JP6977854B1 - 熱電変換材料および熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料および熱電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】熱電変換性能と導電性とを両立できる熱電変換材料を提供すること。また、熱電変換性能と塗膜の耐擦傷性に優れた熱電変換素子を提供すること。【解決手段】本発明が解決しようとする課題は、重合体(A)、導電性材料(B)、アニオン(C)、カチオン(D)およびカチオン捕捉剤(E)を含んでなる熱電変換材料であって、上記重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体であることを特徴とする熱電変換材料によって解決できる。【選択図】なし

Description

本発明は、熱電変換材料および熱電変換素子に関する。
熱電変換材料を用いて熱を電気に変換する熱電変換技術は、自然界における様々な熱に加え、工場・車・家庭から排出される排熱や体温等の微小熱エネルギーを電気として有効活用できるクリーンエネルギーとして注目されている。熱電変換技術に活用される熱電効果は様々存在するが、半導体や金属の組合せにより構成される材料の両端に2つの異なる温度を与えた際、その温度差に応じて材料内に生じた電子勾配により起電力が発生するゼーベック効果を活用したシステムが主流である。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換できる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換素子とは、熱を電力に変換する素子であり、半導体や金属の組合せによって構成される。代表的な熱電変換素子としては、p型半導体単独、n型半導体単独、またはp型半導体とn型半導体との組合せ、に分類される。より大きな電位差を得るために、熱電変換素子では、一般的に、材料としてp型半導体とn型半導体とを組合せて用いる。
また、熱電変換素子は、ペルチェ素子に代表されるように、多数の素子を板状、または円筒状に組合せてなる熱電モジュールとして使用される。熱エネルギーを直接電力に変換することができるため、例えば、体温で作動する腕時計、地上用発電および人工衛星用発電における電源として利用できる。熱電変換素子の性能は、熱電変換材料の性能、およびモジュールの耐久性等に依存する。
非特許文献1に記載されているとおり、熱電変換材料の性能を表す指標として、無次元熱電性能指数ZTが用いられる。また、熱電変換材料の性能を表す指標として、パワーファクターPF(=S2・σ)を用いる場合もある。
上記、無次元熱電性能指数ZTは、下記式(1)により表される。
ZT=((S2・σ)/к)・T 式(1)
ここで、Sはゼーベック係数(V/K)、σは導電率(S/m)、Tは絶対温度(K)、およびкは熱伝導率(W/(m・K))である。熱伝導率кは下記式(2)で表される。
к=α・ρ・C 式(2)
ここで、αは熱拡散率(m2/s)、ρは密度(kg/m3)、およびCは比熱容量(J/(kg・K))である。
すなわち、熱電変換の性能(以下、熱電特性とも称す)を向上させるには、ゼーベック係数または導電率を向上させ、その一方で熱伝導率を低下させることが重要である。
近年、従来の無機材料に代えて、有機材料を用いた熱電変換素子に関する検討が進められている。有機材料は、軽量である上に優れた成型性を有し、かつ無機材料よりも優れた可撓性を有するため、それ自身が分解しない温度範囲での汎用性が高い。また、印刷技術等を容易に活用できるため、製造エネルギーや製造コストの面でも無機材料より有利である。
例えば、特許文献1には、有機色素骨格を有する高分子分散剤とカーボンナノチューブ(CNT)とを含有する熱電変換材料およびそれを用いた熱電変換素子が開示されている。また、特許文献2には、キャリア輸送特性を有する多環芳香族環とアルキル基を含む置換基とが結合した導電性化合物を含む熱電変換材料およびそれを用いた熱電変換素子が開示されている。しかしながら、特許文献1の発明では、熱電変換素子として十分な性能が得られてはいなかった。また、特許文献2の発明では、導電率が10-8〜10-7S/cmと低く、熱電変換素子として実用的な値を得ることができていない。また、熱電変換素子としての性能に加え、従来知られている熱電変換素子は、耐擦傷性に乏しいという問題があった。
国際公開第2015/050113号 国際公開第2015/129877号
梶川武信著、「熱電変換技術ハンドブック(初版)」、エヌ・ティー・エス出版、19頁
本発明が解決しようとする課題は、熱電変換性能と導電性とを両立できる熱電変換材料を提供することである。また、熱電変換性能と塗膜の耐擦傷性に優れた熱電変換素子を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、重合体(A)、導電性材料(B)、アニオン(C)、カチオン(D)およびカチオン捕捉剤(E)を含んでなる熱電変換材料であって、上記重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体であることを特徴とする熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記重合体(A)中、上記(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を1質量%以上含むことを特徴とする上記熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記アニオン(C)が、OH-、R1-、R2-、R3COO-、SH-、BH4 -、I-、Br-およびCl-からなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする上記熱電変換材料に関する。ただし、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
また、本発明は、上記カチオン(D)が、金属カチオンまたは有機塩基由来のカチオンを含むことを特徴とする上記熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記カチオン捕捉剤(E)が、有機配位子を含むことを特徴とする上記熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記有機配位子が、環状エーテル構造を有する化合物、ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールの誘導体からなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする上記熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記重合体(A)の含有率が、上記導電性材料(B)の全量に対して5〜100質量%であることを特徴とする上記熱電変換材料に関する。
また、本発明は、上記熱電変換材料を含んでなる熱電変換膜と、電極とを有し、上記熱電変換膜と上記電極とが、電気的に接続されていることを特徴とする熱電変換素子に関する。
本発明により、熱電変換性能と導電性とを両立できる熱電変換材料を提供することができる。また、当該材料を用いて、優れた熱電変換性能と耐擦傷性に優れた熱電変換素子を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
<熱電変換材料>
本発明の熱電変換材料は、重合体(A)、導電性材料(B)、アニオン(C)、カチオン(D)およびカチオン捕捉剤(E)を含んでなる熱電変換材料であって、上記重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体であることを特徴とする。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<重合体(A)>
重合体(A)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体である。重合体(A)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含んでいれば、単独重合体であっても、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体以外のその他単量体との共重合体であっても良い。重合体(A)が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体いずれの形態であってもよい。重合体(A)中の(メタ)アクリロニトリル中のシアノ基の強い極性が、導電性材料(B)への吸着性を高め、導電性材料(B)の凝集や導電性材料(B)への水分の吸着を抑制し、熱電変換材料中に安定に存在させることができるものと推察される。
重合体(A)の構成単位の内、(メタ)アクリロニトリルに由来する単位は、1質量%以上100質量%以下含有することが好ましく、50質量%以上100質量%以下含有することがより好ましく、65質量%以上100質量%以下含有することがさらに好ましく、75質量%以上100質量%以下含有することが特に好ましい。(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を上記範囲で含有することで、導電性材料(B)への吸着性を良好に得ることができる。
重合体(A)は、上記単量体以外のその他単量体を構成単位として含んでも良い。その他単量体としては、
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、3−メチルオキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の脂肪族不飽和脂肪酸類;
スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−イソプロペニルトルエン、2−イソプロペニルトルエン、4−n−オクチルスチレン、1−ビニルナフタレン、m−ビニルベンジルシアニド、p−ビニルベンジルシアニド等の芳香族炭化水素化合物類;
等が挙げられる。
重合体(A)の製造方法は、特に限定はされず、例えば、溶解重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法、沈殿重合等のいずれの方法を用いてもよく、溶解重合または沈殿重合法が好ましく、沈殿重合法が最も好ましい。沈殿重合法によって得られた重合体(A)は重合時に使用する溶媒に溶解する低分子量成分や残存単量体を重合後速やかに除去できるため、分子量分布を狭く制御することが可能で、残存単量体量も限りなく低減でき、分散剤として機能する分子量の重合体(A)を効率的に得ることができる。重合反応系としては、イオン重合、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合等の付加重合を用いることができ、フリーラジカル重合またはリビングラジカル重合が好ましい。また、ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物またはそれらの混合物が使用でき、必要に応じて連鎖移動剤等の分子量調整剤を使用してもよい。
重合体(A)の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、3000以上500000以下の範囲が好ましく、4000以上200000以下の範囲がより好ましく、5000以上100000以下の範囲がさらに好ましく、10000以上100000以下の範囲が特に好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることで、導電性材料(B)への吸着性を良好に得ることができる。
<導電性材料(B)>
導電性材料(B)は、導電性向上に寄与するものである。そのため、導電性材料(B)の含有量を増やすことで導電性を向上させることができる。導電性材料(B)は、導電性を有する材料(炭素材料、金属材料、導電性高分子等)であれば、特に制限されず、例えば、炭素材料としては、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)等が挙げられる。金属材料としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ゲルマニウム、ガリウムおよび白金等の金属粉、並びに ZnSe、CdS、InP、GaN、SiC、SiGeこれらの合金、並びにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、上記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、およびGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられる。導電性高分子としては、例えば、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸から成る複合物)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等が挙げられる。使用する導電性材料の種類は一種でもよいし、2種以上を組み合せて使用しても良い。また、導電性材料(B)の形状は、特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。
ゼーベック係数と導電性との両立の観点で、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、より好ましくはカーボンナノチューブであり、特に好ましくは単層カーボンナノチューブある。
炭素材料としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP−5、UP−10、UP−20、UP−35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB−150、CB−100、ACP、ACP−1000、ACB−50、ACB−100、ACB−150、SP−10、SP−20、J−SP、SP−270、HOP、GR−60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛工業所社製のBF−3AK、FBF、BF−15AK、CBR、CPB−6S、CPB−3、96L、96L−3、K−3、SC−120、SC−60、HLP、CP−150、SB−1、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB−99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC−20、CGC−50、CGB−20、CGB−50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、K−5、AP−2000、AP−6、300F、150Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG−60、PAG−80、PAG−120、PAG−5、HAG−10W、HAG−150、中越黒鉛社製のG−4AK、G−6S、G−3G−150、G−30、G−80、G−50、SMF、EMF、SFF、SFF−80B、SS−100、BSP−15AK、BSP−100AK、WF−15C、SECカーボン社製のSGP−100、SGP−50、SGP−25、SGP−15、SGP−5、SGP−1、SGO−100、SGO−50、SGO−25、SGO−15、SGO−5、SGO−1、SGX−100、SGX−50、SGX−25、SGX−15、SGX−5、SGX−1が挙げられる。
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.5,EC1.5−P、楠本化成社製のTUBALL、ゼオンナノテクノロジー社製のZEONANO等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube7000、FloTube2000、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T、200P等が挙げられる。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、500
0ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC−300J、EC−600JD等のケッチェンブラック、電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等のアセチレンブラックが挙げられる。これらは特に限定されることはない。
重合体(A)は、アクリロニトリルに由来する単量体単位が、環状構造を形成すると熱電変換材料の分散性、流動性、保存安定性がより向上する。例えば、重合体(A)をアルカリで処理するとアクリロニトリルに由来する単量体単位が水素化ナフチリジン環等の環状構造へ変化し、分散性がより向上する。また、詳しいメカニズムは不明であるが、環状構造を形成することで、熱電変換材料の熱電性能も向上する。環状構造を有することで、導電性材料(B)への吸着性が高まり、重合体(A)から導電性材料(B)へのキャリア移動が起こりやすくなったためと考えられる。
<イオン性化合物>
本発明の熱電変換材料は、アニオン(C)とカチオン(D)とからなるイオン性化合物を含有する。イオン性化合物としては、無機塩基、無機金属塩、オニウム塩以外の有機塩、オニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
無機塩基としては、金属水酸化物等が挙げられる。金属水酸化物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。
無機金属塩は、金属の炭酸塩等が挙げられる。金属の炭酸塩としては、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩は、例炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属の炭酸塩が好ましく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。尚、無機塩基または無機金属塩中の金属は、遷移金属であってもよい。
オニウム塩以外の有機塩は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノラート塩、金属アルコキシド等が挙げられる。カルボン酸塩としては、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。スルホン酸塩としては、p−トルエンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。フェノラート塩としては、ナトリウムフェノラート等が挙げられる。金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
オニウム塩としては、アンモニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、アンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、アンモニウムクロリド、アンモニウムブロミド、アンモニウムヨージド等が挙げられる。
アンモニウムヒドロキシドとしては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アンモニウムフルオリドとしては、テトラメチルアンモニウムフルオリド四水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラブチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
アンモニウムクロリドとしては、アセチルコリンクロリド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
アンモニウムブロミドとしては、アセチルコリンブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
アンモニウムヨージドとしては、アセチルコリンヨージド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラアミルアンモニウムヨージド、トリメチルフェニルアンモニウムヨージド等が挙げられる。
オキソニウム塩としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。
スルホニウム塩としては、テトラフルオロほう酸ジメチル(メチルチオ)スルホニウム、トリメチルスルホニウムブロミド等が挙げられる。
ヨードニウム塩としては、ビス(2,4,6−トリメチルピリジン)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸ジフェニルヨードニウム等が挙げられる。
ブロモニウム塩としては、ビス(2,4,6−トリメチルピリジン)ブロモニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
イオン性化合物は、導電性材料(B)の全量に対して、1〜70質量%含有することが好ましく、5〜60質量%含有することがより好ましい。このような含有率とすることで分散性がより向上し、熱電変換素子の導電率、経時安定性がより向上する。
<アニオン(C)>
アニオン(C)は、OH-、R1-、R2-、R3COO-、SH-、BH4 -、I-、Br-、Cl-、BF4−、ClO4−、BF4−、PF6−、ClO4−等が挙げられる。これらの中でも、OH-、R1-、R2-、R3COO-、SH-、BH4 -、I-、Br-およびCl-からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、OH-またはR1-であることがより好ましい。ここで、R1、R2およびR3は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖アルキル基および分岐アルキル基が挙げられる。
直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等が挙げられる。
分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基)、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ドデセニル基、ペンテニル基等等が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ヘキシニル基、2−ドデシニル基等が挙げられる。
また、芳香族炭化水素基としては、アリール基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチルン基、アンスリル基等が挙げられる。
<カチオン(D)>
カチオン(D)としては、金属イオンや有機塩基由来のカチオン等が挙げられる。金属イオンとしては、典型金属イオン、遷移金属イオン等が挙げられる。上記金属イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオン、スカンジウムイオン等が挙げられる。
また、有機塩基由来のカチオンとしては、一級、二級または三級アミンに由来のカチオン、その他塩基性含窒素有機化合物に由来のカチオン等が挙げられる。一級、二級または三級アミンに由来のカチオンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等に由来のカチオンが挙げられる。その他塩基性含窒素有機化合物に由来のカチオンとしては、ピリジン、キノリン、インキノリン、ピロリジン、ピぺリジン、アジリジン、ポリエチレンイミン等に由来のカチオンが挙げられる。
<カチオン捕捉剤(E)>
カチオン捕捉剤(E)は、特に限定されないが、有機配位子が好ましい。本明細書において、「有機配位子」とは、カチオン(D)と配位結合を形成し得るものを指す。
有機配位子は、環状エーテル構造を有する化合物、ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールの誘導体からなる群より選ばれる一種以上を含むことが好ましい。
本明細書中で、環状エーテル構造を有する化合物とは、環状のエーテル構造を有する化合物のことを指す。
環状エーテル化合物としては、スフェランド、[2.2.1]クリプタンド、[2.2.2]クリプタンド、[2.1.1]クリプタンド、18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、シクロデキストリン等が挙げられる。カチオン捕捉能や熱電材料としての安定性の観点から、18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテルが好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコールの誘導体としては、ポリアルキレングリコールの少なくとも一つの水酸基中の水素原子が有機残基により置換された誘導体が挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノカルボキシレート、ポリアルキレングリコールジカルボキシレート等が挙げられる。カチオン捕捉能や熱電材料としての安定性の観点から、ポリエチレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールの誘導体が好ましい。
その他のカチオン捕捉剤として、カーボネート類、エポキシド類、カリックスアレーンおよびカリックスアレーン誘導体等のカチオン捕捉能を有する環状化合物類を含んでいてもよい。
カチオン捕捉剤(E)の配合量は、無機塩基、無機金属塩、有機塩基などのカチオン(D)に対し、0.25モル〜2モル等量であることが望ましい。より好ましくは、0.5〜1モル等量であることが望ましい。このような配合量とすることで、カチオン(D)を捕捉することができ、熱電変換材料の安定性を増すことができる。
また、重合体(A)は、熱電変換材料中で導電性材料(B)の分散、ゼーベック係数の向上、導電性との両立の観点から、重合体(A)の含有率は、導電性材料(B)の全量に対して、上限が、400質量%以下が好ましく、200質量%以下がより好ましく、120%以下が更に好ましく、100質量%以下が特に好ましい。また、重合体(A)の効果を発揮するために、下限は、重合体(A)は、導電性材料(B)の全量に対して、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、40%以上が特に好ましい。
本発明の熱電変換材料は、熱電特性を維持する上で、ラジカルを発生する化合物を含有しないことが好ましいが、必要に応じてその他成分を含んでも良い。
(分散媒)
分散媒は、重合体(A)と導電性材料(B)とを混合する際の媒体として使用することができる。分散媒を含有することによってインキまたはペーストの状態となるため、印刷や塗工によって熱電変換膜を形成することができる。使用できる分散媒としては、重合体(A)と導電性材料(B)とを溶解また良分散できるものが好ましく、有機溶剤や水を挙げることができる。分散媒は一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いても良い。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリフルオロエタノール、m−クレゾール、およびチオジグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N−メチルピロリドン等から、必要に応じて適宜選択することができる。重合体(A)と導電性材料(B)の分散性や溶解性の観点から、N−メチルピロリドンが特に好ましい。
(樹脂)
本発明の熱電変換材料は、成膜性や膜強度の調整等を目的として、更に、樹脂を含んでもよい。樹脂は一種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらの樹脂の共重合体等であっても良い。特に限定するものではないが、一実施形態において、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂であることが好ましい。導電性の観点から、樹脂を含む場合、樹脂の含有量は、重合体(A)と導電性材料(B)との全質量を基準として、99質量%以下の範囲が好ましく、50質量%以下の範囲がより好ましく、20質量%以下の範囲がさらに好ましい。
(無機熱電変換材料)
本発明の熱電変換材料は、熱電変換性能を高めるために、必要に応じて、無機熱電変換材料を含んでも良い。無機熱電変換材料は特に限定されず、一般に熱電変換材料として知られているものを使用できる。
<熱電変換素子>
本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料を用いて形成された熱電変換膜と、電極とを有し、熱電変換膜と電極とが、電気的に接続されているものである。熱電変換膜は、導電性および熱電特性に加えて、耐熱性や可撓性の点でも優れる。そのため、高品質な熱電変換素子を容易に作製することができる。
熱電変換膜は、基材上に熱電変換材料を塗布して得られる膜であってもよい。熱電変換材料は優れた成型性を有するため、塗布または印刷によって良好な膜を得ることが容易である。熱電変換膜の製造方法としては目的とする熱電変換膜を得ることができれば特に限定はなく、熱電変換材料の粘度等の特性や、必要とされる膜厚、面積、形状等の条件に応じて適宜選択することができる。例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ブレードコート、コンマコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、ディップコート、ディスペンサー、スクリーンコート、インクジェット印刷等の各種手段を用いた方法が挙げられる。
熱電変換膜の膜厚は、特に限定されるものではなく、必要とされる電流値、電圧値、および抵抗等の電気的性質や、熱電特性に応じて設定できるが、後述するように、熱電変換膜の厚さ方向または面方向に温度差を生じ、かつ伝達できるように、一定以上の厚みを有するように形成されることが好ましい。熱電特性や可撓性の点から、熱電変換膜の膜厚は、0.1〜200μmの範囲であることが好ましく、1〜100μmの範囲が更に好ましく、1〜60μmの範囲であることが特に好ましい。
基材としては、特に制限はないが、不織布、紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリカーボネート、およびセルローストリアセテート等の材料からなるプラスチックフィルム、またはガラス等を用いることができる。これら基材は、熱電変換材料の水や酸素の影響による劣化を防ぐために、基材表面にアルミ蒸着層やバリア層を有するものであっても良い。
基材と熱電変換膜との密着性を向上させる目的で、基材表面に様々な処理を行うこともできる。具体的には、熱電変換材料の塗布に先立ち、UVオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理、または易接着処理を行うこともできる。
熱電変換膜は、基材との積層されたものであってもよく、基材を有さない自立膜であってもよい。自立膜を作製する場合には、特に制限はないが、例えば、剥離性シート上に熱電変換膜を形成した後に、剥離コートを除去することで得ることができる。
剥離性シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、およびポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムに離型処理したもの等が挙げられる。
熱電変換素子は、上記熱電変換材料を用いて構成されることを除き、当技術分野で周知の技術を適用して構成することができる。熱電変換素子のより具体的な構成、およびその製造方法について説明する。
熱電変換素子は、熱電変換膜と電極とが電気的に接続している。ここで、「電気的に接続する」とは、互いに接合しているか、またはワイヤー等の他の構成部分を介して通電できる状態であることを意味する。
電極の材料は、電極として働くものであれば特に制限はないが、金属、合金、および半導体から選択することができる。一実施形態において、導電率が高く、熱電変換膜の接触抵抗が低いほうが好ましいことから、金属および合金が好ましい。例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。電極は銀を含むものがさらに好ましい。
電極の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、電極材料箔や電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料の微粒子を分散したペーストの塗布等の方法によって形成することができる。プロセスの簡便さの観点から、電極材料箔や電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料を分散したペーストの塗布による方法が好ましい。
熱電変換素子の構造の典型例としては、熱電変換膜と一対の電極との位置関係から、(1)本発明による熱電変換膜の両端に電極が形成されている構造と、(2)本発明の熱電変換膜が2つの電極で挟持されている構造とに大別される。
上記(1)の構造を有する熱電変換素子は、例えば、基材上に熱電変換膜を形成した後に、その両端にそれぞれ銀ペーストを塗布して第1および第2の電極を形成することによって得ることができる。このように熱電変換膜の両端に電極が形成された熱電変換素子は、2つの電極間の距離を広くすることが容易である。そのため、2つの電極間で大きな温度差を発生させて、効率よく熱電変換を行うことが容易にできる。
上記(2)の構造を有する熱電変換素子は、例えば、基材上に銀ペーストを塗布して第1の電極を形成し、その上に本発明の熱電変換膜を形成し、さらにその上に銀ペーストを塗工して第2の電極を形成することによって得ることができる。このように2つの電極で本発明の熱電変換膜を挟持する熱電変換素子では、熱電変換膜の膜厚方向、つまり基材に対して垂直な方向の温度差を利用できることから、発熱原に貼り付ける形態での利用が可能である。そのため、熱源から広範囲で熱を取り出すことができる等の利点があるため好ましい。上記(2)の構造を有する熱電変換素子では、膜厚を厚くすることで2つの電極間の距離を広くし、温度差を確保することも可能である。
熱電変換素子は、直列に接続することで高い電圧を発生させることが可能であり、並列に接続することで大きな電流を発生させることが可能である。また、熱電変換素子は、2つ以上の熱電変換素子を接続したものであってもよい。本発明によれば、熱電変換素子が優れた可撓性を有するため、平面ではない形状を有する熱源に対しても追随して良好に設置することが可能である。熱電変換素子は、熱源から効率良く熱を伝えるための吸熱層や蓄熱層を有していても良く、また、温度差を確保するために断熱層や放熱層を有していても良い。更に、用途や必要な電力量に応じ、取り出した電気を昇圧回路を用いて昇圧したり、取り出した電気エネルギーをコンデンサーやキャパシタ、あるいは二次電池等に一時的に溜めて使用することもできる。
以下、実験例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。尚、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味するものとする。また、「NMP」とは、N−メチルピロリドンを示す。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置は、HLC−8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを3本直列に繋ぎ、充填剤には順に東ソー社製「TSK−GELSUPERAW−4000」、「AW−3000」および「AW−2500」を用い、オーブン温度40℃、溶離液として30mMトリエチルアミンおよび10mMLiBrのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6mL/分で測定した。測定用試料は、上記溶離液からなる分散媒に1%の濃度で調整し、20μL注入した。分子量は、ポリスチレン換算値である。
<重合体(A)の製造>
(製造例1)
(重合体(A−1)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アセトニトリル100部、アクリロニトリル1部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)99部、連鎖移動剤として3−メルカプト−1,2−プロパンジオール1部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱してアセトニトリル10部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製:V−65)0.4部からなる混合物を6時間かけて反応容器内に滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70℃で1時間反応させた後、V−65を0.1部添加し、さらに70℃で1時間反応を続け目的物を沈殿物として得た。その後、不揮発分測定にて転化率が98%を超えたことを確認した。生成物を減圧濾過によって濾別し、アセトニトリル100部にて洗浄を行い、減圧乾燥によって溶媒を完全に除去して重合体(A−1)を得た。
(製造例2〜8)
(重合体(A−2)〜(A−8)の製造)
単量体の種類と配合量を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様にして、それぞれ重合体(A−2)〜(A−8)を製造した。各重合体のMwを表1に示す。尚、重合体(A−2)〜(A−8)の合成は、連鎖移動剤の添加、重合開始剤量の調整、および反応条件等を適宜変更してMwを調整した。また、連鎖移動剤として3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを用いた。
表1中、数値は特に断りのない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。また、本明細書中での略号は以下のとおりである。
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
<熱電変換材料を含む分散液の製造>
[実施例1]
(分散液1)
重合体(A)として重合体(A−1)0.3部、導電性材料(B)としてSWCNT(OCSiAl社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」)0.4部、NMP79.3部、イオン性化合物として水酸化ナトリウム0.036部、カチオン捕捉剤(E)としてDB15C5の0.284部をそれぞれ秤量して混合した。さらにビーズを加え、スキャンデックスで4時間振とう後、ろ過してビーズを取り除き、熱電変換材料の分散液1を得た。
[実施例2〜37、比較例1〜3]
(分散液2〜37、分散液101〜103)
材料の種類および配合量を表2に示す内容にそれぞれ変更した以外は、分散液1の製造方法と同様にして、熱電変換材料の分散液2〜37、101〜103をそれぞれ得た。
表2に記載した略号の材料を以下に示す。
導電性材料(B)
SWCNT:OCSiAl社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」
MWCNT:(KUMHO PETROCHEMICAL社製多層カーボンナノチューブ「Knanos100P」)
CB:(ライオン社製 ケッチェンブラック「EC−300J」)

重合体(A)ではない重合体
PVA:エクセバール RS−2117(クラレ社製)
エチレン酢ビ:エチレン/酢酸ビニルコポリマー ウルトラセン760 東ソー社製

イオン性化合物
NaOMe:ナトリウムメトキシド
TBAOH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド

カチオン捕捉剤(E)
DB18C6:ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル
DB15C5:ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル
PEG#1000:ポリエチレングリコール(日油社製)
M−1000:ポリオキシエチレン−モノメチルエーテル(日油社製)
ユニオールD−700:ポリプロピレングリコール(日油社製)
ユニオックスG−450:ポリオキシエチレン−モノメチルエーテル(日油社製)
カリックスアレーン:4−tert−ブチルカリックス[6]アレーン
<熱電変換材料の評価>
得られた分散液1〜37、101〜103を、それぞれシート状基材である厚さ75μmのPETフィルムにアプリケータを用いて塗布した後、120℃で30分間乾燥して、膜厚5μmの熱電変換膜を有する積層体をそれぞれ得た。分散液を基材に塗工した際の塗工適性として以下に示す方法に従って評価した。また、得られた熱電変換膜(以下、塗膜ともいう)を有する積層体について、以下の方法に従って、導電率、ゼーベック係数、常温安定性を評価した。結果を表2に示す。
(導電率(抵抗率))
得られた積層体を2.5cm×5cmの大きさに切り取り、JIS−K7194に準じて、ロレスタGX MCP−T700(三菱化学アナリテック社製)を用いて四探針法で導電率を測定した。比較例1の導電率を1としたときの相対値として表2に示す。
(ゼーベック係数)
得られた積層体を3mm×10mmの大きさに切り取り、アドバンス理工株式会社製のZEM−3LWを用いて、80℃におけるゼーベック係数(μV/K)を測定した。比較例1のゼーベック係数を1としたときの相対値を表2に示す。
(耐擦傷性)
綿棒で塗膜表面を5回擦り、擦った部分の外観変化を目視で観測した。評価基準は以下の通りである。
○:変化なし(極めて良好)
△一部に剥がれが見られる(良好)
×全面で剥がれが見られる(不良)
表2が示すように、本発明の熱電変換材料は、高い導電率とゼーベック係数を示した。更に、耐擦傷性に優れていることが確認された。これは、重合体Aを加えることによって塗膜の密度が増したためであると考えられる。
<熱電変換素子の製造>
厚さ50μmのPETフィルム上に、上記分散液をそれぞれ塗布し、厚さ20μm、5mm×30mmの形状を有する熱電変換層を、それぞれ10mm間隔に5つ作製した。次いで、各熱電変換層がそれぞれ直列に接続されるように、銀ペーストを用いて、厚さ10μm、5mm×33mmの形状を有する銀回路(電極)を4つ作製して熱電変換素子をそれぞれ製造した。上記銀ペーストとしては、東洋インキ株式会社製のREXALPHA RA−FS 074を使用した。各熱電変換素子について起電力を測定したところ、実施例1〜37で製造した分散液を用いて製造した熱電変換素子は、いずれも比較例1〜3で製造した分散液を用いて製造した熱電変換素子よりもゼーベック係数が優れていることを確認した。
Figure 0006977854
Figure 0006977854

Claims (8)

  1. 重合体(A)、導電性材料(B)、アニオン(C)カチオン(D)とからなるイオン性化合物およびカチオン捕捉剤(E)を含んでなる熱電変換材料であって、前記重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を含む重合体であり、前記イオン性化合物は、前記導電性材料(B)の全量に対して、1〜70質量%含有することを特徴とする熱電変換材料。
    ただし、重合体(A)は、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート=35/65の共重合体を除く。
  2. 前記重合体(A)の重量平均分子量が、3000以上500000以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料。
  3. 前記アニオン(C)が、OH-、R1-、R2-、R3COO-、SH-、BH4 -、I-、Br-およびCl-からなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換材料。ただし、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
  4. 前記カチオン(D)が、金属カチオンまたは有機塩基由来のカチオンを含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の熱電変換材料。
  5. 前記カチオン捕捉剤(E)が、有機配位子を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の熱電変換材料。
  6. 前記有機配位子が、環状エーテル構造を有する化合物、ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールの誘導体からなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項5記載の熱電変換材料。
  7. 前記重合体(A)の含有率が、前記導電性材料(B)の全量に対して5〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の熱電変換材料。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の熱電変換材料を含んでなる熱電変換膜と、電極とを有し、前記熱電変換膜と前記電極とが、電気的に接続されていることを特徴とする熱電変換素子。

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