以下、実施形態の分散アンテナシステム及び同期方法を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の分散アンテナシステム100の概略を示す図である。分散アンテナシステム100は、親局装置1(MU)、中継装置2(HU)、子局装置3(RU)、子局装置3と端末装置(図示せず)と無線通信するためのアンテナ41及び42、及びこれらを互いに接続する伝送路5を備える。親局装置1は、複数の子局装置3に接続される。図1に示すように、親局装置1には、中継装置2を経由して複数の子局装置3が接続されてもよいし、直接的に複数の子局装置3が接続されてもよい。また、図1に示すように中継装置2が縦続接続されてもよい。また、端末装置は、アンテナ41又は第2基地局9のアンテナ42を介して分散アンテナシステム100に接続し、コアネットワーク6と通信可能である。
親局装置1は、第1基地局7(BS1)と同軸ケーブルで接続され、第1基地局7との間で無線信号を送受信する。ここでいう無線信号とは、アンテナ41又は42を介して端末装置又は第2基地局9に無線で送信される信号である。親局装置1は、第1基地局7から受信される無線信号からクロック信号を抽出し、自装置のクロックを、抽出したクロック信号に同期させる。
また、親局装置1は、コアネットワーク6及びPTPマスタ8と有線ケーブルで接続され、コアネットワーク6及びPTPマスタ8との間でパケット信号を送受信する。具体的には、親局装置1は、PTPマスタ8との間でPTP(Precision Time Protocol)に関するパケット信号(以下「PTPパケット」という。)を送受信することにより、自装置の時刻をPTPマスタ8の時刻に同期させる。また、親局装置1は、端末装置が送信したパケット信号をコアネットワーク6に中継するとともに、コアネットワーク6から受信するパケット信号を端末装置宛てに中継する。以下では、分散アンテナシステム100が送受信するパケット信号のうちPTPパケット以外のパケット信号を、コアネットワーク6が送受信するパケット信号という意味でコアパケットと記載し、両者を区別しない場合は単にパケット信号と記載する。
ここで、第1基地局7及びPTPマスタ8はコアネットワーク6に接続され、その時刻及びクロックはコアネットワーク6のクロック及び時刻に同期されている。すなわち、親局装置1は、PTPマスタ8の時刻、及び無線信号から抽出されたクロック信号に同期することにより、自装置の時刻及びクロックをコアネットワーク6の時刻及びクロックに同期させる。
子局装置3は、アンテナ41及び第2基地局9と有線ケーブルで接続され、アンテナ41又は第2基地局9を介して端末装置と通信する。例えば、アンテナ41を介して通信する端末装置は、従来の通信規格(例えば3G(3rd Generation)や4G(4th Generation)等)に基づく通信装置であり、第2基地局9を介して通信する端末装置は、次世代通信規格(例えば5G(5th Generation)として検討中である)に基づく通信装置である。そして、次世代通信規格の実現には、基地局間の高精度な時刻同期が必要になると考えられている。
そこで、第1の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3が自身の時刻及びクロックを親局装置1の時刻及びクロックに同期するとともに、自身の時刻及びクロックへの同期に必要な情報(以下「同期情報」という。)を第2基地局9に提供する。これにより、第2基地局9の時刻及びクロックをコアネットワーク6の時刻及びクロックに同期させることができ、従来の分散アンテナシステムを次世代通信規格に対応させることができる。以下、このような効果を奏する第1の実施形態の分散アンテナシステム100の構成について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態の分散アンテナシステム100の具体例を示す図である。分散アンテナシステム100は、PTPのBC(Boundary Clock)機能を有し、親局装置1と子局装置3とが中継装置2を介して接続される。分散アンテナシステム100では、親局装置1、中継装置2及び子局装置3のそれぞれが、自身のクロックをコアネットワークのクロックf0に同期させるとともに、自身の時刻をコアネットワークの時刻T0に同期させる。そして、子局装置3が、このような同期の結果に基づく同期情報を生成して第2基地局9に供給することにより、第2基地局9の時刻及びクロックが第1基地局7の時刻T0及びクロックf0に同期される。
なお、以下では、第1基地局7から端末装置又は第2基地局9に向かう通信の方向を「下り」といい、その逆方向を「上り」という場合がある。また、下り方向に伝送される信号を「下り信号」といい、上り方向に伝送される信号を「上り信号」という場合がある。さらに、フレームで伝送される下り信号を「下りフレーム」といい、フレームで伝送される上り信号を「上りフレーム」という場合もある。また、ある装置を基準として上り方向側を「上位」といい、下り方向側を「下位」という場合がある。また、中継装置2の上位側に接続された親局装置1、又は子局装置3の上位側に接続された中継装置2を、中継装置2又は子局装置3から見た「上位装置」といい、親局装置1の下位側に接続された中継装置2、又は中継装置2の下位側に接続された子局装置3を、親局装置1又は中継装置2から見た「下位装置」という場合がある。
図3は、第1の実施形態の分散アンテナシステム100における親局装置1の機能構成の具体例を示す図である。親局装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。親局装置1は、プログラムの実行によってDL処理部11、クロック同期部12、パケット処理部13、PTPスレーブ処理部14、UL処理部15及び時刻分配部16を備える装置として機能する。なお、親局装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
DL処理部11は、AD(Analog to Digital)変換部111、マッパ部112、分配部113及び1つ以上の出力部114を備える。AD変換部111は、第1基地局7から同軸ケーブルを介して下り方向の無線信号を入力する。ここで入力される無線信号はアナログ信号である。AD変換部111は、入力した無線信号をデジタル信号に変換してマッパ部112及びクロック同期部12に出力する。
マッパ部112は、AD変換部111が出力する下り信号のマッピング処理を行う。マッピング処理は、送信対象の信号を伝送するためのフレームを生成する処理である。マッパ部112は、マッピング処理において、AD変換部111が出力する下り信号と、パケット処理部13が出力するパケット信号(PTPパケット又はコアパケット)とを多重化する。マッパ部112は、マッピング処理を行った下り信号(フレーム信号)を分配部113に出力する。
分配部113は、マッパ部112が出力する下り信号を各出力部114に分配する。出力部114は、分配部113によって分配された下り信号を下位装置に出力するための有線インタフェースである。分配部113から出力される下り信号はフレーム単位で連続する信号として各出力部114に入力される。各出力部114は分配部によって分配された下り信号をフレーム単位で連続する信号として下位装置に出力する。
クロック同期部12は、ラジオフレーム検出部121、PLL部122及びマスタクロック123を備える。ラジオフレーム検出部121は、デジタル信号に変換された下り信号をAD変換部111から入力し、入力した下り信号からラジオフレームを検出する。ラジオフレーム検出部121は、ラジオフレームの検出タイミングをPLL部122に通知する。
PLL(Phase Lock Loop)部122は、ラジオフレーム検出部121から通知されるラジオフレームの検出タイミングに同期したクロック信号を生成する。ラジオフレーム検出部121が入力する下り信号はコアネットワーク6のクロックに同期した無線信号であるため、PLL部122が生成するクロック信号もコアネットワークのクロックに同期した信号となる。例えば、LTE(Long Term Evolution)信号の場合、10ms周期のラジオフレームが生成される。この場合、PLL部122は10ms周期のクロック信号を生成する。PLL部122は、このように生成したクロック信号に同期させることで、マスタクロック123をコアネットワーク6のクロックに同期させる。マスタクロック123は、PLL部122によって同期されたクロックをパケット処理部13に供給する。
なお、クロック同期部12は、ラジオフレーム検出部121に代えてスロット検出部を備え、マスタクロック123をスロットの検出タイミングに同期させてもよい。この場合、スロット検出部は入力した下り信号からスロットを検出し、前記スロットの検出タイミングをPLL部122に通知する。PLL部122は、スロット検出部から通知されるスロットの検出タイミングに同期したクロック信号を生成し、生成したクロック信号にマスタクロック123を同期させる。例えば、LTE信号の場合、0.5ms周期のスロットが生成される。この場合、PLL部122は0.5ms周期のクロック信号を生成する。
パケット処理部13は、1つ以上の入出力部131とパケットスイッチ部132とを備える。入出力部131は、コアネットワーク6及びPTPマスタ8との間でパケット信号を入出力するための有線インタフェースである。入出力部131は、マスタクロック123から供給されるクロック信号に同期してパケット信号の入出力を行う。これにより、入出力部131は、パケット信号(PTPパケット及びコアパケット)の送受信をコアネットワーク6のクロックに同期して送受信することができる。入出力部131は、PTPマスタ8から受信したPTPパケットをパケットスイッチ部132に出力するとともに、PTPパケットを送受信したタイミングをPTPスレーブ処理部14に通知する。
また、入出力部131は、パケットスイッチ部132から入力するPTPパケットをPTPマスタ8に送信するとともに、下位装置から受信された上りのパケット信号(コアパケット)をパケットスイッチ部132から入力してコアネットワーク6に送信する。なお、入出力部131は、PTPパケットとコアパケットとの両方を同じインタフェースで入出力するように構成されてもよいし、それぞれを異なるインタフェースで入出力するように構成されてもよい。PTPパケットとコアパケットとを異なるインタフェースで入出力する場合、入出力部131はPTPパケットを直接、PTPスレーブ処理部14に出力してもよい。
パケットスイッチ部132は、入出力部131に対するパケット信号の入出力を制御する。具体的には、パケットスイッチ部132は、PTPスレーブ処理部14が出力するPTPパケットを入出力部131に出力するとともに、入出力部131が出力するPTPパケットをPTPスレーブ処理部14に出力する。これにより、PTPマスタ8とPTPスレーブ処理部14との間でPTPパケットが送受信される。
また、パケットスイッチ部132は、コアネットワーク6から受信された第2基地局9宛てのパケット信号をマッパ部112に出力するとともに、下位装置から受信された上りのパケット信号をデマッパ部152から入力し、そのパケット信号を入出力部131に出力する。これにより、コアネットワーク6と第2基地局9との間でパケット信号(コアパケット)が送受信される。
PTPスレーブ処理部14は、PTPスレーブとしての処理を実行する機能部である。具体的には、PTPスレーブ処理部14は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1588に規定されたスレーブ機能を実現する。PTPスレーブ処理部14は、パケットスイッチ部132が出力するPTPパケットに基づいて自装置の時刻同期処理を行う。この時刻同期処理においてPTPスレーブ処理部14は、入出力部131から通知されるPTPパケットの送受信タイミングを用いてもよい。PTPパケットの送受信タイミングは、コアネットワーク6のクロックに同期されたマスタクロック123に同期して行われるため、PTPパケットの送受信タイミングを用いることによりより精度の高い時刻同期を行うことができる。この時刻同期処理により親局装置1の時刻がPTPマスタ8の時刻に同期される。PTPスレーブ処理部14は、PTPマスタ8と同期された時刻を時刻分配部16に供給する。
UL処理部15は、1つ以上の入力部151、入力部151に対応する1つ以上のデマッパ部152、加算部153及びDA(Digital to Analog)変換部154を備える。入力部151は、下位装置から上り信号を入力するための有線インタフェースである。ここで入力される上り信号はデジタル信号であり、フレーム単位で受信される。入力部151は下位装置から入力した上り信号(フレーム信号)をデマッパ部152に出力するとともに、フレームの受信タイミングを時刻分配部16に通知する。
デマッパ部152は、入力部151が出力する上り信号のデマッピング処理を行う。デマッピング処理は、受信フレームにマッピングされた各種信号を取得する処理である。デマッパ部152は、デマッピング処理において、受信フレームから無線信号が取得された場合、取得した無線信号を加算部153に出力する。また、デマッパ部152は、デマッピング処理において、受信フレームからパケット信号が取得された場合、取得したパケット信号をパケットスイッチ部132に出力する。
また、デマッパ部152は、デマッピング処理において、受信フレームから下位装置が送信したULメッセージが取得された場合、取得したULメッセージを時刻分配部16に出力するとともに、ULメッセージの受信タイミングを時刻分配部16に通知する。例えば、デマッパ部152は、受信フレームからULメッセージを取得したタイミングをULメッセージの受信タイミングとして通知する。ここで、ULメッセージとは、下位装置が、上位装置(ここでは親局装置1)に対して通知する時刻同期に関する情報である。これに対して、上位装置が、下位装置に対して通知する時刻同期に関する情報をDLメッセージという。
加算部153は、各デマッパ部152が出力する上り信号を加算(多重化)してDA変換部154に出力する。DA変換部154は、加算部153によって多重化された上り信号をアナログ信号に変換して第1基地局7に出力する。アナログ信号に変換された上り信号は同軸ケーブルを介して第1基地局7に入力される。
時刻分配部16は、デマッパ選択部161、メッセージ送信元選択部162、タイムスタンプ生成部163−1、タイムスタンプ生成部163−2、遅延時間演算部164及びメッセージ生成部165を備える。デマッパ選択部161は、UL処理部15からフレームの受信タイミングが通知されたデマッパ部152を選択し、選択したデマッパ部152と、そのデマッパ部152について通知されたフレームの受信タイミングと、をタイムスタンプ生成部163−1に通知する。
メッセージ送信元選択部162は、UL処理部15の各デマッパ部152が出力するULメッセージに基づいて、そのULメッセージの送信元の下位装置を識別する。メッセージ送信元選択部162は、識別した下位装置を遅延時間を演算する対象として選択し、選択した下位装置の識別情報とともにULメッセージを遅延時間演算部164に出力する。
タイムスタンプ生成部163−1は、PTPスレーブ処理部14から供給される時刻情報に基づいて、デマッパ選択部161によって選択されたデマッパ部152に対応する入力部151から通知されたフレームの受信タイミングのタイムスタンプをとることにより、上りフレームの受信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部163−2は、取得した上りフレームの受信時刻を遅延時間演算部164に出力する。
タイムスタンプ生成部163−2は、PTPスレーブ処理部14から供給される時刻情報に基づいて、DL処理部11の各出力部114から通知される下りフレームの送信タイミングのタイムスタンプをとることにより、DL処理部11における下りフレームの送信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部163−2は、取得した下りフレームの送信時刻をDLメッセージ生成部165に出力する。
遅延時間演算部164は、下位装置から受信された上りフレームに含まれるULメッセージと、タイムスタンプ生成部163−1から通知される上りフレームの受信時刻とに基づいて、自装置と下位装置との間の遅延時間を算出する。遅延時間演算部164は算出した遅延時間をメッセージ生成部165に通知する。具体的には、ULメッセージには上位装置が送信したフレームの下位装置における受信時刻と下位装置におけるフレームの送信時刻とが含まれる。遅延時間演算部164は、これらの情報に基づき、自装置(親局装置1)と下位装置(中継装置2)との間の遅延時間をPTPと同様の方法で算出する。
メッセージ生成部165は、タイムスタンプ生成部163−2から通知される下りフレームの送信時刻と、遅延時間演算部164から通知される遅延時間とを下位装置に通知するためのDLメッセージを生成する。メッセージ生成部165は、生成したDLメッセージをDL処理部11のマッパ部112に出力する。出力されたDLメッセージは、マッパ部112によって下りフレームに多重化されて各下位装置に送信される。
図4は、第1の実施形態におけるマッピング処理の具体例を示す図である。図4は、F1001、F1002、F1003の順に連続して送信される3つのフレームのうち、フレームF1001における各信号の多重化の例を示している。図4は、フレームF1001の先頭から順に、フレーム同期パタン、オーバヘッド領域(OH領域)、時刻メッセージ、無線信号、パケット信号がマッピングされた例を示す。このように、デジタル信号をフレームにマッピングする場合、フレーム同期パタンを検出することで、フレームの送受信タイミングを取得することができる。そして、このタイミングでタイムスタンプをとることにより、各装置内でのフレームの送信時刻又は受信時刻を取得することができる。このように取得される送信時刻又は受信時刻を上位装置と下位装置との間で共有することにより、上位装置と下位装置との間の遅延時間を計算することができる。
図5は、第1の実施形態の分散アンテナシステム100における中継装置2の機能構成の具体例を示す図である。中継装置2は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。中継装置2は、プログラムの実行によってDL処理部21、UL処理部22、時刻同期部23、クロック同期部24及び時刻分配部25を備える装置として機能する。なお、中継装置2の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
ここで、クロック同期部24の構成は、ラジオフレーム検出部121に代えて入力信号からデジタルフレームを検出するフレーム検出部241を備える点は異なるものの、入力信号に基づくフレームの検出タイミングに基づいてマスタクロックを同期する点で、基本的には親局装置1のクロック同期部12と同様である。クロック同期部24において、マスタクロック243は親局装置1のクロックに同期され、マスタクロック243は親局装置1に同期したクロックを時刻同期部23のタイマ235に供給する。
また、時刻分配部25の構成は、親局装置1の時刻分配部16と同様である。そのため、ここではクロック同期部24及び時刻分配部25について詳細な説明を省略する。
DL処理部21は、入力部211、デマッパ部212、マッパ部213、分配部214及び子局装置3に対応する1つ以上の出力部215を備える。入力部211は、親局装置1から下り信号を入力する。ここで入力される下り信号はデジタル信号であり、フレーム単位で受信される。入力部211は、受信した下りフレームをデマッパ部212及びクロック同期部24に出力する。また、入力部211は、下り信号からフレーム同期パターンを検出し、フレーム同期パターンの受信タイミングを時刻同期部23に通知する。
デマッパ部212は、入力部211が出力する下りフレームのデマッピング処理を行う。デマッパ部212は、デマッピング処理によって下りフレームに含まれるDLメッセージを取得する。ここで取得されるDLメッセージは上位装置である親局装置1が送信したものである。デマッパ部212は、取得したDLメッセージを時刻同期部23に出力する。また、デマッパ部212は、デマッピング処理によって下りフレームに含まれる無線信号又はパケット信号を取得し、取得した無線信号又はパケット信号をマッパ部213に出力する。
マッパ部213は、デマッパ部212が出力する下り信号のマッピング処理を行う。マッパ部213は、マッピング処理において、デマッパ部212が出力する下り信号と、時刻分配部25が出力するDLメッセージとを多重化する。ここで下り信号に多重化されるDLメッセージは中継装置2が下位装置に送信するものである。マッパ部213は、マッピング処理を行った下り信号を分配部214に出力する。
分配部214は、マッパ部213が出力する下り信号を1つ以上の出力部215に出力する。出力部215は、分配部214によって分配された下り信号を下位装置である子局装置3に出力する。出力部215は、下り信号の出力において、フレームの送信時刻を時刻分配部25に通知する。
UL処理部22は、子局装置3に対応する1つ以上の入力部221、入力部221に対応する1つ以上のデマッパ部222、加算部223、マッパ部224及び出力部225を備える。入力部221は、下位装置から上り信号を入力する。ここで入力される上り信号はデジタル信号であり、フレーム単位で受信される。各入力部221は、受信した上り信号を対応するデマッパ部222に出力する。ここで、各入力部221は、上りフレームの受信時刻を時刻分配部25に通知する。
デマッパ部222は、入力部221が出力する上りフレームのデマッピング処理を行う。デマッパ部222は、デマッピング処理によって上りフレームに含まれるULメッセージを取得する。ここで取得されるULメッセージは下位装置である子局装置3が送信したものである。デマッパ部222は、取得したULメッセージを時刻分配部25に出力する。また、デマッパ部222は、デマッピング処理によって上りフレームに含まれるパケット信号又はパケット信号を取得し、取得した無線信号又はパケット信号を加算部223に出力する。
加算部223は、1つ以上のデマッパ部222が出力する上り信号を加算(多重化)してマッパ部224に出力する。マッパ部224は、加算部223が出力する上り信号のマッピング処理を行う。マッパ部224は、マッピング処理において、加算部223が出力する上り信号と、時刻同期部23が出力するULメッセージとを多重化する。マッパ部224は、マッピング処理を行った上り信号を出力部225に出力する。
出力部225は、マッパ部224が出力する上り信号を上位装置である親局装置1に出力する。出力部225は、上り信号の出力において、上りフレームの送信タイミングを時刻同期部23に通知する。
時刻同期部23は、タイムスタンプ生成部231−1、タイムスタンプ生成部231−2、遅延時間演算部232、ULメッセージ生成部233、時刻補正部234及びタイマ235を備える。
タイムスタンプ生成部231−1は、UL処理部22の出力部225から上りフレームの送信タイミングの通知を受けたことに応じてタイマ235のタイムスタンプをとることにより、UL処理部22における上りフレームの送信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部231−1は、取得した上りフレームの送信時刻をULメッセージ生成部233及び時刻補正部234に通知する。
タイムスタンプ生成部231−2は、DL処理部21の入力部221から下りフレームの受信タイミングの通知を受けたことに応じてタイマ235のタイムスタンプをとることにより、DL処理部21における下りフレームの受信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部231−2は、取得した下りフレームの受信時刻を遅延時間演算部232に通知する。
遅延時間演算部232は、DL処理部21のデマッパ部212が出力する上位装置(ここでは親局装置1)のDLメッセージと、タイムスタンプ生成部231−2から通知される下りフレームの受信時刻とに基づいて、自装置(中継装置2)と上位装置との間の遅延時間を算出する。遅延時間演算部232は、算出した遅延時間をULメッセージ生成部233及び時刻補正部234に通知する。
ULメッセージ生成部233は、タイムスタンプ生成部231−1から通知される上りフレームの送信時刻と、遅延時間演算部232から通知される遅延時間とを上位装置に通知するためのULメッセージを生成する。メッセージ生成部233は、生成したULメッセージをUL処理部22のマッパ部224に出力する。出力されたULメッセージは、マッパ部224によって上りフレームに多重化されて上位装置に送信される。
時刻補正部234は、タイムスタンプ生成部231−1から通知される上りフレームの送信時刻と、遅延時間演算部232から通知される自装置と上位装置との間の遅延時間とに基づいて自装置のタイマ235を上位装置の時刻に同期させる。
なお、時刻分配部25によって生成されたDLメッセージは、下位装置である子局装置3に送信される。
図6は、第1の実施形態の分散アンテナシステム100における子局装置3の機能構成の具体例を示す図である。子局装置3は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。子局装置3は、プログラムの実行によってDL処理部31、アンテナ出力部321、アンテナ入力部322、UL処理部33、PTPマスタ処理部34、クロック同期部35、時刻同期部36及びパケット処理部37を備える装置として機能する。なお、子局装置3の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、クロック同期部35の構成は、中継装置2のクロック同期部24と同様であり、時刻同期部36及びパケット処理部37の構成は、それぞれ親局装置1又は中継装置2の時刻同期部23及びパケット処理部13と同様であるため説明を省略する。また、子局装置3においてマスタクロック353は中継装置2のクロックに同期され、中継装置2に同期したクロックを時刻同期部36のタイマ365及びパケット処理部37の入出力部371に供給する。
DL処理部31は、入力部311と、デマッパ部312と、自装置に接続されたアンテナ41の数に応じた1つ以上のDA変換部313とを備える。入力部311は上位装置である中継装置2から下り信号を入力する。ここで入力される下り信号はデジタル信号であり、フレーム単位で受信される。入力部311は、受信した下りフレームをデマッパ部312、クロック同期部35及び時刻同期部36に出力する。
デマッパ部312は、入力部311が出力する下りフレームのデマッピング処理を行う。デマッパ部312は、デマッピング処理によって下りフレームに含まれるDLメッセージを取得する。デマッパ部312は、取得したDLメッセージを時刻同期部36及びパケット処理部37に出力する。ここで取得されるDLメッセージは上位装置である中継装置2が送信したものである。また、デマッパ部312は、デマッピング処理によって下りフレームに含まれる無線信号又はパケット信号を取得し、取得した無線信号をDA変換部313に分配して出力し、パケット信号をパケット処理部37に出力する。
DA変換部313は、デマッパ部312が出力する下り信号(無線信号)をアナログ信号に変換してアンテナ出力部321に出力する。アンテナ出力部321は、DA変換部313が出力する無線信号をRF(Radio Frequency)帯域にアップコンバートした後、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる送信フィルタ処理を施して各アンテナに出力する。各アンテナはアンテナ出力部321が出力する無線信号を無線送信する。送信された無線信号は端末装置によって受信される。また、各アンテナ41は、端末装置が送信した無線信号を受信してアンテナ入力部322に出力する。アンテナ入力部322は、受信した無線信号から所定の周波数帯域の信号のみを通過させる受信フィルタ処理を施した後、IF(Intermediate Frequency)帯域にダウンコンバートしてUL処理部33に出力する。
UL処理部33は、自装置に接続されたアンテナの数に応じた1つ以上のAD変換部331と、マッパ部332と、出力部333とを備える。AD変換部331は、アンテナ入力部321から上り信号(無線信号)を入力する。ここで入力される上り信号はアナログ信号である。AD変換部331は、入力した上り信号をデジタル信号に変換してマッパ部332に出力する。
マッパ部332は、各AD変換部331が出力する上り信号のマッピング処理を行う。マッパ部332は、マッピング処理において、AD変換部331が出力する上り信号(無線信号)と、パケット処理部37が出力するパケット信号(PTPパケット又は第2の基地局9が送信したコアパケット)と、時刻同期部36が出力するULメッセージと、を多重化して出力部333に出力する。
出力部333は、マッパ部332が出力する上り信号を上位装置に出力する。出力部333は、上り信号の出力において、上りフレームの送信タイミングを時刻同期部36に通知する。
PTPマスタ処理部34は、PTPマスタとしての処理を実行する機能部である。例えば、PTPマスタ処理部34は、IEEE1588に規定されたマスタ機能を実現する。PTPマスタ処理部34は、パケット処理部37を介して第2基地局9との間でPTPパケットを送受信することにより、PTPスレーブ機能を有する第2基地局9の時刻を自装置(子局装置3)に同期させる。
このように構成された第1の実施形態の分散アンテナシステム100は、親局装置1及び子局装置3の時刻及びクロックを第1基地局7の時刻及びクロックに高精度に同期させるとともに、第2基地局9の時刻及びクロックを親局装置1及び子局装置3の時刻及びクロックに高精度に同期させることができる。そのため、第1の実施形態の分散アンテナシステム100によれば、第2基地局9の時刻及びクロックを第1基地局7の時刻及びクロックに高精度に同期させることが可能となる。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の分散アンテナシステム100aの構成例を示す図である。分散アンテナシステム100aは、中継装置2に代えて中継装置2aを備える点、子局装置3に代えて子局装置3aを備える点で第1の実施形態の分散アンテナシステム100と異なる。この構成の違いは、中継装置2aと子局装置3aとが同軸ケーブルで接続されることによる。すなわち、第2の実施形態の分散アンテナシステム100aにおいて、中継装置2aと子局装置3aとは互いにアナログ信号を入出力する。このような構成によれば、同軸ケーブルを介した電力供給が可能となる。
同軸ケーブルは光ファイバに比べて信号の損失が大きいため、分散アンテナシステム100a内では、信号をデジタル信号に変換するのではなく周波数変換し、低い周波数帯域で信号を伝送することが好ましい。また、分散アンテナシステム100aから第2基地局9に対してパケットを送信する際には、パケット信号を位相変調等の方式で変調した後に周波数分割方式で無線信号と多重化することが好ましい。
一方で、時刻同期を行うためには上位装置と下位装置との間の遅延時間を算出する必要があるが、アナログ信号を観測してパケットやフレームを識別することは一般には困難である。また、データ量が大きい場合は変調方式も複雑になるため、変調後のパケット信号について送受信のタイミングを検出することはさらに困難である。そこで、第2の実施形態における中継装置2a及び子局装置3aは、クロック同期用又は時刻同期用の簡易な信号を用いてパケット信号の送受信のタイミングを検出する機能を備える。
図8及び図9は、第2の実施形態の分散アンテナシステム100aにおける中継装置2aの機能構成の具体例を示す図である。中継装置2aは、DL処理部21に代えてDL処理部21aを備える点、UL処理部22に代えてUL処理部22aを備える点、時刻分配部25を備えない点、パケット処理部26をさらに備える点、自装置に接続された子局装置3aの数に応じた1つ以上の同軸入出力部27をさらに備える点で第1の実施形態における中継装置2と異なる。その他の構成は第1の実施形態の中継装置2と同様であるため説明を省略する。
DL処理部21aは、マッパ部213及び出力部215を備えない点、DA変換部216をさらに備える点で第1の実施形態におけるDL処理部21と異なる。この構成の違いは、同軸ケーブルを介して子局装置3aに下り信号を送信する場合、デジタル信号として入力される下り信号をアナログ信号に変換して出力する必要があるためである。DA変換部216は、デマッパ部212が出力する下り信号をアナログ信号に変換して分配部214に出力する。分配部214によって分配されたアナログ信号は対応する同軸入出力部27に入力され、周波数分割方式で多重化された後、子局装置3aに出力される。
UL処理部22aは、入力部221及びデマッパ部222を備えない点、AD変換部226をさらに備える点で第1の実施形態におけるUL処理部22と異なる。この構成の違いは、同軸ケーブルを介して子局装置3aから上り信号を受信する場合、アナログ信号として入力される上り信号をデジタル信号に変換して出力する必要があるためである。AD変換部226は、加算部223が出力する上り信号をデジタル信号に変換してマッパ部224に出力する。
パケット処理部26は、同軸入出力部27の数に応じた1つ以上の信号処理部261と、パケットスイッチ部262とを備える。パケット処理部26の構成は、基本的には親局装置1のパケット処理部13と同様であるが、下位側の入出力インタフェースが同軸ケーブルとなるため、下り方向の通信に関してマッパ部2611及び変調部2612を備え、上り方向の通信に関して復調部2613及びデマッパ部2614を備える。
マッパ部2611は、対応する同軸入出力部27から出力されるDLメッセージを下り方向のパケット信号にマッピングして変調部2612に出力する。変調部2612は、マッパ部2611が出力するパケット信号を位相変調等の方式で変調して同軸入出力部27に出力する。一方、復調部2613は、同軸入出力部27が出力する上り方向のパケット信号を復調してデマッパ部2614に出力する。デマッパ部2614は、復調部2613が出力するパケット信号に対するデマッピング処理を行うことにより、子局装置3aが送信したULメッセージと第2基地局9が送信したコア信号とをパケット信号から取得する。デマッパ部2614は、取得したULメッセージを対応する同軸入出力部27に出力するとともに、取得したコアパケットをパケットスイッチ部262に出力する。
同軸入出力部27は、入出力部271、周波数多重分離部272及び遅延測定部273を備える。入出力部271は、同軸ケーブルを介して子局装置3aとの間で上り信号及び下り信号を入出力する。ここで入出力される上り信号及び下り信号はアナログ信号である。入出力部271は、周波数多重分離部272との間で上り信号及び下り信号を入出力する。
周波数多重分離部272は、DL処理部21aが出力する下り方向の無線信号と、変調部2612が出力する変調後のパケット信号(以下「変調パケット信号」という。)と、遅延測定部273が出力する同期用信号と、を周波数分割方式で多重化して入出力部271に出力する。また、周波数多重分離部272は、入出力部271が出力する上り信号を周波数分割方式に基づいて分離することにより、下位装置である子局装置3aが送信した変調パケット信号、無線信号、同期用信号を上り信号から分離する。周波数多重分離部272は、上り信号から分離した変調パケット信号、無線信号、同期用信号をそれぞれパケット処理部26、UL処理部22a、遅延測定部273に出力する。
遅延測定部273は、子局装置3aとの間で同期用信号を送受信することにより、子局装置3aと自装置との間の遅延時間を算出する。遅延測定部273は、算出した遅延時間を子局装置3aに通知するためのDLメッセージを生成し、生成したDLメッセージをパケット処理部26に出力する。DLメッセージはマッパ部2611及び周波数多重分離部272によって下り信号に多重化され、同軸ケーブルを介して子局装置3aに出力される。
具体的には、遅延測定部273は、図9に示すように、同期用信号生成部2731、バイオレーション付加部2732、タイムスタンプ生成部2733、バイオレーション検出部2734、タイムスタンプ生成部2735、遅延時間演算部2736及びDLメッセージ生成部2737を備える。
同期用信号生成部2731は、自装置と子局装置3aとの間の遅延時間を測定するための同期用信号を生成してバイオレーション付加部2732に出力する。バイオレーション付加部2732は、同期用信号にバイオレーションを付加する。バイオレーションは、信号の特定部分を識別するために加えられる局所的な信号の変化である。バイオレーション付加部2732は、バイオレーションを付加した同期用信号を周波数多重分離部272に出力するとともに、その出力タイミングをタイムスタンプ生成部2733に通知する。
タイムスタンプ生成部2733は、時刻同期部23から供給される時刻情報に基づいて同期用信号の出力タイミングのタイムスタンプをとることにより、同期用信号の送信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部2733は、取得した同期用信号の送信時刻をDLメッセージ生成部2737に通知する。
バイオレーション検出部2734は、子局装置3aから受信された同期用信号を周波数多重分離部272を介して入力し、入力した同期用信号からバイオレーションを検出する。バイオレーション検出部2734は、バイオレーションの検出タイミングをタイムスタンプ生成部2735に通知する。
タイムスタンプ生成部2735は、時刻同期部23から供給される時刻情報に基づいてバイオレーションの検出タイミングのタイムスタンプをとることにより、同期用信号の受信時刻を取得する。タイムスタンプ生成部2735は、取得した同期用信号の受信時刻を遅延時間演算部2736に通知する。
遅延時間演算部2736は、パケット処理部26が出力する子局装置3aのULメッセージと、タイムスタンプ生成部2735から通知される同期用信号の受信時刻とに基づいて自装置と子局装置3aとの間の遅延時間を算出する。遅延時間演算部2736は、算出した遅延時間をDLメッセージ生成部2737に通知する。
DLメッセージ生成部2737は、遅延時間演算部2736によって算出された自装置と子局装置3aとの間の遅延時間と、タイムスタンプ生成部2733から通知された同期用信号の送信時刻とを子局装置3aに通知するためのDLメッセージを生成する。DLメッセージ生成部2737は、生成したDLメッセージをパケット処理部26に出力する。DLメッセージは、周波数多重分離部272及びマッパ部2611によって下り信号に多重化され、同軸ケーブルを介して子局装置3aに出力される。
図10及び図11は、第2の実施形態における子局装置3aの機能構成の具体例を示す図である。子局装置3aは、DL処理部21及びUL処理部22に代えてパケット処理部37a及び同軸入出力部38を備える点、クロック同期部35に代えてマスタクロック353を備える点で第1の実施形態における子局装置3と異なる。その他の構成は第1の実施形態の子局装置3と同様であるため説明を省略する。
パケット処理部37aは、マッパ部373、変調部374、復調部375及びデマッパ部376をさらに備える点で第1の実施形態におけるパケット処理部37と異なる。マッパ部373は、遅延測定部383が出力するULメッセージをパケットスイッチ部372が出力する上り方向のパケット信号に多重化して変調部374に出力する。変調部374は、マッパ部373が出力したパケット信号を変調して同軸入出力部38に出力する。
ここで変調後のパケット信号(変調パケット信号)は同軸入出力部38において上り方向の無線信号に多重化され、同軸ケーブルを介して中継装置2aに出力される。また、中継装置2aから受信された下り信号は同軸入出力部38において無線信号と変調パケット信号と同期用信号とに分離される。そして、分離された無線信号、変調パケット信号及び同期用信号は、それぞれアンテナ出力部321、パケット処理部37a及び遅延測定部383に出力される。
復調部375は、同軸入出力部38が出力する変調パケット信号を復調してデマッパ部376に出力する。デマッパ部376は、復調部375が出力するパケット信号のデマッピング処理を行うことにより、上位装置(ここでは中継装置2a)が送信したDLメッセージを下り方向のパケット信号から分離する。デマッパ部376は、DLメッセージが分離されたパケット信号をパケットスイッチ部372に出力するとともに、取得したDLメッセージを遅延測定部383に出力する。
同軸入出力部38は、入出力部381、周波数多重分離部382及び遅延測定部383を備える。入出力部381及び周波数多重分離部382は、中継装置2aにおける入出力部271及び周波数多重分離部272と同様である。周波数多重分離部382は、周波数多重分離部272と同様に、アンテナ入力部322が出力する上り方向の無線信号と、変調部374が出力する変調パケット信号と、遅延測定部273が出力する同期用信号と、を周波数分割方式で多重化して入出力部381に出力する。また、周波数多重分離部382は、入出力部381が出力する下り信号を周波数分割方式に基づいて分離することにより、上位装置である中継装置2aが送信した変調パケット信号、無線信号、同期用信号を下り信号から分離する。周波数多重分離部382は、下り信号から分離した変調パケット信号、無線信号、同期用信号をそれぞれパケット処理部37a、アンテナ出力部321、遅延測定部383に出力する。
遅延測定部383は、中継装置2aとの間で同期用信号を送受信することにより、中継装置2aと自装置との間の遅延時間を測定し、測定した遅延時間に基づいて自装置の時刻を補正する。具体的には、遅延測定部383は、同期用信号生成部3831、バイオレーション付加部3832、タイムスタンプ生成部3833、タイマ3834、クロック同期部3835、バイオレーション検出部3836、タイムスタンプ生成部3837、時刻補正部3838及びULメッセージ生成部3839を備える。
ここで同期用信号生成部3831、バイオレーション付加部3832、タイムスタンプ生成部3833、バイオレーション検出部3836、タイムスタンプ生成部3837及びULメッセージ生成部3839は、中継装置2aにおける遅延測定部273と同様である。すなわち、タイムスタンプ生成部3833によって同期用信号の送信時刻が取得され、タイムスタンプ生成部3837によって同期用信号の受信時刻が取得される。
クロック同期部3835は、中継装置2aから受信された同期用信号に基づいてマスタクロック353を中継装置2aのマスタクロックに同期させる。中継装置2aのマスタクロックは第1基地局7に同期されているため、クロック同期部3835によって中継装置2aのマスタクロック353が第1基地局7のクロックに同期される。クロック同期部3835によって同期されたマスタクロック353は、第1基地局7に同期したクロックをタイマ3834に供給する。
時刻補正部3838は、タイムスタンプ生成部3837によって取得された同期用信号の受信時刻と、パケット処理部37aが出力する中継装置2aのDLメッセージとに基づいて、自装置と中継装置2aとの間の遅延時間を算出する。時刻補正部3838は、算出した遅延時間に基づいてタイマ3834を中継装置2aの時刻に同期させる。このように同期された時刻情報がPTPマスタ処理部34に供給され、PTPマスタ処理部34が前記時刻情報に基づくPTPパケットを、例えばSync−E等の伝送方式でマスタクロック353に同期させて第2基地局9に出力することにより、第2基地局9を子局装置3aの時刻及びクロックに同期させることができる。
図12は、第2の実施形態における周波数多重分離部272が周波数分割方式で各種信号を多重化する際の周波数配置例を示す図である。図12に示すように、周波数多重分離部272は、無線信号、同期用信号及び変調パケット信号を、それぞれ上りと下りとで異なる周波数帯域に配置することで、同じ同軸ケーブルを介して上り方向及び下り方向の通信を実現することができる。
図13は、第2の実施形態におけるバイオレーション付加部2732が同期用信号に付加するバイオレーションの具体例を示す図である。図13は、時刻t0において同期用信号の位相をπだけ進める、又は遅らせることによって生成されたバイオレーションの具体例を示す。なお、図13に示すバイオレーションは一例であり、信号の波形に基づいて検出可能な変化であればバイオレーションはどのような方法で実現されてもよい。
このように構成された第2の実施形態の分散アンテナシステム100aによれば、中継装置と子局装置とが互いにアナログ信号を入出力する場合であっても、第2基地局9の時刻及びクロックを第1基地局7の時刻及びクロックに同期させることができる。
また、第2の実施形態の同期方法は、親局装置と中継装置との間における時刻及びクロックの同期に適用することも可能である。このようにして分散アンテナシステム内の伝送路を全て同軸ケーブルで構成すれば、分散アンテナシステム内で通信及び電力の伝送路を統合することが可能になる。
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態の分散アンテナシステム100bの構成の具体例を示す図である。分散アンテナシステム100bは、親局装置1に代えて親局装置1bを備える点、中継装置2に代えて中継装置2bを備える点、子局装置3に代えて子局装置3bを備える点で第1の実施形態の分散アンテナシステム100と異なる。この構成の違いは、第3の実施形態の分散アンテナシステム100がBC機能に代えてTC(Transparent Clock)機能を有することによる。すなわち、第3の実施形態の分散アンテナシステム100bは、PTPマスタ8と第2基地局9との間でPTPパケットを転送する機能を有する。
図15は、第3の実施形態における子局装置3bの機能構成の具体例を示す図である。子局装置3bは、PTPマスタ処理部34を備えない点、時刻同期部36に代えてPTP転送処理部39を備える点で第1の実施形態における子局装置3と異なる。他の構成は第1の実施形態の子局装置3と同様である。なお、子局装置3bにおいて、パケット処理部37の入出力部371は、PTPパケットの受信タイミング及び送信タイミングをPTP転送処理部39に通知する。
PTP転送処理部39は、時刻カウンタ391、コレクションフィールド(CF:Correction Field)加算部392、時刻カウンタ393及びコレクションフィールド加算部394を備える。時刻カウンタ391は、マスタクロック353から供給されるクロックに基づいて上り方向に転送されるPTPパケットのコレクションフィールドに記載する遅延時間を測定する。コレクションフィールドは、PTPにおいて、装置内部における遅延時間の変動が装置間での遅延時間の計算に与える影響を小さくするために用いられる情報である。具体的には、コレクションフィールドには、装置内部で変動する可能性のある遅延時間が記載される。例えば、パケット信号を上り信号や下り信号に多重化する際には装置内で1フレーム時間の遅延時間が発生しうる。また、パケットスイッチ部372が処理対象の入出力部371を切り替える際には内部キューバッファにおけるパケットの滞留状況によって遅延時間が変動しうる。時刻カウンタ391は、このような装置内部で変動する可能性のある遅延時間を計測する。
具体的には、時刻カウンタ391は、パケット処理部37の入出力部371から通知されるPTPパケットの受信タイミングで計時を開始し、UL処理部33からフレームの送信タイミングが通知されるまでの遅延時間を計測する。時刻カウンタ391は計測した遅延時間をコレクションフィールド加算部392に通知する。
コレクションフィールド加算部392は、パケットスイッチ部372が出力するPTPパケットを入力し、入力したPTPパケットのコレクションフィールドに、時刻カウンタ391から通知された遅延時間を記載してUL処理部33に出力する。出力されたPTPパケットはUL処理部31によって上り信号に多重化され、上位装置に送信される。
時刻カウンタ393は、マスタクロック353から供給されるクロックに基づいて下り方向に転送されるPTPパケットのコレクションフィールドに記載する遅延時間を測定する。具体的には、時刻カウンタ393は、DL処理部31から通知されるフレームの受信タイミングで計時を開始し、パケット処理部37の入出力部371からPTPパケットが送信されるまでの遅延時間を計測する。時刻カウンタ393は計測した遅延時間をコレクションフィールド加算部394に通知する。
コレクションフィールド加算部394は、DL処理部31が出力するPTPパケットを入力し、入力したPTPパケットのコレクションフィールドに、時刻カウンタ393から通知された遅延時間を記載してパケットスイッチ部372に出力する。出力されたPTPパケットは入出力部371を介して第2基地局9に送信される。
ここでは、子局装置3bを例に、PTP転送処理部の構成について説明したが、親局装置1bや中継装置2bも同様のPTP転送処理部を備えることにより、分散アンテナシステム100bはPTPマスタ8と第2基地局9との間でPTPパケットを中継することができる。さらに、分散アンテナシステム100bでは、各装置がコレクションフィールドに遅延時間を加算しながらPTPパケットを転送するため、第2基地局9は自身の時刻をより正確にPTPマスタ8の時刻に同期させることができる。
また、装置内部における遅延時間の計測に用いられるクロックは、第1基地局7のクロックに同期されているため、分散アンテナシステム100b内の各装置は装置内部での遅延時間を精度良く計測することができる。例えば、コアネットワークのクロック周波数と分散アンテナシステム100b内の各装置のマスタクロックのクロック周波数とが100ppmずれている場合、1秒で100μsの時刻ずれが生じる。これは、装置内部での遅延時間が1msである場合に、計測時間が100nsずれることを意味する。これに対して、第3の実施形態の分散アンテナシステム100bでは、各装置のマスタクロックがコアネットワークのクロックに同期されるため計測時間のずれが生じない。そのため、第3の実施形態の分散アンテナシステム100bによれば、分散アンテナシステム100内での正確な遅延時間を第2基地局9に伝達することができるため、第2基地局9の時刻同期を精度良く行うことができる。
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態の分散アンテナシステム100cの構成の具体例を示す図である。分散アンテナシステム100cは、親局装置1bに代えて親局装置1cを備える点、子局装置3bに代えて子局装置3cを備える点で第3の実施形態の分散アンテナシステム100bと異なる。この構成の違いは、分散アンテナシステム100cでは、親局装置、中継装置、子局装置のそれぞれがコアネットワークのクロックに同期することなく、独立して動作することによる。そのため、分散アンテナシステム100cでは、末端の子局装置3cが第1基地局7のクロックに同期したクロック信号を生成して第2基地局9に供給する。この場合、クロック信号はパケット処理部37を介して、例えばSync−E等の伝送方式で第2基地局9に供給される。
図17は、第4の実施形態における子局装置3cの機能構成の具体例を示す図である。子局装置3cは、DL処理部31に代えてDL処理部31cを備える点で第3の実施形態における子局装置3bと異なる。DL処理部31cは、上位の中継装置2bから入力する下り信号に基づいて第1基地局7のクロックに同期したクロック信号を生成するクロック同期部314をさらに備える点で第3の実施形態におけるDL処理部31と異なる。
具体的には、クロック同期部314は、第1の実施形態の親局装置1と同様のラジオフレーム検出部3141及びPLL部3142を備える。ラジオフレーム検出部3141は、デマッパ部312によって下り信号から取得された無線信号を入力し、入力した無線信号からラジオフレームを検出する。ラジオフレーム検出部3141は、ラジオフレームの検出タイミングをPLL部3142に通知する。ここでデマッパ部312に入力される無線信号は第1基地局7のクロックに同期したラジオフレームを含んでいるため、ラジオフレーム検出部3141がラジオフレームを検出するタイミングも第1基地局7のクロックに同期したものとなる。
PLL部3142は、ラジオフレーム検出部3141から通知されるラジオフレームの検出タイミングに同期したクロック信号を生成する。PLL部3142は、生成したクロック信号を、パケット処理部37の入出力部371と、PTP転送処理部39の時刻カウンタ391及び393とに供給する。
図18は、第4の実施形態における親局装置1cの機能構成の具体例を示す図である。親局装置1cは、クロック同期部12に代えてコアネットワークとは独立して動作するマスタクロック123を備える点、時刻分配部16を備えない点、PTP転送処理部17をさらに備える点で第1の実施形態における親局装置1と異なる。PTP転送処理部17は、コレクションフィールド加算部171、パケット閉塞部172及び閉塞制御部173を備える。コレクションフィールド加算部171は、子局装置3cにおけるコレクションフィールド加算部392又は394と同様である。
パケット閉塞部172は、PTPパケットの転送処理を一時閉塞する機能を有する。具体的には、パケット閉塞部172は、PTPマスタ8からある第2基地局9を宛先とするPTPパケットが受信された場合、その第2基地局9とPTPマスタ8との間で一連のプロトコルシーケンスが終了まで他の第2基地局9に対するPTPパケットの転送を閉塞する。このPTPパケットの閉塞及び閉塞解除は閉塞制御部173によって制御される。
PTPでは、マスタとスレーブとが、Syncメッセージ、Follow UPメッセージ、Delay Requestメッセージ、Delay Responseメッセージを交換することによりスレーブの時刻同期が行われる。閉塞制御部173は、これらの一連のメーセージ交換をスヌーピングし、1つの第2基地局9とPTPマスタ8との間のメッセージ交換が終了する迄、他の第2基地局9に対するパケット転送処理を閉塞する。
このように構成された第4の実施形態の分散アンテナシステム100cは、システム内のクロック及び時刻を同期することなく、第2基地局9の時刻を高精度に第1基地局7の時刻に同期させることができる。これは以下の理由によるものである。
第4の実施形態の分散アンテナシステム100cは、第3の実施形態の分散アンテナシステム100bと同様に、PTPマスタ8から受信されたPTPパケットを第2基地局9に転送することで時刻同期を行うものであるが、システム内の各装置はコアネットワークのクロックに同期せずに独立して動作するため、装置内の遅延時間の計測精度が劣化する可能性がある。
一方で、PTPは上り方向の遅延時間と下り方向の遅延時間とが同じであることを前提とするものである。分散アンテナシステム100cでは、下り方向の通信経路が分散されるため下り方向の通信においてはパケットの滞留が発生しにくいが、上り方向の通信においては通信経路が集約されていくためパケットの滞留が生じる可能性が高くなる。そのため、上り方向の通信と下り方向の通信との間で遅延時間に差が生じやすくなる。
これに対して、第4の実施形態の分散アンテナシステム100cでは、親局装置1cが
1つの第2基地局9とPTPマスタ8との間のPTPプロトコルシーケンスが終了するまでは、他の第2基地局9のPTPプロトコルシーケンスを閉塞するため、個々の第2基地局9について時刻同期を行う周期は長くなるものの、装置内部の遅延時間をより正確に測定することができるため時刻同期の精度の劣化を抑制することができる。また、第2基地局9には、子局装置3cからコアネットワークのクロックに同期したクロック信号が供給されるため、時刻同期の周期が長くなったとしても時刻同期の精度を高精度に維持することができる。
(第5の実施形態)
図19は、第5の実施形態の分散アンテナシステム100dの構成例を示す図である。第1〜第4の実施形態の分散アンテナシステムが1つの事業者に関して第2基地局9の時刻又はクロックをコアネットワークに同期させるものであったのに対して、第5の実施形態の分散アンテナシステム100dは、複数の事象者に関して第2基地局9の時刻又はクロックをコアネットワークに同期させるものである。図19は、異なる事業者A及びBのそれぞれに関して、第2基地局の時刻又はクロックを対応するコアネットワークに同期させる分散アンテナシステム100dの例を示す。
図20は、第5の実施形態における親局装置1dの機能構成の具体例を示す図である。親局装置1dは、事業者ごとの伝送部10と、1つのクロック選択部181とを備える。伝送部10の構成は、第3の実施形態と同様のDL処理部11、UL処理部15、クロック同期部12、パケット処理部13及びPTP転送処理部17を備える。クロック選択部181は、複数の事業者から1つの事業者を選択し、選択した事業者のクロックを自装置内の各機能部に供給する。これにより、分散アンテナシステム100dは、事業者A及びBのそれぞれについてTC機能を実現することができる。すなわち、分散アンテナシステム100dにおいて、システム内の全ての装置のクロックはある1つの事業者のコアネットワークに同期され、各事業者の第2基地局9には対応する事業者の子局装置3からある1つの事業者のコアネットワークに同期したクロックが供給される。
また、各事業者の第2基地局9とPTPマスタ8との間で分散アンテナシステム100dがPTPパケットを転送することにより、各事業者の第2基地局9の時刻が対応する事業者のPTPマスタ8に同期される。
このように構成された第5の実施形態の分散アンテナシステム100dによれば、複数の事業者に関して第2基地局9の時刻をそれぞれに対応するコアネットワークの時刻に高精度に同期させることができるため、1つの分散アンテナシステムで複数の事業者を次世代通信規格に対応させることが可能となる。
(変形例)
図21は、第5の実施形態の分散アンテナシステム100dの変形例を示す図である。変形例の分散アンテナシステム100dは、子局装置3dが第2基地局9に対して対応する事業者のコアネットワークに同期したクロックを供給するように構成されてもよい。この場合、各子局装置3dは、各事業者の第1基地局7から送信された下り信号に基づいて各事業者のコアネットワークに同期したクロック信号を生成し、生成したクロック信号を対応する事業者の第2基地局9に供給する。このように構成された変形例の分散アンテナシステム100dによれば、第2基地局9に対して対応する事業者のコアネットワークに同期したクロックを供給できるため、第2基地局9の時刻同期をより正確に行うことができる。
(第6の実施形態)
図22は、第6の実施形態の分散アンテナシステム100eの構成例を示す図である。第5の実施形態の分散アンテナシステム100dが事業者ごとに第2基地局9の時刻又はクロックをコアネットワークに同期させるものであったのに対して、第6の実施形態の分散アンテナシステム100eは、複数の事象者の第2基地局9の時刻又はクロックをある1つの事業者のコアネットワークに同期させるものである。図22は、異なる事業者A及びBのそれぞれに関して、第2基地局の時刻又はクロックを事業者Aのコアネットワークに同期させる分散アンテナシステム100eの例を示す。
図23は、第6の実施形態における親局装置1eの機能構成の具体例を示す図である。親局装置1eは、事業者ごとの伝送部10eと、クロック選択部181、PTPパケット切替部182、PTPスレーブ処理部14及び時刻分配部16と、を備える。PTPスレーブ処理部14及び時刻分配部16は第1の実施形態と同様である。伝送部10eは、第1の実施形態と同様のDL処理部11、クロック同期部12、パケット処理部13及びUL処理部15を備える。
クロック選択部181は、複数の事業者から1つの事業者を選択し、選択した事業者の伝送部10eで同期されたクロックを自装置のマスタクロックとする。これにより、親局装置1eは、複数の事業者のうちのある1つの事業者のコアネットワークに同期したクロックで動作する。このように同期されたマスタクロックが下位装置に供給されることにより、各事業者の第2基地局9には対応する事業者の子局装置3からある1つの事業者のコアネットワークに同期したクロックが供給される。
PTPパケット切替部182は、複数の事業者のPTPマスタ8から1つのPTPマスタ8を選択し、選択したPTPマスタ8をPTPスレーブ処理部14に通知する。PTPスレーブ処理部14は、PTPパケット切替部182から通知されたPTPマスタ8とPTP通信を行うことにより、選択された事業者のPTPマスタ8との間で時刻同期を行う。
このように構成された第6の実施形態の分散アンテナシステム100eによれば、複数の事業者に関して第2基地局9の時刻及びクロックをある1つの事業者のコアネットワークの時刻及びクロックに高精度に同期させることができるため、1つの分散アンテナシステムで複数の事業者を次世代通信規格に対応させることが可能となる。
(第7の実施形態)
図24は、第7の実施形態の分散アンテナシステム100fの構成例を示す図である。分散アンテナシステム100fは、システム内の各装置が複数の事業者のうちのある1つの事業者のコアネットワークのクロックに同期し、親局装置1fがPTPマスタ及びPTPスレーブとなって各事業者の第2基地局9の時刻同期を行う点で第6の実施形態の分散アンテナシステム100eと異なる。
図25は、第7の実施形態における親局装置1fの機能構成の具体例を示す図である。親局装置1fは、事業者ごとの伝送部10fと、クロック選択部181、とを備える。各伝送部10fは、第6の実施形態と同様のDL処理部11、クロック同期部12、パケット処理部13、PTPスレーブ処理部14、UL処理部15、時刻分配部16と、第1実施形態と同様のPTPマスタ処理部183と、を備える。このように構成される親局装置1fは、クロック選択部181によって選択された事業者のコアネットワークのクロックに同期して動作するとともに、各事象者のコアネットワークの時刻に同期したPTPマスタとして機能する。この場合、中継装置2f及び子局装置3fは第3実施形態と同様のPTP転送処理部17を備え、親局装置1fと各事業者の第2基地局9との間でPTPパケットを中継する。
このように構成された第7の実施形態の分散アンテナシステム100fによれば、複数の事業者のうちのいずれか1つの事業者のコアネットワークのクロックを第2基地局9に供給するとともに、第2基地局9の時刻を対応する事業者のコアネットワークに同期させることができる。この場合、第2基地局9は、それぞれに対応する事業者のPTPマスタ8と通信する必要がなく、親局装置1fとの通信によってPTPによる時刻同期を行うことができる。そのため、各事業者のPTPマスタ8にかかる負荷を低減することができる。なお、親局装置1fが備えるPTPマスタ処理部183又はPTPスレーブ処理部14は、中継装置2f又は子局装置3fに備えられてもよい。
(変形例)
図26は、第7の実施形態の分散アンテナシステム100fの変形例を示す図である。変形例の分散アンテナシステム100fは、子局装置3fが第2基地局9に対して対応する事業者のコアネットワークに同期したクロックを供給するように構成されてもよい。この場合、各子局装置3fは、各事業者の第1基地局7から送信された下り信号に基づいて各事業者のコアネットワークに同期したクロック信号を生成し、生成したクロック信号を対応する事業者の第2基地局9に供給する。このように構成された変形例の分散アンテナシステム100fによれば、第2基地局9の時刻を対応する事業者のコアネットワークの時刻に同期させるとともに、対応する事業者のコアネットワークに同期したクロックを供給できるため、第2基地局9の時刻同期をより正確に行うことができる。
(第8の実施形態)
図27は、第8の実施形態の分散アンテナシステム100gの構成例を示す図である。分散アンテナシステム100gは、複数の事業者から選択した1つの事業者のコアネットワークのクロックをマスタクロックとする点で第7の実施形態の分散アンテナシステム100fと同様であるが、選択した事業者のクロックに異常が発生した場合に他の事業者のクロックに切り替える点で第7の実施形態の分散アンテナシステム100fと異なる。このため、親局装置1gは、各事業者のコアネットワークに同期したクロック信号を生成する機能を有し、クロック選択部181によって選択された事業者のクロックをマスタクロックとする。クロック選択部181は、選択した事業者のクロックを監視し、監視中のクロックに異常が発生した場合に他の事業者のクロックを選択してマスタクロックとする。例えば、クロック選択部181は、複数事業者間でクロックの周波数差を観測することによってクロックの異常を検出することができる。このような動作を行うことにより、システム内の各装置が親局装置1gのマスタクロックに基づいて動作するとともに、クロックの異常時には正常なクロックに切り替えて動作を継続することが可能になる。
また、分散アンテナシステム100gは、親局装置1gが事業者ごとのPTPスレーブとなり、選択した事業者の時刻に基づいて各事業者の第2基地局9の時刻同期を行う点で第6の実施形態の分散アンテナシステム100eと同様であるが、選択中のクロックに異常が発生した場合に、親局装置1gが選択中のPTPマスタ8を他の事業者のPTPマスタ8に切り替える点で第6の実施形態の分散アンテナシステム100eと異なる。この場合、クロック選択部181は、新たに選択したクロックと同じ事業者のPTPマスタ8を選択してもよいし、他のPTPマスタ8を選択してもよい。
このように構成された第8の実施形態の分散アンテナシステム100gによれば、選択中の事業者のクロックに異常が発生した場合であっても、他の事業者のクロックに切り替えて分散アンテナシステム100gの動作を継続させることが可能となる。また、クロックの切り替えに合わせて選択中のPTPマスタ8を他のPTPマスタ8に切り替えることでクロックの異常による時刻同期の精度の低下を抑制することができる。
以上で説明した各実施形態の分散アンテナシステムにおいて、親局装置、中継装置又は子局装置は、他の実施形態の親局装置、中継装置又は子局装置が有する機能の一部又は全部を備えるために、適宜その構成が変更されてもよい。例えば、PTPのマスタ機能やスレーブ機能は、親局装置、中継装置又は子局装置のいずれに備えられてもよいし、そのために必要なBC機能又はTC機能を実現する機能部が適宜他の装置に設けられてもよい。また、各装置の入出力部は、入出力する信号の態様に応じて他の実施形態の入出力部に適宜置き換えられてもよい。
また、分散アンテナシステムに複数の事業者を収容する場合、システム内の伝送路は複数の事業者で共有されてよい。この場合、システム内の各装置には、伝送路の共有に必要な信号の多重化機能及び分離機能を実現する機能部が適宜付加されてもよい。また、上記の各実施形態では、複数の事業者の一例として2つの事業者A及びBを収容する分散アンテナシステムの例を示したが、各実施形態で説明した構成を適宜スケールアウトすることにより3つ以上の事業者を収容することも可能である。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、親局装置又は子局装置が、コアネットワークのクロックに同期したクロック信号を無線信号に基づいて生成する構成、コアネットワークの時刻に同期する構成、第2基地局が自装置との時刻同期に必要とする時刻同期情報を生成する構成を持ち、子局装置が、クロック信号及び時刻同期情報を第2基地局に出力する構成を持つことにより、基地局間の時刻同期を高精度に行うことができる分散アンテナシステム及び同期方法を提供することができる。例えば、屋内の各所に設置された基地局に対して、基地局ごとに新たなネットワーク機器を設けることなく、各基地局のクロック及び時刻をコアネットワークのクロック及び時刻に同期させることが可能になる。また、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、Sync−E機能を有するネットワーク機器を用いることなく、PTPプロトコルに対応したネットワーク機器のみで、各所の基地局のクロック及び時刻をコアネットワークの時刻及びクロックに高精度に同期させることができる。
また、上記の各実施形態の分散アンテナシステムにおいて、システム内の各装置を接続する伝送路に光ファイバが用いられてもよい。この場合、光ファイバ上での光波長多重技術を用いれば、無線信号とパケット信号とを別々のフレームとして伝送するこも可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。