本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。本実施形態の基板処理装置は、基板Pに露光処理を施す露光装置EXである。露光装置EXは、露光後の基板Pに各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システム1に組み込まれている。まず、デバイス製造システム1について説明する。
<デバイス製造システム>
デバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレー、多層フレキシブル配線、フレキシブル・センサー等の電子デバイスを製造するライン(フレキシブル・電子デバイス製造ライン)である。以下の実施態様では、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレーを例に説明する。フレキシブル・ディスプレーとしては、例えば有機ELディスプレー等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性を有する長尺かつシート状の基板Pをロール状に巻回した図示しない供給用ロールから、基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして図示しない回収用ロールに巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。基板Pは、フレキシブル基板ともいう。デバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールから送り出され、供給用ロールから送り出された基板Pが、順次、プロセス装置U1、露光装置EX、プロセス装置U2を経て、回収用ロールに巻き取られるまでの例を示している。
デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属又は合金を材料とした箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及び酢酸ビニル樹脂のうち少なくとも1つを含んでいる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールとなる。この供給用ロールが、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールが装着されたデバイス製造システム1は、デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールから送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pは、複数のデバイスが連なった状態となる。つまり、供給用ロールから送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの又は表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールとして回収される。回収用ロールは、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイス毎に分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm~2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
引き続き、図1を参照し、デバイス製造システム1について説明する。デバイス製造システム1は、プロセス装置U1と、露光装置EXと、プロセス装置U2とを備える。図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、プロセス装置U1から露光装置EXを経てプロセス装置U2へ向かう方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向となっている。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)である。
プロセス装置U1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理(前処理)を行う。プロセス装置U1は、前処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて送る。このとき、露光装置EXへ送られる基板Pは、例えば、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
感光性機能層は、例えば、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング材(SAM)又は紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元材等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング材を用いる場合は、基板Pの表面の、紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質されるため、親液性となった部分の表面に導電性インク(銀又は銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)を選択塗布し、パターン層を形成する。感光性機能層として感光性還元材を用いる場合は、基板の表面の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈するため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含む無電解メッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。
露光装置EXは、プロセス装置U1から供給された基板Pに対して、ディスプレー用の回路又は配線等のパターンを描画している。詳細は後述するが、この露光装置EXは、複数の描画ビームLBの各々を所定の走査方向に走査することで得られる複数の描画ラインによって、基板P上に所定のパターンを露光する。露光装置EXで露光処理が行われた基板Pはプロセス装置U2に送られ、プロセス装置U2は、基板Pに対しての後工程の処理(後処理)を行う。これによって、基板Pの表面に電子デバイスの特定のパターン層がを形成される。続いて、露光装置EXについて説明する。
<露光装置(基板処理装置)>
図2は、図1の露光装置の主要部の配置を示す斜視図である。図3は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとの配置関係を示す図である。図4は、図1の露光装置の回転ドラム及び描画装置の構成を示す図である。図5は、図1の露光装置の主要部の配置を示す平面図である。図6は、図1の露光装置の分岐光学系の構成を示す斜視図である。図7は、図1の露光装置の複数の走査器の配置関係を示す図である。図8-1は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとエンコーダヘッドとの配置関係を示す斜視図である。図8-2は、アライメント顕微鏡とエンコーダヘッドとの配置関係を示す斜視図である。図9-1は、図1に示す露光装置の回転ドラムの表面構造を示す斜視図である。図9-2は、回転ドラムに設けられている基準パターンを示す拡大図である。図9-3は、回転ドラムの変形例を示す図である。図9-4は、スケール部の変形例を示す図である。
図1に示すように、露光装置EXは、マスクを用いないマスクレス露光装置であり、いわゆるラスタースキャン式の直描画露光装置である。この露光装置は、基板Pを搬送方向に搬送しながら、描画ビームLBのスポットを所定の走査方向に走査することで、基板Pの表面を描画して、所定のパターンを形成している。図1に示すように、露光装置EXは、処理部としての描画装置11と、基板搬送機構12と、基準パターン検出部としてのアライメント顕微鏡AM1、AM2と、演算部としての制御装置16とを備えている。描画装置11は、基板Pの長尺の方向に沿って、基板Pの被処理領域に順次所定の処理を施す。本実施形態において、描画装置11は複数の描画モジュールUW1~UW5を備え、基板搬送機構12によって一定の速度で搬送される基板Pの一部分に、複数の描画モジュールUW1~UW5によって所定のパターンが描画される。
基板搬送機構12は、前工程のプロセス装置U1から搬送される基板Pを、後工程のプロセス装置U2に所定の速度で搬送している。パターン(マーク)検出部としてのアライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pの表面に描画される描画パターンをと基板P上で、ミクロン、好ましくはサブミクロンのオーダーで精密に位置合わせ(アライメント)するために、基板Pに予め形成された基板マークとしてのアライメントマーク、又は回転ドラムDRの外周面に形成された基準パターン等を検出する。制御装置16は、露光装置EXの各部を制御し、各部に処理を実行させる。制御装置16は、デバイス製造システム1を制御する上位の制御装置の一部又は全部であってもよい。また、制御装置16は、上位の制御装置に制御される、上位の制御装置とは別の装置であってもよい。制御装置16は、例えば、コンピュータを含む。
露光装置EXは、描画装置11及び基板搬送機構12を支持する装置フレーム13(図2参照)と、回転位置検出機構(図4及び図8参照)14とを備えている。さらに、露光装置EXの内部には、描画ビームLBとしてのレーザ光(パルス光)を射出する光源装置CNTが設けられている。この露光装置EXは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを、描画装置11で案内して、基板搬送機構12で搬送される基板Pに投射する。
図1に示す露光装置EXは、温調チャンバーEVC内に格納されている。温調チャンバーEVCは、パッシブ又はアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場等の設置面Eに設置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面E上に設けられており、設置面Eからの振動を低減する。温調チャンバーEVCは、内部を所定の温度に保つことで、内部で搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制している。次に、露光装置EXの基板搬送機構12について説明する。
基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラDR4、テンション調整ローラRT1、円筒部材としての回転ドラムDR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラDR6及び駆動ローラDR7を有している。エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から搬送される基板Pの幅方向(Y軸と平行な方向)における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から送られる基板Pの幅方向の両端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm~±数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。したがって、エッジポジションコントローラEPCは基板Pのプリアライメント(粗位置決め)機構として機能する。
駆動ローラDR4は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側、すなわち基板Pの長尺方向に送り出すことで、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。回転ドラムDRは、Y方向に延びる所定の軸線としての回転中心軸AX2から一定半径rの円筒状の外周面の一部で被処理基板、すなわち基板Pの表面のパターンが露光される長尺方向の一部分を支持する。そして、回転ドラムDRは、回転中心軸AX2を中心として、回転中心軸AX2の周り、駆動モータによって一定速度で回転させすることで、外周面に支持した基板Pは、その長尺方向一定の速度で搬送される。回転ドラムDRは、外周面の特定位置に基準パターンが設けられている。回転ドラムDRの基準パターンについては後述する。
このような回転ドラムDRを回転中心軸AX2の周りに回転させるために、回転ドラムDRの両側には回転中心軸AX2と同軸のシャフト部Sf2が設けられる。このシャフト部Sf2には、不図示の駆動源(モータや減速ギア機構等)からの回転トルクが与えられる。回転中心軸AX2含み、かつ回転中心軸AX2と平行であってZ方向に延びる面は、中心面p3である。案内部材としての2組のテンション調整ローラRT1、RT2は、回転ドラムDRに巻き付けられて支持される基板Pに、所定のテンションを与えている。2組のテンション調整ローラRT1、RT2は、基板Pが回転ドラムDRの外周面の所定の周長範囲CLにわたって巻き付けられるように、基板Pを案内する。第1パターン検出部としてのアライメント顕微鏡AM1及び第2パターン検出部としてのアライメント顕微鏡AM2の各検出領域と描画装置11の処理位置とは、回転ドラムDRの所定の周長範囲CL内に配置される。
2組の駆動ローラDR6、DR7は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与えている。駆動ローラDR6は、搬送される基板Pの上流側を挟持(ニップ)して回転し、駆動ローラDR7は、搬送される基板Pの下流側を挟持(ニップ)して回転することで、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。このとき、基板Pは、たるみDLが与えられているため、駆動ローラR6よりも搬送方向の下流側において生ずる基板Pの搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。
基板搬送機構12は、プロセス装置U1から搬送されてきた基板Pを、エッジポジションコントローラEPCによって幅方向における位置を調整する。基板搬送機構12は、幅方向の位置が調整された基板Pを、駆動ローラDR4によりテンション調整ローラRT1に搬送し、テンション調整ローラRT1を通過した基板Pを、回転ドラムDRに搬送する。基板搬送機構12は、回転ドラムDRを回転させることで、回転ドラムDRに支持される基板Pを、テンション調整ローラRT2へ向けて搬送する。基板搬送機構12は、テンション調整ローラRT2に搬送された基板Pを駆動ローラDR6に搬送し、駆動ローラDR6に搬送されたた基板Pを駆動ローラDR7に搬送する。そして、基板搬送機構12は、駆動ローラDR6及び駆動ローラDR7により、基板PにたるみDLを与えながら、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。
次に、図2を参照して、露光装置EXの装置フレーム13について説明する。図2には、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系が示されているが、これは図1に示された直交座標系と同様のものである。露光装置EXは、図1に示す描画装置11と、基板搬送機構12の回転ドラムDRとを支持する装置フレーム13を備えている。図2に示される装置フレーム13は、Z方向の下方側(鉛直方向側)から順に、本体フレーム21と、三点座22と、第1光学定盤23と、回転機構24と、第2光学定盤25とを有している。本体フレーム21は、防振ユニットSU1、SU2を介して設置面E上に設置されている。本体フレーム21は、回転ドラムDR及びテンション調整ローラRT1(図1参照)、RT2を回転可能に支持している。第1光学定盤23は、回転ドラムDRの鉛直方向の上方側に設けられ、三点座22を介して本体フレーム21に設置されている。三点座22は、第1光学定盤23を3つの支持点で支持している。三点座22は、各支持点におけるZ方向が調整可能である。このため、三点座22は、水平面に対する第1光学定盤23の盤面の傾きを所定の傾きに調整できる。装置フレーム13の組立て時において、本体フレーム21と三点座22との間は、XY面内において、X方向及びY方向における位置が調整可能となっている。一方で、装置フレーム13の組立て後において、本体フレーム21と三点座22との間は固定された状態、すなわちリジットな状態となる。
第2光学定盤25は、第1光学定盤23の鉛直方向の上方側に設けられ、回転機構24を介して第1光学定盤23に設置されている。第2光学定盤25は、その盤面が第1光学定盤23の盤面と平行になっている。第2光学定盤25には、描画装置11の複数の描画モジュールUW1~UW5が設置される。回転機構24は、第1光学定盤23及び第2光学定盤25のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、鉛直方向に延びる所定の回転軸Iを中心に、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を回転させている。この回転軸Iは、図1に示す中心面p3内において鉛直方向に延在し、かつ回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの表面(円周面に沿って湾曲した描画面)内の所定の位置を通っている(図3参照)。回転機構24は、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を回転させることで、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pに対する複数の描画モジュールUW1~5の位置を調整することができる。
続いて、図1及び図5を参照して、光源装置CNTについて説明する。光源装置CNTは、装置フレーム13の本体フレーム21上に設置されている。光源装置CNTは、基板Pに投射される描画ビームLBとしてのレーザ光を射出する。光源装置CNTは、基板P上の感光性機能層の露光に適した所定の波長域の光であって、光活性作用の強い紫外域の光を射出する光源を有する。光源としては、例えば、YAGの第3高調波レーザ光(波長355nm)で、連続発振又は50MHz~100MHz程度でパルス発振するレーザ光源、又は赤外域の波長のパルス光を100MHz以上の周波数で発振する半導体レーザと、そのパルス光を増幅するファイバー増幅器と、増幅されたパルス光を高調波に変換して波長355nmの紫外線パルス光(発光時間が数ピコ秒程度)とを射出する結晶素子等で構成されるファイバーアンプレーザ光源が利用できる。
光源装置CNTから射出された描画ビームLBは、後述の偏光ビームスプリッタPBSに入射する。描画ビームLBは、偏光ビームスプリッタPBSによる描画ビームLBの分離によってエネルギーロスが生じることを抑制するため、入射される描画ビームLBが偏光ビームスプリッタPBSにおいてほぼすべて反射するような光束にすることが好ましい。偏光ビームスプリッタPBSは、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置CNTでは、偏光ビームスプリッタPBSに入射する描画ビームLBが直線偏光(S偏光)の光束となるレーザ光を射出することが好ましい。また、レーザ光は、エネルギー密度が高いため、基板Pに投射される光束の照度を適切に確保することができる。
次に、露光装置EXの描画装置11について説明する。描画装置11は、複数の描画モジュールUW1~UW5を用いた、いわゆるマルチビーム型の描画装置11となっている。この描画装置11は、図1に示すように、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐し、分岐した複数の描画ビームLBを、図3に示す、基板P上の複数(本実施形態では例えば5つ)の描画ラインLL1~LL5に沿ってそれぞれ走査させている。そして、描画装置11は、複数の描画ラインLL1~LL5の各々によって基板P上に描画されるパターン同士を、基板Pの幅方向に継ぎ合わせている。まず、描画装置11により複数の描画ビームLBを走査することで基板P上に形成される複数の描画ラインLL1~LL5について説明する。
図3に示すように、複数の描画ラインLL1~LL5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。回転方向の上流側の基板P上には、奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5が配置される。回転方向の下流側の基板P上には、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4が配置される。各描画ラインLL1~LL5は、基板Pの幅方向(Y方向)、つまり回転ドラムDRの回転中心軸AX2に沿って形成されており、基板Pの幅方向における長さよりも短くなっている。より厳密には、各描画ラインLL1~LL5は、基板搬送機構12により基準速度で基板Pを搬送したときに、複数の描画ラインLL1~LL5により得られるパターンの継ぎ誤差が最小となるように、回転ドラムDRの回転中心軸AX2に対し、所定の微少角度分だけ基板P上で傾けられる。
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5は、回転ドラムDRの軸AX2方向に、所定の間隔を空けて配置されている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4は、回転ドラムDRの軸AX2方向に、所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2描画ラインLL2は、軸方向において、第1描画ラインLL1と第3描画ラインLL3との間に配置される。同様に、第3描画ラインLL3は、軸方向において、第2描画ラインLL2と第4描画ラインLL4との間に配置される。第4描画ラインLL4は、軸方向において、第3描画ラインLL3と第5描画ラインLL5との間に配置される。そして、第1描画ラインLL1~第5描画ラインLL1~LL5は、基板P上に描画される被処理領域A7のY方向の全幅をカバーするように配置されている。
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4に沿って走査される描画ビームLBの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。しかし、奇数番の描画ラインLL1、LL3、LL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向と、偶数番の描画ラインLL2、LL4に沿って走査される描画ビームLBの走査方向とは、互いに逆方向となっている。このため、基板Pの搬送方向から見て、奇数番の描画ラインLL3、LL5の描画開始位置と、偶数番の描画ラインLL2、LL4の描画終了位置とは、隣接しており、同様に、奇数番の描画ラインLL1、LL3の描画終了位置と、偶数番の描画ラインLL2、LL4の描画開始位置とは、隣接する。
次に、図4から図7を参照して、描画装置11について説明する。描画装置11は、図1に示すアライメント顕微鏡AM1、AM2による基板Pの基準パターンの検出領域から基板Pの搬送方向の下流側に配置されて、基板Pの搬送中に回転ドラムDRで支持された基板Pの一部分に対して所定の処理(本実施形態では露光処理)を施す処理部として機能する。描画装置11は、前述した複数の描画モジュールUW1~UW5と、光源装置CNTからの描画ビームLBを分岐する分岐光学系SLと、キャリブレーションを行うためのキャリブレーション検出系31とを有する。
分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐し、分岐した複数の描画ビームLBを複数の描画モジュールUW1~UW5へ向けて導いている。分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを2つに分岐する第1光学系41と、第1光学系41により分岐された一方の描画ビームLBが照射される第2光学系42と、第1光学系41により分岐された他方の描画ビームLBが照射される第3光学系43とを有する。また、分岐光学系SLは、第1光学系41内の分岐前のビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元的にシフトさせるXY全体ハービング調整機構44と、第3光学系43内でのビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元的にシフトさせるXY片側ハービング調整機構45とを含んでいる。分岐光学系SLは、光源装置CNT側の一部が本体フレーム21に設置される一方で、描画モジュールUW側の他の一部が第2光学定盤25に設置されている。
第1光学系41は、1/2波長板51と、偏光ビームスプリッタ52と、ビームディフューザ53と、第1反射ミラー54と、第1リレーレンズ55と、第2リレーレンズ56と、第2反射ミラー57と、第3反射ミラー58と、第4反射ミラー59と、第1ビームスプリッタ60とを有する。
光源装置CNTから+X方向に射出された描画ビームLBは、1/2波長板51に照射される。1/2波長板51は、描画ビームLBの照射面内において回転可能となっている。1/2波長板51に照射された描画ビームLBは、その偏光方向が、1/2波長板51の回転量に応じた所定の偏光方向となる。1/2波長板51を通過した描画ビームLBは、偏光ビームスプリッタ52に照射される。偏光ビームスプリッタ52は、所定の偏光方向となる描画ビームLBを透過する一方で、所定の偏光方向以外の描画ビームLBを+Y方向に反射する。このため、偏光ビームスプリッタ52で反射される描画ビームLBは、1/2波長板51を通過していることから、1/2波長板51及び偏光ビームスプリッタ52の協働によって、描画ビームLBのビーム強度が調整される。つまり、1/2波長板51を回転させ、描画ビームLBの偏光方向を変化させることで、偏光ビームスプリッタ52で反射される描画ビームLBのビーム強度を調整することができる。
偏光ビームスプリッタ52を透過した描画ビームLBは、ビームディフューザ53によって吸収され、ビームディフューザ53に照射される描画ビームLBの外部への漏れを抑制している。偏光ビームスプリッタ52で+Y方向に反射された描画ビームLBは、第1反射ミラー54に照射される。第1反射ミラー54に照射された描画ビームLBは、第1反射ミラー54により+X方向に反射され、第1リレーレンズ55及び第2リレーレンズ56を介して、第2反射ミラー57に照射される。第2反射ミラー57に照射された描画ビームLBは、第2反射ミラー57により-Y方向に反射されて、第3反射ミラー58に照射される。第3反射ミラー58に照射された描画ビームLBは、第3反射ミラー58により-Z方向に反射されて、第4反射ミラー59に照射される。第4反射ミラー59に照射された描画ビームLBは、第4反射ミラー59により+Y方向に反射されて、第1ビームスプリッタ60に照射される。第1ビームスプリッタ60に照射された描画ビームLBは、その一部が-X方向に反射されて第2光学系42に照射される一方で、その他の一部が透過して第3光学系に照射される。
第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とは、回転機構24の回転軸I上において所定の間隔を空けて設けられている。また、第3反射ミラー58を含む光源装置CNTまでの構成(図4のZ方向の上方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、本体フレーム21側に設置される。第4反射ミラー59を含む複数の描画モジュールUW1~UW5までの構成(図4のZ方向の下方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、第2光学定盤25側に設置される。このような構造により、回転軸I上に第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とが設けられているため、回転機構24により第1光学定盤23に対して第2光学定盤25が回転しても、描画ビームLBの光路が変更されることがない。よって、描画装置11は、回転機構24により第1光学定盤23に対して第2光学定盤25が回転しても、本体フレーム21側に設置された光源装置CNTから射出される描画ビームLBを、第2光学定盤25側に設置された複数の描画モジュールUW1~UW5の各々へ好適に案内することが可能となる。
第2光学系42は、第1光学系41で分岐された一方の描画ビームLBを、後述する奇数番の描画モジュールUW1、UW3、UW5へ向けて分岐して導いている。第2光学系42は、第5反射ミラー61と、第2ビームスプリッタ62と、第3ビームスプリッタ63と、第6反射ミラー64とを有する。
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60が-X方向に反射した描画ビームLBは、第5反射ミラー61に照射される。第5反射ミラー61に照射された描画ビームLBは、第5反射ミラー61により-Y方向に反射されて、第2ビームスプリッタ62に照射される。第2ビームスプリッタ62に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW5に照射される(図5及び図6参照)。第2ビームスプリッタ62に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第3ビームスプリッタ63に照射される。第3ビームスプリッタ63に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW3に照射される(図5及び図6参照)。第3ビームスプリッタ63に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第6反射ミラー64に照射される。第6反射ミラー64に照射された描画ビームLBは、第6反射ミラー64により反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW1に照射される(図5参照)。第2光学系42において、奇数番の描画モジュールUW1、UW3、UW5に照射される描画ビームLBは、-Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
第3光学系43は、第1光学系41で分岐された他方の描画ビームLBを、後述する偶数番の描画モジュールUW2、UW4へ向けて分岐して導いている。第3光学系43は、第7反射ミラー71と、第8反射ミラー72と、第4ビームスプリッタ73と、第9反射ミラー74とを有する。
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60をY方向に透過した描画ビームLBは、第7反射ミラー71に照射される。第7反射ミラー71に照射された描画ビームLBは、第7反射ミラー71によりX方向に反射されて、第8反射ミラー72に照射される。第8反射ミラー72に照射された描画ビームLBは、第8反射ミラー72により-Y方向に反射されて、第4ビームスプリッタ73に照射される。第4ビームスプリッタ73に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、偶数番の1つの描画モジュールUW4に照射される(図5及び図6参照)。第4ビームスプリッタ73に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第9反射ミラー74に照射される。第9反射ミラー74に照射された描画ビームLBは、第9反射ミラー74により反射されて、偶数番の1つの描画モジュールUW2に照射される。なお、第3光学系43においても、偶数番の描画モジュールUW2、UW4に照射される描画ビームLBは、-Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
このように、分岐光学系SLでは、複数の描画モジュールUW1~UW5へ向けて、光源装置CNTからの描画ビームLBを複数に分岐させている。このとき、第1ビームスプリッタ60、第2ビームスプリッタ62、第3ビームスプリッタ63及び第4ビームスプリッタ73は、複数の描画モジュールUW1~UW5に照射される描画ビームLBのビーム強度が同じ強度となるように、その反射率(透過率)を、描画ビームLBの分岐数に応じて適切な反射率としている。
XY全体ハービング調整機構44は、図6のように、第2リレーレンズ56と第2反射ミラー57との間に配置されている。XY全体ハービング調整機構44は、第1ビームスプリッタ60に入射するビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元に微小シフトさせて、特に第2光学系42を通るビームの位置を調整する。XY全体ハービング調整機構44は、図6のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、図6のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとを有する。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、第1ビームスプリッタ60に入射するビームLBを図6中のX方向及びZY方向に微少シフトさせることができる。
XY片側ハービング調整機構45は、第7反射ミラー71と第8反射ミラー72との間に配置されている。XY片側ハービング調整機構45は、第1ビームスプリッタ60を透過してきたビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元に微小シフトさせて、特に第3光学系43を通るビームの位置を調整する。XY片側ハービング調整機構45は、XY全体ハービング調整機構44と同様に、図6のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、図6のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとを有する。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、偶数番の描画モジュールUW2、UW4に入射する描画ビームLBの位置を微少シフトさせることができる。なお、図6の構成から明らかなように、XY全体ハービング調整機構44によるビームLBの位置シフトは、第1ビームスプリッタ60を透過して第3光学系43に入射するビームの位置もシフトさせる為、偶数番の描画モジュールUW2、UW4に入射するビームの位置調整は、XY全体ハービング調整機構44とXY片側ハービング調整機構45の両方で行われることになる。
図4、図5及び図7を参照して、複数の描画モジュールUW1~UW5について説明する。複数の描画モジュールUW1~UW5は、複数の描画ラインLL1~LL5に応じて設けられている。複数の描画モジュールUW1~UW5には、分岐光学系SLにより分岐された複数の描画ビームLBがそれぞれ入射される。各描画モジュールUW1~UW5は、複数の描画ビームLBを、各描画ラインLL1~LL5でスポット光に集光し、そのスポット光を走査する。つまり、第1描画モジュールUW1は、描画ビームLBを第1描画ラインLL1に導き、同様に、第2~第5描画モジュールUW2~UW5は、描画ビームLBを第2~第5描画ラインLL2~LL5に導く。
図4及び図1に示すように、複数の描画モジュールUW1~UW5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。複数の描画モジュールUW1~UW5は、中心面p3を挟んで、第1、第3、第5描画ラインLL1、LL3、LL5が配置される側(図5の-X方向側)に、第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5が配置される。第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。
複数の描画モジュールUW1~UW5は、中心面p3を挟んで、第2、第4描画ラインLL2、LL4が配置される側(図5の+X方向側)に、第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4が配置される。第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2描画モジュールUW2は、Y方向において、第1描画モジュールUW1と第3描画モジュールUW3との間に位置している。同様に、第3描画モジュールUW3は、Y方向において、第2描画モジュールUW2と第4描画モジュールUW4との間に位置している。第4描画モジュールUW4は、Y方向において、第3描画モジュールUW3と第5描画モジュールUW5との間に位置している。また、図4に示すように、第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5と、第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4とは、Y方向から見て中心面p3を基準として対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各描画モジュールUW1~UW5について説明する。なお、各描画モジュールUW1~UW5は、同様の構成となっているため、第1描画モジュールUW1(以下、単に描画モジュールUW1という)を例に説明する。図4に示す描画モジュールUW1は、描画ラインLL1(第1描画ラインLL1)に沿って描画ビームLBを走査するため、変調器81と、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板82と、走査器83と、折り曲げミラー84と、テレセントリックなf-θレンズ系85と、Y倍率補正用光学部材86とを備える。また、偏光ビームスプリッタPBSに隣接して、キャリブレーション検出系31が設けられている。
変調器81は、例えば、音響光学変調素子(AOM:Acousto Optic Modulator)で構成され、入射したビームの回折光の発生/非発生を高速にスイッチングすることで、描画ビームLBの基板Pへの投射/非投射を高速に切り替える。これによって、基板Pに照射されるスポット光の強度が、変調器(AOM)81に印加されるパターン描画情報(シリアルなビット列信号)に基づいて変調される。具体的に、分岐光学系SLからの描画ビームLBは、リレーレンズ91を介して、-Z方向に対して僅かに傾斜して変調器81に照射される。変調器81がOFF状態のとき、描画ビームLBが傾斜した状態で直進し、変調器81を通過した先に設けられる遮光板92により遮光される。変調器81がON状態のとき、回折された描画ビームLBは-Z方向に偏向されて変調器81を通過し、変調器81のZ方向上に設けられる偏光ビームスプリッタPBSに入射する。このため、変調器81がONの間は、描画ビームLBのスポット光が基板Pに投射され続け、変調器81がOFFの間は、描画ビームLBのスポット光の基板Pへの投射が中断される。
偏光ビームスプリッタPBSは、変調器81からリレーレンズ93を介して照射された描画ビームLBを反射する。偏光ビームスプリッタPBSは、偏光ビームスプリッタPBSと走査器83との間に設けられる1/4波長板82と協働して、基板P又は回転ドラムDRの表面で反射された描画ビームLBを透過している。つまり、変調から偏光ビームスプリッタPBSに向かう描画ビームLBは、S偏光の直線偏光となるレーザ光であり、偏光ビームスプリッタPBSにより反射される。偏光ビームスプリッタPBSにより反射された描画ビームLBは、1/4波長板82を通過して円偏光となって基板Pに達する。基板P又は回転ドラムDRの表面で反射して、f-θレンズ系85や走査器83を介して戻ってくる描画ビームLBの一部の反射光は、1/4波長板82を再び通過することで、P偏光の直線偏光となる。このため、基板Pから偏光ビームスプリッタPBSに照射される描画ビームLBの反射光は、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。偏光ビームスプリッタPBSを透過した描画ビームLBの反射光は、リレーレンズ94を介してキャリブレーション検出系31に照射される。リレーレンズ系93を介して偏光ビームスプリッタPBSで反射された描画ビームLBは、1/4波長板82を通過した後、走査器83に入射する。
図4及び図7に示すように、走査器83は、反射ミラー96と、回転ポリゴンミラー(回転多面鏡)97と、原点検出器98とを有する。1/4波長板82を通過した描画ビームLBは、リレーレンズ95を介して反射ミラー96に照射される。反射ミラー96で反射された描画ビームLBは、回転ポリゴンミラー97に照射される。回転ポリゴンミラー97は、Z方向に延びる回転軸97aと、回転軸97a周りに形成される複数のポリゴン面(反射平面)97bとを含む。回転ポリゴンミラー97は、回転軸97aを中心に所定の回転方向に回転させることで、ポリゴン面97bに照射される描画ビームLBの反射角を連続的に変化させ、これにより、反射した描画ビームLBを基板P上の描画ラインLL1に沿って走査させている。回転ポリゴンミラー97で反射された描画ビームLBは、折り曲げミラー84に照射される。原点検出器98は、基板Pの描画ラインLL1に沿って走査する描画ビームLBの原点(所定の走査開始点)を検出している。原点検出器98は、各ポリゴン面97bで反射する描画ビームLBを挟んで、反射ミラー96の反対側に配置されている。このため、原点検出器98は、f-θレンズ系85に照射される前の描画ビームLBを検出している。つまり、原点検出器98は、基板P上の描画ラインLL1の描画開始位置にスポット光が照射される直前のポリゴン面97bの角度位置を検出している。
走査器83から折り曲げミラー84に照射された描画ビームLBは、折り曲げミラー84により反射され、f-θレンズ系85に照射される。f-θレンズ系85は、テレセントリックf-θレンズを含んでおり、折り曲げミラー84を介して回転ポリゴンミラー97から反射された描画ビームLBを、基板Pの描画面に対し垂直に投射する。
図7に示すように、複数の描画モジュールUW1~UW5における複数の走査器83は同様の構造である。複数の走査器83は、描画モジュールUW1、UW3、UW5に対応する3つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の上流側(図7の-X方向側)に配置され、描画モジュールUW2、UW4に対応する2つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の下流側(図7の+X方向側)に配置されている。そして、上流側の3つの走査器83と、下流側の2つの走査器83とは、中心面p3を挟んで対向して配置されている。このため、上流側の3つの回転ポリゴンミラー97が左回りに回転しながら、回転ポリゴンミラー97に描画ビームLBが照射されると、回転ポリゴンミラー97により反射された描画ビームLBは、描画開始位置から描画終了位置へ向けて、スポット光となって所定の走査方向(例えば図7の+Y方向)に走査される。一方で、下流側の2つの回転ポリゴンミラー97が左回りに回転しながら、回転ポリゴンミラー97に描画ビームLBが照射されると、回転ポリゴンミラー97により反射された描画ビームLBは、描画開始位置から描画終了位置へ向けて、スポット光となって上流側の3つの回転ポリゴンミラー97とは逆の走査方向(例えば図7の-Y方向)に走査される。
図4のXZ面内で見たとき、奇数番の描画モジュールUW1、UW3、UW5から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le1と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le1は、XZ面内において、奇数番の描画ラインLL1、LL3、LL5と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。同様に、図4のXZ面内で見たとき、偶数番の描画モジュールUW2、UW4から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le2と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le2は、XZ面内において、偶数番の描画ラインLL2、LL4と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。
Y倍率補正用光学部材86は、Y方向に正の屈折力を有するシリンドリカルレンズと、Y方向に負の屈折力を有するシリンドリカルレンズとを組み合わせたもので、f-θレンズ系85と基板Pとの間に配置されている。Y倍率補正用光学部材86を構成する複数のシリンドリカルレンズの少なくとも1つをf-θレンズ系85の光軸(描画ビームLBの軸)方向に微動させることで、各描画モジュールUW1~UW5によって形成される描画ラインLL1~LL5の各々の長さを、Y方向に等方的に微少量だけ拡大又は縮小することができる。
このような構造を有する描画装置11は、制御装置16により各部が制御されることで、基板P上に所定のパターンが描画される。つまり、制御装置16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンの情報であるCAD(Computer Aided Design)情報に基づいて、変調器81をOn/Off変調することによって描画ビームLBを偏向し、基板Pの光感応層上にパターンを描画していく。また、制御装置16は、描画ラインLL1に沿って走査する描画ビームLBのスポット光の走査方向と、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送方向の移動とを同期させることで、基板Pの被処理領域A7中の描画ラインLL1に対応した部分に所定のパターンを描画する。
基板Pは、描画モジュールUW1、UW3、UW5が形成する描画ラインLL1、LL3、LL5と、描画モジュールUW2、UW4が形成する描画ラインLL2、LL4とを通過すると、所定のパターンが描画される。図3に示すように、奇数番の描画ラインLL1、LL3、LL5を結ぶ直線SL1と、偶数番の描画ラインLL2、LL4を結ぶ直線SL2と、直線SL3と、直線SL4とで囲まれる領域を処理領域(又は露光領域)TRとする。基板Pが処理領域TRを通過すると、描画装置11の露光処理によって基板Pの表面に所定のパターンが描画される。直線SL3は、描画ラインLL1の端部のうち、回転ドラムDRの一方の端部DRT1側における端部LL1Tを通り、回転ドラムDRの回転中心軸AX2と直交し、かつ回転ドラムDRの外周面に沿った線である。直線SL4は、描画ラインLL5の端部のうち、回転ドラムDRの一方の端部DRT1側における端部LL5Tを通り、回転ドラムDRの回転中心軸AX2と直交し、かつ回転ドラムDRの外周面に沿った線である。描画ラインLL1の端部LL1Tと描画ラインLL5の端部LL5Tとの距離は、描画装置11が基板Pに描画することのできるデバイスパターンの最大幅となる。
次に、図3、図8-1及び図8-2を参照して、パターン検出部としてのアライメント顕微鏡AM1、AM2について説明する。アライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pの表面にその長尺方向に沿って予め形成された基準パターンとしてのアライメントマーク又は回転ドラムDR上に形成された基準パターン若しくは基準マーク等を、所定の検出領域内で検出する。以下、基板Pのアライメントマーク並びに回転ドラムDRの基準マーク及び基準パターンを、単にマークと称することもある。本実施形態において、露光装置EXは、回転ドラムDRの周方向に沿って2列のアライメント顕微鏡AM1、AM2を備えているが、少なくとも1列のアライメント顕微鏡を備えていればよい。アライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pと基板P上に描画される所定のパターンとを位置合わせ(アライメント)したり、回転ドラムDRの回転の方向又は回転中心軸AX2の方向への変位を検出したり、回転ドラムDRと描画装置11とをキャリブレーションしたりするために設けられる。
アライメント顕微鏡AM1、AM2は、描画装置11で形成される描画ラインLL1~LL5(処理領域TR)よりも、回転ドラムDRの回転方向の上流側、すなわち基板Pの搬送方向の上流側に設けられている。アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2よりも回転ドラムDRの回転方向の上流側、すなわち基板Pの搬送方向の上流側に設けられている。アライメント顕微鏡が回転ドラムDRの周方向に沿って2列備えられる場合、上流側のアライメント顕微鏡AM1が第1パターン検出部、下流側のアライメント顕微鏡AM2が第2パターン検出部となる。アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2とは、図8-1に示すように回転ドラムDRの回転方向に所定角度βだけ離して配置されている。
図8-1、図8-2に示すように、アライメント顕微鏡AM1、AM2は、対物光学系としての対物レンズ系GAと、画像センサとしての撮像系GDと、照明系GCとを含む。対物レンズ系GAは、照明系GCからの照明光を基板P又は回転ドラムDRに投射し、かつマークからの反射光を入射する検出プローブとして機能する。対物レンズ系GAは、検出領域Vw1~Vw3内を所定倍率で拡大する。撮像系GDは、検出領域の拡大像を光電検出する。具体的には、撮像系GDは、対物レンズ系GAを介して受光したマークの拡大像(明視野像、暗視野像、蛍光像等)を2次元CCD、CMOS等の光電変換素子で撮像する。照明系GCは、回転ドラムDRの外周面又は基板Pに向けて、回転ドラムDRの基準パターン又は基板Pのアライメントマークを検出するための照明光を照射する。照明光は、基板P上の光感応層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば波長域500nm~800nm程度の範囲内で波長帯域幅が数nm~数十nm程度の光である。
照明系GCと対物レンズ系GAとの間には、図8-1、図8-2に示すビームスプリッタユニットGBUが設けられている。ビームスプリッタユニットGBUは、図8-2に示す偏光ビームスプリッタGB(及び1/4波長板)を格納している。照明系GCから偏光ビームスプリッタGBに照射された照明光(直線偏光)は、その大部分が透過して1/4波長板と対物レンズ系GAを通って回転ドラムDR又の外周面又は基板Pに円偏光となって投射される。回転ドラムDRの外周面又は基板Pで反射した照明光の反射光(円偏光)は、対物レンズ系GAを通った後、ビームスプリッタユニットGBUで大部分が撮像系GDに向かって反射され、撮像系GDが備える光電変換素子に入射する。光電変換素子は、照明光の反射光を撮像する。なお、照明系GCからの照明光の波長帯域幅を数十nm以上に広くする場合は、偏光ビームスプリッタGBを振幅分割型のビームスプリッタ(ハーフミラー)に変えてもよい。
アライメント顕微鏡AM1(アライメント顕微鏡AM2も同様)は、図8-2に示すように、画像処理回路OCを有している。画像処理回路OCは、検出領域Vw1~Vw3内の各々に回転ドラムDRの基準パターン又は基板Pのアライメントマークが現れたときに、撮像系GDから出力される画像情報(撮像信号の波形データ)と回転ドラムDRの回転角度位置を求めるエンコーダヘッドEN3(後述)からの位置情報(又は角度情報)とに基づいて、回転ドラムDRの基準パターン又は基板Pのアライメントマークの位置情報を、各検出領域Vw1~Vw3毎に個別に求める。画像処理回路OCの出力は、図1に示す制御装置16が取得する。画像処理回路OCは、制御装置16内に備えられていてもよいし、制御装置16が画像処理回路OCの機能を実現してもよい。
アライメント顕微鏡AM1は、Y方向(基板Pの幅方向)に所定間隔で1列に並んで複数(本実施形態では3個)設けられる。同様に、アライメント顕微鏡AM2は、Y方向(基板Pの幅方向)に所定間隔で1列に並んで複数(本実施形態では3個)設けられる。したがって本実施形態では、計6個のアライメント顕微鏡AM1、AM2が設けられるが、その数は6個に限定されない。
図3では、便宜上、6個のアライメント顕微鏡AM1、AM2の各対物レンズ系GAのうち、3個のアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1~GA3の配置を示す。3つのアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1~GA3による基板P(又は回転ドラムDRの外周面)上の検出領域Vw1~Vw3は、図3に示すように、回転中心軸AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。図8に示すように、各検出領域Vw1~Vw3の中心を通る各対物レンズ系GA1~GA3の光軸La1~La3は、いずれもXZ面と平行となっている。同様に、3個のアライメント顕微鏡AM2の各対物レンズ系GAによる基板P(又は回転ドラムDRの外周面)上の検出領域Vw4~Vw6は、図3に示すように、回転中心軸AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。図8に示すように、各検出領域Vw4~Vw6の中心を通る各対物レンズ系GAの光軸La4~La6も、いずれもXZ面と平行となっている。そして、検出領域Vw1~Vw3と、検出領域Vw4~Vw6とは、回転ドラムDRの回転方向、すなわち基板Pの搬送方向に所定の間隔で配置される。
アライメント顕微鏡AM1、AM2がアライメントマークを検出する検出領域Vw1~Vw6は、基板P又は回転ドラムDRの表面において、例えば、200μm角程度、すなわち一辺が200μm程度の正方形の範囲に設定される。図8に示すように、3つのアライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GAの各光軸La1~La3は、回転中心軸AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le3と同じ方向に設定される。同様に、3つのアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの各光軸La4~La6は、回転中心軸AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le4と同じ方向に設定される。このとき、アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2によりも回転ドラムDRの回転方向の上流側に配置されていることから、中心面p3と設置方位線Le3とがなす角度は、中心面p3と設置方位線Le4とがなす角度に比較して大きくなっている。
基板Pの表面には、図3に示すように、5つの描画ラインLL1~LL5の各々によって描画される被処理領域A7が、X方向に所定の間隔を空けて配置される。基板P上の被処理領域A7の周囲には、位置合わせのため、基板Pの長尺方向に沿って基板P上、すなわち基板Pの表面に予め形成された複数のアライメントマークKs1~Ks3が設けられる。アライメントマークKs1~Ks3は、例えば十字状に形成されている。アライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板PのアライメントマークKs1~Ks2を検出し、その検出結果に基づいて描画モジュールがパターン描画すべき基板P上の位置が位置合わせされるが、位置合わせはこれに限定されない。例えば、アライメント顕微鏡AM1、AM2によって、基板Pに形成された回路パターン等の一部の形状を検出して、位置合わせを行ってもよい。
図3において、アライメントマークKs1は、被処理領域A7の-Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられ、アライメントマークKs3は、被処理領域A7の+Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられる。さらに、アライメントマークKs2は、X方向に隣り合う2つの被処理領域A7の間に存在する余白領域において、Y方向の中央に設けられる。アライメントマークKs1は、基板Pが搬送されている間に、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA1の検出領域Vw1内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GA4の検出領域Vw4内で、順次捕捉されるように形成される。また、アライメントマークKs3は、基板Pが搬送されている間に、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA3の検出領域Vw3内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GA6の検出領域Vw6内で、順次捕捉されるように形成される。さらに、アライメントマークKs2は、基板Pが搬送されている間に、それぞれ、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA2の検出領域Vw2内及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GA5の検出領域Vw5内で、順次捕捉されるように形成される。
このため、Y方向、すなわち基板Pの幅方向に3台が配列されたアライメント顕微鏡AM1、AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の両側に配置されたアライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pの幅方向の両側に形成されたアライメントマークKs1、Ks3を常時観察又は検出することができる。基板Pの幅方向とは、基板Pの長尺方向と直交する方向である。また、Y方向に3台が配列されたアライメント顕微鏡AM1、AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の中央に配置されたアライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板P上に描画される被処理領域A7同士の間の長尺方向における余白部等に形成されるアライメントマークKs2を常時観察又は検出することができる。
露光装置EXは、いわゆるマルチビーム型の描画装置11を備えているため、複数の描画モジュールUW1~UW5の各描画ラインLL1~LL5によって、基板P上に描画される複数のパターン同士を、Y方向に好適に継ぎ合わせるため、複数の描画モジュールUW1~UW5による継ぎ精度を許容範囲内に抑えるためのキャリブレーションが必要となる。また、複数の描画モジュールUW1~UW5の各描画ラインLL1~LL5に対するアライメント顕微鏡AM1、AM2の検出領域Vw1~Vw6の相対的な位置関係は、ベースライン管理によって精密に求められている必要がある。そのベースライン管理のためにも、キャリブレーションが必要となる。
複数の描画モジュールUW1~UW5による継ぎ精度を確認するためのキャリブレーション及びアライメント顕微鏡AM1、AM2のベースライン管理のためのキャリブレーションでは、基板Pを支持する回転ドラムDRの外周面の少なくとも一部に、基準となるマーク又は基準となるパターンを設ける必要がある。そこで、図9-1に示すように、露光装置EXでは、外周面に基準となるマーク又は基準となるパターンを設けた回転ドラムDRを用いている。
回転ドラムDRは、その外周面の両端側に、後述する回転位置検出機構14の一部となるスケール部GPa、GPbが形成されている。スケール部GPa、GPbは、回転ドラムDRとともに回転中心軸AX2の周りを回転し、かつ回転ドラムDRの回転方向の角度位置に応じた目盛が環状に刻設されている。回転ドラムDRは、スケール部GPa、GPbの内側に、凹状の溝又は凸状のリムによる狭い幅の規制帯CLa、CLbが全周にわたって刻設されている。基板PのY方向の幅は、その2本の規制帯CLa、CLbのY方向の間隔よりも小さく設定され、基板Pは回転ドラムDRの外周面のうち、規制帯CLa、CLbで挟まれた内側の領域に密着して支持される。
回転ドラムDRは、規制帯CLa、CLbで挟まれた外周面に、図9-2に示すように、回転中心軸AX2に対して+45度で傾いた複数の線パターンRL1と、回転中心軸AX2に対して-45度で傾いた複数の線パターンRL2とが、一定のピッチ(周期)Pf1、Pf2で繰り返し刻設された回転ドラムDR側におけるメッシュ状の基準パターン(ドラム側基準パターン)RMPが設けられる。一例として、線パターンRL1及び線パターンRL2の線幅は数μm~20μm程度、ピッチ(周期)Pf1、Pf2は数十μm~数百μm程度に設定される。
回転ドラムDRは、図9-2に示すように、線パターンRL1と線パターンRL2とが交差する部分の一部が除かれている。この部分には、ドラム側基準パターンとして、十字形状のドラム側基準マークRLXが複数設けられている。十字形状のドラム側基準マークRLXは、回転中心軸AX2と平行な第1線パターンRLXyと、第1線パターンRLXyと交差(本実施形態では直交)する第2線パターンRLXxとを備える。回転中心軸AX2と平行なY方向に隣り合う2つのドラム側基準マークRLXの間隔、すなわち、第1線パターンRLXx同士の間隔は、ΔYmである。
ドラム側基準パターンRMPは、基板Pと回転ドラムDRの外周面とが接触する部分において、摩擦力及び基板Pの張力等の変化が生じないように、回転ドラムDRの全面が均一な斜めパターン(斜格子状パターン)としている。なお、線パターンRL1、RL2は、必ずしも斜め45度である必要はなく、線パターンRL1をY軸と平行にし、線パターンRL2をX軸と平行にした縦横のメッシュ状パターンとしてもよい。さらに、線パターンRL1、RL2を90度で交差させる必要はなく、隣接する2本の線パターンRL1と、隣接する2本の線パターンRL2とで囲まれた矩形領域が、正方形(又は長方形)以外の菱形になるような角度で、線パターンRL1、RL2を交差させてもよい。
次に、回転ドラムDR側における基準パターンとしてのドラム側基準マークの変形例を説明する。図9-3に示す回転ドラムDRaは、外周面の一部にドラム側基準パターンRMPとドラム側基準マークRLXaとを有する。ドラム側基準マークRLXaは、回転ドラムDRの表面で回転中心軸AX2と平行な方向に延在する第1直線パターンLyと、第1直線パターンLyと交差(本実施形態では直交)する第2直線パターンLxとの交差した部分である。ドラム側基準マークRLXaは、回転ドラムRDの周方向に隣接する2つのドラム側基準パターンRMP、RMPの間に設けられる。回転ドラムDRaは、ドラム側基準パターンRMP及びドラム側基準マークRLXaが設けられていない部分NRMPを有している。
回転ドラムDRaは、スケール部GPaと規制帯CLaとの間及びスケール部GPbと規制帯CLbとの間に、ドラム側基準マークRLXaとは異なる回転ドラムDR側の基準パターンとして、基準マークTPを備えている。図1に示す制御装置16は、ドラム側基準パターンRMP、ドラム側基準マークRLXa及び基準マークTPを利用して、キャリブレーションを実行することもできる。
図9-4に示す回転ドラムDRbのように、回転ドラムDRbの外周面の一部にスケール部GPaを形成する代わりに、外周面に格子状のスケール部GPabを形成した円板(スケール円盤)DENを回転ドラムDRbの軸AX2方向の端部側の回転軸に一体に取り付けてもよい。図9-4に示す例では、円板DENを回転ドラムDRbの回転軸の片側に取り付けた状態を示すが、回転ドラムDRbの反対側の端部にも、同様の円板DENを設けても良い。円板DENの直径と回転ドラムDRbの直径とはなるべく揃えるのが好ましいが、直径同士の寸法差の相対範囲は±10%以内に揃えればよく、さらに好ましくは±4%以内に揃えるのがよい。この相対範囲の絶対値は、回転ドラムDRの直径が20~40cm程度の場合であり、回転ドラムDRの直径が40cm以上になる場合は、相対範囲の絶対値は小さくなる。
次に、図3、図4及び図8を参照して、回転位置検出機構14について説明する。図8に示すように、回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの回転位置を光学的に検出するものであり、例えばロータリーエンコーダ等を用いたエンコーダシステムが適用されている。本実施形態において、回転位置検出機構14には、インクリメンタル方式のエンコーダシステムが用いられるが、アブソリュート方式のエンコーダシステムであってもよい。回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの両端部に設けられるスケール部GPa、GPb(又は図9-4のGPab)と、スケール部GPa、GPb(又はGPab)の各々と対向する複数のエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4とを有する。図4及び図8では、スケール部GPaに対向した4つのエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4だけが示されているが、スケール部GPbにも同様のエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4が対向して配置される。
スケール部GPa、GPbは、回転ドラムDRの外周面の周方向全体にわたって環状にそれぞれ形成されている。スケール部GPa、GPbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば20μm)で凹状又は凸状の格子線が刻設された回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして用いられる。本実施形態の場合、スケール部GPa、GPbの格子線(目盛)と、図9-1~図9-3に示したドラム側基準パターンRMP、ドラム側基準マークRLX、ドラム側基準マークRLXa及び基準マークTPとは、回転ドラムDR(又はDRa、DRb)の表面を加工する装置(パターン刻設機等)によって同時に形成される為、ミクロンオーダーで一義的な位置関係になっている。なお、スケール部GPa,GPb(又はGPab)の周方向の1ヶ所には、原点マークが併設されており、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4の各々は、その原点マークを検出して原点信号を出力する機能を備える。したがって、その原点マークに対しても、基準パターンRMP、ドラム側基準マークRLX、RLXa、TPは、周方向に関して一義的な位置関係(既知の角度位置関係)になっている。
基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部GPa、GPbを避けた内側、つまり、規制帯CLa、CLbの内側に巻き付けられる。厳密な配置関係を必要とする場合、スケール部GPa、GPbの外周面と、回転ドラムDRに巻き付いた基板Pの部分の外周面とが同一面(回転中心軸AX2から同一半径)になるように設定する。そのためには、スケール部GPa、GPbの外周面を、回転ドラムDRの基板巻付け用の外周面に対して、径方向に基板Pの厚み分だけ高くしておけばよい。このため、回転ドラムDRに形成されるスケール部GPa、GPbの外周面を、基板Pの外周面と略同一の半径に設定することができる。その結果、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4は、回転ドラムDRに巻き付いた基板P上の描画面と同じ径方向位置でスケール部GPa、GPbを検出することができ、計測位置と処理位置とが回転系の径方向に異なることで生ずるアッベの誤差を小さくすることができる。
スケール計測部としてのエンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4は、回転中心軸AX2から見てスケール部GPa、GPbの周囲にそれぞれ配置されており、回転ドラムDRの周方向において異なる位置に配置されている。このように、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4は、スケール部GPa、GPb上の所定の計測領域でスケール部GPaの目盛を読み取るように配置される。エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4は、制御装置16に接続されている。エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4は、スケール部GPa、GPbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、スケール部GPa、GPbの周方向の位置変化に応じた検出信号(例えば、90度の位相差を持った2相信号)を、回転ドラムDRの回転方向の位置に関する計測情報として制御装置16に出力する。制御装置16は、その検出信号を不図示のカウンター回路で内挿補間してデジタル処理することにより、回転ドラムDRの角度変化、すなわち、その外周面の周方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。制御装置16は、回転ドラムDRの角度変化から、基板Pの搬送速度も計測することができる。本実施形態において、演算部としての制御装置16は、回転ドラムDRの回転にともなって、回転ドラムDRの外周面の特定位置に設けられた基準パターン又は基準マークがアライメント顕微鏡AM1、AM2の検出領域内の互いに異なる少なくとも2ヶ所の各々にきたときに、アライメント顕微鏡AM1、AM2によって検出される基準パターン又は基準マークの少なくとも2つの位置情報に基づいて、アライメント顕微鏡AM1、AM2と回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差を求める。
図4及び図8に示すように、エンコーダヘッドEN1は、設置方位線Le1上に配置される。設置方位線Le1は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN1による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb、GPab)上への投射領域(読取位置)と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le1は、XZ面内において、描画ラインLL1、LL3、LL5と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN1の読取位置と回転中心軸AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL1、LL3、LL5と回転中心軸AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(回転中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。
同様に、図4及び図8に示すように、エンコーダヘッドEN2は、設置方位線Le2上に配置される。設置方位線Le2は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN2による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le2は、XZ面内において、描画ラインLL2、LL4と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN2の読取位置と回転中心軸AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL2、LL4と回転中心軸AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
また、図4及び図8に示すように、エンコーダヘッドEN3は、設置方位線Le3上に配置される。設置方位線Le3は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN3による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb、GPab)上への投射領域(計測領域)と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le3は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM1による基板Pの検出領域Vw1~Vw3と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN3の読取位置と回転中心軸AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1~Vw3と回転中心軸AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(回転中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。このような構造により、回転中心軸AX2が延びる方向から見た場合、スケール部GPa、GPb(又はGPab)上におけるエンコーダヘッドEN3の計測領域とアライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1~Vw3とが回転ドラムDRの周方向に関して同じ位置となる。
同様に、図4及び図8に示すように、エンコーダヘッドEN4は、設置方位線Le4上に配置される。設置方位線Le4は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN4による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb、GPab)上への投射領域(計測領域)と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le4は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM2による基板Pの検出領域Vw4~Vw6と、回転中心軸AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN3の読取位置と回転中心軸AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4~Vw6と回転中心軸AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(回転中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。このような構造により、回転中心軸AX2が延びる方向から見た場合、スケール部GPa、GPb(又はGPab)上におけるエンコーダヘッドEN4の計測領域とアライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4~Vw6とが回転ドラムDRの周方向に関して同じ位置となる。
エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4の設置方位(回転中心軸AX2を中心としたXZ面内での角度方向)を設置方位線Le1、Le2、Le3、Le4で表す場合、図4、図8-2に示すように、設置方位線Le1、Le2が中心面p3に対して角度±th°になるように、複数の描画モジュールUW1~UW5及びエンコーダヘッドEN1、EN2が配置される。
制御装置16は、エンコーダヘッドEN1、EN2と、カウンタ回路によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa、GPbの回転角度位置、すなわち回転ドラムDRの外周面の周方向における移動位置及び移動量の少なくとも一方と、に基づいて、奇数番及び偶数番の描画モジュールUW1~UW5による描画開始位置を制御する。つまり、制御装置16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンのCAD情報に基づいて、変調器81をON/OFF変調するが、変調器81による1走査分のCAD情報のON/OFF変調の開始タイミングを、検出した回転角度位置に基づいて決定することで、基板Pの光感応層の表面にパターンを精度よく描画することができる。
制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2により基板P上のアライメントマークKs1~Ks5が検出されたときの、エンコーダヘッドEN3、EN4によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa、GPbの回転角度位置を記憶することにより、基板P上のアライメントマークKs1~Ks5の位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。同様に、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2により回転ドラムDR上のドラム側基準パターンRMP、又はドラム側基準マークRLX、RLXa等が検出されたときの、エンコーダヘッドEN3、EN4によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa、GPbの回転角度位置を記憶することにより、回転ドラムDR上のドラム側基準パターンRMP、又はドラム側基準マークRLX、RLXa等の位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。このように、アライメント顕微鏡AM1、AM2は、検出領域Vw1~Vw6内で、基準パターン又はマークをサンプリングした瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置(又は周方向位置)を精密に計測することができる。そして、露光装置EXでは、この計測結果に基づいて、基板Pと基板Pの表面に描画される所定のパターンとの位置合わせ(アライメント)をしたり、回転ドラムDRと描画装置11の各描画モジュールUW1~UW5の走査線LL1~LL5との位置関係をキャリブレーションしたりする。
図10-1から図10-3は、回転ドラムDRの中心軸AX2方向(Y方向)の横ずれ量を検出する横ずれ検出部を示す図である。横ずれ検出部は、回転ドラムDRの端面DRTに対向するように配置された2つの変位センサSD1、SD2を含む。図10-1、10-2に示すように、回転ドラムDRは、端面DRTに輪帯状に形成された基準平坦面PPBを有している。基準平坦面PPBは、回転中心軸AX2に対して正確に90°になるように加工されているが、加工機(旋盤や研磨機)の精度によって、実際には90°に対して±α°の傾き誤差を持って加工されているものとする。図9-4のように、回転ドラムDRbの端部に円板(スケール円盤)DENを取り付ける構成の場合、基準平坦面PPBは、円板(スケール円盤)DENの側端面に形成してもよい。この場合、図10-2に示した傾き誤差±α°には、円板(スケール円盤)DENの取付け誤差による傾き成分も含まれる。
変位センサSD1、SD2は、回転中心軸AX2から回転ドラムDRの径方向に一定量変位した基準平坦面PPB上の計測位置において、回転ドラムDRの横ずれ(Y方向変位)を非接触で検出する。変位センサSD1、SD2の種類は限定されないが、例えば、レーザ距離センサ又は静電容量型ギャップセンサ等を用いることができる。本実施形態において、2台の変位センサSD1、SD2が回転ドラムDRの横ずれを検出するが、その数は限定されず、1台でも3台以上でもよい。図10-2に示すように、変位センサSD1、SD2は、回転中心軸AX2を挟んで対称的(軸対称)に配置されていてもよい。すなわち、2個の変位センサSD1、SD2が、回転中心軸AX2の回りに略180°の間隔で配置されていてもよい。図10-3に示すように、3個の変位センサSD1、SD2、SD3が、回転中心軸AX2の回りに略120°の間隔で配置されてもよい。変位センサは単数でもよい。変位センサを複数用いることにより、横ずれの検出精度が向上し、かつ基準平坦面PPBの傾きを簡易に求めることもできる。次に、アライメント顕微鏡の誤差の検出について説明する。
(アライメント顕微鏡の誤差の検出について)
本実施形態において、露光装置EX、より具体的には制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2側のエンコーダヘッドEN3、EN4及び描画装置11側のエンコーダヘッドEN1、EN2が検出した角度データ(周方向の位置データでもある)と、アライメント顕微鏡AM1、AM2が検出したアライメントマークKs1、Ks2、Ks3の位置情報(座標)とを用いて、基板Pの絶対位置(角度)座標を管理する。制御装置16は、基板Pの絶対位置(角度)を描画装置11にフィードバックすることによって、基板P上の指定された領域内に高精度に位置合せされた状態でパターンを描画(露光)する。
図11は、アライメント顕微鏡の誤差を説明するための図である。図12-1から図12-3は、アライメント顕微鏡の検出領域の拡大像を示す図である。アライメント顕微鏡AMが撮影し、画像処理回路OCが画像処理した画像データを実測値に換算する際に、アライメント顕微鏡AMの取付誤差等に起因する倍率の誤差又は回転誤差が含まれる可能性がある。アライメント顕微鏡AMが回転ドラムDRに対して正しい位置に取り付けられていると、アライメント顕微鏡AMの撮像系GDから出力される画像情報から得られる画像、すなわち、アライメント顕微鏡AMの検出領域Vwの拡大像(適宜、検出画像という)Vwcは、図12-1に示すようになる。すなわち、アライメント顕微鏡AMが検出領域Vw内でとらえたドラム側基準マークRLXの第1線パターンRLXyは、検出画像Vwcのxy座標系のy軸と平行になり、第2線パターンRLXxは、検出画像Vwcのxy座標系のx軸と平行になる。
例えば、アライメント顕微鏡AMが本来の取付位置に対して設置方位線Leaの周りに回転して取り付けられると(図11の矢印RQで示す方向)、回転ドラムDRに対して回転誤差が生じる。このときのドラム側基準マークRLXの検出画像Vwcは、図12-2に示すように、設置方位線Leaの周りに回転したアライメント顕微鏡AMの角度(回転角度)をγとすると、ドラム側基準マークRLXの第1線パターンRLXx及び第2線パターンRLXxは、xy座標に対して回転角度γだけ傾斜する。
アライメント顕微鏡AMが本来の取付位置に対して設置方位線Leaの方向にずれて取り付けられた場合(図11の矢印FQで示す方向)、アライメント顕微鏡AMの対物レンズ系GAを通して検出される像に僅かな倍率誤差が生じ得る。このときのドラム側基準マークRLXの検出画像Vwcは、図12-3に示すように、ドラム側基準マークRLXの第1線パターンRLXx及び第2線パターンRLXxは、本来の太さ(図12-1に示す太さ)に対して太くなる。
本実施形態では、図1に示す制御装置16が、描画装置11の描画中に回転する回転ドラムDRの周回性を利用して、回転ドラムDRの表面に刻まれたドラム側基準パターンRMP又はドラム側基準マークRLX等を繰り返し計測することによってアライメント顕微鏡AMの回転誤差等の誤差を求める。そして、制御装置16は、得られた誤差を用いてアライメント顕微鏡AMをキャリブレーションした状態で基板P上のマークKs1、Ks2、Ks3を検出して、描画装置11により基板Pに所定のパターンを描画する。次に、アライメント顕微鏡AMの取付誤差、すなわち、アライメント顕微鏡AMと回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差を求める手法を説明する。
図13は、基板上でのアライメント顕微鏡の検出領域を示す図である。図14は、アライメント顕微鏡がドラム側基準パターンを検出する位置を説明するための図である。図15-1から図15-3は、アライメント顕微鏡の取付誤差を求める際におけるアライメント顕微鏡の検出画像の一例を示す図である。本実施形態において、制御装置16は、回転ドラムDRの回転にともなって、回転ドラムDRの表面に設けられたドラム側基準パターンRMP又はドラム側基準マークRLXがアライメント顕微鏡AM1、AM2の検出領域Vw1~Vw6内の互いに異なる少なくとも2ヶ所の各々にきたときに、アライメント顕微鏡AM1、AM2によって検出されるドラム側基準パターンRMP又はドラム側基準マークRLXの少なくとも2つの位置情報に基づいて、アライメント顕微鏡AM1、AM2と回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差(以下、適宜取付誤差という)を求める。次の説明においては、基準パターンとして、ドラム側基準マークRLXを用いるが、ドラム側基準パターンRMPを用いてもよい。以下の説明では、アライメント顕微鏡AM1と回転ドラムDRとの取付誤差、すなわち相対的な位置関係の誤差を計測する例を説明するが、アライメント顕微鏡AM2の誤差計測もアライメント顕微鏡AM1と同様である。
図13に示すように、アライメント顕微鏡AM1が設けられている位置は、角度θaとなる。角度θaは、回転中心軸AX2を中心とした中心面p3からの角度である。前述したように、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との間の角度はβなので、アライメント顕微鏡AM1が設けられている位置を、回転中心軸AX2を中心とした角度で表すとθb=θa+βとなる。アライメント顕微鏡AM1は、図14に示すように、回転ドラムDRの表面における検出領域Vw1内の少なくとも2ヶ所(本実施形態では3ヶ所)で、回転ドラムDRの表面に設けられたドラム側基準マークRLXを撮像して、位置情報を検出する。このとき、アライメント顕微鏡AM1の光軸La1、La2、La3と平行な設置方位線Le3を有するエンコーダヘッドEN3(図8-1参照)が検出する回転ドラムDRの角度によって、ドラム側基準マークRLXの位置が特定される。
本例において、アライメント顕微鏡AM1は、ドラム側基準マークRLXを、角度θ1の位置と、角度θ1+Δθの位置と、角度θ+2×Δθの位置との3ヶ所で検出する。すなわち、アライメント顕微鏡AM1は、角度Δθ毎にドラム側基準マークRLXを検出(撮像)する。より具体的には、アライメント顕微鏡AM1は、回転ドラムDRの一方向への回転による周回性(繰返し性)を利用して、回転ドラムDRが1周する毎にドラム側基準マークRLXの像の検出領域内での位置が、所定角度+Δθ(又は-Δθ)ずつずれるように、ドラム側基準マークRLXを検出する。このように、アライメント顕微鏡AM1が最初に基準マークRLXを検出領域Vw1で検出したときの回転ドラムDRの角度位置θ1(第1角度位置)を基準に、そこから回転ドラムDRが360°+Δθ°回転した角度位置θ1+Δθ(第2角度位置)、さらに、回転ドラムDRが360°+Δθ°回転した角度位置θ1+2・Δθ(第3角度位置)の各々で、ドラム側基準マークRLXを検出し、撮像する。図14から明らかなように、第1角度位置(θ1+2・Δθ)から第3角度位置(θ1+2・Δθ)までの回転ドラムDRの外周面上での距離が、アライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1の周方向の範囲よりも小さくなるように、角度Δθが設定される。アライメント顕微鏡AM1に接続される画像処理回路OC(図8-2)は、それぞれの角度位置で撮像系GDによって撮像された画像情報に基づいて、ドラム側基準マークRLXの位置情報を求め、制御装置16に出力する。
ところで、制御装置16は、回転ドラムDRが1回転する度にエンコーダヘッドEN3から出力される原点信号に応答して、エンコーダヘッドEN3からの計測信号(2相信号)を計数するカウンタ回路をゼロリセットしている。回転ドラムDR上の基準マークRLXと、スケール部GPa、GPbに併設された原点マークとの周方向の位置関係は既知である。そこで、回転ドラムDRが原点マーク検出時から角度(θ1+Δθ)だけ回転した位置で基準マークRLXの中心とアライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1の中心とが周方向に関して一致するものとすると、エンコーダヘッドEN3によって計測される角度位置(カウンタ回路の計数値)が角度位置θ1になった時点、角度位置θ1+Δθになった時点及び角度位置θ1+2Δθになった時点の各々でトリガ信号を生成し、アライメント顕微鏡AM1の撮像部で撮像される画像情報をサンプリングすればよい。
前述したように、回転ドラムDRの周回性を利用して、回転ドラムDRが約1周する毎にアライメント顕微鏡AM1が回転ドラムDRの表面における検出領域Vw1内の異なる位置で同一のドラム側基準マークRLXを撮像する。このように、アライメント顕微鏡AM1は、同一のドラム側基準マークRLXが回転ドラムDRの周回毎に検出領域Vw1内に現れるので、高速の撮像素子による連続撮像及び回転ドラムDRを極低速回転させての撮像は不要である。また、図1に示す制御装置16は、オンラインで取付誤差を求めることができ、自動的に取付誤差に関するデータを蓄積・更新することも可能になる。
図15-1は、角度θ1の位置における検出画像Vwcを示し、図15-2は、角度θ1+Δθの位置における検出画像Vwcを示し、図15-3は、角度θ+2×Δθの位置における検出画像Vwcを示す。この例では、回転ドラムDRが1周する毎に、ドラム側基準マークRLXが検出される位置は、角度θ1、角度θ1+Δθ及び角度θ1+2×Δθの順に変化する。このように、アライメント顕微鏡AM1は、初回に撮像したドラム側基準マークRLXを回転ドラムDRが約1周する毎に、回転ドラムDRの表面における検出領域Vw1内の異なる位置で撮像する。したがって、アライメント顕微鏡AM1によって撮像される3個の検出画像Vwcは、検出画像Vwc中のドラム側基準マークRLXのxy座標におけるx方向の位置が変化する。検出領域Vw1内においてドラム側基準マークRLXが撮像される位置を異ならせる量は、前述したΔθの大きさによって設定及び変更できる。Δθは、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GAによる拡大の倍率又は基板Pの搬送速度等に基づいて決定される。
アライメント顕微鏡AM1が本来の取付位置に対して、設置方位線Le3の周りを回転していなければ、回転ドラムDRの回転にともなってドラム側基準マークRLXのx方向の位置のみが変化し、y方向の位置は変化しない。図15-1から図15-3に示す例では、回転ドラムDRの回転にともなってドラム側基準マークRLXのy方向の位置も変化している。したがって、図15-1から図15-3に示す例において、アライメント顕微鏡AM1は、本来の取付位置に対して設置方位線Le3の周りに回転して(傾いて)取り付けられている。図15-1から図15-3に示す例では、3つの検出画像Vwc内での基準マークRLXのy方向の位置変化を誇張して表したが、実際に起こり得るアライメント顕微鏡AM1の回転誤差はもっと小さく、±1°以内である。
しかしながら、アライメント顕微鏡AM1の回転誤差Δγが±0.6°の場合でも、検出領域Vw1のX方向の大きさが200μmのとき、検出領域Vw1内の+X方向の端で検出される基準マークRLXの中心位置と、検出領域Vw1内の-X方向の端で検出される基準マークRLXの中心位置とのY方向のずれ量ΔYγは、ΔYγ=200・tan(Δγ)より、最大で2μm程度ずれる。最小線幅が10μm~15μmのパターンを描画する装置のアライメントセンサーとして、その程度のずれ量ΔYγは無視できない。
(回転誤差を求める手法の一例)
図16-1は、アライメント顕微鏡AM1の回転誤差を求める手法を説明するための図である。図16中x軸、y軸は、検出画像Vwcのxy座標系を示すそれぞれの座標軸であり、X軸、Y軸は、図1に示す露光装置EXのXY座標系を示すそれぞれの座標軸である。回転誤差とは、アライメント顕微鏡AM1と回転ドラムDRとの間に生じた、設置方位線Le3を中心とした回転方向における取付誤差であり、図16-1はその誤差を誇張して表している。次において、図1に示す制御装置16の処理を画像処理回路OCが行ってもよく、画像処理回路OCの処理を制御装置16が行ってもよい。すべての処理を制御装置16又は画像処理回路OCのいずれか一方が行ってもよい。
アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GAによる拡大の倍率は、検出画像Vwcのxy座標系のx軸方向における倍率係数aと、y軸方向における倍率係数bとがある。本実施形態では、a=bとする。倍率係数a、bとは、撮像系GD内のCCD若しくはCMOSの撮像素子の1画素(ピクセル)のサイズ又は画素ピッチが、実際の基板P上又は回転ドラムDRの表面でどれくらいの寸法に対応しているかを表す換算値である。例えば、基板P上又は回転ドラムDRの外周面上の検出領域Vw1を200μm×200μmとし、その領域を撮像素子の2000×2000画素で撮像する場合、倍率係数a、bは0.1μmとなる。
まず、アライメント顕微鏡AM1が正規の取付位置に対して設置方位線Le3の周りをどの程度回転して取り付けられているかを示す回転角度Δγについて求める。例えば、図8-2に示す画像処理回路OCは、回転ドラムDRの表面における検出領域Vw1内の異なる位置で撮像した同一のドラム側基準マークRLXの位置情報として、それぞれの位置におけるドラム側基準マークRLXの検出画像Vwc内での中心位置座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を求める。倍率係数a、bはa=bなので、式(1)が成立する。例えば、Δx=x2-x1、Δy=y2-y1である。
tan(Δγ)=Δy/Δx・・・(1)
例えば、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1が同一のドラム側基準マークRLXを複数回撮像することにより画像処理回路OCが求めた複数の位置座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)の近似直線LVを求める。近似直線LVの傾きが、Δx/Δyに相当する。したがって、回転角度γは式(2)で求めることができる。次に、倍率係数a(又は倍率)の誤差を求める手法を説明する。次に、倍率係数a(又は倍率)の誤差を求める手法を説明する。
Δγ=tan-1(Δy/Δx)・・・(2)
(倍率係数又は倍率の誤差を求める手法の一例)
設置方位線Le3の方向において、アライメント顕微鏡AM1の取付位置に誤差が生じ、アライメント顕微鏡AM1と回転ドラムDRとの距離が適切でない場合には、アライメント顕微鏡AMの対物レンズ系GA等による拡大の倍率係数又は倍率に誤差が生じる可能性がある。回転ドラムDRがΔθ回転したときの同一のドラム側基準マークRLXの移動量(実移動量)をΔLとすると、式(3)、式(4)が成立する。Δx、Δyは、検出画像Vwc内における値であり、例えば、アライメント顕微鏡AM1が有する撮像系GDの撮像素子の画素数に相当する。実移動量ΔLは、エンコーダヘッドEN3の検出値(角度)に基づき、例えば、式(5)のように求めることができる。rは、回転ドラムDRの半径である。制御装置16は、式(3)及び式(5)又は式(4)及び式(5)から、アライメント顕微鏡AMの倍率係数aを求め、得られた倍率係数aからアライメント顕微鏡AMの倍率を求めることができる。
a=ΔL×cos(Δγ)/Δx・・・(3)
b=ΔL×sin(Δγ)/Δy・・・(4)
ΔL=r×Δθ(rad)=2×π×r×Δθ(°)/360(°)・・・(5)
回転誤差及び倍率係数a又は倍率を求めるにあたり、制御装置16は、図10-1、図10-1に示す変位センサSD1、SD2又は図10-3に示す変位センサSD1、SD2、SD3が検出した回転ドラムDRの横ずれ量も用いて、アライメント顕微鏡AM1と回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差を求めてもよい。このようにすることで、回転ドラムDRの横ずれ誤差を除去したアライメント顕微鏡AM1の回転誤差及び倍率係数a又は倍率の計測精度が向上するので、露光装置EXの描画装置11が基板Pに所定のパターンを描画する際におけるアライメントの精度が向上する。
図16-2は、横ずれ量を考慮した検出画像内における位置の補正を説明するための図である。変位センサSD1、SD2等は、回転ドラムDRの横ずれ量、すなわち、露光装置EXのXY座標系におけるY軸方向の位置ずれを検出する。回転ドラムDRの横ずれ量をYeとすると、図16-1に示す検出画像Vwcのxy座標系においては、横ずれ量をYeに起因して、x軸の方向にxe、y軸方向にyeの誤差が生じていることになる。すなわち、図16-2に示すように、アライメント顕微鏡AM1によって検出された位置座標(xp、yp)と、真の位置座標(x、y)との間には、誤差xe、yeが存在している。横ずれ量Ye及び式(2)を用いて求めた回転角度Δγを用いると、誤差xeは式(6)、誤差yeは、式(7)に示すようになる。制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1が検出画像Vwc内で同一のドラム側基準マークRLXをΔθ毎に検出するそれぞれの位置で、変位センサSD1、SD2等から横ずれ量Yeを取得する。ドラム側基準マークRLXを検出する位置は、エンコーダヘッドEN3の計測情報から求めることができる。
xe=Ye×sin(Δγ)・・・(6)
ye=Ye×cos(Δγ)・・・(7)
制御装置16は、式(6)、式(7)によって得られた誤差xe、yeを用いて、図16-1に示す、検出画像Vwc内のxy座標におけるドラム側基準マークRLXの位置座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を補正する。角度位置θ1での横ずれ量をYe1、角度位置θ1+Δθでの横ずれ量をYe2、角度位置θ1+2×Δθでの横ずれ量をYe3とすると、それぞれの位置座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)の誤差(xe1、ye1)、(xe2、ye2)、(xe3、ye3)は、横ずれ量Ye1、Ye2、Ye3及び式(6)、式(7)を用いて求めることができる。制御装置16は、それぞれの位置座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を、対応する誤差(xe1、ye1)、(xe2、ye2)、(xe3、ye3)を用いて補正する。補正後の位置座標は、(xc1、yc1)、(xc2、yc2)、(xc3、yc3)であり、例えば、xc1=x1-xe1、yc1=y1-ye1となる。
制御装置16は、補正後の位置座標(xc1、yc1)、(xc2、yc2)、(xc3、yc3)を用いて式(2)のΔx、Δyを再計算し、回転角度Δγを再計算する。制御装置16は、再計算したΔγを用いて、誤差xe、yeを再計算し、再計算した誤差xe、yeを用いて直近に求めた補正後の位置座標(xc1、yc1)、(xc2、yc2)、(xc3、yc3)を補正する。制御装置16は、誤差xe、yeが収束するまで回転角度Δγ及び誤差xe、yeの再計算を繰り返す。制御装置16は、例えば、誤差xe、yeが所定の値以下になった場合、再計算前後における回転角度Δγの差分若しくは補正前後における位置座標(xc1、yc1)等の差分が所定の値以下になった場合又は再計算後の回転角度Δγ若しくは補正後の位置座標(xc1、yc1)等が一定になった場合等に、誤差xe、yeが収束したと判定する。制御装置16は、誤差xe、yeが収束したときの回転角度Δγを、アライメント顕微鏡AM1の回転誤差及び倍率係数等として記憶する。
本実施形態において、アライメント顕微鏡AM1は、回転ドラムDRの回転にともなって、ドラム側基準マークRLXがアライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1~Vw3内の互いに異なる少なくとも2ヶ所の各々にきたときに、ドラム側基準マークRLXの少なくとも2つの位置情報を検出する。制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1が検出した、ドラム側基準マークRLXの少なくとも2つの位置情報に基づいて、アライメント顕微鏡AM1と回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差を求める。
このように、露光装置EXは、回転ドラムDRの周回性を利用してアライメント顕微鏡AM1の取付誤差を求めるので、回転ドラムDRの回転中であっても取付誤差を求めることができる。このため、回転ドラムDRの回転中、例えば、回転ドラムDRが基板Pを搬送して描画装置11が基板Pに描画(露光)をしているときでも、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1の取付誤差を求め、アライメント顕微鏡AM1が検出した位置情報を補正することができる。その場合、アライメント顕微鏡AM1が、基板Pを介して回転ドラムDR上の基準マークRLXを検出できるように、基板Pの長尺方向の一定範囲に渡って、デバイス用のパターンを形成しない余白部とするのがよい。その結果、露光装置EXは、例えば、描画中にアライメント顕微鏡AM1の位置ずれが発生した場合でも、取付誤差を求めて描画装置11の描画位置を直ちに補正することができる。その結果、露光装置EXは、描画の精度低下を抑制することができる。また、制御装置16は、描画装置11の描画中にアライメント顕微鏡AM1の取付誤差を求めることができるので、取付誤差を求めるために露光装置EXを停止させる必要はない。その結果、生産性が向上する。
このように、露光装置EXは、回転ドラムDRの回転位置及び回転軸方向の少なくとも一方の変動を高精度に計測するエンコーダ又は変位センサからの計測値を用いつつ、回転ドラムDRの回転による周回性を利用してアライメント顕微鏡AM1(パターン検出部)によって同一の基準パターンを複数回検出した結果を用いる。その結果、露光装置EXは、回転ドラムDRとアライメント顕微鏡AM1との相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方の変動を高精度に求めることができる。
(アライメント顕微鏡が複数の場合)
図17は、基板の搬送方向に向かってアライメント顕微鏡が2列配列された場合にそれぞれのアライメント顕微鏡の取付誤差を求める方法を説明するための図である。次の説明において、回転ドラムDRの回転中心軸AX2と平行な方向に配列された複数のアライメント顕微鏡AM1a、AM1b、AM1cを区別しないときにはアライメント顕微鏡AM1という。同様に、回転ドラムDRの回転中心軸AX2と平行な方向に配列された複数のアライメント顕微鏡AM2a、AM2b、AM2cを区別しないときにはアライメント顕微鏡AM2という。
図1に示す制御装置16は、回転ドラムDRの回転にともなって、順次、アライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1、Vw2、Vw3内とアライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4、Vw5、Vw6内との各々で検出されるドラム側基準マークRLXの各位置情報に基づいて、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との相対的な位置関係を求める。アライメント顕微鏡AM1の取付誤差及びアライメント顕微鏡AM2の取付誤差は、上述したように、回転ドラムDRの周回性を利用して求められる。例えば、基板Pの搬送方向、すなわち回転ドラムDRの回転方向において同じ位置に配置されるアライメント顕微鏡AM1aとアライメント顕微鏡AM2aとは、それぞれの検出画像Vwc1、Vwc4内に現れた同一のドラム側基準マークRLX1を用いて取付誤差が求められる。アライメント顕微鏡AM1bとアライメント顕微鏡AM2bとは、それぞれの検出画像Vwc2、Vwc4内に現れた同一のドラム側基準マークRLX2を用いて取付誤差が求められ、アライメント顕微鏡AM1cとアライメント顕微鏡AM2cとは、それぞれの検出画像Vwc3、Vwc6内に現れた同一のドラム側基準マークRLX3を用いて取付誤差が求められる。検出画像Vwc1内に現れるドラム側基準マークと検出画像Vwc4内に現れるドラム側基準マークとは、取付誤差により、一方の検出画像内において同一のドラム側基準マークが異なる位置で検出される。本実施形態のように、それぞれの検出画像Vwc1、Vwc4内に現れるドラム側基準マークRLX1は同一のものなので、ドラム側基準マークの位置が異なることによる誤差を排除することができる。
アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2とは、回転ドラムDRの回転中心軸AX2を中心として所定角度β(°)離れて設けられている。それぞれのアライメント顕微鏡AM1、AM2と回転ドラムDRとの相対的な位置関係の誤差が存在しない場合、同一のドラム側基準マークRLX1が所定角度βだけ進むと、アライメント顕微鏡AM1aの検出画像Vwc1とアライメント顕微鏡AM2aの検出画像Vwc4とには、同一の位置に同一のドラム側基準マークRLX1が現れる。基板Pの搬送方向においてアライメント顕微鏡AM1aとアライメント顕微鏡AM2aとが本来の位置からずれて取り付けられると、両者の間隔が変わることになる。その結果、回転ドラムDRが所定角度β回転したとき、同一のドラム側基準マークRLX1は、アライメント顕微鏡AM1aの検出画像Vwc1内とアライメント顕微鏡AM2aの検出画像Vwc4内とで、基板Pの搬送方向においては異なる位置に現れる。この検出画像Vwc1内と検出画像Vwc4内とにおいて同一のドラム側基準マークRLX1の出現する位置のずれが、基板Pの搬送方向における、アライメント顕微鏡AM1aとアライメント顕微鏡AM2aとの位置ずれになる。制御装置16は、この位置ずれを求め、得られた位置ずれを用いてアライメント顕微鏡AM1a、AM2aが検出した位置情報を補正する。そして、制御装置16は、補正した位置情報を用いて、描画装置11の描画(露光)を制御する。アライメント顕微鏡AM1a及びアライメント顕微鏡AM2aについて説明したが、アライメント顕微鏡AM1b、AM1c及びアライメント顕微鏡AM2b、AM2cについても同様である。このようにすることで、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との間、すなわち、アライメント顕微鏡AM1aとアライメント顕微鏡AM2aとの間、アライメント顕微鏡AM1bとアライメント顕微鏡AM2bとの間及びアライメント顕微鏡AM1cとアライメント顕微鏡AM2cとの間における相対的な位置関係の誤差を求めることができる。
回転ドラムDRによって搬送される長尺の基板Pは、回転ドラムDRで搬送される際に、図3に示すように、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との検出領域Vw1~Vw3内と検出領域Vw4~Vw6内とに現れるように、長尺方向に配置された複数のアライメントマークKs1、Ks2、Ks3を有する。アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2とがアライメントマークKs1、Ks2、Ks3を検出すると、それぞれの検出画像Vwc1~Vwc3と検出画像Vwc4~Vwc6とには、撮像されたアライメントマークKs1、Ks2、Ks3が現れる。制御装置16は、回転ドラムDRの回転によって、順次、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との各々で検出して得られるアライメントマークKs1、Ks2、Ks3の各位置情報に基づいて、基板P上に規定される被処理領域A7(図3参照)の位置を定める。この場合、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2の取付誤差によって生じる誤差量が分かっているため、これらが検出したアライメントマークKs1、Ks2、Ks3の各位置情報を、前述した誤差量で補正する。このようにすることで、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2の取付誤差の影響を最小限にして、描画装置11の描画(露光)精度の低下を抑制することができる。
制御装置16は、図3に示すアライメントマークKs1、Ks2、Ks3を複数のアライメント顕微鏡AM1a、AM1b、AM1c、AM2a、AM2b、AM2cで同時に検出した場合において、それぞれの取付誤差を補正することができる。このように、アライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2との位置関係が把握されているので、制御装置16は、基板Pの伸縮又は基板Pの滑り等による変化分を求めることも可能になる。
基板Pは、アライメント顕微鏡AM1、AM2が有する照明系GC(図8-1、図8-2参照)が照射する照明光に対して透過性を有することが好ましい。このようにすると、アライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pを通して回転ドラムDRに設けられたドラム側基準マークRLXを検出することができる。その結果、アライメント顕微鏡AM1、AM2は、基板Pの搬送中にドラム側基準マークRLXを検出し、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1、AM2の検出結果に基づいてアライメント顕微鏡AM1、AM2の取付誤差を補正することができる。
図18、図19は、回転ドラムが基板を搬送しているときに発生した基板のずれを求める一例を説明するための図である。本実施形態において、制御装置16は、図8-1に示すアライメント顕微鏡AM1とアライメント顕微鏡AM2とを用いて、回転ドラムDRの表面における基板Pの滑り又は基板P自体の伸縮等といった基板Pの変化を求めることができる。図18、図19に示す例は、複数のアライメント顕微鏡AM1のうちアライメント顕微鏡AM1aと、複数のアライメント顕微鏡AM2のうちアライメント顕微鏡AM2aとを用いて基板Pの変化を求めているが、これに限定されない。
制御装置16は、回転ドラムDRの回転にともなって、順次、アライメント顕微鏡AM1aの検出領域Vw1(図8-1等参照)内及びアライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4(図8-2等参照)内の各々でドラム側基準マークRLXの各位置情報を検出する。また、制御装置16は、回転ドラムDRが所定角度βだけ回転したときに、図3に示す複数のアライメントマークKs1のうちの特定基板マークKs1t(図18、図19参照)を、アライメント顕微鏡AM1aとアライメント顕微鏡AM2aとの各々で検出することにより、特定基板マークKs1tの各位置情報を得る。制御装置16は、得られたドラム側基準マークRLXの各位置情報と、特定基板マークKs1tの各位置情報とに基づいて、回転ドラムDRの外周面と基板Pとの相対位置の変化を求める。
回転ドラムDRの外周面と基板Pとの相対位置の変化を求める前に、制御装置16は、前述したように、それぞれのアライメント顕微鏡AM1、AM2の取付誤差及びアライメント顕微鏡AM1、AM2間における相対的な位置関係の誤差を求めて、例えば、自身が備える記憶部に保存する。次に、アライメント顕微鏡AM1aは、検出領域Vw1内に現れたドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとを同時に検出し、画像処理回路OCは、ドラム側基準マークRLXの位置情報としての位置座標(x1、y1)と、特定基板マークKs1tの位置情報としての位置座標(x2、y2)とを求める。位置座標(x1、y1)は、ドラム側基準マークRLXの交差部分RLXcの座標であり、位置座標(x2、y2)は、特定基板マークKs1tの交差部分Ks1cの座標である。アライメント顕微鏡AM1aの検出画像Vwc1には、ドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとが現れている。
回転ドラムDRが基板Pを搬送し、回転中心軸AX2を中心として所定角度βだけ回転すると、特定基板マークKs1t及びアライメント顕微鏡AM1aが検出したドラム側基準マークRLXがアライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4に入る。アライメント顕微鏡AM2は、検出領域Vw4内に現れたドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとを同時に検出し、画像処理回路OCは、ドラム側基準マークRLXの位置情報としての位置座標(x3、y3)と、特定基板マークKs1tの位置情報としての位置座標(x4、y4)とを求める。位置座標(x3、y3)は、ドラム側基準マークRLXの交差部分RLXcの座標であり、位置座標(x4、y4)は、特定基板マークKs1tの交差部分Ks1cの座標である。アライメント顕微鏡AM2aの検出画像Vwc2には、ドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとが現れている。
図18に示す、アライメント顕微鏡AM1aの検出画像Vwc1に現れているドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとは、交差部分RLXcと交差部分Ks1cとが離れている。図19に示す、アライメント顕微鏡AM2aの検出画像Vwc2に現れているドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとは、交差部分RLXcと交差部分Ks1cとが離れているが、その距離は、アライメント顕微鏡AM1aの検出画像Vwc1に現れている距離よりも大きい。すなわち、基板Pは、アライメント顕微鏡AM1aからアライメント顕微鏡AM2aまで搬送される間に、滑り又は基板Pの伸縮等によって、回転ドラムDRの外周面と基板Pとの相対位置が変化したことになる。
アライメント顕微鏡AM1の検出画像Vwc1において、ドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとは、xy座標系においてx方向にx2-x1、y方向にy2-y1だけ離れている。アライメント顕微鏡AM2の検出画像Vwc2において、ドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとは、xy座標系においてx方向にx4-x3、y方向にy4-y3だけ離れている。ドラム側基準マークRLXは、アライメント顕微鏡AM1の検出画像Vwc1とアライメント顕微鏡AM2の検出画像Vwc2とで共通なので、検出画像Vwc1と検出画像Vwc2との間で、特定基板マークKs1tは、xy座標系においてx方向にx4-x3-x2+x3、y方向にy4-y3-y2+y3だけ移動したことになる。すなわち、基板Pは、アライメント顕微鏡AM1aからアライメント顕微鏡AM2aまで搬送される間において、xy座標系においてx方向にx4-x3-x2+x3、y方向にy4-y3-y2+y3だけ移動している。
制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1aが同時に検出したドラム側基準マークRLX及び特定基板マークKs1tの位置情報と、アライメント顕微鏡AM2aが同時に検出したドラム側基準マークRLX及び特定基板マークKs1tの位置情報とに基づき、回転ドラムDRと外周面と基板Pとの相対位置の変化を求める。その結果、制御装置16は、基板Pの搬送方向における基板Pの位置の変化量を見積もることができるので、描画装置11が基板Pの被処理領域A7で描画(露光)を開始するタイミングを予測することができる。また、制御装置16は、突発的に生じる基板Pの滑りを検出することも可能である。
ドラム側基準マークRLXは、回転ドラムDR外周面の回転方向に所定の角度間隔(ε°とする)で複数設けられている。ドラム側基準マークRLXは、複数のアライメントマークKs1、Ks2、Ks3が基板Pの長尺方向に間隔Mで設けられる場合、回転ドラムDRの半径をrとすると、π・r・ε/180≠Mの関係となるように設定されることが好ましい。このようにすると、ドラム側基準マークRLXとアライメントマークKs1、Ks2、Ks3との重なりが抑制されるので、アライメント顕微鏡AM1a、AM2aは、ドラム側基準マークRLXと特定基板マークKs1tとの差をより確実に検出できる。
本実施形態において、アライメントマークKs1、Ks2、Ks3は、基板Pの回転ドラムDRで支持される面側、すなわち、描画装置11からみて基板Pの裏面側に設けられることが好ましい。このようにすれば、ドラム側基準マークRLXと略同一の面位置にアライメントマークKs1、Ks2、Ks3を配置することができるので、撮像系GDは、アライメント顕微鏡AM1a、AM2aの対物レンズ系GAの焦点深度内で、ドラム側基準マークRLX及びアライメントマークKs1、Ks2、Ks3の両方を撮像することができる。また、対物レンズ系GAの倍率を高くすると焦点深度が浅くなるが、アライメントマークKs1、Ks2、Ks3を基板Pの回転ドラムDRで支持される面側に設けることにより、対物レンズ系GAの倍率を高くしても、撮像系GDは、ドラム側基準マークRLX及びアライメントマークKs1、Ks2、Ks3の両方を、良好なインフォーカス状態で撮像することができる。
前述した各実施形態及び変形例では、装置のキャリブレーションのために、アライメント顕微鏡AMの取付位置誤差又は微小回転誤差を計測する際に、回転ドラムDRの外周面に直接形成された基準マークRLX等を用いた。しかしながら、複数の基準マークRLX等を表面に形成した枚葉の基準シート板を、回転ドラムDRの外周面に巻き付けて仮止めした状態、すなわち、回転ドラムDRの外周面に沿った特定位置に基準パターンとしての基準マークRLXが設けられた状態で、キャリブレーションを行ってもよい。その場合、基準シート板は、基板Pと同程度の厚みを有し、テンションに対する変形が少ない材料、例えば、A4サイズ又はB4サイズ等の枚葉にカットされた金属製(SUS材等)の極薄板が利用できる。このような基準シート板は、回転ドラムDRの外周面に巻き付ける手間はあるものの、簡単に作成できるため、アライメント顕微鏡AMのY方向の取付け位置が変更される場合に、その位置変更に対応して基準マークRLXが形成されたものを用意することができる。このことから、基準シート板は、外周面に基準マークRLX等が形成できない回転ドラムDRを備えた露光装置(処理装置)のキャリブレーションに好適であり、同様の回転ドラムを備える複数の露光装置間で兼用して使えるとともに、複数の露光装置間での各種精度の管理を1つの基準(1枚の基準シート板)に基づいて行えるといった利点もある。
前述した本実施形態、第1変形例及び第2変形例は、基板処理装置として、光エネルギーによってパターニングを施す露光装置を例示している。基板処理装置としては、露光装置に限られず、処理部がインクジェットのインク滴下装置により被処理物体である基板Pにパターンを印刷したり、液状又はペースト状のインクによって基板Pにパターニングを施す塗布装置であったりしてもよい。また、処理部は、検査装置であってもよい。前述した本実施形態、第1変形例及び第2変形例は、マスクを用いない、いわゆるラスタースキャン式の描画露光装置を基板処理装置の例としたが、平面マスク若しくは円筒マスクを用いる露光装置、又はDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)の各ミラーの傾斜をパターンのCAD情報に基づいて制御して、基板上にパターンの像を露光するマスクレス露光装置を基板処理装置としてもよい。
(デバイス製造方法)
図20は、実施形態に係る基板処理装置(露光装置)を用いてデバイスを製造するデバイス製造方法の手順を示すフローチャートである。このデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターン及び配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールを準備しておく(ステップS202)。なお、このステップS202で用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でもよい。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極、配線、絶縁膜及びTFT(薄膜半導体)等を有するバックプレーン層を形成するとともに、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS203)。このステップS203には、先の各実施形態で説明した露光装置EXを用いて、フォトレジスト層を露光する従来のフォトリソグラフィ工程も含まれるが、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面に親撥水性によるパターンを形成する露光工程、光感応性の触媒層をパターン露光し無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程又は銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等による処理も含まれる。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(耐環境バリア層)又はカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS204)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行われる(ステップS205)。このようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレー)を製造することができる。
前述した実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型のレチクルを用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に記載されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形のレチクル(電子レチクル、アクティブレチクル、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形のレチクルに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしてもよい。
また、前述した実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度及び光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、露光装置の組立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組立工程は、各種サブシステム相互の機械的接続、電気回路の配線接続及び気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組立工程の前に、各サブシステム個々の組立工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組立工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
また、前述した実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の置換又は変更を行うこともできる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態で引用した露光装置等に関するすべての公開公報及び米国特許の記載を援用して本明細書の記載の一部とする。このように、前述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態及び運用技術等は、すべて本発明の範囲に含まれる。
以上、本実施形態及びその変形例について説明したが、前述した内容により本実施形態及びその変形例が限定されるものではない。また、前述した実施形態及びその変形例の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態及びその変形例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更を行うことができる。