JP7002816B2 - 三次元造形方法及び三次元造形装置 - Google Patents

三次元造形方法及び三次元造形装置 Download PDF

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Description

本発明は、所謂3Dプリンタ装置に使用される、三次元造形方法に関するものである。
近年、立体形状物の造形に用いられる三次元造形装置、所謂3Dプリンタ装置の利用、開発が盛んになっている。立体形状物を造形する方法は複数存在し、その1つに粉末床溶融結合方式が存在する。
粉末床溶融結合方式は、造形テーブル上に敷き詰められた粉末材料にレーザや電子ビームを照射し、選択的に材料を溶融結合させることで立体形状物を造形する方法である。
一般的に、粉末床溶融結合方式は以下のステップを行い、溶融結合された材料を積層することで、立体形状物を造形する。
ステップ1:造形テーブル上に粉末材料を敷き詰める。
ステップ2:粉末材料にレーザや電子ビームを照射し、選択的に溶融結合させ、第1層を造形する。
ステップ3:造形テーブルを所定量下降させ、既に造形テーブル上に存在する粉末材料と、ステップ2で造形された第1層を覆うよう、新たな粉末材料を供給する。
ステップ4:新たに供給された粉末材料にレーザや電子ビームを照射し、選択的に溶融結合させ、第1層の上に第2層を積層する。
ステップ5:ステップ3とステップ4を所定の回数繰り返し、所望する立体形状物を造形する。
以上のような粉末床溶融結合方式に関する技術として、特許文献1~3などが存在する。
特許文献1では、造形テーブルを水平方向に移動可能に構成することで、光ビームの照射領域よりも大きい立体形状物の造形を可能としている。
特許文献2では、第1線分に沿ってレーザ光を照射した後、第1線分に隣接した第2線分に沿ってレーザ光の照射を行うまでの冷却時間内に、第1線分から離れた線分に沿ってレーザ光の照射を行うことで、造形に要する時間を増大させることなく、造形物の品質を向上させている。
特許文献3では、粉末層を焼結するビームを、同一線上を通過せず、かつ交点を形成せずに連続する経路で走査させることで、造形効率を向上させている。
以上述べたような従来の三次元造形装置は、大型の立体形状物を短時間で造形すること主眼に置いたものが多く、微細な構造を有する立体形状物を精度良く造形する方法については、開発途上である。
特に、φ1mm未満の小さな穴を有する立体形状物や、φ1mm未満の円柱といった立体形状物は、従来の装置では造形途中で穴が埋まってしまう、造形途中で折れてしまうといった課題が存在する。
加えて、斜め方向への造形は従来の三次元造形装置が苦手とする造形として知られている。非特許文献1によると、造形テーブルに対する角度が45°を下回る部分を有する立体形状物の造形は、造形不良が発生しやすく、困難である。
特開2017-114011号公報 特開2016-74132号公報 特開2015-199197号公報
「~設計者・技術者のための~ 金属積層造形技術入門」技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構、p.102~103
本発明の課題は、従来の三次元造形方法と比較して微細な構造を有する立体形状物の造形が行え、斜め方向の造形も可能とする三次元造形方法を提供することにある。
本発明者は、粉末材料の溶融結合に用いられる光ビームが粉末材料に与えるエネルギー量の変化と、粉末材料の溶融結合状態の変化の関係を追及した結果、粉末材料の特性に応じた適切な光ビームを照射することで、従来の問題を解決した。
本発明の三次元造形方法では、以下の効果が期待できる。

・従来の造形では困難であった、極細の穴を有する立体形状物や、極細の立体形状物の造形が可能となる。

・従来の造形では困難であった、造形テーブルに対する角度が45°を下回る部分を有する立体形状物の造形が可能となる。
本発明を実施する、三次元造形装置の一例である。 光ビームを出力する際の、出力の時間変化の例である。 本発明における、光ビームの走査経路の平面図の一例である。 本発明の実施例に使用したSUS316粉末の粒子径分布である。 本発明によって造形される立体形状物の一例であり、極細の穴を多数有するものである。 本発明の実施例に使用したSUS420J2粉末の粒子径分布である。 本発明によって造形される立体形状物の一例であり、極細の円柱部を有するものである。 本発明によって造形される立体形状物の一例であり、水平方向に形成された大径の穴と極細の穴を有するものでる 図5に示した立体形状物が有する、極細の穴の拡大図である。 本発明によって造形される立体形状物の一例であり、造形テーブルに対して45°以下の斜め造形部を有するものである。
以下、図1を参照しながら、本発明について説明する。図1は本発明の三次元造形方法によって立体形状物の造形が行える、三次元造形装置の一例を示した模式図である。
図1に示した三次元造形装置1は、造形部6に存在する造形テーブル7上に保持された粉末材料11に、光ビーム2を選択的に照射し、立体形状物8を造形することを意図したものである。
光ビーム2は光源3から発生し、走査ミラー4によって造形テーブル7へと進行方向が変えられ、集光光学系5によって所定のビーム直径に調整され、造形テーブル7上に保持された粉末材料11に照射される。
走査ミラー4は、所望する立体形状物8に応じた走査経路に従って、造形テーブル7上に保持された粉末材料11に、光ビーム2が選択的に照射されるよう、光ビーム2を反射させる。
1層分の粉末材料11が光ビーム2によって溶融結合された後、造形テーブル7は所定量下降する。その後、材料供給手段12が造形部6に向かって移動することで、材料保持部9に存在する材料保持テーブル10上に保持された粉末材料11が、先の光ビーム照射で溶融結合した粉末材料11の表面を覆うよう、造形部6へ供給される。造形部6に供給された粉末材料11の表面は、材料供給手段によって平坦に均される。
造形部6に供給された粉末材料11に対して、新たに光ビーム2が選択的に照射され、先の光ビーム2の照射によって造形された層の上に、新たな層が積層される。材料保持テーブル10は次の材料供給に備えて所定量上昇する。
以上の動作を繰り返し、所望する立体形状物8を造形する。
給気手段13は、立体形状物8が安定して造形できるよう、三次元造形装置1内に窒素やアルゴンに代表される、不活性ガスを供給する。
排気手段14は、粉末材料11の蒸発ガスなど、造形中に発生した不要なガスを三次元造形装置1外に排気する。
本発明で特徴的なことは、粉末材料11の溶融結合に用いられる光ビーム2の、粉末材料11に対する照射面において、光ビーム2の直径が粉末材料11の平均粒子径の2倍未満となっていることである。
粉末材料11に照射された光ビーム2は、光ビーム2の中心から概ねビーム直径の半分の範囲に存在する粉末材料11を溶融結合する。このため、光ビーム2のビーム直径を粉末材料11の平均粒子径の2倍以下とすることで、必要最小限の粉末材料11のみを溶融結合させることができる。
必要最小限の粉末材料11のみを溶融結合させることで、溶融した粉末材料11による極細の穴の閉塞や、粉末材料11の再溶融に起因する強度低下、強度低下に伴う破損の発生頻度を低減でき、微細構造を有する立体形状物8の造形に対して好適に寄与する。
加えて、造形テーブル7の1層毎の下降量が、粉末材料11の平均粒子径に略等しいことが好ましい。
このようにすることで、立体形状物8の1層あたりの厚さ(層厚)が粉末材料11の平均粒子径に略等しくなり、1層分の溶融結合に必要な光ビーム2のエネルギー量を低く抑えることができる。
一般的に、立体形状物8の層厚が薄い方が、層厚が厚い場合と比べて1層分の溶融結合に必要な光ビーム2のエネルギー量が小さくなる。
加えて、必要最小限の粉末材料11のみを溶融結合させるには、粉末材料11に与えるエネルギー量が小さい方が好ましい。
このため、造形テーブル7の1層毎の移動量を粉末材料11の平均粒子径に略等しくすることで、1層分の溶融結合に必要な光ビーム2のエネルギー量が低く抑えられ、微細構造を有する立体形状物8の造形に対して好適に寄与する。
なお、平均粒子径に略等しい量は、厳密に平均粒子径に等しい値である必要はなく、使用する粉末材料11の粒子径分布を考慮の上決定された、平均粒子径に近い値であれば良い。具体的には、粉末材料11の粒子径分布を求め、分布のピークに対する半値幅の範囲内の値に設定すれば良い。
加えて、光ビーム2の粉末材料11に対する照射面におけるエネルギー密度が、粉末材料11の溶融結合に必要な最低エネルギー密度の3倍以下であることが好ましい。エネルギー密度をこのように設定することで、より安定して必要最小限の粉末材料11のみを溶融結合させることができ、微細構造を有する立体形状物8の造形に対して好適に寄与する。
エネルギー密度とは、安定した造形が行えるレーザ条件をパラメータ化したもので、単位面積当たりのエネルギー入力量(単位:J/mm)、もしくは単位体積当たりのエネルギー入力量(単位:J/mm)として表される。本発明におけるエネルギー密度は単位体積当たりのエネルギー入力量で評価する。
粉末床溶融結合方式に使用される代表的な粉末材料の溶融結合に必要な最低エネルギー密度は、非特許文献1によると、ステンレス鋼で50~70J/mm程度、ニッケル基合金で50~70J/mm程度である。より具体的な値は、実際に使用する粉末材料11の組成や平均粒子径によって決まる。
通常、三次元造形方法では、確実に粉末材料11を溶融結合させるよう、粉末材料の溶融結合に必要な最低エネルギー密度の数倍となるように光ビーム2のエネルギー密度を設定するが、本発明は、必要最小限の粉末材料11のみに光ビーム2を照射することを意図しているため、光ビーム2のエネルギー密度を低く設定することができる。
具体的には粉末材料11の溶融結合に必要な最低エネルギー密度の3倍以下のエネルギー密度であっても、粉末材料11の溶融結合を必要十分なレベルで行える。
本発明は、粉末材料11に与えるエネルギー量が小さい方が好ましいため、より好ましくは、粉末材料11の溶融結合に必要な最低エネルギー密度の2倍以下のエネルギー密度、さらに好ましくは粉末材料11の溶融結合に必要な最低エネルギー密度に略等しいエネルギー密度となるよう、光ビーム2のエネルギー密度を設定するのが良い。
さらに本発明では、光ビーム2の出力時に、光ビーム2の出力が所定の設定出力を超えることなく、設定出力に達するよう、光ビーム2を制御することが好ましい。
光源3から光ビーム2、特にレーザ光を出力する際、図2(a)に示すように、瞬間的に設定出力よりも高い光ビーム2が出力される現象が知られており、主に短時間で光ビーム2を設定出力まで立ち上げる際に発生しやすい。この現象はオーバーシュートと称される。
瞬間的に出力された高出力の光ビーム2が粉末材料11に照射されると、その高エネルギーによって粉末材料11が飛散、あるいは溶融する現象が発生することがある。粉末材料11に与えるエネルギー量が小さい方が好ましい本発明においては、瞬間的であっても高エネルギーの発生は抑制するのが好ましい。
光ビーム2の出力時に、オーバーシュートが発生しないよう光ビーム2を出力させることで、粉末材料11に意図しない高エネルギーが与えられてしまう事態を回避できる。
オーバーシュートを防ぐには、光ビーム2を出力する光源3の駆動回路に、オーバーシュート抑制機能を有するものを使用するなど、光源3に対するオーバーシュート抑制手段を適宜選択して使用すれば良い。
オーバーシュートが発生しないよう光ビーム2を出力させる際は、一般的には図2(b)に示すよう連続的に設定出力まで上昇させることが多いが、この出力方法のみに限定されず、図2(c)に示すように段階的に設定出力まで上昇させても良い。
加えて、本発明においては、造形時における光ビーム2の走査経路が、立体形状物8の輪郭部を除き、交点が形成されないよう設定されていることが好ましい。
造形時における光ビーム2の走査経路に交点が存在する場合、交点では光ビーム2が2回照射されることになる。同一箇所に光ビーム2が2回照射されることは、その部分に高エネルギーを与えることになる。
粉末材料11に与えるエネルギー量が小さい方が好ましい本発明においては、造形時における光ビーム2の走査経路を、交点が形成されないよう設定することで、より安定した微細構造を有する立体形状物8の造形が可能となる。
図3に、立体形状物8の輪郭部を除き、交点が形成されないよう設定した光ビーム2の走査経路の一例を示す。図3は造形テーブル7を真上から見た平面図であり、V-1~V-4が縦方向の走査経路、H-1~H-4が横方向の走査経路、O-1~O-6が輪郭部の走査経路である。図3は縦方向にV-1、V-2、V-3、V-4の順に光ビーム2を照射した後、横方向にH-1、H-2、H-3、H-4の順に光ビーム2を照射し、最後にO-1、O-2、O-3、O-4、O-5、O-6の順に輪郭部に対して光ビーム2を照射する場合を意図したものである。平行して隣り合う走査経路の間隔が走査ピッチとなる。
図3に示すように、本来なら縦方向の走査経路と横方向の走査経路が交わり、交点が形成される部分において、縦方向の走査時、横方向の走査時とも光ビーム2の照射が中断されるよう照射状態を制御することで、走査経路の交点が形成されないようにする。
この際、光ビーム2が照射されない微細な領域が存在することになるが、周辺の領域への光ビーム2の照射によって与えられたエネルギーが伝搬して、光ビーム2が照射されない微細な領域に存在する粉末材料11も溶融結合される。
本発明においては、図3における縦方向の走査経路と横方向の走査経路の交点が形成されないことを意図しており、縦方向の走査経路と輪郭部の走査経路によって形成される交点、横方向の走査経路と輪郭部の走査経路によって形成される交点、輪郭部の走査経路同士によって形成される交点は存在しても良いし、存在しないようにしても良い。図3はこれらの交点が存在する場合の図である。
図3において、輪郭部の走査経路O-1~O-6は、縦方向の走査経路、及び横方向の走査経路と比較して太く記載されているが、これは視覚的に、縦方向の走査経路、及び横方向の走査経路と区別するためであり、輪郭部の走査経路に照射される光ビーム2の条件は、縦方向の走査経路、及び横方向の走査経路に照射される光ビーム2の条件と原則同じである。
本発明における光ビーム2は、シングルモード光が好ましい。本発明は微細構造を有する立体形状物8の造形を行う関係上、粉末材料11に照射されるビーム直径が小さくなるように集光光学系5を構成し、光ビーム2の整形を行う必要がある。シングルモード光は原則として光のモード分散が発生せず、基本モードの光のみを整形すれば良いので、ビーム直径を小さくするのに好ましい光である。
光ビーム2をシングルモード光とするには、光源3としてYb添加シングルモードファイバレーザに代表される、ファイバレーザを使用するのが好ましい。ファイバレーザはビーム品質に優れる点においても、本発明において好ましく利用できる
また、本発明においては、光ビーム2の粉末材料11に対する照射面において、光ビーム2の強度分布が均一であることが好ましい。光ビーム2の強度分布が均一であることで、照射面において粉末材料11に均一にエネルギーが与えられ、立体形状物8の安定した造形に寄与する。
光ビーム2の強度分布の均一化は、集光光学系5に光ビームの均一化を目的とした各種の光学系を適用することで実施でき、所謂トップハット形状の強度分布が得られる光学系や、ガウシアン分布を有する光ビームをデフォーカスし、照射面において強度分布を均一化する光学系などを、適宜選択して使用すれば良い。
以上述べた三次元造形方法を実施できる三次元造形装置1を構成することで、従来困難であった微細造形や斜め造形が可能である。
本発明に使用する粉末材料11は、平均粒子径が1~100μm程度のものを想定しており、微細構造を有する立体形状物を造形する観点では、平均粒子径が1~50μm程度のものが特に好ましく利用できる。原則として、平均粒子径が小さい方が微細構造を有する立体形状物を造形する上で有利なため、所望する立体形状物に応じて平均粒子径が1μm以下の粉末材料を使用しても良い。
粉末材料11の平均粒子径は、JIS Z8825-1(2013年)に準じて測定された、体積基準のメジアン径(D50)を用いる。具体的な測定方法は以下の通りである。
・測定装置:株式会社堀場製作所製、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置「LA-920」

・測定条件の設定および測定データの解析:LA-920に付属の専用ソフトを使用

・測定溶媒:予め不純固形物などを除去した蒸留水
測定手順は、以下の通りである。
(1)フロー式セルホルダーをLA-920に取り付ける。

(2)所定量の蒸留水をフロー式セルに入れ、フロー式セルをフロー式セルホルダーにセットする。

(3)専用のスターラーチップを用いて、フロー式セル内を撹拌する。

(4)蒸留水の溶媒屈折率を1.333に設定する。粉末材料11の屈折率は、試料により設定を行う。

(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。

(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。

(7)粉末材料11を少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が75%~90%の範囲となるように調整する。

(8)粒子径分布の測定を行い、得られた体積基準の粒子径分布のデータを元に、体積基準のメジアン径(D50)を算出する。

粉末材料11はステンレス鋼、マルエージング鋼、ニッケル基合金、鉄、銅、チタン、アルミニウム、タングステンなどの金属粉末、ナイロン、ABS、ポリプロピレン、PTFE、PFA、ETFE、FEPなどに代表されるふっ素樹脂などの樹脂粉末、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック粉末を適宜選択して利用できる。
粉末材料11としてステンレス鋼や鉄を使用する場合、マルテンサイト系の材料とオーステナイト系の材料を選択することができるが、本発明ではマルテンサイト系の材料が好ましく使用できる。マルテンサイト系の材料は熱処理によって硬化する性質を持っているため、光ビーム2による熱処理を経て造形される立体形状物8の強度を高め、強度が弱くなりやすい微細構造の強度改善に寄与する。
本発明の方法を実施する三次元造形装置1は、ブレードに代表される各種の材料供給手段12によって粉末材料11の供給、粉末表面の平滑化を採用することが想定されるが、材料供給手段12の材料は造形する立体形状物8よりも柔軟な材料で構成することが好ましい。微細構造を有する立体形状物8は、一般的な立体形状物よりも強度面で弱いことが多い。材料供給手段12を造形された立体形状物8よりも柔軟な材料、例えばゴム材料などで構成することで、材料供給手段12による立体形状物8の破損を抑制できる。
本発明によって造形できる立体形状物の典型例を、実施例として示す。実施には図1の構成を有する三次元造形装置を使用した。
[実施例1]
第1の実施例として、垂直方向に極細の穴を多数有する立体形状物を造形した。
[使用材料]
使用する粉末材料は、平均粒子径が30μmと称されたSUS316粉末を使用した。この材料の溶融結合に必要なエネルギー密度は57J/mmである。
粉末材料の粒子径分布と実際の平均粒子径を、堀場製作所製、LA-920を使用し、先述した方法に従って測定した。測定の際、粉末材料11の屈折率は専用ソフト上で「Fe」に設定した。
図4に測定したSUS316粉末の粒子径分布を示す。実際の平均粒子径は26μm、粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲は16~41.5μmであった。
なお、図4上では粒子径が100μmを越える巨大な粒子も存在することになるが、これについては粒子径分布の測定時に複数の粒子が集合したものを1つの粒子として測定した値と推測され、実際にはこの大きさの粒子は存在しないものと考えられる。
また、仮に粒子径が100μmを越える粒子が存在したとしても、図4においてD90は49.5μmであったため、粒子径が49.5μmを越える粒子の出現頻度は粒子径が49.5μm以下の粒子と比べて小さく、立体形状物の造形に対する影響は無いものとみなすことができる。
[三次元図面データ作成]
3D-CAMソフトを使用し、造形する立体形状物に対応する三次元図面データを作成。造形する立体形状物は1辺が10mmの立方体とし、垂直方向にφ0.1の穴が0.2mmピッチで格子状に配列されたものとする。
続いて、作成した三次元図面データをスライスデータに変換した。スライスデータとは、三次元図面データを立体形状物の底面に平行な面に沿って複数に均等分割したものである。スライスデータは厚さ方向のパラメータを有し、スライスデータの厚さが、粉末床溶融結合方式による造形の層厚に相当する。すなわち、スライスデータは立体形状物の所定の層厚における断面形状を表すデータと言える。
実施例1では、スライスデータの厚さは30μmに設定した。
[造形ステージの移動量]
造形ステージの1層毎の下降量は、スライスデータの厚さに等しく、かつ使用するSUS316粉末の粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲内である30μmに設定した。
[光ビーム条件]
使用する光ビームは以下の条件に設定した。

・光源:日星電気製、500Wシングルモードファイバレーザ
・ビーム径:照射面において50μm
・ビーム出力:25.5W
[光ビーム走査条件]
光ビームは以下の条件で走査した。上述の光ビーム条件とこの走査条件により、粉末材料に与えられるエネルギー密度は57J/mmとなる。

・走査速度:370mm/s
・走査ピッチ:40μm
・走査経路:図2に示す走査経路を、造形する立体形状物の形状に対応する経路に調整した。
[不活性ガス]
造形時に三次元造形装置内へ供給する不活性ガスは窒素ガスとした。
[造形]
以上述べたデータ、条件を用いて三次元造形装置を動作させ、実施例1の立体形状物を造形した。
造形した立体形状物を図5に示す。造形結果を確認するために、垂直方向に形成されたφ0.1の穴に光を入射させて、反対面から目視で光の透過状況を確認したところ、全ての穴で光が透過しており、極細の穴を多数有する立体形状物を造形できた。
[実施例2]
第2の実施例として、極細の円柱を有する立体形状物を造形した。
[使用材料]
使用する粉末材料は平均粒子径が30μmと称されたSUS420J2粉末を使用した。この材料の溶融結合に必要なエネルギー密度は110J/mmである。
粉末材料の粒子径分布と実際の平均粒子径を、堀場製作所製、LA-920を使用し、先述した方法に従って測定した。測定の際、粉末材料11の屈折率は専用ソフト上で「Fe」に設定した。
図6に測定したSUS420J2粉末の粒子径分布を示す。
実際の平均粒子径は35μm、粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲は26~55μmであった。
また、図4と同様、図6上でも粒子径が100μmを越える巨大な粒子も存在することになるが、この現象については図4で発生したことと同じことが言え、図6においてD90は65.3μmであったため、粒子径が65.3μmを越える粒子の出現頻度は小さく、立体形状物の造形に対する影響は無いものとみなすことができる。
[三次元図面データ作成]
3D-CAMソフトを使用し、造形する立体形状物に対応する三次元図面データを作成。造形する立体形状物は台座上に、φ0.3mm、高さ20mmの円柱が、1mmピッチで30本×30本配列されたものとする。
続いて、作成した三次元図面データをスライスデータに変換した。実施例2では、スライスデータの厚さは30μmに設定した。
[造形ステージの移動量]
造形ステージの1層毎の下降量は、スライスデータの厚さに等しく、かつ使用するSUS420J2粉末の粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲内である30μmに設定した。
[光ビーム条件]
使用する光ビームは以下の条件に設定した

・光源:日星電気製、500Wシングルモードファイバレーザ
・ビーム径:照射面において50μm
・ビーム出力:50W
[光ビーム走査条件]
光ビームは以下の条件で走査した。上述の光ビーム条件とこの走査条件により、粉末材料に与えられるエネルギー密度は110J/mmとなる。

・走査速度:370mm/s
・走査ピッチ:40μm
・走査経路:図2に示す走査経路を、造形する立体形状物の形状に対応する経路に調整した。
[不活性ガス]
造形時に三次元造形装置内へ供給する不活性ガスは窒素ガスとした。
[造形]
以上述べたデータ、条件を用いて三次元造形装置を動作させ、実施例2の立体形状物を造形した。
造形した立体形状物を図7に示す。途中で折れてしまったり、円柱同士が溶融結合してしまったりすることなく、φ0.3mm、高さ20mmの円柱が計900本造形された。
[実施例3]
第3の実施例として、水平方向に穴が形成された立体形状物を造形した。
[使用材料]
使用する粉末材料は、実施例2と同じ、平均粒子径35μmのSUS420J2粉末を使用した。この材料の溶融結合に必要なエネルギー密度は110J/mmである。
[三次元図面データ作成]
3D-CAMソフトを使用し、造形する立体形状物に対応する三次元図面データを作成する。水平方向に形成される穴の径は、φ6、φ1、φ0.5の3種類とした。
φ1、φ0.5の穴は、従来の三次元造形装置では得るのが困難な極細の穴である。また、φ6の穴は、微細構造とは言えないが、極細の穴と同様、従来の三次元造形装置では得るのが困難な大径の穴であるため、本発明の適用によって造形可能となるか併せて確認したものである。
造形する立体形状物は、長さ8mm×幅5mm×高さ7mmの第1部分、長さ10mm×幅5mm×高さ2mmの第2部分が結合した略L字状の形状とし、幅方向に貫通するφ6の横穴を第1部分に、幅方向に貫通するφ1の横穴とφ0.5の横穴を第2部分に、それぞれ設けたものとした。
続いて、作成した三次元図面データをスライスデータに変換した。実施例3では、スライスデータの厚さは30μmに設定した。
[造形ステージの移動量]
造形ステージの1層毎の下降量は、スライスデータの厚さに等しく、かつ使用するSUS420J2粉末の粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲内である30μmに設定した。
[光ビーム条件]
使用する光ビームは以下の条件に設定した

・光源:日星電気製、500Wシングルモードファイバレーザ
・ビーム径:照射面において50μm
・ビーム出力:50W
[光ビーム走査条件]
光ビームは以下の条件で走査した。上述の光ビーム条件とこの走査条件により、粉末材料に与えられるエネルギー密度は110J/mmとなる。

・走査速度:370mm/s
・走査ピッチ:40μm
・走査経路:図2に示す走査経路を、造形する立体形状物の形状に対応する経路に調整した。
[不活性ガス]
造形時に三次元造形装置内へ供給する不活性ガスは窒素ガスとした。
[造形]
以上述べたデータ、条件を用いて三次元造形装置を動作させ、実施例3の立体形状物を造形した。
造形した立体形状物を図5に示す。各穴は造形時には水平方向に形成されるが、図8は撮影のため、穴が垂直方向になるよう立体形状物を配置している。大径の穴が形成されている部分については、穴の形状が崩れることなく立体形状物が造形された。
図9は、図8において右端に存在する、φ0.5の穴、すなわち極細の穴の拡大写真である。反対面から入射された光が透過しており、極細の穴が埋まることなく立体形状物が造形された。
[実施例4]
第4の実施例として、45°を大きく下回る、造形テーブルに対して15°の斜め方向に造形された部分を有する立体形状物を造形した。
[使用材料]
使用する粉末材料は、実施例2と同じ、平均粒子径35μmのSUS420J2粉末を使用した。この材料の溶融結合に必要なエネルギー密度は110J/mmである。
[三次元図面データ作成]
3D-CAMソフトを使用し、造形する立体形状物に対応する三次元図面データを作成する。造形する立体形状物は台座の中心から、φ0.5mmの棒が放射状に45本広がったものとした。垂直方向については、造形テーブルに対する角度が0°から90°まで、5°ピッチで棒が配置され、円周方向へは8°ピッチで棒が配置される構成とした。
続いて、作成した三次元図面データをスライスデータに変換した。実施例4では、スライスデータの厚さは30μmに設定した。
[造形ステージの移動量]
造形ステージの1層毎の下降量は、スライスデータの厚さに等しく、かつ使用するSUS420J2粉末の粒子径分布のピークに対する半値幅の範囲内である30μmに設定した。
[光ビーム条件]
使用する光ビームは以下の条件に設定した

・光源:日星電気製、500Wシングルモードファイバレーザ
・ビーム径:照射面において50μm
・ビーム出力:50W
[光ビーム走査条件]
光ビームは以下の条件で走査した。上述の光ビーム条件とこの走査条件により、粉末材料に与えられるエネルギー密度は110J/mmとなる。

・走査速度:370mm/s
・走査ピッチ:40μm
・走査経路:図2に示す走査経路を、造形する立体形状物の形状に対応する経路に調整した。
[不活性ガス]
造形時に三次元造形装置内へ供給する不活性ガスは窒素ガスとした。
[造形]
以上述べたデータ、条件を用いて三次元造形装置を動作させ、実施例4の立体形状物を造形した。
造形した立体形状物を図10に示す。造形テーブルに対する角度が45°を下回る棒が折れることなく造形されており、造形テーブルに対する角度が15°の棒も、特段の問題が発生することなく造形できた。
以上、本発明によって造形できる典型的な立体形状物を説明したが、造形される対象となる物品はこれらに限定されず、産業上利用される各種の物品の造形に利用できる。
本発明の三次元造形方法は上述の通り、産業上利用される各種の物品の造形に利用できる。一例として、微細な構造から得られる広い表面積を利用したヒートシンク、各種工業製品に使用される微細な部品や治具、キャラクターの人形、精密模型といった鑑賞用オブジェなどの造形に好適に利用できる。
1 三次元造形装置
2 光ビーム
3 光源装置
4 走査ミラー
5 集光光学系
6 造形部
7 造形テーブル
8 立体形状物(造形物)
9 材料保持部
10 材料保持テーブル
11 粉末材料
12 材料供給手段
13 給気手段
14 排気手段
V-1~V-4 縦方向の走査経路
H-1~H-4 横方向の走査経路
O-1~O-6 輪郭部の走査経路

Claims (8)

  1. 粉末材料に光ビームを選択的に照射された層を積層することで立体形状物を造形する、粉末床溶融結合方式を使用した三次元造形方法であって、
    該光ビームの該粉末材料に対する照射面における該光ビームの直径が、該粉末材料の平均粒子径の2 倍以下であるとともに、
    該立体形状物の造形時における該光ビームの走査経路は、複数の縦方向の走査経路と、該複数の縦方向の走査経路と交わる複数の横方向の走査経路を有し、
    該複数の縦方向の走査経路において該光ビームのそれぞれは同一方向に走査され、
    該複数の横方向の走査経路において該光ビームのそれぞれは同一方向に走査され、
    該立体形状物の輪郭部を除き、該複数の縦方向の走査経路と該複数の横方向の走査経路とが交わる点には該光ビームが照射されないことを特徴とする、三次元造形方法。
  2. 該立体形状物が造形される造形ステージは、該立体形状物の1層分が造形される度に、該粉末材料の平均粒子径に略等しい量、下降することを特徴とする、請求項1に記載の三次元造形方法。
  3. 該光ビームの該粉末材料に対する照射面におけるエネルギー密度が、該粉末材料の溶融結合に必要な最低エネルギー密度の3倍以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の三次元造形方法。
  4. 該光ビームの出力時に、該光ビームの出力が所定の設定出力を超えることなく、設定出力に達することを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の三次元造形方法。
  5. 該複数の縦方向の走査経路もしくは該複数の横方向の走査経路のうち、一方の走査経路に従った該光ビームの照射を終えた後、他方の走査経路に従った該光ビームの照射が行われることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の三次元造形方法。
  6. 該光ビームが、シングルモード光であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の三次元造形方法。
  7. 該粉末材料の平均粒子径が1~100μmであることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の三次元造形方法。
  8. 請求項1~7の何れか1項に記載の三次元造形方法を使用して立体形状物を造形する、三次元造形装置。
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