JP7001248B2 - 凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体を合成する方法 - Google Patents

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本発明は、貴金属ナノ粒子の凝集を制御し、凝集によって発現する機能を利用するナノテクノロジーに関する。
谷口紀男が「ナノテクノロジー」という用語を提唱してから40年の後、K. E. Drexlerは原子レベルの精密さを持った大量生産を「進化したナノテクノロジー」と位置づけ、ナノ粒子の自己集合に重要な役割があると指摘した。自己集合して機能を発現するナノ粒子の例としては、金ナノ粒子や銀ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子が知られている。例えば、金ナノ粒子のコロイド液は鮮やかな赤色を示すが、凝集するとその凝集の程度に応じて青紫色を呈するようになる。凝集した貴金属ナノ粒子は表面増強ラマン散乱(SERS)を発現し(非特許文献1)、SERSはセンサーやビーコンへの用途が期待されている。この機能は、貴金属ナノ粒子凝集体に生じる局在プラズモン共鳴の電場増強作用によって説明され(非特許文献2)、また吸収スペクトルを取得することで、凝集体の状態についての情報を得ることができる(非特許文献3)。貴金属ナノ粒子の凝集を利用してSERSを発現させるためには、自己集合化を適切に制御することが重要である。その手段として、コロイド液中の拡散律速凝集で自己集合的に生成させた後に安定化させた凝集体(特許文献1、非特許文献4)や移流集積を用いた自己集合化ナノ構造体(特許文献2)が提案されている。
SERSを簡便に利用するには、あらかじめナノ構造体を用意することが望ましい。一方では、製造後の劣化、夾雑物の混入などの影響が少なからずあり、その場で合成できるナノ構造体が望ましい。そのための従来の手段のひとつは、非特許文献1に記載されているように、測定対象物質の共存下に貴金属ナノ粒子を凝集させ、その沈殿物を測定する方法であるが、沈殿物の適切な局在プラズモン共鳴の状態を制御するのは難しく、実用性は乏しかった。他の従来の手段は、非特許文献4においてco-aggregation法として記載されているように、測定対象物質の共存下に貴金属ナノ粒子を凝集させ、沈殿する前の懸濁液を測定する方法である。しかし、そもそもこのようなコロイド凝集は不安定であり、局在プラズモン共鳴の状態がすぐに変動してしまうため、非特許文献4においてpre-aggregation法として記載されている特許文献1の方法に因らねばならないという二律背反があった。
特許4772273号公報 特開2016-99113号公報
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本発明の目的は、表面増強ラマン散乱による超高感度分析や簡易分析に適する貴金属ナノ粒子の凝集を制御する方法を提供することにある。
本発明の具体的態様は、以下のとおりである。
[1]測定対象物質の共存下で、貴金属ナノ粒子を含む溶液を塩の溶液と混合させて凝集を開始させた後、断続的に極短時間の撹拌を繰り返すことにより、貴金属ナノ粒子の凝集の進行を小刻みに促進させ、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体を合成する方法。
[2]前記撹拌は、(1)凝集体を入れた容器に蓋をして容器を転倒させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(2)凝集体を入れた容器を振盪させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(3)凝集体を入れた容器に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーで撹拌子を回転させる方法、(4)凝集体を入れた容器に遠心力を作用させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(5)凝集体を含む溶液に圧力を加え、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(6)凝集体を含む溶液をピペット等で吸い上げ、ただちに吐出させるピペッティング操作により、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(7)凝集体を入れた容器に圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法、から選択される、[1]に記載の方法。
[3]前記[1]又は[2]に記載の方法で合成した貴金属ナノ粒子の凝集体を用いて、測定対象物質のその場分析を行う方法。
[4]前記[1]又は[2]に記載の方法で貴金属ナノ粒子の凝集体を合成し、合成後直ちにその場で測定対象物質を表面増強ラマン分析に供する、その場分析を行う方法。
測定対象物質の共存下で、金ナノ粒子または銀ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子の溶液を塩の溶液と混合させて凝集を開始させた後、撹拌を段階的に行うことにより、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体をその場で合成することができる。適切な回数の撹拌を段階的に行うことで、適切な局在プラズモン共鳴の凝集体をその場で得ることができ、測定対象物質の表面増強ラマン散乱(SERS)を迅速かつ簡便に取得することができる。
対照例(市販の金ナノ粒子(平均粒子径42nm)に塩化ナトリウム水溶液を濃度100mMとなるように加えた後、500rpmで連続撹拌した)の約0.25秒ごとに測定した吸収スペクトルのグラフである。 実施例1(自作の金ナノ粒子(粒子径約40nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えた後、マイクロピペットでピペッティング操作を繰り返した)の各段階の吸収スペクトルのグラフである。 実施例2(4,4’-ビピリジンの共存下で自作の金ナノ粒子(粒子径約40nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えた後、マイクロピペットでピペッティング操作を3回繰り返し、785nm(25mW)のレーザーを1秒間照射して取得した)の濃度1μMの4,4’-ビピリジンのSERSスペクトル(実線)と4,4’-ビピリジンを含まないで同じ操作をしたバックグラウンドのスペクトル(点線)のグラフである。 実施例3(自作の金ナノ粒子(粒子径約60nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えた後、マイクロピペットでピペッティング操作を繰り返した)の各段階の吸収スペクトルのグラフである。 実施例4(4,4’-ビピリジンの共存下で自作の金ナノ粒子(粒子径約60nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えた後、マイクロピペットでピペッティング操作を4回繰り返し、785nm(25mW)のレーザーを1秒間照射して取得した)の濃度50nMの4,4’-ビピリジンのSERSスペクトル(実線)と4,4’-ビピリジンを含まないで同じ操作をしたバックグラウンドのスペクトル(点線)のグラフである。
本発明は、測定対象物質の共存下で、貴金属ナノ粒子を含む溶液を塩の溶液と混合させて凝集を開始させた後、断続的に短時間の撹拌を繰り返すことにより、貴金属ナノ粒子の凝集の進行を小刻みに促進させ、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体を合成する方法である。本発明の合成方法は、測定対象物質の分析に供する直前に実施し、その場で分析する場合に特に有効である。
微粒子の典型的な凝集過程では、ブラウン運動や流れによる速度差によって2個の微粒子が衝突して凝集体が成長すると説明されており、次のSmoluchowski凝集速度式が有名である(非特許文献5)。
Figure 0007001248000001
Smoluchowski凝集速度式は、i個の微粒子からなる凝集体とj個の微粒子からなる凝集体が衝突し、k個の微粒子からなる凝集体が生成するときの凝集速度の表現である。ここでi、j、kは凝集体を構成する微粒子の個数、n、n、nはそれぞれの凝集体の個数濃度、KBij、KBikは凝集体衝突の速度定数、tは時間をそれぞれ表す。ここでkはボルツマン定数、Tは絶対温度、ηは微粒子を含む液の粘性係数である。微粒子がブラウン運動で衝突するとき、速度定数Kは、微粒子の粒子径や種類によらないとされる。
凝集の過程において撹拌を行うと、撹拌で生じる流れの剪断場で微粒子または凝集体に速度差が生じ、他の微粒子あるいは凝集体と衝突する頻度が上昇するので(非特許文献5)、一般にSmoluchowski凝集に比べ凝集速度は大きくなる傾向がある。
従来法によりSERS測定する目的で貴金属ナノ粒子を凝集させる際にも試料を混合する目的で撹拌がしばしば用いられているが、混合を目的とする長時間又は連続的な撹拌を行いながら金ナノ粒子のコロイドを凝集させても、適切な状態の凝集体を示唆する吸収スペクトルは観察できず、適切な状態の凝集体を得ることは困難であった。
そこで発明者は、短時間の撹拌を断続的に行うことにより、凝集の進行を小刻みに促進させる実験を行った。その結果、短時間の撹拌を積み重ねることにより、金ナノ粒子の凝集体がSERS測定に好ましい状態であることを示す吸収スペクトルが得られ、その状態が測定に十分な時間安定して存在し、実際にその凝集体を用いてSERSを簡便に利用できることを見いだし、本発明を完成させたものである。
以下、貴金属ナノ粒子として主として金ナノ粒子を例に説明するが、これに限定されるものではない。
金ナノ粒子のコロイドあるいは銀ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子のコロイドは、既知の方法で合成することができる。該コロイドを凝集せしめる条件はコロイドの濃度やナノ粒子の表面電荷によって異なるが、急速凝集が起きるに十分なイオン強度を与える濃度の塩を加えればよく、これはSchulze-Hardyの法則から自明である。塩の種類は塩析作用を有する物質であれば特に限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウムなどの無機塩類の水溶液を好適に用いることができる。0.2mM~1.5mMの塩化金酸を還元して得られる金ナノ粒子の多くの場合では、塩化ナトリウムを30mM~100mMの濃度となるように加えればよいが、これに限定されるものではない。
本発明において、貴金属ナノ粒子の凝集体を含む溶液を断続的に撹拌する。1回の撹拌時間は短く、好ましくは0.1秒間~1分間、さらに好ましくは1秒間~10秒間の範囲であり、撹拌操作を開始してもただちに撹拌操作を停止できる方法であることが好ましい。さらには、撹拌操作によって、凝集体を含む溶液の大部分に流動を生じさせることが好ましい。
本発明における撹拌方法としては、(1)凝集体を入れた容器に蓋をして容器を転倒させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(2)凝集体を入れた容器を振盪させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(3)凝集体を入れた容器に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーで撹拌子を回転させる方法、(4)凝集体を入れた容器に遠心力を作用させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(5)凝集体を含む溶液に圧力を加え、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(6)凝集体を含む溶液をピペット等で吸い上げ、ただちに吐出させるピペッティング操作により、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(7)凝集体を入れた容器に圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法、から好ましく選択することができる。
また、上記撹拌方法において、貴金属ナノ粒子を含む溶液を断続的に撹拌するために以下の態様を取ることができる。
(1)凝集体を入れた容器に蓋をして容器を転倒させる方法では、転倒の回数を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(2)凝集体を入れた容器を振盪させる方法では、振盪の回数を積み重ねることで、あるいは振盪させる時間を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(3)凝集体を入れた容器に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーで撹拌子を回転させる方法では、マグネティックスターラーの電源をオンオフさせて回転の回数を積み重ねることで、あるいは、回転させる時間を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(4)凝集体を入れた容器に遠心力を加え、凝集体を含む溶液を流動させる方法では、遠心力を作用させる回数を積み重ねることで、あるいは、遠心力を掛ける時間を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(5)凝集体を含む溶液に圧力を加え、凝集体を含む溶液を流動させる方法では、圧力を掛ける回数を積み重ねることで、あるいは、圧力を掛ける時間を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(6)凝集体を含む溶液をピペット等で吸い上げ、ただちに吐出させるピペッティング操作により、凝集体を含む溶液を流動させる方法では、ピペッティングの回数を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
(7)凝集体を入れた容器に圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法では、圧力を加えて容器を変形させる回数を積み重ねることで、凝集の進行を小刻みに促進させる断続的な撹拌を行うことができる。
ほとんどのSERS測定においては、凝集体を含む溶液の必要容量は1mL以下であり、約100μL程度であることが多いので、(6)凝集体を含む溶液をピペット等で吸い上げ、ただちに吐出させるピペッティング操作により、凝集体を含む溶液を流動させる方法を特に好ましく用いることができる。ピペットとしてはマイクロピペットを用いることが好ましい。また、(7)凝集体を入れた容器に圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法は、容器にスポイトなどの柔らかいプラスチック製容器を用いると、凝集体を入れた容器に人力で圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法を簡便に実施することができるので好ましい。
このように撹拌を断続的に行うことにより凝集の進行を小刻みに促進させ、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体をその場で合成することができる。凝集体がSERS測定に好ましい状態にあることは、非特許文献2の図2に解説があるように、凝集体の有する局在プラズモン共鳴の状態に依存するので、SERS測定のレーザーの波長において、あるいは、測定対象物質のラマン散乱の波長において、見かけの吸光度が十分に大きな凝集体の吸収スペクトルが得られており、その状態が測定に十分な時間安定して存在していることを確認することで判断できる。
ラマン散乱の波長X[nm]は、測定対象物質のSERSスペクトルに現れるピークのラマンシフトY[1/cm]と、用いるレーザーの波長L[nm]から、次の式によって算出できる。
X=1/[(1/L)-(Y/10000000)]
したがって、凝集体の吸収スペクトルにおいて、レーザーの波長Lとラマン散乱の波長Xにおける吸収強度に注目することができ、SERSを発現するに好ましいかどうかの予測を行うことができる。
以下、実施例と対照例を用いて本発明を説明する。
[対照例]
田中貴金属工業製の金ナノ粒子(平均粒子径42nm)に塩化ナトリウム水溶液を濃度100mMとなるように加え、撹拌子を入れたマグネティックスターラーを用いて500rpmで撹拌しながら、0.25秒ごとに吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。
図1におけるbefore aggregationは凝集を開始する前の吸収スペクトルであり、after addition of NaClは塩化ナトリウム水溶液添加直後の吸収スペクトルである。また図1におけるfirstは測定開始直後の吸収スペクトル、secondはその0.25秒後の吸収スペクトル、thirdはその0.50秒後の吸収スペクトル、forthは0.75秒後の吸収スペクトル、fifthは1.0秒後の吸収スペクトルをそれぞれ示す。図1からわかるように、凝集体の状態を示す吸収スペクトルは刻々と変化しており、数秒後には見かけの吸光度が低下した。このように、適切な状態の凝集体を安定して得ることは困難であった。
[実施例1]
Frens(非特許文献6)の方法に準じて、0.6mMの四塩化金酸(HAuCl)と1.2mMのクエン酸三ナトリウム(Na(CO(COO)))を含む水溶液を加熱して四塩化金酸を還元して、粒子径がおおよそ40nmの金ナノ粒子コロイド溶液を合成した。この金ナノ粒子コロイド溶液は赤色であった。使用する器具はすべて王水で洗浄したものを用い、操作はクリーンベンチを備えた実験室で行った。
得られた金ナノ粒子(粒子径約40nm)コロイド溶液をポリスチレン製のディスポセルに入れ、塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加え全量を2mLに調整した後、1mLのマイクロピペットでピペッティング操作を繰り返し、各段階の吸収スペクトルをラムダビジョン製光ファイバー分光器SA-100VRで測定した。結果を図2に示す。
図2におけるbefore aggregationは凝集を開始する前の金ナノ粒子の吸収スペクトルであり、after addition of NaClは塩化ナトリウム水溶液添加直後の吸収スペクトルである。また図2におけるfirst pippetingはピペッティング操作を一回行ったあとの吸収スペクトルであり、second pippetingはピペッティング操作を二回行ったあとの吸収スペクトルを示す。興味深いことに、ピペッティング操作をすることで凝集が迅速に進行し、さらに本条件では一回のピペッティング操作と二回のピペッティング操作で、ほとんど同じ吸収スペクトルが得られたことがわかる。また700nm~900nmにおける見かけの吸光度が十分に大きな吸収スペクトルが得られた。
[実施例2]
実施例1では、自作の金ナノ粒子(粒子径約40nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えてピペッティング操作で断続的に撹拌させることにより、700nm~900nmにおける見かけの吸光度が十分に大きな吸収スペクトルが安定的に得られることがわかった。そこで、1Mの塩化ナトリウム水溶液3μLと、20μMの4,4’-ビピリジン水溶液を熱分析用のアルミパン内に入れ、該金ナノ粒子のコロイド溶液の54μLを100μLのマイクロピペットで加え、そのまま100μLのマイクロピペットでピペッティングを二回行い、断続的な撹拌によって凝集を生成させた。該凝集体を含む溶液を入れたアルミパンをただちに20倍の対物レンズを備えたラムダビジョン製顕微ラマン分光器RAM300/785にセットし、785nm(25mW)のレーザーを1秒間照射してラマンスペクトルを取得した。凝集体の調製から測定に要した時間は約1分であった。結果を図3に示す。
図3において、濃度1μMの4,4’-ビピリジンのSERSスペクトル(実線)が、4,4’-ビピリジンを含まないで同じ操作をしたバックグラウンドのスペクトル(点線)に対して明瞭に出現しており、断続的な撹拌操作が簡便かつ迅速なSERS測定に極めて有用であることが示された。
[実施例3]
Frens(非特許文献6)の方法に準じて、0.6mMの四塩化金酸(HAuCl)と0.6mMのクエン酸三ナトリウム(Na(CO(COO)))を含む水溶液を加熱して四塩化金酸を還元して、粒子径がおおよそ60nmの金ナノ粒子コロイド溶液を合成した。この金ナノ粒子コロイド溶液は赤色であった。使用する器具はすべて王水で洗浄したものを用い、操作はクリーンベンチを備えた実験室で行った。
得られた金ナノ粒子(粒子径約60nm)コロイド溶液をポリスチレン製のディスポセルに入れ、塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えて全量を2mLに調整した後、1mLのマイクロピペットでピペッティング操作を繰り返し、各段階の吸収スペクトルをラムダビジョン製光ファイバー分光器SA-100VRで測定した。結果を図4に示す。
図4におけるbefore aggregationは凝集を開始する前の金ナノ粒子の吸収スペクトルであり、after addition of NaClは塩化ナトリウム水溶液添加直後の吸収スペクトルである。また図4におけるfirst pippetingはピペッティング操作を一回行ったあとの吸収スペクトルであり、second pippetingはピペッティング操作を二回行ったあとの吸収スペクトルであり、third pippetingはピペッティング操作を三回行ったあとの吸収スペクトルであり、forth pippetingはピペッティング操作を四回行ったあとの吸収スペクトルである。興味深いことに、ピペッティング操作をすることで凝集が迅速に進行し、さらに本条件では三回のピペッティング操作と四回のピペッティング操作で、ほとんど同じ吸収スペクトルが得られたことがわかる。また二回以上のピペッティング操作で、700nm~900nmにおける見かけの吸光度が十分に大きな吸収スペクトルが得られた。
[実施例4]
実施例3では、自作の金ナノ粒子(粒子径約60nm)コロイド溶液に塩化ナトリウム水溶液を濃度50mMとなるように加えてピペッティング操作で断続的に撹拌させることにより、700nm~900nmにおける見かけの吸光度が十分に大きな吸収スペクトルが三回以上のピペッティング操作で安定的に得られることがわかった。そこで、1Mの塩化ナトリウム水溶液3μLと、1μMの4,4’-ビピリジン水溶液を熱分析用のアルミパン内に入れ、該金ナノ粒子のコロイド溶液の54μLを100μLのマイクロピペットで加え、そのまま100μLのマイクロピペットでピペッティングを四回行い、断続的な撹拌によって凝集を生成させた。該凝集体を含む溶液を入れたアルミパンをただちに20倍の対物レンズを備えたラムダビジョン製顕微ラマン分光器RAM300/785にセットし、785nm(25mW)のレーザーを1秒間照射してラマンスペクトルを取得した。凝集体の調製から測定に要した時間は約1分であった。結果を図5に示す。
図5において、濃度50nMの4,4’-ビピリジンのSERSスペクトル(実線)が、4,4’-ビピリジンを含まないで同じ操作をしたバックグラウンドのスペクトル(点線)に対して明瞭に出現しており、断続的な撹拌操作が簡便かつ迅速なSERS測定に極めて有用であることが示された。
凝集状態が制御された金ナノ粒子または銀ナノ粒子などの貴金属ナノ粒子の凝集体をその場で合成することができるため、即座にSERS分析に供することで、凝集体の状態が変動することなく、この凝集体の局在プラズモン共鳴の作用を利用し、生体成分あるいは化学物質のSERSセンシングやSERSビーコンを実現できる。

Claims (3)

  1. 測定対象物質の共存下で、貴金属ナノ粒子を含む溶液を塩の溶液と混合させて凝集を開始させた後、断続的に極短時間の撹拌であって、混合した溶液の大部分に流動を生じさせる撹拌を繰り返すことにより、貴金属ナノ粒子の凝集の進行を小刻みに促進させ、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体を合成する方法であって、
    前記撹拌は、(1)凝集体を入れた容器に蓋をして容器を転倒させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(2)凝集体を入れた容器を振盪させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(3)凝集体を入れた容器に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーで撹拌子を回転させる方法、(4)凝集体を入れた容器に遠心力を作用させ、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(5)凝集体を含む溶液に圧力を加え、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(6)凝集体を含む溶液をピペット等で吸い上げ、ただちに吐出させるピペッティング操作により、凝集体を含む溶液を流動させる方法、(7)凝集体を入れた容器に圧力を加え、容器を変形させて凝集体を含む溶液を流動させる方法、から選択され、1回の撹拌で凝集体を含む溶液の大部分に流動を生じさせる方法である、凝集状態が制御された貴金属ナノ粒子の凝集体を合成する方法。
  2. 請求項1に記載の方法で合成した貴金属ナノ粒子の凝集体を用いて、測定対象物質のその場分析を行う方法。
  3. 請求項1に記載の方法で貴金属ナノ粒子の凝集体を合成し、合成後直ちにその場で測定対象物質を表面増強ラマン分析に供する、その場分析を行う方法。
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