本発明とみなされる内容は、特に、本明細書に添付された特許請求の範囲において指摘され、はっきりと記載されている。本発明の上述の及び他の特徴および利点は、添付の図面と一緒に理解される下記の詳細な説明から明らかになる。添付の図面は概略的であり、縮尺どおりに描かれることは意図されない。図面において、図示した同一又はほとんど同一の各構成要素は、典型的には、単一の数字によって表される。明瞭さを目的として、当業者が本発明を理解できるようにするために図解が不要である場合には、すべての図のすべての構成要素にラベルが付与されるわけではなく、また、各実施形態のすべての構成要素が図示されるわけではない。
本明細書に開示されたものは、エネルギー貯蔵装置を含み、ある実施形態ではモジュール式信号インターフェース装置を含む、坑井内システムの様々な実施形態に関する。モジュール式信号インターフェース装置は、例えば、エネルギー貯蔵構成要素を制御するために使用されてもよい。ある実施形態において、モジュール式信号インターフェース装置は、データの記録及び/又は報告を行うことができる。エネルギー貯蔵装置及び/又はモジュール式信号インターフェース装置は、いくつかの実施形態では、高温で動作するように構成されてもよい。一部のシステムは電力システムであってもよい。システムは、以前に達成された坑井より大きな能力をユーザに提供する。そのようなシステムは、坑井内環境で使用する場合について具体的に示しているが、飛行機、自動車などのエンジン区画、又はエネルギー生成プラント/タービンのような、同様の環境が存在する任意の用途で使用されてもよい。しかしながら、坑井内電力システム及び使用方法のコンテキストを提供するために、いくつかの背景情報及び定義が提供される。
1. 定義
本明細書に開示された1つ又は複数の実施形態の坑井要素を導入するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び、「その(the)」は、1以上の構成要素が存在することを意味することを意図している。同様に、形容詞「もう1つの」は、ある構成要素を導入するために使用されるとき、1以上の構成要素を意味することを意図している。用語「含む(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」は、包括的であることを意図しており、リストされた構成要素以外の付加的な構成要素が存在してもよい。
語句「及び/又は」は、本明細書では慣行により、「及び」と「又は」のいずれかを別個の実施形態として記述するように使用される。例えば、A、B、及び/又はCをリストしたものにおいて、それは、A、B、及びCと、A、B、又はCとの両方を意味することが意図される。ここで、A、B、又はCのそれぞれは別個の実施形態とみなされ、リストにおけるそれぞれは単に便宜的に集められている。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、「又は」は、上で定義された「及び/又は」と同じ意味を有するように理解されるべきである。例えば、リストにおける品目を分離するとき、「又は」もしくは「及び/又は」は包括的である、すなわち、多数の構成要素又は構成要素リストのうちの少なくとも1つを含むが、1つよりも多くを含むこともあり、オプションで、リストされていない追加の品目を含む、と解釈されるものとする。そうではないと明確に示した用語、例えば、「…のうちのただ1つ」又は「…のうちのきっかり1つ」、又は、請求項で使用されたときの「…からなる」などの用語は、多数の構成要素又は構成要素リストのうちのきっかり1つを含むことを示す。概して、本明細書に使用された用語「又は」は、「いずれか」、「…のうちの1つ」、「…のうちのただ1つ」、又は「…のうちのきっかり1つ」のような排他的であることを示す用語が先にある場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であrが、両方ではない)を示すと解釈されるものとする。「本質的に…からなる」は、請求項で使用されたとき、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
用語「アルケニル」や「アルキニル」は当該技術分野において認識され、また、これらの用語は、同様の長さを有し、後述のアルキルに対する可能な置換を含むが、少なくとも1つの二重結合もしくは三重結合をそれぞれ含む飽和脂肪族基を意味する。
用語「アルキル」は当該技術分野において認識され、また、この用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及び、シクロアルキル置換されたアルキル基を含む、飽和脂肪族基を含んでもよい。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その主鎖において約20個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖ではC1-C20、分枝鎖ではC1-C20)。同様に、シクロアルキルは、それらの環状構造において約3~約10個の炭素原子を有し、代替として、環状構造において約5、6、又は7個の炭素を有する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含むが、これらに限定するものではない。
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、1つ又は複数の構成要素のリストに関して使用される語句「少なくとも1つ」は、構成要素のリストにおける構成要素のうちの任意の1つ又は複数から選ばれた少なくとも1つの構成要素を意味するように理解されるべきであるが、構成要素のリスト内に具体的にリストされた全構成要素それぞれのうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、また、構成要素のリスト中の構成要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義は、語句「少なくとも1つ」が表す構成要素のリスト内で具体的に識別される構成要素以外の構成要素が、それらの具体的に識別された構成要素に関連しているか無関係であるかにかかわらず、オプションで存在してもよいということを許容する。したがって、非限定的な例示として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は同義の「A又はBの少なくとも1つ」、又は同義の「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、例えば、ある実施形態では、Bを含まず(オプションでB以外の構成要素を含み)、オプションで1つよりも多数を含む少なくとも1つのAを表すことができ、もう1つの実施形態では、Aを含まず(オプションでA以外の構成要素を含み)、オプションで1つよりも多数を含む少なくとも1つのBを表すことができ、さらにもう1つの実施形態では、オプションで1つよりも多数を含む少なくとも1つのAと、オプションで1つよりも多数を含む少なくとも1つのB(オプションで他の構成要素を含む)とを表すことができる。
表現「逆起電力」は、当該技術分野において認識され、また、この用語は、回転子の速度及び位置に応じて変化する誘導電圧を示す。
本明細書で使用された用語「バッファ」は、本明細書で説明するシステム、例えば本明細書で説明する電力システムのコンテキストで使用されるとき、概して、上記システムの第1の入力又は出力の態様(例えば少なくとも1つ態様を)上記システムの第2の入力又は出力の1つの態様から分離することに関する。例示的な態様は、電圧、電流、電力、周波数、位相などを含む。本明細書で使用されるバッファリング、バッファ、電力バッファ、ソースバッファなどの用語は、概して、上で定義したバッファの概念に関連する。
本明細書で使用されるように、用語「セル」は、ウルトラキャパシタセルを示す。
本明細書で使用されているように、「クラッド」、「クラッディング」等の用語は、異種金属を互いに接合することを意味する。クラッディングはしばしば、ダイ(または金型)を通して2つの金属を押し出すこと、および高圧下でシートを一緒にプレスまたは圧延することにより達成される。レーザクラッディング等の他のプロセスを用いても良い。その結果は、複数の層からなる材料のシートであり、材料の複数の層は、材料が単一のシートとして作用できるように一緒に接合されている(例えば、均一な材料の単一のシートが形成されるように形成される)。
監修的には、「汚染物質」は、導入された場合にウルトラキャパシタ10の性能に悪影響を及ぼす可能性がある任意の望まれない材料として定義されてよいと考えてよい。また、本明細書において一般に、汚染物質は100万分の1(ppm)等の濃度で評価される可能性があることに注意する。当該濃度は、重量、体積、サンプル重量、もしくは適切であると認められる他の任意の方法により算出されてもよい。
本明細書で使用されるように、電源を参照した用語「制御」の使用は、概して、電源の性能を管理することに関する。しかしながら、いくつかの実施形態において、「制御」は、電源の性能のモニタリングを行うように解釈されてもよい。モニタリングは、例えば、さもないと、電源の使用の態様を制御する(例えば、有用な充電が消費されたことを充電状態が示す場合、電源を回収する)ために、有用である可能性がある。従って、用語「制御」、「制御する」などは、意図されているかさもなければ明示されている可能性があるそのような追加の解釈をカバーするように、広く解釈されるべきである。
用語「シアノ」には、当該技術分野における通常の意味が与えられ、官能基CNを示す。用語「硫酸塩」は、当該技術分野におけるその通常の意味が与えられ、SO2基を指す。用語「スルホン酸塩」には、当該技術分野における通常の意味が与えられ、官能基SO3Xを表す。ここで、Xは、電子対、水素、アルキル、シクロアルキルであってもよい。用語「カルボニル」は当該技術分野において認識され、C=O基を表す。
語句「坑井内状態」又は「坑井内環境」は、高温及び/又は衝撃及び振動を有する環境にさらされた機器によって経験される概略的な状態を記述するために本明細書で交換可能に使用されてもよい。ここで、高温は、例えば摂氏75度を超え、例えば摂氏100度を超え、例えば摂氏125度を超え、例えば摂氏150度を超え、例えば摂氏175度を超え、例えば摂氏200度を超える。衝撃及び振動は、例えば5Gを超え、例えば10Gを超え、例えば20Gを超え、例えば50Gを超え、例えば100Gを超える。
「エネルギー密度」は、ピーク装置電圧の2乗の半分に装置容量を乗算して、装置の質量もしくは体積で除算したものである。
本明細書において議論しているように、「密閉」とは、その性能(すなわち、漏れレート)が「atom-cc/秒」の単位で定義される封止(シール)を示す。これは、周囲の気圧及び温度において、1秒当たりに1立方センチメートルのガス(例えばHe)を意味する。これは、「標準He-cc/秒」の単位における表現と等価である。さらに、1atm-cc/秒は、1.01325ミリバール-リットル/秒と等しい。
用語「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、当該技術分野において認識され、1以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄等)である本明細書に記載のアルケニルおよびアルキニルアルキル基を指す。
用語「ヘテロアルキル」は、当該技術分野において認識され、1以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄等)である本明細書に記載されたアルキル基を示す。例えば、アルコキシ基(例えば、-OR)は、ヘテロアルキル基である。
用語「発見的」は、当該技術分野において認識され、概して、問題解決のための経験に基づく技術を表す。
慣行では、用語「内部抵抗」、「実効直列抵抗(effective series resistance)」、及び「ESR」、すなわち、装置の抵抗の態様を示すために当該技術分野において知られている用語は、本明細書で交換可能に使用される。
慣行では、用語「漏れ電流」は、概して、予め決められた時間期間の後に測定された、キャパシタによって流れた電流を示す。この測定は、キャパシタ端子が実質的に固定された電位差(端子電圧)に保持されているときに実行される。漏れ電流を評価する際、典型的な時間期間は72時間であるが、異なる期間を使用してもよい。従来技術に係るキャパシタの漏れ電流は、概して、エネルギー貯蔵媒体の体積及び表面積の増大と、それにともなうハウジングの内側表面積の増大とに応じて増大することに注意する。概して、増大する漏れ電流は、ウルトラキャパシタ10内の反応レートが徐々に増加することを示していると考えられる。漏れ電流の性能要件は、概して、特定の用途において広く行き渡っている環境状態により定義される。例えば、20ccの体積を有するウルトラキャパシタ10に関しては、漏れ電流の事実上のリミットは、200mA未満まで低下するであろう。
キャパシタの「寿命」もまた一般に、特定の用途によって定義され、典型的には、漏れ電流における所定割合の増加によって、または、容量もしくは内部抵抗などの(与えられた用途で適切であるか又は決定力がある)別のパラメータの劣化によって示される。例えば、一実施形態において、自動車用途におけるキャパシタの寿命は、漏れ電流がその初期(寿命の初期(beginning of life)または「BOL」)値の200%に増大した時間として定義されてよい。他の例においては、石油及びガスの用途におけるキャパシタの寿命は、次のいずれかが起こる時間として定義してもよい:容量がそのBOL値の50%まで低下するとき、内部抵抗がそのBOL値の200%まで増大するとき、リークがそのBOL値の200%まで増加するとき。慣行では、本明細書において使用されている装置の用語「耐久性」及び「信頼性」は、概して、前に定義した装置の寿命に関連する。
用語「モジュール式バス」は、本明細書では慣行により、各回路基板における基板トポロジー及びピン割り当てのプロトコルであって、電力のフローをサポートし、基板を接続する整列したスタッカにより他の回路及び/又は外部ハードウェアに通信する能力を与えるようなプロトコルについて記述するために使用される。
装置の「動作温度範囲」は、概して、あるレベルの性能が維持される温度範囲に関連し、概して、与えられた用途のために決定される。例えば、一実施形態では、石油及びガス用途の動作温度範囲は、装置の抵抗が、摂氏30度における当該装置の抵抗の約1000%未満であり、容量が摂氏30度における容量の約10%より大きいような温度範囲として定義される。
いくつかの例では、動作温度範囲の仕様は、有用な温度の下限を規定する一方、寿命の仕様は、有用な温度の上限を規定する。
用語「最適化」及び「最適化する」は、本明細書では、最適化を引き起こすものとして述べられている目的又は方法を適用しない場合のシステム又は性能と比較して、改善されたシステム又は性能に向かってシステム又は性能を変化させる過程を記述するために使用される。明確さのために、本明細書では、これらの用語を使用することで、最適値が達成されなければならないと提案することを意図せず、それ自体、最適化された範囲は改善のスペクトル上にあるということが理解されるべきである。
「ピーク電力密度」は、ピーク装置電圧の2乗の4分の1を当該装置の実効直列抵抗により除算し、さらに当該装置の質量もしくは体積により除算したものである。
本明細書で使用された用語「信号」は、所定時間にわたるエネルギー又はデータの転送を示す。
さらに、別途指定されない限り、用語「信号」は、所定時間にわたるエネルギー転送又は所定時間にわたるデータ転送のいずれかを意味するだろう。
本明細書で使用される用語「地下」は、地表下の環境又は同様の特性を有する環境を示す。
用語「1つのシステム」又は「複数のシステム」は、本明細書では、電力システム、データ記録及び/又は報告システム、又はそれらの組み合わせを含むように使用される。
本明細書で使用される用語「ウルトラキャパシタ」は、当該技術分野で認識される電解質二重層容量メカニズムを利用するエネルギー貯蔵装置を示す。
本明細書において述べているように、ウルトラキャパシタ10の「体積当たりの漏れ電流」は、概して、ウルトラキャパシタ10の体積で除算した漏れ電流を示し、例えば、mA/ccの単位で表されてもよい。同様に、ウルトラキャパシタ10の「体積当たりの容量」は、概して、ウルトラキャパシタ10の体積で除算したウルトラキャパシタ10の容量を示し、例えば、F/ccの単位で表されてもよい。例えば、さらに、ウルトラキャパシタ10の「体積当たりのESR」は、概して、ウルトラキャパシタ10のESRにウルトラキャパシタ10の体積を乗算したものを示し、Ohms・ccの単位で表されてもよい。
慣行として、本明細書において使用されている用語「てもよい(may)」は、オプションと解釈され、「含む(includes)」は、他のオプション(例えば、ステップ、材料、構成要素、組成等)を除外しないものと解釈され、「べきである(should)」は、要件を含意するものではなく、随時の、又は状況による選好を意味する。同様に、他の同じような用語が、一般的な慣行による方法で使用される。
本明細書において議論されているように、用語「適合されている(adapting)」、「構成されている(configuring)」、「組み立てる(constructing)、等は、意図された結果をもたらすため、本明細書において開示された任意の技術並びに他の同様の技術(現在知られているかもしくは後に考案されるもの)の適用を含むと考えられてもよい。
2.所定実施形態のアプリケーション
本明細書に開示されたシステムは、以下に概説されるような様々な非限定的な用途で使用されてもよい。
1)掘削中動作
a)掘削中
i)掘削中の測定(Measuring While Drilling:「MWD」)
ii)掘削中の検層(Logging While Drilling:「LWD」)
b)ワイヤーライン検層
i)電線
ii)メモリ検層
2)完成時動作
a)ワイヤーライン検層
i)電線
ii)メモリ検層
3)生産中動作
a)永続的検層
b)ワイヤーライン検層
i)電線
ii)メモリ検層
ここで図1を参照すると、ここでは、検層データを測定しながら、坑井101(「wellbore」又は「borehole」ともいう)を掘削するための装置の態様を示す。慣行により、坑井101の深さはZ軸に沿って記述され、横断面が、X軸及びY軸によって記述される平面上に示される。
この例では、坑井101は、掘削装置(図示せず)によって駆動されるドリルストリング111を用いて地中102へ掘削される。掘削装置は、とりわけ、回転エネルギー及び下方への力を提供する。坑井101は、概して、地表下物質を横切って進む。地表下物質は、様々な地層103(地層103A、103B、及び103Cとして示す)を含む可能性がある。当業者は、地表下環境で遭遇する可能性がある様々な地質学上の特徴が「地層」と呼ばれてもよく、また、坑井(すなわち「borehole」又は「downhole」)を下に進むときに存在する物質のアレイが「地表下物質」と呼ばれてもよいことを認識するだろう。すなわち、地層103は地表下物質から形成される。従って、本明細書で使用されるように、用語「地層」は概して地質学上の地層を示し、「地表下物質」は任意の物質を含むが、固体、流体、ガス、液体、などの物質を含んでもよいことは考慮されるべきである。
この例において、ドリルストリング111は、ドリルビット114を駆動する所定長さのドリルパイプ112を含む。ドリルビット114はまた、掘削泥水などの掘削流体104のフローを提供する。掘削流体104は、多くの場合、ドリルパイプ112を介してドリルビット114にポンプで注入され、ここで、流体は坑井101の中へ出ていく。これにより、坑井101内で、掘削流体104の上向きフローFが生じる。上向きフローFは、概して、ドリルストリング111及びその構成要素を冷却し、ドリルビット114からカッティングスを運び去り、加圧された炭化水素105の暴噴を防ぐ。
掘削流体104(「掘削泥水」とも呼ぶ)は、概して、環境に固有である可能性がある水、掘削流体、泥水、石油、ガス、及び地層流体のような液体の混合物を含む。掘削流体104は掘削動作のために導入される可能性があるが、掘削流体104の使用又は存在は、検層動作で必要とされるわけでもなく、必ずしも検層動作から除外されるわけでもない。概して、物質の層は、ドリルストリング111の外面と坑井101の壁との間に存在するだろう。この層は「スタンドオフ層」と呼ばれ、「スタンドオフS」と呼ばれる厚さを含む。
ドリルストリング111は、概して、掘削中測定(「MWD」)又は掘削中検層(「LWD」)を実行するための機器を含む。MWD又はLWDを行うことは、概して、ドリルストリング111に組み込まれ、掘削中に動作するように設計された検層装置100の動作を必要とする。概して、MWDを行うための検層装置100は、ドリルストリング111上に設けられた電子回路パッケージに接続される。従って、この電子回路パッケージは、「坑井内電子回路113」と呼ばれる。概して、坑井内電子回路113は、動作制御及びデータ分析の少なくとも一方を行う。多くの場合、検層装置100及び坑井内電子回路113は、地上機器107に接続される。地上機器107は、さらに動作を制御し、より大きな分析能力を提供し、及び/又はデータを記録することなどのために含まれていもよい。地上機器107への通信を通信チャネル(図示せず)により行ってもよく、通信チャネルはパルスマッド、有線パイプ、及び/又は当該技術分野において知られた他の技術を介して動作してもよい。
概して、MWD装置からのデータは、向上された能力をユーザに提供する。例えば、MWDの発展から利用可能になったデータは、ジオステアリング(すなわち、掘削処理の間においてドリルストリング111のステアリングを行うこと)への入力、などとして有用である可能性がある。
ここで図2を参照して、坑井101のワイヤーライン検層のための例示的な検層装置100を示す。慣行により、坑井101の深さはZ軸に沿って記述され、横断面が、X軸及びY軸によって記述される平面上に示される。検層装置100による検層前に、坑井101は、図1に示すような掘削装置を用いて、地中102へ向かって掘削される。
いくつかの実施形態において、坑井101は、少なくともある程度まで、掘削流体104で充填されている。掘削流体104(「掘削泥水」とも呼ぶ)は、概して、環境に固有である可能性がある水、掘削流体、泥水、石油、ガス、及び地層流体のような液体の混合物を含む。掘削流体104は掘削動作のために導入される可能性があるが、掘削流体104の使用又は存在は、ワイヤーライン検層中の検層動作で必要とされるわけでもなく、必ずしも当該検層動作から除外されるわけでもない。概して、物質の層は、検層装置101の外面と坑井101の壁との間に存在するだろう。この層は「スタンドオフ層」と呼ばれ、「スタンドオフS」と呼ばれる厚さを含む。
概して、検層装置100は、デリック106又は同様の機器によって展開されるワイヤーライン108を用いて、坑井101の中へ下ろされる。概して、ワイヤーライン108は、他の装置に加えて、荷重支持ケーブルのような懸架装置を含む。他の装置は、電源、通信リンク(有線又は光学など)、及び他のそのような機器を含んでもよい。概して、ワイヤーライン108は、サービストラック109又は他の同様の装置(サービスステーション、基地局など)から運搬される。多くの場合、ワイヤーライン108は地上機器107に接続される。地上機器107は、検層装置100へ電力を提供し、さらに、動作の制御及びデータの分析の少なくとも一方に計算及び処理能力を提供してもよい。
概して、検層装置100は電源115を含む。電源115は、坑井内電子回路113(すなわち電力消費装置)へ電力を適切に提供してもよい。概して、坑井内電子回路113は、測定値を提供し、及び/又は、サンプリングを実行し、及び/又は、炭化水素105の存在を発見し、確認し、定量化するために望まれる他の任意のシーケンスを行う。
モジュール式信号インターフェース装置及び関連した電力システムを含め、本発明は、以下の定義を参照して記載されている。便宜のため、定義を以下に説明している。他に特に規定がなければ、本明細書において用いられている次の用語は、以下のように定義する。
当業者は、本明細書に開示された装置、システム、及び方法が、抵抗、パルス中性子及びガンマ測定及びその他を含む核、核磁気共鳴映像法、音響、及び/又は地震測定、地層サンプリングツール、様々なサンプリングプロトコル、通信、データ処理及び記憶、ジオステアリング、回転ステアリングツール、加速度計、磁力計、センサ、トランスデューサ、ディジタル及び/又はアナログ装置など(以下で列挙されるものを含む)などをサポートする技術及び装置類とともに使用されてもよく、電力使用坑井の要件を有する他の無数のシステムとともに使用されてもよいことを認識するだろう。本明細書に開示された電力システムによって、他の多くの構成要素に電力が供給されてもよい。非限定的な例は、加速度計、磁力計、センサ、トランスデューサ、ディジタル及び/又はアナログ装置(以下で列挙されたものを含む)などを含む。他の例は、回転によりステアリング可能なツールを含む。他の例は、マッドパルステレメトリシステムのようなテレメトリ構成要素又はシステムを含む。マッドパルステレメトリシステムの非限定的な例は、回転マッドパルサー、ソレノイドで駆動されるマッドパルサー、及びモータで駆動されるマッドパルサーを含む。テレメトリシステムの他の非限定的な例は、EMテレメトリシステム、有線のテレメトリシステム、光ファイバーテレメトリシステム、及びその他同種のものを含む。
3. 電源
先の用途に適用可能な所定の実施形態によれば、本明細書に開示された装置、システム、及び方法は電源を含み、それはさまざまなエネルギー入力を含んでもよい。エネルギー入力は、概して3つのカテゴリ、すなわちバッテリー、遠隔システム、及び発電機に分類されてもよい。
いくつかの実施形態において、電源は一次バッテリーを含む。例示的なバッテリーは、過酷な環境中の動作に適合するものを含む。特定の例は、リチウムを有するものを含む、様々な化学バッテリーを含む。より特定の例は、塩化チオニルリチウム(Li-SOCl2)と、同様の技術及び/又は化学的性質に基づくバッテリーを含む。しかしながら、これらの技術のうちの一部は所望の温度定格を達成できない可能性があり、これらの技術のうちの一部は短期間のエネルギー貯蔵のみをサポートできる(すなわち、エネルギー貯蔵装置は、例えば、再充電可能でない構成要素を含んでもよく、又は、他の構成要素と比較して短縮された寿命を有するものを含んでもよい)ということが認識される。包含される可能性がある他の例示的なバッテリーは、リチウム塩化臭素を含み、また、リチウムスルフリルクロリド及び融解塩を含む。
電源は、遠隔の電源への少なくとも1つの接続を含んでもよい。すなわち、エネルギーは、ワイヤーライン経由のように、外部源を介して供給されてもよい。外部エネルギー源が坑井内環境によって制約を受けないならば、エネルギーを受けるための主要な関心事は、エネルギーを坑井に伝達する方法及び装置を含む。開示されたシステムへエネルギーを提供するための例示的な技術は、有線ケーシング、有線パイプ、コイル型チュービング、及び当該技術分野において既知である可能性がある他の技術を含む。
電源は少なくとも1つの発電機を含んでもよい。様々なタイプのエネルギー発生装置が、単独で、又は互いに組み合わせて使用されてもよい。例示的なタイプのエネルギー発電機は、以下に限定するわけではないが、回転発電機、電磁気的変位による発電機、磁歪の変位による発電機、圧電性変位による発電機、熱電発電機、熱光起電力発電機を含み、また、地上で保持された発電機又は電源へのワイヤーライン接続のような遠隔の発電機への接続を含んでもよい。他のタイプの発電機は、慣性エネルギー発電機、リニア慣性エネルギー発電機、回転慣性エネルギー発電機、又は振動エネルギー発電機を含む。
上述のように、他のタイプの発電機は、以下に限定するわけではないが、回転発電機、電磁気的変位による発電機、磁歪の変位による発電機、圧電性変位による発電機、熱電発電機、熱光起電力発電機を含み、また、地上で保持された発電機又は電源へのワイヤーライン接続のような遠隔の発電機への接続と、放射性同位体による電力発電機とを含んでもよい。
回転タイプの発電機は、例えば、流体(液体又はガス又は混合物)により引き起こされた回転、単一ステージの設計、マルチステージに依存する発電機を含んでもよく、余分であってもよい。
電磁気的変位型の発電は、例えば、ドリルストリングの振動(所望されたもの又は望ましくないもの)、音響的振動、地震振動、流動励起振動(例えば、泥、ガス、石油、水などから)に依存してもよく、往復運動に依存する発電を含んでもよい。
磁歪型の発電は磁歪に依存する。磁歪は強磁性体の特性であり、磁化の過程においてそれらの形状又は寸法を変化させる。磁歪材料は、磁気エネルギーを運動エネルギーに、又は逆に変換することができ、アクチュエータ及びセンサを構成するために使用される。電磁気的変位型の発電の場合のように、磁歪型の発電は、例えば、ドリルストリングの振動(所望されたもの又は望ましくないもの)、音響的振動、地震振動、流動励起振動(例えば、泥、ガス、石油、水などから)に依存してもよく、往復運動に依存する発電を含んでもよく、また、運動又は磁気エネルギーの形式で発電するか又は結果的にそれらの形式をもたらす他の技術を含んでもよい。
圧電型の発電は、圧電性特性を示す材料に依存する。圧電気は、加えられた機械的応力に応じて所定の固体材料(特に、水晶、所定のセラミック、など)に蓄積される電荷である。圧電型の発電は、例えば、ドリルストリングの振動(所望されたもの又は望ましくないもの)、音響的振動、地震振動、流動励起振動(例えば、泥、ガス、石油、水などから)に依存してもよく、往復運動に依存する発電を含んでもよく、また、機械的応力の形式で発電するか又は結果的にその形式をもたらす他の技術を含んでもよい。
圧電効果は、力学的エネルギーを電気的なエネルギーに変換するために利用することができる。例えば、圧電素子は、片持ちビームの形式で構成されてもよく、それによって、ビームの端部の運動は振動下のビームを曲げる。圧電素子もプラッタとして構成されてもよく、それによって振動はプラッタの中心に歪みを生じさせる。各構成において、機械的振動の影響を増大させるために、変化する質量の負荷が使用されてもよい。例えば、システムの機械的振動に起因するビームが受けたたわみのレベルを増大するために、片持ちビームの端部に所定質量が配置されてもよい。
いくつかの実施形態において、圧電発電機は、力学的エネルギーを電流に変換するためにそれぞれ提供される1つ乃至多数の圧電素子を含む。圧電発電機は、さらに、電流をエネルギー変換又は貯蔵電子回路に移すために1つ乃至多数の導電素子を含んでもよい。各圧電発電機は、エネルギー発生能力を向上させるために複数で構成されてもよい。機械的振動の様々なモードを取り込むために、圧電発電機は適切な方向に配置されてもよい。例えば、3次元の横振動を取り込むために、圧電発電機は、振動の各次元が少なくとも1組の圧電発電機によって取り込まれるように、互いに直交して配置されてもよい。
概して、圧電発電機は、1ワット以内の電力を発生するのに有用である。しかしながら、追加の電力を生成するために複数の発電機が使用されてもよい。一実施形態において、複数の圧電素子を所定時間に変形するように、単一の質量が構成されてもよい。
電磁気的発電機のように、圧電発電機は、与えられた固有周波数で動作する。機械的振動が圧電発電機の固有周波数で生じる場合、最大の電力が発生される。発生された電力の量を最大化するために、圧電発電機の固有周波数は、以前に議論されたように、導電材料への変化する負荷素子を含むことにより調整されてもよい。もう一つの実施形態において、所定範囲の振動周波数を取り込むために、異なる固定周波数に調整された複数の圧電発電機があってもよい。共振応答を低減しながら圧電発電機の実効取り込みスペクトルを広げるために、圧電素子に取り付けられた材料又は圧電素子を取り囲む流体の形式で減衰させることが使用されてもよい。
力学的エネルギー源が流体フローの形式を有する一実施形態では、回転に基づく圧電発電機が使用されてもよい。例えば、1つ乃至複数の圧電素子は、構造物の回転に起因して変形されてもよい。ある実施形態において、1つ乃至多数の圧電ビームは、回転するホイールに取り付けられた直交ピンによって曲げられてもよい。ホイールがその軸のまわりで回転するとき、ピンは、圧電素子と接触し、ホイールの回転に応じて素子の変形を引き起こす。もう一つの実施形態において、圧電素子は、可変な半径の回転物体に平行に隣接して配置されている。回転物体が回転するとき、圧電素子は、回転物体及び圧電素子の間の接点において、半径に依存する変化する程度まで圧縮される。この実施形態において、追加の電気エネルギーを発生するために回転物体に配置された圧電素子があってもよい。
熱電型の発電は、熱電特性を示す材料に依存する。熱電発電機は、概して、「ゼーベック効果」(又は「熱電効果」)と呼ばれる現象を用いて、熱流(温度差)を直接的に電気エネルギーに変換する。例示的な熱電発電機は、バイメタル接続(複数の材料の組み合わせ)に依存するしてもよく、又は、特定の熱電材料を利用してもよい。熱電材料の一例は、テルル化ビスマス(Bi2Te3)、すなわち、ミリメートル範囲の厚さを有しうるPN接合を有する半導体である。概して、熱電発電機はソリッドステート装置であり、可動部をもたない。
熱電発電機は、様々な温度勾配を利用するために設けられてもよい。例えば、パイプの内部及びの外部の温度差、ケーシングの内部及び外部の温度差、ドリルストリングに沿った温度差、(電気的及び/又は力学的エネルギーからの)ツール内の電力消費から生じる温度差)は、引き起こされた温度差を利用してもよい。
熱光起電力発電機は、光子を介する熱差から電気へのエネルギー変換を行う。簡単な形式では、熱光起電力システムは、熱放射器及び光起電力ダイオードセルを含む。熱放射器の温度はシステム間で変動するが、原則として、熱光起電力装置は、光起電力装置の温度よりも増大した温度を有する任意の放射器からエネルギーを抽出する(したがって、光学的熱機関を形成する)ことができる。放射器は、1個の固体材料又は特別に構成された構造物であってもよい。熱放射は、材料中の電荷の熱運動に起因する光子の自然放出である。坑井内環境において、周囲の温度は、大部分は近赤外線及び赤外線の周波数において、放射を引き起こす。光起電力ダイオードは、これらの放射された光子の一部を吸収し、それらを電子に変換することができる。
他の形式の発電が使用されてもよい。例えば、イオンを電流に変換するアイソトープ発電が電源に組み込まれてもよい。
上述のタイプの発電機をドリルストリングに組み込むために、さまざまな技術が使用されてもよい。例えば、断続的又は連続的な電力を電子回路に供給するために、圧電素子が設計へ包含されていてもよい。坑井内環境は、音響的、機械的、又は地震の発生源による、所望されたか望ましくない多量の振動に起因する、圧電発電のための多数の機会を提供する。
坑井内ドリルストリングには、振動の3つの主モード、すなわち、ドリルカラーのワーリング、ビットバウンス、及びカラースティックスリップがある。これらのモードのそれぞれは互いに結合することができ、これにより、横方向、ねじれ方向、及び軸方向の振動を引き起こす。
坑井内装置において、環境発電の可能性を提供する多数の場所がある。装置は、剛体のサポートにより直接的に接続されるか、可撓性の接続部により接続されたままにされるか、圧電素子以外の材料によって非接続のままにされた複数の別個のセクションから構成されいてもよい。可撓性の接続は、可撓性の膜で、又はピボット接続された剛体の構造物で構成されてもよい。
ねじれ方向の振動からエネルギーを取り込むために、圧電材料を、装置の長さに沿って垂直に配置することができる。装置のセクション間のねじれ応力は、圧電素子を変形させる可能性がある。発生された電流をエネルギー貯蔵又は変換装置に運ぶために、圧電素子に沿って導電材料を配置することができる。
もう一つの実施形態において、圧電材料は、軸方向の振動からエネルギーを発生するために利用可能である。例えば、圧電素子は、さもないと非接続のままにされる2つ以上のコンパートメント間に配置される可能性があり、又は接続された可撓性の接続である可能性がある。圧電素子の各端部は、軸方向の振動が圧電素子を圧縮又は伸長するように、軸方向及び接線方向に直交する装置の面に接続されてもよい。
もう一つの実施形態において、圧電材料は、横方向の振動からエネルギーを発生するために利用可能である。例えば、圧電素子は、さもないと非接続のままにされる2つ以上のコンパートメント間に配置されてもよく、又は可撓性の接続を介して接続されてもよい。圧電素子の端部は、接続する圧電素子を各コンパートメントの相対的な剪断移動が曲げるように、各コンパートメントの接平面である壁に取り付けられてもよい。
これらの実施形態のうちの1つ又は多数が、エネルギー発生を向上するために同じ装置へ包含されてもよい。
要するに、電源は、坑井内環境において電力を供給するように適合した可能性がある任意のタイプの発電機を利用してもよい。使用される発電のタイプは、システムユーザ、設計者、製造業者、又は他の当事者のニーズ又は選好に従って選択されてもよい。あるタイプの発電は、単独で使用されてもよく、又はもう一つのタイプの発電と共に使用されてもよい。
振動エネルギー発電機の場合におけるように、環境要因による効率を改善するために、他の形式の発電機の制御(すなわちチューニング)が行われてもよい、ということが注意されるべきである。各場合において、発電機の「チューニング」はこのタスクを達成するように設計されていることは考慮される。ある場合には、組み立て中にチューニングが行われる。いくつかの追加の実施形態において、チューニングは、電源の動作中において、リアルタイムで、又はほぼリアルタイムに基づいて行なわれる。
4.高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置
ある実施形態において、本明細書に開示された装置、システム及び方法は、高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(high temperature rechargeable energy storage:「HTRES」)を含んでもよい。HTRESは、坑井内条件で実用的である任意のタイプの技術を含んでもよい。ある実施形態において、HTRESは、摂氏75度を超える温度における動作のために構成され、例えば、摂氏約75度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約85度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約95度から摂氏約100度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約75度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約110度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約120度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約130度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約140度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約150度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約160度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約170度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約175度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度における動作のために構成される。
本明細書では、所定の例示的なタイプのHTRESの実施形態、特にウルトラキャパシタが開示される。そのような例示的なタイプのHTRESの開示は、本明細書に開示された実施形態の範囲を、そのような例示的なHTRESに限定しない。HTRESの追加の実施形態は、以下に限定するわけではないが、化学バッテリー、アルミニウム電解キャパシタ、タンタルキャパシタ、セラミック及び金属フィルムキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、磁気エネルギー貯蔵装置、例えば、空気コア又は高温コア材料のインダクタを含む。適切でありうる他のタイプのものは、例えば、フライホイール、バネシステム、バネ質量システム、質点システムなどの力学的エネルギー貯蔵装置、熱容量システム(例えば、高い熱容量の液体又は固体又は相変化材料に基づいくもの)、油圧又は空気圧システムを含む。一例は、米国ロードアイランド州プロビデンスのエヴァンスキャパシタカンパニー(Evans Capacitor Company)から入手可能な高温ハイブリッドキャパシタであり、例えば、最大で摂氏125度までの定格温度を有する部品番号HC2D060122 DSCC10004-16である。もう一つの例は、米国ロードアイランド州プロビデンスのエヴァンスキャパシタカンパニーから入手可能である、例えば、最大で摂氏200度までの定格温度を有する部品番号HC2D050152HTの高温タンタルキャパシタである。さらにもう1つの例は、ドイツ国ミュンヘンEPCOS AGから入手可能である、例えば、最大で摂氏150度までの温度定格を有する部品番号B41691A8107Qのアルミニウム電解キャパシタである。さらにもう1つの例示は、日本国大阪府のパナソニック株式会社から入手可能である、例えば、最大で摂氏150度までの温度定格を有する部品番号ETQ-P5M470YFM、又は、米国カリフォルニア州フラートンのBIテクノロジーズ(BI Technologies)から入手可能である、例えば、最大で摂氏185度までの温度定格を有する部品番号HM70-602R0LFの高温インダクタである。追加の実施形態は、フランス国バニョレのサフトS.A.(Saft S.A.)から入手可能である、例えば、30回の充放電サイクルで最大で摂氏125度までの温度定格を有する部品番号Li-ion VL 32600-125のバッテリーを含む。最大で摂氏約250度までの温度定格を有するもう一つの例示的なリチウムイオンバッテリは、米国マサチューセッツ州ウォルサムのソリッドエネルギーシステムズコーポレイション(SolidEnergy Systems Corp.)で実験フェーズにあり、特許文献1に記載され、これの全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
所定の実施形態において、HTRESは、図3~図9及び図11~図28を参照して下記に述べられる少なくとも1つのウルトラキャパシタを含む。
a.ウルトラキャパシタ
本明細書では、広範囲の温度において改善された性能をユーザに提供するために、スーパーキャパシタとしても知られたウルトラキャパシタが、本発明で使用するためにさらに開示される。そのようなウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵セル及び電解質系を備え、これらは密閉して封止されたハウジング内にあってもよい。エネルギー貯蔵セルは、正の接点及び負の接点に電気的に接続される。そのようなウルトラキャパシタは、摂氏約-40度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度において動作するように構成されてもよい。例えば、本発明で使用されるウルトラキャパシタは、改良型電解質系(advanced electrolyte system)を備えてもよく、摂氏約-40度の低温から摂氏約210度の高温までの温度範囲で動作可能であってもよい。そのようなキャパシタは、図3~図9及び図11~図28を参照して本明細書で説明される。
概して、本明細書に開示されたキャパシタは、従来の装置と比較して、高い信頼性、広い動作温度範囲、高い電力密度、及び高いエネルギー密度の組み合わせを提供するように適合した少なくとも1つのエネルギー貯蔵媒体を含む。キャパシタは、当該温度範囲を超える動作を確実なものとするように構成された構成要素を含み、既知の電解質系から、又は本明細書で開示した改良型電解質系から選択された電解質6を含む。本明細書で説明した構造、エネルギー貯蔵媒体、及び、改良型電解質系の組み合わせは極端な条件下で動作する、本発明で使用するための頑健なキャパシタに、既存のキャパシタを超える改良された特性と、より高い性能及び耐久性とを提供する。
従って、本発明は、以下のようなウルトラキャパシタを備えてもよい。ウルトラキャパシタは、密閉して封止されたハウジング内に、後述するエネルギー貯蔵セル及び改良型電解質系(「AES」)を備え、上記セルは、正の接点及び負の接点に電気的に接続され、上記ウルトラキャパシタは、摂氏約-40度から摂氏約210度まで、摂氏約-35度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約205度まで、摂氏約-30度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約200度まで、摂氏約-25度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約195度まで、摂氏約-20度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約190度まで、摂氏約-15度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約185度まで、摂氏約-10度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約180度まで、摂氏約-5度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約175度まで、摂氏約0度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約170度まで、摂氏約5度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約165度まで、摂氏約10度から摂氏約210度まで、摂氏約-40度から摂氏約160度まで、摂氏約15度から摂氏約210度まで、摂氏約40度から摂氏約155度まで、摂氏約20度から摂氏約210度まで、又は摂氏約-40度から摂氏約150度までの温度範囲内にある温度(「動作温度」)において動作するように構成される。
例えば、図3に、ウルトラキャパシタの例示的な実施形態を示す。この場合、ウルトラキャパシタ10は、電気二重層キャパシタ(electric double-layer capacitor:「EDLC」)である。ウルトラキャパシタ10は、いくつかの異なるフォームファクタにおいて具体化されていてもよい(すなわち、ある外形を示す)。潜在的に有用なフォームファクターの例としては、円柱状セル、環状もしくはリング状セル、平面角柱状セル、ボックス状セルを含む平面角柱状セルのスタック、湾曲した空間等の特定の幾何学的形状に合わせて形成された平面角柱状セルが含まれる。円柱状のフォームファクタは、円柱状のシステム、もしくは円柱状のフォームファクタに搭載されたシステム、もしくは円柱状のキャビティを有するシステムとともに使用する際に最も有用であろう。環状もしくはリング状のフォームファクタは、リング状であるシステム、もしくはリング状のフォームファクタに搭載されているシステム、もしくはリング状のキャビティを有するシステムとともに使用する際に最も有用であろう。平面角柱状のフォームファクタは、矩形形状であるシステム、もしくは矩形形状のフォームファクタに搭載されているシステム、もしくは矩形形状のキャビティを有するシステムとともに使用する際に有用であろう。
概して、本明細書では「ゼリーロール」アプリケーション(すなわち、円柱形状に形成されたハウジング7のために構成されている貯蔵セル12)に関して開示されているが、巻回された貯蔵セル23(図25を参照)は任意の所望の形状をとってもよい。例えば、貯蔵セル12を巻回することとは対照的に、巻回された貯蔵セル23を提供するために、貯蔵セル12の折り曲げるを実行してもよい。他のタイプのアセンブリを使用してもよい。一つの例として、貯蔵セル12は、コイン型、ポーチ型、もしくは角柱型のセルと称される平坦セルであってもよい。したがって、巻回することは、単に、巻回された貯蔵セル23のアセンブリのための一つの選択肢である。それゆえ、本明細書では「巻回された貯蔵セル23」であることについて議論しているが、これは限定するものではない。概して、用語「巻回された貯蔵セル23」は、貯蔵セル12をパッケージ化もしくはパック化して、与えられた設計のハウジング7内に良好にフィットさせるための任意の適切な形式が含まれると考えられてもよい。
様々な形式のウルトラキャパシタ10を一緒に組み合わせてもよい。接点を一体に溶接することなどの既知の技術を用いて、少なくとも1つの機械的コネクタを用いて、互いに電気的に接触するように接点を設置することで、様々なフォームを組み合わせてもよい。複数のウルトラキャパシタ10が、並列接続もしくは直列接続の少なくとも一方で電気的に接続されていてもよい。
本明細書に開示されるウルトラキャパシタ10は、約0.05ミリリットル(cc)から約7.5リットルまでの範囲の体積を有してもよい。
ここで、本明細書に開示されたウルトラキャパシタの構成要素について議論する。
i.電解質系
図3を参照すると、電解質6は、カチオン9及びアニオン11のペアを含み、さらに溶媒を含んでよい。電解質6は、電極3及びセパレータ5内のボイド空間と、それらの間のボイド空間とを充填する。電解質6の中にあるイオン、具体的にはカチオン9及びアニオン11は、電極3にわたって電位が印加されたとき、二重の電気二重層を形成し、カチオン9は負極3(a)に関連付けられ、アニオン11は正極3(b)に関連付けられる。概して、本明細書に開示された電解質系は、特有の電解質、精製された改良された電解質、もしくはこれらの組み合わせを含み、電解質6は、例えば、1以上の塩もしくはイオン液体を含む物質であり、電荷を帯びたイオン(例えば、正の電荷を帯びたカチオン及び負の電荷を帯びたアニオン)に分離し、また、溶媒を含んでもよい。本明細書に開示した電解質系において、そのような電解質成分は、ある性能及び耐久性を向上させることに基づいて選択され、1以上の溶媒と組み合わされてもよい。溶媒は、物質を溶解して、新規かつ有用な電気化学的安定性及び性能を備える組成物を生成する。
所定の実施形態において、電解質6は、イオン液体、すなわち、ウルトラキャパシタ10の動作温度において液体であるイオン化合物であってもよい。それらの実施形態において、電解質6は、イオン液体と混合された溶媒をさらに含んでもよい。所定の実施形態において、電解質6は、ウルトラキャパシタ10の動作温度において固体であるイオン化合物と、イオン化合物を溶かす溶媒とを含んでもよい。
カチオン9、アニオン11、及び溶媒の様々な組み合わせが使用されてもよい。ウルトラキャパシタ10のある実施形態では、カチオン9は、1-(3-シアノプロピル)-3-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-シアノプロピル)イミダゾリウム、1,3-ジエトキシイミダゾリウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルピリジニウム、およびこれらの組み合わせ、ならびに適切であると考えられる他の同等物の少なくとも1つを含んでよい。追加の例示的なカチオン9は、図4に示す構造の種類に含まれるカチオン、例えば、イミダゾリウム、ピラジニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、アンモニウム、オキサゾリウム、ホスホニウム、ピラディジニウム(pyradizinium)、スルホニウム、チアゾリウム、トリアゾリウム、グアニジウム、イソキノリニウム、ベンゾトリアゾリウム、又はビオロゲン型のカチオンを含む。例示的なウルトラキャパシタ10において、アニオン11は、ビス(トリフルオロメタンスルホナート)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)メチド、ジシアナミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロメタンスルホナート、ビス(ペンタフルオロエタンスルホナート)イミド、チオシアナート、トリフルオロ(トリフルオロメチル)ボラート、およびこれらの組み合わせ、ならびに適切であると考えられる他の同等物の少なくとも1つを含んでよい。
溶媒は、アセトニトリル、アミド、ベンゾニトリル、ブチロラクトン、環状エーテル、ジブチルカルボナート、ジエチルカルボナート、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメチルカルボナート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホン、ジオキサン、ジオキソラン、ギ酸エチル、エチレンカルボナート、エチルメチルカルボナート、ラクトン、直鎖状エーテル、ギ酸メチル、メチルプロピオナート、メチルテトラヒドロフラン、ニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、n-メチルピロリドン、プロピレンカルボナート、スルホラン、スルホン、テトラヒドロフラン、テトラメチレンスルホン、チオフェン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、ニトリル、トリシアノヘキサン、これらの任意の組み合わせ、又は適切な性能特性を示す他の1または複数の材料を含んでよい。
ここで図4を参照すると、電解質6をもたらすためにイオン液体での使用に適したカチオン9の種々の追加の実施形態が示される。これらのカチオン9は、単独で用いてよく、または互いに組み合わせて用いてよく、カチオン9の上述の実施形態の少なくともいくつかと組み合わせて用いてよく、ユーザ、設計者、製造者、または他の同様の当事者が適合的又は適切であると判断する他のカチオン9と組み合わせて用いてもよい。図4に表したカチオン9は、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、ホスホニウム、ピペリジニウム、ピラジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、スルホニウム、チアゾリウム、トリアゾリウム、グアニジウム、イソキノリニウム、ベンゾトリアゾリウム、ビオロゲン型、および官能基化イミダゾリウムのカチオンを含むが、これらに限定されない。
図4に示すカチオン9に関して、様々な置換基(例えばR1、R2、R3、…Rx)が含まれている。カチオン9の場合において、各置換基(Rx)は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、サルフェート、スルホナート、またはカルボニル基の1つであってよい。先の置換基(Rx)のうちの任意のものがオプションで置換されてもよい。
概して、負電荷を有する任意のイオンは、アニオン11として使用されてもよい。選択されるアニオン11は、概して、大きな有機カチオン9とペアになって、低温溶融イオン塩を生成する。常温(およびそれより低い温度)溶融塩は、主に、-1の電荷を有する大きいアニオン9によってもたらされる。より一層低温で溶融する塩は、概して、容易に非局在化する電子を有するアニオン11と共に実現される。イオン間の親和力を低下させるであろうもの(電荷の距離、非局在化)はすべて、その後、融点を低下させる。可能なアニオンの構成は実質的に無限であるが、これらの部分集合のみが低温イオン液体の用途において機能するだろう。これは、イオン液体に係る可能なアニオン生成の非限定的な概説である。
表1に提示されるアニオン11の使用に適した共通の置換基(α)として以下のものが挙げられる:-F-,-Cl-,-Br-、-I-、-OCH3
-、-CN-、-SCN-、-C2H3O2
-、-ClO-、-ClO2
-、-ClO3
-、-ClO4
-、-NCO-、-NCS-、-NCSe-、-NCN-、-OCH(CH3)2
-、-CH2OCH3
-、-COOH-、-OH-、-SOCH3
-、-SO2CH3
-、-SOCH3
-、-SO2CF3
-、-SO3H-、-SO3CF3
-、-O(CF3)2C2(CF3)2O-、-CF3
-、-CHF2
-、-CH2F-、-CH3
-、-NO3
-、-NO2
-、-SO3
-、-SO4
2-、-SF5
-,-CB11H12
-、-CB11H6Cl6
-、-CH3CB11H11
-、-C2H5CB11H11
-、-A-PO4
-、-A-SO2
-、A-SO3
-、-A-SO3H-、-A-COO-、-A-CO-。ここで、Aは、フェニル基(フェニル基又はフェニル環は、化学式C6H5を有する原子の環状基である)又は置換されたフェニル基、アルキル(アルカンから水素原子を除去することで形成されて、一般式CnH2n+1を有するラジカル)又は置換されたアルキル基、負の電荷を有するラジカルアルカン(アルカンは、水素原子及び炭素原子からのみなり、単結合のみによって結合される化合物である)、ハロゲン化されたアルカン、及びエーテル(2つのアルキル基又はアリール基に接続された酸素原子を含んでいる有機化合物のクラス)である。
電解質6をもたらすイオン液体において用いるのに適したアニオン11に関して、種々の有機アニオン11を用いてよい。表1に、例示的なアニオン11及びその構造を示す。第1の実施形態(No.1)において、例示的なアニオン11は、上で提示した置換基(α)のリストまたはこれらの同等物から定式化される。追加の実施形態(No.2~5)において、例示的なアニオン11は、各塩基構造(Y2、Y3、Y4、…Yn)と各多数のアニオン置換基(α1、α2、α3、…αn)とから定式化され、各多数のアニオン置換基(α)は、上で提示した置換基(α)のリストまたはこれらの同等物から選択されてよい。いくつかの実施形態において、複数のアニオン置換基(α)(即ち少なくとも1つの異なるアニオン置換基(α))を、アニオン11の任意の一の実施形態において用いてよいことに留意されたい。また、いくつかの実施形態において、塩基構造(Y)は単一の原子または(表1に記載の)指定された分子であり、またはその同等物であってよいことに留意されたい。
より具体的に、また、例示として、表1に提示される例示的なアニオンに関して、所定の組み合わせが実現されてよい。一例として、No.2の場合、塩基構造(Y2)は、2つのアニオン置換基(α2)に結合された単一の構造(例えば原子または分子)を含む。2つの同一のアニオン置換基(α2)を有するように示しているが、この通りである必要はない。即ち、塩基構造(Y2)は、上で列挙したアニオン置換基(α)のいずれか等の様々なアニオン置換基(α2)に結合されてよい。同様に、塩基構造(Y3)は、No.3の場合に示すように、3つのアニオン置換基(α3)に結合される単一構造(例えば原子)を含む。重ねて、アニオンに含まれるアニオン置換基(α)の各々は、種々様々であってよく、表1に示すように繰り返される(反復的または対称的である)必要はない。一般に、表1における表記に関連して、一の塩基構造における下付文字は、各塩基構造がアニオン置換基(α)と共に有してよい結合の個数を意味する。即ち、各塩基構造(Yn)における下付文字は、各アニオンにおける付随するアニオン置換基(αn)の個数を意味する。
1.改良型電解質系(AES)
所定の実施形態において、ウルトラキャパシタ10は、図3に示す電解質6として改良型電解質系(advanced electrolyte system:「AES」)を備える。本明細書に開示されたAESは、上述の電解質系の特性の多くを共有する。本明細書に開示されたAESは、既存のエネルギー貯蔵装置(例えば、本明細書に開示されたものではない電解質を含むエネルギー貯蔵装置、もしくは、不十分な純度を有する電解質を含むエネルギー貯蔵装置)に比較して、本明細書に開示されたウルトラキャパシタに特有且つ明確に区別できる利点を提供する。これらの利点は、性能及び耐久性特性の両方における改善を含み、たとえば、以下のものの1つ以上を含む:減少した合計抵抗、増大した抵抗の長期安定性(例えば、与えられた温度における所定時間にわたる材料の抵抗増加量の減少)、増大した合計容量、増加した容量の長期安定性(例えば、与えられた温度における所定時間にわたるウルトラキャパシタの容量低下量の減少)、増大したエネルギー密度(例えば、より高い電圧をサポートすることによる、及び/又は、より大きな容量をもたらすことによる)、増大した電圧安定性、減少した気圧、それぞれのキャパシタについての拡大した温度範囲性能(例えば、2つの温度間で遷移する場合、容量の有意な減少及び/又はESRの有意な増大が生じないこと、及び/又は、摂氏約+30度から摂氏約-40度に遷移する場合、90%を越える容量減少及び/又は1000%を越えるESR増大が生じないこと)、それぞれのキャパシタについての増大した温度耐性(例えば、与えられた時間後の与えられた温度において50%未満の容量低下、与えられた時間後の与えられた温度において100%未満のESR増大、与えられた時間後の与えられた温度において10A/L未満の漏れ電流、40%未満の容量減少及び/又は75%未満のESR増大、5A/L未満の漏れ電流、30%未満の容量減少及び/又は50%未満のESR増大、及び/又は、1A/L未満の漏れ電流)、向上した製造容易性(例えば、減少した気圧を有し、従って、より良好な歩どまり、及び/又は、キャパシタを電解質で充填するより効率的な方法を有すること)、及び、改善された費用効果(例えば、他の材料ほど高価でない材料でボイド空間を充填することによる)。明確さのため、性能特性は、装置の所与の使用時であって、同様の所与の使用時における材料間の比較に適した使用時における装置の有用性に係る特性に関する。一方、耐久特性は、そのような特性を一定時間にわたって維持する能力に係る特性に関する。上記の性能及び耐久性の例は、本明細書で考慮される「性能もしくは耐久性における有意な変化」が何であるかについての文脈を提示するのに役立つはずである。
AESの特性は、容量の増大、等価直列抵抗(equivalent-series-resistance:ESR)の減少、高い熱的安定性、低いガラス転位温度(Tg)、改善された粘性、特定のレオペクシー特性もしくはチキソトロピー特性(例えば、温度に依存するもの)、並びに、高い伝導性から選択された特性における改善の結果、及び/又は、広い温度範囲にわたって良好な電気性能を示すことであってもよい。例えば、AESは、高い流動性を有していてもよく、もしくは対照的に、電極3(a)及び3(b)の分離を保証する実質的に固体であってもよい。
AESは、高温ウルトラキャパシタで使用される本明細書に記載した新規な電解質と、高温ウルトラキャパシタで使用される高度に精製された電解質と、全温度にわたって性能もしくは耐久性の大きな低下なしに摂氏-40度から摂氏210度までの温度範囲における使用に適した改良された電解質の組み合わせとを含む。
ある特定の実施形態では、AESは高温ウルトラキャパシタでの使用に適合する。ある実施形態では、ウルトラキャパシタは、摂氏約80度から摂氏約210度までの温度範囲、例えば、摂氏約80度から摂氏約150度までの温度範囲内の温度で動作するように構成されている。
ある特定の実施形態において、AESは、高度に精製された電解質を含む。例えば、高度に精製された電解質は、高温ウルトラキャパシタにおいて用いられるように適合されている。ある実施形態では、ウルトラキャパシタは、摂氏約80度から摂氏約210度までの温度範囲内の温度で動作するように構成されている。
ある特定の実施形態において、AESは、改良された電解質の組み合わせを含む。例えば、当該改良された電解質の組み合わせは、高温及び低温のウルトラキャパシタの両方における使用に適合している。ある実施形態では、このウルトラキャパシタは、摂氏約-40度から摂氏約150度までの温度範囲内の温度において動作するように構成されている。
このように、また上述したように、既知のエネルギー貯蔵装置の既存の電解質を超える利点は、次の1以上の改善点から選択される:減少した合計抵抗、増大した抵抗の長期安定性、増大した合計容量、増加した容量の長期安定性、増大したエネルギー密度、増大した電圧安定性、減少した気圧、それぞれのキャパシタについての拡大した温度範囲性能、それぞれのキャパシタについての増大した温度耐性、向上した製造容易性、及び改善された費用効果。
ウルトラキャパシタのある実施形態において、エネルギー貯蔵セルは、正極及び負極を備える。
ウルトラキャパシタのある実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、炭素を含むエネルギー貯蔵媒体を含む。例えば、炭素を含むエネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブを含む。特定の実施形態において、炭素を含むエネルギー貯蔵媒体は、活性炭、カーボンファイバー、レーヨン、グラフェン、エアロゲル、カーボンクロス、及びカーボンナノチューブを含んでいてもよい。
ウルトラキャパシタのある実施形態において、それぞれの電極は集電体を含む。
ウルトラキャパシタのある実施形態において、AESは、不純物含有量を減少させるように精製される。ある実施形態において、AESにおけるハロゲン化物イオンの含有量は、約1000ppm未満、例えば、約500ppm未満、例えば、約100ppm未満、例えば、約50ppm未満である。ある特定の実施の形態において、AESにおけるハロゲン化物イオンの含有量は、塩素、臭素、フッ素、及びヨウ素からなるグループから選択されたハロゲン化物イオンのうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態において、AESにおける不純物の合計濃度は、約1000ppm未満である。ある実施形態において、不純物は、ブロモエタン、クロロエタン、1-ブロモブタン、1-クロロブタン、1-メチルイミダゾール、エチルアセテート、及び塩化メチレンからなるグループのうちの1つ以上から選択される。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、AESにおける金属種の合計濃度は、約1000ppm未満である。ある特定の実施形態において、当該金属種は、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mo、Na、Ni、Pb、及びZnからなるグループから選択された1以上の金属から選ばれる。他の特定の実施形態において、当該金属種は、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mo、Na、Ni、Pb、及びZnからなるグループから選択された1以上の金属合金から選ばれる。さらに別の特定の実施形態において、当該金属種は、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mo、Na、Ni、Pb、及びZnからなるグループから選択された1以上の金属酸化物から選ばれる。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、AESにおける合計水分含有量は、約500ppm未満であり、例えば、約100ppm未満、例えば、約50ppm未満、例えば、約20ppmである。
ウルトラキャパシタの所定の実施形態において、体積当たりの漏れ電流は、当該温度範囲において、約10アンペア/リットル未満である。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、体積当たりの漏れ電流は、約0ボルト~約4ボルト、例えば約0ボルト~約3ボルト、例えば約0ボルト~約2ボルト、例えば約0ボルト~約1ボルトの特定の電圧範囲にわたって、約10アンペア/リットル未満である。ウルトラキャパシタの所定の実施形態において、ハウジング内の水分レベルは、約1000ppm未満、例えば約500ppm未満、例えば約350ppm未満である。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタの電極の水分含有量は、約1000ppm未満、例えば約500ppm未満、例えば約350ppm未満である。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタのセパレータの水分含有量は、約1000ppm未満、例えば約500ppm未満、例えば約160ppm未満である。
ウルトラキャパシタの所定の実施形態において、塩化物含有量は、電極、電解質、及びセパレータからなるグループから選択された成分のうちの1つについて、約300ppm未満である。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタの体積当たりの漏れ電流(mA/cc)は、実質的に一定の温度に維持されている間、約10mA/cc未満であり、例えば、実質的に一定の温度に維持されている間、約1mA/cc未満である。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタの体積当たりの漏れ電流は、実質的に一定の温度に維持されている間、約0.0001mA/ccより大きい。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタの体積当たりの容量は、約6F/cc~約1mF/cc、約10F/cc~約5F/cc、もしくは、約50F/cc~約8F/ccである。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタの体積当たりのESRは、約20mΩ・cc~200mΩ・cc、約150mΩ・cc~2Ω・cc、約1.5Ω・cc~200Ω・cc、約150Ω・cc~2000Ω・ccである。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、当該ウルトラキャパシタは、実質的に一定の電圧及び動作温度に維持されている間、約90パーセント未満の容量減少を示す。特定の実施形態において、AESを備えるウルトラキャパシタは、少なくとも1時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも50時間、例えば少なくとも100時間、例えば少なくとも200時間、例えば少なくとも300時間、例えば少なくとも400時間、例えば少なくとも500時間、例えば少なくとも1000時間にわたって、実質的に一定の電圧及び動作温度に維持されている間、約90パーセント未満の容量減少を示す。
AESを備えるウルトラキャパシタの所定の実施形態において、ウルトラキャパシタは、少なくとも1時間、例えば少なくとも10時間、例えば少なくとも50時間、例えば少なくとも100時間、例えば少なくとも200時間、例えば少なくとも300時間、例えば少なくとも400時間、例えば少なくとも500時間、例えば少なくとも1000時間にわたって、実質的に一定の電圧及び動作温度に維持されている間、約1000パーセント未満のESR増大を示す。
ある実施形態では、AESは、高温ウルトラキャパシタで使用される高度に精製された所定の電解質を備える。本明細書に開示されたAESを含む高度に精製された電解質は、以下に開示する電解質、並びに、本明細書において開示された精製プロセスにより精製された上述の新規な電解質である。本明細書で提示される精製方法は、例えば、摂氏約80度から摂氏約210度まで、摂氏約80度から摂氏約200度まで、摂氏約80度から摂氏約190度まで、摂氏約80度から摂氏約180度まで、摂氏約80度から摂氏約170度まで、摂氏約80度から摂氏約160度まで、摂氏約80度から摂氏約150度まで、摂氏約85度から摂氏約145度まで、摂氏約90度から摂氏約140度まで、摂氏約95度から摂氏約135度まで、摂氏約100度から摂氏約130度まで、摂氏約105度から摂氏約125度まで、又は摂氏約110度から摂氏約120度まで、の温度範囲で動作する高温ウルトラキャパシタのような高温用途で使用される、向上された特性を有するAESに適した不純物レベルをもたらす。
ウルトラキャパシタ10の改善された特性を得るとき、現在入手可能なものより良好な電解質系が必要となる。例えば、動作温度範囲を増大させることが、既知の所定形式の電解質から不純物を大幅に減少/除去することにより達成してもよいことが分かっている。特に懸念される不純物には、水、ハロゲン化物イオン(塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物)、自由アミン(アンモニア)、硫酸塩、及び金属カチオン(Ag、Al、Ba、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Sr、Ti、Zn)が含まれる。したがって、本明細書に開示されたAESは、未精製の電解質に比較して、驚くほど優れた特性で精製されている、高度に精製された電解質製品を構成する。
特定の実施形態において、本発明は、カチオン9及びアニオン11及び(ある場合には)溶媒の精製された混合物を提供し、これは、約5000ppm未満の塩化物イオン、約1000ppm未満のフッ化物イオン、及び/又は約1000ppm未満の水を含むAESとして提供されてもよい。例えば、所定の実施形態において、AESは、約2000ppm未満の塩化物イオン、約200ppm未満のフッ化物イオン、及び/又は約200ppm未満の水を含んでもよく、約1000ppm未満の塩化物イオン、約100ppm未満のフッ化物イオン、及び/又は約100ppm未満の水を含んでもよく、約500ppm未満の塩化物イオン、約50ppm未満のフッ化物イオン、及び/又は約50ppm未満の水を含んでもよく、又は、約780ppm未満の塩化物イオン、約11ppm未満のフッ化物イオン、及び/又は約20ppm未満の水を含んでもよい。
概して、精製された電解質における不純物は、本明細書において開示された精製方法を使用して除去される。例えば、いくつかの実施形態において、ハロゲン化物イオン(塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物)の合計濃度を約1000ppm未満まで低下させてもよい。金属種(例えば、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mo、Na、Ni、Pb、Zn、それらの合金及び酸化物の少なくとも一方を含む)の合計濃度を約1000ppm未満まで低下させてもよい。さらに、合成プロセスにおいて使用される溶媒及び前駆体からの不純物は、約1000ppm未満まで低下させてもよく、これには、例えば、ブロモエタン、クロロエタン、1-ブロモブタン、1-クロロブタン、1-メチルイミダゾール、酢酸エチル、塩化エチレン等が含まれる。
いくつかの実施形態において、ウルトラキャパシタ10の不純物含有量は、イオン選択電極及びカールフィッシャー滴定法を用いて測定され、これは、ウルトラキャパシタ10の電解質6に適用されてきた。ある実施形態では、本明細書の教示によるウルトラキャパシタ10内の合計塩化物含有量は、約200ppm未満の塩化物(Cl-及びF-)であり、水分含有量が約100ppm未満であることが分かった。
様々な技術、例えば、原子吸光分析法(Atomic Absorption Spectrometry:AAS)、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry:ICPMS)、若しくは、微量重金属酸化物の粒子を可溶化して電気化学的にセンシングする簡略化された方法を用いて、不純物を測定してもよい。AASは、ガス状態の自由原子による光放射(光)の吸収を用いる、化学元素の定量的かつ定性的決定のためのスペクトル分析法である。当該技術は、分析されるべきサンプルにおける特定の元素(被分析物)の濃度を決定するために使用される。AASは、溶液において、もしくは固体サンプルにおいて直接に、70個を越える異なる元素を決定するために使用可能である。ICPMSは、高い感度を有し、1012分の1(part per trillion)未満の濃度の金属及びいくつかの非金属の範囲を決定することができる質量分析法である。この技術は、イオンを生成する方法(イオン化)としての誘導結合プラズマ法(ICP)を、イオンを分離して検出する方法としての質量分析法(MS)と組み合わせることに基づいている。ICPMSは、選択されたイオンについて、同位体特定をモニタリングすることもできる。
不純物を分析するために、追加の技術を用いてもよい。これらの技術のいくつかは、固体サンプル中における不純物を分析するのに特に有利である。イオンクロマトグラフィー(Ion Chromatography:IC)は、電解質6(例えばイオン液体)におけるハロゲン化物不純物の微量元素レベルを決定するために使用してもよい。イオンクロマトグラフィーの一つの利点は、単一のクロマトグラフィー分析において、関連のあるハロゲン化物種を測定することができることである。イオン液体からのハロゲン化物を定量化するために使用されうる装置の一例は、20mMのNaOH及び10%(v/v)のアセトニトリルからなる溶離剤を用いるディオネックス(Dionex)AS9-HCカラムである。別の技術は、蛍光X線を用いるものである。
固体サンプルにおけるハロゲン含有量を測定するため、蛍光X線分析(XRF)装置を使用してもよい。この技術において、分析されるべきサンプルはサンプルカップに配置され、次いで、サンプルカップは分析装置に配置される。分析装置において、特定の波長のX線により照射される。サンプル中のすべてのハロゲン原子はX線の一部を吸収し、その後、所定のハロゲンに特有の波長において放射を反射する。当該装置中の検出器は、ハロゲン原子から戻る放射量を定量化し、放射の強度を測定する。さらされる表面面積がわかれば、サンプル中のハロゲンの濃度を決定することができる。固体のサンプルにおける不純物を評価するためのさらなる技術は、熱分解によるものである。
不純物の吸収は、熱分解及びマイクロクーロメーターを使用することにより効率的に測定することができる。マイクロクーロメーターは、ほとんど全てのタイプの材料で合計塩素含有量をテストすることができる。一例として、少量(10ミリグラム未満)のサンプルが、石英燃焼管に投入されるか又は配置される。石英燃焼管において、温度は、摂氏約600度から摂氏約1000度までの範囲にわたる。純酸素が石英管を通過し、すべての塩素含有成分が完全に燃焼される。結果として得られる燃焼生成物は滴定セルに移動され、滴定セルにおいて、塩素イオンは電解質に捕捉される。電解質は銀イオンを含む。銀イオンは、任意の塩素イオンとすぐに結合し、不溶性の塩化銀として溶液から析出される。滴定セルにおける銀電極は、銀イオン濃度が滴定を始める前の濃度に戻るまで、消費された銀イオンを電気的に置き換える。必要とされる銀の量を発生させるために必要な電流量を追跡することにより、当該装置は、当初のサンプルにどれだけの量の塩素が存在していたかを決定することができる。存在する合計塩素量をサンプルの重量で除算することにより、実際にサンプル中に存在する塩素濃度が得られる。不純物を評価する他の技術を使用してもよい。
電極3における表面特性化及び水分含有量は、例えば、赤外線分光技術により試験されてもよい。約1130、1560、3250、及び2300cm-1の付近における4つの大きな吸収帯は、それぞれ、カルボニルのνC=O 、アリールのνC=C、νO-H、及びνC-Nに相当する。強度及びピーク位置を測定することにより、電極3内の表面不純物を定量的に同定することが可能である。
電解質6及びウルトラキャパシタ10における不純物を同定するための他の技術は、ラマン分光法である。この分光技術は、通常は可視光、近赤外、もしくは近紫外のレーザからの、単色光の非弾性散乱もしくはラマン散乱に基づく。レーザ光は、当該系における分子振動、フォノン、もしくは他の励起と相互作用し、その結果、レーザフォトンのエネルギーが上下にシフトされる。このように、当該技術は、ウルトラキャパシタ10内における原子及び分子を特性化するために使用してもよい。ラマン分光法の多数の変形物が使用され、ウルトラキャパシタ10の内容を特性化する際において有益であることが証明される。
ある特定の実施形態において、上記のカチオン及びアニオンの組み合わせを前提として、AESは、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、及びブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドからなるグループから選択されてもよい。所定時間にわたる容量及びESRの測定により実証される、所定温度範囲で向上した性能特性を支持するデータは、高温での有用性及び長期の耐久性を示す。
ある実施形態において、AESは、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態において、AESは、ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
もう一つの実施形態において、本明細書に開示されたAESは、イミダゾリウム及びピロリジニウムからなるグループから選択された、図4に示すカチオンの任意の組み合わせを含み、さまざまな各分岐基Rx(例えばR1、R2、R3、…Rx)は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、サルフェート、スルホナート、及びカルボニル基からなるグループから選択されてもよく、これらはいずれもオプションで置換され、少なくとも2つのRxはHではなく(すなわち、R基の選択及び向きが図4に示すカチオン種を生成する)、アニオンは、テトラフルオロボラート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラシアノボラート、及びトリフルオロメタンスルホン酸からなるグループから選択される。ある特定の実施形態において、2つのRxは、Hではなく、アルキルである。さらに、記載されたカチオンは、高い熱的安定性並びに高い伝導性を示し、幅広い温度範囲にわたって良好な電気化学的特性を示す。
ある特定の実施形態において、上述のカチオン及びアニオンの組み合わせを前提として、AESは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸塩、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸からなるグループから選択されてもよい。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態において、AESは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態において、AESは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸である。
もう1つの特定の実施形態において、2つのRxのうちの一方は、Hではなく、アルキル、例えばメチルであり、他方は、アルコキシで置換されたアルキルである。さらに、当該分子において式(1)のN,Oアセタール骨格構造を有するカチオンが高い電気伝導性を有することと、これらのカチオンに含まれ、ピロリジン骨格及びN,Oアセタール基を有するアンモニウムカチオンが特に高い電気伝導性及び有機溶媒中の溶解度を有し、比較的に高い電圧をサポートする、ということが分かってきた。そのため、ある実施形態において、AESは次式の塩を備える。
ここで、R1及びR2は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれアルキルである。X-はアニオンである。一部の実施形態において、R1は、1~4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状アルキルである。R2はメチルもしくはエチルである。X-はシアノボラートを含むアニオン11である。特定の実施形態において、X-は[B(CN)]4を含み、R2はメチル基又はエチル基の一方である。もう1つの特定の実施形態において、R1とR2の両方がメチルである。さらに、ある実施形態において、本明細書に開示されたAESに適したシアノボラートアニオン11、X-には、[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-が含まれる。ここで、n=0、1、2又は3である。
ある実施形態ではテトラシアノボラートと結合されてもよい、化学式(1)のカチオンの例は、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、N-メトキシメチル-N-n-プロピルピロリジニウム、N-メトキシメチル-N-イソプロピルピロリジニウム、N-n-ブチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、N-イソブチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、N-tert-ブチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、N-エトキシメチル-N-メチルピロリジニウム、N-エチル-N-エトキシメチルピロリジニウム(N-エトキシメチル-N-エチルピロリジニウム)、N-エトキシメチル-N-n-プロピルピロリジニウム、N-エトキシメチル-N-イソプロピルピロリジニウム、N-n-ブチル-N-エトキシメチルピロリジニウム、N-イソブチル-N-エトキシメチルピロリジニウム、及びN-tert-ブチル-N-エトキシメチルピロリジニウムである。他の例は、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウム(N-メトキシメチル-N-メチルピロリジニウム)、N-エチル-N-メトキシメチルピロリジニウム、及びN-エトキシメチル-N-メチルピロリジニウムを含む。
追加のアニオンと組み合わされる化学式(1)のカチオンの追加の例は、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウムテトラシアノボラート、N-エチル-N-メトキシメチルピロリジニウムテトラシアノボラート、N-エトキシメチル-N-メチルピロリジニウムテトラシアノボラート、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド、(N-メトキシメチル-N-メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド)、N-エチル-N-メトキシメチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド、N-エトキシメチル-N-メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルフォニルイミド、N-メチル-N-メトキシメチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルフォレート、及び(N-メトキシメチル-N-メチルトリフルオロメタンスルフォレート)から選択してもよい。
電解質として使用されるとき、第四級アンモニウム塩は、適切な有機溶媒と混合して使用してもよい。有用な溶媒には、環状炭酸エステル、直鎖状炭酸エステル、リン酸エステル、環状エーテル、直鎖状エーテル、ラクトン化合物、直鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、及びスルホン化合物が含まれる。そのような化合物の例が、以下に示されている。しかしながら、使用されるべき溶媒は、これらの化合物に限定されない。
環状炭酸エステルの例は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等であり、これらの中で炭酸プロピレンが好ましい。
直鎖状炭酸エステルの例は、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等であり、これらの中で炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルが好ましい。
リン酸エステルの例は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル等である。環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどである。直鎖状エーテルの例は、ジメトキシエタンなどである。ラクトン化合物の例は、γ-ブチロラクトン等である。直鎖状エステルの例は、プロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル等である。ニトリル化合物の例は、アセトニトリル等である。アミド合成物の例は、ジメチルホルムアミドなどである。スルホン化合物の例は、スルホラン、メチルスルホラン等である。いくつかの実施形態において、環状炭酸エステル、直鎖状炭酸エステル、ニトリル化合物、及びスルホン化合物は、特に好ましい。
これらの溶媒は、単一で使用してもよいし、もしくは、少なくとも2種の溶媒を混合して使用してもよい。好ましい有機溶媒混合物の例は、環状炭酸エステル及び直鎖状炭酸エステルの混合物、例えば、炭酸エチレンと炭酸ジメチルとの混合物、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとの混合物、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの混合物、炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとの混合物、炭酸プロピレンと炭酸エチルメチルとの混合物、及び、炭酸プロピレンと炭酸ジエチルとの混合物、直鎖状炭酸エステルの混合物、例えば、炭酸ジメチルと炭酸エチルメチルとの混合物、並びに、スルホラン化合物の混合物、例えば、スルホランとメチルスルホランとの混合物である。さらに好ましくは、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとの混合物、炭酸プロピレンと炭酸エチルメチルとの混合物、並びに、炭酸ジメチルと炭酸エチルメチルとの混合物である。
いくつかの実施形態において、本発明の第四級アンモニウム塩が電解質として使用されるとき、電解質濃度は少なくとも0.1Mであり、一部の場合には少なくとも0.5Mであり、少なくとも1Mであってもよい。仮に濃度が0.1M未満である場合、低電気伝導性が得られ、低下した性能を有する電気化学装置をもたらす。電解質が室温で液体の塩である場合、濃度の上限値は分離濃度である。溶液が分離しないとき、リミットの濃度は100%である。塩が室温で固体である場合、リミットの濃度は、溶液に塩が飽和する濃度である。
ある実施形態では、組み合わせることが、AESを利用することによる利点に有意な悪影響を与えない限り、例えば、性能もしくは耐久特性を10%より大きく変えない限り、AESに、本明細書において開示されたもの以外の電解質を混合してもよい。AESと混合されるのに適している可能性がある電解質の例は、アルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩等である。これらの電解質は、単一で使用されてもよく、それらの少なくとも2種が組み合わされて使用され、本明細書に開示されたAESと混合される。有用なアルカリ金属塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が含まれる。そのようなリチウム塩の例は、六フッ化リン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、スルホニルイミドリチウム、スルホニルメチドリチウム等であるが、しかしながら、これらに限定されることはない。有用なナトリウム塩の例は、六フッ化リン酸ナトリウム、ホウフッ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、スルホニルイミドナトリウム、スルホニルメチドナトリウム等である。有用なカリウム塩の例は、六フッ化リン酸カリウム、ホウフッ化カリウム、過塩素酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、スルホニルイミドカリウム、スルホニルメチドカリウム等である。しかしながら、これらは限定されるものではない。
上述の組み合わせ(すなわち、AESの利用により達成される利点に有意な影響を与えない)において使用されうる有用な第四級アンモニウム塩には、テトラアルキルアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピラゾリウム塩、ピリジニウム塩、トリアゾリウム塩、ピリダジニウム塩等が含まれるが、しかしながら、これらに限定されることはない。有用なテトラアルキルアンモニウム塩の例は、テトラエチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラメチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラプロピルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、トリエチルメチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩,トリメチルエチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、ジメチルジエチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、トリメチルプロピルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、トリメチルブチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、ジメチルエチルプロピルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、メチルエチルプロピルブチルアンモニウムテトラシアノホウ酸塩、N,N-ジメチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-エチル-N-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-エチル-N-プロピルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N,N-ジメチルピペリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-メチル-N-エチルピペリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-エチル-N-プロピルピペリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N,N-ジメチルテトラシアノホウ酸塩、N-メチル-N-エチルモルホリニウムテトラシアノホウ酸塩、N-メチル-N-プロピルモルホリニウムテトラシアノホウ酸塩、N-エチル-N-プロピルモルホリニウムテトラシアノホウ酸塩などであるが、これらの例に限定するものではない。
上述の組み合わせ(すなわちAESの利用により達成される利点に有意な影響を与えない)において使用されうるイミダゾリウム塩の例には、1,3-ジメチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1,3-ジエチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩、及び1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩が含まれるが、これらに限定されることはない。ピラゾリウム塩の例は、1,2-ジメチルピラゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-メチル-2-エチルピラゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-プロピル-2-メチルピラゾリウムテトラシアノホウ酸塩、及び1-メチル-2-ブチルピラゾリウムテトラシアノホウ酸塩であるが、これらに限定されることはない。ピリジニウム塩の例は、N-メチルピリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-エチルピリジニウムテトラシアノホウ酸塩、N-プロピルピリジニウムテトラシアノホウ酸塩、及びN-ブチルピリジニウムテトラシアノホウ酸塩であるが、これらに限定されることはない。トリアゾリウム塩の例は、1-メチルトリアゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-エチルトリアゾリウムテトラシアノホウ酸塩、1-プロピルトリアゾリウムテトラシアノホウ酸塩、及び1-ブチルトリアゾリウムテトラシアノホウ酸塩であるが、これらに限定されることはない。ピリダジニウム塩の例は、1-メチルピリダジニウムテトラシアノホウ酸塩、1-エチルピリダジニウムテトラシアノホウ酸塩、1-プロピルピリダジニウムテトラシアノホウ酸塩、及び1-ブチルピリダジニウムテトラシアノホウ酸塩であるが、これらに限定されることはない。第四級ホスホニウム塩の例は、テトラエチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラメチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラプロピルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、テトラブチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、トリエチルメチルホスホニウムテトラフルオロホウ酸塩、トリメチルエチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、ジメチルジエチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、トリメチルプロピルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、トリメチルブチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、ジメチルエチルプロピルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩、メチルエチルプロピルブチルホスホニウムテトラシアノホウ酸塩であるが、これらに限定されることはない。
本明細書に開示されたAESは、所定の実施形態では、性能又は耐久性の有意な低下なしで、摂氏-40度から摂氏210度まで、例えば、摂氏-40度から摂氏150度まで、例えば、摂氏-30度から摂氏150度まで、例えば、摂氏-30度から摂氏140度まで、例えば、摂氏-20度から摂氏140度まで、例えば、摂氏-20度から摂氏130度まで、例えば、摂氏-10度から摂氏130度まで、例えば、摂氏-10度から摂氏120度まで、例えば、摂氏0度から摂氏120度まで、例えば、摂氏0度から摂氏110度まで、例えば、摂氏0度から摂氏100度まで、例えば、摂氏0度から摂氏90度まで、例えば、摂氏0度から摂氏80度まで、例えば、摂氏0度から摂氏70度までの温度範囲での使用に適した電解質の所定の組み合わせを備えてもよい。
概して、与えられた温度におけるより高い耐久性は、より低い温度におけるより高い電圧安定性と同時に得られる。従って、電解質の組み合わせを含む高温AESの開発は、概して、高電圧ただし低温のAESを同時に開発することになる。したがって、本明細書で説明した電解質の組み合わせは、より高い電圧、したがってより高いエネルギー密度において、ただしより低い温度でも有用である可能性がある。
ある実施形態では、本明細書で開示した電解質の組み合わせは、第2のイオン液体に混合されるイオン液体と、有機溶媒に混合されるイオン液体と、第2のイオン液体及び有機溶媒に混合されるイオン液体とからなるグループから選択された新規な電解質の混合物を含むエネルギー貯蔵セル、例えばウルトラキャパシタにおける使用に適している。ここで、各イオン液体は、次のカチオン及びアニオンの任意の組み合わせの塩から選択される。カチオンは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムからなるグループから選択され、アニオンは、テトラフルオロボラート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラシアノボラート、及びトリフルオロメタンスルホナートからなるグループから選択される。有機溶媒は、直鎖状スルホン(例えば、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、イソプロピルイソブチルスルホン、イソプロピル s-ブチルスルホン、ブチルイソブチルスルホン、及びジメチルスルホン)、直鎖状炭酸塩(例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、及び炭酸ジメチル)、及びアセトニトリルからなるグループから選択される。
例えば、上述のカチオン及びアニオンの組み合わせを前提とすると、各イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩;1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩;1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩;1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド;1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸塩;1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩;トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸からなるグループから選択されてもよい。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態では、イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩である。
ある実施形態では、イオン液体は、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態では、イオン液体は、ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドである。
ある実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸である。
ある実施形態では、有機溶媒は、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、イソプロピルイソブチルスルホン、イソプロピル s-ブチルスルホン、ブチルイソブチルスルホン、若しくはビメチルスルホン、直鎖状スルホンから選択される。
ある実施形態では、有機溶媒は、炭酸ポリプロピレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレンから選択される。
ある実施形態では、有機溶媒はアセトニトリルである。
ある実施形態では、AESは、有機溶媒を有するイオン液体であり、当該有機溶媒は、当該組成物の55体積%~90体積%、例えば37.5体積%である。
ある実施形態では、AESは、第2のイオン液体を有するイオン液体であり、一方のイオン液体は、当該組成物の5体積%~90体積%、例えば60体積%である。
本明細書に開示されたAES(例えば、本明細書に提示した特有の組み合わせを有する)は、それぞれのキャパシタについての拡大した温度範囲性能(例えば、2つの温度間で遷移する場合、容量の有意な減少及び/又はESRの有意な増大が生じないこと、例えば、摂氏約+30度から摂氏約-40度に遷移する場合、90%を越える容量減少及び/又は1000%を越えるESR増大が生じないこと)と、それぞれのキャパシタについての増大した温度耐性(例えば、与えられた時間後の与えられた温度において50%未満の容量低下、及び/又は与えられた時間後の与えられた温度において100%未満のESR増大、及び/又は与えられた時間後の与えられた温度において10A/L未満の漏れ電流、例えば、40%未満の容量減少及び/又は75%未満のESR増大、及び/又は5A/L未満の漏れ電流、例えば30%未満の容量減少及び/又は50%未満のESR増大、及び/又は1A/L未満の漏れ電流)とを可能にする。
理論により拘泥されることを望まないが、上述の組み合わせは、摂氏-40度未満の温度まで性能及び耐久性基準内で動作するウルトラキャパシタを提供するために、AESの凝固点に影響を与える改良された共晶特性を示す。
所定の実施形態において、AESによって提供される優れた特性は、本明細書に開示した電解質を、本明細書に開示されたウルトラキャパシタにそれらを組み込む前に精製することで達成することができる。そのような精製は、当該技術分野において認められている技術もしくは本明細書において提供される技術を用いて実施可能である。この精製は、本明細書で説明したAESの特性をさらに改善する可能性がある。
ある実施形態では、AESは、混入物質を除去するために、また、本明細書において記載された所望の向上された性能特性を提供するために精製される。例えば、本開示は、AESを精製する方法を提供し、上記方法は、AESに水を混合して第1の混合物を提供するステップと、上記第1の混合物を分離するステップと、上記第1の混合物から上記AESを収集するステップと、上記収集された液体に溶媒を加えて第2の混合物を提供するステップと、上記第2の混合物に炭素を混合して第3の混合物を提供するステップと、上記第3の混合物から上記AESを分離して、精製されたAESを取得するステップとを含む。概して、本プロセスは、電解質を選択し、制御された条件下、脱イオン化水及び活性炭素を加えることを要求する。この脱イオン化水並びに活性炭素は後で除去され、それにより、実質的に精製された電解質がもたらされる。精製された電解質は、とりわけ、ウルトラキャパシタにおける使用に適している。
この方法は、AESの高い清浄度を保証するために使用されてもよい。本プロセスは、特定のパラメータ(量、定式化、時間等)の観点で提示されているが、この提示は、電解質を精製するためのプロセスの単なる例示及び説明であって、それを制限するものではない。
例えば、本発明は、さらに、次のステップもしくは特徴のうちの1つ以上を含んでいてもよい。本発明は、第1の混合物を加熱するステップを含む。分離することは、水及びAESが実質的に分離されるまで、第1の混合物を乱されない状態に保たせることを含む。溶媒を加えることには、ジエチルエーテル、ペントン、シクロペントン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1-4ジオキサン、及びクロロホルムの少なくとも一種を加えることを含む。炭素を混合することには、炭素粉末を混合することが含まれる。炭素を混合することには、第3の混合物を実質的に一定に撹拌することが含まれる。AESを分離することには、第3の混合物から炭素を濾過すること、及び、第3の混合物から溶媒を蒸発させることの少なくとも一方を含む。
電解質を精製するためのプロセスの第1のステップにおいて、電解質6(いくつかの実施形態においては、イオン液体)は、脱イオン化水と混合され、その後、いくらかの期間、中程度の温度まで昇温される。概念実証において、50ccのイオン液体は850ccの脱イオン化水と混合された。混合物は、約12時間、摂氏60度の一定温度まで昇温され、一定(毎分120回転(rpm))の撹拌に供した。
第2のステップにおいて、イオン液体と脱イオン化水との混合物は、分離が可能にされる。この例において、混合物は漏斗を介して移され、約4時間置かれた。
第3のステップにおいて、イオン液体を収集する。この例において、下部に混合物の水の相が存在し、上部にイオン液体の相が存在する。イオン液体の相は、他のビーカーに移される。
第4のステップにおいて、溶媒をイオン液体と混合した。この例において、容積約25ccの酢酸エチルはイオン液体と混合された。この混合物は、再度、中程度の温度まで昇温され、ある程度の時間にわたって撹拌された。
溶媒としてエチルアセテートを使用しているけれども、溶媒は、ジエチルエーテル、ペントン、シクロペントン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1-4ジオキサン、クロロホルムもしくはそれらの任意の組み合わせ、並びに、適切な性能特性を示す他の1つ又は複数の材料のうちの少なくとも1つであってもよい。所望の性能特性の一部には、非極性の溶媒、並びに、高い揮発性のものが含まれる。
第5のステップにおいて、イオン液体と溶媒との混合物に炭素粉末を加える。この例において、この混合物に、約20質量%(wt%)の(約0.45μmの直径の)炭素を加えた。
第6のステップにおいて、イオン液体を再度混合した。この例において、炭素粉体を含む混合物を、摂氏約70度で一晩、一定の撹拌(例えば120rpm)に供した。
第7のステップにおいて、炭素とエチルアセテートとをイオン液体から分離した。この例において、炭素は、ガラスマイクロファイバーフィルターによるブフナー濾過を用いて分離した。多段濾過(3段)を実行した。炭素粒子の実質的にすべてを除去するため、収集されたイオン液体を、その後、0.2μmシリンジフィルタに通過させた。この例において、その後、回転蒸発を採用することにより、溶媒をイオン液体から分離した。具体的には、イオン液体のサンプルは、温度を摂氏70度から摂氏80度まで増加させながら撹拌され、摂氏100度において終了した。蒸発は、それぞれの温度において、約15分間にわたって実行された。
電解質を精製するプロセスは、非常に効果的であることが証明された。サンプルのイオン液体について、水分含有量は、米国オハイオ州コロンバスのメトラー-トレドインコーポレイテッド(Mettler-Toledo Inc.)により提供される滴定装置(モデルナンバー:AQC22)を用いた滴定により測定された。ハロゲン化物含有量は、米国ロードアイランド州ウッドソケットのハンナインスツルメンツ(Hanna Instruments)により提供されるISE装置(モデルナンバー:AQC22)により測定した。ISE装置のための標準的な溶液は、ハンナから得られ、HI4007-03(1000ppm塩化物標準)、HI4010-03(1000ppmフッ化物標準)、HI4000-00(ハロゲン化物電極のISA)、及びHI4010-00(フッ化電極のみのTISAB溶液)が含まれていた。測定を実行する前において、ISE装置は、0.1、10、100、及び1000ppmの標準を用いて、標準溶液で較正され、脱イオン水と混合された。ISAバッファは、Cl-イオンの測定のために、1:50比で標準に追加された。
結果を表2に示す。
ハロゲン化物イオンを測定するために、4ステップのプロセスが使用された。まず、塩化物(cl-)及びフッ化物(F-)イオンは、脱イオン化水において測定された。次に、0.01Mのイオン液体溶液を脱イオン化水で調製した。続いて、塩化物(cl-)及びフッ化物(F-)イオンが溶液において測定された。その後、当該溶液中のイオンの量から水中のイオンの量を差し引くことにより、ハロゲン化物含有量の評価値が決定された。
また、漏れ電流の分析により、電解質の汚染成分に関して精製標準が試験された。同様の構造を有するウルトラキャパシタ10における精製された電解質の漏れ電流は、初期漏れ電流では実質的に減少し、測定期間の後の部分では漏れ電流が緩やかに減少する。表3に、各実施形態の構成についてのより多くの情報が与えられている。
ウルトラキャパシタ10の抵抗及び容量の安定性の改善を含む他の利点も達成される。
漏れ電流は、多数の方法で決定可能である。定性的には、漏れ電流は、一旦装置が平衡状態に達したとき、当該装置内に流れ込む電流であると考えられる。実際、概して漸近的に近づくだけの可能性がある平衡状態として、実際の漏れ電流を概算することが、常にもしくは殆ど常に必要である。そのため、所定の測定における漏れ電流は、ウルトラキャパシタ10を比較的長い時間期間にわたって実質的に固定された電圧に保持し、かつ、実質的に固定された周囲の温度にさらしている間、ウルトラキャパシタ10に流れ込む電流を測定することにより概算することができる。いくつかの例において、比較的長い時間期間は、電流時間関数を指数関数で近似し、その後、いくつか(例えば約3~5個)の特性時定数をわたすことにより決定してもよい。通常、そのような期間は、多くのウルトラキャパシタ技術について、約50時間から約100時間におよぶ。別の態様では、このような長い時間期間が何らかの理由で実用的でない場合、再度、ことによると、電流時間関数を指数関数、もしくは適切と認められる任意の近似関数で近似することにより、漏れ電流は単に外挿されてもよい。とりわけ、漏れ電流は、概して、周囲の温度に依存するであろう。ある温度において、もしくはある温度範囲において装置の性能を特徴づけるため、概して、漏れ電流を測定する際に関心対象の周囲温度に装置をさらすことが重要である。
特定の温度において体積当たりの漏れ電流を減少させるための1つのアプローチは、その温度における動作電圧を低下させることである。特定の温度において体積当たりの漏れ電流を減少させるための他のアプローチは、ウルトラキャパシタのボイド体積を増加させることである。また、漏れ電流を減少させるためのさらに別のアプローチは、電極3においてエネルギー貯蔵媒体1の負荷を減少させることである。
電解質及びイオン液体の精製のための実施形態の態様を開示したが、様々な態様を実現してもよいことは認識されるべきである。さらに、様々な技術を実施してもよい。例えば、ステップは、ステップの順番等について調整されてもよい。
ii.電極
再び図3を参照すると、ウルトラキャパシタ10は、少なくとも一対の電極3(ここで、各電極3は、単に本明細書での参照を目的として、負極3(a)又は正極3(b)として呼ばれることがある)を備える貯蔵セル12を備える。ウルトラキャパシタ10に組み込まれ、かつ、貯蔵セル12にわたって電位Vが印加されたとき、各電極3は、電解質界面において電荷二重層をもたらす。一部の実施形態において、複数の電極3が含まれる。例えば、一部の実施形態において、ウルトラキャパシタは2対以上の電極3(a)及び3(b)を備える。しかしながら、議論の目的のために、ただ一対の電極3(a)及び3(b)を示す。本明細書では慣行として、エネルギー貯蔵を行うために、電極3の少なくとも一方が、炭素に基づくエネルギー貯蔵媒体(本明細書においてさらに議論されている)を使用する。しかしながら、本明細書における議論のため、概して、各電極は炭素に基づくエネルギー貯蔵媒体1を含むことを想定する。
1.集電体
各電極3は各集電体2(「current collector」又は「charge collector」)を含む。いくつかの実施形態において、炭素に基づくエネルギー貯蔵媒体1は、一方もしくは両方の電極3に含まれなくてもよい。換言すれば、いくつかの実施形態において、各電極3は、集電体2のみからなっていてもよい。集電体2を提供するために使用される材料は、その表面領域を増加させるために、粗面化、陽極酸化等の処理が行われてもよい。これらの実施形態において、集電体2のみが電極3として機能してもよい。しかしながら、これを考慮に入れ、本明細書において使用されているように、用語「電極3」は、概して、エネルギー貯蔵媒体と集電体2との組み合わせを意味する(しかしながら、少なくとも前述の理由により、これに限定しない)。集電体は、アルミニウム、銅、又は他の導体金属及び合金のような、当該技術において既知の任意の導体材料も含んでもよい。
2.エネルギー貯蔵媒体
例示的なウルトラキャパシタ10において、エネルギー貯蔵媒体1は、カーボンナノチューブから構成される。エネルギー貯蔵媒体1は、例えば、活性炭、カーボンファイバー、レーヨン、グラフェン、エアロゲル、カーボンクロス、及び複数の形態のカーボンナノチューブを含む、他の炭素材料を含んでいてもよい。活性炭電極は、例えば、炭素化合物の炭化により得られる炭素材料に対して第1の活性化処理を行うことによって炭素に基づく材料を生成すること、炭素に基づく材料にバインダーを加えることにより成形体を製造すること、成形体を炭化すること、および最後に、炭化された成形体に第2の活性化処理を行うことにより活性炭電極を生成することによって製造され得る。カーボンファイバー電極は、例えば、大きな表面積を有するカーボンファイバーを含有するペーパーもしくはクロースプレフォームにより製造されてもよい。
カーボンナノチューブを製造するための例示的な方法において、整列されたカーボンナノチューブ凝集体を生成するための装置は、その表面に触媒を有するベース材料上に、整列されたカーボンナノチューブ凝集体を合成させる装置を含む。当該装置は、触媒を取り囲む環境を還元ガスの環境として、少なくとも触媒及び還元ガスのいずれかを加熱する形成ステップを行う形成ユニットと、触媒を取り囲む環境を未処理の材料ガスの環境として、少なくとも触媒及び未処理の材料ガスのいずれかを加熱することにより、整列されたカーボンナノチューブ凝集体を合成する成長ステップを行う成長ユニットと、少なくとも形成ユニットから成長ユニットまでベース材料を搬送する搬送ユニットとを含む。整列されたカーボンナノチューブ凝集体を提供するため、他の様々な方法及び装置を採用してもよい。
いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵媒体1を形成するために使用される材料には、純粋な炭素(現在存在しているか、もしくは後で開発される様々な形態の炭素)以外の材料が含まれていてもよい。換言すれば、他の材料の様々な形成物がエネルギー貯蔵媒体1内に含まれていてもよい。より具体的には、非限定的な例として、少なくとも1つのバインダー材料をエネルギー貯蔵媒体1において使用してもよい。しかしながら、これは、他の材料(バインダー材料等)を加えることを提案もしくは要求するものではない。しかしながら、概して、エネルギー貯蔵媒体1は実質的に炭素から形成され、それゆえ、本明細書においては、「炭素材料」、「炭素層」、及び他の同様の用語で呼ぶことがある。端的に言えば、大部分が炭素で形成されているけれども、エネルギー貯蔵媒体1は、エネルギー貯蔵媒体1として所望の機能を提供するため、任意の形態の炭素(適切もしくは許容可能とみなされる任意の添加物もしくは不純物)を含んでいてもよい。
一組の実施形態において、炭素材料には、少なくとも約60質量%の炭素原子を含む。他の実施形態において、少なくとも約75%、85%、90%、95%、もしくは98%の炭素原子を含む。
炭素材料は、カーボンブラック、グラファイト、及びその他を含む、様々な形態の炭素を含みうる。炭素材料は、ナノチューブ、ナノロッド、グラフェンシートなどを含む炭素粒子を含んでいてもよい。グラフェンシートは、シート状、及び/又は円錐状、ロッド状、球状(バッキーボール)等に形成される。
エネルギー貯蔵媒体1における使用に適した様々な形態の炭素材料のいくつかの実施形態が、本明細書において例として提供されている。これらの実施形態は、頑健なエネルギー貯蔵装置を提供し、電極3における使用に適している。これらの例は例示であり、エネルギー貯蔵媒体1における使用に適した炭素材料の実施形態を限定するものではないことに留意すべきである。
ある実施形態では、各電極のエネルギー貯蔵媒体1の多孔率は、キャパシタの性能を改善するため、それぞれの電解質のサイズに依存して選択されてもよい。
ここで、電極3を提供するためエネルギー貯蔵媒体1に集電体2を付加する例示的なプロセスを提示する。ここで図2を参照すると、カーボンナノチューブ凝集体(CNT)の形態の炭素材料のホストとなる基板14が示されている。示された実施形態において、基板14には、その上に配置された触媒18の薄い層を有するベース材料17が含まれる。
概して、基板14は、少なくともいくから可撓性を有し(すなわち、基板14は脆弱ではない)、エネルギー蓄積媒体1(例えばCNT)の析出のため環境に耐えうる成分から構成される。例えば、基板14は、摂氏約400度から摂氏約1100度の高温環境に耐えることができる。様々な材料が、適切であると決定されて基板14のために使用可能である。
エネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)を基板14上に形成した後、その上に集電体2を配置してもよい。いくつかの実施形態において、集電体2は、約0.5マイクロメートル(μm)~約25マイクロメートル(μm)の厚さを有する。いくつかの実施形態において、集電体2は、約20マイクロメートル(μm)~約40マイクロメートル(μm)の厚さを有する。集電体2は、化学気相成長法(chemical vapor deposition:CVD)、スパッタリング、電子ビーム、熱蒸着、もしくは他の適切な技術により塗布される層等の薄層として現れてもよい。概して、集電体2は、導電性、電気化学的に不活性であること、及びエネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)と化学反応を起こさないこと、などのその特性のために選択される。いくつかの例示的な材料には、アルミニウム、プラチナ、金、タンタル、チタンが含まれ、他の材料並びに様々な合金が含まれていてもよい。
集電体2がエネルギー蓄積媒体1(例えばCNT)の上に配置されると、電極素子15が実現される。各電極素子15をそれぞれ電極3として使用してもよく、又は、少なくとももう1つの電極素子と接続して電極3をとしてもよい。
いったん集電体2が所望の基準にしたがって製造されると、製造後処理を行ってもよい。例示的な後処理には、わずかな酸化環境においてエネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)を加熱及び冷却することが含まれる。製造(及びオプションの後処理)の後、移送ツールを集電体2に適用してもよい。
集電体2へ移送ツール13を適用する一実施形態において、移送ツール13は、「ドライ」な移送方法において使用される熱解放テープである。典型的な熱解放テープは、米国カリフォルニア州フリーモント及び日本国大阪の日東電工により製造されている。1つ適切な転送テープはREVALPHAとして販売されている。この解放テープは、室温でしっかりと接着し、加熱により剥離されうる接着テープとして特徴づけられうる。このテープ、及び他の適切な実施形態の熱解放テープは、予め決められた温度において解放される。好ましくは、解放テープは、電極素子15上に化学的に活性な残留物を残さない。
「ウェット」な移送方法と称される他のプロセスでは、化学的に解放されるように設計されたテープを使用してもよい。いったん貼り付けられると、テープは、その後、溶媒中に浸漬することにより除去される。当該溶媒は、接着剤を溶解するように設計されている。
他の実施形態では、移送ツール13は、例えば集電体2に吸気力を適用すること等、「空気式」の方法を用いる。吸気力は、例えば、吸引力を分配するための複数の孔を有する、わずかに大きなサイズを有するパドルを介して適用される。もう1つの例において、吸引力は、吸引を分配するための複数の孔を有するローラーによって適用される。吸引力駆動の実施形態は、電気的に制御され、移送プロセスの一部として消費材料が使用されないので経済的であるという利点を提供する。移送ツール13の他の実施形態を使用してもよい。
いったん移送ツール13が集電体2に一時的に接続されると、電極素子15は、基板14から徐々に除去される。当該除去は、概して、エネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)を基板14から剥離すること、基板14及びエネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)の一の端部において開始することを含む。
続いて、移送ツール13は電極素子15から分離されてもよい。いくつかの実施形態において、電極素子15を設置するために移送ツール13が使用される。例えば、移送ツール13は、電極素子15をセパレータ5上に配置するために使用してもよい。概して、いったん基板14から除去されると、電極素子15は使用可能になる。
大きな電極3が望まれる場合には、複数の電極素子15が一体化されてもよい。複数の素子15は、例えば、複数の電極素子15のうちの各電極素子15に接続部52を接続することにより一体化されてもよい。一体化された電極素子15は、電極3の一実施形態となる。
いくつかの実施形態において、接続部22は、各電極素子15と溶接部21で接続されている。各溶接部21は、超音波溶接部21として提供されてもよい。超音波溶接技術は、各溶接部21を提供することに特に適していることが分かってきた。すなわち、概して、エネルギー貯蔵媒体1(例えばCNT)の凝集体は、溶接部と化学反応を起こさない。溶接部においては、本明細書において開示されたような名目上の集電体のみが用いられる。結果として、電極素子15を接合するための多くの技術は破壊的であり、素子15に損傷を与える。しかしながら、他の実施形態では他の形態の接続が使用され、接続部22は溶接部21でない。
接続部22は、薄膜、メッシュ、複数のワイヤ、もしくは他の形態であってもよい。概して、接続部22は、導電性、及び電気化学的に不活性であること、などの特性から選択される。いつかの実施形態において、接続部22は、集電体2に存在するものと同じ1つ又は複数の材料から製造される。
いくつかの実施形態において、接続部22は、その上の酸化物層を除去することにより調製される。酸化物は、例えば、溶接部21を提供する前に、接続部22をエッチングすることにより除去してもよい。エッチングは、例えば、水酸化カリウム(KOH)により達成されてもよい。電極3は、ウルトラキャパシタ10の様々な実施形態で使用されてもよい。例えば、電極3は巻回されて、「ゼリーロール」タイプのエネルギー貯蔵装置内に配置されてもよい。
iii.セパレータ
本明細書に開示されたウルトラキャパシタの所定の実施形態において、電極3(a)及び3(b)はセパレータ5によって分離される。概して、セパレータ5は、正極3(b)から負極3(a)を分離するために使用される薄型構造材料(通常はシート)である。セパレータ5はさらに、各ペアの電極3を他のペアの電極3から分離するように作用してもよい。セパレータ5は、様々な材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態において、セパレータ5は不織布ガラスである。セパレータ5は、ガラスファイバー、セラミックス、及び、例えばドイツ国ウィルミントンのデュポンケミカルズ(DuPont Chemicals)によりテフロン(登録商標)として販売されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の、フッ素ポリマーから製造されていてもよい。例えば、不織布ガラスを用いて、セパレータ5は、主ファイバーとバインダーファイバーとを含んでいてもよい。ここで、バインダーファイバーは、各主ファイバーのものより小さなファイバー直径をそれぞれ有し、主ファイバーを一体に結合させる
ウルトラキャパシタ10の長寿命化のため、そして、高温において性能を確保するため、セパレータ5は、減少した量の不純物を有し、特に非常に限られた水分含有量を有するべきである。特に、化学反応を減少させ、ウルトラキャパシタ10の寿命を改善し、高温の用途において良好な性能を提供するため、約200ppmの水分の制約が望ましいことがわかっている。セパレータ5において使用される材料のいくつかの実施形態は、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、酸化アルミニウム(Al2O3)、ガラスファイバー、及びガラス強化プラスティック(GRP)、又はそれらの組み合わせを含む。
概して、セパレータ5のために使用される材料は、水分含有量、多孔率、融点、不純物含有量、結果として得られる電気的性能、厚さ、コスト、入手可能性等に従って、選択される。いくつかの実施形態において、セパレータ5は、疎水性材料から形成される。
したがって、各セパレータ5から過剰な水分を排除することを確実なものとするための手順を採用してもよい。他の技術の中で、真空乾燥手順を用いてもよい。表4に、セパレータ5において使用される材料の選択を示す。表5に、いくつかの関連する性能データがを示す。
表4に示すデータを収集するために、炭素材料に基づく2つの電極3(a)及び3(b)が設けられた。電極3(a)及び3(b)は対向して、互いに向かい合って配置された。各セパレータ5は、短絡を防ぐために電極3の間に配置された。次いで、3つの構成要素は電解質6で浸漬され、互いに圧縮された。2つのアルミニウムバーとPTFE材料とを外部構造として使用し、結果として得られたウルトラキャパシタ10を囲んだ。
表5に示されるデータを収集するために、ESR第1テストおよびESR第2テストを同じ構成で順々に行った。第2テストは、電解質6を構成要素にさらに浸透させる時間のために、第1テストの5分後に行った。
ある実施形態において、ウルトラキャパシタ10はセパレータ5を含まない。例えば、構造の幾何学的形状により電極3の物理的分離が保証される特定の実施形態では、電極3間に電解質6のみを有するだけで十分である。さらに具体的に、また物理的分離の例として、ある一つのウルトラキャパシタ10は、分離が連続的に保証されるようにハウジング内に配置されている電極3を含んでいてもよい。ベンチ上の例は、ビーカー内に与えられたウルトラキャパシタ10を含む。
iv.貯蔵セル
いったん組み立てられると、電極3及びセパレータ5は、貯蔵セル12を提供する。概して、貯蔵セル12は、巻かれた形態もしくは角柱の形態のいずれかで形成され、その後、円柱状もしくは角柱状のハウジング7にパッケージ化される。いったん電解質6が注入さると、ハウジング7は密封して封止すされてもよい。様々な例において、パッケージは、レーザ、超音波、及び/又は溶接技術を利用する技術により、密閉して封止される。貯蔵セル12の頑健な物理的保護を与えることに加えて、ハウジング7は、ハウジング7内の各端子8との電気的な連絡を提供するための外部接点を有して構成されている。そして、各端子8は、概して、エネルギー貯蔵媒体1に接続されている電気的リード線を介して、エネルギー貯蔵媒体1に貯蔵されているエネルギーへの電気的アクセスを提供する。
概して、本明細書に開示されたウルトラキャパシタ10は、約5.0×10-6 atm-cc/秒以下の漏れレートを有し、約5.0×10-10 atm-cc/秒以下の漏れレートを示してもよい密閉シールを提供することができる。良好な密閉シールの性能は、ユーザ、設計者、もしくは製造者により適切と判断され、「密閉」は、最終的には、ユーザ、設計者、製造者、もしくは他の当事者により定義される標準を意味すると考えられる。
漏れ検出は、例えば、トレーサーガスを使用することにより行ってもよい。漏れテストのため、ヘリウム等のトレーサーガスを使用することは、乾燥し、速く、正確で、かつ非破壊的な方法であるので有利である。この技術の一例において、ウルトラキャパシタ10はヘリウム環境に置かれる。ウルトラキャパシタ10は、圧力が加えられたヘリウムに供される。その後、ウルトラキャパシタ10は、ヘリウムの存在をモニタリングできる検出器(例えば原子吸光装置など)に接続される真空チャンバー内に配置される。加圧時間、圧力、及び内部体積についての知識により、ウルトラキャパシタ10の漏れレートを決定してもよい。
いくつかの実施形態において、集電体2の各1つに、少なくとも1つのリード線(本明細書において「タブ」とも称される)が電気的に接続される。複数のリード線(したがってウルトラキャパシタ10の極性に従う)は、ともにグループ化されて各端子8に接続されていてもよい。また、端子8は、「接点」と称される電気的アクセス(例えば、ハウジング7及び外部電極(本明細書において慣行として「フィードスルー」もしくは「ピン」とも称される)のいずれか一方)に接続されていてもよい。
v.ウルトラキャパシタハウジング
図5は、例示的なハウジング7の態様を示している。ハウジング7は、とりわけ、ウルトラキャパシタ10のための構造及び物理的保護を与える。この例において、ハウジング7は、環状かつ円柱状に形成された本体10及び相補的なキャップ24を含む。この例において、キャップ24は、その中央部において除去されて電気的絶縁体26で充填されている。キャップのフィードスルー19は、電気的絶縁体26を貫通して、ユーザに、貯蔵されたエネルギーへのアクセスを提供する。さらに、ハウジングは、内部バリアー30を有していてもよい。
この例は、キャップ24上に1つのフィードスルー19のみを示しているけれども、ハウジング7の構造は、本明細書に開示された実施形態に限定されないことを認識すべきである。例えば、キャップ24は、複数のフィードスルー19を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本体10は、環状の円柱の反対側の端部において、第2の同様のキャップ24を含む。さらに、ハウジング7は、環状かつ円柱形状の本体10を有する実施形態に限定されないことを認識すべきである。例えば、ハウジング7は、クラムシェルデザイン、角柱デザイン、ポーチ、又は、設計者、製造者、もしくはユーザのニーズに適した他の任意のデザインであってもよい。
ここで図6を参照すると、例示的なエネルギー貯蔵装置セル12が示されている。この例において、エネルギー貯蔵セル12は、「ゼリーロール」タイプのエネルギー貯蔵装置である。これらの実施形態において、エネルギー貯蔵材料は巻回されタイトなパッケージに入れられている。複数のリード線は、概して、各端子8を形成し、エネルギー貯蔵セル12の適切な層への電気的なアクセスを提供する。概して、組み立てられたとき、各端子8は、ハウジング7に(例えば、各フィードスルー19に、及び/又は、直接にハウジング7に)電気的に接続される。エネルギー貯蔵セル12は、様々な形態を取ってもよい。概して、各集電体2について1つの、少なくとも2つの複数のリード線(例えば端子8)が存在する。
非常に効率的に封止するハウジング7が望ましい。すなわち、外部環境(例えば、空気、湿気等)の侵入を防ぐことは、エネルギー貯蔵セル12の構成要素の清浄度を維持する助けとなる。さらに、これは、エネルギー貯蔵セル12から電解質6が漏れるのを防ぐ。
この例において、本体10の内部直径とぴったりフィットするように設計されている外部直径を有するキャップ24が製造される。組み立て時、キャップ24は、本体10に溶接されてもよく、これにより、ユーザに密閉シールを提供する。例示的な溶接技術には、レーザ溶接及びTIG溶接が含まれ、適切と認められる他の形態の溶接が含まれていてもよい。
ハウジング7のための一般的な材料には、ステンレススチール、アルミニウム、タンタル、チタン、ニッケル、銅、錫、様々な合金、積層体等が含まれる。何らかのポリマーに基づく材料等の構造材料を(概して、少なくとも何らかの金属成分と組み合わせて)ハウジング7に使用してもよい。
いくつかの実施形態において、本体10を作製するために使用される材料には、アルミニウムが含まれる。このアルミニウムは、設計者もしくは製造者により適切であると認められた任意のタイプのアルミニウムもしくはアルミニウム合金を含みうる(本明細書では、これらの全てが広く単に「アルミニウム」と称される)。様々な合金、積層体等が、アルミニウム(当該アルミニウムは本体10の内部に露出されている)上に(例えばこれをクラッドで覆うように)配置されていてもよい。本体及び/又はハウジング7を補うように、追加の材料(例えば、何らかのポリマーに基づく材料等の構造材料もしくは電気的絶縁材料等)を使用してもよい。同様に、アルミニウム上に配置される材料は、設計者もしくは製造者により適切であると認められたものにより選択されてもよい。
いくつかの実施形態において、内部構成要素のために多層材料が使用される。例えば、端子8のうちの少なくとも1つにおいて多層材料を提供するため、アルミニウムはステンレススチールのクラッドで覆われていてもよい。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、アルミニウムの一部は、ステンレススチールを露出させるために除去されてもよい。次いで、露出されたステンレススチールは、単純な溶接法を用いることにより端子8をフィードスルー19に取り付けるために使用されてもよい。
内部構成要素のためクラッド材料を使用することは、クラッド材料の特定の実施形態を要求してもよい。例えば、アルミニウム(下層)、ステンレススチール及び/又はタンタル(中間層)、及びアルミニウム(上層)を含むクラッド材料を使用し、ウルトラキャパシタ10の内部環境にステンレススチールをさらすことを制限することは有益であろう。これらの実施形態は、例えば、PEFE等のポリマー材料で追加的に被覆することにより拡張されてもよい。
したがって、多層材料を利用するハウジング7を提供することは、従来技術に対して、比較的低い初期値と、所定時間にわたる実質的にゆっくりとして漏れ電流の増加とを有する漏れ電流を示すエネルギー貯蔵装置を提供する。重要なことであるが、エネルギー貯蔵装置の漏れ電流は、従来のキャパシタであれば非常に大きな初期値の漏れ電流及び/又は所定時間にわたる非常に急速な漏れ電流の増大を示すような周囲の温度にウルトラキャパシタ10がさらされるとき、実用的な(すなわち、望ましくは低い)レベルに維持される。
さらに、ウルトラキャパシタ10は、ハウジング7とエネルギー貯蔵セル12との間の反応が減少する結果としての、他の利点を示す可能性がある。例えば、エネルギー貯蔵の実効直列抵抗(effective series resistance:ESR)は、所定時間にわたって比較的低い値を示しうる。さらに、従来技術のキャパシタにおいて起こりうる望ましくない化学反応は、しばしば、ガス放出、もしくは密閉して封止されたハウジングの場合にはハウジング7の膨張、などの望ましくない影響をもたらす。両方の場合において、これは、ハウジング7の構造的完全性及び/又はエネルギー貯蔵装置の密閉シールを損なうことになる。最終的には、これは、従来技術のキャパシタのリークもしくは破滅的故障をもたらしうる。これらの影響は、開示されたバリアーを適用することにより、実質的に減少もしくは除去されるであろう。
多層材料(クラッド材料)を使用することにより、ステンレススチールをハウジング7に組み込んでもよく、したがって、ガラス-金属シールを有する構成要素を使用してもよい。当該構成要素は、レーザーもしくは抵抗溶接等の技術を用いることによりクラッド材料のステンレススチールの側に溶接してもよい。一方、クラッド材料のアルミニウムの側を他のアルミニウム部品(例えば本体10)と溶接してもよい。
いくつかの実施形態において、絶縁ポリマーを使用して、ハウジング7の部分をコーティングしてもよい。このようにして、エネルギー貯蔵装置の構成要素が許容可能なタイプの金属(例えばアルミニウム)のみにさらされることを保証することが可能である。例示的な絶縁ポリマーには、PFA、FEP、TFE、及びPTFEが含まれる。適切なポリマー(もしくは他の材料)は、システムの設計者もしくは製造者のニーズ及び各材料の特性のみにより制限される。図17を参照する。図17においては、少量の絶縁材料39がスリーブ51のステンレススチール及びフィードスルー19に対して電解質6をさらすことを制限するために含まれている。この例では、端子8は、例えば溶接等によりフィードスルー19に接続され、次いで、絶縁材料39でコーティングされる。
1.ハウジングキャップ
この例は、キャップ24上において1つのフィードスルー19のみを示しているけれども、ハウジング7の構造は、本明細書に開示された実施形態に限定されないことを認識すべきである。例えば、キャップ24は、複数のフィードスルー19を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本体10は、環状の円柱の反対側の端部において、第2の同様のキャップ24を含む。さらに、ハウジング7は、環状かつ円柱形状の本体10を有する実施形態に限定されないことを認識すべきである。例えば、ハウジング7は、クラムシェルデザイン、角柱デザイン、ポーチ、又は、設計者、製造者、もしくはユーザのニーズに適した他の任意のデザインであってもよい。
ここで図12を参照する。キャップ24のためのブランク34の実施形態の態様が示されている。図12Aにおいて、ブランク34は多層材料を含む。第1の材料41の層は、アルミニウムであってもよい。第2の材料42は、ステンレススチールであってもよい。図12の実施形態において、ステンレススチールは、アルミニウムを覆うクラッドとして設けられる。それにより、金属特性の所望の組み合わせを示す材料が提供される。すなわち、本明細書で提示する実施形態において、アルミニウムは、エネルギー貯蔵セルの内部(すなわち、ハウジング)にさらされ、一方、ステンレススチールは外部にさらされる。この方法では、製造のためにステンレススチールの構造特性及び金属特性(例えば溶接可能性)を当てにしつつ、アルミニウムの有利な電気的特性を享受する。多層材料は、適切と認められる追加の層を含んでいてもよい。
上述したように、第1の材料41の層は、第2の層42の層を覆うクラッドとして設けられる(もしくは、第2の層42のクラッドで覆われている)。更に図12Aを参照すると、一実施形態において、(図示されるように)平坦なストックのシートが、平坦なキャップ24を作製するためのブランク34を提供するのに用いられる。キャップ24を本体10に取り付けることを容易にするため、第2の材料42の層の一部を(例えば、キャップ24の外周の周りにおいて)除去してもよい。図12Bにおいて、ブランク34の他の実施形態が示されている。この例において、ブランク34は、クラッド材料のシートとして与えられ、これは、凹状構成に形成されている。図12Cにおいて、ブランク34は、クラッド材料のシートとして与えられ、これは、凸状構成に形成されている。様々な実施形態のブランク34(図12に示されたもの等)から製造されているキャップ24は、ハウジング7の本体10に対する溶接をサポートするように構成されている。より具体的には、図12Bの実施形態は、本体10の内径内にフィットするように適合され、一方、図12Cの実施形態は、本体10の外径のまわりにフィットするように適合されている。様々な代替の実施形態において、シート内のクラッド材料の複数の層を反転させてもよい。
ここで図13を参照し、電極アセンブリ50の実施形態を示す。電極アセンブリ50は、ブランク34に設置されるように、かつ、エネルギー貯蔵媒体からユーザへの導通を提供するように設計されている。概して、電極アセンブリ50は、スリーブ51を含む。スリーブ51は絶縁体26を囲み、次いで、絶縁体26はフィードスルー19を囲む。この例において、スリーブ51は、フランジが付された上部を有する環状の円柱である。
キャップ24を組み立てるため、ブランク34に孔(図示せず)が形成されている。孔は、電極アセンブリ50に合うサイズを有する幾何学的形状を有する。したがって、電極アセンブリ50は、ブランク34の孔に挿入される。いったん電極アセンブリ50が挿入されると、電極アセンブリ50は、溶接等の技術によりフランク34に固定されてもよい。溶接は、スリーブ51のフランジの外周の周りにおいて溶接するレーザー溶接であってもよい。図14を参照すると、溶接が行われる点61が示されている。この実施形態において、点61は、ステンレススチールをステンレススチールに溶接するための適切な位置、比較的簡単な溶接法を提供する。したがって、本明細書における教示により、ブランク34上の場所に電極アセンブリ50をしっかりと溶接することができる。
スリーブ51を構成するための材料には、様々なタイプの金属もしくは金属合金を含んでいてもよい。概して、スリーブ51のための材料は、例えば、構造的完全性及び(ブランク34に対する)接合可能性(bondability)にしたがって選択される。スリーブ51のための例示的な材料には、304ステンレススチールもしくは316ステンレススチールが含まれる。フィードスルー19を構成するための材料には、様々なタイプの金属もしくは金属合金が含まれていてもよい。概して、フィードスルー19のための材料は、例えば、構造的完全性及び電気伝導度にしたがって選択される。電極のための例示的な材料には、446ステンレススチールもしくは52合金が含まれる。
概して、絶縁体26は、既知の技術(すなわち、ガラス-金属接合)によってスリーブ51及びフィードスルー19と接合される。絶縁体26を構成するための材料には、以下に制限される訳ではないが、様々なタイプのガラスが含まれていてもよい。これには、高温ガラス、セラミックガラス、もしくはセラミック材料が含まれる。概して、絶縁体のための材料は、例えば、構造的完全性及び電気抵抗(すなわち、電気的絶縁特性)にしたがって選択される。
ガラス-金属接合に依存する構成要素(例えば、電極アセンブリ5の前述の実施形態等)を使用すること、並びに、様々な溶接技術を使用することは、エネルギー貯蔵装置の密閉シールを提供する。同様に密閉シールを提供するために、他の構成要素を使用してもよい。本明細書において使用されているように、用語「密閉シール」は、概して、本明細書において定義されているもの以下の漏れレートを示すシールを意味する。しかしながら、実際のシールの有効性は、この標準よりも良好に機能してもよいと考えられる。
電極アセンブリ50をブランク34に接続するための追加のもしくは他の技術には、そのような技術が適切であると考えられるときは、スリーブ51のフランジの下において(フランジと第2の材料42の層との間において)接着剤を使用することが含まれる。
ここで図15を参照すると、エネルギー貯蔵セル12は本体10内に配置される。少なくとも1つの端子8は、(例えば、フィードスルー19に対して)適切に接続されている。そして、キャップ24は本体10と合わされて、ウルトラキャパシタ10を提供する。
いったん組み立てられると、キャップ24及び本体10は封止されてもよい。図22は、組み立てられたエネルギー貯蔵装置の様々な実施形態(この場合、ウルトラキャパシタ10)を示している。図16Aにおいて、平坦なキャップ24を作製するために、平坦なブランク34(図12Aを参照)が使用される。いったんキャップ24が本体10上に設置されると、キャップ24及び本体10は溶接されて、シール62が作製される。この場合、本体10は環状の円柱であるので、溶接は、本体10及びキャップ24の外周のまわりに進行して、シール62を提供する。第2の実施形態において、図16Bに示すように、凹状のキャップ24を作製するために、凹状のブランク34(図12Bを参照)が使用される。いったんキャップ24が本体10上に設置されると、キャップ24及び本体10は溶接されて、シール62が作製される。第3の実施形態においては、図16Cに示すように、凸状のキャップ24を作製するため、凸状のブランク34(図12Cを参照)が使用される。いったんキャップ24が本体10上に設置されると、シール62を作製するため、キャップ24と本体10とは溶接されてもよい。
必要に応じて、多層材料における他の金属を露出するため、(例えば、機械加工もしくはエッチング等の技術により)クラッド材料を除去してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、シール62には、アルミニウム-アルミニウム溶接が含まれていてもよい。アルミニウム-アルミニウム溶接は、必要に応じて、他の固定具により補完されてもよい。
他の技術を使用してハウジング7を封止してもよい。例えば、レーザー溶接、TIG溶接、抵抗溶接、超音波溶接、及び他の形態の機械的シールを使用してもよい。しかしながら、概して、ウルトラキャパシタ10において提供される頑健な密閉シールを提供するためには、伝統的な形態の機械的シールだけでは十分ではないことに留意すべきである。
ここで図12を参照する。このアセンブリの態様では、キャップ24の他の実施形態が示されている。図12Aは、キャップ24の本体を提供するために使用されるテンプレート(すなわち、ブランク34)を示す。概して、テンプレートは、適切なタイプのエネルギー貯蔵セル(例えば、ウルトラキャパシタ10等)のハウジング7に合うサイズで形成されている。キャップ24は、最初、テンプレートを形成するテンプレートを提供し、当該テンプレート(図12Bに図示)内にドーム37を含め、その後、ドーム37に孔を開けてスルーウェイ32(図12Cに図示)を提供することにより形成してもよい。勿論、ブランク34(例えばストックの円状片)は押圧してもよく、さもなければ、上述の複数の特徴が同時に提供されるように製造されてもよい。
概して、及び、これらの実施形態に関して、キャップは、アルミニウム、もしくはその合金から形成されていてもよい。しかしながら、キャップは、製造者、ユーザ、設計者等により適切であると認められる任意の材料により形成されていてもよい。例えば、キャップ24は、スチールから製造され、不動態化されてもよく(すなわち、不活性のコーティングで覆われ)、さもなければ、ハウジング7において使用するために調製されてもよい。
ここで図19を参照すると、電極アセンブリ50の他の実施形態が示されている。これらの実施形態において、電極アセンブリ50は、フィードスルー19と、フィードスルー19の周りに配置された半球形状の材料とを含む。この半球形状の材料は、絶縁体26として機能し、概して、ドーム37に合うように形成されている。半球状の絶縁体26は、電解質6の化学的な影響に耐えつつ、密閉シールを提供するための適切な材料から製造されていてもよい。例示的な材料には、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)、FEP(フッ素化チレンプロピレン)、PVF(ポリビニルフルオライド)、TFE(テトラフルオロエチレン)、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、他のフルオロポリマーに基づく材料、(様々な程度で)同様の特性を示し、十分な性能(例えば、とりわけ、高温で溶媒、酸、及び塩基に対する高い耐性を示すこと、低いコスト、など)を提供しうる任意の他の材料を含む。
フィードスルー19は、アルミニウム、もしくはその合金により形成されてもよい。しかしながら、フィードスルー19は、製造者、ユーザ、設計者等により適切であると認められる任意の材料から形成されてもよい。例えば、フィードスルー19は、スチールから製造され、不動態化され(すなわち、シリコン等の不活性コーティングにより覆われ)、さもなければ、電極アセンブリ50において使用するために調製されてもよい。不動態化のための例示的な技術は、基板の表面上に水素化されたアモルファスシリコンのコーティングを堆積し、有効な時間長にわたって圧力及び上昇させた温度の下で少なくとも1つの不飽和炭酸水素基を有する結合剤に基板を露出することによりコーティングされた基板を官能基化することを含む。水素化されたアモルファスシリコンコーティングは、有効な時間長にわたって圧力及び上昇させた温度の下で、水素化ケイ素ガスに対して基板を露出することにより堆積される。
半球状の絶縁体26は、キャップ24に組み立てられたときぴったりフィットさせること(すなわち、密閉シール)が達成されるように、ドーム37に対するサイズを有していてもよい。半球状の絶縁体26は、完全に対称でなくても、典型的な半球のプロポーションを有していなくてもよい。すなわち、半球状の絶縁体26は、実質的に半球状であり、例えば、プロポーションのわずかな調整、適切なフランジ(例えば、基部におけるもの)、及び適切と認められる他の特徴を含む。半球状の絶縁体26は、概して、同質の材料から形成されるが、しかしながら、これは必須ではない。例えば、半球状の絶縁体26は、所望の膨張性もしくは圧縮性を提供するため、空気もしくはガスにより充填されたトーラス(図示せず)が内部に含まれていてもよい。
図20に示されているように、電極アセンブリ50は、半球状の密閉シールを含むキャップ24の実施形態を提供するため、テンプレート(すなわち、形成されたブランク34)内に挿入されてもよい。
図21に示すように、様々な実施形態において、リテイナー43は、キャップ24の下部(すなわち、ハウジング7の内部と対向し、エネルギー貯蔵セル12と対向するキャップ24の一部)に接合されてもよく、さもなければ 、これに合わされてもよい。リテイナー43は、アルミニウム溶接(例えば、レーザー、超音波等)などの様々な技術によってキャップ24に接合されていてもよい。例えば、スタンピング(すなわち、機械的接合)及びろう付け等を含む他の技術をボンディングのために使用してもよい。例えば、リテイナー43の周に沿って接合してもよい。概して、ボンディングは、所望のシール71を作製するため、少なくとも1つの接合点に提供される。リテイナー43内において絶縁体26を封止するために、複数のリベット等少なくとも1つの固定具を使用してもよい。
図21の例において、キャップ24は、凹状デザインのものである(図12B参照)。しかしながら、他のデザインを使用してもよい。例えば、凸状キャップ24を提供してもよく(図12C)、オーバー-キャップ24を使用してもよい(図12Cの実施形態の変形例であり、これは、図16Cに示すように載置されるように構成される)。
キャップ及びフィードスルー19のために使用される材料は、半球状の絶縁体26の熱膨張の観点から選択されてもよい。さらに、熱膨張に対処するように製造技術を改良してもよい。例えば、キャップ24を組み立てるとき、製造者は、半球状の絶縁体26に圧力を加え、それにより、半球状の絶縁体26を少なくともいくぶん圧縮してもよい。このようにして、密閉シールの有効性を損なうことなく、キャップ24をすくなくともいくぶん熱膨張させる。
組み立てられたウルトラキャパシタをさらに明らかにするため、図22を参照する。ここでは、ウルトラキャパシタ10の切り取り図が示されている。この例においては、貯蔵セル12が本体10に挿入され、本体10内に包含されている。複数のリード線のそれぞれは、一体に結束され、端子8の一方としてハウジング7に接続されている。いくつかの実施形態において、複数のリード線が本体10の下部に(内部で)接続され、それにより、本体10を負の接点55とする。同様に、他方の複数のリード線を結束してフィードスルー19に接続し、正の接点56を提供する。負の接点55及び正の接点56の電気的絶縁は、電気的絶縁体26により維持される。概して、リード線を接続することは、レーザー溶接及び超音波溶接の少なくとも一方などの溶接により達成される。適切であると考えられる他の技術が使用されてもよい。
図31に、本明細書に開示したウルトラキャパシタの所定の追加の実施形態を示す。図31A及び31Bは、ウルトラキャパシタハウジングの2つの代替の設計を示す。ここで、ハウジングの上カバー311は、内部又は外部空間の制約と所望の端子設計とに依存して、金属容器312に関して異なる向きを有する。図31Aは所定の実施形態による例示的なハウジング設計を示す。ここで、ガラス-金属シール310の大部分は、ゼリーロール23と同様であるウルトラキャパシタのゼリーロール313を含んでいるハウジングの外側の外部空間に面するような向きを有する。所定の他の実施形態において、ガラス-金属シール310の大部分は、ゼリーロール23と同様であるウルトラキャパシタのゼリーロール313を含んでいるハウジングの内部空間に面するような向きを有する。
2.内部バリアー
ここで図7を参照すると、ハウジング7は、内部バリアー30を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、バリアー30はコーティングである。この例において、バリアー30は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、この組成をバリアー30に適したものにする様々な特性を示す。PTFEは、摂氏約327度の融点を有し、優れた誘電特性を有し、既知のすべての固体材料のうちで3番目に最低である約0.05~0.10の摩擦係数を有し、高い耐食性、及び他の有益な特性を有する。概して、キャップ24の内部は、その上に配置されたバリアー30を含んでいてもよい。
バリアー30には他の材料を使用してもよい。これらのうちで、他の材料は、セラミックの形態(適切に適用され、性能基準を満たしうる任意のタイプのセラミック)、他のポリマー(好ましくは高温ポリマー)等である。例示的な他のポリマーには、パーフルオロアルコキシ(PFA)及びフッ素化エチレンプロピレン(FEP)並びにエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)が含まれる。
バリアー30は、エネルギー貯蔵セル12と、ハウジング7もしくはその構成要素との間の電気化学反応もしくは他のタイプの反応を減少させる任意の材料もしくは材料の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、この組み合わせは、単一の層内における異なる材料の均質分散として明示される。他の実施形態において、この組み合わせは、複数の層内における異なる材料として明示される。他の組み合わせを用いてよい。端的に言えば、バリアー30は、少なくとも1つの電気的絶縁体であり、化学的に不活性(すなわち、低い反応性を示す)であり、それゆえ、貯蔵セル12とハウジング7との間の電気的及び化学的な相互作用の少なくとも一方に対して実質的に耐性を有するか妨げるものとみなされてもよい。いくつかの実施形態において、用語「低い反応性」及び「低い化学反応性」は、概して、当事者にとって懸念のレベル未満の化学的相互作用のレートを意味する。
概して、ハウジング7の内部は、バリアー30のホストとなり、ハウジング7の内部にさらされる表面全体が覆われてもよい。少なくとも1つの未処理領域31が、本体10内に含まれていてもよいし、キャップ24の外面36の上に含まれていてもよい(図8Aを参照)。いくつかの実施形態において、アセンブリ要求を満たすため、未処理領域31(図8Bを参照)、例えば、(溶接などにより)シールされもしくは接続された領域等が含まれていてもよい。
バリアー30は、従来技術を用いて内部部分に適用されてもよい。例えば、PTFEの場合、バリアー30は、バリアー30を内部表面上にコーティングとしてペイントもしくはスプレーすることにより適用してもよい。未処理領域31が所望の完全性を保持することを確実なものとするためのプロセスの一部として、マスクを使用してもよい。端的に言えば、様々な技術を用いてバリアー30を提供してもよい。
例示的な実施形態において、バリアー30は、約3ミリ~約5ミリの厚さを有する。一方、バリアー30のために使用される材料はPFAに基づく材料である。この例において、バリアー30を構成する材料を受けるための表面は、酸化アルミニウム等によるグリットブラスティング(grit blasting)で調製される。いったん表面が洗浄されると、材料が、最初は液体として塗布され、その後は粉末として塗布される。当該材料は、熱処理プロセスにより硬化される。いくつかの実施形態において、加熱サイクルは、摂氏約370度の温度において、約10分~約15分の継続時間を有する。これにより、ピンホールサイズの欠陥もしくはそれより小さい欠陥が実質的に存在しないバリアー30の連続的な仕上げを行うことができる。図9は、本明細書における教示に係るある実施形態のウルトラキャパシタ10のアセンブリを示している。この実施形態において、ウルトラキャパシタ10は、そこに配置されたバリアー30と、そこに配置されたバリアー30を有するキャップ24と、エネルギー貯蔵セル12とを備える本体10を含む。組み立ての間、キャップ24は、本体10の上に設置される。端子8のうちの第1のものは、キャップのフィードスルー19に電気的に接続され、一方、端子8のうちの第2のものは、典型的には、下部、側部、もしくはキャップ24において、ハウジング7と電気的に接続されている。いくつかの実施形態において、端子8のうちの第2のものは、(例えば、反対側のキャップ24等の)他のフィードスルー19に接続されている。
ハウジング7の1つ又は複数の内面に配置されたバリアー30により、ハウジング7と電解質との間の電気化学的及び他の反応が大きく減少し、もしくは実質的に除去される。これは、化学的及び他の反応のレートが概して増大する、より高温の場合において特に重要である。
特に、バリアー付きのウルトラキャパシタ10の漏れ電流は、比較的低い初期値を示し、所定時間にわたって実質的に増加しない。一方、バリアーなしのウルトラキャパシタ10の漏れ電流は、比較的高い初期値を示し、所定時間にわたって実質的に増加する。
概して、バリアー30は、エネルギー貯蔵セル12とハウジング7との間の適切な材料の適切な厚さを与える。バリアー30は、均一の混合物、不均一の混合物、及び/又は少なくとも1つの層の材料を含んでいてもよい。バリアー30は、完全なカバー(すなわち、電極接点を除く、ハウジングの内部表面領域のカバーを提供する)を提供してもよく、もしくは部分的なカバーを提供してもよい。いくつかの実施形態において、バリアー30は、複数の構成要素から構成されてもよい。
図11を参照すると、追加の実施形態の態様が示されている。いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵セル12は、エンベロープ73内に堆積されている。すなわち、エネルギー貯蔵セル12は、その上に配置されたバリアー30を有し、その上を覆うようにラッピングされ、さもなければ、いったん組み立てられるとハウジング7からエネルギー貯蔵セル12を分離するように適用される。エンベロープ73は、エネルギー貯蔵セル12をハウジング7内にパッケージ化するよりもずっと前に適用されてもよい。それゆえ、エンベロープ73の使用は、例えば製造者等にある利点をもたらす可能性がある。(説明のため、エネルギー貯蔵セル12上に緩く配置されているエンベロープ73が示されていることに留意すべきである)。
いくつかの実施形態において、エンベロープ73は、コーティングとともに使用される。コーティングは、内面の少なくとも一部の上に配置される。例えば、ある実施形態では、コーティングは、エンベロープ73が少なくとも部分的に損なわれうる領域(例えば、突出する端子8)のみにおいて、ハウジング7の内部に配置されている。エンベロープ73及びコーティングは、一緒に、効果的なバリアー30を形成する。
したがって、バリアー30を組み込むことにより、従来技術に比して、漏れ電流が比較的低い初期値を有し、所定時間にわたって漏れ電流が実質的によりゆっくりと増大するウルトラキャパシタを提供しうる。重要なことであるが、ウルトラキャパシタの漏れ電流は、従来技術のキャパシタであれば非常に大きな漏れ電流の初期値を示し、及び/又は所定時間にわたって非常に急速な漏れ電流の増大を示すであろう周囲温度にウルトラキャパシタがさらされるとき、実用的な(すなわち、望ましくは低い)レベルに維持される。
このようにバリアー30の実施形態及びその様々な態様を開示したとき、ハウジング7とエネルギー貯蔵媒体1との間の反応が減少した結果、ウルトラキャパシタ10は他の利点を示しうると認識されるべきである。例えば、ウルトラキャパシタ10の実効直列抵抗(ESR)は、所定時間にわたって比較的低い値を示しうる。さらに、従来技術のキャパシタにおいて起こりうる望ましくない化学反応は、しばしば、ガス放出、もしくは密閉して封止されたハウジングの場合にはハウジングの膨張、などの望ましくない影響をもたらす。両方のケースにおいて、これは、ハウジングの構造的完全性及び/又はキャパシタの密閉シールを損なうことになる。最終的には、これは、従来技術のキャパシタのリークもしくは破滅的故障をもたらしうる。いくつかの実施形態において、これらの効果は、開示されたバリアー30を適用することにより、実質的に減少もしくは排除されうる。
用語「バリアー」及び「コーティング」は、本明細書における教示の限定と認識すべきではない。すなわち、適切な材料をハウジング7、本体10、及び/又はキャップ24の内部に適用するための任意の技術を使用してもよい。例えば、他の実施形態において、バリアー30は、ハウジング本体10を構成する材料内にもしくはその上に実際に組み込まれる。その後、当該材料は、適切に加工もしくは形成され、ハウジング7の様々な構成要素が形成される。バリアー30を適用するための多くの可能な技術のいくつかを検討する際、ロールオンすること、スパッタリングすること、焼成すること、積層すること、印刷すること、さもなければ、1つ又は複数の材料を塗布することは同様に適切でありうる。端的には、バリアー30は、製造者、設計者、及び/又はユーザにより適切と認められる任意の技術を用いて適用してもよい。
バリアー30において使用される材料は、反応度、誘電値、融点、ハウジング7の材料への接着性、摩擦係数、コスト、他のそのようなファクター等の特性にしたがって、選択することができる。所望の特性を提供するために、材料の組み合わせ(例えば、多層化された、混合された、さもなければ組み合わせ)を使用してもよい。
バリアー30を備えるハウジング7等の改良されたハウジング7を用いることにより、いくつかの実施形態において、AESの劣化が制限されうる。バリアー30は、改良されたハウジング7を提供するための1つの技術を示しているけれども、他の技術を用いてもよい。例えば、アルミニウムから作製されたハウジング7を使用することは、電解質6の存在下におけるアルミニウムの電気化学的特性のため、好適であろう。しかしながら、アルミニウムの製造上の困難を前提として、アルミニウムを利用するハウジング7の実施形態を構成することは(現在まで)可能ではなかった。
ハウジング7の追加の実施形態には、内部表面全体にアルミニウムを提供するものが含まれる。ハウジングを溶接する能力及び密閉して封止する能力をユーザに提供しつつ、内部表面は電解質にさらされてもよい。ウルトラキャパシタ10の改善された性能は、内部腐食の低減、伝導性媒体における異種金属を使用することに関連する問題の除去、及び他の理由により達成してもよい。好適には、ハウジング7は、ガラス-金属シールを含み(ステンレススチール、タンタル、もしくは他の有利な材料及び成分から製造されたものを含みうる)、それゆえ経済的に製造できるような利用可能な電極挿入物などの、既存の技術を用いる。
本明細書では、ウルトラキャパシタ10に適したハウジング7の実施形態として開示しているが、これらの実施形態は、(バリアー30の場合と同様に)適切であると認められる任意のタイプのエネルギー貯蔵装置とともに使用してもよく、実用できる任意のタイプの技術を含んでもよい。例えば、電気化学的バッテリー、特に、リチウムに基づくバッテリーを含む他の形態のエネルギー貯蔵装置を使用してもよい。
3.ウルトラキャパシタハウジングの他の構成要素
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、ハウジングは、その内部表面の実質的に一部を覆うように配置されたバリアーを含む。特定の実施形態においては、当該バリアーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)の少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、バリアーはセラミック材料を含む。当該バリアーは、また、耐食性、所望の誘電特性、及び低い電気化学反応性を示す材料を含んでいてもよい。バリアーの特定の実施形態において、バリアーは多層材料を含む。
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、当該ハウジングは、複数層の材料を含む。例えば、当該複数層の材料には、第2の材料上を覆うクラッドとして設けられた第1の材料が含まれる。特定の実施形態において、当該複数層の材料は、スチール、タンタル、及びアルミニウムの少なくとも1種を含む。
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、当該ハウジングは少なくとも1つの密閉シールを含む。
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、当該ハウジングは、少なくとも1つのガラス-金属シールを含む。例えば、当該ガラス-金属シールのピンは接点のうちの1つを提供する。ある特定の実施形態において、当該ガラス-金属シールは、鉄-ニッケル-コバルト合金、ニッケル鉄合金、タンタル、モリブデン、ニオブ、タングステン、ならびに、ステンレス及びチタンの形態からなるグループから選択された材料で構成されるフィードスルーを備える。他の特定の実施形態において、当該ガラス-金属シールは、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、及びタングステン、並びにそれらの合金からなるグループから選択された少なくとも一種の材料から構成される本体を備える。
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、密閉シールは、約5.0×10-6 atm-cc/秒以下、例えば約5.0×10-7 atm-cc/秒以下、例えば約5.0×10-8 atm-cc/秒以下、例えば約5.0×10-9 atm-cc/秒以下、例えば約5.0×10-10 atm-cc/秒以下の漏れレートを示す。
ある実施形態のウルトラキャパシタにおいて、少なくとも1つの接点が、他のウルトラキャパシタの他の接点と合わされるように構成されている。
ある態様のウルトラキャパシタにおいて、当該貯蔵セルは、その外部を覆うように配置されたラッパーを含む。例えば、当該ラッパーは、PTFE及びポリイミドの一方を含む。
概して、ハウジング7の内部にさらされる1つ又は複数の材料は、電解液6、例えばAESにさらされるとき、十分に低い反応性を示す。これは、実施形態のいくつかを単に例示したものであり、本明細書の教示を制限するものではない。
vi.ウルトラキャパシタ用の製造技術
本明細書では、不純物を低減させるか、開示したHTRESを製造する方法を含む、本明細書に開示された装置、システム、及び方法で利用されてもよいウルトラキャパシタを生成するための所定の方法が提供される。本明細書に開示された精製方法は、例えば電解質(例えばAES)、電極、又はセパレータなどの、本明細書に開示したHTRESの任意の構成要素に適用可能であってもよい。
本明細書に開示されたウルトラキャパシタの構成で考慮される重要な態様は、良好な化学的衛生状態を維持することである。構成要素の清浄度を確保するため、さまざまな実施形態では、エネルギー貯蔵媒体1の2つの電極3を構成する活性炭素、カーボンファイバー、レーヨン、カーボンクロス、及び/又はナノチューブが、真空環境下、高温で乾燥させる。セパレータ5はまた、真空環境下で、高温で乾燥される。電極3及びセパレータ5が真空下で乾燥されると、それらは、50ppm未満の水を含む雰囲気において、最終的なシールもしくはキャップなしに、ハウジング7内にパッケージ化される。キャップされていないウルトラキャパシタ10は、例えば、摂氏約100度から摂氏約300度の温度範囲にわたって、真空下において、乾燥されてもよい。いったん最終乾燥が完了すると、電解質6が加えられてもよく、ハウジング7は、比較的乾燥した雰囲気(約50ppm未満の水分を含む雰囲気等)において封止される。勿論、他の組み立て方法を用いてもよく、前述の事項は、単にウルトラキャパシタ10のアセンブリの例示的な態様を提供するだけである。
さらに、本明細書に開示されたウルトラキャパシタの高効率のエネルギー貯蔵装置を提供するために、所定の頑健な組み立て技術が要求されうることを認識すべきである。したがって、組み立て技術のいくつかを以下に議論する。
いったんウルトラキャパシタ10が製造されると、それは、漏れ電流をほとんど発生させないかもしくはまったく発生させることなく、また、抵抗をほとんど増大させることなく、高温用途で使用されてもよい。本明細書において記載されているウルトラキャパシタ10は、摂氏約-40度から摂氏210度までの温度において、効率的に動作しうる。当該装置の体積で正規化された漏れ電流は、全動作電圧範囲及び全動作温度範囲にわたって、当該装置の体積について1リットルあたり10ミリアンペア(A/L)未満であった。ある実施形態では、キャパシタは、摂氏-40度から摂氏210度の温度にわたって動作可能である。
概略すると、円柱状に形成されたウルトラキャパシタ10の組み立て方法が提供されている。電極3から始めて、いったんエネルギー貯蔵媒体1が集電体と接続されると、各電極3が製造される。その後、複数のリード線が適切な位置において各電極3と接続される。その後、複数の電極3は、所定方向に向きづけられて、適切な個数のセパレータ5とともに組み立てられてそれらの間に配置され、貯蔵セル12が形成される。貯蔵セル12は、その後、円柱状に巻回されてもよく、ラッパーで固定されてもよい。概して、正及び負の各リード線は、その後、束ねられて各端子8を形成する。
電解液6、すなわち、上述のAESをウルトラキャパシタ10に注入する前(例えば、貯蔵セル12の組み立ての前もしくはその後)、ウルトラキャパシタ10の各構成要素は、水分を除去するように乾燥されてもよい。これは、組み立てられていない構成要素(即ち、空のハウジング7ならびに各電極3および各セパレータ5)で行ってよく、後に組み立てられた構成要素(貯蔵セル12等)で行ってよい。
乾燥は、例えば、真空環境下、高温で実行してもよい。いったん乾燥させると、貯蔵セル12は、その後、最終的なシールもしくはキャップを有しないハウジング7内にパッケージ化されてもよい。いくつかの実施形態において、パッケージ化は、50ppm未満の水を含む雰囲気において実行される。キャップなしのウルトラキャパシタ10は、その後、再度乾燥させてもよい。例えば、ウルトラキャパシタ10は、摂氏約100度から摂氏約300度までの温度範囲にわたって真空下で乾燥されてもよい。いったん最終乾燥が完了すると、その後、ハウジング7は、例えば、50ppm未満の水分を含む雰囲気において封止されてもよい。
いくつかの実施形態において、乾燥プロセス(「焼成」プロセスとも称される)が完了すると、当該構成要素を取り囲む環境は、不活性ガスにより充填されてもよい。例示的なガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、及び同様の特性を示す他のガス(並びにこれらの組み合わせ)が含まれる。
概して、注入口(ハウジング7の表面の孔)はハウジング7に含まれる。もしくは、注入口は後で追加されてもよい。ウルトラキャパシタ10が電解質6、例えばAESで満たされると、注入口を閉じてよい。注入口の閉止は、例えば、注入口の中または上に材料(例えば、ハウジング7と化学反応を起こさない金属)を溶接することにより達成してよい。いくつかの実施形態において、ウルトラキャパシタ10を他の環境に移して、その後で再び開き、充填し、閉じるために、充填の前に注入口を一時的に閉じてもよい。しかしながら、本明細書において議論しているように、ウルトラキャパシタ10は、同じ環境において、乾燥及び充填されると考えられる。
所望の量のAESでハウジング7を満たすために多数の方法を用いてよい。概して、充填プロセスを制御することは、とりわけ、容量の増大と、等価直列抵抗(equivalent-series-resistance:ESR)の減少と、電解質のむだの制限とを提供しうる。真空充填方法は、ハウジング7を充填し、電解質8で貯蔵セル12を湿潤させる技術の非限定的な例として与えられる。
しかしながら、まず、ウルトラキャパシタ10の構成要素を汚染する可能性を有する任意の材料が清浄であり、化学反応を起こさず、乾燥していることを確実なものとするように対処されてもよいことに留意すべきである。慣行として、「良好な衛生状態処理」が、アセンブリプロセス及び構成要素が汚染物質をウルトラキャパシタ10にもちこまないことを確実なものとするため実行されると考えられてもよい。
「真空法」では、コンテナが、ハウジング7の上であって注入口の周りに配置される。その後、電解液6、例えば本明細書に開示されたAESが、実質的に酸素及び水(すなわち水分)が存在しない環境で、コンテナ内に配置される。その後、この環境において真空が生成され、ハウジングからすべての空気が引き抜かれ、それにより、同時に、電解質系6がハウジング7内に引き込まれる。その後、必要であれば、周りの環境は、不活性ガス(アルゴンガス、窒素等、もしくは不活性ガスの何らかの組み合わせ)により再充填されてもよい。ウルトラキャパシタ10は、所望の量の電解質6が引き込まれたか否かをみるために確認されてもよい。当該プロセスは、必要であれば、所望の量の電解質6がウルトラキャパシタ10内に入るまで繰り返されてもよい。
所定の実施形態では、電解液6、例えばAESにより充填した後、ウルトラキャパシタ10を封止するために注入口に材料を充填してもよい。当該材料には、例えば、ハウジング7及び電解質6と化学反応を起こさない金属であってもよい。ある例において、材料は注入口に対して力をかけてはめこまれ、本質的に、注入口に対してプラグの「冷間圧接」を実行する。特定の実施形態において、力をかけてはめこむことは、本明細書においてさらに議論されている他の溶接技術により補われてもよい。
概して、ハウジングの組み立てはしばしば、貯蔵セル12を本体10内に設置すること、および本体10をAESで充填することを伴う。他の乾燥プロセスを実行してもよい。例示的な乾燥は、しばしば減圧(例えば真空)下で、貯蔵セル12およびAESを中に備える本体10を加熱することを含む。いったん十分な(オプションの)乾燥ステップを実行した後に、最終の組み立てステップを実行してもよい。最終ステップにおいて、内部電気接続を行い、キャップ24を組み込み、例えばキャップ24を本体10に溶接することにより、本体10にキャップ24を密閉して封止する。
いくつかの実施形態において、ハウジング7とキャップ24の少なくとも一方を、複数の層が含まれる材料を含むように製造する。例えば、第1の材料層はアルミニウムを含有してもよく、第2の材料層はステンレススチールであってもよい。この例において、ステンレススチールは、アルミニウムを覆うクラッドとして設けられ、それにより、金属特性の所望の組み合わせを示す材料を提供する。すなわち、本明細書において与えられる実施形態において、アルミニウムは、エネルギー貯蔵セルの内部(すなわち、ハウジング)にさらされ、一方、ステンレススチールは外部にさらされる。この方法では、製造のためにステンレススチールの構造特性及び金属特性、すなわち溶接可能性をあてにしながら、アルミニウムの有利な電気特性が享受される。多層材料は、適切と認められる追加の層を含んでいてもよい。好適には、これは、ステンレススチールとステンレススチールとの溶接、比較的簡単な溶接法を提供する。
本体10の製造のために使用される材料にはアルミニウムが含まれるが、設計者もしくは製造者により適切と認められる任意のタイプのアルミニウムもしくはアルミニウム合金を含み得る(それらの全てが本明細書においては広く「アルミニウム」と称される)。種々の合金、積層体等がアルミニウムの上に配置されてよい(例えば、アルミニウムを覆うクラッドとして設けられてよい)(アルミニウムはボディ10の内部に曝される)。本体及び/又はハウジング7を補うため、追加の材料(例えば、何らかのポリマーに基づく材料等の構造材料もしくは電気的絶縁材料等)を使用してもよい。同様に、アルミニウム上に配置される材料は、設計者もしくは製造者により適切であると認められたものにより選択されてもよい。
アルミニウムの使用は、必要であるわけではなく、また、要求されるわけではない。端的に言えば、材料選択は、設計者、製造者、もしくはユーザ等により適切であると認められる任意の材料の使用をもたらしてもよい。様々なファクター、例えば、電解質6との電気化学的相互作用の減少、構造特性、コスト等を考慮してもよい。
比較的小さい体積を示すウルトラキャパシタ10の実施形態は、角柱のフォームファクタで製造してもよい。これにより、ウルトラキャパシタ10の電極3が互いに対向し、少なくとも一方の電極3は、ガラス-金属シールに対する内部接点を有し、他方は、ハウジングもしくはガラス-金属シールに対する内部接点を有する。
特定のウルトラキャパシタ10の体積は、1つのハウジング内においていくつかの貯蔵セルを接続すること(例えばいくつかのゼリーロールを一体に溶接すること)により拡張されてもよい。このとき、貯蔵セルは、並列又は直列に電気的に接続される。
様々な実施形態において、複数のウルトラキャパシタ10を一緒に使用して電源を提供することは有用である。信頼性のある動作を提供するため、それぞれのウルトラキャパシタ10は使用前に試験されてもよい。様々なタイプの試験を実行するため、ウルトラキャパシタ10のそれぞれを、複数のウルトラキャパシタ10が直列もしくは並列に取り付けられた単一のセルとして試験してもよい。様々な技術により(例えば、溶接等により)接続された異なる金属を使用することは、接続のESRを減少させるとともに、接続の強度を増大させることができる。ウルトラキャパシタ10間の接続のいくつかの態様を、以下、説明する。
いくつかの実施形態において、ウルトラキャパシタ10は、2つの接点を含む。この2つの接点は、ガラス-金属シールピン(すなわち、フィードスルー19)及びハウジング7の残りの全部である。複数のウルトラキャパシタ10を直列に接続した場合、(円柱形態のハウジング7の場合)内部リード線への距離が最小化されてそれにより抵抗が最小となるように、ハウジング7の下部の間を相互接続部を接続することがしばしば望まれる。これらの実施形態において、相互接続部の反対の端部は、通常、ガラス-金属シールのピンに接続される。
相互接続に関して、共通の溶接タイプには、並列チップ電極抵抗溶接機の使用が含まれる。ピンの上において相互接続部の端部を整列させ、当該ピンに直接に相互接続部を溶接することにより、溶接を行ってもよい。数多くの溶接を用いることは、相互接続部とピンとの間の強度及び接続を増大させるであろう。概して、ピンに溶接する際、ピンとよく合うように相互接続部の端部を形成することは、短絡を引き起こすであろうピンに重なる過剰な材料が実質的に存在しないことを確実なものとするように作用する。
相互接続部をピンに溶接するため、対向チップ(opposed tip)の電気抵抗溶接機を使用してもよい。一方、相互接続部をハウジング7の下部に溶接するために超音波溶接機を使用してもよい。含まれる金属が化学反応を起こさない場合は、はんだ技術を使用してもよい。
相互接続部において使用される材料に関して、相互接続部に使用される一般的タイプの材料は、ニッケルである。ニッケルは、ステンレススチールと良好に溶接されて強固な界面を有するので、使用可能である。例えば、相互接続部の抵抗を減少させるため、ニッケルに代えて、他の金属及び合金を使用してもよい。
概して、相互接続部のために選択される材料は、ピンの材料並びにハウジング7の材料と化学反応を起こさないことにより選択される。例示的な材料には、銅、ニッケル、タンタル、アルミニウム、ニッケル銅クラッドが含まれる。使用されうる別の金属には、銀、金、真鍮、プラチナ、及び錫が含まれていてもよい。
ピン(すなわち、フィードスルー19)がタンタルから形成されている場合等いくつかの実施形態において、相互接続部には、短いブリッジ接続を用いること等によって、中間金属を使用してもよい。例示的なブリッジ接続には、タンタルのストリップが含まれる。これは、アルミニウム/銅/ニッケルのストリップをブリッジに溶接するため、対向チップの電気抵抗溶接機を使用することにより改良されてきた。その後、タンタルストリップをタンタルピンに溶接するために並列電気抵抗溶接機を使用する。
ブリッジは、また、ハウジング7である接点上において使用してもよい。例えば、ニッケル片は、ハウジング7の下部に電気抵抗溶接されてもよい。その後、同ストリップがニッケルブリッジに超音波溶接されてもよい。この技術は、セルの相互接続部の抵抗を減少させる助けとなる。各接続部に異なる金属を使用することで、セル間の直列に接続された相互接続部のESRを減少させることができる。
このように、高温環境(すなわち、最大で摂氏約210度まで)で有用である頑健なウルトラキャパシタ10の態様を説明したとき、いくつかの追加の態様を以下に提供及び/又は定義する。
様々な材料を、ウルトラキャパシタ10の構成において使用してもよい。酸素及び水分が排除されるべきであり、かつ、電解質6の漏れが防止されるべき場合には、ウルトラキャパシタ10の完全性は必須である。これを達成するため、シーム溶接及び他の任意の封止点は、動作の意図された温度範囲にわたって密閉標準を満たすべきである。また、選択された材料は、イオン液体、およびAESの形成において用いられてよい溶媒等のような、他の材料とは、化学反応を起こさないものであるべきである。
いくつかの実施形態において、フィードスルー19は、例えば、KOVAR(商標)(ペンシルバニア州リーディングのカーペンターテクノロジーコーポレイション(Carpenter Technology Corporation)の商標であり、KOVARは、真空溶解された鉄-ニッケル-コバルト低膨張合金であり、その化学組成は、正確で均一な熱膨張特性を保証するように、狭い範囲で制御される)、Alloy52(金属に対するガラス及びセラミックシールに適しているニッケル鉄合金)、タンタル、モリブデン、ニオブ、タングステン、ステンレススチール446(高温腐食及び酸化性に対する良好な耐性を提供する非加熱処理可能なフェライトステンレススチール)、及びチタンの少なくとも一種のような金属から形成される。
上述の事項を利用するガラス-金属シールの本体は、300シリーズのステンレススチール、例えば、304、304L、316、及び316L合金から製造されてもよい。この本体は、インコネル(Inconel)(圧力及び熱に供される極端な環境における使用に適した耐酸化性及び耐食性材料であるオーステナイトニッケル-クロム系超合金のファミリー)、及びハステロイ(Hastelloy)(ニッケル及び様々な割合のモリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、及びタングステンを含む高い耐食性を有する金属合金)等の様々なニッケル合金のうちの少なくとも1つ等の金属から構成されていてもよい。
ガラス-金属シールにおけるフィードスルー19と周りの本体との間の絶縁材料は、典型的にはガラスである。その組成は、シールの各製造者のプロプライエタリな資産であり、シールが圧縮下にあるか、それとも適合した状態にあるかに依存する。ガラス-金属シールにおいて他の絶縁材料を使用してもよい。例えば、シールにおいて様々なポリマーを使用してもよい。したがって、用語「ガラス-金属」シールは、単にシールの種類を示すものであり、当該シールがガラスを含まなければならないことが意味されているわけではない。
ウルトラキャパシタ10のためのハウジング7は、例えば、タイプ304、304L、316、及び316Lステンレススチールから構成されていてもよい。それらは、1100、3003、5052、4043、及び6061等のアルミニウム合金のうちの一部から構成されていてもよいが、これらに限定されない。様々な多層材料を使用してもよいし、例えば、ステンレススチールに対するアルミニウムクラッド等を含んでいてもよい。使用されうる化学反応を起こさない他の非限定的な金属には、プラチナ、金、ロジウム、ルテニウム、及び銀が含まれる。
ウルトラキャパシタ10において用いられるガラス-金属シールの特定の例には、2つの異なるタイプのガラス-金属シールが含まれる。最初のものは、ニューヨーク州エルムスフォールドに米国支部を有するショット(SCHOTT)から得られるものである。この実施形態は、ステンレススチールピン、ガラス絶縁体、及びステンレススチール本体を使用する。第2のものは、オハイオ州シンシナティーのハーマティックシールテクノロジー(HERMETIC SEAL TECHNOLOGY)から得られるものである。この第2の例は、タンタルピン、ガラス絶縁体、及びステンレススチール本体を使用する。様々なサイズの様々な実施形態を提供してもよい。
ガラス-金属シールの追加の例は、アルミニウムシール及びアルミニウム本体を使用する実施形態を含む。ガラス-金属シールのさらに別の例には、エポキシ、しくは他の絶縁材料(例えば、セラミックスもしくはシリコン等)を使用するアルミニウムシールが含まれる。
所望により、多数くのガラス-金属シールの態様が構成されていてもよい。例えば、ハウジング及びピンの寸法と、ピン及びハウジングの材料とは、適切に変更してもよい。ピンは、また、中空又は中実のピンであってもよく、一のカバーにおいて複数のピンを有していてもよい。ピンに使用される最も一般的なタイプの材料はステンレススチール合金、銅コアのステンレススチール、モリブデン、プラチナ-イリジウム、様々なニッケル-鉄合金、タンタル、及び他の金属であるが、何らかの非伝統的な材料を使用してもよい(例えば、アルミニウム)。ハウジングは、通常、ステンレススチール、チタン、及び/又は様々な他の材料から形成されていてもよい。
ウルトラキャパシタ10の組み立てにおいて、様々な固定技術を使用してもよい。例えば、溶接に関して、様々な溶接技術を使用してもよい。以下は、それぞれのタイプの溶接を使用する溶接のタイプ及び様々な目的を例示的に列挙するものである。
超音波溶接が使用されてもよく、とりわけ、集電体にアルミニウムタブを溶接すること、下部クラッドカバーにタブを溶接すること、ガラス-金属シールピンに接続されたクラッドブリッジにジャンパタブを溶接すること、及び複数のゼリーロールタブを互いに溶接することを含む。パルス又は抵抗溶接が使用されてもよく、とりわけ、金属容器の下部又はピンにリード線を溶接すること、集電体にリード線を溶接すること、クラッドブリッジにジャンパを溶接すること、端子8へクラッドブリッジを溶接すること、下部カバーにリード線を溶接することを含む。レーザー溶接が使用されてもよく、とりわけ、ステンレススチール金属容器にステンレススチールカバーを溶接すること、ステンレススチールガラス-金属シールピンへのステンレススチールブリッジを溶接すること、及び注入口にプラグを溶接することを含む。TIG溶接が使用されてもよく、とりわけ、アルミニウム金属容器にアルミニウムカバーを封止すること、及びアルミニウム封止を所定の場所に溶接することを含む。冷間圧接(複数の金属を強い力で互いに圧迫すること)が使用されてもよく、とりわけ、アルミニウムボール/鋲を注入口に力をかけてはめこむことにより注入口を封止することを含む。
ある特定の実施形態において、図23を参照すると、例示的な電極3の構成要素が示されている。この例では、電極3は負極3(a)として使用されるが、しかしながら、この表示は任意であり、単に参照のためのものである。
図面から分かるように、少なくともこの実施形態においては、セパレータ5は、概して、エネルギー貯蔵媒体1(及び集電体2)より長い長さ及びより広い幅を有する。より大きなセパレータ5を使用することにより、正極3(b)と負極3(a)との短絡に対して保護を与える。また、セパレータ5において追加の材料を使用することは、リード線及び端子8の良好な電気的保護を提供する。
貯蔵セル12の実施形態の側面図を提供する、図24に示すもう1つの実施形態では、エネルギー貯蔵媒体1のレイヤースタックには、第1のセパレータ5及び第2のセパレータ5が含まれ、これにより、貯蔵セル12が巻回された貯蔵セル23に組み立てられるとき、電極3は電気的に分離される。電極3及びウルトラキャパシタ10の組み立てに関し、用語「正」及び「負」は、単に任意であり、ウルトラキャパシタ10内において構成され、電荷がその中に保存されるときのの機能を示していることに留意すべきである。当該技術分野において一般的に採用されるこの慣例は、組み立ての前に電荷が保存されることを適用すること、もしくは、異なる電極の物理的同定のために提供されるもの以外の他の任意の態様を暗示することを意味するものではない。
貯蔵セル12を巻回する前に、負極3(a)及び正極3(b)を互いに整列させる。電極3(a)及び(b)を整列させることにより、最良の整列が存在するとき、イオン移動のための経路長は一般に最小化されるので、ウルトラキャパシタ10の性能はより良好となる。さらに、高い整列度を与えることにより、過剰のセパレータ5が含まれず、結果として、ウルトラキャパシタ10の効率は損なわれない。
ここで図25を参照すると、貯蔵セル12の実施形態が示されている。ここでは、電極3は巻回され、巻回された貯蔵セル23となっている。セパレータ5の1つは、貯蔵セル12の最も外側の層として存在し、エネルギー貯蔵媒体1をハウジング7の内部から分離する。
巻回された貯蔵セル23内の複数の最も外側の電極を本体10の極性と一致させるため、「極性マッチング」を採用してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、負極3(a)は、巻回された貯蔵セル23を提供するタイトにパックされたパッケージの最も外側に存在する。これらの実施形態において、短絡に対するさらなる確実度が提供される。換言すれば、負極3(a)が本体10と接続される箇所において、負極3(a)は、巻回された貯蔵セル23における最も外側の電極として配置されている。したがって、例えば、使用中におけるウルトラキャパシタ10の振動により誘発される機械的摩耗等によりセパレータ5が劣化する場合、ウルトラキャパシタ10は、巻回された貯蔵セル23における最も外側の電極と本体10との間の短絡の結果として故障することはないであろう。
巻回された貯蔵セル23の各実施形態について、(例えば図25を参照)少なくともセパレータ5内に基準マーク72が存在してもよい。この基準マーク72は、各電極3にリード線の位置決めを行うために使用される。いくつかの実施形態において、リード線の位置決めは計算により行われる。例えば、組み合わされたセパレータ5及び電極3についてゼリーロールの内径及び全厚さを考慮することにより、各リード線の設置のための位置を推定してもよい。しかしながら、基準マーク72を使用することがより効率的かつ効果的であることが実施によりわかった。基準マーク72には、例えば、1つ又は複数のセパレータ5のエッジにおけるスリットが含まれていてもよい。
概して、基準マーク72は、貯蔵セル12の各新たな仕様ごとに採用される。換言すれば、貯蔵セル12の新たな仕様は、そこに存する少なくとも1つの層の異なる厚さ(前の実施形態を超える)を要求しうるので、以前の基準マークを使用することは少なくとも幾分不正確となりうる。
概して、基準マーク72は、ロールを、その中心からその外周まで横断する単一の放射状のラインとして明示されている。したがって、リード線が基準マーク72に沿って設置される際、各リード線は、残りのリード線と整列している。しかしながら、(貯蔵セル12がロールであるか、ロール12になる実施形態について)貯蔵セル12が巻回されていないとき、基準マーク72は、複数のマーキング(図26に示されている)であると考えられうる。慣行として、貯蔵セル12をマーキングすることの実施形態もしくは外観に拘わらず、リード線の組み込みのための位置を識別することは、「基準マーク72」もしくは「一組の基準マーク72」を決定することが含まれると考えられる。
ここで図26を参照すると、いったん基準マーク72が(例えば、巻回された貯蔵セル12にマーキングすることにより)確立されると、各リード線を設置するための設置場所が提供される(すなわち、基準マーク72により記載される)。いったん各設置場所が識別されると、任意の与えられた貯蔵セル12のビルド仕様に関して、各設置場所の相対位置が、貯蔵セル12の特定のビルドの追加の例について繰り返しされてもよい。
概して、各リード線は、貯蔵セル12内のそれぞれの集電体2に接続される。いくつかの実施形態において、集電体2とリード線の両方が、アルミニウムにより製造される。概して、リード線は、幅Wにわたって集電体2に接続されるが、しかしながら、リード線は、幅Wの一部のみで接続されてもよい。当該接続は、例えば、リード線を集電体2に超音波溶接することにより達成してもよい。接続を達成するため、エネルギー貯蔵媒体1の少なくとも一部を(適切に)除去し、これにより、各リード線を適切に集電体2と接続してもよい。接続を提供するため、適切と認められる他の作製及び調整を行ってもよい。
ある実施形態では、反対側の基準マーク73が含まれていてもよい。換言すれば、基準マーク72が与えられているのと同様な方法で、一組の反対側の基準マーク73が作製され、逆極性のリード線が設置される。すなわち、例えば負極3(a)等の第1の電極3にリード線を設置するために基準マーク72を使用してもよく、一方、正極3(b)にリード線を設置するために、反対側の基準マーク73を使用してもよい。巻回された貯蔵セル23が円柱状である実施形態において、反対側の基準マーク73は、エネルギー貯蔵媒体1の反対側に配置され、(図示のように)長さに関して基準マーク72からずれている。
図26において、基準マーク72及び反対側の基準マーク73は、両方とも、単一の電極3の上に配置されるように示されていることに留意する。すなわち、図23は、基準マーク72及び反対側の基準マーク73の空間的(すなわち、直線的)関係を単に例示するための実施形態を示していることに留意すべきである。これは、正極3(b)及び負極3(a)が、エネルギー貯蔵媒体1を共有することを含意するわけではない。しかしながら、貯蔵セル12を巻回しその後セパレータ5をマークすることにより基準マーク72及び反対側の基準マーク73が配置される例において、基準マーク72及び反対側の基準マーク73が実際に単一のセパレータ5の上に提供されてもよいことに留意すべきである。しかしながら、実際は、1組の基準マーク72及び反対側の基準マーク73が任意の所定の電極3にリード線を設置するために使用されるであろう。すなわち、図26の実施形態は、逆極性を有するであろう他の電極3のためのエネルギー貯蔵媒体1の他の層によって補われることを認識すべきである。
図27に示すように、前述の組み立て技術により、少なくとも一組の整列されたリード線を含む貯蔵セル12となる。第1の組の整列されたリード線91は、巻回された貯蔵セル23を負の接点55及び正の接点56の一方に接続する際、特に有用である。一方、一組の反対側の整列されたリード線92は、エネルギー貯蔵媒体1を逆の接点(55、56)に接続する。
巻回された貯蔵セル23は、ラッパー93により包囲されていてもよい。ラッパー93は、様々な実施形態で実現されてもよい。例えば、ラッパー93は、KAPTON(登録商標)テープ(これは、ドイツ国ウィルミングトンのデュポン(DuPont)により開発されたポリイミドフィルムである)もしくはPTFEテープとして与えてもよい。この例において、KAPTON(登録商標)テープは、巻回された貯蔵セル23を包囲し、それに付着される。巻回された貯蔵セル23にスライド挿入されているタイトにフィッティングしているもののようなラッパー93は、接着剤を用いることなく、提供されてもよい。ラッパー93は、巻回された貯蔵セル23を全体的に巻き込むもの(例えば、前で議論した図11のエンベロープ73等)のようなバッグとして、さらに明示されてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、ラッパー93は、シュリンクラップとして機能する材料を含んでいてもよく、それゆえ、巻回された貯蔵セル23の効果的な物理的(そして、一部の実施形態では化学的)包囲物を提供してもよい。概して、ラッパー93が、ウルトラキャパシタ10の電気化学的機能と相互作用しない材料から形成される。例えば、巻回された貯蔵セル23の挿入を支援するため、ラッパー93は、また、必要に応じて、部分的カバーを提供してもよい。
いくつかの実施形態において、負のリード線及び正のリード線は、巻回された貯蔵セル23の反対側に配置されている(ゼリーロールタイプの巻回された貯蔵セル23の場合において、負の極性のためのリード線及び正の極性のためのリード線が直径方向について反対側にある)。概して、負の極性のリード線及び正の極性のリード線を巻回された貯蔵セル23の反対側に配置することは、巻回された貯蔵セル23の製造を容易にするため、且つ、改良された電気的分離を提供するため実行される。
いくつかの実施形態において、整列されたリード線91、92がいったん組み立てられると、複数の整列されたリード線91、92の周りにシュリンクラップ(図示せず)が配置されるように、複数の整列されたリード線91、92のそれぞれは、その場所で)一体に束ねられる。概して、シュリンクラップはPTFEにより形成されるが、しかしながら、互換性を有する任意の材料を使用してもよい。
いくつかの実施形態において、いったんシュリンクラップ材料が整列されたリード線91の周りに配置されると、整列されたリード線91は、ウルトラキャパシタ10が組み立てられる際に呈する所定形状に折り曲げられる。すなわち、図28に関し、整列されたリード線は「Z」形状を呈すると理解されうる。「Z-折り曲げ部」を整列されたリード線91、92に与え、シュリンクラップを適用した後、整列されたリード線91、92の周りの場所でシュリンクラップが収縮するように、シュリンクラップを加熱し、さもなければ活性化してもよい。したがって、いくつかの実施形態において、整列されたリード線91、92は、ラッパーにより真っ直ぐにされ、そして保護されてもよい。Z状折り曲げの使用は、エネルギー貯蔵媒体1をキャップ24内に配置されたフィードスルー19に接続する際、特に有用である。
さらに、各組の整列されたリード線91、92(すなわち、各端子8)を各接点55、56に接続する他の実施形態が実施されてもよい。例えば、ある実施形態では、各組の整列されたリード線91、92との接続が容易となるように、フィードスルー19及びハウジング7の一方に中間リード線が接続される。
さらに、使用される材料は、反応性、誘電値、融点、他の材料への付着性、溶接可能性、摩擦係数、コスト、及び他のそのようなファクター等の特性にしたがって選択されてもよい。所望の特性を提供するために、複数の材料の組み合わせ(例えば、多層化された、混合された、さもなければ組み合わせ)を使用してもよい。
本明細書に開示されたウルトラキャパシタにおける、水、金属、及び有機不純物を含む不純物のレベルは、所望の性能を達成するために重要である可能性がある。所定の実施形態において、封止されたウルトラキャパシタ10のハウジング7が開かれてもよく、貯蔵セル12は不純物についてサンプリングされる。水分含有量は、セル42からの電極、セパレータ、及び電解質についてカールフィッシャー法を用いて測定してもよい。3つの測定を行い、平均を取ってもよい。
概して、ウルトラキャパシタ内の混入物質を特徴づけるための方法には、その含有量にアクセルするためハウジング7を破壊すること、その内容物をサンプリングすること、及びサンプルを分析することが含まれる。本明細書の他の箇所において開示された技術を、上記特徴づけをサポートして使用してもよい。
ウルトラキャパシタと、電極、電解質、及びセパレータを含むその構成要素内における不純物の正確な測定を確実なものとするため、組み立て及び分解を適切な環境、例えば、グローブボックス内の不活性な環境において実行してもよいことに留意すべきである。
ウルトラキャパシタ10内の水分含有量を(電解液の質量及び体積について500ppm未満まで、また、不純物を1000ppmまで)減少させることにより、ウルトラキャパシタ10は、広い温度範囲にわたって、その温度範囲及び電圧範囲内では10アンペア/リットル未満の漏れ電流(I/L)で、より効率的に動作しうる。
ある実施形態において、特定の温度における漏れ電流(I/L)は、72時間にわたって、定格電圧(すなわち、最大定格動作電圧)においてウルトラキャパシタ10の電圧を一定に維持することにより測定される。この期間内において、温度は、特定の温度において、比較的一定に維持される。測定期間の最後に、ウルトラキャパシタ10の漏れ電流を測定する。
いくつかの実施形態において、ウルトラキャパシタ10の最大電圧定格は、室温において約4Vである。高温(例えば、摂氏210度を超える)においてウルトラキャパシタ10の性能を確保するためのアプローチは、ウルトラキャパシタ10の電圧定格を低下(すなわち、減少)させることである。例えば、より高い温度における長い動作期間を達成できるように、電圧定格は、約0.5Vを下回るように調整されてもよい。
例示的なウルトラキャパシタ10の物理的態様は次の表6~表9に示される。以下の表において、用語「タブ」は、概して、前に議論された「リード線」を示し、用語「ブリッジ」及び「ジャンパ」もまた、ある態様のリード線を示す(例えば、ブリッジは、フィードスルーもしくは「ピン」に接続される一方、ジャンパは、ブリッジをタブもしくはリード線に接続するのに有用である)。様々な接続を使用することにより、組み立てプロセスを容易にし、ある組み立て技術を利用する。例えば、ブリッジは、ピンに対してレーザ溶接もしくは電気抵抗溶接され、ジャンパに対して超音波溶接で接続される。
概して、ウルトラキャパシタ10は、様々な環境条件及び要求の下で使用してもよい。例えば、端子電圧は約100mVから10Vまでの範囲であってもよい。周囲の温度は、摂氏約-40度から摂氏+210度までの範囲かであってもよい。典型的な高温の周囲温度は、摂氏約+60度から摂氏+210度までの範囲にわたる。
表10及び表11は、ウルトラキャパシタ10のこれらの実施形態について比較性能データを提供する。性能データを、図示された様々な動作条件について収集した。
このように、表10及び表11に与えられたデータは、本明細書における教示が、極限条件下でウルトラキャパシタの性能を可能とすることを実証している。これにしたがって製造されたウルトラキャパシタは、例えば、(約2V未満の電圧かつ摂氏約150度未満の温度で保持されつつ)1ミリリットルのセル体積当たり約1mA未満の漏れ電流を示し、500時間内において約100パーセント未満のESR増加を示す。ウルトラキャパシタの様々な要求(例えば、電圧及び温度)の中でトレードオフがなされるので、ウルトラキャパシタのための性能定格(例えば、ESR、容量等の増大のレート)を管理してもよいし、特定のニーズに合わせて調整してもよい。前述の事項に関連して、「性能レーティング」には、概して、動作条件を説明するパラメータの値に関連する従来の定義が与えられることに留意すべきである。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ヘキシル3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸潮を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及び1-ブチル-1-メチルピロリジニウム及びテトラシアノホウ酸塩を含むAESを具有していた。
試験された例示的な他のウルトラキャパシタには、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム及びテトラシアノホウ酸塩及びエチルイソプロピルスルホンを含むAESを具有していた。
表10において示され、本明細書の他の箇所において示された容量及びESRの測定は、一般に既知の方法に従って行ったことに留意すべきである。まず、容量を測定するための技術について検討する。
容量は、数多くの方法により測定することができる。一の方法は、既知の電流が(「放電」中に)ウルトラキャパシタから引き出され、もしくは(「充電」中に)ウルトラキャパシタへ供給されているとき、キャパシタ端子に現れる電圧をモニタリングすることを含む。より具体的には、我々は、理想的キャパシタは次式に従うという事実を利用してもよい。
I=C×dV/dt
ここで、Iは充電電流を示し、Cは容量を示し、dV/dtは理想的ウルトラキャパシタの電圧Vの時間微分を示している。理想的キャパシタは、とりわけ、その内部抵抗が零であり、その容量が電圧依存性を有するものである。充電電圧Iが一定である場合、電圧Vは時間に関して線形である。そのため、dV/dtはその直線の傾き、もしくはΔV/ΔTとして計算することができる。しかしながら、この方法は概して近似であり、容量の計算もしくは測定において、キャパシタの実効直列抵抗により与えられる電圧差(ESR降下)が考慮されるべきである。概して、実効直列抵抗(ESR)は、キャパシタ内の散逸効果もしくは他の効果の集中定数近似である。キャパシタの挙動は、しばしば、ESRに等しい抵抗値を有する抵抗と直列に接続された理想的キャパシタを含む回路モデルから導出される。概して、これは、正確なキャパシタ挙動に対して良好な近似を提供する。
容量を測定する1つの方法において、内部抵抗が実質的に電圧から独立であり、充電電流もしくは放電電流が実質的に固定されている場合、ESR降下の影響を殆ど無視することができる。その場合、ESR降下は、定数として近似することができ、上記一定電流の充電もしくは放電の間、電圧の変化の計算値から差し引かれる。その際、電圧の変化は、実質的に、キャパシタ上の貯蔵された電荷の変化を反映している。したがって、電圧の変化は、計算により、容量のインジケータと解釈されうる。
例えば、一定電流の放電中において、一定電流Iは既知である。測定時間区間ΔTにおいて放電中の電圧変化ΔVを測定し、比ΔV/ΔTにより電流値Iを除算することにより、容量の近似値を得る。Iがアンペアで測定され、ΔVがボルトで測定され、ΔTが秒で測定されるとき、容量の結果はファラッドの単位となる。
ESRの推定に移ると、ウルトラキャパシタの実効直列抵抗(ESR)は、多数の方法により測定してもよい。一の方法は、既知の電流が(「放電」中に)ウルトラキャパシタから引き出され、もしくは(「充電」中に)ウルトラキャパシタへ供給されているとき、キャパシタ端子に現れる電圧をモニタリングすることを含む。より具体的には、ESRは次式に従うという事実を用いてもよい。
V=I×R
ここで、Iは、ESRを有効に通過する電流を示し、RはESRの抵抗値を示し、Vは、ESRにより与えられる電圧差(ESR降下)を示す。ESRは、概して、ウルトラキャパシタ内の散逸特性もしくは他の特性の集中定数近似である。ウルトラキャパシタの挙動は、しばしば、ESRに等しい抵抗値を有する抵抗と直列に接続された理想的キャパシタを含む回路モデルから導出される。概して、これは、正確なキャパシタ挙動に対して良好な近似を提供する。
ESRを測定するある方法において、停止状態にあったキャパシタ(実質的な電流で充電もしくは放電されていないもの)からの放電電流を引き込むことを開始してもよい。キャパシタ上の貯蔵された電荷の変化に起因するキャパシタにより表される電圧変化が時間区間の間、が、測定された電圧変化に比較して小さい間、その測定された電圧変化は、実質的に、キャパシタのESRを反映したものである。これらの条件下、キャパシタにより表された直前の電圧変化は、計算により、ESRのインジケータと解釈されうる。
例えば、キャパシタから放電電流の引き出すことを開始する際、測定区間ΔTにわたって、直前の電圧変化ΔVにより表すことができる。測定区間間隔ΔTの間、既知の電流Iにより放電されたキャパシタの容量Cは、測定された電圧変化ΔVと比較して小さい電圧変化を発生させる限り、時間区間ΔTの間のΔVを放電電流Iで除算してESRの近似値を得てもよい。Iがアンペアで測定され、ΔVがボルトで測定される場合、ESRの結果はΩの単位を有する。
ESR及び容量の両方が周囲の温度に依存する。それゆえ、関連する測定は、測定の間、目的の特定の周囲の温度にウルトラキャパシタ10を供することをユーザに要求する。
漏れ電流の性能要件は、概して、特定の用途において広く行き渡っている環境条件により定義される。例えば、20ccの体積を有するキャパシタに関し、漏れ電流の実用的な限界値は、100mA未満に降下しうる。
正規化されたパラメータの公称値は、正規化されたパラメータ(例えば体積漏れ電流)に正規化指数(例えば体積)を乗算すること、又は、正規化されたパラメータを正規化指数で除算することにより得られうる。例えば、10mA/ccの体積当たりの漏れ電流、及び50ccの体積を有するウルトラキャパシタの名目漏れ電流は、体積当たりの漏れ電流と体積との積、すなわち500mAである。一方、20ミリオーム・ccの体積当たりのESR及び50ccの体積を有するウルトラキャパシタの名目ESRは、体積当たりのESRと体積との商、すなわち0.4ミリオームである。
5.モジュール式信号インターフェース装置(MSID)
本明細書に開示された装置、システム、及び方法は、モジュール式信号のインターフェース装置(modular signal interface device:「MSID」)を含む。MSIDは、本明細書に開示された装置、システム、及び方法の様々な有利な態様を可能にする多数の機能を実行するように動作し、それらの機能は、(1)高温電力システム、例えば坑井内電源システムのエネルギー貯蔵構成要素を制御することを含み、他の利点の中でもとりわけ、向上したバッテリー消費効率、より高い電力能力、電力バッファリングのような利点を提供することで、電圧安定性により信頼性を向上させ、(2)高温環境中のデータを記録する手段、例えば坑井内データ記録システムを提供すること、又は(3)として(1)及び(2)の両方を含む。MSIDはモジュール式装置である。すなわち、それは、あらかじめ組み立てられた構成要素であって、モジュール式に取り付けられてもよく、所望の機能を提供するために様々な組み合わせから選択されてもよい構成要素から製造されてもよい。さらに、任意のエネルギー貯蔵装置構成要素は、少なくとも本明細書で説明したHTRESを含んでもよい。任意のHTRESは、本明細書で説明した少なくとも1つの高温ウルトラキャパシタを備えてもよい。
MSIDのモジュール式アーキテクチャは、製造容易性を向上させ、同様に、本明細書に開示された装置及びシステムの製造の速さを加速する。従って、本明細書に開示されたMSIDのもう1つの利点は、製造コストの低減である。さらに、MSIDのモジュール式アーキテクチャは、機能並びに保守性を追加することの容易さを向上させ、これは、機能の維持又はアップグレードのコストを低減することに役立つ。モジュール式構成は、さらに、回路を分析のために素早く接続及び切断することができるので、設計及びデバッグサイクルを縮小することに役立つ。本明細書で説明したモジュール式システムのフレームワーク内では、新規な設計及び機能は、配線、寸法、又は回路基板レイアウトに実質的変化を生じる必要なく、迅速に追加可能である。
モジュール式設計は、いくつかの態様のモジュール性を備える。MSIDを備える装置又はシステムは、所定の機能を行うか又は所定の態様を提供するようにそれぞれ設計された少なくとも1つのモジュール、例えば、2つのモジュールを備えてもよく、モジュールは別個のハウジングを備えてもよく、また、それらはコネクタインタフェースで互いにインターフェースを有してもよい。いくつかの実施形態において、上記コネクタインタフェースは、ピン又はレセプタクルのうちの1つを備えるコネクタハウジング及びコネクタを備える。いくつかの実施形態において、嵌合するコネクタによって互いに接続するように、様々なモジュールが構成される。いくつかの実施形態において、1つのモジュールはMSIDを備え、MSIDは、電力システム構成要素及び/又はデータシステム構成要素、例えば、ハウジング及びHTRESを備える回路及び他のモジュールを備え、それは、少なくとも1つのウルトラキャパシタ、例えば1~100個のウルトラキャパシタセルを備えるウルトラキャパシタストリング)を備えてもよい。
MSIDのモジュール式設計は、そのコアにおいて特定の回路基板アーキテクチャの使用を導出する。これは、均一性及びモジュール性を提供するスタッカによって電気的に接続される、縮小サイズの複数の円形回路基板から開始して、電気的通信はモジュール式バスを介して接続され、これは、所定の実施形態では、外部装置にMSIDを関連づけることを支援しうる接続回路基板に接続され、各回路の機能は監視装置によってローカルに制御されてもよく、これは、モジュール式バスとインターフェースをとる回路間のインターフェースを簡単化し、回路基板の組み合わせ全体は、MSID、又は電力システムのMSID及び任意のHTRESを組み込むように設計されたツールストリングの空間効率的なハウジングに含まれていてもよい。
回路基板は、モジュール式バスを簡単化するか、さもなければ支援するためのディジタル監視装置を備えてもよい。例えば、所定の機能のために設計された回路が、モジュール式バスのピンにおける信号の標準的な割り当てに容易に適応可能でない構成要素を備えてもよく、又は、複数の異なる回路が、共用されるモジュール式バス上で互いに容易に適応可能でない構成要素を備えてもよい。モジュール式バスとインターフェースをとる回路基板上に配置されたディジタル監視装置は、共用されるモジュール式バスに上記構成要素を適応させるように動作してもよい。具体的には、例示によって、ディジタル監視装置は、ディジタル識別情報の割り当てを受けて、モジュール式バス上で共用される通信を確立してもよい。ディジタル監視装置は、他の監視装置又は他のコントローラから命令を受信し、それに応じて、それらの各回路の機能を制御してもよい。もう1つの例示として、ディジタル監視装置は、それらの各回路の態様を問い合わせるか測定し、その情報をディジタル信号として共用されるモジュール式バスへ報告してもよい。ディジタル監視装置の例は、マイクロコントローラ、例えば、米国アリゾナ州チャンドラーのマイクロチップテクノロジーインコーポレイテッド(Microchip Technology, Inc.)から入手可能な16Fシリーズを含む。
a.全体MSID構成要素
データ記録及び/又は報告のための電力システム及び/又はデータインタフェースにおいて有用である、本明細書に開示したMSIDは、次の構成要素で構成されてもよい。
i.回路基板
MSIDのモジュール式設計は、概して、円形形状の回路基板を組み込み、これは、円柱体積、すなわち円柱状ハウジングの場合に一般的な長方形デザインのものが提供するであろうものに比較して、回路/電力及び信号密度を増大させる(又は最大化する)ことを可能にする。これらの回路基板は、動作温度(例えば、摂氏125度~摂氏150度)において構造的完全性を保証するために、概して、高いガラス転移温度(例えばTg =摂氏260度)を有する高温ラミネート(例えばp95/p96ポリイミド)からなる。さらに、基板は、熱性能を改善するために、(4以上の)複数の銅の層を含んでいてもよい。
円形回路基板は、特に坑井内用途で、従来の長方形の回路基板に対する多数の利点を可能にする。図39に示すように、MSID390は複数の円形回路基板62を備える。図32を参照して以下に述べるように、バスコネクタ320であってもよいスタッカ394を用いて、複数の円形回路基板は、接続されてもよい。したがって、複数の円形回路基板323のスタック391が本明細書に開示され、個々の回路基板323は、回路基板のスタック391における他の任意の回路基板323に電力を伝送及び/又は転送してもよい。図39に示すように、円形回路基板のスタック391を備えるMSIDは、1つ又は複数のマルチピン外部コネクタ392及び393と嵌合されてもよく、それは、回路基板のスタック391に接続されてもよく、及び/又は、オプションで各円形回路基板323に個々に接続されてもよい。このように、MSIDは、他の装置、例えばHTRES、又はツールストリングを備える坑井内ツールへの、及びそのような装置からの通信及び電力伝送を可能にする。各マルチピン外部コネクタ392又は393は、特定用途の要件、例えば、必要とされる電力伝送接続、必要とされるデータ接続、冗長性、及び頑健さに基づいて、MDMタイプコネクタ(例えばマイクロD)のような様々な利用可能なコネクタから選ばれてもよい。[00465]円形回路基板は、坑井内環境において特に有利である。ここでは、典型的な坑井内ツールストリングのフォームファクタは円柱状MSID構成要素を必要とし、空間的制約が大きくなる。円形回路基板、例えば本明細書に開示されるようなスタック可能な円形回路基板は、坑井内空間及びMSID内の接続性、例えばデータ及び電力伝送の利用に関して、より高い効率を可能にすることができる。
ii.スタッカ
所定の実施形態において、モジュール式アーキテクチャは、図32に示すように、ヘッダ及びレセプタクルを備えるバスコネクタとして基板スタッカを利用する。これは、回路基板の電気的な接続及び切断を容易かつ便利に行う方法を提供する。スタッカは、モジュール式アーキテクチャによって永続するすべての回路が機械的に互換性を有し、互いに合うように、上部及び下部スタッカの整列及び反復可能な位置決めを行うために、回路アーキテクチャにおいてトポロジー的に位置決めされる。図32に示すように、上述した円形回路基板と同様に、円形回路基板323としてここで示した回路基板は、スタッカを使用して、スタックされた構成で取り付けられてもよい。図32に示すように、回路基板323間の電気的な接続を提供するために、スタッカは、さらにバスコネクタ320として動作してもよい。所定の実施形態では、図32に示すように、バスコネクタ320はメス構成要素321及びオス構成要素322を備え、それらはを相互接続することで、回路基板323をスタックされた形式で接続することと、回路基板323を切断してそれらを分解することとが容易化される。本明細書に開示されたMSIDの所定の実施形態のこの特徴は、本装置及びシステムのモジュール性をさらに向上する。
さらに、スタッカは、摂氏75度より高い温度、例えば摂氏125度より高い温度、例えば摂氏150度より高い温度におけるそれらの有用性と、例えば嵌合レセプタクルへのバネクリップ又はツイストピンなどの係合による、構造上の強度を失うことなくヘッダの嵌合ピンとの接触を確立するそれらの能力とに基づいて選択される。特定の実施形態において、スタッカは、金属であり、坑井内掘削の場合のように、熱に加えて機械的振動及び衝撃にさらされたときに構造上の強度を提供するように構成される。特定の実施形態において、スタッカ接続装置は、比較的より小さなサイズを有する回路基板を合うように小型である。
さらに、所定の実施形態において、切断が生じたとき、切断の影響を緩和するために、電気的な冗長性が使用される。特定の実施形態において、電力線はスタッカにおける複数の冗長なラインを有する。例えば、電子回路へのキャパシタストリング接続は、増大した信頼性のために2本のピン上で行われてもよく、減少したライン抵抗は、より少ないエネルギー損及びより大きなピーク電力をもたらす。
ファームウェアに関して、通信はスタッカハードウェアによっても可能になる。限られた量の空間のために、通信する多数のラインの要件に起因して、アーキテクチャに適さない多数の通信プロトコルがある。所定の実施形態において、MSIDに組み込まれる通信プロトコルは、無制限の個数の周辺装置に対処することができる4つのライン、すなわち、(1)データ:バイナリ信号;(2)クロック:データライン上のデータキャプチャのトリガとして使用される;(3)ポーリング:データ方向を制御し、かつハードウェアを簡単化する追加の信号;及び、(4)接地:すべての回路に共通のシステム全体にわたるノードを利用する、同期通信プロトコルを備える。
さらに、所定の実施形態において、MSIDは、増大した構造的完全性のために回路基板間に配置されたスタンドオフを有して構成される。概して、スタンドオフのサポートは各回路間の間隔を維持する剛性のサポートを提供する。スタンドオフのサポートのそれぞれは、適切であれば、金属材料及び/又はポリマーの形式のような絶縁材料のような材料から製造されてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の回路は円形であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の回路はスタック可能であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の回路は、図39に示すように、回路基板のスタック391を形成するようにスタックされてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の回路は円形かつスタック可能であってもよく、及び/又は、スタックされていてもよい。
iii.接続回路基板
さらに、所定の実施形態において、MSIDは接続回路基板を備える。接続回路基板は、製造性及び保守性を容易化し、電気的保護を提供してもよい。接続回路基板は、電力システム又はデータ記録及び/又は報告システムの終端コネクタに接続回路基板を電気的に接続することができる。接続回路基板は、さらに、終端コネクタワイヤ又は他のワイヤをスタッカに接続してもよく、スタッカにより、これらの信号がモジュール式回路基板によってアクセスされることを可能にする。接続回路基板と、スタック可能な回路のモジュール式アーキテクチャとを使用することにより、回路は、必要であれば、速くシステムから迅速に取り外され、置き換えることができる。
接続回路基板は、そのような電気的接続において以前は必要であった、扱いにくいバットジョイント(butt joint)の量を削減する。この点で、接続回路基板及びモジュール式アーキテクチャの以前では、すべての配線はすべての回路基板を通過すること、非常に微妙でありかつ退屈な処理を必要とし、この結果、使用可能な表面積は少なくなり、生産量及び品質は低下し、信頼性は低下し、製造時間は長くなった。
所定の実施形態において、接続回路基板は、さらに、電子回路の敏感なノードを保護するために、ESD保護(TVSダイオード及びRCスナバ)を含む。接続回路基板は、プログラミングラインを多重化し、高電圧プログラミングラインを別個のままにしておくことにより、バス上に取り付けられた任意の個別回路のプログラミングを容易にするために使用されてもよい。
監視装置構成要素は、接続回路基板に接続された追加の回路基板へのプロトコルコマンド及びその回路基板からのプロトコルコマンドを関連づけることができる。
iv.システムハウジング
坑井内電子回路とともに使用するためのMSIDを含んでいるハウジングは、ツールストリングの内部で配置されてもよい。ハウジングは本発明のシステムの配置に適した任意の形状であってもよいが、所定の実施形態において、ハウジングは円形であり、本明細書で説明した円形回路基板の直径に適合する。優位点として、本発明の本システム、例えば電力システム又はデータ記録及び/又は報告システムはハウジング内に配置され、同じ目的で使用される既存システムと比較して、ツールストリングにおける貴重な空間のより少量を使用する。そのような追加の空間効率は、MSIDを備える回路及びアーキテクチャで達成される、より高い電力及び/又は信号密度から導出される。ハウジングの減少した内径は、ハウジング材料の十分な厚さを保持ながら、ハウジングの外径を低減させる能力を提供する。動作可能な回路のそのようなサイズ削減は、大きな進歩性を有する回路設計を伴うものであった。しかしながら、本明細書では以下に、保守及び製造の容易さのためのハウジングのモジュール式の態様を増大させる、ハウジングの改良に係る追加の実施形態を示す。
図10及び図39に示すように、本明細書に開示されたハウジングは、坑井内環境で使用される、頑健なモジュール式の装置及びシステムを提供する。図10A及び10Bは、本明細書に開示した所定の実施形態による例示的な装置を示し、ここでは、HTRESモジュール401は、図39に示すMSID390と同様のMSID402へMDM(例えばマイクロD)コネクタを介して接続されている。図10Aは、MSIDモジュール402及びHTRESモジュール401を備える、本明細書に開示される完全に組み立てられたモジュール式電力システム400を示す。図10Bは、別個のHTRESモジュール401を示し、これは、ウルトラキャパシタストリング(例えば、最大で100個までのウルトラキャパシタセルを備える)と、マルチピンコネクタ403を介して相互接続するMSIDモジュール402とを示し、マルチピンコネクタ403はMDM型のコネクタ(例えばマイクロD)であってもよい。このように、様々なシステム回路を備えるMSIDモジュール402は、HTRESモジュール401と通信し、制御し、モニタリングし、またHTRESモジュール401から電力を転送することができる。
b.MSIDシステム回路
所定の実施形態において、本明細書に開示された装置及びシステムは、電力システムの構成要素として構成されたMSIDを備える。一例において、MSIDは様々な回路を備えてもよい。非限定的な例示は、接続回路、少なくとも1つのセンサ回路、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、切り換え回路、充電状態回路、及び電子管理システム回路を含む。
1つの実施形態において、MSIDは、接続回路、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、切り換え回路、充電状態回路、及び電子管理システム回路を備える。
1つの実施形態において、MSIDはモジュール式回路基板をさらに備える。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形である。別の実施形態において、モジュール式回路基板はスタックされている。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形であり、かつスタックされている。
所定の実施形態において、電源は、ワイヤーライン電源、バッテリー、又は発電機の少なくとも1つを備える。
所定の実施形態において、電源は少なくとも1つのバッテリーを備える。この実施形態において、MSIDは、特に電源がバッテリー以上のものを備える場合、クロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、MSIDは充電状態回路基板をさらに備える。
所定の実施形態において、電源はワイヤーラインと、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDは、クロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、MSIDは充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、電源は発電機を備える。
所定の実施形態において、電源は、発電機と、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDは、クロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、MSIDは、充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、多機能の回路基板を提供するために、複数の回路基板が組み合わせられてもよい。
所定の実施形態において、MSIDは電力変換器を備える。別の実施形態において、上記電力変換器はスイッチドモード電力変換器である。いくつかの実施形態において、上記電力変換器はフィードバック制御によって調整される。電力変換器の例は、インダクタに基づく変換器を含み、例えば、降圧型(バック型)、昇圧型、降昇圧型、cuk型、フォワード型、フライバック型、又は変形物などを含むとともに、スイッチドキャパシタ型などのインダクタレス型変換器を含む。
スイッチドモード電力変換の使用によって、本発明の電力システムは、概して、60%を超える効率、例えば70%を超え、例えば80%を超え、例えば90%を超え、例えば95%を超える効率を達成する。
調整された電力変換器の使用によって、本発明の電力システムは、電圧、電流、及び/又は電力の調整された態様を行う。電力変換器の使用によって、本発明の電力システムは、電力、電圧、及び/又は電流の変換を行う。
i.ウルトラキャパシタ充電器回路(UCC)
所定の実施形態において、MSIDは電力変換器を備える。別の実施形態において、電力変換器はウルトラキャパシタ充電器回路(ultracapacitor charger circuit:「UCC」)である。UCCの機能は、HTRES、例えば1~100個のウルトラキャパシタセルを備えるウルトラキャパシタストリングの充電及び放電を制御することにある。UCCは、例えば摂氏75度を超える高温動作、例えば摂氏125度を越え、例えば摂氏150度を越える高温動作と、調整可能な充電電流制御と、キャパシタバンクのための電圧保護の冗長性と、広い入力/出力電圧範囲とを特徴とする。所定の実施形態において、UCCは、当該技術分野で既知である、負荷遷移中の出力電圧において右半平面(RHP)がゼロであることの影響を緩和するために、電流モード調整を用いる集積回路(「IC」)を有するコントローラを備える。この点で、UCCは最適範囲の動作を提供し、これにより、変換器は、校正されたデューティ比で充電して全体的な損失を最小化し、例えば、バス電圧は最適化されている。
所定の実施形態において、UCCはスイッチモード電力変換を使用し、ここで、少ないウルトラキャパシタ充電のとき、ICはより効率的な、すなわち損失が少ない電流モード制御を使用し、続いて、ウルトラキャパシタ電荷貯蔵がより大きなレベルになったとき電圧制御モードに切り換え、そのような切り換えにより、結果としてウルトラキャパシタのより効率的な充電をもたらす。
所定の実施形態において、MSIDは、例えば、エネルギー源から連続的かつ定常的な電流を引き出すことが望ましいか、又は特定のパルスプロファイルが最良である用途では、入力電流の波形整形を行う。特定の実施形態では、そのような電流の波形整形は、カソードのフリーズオーバー(freezeover)の影響又は不動態化の影響のような、バッテリー中の望ましくない電気化学的影響を防ぐ。
所定の実施形態において、例えば、エネルギー源から連続的かつ定常的な電流が引き出されることが望ましい用途では、MSIDは入力電流平滑化を行う。特定の実施形態では、そのような電流の平滑化は、直列抵抗において伝導損失を低減させる。
UCCが定電圧モードで動作している所定の実施形態において、UCCは、キャパシタストリング切断の場合に定電圧を供給することができる。例えば、UCCは、より低いレベルで、負荷への電力源として動作し続けることができる。
1つの実施形態において、UCCコントローラはディジタル的に実装される。そのようなシステムの利点は、構成要素の削減及びプログラム可能性を含む。所定の実施形態において、スイッチネットワークの制御は、マイクロコントローラ/マイクロプロセッサによって行われる。
1つの実施形態において、調整可能な電流は、コントローラICがディジタル的に通信しないとき、コントローラICが解釈するアナログ電圧を生成する監視装置及び低域通過フィルタによって生成されたパルス幅変調(PWM)制御信号により、ディジタル的に確立されてもよい。コントローラICは、出力電流、例えばウルトラキャパシタ充電電流を調整するように構成される。充電電流の制御を通じて、UCCは、例えば、ICのオンオフ制御によって電圧が電圧バンド内に維持されるヒステリシス制御によって、ウルトラキャパシタにおける電圧を調整することができる。
UCCは所定の実施形態において、ディジタル制御されてもよい。別の実施形態において、UCCは電子回路管理システム(EMS)によってディジタル制御されている。別の実施形態において、UCCは、エネルギーを節約するためにスリープモードに入ることができ、この態様はディジタル制御によって提供されてもよい。
UCCコントローラはアナログ方式で実装されてもよい。そのような構成において、フィードバック制御は、概して、演算増幅器、抵抗器、及びキャパシタのような構成要素を用いて実行されるだろう。有効であるものの、この構成の小さな欠点は、充電電流及び出力電圧を制御する柔軟性を本質的に欠いていることにある。
所定の実施形態において、UCCは、本明細書に開示されたシステム回路のうちの任意のもののような、接続回路、EMS回路、クロスオーバー回路、及び/又は1つ又は複数のエネルギー源(バッテリー、発電機、又はワイヤーラインなど)に対してモジュール式バススタッカによって電気的に接続され、さらに、それらと通信するようにプログラミングされたコントローラICを備える。UCCは、さらに、電圧サンプリングのための抵抗ネットワーク、ステップダウン電力セクション(例えばバック変換器)、ステップアップ電力セクション(例えば昇圧コンバータ)電流モード制御に必要なインダクタ電流検出抵抗、及び/又は充電電流を調整するために必要な充電電流検出抵抗
を備えてもよい。
所定の実施形態において、ウルトラキャパシタを充電するための電力変換器はヒステリシス制御される。例えば、充電電流は変換器及びフィードバック制御回路によって調整される。ウルトラキャパシタの電圧は、電力変換器又は監視装置などによって測定される。例えば、ウルトラキャパシタにおける電圧が所定のしきい値に達したとき、電力変換器はディセーブルされてもよい。代替として、電圧が所定のしきい値に達したとき、充電電流は低減されてもよい。このように、様々な利点が実現されてもよい。まず、電圧設定点及びヒステリシスバンドは、フィードバック制御回路の再設計、例えば安定性及び動力学に関してはさもないと必要になる可能性がある再設計なしで、ファームウェア又はソフトウェアにおいて、すなわちディジタル的に設定されてもよい。したがって、出力電圧は、ユーザ又はコントローラによって、例えば動作時に、容易に調節される。第2に、ウルトラキャパシタの充電効率の改善は、概して、充電電流を制限又は調整することによって行われ、また、多くの負荷が、適切に動作する範囲内に電圧があると期待するのに対して、充電電流を調整するためのフィードバック制御を有するコントローラは、負荷を適切に動作させる範囲内にあるように選択された電圧を生じさせるように使用されてもよい。
ii.クロスオーバー(XO)回路
所定の実施形態において、クロスオーバー回路は、複数の電源の使用を可能にするために、接続回路基板によって電気的に接続されて制御されるスタッカを介してモジュール式アーキテクチャへシームレスに追加することができる周辺回路基板である。UCCに加えて、クロスオーバー(cross over:「XO」)回路は自律的能力を所有する。
1つの実施形態において、クロスオーバー回路は、1つの電源からもう1つの電源に初期電源が消耗された後で切り換えるように、あらかじめプログラミングされていることが可能である。
もう1つの実施形態において、クロスオーバー回路は、2つの電源をともに並列化し、負荷に配送することができる電力を増大するか、又は、個々の、ほとんど消耗された電源がそれだけでは負荷を駆動するのに充分な電力を配送できない場合には、個々の電源のまさに最後の残るエネルギーを抽出する能力を有する。
クロスオーバー回路は、所定の実施形態において、電子回路管理システム(EMS)によってディジタル制御されてもよく、エネルギーを節約するためにスリープモードに入ることができる。
クロスオーバー回路は監視装置を備えてもよく、所定の実施形態では、モジュール式バススタッカによって、回路の監視装置を介して、接続回路、EMS回路、充電状態回路、及び/又は1つ又は複数エネルギー源(バッテリー、発電機、又はウルトラキャパシタストリングなど)に電気的に接続され、また、これらの回路と通信するようにプログラミングされる。クロスオーバー回路はさらに、電流検出抵抗;電圧サンプリングのための抵抗ネットワーク;充電状態測定のための電流検出抵抗;バス電圧が一次電源にブートストラップされることを可能にする一方向性の一次切断であって、ブートストラップ動作中の消散を低減するためのp-チャネルMOSFETと並列な低順方向電圧のダイオードを介して最初に電力は処理され、いったん電圧がバスで確立されると、抵抗-ダイオードネットワーク及びn-チャネルMOSFETによってオンされてもよくなる(p-チャネルMOSFETがエンハンスされる)一次切断;二次電源からバスへの電力を処理する双方向性の二次切断であって、一次切断とは異なり、二次電源をバスから完全に切断することができる二次切断;p-チャネルMOSFETのゲートにバイアスをかけるための抵抗-ダイオードネットワークであって、低電圧切断動作(分圧抵抗)と、高電圧切断動作(ゲート電圧を安全な動作電圧へクランプするダイオード)とを可能にするようなサイズを有するネットワーク;及び/又は、制御信号が存在しないときにn-チャネルMOSFETがオフされることを保証する出血抵抗を備えてもよい。
iii.充電状態(SoC)回路
所定の実施形態において、SoC回路は、与えられたエネルギー源の残り及び/又は使用済の容量の推定値を供給するように動作する。この回路は測定された電流、温度、電流プロファイルの時間領域の形状を組み合わせることができ、また、与えられたエネルギー源の残りランタイムを決定するためのモデルを生成することができる。
電流の測定は、エネルギー源、特にバッテリーのサービス時間の決定において重要なファクターである。そのため、所定の実施形態において、電流はトランスコンダクタンス増幅器として動作する既製のICを用いて測定されてもよい。所定の実施形態において、電流はホール効果センサ/磁力計、誘導のセンサ、磁気センサ、又はハイサイドもしくはローサイドの電流検出抵抗を用いて測定されてもよい。
温度は測温抵抗体(RTD)、大きな温度係数を有する抵抗、温度依存の抵抗を用いて測定されてもよい。抵抗は、マイクロコントローラの出力ピンに接続された分圧抵抗を用いることで読み取られる。測定が行われるとき、分圧抵抗は5Vまで引き上げられる。分圧抵抗をオン及びオフすることは、電力を節約し、抵抗における自己発熱を低減させる。温度を測定する他の方法は、バイメタル接合(すなわち熱電対)、又は既知の温度係数トランジスタに基づく回路を有する他の装置、又は赤外線検出装置を使用することを含む。
これらの測定値は、与えられたエネルギー源の所定時間にわたる挙動について記述する与えられたモデルへの入力として使用することができる。例えば、バッテリー電流における大きな変動は、リチウム塩化チオニルバッテリーの定格容量を低減することが示された。このバッテリー化学について、電流プロファイルについての知識は、バッテリーの残り容量を決定する際に有用だろう。
充電状態回路は監視装置を備えてもよく、所定の実施形態では、モジュール式バススタッカによって、回路の監視装置を介して、接続回路、EMS回路、クロスオーバー回路、及び/又は1つ又は複数エネルギー源(バッテリー又はウルトラキャパシタストリングなど)に電気的に接続され、また、これらの回路と通信するようにプログラミングされる。充電状態回路は、さらに、プルアップ抵抗;監視装置及び他のディジタル電子回路のための適切な電圧を確立するために使用される電圧レギュレータ;電流検出回路;一方向性負荷切断であって、p-チャネルMOSFETはプルダウンn-チャネルMOSFETへの制御信号を介してエンハンスされ、分圧抵抗比は低い電圧レベルでp-チャネルMOSFETに適切なバイアスをかけさせるように選択され、一方、ツェナーダイオードはMOSFETにわたる最大ソース-ゲート電圧をクランプするように動作するもの;及び/又は、及び/又は、アナログ電圧を読み取りのために必要な分圧抵抗ネットワーク及びADCバッファキャップで実装された外部通信バスを備えてもよい。
iv.ウルトラキャパシタ管理システム(UMS)回路
所定の実施形態において、MSIDはウルトラキャパシタ管理システム(ultracapacitor management system:UMS)回路を備える。ウルトラキャパシタ管理システム回路は、動作の全体にわたって個々のセル健全性を保持する主目的を有する。UMS回路は、個々のセル電圧を測定してもよく、又は、ストリング及びそれらの充電/放電レート内のセルの部分集合の電圧を測定してもよい。UMS回路監視装置は、最適化アルゴリズム及びデータログに含められる、電子回路管理システム(EMS)回路に伝達されてもよいセル健全性を決定するために、これらのパラメータを使用する。
さらに、所定の実施形態において、UMS回路はセルのバランス処理及びバイパス処理を担当する。セルのバランス処理は、ウルトラキャパシタが動作中に過充電されたり損傷を受けたりすることを防ぐ。セルのバイパス処理は、個々のセルのまわりで充電及び放電電流を迂回させる。従って、セルのバイパス処理は、セルが激しい損傷を受けたり、又は異常に高い等価直列抵抗(ESR)を示している場合に、効率的な動作を保つために使用される。
UMS回路は、頻繁なセル電圧測定と、充電電流についてEMSと通信することとにより、個々のセル健全性を決定できる。セル健全性情報は、モジュール式通信バス上で、例えばモジュール式バススタッカを介して、EMS回路に中継されてもよい。その後、セル健全性情報は、システムの挙動を変更するために、EMS回路によって使用することができる。例えば、EMS回路が、高い出力キャパシタ電圧に調整することにより、負荷への大きな出力電力をサポートしている場合を考える。しかしながら、1つ又は複数のウルトラキャパシタが損傷を受けたことをUMS回路が報告した場合、EMSは、それらのウルトラキャパシタをより低い出力電圧へ調整することを選択することができる。より低い出力電圧は出力電力能力を低下させるが、ウルトラキャパシタの健全性を保つことを支援する。
そのため、1つの実施形態において、UMS回路は、それぞれの、及びウルトラキャパシタストリングセルの健全性をモニタリングしながら、セル電圧レベルを独立に制御するための便利な方法を提供する。
所定の実施形態において、図33に示すように、UMS回路の監視装置は、内部回路通信バスを介してUMSコアに通信してもよい。この例において、データ及びコマンド信号は、UMSコア及び監視装置の間で内部通信バスを介して転送される。監視装置は、各ウルトラキャパシタセルの電圧を測定するようにUMSコアを制御する。各ウルトラキャパシタセルは、複数のウルトラキャパシタセルのバンクであってもよい。充電状態に依存して、監視装置は、各セルのバランスを保つコマンドをUMSコアに送る。特定の実施形態では、セル健全性を最適化し、かつ、バランス処理の間に発生してもよい熱上昇を最小化するように、バランス時間及び周波数が監視装置を介して制御される。セル健全性は、監視装置によってモニタリングされ、監視装置によってモジュール式バスを介してEMS回路に伝達されてもよい。さらに、所定の実施形態において、外部装置、例えばMOSFETを使用することにより、監視装置は、与えられたセルをバイパスすると決定することができる。
UMSコアは、個々のセルの電圧の測定を可能にする回路を有する。さらに、UMSコアは、セル電圧を低減するために、個々のセルから電荷を除去することができる。1つの実施形態において、UMSコアは、抵抗のような受動素子を介して過剰なエネルギーを消散させることで、個々のセルのバランスを保つ。もう1つの実施形態において、電荷を、高電圧を有する1つのセルから除去し、低電圧を有する他のセルへ転送することができる。充電の転送は、過剰な電荷を貯蔵してリリースするための外部のキャパシタ又はインダクタの使用を通じて達成することができる。
所定の実施形態において、セルのバランス処理及びモニタリングが連続的に、すなわち常に行われる必要はないので、UMS回路は小電力のスリープ状態に入ってもよい。例えば、EMS回路は、モジュール式通信バスを介してUMS回路を以下のように制御してもよい。(1)使用中でないとき、UMS回路が動作の小電力消費モードに進むことができ、(2)呼び出されたとき、EMS回路はUMS監視装置を介してセルモニタリング及びバランス処理を開始することができる。
所定の実施形態において、モジュール式バスは、通信バス上における、UMS回路監視装置、EMS回路、及び他の監視装置ノードの間の双方向通信を可能にする。図33に示すように、UMS回路監視装置への電力は、モジュール式バスを介して供給されてもよい。
所定の用途において、回路のバランスを保つことは、セル電圧が設定電圧を超過するとき、自動的にセルのバランスを保ってもよい。この挙動は、ウルトラキャパシタストリング電圧へのリアルタイム調整を行う能力を提供する。UMS回路は、モジュール式バス上で通信し、これにより、セルバランス動作をリアルタイムで更新することを可能にするように構成されてもよい。さらに、モジュール式バス上の通信は、UMS回路の外部にデータを格納することを可能にする。このモジュール性により、UMS回路は広範囲の用途を有することが可能になる。
所定の実施形態において、監視装置及びモジュール式バスは、UMS回路への大規模な修正を必要とせずに、記録分解能及び寿命のような、ウルトラキャパシタ及びシステムの要件を変化させることを可能にする。
所定の実施形態において、セル健全性情報は、UMS回路上にローカルに格納するか、又は、モジュール式バスを介して送信した後でEMSによって格納することができる。セル情報は、ウルトラキャパシタのバンクが使用後に交代される必要があるか否か、又は、サービスが個々のセルにサービスが必要であるか否かを決定する際に有用になりうる。
所定の実施形態において、セルが高電圧を経験するとき、UMS回路は、そのセルをより低い電圧に放電することができる。セルをより低い電圧へ放電することによって、セルの寿命は改善される。ストリング全体にわたってバランスのとれたセル電圧を保つことにより、キャパシタストリングの寿命を改善して最適化する。
ある場合には、セルを放電することは、周囲の電子回路を破損する可能性がある過剰な熱を生成する。さらに、多くの場合、セルの損傷又は過剰な熱損失を防ぐために、セルからの放電電流を制御することが有利である。そのため、所定の実施形態において、UMS回路は、広く分離された回路面積にわたって放電電流を分配することにより、放電電流プロファイルを制御することができ、これにより、改善された熱管理及びセル健全性を可能にする。例えば、放電イベントによって生じた熱は、多くの場合、UMS回路の1つのセクションに局所化される。複数セルのバランスを保つ必要がある場合、温度上昇を低減するために、UMS回路における隣接した場所において温度上昇を引き起こすセルのバランスを保たないことが有利である。従って、UMS回路は、UMS回路におけるそれらの空間的場所に基づいて、どのセルのバランスを保つかを選択することで、温度上昇を管理する。これらの機能は監視装置によって管理されてもよく、さらに、EMS及び/又は上述のものの組み合わせによって管理されてもよい。
所定の実施形態において、UMS回路は、放電時間を制御することで、バランスを保っているときの温度上昇を管理する。例えば、所望のセル電圧に達するまでウルトラキャパシタを常に放電することに代わって、監視装置は、周期的に充電を開始及び停止することを選択する。放電イベント間のデューティサイクルを増大することによって、セル放電電流によって引き起こされた温度上昇を緩和することができる。
所定の実施形態において、損傷を受けたセルは周囲のセルに比較して、減少した容量を示す可能性がある。この場合、セルはより高い充電及び放電レートを示すだろう。正常なバランス動作は、この場合にセルへのいかなる損傷も緩和するだろう。同様に、所定の実施形態において、セルは増大した漏れ電流を示す可能性があり、これにより、セル電圧は常に低下し続ける。あるセルにおける減少した電圧は、他のセルがより高い平均電圧を保持することを必要とするだろう。再び、正常なバランス動作は、この場合にセルへの損傷を緩和するだろう。
所定の実施形態において、セルは、それが非常に高いESRを示し、キャパシタストリング全体の電力取り扱いを劣化させるという点で、損傷を受ける可能性がある。これらの場合において、典型的なバランス動作は課題を解決しないだろう。この重大時には、UMS回路は、与えられた任意のセルをバイパスすることを選択できる。セルをバイパスすることは、充電及び放電電流をバイパスする外部ダイオードのような非線形デバイスを介して達成されてもよく、これにより、他のすべてのセルは、より高い平均電圧を貯蔵しなければならなくなる。しかしながら、ストリングの電力取り扱い能力が保持される。
直列又は並列直列で接続された複数のバッテリー及び/又はウルトラキャパシタが存在する所定の実施形態において、個々のセルの充電状態をモニタリングし、バランスを保つことの両方が重要である。UMS回路は、効率、システム健全性、及び熱管理を改善するための追加の機能を含む一方、ウルトラキャパシタのストリングをモニタリングしてバランスを保つために必要な回路を備える。
所定の実施形態におけるUMS回路は監視装置を備え、モジュール式バススタッカによって、接続回路、EMS回路、充電状態回路、クロスオーバー回路、又はMSIDにおける他の回路、及び/又は1つ又は複数のエネルギー源(バッテリー、ワイヤーライン又は発電機など)と電気的に接続され、また、これらと通信するようにプログラミングされている。UMS回路は、UMSの機能を行うための集積回路(「IC」)又はコントローラと、トランジスタ又はダイオードのようなスイッチ装置と、及び様々な付属構成要素とを備えてもよい。ICは既製のモノリシック制御ICから選択されてもよい。
v.電子回路管理システム(EMS)回路
所定の実施形態において、MSIDは電子回路管理システム(Electronics Management System:「EMS」)回路を備える。EMS回路は、以下のものの1つ又は複数が可能である多機能装置である:システム性能及び環境条件のデータを収集して記録すること;他の回路を管理すること;及び、プログラミング及びデータ伝送のために外部システムに通信すること。
所定の実施形態において、EMS回路ハードウェアは周囲のハードウェアにタイトに統合され、これにより、システム全体の挙動の制御及びモニタリングを可能にする。ハードウェアは、インテリジェントにシステム性能を最適化するために、外界センサを用いて、また、マイクロプロセッサ間の通信を用いて、他の複数のマイクロコントローラの動作を管理するインテリジェントなファームウェアによって補われてもよい。その効果は、極めて用途が広く有能なシステムであって、環境及び要件における変化にリアルタイムで適合することができるものである。
所定の実施形態において、EMS回路は、システム性能及び環境条件のデータを収集して記録する。EMS回路は、例えばEMS回路監視装置を介して、外界センサから直接に、及び他の回路からモジュール式バス上の通信を通じて、センサデータを記録することを担当する。このデータは、システム性能を最適化のために評価することに使用されてもよい。概して、著しいイベントは後の評価のために記録されてもよい。
所定の実施形態において、EMS回路は、最適なシステム性能のために周囲の回路を管理する。例えば、EMS回路はUCC充電電流を制御してもよい。充電電流は、センサによって、及び回路との通信によって、システム全体にわたって集められたデータに基づいて選択されてもよい。EMS回路は、可能な場合に電力を節約するために、様々な回路構成要素を小電力のスリープ状態に入れることができる。
所定の実施形態において、EMS回路は、プログラミング及び/又はデータ伝送のために外部システムに通信する。EMS回路における外部通信バスは、外部のハードウェア及びソフトウェアへの通信を可能にする。この接続は、システムに配置されている間にEMS回路を再プログラミングすることを可能にする。その後、EMSは他の監視装置を再プログラミングするか、又は、他の監視装置をそれらの動作について指示し、これにより、システム全体を有効に再プログラミングすることができる。内部メモリから外部ソフトウェアにデータログを送信するために、外部通信バスが使用される。このように、データは、動作中に収集され、動作後に外部機器、例えば外部PCにより分析されることが可能である。
1つの実施形態において、電子回路管理システム(EMS)回路は、利用可能な監視装置及びセンサから情報を収集し、それに依存してシステム挙動を制御するように動作する。EMSは、PCソフトウェア又はファームウェアプログラマのような、外部電子回路へのインターフェースを提供する。外部通信バスを介して、EMS回路コア、例えばEMS回路監視装置をプログラミングし、従って、EMS回路に接続された他のすべての監視装置をプログラミングすることが可能である。
図34に示すEMS回路コアは、1つ又は複数のディジタル回路、例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)装置)から構成されてもよい。所定の実施形態において、EMS回路コアは、図34に示すように、ウルトラキャパシタストリングを外部負荷に接続又は切断させる負荷接続/切断回路に接続されている。所定の実施形態において、図34に示すように、EMS回路コアは、様々なセンサアレイに接続されていてもよい。例えば、キャパシタストリング電圧が特定の負荷にとって低すぎるか高すぎる場合、キャパシタストリングは負荷から切断されてもよい。正常なランタイム動作中に、負荷は、負荷ドライバ回路を介してウルトラキャパシタに接続されている。
所定の実施形態において、EMS回路は、他の監視装置とのインターフェースをもたない追加のセンサに接続されている。これらのセンサは、温度センサ、負荷電流センサ、入力バッテリー電流センサ、入力電圧センサ、及びキャパシタストリング電圧センサから成るグループの1つ又は複数を含んでもよい。
モジュール式バスを介して、EMS回路は、例えば図34に示すようにモジュール式バスを介して、他の回路に接続されてもよい。通信バスは、データ線、クロック線、及びイネーブル線を備えてもよい。いくつかの実施形態において、図34に示すように、監視装置は、データ線、クロック線、及びイネーブル線へのインターフェースを有する。さらに、各監視装置は識別アドレスで規定されることが可能である。
1つの実施形態において、図34に示す内部通信バス上で通信するために、EMS回路は、図35に示すアルゴリズムを実行する。図35に示すように、EMS回路は、イネーブルラインを起動し、ターゲットの監視装置の識別アドレスをデータ及びクロックライン上で送信し、その後で、所望のデータコマンド命令を送信する。イネーブルラインが起動されたのを監視装置が検出したとき、各監視装置はその規定された識別アドレスをリッスンする。監視装置は、その識別アドレスを読み取ったとき、EMS回路メッセージをリッスンし続け、それに従って応答する。このように、通信は、EMS回路監視装置及びすべての他の監視装置との間で達成される。
所定の実施形態において、EMS回路は、UCC充電電流を制御するために、UCCとのインターフェースをとる。充電電流は、出力ウルトラキャパシタ電圧を調整するように制御される。電子回路、ウルトラキャパシタ、及び入力バッテリースタックの安全かつ効率的な動作を保証するために、フィードバック制御及び/又はヒューリスティックな技術が
使用される。
所定の実施形態において、EMS回路は、バッテリー接続状態を記録し、かつ潜在的に制御するために、クロスオーバー回路とインターフェースをとる。クロスオーバー回路及びクロスオーバーイベントの状態は、EMS及び内部/外部メモリを介して記録されてもよい。
所定の実施形態において、EMS回路は、セル健全性及び/又は放電イベントをモニタリングして記録するために、UMS回路とのインターフェースをとる。
所定の実施形態において、EMS回路は、電力消費量を減少させてランタイム挙動を最適化するために、監視装置を小電力状態にすることができる。
本明細書で説明するように、EMS回路は、種々様々のセンサへのとの間の通信を可能にする固有のハードウェア構造を有し、これにより、概して、1つ又は複数の性能パラメータ、例えば、効率、電力出力、バッテリー寿命、又はキャパシタ寿命を最適化するように作用するさまざまな利点をもたらす。
所定の実施形態におけるEMS回路は監視装置を備え、モジュール式バススタッカによって、回路の監視装置を介して、接続回路、UMS回路、充電状態回路、クロスオーバー回路、及び/又は1つ又は複数エネルギー源(バッテリー又はウルトラキャパシタストリングなど)と電気的に接続され、また、これらと通信するようにプログラミングされる。EMS回路は、少なくとも1つのディジタルコントローラ、例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、又はFPGA、及び様々な付属の構成要素を備えてもよい。
vi.負荷ドライバ回路
所定の実施形態において、MSIDは負荷ドライバ回路を備えてもよい。
電力システムが比較的に高エネルギーの用途(例えば、長い時間期間にわたってソレノイドもしくはモータに基づく泥パルサー、EM送信機、又はモータドライブを駆動すること)に電力を供給する可能性がある本発明の実施形態では、MSIDは負荷ドライバ回路を備えてもよい。負荷ドライバ回路は、所定の実施形態では、ある態様の調節、例えば、他の広く変動する電圧態様にもかかわらず電力システムの出力の電圧調節を行ってもよい電力変換器として動作する。例えば、電源が断続的な場合、例えば数分にわたって電力を提供し、次に数分にわたって電力供給を止める場合、電力システムは、電源が電力を供給していない期間中に負荷へ電力を供給するように要求される可能性がある。この例示において、HTRESは、電源が電力を供給していない期間に、電力の供給のために蓄積エネルギーを提供してもよい。HTRESがキャパシタ、例えばウルトラキャパシタである場合、上記HTRESの限られたエネルギー容量は、電力システムが負荷へ電力を供給しているが電源が電力を供給していない期間に、上記HTRESの広い電圧変動をもたらす可能性がある。負荷ドライバは、この例では、広く変動するHTRES電圧にもかかわらず調節された負荷電圧のために提供するために使用されてもよい。負荷ドライバは電力変換器として機能してもよく、これにより、それは上記HTRESから引き出されて上記負荷に送られる電力を処理し、さらに、それは上記調節の態様、すなわち調整された電力変換器であって、この例では、出力電圧について調節された電力変換器を組み込んでいる。概して、調節の態様は、当該技術において既知のフィードバック調節技術によって可能にされる。
所定の実施形態において、負荷ドライバ回路の中心にあるコントローラ集積回路(IC)は、モジュール式バススタッカによってMSIDの残りと電気的に接続され、またMSIDの残りと通信するようにプログラミングされた。例えば、ある実施形態では、MSIDの残りはさまざまな回路を備えてもよい。非限定的な例示は、接続回路、少なくとも1つのセンサ回路、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、切り換え回路、充電状態回路、及び電子管理システム回路を含む。
1つの実施形態において、MSIDはモジュール式回路基板をさらに備える。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形である。別の実施形態において、モジュール式回路基板はスタックされている。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形であり、かつスタックされている。
ある実施形態では、電源は、ワイヤーライン電源、バッテリー、及び発電機のうちの少なくとも1つを備える。
所定の実施形態において、電源は少なくとも1つのバッテリーを備える。この実施形態中で、MSIDは、特に電源がバッテリー以外のものも備える場合、クロスオーバー回路をさらに備える。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路基板をさらに備える。
所定の実施形態において、電源は、ワイヤーラインと、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、電源は発電機を備える。
所定の実施形態において、電源は、発電機と、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路をさらに備えてもよい。所定の実施形態において、MSIDは充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、回路基板は多機能の回路基板を提供するために組み合わされてもよい。
負荷ドライバ回路は高温で動作することを特徴とし、例えば摂氏75度より高い温度、例えば摂氏125度より高い温度、例えば摂氏150度より高い温度で動作する。また、負荷ドライバ回路は、調節可能な充電電流制御、キャパシタバンクのための余分な電圧保護、及び広い入力/出力電圧範囲、及び電圧モード調節のうちの任意のものを備えてもよい。
所定の実施形態において、負荷ドライバはキャパシタ、例えばウルトラキャパシタを充電する。これらの実施形態において、調整可能な電流は、コントローラICがディジタル的に通信しないときにコントローラICが解釈するアナログ電圧を生成するために監視装置及び低域通過フィルタによって作成されたパルス幅変調(PWM)された制御信号でディジタル的に確立されてもよい。コントローラICは出力電流、例えばウルトラキャパシタ充電電流を調整するように構成される。充電電流の制御を通じて、UCCは、ICのオンオフ制御で電圧が所定の電圧バンド内に維持されるように、例えばヒステリシス制御により、ウルトラキャパシタ上の電圧を調整することができる。
負荷ドライバ回路は、所定の実施形態中で、ディジタル制御されてもよい。別の実施形態において、負荷ドライバ回路は電子回路管理システム(EMS)によってディジタル制御されている。別の実施形態において、負荷ドライバ回路は、エネルギーを節約するためにスリープモードに入ることができる。また、この態様はディジタル制御によって設けられてもよい。
負荷ドライバコントローラはアナログ方法で実装することもできる。そのような構成において、フィードバック制御は、概して、演算増幅器、抵抗器及びキャパシタのような構成要素を用いて行われるだろう。有効ではあるものの、この構成の小さな欠点は、充電電流及び出力電圧を制御する柔軟性が本質的に欠けているということにある。
所定の実施形態において、負荷ドライバ回路の中心にあるコントローラ集積回路(IC)は、モジュール式バススタッカによって、接続回路、EMS回路、クロスオーバー回路、及び/又は1つ又は複数エネルギー源(バッテリー、発電機又はワイヤーラインなど)と電気的に接続され、また、これらの構成要素と通信するようにプログラミングされる。負荷ドライバ回路は、さらに、電圧サンプリング用の抵抗器ネットワーク、ステップダウン電力セクション(例えばバックコンバータ)、ステップアップ電力セクション(例えば昇圧コンバータ)、電流モード制御に必要なインダクタ電流検出抵抗器、及び/又は、充電電流の調整に必要な充電電流検出抵抗器を備えてもよい。
1つの実施形態において、負荷ドライバ回路コントローラはディジタル的に実装される。そのようなシステムの利点は構成要素の削減及びプログラム可能性を含む。ある実施形態では、スイッチネットワークの制御は、マイクロコントローラ/マイクロプロセッサによって実行される。
vii.増幅器回路
高い電力レベルの処理は、多くの場合、非常に効率的な電力回路を必要とする。電力回路における非効率性は温度上昇をもたらし、これは、電子回路及びウルトラキャパシタを破損する場合がある。従って、大電力を処理するために、多くの場合、高効率電力回路が必要とされる。当該技術では、D級トポロジーが高効率動作のために設計されたものとして認識される。高効率は、出力トランジスタを完全にエンハンスド型で、又はオフ状態で実行することにより達成される。完全にエンハンスド型である場合、MOSFETは理想的には内部抵抗をもたない短絡とみなされてもよい。この状態では、出力トランジスタに大電流が流れるが電圧降下が生じることはなく、その結果、電力損失は生じない。それらのオフ状態では、MOSFETは理想的には高電圧においてすべての電流を阻止し、その結果、電力損失は生じない。本実施形態において、MOSFETは理想的なスイッチとは考えられず、むしろ、電力損失は、適切に選択されたスイッチング周波数及び低損失の構成要素を介して緩和される。上述したことは、本質的には、当該技術で認識されたスイッチモード動作に関連付けられた基本概念について説明している。スイッチモード動作が増幅器に適用される場合、それらの増幅器はしばしばD級増幅器と呼ばれる。
所定の実施形態において、D級増幅器は、既存の解決方法に比較して有意に高い電力能力を可能にする。特定の実施形態において、増幅器は、D級フルブリッジスイッチング増幅器構成、すなわちD級増幅器とも呼ばれる構成で接続された6つの主な構成要素を備える:(1)高電圧キャパシタレール;(2)変調器;(3)複数のデバイスドライバ;(4)スイッチングセクション;(5)複数の信号低域通過フィルタ;及び、(6)負荷インピーダンス。
1.高電圧キャパシタレール
高電圧キャパシタレールは出力トランジスタに正のレール電圧を供給する。負荷へ有意な電力を配送するために、高電圧キャパシタレールが低いインピーダンスを維持して、重い負荷の下での電力損失を最小化することは重要である。
2.変調器
変調器は、負荷に供給される信号を変調する機能を有する。変調器は、多数の方法で機能することが可能である。変調器は、多数の量、例えば、電力、電圧、電流、周波数、及び位相を変調してもよい。
負荷に提供される電圧の振幅を変調する例示的な開ループ方法は、時間的に変動する基準入力として時間的に変動するアナログ信号をパルス幅変調器回路へ供給することを含む。この場合、例えば、コンパレータは2つの入力を有し、一方は前記基準であり、他方は所望のスイッチング段スイッチング周波数で発振している三角波信号であり、パルス幅変調器回路はパルス幅変調されたゲートドライバ制御信号を供給する。パルス幅変調器回路へ入力される基準電圧を時間的に変動することによって、ゲートドライバ制御信号のデューティ比も変動され、次いで、上記制御信号のデューティサイクルは、負荷にもたらされた瞬間電圧を制御することができる。
負荷に提供される電圧の振幅を変調する例示的な閉ループ方法は、時間的に変動する基準入力として時間的に変動するアナログ信号をフィードバック制御回路に供給することを含む。ここで、フィードバック制御回路は、当該技術において既知の様々な方法で、負荷に提供された電圧を調整するように構成される。概して、フィードバック回路は、フィードバック信号の測定態様、誤差増幅器、動的な補償器、パルス幅変調器、ゲートドライバを備える。ゲートドライバはデッドタイム回路を備えてもよい。動的な補償器は、概して、閉ループ安定性及び閉ループ動力学の組み合わせを達成するように設計されている。
3.デバイスドライバ
デバイスドライバは、概して、電流又は電圧増幅、電圧レベルシフト、装置保護を行い、一部の場合には、適切にトランジスタ入力を駆動するためにデッドタイム発生を行う。概して、デバイスドライバは、低レベルの制御信号を、装置を制御するのに適切な信号に変換する。例示的な装置は、バイポーラ接合トランジスタ、MOSFET、JFET、スーパー接合トランジスタ又はMOSFET、シリコン制御型整流器、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどを含む。ゲートドライバは、ディスクリート実装として、又は既製品又はモノリシック集積回路として設けられてもよい。
4.スイッチングセクション
スイッチングセクションは、概して、出力トランジスタスイッチを備え、入力電力を処理して、変換された電力を負荷へ提供する。例示のスイッチングセクションは、与えられた任意の時間においてトランジスタのうちの2つがオンになるように、フルブリッジ構成で構成される。一方の状態で、2つのトランジスタがオンになり、負荷を介して一方向に電流を流れさせる。他方の状態で、他の2つのトランジスタがオンになり、負荷を介して反対方向に電流を流れさせる。
5.フィルタリング
各トランジスタは、基準信号の帯域幅よりずっと高い周波数でスイッチングされる。負荷にわたって基準信号の増幅されたバージョンを正確に再生成するために、低域通過フィルタを使用して高周波スイッチング信号をフィルタリングにより除去し、理想的には、負荷を通して送られた低周波基準信号のみを残す。低域通過フィルタは、抵抗部品では生じるであろう損失を防ぐリアクティブ部品である。スイッチングセクション及び負荷の間でフィルタリングすることは、変調された信号中の所望の周波数を負荷へ送るはずである。一方で、フィルタリングは、不要な周波数成分を拒絶するために十分に帯域制限されるべきである。
6.負荷
この発明において、負荷インピーダンスは、テレメトリ信号が送信されている媒体を表す。負荷インピーダンスは、一般に、信号が空間を通ってどのように伝搬するかを決定する高次の挙動を含んでいる。しかしながら、単純なモデルは電力抵抗器によって表される。
スイッチング増幅器は出力信号中にスイッチングアーティファクトを導入する可能性があるが、所定の実施形態では、これらのアーティファクトは、適切に選択されたスイッチング周波数及び/又は良好に設計されたフィルタリングを使用することにより最小化される。特定の実施形態において、出力フィルタは、基準信号に含まれた情報を保ちながら、スイッチングアーティファクトを厳しく減衰させることで、信号完全性を保つ。出力フィルタは、非常に低抵抗の構成要素を有することにより最小の電力損失に寄与してもよい。
viii.センサレスモータ駆動回路
過酷な環境の用途において、ブラシレスDC(BLDC)モータはさまざまな用途で利用され、例えば、坑井内の掘削中の測定(MWD)に使用される泥パルサーを動作させるために、すなわち泥パルステレメトリを行うために利用される。しかしながら、従来のBLDCモータは、多くの場合、回転子位置センサーを含み、これに依存している。回転子位置センサーの一般的な例はホール効果センサである。過酷な条件下では、すなわち、高温、大きな衝撃、及び大きな振動、例えば、摂氏70度を超える温度、2Grms(すなわち2乗平均根加速度)を超える連続的な振動、及び20Gを超える衝撃の条件下では、回転子位置センサー及び特にセンサ付きモータのホール効果センサは、信頼性の制限を有し、多くの場合、破損されるか故障する。これらの問題を扱うために、本発明は、3相BLDC(すなわち「Y」)モータの電子的整流を用いて、センサレスブラシレスDC(BLDC)モータ及び改修されたセンサ付きBLDC(例えば、動作するセンサ及び故障したセンサのいずれかを有するもの)のいずれかを動作させてもよい、センサレスBLDCモータドライブを提供する。BLDCモータドライブは、逐次的整流アルゴリズムによりBLDCモータを動作させるように構成される。
本明細書で説明した電力システムに本明細書で開示したモータドライブを接続することは、多数の利点をもたらす可能性がある。例えば、モータドライブに接続された大電力用途用の電力システムは、泥パルサーをより激しく駆動するために使用されてもよい。より激しい泥パルサーは、より鋭い圧力パルスをもたらし、かつ、潜在的により高速な地表へのデータ転送速度をもたらす。例えば泥パルステレメトリを用いて、バッテリー寿命を保持しながら、かつ、信号完全性を損なうことなく、例えば最大で2倍のデータ転送速度をもたらす。
この構成は、坑井内ブラシレスDCモータドライブにおけるホール効果センサの使用又は必要性を除去する。ここで、本明細書で説明したBLDCモータドライブは、坑井内環境において信頼できるブラシレスDCモータを使用できるようにする。さらに、従来のセンサ付きBLDCモータに存在する少なくとも5本の必要なワイヤ(5V、GND、H1、H2、H3)を除去することができ、それによって、信頼性を向上させ、複雑さを低減させる。
本発明のもう1つの実施形態に係る電力システムは、電源からの電力をバッファリングするように適合した電力システムを提供する。この電力システムは、
HTRES、例えば、本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化されたウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
センサレスブラシレスDCモータ駆動回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備え、
本システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲中の動作に適合され、
負荷はブラシレスDCモータ、例えばセンサレスBLDCモータを備える。
所定の実施形態では、コントローラは本発明のMSIDである。
従って、もう一つの実施形態中で、本発明はセンサレスブラシレスDCモータシステムに関し、本システムは、
電源であるHTRES、例えば、本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化され、1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよいウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
センサレスブラシレスDCモータ駆動回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備え、
本システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲中の動作に適合され、
負荷はブラシレスDCモータを備える。
所定の実施形態では、コントローラは本発明のMSIDである。
さらに、所定の実施形態において、センサレスブラシレスDCモータドライブは、フィルタリングされたモータ端子電圧を受信し、かつ、整流制御信号を発生するために利用される出力を有するコンパレータを用いてペアごとにそれらを比較するように構成される。例えば、コンパレータの正の入力が負の入力未満になる場合、コンパレータの出力は負の電源レールまで飽和し、入力が交換される場合には正の電源レールまで飽和する。回転子位置の状態は、コンパレータの出力の状態から決定することができる。
センサレスブラシレスDCモータ、例えば3相モータは、回転子の位置に基づいてその各位相にエネルギーが付与されるように駆動されてもよい。電流が固定子コイルを通過するとき、磁極は右手親指の規則による極性で生成される。図36に示すように、2つの位相に同時にエネルギーが付与されるとき、2つの位相に流れる電流は、電流源に関して互いに反対方向である。固定子コイルによって形成されたエネルギーが付与さられた極は回転子の極を引きつけ、また、回転子がそれらの極に接近しているとき、対応する固定子コイルへのエネルギーは遮断されてもよく、次のコイルのペアにエネルギーが付与されて回転子運動を生成する。回転子が回転するとき、アクティブではない位相の逆起電力によってコンパレータ出力はその状態を変化させ、これに応じて、コントローラは、ルックアップテーブルにおける現在の状態に一致し、そして、次の状態に移行する。
所定の実施形態中で、モータドライブの電源が入れられるとき、図37に示すような、センサレスBLDCモータドライブのアルゴリズムは、既知の位置に回転することで回転子の状態を識別する。回転子が新たな位置に向かって移動するとき、固定子巻線に対する永久磁石の移動は、コンパレータの出力が有効になるように十分な逆起電力を発生する。有効なコンパレータ出力が生じると、システムは、有効な整流制御信号を有し、従って、整流タイミング及び次のエネルギー付与ステップの両方を決定することができる。この点では、センサレスBLDCはセンサレス動作を継続することができ、それによって、例えば以下の表12のような格納されたルックアップテーブルにおいて、コントローラは次の状態を参照することができる。次のエネルギー付与状態が所望の回転方向(時計回り又は反時計回り)に依存することに注意する。性能は、モータドライブの電源が入れられた直後に整流信号が利用可能になるという点で、センサ付き方法のそれに匹敵する。これは、モータを同期モードで動作させて逆起電力を検出できる場合の速度に到達させるスタートアップ手順の必要性を除去する。
従って、1つの実施形態において、本発明は、センサレスBLDCモータ駆動調整回路、回転子、固定子コイル、及び固定子コイルの3つのコンパレータ出力を備えるセンサレスブラシレスDC(BLDC)モータ、例えば3相BLDCモータを動作させる方法を提供し、本方法は、
回転子を回転させて1組の既知の励磁状態のうちの1つへ回転子を整列させ、コンパレータ出力において制御信号を発生するステップと、
2つのコンパレータ出力のみに同時にエネルギーが付与されて反対方向の2つの位相を生成するように、固定子コイルに電流を流すステップと、
十分な逆起電力を検出して有効な整流制御信号を発生し、既知の励磁状態に従って整流タイミング及び次のエネルギー付与ステップの両方を決定するステップと、
回転子運動が一方向に発生されるように、既知の励磁状態に従って上記次のエネルギー付与ステップを実行するステップとを含む。
所定の実施形態において、既知の励磁状態は、センサレスBLDCモータ駆動調整回路に電気的に接続されたメモリに例えばローカル又は遠隔に格納された、予め定義された標準と比較することによって決定される。所定の実施形態において、既知の励磁状態は表12のように提供される。
所定の実施形態において、回転子は以下のエネルギー付与方式を使用して1方向に移動される。
ステップ1:第1の出力コンパレータ(A)は正で駆動され、第3の出力コンパレータ(C)は負で駆動され、第2の出力コンパレータ(B)は駆動されない。
ステップ2:第1の出力コンパレータ(A)は正で駆動され、第2の出力コンパレータ(B)は負で駆動され、第3の出力コンパレータ(C)は駆動されない。
ステップ3:第3の出力コンパレータ(C)は正で駆動され、第2の出力コンパレータ(B)は負で駆動され、第1の出力コンパレータ(A)は駆動されない。
ステップ4:第3の出力コンパレータ(C)は正で駆動され、第1の出力コンパレータ(A)は負で駆動され、第2の出力コンパレータ(B)は駆動されない。
ステップ5:第2の出力コンパレータ(B)は正で駆動され、第1の出力コンパレータ(A)は負で駆動され、第3の出力コンパレータ(C)は駆動されない。
ステップ6:第2の出力コンパレータ(B)は正で駆動され、第3の出力コンパレータ(C)は負で駆動され、第1の出力コンパレータ(A)は駆動されない。
もう一つの実施形態において、本発明は、センサレスBLDCモータ駆動調整回路、回転子、固定子コイル、及び固定子コイルの3つのコンパレータ出力を備えるセンサレスブラシレスDC(BLDC)モータ、例えば3相BLDCモータを動作させることを含む方法を実行するために、プロセッサによって実行するために格納された命令を有する機械可読媒体を備えるセンサレスブラシレスDC(BLDC)モータ駆動回路を提供する。
本方法は、
回転子を回転させて1組の既知の励磁状態のうちの1つへ回転子を整列させ、コンパレータ出力において制御信号を発生するステップと、
2つのコンパレータ出力のみに同時にエネルギーが付与されて反対方向の2つの位相を生成するように、固定子コイルに電流を流すステップと、
十分な逆起電力を検出して有効な整流制御信号を発生し、既知の励磁状態に従って整流タイミング及び次のエネルギー付与ステップの両方を決定するステップと、
回転子運動が一方向に発生されるように、既知の励磁状態に従って上記次のエネルギー付与ステップを実行するステップとを含む。
低速及びスタートアップ時には性能が悪化するセンサ付きBLDCモータ及び他のセンサレス動作方法とは対照的に、本発明のBLDCモータドライブで起動されたセンサレスBLDCモータは、スタートアップ時にさえも同じトルクを提供し、回転子はほとんど直ちに所望速度に到達する。
センサ付きBLDCモータ及び他のセンサレス動作方法とは対照的に、本発明のBLDCモータドライブで起動されたセンサレスBLDCモータの双方向回転は即時であり、これにより、プレッシャーバルブの開閉が必要であるMWDツールとして適したものになる。
3つのコンパレータのみを利用する本発明は、現在使用されている従来のセンサ付きモータに比較して、実装、製造、及びサービスの容易さを向上させる。
センサレスブラシレスモータドライブ及び関連付けられたモータは、自動化、自動車、アプライアンス、医療、航空宇宙、及び軍事の用途を含むが、これらに限定されない、BLDCモータが使用されているすべての用途で使用されてもよい。
6.装置及びシステムの製造
a.HTRESモジュール
本明細書に開示された装置及びシステムの所定の実施形態は、HTRESモジュール及びMSIDを備える。HTRESモジュールは、本明細書で、例えばセクション4で説明したさまざまなHTRESで構成されてもよい。上述したように、所定の実施形態において、HTRESは少なくとも1つのウルトラキャパシタを備える。本明細書に開示されたシステム及び装置の例示的なHTRESモジュールにおいて、図29に示されるように、2つ以上のウルトラキャパシタはウルトラキャパシタストリングとして構成される。図29は、本明細書に開示された所定の実施形態によるウルトラキャパシタストリングを示し、これは、空間効率的な向きで組織化された2つ以上のウルトラキャパシタセルを備える。このHTRESモジュールは1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよい。本明細書に開示されたHTRESモジュールは、ウルトラキャパシタパック、例えば図30に示す構成として構成された、本明細書に開示されたウルトラキャパシタを備えてもよい。ここで、ウルトラキャパシタアセンブリ、例えば図29に示すような1つ又は複数のウルトラキャパシタストリングは、より小さな寸法のハウジングにおいてより多くのセルが使用されることを可能にする。さらに、それは、電線を適切な場所に固定するようにポッティングするための余地を有してパックの横に沿って電線が安全に延在するべき余地を残す。
図30に例示された所定の実施形態において、本明細書に開示されたシステム及び装置は、ウルトラキャパシタの3本のストランドパックアセンブリを備える。これにより、例えば、複数のセルを互いに溶接してより少ないセル群にして、次いで複数のセルからなる1本の長いストランドにすることが容易になるので、システムを組み立てることがより簡単になる。所定の実施形態において、本明細書で説明した絶縁技術は、短絡故障に対する安全性を提供し、システム構造の剛性を維持する。特定の実施形態では、ポッティングすることにより、バランスが確保され、システムワイヤが適切な場所に固定され、望ましくない故障に対して保護される。例えば、同じサイズの内径を有するハウジングチューブ(例えば、Dサイズを有するフォームファクタからAAまで)により多くのセルを収容することも、著しく短いハウジングチューブに収容することも可能になるので、それは有益である。
1つの実施形態において、本発明は、本発明のシステムで使用されるように複数のウルトラキャパシタを直列に接続することで準備されたウルトラキャパシタストリングを提供する。所定の実施形態において、セル(例えば12以上)は、テープ、熱シュリンク、洗浄装置、ポッティング合成物、及び/又はスペーサーによって絶縁されてもよい。
1つの実施形態において、セルのフォームファクタはAA(直径約0.53インチ)であり、この場合、キャパシタセクションの長さを最小化するために、等しい個数のセルからなる3本のストランドが使用される。もう一つの実施形態において、Dセル(直径約1.25インチ)が使用されるが、3本のより短いストランドの代わりに1本の長いストランドとして接続されている。絶縁及び組み立ては、異なるフォームファクタではわずかに異なる。
所定の実施形態において、ウルトラキャパシタアセンブリは、キャパシタバランスワイヤ及びシステムワイヤを含んでもよい。AAパックは、バランスワイヤが各セルに安全に配線され、ポッティング及び熱シュリンクで保護されることを可能にする。所定の実施形態において、各ストランド、バランスワイヤ及びストランド、及び/又は複数のセルからなる3本のストランドのパック全体のまわりに、熱シュリンクが適用される。所定の実施形態において、その後、熱シュリンクの内部のセルの各パックの間で、及びセル間で、ポッティングが使用されてもよい。特定の実施形態では、バランスワイヤは、AAストランドのボイド空間の間に配置され、ポッティングによって封止される。特定の実施形態では、システムワイヤは、キャパシタストランドの間のボイド空間に沿って延在し、キャパシタパックの最も外側の直径を増大しない。
所定の実施形態において、各セルは異なる保護層で絶縁される。所定の実施形態において、Kapton(登録商標)テープのような高温絶縁テープの層は、ピン(正端子)のみが露出されるように、ガラス-金属シールを有する各セルの上に配置されてもよい。所定の実施形態において、もう1片の高温絶縁テープで金属容器の上側エッジを包み、金属容器の上面の上に折り返すことで、第1のテープを保持してもよい。特定の実施形態において、金属容器と同じODを有する高温スペーサーディスク(テフロンなど)は、ピンのみが露出されるように、ガラス-金属シールピンのまわりに配置されてもよい。特定の実施形態では、直列に接続された場合に金属容器が圧力下でガラス-金属の上に対してではなくスペーサーに対して押しつけられるように、ディスクはピンの頂上の高さの上に位置する。
所定の実施形態では、図29に示されるように、キャパシタはニッケル又は同様のタブ202を用いて直列に接続されてもよい。所定の実施形態において、タブは、各キャパシタの正端子(通常は、ガラス-金属シールピン)に溶接(抵抗又はレーザ溶接)されてもよい。いくつかの実施形態では、タブはスペーサーディスクの中心を通る。タブは、次の金属容器の正端子及び負端子に溶接される場所を除いて、高温テープ又は高温熱シュリンクで絶縁されてもよい。タブは、スペーサーディスク203にわたって平坦に広がり、次に、次の金属容器の底に溶接されてもよい。所定の実施形態において、タブは折り返され、これにより、ある金属容器が次の金属容器のスペーサー上に位置し、これらが同じ直線上にある。Dサイズを有するセルについては、このことは、すべてが互いに溶接されて1本のストリングになるまで継続される。AAセルの場合、図30に示されるように、それぞれ同じ個数のセルを有する3本のストランドがある。例えば、12個のセルが1つのシステムに必要とされれば、4個のセルからなる3本のストランドが互いに溶接されるだろう。特定の実施形態において、各ストランドを互いに溶接した後に、それらは、セルを安定化させるため、かつ、絶縁及びタブを確保するために、熱シュリンクされる。
所定の実施形態において、セルバランスワイヤの取り付けは、各セルにおける1片の熱シュリンクを除去し金属容器の面にバランスワイヤを溶接することで行われてもよい。所定の実施形態では、バランスワイヤを溶接した後、ワイヤを金属容器へ固定して保護することを支援するために、熱シュリンクチューブのストリップが溶接部のまわりに配置される。バランスワイヤは、そのすべてが金属容器の同じ側に沿って延在するように、各金属容器に取り付けられてもよい。特定の実施形態において、テープは溶接後にワイヤを適所に保持するために使用され、熱シュリンクの追加の層は、すべてのワイヤを適所に、かつセルのストランドの同じ側に維持するために使用可能である。この実施形態において、追加の利点は、3本のストランドをともに配置することから生じる。この場合、バランスワイヤが異なるストランドのセル間の余分な空間の間で延在することができ、パックの直径を増大しない。
所定の実施形態において、複数のセルからなる3本のストランドは、それらすべてを直列に維持するように組み立てられる。例えば、12個のAAセルを使用するとき、それぞれ4個のセルからなる3本のストランドがあるだろう。1本のストランドは、電子システムに接続する正端子を有するだろう。ストランド1の終端の負のタブはストランド2の正端子に接続する。ストランド2はストランド1のは反対方向にある。上記のことは、ストランド3にも当てはまり、すべてのセルが正から負に接続される。所定の実施形態では、バランスワイヤのすべてでキャパシタパックの同じ端部が露出して組み立てを容易にするように、バランスワイヤのすべてが接続される。複数のセルからなる3本のストランドのすべてを溶接した後、すべてのセルをともに維持して1つの剛体にするために最終的な熱シュリンクの層が使用されてもよい。各セルストランドの間において、かつ、パックの上部及び下部からわずかに離れて、セルをさらに保護するためにポッティングが使用されてもよい。
最終的な熱シュリンクの外部において、端部から端部に延在する多数のシステムワイヤがある。AAアセンブリ方法を使用する所定の実施形態において、ワイヤは、パックの直径を増大せずに、キャパシタの空間の間に延在する十分な余地を有する。システムワイヤは正端子又は負端子コネクタのどちらから延在してもよい。ワイヤ(システム及びバランスの両方)はセルパックに沿ってバットジョイントを用いて接続されてもよく、又は、すべてはウルトラキャパシタパックの近くに配置されたもう一つの回路基板まで延在されてもよい。
所定の実施形態において、ウルトラキャパシタ中の超過空間を限定するために、ピンが金属容器の内側ではなく外側にあるように、ガラス-金属シールを180度裏返すことができる。ウルトラキャパシタにおけるこの超過空間の削減は、キャパシタの内部で必要とされる電解質の量を限定するように作用する。図31A及び図31Bは、より厚いハウジングを有する側がセルの内部ではなく外部に存在するようにガラス-金属シールを裏返すことでどのように超過空間が限定されうるのかを示す。そのような方法は、金属容器で使用されている上カバーより厚い本体ハウジングを有する、任意のガラス-金属シールを備えた任意サイズの金属容器で使用されてもよい。
b.本発明のシステムのハウジング
MSIDと、任意のHTRES、例えば本発明のウルトラキャパシタとを備える回路を含む、様々なモジュール式構成要素がいったん組み立てられると(すなわち、相互接続されると)、これらはハウジング内に設置/配置されてもよい。例えば、アセンブリは、図39又は図10に示すようなハウジングに挿入されてもよい。電気的干渉などの防止に加えて、本発明の機械的に頑健なシステムを保証するために、一部の実施形態では、封止材料がハウジングへ注入されてもよい。概して、封止材料は、ハウジング内のボイド空間の全体を充填する。
所定の実施形態において、ハウジングサイズはMSID、例えばMSIDの直径に合わせて選択されている。そのため、外径の寸法はMSIDの回路基板の直径によって影響を受ける可能性がある。
ある実施形態では、このハウジングはMSIDを含み、例えば電子回路モジュールのみを含む。
所定の実施形態において、ハウジングは、MSIDと、HTRES、例えば本発明のウルトラキャパシタ、例えば本発明のウルトラキャパシタストリングとを含んでいる。
所定の実施形態において、ハウジングは15ピンコネクタ包囲チャネルを備える。所定の実施形態において、15ピンコネクタ包囲チャネルは、ハウジングデザインのキャップアセンブリにおける「すべてのポケットを通る部分」又は切り取り部分を備え、これにより、マイクロDコネクタの出口におけるワイヤ接続部の応力集中を低減させるように広い調節半径を提供する。このように、鋭いエッジ及び壁とのワイヤ接点は限定され、ワイヤ損傷のリスクを減らす。
所定の実施形態において、ハウジングは、MSIDを15ピンコネクタ包囲チャネルへ同心的に、かつ分離された状態で搭載する。
所定の実施形態において、ハウジングは開いたワイヤ包囲チャネルを備え、これにより、MSID及びキャパシタがハウジングから独立して組み立てられることを可能にする。それは、著しくシステムの製造容易性を増大する。開いたワイヤ包囲チャネルは、15ピンマイクロDコネクタを装着する引き出し線を適所に備える。特定の実施形態において、開いたワイヤ包囲チャネルのテーパ状の入口は、エッジ及びチャネル壁とワイヤとの接点を限定する。
所定の実施形態において、ハウジングは、着脱可能な薄い壁を有するハウジングを備える。所定の実施形態において、着脱可能な薄い壁を有するハウジングシャーシカバーは、ワイヤをシャーシ内のMSID構造物の横を通って引き回すための、遮るものがない経路を提供する。特定の実施形態において、ハウジング挿入物の放射状の突出部は、着脱可能な薄い壁を有するカバーのための装着面を提供する。
所定の実施形態において、MSID及び任意のHTRESのアセンブリは、電子回路モジュール、例えばMSIDと、HTRESモジュール、例えばキャパシタモジュールとの間の着脱可能なインターフェースとして、37ピンコネクタをさらに備えてもよい。この着脱可能なインターフェースは、システムの固有のモジュール性を生じさせる。
所定の実施形態において、37ピンコネクタは、MSID及びHTRES、例えば本明細書で説明したウルトラキャパシタストリングを含んでいる別個のハウジング間の着脱可能なハウジングインタフェースに配置されてもよい。これは、電子回路モジュール及びキャパシタモジュールのシームレスで反復可能な接続分離を提供する。所定の実施形態において、37ピン接続、例えばマイクロDは軸方向に搭載され、適切な場所にコネクタを固定するのに必要な放射方向のフットプリントを低減させる。所定の実施形態において、別個のハウジングインタフェースの2重の開いたワイヤチャネルは、37ピンマイクロDコネクタから引き回された2組のワイヤ群を収容する。ハウジングインタフェースの一方の側又は両方の側における「すべてのポケットを通る部分」は、コネクタから開いたチャネルへのワイヤに広い調節半径を提供する。
そのため、本発明の1つの実施形態において、ハウジングは、モジュール式であり、(1)例えばMSIDハウジングにおける、MSIDと、(2)例えばHTRESハウジングにおける、HTRES、例えば本明細書で説明したウルトラキャパシタと、(3)例えば配線インタフェースハウジングにおける、これら2つの間の接続配線とを別々に含むために、3つの構成要素からなるハウジングシステムを備える。所定の実施形態において、ハウジングシステムの各構成要素は、MSID、HTRES、又は配線を別々に含んでいるそれ自体のハウジングアセンブリへ分離されてもよく、この場合、例えば、各ハウジング構成要素は、他のハウジングアセンブリとインターフェースをとるように設計されている。所定の実施形態において、MSID及びHTRESの間の接続配線は、コネクタ、例えば37ピンコネクタをさらに備える。所定の実施形態において、別個の配線インターフェースはハウジングにモジュール性を与え、それは、保守性を増大し、製造の容易さを改善し、製造及び保守のコストを下げるように作用しうる。所定の実施形態において、システムは電力システムである。所定の実施形態において、システムはデータシステムである。
所定の実施形態では、高温化学耐性を有するOリング、例えばViton(登録商標)Oリングは、安全な装着及び減衰を提供し、後者は、バレルへの圧力による振動がシステムハウジングに伝達されることを低減させる。特定の実施形態において、Oリングは、15及び37ピンコネクタハウジングの基部に設けられ、例えば、システムハウジングを圧力バレル内に同心的に搭載する。
i.ポッティング
所定の実施形態において、ハウジング容器は、エネルギー貯蔵装置及びコントローラを封止する封止材料をさらに備える。このような処理は「ポッティング」としても知られている。特定の実施形態において、MSID及び/又はHTRESは、高温環境における振動及び衝撃から保護するための封止材料に浸されてもよい。
従って、本明細書で説明した電力及びデータシステムは、「ポッティング」される、又はハウジングに挿入されて、その後に封止材料で充填されてもよい。とりわけ、封止材料は、電気的及び環境上の干渉からの機械的な衝撃を減衰し、また、それらの干渉から保護する。1つの実施形態において、ハウジングは、封止材料として、SYLGARD(登録商標)170シリコンエラストマー(ミシガン州ミッドランドのダウコーニングから入手可能)で充填される。
封止材料の実施形態は、例えば、高速硬化型のシリコンエラストマー(例えばSYLGARD170)(ミシガン州ミッドランドのダウコーニングから入手可能)を含んでもよい。それは、硬化前に低粘度を有し、100kHzにおいて2.9の誘電率を有し、1ミル当たり530ボルト(v/mil)の絶縁耐力を有し、100Hzにおいて0.005の誘電正接を有し、摂氏約-45度から摂氏約200度の温度範囲を有する。他の封止材料を用いてよい。封止材料は、例えば、電気的な特性、温度範囲、粘度、硬さなどによって選択されてもよい。
ii.改良型ポッティング
所定の実施形態では、例えば本明細書で説明した改良型ポッティング方法を用いてコントローラがハウジングにおいてポッティングされる封止材料、例えばシリコンエラストマーゲルにおいて、十分な個数の膨張ボイド、例えば少なくとも1つの膨張ボイドを提供することにより、回路基板の変形は高温時に低減される。
所定の実施形態において、改良型ポッティング方法は、本発明のシステムを、例えばその製造処理において準備するために利用されてもよい。
改良型ポッティング方法は、ハウジングシャーシの壁におけるスロットに対して、例えば半径方向に挿入される、着脱可能な挿入物を使用することを含む。挿入物は、ポッティング処理の間に、シリコンエラストマー体積が大きい領域に配置される(例えば、基板間の中心に設けられる)。いったん、シャーシ内のシリコーンが硬化されると、挿入物はスロットを通って引き抜かれ、挿入物に等しい体積の空気ボイドを残す。
本明細書に提供される改良型ポッティング方法は、シリコンエラストマーのポッティング合成物の熱膨張に起因する回路基板の変形を低減させるか除去するように作用する。シリコンエラストマーは特に高い熱膨張率を有し、その結果、高温条件下で、回路基板に高い応力集中を生じさせて塑性変形を引き起こす。
改良型ポッティング処理は、コントローラ、例えばMSID構造物に沿った様々な大体積の領域において、空気ボイド、例えば少なくとも1つの空気ボイドを生じさせる。高温条件下で、これらの空気ボイドは、膨張するシリコンエラストマー用の膨張経路を提供する。その結果、応力集中は、回路基板から遠ざけられる。回路基板における応力集中の低下は、表面実装構成要素のハンダ接合部に対する応力も減らす。
さらに、この処理は、坑井内状態で見られるもののような坑井内高温にさらされる、高温封止ポッティング材料でポッティングされた任意の回路に有用である可能性がある。
7.MSIDに基づく坑井装置、システム、および方法
所定の実施形態において、坑井用途の装置及びシステムは、本明細書に開示されるMSIDと、上記MSIDを収容してツールストリングの中へ配置するように構成されたハウジング構造物とを備える。所定の実施形態において、本装置及びシステムは、本明細書に開示されるHTRESと、HTRESを収容してツールストリングの中へ配置するように構成されたハウジング構造物とをさらに備える。後者は所定の実施形態においてHTRESモジュールであってもよい。
もう一つの実施形態において、システムは電力システムであり、本システムは、
本発明のMSIDと、
HTRES、例えば本明細書で説明したウルトラキャパシタと、
MSID及びHTRESの両方を配置してツールストリングの中への配置するハウジング構造物と
を備える。
概して、本明細書で説明される電力システムは、電源の電気的な態様、例えば、電圧、電流、又は瞬間の電力を、電気的、負荷の電気的な態様から分離する。
1つの実施形態において、本発明のシステムは、本発明のMSIDと、上記MSIDを収容してカラーの上又はカラーの中に装着するように構成されたハウジング構造物とを実施形態を備える。
ある実施形態において、MSIDは、データ記録及び/又は報告のみを行うように構成されてもよい。ある実施形態において、MSIDはデータシステムとして構成されてもよい。
1つの実施形態において、本発明は(例えば坑井内環境に適合した)データシステムを提供し、データシステムは、電源から電力を受けるように適合され、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを備え、上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
もう一つの実施形態において、本発明は(例えば坑井内環境に適合した)データシステムを提供し、データシステムは、電源から電力を受けるように適合され、掘削の最適化を行うように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを備え、上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
1つの実施形態において、本発明は(例えば坑井内環境に適合した)データシステムを提供し、データシステムは、電源から電力を受けるように適合され、ビットトルク(TOB)を決定するように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを備え、上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
1つの実施形態において、本発明は(例えば坑井内環境に適合した)データシステムを提供し、データシステムは、電源から電力を受けるように適合され、ビット荷重(WOB)を決定するように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを備え、上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
1つの実施形態において、本発明は(例えば坑井内環境に適合した)データシステムを提供し、データシステムは、電源から電力を受けるように適合され、温度センサ(例えば、変化する抵抗によって温度を示す抵抗測温体(RTD))によって温度を決定するように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを備え、上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態において、坑井内状態がドリルストリング又はツールストリングの長さに沿って変動するときに、坑井内状態、例えば複数のエリアにおける振動及び衝撃を分析するために、複数のデータシステムが使用されてもよい。特定の実施形態において、そのような空間的測定値は、とりわけ、センサによって検出された任意の問題の発生源を位置決めし、区別するために有用である可能性がある。特定の実施形態では、本明細書で説明した上記複数データシステムから受信されたデータを組織化するために、データバス上の識別情報又はアドレスがそれぞれ割り当てられてもよく、また、上記識別情報又はアドレスに関連して、及び/又は、上記識別情報からの情報の要求に応答して、又は、上記識別情報を有するMSIDに所定の時間又は周波数を割り当てるスケジュールに従って、それぞれその情報を送信してもよい。
掘削動力学の効率を例えば現在使用されているシステムに比較して改善する方法は、
本発明のデータシステムを使用することを含む。所定の実施形態において、本方法は、ツールストリング及び/又はカラー中の異なる場所において配置された、本明細書で説明した複数のデータシステムを使用することを含む。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告のためのコントローラは、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDである。
所定の実施形態において、データは、衝撃、振動、ビット荷重(weight on bit:WOB)、ビットトルク(torque on bit:TOB)、アニュラー圧力及び温度、及び/又は坑サイズから選択されてもよい。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うようにコントローラを構成することは、システム健全性のモニタリング、記録、及び通信ができるように、例えば坑井内情報をリアルタイムで通信するように、例えば衝撃、振動、スティックスリップ、及び温度のリアルタイムのモニタリング及び通信を行うように、コントローラを構成することを含む。
所定の実施形態では、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合させることは、高温においてモジュール式回路の変形を低減させる材料、例えばシリコンエラストマーゲルでコントローラを封止することを含む。特定の実施形態において、例えば本明細書で説明した改良型ポッティング方法を用いてコントローラがハウジングにおいてポッティングされる封止材料において、十分な個数の膨張ボイド、例えば少なくとも1つの膨張ボイドを提供することにより、本システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告するシステムは、例えばローカル又は遠隔に、電気的に接続されたデータ記憶装置をさらに備える。
もう一つの実施形態において、本発明は、データ記録及び/又は報告を例えば坑井内環境で行う方法を提供し、本方法は、データ記録及び/又は報告が可能にされるように、電源を本発明の任意のデータシステムへ電気的に接続することを含む。
本発明のデータシステムの製造方法は、
電源から電力を受けるように適合し、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたコントローラと、データを受信する(例えばさらに解釈する)ように構成された1つ又は複数のセンサ回路とを選択することを含み、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合され、
本方法は、データシステムを提供するように、上記コントローラ及びセンサ回路をハウジングに組み込むことを含む。
所定の実施形態において、予備電源が望ましい場合がある。この実施形態では、データシステムはさらに、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御する第2のコントローラとを備えてもよく、
第2のコントローラは、電源からの電力が検出されない場合、データコントローラ及びセンサ回路へ断続的に電力を供給するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
1つの実施形態において、データインタフェースシステムは、以下の表15に提示した性能特性の1つ又は複数を示すように構成される。明確さのために、この表に列挙したものは単に便宜的なものであり、各特性は本発明の別個の実施形態と考えられるべきである。
所定の実施形態において、MSIDは電力システムとして構成されてもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、電力システムとして、及びデータ記録及び/又は報告を行うように構成されてもよい。
MSIDが電力システムとして構成されるMSIDの構成において、システムへの追加の機能を提供するために、円形回路基板で構成された追加のモジュール式回路が追加されてもよい。そのような追加の回路は、モジュール式バスを結合する追加のスタッカを介して追加されてもよい。ここで、ハウジングは、MSIDのサイズのいかなる増加も受容するように構成される。さらに、これらの追加の回路は、MSIDのモジュール式の特性に起因して、MSIDを製造する際に、スタックされた円形回路基板を追加すること以外に追加の複雑さを追加せず、また、MSIDの残りの部分に損傷を与えることなく、機能の保守又は除去のために容易に除去されてもよい。
本明細書で説明した所定の実施形態において、本発明のシステムはHTRESを含んでもよい。エネルギー貯蔵装置は、坑井内条件で実用的である任意のタイプの技術を含んでもよい。ある実施形態において、HTRESは、摂氏75度を超える温度における動作のために構成され、例えば、摂氏約75度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約85度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約95度から摂氏約100度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約75度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約110度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約120度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約130度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約140度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約150度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約160度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約170度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度、例えば、摂氏約175度から摂氏約210度までの温度範囲内にある温度における動作のために構成される。
本発明の所定の実施形態において、エネルギー貯蔵装置又はHTRESは、(図3を参照して下記に述べられる)少なくとも1つのウルトラキャパシタを含む。
HTRESの追加の実施形態は、以下に限定するわけではないが、化学バッテリー、アルミニウム電解キャパシタ、タンタルキャパシタ、セラミック及び金属フィルムキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、磁気エネルギー貯蔵装置、例えば、空気コア又は高温コア材料のインダクタを含む。適切でありうる他のタイプのものは、例えば、フライホイール、バネシステム、バネ質量システム、質点システムなどの力学的エネルギー貯蔵装置、熱容量システム(例えば、高い熱容量の液体又は固体又は相変化材料に基づいくもの)、油圧又は空気圧システムを含む。一例は、米国ロードアイランド州プロビデンスのエヴァンスキャパシタカンパニー(Evans Capacitor Company)から入手可能な高温ハイブリッドキャパシタであり、例えば、最大で摂氏125度までの定格温度を有する部品番号HC2D060122 DSCC10004-16である。もう一つの例は、米国ロードアイランド州プロビデンスのエヴァンスキャパシタカンパニーから入手可能である、例えば、最大で摂氏200度までの定格温度を有する部品番号HC2D050152HTの高温タンタルキャパシタである。さらにもう1つの例は、ドイツ国ミュンヘンEPCOS AGから入手可能である、例えば、最大で摂氏150度までの温度定格を有する部品番号B41691A8107Qのアルミニウム電解キャパシタである。さらにもう1つの例示は、日本国大阪府のパナソニック株式会社から入手可能である、例えば、最大で摂氏150度までの温度定格を有する部品番号ETQ-P5M470YFM、又は、米国カリフォルニア州フラートンのBIテクノロジーズ(BI Technologies)から入手可能である、例えば、最大で摂氏185度までの温度定格を有する部品番号HM70-602R0LFの高温インダクタである。追加の実施形態は、フランス国バニョレのサフトS.A.(Saft S.A.)から入手可能である、例えば、30回の充放電サイクルで最大で摂氏125度までの温度定格を有する部品番号Li-ion VL 32600-125のバッテリーを含む。最大で摂氏約250度までの温度定格を有するもう一つの例示的なリチウムイオンバッテリは、米国マサチューセッツ州ウォルサムのソリッドエネルギーシステムズコーポレイション(SolidEnergy Systems Corp.)で実験フェーズにあり、特許文献1に記載され、これの全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
本明細書で説明したMSIDを備える本発明の電力システムは、電源から負荷に供給された電力のためのバッファとして動作するのに有用である。このバッファリングシステムは、典型的には電源から負荷への直接の接続を使用する既存のシステムに対して、多数の利点を備える。そのような利点は、効率、電力出力、バッテリー寿命、又はHTRES(例えばウルトラキャパシタ)寿命のうちの1つ又は複数の性能パラメータを最適化する能力を含む。
従って、本発明の一実施形態は、例えば坑井内環境において、電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、バッテリー消費量を(例えば電力システムのバッテリー消費量に対して)30%を超えて削減するように、例えば35%を超えて、例えば40%を超えて、例えば45%を超えて、例えば50%を超えて削減するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
もう1つの実施形態において、本発明は、坑井内環境において電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、バッテリー動作時間(すなわちバッテリー寿命又は運転時間)を(例えば電力システムのバッテリー消費量に対して)50%を超えて増大させるように、例えば60%を超えて、例えば70%を超えて、例えば80%を超えて、例えば90%を超えて、例えば100%を超えて増大させるように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
もう1つの実施形態において、本発明は、例えば坑井内環境において、電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、動作効率を90%を超えて増大させるように、例えば95%を超えて増大させるように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
もう1つの実施形態において、本発明は、例えば坑井内環境において、バッテリー電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、バッテリーから定電流を引き出すように、かつ、バッテリーの放電時に一定電圧を出力するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
さらに、バッテリーから定電流を引き出すように、かつ、バッテリーの放電時に一定電圧を出力するように管理することは、与えられたバッテリーの必要性にあわせて最適化することでバッテリー消費量を減少させるように作用する。
もう1つの実施形態において、本発明は、例えば坑井内環境において、電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、電源からの入力電流(例えば、約2Aに約10Aの範囲にわたる)及び出力HTRES電圧を制御するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
ある実施形態において、電圧は負荷に基づいて選択される。
特定の実施形態において、負荷は変動する可能性があり、これに応じて、必要な電圧も変動するだろう。
変化する電圧を含む所定の実施形態において、電力システムは、電源、例えばバッテリーに流れる電流を低減するための最適な安定最低電圧を採用するように構成され、この場合、電圧は±2Vの範囲内で安定し、例えば±1Vの範囲内で安定する。重要なこととして、電圧安定性は、負荷の寿命を増大させるとともに、バッテリー寿命を増大させることは公知である。さらに、所定の実施形態では、安定最低電圧は約0Vから約10Vまでの範囲、約10Vから約20Vの範囲、約20Vから約30Vの範囲、約30Vから約40Vの範囲、約40Vから約50Vの範囲、約50Vから約60Vの範囲、又は約60Vから約100Vの範囲を有する。
もう1つの実施形態において、本発明は、例えば坑井内環境において、電源から負荷への電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、電源からの入力電力(例えば、約0Wから約100Wの範囲にわたる)及び出力HTRES電圧を制御するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態において、電圧は負荷に基づいて選択される。
特定の実施形態において、負荷は変動する可能性があり、これに応じて、必要な電圧も変動するだろう。
変化する電圧を含む所定の実施形態において、電力システムは、電源、例えばバッテリーから生じる電力を低減するための最適な安定最低電圧を採用するように構成され、この場合、電圧は±2Vの範囲内で安定し、例えば±1Vの範囲内で安定する。重要なこととして、電圧安定性は、負荷の寿命を増大させるとともに、バッテリー寿命を増大させることは公知である。さらに、所定の実施形態では、安定最低電圧は約0Vから約10Vまでの範囲、約10Vから約20Vの範囲、約20Vから約30Vの範囲、約30Vから約40Vの範囲、約40Vから約50Vの範囲、約50Vから約60Vの範囲、又は約60Vから約100Vの範囲を有する。
もう一つの実施形態中で、本発明は、例えば坑井内環境において、電源から負荷への電力をバッファリングするための方法を提供し、上記方法は、電源から負荷への電力がバッファリングされるように、本発明の任意の電力システムへ電源を電気的に接続することと、上記電力システムを負荷へ電気的に接続することとを含む。
本発明の電力システムの製造方法は、
HTRES、例えば本明細書で説明した少なくとも1つのウルトラキャパシタと、エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを選択することとを含み、
上記コントローラは、電源から負荷への電力のバッファリングを制御するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
電力システムを提供するように、上記HTRES及びコントローラをハウジングに組み込むことを含む。
本発明の電力及び/又はデータシステムの所定の実施形態では、電力システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間で、例えば摂氏約80度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約90度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約100度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約110度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約120度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約125度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約130度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約140度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約150度から摂氏210度の間で、例えば摂氏約160度から摂氏約210度の間で、例えば摂氏約175度から摂氏約210度の間での温度範囲で動作するように適合される。本発明の電力システムの所定の実施形態では、電力システムは、摂氏約75度から摂氏約150度までの間で、例えば摂氏約100度から摂氏約150度の間で、例えば摂氏約125度から摂氏約150度の間での温度範囲で動作するように適合される。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、電力システムは、ハウジング、例えば本明細書で説明した改良型モジュール式ハウジングをさらに備える。そこにはコントローラ(例えば本発明のMSID)及び任意のHTRES(例えば本発明のウルトラキャパシタストリング)も配置され、例えば、ハウジングはツールストリング中への配置に適している。特定の実施形態では、コントローラは、高温におけるモジュール式回路の変形を低減させる材料、例えばシリコンエラストマーゲルで封止される。特定の実施形態において、例えば本明細書で説明した改良型ポッティング方法を用いてコントローラがハウジングにおいてポッティングされる封止材料において、十分な個数の膨張ボイド、例えば少なくとも1つの膨張ボイドを提供することにより、本システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
本発明の電力システムの所定の実施形態では、コントローラは本発明のMSIDである。所定の実施形態において、MSIDは接続回路基板を備え、例えば、上記接続回路基板は外部コンピュータ/ネットワークと通信するように適合される。所定の実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路基板を備える。所定の実施形態において、MSIDはウルトラキャパシタ充電器回路を備える。所定の実施形態において、MSIDはウルトラキャパシタ管理システム回路を備える。所定の実施形態において、MSIDは電子管理システム回路を備える。所定の実施形態において、MSIDはウルトラキャパシタ充電器回路を備える。所定の実施形態において、上記MSIDは、電源、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、及び電子管理システム回路に電気的に接続された接続回路基板の任意の組み合わせを備える。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、HTRESは複数のHTRESセルを備える。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、HTRESは本明細書に記載したウルトラキャパシタストリングである。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、電源はワイヤーライン電源を備える。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、電源は2つのバッテリーを備える。
本発明の電力システム及び/又はデータシステムの所定の実施形態において、電源はワイヤーライン電源と、1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、負荷は、電子回路、変圧器、増幅器、サーボ、プロセッサ、データ記憶装置、ポンプ、モータ、センサ、熱的に調整可能なセンサ、光学センサ、トランスデューサ、光ファイバー、光源、シンチレータ、パルサー、油圧アクチュエータ、アンテナ、単一チャネルアナライザ、マルチチャネルアナライザ、放射線検出器、加速度計、及び磁力計のうちの少なくとも1つを備える。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、コントローラ回路は、断続的な電力パルスを例えば約50W及び100Wの間で提供するように構成されてもよい。
本発明の電力システムの追加の利点は、高度に機能的な各システムがリチウムなしで作られうるということにある。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、上記電力システムは、ツールストリングの全体及び関連付けられた電子回路への電圧安定性をもたらす、そのような電圧安定性は、電圧について安定的なマイクログリッドをもたらし、これにより、電圧変動に敏感な上記電子回路の寿命を改善する。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、電力システムはリアルタイムで坑井内情報を通信してもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、電力システムは、衝撃、振動、スティックスリップ、及び温度のリアルタイムモニタリング及び通信を行ってもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、上記電力システムは、システム健全性のモニタリング、記録、及び通信を行ってもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、上記電力システムは、充電モニタリングのバッテリー状態のモニタリング及び通信をリアルタイム又はオフラインで行ってもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、上記電力システムは、表面デコードシステム(surface decoding system)をさらに備えてもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、上記電力システムは、モータパルサーを直接に駆動してもよい。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、電力システムは、高レートのセルが必要とされたときに中間レートのセルを使用させることにより安全性を増大させる。
本発明の電力システムの所定の実施形態において、電力システムは、坑井内で使用されるリチウムをより少なくすることで、増大した信頼性を提供してもよい。
ソレノイド又はモータに基づく泥パルサーがMWD及びLWDのツールストリングで使用される所定の実施形態において、本発明の電力システムは、泥パルサーの信頼性を改善してもよく、及び/又はパルスの信号完全性を改善してもよい。
もう一つの実施形態において、本発明は、本発明の任意の電力システムに電気的に接続された電源と、坑井内環境中の動作に適合した負荷とを提供する。
a.高効率用途のためのシステム
i.効率最適化
所定の実施形態において、MSIDは、電力システムの効率を最適化するように構成されてもよい。電力回路の効率は、概して、負荷に配送された出力電力と、バッテリー、ワイヤーライン、又は発電機のような電源によって配送されている入力電力との比として説明することができる。いくつかの実施形態において、EMS回路は、入力電圧及び入力電流を直接に測定し、2つの測定値の積として入力電力を計算することができる。同様に、EMS回路は、出力電圧及び電流を測定し、2つの測定値の積として出力電力を計算することができる。
他の回路、例えばUCCへのその通信を通じて、EMS回路が、充電電流及び充電時間のようなパラメータについてのコマンドを送ることができる。これは、入力電流及び出力電圧の両方の制御を可能にすることができる。充電電流及び調整された出力電圧を変化させることによって、EMS回路は、充電電流及びキャパシタ電圧の全動作範囲にわたって電子回路の電力効率を定量化することができる。
1つの実施形態において、MSIDは、例えば、EMSを使用することにより、また、選択された大電流レベル及びゼロ電流レベルの間で充電電流を切り換えるヒステリシス電圧制御を使用することにより、電力回路効率を最適化する。この理由は、多くの場合、電力回路がそれらの電力能力範囲の中央から上方までの範囲で最も効率的に動作するからである。さらに、電力回路が充電電流を処理していない場合、それらは小電力消費状態に移行させられてもよい。小電力状態は、各回路の静止電力のみを消費する。従って、短い時間期間にわたって大電流レベルになった後で長い低電力消費の「オフ」状態になるようにウルトラキャパシタを断続的に充電するためにEMS回路により電力システムを構成することで、非常に高い電子回路効率を達成することができる。
1つの実施形態において、充電電流の連続的な測定及び制御によって、EMS回路は、電力回路の挙動を変化させ、所定の実施形態では最高効率を達成することができる。このリアルタイム調整能力は、温度、出力負荷、キャパシタ効率、及びバッテリー効率における変化を調節するために重要である。
全体的な電子回路効率は、温度及び入力電圧のような変数で変動する多くの異なる要因に依存する。EMS回路は、入力電力に対する出力電力の比を計算することで、効率を正確に測定することができる。しかしながら、与えられた任意の環境においてどの動作点が最も効率的であるのかを予測するのは難しい。従って、EMS回路は「ヒルクライミング」として既知の技術を使用する。ヒルクライミング方法は、充電電流の摂動を頻繁に生じさせてシステム挙動を観察することを含んでいる。充電電流の各摂動又は変化の後、合計効率が計算される。充電電流の変化がより高い効率をもたらした場合、充電電流は同じ方向にさらに変更される。充電電流の変化がより低い効率をもたらした場合、充電電流は反対方向に変更される。このように、ヒルクライミング方法は、電力回路が最大効率において、又はその近くで動作する動作点を目指す。
所定の実施形態において、MSIDは、UCCの低電力動作モードを目指すことによって効率を最適化する。例えば、いくつかの実施形態では、UCCは、降圧型及び昇圧型の両方の電力変換器として機能する。昇降圧モードの動作において、4つのトランジスタが充電電流を調整するために切り換えられている。一方、降圧モード及び昇圧モードのいずれかにおいて、2つのトランジスタのみが充電電流を調整するために切り換えられている。従って、昇降圧モードは、概して、降圧モード及び昇圧モードのそれぞれより低い効率で動作する。降圧モード、昇降圧モード、及び昇圧モードの間の遷移は、充電電流及びキャパシタ電圧によって管理される。充電電流及びウルトラキャパシタ電圧の両方が他の回路、例えばEMS回路によって測定されてもよいので、MSIDは、最高の効率で動作可能である限りUCCが降圧モード及び昇圧モードで動作することを保証するように、UCC充電電流及びウルトラキャパシタ電圧を制御することができる。
所定の実施形態において、様々な回路又は部分回路は、電力を節約するために小電力スリープ状態に入ってもよい。いくつかの実施形態において、上記スリープ状態は、回路によってローカルに起動されるか、又は回路のディジタル監視装置によって起動される。いくつかの実施形態において、上記スリープ状態は、例えばEMS回路によって、集中管理的に起動される。この場合、それはモジュール式バス上で通信してもよく、ディジタル監視装置との間でデータを送受信してもよい。例えば、UMS回路は、連続的に動作する必要はなく、断続的にのみ動作してもよく、いくつかの実施形態では、キャパシタのバランスを保つことが必要になったときだけ動作してもよい。UMS回路は、キャパシタストリングの実質的にバランスのとれた状態を測定するか報告し、次に、上述した方法でスリープ状態に入ってもよい。概して、同様の方式が他の回路に同様に適用されてもよい。例えば、キャパシタストリングを充電する必要がない場合、ウルトラキャパシタ充電器はスリープ状態に入ってもよい。
ii.電力最適化
所定の実施形態において、MSIDは、電力システムの電力を最適化するように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、EMS回路は、負荷要件の変更に合わせて出力電力能力をリアルタイムで調節することができる。ウルトラキャパシタは、所定範囲の電圧レベルを安全に貯蔵することができ、例えば、さらに、ウルトラキャパシタの個数及びサイズに依存する。高電圧レベルにおいて、ウルトラキャパシタの出力電力能力は増大される。すなわち、ウルトラキャパシタは、再充電される前に、長い時間期間にわたって大電力出力レベルを保持することができる。より低い電圧レベルでは、ウルトラキャパシタは、電力レベルの高さを保持することができないが、バッテリー寿命を延長するために全体効率は増大される可能性がある。
iii.電圧最適化
所定の実施形態において、MSIDは、負荷にもたらされる電圧を最適化するように構成されてもよい。例えば、MSID又はユーザは、所定の範囲内の電圧におけるより低い電力消費量を測定し、例えばバッテリー寿命を延長するために、上記範囲中で動作させることを選択してもよい。例えば、MSIDは、50~100V、40~50V、30~40V、25~30V、20~25V、15~20V、10~15V、0~10Vの範囲中の負荷電圧で動作させるように電力システムを制御してもよい。
iv.バッテリー寿命最適化
所定の実施形態において、MSIDはバッテリー寿命を最適化するように構成されてもよい。例えば、所定の条件下では、バッテリーは、定常電流が流れるならば、断続的な大電流が流れる場合に対して、より長い寿命を提供する。他の条件下では、バッテリーは、パルス電流が流れるとき、高周波成分を含む電流が流れるとき、ゆるやかに変化する電流が流れるとき、上記の組み合わせなどで、より長い寿命を提供する。それ自体、所定の実施形態中で、これらの発見的方法は、バッテリー寿命のために最適化する目的でバッテリー電流を整形するために利用することができる。さらに、これらの発見的方法は、検出されたパラメータに基づいてリアルタイムで適用されてもよい、すなわち、最適なバッテリー電流消費量を決定する状態を決定することを含む。一例において、バッテリー電流は、リチウム塩化チオニルバッテリーにおけるカソードのフリーズオーバーを減少させるために高温において平滑化されるが、同じセルの不動態化の防止を促進するために低温においてパルスを含む。特定の実施形態において、ヒステリシス制御方式は、非ゼロの低いヒステリシスレベルで利用することができる。2つの非ゼロ電流状態の間で充電電流を変化させることによって、バッテリー電流消費量における大きくかつ高速に変化するずれが、バッテリー、例えばリチウム塩化チオニルバッテリーの健全性に与える悪影響を低減させながら、キャパシタ電圧の調整が達成されてもよい。概して、より滑らかな電流が流れることにより、電流及び伝導損失の間の2乗された関係に起因して、直列抵抗の態様を有するエネルギー源からエネルギーをより効率的に抽出できるようになる。
例示として、リチウム塩化チオニルバッテリーパックから、最初に、本明細書に開示されるような電力システムを使用して、オン-オフ電流方式で電流が引き出された。上記第1のテストでの上記バッテリーパックは、約256時間の寿命を達成した。第2のテストで、等価物なバッテリーパックから、本明細書に開示されるような電力システムを使用して、平滑化された電流の方式で電流が引き出された。上記第2のテストでの上記バッテリーパックは、約365時間の寿命を達成した。
所定の実施形態、すなわちバッテリー電流の態様の制御によるMSIDでは、バッテリー寿命は延長される可能性がある。所定の実施形態において、電力システムは上記MSID及びHTRESを備える。
所定の実施形態において、バッテリー電流は、平均の+/-51%未満、例えば50%未満例えば40%未満例えば30%未満例えば20%未満例えば20%未満例えば10%未満の範囲内にあるように制御される。
所定の実施形態において、バッテリー電流は、約1000ミリ秒(ms又はmsec)未満かつ最大で約5Aのピークのパルス、例えば約500ミリ秒未満かつ最大で2Aのピーク、例えば約100ミリ秒未満かつ最大で約1Aのピークのパルスを含むように制御される。所定の実施形態において、バッテリー電流は、1A/秒以下の速さで、例えば0.5A/秒以下の速さで、例えば0.25A/秒以下の速さで、例えば0.1A/秒以下の速さで、例えば0.01A/秒A/秒以下の速さで変化するように制御される。
所定の実施形態において、バッテリー電流は、平滑化、パルス形成、又は波形整形のうちの1つを達成するように制御される。別の実施形態において、上記バッテリー電流は、測定された周囲条件に従って制御される。
所定の実施形態、すなわち、充電電流のヒステリシス範囲を狭くすることでEMS回路を介して電力システムを構成することによるMSIDでは、バッテリー電流は平滑化されてもよく、これによりバッテリー寿命は延長される。概して、より滑らかな電流が流れることにより、数学的には、電流及び伝導損失の間の2乗された関係に起因して、エネルギー源からエネルギーをより効率的に抽出できるようになる。
もう一つの実施形態において、電力システムは、EMS回路を介して、線形フィードバック制御方式を使用して動作するように構成される。
ヒステリシス制御の実施形態及びリニア制御の実施形態の両方において、バッテリー化学、キャパシタ化学、及び電力回路の挙動に関する発見的方法は、システム性能をさらに改善するために実施することができる。
所定の実施形態において、損傷を受けたバッテリーは高い実効直列抵抗(ESR)を示し、これは、その電力能力を低下させる。そのため、クロスオーバー回路と通信することによって、充電回路のバッテリー状態の情報を記録することができる。さらに、入力バッテリー電流及び入力バッテリー電圧の測定によって、バッテリーESRをEMS回路によって測定することができる。過大なESRが与えられたとき、EMS回路は、電力取り扱い能力を改善するためにバッテリー供給を切り換えるようにクロスオーバー回路にコマンドを送ることができる。
図40を参照して、有利な電力最適化及び効率特性を有する、本明細書に開示されたMSIDに基づく装置、システム、及び方法の所定の実施形態の一例が示される。図40Aは、本明細書に開示されたMSIDに基づく装置、システム、及び方法を組み込んでいない、典型的な坑井内ツールの電圧及び電流(すなわち電力)の挙動を示す図である。図40Aで示すシステムは、上に議論されたツールのような例示的な坑井内ツールを含み、これは、上に議論されたバッテリーのようなリチウム塩化チオニルバッテリーのバンクからなるバッテリーパックに接続される。電圧トレース401はバッテリーパックの出力電圧を示し、これは、坑井内ツールが電流をパルスとして引き出す場合、約34Vのベースラインから約26~28Vまで一時的に低下するように変動する。電流トレース402は、坑井内ツールによってバッテリーから引き出された電流をしめし、それは約50mAのベースラインから約2.3Aのピーク電流パルスまで変動する。多数の例示的な坑井内ツールに典型的である、図40Aに示すパルス電力の挙動は、リチウム塩化チオニルバッテリーに損傷を与え、その結果、より短いバッテリー寿命をもたらす。
対照的に、図40Bは、HTRES、具体的には本明細書に開示された高温ウルトラキャパシタのバンクを含む、本明細書に開示されるようなMSIDに基づく電力システムを組み込む同様のシステムの電圧及び電流(すなわち電力)の挙動を示す2つの図を提示する。図40Bに示すシステムは、上に議論されたツールのような例示的な坑井内ツールを含み、これは、高温ウルトラキャパシタのバンクを含む、MSIDに基づく電力システムに接続され、これは、本明細書に議論されたバッテリーのようなリチウム塩化チオニルバッテリーのバンクからなるバッテリーパックに接続されている。電圧トレース403はバッテリーパックの出力電圧を示し、それは、一貫して約28Vであり、坑井内ツールに流れた電流に対応する一時的な電圧低下を含まない。同様に、電流トレース404は、バッテリーパックから引き出された一貫した出力電流を示し、それは約200mAである。電流トレース406は、坑井内ツールによってMSIDに基づく電力システムから引き出された電流を示し、それは約50mAのベースラインから約2.3Aのピーク電流パルスまで変動する。図40Aに示すバッテリーパックの出力電圧と異なり、電圧トレース405として示したMSIDに基づく電力システムから出力電圧は、一貫して約26Vである。この例示は、本明細書に開示されたMSIDに基づく電力装置、システム、及び方法の多数の実施形態の代表であり、本明細書に議論されるように、利用可能な坑井内バッテリー、発電機、及び他の電源を利用する既存の坑井内電力システムに対して、多数の最適化及び効率の利点を提供する。
v.HTRES寿命最適化
所定の実施形態において、MSIDは、HTRES(例えばウルトラキャパシタ)の寿命最適化を電力システムへ提供するように構成されてもよい。例えば、EMS回路は、UMS回路にデータ及びコマンドを伝えることができてもよい。これは、調整された出力電圧が最適化中に変化したときであっても、各セルを所望の電圧レベルへ調整するために有益である。さらに、UMS回路は、モジュール式バスを介してEMS回路へセル健全性を報告する。1つ又は多数のキャパシタが損傷を受けたことをUMS回路が報告する場合、EMS回路は、さらなる損傷を緩和し、かつシステム健全性を延長するように、制御方式を変更することができる。損傷を受けたセルは減少した容量を示す可能性があり、これにより、当該セルが周囲のセルより速く充電及び放電する。損傷を受けたセルは大きな漏れ電流を示す可能性があり、これにより、セルは絶えず放電し、より高い電圧を他のセルに取得させる。両方の場合において、キャパシタストリングをより低い電圧に充電することは有益である。そのため、例えばUMS回路と通信するEMS回路を構成することによって、電力システムを構成することによって、セルの損傷を隔離し、より低いキャパシタ電圧に調整してキャパシタ健全性を保存することが可能である。
ウルトラキャパシタのバランスを頻繁に調整することがシステム効率を低減させることにも注意すべきである。セルの受動的バランス調整は、過大な電流を抵抗素子に流れさせることでセル電圧を低減させる。さらに、能動的及び受動的なバランス調整は、複数のMOSFETの頻繁なスイッチングを必要とし、追加の電力を消費する。従って、セルのバランス調整の必要性を低減させることによって、EMS回路は、電力消費量を削減し、かつシステム効率を改善するのを支援することができる。
1つの実施形態において、電力システムは、以下の表13で提供された性能特性の1つ又は複数を示すように構成される。明確さのために、この表に列挙したものは単に便宜的なものであり、各特性は本発明の別個の実施形態と考えられるべきである。
b.大電力用途のための装置及びシステム
上述した利点を特徴とする上述した電力システムは、比較的に大きな電力、例えば、以前に利用可能であった電力システムを用いたときに実際に利用可能であった坑井のものより大きな電力を供給するように構成されてもよい。概して、電力源及び負荷の間で電力バランスを保持しなければならず、電力源が概して上記比較的に大きな電力を供給できないかもしれないので、大電力はパルス方式又は断続的な方式で提供されてもよい。より具体的には、例示として、本発明の電力システムは、第1の時間長にわたってHTRESを充電し、第2の時間長にわたって上記HTRESから負荷にエネルギーを送って大電力を提供してもよい。本発明の電力システムを具体的には比較的に大きな電力について特徴づける態様は、高電圧及び低抵抗を含む。概して、大電力は高レートのエネルギー伝送に変換されるので、本発明の電力システムは、比較的に高いエネルギー容量のHTRESから利益を得てもよい。例えば、中間レート構成の8個のDDサイズのセルを備えた坑井内用途のための一次バッテリー、例えばリチウム塩化チオニルバッテリーは、最大で約10~50Wの電力を提供してもよい。それに比べて、本明細書に開示されるようなHTRESを備える電力システムは、最大で約5000Wまでの電力を提供してもよい。
大電力を供給することによって、本発明の電力システムは、より大きなシステムにおける共用電圧の電圧安定化効果と等価な効果を提供する。具体的には、大電力能力は低抵抗出力にによって可能にされ、低抵抗出力は、比較的に小さい電圧降下を結果的に生じさせながら、比較的に大きな電力出力を可能にする。例えば、本発明のHTRESは、約28Vのストリング電圧及び約100ミリオームの抵抗を有する、本明細書に開示されるような高温ウルトラキャパシタを備えてもよい。上記例示的な電力システムは、わずかに2Vの電圧偏差で約20Aの出力電流を供給してもよい。この例示において、結果として生じる電力は約520Wである。上記電圧安定化効果は、さらに、調整された電力変換器、例えば本明細書に開示されるような例示的な負荷変換器を使用することによる利益を得てもよい。所定の実施形態において、HTRESは、本明細書で説明した1つ又は複数のウルトラキャパシタ、例えばウルトラキャパシタストリングを備える。そのようなウルトラキャパシタストリングは、所定の実施形態では、円形回路基板の外径に応じて決まる内径を有するハウジング内にはめこまれるように設計されている。ここで、ハウジングの外径は、ツールストリングによって収容されるように設計されている。従って、本明細書で説明するように、HTRESが本発明のウルトラキャパシタで構成され、空間効率的なウルトラキャパシタストリングの向きで組織化される実施形態において、より大きな容量はより長いウルトラキャパシタストリングによって生成される。所定の実施形態において、ウルトラキャパシタストリングは12個のキャパシタで構成される。
所定の実施形態において、本発明の電力システムは、最大で約5000Wまでの電力を提供してもよく、例えば約1000~5000Wの電力、例えば約500~1000Wの電力、例えば約250~500Wの電力、例えば約100~250Wの電力、例えば約51~100Wの電力を提供してもよい。
従って、本発明のもう一つの電力システムの実施形態は、坑井内環境において約1Wから約99Wを供給する電源からの電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明するような空間効率的な向きで組織化されるウルトラキャパシタストリングと、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するコントローラとを備え、
上記コントローラは、例えば約100W及び500Wの間で、断続的な高出力パルスを供給するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態において、HTRESは、約1~10000Fの容量が特徴である。
所定の実施形態において、コントローラは入力電圧より高い電圧において出力を駆動するように構成される。
追加の電力が大電力パルスによって供給される場合、バッテリー寿命を保持しながら負荷をより激しく駆動することが可能である。
例えば、この構成は、泥パルサー(例えばソレノイド又はモータに基づく泥パルサー)をより激しく駆動するために使用されてもよい。より激しい泥パルサーは、より鋭い圧力パルスをもたらし、かつ、潜在的により高速な地表へのデータ転送速度をもたらす。例えば泥パルステレメトリを用いて、バッテリー寿命を保持しながら、かつ、信号完全性を損なうことなく、例えば最大で2倍のデータ転送速度をもたらす。
もう一つの実施形態において、この電力システムにおける負荷はEM送信機であってもよい。
もう一つの実施形態において、この電力システムにおける負荷はモータドライブ、例えばセンサレスブラシレスDCモータドライブであってもよい。
所定の実施形態において、電源は、バッテリーであってもよく、タービンにより電力供給されるMWD/LWDツールストリングであってもよい。
所定の実施形態において、入力電力は約1Wから約20Wである。また、出力は、100Wよりも大きく、例えば約100Wから約500Wである。
所定の実施形態において、入力電力は約20Wから約50Wである。また、出力は、100Wよりも大きく、例えば約100Wから約500Wである。
所定の実施形態において、入力電力は約50Wから約99Wである。また、出力は、100Wよりも大きく、例えば約100Wから約500Wである。
所定の実施形態において、本発明の電力システムは、共用電圧の電圧偏差を約50%未満に、例えば約40%未満に、例えば約30%未満に、例えば約20%未満に、例えば約10%未満に保持しながら、最大で約500Wを供給し、例えば最大で約250Wを供給し、例えば最大で約100Wを供給することにより、より大きなシステムにおける共用電圧の電圧安定化効果をもたらす。
所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約40000フィートの深さの坑井において、例えば最大で約30000フィート、例えば最大で約20000フィート、例えば最大で約10000フィートの深さの坑井において、EMテレメトリを行う。
所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約100Hzの送信周波数において、例えば最大で約75Hz、例えば最大で約50Hz、例えば最大で約25Hz、例えば最大で約15Hzの送信周波数において、坑井のEMテレメトリを行う。
所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約40000フィートの深さの坑井において、例えば最大で約30000フィート、例えば最大で約20000フィート、例えば最大で約10000フィートの深さの坑井において、泥パルステレメトリを行う。
所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約40Hzの送信周波数において、例えば最大で約30Hz、例えば最大で約20Hz、例えば最大で約15Hz、例えば最大で約10Hzの送信周波数において、坑井の泥パルステレメトリを行う。
1つの実施形態において、電力システムは、以下の表14で提供された性能特性の1つ又は複数を示すように構成される。明確さのために、この表に列挙したものは単に便宜的なものであり、各特性は本発明の別個の実施形態と考えられるべきである。
1つの実施形態において、電力システムは、上の表14で提供された性能特性の1つ又は複数を示すように構成される。明確さのために、この表に列挙したものは単に便宜的なものであり、各特性は本発明の別個の実施形態と考えられるべきである。
c.断続的な電源用途のための装置及びシステム
動作のための電力を必要とする坑井内環境中の用途であって、そのような電力は断続的に中断される(例えば、タービンを通る泥の流れから電力を発生するMWD/LWDツールストリングによって電力が供給され、ツールストリングの調整を行うためにそのような泥の流れが止められる)用途において、電力を負荷に供給するように構成された本発明の電力システムは、HTRESに格納されたエネルギーを負荷へ送ることで、断続的電源バッファとして動作するように構成されてもよい。概して、比較的長い期間(例えば5~10分)にわたる電力供給の中断は、エネルギーバッファの高い累積的なエネルギー必要量をもたらすので、本発明の電力システムは、比較的高いエネルギーのHTRES、例えば約1~5Whのエネルギー貯蔵装置を有するもの)によって支援されてもよい。そのようなシステムは負荷ドライバ回路の使用で支援されてもよい。
そのため、本発明のもう一つの電力システムの実施形態は、HTRESに格納されたエネルギーを負荷に送ることで、断続的な電源、例えば所定期間にわたって電力供給を止める電源からの電力をバッファリングすることに適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば、本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化されるウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲中の動作に適合される。
1つの実施形態において、本明細書に開示された装置及びシステムは、電力システムの構成要素として構成されたMSIDを備える。1つの例示において、MSIDはさまざまな回路を備えてもよい。非限定的な例示は、接続回路、少なくとも1つのセンサ回路、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、切り換え回路、充電状態回路、及び電子管理システム回路を含む。
1つの実施形態において、上記MSIDは、接続回路、ウルトラキャパシタ充電器回路、ウルトラキャパシタ管理システム回路、及び電子管理システム回路を備える。
いくつかの実施形態において、MSIDはモジュール式回路基板を備える。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形である。別の実施形態において、モジュール式回路基板はスタックされている。別の実施形態において、モジュール式回路基板は円形であり、かつスタックされている。
所定の実施形態において、電源は、ワイヤーライン電源、バッテリー、又は発電機の少なくとも1つを備える。
所定の実施形態において、電源は少なくとも1つのバッテリーを備える。この実施形態中で、MSIDは、特に電源がバッテリー以上のものを備える場合、クロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路基板をさらに備える。
所定の実施形態において、電源は、ワイヤーラインと、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、電源は発電機を備える。
所定の実施形態において、電源は、発電機と、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーとを備える。この実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路をさらに備えてもよい。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路をさらに備える。
所定の実施形態において、回路基板は多機能の回路基板を提供するために組み合わされてもよい。
従って、もう一つの実施形態では、本発明は、
約1W~約500Wを供給する電源、例えば坑井内タービンと、
HTRES、例えば本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化される1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよいウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備える断続的電源バッファに関し、
上記コントローラは、電力を供給するように構成された少なくとも1つのモジュール式回路を備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態において、この電力システムは負荷に印加されてもよい電気的な出力を発生したと考えられてもよい。
所定の実施形態では、コントローラは本発明のMSIDである。
所定の実施形態において、電力は、負荷の寿命のために、500時間を超える時間にわたって、例えば約500時間から約1000時間、例えば約1000時間から約1500時間を超える時間にわあって断続的に供給されてもよい。
所定の実施形態において、断続的電源バッファは、例えば負荷の要件に基づいて選択された、所定範囲の電圧出力を供給してもよい。
d.EMテレメトリのためのシステム
ノイズのある地層又は非常に損失の大きい地層を通して送信する場合、テレメトリの主要な挑戦は高い信号対雑音比を保持することにある。高抵抗の地層のような損失のある地層は、信号の伝搬時に減衰させ、その結果、減少した信号振幅及び従ってより小さな信号対雑音比をもたらす。過大な外部ノイズはテレメトリ信号と合成され、受信された信号中のノイズを増大する。受信機において減少した信号対雑音比を補償するために、より遅いデータビットレートがしばしば使用され、場合により、追加のパリティ又は冗長ビットとともに使用される。受信機は、全体的なノイズ成分の量を低減させるために帯域制限されてもよく、帯域制限はデータ転送速度による下限であり、したがって、より低いデータ転送速度は、受信機の態様において、より少ない全体的なノイズ成分の量を可能にする。受信機において減少した信号対雑音比を補償する他の方法は、送信された信号の態様の大きさを増大することを含む。
大電力を供給するように構成された電力システムと関連する出力テレメトリ増幅器は、多くの異なるシナリオで汎用増幅器として利用されてもよい。1つの特定の実施形態において、この構成は、抵抗性負荷を介してテレメトリ信号を送信するために使用されてもよい。もう一つの用途において、モータ又はリニアアクチュエータのような誘導性負荷のために同じパワーアンプ構成を利用してもよい。
そのため、本発明のもう一つの電力システムの実施形態は、HTRESに格納されたエネルギーを負荷に送ることで、大電力又は高電圧テレメトリを行うように適合した電力システムを提供し、上記システムは、
HTRES、例えば本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化される1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよいウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
増幅器回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備え、
上記システムは、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
いくつかの実施形態において、増幅器回路は当該技術において既知のD級回路である。
従って、もう一つの実施形態では、本発明はテレメトリ装置に関し、上記装置は、
電源と、
HTRES、例えば本明細書で説明するように空間効率的な向きで組織化される1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよいウルトラキャパシタストリングと、
オプションの負荷ドライバ回路と、
増幅器回路と、
エネルギー貯蔵装置の充電及び放電の少なくとも一方を制御するためのコントローラとを備え、
上記装置は、摂氏約75度から摂氏約210度までの間の温度範囲で動作するように適合される。
所定の実施形態では、コントローラは本発明のMSIDである。
所定の実施形態において、増幅器はD級増幅器である。
所定の実施形態において、D級増幅器は、情報を地表に無線送信するように構成されたダイポールアンテナ又は少なくとも1つの電極に接続される。特定の実施形態では、例えば12HzのEMテレメトリ信号は、現在この目的で使用される既知の線形増幅器で生成された信号と比較して、より大きな電力、電圧、及び/又は電流を特徴としてもよい。
所定の実施形態において、増幅器を備える電力システムは、アンテナ及び従来のEMモジュールの間のツールストリングに物理的に配置される。
所定の実施形態において、電力システムはテレメトリ信号を受信するように構成される。いくつかの例示ではコントローラが、別の例示では具体的にいうとEMS回路が、上記受信されたテレメトリ信号を解釈するように構成される。
所定の実施形態において、全体的なツールストリングアーキテクチャは、アンテナと、ツールストリングの従来の態様、例えば、従来のEM変調器、MWD又はLWDのツールストリング内の他のモジュールとの間の中断された接続によって簡単化されてもよい。中断された接続は、増幅器を備える電力システムを備えてもよい。例えば、この構成において、従来のEMモジュールによってもたらされた信号は、増幅器を備える電力システムへの入力信号として作用してもよく、電力システムは、上記入力信号の増幅されたバージョンを負荷、例えばアンテナに供給してもよい。さらに、電力システムが、アンテナによって、遠隔した場所、例えば地表から信号を受信するように構成される場合、電力システムは、この構成中のアンテナから信号を直接的に受信してもよい。遠隔した場所から受信された信号が制御指令として意図される場合、増幅器を備える電力システムの態様、すなわち、電力システムは、ツールストリングの他の態様が影響されないような方法で、上記制御指令に応答することができる。
所定の実施形態において、増幅器回路は、電力変換負荷ドライバ回路と組み合わされて1つの組み合わせ回路を提供してもよい。
テレメトリ信号の態様、例えば、電力、電圧、又は電流を増幅することによって、多数の利点が実現されうる。例えば、他の点では固定された条件下では、テレメトリ信号の増幅された態様は、受信された信号のより高い信号対雑音比をもたらす可能性がある。信号対雑音比がより高くなると、信号が検出可能な最小信号に低下するまで、トレードオフが生じる可能性がある。さらに、テレメトリ信号の減衰は、地層の範囲又は深さ、周波数、及び地層の構成に依存する他の複雑なパラメータを増大させる可能性がある。例えば、システムは、より長い範囲にわたる送信、例えばより深い坑井からの送信を可能にしてもよく、より頑健な送信、例えば問題のある地層を通る場合に必要になる送信を可能にしてもよく、及び/又は、より高速な伝送レート、例えば送信周波数を増大することによる送信を可能にしてもよい。より高いデータ伝送レートは、最終的には、掘削動力学をより高速に伝達して掘削を最適化することを含む、より高速でより安全な掘削のための手段を提供する。
所定の実施形態において、大電力は、主として、低いインピーダンス高電圧HTRESの使用と、電力回路の効率的な動作とを通じて達成される。
所定の実施形態において、増幅器を備える電力システムは、2つの基本的ファクタ、すなわち、(1)電源の大電力バッファリングを行う比較的に大電力(低抵抗)のHTRESを含むこと、及び/又は、(2)典型的には約20%及び40%の間の全体効率を示す線形増幅器を、典型的には約80%及び98%の間の全体効率を示すスイッチモード増幅器で置き換えることによって高性能を達成してもよい。
高抵抗の地層を考慮すると、大電力伝送を達成する1つ方法は、大きな電圧振幅を有する信号で地層を駆動することである。低抵抗の地層を考慮すると、大電力伝送は、大電流の配送で達成されてもよい。したがって、所定の実施形態において、増幅器の出力は高電圧及び低インピーダンスの両方である。所定の実施形態において、増幅器は調整可能な態様を有する。調整可能な態様は、電圧、電流、電力、周波数、位相などから選択可能である。増幅器が調整可能な態様を有する所定の実施形態において、上記態様は、条件、例えば、受信機における信号完全性、又は電力システムによる電力消費量を最適化するためにランタイムに調節されてもよい。所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約40000フィートの深さの坑井において、例えば最大で約30000フィート、例えば最大で約20000フィート、例えば最大で約10000フィートの深さの坑井において、EMテレメトリを行う。
所定の実施形態において、本発明のシステムは、最大で約100Hzの送信周波数において、例えば最大で約75Hz、例えば最大で約50Hz、例えば最大で約25Hz、例えば最大で約15Hzの送信周波数において、坑井のEMテレメトリを行う。
e.データ記録及び報告
1つの実施形態において、本明細書に開示されたMSIDは、例えばMWD又はLWD又は他の用途において、例えばデータ記録及び/又は報告のために構成された、データシステムの構成要素として有用である可能性がある。この実施形態において、データシステムは、1つ又は複数のセンサ回路基板、接続回路基板、EMS回路、少なくとも1つのメモリ又はメモリ回路、及びその任意の組み合わせから選ばれたモジュール式回路基板を備えている可能性があるMSIDを備えてもよい。例えば、上記接続回路基板は外部コンピュータ/ネットワークと通信するように適合されてもよい。所定の実施形態中で、データシステムは、ウルトラキャパシタ充電器、HTRES、及び電力を受ける電力インターフェースから選択された回路をさらに備えてもよい。
MSIDは坑井内状態をモニタリングし、また、MSIDは、ログをメモリに記録するように、及び/又は、データ及びパラメータ、例えば、警告レベル、坑井内衝撃のレベル、振動、スティックスリップ、温度、又は他のそのような測定値をリアルタイムで通信するように構成されることが可能である。所定の利点は、ツールストリング損傷及び故障した坑井のリスクを防止又は緩和する能力、説明目的でデータを記録する能力、修理及び保守又はサービスの目的でデータを記録する能力、掘削動力学に例えばリアルタイムで影響する能力を含むが、ただしこれらに限定されない。これにより、掘削は、増大した効率、低減した衝撃、増大した貫通レート(ROP)、増大したビット性能、低下した非生産時間(NPT)コスト、減少した流体キック及びフラクチャーで行われてもよい。例えば、ドリルビットが抑留してビットが掘削及び回転し続ける場合、その結果として、例えば、増大した衝撃、損傷に起因して低下したビット性能、及び増大したNPTコストが生じるとともに、電子ツールストリング全体への潜在的な損傷が生じる可能性がある。
従って、MSIDは、例えばアンダーバランス掘削又はエアドリリングの影響に関連しうる、衝撃、振動、ビット荷重(WOB)、ビットトルク(TOB)、圧力及び温度、また坑サイズのような1つ又は複数の状態をモニタリングしてもよい。ある場合には、アンダーバランス又はエアドリリングにおける所定の状態が増幅され、例えば、衝撃及び振動の減衰量はそれらの場合に概してより小さくなる。所定の実施形態中で、そのような坑井状態をモニタリングすることにより、掘削者が、掘削パラメータの有効性を増大することを可能にし、また、例えば、ツールストリングの疲労、故障の徴候となる動作不良、抑留したパイプ、キック、坑井内バッテリーの穴あき、失われた循環、などのリスクを減らすことを可能にする。所定の実施形態中で、MSID、例えば、本明細書で説明したハウジングの内部に配置されたMSIDは、ツールストリング又はビットのカラーに位置する。所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、改善された置換経済のために、坑井内ツールの増大した信頼性、改善された方向性のサービス、及び/又はツール上の摩耗の改善されたトラッキングのうちの1つ又は複数を提供してもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、3つの横方向の自由度、x、y及びzと、これらの各軸のまわりの回転xr、yr、及びzrとからなる6つの自由度を利用可能にするユニークな構成のセンサ回路基板を使用することに基づいて測定値を提供するように構成される。
所定の実施形態において、MSIDは、坑井内RPM測定値、例えば、ツールストリング又はビットの回転速度、ビット荷重測定値、及びビットトルク測定値を提供するように構成される。
所定の実施形態において、MSIDは、坑井内RPM測定値、例えばツールストリング又はビットの回転速度を提供するように構成される。
所定の実施形態において、MSIDは、ビット荷重測定値及びビットトルク測定値を提供するように構成される。
所定の実施形態において、MSIDはビットトルク測定値を提供するように構成される。
所定の実施形態において、電源はワイヤーライン電源を備える。
所定の実施形態において、電源は発電機を備える。
所定の実施形態において、電源はバッテリーを備える。
所定の実施形態において、電源は2つのバッテリーを備える。所定の実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路基板をさらに備えてもよい。特定の実施形態において、MSIDは充電状態回路基板をさらに備えてもよい。
所定の実施形態において、電源は、ワイヤーライン電源と、少なくとも1つのバッテリー、例えばバックアップバッテリーを備える。この実施形態において、MSIDはクロスオーバー回路基板をさらに備えてもよい。特定の実施形態では、MSIDは、接続回路基板に電気的に接続された充電状態回路基板をさらに備える。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、それのみで、すなわちHTRESなしでハウジングに配置される。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、HTRES、例えば本明細書で説明した1つ又は複数のウルトラキャパシタとともにハウジングに配置される。例えば、MSIDは、例えばバックアップ電源として使用するための、本明細書で説明した1~100個のウルトラキャパシタセルを備えてもよいウルトラキャパシタストリングとともにハウジングに配置されてもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、モジュール式接続、例えば普遍的なコネクタピン構成により、外部構成要素に接続されている。
MSIDの概略構成について上述したように、MSIDは、スタックされた回路基板、例えばスタックされた円形回路基板と、モジュール式バスとを用いて構成されてもよい。ある実施形態では、このMSIDは、例えば本明細書で説明した改良型ポッティング技術を用いて、ポッティング又は封止による利益を受けてもよい。
所定の実施形態において、モジュール式基板は円形であり、例えば、1.5インチ未満の直径を有し、例えば1.49インチ未満、例えば1.48インチ未満、例えば1.475インチ未満、例えば1.4インチ未満、例えば1.375インチ未満、例えば1.3インチ未満、例えば1.275インチ未満、例えば1.251インチ未満の直径を有する。
所定の実施形態において、MSID(例えば、ハウジングに配置された)は、既知の標準に比較して比較的小さい可能性があり、例えば長さ12インチ未満、例えば長さ11インチ未満、例えば長さ10インチ未満、例えば長さ9インチ未満、例えば長さ8インチ未満、例えば長さ7インチ未満、例えば長さ6インチ未満、例えば長さ5インチ未満、例えば長さ4インチ未満であってもよい。このとき、上記MSIDは、ドリルストリング又はツールストリングに沿って様々な場所において容易に配置されてもよい。このように、複数のMSIDは、例えば、ドリルストリング又はツールストリングの長手方向に沿って変動する坑井内状態を示すために使用されてもよい。そのような空間的測定値は、とりわけ、やっかいな刺激の発生源を位置決めして区別すること、例えば、ドリルストリング又はツールストリング自体の態様であるのか、それとも地層又は坑井の他の構成要素の態様であるのか、それとも上記態様間の相互作用の態様であるのかを区別すること、様々な刺激へのツールストリングの空間的応答を特徴づけること、さらに、スティックスリップ又はワーリングのような潜在的に危険な坑井内効果を識別するか又はシステムの弱い態様を識別することに有用である可能性がある。上記に複数MSIDから受信されたデータを組織化するために、データバス上で識別情報又はアドレスが割り当てられてもよく、その情報の送信を、上記識別情報又はアドレスと関連して、及び/又は上記識別情報又はアドレスに関連する情報への要求に応答して、又は上記識別情報又はアドレスを有するMSIDに割り当てられた所定の時間又は周波数のスケジュールに従って行ってもよい。
ある実施形態において、MSIDは、坑井内状態の記録及び/又は報告を行ってもよい。概して、記録することは、データ又は情報をメモリに格納することを要する。特定の実施形態では、MSIDは、後の時点で、例えばいったんMSIDが地表に現れたときに、メモリが問い合わせを受けるように構成されてもよい。代替として、報告は、坑井内環境から遠隔した場所へ、例えば地表へデータを送信することを要してもよい。上記報告は、実質的にほぼリアルタイムで、又は所定の遅延を有して達成されてもよい。報告機能は、記録機能をさらに有するシステムに存在してもよい。報告機能は、記録機能を補足してもよく、例えば、報告は、システムがまだ坑井内にある間に以前に記録された情報を報告するためにローカルメモリに問い合わせてもよい。
所定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、ツールストリングデータバスに接続されてもよい。このように、MSIDは、ツールストリングに既に又はさもなければ組み込まれたテレメトリシステムによって起こる送信を例えば使用して、地表に送信される情報を提供してもよい。例えば、ツールストリングマイクロプロセッサ装置(MPU)モジュールは、MSIDから発信されたデータバス信号を解釈し、それらを泥パルステレメトリシステムへ入力してもよい。その後、泥パルステレメトリシステム及び特に泥パルサーは、当該産業において既知の泥パルステレメトリによって、データを地表システムに送信してもよい。代替の実施形態において、MSIDから情報は、当該産業において既知の電磁(EM)テレメトリを利用してもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、ツールストリングの任意の部分における故障を、例えばリアルタイムで検出するのに有用な回路を備えてもよい。特定の実施形態において、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、この故障を検出するためにツールストリングデータバスに接続されてもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、地表への「割り込み型」テレメトリ方式を行ってもよい。これらの例示において、情報は、例えばツールストリングテレメトリにてこ入れする方法、例えば当該技術において公知の方法又は本明細書で説明する方法によって、地表に送信されてもよい。割り込み型通信方式は、地表への通常のデータ伝送、例えば掘削動作を継続するために必要とされるデータ伝送を無視して行われてもよい。この方法で、例えば掘削動作を停止することによって対処されるべき坑井内状態(危険な状態)の警告は、例えば掘削動作に必要な情報又は電力を遮断することによって、オペレータに掘削動作を停止させてもよい。掘削オペレータは、危険な状態をもたらす状況を改善し、その後、掘削を継続してもよい。このように、坑井内システムの全体的な信頼性は改善される可能性がある。さらに、所定の実施形態において、推奨される実行からのずれが記録されてもよい。
割り込み型通信を用いる所定の実施形態において、地表に送信されたデータは、所定の状態を示す警告情報もしくは生データ、又はさもなければ、設計者もしくはユーザによって有用であると考えられた方法でパラメータ化又は構成されたデータを含んでもよい。例えば、複数のレベルの連続的な振動は、激しさのレベルを示す複数の警告レベル又は警告信号にマッピングされてもよい。同様に、衝撃、温度、ビットトルク(TOB)もしくはビット荷重(WOB)における異常、又は危険かもしれない他の坑井内影響のレベルは、複数の警告レベル又は警告信号にマッピングされてもよい。危険かもしれない坑井内影響の例は、スティックスリップ、ワーリング、又はドリルパイプの曲げ、あるいは当該技術において認識される他の坑井内影響を含む。
さらに、割り込み型テレメトリを用いる所定の実施形態において、坑井内状態の組み合わせは、その全体として、増大した警告レベルに寄与する可能性があり、例えば、比較的に高い温度、例えば摂氏150度を超える温度と、比較的高いレート及び大きさの衝撃、例えば毎秒100カウント(cps)のレートかつ50Gを超える衝撃との組み合わせは、それらの一方のみに係る測定値よりも深刻な警告レベルを示す可能性がある。上記測定値の時間積分は、増大する警告レベルを示す可能性があり、例えば、合計100時間にわたる20Grmsの連続的な振動は、例えば合計10時間にわたる20Grmsの連続的な振動よりも深刻な警告レベルを示す可能性がある。そのため、上記警告レベルは時間の経過につれて増大する可能性がある。1つの例示的な警告方式において、深刻さのレベルを示すために、又はより明示的に、掘削動作を停止させることのような推奨される行為を示すために、整数、例えば1から4の間の整数が送信されてもよい。警告レベルは、例えば「赤」、「黄」、又は「緑」の警告レベルが例えば「掘削を停止する」、「注意して進む」、又は「通常通りに進む」をそれぞれ示すということを、地表システムによって直観的に解釈可能である。
MWD又はLWDのデータ記録及び/又は報告で使用するように本明細書に例示されたが、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、振動及び衝撃を測定する能力が有益である任意の過酷な環境、例えば坑井内環境において使用されてもよく、例えば、重い製造機器、飛行機、自動車、列車のエンジン区画、又はエネルギー発生プラント/タービンにおいて使用されてもよい。
さらに、本明細書では円形ハウジングの実施形態を使用して説明したが、データ記録及び/又は報告を行うように構成されたMSIDは、ツールストリング又はドリルストリングのカラーで使用するのに十分な他の形状のハウジングで使用されてもよい。例えば、リング形状の回路基板は、カラーが装着されたツール中の環状キャビティに配置されてもよく、従来の形状、例えば長方形の回路基板が上記キャビティにおいて、いくつかの例では軸方向に配置されてもよい。上記回路基板は、いくつかの例では、モジュール式バス又はその構成要素を備えてもよい。上記回路基板はスタックされてもよく、例えば、リング形状の回路基板が環状キャビティにおいてスタックされていてもよい。カラーに配置されたMSIDは、例えば、カラーが装着されたハウジングの一部に少なくとも1つの歪みゲージを配置し、上記少なくとも1つの歪みゲージを上記MSIDへ測定目的で接続することで、TOB及びWOBを決定する助けとなる測定値にアクセスするのに特に有用である可能性がある。
i.データ記録及び報告のためのセンサ回路基板
本発明のMSIDは、坑井内状態又は坑井内ツールの向きの測定のために1つ又は複数のセンサ回路基板を備える。そのような回路基板は、以下の構成要素のうちの1つ以上を備えてもよく、これらに接続されてもよい:坑井内状態又は坑井内ツール、例えばツールストリングもしくはドリルビットの向きを測定するのに有用である、加速度計、磁力計、ジャイロスコープ、温度センサ、圧力センサ、歪みゲージのうちの少なくとも1つ。
所定の実施形態において、MSIDは、ある軸に関するツールストリングの回転レートを決定することができる。
所定の実施形態において、MSIDは、いくつかの実施形態中の重力の影響を説明することができる。
所定の実施形態において、MSIDは、いくつかの実施形態中で、当該技術において坑井内の横方向の振動として認識されている「ワーリング」の影響を説明することができる。
概して、RPMで測定された、ドリルストリング回転レートのねじれ方向の加速度及び時間領域の測定値はいずれも、スティックスリップ及びワーリングのような潜在的に危険な坑井内影響を示してもよい。スティックスリップは、ドリルストリング、通常はツールストリングの態様の回転レートの変化を示すパラメータである。スティックスリップは、ツールに損傷を与える可能性があり、非効率的な掘削を示す可能性もある。したがって、スティックスリップを報告又は記録すること及び/又は報告することによって、MSIDは、掘削者が、掘削機器を保護し、掘削効率を改善できるようにする。
例えば、スティックスリップ(すなわち、ドリルストリングの長手方向に沿ってねじれエネルギーを増大させることへの反応)は、ツールストリング又はドリルストリングの接線方向の成分を有する少なくとも1つの測定軸を有する、半径方向にオフセットされた加速度計によって、時間的に変動しかつ多少周期的なねじれ方向の加速度によって測定されてもよい。代替として、スティックスリップは、時間的に変化する回転レートで、例えば周期的に変化する回転レートで、RPMで測定されてもよい。回転レートは、ツールストリング又はドリルストリングの半径方向の成分を有する少なくとも1つの測定軸を有する、半径方向にオフセットされた加速度計によって、求心加速度を測定するように構成された加速度計で測定されてもよい。回転レートは、ねじれ方向の加速度を積分することによって決定されてもよい。いくつかの例示において、穏やかなスティックスリップは、ほぼ平均の回転レート未満の回転レートの変動によって示されてもよく、いくつかの例では、中程度ないし明白な程度のねじれ振動と呼ばれることがある。上記例示では、より激しいスティックスリップは、ほぼ平均の回転レートよりも大きな回転レートの変動によって示され、いくつかの例では、有意ないし激しいスティックスリップと呼ばれることがある。いくつかの例示において、スティックスリップ及び他の影響の激しさのレベルは、単に、ねじれ方向の加速度のレベルによって示されてもよい。本明細書の所定の実施形態において、ねじれ方向の加速度は、接線加速度の測定値及び/又は求心加速度の測定値(後者は、ねじれ方向の加速度を決定するために時間微分の影響を必要とする)によって決定されてもよい。
本発明の1つの実施形態において、MSIDは加速度計に基づく振動検出及び/又は衝撃検出を測定するのに十分なセンサ回路基板を含む。所定の実施形態において、MSIDセンサ回路基板は、6自由度で、加速度、例えば衝撃及び振動を検出すように構成される。所定の実施形態において、MSIDセンサ回路基板は、例えば約1000G未満の検知可能な衝撃の範囲で、衝撃を検出するように構成される。
ある実施形態において、センサ回路基板は1つの加速度計を備えてもよい。所定の実施形態において、センサ回路基板は複数の加速度計を備えてもよい。
所定の実施形態において、MSIDは、2つのセンサ回路基板の組み合わせを備える。そこにおいては1つのセンサ回路基板は1つの加速度計を備える。また、第2のセンサ回路基板は2つの加速度計を備える。特定の実施形態において、3つの加速度計が図38Bによれば構成されてもよい。センサ回路基板のこの構成は、3つの並進方向(軸方向又は横方向)の自由度(x、y及びz)と、3つの回転自由度(これらの各軸のまわりに回転、xr、yr、及びzr)とからなる、6自由度(6-DOF)を利用可能にする。並進方向の加速度は、単一の3軸加速度計で測定することができる。3自由度の回転方向の加速度を測定するために、2つの平行な加速度の軸の間の差が計算されてもよい。図38Bは、6-DOFの測定に適したサンプルの向きを示す。
従って、所定の実施形態において、本発明のシステムは、6自由度の加速度測定を行うセンサの構成を備える。
所定の実施形態において、MSIDは、回転を測定するように構成された少なくとも1つのセンサ回路基板を備える。図38Bは、回転xrが、A1及びA3のyベクトルの差によって計算されてもよく、回転yrが、A1及びA3のxベクトルの差によって計算されてもよく、回転zrが、A1及びA2のx加速度ベクトル間の差によって計算されてもよいことを示す。さらに、中央のz軸のまわりのドリルストリングの回転速度は、求心加速度に直接に関係がある。求心加速度は、半径方向を向いた成分を有する少なくとも1つの測定軸を有するセンサ、例えば図38BのA3によって測定されてもよい。
図38Aに、求心加速度によって回転速度を決定することに適したもう一つの例示構成を示す。図38Aにおいて、放射方向の加速度測定は、A1及びA2の放射方向の成分の間の差として、さらに、A1及びA3の放射方向の成分の間の差として行われてもよい。直交配置と、余分な放射方向の測定とにより、測定の不確実性をより少なくしながら、4つの加速度成分からz軸のまわりの角速度を分離することができる。
このように、1つの実施形態中で、本発明は、データ記録及び/又は報告を行うように構成され、3軸方向の加速度計の構成を備えたMSIDを提供する。この3軸方向は、例えば2つの加速度計を備える少なくとも第2のセンサ回路基板に電気的に接続された、少なくとも1つの加速度計を有する第1のセンサ回路基板で構成される。上記第2の基板における上記2つの加速度計のうちの1つは、第1のセンサ回路基板における加速度計と軸方向に整列する。
概して、異なる加速を測定するために異なる加速度計を使用すること、例えば回転速度を測定するために使用されるもの、振動を測定するために使用されるもの、及び衝撃を測定するために使用されるものを使用することが有利である可能性がある。これらの3つの例示は、概して、掘削用途においてそれらの典型的な加速度の範囲について異なり、例えば、回転速度を決定するために使用されうる求心加速度は約0から約5Gの範囲を有する可能性があり、振動は、それが並進方向であるか回転方向であるかに関わらず、約0から約50Gの範囲を有する可能性があり、衝撃は、それが並進方向であるか回転方向であるかに関わらず、約0から約数千Gの範囲を有する可能性がある。概して、加速度測定装置(例えば加速度計)は、範囲及び分解能の間でトレードオフを有し、例えば、1000Gの範囲を有する加速度計は、約5Gの分解能を有する可能性があり、その一方で、5Gの範囲を有する加速度計は、約100ミリG(「mG」)の分解能を有する可能性がある。典型的には、より大きな範囲を必要とする測定は、分解能における要件を緩和した。さらに、様々な加速度計は、様々な周波数応答の態様、例えば帯域幅仕様によって特徴付けられる。一例として、振動及び衝撃の測定は、概して、中程度ないし広い帯域幅と、中程度ないし大きなgの加速度計とを必要とし、特に、衝撃の測定は、概して、広帯域及び大きなgの加速度計を必要とする。一方、RPMの測定は、概して、小さなgの加速度計を必要とし、広帯域を必要としない。小さなgの加速度計は、期待される放射方向の加速度範囲にわたって高分解能のアナログ・ディジタル変換を達成するために有用である。狭帯域幅の加速度計を用いて、より大きな電力効率及び信号対雑音比を達成することができる。これらの測定に有用な小さなg、狭帯域幅、及び高分解能の加速度計は、米国マサチューセッツ州ノーウッドのアナログ・デバイセズ・インコーポレイテッドから、例えば部品番号AD22293Zとして入手可能である。さらに、衝撃及び振動の両方の範囲及び分解能の間で妥協点を提示する加速度計は、アナログ・デバイセズ・インコーポレイテッドから、(例えば部品番号ADXL377BCPZ-RL7として入手可能である。要約すると、様々な性能の態様を有する様々な加速度計は、本明細書で説明した様々な量又は影響を測定するために使用されてもよい。ある場合には、少なくとも1つの加速度計が「2重に使用される」、すなわち、1つ以上の量又は効果を測定するために使用される。
所定の実施形態において、MSIDは、少なくとも1つの微小電気機械システム(MEMS)センサを備えるセンサ回路基板を備える。例示的なセンサは、回転レートセンサ又はジャイロスコープ又はジャイロスコープを含む。他の例示的なセンサは、加速度計、慣性計測装置、慣性センサ、トルクセンサ、マイクロホン、及び温度センサを含む。本開示の目的では、以下の用語、すなわち、MEMS回転レートセンサ、回転レートセンサ、MEMSジャイロ、ジャイロ、MEMSジャイロスコープ、及びジャイロスコープは交換可能である。それらは、回転レートを測定するように設計されたMEMS装置を示す。典型的な構成は、回転によって引き起こされた求心加速度の影響を測定するような方法で配置されて方向付けられた少なくとも1つのMEMS加速度計を有するものを含む。いくつかの構成において、非回転加速度測定の排除、ノイズの排除、及びオフセット又はドリフトの排除のような性能態様を改善するために、複数のMEMS加速度計が使用される。
いくつかの実施形態において、MEMSジャイロスコープは、坑井内ツール、ツールストリング、ドリルストリングの一部、又はドリルストリングの全体の回転レートを決定するために利用される。いくつかの実施形態において、MEMSジャイロスコープは、複数の別個のMEMS加速度計で作ることができる。いくつかの実施形態において、MEMSジャイロスコープは、既製品の単一のモノリシック部品として調達することができる。
MEMSジャイロスコープは、求心加速度を測定するように構成された少なくとも1つのMEMS加速度計で作られてもよい。求心加速度は、回転軸から放射方向に既知の変位を有する加速度計で、半径方向に配置された加速度測定によって測定されてもよい。非回転加速度の影響を排除するために複数の加速度計が使用されてもよい。MEMSジャイロスコープは、上記複数の加速度計を関連付けられた計装及び信号処理とともに単一のパッケージへ組み合わせることで作られてもよい。
MEMSジャイロスコープは、多数の方法でMSIDに配置可能である。一例は、回転を検出しようとしている軸に平行な法線を有する少なくとも1つの円形回路基板に依存する。円形回路基板は、ジャイロスコープの検出軸がMSID又は関連するセンサ回路基板の軸に実質的に合わされるように、ジャイロスコープを搭載するために使用されてもよい。円形回路基板は、上記ジャイロスコープへの電気的な接続の提供を目的としてもよい。いくつかの実施形態において、ジャイロスコープは、表面実装パッケージを有し、その検出軸が円形回路基板の中心に実質的に接近しているように回路基板に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、ジャイロスコープは、スルーホールパッケージを有し、その検出軸が円形回路基板の中心に実質的に接近しているように回路基板に配置されてもよい。スルーホールパッケージの場合には、検出軸は円形回路基板の平面に平行にされてもよく、したがって、パッケージが変化させられなければならない。例えば、ジャイロスコープが円形回路基板上で平坦に配置されるように、スルーホールパッケージのピンは90度曲げられてもよい。ピンを受けるためのビアは、ジャイロスコープ本体が円形回路基板の中心に位置することができるようにオフセットされてもよい。
石油及びガス掘削の用途では、高温と組み合わされた機械的な衝撃及び振動に対する耐性は典型的な要件である。従って、上記ジャイロスコープを支持するために、又は上記ジャイロスコープの本体を円形回路基板に取り付けるために、杭又は棒の素材が使用されてもよい。さらに、ポッティング処理によって追加の封止を行うことは、衝撃、振動、及び温度の下で故障への耐性をもたらすために有用である。封止は、非回転加速度の排除を改善するためにジャイロスコープによって検出される直線加速度を低減させることにおいて有用である。他の実施形態において、ジャイロスコープは、軸方向に配置された回路基板(ツールの軸に平行な面を有するもの)に搭載することで、MSIDに配置される。この場合、ジャイロスコープは、もし必要ならば、ツール軸に関するその向きを変更するために「ドーターボード」によって搭載されてもよい。いくつかの実施形態において、軸方向に配置された回路基板に搭載されたとき、ジャイロスコープは検出軸がツール軸に平行になるように既に構成されている可能性がある。例えば、それが搭載される回路基板の面に検出軸が位置している部品は、軸方向に搭載された回路基板に搭載されたときに、ツール軸に関する回転を検出するために容易に使用可能である。概して、回路基板に搭載されたときにジャイロスコープの本体がツールの軸に実質的に合わせられるように、軸方向に搭載された回路基板をツールの軸からオフセットすることは有用である。概して、ドーターボードは、必要に応じてセンサの向きを変更するために使用されてもよい。部品の検出軸は、任意のタイプのパッケージ(表面実装、スルーホール、又はその他)のために任意に定義されてもよいが、典型的には、部品が搭載される基板に垂直であるか、当該基板に平行である。
所定の実施形態において、MSIDは、石油及びガスの掘削及び地熱の掘削のような坑井掘削用途で遭遇する高温環境に耐えることができるセンサを備えるセンサ回路基板を備える。所定の実施形態において、MSIDは、広い温度範囲にわたって動作可能であり、特に摂氏約150度以上で、例えば摂氏約-40度から摂氏約210度で動作可能である1つ又は複数の回転センサ、例えばMEMSジャイロを備えるセンサ回路基板を備える。
例示的な商用のジャイロスコープ部品は、米国02062マサチューセッツ州ノーウッド、ワン・テクノロジー・ウェイのアナログ・デバイセズ・インコーポレイテッドから入手可能なADXRS646(表面実装)と、アナログ・デバイセズ・インコーポレイテッドから入手可能なADXRS645(スルーホール)とを含む。
概して、ジャイロスコープによって行われる測定の範囲及び分解能の間にはトレードオフがある。石油及びガスの用途における回転レート検出で有用である典型的な範囲は、約0RPMから約250RPMである。例えば最大で1000RPMまでにわたる、より広い範囲が有用である可能性がある。一方で、これらの用途における回転レート検出で有用である典型的な分解能は、約1RPMである。さらに、これらの用途において典型的に生じうる広い温度変動は、RPM測定値の誤った変動又はドリフトを引き起こす可能性がある。さらに、任意のセンサと同様に、これらのセンサは、広帯域のノイズに基づいた検知可能な最小の信号を有してもよい。概して、範囲が大きくなると分解能は小さくなり、その逆も成り立つ。いくつかの例示において、高分解能及び広範囲の組み合わせを達成するために2つのセンサを組み合わせることは有用である。例えば、より狭い範囲のセンサは、より低い測定された回転レートにおいて高分解能を達成するために有用である可能性がある。2つのセンサの測定された出力は、集められた出力が少なくとも2つのセンサのどちらかの出力を表すように、「協調」させられてもよい。
いくつかの実施形態において、MSIDは「回転フラグ」を提供するために使用されてもよい。回転フラグは、回転に関連したイベントの検出を示す信号である。回転フラグは、回転に関連したイベントが発生したか否かについて、例えば、ドリルストリングが回転しているか否か、又は、ドリルストリングが予め決められた値よりも速く回転しているか否かについて、坑井内ツールストリングの他の態様に通信するのに有用である可能性がある。回転フラグをもたらす回転に関連するイベントは、用途の要件に応じて変動する。所定の実施形態において、MEMSジャイロスコープを有するMSID DMSは、回転に関連する予め決められたイベントに基づて回転フラグを提供する。
いくつかの実施形態において、MSIDは、「回転ダウンリンク」を提供するために使用されてもよい。回転ダウンリンクは、地表からツールに通信するために使用されてもよい。ツールに通信される情報は、他のテレメトリシステムによって送られた前のメッセージを繰り返す表示、ツールストリングの所定態様のための電力設定内容、又は他のモードもしくは動作の設定内容を含んでもよい。簡単な回転ダウンリンクは、前後に非回転の期間を有する、所定期間にわたる回転を含んでもよい。情報は、単に、ドリルストリングが回転しているという事実によって、回転のレートによって、又は回転の継続時間によって伝えられてもよい。より精巧な回転ダウンリンクは、時間的に変化する回転を含んでもよく、例えば、予め決められた継続時間にわたって回転することで、ドリルはツールに論理「1」を伝えてもよく、回転しないことで、又は予め決められた継続時間にわたって異なるレートで回転することで、ドリルはツールに論理「0」を伝えてもよい。この方法を拡張して、ディジタル通信チャネルが設けられてもよい。
様々なパラメータがMSIDによって検出され、導出され、報告され、及び/又は記録されてもよい。高温メモリは、概して、パラメータを記録するのに有用である。高温フラッシュメモリは、不揮発性であり(電力を喪失してもその内容を保持する)、かつ、高密度である(比較的小さな寸法で比較的大容量のメモリを含んでいる)。例示的な高温メモリは、米国カリフォルニア州アナハイムにおいて事業所を有するTTセミコンダクタから入手可能なTTZ2501の部品である。坑井内構成で報告することは、リアルタイム状態をツールの他の態様又は地表へ示すのに有用である可能性がある。概して、データ転送速度が比較的低いように(約1~50bps)、テレメトリチャネルは帯域制限される。従って、例えばパラメータ化によって、情報を圧縮することは重要である。例示として、DMSは、ツールストリングの他の態様又は掘削者へ振動レベルを示す信号を送るために、所定時間にわたる実際の加速度値ではなく、予め決められた長さの時間ウィンドウに対応する振動の激しさのレベルを報告してもよい。
明確さのために、ねじれ振動及びスティックスリップは、BHAのRPMが地表のRPMと異なり、最大値と最小値との間で周期的に変動するときの状態を示す。いくつかの例示において、ねじれ振動及びスティックスリップ測定値は、スティックスリップインデックス(SSI)に基づいて報告されてもよい。それは次式に基づいて計算される。
SSI=[(最大RPM)×(最小RPM)]/[2×(平均RPM)]
所定の実施形態において、センサ回路基板は磁力計を含む。上記磁力計は、とりわけ、地球の磁場に関する磁場配向を測定することによって回転のレートを決定すること、及び/又は、例えば、とりわけ傾斜掘り動作中に有用であるかもしれない方向性の測定を行うことによって、方向の決定を支援することに有用である可能性がある。
所定の実施形態において、MSIDは方向性の測定に使用されてもよい。重力が存在する状態での加速度の測定値を方向性の測定値に変換する方法は、当該産業において周知である。いくつかの例において、磁力計はそれらの測定を支援する。例示的な方法では、ピッチ及びロールと呼ばれることがある座標系の態様の推定を、ピッチ及びロールにのみ依存するように選ばれた回転行列によって行い、ヨーと呼ばれることがある第3の自由度を、地球の磁場を検出するように構成された磁力計で決定し、これによって、方向性の測定を行う。ピッチ、ロール、及びヨーは、当該産業において、特に航空電子工学において既知の用語であるが、より最近になっては、娯楽などのための加速度計を備えるハンドヘルド装置のコンテキストにおいて既知の用語である。いくつかの例示において、磁力計は、ツールストリング又はドリルストリング内のどこかに設けられてもよく、また、上記磁力計へのアクセスは、MSIDによって、ツールストリング又はドリルストリング信号又はデータバスで行われてもよい。それらの例示において、上記磁力計からの読み取り値はMSIDによって上述した目的に使用されてもよい。
所定の実施形態において、例えばメモリに記録するために、坑井内状態又は向きを示すアナログ測定値をディジタル信号へ変換することは、信号を他のディジタルシステムへ、例えばディジタルバスによってツールストリングディジタルシステムへ、及び/又はディジタルテレメトリシステムへ伝えるために有用である可能性がある。
坑井内システムにおける電力の不足に起因して、所定の実施形態において、電力消費量は最小化される。この最小化を達成するためにさまざまな技術が利用されてもよく、例えば、期待される信号についての知識に基づいて設計することを含むが、これに限定されない。例えば、一部の加速度信号は、典型的には広帯域及び/又は連続的、例えば「連続的な振動」であり、加速度信号の適切なサンプリングレートは、例えば、典型的に予期される最高周波数の態様の2倍よりも高い周波数にサンプリング周波数を設定することで、その実質的な情報量を取り込むように選択することができる。周波数を実質的により高く選択することは、概して、実質的により有用な情報をもたらすことなく、電力消費量を例えば約1~5mWを超えて増大すると予想される。もう一つの例示は温度を含んでいてもよい。温度はゆっくり変化すると予想される。他の例示は衝撃を含む。それらの加速度信号は、典型的には速く変化し、(連続的なものに対比して)断続的である可能性がある。概して、衝撃の大きさ及びレートは重要である。さらに、それらは比較的短い継続時間を有し、例えばそれぞれ約500ミリ秒未満の継続時間を有する。衝撃の重要な特徴を高信頼性で正確に測定することは、衝撃ごとに数サンプル、例えば100サンプルをもたらすサンプルレートを必要とする。衝撃測定のための一つのチャネルのサンプルレートは、約50又は100ksps程度であってもよい。しかしながら、ある衝撃の断続に起因して、比較的高いレート、例えば100kspsでサンプリングされた、連続的にサンプリングされた信号は、概して、平均して実質的により有用な情報をもたらすことなく、電力消費量を例えば約1~5mWを超えて増大すると予想される。1つの代替の解決方法はアナログ検出回路を設けることであり、これは、平均して比較的に省電力、例えば100マイクロワット(「μW」)未満を消費する可能性がある。そのような回路の一例は、予め決められた衝撃しきい値、例えば20~50Gを超えた加速度を検出したときに信号遷移又は論理レベル信号を供給するように構成されたコンパレータである。ロジックレベル信号の上記信号遷移は、デジタルコントローラにおける入力に接続されてもよく、上記デジタルコントローラは、上記信号を割り込みとして扱うように構成されてもよい。このように、フルソリューションの電力消費量が概して実質的にフルディジタルソリューション未満であると予想されるとき、関連する加速度信号の高分解能又は高速サンプリングは、衝撃が存在する場合に限って開始されてもよい。
概して、MSIDは、坑井内状態の正確な表現を報告するべきである。一方で、それらの坑井内状態はMSID自体に損傷を与える可能性があり、MSIDは、坑井内システムにおける他の構成要素の構成に類似している可能性があり、同じ構成要素では、MSIDの情報が保護のために有用である可能性がある。従って、所定の実施形態では、MSIDがモニタリングされた状態の正確な表現を提供できるようにすると同時に、MSIDを坑井内状態から保護することが望ましい。例えば、坑井内の衝撃及び振動は、MSIDを含むシステムに損傷を与える可能性がある。MSIDは、本体保護機能、例えば、比較的敏感な電子部品及びハウジングの間の減衰された機械的結合を使用してもよい。減衰は、上記電子部品を包囲するポッティング化合物のような封止材料によって、又は電子回路システムの比較的硬い面とハウジングなどの一部との間に配置された減衰パッド又は挿入物によって、又はそれらの組み合わせによって行われてもよい。概して、保護機能は、減衰、機械的エネルギーの消費、及び/又は柔軟な接続機構を含んでもよい。所定の実施形態では、上に列挙されたもののような保護機能を有するMSIDが与えられたとき、坑井内状態の正確な表現は、周囲状態と測定された状態との間の予め決められた「マップ」を提供することで復元することができる。上記マップは、例えば周波数領域における伝達関数の形式で、測定されてもよい。ここで、伝達関数は、MSIDによって測定された、周囲の励起信号への保護特徴の利得及びおそらくは位相の寄与を記述する。上記マップは、地表で決定(較正)されて、次にメモリに格納されてもよい。上記マップは、さまざまな異なる動作状態、例えばさまざまな温度又は圧力において定量化されてもよく、又は、さまざまな流体タイプに浸されてもよい。上記マップは、ローカルに(例えばMSIDにおけるメモリに)格納されてもよく、又は、遠隔に(例えば地表システムにアクセス可能なメモリに)格納されてもよい。後者の場合において、MSIDは、地表システムが測定された状態を坑井内状態にマッピングしてもよいように、保護機能と無関係の十分な坑井内パラメータの送信を担当してもよい。
さらに、記録すること及び所定の場合には報告することは、MSIDの回路のうちの1つ、例えばセンサ回路基板におけるメモリを必要とする可能性がある。揮発性メモリ及び不揮発性メモリの両方がこれらの目的のために使用されてもよい。揮発性メモリの場合には、設計者は、より高密度のメモリを享受するであろう(不揮発性メモリと比較して、同等の体積内により多くの情報が格納されてもよい)。しかしながら、揮発性メモリは、その格納されたデータを保持するために電源でサポートされなければならない。揮発性メモリの坑井を使用する複数の解決方法が可能であり、バックアップ高温一次バッテリー、例えばリチウム塩化チオニルセル、を利用することを含むが、これらに限定されない。そのようなバックアップセルは、システムのハウジング内の明示的なセル、例えばコインセルであってもよく、又は、それはより大きなシステムで共用されてもよい。システムにより利用可能な一次バッテリーは、メモリをダウンロードすることができるまで、一次バッテリーへの接続が保持されうる限り、この目的のために使用されてもよい。いくつかの例において、上記一次バッテリーは、バッテリー端子がシステムにより利用可能である限り、他の場合には電力坑井又は方向性システムにより使用される一次バッテリーであってもよい。いくつかの例において、バッテリー端子は、ドリルストリング又はツールストリングの電気的バスによってシステムから利用可能になる。代替の解決方法は、システムを電源から切断する前に充電されるHTRESを使用するものであってもよい。上記HTRESは、坑井内電源、例えば、一次バッテリー、発電機、又はワイヤーライン接続によって充電されてもよい。上記HTRESは、メモリをダウンロードすることができるまで、揮発性メモリに電力を供給するのに十分な使用可能なエネルギーを供給することができる。例えば、米国カリフォルニア州アナハイムのTTセミコンダクタ・インコーポレイテッドから入手可能な部品番号TTS1MX16LVn3の高温16メガビットSRAMは、約2Vにおいて約6mAのデータ保持電流、又は12mWの電力を必要とする。従って、約45ジュールのエネルギーが蓄積されたHTRESは、最長で1時間までのデータ保持のための電力を上記揮発性メモリへ供給することができるだろう。本明細書で説明したウルトラキャパシタを含むHTRESの例は、モジュール式システムに関して下記に述べられる。しかしながら、上記HTRESは、米国マサチューセッツ州ボストンのファストキャップ・システムズ・インコーポレイテッドから入手可能な、約15~20ccの体積を有する高温ウルトラキャパシタによって提供されてもよい。代替の解決方法では、ファストキャップ・システムズ・インコーポレイテッドから入手可能なもののようなHTRESを備える電力システムをMSIDと組み合わせる。上記HTRESは、坑井内電源によって充電されてもよく、坑井内電源が切断されたときは、メモリをダウンロードすることができるまでデータ保持電力を供給してもよい。上述のSRAMは、約1インチのエッジ長さと、及び摂氏200度の温度定格とを有する52ピンパッケージで入手可能であり、MSIDのような坑井内ツールでの使用に適している。とはいえ、概してより低い密度では、不揮発性メモリが使用されてもよい。例えば、TTセミコンダクタから入手可能な部品番号TTE28HT010の1MビットEEPROMが使用されてもよい。上述のEEPROMは、1/2インチのエッジ長さと、摂氏200度の温度定格とを有するLCCパッケージとして入手可能であり、MSIDのような坑井内ツールでの使用に適している。概して、揮発性メモリは、故障する前に、書き込みサイクルの回数(メモリに書き込むことができる回数)に対する制限を有してもよい。従って、設計者は、例えば揮発性メモリでは、メモリのためのバッファを行う方式を使用し、周期的にメモリを不揮発性メモリに書き込んでもよい。
所定の実施形態において、所定のモニタリングデータは、ローカルに(例えばMSIDにおけるメモリに)格納されてもよく、及び/又は、遠隔に(例えば地表システムにアクセス可能なメモリに)格納されてもよい。
ある実施形態では、例えばMSIDにおいて、メモリ容量の効率的な使用が望ましい。効率的に坑井内メモリを利用する任意個数の方式が使用されてもよい。所定の実施形態において、本方式は、概して、例えば温度データのすべてを1分の間隔(1分ウィンドウ)で記録する代わりに、記録されるデータをパラメータ化したものを使用する。温度データは、1分にわたって高分解能で、例えば一時的に毎秒1サンプル(1sps)で記録されてもよく、その後、平均及び標準偏差が計算され、その後、平均及び標準偏差は生の温度データの代わりに格納されてもよい。この例示において、及び定義の目的で、平均及び標準偏差はデータのパラメータを表し、そのため、我々は上述した処理をデータのパラメータ化方法と考える。この例示において、その結果は、生の温度データ、例えば60バイトのデータの全体を格納するためのより大量のメモリとは対照的に、ずっと少量のメモリに、例えば2バイトのデータとして、意味のある情報のほとんどが格納されるということである。
所定の実施形態において、データを収集し、格納し、そしてパラメータ化する方式は、記録される信号に関する典型的な挙動によって通知されてもよい。例えば、温度は、概して、坑井内環境において、また、ツールが坑井を下って移動するとき、ゆっくり変動する。対照的に、振動は高周波成分を有する可能性があるが、周波数スペクトル中の平均電力は約1分の時間スケールより速く変動しない可能性がある。一方で、機械的な衝撃は、断続的かつ短い時間期間である傾向があり、その急激な変動を正確に測定するために衝撃イベント中に高分解能を必要とする。衝撃及び振動の記録及び/又は報告する方式の例は、各軸について1分ごと(すなわち毎分1サンプル又は「1spm」)の平均及び標準偏差によってパラメータ化された振動の記録と、1spmでパラメータ化された衝撃のカウント値、ピーク衝撃の大きさ、及び平均衝撃の大きさと、10分ごと(0.1spm)に平均された温度と、1spmで平均されたスティックスリップインデックスの平均、標準偏差、及びピークと、1spmで平均された回転レート(RPMで測定された)とを含む。測定された量の個数と、設計者又はユーザにとってそれらの相対的な重要性とに基づいて、所望のレコード長、及び利用可能なメモリの量、記録及び/又は報告の方式が、例えばユーザによってさえ調節されてもよい。様々な量の分解能は、他の量の測定値でのより長いレコード長及び/又はより高い分解能との間でトレードオフを有する可能性がある。
所定の実施形態において、センサ回路基板は、MSIDの外側のセンサから、例えばMSIDを含んでいるハウジングとともに搭載された、例えば歪みゲージ、温度センサ、又は環状圧力からデータを受信するように構成された回路基板を備えてもよい。
従って、1つの実施形態において、センサ回路基板は、ツールストリングに接続された1つ又は複数の歪みゲージからデータを受信することによってビットトルク(TOB)を決定するように構成される。所定の実施形態では、カラーに搭載されたバージョンのシステムは、ドリルストリングへの連結を簡単化する可能性がある。所定の実施形態において、歪みゲージは、指標が示すことができるように、その長軸がドリルストリングのハウジングの周囲と整列せず、これにより、ゲージがドリルストリングのハウジングの「ねじれ」を例えばその抵抗の変化によって示すことができるように、搭載されてもよい。
もう一つの実施形態において、センサ回路基板は、ツールストリングに接続された1つ又は複数の歪みゲージからデータを受信することによってビット荷重(WOB)を決定するように構成される。所定の実施形態において、歪みゲージは、その長軸がドリルストリングの長軸と実質的に整列し、これにより、ゲージがドリルストリングのハウジングの圧縮をその抵抗の変化によって示すことができるように、搭載されてもよい。
もう一つの実施形態において、センサ回路基板は、温度センサによって、すなわち、変化する抵抗によって温度を示す抵抗測温体(RTD)からデータを受信することで、温度を決定するように構成される。
上述の(歪みゲージの場合又はRTDの場合における)可変抵抗の変化は、任意個数の方法で測られてもよいが、一例は、歪みゲージ又はRTDに直列な固定抵抗を設けて、その組み合わせを基準電圧及び接地の間に接続することを含む。固定抵抗及び可変抵抗の間の接続におけるノードは、可変抵抗を示す電圧をもたらす。例えば、歪みゲージの抵抗が減少するとき、上記電圧は減少するだろう。いくつかの例示において、上記電圧をアナログ・ディジタル変換によってデジタルコントローラへ読み出すことは有用である。
本発明の設計
審美的な外観に関して新規である任意の設計もまた、本発明の一部として含まれることが意図される。
参照による援用
本明細書において引用された全ての特許、公開された特許出願、及び他の文献の全内容は、本明細書において引用することにより全体として明示的に援用される。
等価物
当業者は、本明細書において開示された特定の手順に対する多数の等価物を認識し、又は、決まりきった実験にすぎないものを用いて確かめることができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲に含まれると考えられ、添付の特許請求の範囲によりカバーされる。さらに、本明細書において与えられた任意の数の範囲、もしくは、アルファベットの範囲は、これらの範囲の上限値及び下限値の両方を含むことが意図されている。さらに、任意の列挙したもの又はグループ化したものは、少なくとも1つの実施形態では、複数の独立した実施形態を列挙する簡略化した方法又便宜的な方法を表すことが意図され、リストの各要素は、それ自体では別個の実施形態と考えられるべきである。
本明細書の開示内容のサポートとして、ディジタルシステム及び/又はアナログシステムを含む様々な分析構成要素が使用されてもよい。1つ又は複数のシステムは、当該技術において認識される複数の方法のうちの任意のもので、本明細書に開示された装置及び方法の動作及び分析を行うために、プロセッサ、記憶媒体、メモリ、入力、出力、通信リンク(有線、無線、泥水上のパルス、光学、又はその他)、ユーザインターフェース、ソフトウェア及びファームウェアプログラム、信号プロセッサ(ディジタル又はアナログ)、及び他のそのような構成要素(抵抗器、キャパシタ、インダクタ、及びその他など)などの構成要素を有してもよい。これらの開示内容は、メモリ(ROM、RAM)、光学的(CD-ROM)、磁気(ディスク、ハードドライブ)、又は他のタイプを含むコンピュータ可読媒体上に格納された1組のコンピュータにより実行可能な命令であって、実行されたときに本発明の方法をコンピュータに実施させる命令とともに実装されてもよく、ただしそうでなくてもよいことが考慮される。これらの命令は、本開示で説明した機能に加えて、システムの設計者、所有者、ユーザ、又は他のそのような人員によって関連すると認められる機器の動作、制御、データ収集及び分析、及び他の機能を行ってもよい。
本明細書の開示内容は、単に、例示するものであり、本発明を限定するものではないことを認識すべきである。さらに、当業者は、本発明の範囲内に残りつつ、付加的な構成要素、構成、配置等を実現してもよいことを認識するであろう。例えば、層、電極、リード線、端子、接点、フィードスルー、キャップ等の構成は、本明細書で開示した実施形態から変更してもよい。概して、電極を使用する1つ又は複数のウルトラキャパシタの構成要素の設計及び/又は用途は、システムの設計者、製造者、オペレータ、及び/又はユーザのニーズと、任意の特定の状況において表される要件とによってのみ限定される。
さらに、様々な他の構成要素を、本明細書の開示内容の態様を提供するために含めてもよく、要求してもよい。例えば、本明細書で議論した様々な態様のサポートとして、又は本開示を越えた他の機能のサポートとして、追加の電源(例えば、発電機、ワイヤーライン、遠隔電源、及び化学バッテリーのうちの少なくとも1つ)、冷却構成要素、加熱構成要素、圧力保持構成要素、絶縁、アクチュエータ、センサ、電極、送信機、受信機、トランシーバ、アンテナ、コントローラ、電気装置、又は電気機械装置が含まれてもよい。
本発明は、例示的な実施形態に関して記載されているが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、その構成要素を等価物で置き換えてもよいことは理解されよう。さらに、その本質的な範囲を逸脱することなく、本発明の開示内容に対して特定の装置、状況、もしくは材料を採用するための多数の修正が認められるであろう。そのため、本発明は、本発明の実施のために考えられたベストモードとして開示した特定の実施形態に限定されるわけではなく、本明細書に添付された特許請求の範囲により解釈されることが意図される。