本発明の光通信ノードは、波長デフラグメンテーションのための新規な構成を提供する。通信ノード内における、入力ポート(経路切り替えのための分波用WSSおよびAddポート)および出力ポート(合波用WSS)間のパスの途中に、少なくとも1つの波長変換手段を設ける。ある入力ポートから複数の方路へ向けた出力ポートまでのパスの内で、一部のパスは直接接続であり、残りの一部のパス上に波長変換手段が設けられる。すべてのパスに波長変換手段を備えても良い。波長変換手段に対しては、ポンプ光発生手段から、波長変換のために使用するポンプ光が供給される。波長変換手段へポンプ光を供給するための効率的で集積化に適したな構成も開示される。
さらに波長切り替えを行う光通信ノードにおける波長デフラグメンテーション動作と、情報データをDropする受信端ノードにおける波長の異なる2つの光信号の位相同期手順を連動させた光通信システム、これら光通信ノードの制御方法も開示される。以下、図面を参照しながら、本発明の光通信ノードの全体構成、その動作および各構成要素の具体的な構成について詳細に説明する。
[光通信ノードの構成]
図4は、本発明の光通信サブシステムの概略構成を示す図である。図4の光通信サブシステム20は、図1における方路数N=3のノードBやノードDに対応している。典型的には、光通信サブシステム20は、例えばROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)システムにおける光通信ノードに対応する。以下、簡単のため図4の光通信サブシステム20を光通信ノードと呼ぶ。図4の光通信ノードは、従来技術の一般的な光通信ノードの構成に加えて、本発明による波長デフラグメンテーションに必要な機能ブロックを追加した構成を持つ。図4の光通信ノード20は、方路数N=3の光ネットワークノードの構成を例に示すが、方路数Nは3だけに限られず、異なる方路数Nに適合させスケーラブルに構成できる。
図4において異なる方路の入力(In1、In2、In3)からの波長分割多重信号(以下WDM信号)が、それぞれ分波用波長選択スイッチ21−1〜21−3(WSS:Wavelength Selective Switch)(Ingress1〜Ingress3)に入力される。入力されたWDM信号は、分波用WSS21−1〜21−3の各々によって波長分波され、波長毎にいずれかの所望の方路(Out1〜Out3)に向かってルーティングされる。ルーティングされた光信号は、それぞれの方路(Out1〜Out3)の対応する合波用WSS29−1〜29−3(Egress1〜Egress3)により波長合波される。合波用WSS29−1〜29−3で波長合波された光信号は、WDM信号としてWSS29−1〜29−3の各々の出力(Out1〜Out3)より出力される。
上述の光通信ノード20におけるルーティングにおいて、入力側の分波用WSS21−1〜21−3と出力側の合波用WSS29−1〜29−3は、それぞれ図4の点線で示されたパスおよび実線で示されたパスによって接続される。ここで、例えばIn1とOut1との間などの同一方路のWSS間のパスでは、同じ方路に信号をルーティングして光信号を返すことになるので意味が無い。したがって、光通信ノード20内において、同一方路の分波用WSSおよび合波用WSS間は接続されない。
図4において点線で示されたパス23−1〜23−3は、入力側の分波用WSSおよび出力側の合波用WSSを直接接続するパスである。これに対し、実線で示された経路(パス)22−1〜22−3は、本発明の光通信ノードにおいて新たに加えられるパスであって、各々のパス上に波長変換手段が挿入される。従来技術の光通信ノードでは、方路In1から入力したWDM信号は、分波用WSS21−1を経由して波長分波され、点線のパス23−1を経由して合波用WSS29−2、29−3へと直接接続される。光通信ノード20において、分波用WSS21−1を経由して波長分波され実線のパス22−1を経由する場合、波長変換手段24a〜24dをそれぞれ経由して、合波用WSS29−2、29−3に接続される。分波用WSS21−1で分波された光信号は、波長変換手段24a〜24dにおいて波長変換された後に、合波用WSS29−2〜29−3を経て所望の方路へルーティングされる。分波用WSS22−2から合波用WSS29−1、29−3へのパス22−2、分波用WSS22−3から合波用WSS29−1、29−2へのパス22−3に対しても、同様の波長変換手段が設置される。
したがって本発明の光通信ノードは、異なる入力方路からの波長多重信号を分波する複数の分波用波長選択スイッチ21−1〜21−3と、前記複数の分波用波長選択スイッチの各々からの分波された光信号を含む波長多重信号を合波する複数の合波用波長選択スイッチ29−1〜29−3と、前記複数の分波用波長選択スイッチの各々と、前記複数の合波用波長選択スイッチとの各々との間を相互に接続する複数の経路とを備え、前記複数の合波用波長選択スイッチへ接続される経路22−1〜22−3の内の少なくとも1つの経路に対して、波長変換手段が設置されたものとして実施できる。この少なくとも1つの経路は、分波用波長選択スイッチおよび合波用波長選択スイッチの少なくとも1つの組み合わせの経路である。
特定の接続パス(たとえば、In1→Out2)において、波長変換手段はq台設置される。したがって、qは、特定の接続パスにおいて波長変換手段を含むパスの数となる。図4の光通信ノードの構成例ではq=2であり、qの値は1でも3でも構わないが、qが多いほうが光通信ノードで波長デフラグメンテーションを行う際の自由度は高い。光通信ノード20において、1つの方路の分波用WSSについて、qの値は接続パス(ルーティングする方路)毎に異なっていても良い。また何らかの他の理由によって、光通信ノード20の一部で、q=0すなわち波長変換手段が設置されない方路が含まれていても良い。
最も簡単な構成は、図4に示したように、異なる方路間の分波用WSSおよび合波用WSSを接続するすべての接続パスにおいて、波長変換手段が設置された同じ数の経路を含めば良い。以下の説明では、図4の構成を前提として、本発明の光通信ノードで使用される波長変換手段の構成について説明する。
[波長変換手段の構成]
図4の光通信ノードにおける波長変換手段24a〜24dとして、全光的波長変換手段を用いることができる。ここで全光的波長変換手段とは、光―電気―光変換(O/E/O変換)を実施せずに、全て光レイヤだけで波長変換を実施するものである。後述するように、本発明の光通信ノードにおける波長変換手段24a〜24dでは、光レイヤの非線形光学現象を利用して波長変換を行う。全光的波長変換手段は、電気レイヤを介在させないため、配備コスト、消費電力、部品の故障率、運用の煩雑さなどあらゆる面でメリットを持つ。
図4を再び参照すると、例えば1つの波長変換手段24aに対しては、信号光78が入力されるとともに、波長変換を生じるためのポンプ光77が入力される。ポンプ光77は、複数のポンプ光の1つとして、ポンプ光発生手段25−1により発生され、M×p構成のWSS26−1を介して、波長変換手段24a〜24dへと入力される。ポンプ光は、励起光とも呼ばれ、ポンプ光発生手段は励起光発生手段に対応する。以下、入力ポート数がMで出力ポート数がp構成のWSSをM×p WSSと呼ぶ。M×p WSS26−1における出力ポート数pは、p=(N−1)×qとなる。ここでNを光通信ノードにおける方路数、qを1つの方路から他の1つの方路への接続パスにおける波長変換手段を含む経路の最大数とする。
図4においてはqの値はすべての接続パスで同じであって、N=3、q=2であるから、ポンプ光発生手段におけるM×p WSS26−1における出力ポート数pは2×2=4となる。図4の光通信ノードのようにすべての接続パスでqの数が同じであれば、M×p WSSのすべてのポートを過不足なく利用できる。M×p WSS26−1における入力ポート数Mについては、後述する。図4の本発明の光通信ノードにおいては1つの分波用WSSからの接続パスに対して、1つのポンプ光発生手段からポンプ光が供給される構成とした。図14では、別の構成でポンプ光を供給する光通信ノードが説明される。
全光的波長変換手段としては、光ファイバや非線形結晶における四光波混合を用いた波長変換を用いることができる。加えて、半導体光増幅器の相互利得変調を用いても構わない。波長変換を行う手段としては、電気レイヤを介在させるため消費電力が増える欠点はあるが、全光的波長変換手段を用いないで、OE変換およびEO変換を伴うものであっても良い。この場合は、ポンプ光発生手段25−1〜25−3およびM×p WSSは不要となる。次に、波長変換手段とともに使用されるポンプ光発生手段のより具体的な構成について説明する。
[ポンプ光発生手段の構成]
図5は、本発明の光通信ノードにおけるポンプ光発生手段のより具体的な構成を示す図である。図5に示したポンプ光発生手段(励起光発生手段)は、励起光生成部25aおよび励起光周波数シフト部25bからなる。図5に示したポンプ光発生手段には、図4におけるM×p WSS26−1〜26−3が、励起光選択分配部26として含まれている。図5の励起光生成部25aでは、まずレーザダイオード光源LD41により出力された連続光(CW光)は、ガスセル42を経由してフォトディテクタPD43へと入力される。PD43により受光された光信号は、電気信号に変換されて、制御回路44に入力される。制御回路44は、LD41への注入電流を制御する機構を持っている。したがって、LD41、ガスセル42、PD43および制御回路44は、LD41からの出力波長を制御するフィードバックループを形成する。本ループにおいてLD41への注入電流に微弱な変調を加えることによって、ガスセル42の吸収線にLD41の発振波長をロックする制御ループが構成される。結果として、点60において、LD41から出力光の発振波長は非常に精密に所望の波長へとロックされる。
LD41から出力されたCW光の一部は強度変調器45により、周波数fで強度変調され、点61においてパルスが生成される。生成されたパルス光は、エルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA: Erbium Dopedoptical Fiber Amplifier)46で増幅された後に、高非線形ファイバHNLF47へと入力される。HNLF47では、点62において、自己位相変調によってスーパコンティニュウム光(周波数コム)が生成される。ここで周波数コムの周波数間隔は、周波数fである。
HNLF47で発生した周波数コムは、1×M WSS48によって、周波数コム光の中から所望のポンプ周波数の1つのCW光が選択される。点63において、選択されたCW光がSSB(Single Side Band)変調器49へ入力される。したがって、1×M WSS48は、周波数コム光をコム周波数毎に単一のCW光へ空間的に分波するコム分離手段として機能する。1×M WSS48の出力においては、最大M個のSSB変調器が並列に備えられる。変調周波数Δfで駆動されたSSB変調器49では、入力されたCW光の周波数を微調整する。微調整されたCW光は、EDFA50で増幅された後に、周波数シフト部25bから出力される。並列に備えられた最大M個のSSB変調器における変調周波数Δfは、それぞれ異なって良い。
周波数シフト部25bからの最大M個の微調整されたCW光は、励起光選択分配部26において、まずM×1 WSS52によって合波される。さらに、1×p WSS53によって分波されて、所定の出力ポート54a〜54dに希望の波長のCW光である励起光として出力される。出力ポート54a〜54dの何れかに出力された所望の波長のCW光は、図4におけるポンプ光発生手段からのポンプ光として、波長選択手段に供給される。出力ポート54a〜54dは、図4の波長変換手段24a〜24dに接続される接続端子であり、前述のCW光は、波長変換手段24a〜24dにそれぞれ入力される。周波数シフト部25bのEDFA50から出力されたCW光は、励起光選択分配部26を経由せずに、その一部を分岐して、分岐光51をポンプ光発生手段25−1〜25−3のポンプ光としても良い。
したがって、ポンプ光発生手段すなわち励起光発生手段は、CW光から周波数コム光を発生する励起光生成部25aと、前記励起光生成部で発生した前記周波数コム光を、コム周波数毎に単一のCW光へ空間的に分波するコム分離手段48と、前記分波された単一のCW光の周波数をシフトする複数の周波数シフト部(SSB変調器)49と、前記複数の周波数シフト部の各々からの前記周波数をシフトされたCW光を合波し、空間的に分波する励起光選択分配手段52、53とを含むものとして実施できる。
図6は、ポンプ光発生手段におけるポンプ光発生過程をスペクトルで示した図である。以下の説明における各点は、図5のポンプ光発生手段の点60〜66dに対応する。波長制御ループの出力である点60において、ガスセルの吸収スペクトルの1つに、LD41の発振波長がロックされ、CW光として出力される。強度変調器45の出力である点61では、CW光が強度変調されることによって側帯波を発生する。強度変調された光波がEDFA46で増幅された後、高非線形ファイバ中の自己位相変調により、スーパコンティニュウム(Supercontinuum)光を生成する。その結果、HNLF47の出力である点62では、スペクトルは非常に広い帯域に渡る周波数コム光67となる。ここで周波数コム光の間隔は、強度変調周波数fである。
周波数シフト部25bの1×M WSS48出力である点63において、周波数コム光67のうち所望のスペクトルを、1×M WSS48の各出力ポートに一波ずつ出力する。点63では、CW光68のまま出力される。このCW光はSSB変調器49の出力である点64において、周波数がΔfだけシフトされ、微調整されたものとなる。さらにM×1 WSS52の合波出力である点65において、異なるSSB変調器からの複数のCW光が合波される。図6では、3波が合波された状態を示している。最終的に1×p WSS53の出力ポートの各点66a〜66dにおいて、周波数シフトされた、所望の波長のCW光であるポンプ光が1つずつ分配される。1×p WSS53の各出力ポートには異なるSSB変調器からのCW光が一波ずつ分配、出力されるが、図6に示したように、同一の波長のポンプ光69−1、69−2を複数の出力ポートに分配しても構わない。図6では、1×p WSS53の2つの出力ポート54b、54dに同一の波長のCW光69−1、69−2を出力する例を示した。分配出力の方法は、後述の実施例で詳細に説明する。
図5に示したポンプ光発生手段では、励起光選択分配部26におけるM×1 WSS52の波長フィルタ機能により、必要とする波長のポンプ光をCW光として抜き出すことができる。したがって、図5における周波数シフト部25bのSSB変調器49は、両側帯波を発生する位相変調器または強度変調器に置き換えても良い。すなわち、SSB変調器49の代替変調器において発生した不要側帯波および搬送波は、M×1 WSSのフィルタ機能により除去することもできる。次に、図4の光通信ノードにおける波長変換手段24a〜24dの具体的な構成について説明する。
[波長変換手段の構成]
図7は、本発明の光通信ノードにおける波長変換手段の構成例を示す図である。波長変換手段24は、ポンプ光77および信号光78を合流する光合流器70と、信号光の波長を変換する非線形光学媒質72とからなる。光合流器70で合流されたポンプ光および信号光の強度が非線形現象を発生するのに不十分な場合は、EDFA71により光増幅した後に非線形光学媒質72に入力することができる。
光合流器70としては、光方向性結合器や波長選択スイッチを用いることができる。また非線形光学媒質72としては、高非線形光ファイバや周期分極反転LiNbO3導波路または半導体光アンプ等を用いることができる。さらに、本発明の光通信ノードの各要素においてEDFAとして説明した光増幅器は、代わりに半導体光アンプを用いても良い。
図8は、本発明の光通信ノードの波長変換手段における各部のスペクトルを説明する図である。以下の説明の各点は、図7の波長変換手段24の点73〜76に対応する。波長変換手段の2つの入力である点73、74において、相異なる波長のポンプ光81および信号光82がそれぞれ入力される。光合流器70の出力である点75において、上述の2波が合波される。次いで、点76において、非線形光学媒質72により縮退四光波混合によりアイドラ光84を発生する。ポンプ光81の光周波数をfp、信号光82の光周波数をfsとすると、アイドラ光84の光周波数fiは次式で表される。
fi=2fp−fs 式(1)
また非線形光学媒質72では、fiの発生と同時に信号光をポンプ光とし、ポンプ光をプローブ光として生じたアイドラ光83も同時に発生する。
図4の光通信ノードにおける波長変換手段24c、24dは、図4の光通信ノードにおける合波用WSS29−2(Egress2)に接続される。合波用WSS29−2のフィルタリング機能により、図8に示した元のポンプ光81、信号光82および不要なアイドラ光83は除去され、波長変換された後の光信号84(アイドラ光)だけが合波用WSS29−2の出力ポートである点80−2へと出力される。図8では波長変換動作の説明のためにアイドラ光84のみのスペクトルを示したが、図4の点80−2では波長変換されずに伝送される光信号や、他の波長に変換された光信号が合波されて出力される。
[複数の波長の光信号の波長変換のための構成]
前述の図8のスペクトルの説明では、ポンプ光を光通信ノードの特定の1つの波長の光信号の波長変換だけに用いる例を示した。しかし図5に示したポンプ光発生手段を用いると、本発明の光通信ノード20において複数の波長の光信号の波長変換を同時に行うのに用いることも可能である。図5のポンプ光発生手段では、周波数コム光67から1つのCW光を1×M WSS48で選択し、複数のSSB変調器を並列して独立して動作させ、同時に異なる波長のポンプ光を出力できるからである。これは異なる2つの光信号の波長を相互に入れ替える場合に効果的である。すなわち、fs2の光周波数を持つ光信号がfs4に変換され、fs4の光周波数を持つ光信号がfs2に変換されるような場合に適用できる。
図9は、2つの光信号の波長変換を一括で行う場合と、図5に示したポンプ光発生手段で波長変換を分割して行う場合の動作を比較して説明した図である。図9の(a)は、図7の波長変換手段の非線形光学媒質72へ、周波数fs2の光信号およびfs4の光信号を一括して導入して波長変換を行う場合の動作を説明する。光合流器70の出力である点75では、周波数fpのポンプ光を含めて3つの波長が存在する。非線形光学媒質72の出力である点76における光スペクトルは、fs2の信号光の残留成分および変換後のfi4が混合している。同様に、fs4の信号光の残留成分および変換後のfi2が混合している。これらの混合した信号は、それぞれ同一波長であるため、光通信ノード20の例えば合波用WSS29−2の出力ポートである点80−2で、WSS29−2のフィルタリング機能では分離できない。
図9の(b)は、図5に示したポンプ光発生手段において、同一波長のCW光69−1、69−2で波長変換を行う動作を説明する図である。図9の(b)に示すように、fs2→fi2(=fs4)の変換およびfs4→fi4(=fs2)の変換を、同一波長のCW光69−1、69−2を使い、別個の波長変換手段で行う。この場合は、図9の(a)で説明した一方の信号光の残留成分と他方の信号光の変換光成分の混合を避けることができる。すなわち、fpの光周波数をもつポンプ光69−1、69−2を、1×p WSS53の出力ポート54b、54dにそれぞれ分配し、波長変換手段24d、24bで個別に行う。
図9の(b)の上側の図には、波長変換手段24dにおいて信号光fs2をfs4に変換する場合を示す。ポンプ光fpおよび元の信号光fs2の残留成分の不要信号85は合波用WSS29−2でフィルタリングされ、点80−2において波長変換後の信号光fs4のみが抽出される。図9の(b)の下側の図には、波長変換手段24bにおいて信号光fs4をfs2に変換する場合を示す。波長変換手段24dの場合と同様に、不要信号86は合波用WSS29−3でフィルタリングされ、点80−3において波長変換後の信号光fs4のみが抽出される。このように、本発明の光通信ノード20では、2つの信号光の波長を入れ替えることも簡単にできる。ここでは2波に対する波長入れ替えの例を示したが、3つ以上の信号光の相互の波長変換に対して同一波長の3つのポンプ光を用いることも可能である。ここで説明した1×p WSS53の2つの出力ポートの点66b、66dで同一波長のCW光を出力することは、実施例2で後述する波長選択スイッチのブロードキャスト機能を用いて実現される。
図4に示した本発明の光通信ノードにより、従来技術と比べて、より柔軟で簡単な波長デフラグメンテーションが実現できる。送信ノードにおける送信器の周波数を変えずに、光通信ノード内の経路上で波長変換を行うことで、複数の通信ノード間に渡って必要であった面倒で複雑な制御が大幅に簡略化される。波長変更についての情報が受信ノードで知られていれば、予め受信ノードの受信器側で変更後の周波数(波長)に局部発振器の周波数を変更しておくことができる。ポンプ光発生手段でも、波長変更の実施の前に予め所定の周波数のポンプ光を準備しておけば良い。入力側WSSおよび出力側WSSの透過波長の設定を変更すれば、即座に光信号の波長変更を実施できる。受信ノード側では、変更前の波長による受信と、変更後の波長による受信を並行して行うこともできる。したがって、通信の中断を生じなくとも波長変更ができる。
次に、本発明の光通信ノードにおいて、各構成要素を集積化したWSSを用いて実現したより具体的な実施例を説明する。
図4に示した本発明の光通信ノードにおけるM×p WSS26−1〜26−3は、図5に示したM×1 WSS52および1×p WSS53を縦続接続することで実現される。一般に多入力多出力のWSSでは、入力ポートへの波長がすべて異なる場合、図5のように2つのWSSの共通ポート(合波側のポート)を接続できる。入力ポートへの波長がすべて異なれば波長衝突は起こらず、スイッチとして内部閉塞しない。図5における励起光生成部25aおよび周波数シフト部25bでは、周波数シフト部25bのM×1 WSS52への入力は原理的にすべて異なるので、内部閉塞は発生しない。M×p WSS26−1〜26−3と同様の機能のWSSは、1つの合波ポートを有する通常の1×(M+p−1)構成のWSSを用いても実現可能である。
図10は、本発明の光通信ノードにおける励起光の選択配分のためのM×p WSSの構成例を示した図である。単一の1×(M+p−1)構成のWSSを、図4に示したM×p構成のWSSとして用いる例を示している。図10の1×(M+p−1)構成のWSSは、(M+p)個の入出力ポート101、回折格子102、シリンドリカルレンズ103、104および偏向素子105から構成される。図10は、光の進行方向であるz方向を図面の横方向として、入出力ポート101の配列面(x−z面)を見た図と、これに直交する側面(y-z面)を見た図からなる。(M+p)個の入出力ポート101の内、M個を入力ポート101aとして、p個を出力ポート101bとして用いる。M個の入力ポート101aには、それぞれ異なる波長のCW光が入力される。たとえば、入力ポート101−2より入力されたCW光は、一点鎖線の光路に沿って伝搬する。このCW光は、まず回折格子102によって波長分波され、y−z平面内でCW光の波長に対応した方向に分散される。CW光は、さらにシリンドリカルレンズ103によりx−z平面内に屈折され、続いてシリンドリカルレンズ104によりy−z平面内で屈折され、最終的に偏向素子105に到達する。
M個の入力ポートの内の他の入力ポート、例えば入力ポート101−3より入力されたCW光は、点線の光路に沿って伝搬する。このCW光は、入力ポート101−2に入力されたCW光とは異なる波長を持つため、回折格子102で異なる方向に分散される。入力ポート101−4より入力されたCW光も同様に回折格子102によって、上述の2つのCW光とは異なる方向に分散される。異なる入力ポートから入力されたCW光はすべて異なる波長を有するため、各CW光は、最終的に偏向素子105上でy方向の異なる位置に着弾する。偏向素子105は、p個の出力ポート101bのうち所望のポートに出力するように各CW光を偏向する。偏向された各CW光は、シリンドリカルレンズ104、103および回折格子102を通過し、p個の出力ポート101bのいずれかに出力される。
上述のように、図5に示したM×1 WSS52および1×p WSS53を構成する多入力多出力のM×p WSSは、1つの合波ポートを有する、単一の1×(M+p−1)構成のWSSを図10のように構成することで実現できる。
図5に示したポンプ光発生手段では、1×p WSS53の2つの2つの出力ポート(点66b、66d)へ同一波長のCW光を出力の方法について言及した。本実施例では、偏向素子のブロードキャスト機能を使ってM×p WSSの異なる出力ポートから同一波長のCW光を出力する構成が説明される。本実施例におけるWSSの偏向素子としては、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いる。LCOSは、各々が個別に制御可能なピクセル状の位相変調素子を、2次元に配置した空間位相変調素子である。
図11は、本実施例の励起光の選択配分のためのM×p WSSで使用されるLCOSの構成を説明する図である。図10に示したLCOS105において、2次元に配置された位相変調素子(ピクセル)により表示される位相パターンと、LCOS105へ入射するCW光のビームとの関係を示している。図11の左側にはLCOS上に2次元に配置されたピクセルを見ており、3つのCW光が入射し、各々のCW光のビーム面106a、106b、106cが描かれている。このとき各CW光は、x方向についてはその中心位置105aに、y方向についてはそれぞれ異なる位置に着弾する。
それぞれのCW光がLCOS上で占める領域にあるピクセルによって、異なる位相変調パターンを表示することができる。例えば、一点鎖線で示したCW光のビーム面106aがカバーする領域106−2には位相パターン107−2を表示する。同様に、点線で示したビーム面106bがカバーする領域106−3には位相パターン107−3を、実線で示したビーム面106cがカバーする領域106−4には位相パターン107−4を、表示する。
各位相パターンは、位相値が2πで折り返される、のこぎり状のパターンであり、そのパターン周期によって入射光の偏光方向が調整される。例えば、位相パターン107−2は一定のパターン周期Λ1を有しており、ビーム面106aのCW光はすべて同一の方向に偏向される。位相パターン107−3は、中心線105aを境としてパターン周期Λ2およびΛ3の位相パターンからなる。このとき、パターン周期Λ2の領域に入射したCW光106bの成分と、パターン周期Λ3の領域に入射したCW光106bの成分はそれぞれ異なる方向に偏向される。位相パターン107−4は、パターン周期がΛ4、Λ5、Λ6の3つの成分からなっており、それぞれの領域に入射したCW光106cの成分はそれぞれ異なる方向に偏向される。
上述のように、LCOS105に入射するCW光のビーム面がLCOS上の領域で分割されるようCW光を入射させ、各領域の異なる位相パターンにより偏向することで、1つのCW光を、図10のM×p WSSの異なる出力ポートに導くことができる。すなわち、図5における1×p WSS53の異なる2つの出力ポートに同一波長のCW光を出力し、2つの波長変換手段に導入することが可能になる。
本実施例では、図5におけるポンプ光発生部における各波長合分波器の具体的な構成例について説明する。図5に示したポンプ光発生部では、波長合分波機能を備えたWSSとして、1×M WSS48、M×1 WSS52および1×p WSS53の三台が必要とされる。先の実施例2では、励起光選択配分のためのM×1 WSS52および1×p WSS53を単一の光学系で実現する構成を説明した。本実施例では、さらに1×M WSS48を加えて、3台のWSSを単一の光学系に集積する構成を説明する。
WSSの集積化の詳細を説明する前に、空間ビーム変換器(SBT:Spatial Beam Transformer)について説明する。SBTは光導波路素子に形成される回路要素であり、WSSの集積化を進めるための重要な構成要素である。
図12は、空間ビーム変換器の構成の概略を示す図である。SBT200は、基板上に形成された複数の入力導波路201、スラブ導波路202、およびアレイ導波路203からなる。入力導波路201に入力された光信号は、スラブ導波路202において基板面に平行な面内で広がりながら、アレイ導波路203に到達する。アレイ導波路203は、隣合う導波路間でそれぞれの光路長が等しくなるように構成されている。アレイ導波路203に到達した光信号は、その波面を保ったまま、チップ端204から自由空間に出力される。ここで、入力導波路201の内のいずれの導波路から光信号を入力するかによって、チップ端204から出力される光信号の自由空間での波面の向きが決定される。例えば、入力導波路201aから入力された光信号は光線205aの向きへ、入力導波路202bから入力された光信号は光線205bの向きへと出力される。
図13は、本発明の光通信ノードで用いられるポンプ光発生手段における3つのWSSを集積した光学系の光路図である。図13に示した光学系では、図5における1×M WSS48、M×1 WSS52および1×p WSS53の3つのWSSを集積する。以下の説明では、図13の光路図は、光の進行方向z方向を図面の横方向として、M+p個の入出力ポートの配列面(x−z面)を見た図と、これに直交する側面(y-z面)を見た図からなる。本実施例の集積化したWSSでは、入出力ポートとして、SBT回路要素を少なくともM+p個含んだ光導波路チップ301を用いる。
まず、複数のCW光を分離するコム分離手段である1×M WSS48としての動作を説明する。入力ポート301bから入力されたCW光300bは、SBT回路要素302bを経由して、点線303bの光路方向に自由空間へ出力される。このCW光は、回折格子102で波長分波された後、シリンドリカルレンズ103、104を介して偏向素子105へと到達する。偏向素子105は実施例2と同じく、LCOS素子を用いるのが好ましい。前述のようにCW光300bは、x軸方向には光線303bの方向に傾いて自由空間に出力されている。このため、LCOS素子上でも光軸との交点105aからx方向にオフセットした位置105bに着弾する。
偏向素子105は、SBT回路要素群305の内で、CW光の波長毎に所望の出力ポートを構成するいずれか1つ(SBT回路要素305b)の方向へ、CW光を偏向して、点線304bの光路を進む。図13に示した集積化したWSSでは、基本的には1つのSBT回路要素において、1つの波長のCW光が出力される。図5における、周波数シフトのためのSSB変調器49による周波数調整量Δfが同じである信号は、まとめて同一の出力ポートに出力しても構わない。図13の光路図の例では、偏向素子(LCOS)105により偏向されたCW光のうち、点線で示される波長の光信号は光線304bの方向への伝搬し、SBT回路要素305bを介して出力ポート306bより出力される。
励起光選択分配部であるM×p WSS(M×1 WSS52および1×p WSS53)としての動作は、以下のとおりである。SBT回路要素群305に接続された入力導波路のうち、1×M WSS48の出力ポートとして用いない導波路に、例えばSBT回路要素305bにCW光が入力される。このCW光は、図5における周波数シフト部25bの複数のSSB変調器の内の1つからのCW光となる。入力されたCW光300cは、SBT回路要素305bの端部から実線303c方向に自由空間へ出力される。CW光300cは、回折格子102、シリンドリカルレンズ103、104を介して、LCOS105上の点105cに着弾する。ここで着弾位置105cは、上述のCW光300bの場合と同様の理由により、光軸とLCOS105の交点105aとは異なる。空間への出射方向である光線303bおよび光線303cは異なる方向であるため、2つの着弾位置の点105bおよび点105cも異なる点となる。したがって、LCOS105で、x方向について点105bおよび点105cの近傍でそれぞれ異なる位相パターンを表示することで、1×M WSS48およびM×p WSSを、1つの光学系に集積することが可能となる。CW光300cは、最終的にSBT回路要素群307のいずれか1つに接続された出力導波路に出力される。図13では、出力ポート307cから出力される。
上述のように、本実施例の構成により、図5に示したポンプ光生成手段において必要な3つのWSS(1×M WSS48、M×1 WSS52および1×p WSS53)を、単一の光学系に集積することができる。すなわち、コム分離手段である波長選択スイッチ1×M WSS48を、多入力多出力の波長選択スイッチ(M×1 WSS52および1×p WSS53)と同一の光学系を共有することができる。本発明の光通信ノードにおいて追加されるポンプ光生成手段における構成要素を効率的に集積化して、光通信ノードにおけるノード装置の小型化を実現することができる。
図4に示した本発明の光通信ノードでは、入力方路毎に波長変換手段および対応するポンプ光発生手段を有する構成を説明した。すなわち、入力方路In1の分波用WSS22−1からの経路(パス)22−1に対して、ポンプ光発生手段25−1およびM×p WSS26−1を備えていた。同様に、入力方路In2の分波用WSS22−2からの経路22−2に対して、ポンプ光発生手段25−2およびM×p WSS26−2を備えていた。入力方路In3の分波用WSS22−3からの経路22−3でも同様である。しかしながら、ポンプ光の強度が十分であれば、異なる方路間に渡って1つのポンプ光発生手段からポンプ光を供給することもできる。
図14は、本発明の光通信ノードの別の構成例を示す図である。図14の光通信ノード400では、1つのポンプ光発生手段25からM×p WSS401を介してポンプ光が3つの方路(In1〜In3)すべての波長変換手段に供給される。方路In1における波長変換手段24a〜24dだけでなく、方路In2、In3のすべての他の波長変換手段へ、M×p WSS401の出力ポートが接続される。したがって、M×p WSS401におけるポート数pはこの光通信ノードにおける波長変換手段の総数と等しい。
本実施例の光通信ノードでは、pと波長変換手段の数が等しい例を示したが、pの数値はこの例に限定されない。複数の方路に対応する波長変換手段に対して単一のポンプ光発生手段でポンプ光を供給することで、光通信ノードにおける装置の小型化、低コスト化を実現できる。
上述の各実施例の光通信ノードでは、波長変換手段は複数の分波用波長選択スイッチの各々と、複数の合波用波長選択スイッチとの各々との間を相互に接続する複数の経路の少なくとも1つに設置されている。この構成では、間に中継するノードが存在しない隣接する2つのノード間には適用できない。しかしながら、光通信ノードのAddポートからの光信号に対して、直ちに波長変換を行いたい場合もあり得る。本実施例では、Addされる光信号における波長断片化が激しい場合などに好適な光通信ノードの構成を提示する。
図15は、本発明の光通信ノードのさらに他の構成を示した図である。図15の光通信ノード500は、図14に示した光通信ノード400に対して、さらにAddポート28からの経路上に波長変換手段を追加している。他の構成は図14と同じであるので、相違点についてのみ説明する。図15の光通信ノードは、Addポート28から3つの合波用波長選択スイッチ29−1〜29−3の各々へ、それぞれ2つの経路503が構成されている。各経路503上には、波長変換手段24e〜24jが設置される。入力方路および出力方路間の経路、並びに、Addポート28からの経路503上のすべての波長変換手段に対して、1つのポンプ光発生手段25からM×p WSS501を介してポンプ光が供給される。図15では、M×p WSS501の出力502から波長変換手段24e〜24jへポンプ光が供給される。
本実施例の光通信ノードでは、方路In1、In2、In3だけでなく、Out1、Out2、Out3に接続される経路上に存在するすべての波長変換手段へ、M×p WSS401の出力ポートが接続される。したがって図15の構成の場合は、M×p WSS501におけるポート数pはこの光通信ノードにおける波長変換手段の総数と等しく、出力ポート数pは、p=N×qとなる。尚、本実施例の光通信ノードでは、励起光選択分配部26のポート数pと波長変換手段の数が等しい例を示したが、pの数値はこの例に限定されない。励起光選択分配部26における空きポートを許容すれば、どのようなポンプ光発生手段の数や組み合わせ方法で、各波長変換手段へポンプ光を供給しても良い。
Addポートを含む複数の方路に対応する波長変換手段に対して単一のポンプ光発生手段でポンプ光を供給することで、光通信ノードにおける装置の小型化、低コスト化を実現できる。すなわち、複数の合波用波長選択スイッチへ接続される経路の内の少なくとも1つの経路であって、前記複数の合波用波長選択スイッチへ接続されるAddポートからの経路に波長変換手段が設置されている。
Addポート28上の経路に対しても波長変換手段を備えることで、送信器の直後で波長変換することになるが、光通信システム全体でより柔軟に波長を入れ替えることが可能となる。In1、In2、In3などを通過した光信号における波長断片化の状態より、Addされる光信号の波長断片化が激しい場合など、Addされる光信号の波長変換を実施して波長デフラグメンテーションを行う方が変換される波長数が少なくて済む場合がある。このため、図14に示した実施例の構成に加え、本実施例のようにAddポートの経路上で波長変換を可能とすることで、さらに柔軟な波長デフラグメンテーションが実現できる。本実施例のAddポートに対しても波長変換手段を備える構成は、当然に、最初に説明した図4の光通信ノードの構成にも適用できる。
本発明により、従来技術と比べて、より柔軟かつ簡単な波長デフラグメンテーションが実現できる。送信ノードにおける送信器の周波数を変えずに、光通信ノード内の経路上で波長変換を行うことで、複数の通信ノード間で面倒で複雑な制御が大幅に簡略化される。波長変更についての情報が受信ノードで知られていれば、予め受信ノードの受信器側で変更後の周波数(波長)に局部発振器の周波数変更を行っておけば良い。ポンプ光発生手段でも、波長変更の実施の前に予め所定の周波数のポンプ光を準備しておけば良い。入力側WSSおよび出力側WSSの透過波長の設定を変更すれば、即座に光信号の波長変更を実施できる。受信ノード側では、変更前の波長による受信と、変更後の波長による受信を並行して行うこともできる。したがって、通信の中断を生じなくとも波長変更ができる。本発明により追加となるポンプ光発生手段およびポンプ光の選択分配手段などの構成要素は、光平面回路で集積化したWSSを利用することで関連する装置を小型で低コストに実現できる。
上述の実施例1〜5では、柔軟で簡単な波長デフラグメンテーションを実施する光通信ノードの構成について説明した。実際に光通信システムが運用状態にある中で波長デフラグメンテーションを実施するためには、各光通信ノードにおける各デバイスの運用手順が重要となる。したがって本発明は、波長デフラグメンテーションを実施する光通信ノードと、情報データをDropする受信端の光通信ノードから成る光通信システムの側面を持っている。また、以下の実施例では、実施例1〜5の光通信ノードを利用した光通信システムにおいて、通信の信号断を生じさせない光通信ノードの構成および運用手順についても説明する。したがって本発明は、光通信システムにおける光通信ノードの制御方法としての側面も持っている。また、光通信システムにおける光通信ノード間の制御方法を実施する受信端光通信ノードとしての側面も持っている。
図6のポンプ光発生手段や、図8の波長変換手段のスペクトルで説明したように、波長デフラグメンテーションは、非線形光学効果に基づいた全光的波長変換手段である波長変換手段を利用する。非線形光学効果による波長変換では、最終的な変換後の信号光の他に不要な光も発生する。具体的には図8に示したように、信号光82、ポンプ光81、およびこれらをプローブ光としたアイドラ光83、所望の波長変換光であるアイドラ光(信号光)84が同時に発生する。波長変換を実施するノードにおいては、これらの光の内で、波長変換後の波長のアイドラ光である信号光84のみを利用して、光通信システムを運用する必要がある。波長変換前の信号光82を含め、不要な波長のポンプ光81、非線形光学効果によって生じたアイドラ光83は、例えば図4の合波用WSS29−1〜29−3によってブロックされる。
しかしながら、光通信システムが運用状態にある中で光信号の波長を切り替えようとする場合、切り替えの瞬間に通信の途絶が生じてしまう問題があった。ここで、波長変換前の光信号の波長をλ1、波長変換後の光信号の波長をλ2とする。波長変換を実施する光通信ノードおよび光信号をDropする受信端の光通信ノードにおいて、WSSや他のフィルタなどの各装置に対し、λ1からλ2への波長変更設定を実施すると、再設定に必要な時間の間に通信途絶が発生する。以下、情報データを伝送している光信号をDropする光通信ノードのことを受信端ノードと言う。
上述の通信途絶を避けるために、受信端ノードへλ1およびλ2の異なる波長の2つの光信号を同時に伝送する運用もできる。この場合も、受信端ノード側で、伝送路における波長分散の影響や、受信端ノード内における局内配線(光ファイバ)の長さの違いなどによって、異なる波長の2つの光信号間で受信タイミングにずれが生じる。受信端ノードでは、Dropした光信号はその波長に対応するトランスポンダー等に接続され、分波用WSSより後段側の波長分波をした後では、波長に対応する経路ごとに異なる遅延を持ち得る。受信端ノード側で、分波した経路ごとに受信タイミングのずれがある状態で2つの波長間で波長切り替え操作を行えば、信号断やデータ損失は避けられない。したがって、受信端ノードにおいてデータ損失をできる限り回避し情報データの受信を成功させるために、波長の異なる2つの光信号を位相同期させる機構、安定に位相同期を実施する手順が重要となる。
図16は、本発明の実施例6の光通信システムの構成を示す図である。図16では、ノードB600およびノードC700の2つの光通信ノードを含む光通信ネットワークの一部の構成を示している。2つの光通信ノード600、700間で、データ損失を発生させずに光信号の波長切り替えを実施する。図16に示した2つの光通信ノード600、700は、図1に示した光通信ネットワークのノードの配置状況において、ノードAからノードBを経由してノードCまで情報伝送を行う例を想定している。ノードB600において、実施例1〜5で説明したように光信号の波長を変更する波長デフラグメンテーションを実施する。波長変換後の光信号をノードCへと伝送し、ノードCにおいてこの光信号をDropする。したがって、ノードC700が受信端ノードとなる。各ノードにおける方路設定は、以下のとおりである。
ノードB600において分波用WSS603−2の入力ポートIn2に入力された波長λ1の光信号は、経路612上にある波長変換手段605において波長λ2に波長変換される。波長変換後のλ2の光信号は、ノードBの合波用WSS604−1の出力ポートOut1から伝送路650へ出力され、受信端ノードCへ伝搬する。注意すべきは、合波用WSS604−1のOut1からは、波長変換後のλ2の光信号に加えて、後述する位相同期手順が完了するまで、波長変換前のλ1の光信号も同時に出力されていることである。したがって、ノードB600の合波用WSS604−1は、位相同期手順が完了するまで、波長変換手段605が挿入された経路612からその出力ポートOut1へ、波長変換前後の異なる波長(λ1、λ2)の2つの光信号を出力するよう設定されることに留意されたい。
図8でも説明したように、先の実施例1〜5の光通信ノードでは、元のポンプ光81、信号光82および不要なアイドラ光83は除去され、波長変換された後の光信号84(アイドラ光)だけが合波用WSS29−2(図4)の出力ポートへと出力されるものとして説明した。本実施例では、後述する位相同期手順が完了するまで、不要としていた波長変換前の波長λ1を持つ元の光信号を利用する。
合波用WSS604−1の出力ポートOut1からの、少なくともλ1およびλ2を含む多重化した光信号は、伝送路650を経由して、ノードC700の分波用WSS703−1の入力ポートIn1へ入力される。In1へ入力された波長λ1およびλ2の2つの光信号を含む多重化光は、分波用WSS703−1の出力ポートの1つから経路710を経て、例えば図16の各光通信ノードに図示していないトランスポンダーで受信される。ノードB600およびノードC700は、それぞれ図14に示した実施例4の光通信ノードの構成を持つものとして説明するが、他の実施例の構成の光通信ノードであっても良い。また、各光通信ノードの方路の数や波長の設定は本実施例のものに限られない。
本実施例の光通信ノードは、そのDropポート側のトランスポンダーに至る経路に、波長切り替え処理部800を備えている。波長切り替え処理部800によって、実施例1〜5に示した光通信ノードの波長デフラグメンテーションの動作と連動して、データ損失の無い波長切り替えを実現する。波長切り替え処理部800は、異なる波長λ1およびλ2の2つの光信号を分波する波長分波部(DEMUX)801と、各々の波長の光信号に対する位相調整を行う少なくとも2系統のデータ受信パスと、位相同期制御部803と、2系統のデータ受信パスを切り替えて波長切り替えを実施する信号切替部806から構成される。
データ受信パスは、それぞれ、DEMUX801から分波された光信号の位相を調整する位相調整部802−1、802−2、各光信号の位相を推定する位相推定部804−1、804−2、各光信号の復号を行う受信部805−1、805−2からなる。次に、受信端ノードよりも上流側にある波長切り替えを行う光の通信のノード(ノードB)の波長デフラグメンテーションの動作と連動した、波長切り替え処理部800のより詳細な動作を説明する。
図17は、実施例6の光通信ノードにおける波長デフラグメンテーション動作および位相同期手順のフローを示す図である。フロー1000では、波長切り替えを行うノードB600の動作および受信端ノードC700の波長切り替え処理部800の動作が合わせて説明される。後述するように、波長切り替え処理部800では、2つの光信号の位相を推定し、2つの位相差を調整するよう動作する。ここで、用語「位相」は、光通信システムで伝送される光信号における「情報データのタイミング」を意味する。したがって、「位相推定」、「位相同期」、「位相調整」などの用語は、それぞれ「情報データのタイミング推定」、「情報データのタイミング同期」、「情報データのタイミング調整」に置き換えられることに留意されたい。波長デフラグメンテーションを実施して、光信号の波長を切り替える際には、情報データの中断や消失が生じてはならない。受信端ノードにおいて光信号をDropする経路上にある波長切り替え処理部800は、2つの光信号の情報データのタイミングを一致させるよう動作する。波長変換の前後の2つの光信号は、情報データを運ぶキャリアとしての光の波長(周波数)だけが異なっており、運んでいる情報データの内容は同一である。したがって受信端ノードにおいて、異なる波長の2つの光信号を切り替えるためには、ビットや変調シンボルが同期しているだけでなく、情報データの内容までを考慮して、タイミングを一致させる必要がある。2つの光信号の情報データのタイミングが完全に一致した後で波長を切り替えれば、波長切り替え処理部800より下流においてデータ損失は発生しないか、または、情報データの利用に支障のない程度の消失に抑えることができる。受信端ノードCにおける波長切り替え処理部800を、波長切り替えを行うノードBにおける波長デフラグメンテーションと連動して動作させ、実施例1〜5の光通信ノードを含む光通信システムをさらに安定して運用できる。
ステップ1001で、ノードBにおいて波長デフラグメンテーションを実施するλ1の光信号に対し、経路612上の波長変換手段605によってλ2の光信号を生成する。上述のように、この段階では、ノードBの合波用WSS604−1の出力ポートOut1からは、λ1およびλ2の両方の光信号が波長多重化されて同時に出力されている点に留意されたい。
ステップ1002で、波長変換前のλ1および波長変換されたλ2の各光信号は、受信端ノードC700の分波用WSS703−1によって分波され、経路710にDropされてDEMUX801に入力される。DEMUX801としては、例えばアレイ導波路グレーティング(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)やWSSが多く用いられる。
ステップ1003で、DEMUX801の異なるポートから出力されたλ1の光信号とλ2の光信号は、それぞれ、位相推定部804−1、804−2によって光信号の位相が推定される。上述のように、光信号の位相は光信号における情報データのタイミングを意味するので、ここでは2つの光信号の情報データのタイミングがそれぞれ推定される。図16の波長切り替え処理部の構成では、位相推定部804−1、804−2の下流側に受信部805−1、805−2を備えているが、位相推定部において、光信号を分岐して、情報データの少なくとも一部をデコードし、情報データのタイミングを求めても良い。2つの光信号の情報データのタイミングを求める方法としては、様々なものを選択できる。光信号のままで処理したり、一旦電気信号に変換してから処理したりすることできる。また、デコード前の中間周波数における処理や、デコード後の信号における処理、またはこれらの組み合わせによることもできる。後述するように、波長切り替え処理部では位相差分(タイミング差)を求めるため、情報データのタイミングは絶対時間である必要はなく、特定の時間からの相対的タイミングで良い。
ステップ1004で、上述の2つの位相推定値からλ1の光信号およびλ2の光信号間の位相差分を算出する。この位相差分が、 λ2の光信号に対する位相調整部802−2で調整可能な位相の可変範囲を超えているかどうかが判定される。上述のように、位相調整部は、タイミング調整部と言い換えることもでき、位相差分に代えてタイミング差を求め、タイミング調整部802−2におけるタイミング調整の可変範囲について判断をしても良い。
ステップ1001からの段階で、波長切り替え処理部800における最終段の信号切替部806は、波長変換前のλ1の光信号を選択している。805−1受信部からのλ1の光信号のデコード出力がさらに後段のトランスポンダーなどに供給され、情報データが伝送されていることに留意されたい。以下に述べるステップ1003以降の手順によって、λ1の光信号からλ2の光信号へ、データ損失の無い波長切り替えが準備されることになる。ステップ1004の位相差分が、位相調整部802−2の位相調整の可変範囲を超えていなければ(NO)、フロー1000はステップ1005に進む。
ステップ1005で、位相同期制御部803によってλ1およびλ2の2つの光信号が位相同期されるように、すなわち情報データのタイミングが一致するように、λ2の光信号に対する位相調整部802−2に与えるべき位相シフト量を求める。求められた位相シフト量を位相調整部802−2へ適用し、ステップ1004で算出された位相差分を解消するように、λ2の光信号の位相シフトを行うフィードバック動作が行われる。位相同期制御部803は、タイミング同期制御部として動作することが可能であり、位相シフトはデータ情報のタイミングシフト(タイミング調整)と言い換えることもできる。ステップ1004における2つの光信号の位相差分が、位相調整部802−2による位相調整の可変範囲を超えていれば(YES)、手順はステップ1008に進む。
ステップ1008で、位相同期制御部803の制御によって、上記のλ2の光信号に対する位相調整の可変範囲を超えた分(残量相当)の位相差を、位相シフト量としてλ1の光信号に対する位相調整部802−1に与え、λ1の光信号を位相シフトする。その後、手順はステップ1003に戻り、再び位相推定部804−1、804−2によってλ1およびλ2の2つの光信号各々の位相が推定される。ステップ1008から戻った後の段階では、ステップ1008で実施されたλ1の光信号に対する位相調整部802−1による位相調整によって、λ1の光信号およびλ2の光信号間の当初の位相差は減少している。したがって、ステップ1008を経由した後のステップ1004の判断はNOとなり、上述のステップ1005へ進むことになる。
ステップ1006で、λ1の光信号およびλ2の光信号間の位相差分が、その許容値以下であるかどうかが判断される。位相差分は、λ1の光信号およびλ2の光信号間のタイミング差に置き換えられることは言うまでもない。ここで、位相差分(タイミング差)が許容値を超えていれば(NO)、ステップ1009に進む。
ステップ1009で、位相同期制御部803の制御によって、2つの光信号の位相差分を解消するためにλ2の光信号に対する位相調整部802−2に与えるべき位相シフト量を計算する。再びステップ1005に戻って、位相同期制御部803の制御の下で、位相調整部802−2によってλ2の光信号が位相シフトされフィードバック動作が行われる。ステップ1009の繰り返し回数は、1回の動作のフィードバックループ制御の位相制御量、ループゲインなどのパラメータによって変わり、位相同期制御部803の具体的な制御方法、アルゴリズムに依る。上述の位相差分の許容値は、光通信システムにおける情報伝送のレートや光信号の変調方式に応じて、決定される。情報データの伝送レート(すなわちボーレート)が高い場合や、変調次数が大きい変調方式であれば、位相差分(タイミング差)の許容値を厳しく設定することができる。ステップ1006で、λ1の光信号およびλ2の光信号間の位相差分が、許容値以下であれば(YES)、手順はステップ1007に進む。
ステップ1007で、波長切り替え処理部800における最終段の信号切替部806によって、λ2の光信号を出力するように経路を切り替えて、フロー1000の手順は完了する。
上述のステップ1004、1005およびステップ1008における手順では、λ1の光信号およびλ2の光信号間の位相差分を解消するために、波長変換後のλ2の光信号に対する位相調整部802−2を利用した位相調整を優先している。波長変換前の波長λ1の光信号がオリジナルのデータ情報であり、波長切り替え前から現に情報伝送が行われている光信号であるので、λ1の光信号に対しできる限り不用意に操作を加えないのが好ましいからである。したがって、λ1の光信号の位相調整部802−1をできるだけ動作させずに、λ2の光信号の位相調整部802−2を優先して調整することが望ましい。ステップ1008のように、λ1の光信号およびλ2の光信号の位相差分がλ2側の位相変調部802−2の動作範囲を超えた場合にのみ、λ1の光信号の位相調整部位相変調部802−1を動作させることが望ましい。
したがって本発明は、異なる波長の光信号を多重化して、情報データを伝送する光通信システムにおいて、異なる入力方路からの波長分割多重信号を分波する複数の分波用波長選択スイッチ(603−1〜603−3)、前記複数の分波用波長選択スイッチの各々からの分波された信号光を含む波長分割多重信号を合波する複数の合波用波長選択スイッチ(604−1〜604−3)、並びに、前記複数の分波用波長選択スイッチの各々と、前記複数の合波用波長選択スイッチとの各々との間を相互に接続する複数の経路を備え、前記複数の合波用波長選択スイッチへ接続される経路の内の少なくとも1つの経路612に対して、波長変換手段605が設置された第1の光通信ノード600と、前記第1の光通信ノードにおいて波長変換される前の第1の光信号と、当該第1の光信号が波長変換された第2の光信号を、波長分波する波長分波手段703−1、901、並びに、前記第1の光信号および前記第2の光信号の間の情報データのタイミングを推定するタイミング推定部904−1,904−2、および、前記第1の光信号および前記第2の光信号の間の情報データのタイミング差を減少させるタイミング調整部903、904−1、904−2を含む波長切り替え処理手段900を備え、前記情報データを運ぶ前記第2の光信号をドロップする第2の光通信ノード700とを備えた光通信システムとして実施できる。
さらに、上述の光通信システムにおいて、第1の光通信ノードで、波長λ1の前記第1の光信号に対して波長変換を実施し、波長λ2の前記第2の光信号を生成するステップと、前記第2の光通信ノードで、前記タイミング推定部によって前記第1の光信号および前記第2の光信号のタイミングを推定するステップと、前記第2の光通信ノードで、前記第1の光信号および前記第2の光信号のタイミング差が減少するように前記タイミング調整部を動作させるステップと、前記第2の光通信ノードで、前記第1の光信号から、前記第2の光信号へ受信方路を切り替え、前記第2の光信号から前記情報データを取得するステップと、前記第1の光通信ノードおよび前記第2の光通信ノードで、λ1に関わる光パスを削除するステップとを含む位相同期手順を実施する光通信ノードの制御方法としても実施できる。
位相調整部802−1、802−2における位相の調整精度は、一例として現在導入が進められている100GシステムやBeyond 100Gと呼ばれるシステムにおける規格に基づいて時間に換算すると、0.01〜0.1nsec程度になる。現在の光通信における情報伝送速度は、25〜50×109baud程度なので、この伝送速度の逆数相当の位相(タイミング)調整精度が必要となる。また、位相調整の可変範囲は、真空換算で、局内の光ファイバの長さにばらつきがあるとすれば、30nsec程度の調整範囲が必要になる。
位相調整部802−1、802−2、位相同期制御部803、位相推定部804−1、804−2、受信部805−1、805−2、信号切替部806の各々については、独立したデバイスである必要はなく、また光信号のまま扱うデバイスであっても、光信号を電気信号に変換して処理を行うデバイスであっても構わない。特に電気信号に変換して処理を行う場合は、長距離大容量通信の装置に広く利用されているデジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)などを選択できる。DSPやFPGA等で通信処理用等に既に実装されている位相推定機能などを波長切り替え処理部800の各要素に利用可能であり、上述の位相同期制御処理をコンパクトに実現できる。
波長切り替え処理部800の各要素は、図17で説明した位相同期手順と同様の機能が実現できる限り図16に示した順序、接続関係で配置される必要はなく、また必ずしも全ての要素を備えている必要もない。例えば、DEMUX801は、光信号のDropを行って、例えばトランスポンダーへ導くために従来技術の光通信ノードで利用される一般的な分波手段であれば良い。波長の数に拠って分波手段はさまざまに構成可能であって、DEMUX801を省略することもできるし、光スイッチとWSSを組み合わせた構成とすることもできる。波長切り替えの前後のλ1とλ2の2つの光信号を、2系統のデータ受信パスへ供給できれば良い。
また、図16に示した波長切り替え処理部ではDEMUX801の出力は2系統のデータ受信パスに接続されるよう構成されているが、図17の位相同期手順を別の波長の組に対して同時に行えるよう、4系統のデータ受信パスを構成して、2つの異なる波長切り替え動作(λ1→λ2、λ3→λ4)を同時に行うよう構成することもできる。また、信号切替部806と、受信部805−1、805−2との位置を入れ替えて、受信部を1つにすることもできる。さらに、受信端ノードの波長切り替え処理部800の後にはトランスポンダーだけでなく、Dropした光信号を利用する任意の機能ブロックを接続可能である。したがって、波長切り替え処理部800では、情報データをデコードするための受信部を必ずしも備えている必要はない。また、受信部805−1、805−2でのデコード後のシンボルやデータビットに対して、位相調整(タイミング調整)を行うこともできるので、位相調整部802−1、802−2の前に受信部805−1、805−2を備えても良い。
図17のフロー1000の手順を実施することで、λ1およびλ2の2つの光信号を位相同期させ、情報データのタイミングが一致した状態とした後で、信号切替部806で波長変換後のλ2の光信号に切り替えることで、新たな波長の光信号での通信が達成される。波長切り替え処理部800による位相同期手順を完了した後は、ノードB600およびノードC700において、λ2の光信号を伝送している区間に存在するデバイス例えばWSSなどでは、波長変換前のλ1の光信号は不要となる。順次λ1の光信号のブロック(block)等を実施して、λ1の光信号が存在していた区間の不要な光パス設定を削除することで、光通信システム全体の波長デフラグメンテーションは完了する。
図16の光通信システムの光通信ノード構成および図17のフローを要約すれば、本実施例の光通信ノードにおいては、データ損失を発生させずに波長デフラグメンテーションを実施するため、以下のステップを順次実施する。受信端ノードでは、λ1の光信号によりデータ情報を受信している状態にある。
(1) 波長切り替えノードにおいて、λ1の光信号に対して波長変換を実施し、λ2の光信号を生成する。
(2) 受信端ノードにおいて、位相推定部によりλ1およびλ2の各光信号の位相(情報データのタイミング)を推定する。
(3) 位相推定部からの情報を基に、位相同期制御部で解析を実施し、各々の位相が揃い、情報データのタイミングが一致するように、位相調整部にフィードバック制御する。
(4) 受信端ノードにおいて、λ1の光信号からλ2の光信号へ受信方路を切り替えて、後続する機能ブロックへ光信号を供給する。
(5) 波長変換前のλ1の光信号に関わる光パスを削除する。
本実施例の光通信ノードを、実施例1〜5として説明した波長デフラグメンテーションを実施する光通信ノードの動作と、受信端ノードにおける位相同期手順を連動させることで、データ損失の無い波長切り替えを実現できる。
先の実施例6の光通信ノードでは、波長切り替え処理部による位相同期手順について述べた。実施例6の波長切り替え処理部による位相同期手順では、光信号の位相同期、位相調整は光信号のデコード前でもデコード後でも可能であって、一般的な構成を示した。本実施例では、受信端ノードにおいてさらに効率的に位相同期が可能な、MIMO等価器を利用したより具体的な構成について説明する。
非特許文献2に記載の実験系(図1)では、2つの波長それぞれに同一の信号にて変調し、適応MIMO(Multi-Input and Multi-Output)等化器にて最大比合成することで位相同期を実現することが開示されている。より具体的には、非特許文献2の実験系(図1)では、コヒーレント受信器にて2つの波長の光信号(チャネル1、チャネル2)を各々デコードし、デコードされた信号が適応MIMO等化器に接続される。適応MIMO等化器では2つの信号のタップ係数を適切な値に制御し、2つの信号を合成する。このとき2つの信号の位相が適切に調整されると信号品質が最大化され、品質最大の状態に設定した上でオリジナルの光信号(チャネル1)を停止する。本実施例の光通信ノードは、より具体的な構成例として最大比合成部(適応MIMO等化器)を利用する。以下、主に実施例6の構成との相違点について説明する。
図18は、本発明の実施例7の光通信システムの構成を示す図である。図18でも、2つの光通信ノード600、700間で、データ損失を発生させずに光信号の波長切り替えを実施する。図18の光通信システムに示した2つの光通信ノードB600、光通信ノードC700では、実施例6と同様に、ノードBを経由してノードCへ情報データの伝送が行われる。本実施例では、2つの光信号を生成するのに、実施例1〜5で説明した波長変換手段が用いられ、波長変換前および波長変換後の光信号が、受信端ノードC700の分波用WSS703−1の入力ポートIn1へ入力される。In1へ入力された波長λ1およびλ2の2つの光信号を含む多重化光は、分波用WSS703−1で分波され、2つの光信号は分波用WSSの出力ポートの1つから経路710を経て、トランスポンダーで受信される。
本実施例の光通信ノードは、そのDropポート側のトランスポンダーに至る経路に、波長切り替え処理部900を備えている。波長切り替え処理部900によって、実施例1〜5に示した光通信ノードの波長デフラグメンテーションの動作と連動して、データ損失の無い波長切り替えを実現する。波長切り替え処理部900は、異なる波長λ1およびλ2の2つの光信号を分波する波長分波部(DEMUX)901と、各々の波長の光信号に対する検波および位相推定を行う少なくとも2系統のデータ受信パスと、2つの波長の光信号を最大比合成するための最大比合成部907と、各波長の位相情報を取得し各々の位相を同期するために必要な位相調整量を解析する位相同期制御部903で構成される。各系統のデータ受信パスは、コヒーレント検波を実施するためのコヒーレント検波部906−1、906−2、各々の波長に対して入力された光信号の位相を推定する位相推定部904−1、904−2にて構成される。
最大比合成部907では、2つの光信号を最大比合成したときの信号のQ値を算出する。位相推定部904−1、904−2において2つの光信号の位相を推定するとともに、このQ値が最大となるように、最大比合成部907のフィルタタップ他を制御する。最大比合成部907としては、例えば適応MIMO等価器を利用できる。最大比合成部907では、2つのチャネルの一致度が上がるほど、雑音レベルよりも信号レベルが上昇し、信号のQ値が増加する。そして2つの信号の位相が同期し、情報データのタイミングが一致した場合にQ値が最大となる。したがって、最大比合成部907の等化機能を利用して、波長λ1およびλ2の2つの光信号の位相を調整できる。λ2の光信号が波長切り替え処理部900に入力されると、直ちに最大比合成部907によって、最大比合成したときのQ値が最大となるよう動作する。最大比合成の状態となった後で、波長変換前のλ1の2光信号を消光するのは実施例6と同じである。本実施例では、λ1およびλ2の光信号各々に対して、コヒーレント検波部906−1、906−2で電気信号への変換およびデコードを行い、その各々の電気信号を最大比合成部907にて電気的に合成している。したがって、最大比合成部907の出力は、論理合成をした後のデコードされた電気信号910が出力されている。したがって、実施例6のような切替SWが不要である。λ2の光信号への切替は、λ1の信号およびλ2の信号の同期がとれた状態で、λ1の光信号を消光するだけで済む。
実施例7の光通信ノードでも、波長デフラグメンテーションを実施する波長変換ノードB600において、波長変換手段605により光信号の波長変換する際に、変換前のλ1の光信号と変換後のλ2の光信号を同時に併存させることができる。通信技術に使用される適応MIMO等化部を利用して、必要最小限の構成でデータ損失のない位相同期手順実現することができる。
上述の実施例6および実施例7のいずれにおいても、波長切り替え処理部800、900の各ブロックは、例えばDrop側の光信号の波長に対応したトランスポンダー内に構成することができる。また、位相同期制御部803、903は、たとえば、トランスポンダーの共通の制御部の一部として構成することができる。
以上詳細に述べたように、本発明の光通信システムは、従来技術と比べてより柔軟かつ簡単な波長デフラグメンテーションが実現できる光通信ノードを含む。波長変換を行うノードの波長デフラグメンテーション動作と、受信端ノードにおける位相同期手順とを連動させることで、データ損失のない波長切り替えによって光通信システムの安定した運用が可能となる。