以下、添付の図面を参照して、本実施形態に係る画像生成装置を説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
[撮像装置全体の構成]
以下、図面を参照して、本実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態における光干渉断層法を用いた撮像装置(OCT装置)の構成例を示す図である。SS-OCTである場合の構成を示すが、他の方式のOCT装置においても同様の効果を実現できる。
本OCT装置は、波長掃引光源10、光信号分岐/合波部20、干渉光の検出部30、人眼100の網膜情報を取得するコンピュータ40(画像生成装置)、測定アーム50、参照アーム60を有している。コンピュータ40は中央演算処理装置(CPU)と、記憶装置とを備える。記憶装置は例えばメモリ(RAMおよびROM)と大容量記憶装置(HDD)とから構成される。記憶装置の一部または全てはコンピュータ40の外部に備えられることとしてもよい。波長掃引光源10は、例えば波長980nmから1100nmの光を100kHzの周波数(Aスキャンレート)で出射する。ここで、波長や周波数については例示であり、本発明は上記の値に限定されるものではない。以下の実施形態についても同様に、記載された数値は例示であり、本発明は記載された数値に限定されるものではない。
なお、本実施形態で被検体100を人眼(眼底)としているがこれに限るものではなく、例えば皮膚等に用いることとしてもよい。また、本実施形態において撮像対象は眼の眼底としているが、前眼を撮影対象とすることとしてもよい。
光信号分岐/合波部20は、カプラ21、22を有している。まず、カプラ21は、光源10から射出された光を眼底へ照射する照射光と参照光とに分岐する。照射光は、測定アーム50を経由して人眼100に照射される。より具体的には、測定アーム50に入射した照射光は、偏光コントローラ51で偏光状態を整えられた後、コリメータ52から空間光として射出される。その後、照射光は、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54、フォーカスレンズ55を介して人眼100の眼底に照射される。なお、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は眼底を照射光で走査する機能を有する走査部である。走査部によって、照射光の眼底への照射位置が変えられる。ここで、人眼100の1点の奥行き方向(深さ方向)の情報を取得することをAスキャンと呼ぶ。また、Aスキャンと直交する方向に沿って、2次元断層像を取得することをBスキャン、更にBスキャンの2次元断層像に垂直な方向に沿って、2次元断層像を取得することをCスキャンと呼ぶ。
なお、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は、それぞれ回転軸が互いに直交するよう配置されたミラーで構成されている。X軸スキャナー53は、X軸方向の走査を行い、Y軸スキャナー54は、Y軸方向の走査を行う。X軸方向、Y軸方向の各方向は、眼球の眼軸方向に対して垂直な方向で、互いに垂直な方向である。また、Bスキャン、Cスキャンのようなライン走査方向と、X軸方向またはY軸方向とは、一致していなくてもよい。このため、Bスキャン、Cスキャンのライン走査方向は、撮像したい2次元の断層像あるいは3次元の断層像に応じて、適宜決めることができる。
眼底からの反射光は、再びフォーカスレンズ55など同一経路を経由して、カプラ21を通りカプラ22に入射する。なお、シャッター85を閉じて計測することで、人眼100からの反射光をカットしてバックグランド(ノイズフロア)の計測が可能である。
一方、参照光は参照アーム60を経由し、カプラ22に入射する。より具体的には、参照アーム60に入射した参照光は、偏光コントローラ61で偏光状態を整えられた後、コリメータ62から空間光として射出される。その後、参照光は分散補償ガラス63、光路長調整光学系64、分散調整プリズムペア65を通り、コリメータレンズ66を介して光ファイバーに入射され、参照アーム60から射出されてカプラ22に入射する。
カプラ22では、測定アーム50を経由した人眼100の反射光と参照アーム60を通った参照光とが干渉する。そして、その干渉光を検出部30で検出する。検出部30は、差動検出器31とA/D変換器32を有している。まず、検出部30では、カプラ22で分波された干渉光を差動検出器31で検出する。そして、差動検出器31で電気信号に変換されたOCT干渉信号(以下、単に干渉信号という場合がある)をA/D変換器32でデジタル信号に変換している。ここで、作動検出器31の干渉光のサンプリングは、波長掃引光源10の中に組み込まれたクロック発生器が発信するkクロック信号に基づいて等波数間隔に行われる。A/D変換器32が出力したデジタル信号はコンピュータ40に送られる。次にコンピュータ40はデジタル信号に変換した干渉信号を信号処理し、OCTアンギオグラフィー画像を計算する。図7に示す画像はOCTアンギオグラフィー画像の一例である。
コンピュータ40が備えるCPUは、各種の処理を実行する。具体的にはCPUは、不図示の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで取得手段41、位置合わせ手段42、算出手段43、生成手段44、変更手段45および表示制御手段46として機能する。なお、コンピュータ40が備えるCPUおよび記憶装置は1つであってもよいし複数であってもよい。すなわち、少なくとも1以上の処理装置(CPU)と少なくとも1つの記憶装置(ROMまたはRAM等)とが接続されており、少なくとも1以上の処理装置が少なくとも1以上の記憶装置に記憶されたプログラムを実行した場合にコンピュータ40は上記の各手段として機能する。なお、処理装置はCPUに限定されるものではなく、FPGA等であってもよい。
取得手段41は、A/D変換器32の出力を取得する。具体的には、被検眼に対して走査された測定光の被検眼からの戻り光と参照光との干渉光のデジタル信号を取得する。さらに、取得手段41は干渉光のデジタル信号(干渉信号)をフーリエ変換することで断層像を取得する。具体的には、取得手段41は、干渉信号に高速フーリエ変換(FFT :Fast Fourier Transform)を適用することにより位相と振幅とからなるOCT複素信号を取得する。なお、周波数解析として最大エントロピー法を用いてもよい。さらに取得手段41はOCT複素信号の絶対値を2乗し、信号強度(Intensity)を計算すことで、Intensityを示す断層像(以下、単に断層像という場合がある)を取得する。この断層像は被検眼の眼底の断層を示す断層像データの一例に相当する。すなわち、測定光を被検眼の眼底の略同一位置で複数回走査した場合、取得手段41はそれぞれ被検体の略同一位置の断層を示す複数の断層像データを取得することとなる。なお、複数の断層像データは異なるタイミングで走査された測定光により取得されるデータである。
なお、取得手段41はX軸スキャナー53、Y軸スキャナー54を制御する手段としても機能する。
位置合わせ手段42は、複数の断層像の位置合わせを行う。本実施形態では位置合わせ手段42は、被検眼の眼底の略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像の位置合わせを行う。より具体的には、位置合わせ手段42は、算出手段43がモーションコントラスト値を算出する前に複数の断層像データ同士を位置合わせする。
断層像の位置合わせは既知の種々の手法により実現可能である。位置合わせ手段42は、例えば断層像同士の相関が最大となるように複数の断層画像の位置合わせを行う。なお、被検体が眼のように動く検体でなければ位置合わせは不要である。また、被検体が眼であっても追尾の性能が高ければ位置合わせは不要である。すなわち、位置合わせ手段42による断層像同士の位置合わせは必須ではない。
算出手段43は、モーションコントラスト特徴量(以下モーションコントラスト値という場合がある)を算出する。ここで、モーションコントラストとは被検体組織のうち流れのある組織(例えば血液)と流れのない組織の間のコントラストであり、このモーションコントラストを表現する特徴量をモーションコントラスト特徴量と定義する。
モーションコントラスト特徴量は、略同一位置を測定光で複数回走査することで得られた複数の断層像間におけるデータの変化に基づいて算出される。例えば、算出手段43は位置合わせされた複数の断層像の信号強度(輝度)の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。より具体的には位置合わせされた複数の断層像の対応する各位置における信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。例えば、所定時刻の血管に相当する像の信号強度と所定時刻とは異なる時刻の血管に相当する像の信号強度とは血流により変化するため、血管に相当する部分の分散値は血流等の流れがない部分の分散値に比べて大きな値となる。すなわち、モーションコントラスト値は、複数の断層像データ間での被検体における変化が大きいほど大きくなる値である。従って、この分散値に基づいて画像を生成することでモーションコントラストを表現することが可能である。なお、モーションコントラスト特徴量は分散値に限定されるものではなく、標準偏差、差分値、非相関値および相関値の何れであってもよい。なお、算出手段43は、信号強度の分散等を用いることとしたが、位相の分散等を用いてモーションコントラスト特徴量を算出することとしてもよい。
また、算出手段43は、位置合わせされた複数の断層像の平均値を算出することで、平均化画像を生成する。平均化画像は複数の断層像の信号強度が平均化された断層像である。この平均化画像をIntensity平均化画像という場合がある。算出手段43は、平均化画像の信号強度と閾値との比較を行う。算出手段43は平均化画像の所定位置の信号強度が閾値よりも低い場合は、平均化画像の所定位置に対応する分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を血管を示す特徴量とは異なる値にする。例えば、算出手段43は平均化画像の信号強度が閾値よりも低い場合は、分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を0にする。すなわち、算出手段43は、信号強度を示す代表値が閾値よりも低い場合のモーションコントラスト値を、信号強度を示す代表値が閾値よりも高い場合のモーションコントラスト値よりも低い値とする。なお、算出手段43は複数の断層像の信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する前に、平均化画像の信号強度と閾値との比較を行うこととしてもよい。例えば、算出手段43は、平均化画像の信号強度が閾値より低い場合にはモーションコントラスト特徴量を0と算出し、平均化画像の信号強度が閾値より高い場合には複数の断層像の信号強度の分散をモーションコントラスト特徴量として算出する。
ここで、特徴量が0であることは図7等に示す画像の黒い部分を示している。なお、モーションコントラスト特徴量を完全に0にするのではなく0近傍の値とすることとしてもよい。一方、算出手段43は平均化画像の信号強度が閾値よりも高い場合は、分散等に基づいて得られたモーションコントラスト特徴量を維持する。すなわち、算出手段43は、複数の断層像データに基づいて前記モーションコントラスト値を算出し、信号強度を示す代表値と閾値との比較結果に基づいてモーションコントラスト値を再度算出する。
なお、閾値との比較対象として平均化画像の信号強度(信号強度の平均値)を用いたが、複数の断層像の対応する位置における信号強度の最大値、最小値、中央値等の代表値を用いることとしてもよい。また、複数の断層像から得られた信号強度を閾値と比較するのではなく、算出手段43は1つの断層像の信号強度と閾値とを比較し、モーションコントラスト特徴量を制御することとしてもよい。
上記述べたように、算出手段43は、複数の断層像データおよび信号強度を示す複数の断層像データの代表値と閾値との比較結果に基づいてモーションコントラスト値を算出する。
生成手段44は、モーションコントラスト特徴量に基づいてOCTアンギオグラフィー画像を生成する。OCTアンギオグラフィー画像は算出手段43によって算出されたモーション特徴量を画像化したものであり、図7に示すように例えばモーションコントラスト特徴量が大きいほど輝度を高く、モーションコントラスト特徴量が低いほど輝度を低くした画像である。図7の例において、輝度が高い部分は血管に相当する部分である。なお、モーションコントラスト特徴量が大きいほど輝度を低く、モーションコントラスト特徴量が低いほど輝度を高くすることとしてもよい。OCTアンギオグラフィー画像をモーションコントラスト画像または血管画像という場合がある。すなわち、生成手段44は、モーションコントラスト値に基づいて被検体のモーションコントラスト画像を生成する。
生成手段44は、算出手段43が3次元の断層像データから3次元のモーションコントラスト特徴量(3次元のデータ)を算出している場合は、3次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成することができる。また、生成手段44は、3次元のOCTアンギオグラフィー画像の任意の網膜方向の深さ範囲において投影または積算した2次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成することもできる。すなわち、生成手段44は、被検体の深さ方向における所定範囲のモーションコントラスト値を前記深さ方向に投影または積算して2次元の前記モーションコントラスト画像を生成する。図7は2次元のOCTアンギオグラフィー画像の一例である。
さらに、生成手段44は3次元のOCTアンギオグラフィー画像から任意の網膜方向の深さ範囲を切り出して、部分的な3次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成することもできる。すなわち、生成手段44は被検体の深さ方向における所定範囲のモーションコントラスト値に基づいて、3次元のモーションコントラスト画像を生成する。
なお、任意の網膜方向の深さ範囲は検査者(操作者)により設定可能である。例えば、IS/OSからRPEまでの層、RPEからBMまでの層など選択可能な層の候補が表示部70に表示される。表示された層の候補から、検査者は所定の層を選択する。そして、検査者により選択された層において生成手段44は網膜の深さ方向に積算を行い2次元のOCTアンギオグラフィー画像(en-face血管画像)または部分的な3次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成することとしてもよい。
また、生成手段44はモーションコントラスト特徴量から断層像に相当するOCTアンギオグラフィー画像を生成することとしてもよい。
変更手段45は、平均化画像の信号強度と比較される閾値を変更する。変更手段45は例えば任意のGUIを介して閾値の変更を受け付け、閾値の変更を行う。図8に示すスライドバー73は閾値の変更を受け付ける表示(GUI)の一例である。すなわち、変更手段45は、表示手段に表示された閾値の変更を受け付ける表示を介して閾値の変更を受け付け、閾値を変更する。
ここで、図8に示す例のように閾値を一括して変更することとしてもよいし、図10に示すスライドバー73のように層ごと閾値の変更を受け付けるGUIを設け、層ごとに閾値の変更を行えるようにしてもよい。なお、閾値は層ごとに離散的な値とすることとしてもよいし、検査者により入力された閾値を補完等により深さ方向に沿って連続的な値とすることとしてもよい。
また、変更手段45は自動的に閾値を変更することとしてもよい。例えば、変更手段45は層ごとに閾値を異なる値に変更することとしてもよい。具体的には深い層ほど閾値を低くすることで血管ではあるものの信号強度が低い部分を血管として画像化することが可能となる。なお、閾値は層ごとに離散的な値とすることとしてもよいし、補完等により深さ方向に沿って連続的な値とすることとしてもよい。なお、自動的に閾値を決める手法は層の深さを用いる方法に限定されるものではなく、後述するノイズフロアの値またはロールオフ特性等を用いて閾値を自動的に決定することも可能である。なお、層毎ごとに閾値を設定する方法等については第2の実施形態以降で詳細に説明を行う。
表示制御手段46は、各種の情報を表示部70に表示させる。具体的には、表示制御手段46は生成手段により生成されたOCTアンギオグラフィー画像を表示部70に表示させる。また、表示制御手段46は閾値の変更を受け付ける表示(GUI)を表示部70に表示させる。例えば、表示制御手段46は閾値の変更を受け付けるGUIの一例であるスライドバー73を表示部70に表示させる。すなわち、表示制御手段46は、生成手段により生成されたモーションコントラスト画像および閾値の変更を受け付ける表示を表示手段に表示させる。
さらに、表示制御手段46は、Intensityを示す断層像を表示部70に表示させることとしてもよい。
コンピュータ40で行われる具体的な信号処理手順の詳細内容は、後述の信号処理手順に示す。
表示部70は、表示制御手段46の制御に基づいて各種の情報を表示する。表示部70は、例えば、液晶等のディスプレイである。また、上述の信号処理の結果得られたOCTアンギオグラフィー画像が表示部70によって表示される。
[スキャンパターン]
次に、図2を用いて本実施形態のスキャンパターンの一例を説明する。
OCTアンギオグラフィーでは血流による干渉信号の時間変化を計測するため、ほぼ同一箇所で少なくとも2回以上反復計測した複数の干渉信号が必要となる。図2において、人眼100への照射光の軸方向がZ軸(深さ方向)、Z軸と直交する平面、すなわち眼底平面方向をX軸、Y軸とする。
図2において、y1からynはそれぞれ異なるYポジションでのBスキャン、nはyスキャン方向のサンプル数を示す。x1からxpはXスキャン方向のサンプル位置、pはBスキャンを構成するXスキャン方向のサンプル数を示す。Δxは隣り合うXポジションの間隔(xピッチ)であり、Δyは隣り合うYポジションの間隔(yピッチ)を表す。mはほぼ同じ箇所でのBスキャンの反復計測回数を表す。ここで、初期位置(x1、y1)はコンピュータ40により任意に設定できる。
本実施形態ではOCT装置はほぼ同じ箇所でのBスキャンをm回反復し、n箇所のyポジションに移動するスキャン方法を行う。なお、反復スキャンの方法は、ほぼ同じ箇所でのAスキャンを繰り返してから次の位置に移動してBスキャンを構成するスキャン方法でも良い。
ここで、反復回数mが大きいと同じ箇所での計測回数が増えるため、血流の検出精度が向上する。その一方でスキャン時間が長くなり、スキャン中の眼の動き(固視微動)により画像にモーションアーチファクトが発生する問題と被検者の負担が増える問題が生じる。本実施形態では両者のバランスを考慮してm=4として実施した。なお、OCT装置のAスキャン速度、人眼100の動き量に応じて、mを自由に変更してもよい。すなわち、反復走査の回数は上記の値に限定されるものではない。
また、x、y方向の画像サイズはp×nにより決定される。x、y方向の画像サイズが大きいと、同じ計測ピッチであれば広範囲がスキャンできるが、スキャン時間が長くなり、上述のモーションアーチファクトおよび患者負担の問題が生じる。本実施形態では両者のバランスを考慮してn=p=300として実施した。なお、上記n,pは適宜自由に変更が可能である。すなわち、画像サイズは上記の値に限定されるものではない。
また、本実施形態ではxピッチ、yピッチは眼底における照射光のビームスポット径の1/2として決定し、10μmとした。xピッチ、yピッチを眼底上ビームスポット径の1/2とすることで生成する画像を高精細に形成することができる。xピッチ、yピッチを眼底ビームスポット径の1/2より小さくしても生成する画像の精細度をそれ以上高くする効果は小さい。
逆にxピッチ、yピッチを眼底ビームスポット径の1/2より大きくすると精細度は悪化するが、より広い範囲の画像を取得することができる。臨床上の要求に応じてxピッチ、yピッチを自由に変更してもよい。
本実施形態のスキャン範囲は、x方向がp×Δx=3mm、y方向がn×Δy=3mmとした。
[干渉信号の取得手順]
次に、図3を用いて本実施形態の干渉信号の取得手順の一例を説明する。
まず、ステップS109において、取得手段41は図2のポジションyiのインデックスiを1に設定する。次に、ステップS110で、取得手段41は不図示の駆動機構を制御することでx軸スキャナー53,y軸スキャナー54のスキャン位置を図2の(x1,yi)に移動させる。ステップS119において、取得手段41はBスキャンの反復計測回数のインデックスjを1に初期化する。
次に、ステップS120において、x軸スキャナー53,y軸スキャナー54は反復計測回数j回目のBスキャンを実施する。なお、Bスキャン範囲は(x1,yi)~(xp,yi)である。ここで、波長掃引光源10は100kHzのAスキャンレートで光を出射し、Bスキャンを構成するxスキャン方向のサンプル数pは例えばp=300である。したがって、正味のBスキャン時間(Δtb)は式1のようになる。
Δtb=(1/100kHz)×300=3ms ・・・(1)
また、反復計測の時間間隔Δtは式2に示すように、正味のBスキャン時間ΔtbとX軸スキャナー53の準備時間Δtpの和である。準備時間Δtpは例えばx軸スキャナー53,y軸スキャナー54のスキャン位置を調整する時間である。Δtp=1msとすると、
Δt=Δtb+Δtp=4ms ・・・(2)
さらに、全体の計測時間tmは反復回数m、yスキャン方向のサンプル数nを用いて、式3で表される。
tm=Δt*m*n=(Δtb+Δtp)*m*n ・・・(3)
本実施形態ではm=4、y=300なので、全体の計測時間tm=3.6sである。
ここで、Bスキャン時間Δtbと反復計測の時間間隔Δtは短いほど人眼100の動きの影響を受けにくく、バルクモーションノイズは小さくなる。逆にΔtが長いと人眼100の動きにより位置再現性が低下しバルクモーションノイズが増える。また、計測にかかる時間が増え、患者負担が増してしまう。ここで、バルクモーションとは被検眼の動きを意味し、バルクモーションノイズとは被検眼の動きにより発生するノイズを意味している。
さらに、反復計測の時間間隔Δtについては小さすぎると血流検出にかかる時間が短くなり血流検出感度が低下する。
これらを考慮してtm, Δt,n,p,Δtb、Δtp、を選択することが望ましい。なお、反復計測の位置再現性を高めるため、X軸スキャナー53、Y軸スキャナー54は人眼100を追尾しつつ、Bスキャンを行っても良い。
ステップS130において差動検出器31はAスキャン毎に干渉光を検出し、A/D変換器32を介してデジタル信号(干渉信号)に変換される。取得手段41はA/D変換器32から干渉信号を取得し、不図示の記憶部に記憶する。取得手段41は1度のBスキャンでAスキャン信号p個を取得する。p個のAスキャン信号は1のBスキャン信号を構成している。
ステップS139において、取得手段41はBスキャンの反復計測回数のインデックスjをインクリメントする。
次に、ステップS140において取得手段41は反復計測回数のインデックスjが所定の反復回数mより大きいか判断する。すなわち、取得手段41はポジションyiでのBスキャンがm回繰り返されたかを判断する。繰り返されてない場合はS120に戻り、同一位置のBスキャン計測を繰り返す。所定回数繰り返された場合は、S149に進む。
ステップS149において、取得手段41はポジションyiのインデックスiをインクリメントする。
次に、ステップS150において取得手段41はポジションyiのインデックスiが所定の計測位置の数nより大きいか、すなわちn箇所の全てのYポジションでBスキャンを実施したかを判断する。n箇所の全てのYポジションでBスキャンが実施されていない場合はステップS110に戻り、次の計測ポジションで計測することを繰り返す。n箇所の全てのYポジションでBスキャンが実施された場合は、次ステップS160へ進む。
ステップS160において取得手段41はバックグラウンドデータを取得する。取得手段41は不図示の駆動手段を制御することでシャッター85を閉じた状態(光路に挿入した状態)で100回Aスキャンを行い、取得手段41は100個のAスキャン信号を平均化して記憶部に記憶する。なお、バックグラウンドデータを得るためのAスキャン回数は100回に限るものではない。
以上のステップを実施して、取得手段41は、ほぼ同一箇所を最低2回以上反復計測した複数の干渉信号、及びバックグランドデータを取得することができる。
[信号処理手順]
次に、図4を用いて本実施形態の信号処理手順の一例を説明する。
図4は、干渉信号が入力されている取得手段41が、信号処理をした結果としてOCTアンギオグラフィー画像を出力するまでのフローの一例である。
本実施形態では、OCTアンギオグラフィーの画像を生成するために、モーションコントラスト特徴量を計算する必要がある。
図4において、まずステップS201で、変更手段45は後述のモーションコントラスト特徴量を計算するための閾値の設定を行う。閾値の設定値は変更手段45が予め断層像のノイズフロアでランダムノイズのみが表示されているエリアを抽出し、標準偏差σを計算し、ノイズフロアの平均強度+2σと設定する。なお、この閾値は検査者が適宜変更することが可能である。
次に、ステップS210で、取得手段41はy方向のポジションyiのインデックスiを1に設定する。ステップS220において、取得手段41はポジションyiにおける繰り返しBスキャンにより得られたBスキャン干渉信号(m回分)を記憶手段から図3に示した処理で得られた干渉信号から抜き出す。具体的には、ポジションyiにおける繰り返しBスキャンにより得られた複数のBスキャン干渉信号を記憶手段から読み出す。
次に、ステップS230において、取得手段41は繰り返しBスキャンのインデックスjを1に設定する。
ステップS240において、取得手段41はm回分のBスキャン干渉信号からj番目のBスキャン干渉信号を抜き出す。
次に、ステップS250では、コンピュータ40は図3のステップS160で取得したバックグラウンドデータをステップS240で取得したBスキャン干渉信号から減算する。
ステップS260において、取得手段41はバックグラウンドデータを減算したBスキャン干渉信号をフーリエ変換する。本実施形態では高速フーリエ変換(FFT :Fast Fourier Transform)を適用する。
ステップS270において、取得手段41は、ステップS260においてフーリエ変換されたBスキャン干渉信号の振幅の絶対値の2乗を計算する。この値が当該Bスキャンの断層像の強度(Intensity)となる。すなわちステップS270において取得手段41はIntensityを示す断層像を取得する。
ステップS280において、取得手段41はBスキャンの繰り返し回数を示す反復計測回数jをインクリメントする。そして、ステップS290で、取得手段41は反復計測回数jが反復回数mより大きいか判断する。すなわち、取得手段41はあるポジションyiでのBスキャンのIntensity計算がm回繰り返されたかを判断する。反復計測回数jが反復回数mより小さい場合はステップS240に戻り、取得手段41は同一Yポジションでの繰り返しBスキャンのIntensity計算を繰り返す。反復計測回数jが反復回数mより大きい場合は、ステップS300へ進む。
ステップS300では、位置合わせ手段42は、あるYポジションyiにおける繰り返しBスキャンのmフレーム分の断層像を位置合わせする。具体的には、位置合わせ手段42は、まずmフレーム分の断層像のうち、任意の1枚の断層像をテンプレートとして選択する。位置合わせ手段42は、mフレーム分の断層像における全ての組み合わせで相関を計算し、フレーム別に相関係数の和を求め、その和が最大となるフレームの断層像をテンプレートとして選択してもよい。
次に、位置合わせ手段42は、テンプレートとして選択された断層像と他のフレームの断層像とを照合し位置ずれ量(δX、δY、δθ)を求める。具体的には、位置合わせ手段42は、テンプレート画像の位置と角度を変えながら他のフレームの断層像との類似度を表す指標であるNormalized Cross-Correlation(NCC)を計算する。そして、位置合わせ手段42は、この値が最大となるときの画像位置の差を位置ずれ量として求める。なお、本発明では、類似度を表す指標は、テンプレートとして選択された断層像と他のフレームの断層像との特徴の類似性を表す尺度であれば種々変更が可能である。例えばSum of Abusolute Difference(SAD)、Sum of Squared Difference(SSD)、Zero-means Normalized Cross-Correlation(ZNCC)、Phase Only Correlation(POC)、Rotation Invariant Phase Only Correlation(RIPOC)等を類似度を表す指標として用いてもよい。
位置合わせ手段42は、次に位置ずれ量(δX、δY、δθ)に基づいて、Intensityを示す断層像の位置補正をテンプレート以外のm-1フレームの断層像に適用し、mフレーム分の断層像の位置合わせを行う。位置合わせ完了後、ステップS310とステップS311の処理が行われる。
ステップS310では、算出手段43がモーションコントラスト特徴量を計算する。本実施形態ではステップS300にて位置合わせされたmフレームの断層像から算出手段43は同じ位置のピクセルごとに分散値を計算し、その分散値をモーションコントラスト特徴量とする。なお、モーションコントラスト特徴量の求め方は種々あり、同一Yポジションにおける複数断層像の対応する各ピクセルの輝度値の変化を表す指標であれば本発明に適用可能である。
一方、ステップS311では、算出手段43がステップS300で得られたm枚の位置合わせされた断層像(Intensity画像)の平均を算出し、Intensity平均化画像を生成する。
ステップS330において、取得手段41はポジションyiのインデックスiをインクリメントする。そして、ステップS340において、取得手段41はインデックスiが計測位置の数nより大きいか否かを判定する。すなわちn箇所の全てのYポジションで位置合わせ、Intensity平均化画像の計算、モーションコントラスト特徴量の計算をしたかを取得手段41は判断する。インデックスiが計測位置の数nより小さい場合はS220に戻り、インデックスiが計測位置の数n より大きい場合は、ステップS400へ進む。
ステップS340を終了した時点で、すべてのYポジションでの断層像(Z-X平面)の各ピクセルのIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータが取得されたことになる。
ステップS400では、生成手段44がOCTアンギオグラフィー画像を生成する。
図5を用いてステップS400の詳細を説明する。まず、ステップS401の網膜層のセグメンテーション処理とステップ402のモーションコントラスト特徴量の閾値処理に分かれて処理が行われる。
ステップS401の網膜層のセグメンテーション処理として、ステップS311で生成したIntensity平均化画像を用いたセグメンテーション処理を具体的に説明する。
生成手段44は、複数のYポジションにおけるIntensity平均化画像から処理対象とするIntensity平均化画像を抽出する。そして、生成手段44はメディアンフィルタとSobelフィルタを抽出したIntensity平均化画像にそれぞれ適用して画像を作成する(以下、それぞれメディアン画像、Sobel画像ともいう)。
次に、生成手段44は、作成されたメディアン画像とSobel画像とから、Aスキャン毎にプロファイルを作成する。作成されるプロファイルは、メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、生成手段44はSobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。生成手段44はSobel画像から検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、網膜層の各領域の境界(層境界)を抽出する。すなわち、生成手段44は、断層像データから被検体に含まれる断層の層境界を検出する検出手段の一例に相当する。
セグメンテーション結果の一例を図6に示す。図6はあるYポジションでのInensity平均化画像であり、セグメンテーションラインが破線でInensity平均化画像にオーバーレイされている。本実施形態におけるセグメンテーション処理では、6層を検出している。6層の内訳は、(1)神経線維層(NFL) 、(2)神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層、(3)内顆粒層(INL)+外網状層(OPL) を合わせた層、(4)外顆粒層(ONL)+外境界膜(ELM)を合わせた層、(5)Ellipsoid Zone(EZ) + Interdigitation Zone(IZ)+ 網膜色素上皮(RPE)を合わせた層、(6)脈絡膜(Choroid)である。なお、本実施形態で説明したセグメンテーション処理は一例であり、ダイクストラ法を利用したセグメンテーション処理など、その他の方法を用いても良い。また、検出する層の数は任意に設定が可能である。
次にステップS402のモーションコントラスト特徴量の閾値処理についての詳細を説明する。算出手段43は、ステップS205で設定された閾値に基づいて、モーションコントラスト特徴量の閾値処理を行う。具体的には、算出手段43はステップS340で得られたIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータとから、あるYポジションでのBスキャンに相当するIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量とを抽出する。次に、算出手段43は、当該Bスキャンにおける各ピクセルでの平均Intensityと閾値とを比較する。平均Intensityが閾値以下の場合には、算出手段43は、そのピクセルに対応するモーションコントラスト特徴量の値を0とする。平均Intensityが閾値より大きい場合には、算出手段43は、そのピクセルに対応するモーションコントラスト特徴量の値を維持する。この閾値処理をすべてのYポジションで繰り返すことによって、ノイズフロア近傍など血管のない場所でのランダムノイズによる強度変化の影響を低減したモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータを取得することができる。
なお、閾値の値は小さいほどモーションコントラスト特徴量の検出感度は上がる一方、ノイズ成分も増す。また、閾値が大きいほどノイズは減るがモーションコントラスト検出の感度は下がる。本実施形態では閾値をノイズフロアの平均強度+2σとして設定したが、閾値はこれに限るものではない。
ステップS403で、生成手段44は網膜のセグメンテーション結果と閾値処理されたモーションコントラスト特徴量に基づいてOCTアンギオグラフィー画像を生成する。そして表示制御手段46は生成されたOCTアンギオグラフィー画像を表示部70に表示させる。
ここで、OCTアンギオグラフィー画像の生成方法の一例について具体的に説明する。生成手段44は、モーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータから、任意の層、例えば神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層、に対応する領域を切り出す。そして、生成手段44は、各AスキャンのZ方向に関してモーションコントラスト特徴量の代表値を決定する。Aスキャン代表値は、平均値、最大値、中央値のいずれでもよい。このAスキャン代表値を2次元的(X方向、Y方向)にプロット(投影)することで、神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層に対応するOCTアンギオグラフィー画像が生成される。なお、モーションコントラスト特徴量とセグメンテーション結果とは同一の断層像から得られているためモーションコントラスト特徴量とセグメンテーション結果とは対応づけられる。従って、生成手段44はモーションコントラスト特徴量とセグメンテーション結果との対応づけを用いて任意の層のモーションコントラスト特徴量をモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータから切り出すことができる。
図7に、本実施形態で生成されたOCTアンギオグラフィー画像の一例を示す。図7はOCT装置により黄斑部を計測したものである。本実施例では、生成手段44が、セグメンテーション結果に基づいて神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層のモーションコントラスト特徴量をモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータから切り出す。そして、生成手段44は、切り出したモーションコントラスト特徴量を眼底の深さ方向に投影または積算してOCTアンギオグラフィー画像を生成している。すなわち、生成手段44は、検出手段により検出された層境界に基づいてモーションコントラスト値を被検体の深さ方向に投影または積算して2次元のモーションコントラスト画像を生成する。図7に示すようにモーションコントラスト特徴量が高い部分(画像中の白い部分)は眼底血管を描出している。
図8は本実施形態における表示部70の表示画面の一例である。図8にはステップS401におけるセグメンテーション処理の結果に基づいた特定の層におけるOCTアンギオグラフィー画像71、図中のラインA-A’に対応した断層像72、および閾値を設定するスライドバー73が示されている。またスライドバー73の選択範囲はR1からR2までで、本実施形態では例えばOCT装置のノイズフロアの平均強度をm、標準偏差をσとするとR1=m、R2=m+3σとしてもよいが値はこれに限らない。
なお、上述した6層からOCTアンギオグラフィー画像71を構成する層を不図示の操作手段により選択可能とすることができる。すなわち、検査者がモーションコントラスト特徴量を切り出す層をセグメンテーション処理の結果から選択し、選択された層に基づいて生成手段44は任意の層のOCTアンギオグラフィー画像を生成する。例えば、検査者がマウス等の操作手段を用いて断層像72上の所定の層をクリックすると、生成手段44はクリックされた層を検知し、クリックされた層のOCTアンギオグラフィー画像71を生成する。そして表示制御手段46はOCTアンギオグラフィー画像71を表示部70に表示させる。
また、検査者が操作手段を用いて表示部70に表示された層境界を複数クリックすることでOCTアンギオグラフィー画像71を生成するための層を規定することとしてもよい。生成手段44はOCTアンギオグラフィー画像71を生成する層が検査者により変更される度にOCTアンギオグラフィー画像71を生成し、表示制御手段46はOCTアンギオグラフィー画像71が生成される度に表示部70の表示を更新する。なお、断層像または層境界をクリックするのではなく、層の名称およびチェックボックス(またはラジオボタン)を断層像72とは異なる領域に表示させる。これによって、検査者がチェックボックスをクリックすることでOCTアンギオグラフィー画像71を生成する層を選択できるようにしてもよい。この場合、表示制御手段46は複数の層の名称と層の名称に対応した複数のチェックボックスを表示部70に表示させる。そして、検査者によりチェックボックスがクリックされると、生成手段44はクリックされたチェックボックスに対応する層を取得し、OCTアンギオグラフィー画像71を生成する。なお、OCTアンギオグラフィー画像71で選択する特定層は一層だけでもよいし複数層を選択してもよい。
また、表示制御手段46はOCTアンギオグラフィー画像71を構成する層または層を規定する複数の層境界を断層像72上で強調表示することとしてもよい。例えば、表示制御手段46はOCTアンギオグラフィー画像71を構成する層を規定する複数の層境界を他の層境界よりも明るく表示させる。このようにすれば眼底の正面画像であるOCTアンギオグラフィー画像71を構成する層を容易に把握することが可能となる。
なお、表示制御手段46はOCTアンギオグラフィー画像71として2次元のOCTアンギオグラフィー画像を表示部70に表示させることとしているが、3次元のOCTアンギオグラフィー画像を表示部70に表示させることとしてもよい。例えば、生成手段44は、モーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータを用いて、検査者が指定した層の3次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成する。そして、表示制御手段46は表示部70に3次元のOCTアンギオグラフィー画像を表示させる。なお、表示制御手段46は、2次元のOCTアンギオグラフィー画像に代えて3次元のOCTアンギオグラフィー画像を表示させることとしてもよいし、両方のOCTアンギオグラフィー画像を並べて表示させることとしてもよい。2次元および3次元のOCTアンギオグラフィー画像が表示部70に表示されている場合において、検査者により所定の層が選択されると両方のOCTアンギオグラフィー画像が生成手段44および表示制御手段46により同期して更新される。
また、OCTアンギオグラフィー画像71のラインA-A’はY方向の任意の位置で設定が可能である。例えば、検査者が操作手段を用いてラインA-A’を移動させるとラインA-A’に対応する断層像72が表示される。
図5に戻り、ステップS404で、表示部70で表示されたOCTアンギオグラフィー画像を見て閾値が適切であるかを検査者が判断して、NGと判断すれば、次のステップS405で検査者が操作手段を用いて閾値を変更する。そして、算出手段43は、ステップS402のモーションコントラスト特徴量の閾値処理を再度行い、生成手段44はOCTアンギオグラフィー画像を再度生成する。閾値が変更される度にステップS402およびステップS403が繰返し実行される。すなわち、算出手段43は変更手段により閾値が変更される度にモーションコントラスト値を算出し、生成手段44は、変更手段により閾値が変更される度にモーションコントラスト画像を生成する。また、表示制御手段46は、変更手段により閾値が変更される度に表示手段に表示されたモーションコントラスト画像を更新することとなる。検査者は閾値を変更する度にOCTアンギオグラフィー画像が更新されるため適切な閾値を容易に把握することが可能となる。
ステップS404で検査者によって閾値がOKと判断すれば、図5のステップS400のOCTアンギオグラフィー画像の生成工程が終了する。
上記の実施形態によれば、断層像の強度と比較する閾値を変更することができるため血管を精度よく画像化することが可能である。
なお上記の実施形態では閾値を可変とするためにスライドバー73を用いたが、これに限らず、テキストボックスで閾値の数値を設定できるように装置を構成してもよいし、ドロップダウンリストで予め設定した閾値を選択する構成としてもよい。
(変形例)
なお、上記実施例では、ステップS401の層構造の検出結果に基づいて2次元のOCTアンギオグラフィー画像を生成する説明をしたが、これに限らず層構造を検出しなくてもよい。つまり、ステップS403で、モーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータの検査者により指定された任意の範囲のデータからOCTアンギオグラフィー画像を生成してもよい。すなわちステップS401は必須の処理ではない。
図13は、モーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータを示す図である。さらに領域Aは表示部70に表示させたい範囲(Xd,Yd、Zd)を示している。この範囲は、例えばGUIを介して検査者により入力される。例えば、検査者は表示部70に表示させたい範囲の座標を入力する。生成手段44はモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータから検査者により入力された範囲(Xd,Yd、Zd)のモーションコントラスト特徴量を抽出してOCTアンギオグラフィー画像を生成する。生成手段44が生成するOCTアンギオグラフィー画像は深さ方向Zに投影または積算した2次元のOCTアンギオグラフィー画像であってもよいし、3次元のOCTアンギオグラフィー画像であってもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では閾値の設定に関して第1の実施形態とは異なる態様を説明する。
第2の実施形態は、図4のステップS400において、網膜層のセグメンテーション結果を用いて層ごとに閾値を変えることを特徴とする。人眼の網膜の構造上、深さ方向の網膜層ごとに血管密度が異なることを考慮すると、層ごとに血管検出のための閾値を可変にすることが好ましい。
図9に本実施形態のOCTアンギオグラフィー画像生成の処理工程のフローを示す。図5の第1の実施形態との相違点は、ステップS402のモーションコントラスト特徴量の閾値処理が、セグメンテーションデータが生成された後、つまりステップS401の後に実施されている点である。
ステップS402では、ステップS340で得られたIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量の3次元ボリュームデータとに対して、セグメンテーションで検出された各層ごとに算出手段43が閾値処理を行う。具体的には、算出手段43が、あるYポジションでのBスキャンに相当するIntensity平均化画像とモーションコントラスト特徴量をメモリから取得する。そして、各層ごとに設定された閾値に対して当該Bスキャンにおける各ピクセル(位置)での平均Intensityが閾値以下の場合には、算出手段43は、そのピクセルに対応するモーションコントラスト特徴量の値を0とする。なお、モーションコントラスト特徴量を完全に0にするのではなく0近傍の値とすることとしてもよい。平均Intensityが閾値より大きい場合には、算出手段43は、そのピクセルに対応するモーションコントラスト特徴量の値を維持する。
ここで閾値の設定については、表示部70で表示される断層像72に対して複数の層ごとにスライドバー73によって閾値を可変にしてもよい。図10は第2の実施形態における表示部70の一例である。図10に示すスライドバー73のように層ごと閾値の変更を受け付けるGUIを設けることで、例えばLayre1からLayer6の6層の閾値を設定することが可能である。ここで6層の内訳は、前述の
Layer1:(1)神経線維層(NFL)
Layer2:(2)神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)
Layer3:(3)内顆粒層(INL)+外網状層(OPL)
Layer4:(4)外顆粒層(ONL)+外境界膜(ELM)
Layer5:(5)Ellipsoid Zone(EZ) + Interdigitation Zone(IZ)+ 網膜色素上皮(RPE)
Layer6:(6)脈絡膜(Choroid)
に相当している。なお、変更手段45が、スライドバー73を介して閾値の変更を受け付け、閾値の変更を行う。すなわち、変更手段45は、被検体に含まれる層ごとに閾値を変更する。ここで、図10に示すスライドバー73は閾値の変更を受け付けるGUIの一例である。なお、層の分類は上記の6種類に限定されるものではない。
上記の実施形態によれば、断層像の強度と比較する閾値を変更することができるため血管を精度よく画像化することが可能である。例えば、眼の構造上、深さ方向によって血管密度が粗な領域(層)と密な領域があり、特に粗な領域ではノイズの影響のよる血管の偽抽出を抑制する必要がある。このような状況においても上記の実施形態によれば層毎に閾値を設定できるため層の特性に応じて精度良く血管を画像化することが可能となる。
上記の実施例においては検査者がGUIを介して閾値を変更することとしたが、自動的に層毎の閾値を異なる値としてもよい。例えば、層毎に血管密度が予め把握できている場合には、自動的に層毎の閾値を異なる値としてもよい。すなわち、変更手段45は、層毎の血管密度の情報に基づいて層毎の閾値の初期値を自動的に設定することができる。つまり、閾値は、被検体に含まれる層に応じて複数の値が設けられている。なお、層の位置または名称と閾値とを対応付けた情報を予めメモリに記憶させておき、変更手段45は、メモリに記憶された対応付け情報に基づいて層毎の閾値の初期値を自動的に設定することとしてもよい。
なお、閾値は層ごとに離散的な値とすることとしてもよいし、補完等により深さ方向に沿って連続的な値とすることとしてもよい。
(変形例)
上記第2の実施形態は、深さ方向の血管密度を考慮して層ごとに閾値を変える態様を説明したが、Z方向だけでなく、X、Y方向にも血管密度に応じて閾値を変えてもよい。
例えば、図10のOCTアンギオグラフィー画像71に示されている黄斑部において無血管領域(FAZ)に代表されるようにXY平面上でも血管密度が低い領域がある。表示制御手段46は、例えば、XY平面を格子状に分割し、領域毎に閾値を設定可能なGUIを表示部70に表示させることとしてもよい。そして、変更手段45は、GUIを介して検査者による閾値の変更を受け付け、XY平面の各領域の閾値の変更を行う。このようにすれば、より細かく閾値が設定可能となるため、より精度よく血管を画像化することが可能となる。
また、図13における領域B(ΔX,ΔY、ΔZ)が血管密度の低い領域とすれば、検査者がGUIを介して領域(ΔX,ΔY、ΔZ)を設定して、その領域内では他の領域よりも閾値を上げてノイズによる血管の偽抽出を抑制してもよい。なお、2次元の領域において血管密度が低い領域をΔX,ΔYで設定して、その領域では他の領域に比べて閾値を上げてノイズによる血管の偽抽出を抑制してもよい。検査者が選択した領域Bにおける閾値はスライドバー73等により変更可能である。
上記の実施形態によれば、層境界により律束されることなく閾値を変更する範囲を選択できるため検査者の操作性を向上させることが可能となる。
また、上記の実施形態によればより細かく閾値が設定可能となるため、より精度よく血管を画像化することが可能となる。
(第3の実施形態)
これまで説明した実施形態は、ノイズフロアの強度がOCT断層像の深さ方向には変わらないことを前提としていた。しかしながら、生の干渉信号を計測した場合に高周波成分と低周波成分のノイズ特性が異なる可能性がある。これは、干渉信号をフーリエ変換して信号強度を求めたときに、深さ方向にノイズフロアの強度分布が異なることを意味している。図11はノイズフロアの信号強度の一例を示すが、深さの浅い位置(Z1)と深い位置(Z2)とではノイズフロアの信号強度に差があって、断層像データの信号強度と比較する閾値を固定値とするには無視ができない場合がある。
第3の実施形態は、このようにノイズフロアの強度が深さ方向に依存性がある場合に、深さごとにノイズフロアの特性から閾値を自動的に決定することを特徴とする。
具体的には、変更手段45は、図11に示すように複数回計測されたノイズフロア(ノイズ分布)の信号強度から得られる信号強度の分布に基づいて閾値を決定してもよい。例えば、変更手段45は複数のノイズフロアの信号強度を深さごとに平均して平均値m(Z)を算出する。そして、変更手段45は平均値m(Z)を所定の値(ΔTh)だけ上回る値を閾値Thと決定する。すなわち、変更手段45は被検体に含まれる層の深さに応じて閾値を変更する。より具体的には、変更手段45は被検体の深さ方向におけるノイズ分布に基づいて閾値を変更する。異なる観点から見れば、閾値は被検体の深さ位置に応じて変化している。
なお、複数回計測されたノイズフロアの信号強度の平均値を用いて閾値Thを決定することとしたが、これに限定されるものではなく、複数回計測されたノイズフロアの信号強度の中央値、最大値、最小値を用いることとしてもよい。また、ノイズフロアの信号強度の計測は複数回でなくともよい。なお、取得手段41はシャッター85を閉じた状態で生成された干渉信号をノイズフロアの強度信号として取得する。
上記の実施形態によればノイズフロアの深さ方向の変化を考慮して閾値を自動的に設定できるため精度よく血管を画像化することが可能となる。より具体的には、OCT装置上のノイズ特性が必ずしもZ方向に一定であるとは限らない。このとき同じ閾値の設定では、ノイズ特性が悪化している深さ位置ほど血管の抽出精度が劣化してしまう。このように、OCT断層像の深さ方向の装置上の問題によって血管の描出精度が低下する場合がある。このような状況においても上記の実施形態によればノイズフロアの深さ方向の変化を考慮して閾値を決定しているため精度よく血管を画像化することが可能となる。
なお、ノイズ特性に基づいて自動的に決定された閾値を図10等に示したスライドバー73等により変更することも可能である。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、OCT装置側に由来するロールオフ特性に基づいて閾値を決定する態様である。
OCT装置システムにおけるロールオフ特性は、網膜の深さ方向に沿って深くなるほど信号強度が低下するという特性である。例えば、深さ1mmで信号強度が5dB低下する。
図12はOCT装置のロールオフ特性の一例を示す図である。取得手段41は干渉信号からロールオフ特性を取得することができる。図12において、ロ-ルオフ特性を関数f(z)として示している。Z=0における信号強度をI0 とすると、ロールオフ特性f(z)を考慮して、変更手段45は深さZにおける閾値Thを式4のように自動的に設定することができる。すなわち、前記変更手段45は、被検体の深さ方向における断層像データの信号強度の変化に基づいて閾値を変更する。
Th(z)=Th0-k(I0-f(Z)) ・・・・(4)ここで係数kは例えば0から1の実数として任意に設定が可能な係数である。式3において、係数kの値を上げると閾値が下がり、よりモーションコントラスト特徴量の検出感度を上げる効果が見込まれるが、ノイズの影響も考慮して係数kの値を設定すればよい。なお、この係数kをスライドバー73等のGUIにより変更可能とすることとしてもよい。また、変更手段45は係数kを第2の実施形態に基づき血管密度に応じて自動的に決定することとしてもよい。例えば、変更手段45は血管密度が高いほど係数kを小さくする。また、変更手段45は係数kを第3の実施形態に基づいてノイズ特性に応じて自動的に決定することとしてもよい。すなわち、網膜の深さ方向に沿って深い位置になるほど係数kを大きくする。
上記の実施形態によれば、ロールオフ特性を考慮して閾値を自動的に設定できるため精度よく血管を画像化することが可能となる。より具体的には、ロールオフ特性が存在するにも関わらず閾値を一つの固定値としてしまうと、信号強度が下がる深い位置ほど血管の抽出精度が劣化してしまう。このような状況においても上記の実施形態によればロールオフ特性を考慮して閾値を決定しているため精度よく血管を画像化することが可能となる。
なお、ロールオフ特性に基づいて自動的に決定された閾値を図10等に示したスライドバー73等により変更することも可能である。
また、上記実施形態においてはZ=0における信号強度I0を基準としているが、必ずしもZ=0の位置での信号強度を採用しなくてもよい。
例えば、Z=0の信号強度は干渉信号のDC成分であり、該DC成分がノイズとして残り安定して取得できない場合がある。したがって、Z=0近傍の強度データを取得しておき、外挿してZ=0でのI0を決定してもよい。
なお、OCT装置のロールオフ特性は、被検体の代わりに反射ミラーを置いてコヒーレンスゲート位置からZ方向にずらしながら干渉信号を計測することで取得される。このときに、Z=0の位置(コヒーレンスゲート位置)では、自己相関成分がノイズとして残るため、Z=0より少し深い位置(例えば150um程度)からの干渉信号データを取得することが一般に行われている。従って、Z=0での強度I0はZ=0より少し深い位置でのいくつかの強度データを取得しておき、外挿して決定することが望ましい。
[その他の実施例]
以上、実施例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、開示の技術の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。