JP6985048B2 - シート型メタマテリアル - Google Patents
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Description
これらの図に示す従来のメタマテリアル100は、x−y平面に置かれた矩形の誘電体基板110の表面に細長い矩形の表面カットワイヤー111が互いに平行にy方向に多数本形成され、裏面に細長い矩形の裏面カットワイヤー112が表面カットワイヤー111にそれぞれ重なるように多数本形成されている。この場合、裏面カットワイヤー112は、表面カットワイヤー111に対して長軸方向(y方向)に、約1/2だけずらして形成されている。
周期境界壁115で囲まれた単位セルAをx−y平面に配置して、y方向に表面カットワイヤー111と裏面カットワイヤー112とを配設し、y方向に偏波されたテラヘルツ波帯の入射波Inを入射させる。入射波Inは、その電界成分Eがy方向となり、その磁界成分Hがx方向となって、進行方向kはz方向となる。すると、鎖交する磁界により誘電体基板110の表面カットワイヤー111と裏面カットワイヤー112との間に逆方向に電流が流れ磁性体粒子として働くようになる。特に、表面カットワイヤー111と裏面カットワイヤー112の長さlに基づく共振周波数以上では等価透磁率が負を呈する周波数帯域が生じるようになる。また、y方向の電界Eにより表面カットワイヤー111と裏面カットワイヤー112上で分極が起こり、誘電体粒子としても働くようになる。特に、表面カットワイヤー111と裏面カットワイヤー112の長さlに基づく共振周波数以上では等価誘電率が負を呈する周波数帯域が生じるようになる。この場合、従来のメタマテリアル100においては、誘電率および透磁率が共に負となる所定範囲の周波数領域が得られるようになる。
さらに、上記本発明のシート型メタマテリアルにおいて、前記誘電体基板の素材が、シクロオレフィンポリマーとされていてもよい。
さらにまた、上記本発明のシート型メタマテリアルにおいて、前記第1カットワイヤーは、前記誘電体基板の一面に形成された金属インクによる成膜をエッチング加工することにより形成され、前記第2カットワイヤーは、前記誘電体基板の他面に形成された金属インクによる成膜をエッチング加工することにより形成されていてもよい。
さらにまた、上記本発明のシート型メタマテリアルにおいて、前記金属インクがナノインクとされていてもよい。
さらに、本発明のシート型メタマテリアルにおいて、入射波の偏光方向を電界成分Eの方向がy軸方向となる垂直偏波とすると、負の屈折率を発現する。また、入射波の偏光方向を電界成分Eの方向がx軸方向となる水平偏波とすると、本発明のシート型メタマテリアルは、負の屈折率を呈することに替わり高屈折率を呈することが確かめられた。これにより、本発明のシート型メタマテリアルは、テラヘルツ波帯において偏波(偏光)方向に応じた制御にも利用することができる。
これらの図に示す本発明の実施例にかかるシート型メタマテリアル1は、テラヘルツ波帯において屈折率が負を示すシート型メタマテリアルとして動作する。このシート型メタマテリアル1は、図1ないし図5に示すようにx−y平面に置かれた柔軟なシート状の誘電体基板12の表面に略正方形の第1カットワイヤー10が、図1(b)に示すようにy軸方向に間隔gを空けてピッチpyで配列されると共に、y軸と直交するx軸方向に間隔sを空けてピッチpxで配列されて多数形成されている。また、誘電体基板12の裏面には、第1カットワイヤー10とほぼ同形状で同様に形成された第2カットワイヤー11が多数形成されている。すなわち、図2,図3に示すようにx−y平面に置かれた柔軟なシート状の誘電体基板12の裏面に略正方形の第2カットワイヤー11がy軸方向に間隔gを空けてピッチpyで配列されると共に、y軸と直交するx軸方向に間隔sを空けてピッチpxで配列されて多数形成されている。この場合、第2カットワイヤー11は、y軸方向で隣接する第1カットワイヤー10の間の第1カットワイヤー10が形成されていない領域に重なるように、第1カットワイヤー10とy軸方向に間隔gの長さだけずれて配置されて多数並べて形成されている。
本発明にかかるシート型メタマテリアル1では、磁性の共振周波数が、誘電性の共振周波数より若干高い共振周波数となる。これは、誘電体基板12を介して第1カットワイヤー10と第2カットワイヤー11との間の容量が増えるため、誘電性の共振周波数が下がることも原因の一つと考えられる。第1カットワイヤー10および第2カットワイヤー11を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。
図7は、0.5THz〜2.5THzの周波数帯域における複素屈折率neffの周波数特性の解析結果を示している。図7を参照すると、複素屈折率の実部Re(neff)の解析結果では0.5THzにおいて約2.3となり、約1.8THzまでは周波数の上昇に伴い次第に上昇し、約1.8THzを超えると、約3.2から−3.3の負の屈折率に急激に反転する。そして、周波数が約1.9THzを超えると急激に上昇して約2.15THzにおいてほぼ0となる。また、複素屈折率の虚部Im(neff)の解析結果では0.5THzから約1.7THzまではほぼ0となり、その後は周波数の上昇に伴い緩やかに上昇し約1.8THzにおいて約0.4となり、さらに周波数が上昇すると緩やかに下降して約1.9THzにおいてほぼ0となる。さらに周波数が上昇すると約2.15THzまではほぼ0となるが、その後は周波数の上昇に伴い上昇して約2.3THzにおいて約1.0のピーク値となり、その後は下降して2.5THzにおいて約0.6になる。
また、図8を参照すると比誘電率εrの虚部Im(εr)の解析結果では、0.5THz〜約1.7THzにおいてほぼ0となり、約1.7THzを超えると急激に上昇して約1.75THzにおいて約30のピーク値となる。約1.75THzを超えると急激に下降して約1.85THzにおいて正から負へ反転して約−4となり、その後は上昇して約1.9THzにおいてほぼ0となり、2.5THzまではほぼ0となる。
設計周波数2THzにおいて、解析結果では、−2+j0の比誘電率εrが得られている。
また、図9を参照すると比透磁率μrの虚部Im(μr)の解析結果では、0.5THz〜約1.7THzまではほぼ0となり、約1.7THzを超えると周波数の上昇に伴い下降し約1.85THzにおいて約−2.5となるが、約1.85THzを超えると負から正へ急激に反転して約1.9THzにおいて約10のピーク値が得られる。そして、約1.9THzを超えると急激にほぼ0まで下降して、2.5THzまでほぼ0が維持される。
設計周波数2THzにおいて、解析結果では、−3+j0の比透磁率μrが得られている。
上記したように単位セル13の比誘電率εrおよび比透磁率μrが設計周波数2THzにおいて共に負の値となり、設計周波数2THzにおいてシート型メタマテリアル1の実効屈折率neffが負となることが分かる。
また、図10を参照すると、反射電力|S11|2の解析結果では透過電力|S21|2の解析結果とほぼ逆の周波数特性を示していることが分かる。すなわち、0.5THzにおいて約22%となり、周波数の上昇に伴い上昇して約1.25THzにおいて約50%まで上昇するが、その後に下降し約2THzにおいて約3%の最小値が得られる。その後、周波数が上昇すると急激に上昇して2.5THzにおいて約80%となる。
設計周波数2THzにおいて、解析結果では、約92%の透過電力と約3%の反射電力が得られている。このように、図6に示す寸法とすることにより、設計周波数2THzにおいて負の屈折率を呈すると共に良好な透過電力特性のシート型メタマテリアル1とすることができる。
また、図11を参照すると複素比インピーダンスZrの虚部Im(Zr)の解析結果では、約0.5THz〜約1.6THzまではほぼ0となり、約1.6THzを超えると周波数の上昇に伴い急激に下降して約1.9THzにおいて最小の約−3.7となる。約1.9THzを超えると急激に上昇してほぼ0となり約2.18THzまで維持される。約2.18THzを超えると急激に上昇して、約2.18THzを超えた周波数で最大の約4.0となるが、その後は急激に下降して2.5THzにおいて約0.2となる。
設計周波数2THzにおいて、解析結果では、1.2+j0の比インピーダンスZrが得られている。
本発明のシート型メタマテリアルは、略正方形とされた金属製の第1カットワイヤーを、厚さdの誘電体基板の表面においてy軸方向に、間隔sを空けてy軸と直交するx軸方向に並べて配列し、第1カットワイヤーと同形状の第2カットワイヤーを、誘電体基板の裏面において、第1カットワイヤーとy軸方向で重ならないようにずらせて配列して構成されている。
また、本発明のシート型メタマテリアルでは、第1カットワイヤーと第2カットワイヤーとの幅wと長さlとを等しくするのが理想的であるが、幅wと長さlとの縦横比を1:0.9ないし1:1.1としても、図6ないし図11に示す電気的特性とほぼ同様の電気的特性を得ることができる。
さらに、本発明のシート型メタマテリアルでは、第1カットワイヤーと第2カットワイヤーとがy軸方向で重ならないと共に隙間なく配置されるのが理想的とされるが、±10%以内の面積であれば、第1カットワイヤーと第2カットワイヤーとがy軸方向で重なっていても、図6ないし図11に示す電気的特性とほぼ同様の電気的特性を得ることができる。
さらにまた、本発明のシート型メタマテリアルでは0.3THzないし3THzのテラヘルツ波帯において、第1カットワイヤーと第2カットワイヤーとの長さ等を使用周波数に共振する長さに調整することにより、図6ないし図11に示す電気的特性とほぼ同様の電気的特性を得ることができる。
さらにまた、本発明のシート型メタマテリアルにおいて、入射波の偏光方向を電界成分Eの方向がy軸方向となる垂直偏波とすると、負の屈折率を発現する。また、入射波の偏光方向を電界成分Eの方向がx軸方向となる水平偏波とすると、本発明のシート型メタマテリアルは、負の屈折率を呈することに替わり高屈折率を呈することが確かめられた。これにより、本発明のシート型メタマテリアルは、テラヘルツ波帯において偏波(偏光)方向に応じた制御にも利用することができるようになる。
具体的には、AgナノインクとしてはC-INK社製ドライキュアAg-JB、誘電体基板として日本ゼオン社製Zeonor Film ZF16が使用できる。誘電体基板上に所定の開口部を設けたメタルマスクを設置し、Agナノインクをスクリーン印刷したのち、ホットプレートに設置して120℃60分の焼成を行うと、第1カットワイヤーを形成することができる。このように形成した第1のカットワイヤーにおける焼結されたAgパターンの抵抗率を測定したところ3.0×10-5Ω・mであった。次いで、誘電体基板の反対面にメタルマスクを設置し、第1カットワイヤーと同様の方法でAgナノインクを印刷し、第1カットワイヤーと同様の条件で焼成を行うことにより、第2カットワイヤーを形成することができる。なお、Zeonor film ZF16は透明であり、第2カットワイヤーを形成するためのメタルマスクの設置位置は、すでに形成した第1カットワイヤーに対して所定の位置に容易に設置することができる。
また、別の方法としては、ベタパターンになるようナノインクを誘電体基板上に塗布したのち焼結し、次いでエッチングすることにより第1カットワイヤーおよび第2カットワイヤーのパターンを形成する方法も可能である。具体的には、C-INK社製ドライキュアAg-JBをインクジェット印刷機で誘電体基板の一方の面にベタパターンになるよう塗布し、ホットプレート上に設置して焼結したのち、所定のパターンに開口したレジストを形成し、Agエッチング液を用いてエッチングすることにより、第1カットワイヤーを形成する。次いで、誘電体基板の反対面に同様の方法で第2カットワイヤーを形成する。
さらに、Agナノインクの他、スパッタ法やメッキ法で金属導体を形成する方法もある。この方法では、誘電体基板上にTi/Cuスパッタしたのち、電解メッキまたは無電解メッキでCuを約1μmくらいの厚さで形成し、エッチングすることにより抵抗が低く高周波特性のよい第1カットワイヤーと第2カットワイヤーとを形成することができる。
10 第1カットワイヤー
11 第2カットワイヤー
12 誘電体基板
13 単位セル
14 周期境界壁
100 シート型メタマテリアル
110 誘電体基板
111 表面カットワイヤー
112 裏面カットワイヤー
115 周期境界壁
Claims (5)
- シート状の誘電体基板と、
間隔gを空けて前記誘電体基板のy軸方向にピッチpyで配列されると共に、y軸と直交するx軸方向に間隔sを空けてピッチpxで配列されて、前記誘電体基板の一面に複数形成された幅wで長さlの矩形状とされた金属製の第1カットワイヤーと、
間隔gを空けて前記誘電体基板のy軸方向にピッチpyで配列されると共に、y軸と直交するx軸方向に間隔sを空けてピッチpxで配列されて、前記誘電体基板の他面に複数形成された前記幅wで前記長さlの矩形状とされた金属製の第2カットワイヤーとを備え、
前記第2カットワイヤーは、y軸方向で隣接する前記第1カットワイヤーの間の前記第1カットワイヤーが形成されていない領域にほぼ重なるように、前記第1カットワイヤーとずれて形成されて、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとがy軸方向で重ならないか、または、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとがy軸方向で±10%以内の面積で重なって配列されており、テラヘルツ波帯において負の屈折率を呈することを特徴とするシート型メタマテリアル。 - 前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーにおける前記幅wと前記長さlとの比が1:0.9ないし1:1.1とされていることを特徴とする請求項1に記載のシート型メタマテリアル。
- 前記誘電体基板の素材が、シクロオレフィンポリマーとされていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート型メタマテリアル。
- 前記第1カットワイヤーは、前記誘電体基板の一面に形成された金属インクによる成膜をエッチング加工することにより形成され、前記第2カットワイヤーは、前記誘電体基板の他面に形成された金属インクによる成膜をエッチング加工することにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシート型メタマテリアル。
- 前記金属インクがナノインクであることを特徴とする請求項4に記載のシート型メタマテリアル。
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