方弁218の開時間や圧力計215によって測定される圧力変動等から算出してもよい。また、一酸化窒素投与装置25は、流量計203を有していてもよく、この場合、1回投与量は、瞬時流量から算出してもよい。また、NO濃度計208にて測定されたNO濃度の履歴を保持しておく。
化学反応の反応速度式から、kを反応速度定数として、所定時間経過後、すなわちt分経過後のNOの濃度Yppmは、以下の式(1)によって算出される。同様に、所定時間経過後、すなわちt分経過後のNO2の濃度Xppmは、以下の式(2)によって算出される。なお、反応速度定数は、実験等によって予め求められる。
以上の条件及び式に基づき、時刻t=t5において、カニューラ410の出口を通過するガスGt5の、カニューラ410の出口におけるNO及びNO2の濃度を推定するステップについて説明する。
まず、流路仕様及び流量の履歴から、ガスGt5がNO2吸着部206から流出する時刻t1、ガスGt5がNO濃度計208から流出する時刻t2、ガスGt5がNO2吸着部420に流入する時刻t3、及び、ガスGt5がNO2吸着部420から流出する時刻t4、カニューラ410の出口を通過する時刻t5を算出する。具体的には、同調流モードで、現在時刻t=t5の場合、時刻t5までの直近の投与量の和を計算し、NO2吸着部206及びカニューラ410の出口間の容積に相当する投与回数N1を算出する。投与回数N1及び投与時間と投与間隔時間の履歴から、ガスGt5がNO2吸着部206から流出した時刻t1を算出する。同様にして、時刻t2~t4を求めることができる。他方、連続流モードの場合は、時刻tまでの直近の流量の積算値と、カニューラ410の出口と各点との間の容積とが一致する時刻から、時刻t1~t4を算出することができる。
現在時刻tにおいて、カニューラ410の出口に到達していないガスの場合、すなわち、現在時刻t<t5の場合、すでに通過した上流の各点及びこれから通過する各点の時刻を算出することができる。具体的には、同調流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、現在時刻tまでの投与量、投与時間、投与間隔時間の履歴及び現在の位置から、上流の各点までの容積に基づき求めることができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。他方、連続流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、時刻tまでの直近の流量の積算値と、現在位置と各点との間の容積とが一致する時刻として算出することができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。なお、上流の各点の時刻を計算する際、直近の投与量の和から実際に経過した時間を算出せず、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から上流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出してもよい。
次いで、酸素濃度(例えば、21%)と、保持されたNO濃度の履歴と、ガスGt5のNO2吸着部206及びNO濃度計208間の滞留時間(t2-t1)と、式(1)とから、時刻t1におけるガスGt5のNO濃度y1を、逆問題として推定する。
次いで、NO2吸着部206及びNO2吸着部420間の滞留時間(t3-t1)と、酸素濃度と、推定された時刻t1におけるガスGt5のNO濃度y1と、式(1)及び式(2)から、ガスGt5がNO2吸着部420に流入した時刻t3におけるNO濃度y3及びNO2濃度x3を、順問題として推定する。なお、NO濃度y3については、NO濃度計208及びNO2吸着部420間の滞留時間(t3-t2)、及び、保持されたNO濃度の履歴を用いて推定してもよい。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部420から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4を推定する。上述したように、NO2吸着部420では、ガスGt5中のNO2はすべて吸着されると共に、等量のNOが減少する。なお、NO2吸着部420の内部の通過に要する時間(t4-t3)が大きい場合には、例えば、通過直前のNO濃度y3と、酸素濃度と、通過に要する時間(t4-t3)と、式(2)とから通過中に生成されるNO2濃度を推定し、一部又は全部が吸着されるとしてもよい。同様に、通過中に生成し且つ吸着されたNO2と等量のNOが吸着されるとしてもよい。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部420から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4と、酸素濃度と、NO2吸着部420及びカニューラ410の出口間の滞留時間(t-t4)と、式(1)及び式(2)とから、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xを、順問題として推定する。
カニューラ410の出口での推定されたNO濃度y及びNO2濃度xに応じて、よりNO濃度yを大きくするか又は小さくするように放電部205における放電パラメータを変更したり、NO濃度y又はNO2濃度xの値に異常が生じた場合の停止など行うようにしたりしてもよい。連続流モードにおいては、処方量に合うように、例えば、コンプレッサ214の出力又は二方弁218の開度若しくは開時間を調整して、ガスの投与量を調整してもよい。同調流モードにおいては、処方量に合うように、ガスの1回投与量を調整してもよい。
一酸化窒素投与装置25において、NO2吸着部420を省略してもよい。また、一酸化窒素投与装置25は、連続流モードの場合には、圧力計215に代えて流量計を有していてもよく、二方弁218及び微差圧センサ209を省略してもよい。一酸化窒素投与装置25は、同調流モードの場合には、圧力計215に加えて流量計を有していてもよい。それによって、1回投与量の算出が容易となる。
図26は、さらに別の一酸化窒素投与装置26の概略図である。一酸化窒素投与装置26は、図25に示された一酸化窒素投与装置25と比較して、NO濃度計208に代えて、NO/NO2濃度計219を有している点においてのみ異なる。図25を参照しながら説明したように、カニューラの長さも考慮した、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する別の方法について、以下説明する。
濃度を推定するために、以下の前提条件を設定する。ガスの滞留時間の算出のため、一酸化窒素投与装置26の内部の容積等の流路仕様(特に、NO/NO2濃度計219及びNO供給口201b間)は、既知とする。また、患者に投与されるNO2の許容値(限界値)を所定の値、例えば0.5ppm以下とする。さらに、放電部205によって生成されるNOは、非常に微量、例えば100ppmであり、放電時の主な副生成物であるNO2はNO生成量の10%程度である。よって、放電により空気からNOを生成する際に減少する酸素、及び、NOと反応することによってNO2を生成する際に減少する酸素は、非常に微量である。したがって、ガス中の酸素の濃度の変化は無視することができることから、酸素の濃度は、一般的に知られている大気中の酸素濃度の値、例えば21%とする。なお、酸素濃度測定部を配置して流路の少なくとも1か所で酸素濃度を測定し、その値を流路の任意の点における濃度として用いてもよい。NO2吸着部206の吸着特性については、特に予め規定する必要はない。ただし、NO2吸着部420は、上述したように、通過するガス中のNO2をすべて吸着する能力を有する。
一酸化窒素投与装置26の使用時において、連続流モードでは、流量の履歴を保持しておく。一酸化窒素投与装置26の使用時において、患者の呼吸と同調させる同調流モードでは、1回投与量、投与時間、投与間隔(吸気待ち)時間の履歴を保持しておく。1回投与量は、二方弁218の開時間や圧力計215によって測定される圧力変動等から算出してもよい。また、一酸化窒素投与装置26は、流量計203を有していてもよく、この場合、1回投与量は、瞬時流量から算出してもよい。また、NO/NO2濃度計219にて測定されたNO濃度及びNO2濃度の履歴を保持しておく。
まず、流路仕様及び流量の履歴から、ガスGt5がNO/NO2濃度計219から流出する時刻t2、ガスGt5がNO2吸着部420に流入する時刻t3、及び、ガスGt5がNO2吸着部420から流出する時刻t4を算出する。具体的には、同調流モードで、現在時刻t=t5の場合、時刻t5までの直近の投与量の和を計算し、NO/NO2濃度計219及びカニューラ410の出口間の容積に相当する投与回数N2を算出する。投与回数N2及び投与時間と投与間隔時間の履歴から、ガスGt5がNO/NO2濃度計219から流出した時刻t2を算出する。同様にして、時刻t3及びt4を求めることができる。他方、連続流モードの場合は、時刻tまでの直近の流量の積算値と、カニューラ410の出口と各点との間の容積とが一致する時刻から、時刻t2~t4を算出することができる。
現在時刻tにおいて、カニューラ410の出口に到達していないガスの場合、すなわち、現在時刻t<t5の場合、すでに通過した上流の各点及びこれから通過する各点の時刻を算出することができる。具体的には、同調流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、現在時刻tまでの投与量、投与時間、投与間隔時間の履歴及び現在の位置から、上流の各点までの容積に基づき求めることができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。他方、連続流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、時刻tまでの直近の流量の積算値と、現在位置と各点との間の容積とが一致する時刻として算出することができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。なお、上流の各点の時刻を計算する際、直近の投与量の和から実際に経過した時間を算出せず、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から上流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出してもよい。
次いで、NO/NO2濃度計219及びNO2吸着部420間の滞留時間(t3-t2)と、酸素濃度(例えば、21%)と、時刻t2におけるガスGt5のNO濃度y2及びNO2濃度x2と、式(1)及び式(2)とから、ガスGt5がNO2吸着部420に流入する直後のNO濃度y3及びNO2濃度x3を、順問題として推定する。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部420から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4を推定する。上述したように、NO2吸着部420では、ガスGt5中のNO2はすべて吸着されると共に、等量のNOが減少する。なお、NO2吸着部420の内部の通過に要する時間(t4-t3)が大きい場合には、例えば、通過直前のNO濃度y3と、酸素濃度と、通過に要する時間(t4-t3)と、式(2)とから通過中に生成されるNO2濃度を推定し、一部又は全部が吸着されるとしてもよい。同様に、通過中に生成し且つ吸着されたNO2と等量のNOが吸着されるとしてもよい。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部420から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4と、酸素濃度と、NO2吸着部420及びカニューラ410の出口間の滞留時間(t-t4)と、式(1)及び式(2)とから、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xを、順問題として推定する。
カニューラ410の出口での推定されたNO濃度y及びNO2濃度xに応じて、よりNO濃度yを大きくするか又は小さくするように放電部205における放電パラメータを変更したり、NO濃度y又はNO2濃度xの値に異常が生じた場合の停止など行うようにしたりしてもよい。連続流モードにおいては、処方量に合うように、例えば、コンプレッサ214の出力又は二方弁218の開度若しくは開時間を調整して、ガスの投与量を調整してもよい。同調流モードにおいては、処方量に合うように、ガスの1回投与量を調整してもよい。
上述した図25及び図26に示された一酸化窒素投与装置によれば、NO及びNO2の濃度を推定することができるという共通の効果を奏する。また、カニューラ410の出口以外の所定位置においても、同様にNO及びNO2の濃度を推定することができる。また、例えば、制御部300の濃度推定部301は、接続されるカニューラ410、延長チューブ430及び配置されるNO2吸着部420等の構成要素を含む、NO供給口201bからカニューラ410の出口までの流路について、使用者に対してその流路仕様の入力を促し又は選択させるような入力インターフェースを有していてもよい。すなわち、濃度推定部301の入力インターフェースによれば、接続されるカニューラ410、延長チューブ430及び配置されるNO2吸着部420等の構成要素を含む、NO供給口201bとカニューラ410の出口との間の流路仕様に応じてガスの滞留時間を変化させることができる。
なお、NO供給口201bからカニューラ410の出口までの流路の流路仕様の入力を促し又は選択させる上記方法では、流路仕様の入力又は選択が適切になされないと濃度推定の精度が低下する。そのため、カニューラ410、延長チューブ430及び配置されるNO2吸着部420等の構成要素をNO供給口201bに接続した際に、接触センサ、磁気センサ、ICタグリーダー又はバーコードリーダー等のセンサ、スイッチ又はリーダー等を入力インターフェースとして、カニューラ410、延長チューブ430及び配置されるNO2吸着部420等の流路情報を、濃度推定部301に対して自動的に送信するようにしてもよい。また、接続されるカニューラ410、延長チューブ430又はNO2吸着部420の上流に、入力インターフェースとして圧力計を配置することにより、ガス流通時の流路の圧力、すなわち圧力損失から、接続されたカニューラ410、延長チューブ430及び配置されたNO2吸着部420等の構成要素の種類を自動で判別するようにしてもよい。すなわち、濃度推定部301は、使用されるカニューラ及び構成要素の種類等に応じた圧力損失のテーブルを有していてもよい。
図25及び図26に示された一酸化窒素投与装置において、NO2吸着部206を省略してもよい。それによって、メンテナンス対象となるNO2吸着部は、NO2吸着部420のみとなり、メンテナンスが容易となる。図25及び図26に示された一酸化窒素投与装置において、二方弁218及び微差圧センサ209を省略してもよい。また、図25に示された一酸化窒素投与装置25におけるNO濃度計208をNO2吸着部206の上流に配置してもよく、図26に示された一酸化窒素投与装置26におけるNO/NO2濃度計219をNO2吸着部206の上流に配置してもよい。
推定されたNO濃度に基づき、NOの生成量を制御してもよい。また、上述した実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する方法を、後述する中継投与装置に適用してもよい。すなわち、NO供給口201bとカニューラ410の出口との間に、推定されたNO濃度が予め定められた値よりも少ないとき流量を増やし、推定されたNO濃度が予め定められた値よりも多いとき流量が減らすように開度及び/又は開時間が調整されるように構成された調整弁、例えば二方弁を配置してもよい。調整弁によって、患者の吸気のときにNOが供給され、患者の呼気のときにNOの供給が停止されるようにしてもよい。調整弁の開時間が、患者の単位時間当たりの呼吸数が所定の値よりも少ない場合には多くなるように調整され、患者の単位時間当たりの呼吸数が所定の値よりも多い場合には少なくなるように調整されるようにしてもよい。図25及び図26に示された一酸化窒素投与装置は、酸素生成部100を有していないが、図1に示された一酸化窒素投与装置1等と同様に、酸素生成部100を有していてもよい。
図27は、さらに別の一酸化窒素投与装置27及び中継投与装置57の概略図である。図25及び図26に示された一酸化窒素投与装置では、カニューラの長さも考慮して、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定した。図27に示された一酸化窒素投与装置27及び中継投与装置57では、中継投与装置57を考慮した、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する。
一酸化窒素投与装置27は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された逆止弁204と、逆止弁204の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置されたコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された流量計203と、流量計203の下流に配置された放電部205と、放電部205の下流に配置されたバッファタンク210と、バッファタンク210の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置された圧力計215と、圧力計215の下流に配置されたNO/NO2濃度計219とを有している。
中継投与装置57の上流側は、延長チューブ430を介してNO供給口201bと接続され、中継投与装置57の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。中継投与装置57は、上流側接続端501a及び下流側接続端501bを備えた第3流路501と、第3流路501に配置され、上流側接続端501aを介して流入したガスの投与量を調整する投与量調整部500と、制御部600と、筐体700とを有している。
投与量調整部500で調整されたガスは、下流側接続端501bを介して供給される。投与量調整部500の各種動作は、制御部600によって制御される。一酸化窒素投与装置27の制御部300及び中継投与装置57の制御部600間には、有線又は無線によって通信経路610が確立されている。中継投与装置57は、図示しない電源ケーブルを介して電源に接続される。しかしながら、中継投与装置57が、筐体700に収納可能な電池を有し、それを電源としてもよい。なお、制御部600に代えて、一酸化窒素投与装置27及び中継投与装置57を電気的に接続し、投与量調整部500の各種動作が、制御部300によって制御されるようにしてもよい。
中継投与装置57は、第3流路501において、上流側接続端501aの下流に配置されたNO2吸着部502と、NO2吸着部502の下流に配置されたフィルタ503と、フィルタ503の下流の下流に配置された二方弁512と、二方弁512の下流に配置された微差圧センサ510とを有している。
中継投与装置57の制御部600は、酸素濃度と、NO濃度測定部である一酸化窒素投与装置27のNO/NO2濃度計219によって測定されたNO濃度と、NO2吸着部502から所定位置までの間のガスの滞留時間とに基づき、所定位置におけるNO及びNO2の濃度を推定する濃度推定部601を有している。
図27のNO/NO2濃度計219及びNO2吸着部502は、図26のNO/NO2濃度計219及びNO2吸着部420にそれぞれ相当する。したがって、図25及び図26を参照しながら説明した濃度の推定方法は、図27に示された一酸化窒素投与装置27及び中継投与装置57においてもそのまま適用できる。
まず、流路仕様及び流量の履歴から、ガスGt5がNO/NO2濃度計219から流出する時刻t2、ガスGt5がNO2吸着部502に流入する時刻t3、及び、ガスGt5がNO2吸着部502から流出する時刻t4を算出する。具体的には、同調流モードで、現在時刻t=t5の場合、時刻t5までの直近の投与量の和を計算し、NO/NO2濃度計219及びカニューラ410の出口間の容積に相当する投与回数N3を算出する。投与回数N3及び投与時間と投与間隔時間の履歴から、ガスGt5がNO/NO2濃度計219から流出した時刻t2を算出する。同様にして、時刻t3及びt4を求めることができる。他方、連続流モードの場合は、時刻tまでの直近の流量の積算値と、カニューラ410の出口と各点との間の容積とが一致する時刻から、時刻t2~t4を算出することができる。
現在時刻tにおいて、カニューラ410の出口に到達していないガスの場合、すなわち、現在時刻t<t5の場合、すでに通過した上流の各点及びこれから通過する各点の時刻を算出することができる。具体的には、同調流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、現在時刻tまでの投与量、投与時間、投与間隔時間の履歴及び現在の位置から、上流の各点までの容積に基づき求めることができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。他方、連続流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、時刻tまでの直近の流量の積算値と、現在位置と各点との間の容積とが一致する時刻として算出することができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。なお、上流の各点の時刻を計算する際、直近の投与量の和から実際に経過した時間を算出せず、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から上流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出してもよい。
次いで、NO/NO2濃度計219及びNO2吸着部502間の滞留時間(t3-t2)と、酸素濃度(例えば、21%)と、時刻t2におけるガスGt5のNO濃度y2及びNO2濃度x2と、式(1)及び式(2)とから、ガスGt5がNO2吸着部502に流入する直後のNO濃度y3及びNO2濃度x3を、順問題として推定する。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部502から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4を推定する。上述したように、NO2吸着部502では、ガスGt5中のNO2はすべて吸着されると共に、等量のNOが減少する。なお、NO2吸着部502の内部の通過に要する時間(t4-t3)が大きい場合には、例えば、通過直前のNO濃度y3と、酸素濃度と、通過に要する時間(t4-t3)と、式(2)とから通過中に生成されるNO2濃度を推定し、一部又は全部が吸着されるとしてもよい。同様に、通過中に生成し且つ吸着されたNO2と等量のNOが吸着されるとしてもよい。
次いで、ガスGt5がNO2吸着部502から流出した時刻t4におけるNO濃度y4及びNO2濃度x4と、酸素濃度と、NO2吸着部502及びカニューラ410の出口間の滞留時間(t-t4)と、式(1)及び式(2)とから、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xを、順問題として推定する。
カニューラ410の出口での推定されたNO濃度y及びNO2濃度xに応じて、よりNO濃度yを大きくするか又は小さくするように放電部205における放電パラメータを変更したり、NO濃度y又はNO2濃度xの値に異常が生じた場合の停止など行うようにしたりしてもよい。連続流モードにおいては、処方量に合うように、中継投与装置57の二方弁512の開度若しくは開時間を調整して、ガスの投与量を調整してもよい。
図28は、さらに別の一酸化窒素投与装置28及び中継投与装置58の概略図である。図27に示された一酸化窒素投与装置27では、中継投与装置57を考慮して、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定した。図28に示された一酸化窒素投与装置28及び中継投与装置58では、さらにバイパス流路を考慮して、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する。
一酸化窒素投与装置28は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置されたコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された流量計203と、流量計203の下流に配置された放電部205と、放電部205の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置された圧力計215とを有している。
中継投与装置58の上流側は、延長チューブ430を介してNO供給口201bと接続され、中継投与装置58の下流側は、カニューラ410の上流端に接続されている。中継投与装置58は、上流側接続端501a及び下流側接続端501bを備えた第3流路501と、第3流路501に配置され、上流側接続端501aを介して流入したガスの投与量を調整する投与量調整部500と、制御部600と、筐体700とを有している。
投与量調整部500で調整されたガスは、下流側接続端501bを介して供給される。投与量調整部500の各種動作は、制御部600によって制御される。一酸化窒素投与装置28の制御部300及び中継投与装置58の制御部600間には、有線又は無線によって通信経路610が確立されている。中継投与装置58は、図示しない電源ケーブルを介して電源に接続される。しかしながら、中継投与装置58が、筐体700に収納可能な電池を有し、それを電源としてもよい。なお、制御部600に代えて、一酸化窒素投与装置28及び中継投与装置58を電気的に接続し、投与量調整部500の各種動作が、制御部300によって制御されるようにしてもよい。
中継投与装置58は、第3流路501において、上流側接続端501aの下流に配置されたNO2吸着部502と、NO2吸着部502の下流に配置されたフィルタ503と、フィルタ503の下流の下流に配置された二方弁512と、二方弁512の下流に配置された微差圧センサ510とを有している。フィルタ503と二方弁512との間の第3流路501は、分岐点501dで分岐してバイパス上流側接続端501cまで延びている。中継投与装置58のバイパス上流側接続端501cは、バイパスチューブ520を介して、一酸化窒素投与装置28のバイパス下流側接続端201dに接続されている。
バイパス下流側接続端201dから延びるバイパス流路217において、バイパス下流側接続端201dの下流には圧力計215が配置され、圧力計215の下流には圧力制御器224が配置され、圧力制御器224の下流には圧力計215が配置され、圧力計215の下流にはNO/NO2濃度計219が配置され、NO/NO2濃度計219の下流には流量計225が配置され、流量計225の下流にはNO2吸着部206が配置され、NO2吸着部206の下流にはフィルタ207が配置されている。バイパス流路217は、フィルタ207の下流において、流量制御器202とコンプレッサ214との間の第2流路201に連通する。
中継投与装置58が、分岐した第3流路501において1つの二方弁512を有していることから、二方弁512の開閉に依らず、中継投与装置58のガスを一酸化窒素投与装置28に常に還流させることができる。
一酸化窒素投与装置28の制御部300は、酸素濃度と、NO濃度測定部であるNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度と、中継投与装置58のNO2吸着部502から所定位置までの間のガスの滞留時間とに基づき、所定位置におけるNO及びNO2の濃度を推定する濃度推定部301を有している。
図28のNO2吸着部502は、図26のNO2吸着部420に相当する。一方、図28のNO/NO2濃度計219は、バイパス流路217に配置されている点において、図26のNO/NO2濃度計219とは異なる。しかしながら、推定の経路が異なるものの、図25及び図26を参照しながら説明した濃度の推定方法は、図28に示された一酸化窒素投与装置28及び中継投与装置58においても適用できる。
まず、流路仕様及び流量の履歴から、ガスGt5が分岐点501dを通過する時刻t4’、及び、ガスGt5がバイパス流路217を通ってNO/NO2濃度計219から流出する時刻t6を算出する。具体的には、同調流モードで、現在時刻t=t5の場合、時刻t5までの直近の投与量の和を計算し、分岐点501d及びカニューラ410の出口間の容積に相当する投与回数N4を算出する。投与回数N4及び投与時間と投与間隔時間の履歴から、ガスGt5が分岐点501dを通過する時刻t4’を算出する。
現在時刻tにおいて、カニューラ410の出口に到達していないガスの場合、すなわち、現在時刻t<t5の場合、すでに通過した上流の各点及びこれから通過する各点の時刻を算出することができる。具体的には、同調流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、現在時刻tまでの投与量、投与時間、投与間隔時間の履歴及び現在の位置から、上流の各点までの容積に基づき求めることができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。他方、連続流モードでは、すでに通過した上流の各点の時刻は、上記時刻t=t5の場合と同様に、時刻tまでの直近の流量の積算値と、現在位置と各点との間の容積とが一致する時刻として算出することができる。これから通過する下流の各点及びカニューラ410の出口を流出する時刻t5については、例えば、所定時間内の平均流量を計算し、現在の位置から下流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出することができる。なお、上流の各点の時刻を計算する際、直近の投与量の和から実際に経過した時間を算出せず、所定時間内の投与時間、投与間隔時間及び投与量に基づき平均流量を計算し、現在の位置から上流の各点までの容積を平均流量で除すことによって算出してもよい。
次いで、時刻t4’において分岐点501dにあり、バイパス流路217側に流れたガスGt4’が、NO/NO2濃度計219を通過した時刻t6を求める。具体的には、バイパス流路217に配置された流量計255の時刻t4’までの流量の積算値と、分岐点501d及びNO/NO2濃度計219との間の容積とが一致する時刻をt6とする。なお、バイパス流路217の流量を、流量計203の流量から投与量を差し引くことによって推定してもよい。
次いで、NO/NO2濃度計219及び分岐点501d間の滞留時間(t6-t4’)と、酸素濃度(例えば、21%)と、時刻t6におけるガスGt4’のNO濃度y6及びNO2濃度x6と、式(1)及び式(2)とから、ガスGt4’が分岐点501dを通過する際のNO濃度y4’及びNO2濃度x4’を、逆問題として推定する。
次いで、ガスGt5が分岐点501dから流出した時刻t4’におけるNO濃度y4’及びNO2濃度x4’と、酸素濃度と、分岐点501d及びカニューラ410の出口間の滞留時間(t-t4’)と、式(1)及び式(2)とから、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xを、順問題として推定する。
ここで、時刻t5≧時刻t6の場合には、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xはほぼリアタイムで推定可能である。そのためには、分岐点501dからカニューラ410の出口までのガスGt5の滞留時間に対し、分岐点501dからNO/NO2濃度計219までのガスGt5の滞留時間が短くなるように、流路容積及び還流量を制御すればよい。
一方、時刻t5<時刻t6の場合には、カニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xは、時刻t=t6となるまで推定できない。このとき、例えばNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度がほぼ一定である場合には、流量計255の所定時間内の平均流量を計算し、現在の位置からNO/NO2濃度計219までの容積を平均流量で除すことによって、時刻t6を予測する。次いで、時刻t5においてNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度を、時刻t6においてNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度と仮定することによって、時刻t5のカニューラ410の出口におけるNO濃度y及びNO2濃度xを推定してもよい。他方、NO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度が変動している場合、所定時間内の濃度推移に対して近似式を求め、予測した時刻t6までの時間を積算することにより、時刻t6のNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度を仮定してもよい。
投与量については、第3流路501を所定の流量又は圧力に保った状態で、二方弁512の開時間を変化させた場合の投与量の変動を予め測定する。第3流路501を所定の流量又は圧力に保つように設計することで、二方弁512の開時間から投与量を推定することができる。また、所定時間内に流量計203を通過したガスの総流量から、対応する所定時間内に流量計225を通過したガスの総流量を差し引くことによって、投与量を求めてもよい。また、分岐点501dとカニューラ410の出口との間に流量計を設置することによって、投与量を直接的に測定してもよい。
バイパス流路217における流量については、バイパス流路217に配置された流量計225代えて、第2流路201に配置された流量計203の流量履歴から、投与量を差し引くことによって推定してもよい。
図29は、さらに別の一酸化窒素投与装置29の概略図である。一酸化窒素投与装置29では、バイパス流路217を考慮した、実際の投与点におけるNO及びNO2の濃度を推定する。
一酸化窒素投与装置29は、吸気口201a及びNO供給口201bを備えた第2流路201と、第2流路201に配置され、吸気口201aを介して流入した空気からNOを生成するNO生成部200と、制御部300と、筐体400とを有している。NO生成部200と制御部300とは、筐体400の内部に収容される。NO生成部200の各種動作は、制御部300によって制御される。
NO生成部200は、第2流路201において、吸気口201aの下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置されたコンプレッサ214と、コンプレッサ214の下流に配置された流量制御器202と、流量制御器202の下流に配置された流量計203と、流量計203の下流に配置された放電部205と、放電部205の下流に配置されたNO2吸着部206と、NO2吸着部206の下流に配置されたフィルタ207と、フィルタ207の下流に配置された圧力計215と、圧力計215の下流に配置された二方弁218と、二方弁218の下流に配置された微差圧センサ209とを有している。
圧力計215と二方弁218との間の第2流路201からは、バイパス流路217が分岐点201eで分岐し、バッファタンク210に接続されている。バイパス流路217において、バッファタンク210の下流には逆止弁204が配置され、逆止弁204の下流には圧力計215が配置され、圧力計215の下流には圧力制御器224が配置され、圧力制御器224の下流には圧力計215が配置され、圧力計215の下流にはNO/NO2濃度計219が配置され、NO/NO2濃度計219の下流には流量計225が配置され、流量計225の下流にはNO2吸着部206が配置され、NO2吸着部206の下流にはフィルタ207が配置されている。バイパス流路217は、フィルタ207の下流において、流量制御器202とコンプレッサ214との間の第2流路201に連通する。
一酸化窒素投与装置29が、二方弁512を有していることから、二方弁512の開閉に依らず、第2流路201とバイパス流路217とが常に連通し、一酸化窒素投与装置29内においてガスが還流する。
一酸化窒素投与装置29の制御部300は、酸素濃度と、NO濃度測定部であるNO/NO2濃度計219によって測定されたNO及びNO2の濃度と、NO2吸着部206から所定位置までの間のガスの滞留時間とに基づき、所定位置におけるNO及びNO2の濃度を推定する濃度推定部301を有している。
図29に示された一酸化窒素投与装置29は、中継投与装置を有さない点で図28に示された一酸化窒素投与装置28と異なるものの、パイパス流路を考慮する必要があるという点では同様である。したがって、図28を参照しながら説明した濃度の推定方法は、図29に示された一酸化窒素投与装置29においても適用できることから、説明を省略する。すなわち、ガスGt5が分岐点201eを通過する時刻を、図28を参照しながら説明した濃度の推定方法と同様に、時刻t4’とすればよい。
図28及び図29に記載の推定方法によれば、特に、同調流モードのような間欠流を供給する場合における流路中の圧力変動によるNO濃度測定部への影響を低減することができる。すなわち、図28及び図29では、NO濃度測定部が、第1NO2除去部の下流から第1NO2除去部の上流へと還流する流路に配置されている。また、二方弁によって、ガスは常に還流されていることから、結果として圧力変動が低減される。詳細には、バイパス流路217又はバイパスチューブ520がバッファタンクの役割を果たすことによって圧力変動が低減される。また、バイパス流路217又はバイパスチューブ520がバッファタンクの役割を果たすことによって、投与時の圧力低下が少なく、投与時間を短縮することができる。間欠流を供給する場合、NOの供給を停止している間、二方弁の上流側の流路内は高圧に維持される。図28及び図29に示された一酸化窒素投与装置及び中継投与装置では、NO濃度測定部を、分岐点201eの下流からコンプレッサ214の上流に至る間の流路に配置していることから、NOの供給を停止している間における、NO濃度測定部への圧力負荷を低減させることができる。さらに、NO濃度測定部の上流の流路に圧力制御器224を配置することによって、圧力負荷をさらに減らすことができる。
上述した一酸化窒素投与装置では、特に、ポンプ、減圧弁、バッファタンク、圧力計、流量計、リーク弁、調整弁、遮断弁等の各種構成及びその組み合わせについて例示したが、これら構成及びその組み合わせを、上述した効果及び目的のために、任意に追加又は省略してもよい。
上述した一酸化窒素投与装置は、NO又は濃縮酸素の供給における異常検知部を有し、異常を検知した際に、使用者に対して警告音等を発することによって異常を知らせるようにしてもよい。また、NO又は濃縮酸素のいずれか一方の供給量又は濃度に異常があった場合、他方の供給量又は濃度を調整するようにしてもよい。