シュレム管にアクセスするため、ならびに眼内デバイス、器具、及び/またはその中の流体組成物を送達して、眼圧を低減することによって、眼の状態を治療するためのシステム及び方法が、本明細書に記載される。流体、及びシステムのある特定の構成要素、例えば、摺動可能な細長部材を使用して、小柱網、近傍細管組織、シュレム管、及びコレクターチャネルを含む、小柱細管組織を分断するための力を提供し得る。本明細書で使用する場合、「分断する」という用語は、小柱細管流出路を通した流れを改善する様式で組織を改変する、ある体積の流体またはシステム構成要素の送達を指す。組織分断の例としては、シュレム管の拡張、コレクターチャネルの拡張、小柱網の多孔性の増大、小柱網の引張、近傍細管組織における微小な裂け目若しくは穿孔の形成、シュレム管からの中隔の除去、小柱細管組織を切断すること、裂くこと、若しくは除去すること、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載のシステム及び方法をよりよく理解するために、基本的な眼構造の一部を説明することが有用かもしれない。図1は、正常なヒトの眼の様式化した描写である。前房(100)を、角膜(102)によってその前面に結合した状態で示す。角膜(102)は、その周辺部で強膜(104)に接続し、強膜は、眼の白色の保護用シェルを形成している硬質の線維組織である。小柱網(106)は、前房(100)の外周に位置する。小柱網(106)は、前房(100)の周囲で360度円周方向に延在する。シュレム管(108)が小柱網(106)の外周面に位置する。シュレム管(108)は、小柱網(106)の周囲で360度円周方向に延在する。前房隅角(112)が、虹彩(110)、小柱網(106)、及び強膜(104)の間に形成される頂点に存在する。
本システムは、概して、片手による操作、及び単独の操作者による制御に対して構成され、最低限の外傷でシュレム管に容易にアクセスするのに有用な1つ以上の特徴部を含む。カナルへのアクセスが得られると、本システムは、眼内デバイス、器具、及び/または流体組成物を送達し得る。いくつかの変形では、本システムは、眼内デバイスまたは流体組成物の送達なしでシュレム管及び周辺組織を分断する器具を前進させる。例えば、器具は、細長部材であってもよく、この細長部材は、カナル及び周辺組織を分断するようにサイズ決定された外径を有し、カナルにアクセスするのに使用されるカニューレ内で摺動可能かつカニューレから延出可能である。細長部材の胴体は、いくつかの例では、細長部材がシュレム管内にある間に本システムを眼から除去する場合に、小柱網を切断するかまたは裂くように構成されてもよく、かつ/または細長部材の遠位端に、小柱細管組織の分断を支援するための分断用構成要素を提供してもよい。
デバイスがカナルに埋め込まれる場合、デバイスは、概して、カナルを横切る貫壁性流体流動に大きく干渉することなく、シュレム管の開存性を維持するように構成されることになる。これは、房水の小柱細管組織を通した正常な生理的流出を回復させる、可能にする、または強化し得る。眼内インプラント、例えば、各々全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,909,789号に開示のもの、及び米国特許第8,529,622号に開示のものを送達してもよい。いくつかの変形では、米国特許第7,909,789号及び米国特許第8,529,622号中のインプラントは、カナルを横切るかまたはカナルに沿った貫壁性流体流動または長手方向の流体流動に大きく干渉することなく、シュレム管の中心核を完全に横断する少なくとも1つの開窓を有する支持体を含む。本眼内デバイスはまた、近傍細管小柱網、またはシュレム管の隣接する内壁を分断し得る。本眼内デバイスはまた、高眼圧症、緑内障若しくは前段階緑内障、感染症、または瘢痕化、血管新生、線維症、または術後の炎症の治療に有用な薬物でコーティングしてもよい。本眼内デバイスはまた、固体、半固体、または生体吸収性であるように形成してもよい。
本システムを使用して、流体組成物、例えば、生理食塩水または粘弾性流体を送達することもできる。生理食塩水は、潅注に使用し得る。粘弾性流体は、カナル及び周辺組織を分断するために、アブインテルノ型のビスコカナロストミーまたは管形成術手順において用いてもよい。
I.システム/デバイス
本明細書に記載のシステムは、概して、把持部分と、内部端及び遠位端を有するハウジングとを有する兼用ハンドルを含む、単独の操作者が片手で制御するデバイスであり得る。カニューレは、典型的には、ハウジングの遠位端に連結し、それから延在する。カニューレは、近位端及び遠位湾曲部分を含んでもよく、遠位湾曲部分は、近位端及び遠位端、ならびにこれらの端部の間に定義される曲率半径を有する。他の変形では、カニューレは直線状であってもよく、遠位湾曲部分を備えない場合がある。カニューレはまた、胴体、ベベルを有する遠位先端、及び近位端から遠位先端を通って延在する内腔を含むように構成され得る。ベベルは、カニューレの湾曲部分の遠位端に直接係合してもよい(即ち、ベベルは曲率半径に直接係合してもよい)。本システムはまた、概して、回転運動を線形運動に変換するギアを備える、ハウジング内に部分的に収容される駆動組立体を含んでもよい。眼内デバイスをシュレム管に埋め込むことになる場合、本システムは、カニューレの内腔内で同軸上に配設される近位端及び遠位端を有する摺動可能な位置決め要素を更に含み得る。本システムはまた、カニューレの内腔内で同軸上に配設される内腔を備える摺動可能な細長部材を含むように構成されてもよい。流体組成物をシュレム管に送達することになる場合、本システムはまた、流体組立体をハンドルに含めるように構成されてもよい。流体組成物、例えば、生理食塩水、粘弾性溶液を含む粘弾性流体、空気、及びガスを、本システムを使用して送達してもよい。好適なマーキング、着色、またはインジケータを本システムの任意の部分に含めて、カニューレの遠位端、位置決め要素、係合機構、眼内デバイス、または摺動可能な細長部材の場所または位置の特定を助けてもよい。いくつかの例では、本明細書に記載のシステムは、アブインテルノトラベクロトミー、アブインテルノ経管トラベクロトミー、透明角膜トラベクロトミー、透明角膜経管トラベクロトミー、アブインテルノ管形成術、及び/または透明角膜管形成術を行うために使用してもよく、流体組成物を前眼部または後眼部に送達するために使用してもよい。
例示的な眼内送達システムを図2に示す。この図では、送達システム(200)は、把持部分(204)及びハウジング(206)を有する汎用ハンドル(202)を含む。ハウジングは、近位端(208)及び遠位端(210)を有する。カニューレ(212)がハウジング遠位端(210)に連結し、そこから延在している。駆動組立体(214)が、位置決め要素(図示せず)の移動を起動するハウジング(206)内に実質的に収容される。ポート(216)が、潅注流体源への着脱可能な接続のために、ハウジングの遠位端(210)上に提供される。
本明細書に記載の送達システムは、いくつかの変形では、完全に使い捨てであってもよい。他の変形では、送達システムの一部は再利用可能であってもよく(例えば、ハンドルなどの患者に接触しない材料)、一方で送達システムの一部は使い捨てであってもよい(例えば、カニューレ及び細長部材などの患者に接触する材料)。また他の変形では、本明細書に記載の送達システムは、完全に再利用可能であってもよい。
汎用ハンドル
本明細書に記載の眼内送達システムは、片手による使用が可能な汎用ハンドルを含み得る。例えば、ハンドルは、左手若しくは右手による使用、左目若しくは右眼に対する使用、または時計方向若しくは反時計方向での使用が可能であるように構成されてもよい。つまり、ハンドルは、本送達システムを使用するための能力が、どちらの手を使用するか、どちらの眼に手順を施すか、またはカナルの周囲のどちらの方向に眼内デバイス、器具、若しくは流体組成物を送達するかに無関係であるように構成され得る。例えば、本送達システムは、眼内デバイス、細長部材、及び/または流体組成物を眼中で時計方向に送達するために使用してもよく、その後、第2の配向へとハンドルを単純に反転させることで(または別の変形ではカニューレ自体を180度回転させることによって)、眼内デバイス、細長部材、及び/または流体組成物を反時計方向に送達するために使用してもよい。しかしながら、他の変形では、本明細書に記載の送達システムは、特定の構成で(例えば、片面を上にして、時計方向のみで、反時計方向のみで、など)使用するように構成されてもよいことを理解されたい。ハンドルは、概して、把持部分及びハウジングを含む。把持部分は、ある特定のエリアにおいて隆起しているか、凹んでいるか、若しくは溝付きであるか、またはテクスチャ化されて、ユーザによるハンドルの握持を改善するか、またはユーザの快適性を改善し得る。ハウジングは、内側部分及び遠位端を含み得る。ハウジングの内側部分は、駆動組立体及び位置決め要素(共に以下で更に説明する)を収容し得る。いくつかの変形では、ハウジングの遠位端は、術野の潅注のため、または本システムから空気をパージするための流体を提供し得る流体ポートを含む。
汎用ハンドルは、フルオロポリマー;熱可塑性材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ナイロンなど;及びシリコーンが挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な材料から作製してもよい。いくつかの変形では、ハウジングまたはその一部は、透明材料から作製してもよい。好適な透明性を持つ材料は、典型的には、ポリマー、例えば、アクリルコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、及びスチレンアクリロニトリル(SAN)である。特に有用であり得るアクリルコポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)コポリマー及びスチレンメチルメタクリレート(SMMA)コポリマー(例えば、Zylar 631(登録商標)アクリルコポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。汎用ハンドルが再利用可能である変形では、ハンドルは、耐熱性金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン)などの滅菌できる(例えば、加圧滅菌によって)材料から作製してもよい。
汎用ハンドルの長さは、概して、約1インチ(2.5cm)〜約20インチ(50.8cm)であり得る。いくつかの変形では、汎用ハンドルの長さは、約4インチ(10.2cm)〜10インチ(25.4cm)であり得る。いくつかの変形では、汎用ハンドルの長さは、約7インチ(17.8cm)である。
カニューレ
眼内送達システムのカニューレは、典型的には、ハウジング遠位端に連結し、それから延在し、概して、侵襲性が最小限のアブインテルノ手法を使用したシュレム管への容易かつ外傷性が最小限であるアクセスを提供するように構成される。カニューレは、ハウジングの遠位端に固定して取り付られ得、あるいは他の変形では、ハウジングの遠位端に回転可能に取り付けられ得る。ハンドルが再利用可能であり、カニューレが使い捨てである送達システムの変形では、カニューレは、ハウジングの遠位端に着脱可能に取り付けられてもよい。カニューレのいくつかの変形は、近位端及び遠位湾曲部分を含んでもよく、遠位湾曲部分は、近位端及び遠位端、ならびにこれらの端部の間に定義される曲率半径を有する。しかしながら、他の変形では、カニューレは直線状であってもよく、遠位湾曲部分を備えない場合があることを理解されたい。カニューレはまた、胴体、ベベル及び尖った穿刺先端を有する遠位先端、ならびに近位端から遠位先端を通って延在する内腔を含むように構成され得る。カニューレが遠位湾曲部分を備える場合、ベベルは、カニューレの湾曲部分の遠位端に直接係合してもよい(即ち、ベベルは曲率半径に直接係合してもよい)。いくつかの変形では、尖った穿刺先端は、1つ以上の傾斜面を備えてもよく、これについては以下でより詳細に説明する。
カニューレは、それが眼壁及び前房を通して前進するのを可能にするのに十分な剛性を持つ任意の好適な材料から作製し得る。例えば、カニューレは、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、アルミニウム、若しくはこれらの合金(例えば、ニチノール金属合金)などの金属、ポリマー、または複合材によって形成してもよい。例示的なポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、及びフルオロポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、カニューレを潤滑性ポリマーでコーティングして、手順中の眼組織とカニューレとの間の摩擦を低減することが有利であり得る。潤滑性ポリマーは当該技術分野で周知であり、これらとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、フッ素化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはTeflon(登録商標)を含む)を含む)、及びポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。カニューレが再利用可能である変形では、カニューレは、耐熱性金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン)などの滅菌できる(例えば、加圧滅菌によって)材料から作製してもよい。
カニューレは、概して、シュレム管の内腔へのアクセスを得ると同時に、外科医の視野の妨害を最小限に抑えるようにサイズ決定される外径を有する。したがって、外径は、約50ミクロン〜約1000ミクロンの範囲であり得る。いくつかの変形では、外径は、約150ミクロン〜約800ミクロンの範囲であり得る。カニューレは内径も有し、これは、約50ミクロン〜約400ミクロンの範囲であり得る。カニューレはまた、任意の好適な断面プロファイル、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、長方形などを有するように形成し得る。
カニューレは、複数の部分または部品を含むように構成されてもよい。胴体、近位端及び遠位端を有する遠位湾曲部分、端部間に定義された曲率半径、ならびにカニューレの湾曲部分の遠位端に直接係合する、カニューレの遠位先端にあるベベルを有するカニューレが、シュレム管の内腔にアクセスするために特に有用であり得る。ここでは、胴体(カニューレの直線部分)は、約5mm〜約50mm、約10mm〜約30mm、または約14mm〜約20mmの範囲の長さを有し得る。いくつかの変形では、胴体は、約18mmの長さを有してもよい。カニューレの遠位湾曲部分は、断面形状が均一であってもよく、あるいはシュレム管への進入を促進するために、遠位端のより近くでテーパ状であってもよい。遠位湾曲部分の曲率半径は、接線進入、及び正確で外傷性が最小限であるシュレム管への進入を促進するように適合され得、約1mm〜約10mm、または約2mm〜約5mmの範囲であり得る。1つの変形では、曲率半径は約2.5mmである。カニューレはまた、シュレム管への進入を促進するのに好適な角度スパンを有し、約70度〜約170度、または約100度〜約150度の範囲であり得る。1つの変形では、角度スパンは約120度である。
カニューレの湾曲部分の遠位端にあるベベルのサイズ、形状、幾何形状などは、シュレム管への容易で外傷性が最小限であるアクセスを可能にすることにおいて有益であり得る。この点で、以下で更に詳細に説明するように、カニューレの遠位端の曲率半径に直接係合するベベルを有することが特に有用であり得る。
他の変形では、カニューレは、カニューレの遠位湾曲部分の遠位端に連結する(例えば、曲率半径の端部にて)短い直線状セグメントを含んでもよい。ここでは、ベベルは、曲率半径ではなく直線状セグメントに係合する。直線状セグメントの長さは、約0.5mm〜約5mmの範囲であり得る。いくつかの変形では、直線状セグメントの長さは、約0.5mm〜約3mm、または約0.5mm〜約1mmの範囲である。直線状セグメントの長さはまた、約0.5mm未満であってもよく、例えば、約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、または約0.4mmであり得る。ベベルがカニューレの湾曲部分の遠位端に直接係合する(即ち、ベベルが曲率半径に直接係合する)変形では、カニューレは、直線状セグメントを欠く(直線状セグメントの長さがゼロである)。
いずれの眼内デバイスもカナルへの埋め込み時に移動する必要がある距離を最低限に抑えるために尖った短いベベルを有することも、有用であり得る。例示的なベベル角度は、約10度〜約90度であり得る。いくつかの例では、ベベル角度は、約10度〜約50度の範囲であり得る。1つの変形では、ベベル角度は約35度である一方で、別の変形では、ベベルは約25度である。ベベルはまた、任意の好適な方向に配向され得る。例えば、ベベルは、それが外科医に向けて開放するように、または反転して外科医から離れて、若しくはその間のいずれの平面で開放するようにも、配向され得る。
以下でより詳細に説明するように、更にいくつかの変形では、カニューレは、先が尖った1つのセクション及び先が丸い(例えば、バリ取りされた)別のセクションを含むように構成されている。かかるカニューレの二表面構成は、網を穿刺することでカナルへのより容易なアクセスを提供すると同時に、格納力に起因する細長部材の切断及び破損を回避するために、細長部材のカニューレへの格納中に細長部材に穏やかで分散した力も提供し得るため、有利であり得る。例えば、図15に示すように、カニューレの遠位端(1500)は尖った穿刺先端(1502)及び平滑な縁部(1504)を有してもよく、これらが開口部(1506)の一部を定義し、この開口部(1506)を通って摺動可能な細長部材(図示せず)が前進し格納され得る。図19、20A〜20B、及び21を参照してより詳細に説明するように、尖った先端(1502)は、複数のベベルを組み合わせることによって形成してもよく、平滑な縁部(1504)は、遠位先端の内周縁及び/または外周縁を平滑化またはバリ取りすることによって創出してもよい。加えて、いくつかの実施形態では、開口部(1506)に隣接する細長部材の内面及び/または外面も平滑化し得る。カニューレを作製する方法は以下でより詳細に説明する。
例示的な送達システムのカニューレを図3でより詳細に示す。ここでは、カニューレ(300)は、近位端(302)、遠位湾曲部分(304)、胴体(314)、及び遠位先端(306)を備える。遠位湾曲部分(304)は、近位端(308)及び遠位端(310)、ならびにこれらの端部(308、310)の間に定義される曲率半径(R)を有する。遠位湾曲部分(304)はまた、曲率半径(R)の中央に最も近いカニューレの表面によって定義される内半径(320)、及び中央から更に離れたカニューレの表面によって定義される外半径(322)を有する。遠位先端(306)におけるベベル(312)は、カニューレの湾曲部分の遠位端(310)に直接係合する。換言すると、ベベル(312)は、カニューレの湾曲部分の遠位端(310)に隣接し得る。前述のように、この遠位湾曲部分(304)とベベル(312)との構成は、シュレム管への容易で非外傷性の制御されたアクセスを可能にするために有益または有利であり得る。ベベルの角度も重要であり得る。概して、短いベベルが有益であり得る。ベベル(312)は、約5度〜約85度の角度(A)を備えてもよい。いくつかの変形では、角度(A)は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85度であり得る。いくつかの変形では、角度(A)は、約23度〜約27度であり得る。図3に示す変形では、ベベル角度(A)は約25度である。
図20は、ベベル(2014)を備えるカニューレ(2000)の遠位先端(2002)の斜視図を示す。遠位先端(2002)を、角度を付けて切断するかまたは研いで、ベベル(2014)を創出してもよい。示すように、ベベルを付けた遠位先端(2002)は、近位端(2008)、遠位端(2010)、及び円形ではなく楕円形状を有する細長い開口部(2012)を備える。遠位先端(2002)は、楕円形開口部の上部が楕円形開口部の底部よりもカニューレの近位部分に接近するように傾斜している、楕円形状の内腔開口部を備えてもよい。内周縁及び外周縁(2004、2006)も図20に示す。
図21A及び21Bは、それぞれ、ベベル(2102)及び尖った穿刺先端(2114)を備えるカニューレの遠位先端(2100)の変形の斜視図及び正面図を示す。そこで示すように、遠位先端(2100)は、近位端(2108)、遠位端(2110)、内周縁及び外周縁(2104、2106)、ならびに内腔開口部(2112)も備える。尖った穿刺先端(2114)は、合流して尖った先を形成する2つの傾斜面(2116)を備えてもよい。傾斜面(2116)は、尖った穿刺先端(2114)をもたらす任意の好適な角度を有し得る。例えば、いくつかの例では、傾斜面(2116)は、約20、25、30、35、40、45、若しくは50度、約25〜約50度、または約37.5〜約42.5度の遠位先端(2100)の長手方向軸に対する角度(B)を有し得る。いくつかの例では、角度(B)は、約40度であり得る。したがって、いくつかの例では、2つの傾斜面(2116)の間の角度は約50〜約100度であってもよく、いくつかの例では、2つの傾斜面(2116)の間の角度は約80度であってもよい。遠位先端(2100)は2つの傾斜面で示すが、単一の傾斜面を持つ遠位先端も使用し得ることを理解されたい。
細長部材
本明細書に記載の送達システムは、カニューレの内腔内で同軸上に配設された摺動可能な細長部材を備えてもよい。本明細書に記載のシステムと共に用いられる細長部材は、様々な構成であってもよく、内腔を含む場合もそうでない場合もある。細長部材は、流体組成物を送達するように構成される場合もそうでない場合もある。
細長部材は、同軸上に配設され、本明細書に記載の送達システムのカニューレの内腔内で摺動可能であり得る。細長部材がカニューレに対して格納位置にあるとき、細長部材の遠位端は、カニューレの遠位先端の内に(即ち、近位に)位置し得る。細長部材がカニューレに対して延出位置にあるとき、細長部材の遠位端は、カニューレの遠位先端の外に(即ち、遠位に)位置し得る。カニューレの遠位先端を越える細長部材の延出の長さは、細長部材が横断し得る(例えば、シュレム管及び/若しくは周辺の小柱細管組織を分断するため、ならびに/または流体組成物を送達するため)シュレム管の周囲の距離に対応し得る。送達システムが流体組成物を送達するように構成されている変形では、細長部材が横断する長さは、流体組成物が送達されるシュレム管の周囲の長さに対応し得る。送達システムが小柱網を裂くかまたは切断するように構成されている変形では、細長部材が横断する長さは、切断されるかまたは裂かれる小柱網の長さに対応し得る。いくつかの変形では、この長さは、約1mm〜約50mmであり得る。これらの変形のいくつかでは、この長さは、約10mm〜約40mm、約15mm〜約25mm、約16mm〜約20mm、約18mm〜約20mm、約19mm〜約20mm、約18mm〜約22mm、約20mm、約30mm〜約50mm、約35mm〜約45mm、約38mm〜約40mm、約39mm〜約40mm、または約40mmであり得る。細長部材は、以下でより詳細に説明するように、本送達システムの駆動組立体を使用して、延出位置と格納位置との間で移動し得る。
細長部材は、小柱細管組織を分断する、ステント留置する、及び/若しくはカナルに張力を適用するために、ならびに/または流体組成物を送達するために、カニューレを通してシュレム管の一部へと前進し得る(例えば、カナルの0〜360度)ようにサイズ決定してもよい。細長部材は、眼壁を通した導入、シュレム管へのアクセス、及び/または他の眼組織構造を通した方向付けのための所望の可撓性及び押し出し性を付与する任意の好適な材料から作製し得る。例えば、細長部材は、ポリマー(例えば、ナイロン、ポリプロピレン);金属線、編組、若しくはコイルで補強したポリマー;ポリマー及び金属の複合材;またはステンレス鋼、チタン、形状記憶合金(例えば、ニチノール)、若しくはこれらの合金などの金属を備えてもよい。細長部材が再利用可能である変形では、細長部材は、耐熱性金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン)などの滅菌できる(例えば、加圧滅菌によって)材料から作製してもよい。細長部材は、環形状のシュレム管を方向付けるために十分な可撓性及び押し出し性を持って直線状であってもよく、あるいは、シュレム管を部分的にまたはその全体においてより容易に一周するように、約2〜10mmの曲率半径または約6mmの曲率半径(即ち、成人のヒトにおけるシュレム管のおよその曲率半径)に事前成形してもよい。いくつかの変形では、細長部材は、ガイドワイヤの上をまたはガイドワイヤに沿って前進するように構成され得る。
いくつかの変形では、細長部材が、細長部材の可視化を改善するために1つ以上の特徴部を有することが望ましくあり得る。例えば、細長部材を着色してもよい(例えば、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色など)。加えてまたはあるいは、可視化は、照明標識、光ファイバー、側部照明光ファイバー、発光、蛍光、または同様の物を使用して、可視化を改善してもよい。例えば、光ファイバーは、細長部材の胴体に沿って移動して光を細長部材の遠位先端に送達し得、それがシュレム管の周囲で前進するかまたは格納されるときに、細長部材の遠位先端の可視化を改善し得る。
いくつかの変形では、細長部材は、シュレム管及び周辺の小柱細管組織を分断するのに十分な外径を有するようにサイズ決定され得る。外径は、約25ミクロン〜約1000ミクロン、約25ミクロン〜約500ミクロン、約50ミクロン〜約500ミクロン、約150ミクロン〜約500ミクロン、約200ミクロン〜約500ミクロン、約300ミクロン〜約500ミクロン、約200ミクロン〜約250ミクロン、約150ミクロン〜約200ミクロン、または約180ミクロン〜約300ミクロンの範囲であってもよい。いくつかの例では、細長部材が約240ミクロンの外径を有することが有益であり得る。
いくつかの変形では、細長部材の遠位端は、細長部材のシュレム管を通した前進を助けるために、先が丸いベベル、非外傷性先端、拡大した非外傷性先端、または同様の物として構成され得る。これらの変形のうちのいくつかでは、遠位端は、先が丸い傘のような形状の非外傷性先端を備えてもよい。他の変形では、細長部材の遠位部分は、任意選択で、分断用構成要素、例えば、切り欠き、フック、返し、粗化表面、またはこれらの組み合わせを含み、シュレム管または近傍小柱網の近傍小柱部分を分断し得る。細長部材から生じる1つ以上の突起がシュレム管または近傍小柱網の近傍小柱部分を更に分断することで、房水の小柱網を通したシュレム管への透過性を増大させ得る。いくつかの例では、細長部材はまた、小柱細管組織にエネルギーを送達してもよい(例えば、超音波エネルギー、高周波エネルギー(例えば、電気焼灼器、電気アブレーションのため)、電磁放射、光エネルギー(例えば、光ファイバーを介した))。
いくつかの例では、細長部材は、フィラメント(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、金属、または同様のものを含むフィラメント)を備えてもよい。例えば、細長部材は、ナイロンモノフィラメントを備えてもよい。フィラメントサイズの例示的な範囲は、約50ミクロン〜約300ミクロンの範囲であり得る。フィラメントは、シュレム管の全てまたは一部を通って前進するように構成され得る。いくつかの例では、フィラメントの胴体は、カニューレを眼から除去するときに、小柱網を切断するかまたは裂くように構成され得る。他の例では、フィラメントは、シュレム管への前進時またはシュレム管からの格納時に小柱細管組織を分断するように構成されてもよい。また他の例では、フィラメントは、張力を継続的に網に送達し、カナルの開存性を維持するために、カナル内に残るように構成され得る。
いくつかの変形では、細長部材は内腔を備え得る。例えば、1つの変形では、細長部材は、マイクロカテーテル(例えば、ナイロンマイクロカテーテル)を備えてもよい。細長部材が内腔を備える例のうちのいくつかでは、細長部材は、流体組成物を送達するように構成され得る。流体組成物は、細長部材の内腔を通って移動してもよく、内腔の開口部を通して送達されてもよい。例えば、図12に示すように、細長部材(1200)は、遠位先端(1202)にて開口部と流体連通している内腔を有する可撓性チューブであってもよい。いくつかの変形では、細長部材の遠位端は、流体組成物のシュレム管への送達を支援するように構成または改変することができる。例えば、細長部材の遠位端は、半分の管として構成される切り取りを備えてもよい。遠位先端における開口部に加えて、またはその代替として、細長部材は、任意選択で、細長部材の軸方向の長さに沿って離間された、その壁を通る複数の開口部を備えてもよい。この変形では、流体組成物は、貯蔵部から細長部材中の開口部を通ってシュレム管へと送達され得る。この横方向の流体(例えば、粘弾性流体)の排出は、いくつかの例では、流出組織の分断を強化し、房水の透過性を強化し得る。開口部は、任意の好適な数、サイズ、及び形状であることができ、任意の好適な様式で細長部材の軸方向の長さ(遠位先端を含む)に沿って離間され得ることを理解されたい。
駆動組立体
送達システムは、概して、駆動組立体を含む。本送達システムの駆動体組立体は、概して、眼内デバイス、細長部材、及び/または流体組成物をシュレム管に移動させるように構成されている。駆動組立体はまた、いくつかの変形では、眼内デバイスをカナル内に位置付けるように構成され得、デバイスをカナルに前進させること、及びデバイスをカナルから格納することを含む。駆動組立体は、少なくとも部分的にハウジング内に収容されてもよく、任意の好適な構成要素または汎用機能を持つハンドルを提供することができる構成要素の組み合わせを含んでもよい。
駆動組立体は、外部入力(例えば、ユーザの親指または指の運動)を送達システムの1つ以上の構成要素の運動に変換し得る。より具体的には、駆動組立体は、摺動可能な細長部材をカニューレから遠位に延出させてもよく、かつ/または摺動可能な細長部材をカニューレへと近位に格納させてもよい。駆動組立体はまた、任意選択で、流体組成物を貯蔵部から細長部材及び/またはカニューレを通して送達させてもよい。
これらの効果(即ち、摺動可能な細長部材の延出、摺動可能な細長部材の格納、及び/または流体組成物の送達)の2つ以上を、同じ起動機構を使用して起動してもよい。これにより、送達システムの片手による使用が可能となり得る。例えば、起動機構が回転式要素(本明細書に記載の変形においてのように、1つ以上の車輪など)を備える場合、回転式要素を第1の方向に回転させることは、摺動可能な細長部材の延出を引き起こし得、回転式要素を第2の方向に回転させることは、摺動可能な細長部材の格納を引き起こし得る。送達システムが流体組成物を送達するように構成される場合、回転式要素を回転させる(例えば、第2の方向に)ことは、流体組成物の送達も引き起こし得る。流体組成物の送達は、摺動可能な細長部材の移動(例えば、格納)と同時に起こってもよい。これらの例のうちのいくつかでは、流体組成物は、摺動可能な細長部材が中を前進するシュレム管の一部に送達されてもよく、これはつまり、流体組成物は、細長部材の延出と同じシュレム管の角度及び長さで送達され得るということである。流体組成物が細長部材の格納と同時に発生するとき、流体組成物は、摺動可能な細長部材が格納されるときにそれに取って代わってもよく、シュレム管中のその場所にてシュレム管及び/またはコレクターチャネルを拡張し得る。更に、送達される流体の量は、細長部材の移動の量に関係し、これはつまり、ある特定の所定の一定体積の流体組成物が、細長部材の一定量の移動(例えば、格納距離)に対して、及び回転式要素の一定量の回転に対して、細長部材を介して送達(例えば、細長部材の遠位端から送達)され得るということである。
いくつかの変形では、駆動機構は、送達システムの一度のみの使用を可能にするように構成されてもよく、これはつまり、駆動機構が、例えば、所定の量の延出及び/または格納後の摺動可能な細長部材の再延出を防止し得るということである。外部入力を送達システムの1つ以上の構成要素の運動に変換し得る例示的な機構を以下でより詳細に説明する。
いくつかの変形では、駆動組立体は、回転運動を線形運動に変換する構成要素を含む。例えば、駆動組立体は、リニアギア及び一対のピニオンギア機構を含んでもよい。リニアギアは、その表面に、ピニオンギア上の対応する歯に係合する歯を有し得る。ピニオンギア機構の各々はまた、回転式構成要素(例えば、車輪)に連結してもよい。かかる連結は、回転式構成要素及びピニオンギア中の中央開口部を通してねじ込まれ得るピンと、回転式構成要素及びピニオンギアを、回転式構成要素の回転がピニオンギアを回転させ、その逆もまた同様である様式で固定するナットとを用いて達成してもよい。車輪は、例えば、以下の方法のうちの1つによってピニオンギアに取り付けてもよい;1)車輪及びピニオンギアを、プラスチック射出成形技術を使用して1つの部品として成形する;2)車輪をピニオンギア上へと摺動させ、接着剤で固定する;または3)車輪をピニオンギア上で摺動させ、締結具または「圧入」によって機械的固定し、ここでは、車輪はピニオンギア上に押され、摩擦がそれらを固定して保持する。述べた状況の全てにおいて、車輪及びピニオンギアは、同軸上で、同じ方向に、同じ角速度にて、回転し得る。いくつかの変形では、ピニオンギア機構の各々は、少なくとも2つの回転式構成要素に連結する。他の変形では、駆動組立体は、単一の回転式構成要素、複数の回転式構成要素を含むか、または回転式構成要素を含まないように構成されてもよい。車輪は、前進の程度または前進の方向を示すために、マーキングまたは着色を有してもよい。
汎用ハンドルに含めるのに有用な駆動組立体の1つの変形は、リニアギア、一対のピニオンギア機構、及び各ピニオンギアに連結した2つの回転式構成要素(合計4つの回転式構成要素)を備える。他の変形では、駆動組立体は、リニアギアと、2つの関連する車輪を持つ単一のピニオンギア機構とを含む。一対のピニオンギア機構を持つ変形では、ピニオンギア機構及び関連する車輪は、リニアギアの両側に配設され得る。ピニオンギア及びリニアギアは、互いに接触し、これは即ち、ピニオンギアの歯がリニアギア上の対応する歯に直接係合し得、リニアギアの片側にある車輪がリニアギアの反対側にある車輪に接触し得るということである。リニアギアの両側にある車輪の少なくとも一部は、ハウジングの外側に延在し得る。この変形では、駆動組立体は、第1の構成にあるときには片手で操作し、その後、第2の構成へと反転させるときには、同じ手またはもう一方の手で操作することができる。かかる柔軟な性能を有する駆動組立体は、右利きの外科医でも左利きの外科医でも容易に使用することができ、また、カニューレが手順の第1の部分において第1の方向を向き、手順の第2の部分において第2の方向を向くように、ハンドルが手順中に反転する手順において使用し得る。更なる変形では、駆動組立体は、ハンドルの片側にある1つの回転式構成要素と、カニューレによって提供されるハンドルの「汎用」特徴部とを含んでもよく、このカニューレは、ハンドルを反転させる代わりにそれ自体が回転し得る。
図4Aに示す変形では、送達システム(400)は、リニアギア(例えば、ラック)(404)及び一対のピニオンギア機構(406)を有する駆動組立体(402)を含む。リニアギア及びピニオンギア機構の両方は、(ピニオンギア機構(406)の)回転運動を(リニアギア(404)の)線形運動に変換するために互いに係合する歯を有する。ピニオンギア機構(406)の各々は、2つの回転式構成要素に連結し、これらは、図中では車輪(408)として示し、合計4つの回転式構成要素である。車輪(408)は、送達システム(400)のハウジング(414)の外側に延在し、それにより、外科医の指のうちの1本以上によって回転し、それに対応してピニオンギア機構(406)を回転させることで、リニアギア(404)を前進させ得るかまたは格納し得る。車輪(408)は、ピニオンギア機構(406)と同軸上にあり、ピニオンギア機構と調和して回転する。リニアギア(404)の移動により、同軸上に配設され、カニューレ(412)内で摺動可能である位置決め要素(410)が前進するかまたは格納される。図4Bは、図4Aのシステムを、第2の反転した配向で示す。図4Aの配向では、カニューレは、曲率が時計方向を向いて配向され、一方で図4Bの配向では、カニューレは、曲率が反時計方向を向いて配向される。車輪(408)が両側でハウジング(414)の外側に延在にすることで、送達システム(400)を、いずれの配向でも、いずれの手でも、患者のいずれの眼にも使用することが可能となり得る。つまり、図4Bの配向は、図4Aの配向と反対の手または同じ手で使用し得るが、これは異なる方向のカニューレ挿入(例えば、反時計方向のカニューレ挿入が図4Aにおけるシステムを用いて行われた場合、時計方向のカニューレ挿入)が所望される場合である。
駆動組立体の別の変形を、図22A〜22B中の2つの異なる斜視図で示す。そこで示すように、駆動組立体(2202)は、リニアギア(例えば、ラック)(2204)及び一対のピニオンギア機構(2206)を備えてもよい。リニアギア及びピニオンギア機構の両方は、(ピニオンギア機構の)回転運動を(リニアギアの)線形運動に変換するために互いに係合する歯を有する。より具体的には、リニアギア(2204)は、第1の側(2220)及び第2の側(2222)の両方に歯を備えてもよく、第1の側にある歯は第1のピニオンギア機構に係合し、第2の側にある歯は第2のピニオンギア機構に係合する。ピニオンギア機構(2206)の各々は、2つの回転式構成要素に連結し、これらは、図中では車輪(2208)として示し、合計4つの回転式構成要素である。車輪(2208)は、ピニオンギア機構(2206)と同軸上にあり、ピニオンギア機構と調和して回転する。駆動組立体は、ピニオンギア機構を安定させるか、さもなければそれらを定位置に保つために、1つ以上の特徴部を備えてもよい。例えば、駆動組立体(2202)は、ピニオンギア機構の車軸(2218)間に着座するように構成されている車輪スペーサ(2216)を備えてもよい。1つ以上の車輪(2208)の回転により、リニアギア(2204)の並進が起こり得る。
図22C及び23A〜23Bに示すように、車輪(2208)は、送達システムのハウジング(2334)の外側に延在してもよく、それにより、車輪が外科医によって回転させられ、それに対応してピニオンギア機構(2206)を回転させることで、リニアギア(2204)を前進させ得るかまたは格納し得る。カニューレ(2344)は、リニアギア(2204)内で摺動可能であり得、その結果、カニューレ及び車輪が互いに対して及びハウジング(2334)に対して固定されるが、リニアギア(2204)はハウジングに対して並進するようになる。リニアギア(2204)の線形運動は、2つのピニオンギア機構(2206)のいずれかの回転運動によって生成され得、この回転運動は、同様に、ハウジング(2334)から延在する車輪(2208)のいずれかの回転によって生成されるため、送達システム(2300)は、第1の側または第2の側が上を向いた状態、したがってカニューレ(2344)が第1の方向または第2の方向を向いた状態で片手を使用して容易に操作され得る。
他の変形では、一方または両方のピニオンギア機構は、それらの位置をリニアギアから軸外に付勢することによって、リニアギアから脱係合することが可能であってもよい。この動作が、ピニオンギアの歯をリニアギアの歯に対して脱連結させて、リニアギアの移動を防止する。また、ピニオンギア機構をロックして、車輪の回転を防止する交差するピンまたは特徴部を係合させることによって、回転を防止してもよい。
駆動組立体の更なる変形は、回転運動の線形運動への変換を用いない場合がある。例えば、ハンドルのハウジング内のギア(例えば、前述したようなリニアギア)に固定されるかまたは取り外し可能に連結する、ハンドル上の摺動部(例えば、指摺動部)。ここでは、駆動組立体は、摺動部の前進または格納が、眼内デバイス及び/若しくは細長部材の前進若しくは格納、ならびに/または流体組成物のシュレム管への送達を引き起こすように構成され得る。また更なる変形では、押すまたはつまむことができるボタンを摺動部の代わりに用いてもよく、あるいは足踏みペダルを用いて、眼内デバイス、器具、及び/または流体組成物を送達してもよい。
細長部材の延出及び格納
いくつかの変形では、細長部材の近位端は、駆動組立体の一部(例えば、リニアギア(2204))に対して固定されてもよく、一方で、遠位端は、カニューレの内腔内で摺動可能に同軸上にあってもよい。細長部材が内腔を備えない(例えば、フィラメントである)場合、細長部材は、いくつかの例では、圧着によって駆動組立体に取り付けられ得る。細長部材が内腔を備える場合、細長部材は、いくつかの例では、細長部材の内腔が閉塞しないようにするために、駆動組立体に固着(例えば、接着剤によって)し得る。カニューレは、同様に、ハウジングに固定して取り付けられてもよい。ハンドルが再利用可能であり、カニューレ及び細長部材が使い捨てである送達システムの変形では、カニューレ内に事前に組み込んだ細長部材を備える使い捨ての組立体は、ねじ式締結具またはスナップイン特徴部などの任意の好適な機構によって、再利用可能なハンドルに取り付けられ得る。
駆動組立体の一部がハウジング内で近位または遠位に移動するとき、これは、対応して細長部材のカニューレに対する移動を引き起こし得る。つまり、駆動組立体の一部のカニューレに向けた(即ち、ハウジングの遠位端に向けた)移動は、細長部材を格納位置から延出位置に移動させてもよく、駆動組立体の一部のカニューレから離れた(例えば、ハウジングの近位端に向けた)移動は、細長部材を延出位置から格納位置に移動させてもよい。延出位置にある細長部材の例を図22C〜22Dに示す。ハウジング(2334)の上部を除去した図22D中の絵図において示すように、リニアギア(2204)は遠位位置にある。そのため、細長部材(2346)はカニューレ(2344)から延出する。
貯蔵部
本システムは、流体組成物がシュレム管に送達されることになる場合、概して、貯蔵部を含む。貯蔵部は、送達用の様々な流体組成物を収容し得る。例示的な流体組成物としては、生理食塩水及び粘弾性流体が挙げられる。粘弾性流体は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、セルロース、これらの誘導体若しくは混合物、またはこれらの溶液を含んでもよい。1つの変形では、粘弾性流体はヒアルロン酸ナトリウムを含む。別の変形では、粘弾性組成物は薬物を更に含んでもよい。例えば、粘弾性組成物は、緑内障の治療、眼圧の低減若しくは低下、炎症の低減、及び/または感染症、線維症、瘢痕化、凝血、血栓形成、出血、若しくは血管新生の防止に好適な薬物を含んでもよい。代謝拮抗物質薬、血管収縮薬、抗VEGF剤、ステロイド、ヘパリン、抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、他の抗凝血剤、線維素溶解化合物、生物剤、及び遺伝子治療薬などの薬物も、粘弾性組成物と組み合わせて送達され得る。緑内障薬物の例としては、プロスタグランジン、ベータ遮断薬、縮瞳薬、アルファアドレナリン作動薬、または炭酸脱水酵素阻害薬が挙げられる。NSAID、コルチコステロイド、または他のステロイドなどの抗炎症薬を使用してもよい。例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、コルチゾール、トリアムシノロン、またはより短期作用型のステロイドなどのステロイドを用いてもよい。代謝拮抗物質薬の例としては、5−フルオロウラシルまたはマイトマイシンCが挙げられる。血管新生を防止する薬物または抗体の例としては、ベバシズマブ、ラニビズマブ、及び他のものが挙げられる。更に別の変形では、本システムは、粘弾性組成物なしで薬物のみを送達する。生理食塩溶液も用いられる流体であり得る。また他の変形では、本システムは、空気、膨張性ガス(例えば、SF6、C3F8)などであるがこれらに限定されないガスを送達するように構成され得る。
いくつかの変形では、貯蔵部は、流体組立体及びハウジング、ならびにハンドル内のリニアギアによって少なくとも部分的に画定され得る。流体組立体は、カニューレ及びハウジングについて前述した任意の好適な材料から作製され得る。貯蔵部内に収容される流体の体積(マイクロリットル)約2μl〜約1000μl、または約2μl〜約500μlの範囲であり得る。いくつかの変形では、貯蔵部体積は、約50μl〜約100μlの範囲であってもよい。
流体組成物は、流体が単一のデバイス及び単一のユーザによって送達され得るように、貯蔵部中に事前充填されてもよく、あるいは本システムの使用前、例えば、眼科手順の開始時に貯蔵部に充填してもよい。ここでも、流体送達カテーテルをシュレム管に前進させるための鉗子若しくは他の前進器具、及び/または送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具とは分離しているか若しくはそれから独立しており、手順中、外科医の一方の手によって送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具が保持されている間、例えば、助手によって、若しくは外科医の手によって送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具に繋いでいる必要がある、粘弾性流体を収容するデバイスを使用する他のシステムとは対照的である。例えば、充填構成要素を、流体組成物の貯蔵部への移送のための流体組立体に提供してもよい。充填構成要素は、流体容器、例えば、シリンジ、カートリッジなどの本システムへの可逆的な固定、及び流体組成物の貯蔵部への充填を提供する、任意の好適な構成を有し得る。充填構成要素は、ルアー嵌合であってもよく、あるいは一方向弁を含んでもよい。
貯蔵部を備える例示的な送達システムを図23A〜23Fに示す。ハウジング(2334)と共に(図23A、23B、及び23E)、ハウジング(2334)なしで(図23C及び23D)、及び部分的にハウジング(2334)なしで(図23F)示す送達システム(2300)は、貯蔵部(2302)を備える流体組立体(2316)を備える。例示的な方法では、流体組成物は、近位開口部(2328)を通し、近位封止部(2318)を介して貯蔵部(2302)に充填され得る。図23Eで最も分かりやすく示すように、貯蔵部(2302)の遠位端は、プランジャ(2338)(以下でより詳細に説明する)及び遠位封止部(2354)によって形成され得る。
近位封止部(2318)は、貯蔵部(2302)の近位端に位置し、貯蔵部を閉めて封止するためにoリングまたはガスケット(2330)に対してばね付勢される玉軸受(2324)を備える、機械的封止部であってもよい。充填器具(2326)(例えば、ノズル)を使用して、玉軸受(2324)を圧迫して玉軸受(2324)を開放位置に向けて近位に移動させることによって、封止部を開放してもよい。近位封止部(2318)が開放している間に流体組成物を貯蔵部に充填し得る。流体組成物の充填後、充填器具(2326)を除去することで、玉軸受(2324)がその閉鎖位置に戻ることができる。図23E中のクローズアップ断面図は、近位開口部(2328)及び玉軸受(2324)を示す。Оリングまたはガスケット(2330)は、ばねからの力が玉軸受をガスケット中へと押し、閉鎖位置にある玉軸受とガスケットとの間の封止を形成するように、玉軸受(2324)とばね(2332)との間に着座する。充填器具(2326)は、近位開口部(2328)に嵌合して、玉軸受(2324)を圧迫するように構成されている。玉軸受(2324)に対して遠位に配向される力は、それを開放位置へと遠位に移動させ、ばね(2332)を圧縮し、玉軸受とガスケット(2330)との間に開口部を創出し、この開口部を通って流体組成物が流れ得る。充填器具(2326)が近位開口部(2328)から除去されるとき、ばね(2332)は、玉軸受(2324)を閉鎖位置に戻すように近位に押す。
他の変形では、貯蔵部が他の種類の封止部を備えることで、流体組成物の貯蔵部への充填を可能にしてもよいことを理解されたい。例えば、図24は、封止部が膜(例えば、シリコーン膜)を備える、送達システム(2400)の代替的変形を示す。示すように、流体組成物は、針(2402)(例えば、25ゲージの針)で膜を突き刺すことによって、貯蔵部に充填され得る(任意選択のロック(2404)の移動後)。また別の変形では、本明細書に記載の送達システムは、流体組成物を備える充填済みカートリッジを受容するように構成され得る。例えば、ハンドル及び流体組立体は、充填済みカートリッジが流体組立体に挿入され得るように構成されてもよい。
貯蔵部に充填するためには、封止部への遠位力の適用を可能にするために、流体組立体を少なくとも一時的に定位置に固定することが望ましくあり得る。いくつかの変形では、送達システムは、流体組成物を貯蔵部に注射する間に流体組立体を定位置に保持するように構成されているロックを備えてもよい。しかしながら、他の変形では、送達システムはロックを備えない場合があることを理解されたい。ロックを有する変形では、貯蔵部を充填した後に流体組立体がハウジングに対して並進することを可能にするために、ロックが送達システムから着脱可能である(さもなければ流体組立体を解放する)ことが望ましい場合がある。本明細書でより詳細に説明するように、流体組立体の並進により、手順中の摺動可能な細長部材の延出及び/または流体組成物の注射が可能となり得る。
ロックを有する送達システムの変形では、ロックは、任意選択で、貯蔵部への遠位開口部を保護するためのキャップとして更に作用してもよい。これらの変形では、ロックは、それが貯蔵部を定位置に保持し、かつ貯蔵部への近位開口部を被覆する、第1の構成と、それが貯蔵部を定位置に保持するが、貯蔵部への近位開口部にアクセスすることを可能にすることで貯蔵部に流体組成物を充填し得るようにする、第2の構成とを備えてもよい。いくつかの例では、ロックは、第1の位置から第2の位置へと交代してもよい。
図25A〜25Dは、例示的なロック(2502)を例証する。そこで示すように、ロック(2502)は、送達システム(2500)のハンドル(2506)中の開口部(2504)に嵌合するように構成されているピン(2508)備えてもよい。第1の構成では、図25Bに示すように、ロック(2502)は、ハンドル中の開口部(2504)に挿入され得、近位開口部(2510)を被覆し得る。ロック(2502)は、ロックを第1の構成で安定させるために近位開口部(2510)と接合するように構成されている突起部(2518)を備えてもよい。第2の構成では、図25C〜25Dに示すように、ロック(2502)は、開口部(2504)に挿入されたままであってもよいが、開口部内で旋回して近位開口部(2510)を露出させることで、貯蔵部(2512)の充填を可能にし得る。ピン(2508)が開口部(2504)に挿入されると、ピンは、貯蔵部(2512)のハウジングに対する移動を制限し得る。これにより、充填器具(2514)が近位開口部(2510)を通して力を適用して、貯蔵部がハンドル(2506)内で遠位に摺動することなく、貯蔵部(2512)の近位封止部(2516)を開放することが可能となり得る。貯蔵部(2512)のハンドル(2506)に対する移動を制限することで、貯蔵部、または送達システムの他の内部構成要素の使用前(例えば、輸送中)の移動を防止し得る。貯蔵部(2512)の充填が完了すると、図25Aに示すように、ロック(2502)を開口部(2504)から除去してもよく、この時点で、貯蔵部(2512)は、もはやロックによってハウジングに対する移動を制限されなくなり得る。
流体組成物の送達
本明細書に記載の送達システムは、流体をシュレム管に送達するように構成され得る。流体は、シュレム管及び周辺の小柱細管組織を分断するのに十分な力を提供する体積で送達され得る。例示的な分断体積は、約1μl、約2μl、約3μl、約4μl、約5μl、約6μl、約7μl、約8μl、約9μl、約10μl、約11μl、約12μl、約13μl、約14μl、約15μl、約16μl、約17μl、約18μl、約19μl、または約20μlであってもよい。いくつかの変形では、分断体積の流体は、約1μl〜約50μl、または約20μl〜約50μlの範囲であってもよい。
上述のように、細長部材は、カニューレの内腔内で同軸上に配設され得る。流体組成物を送達するように構成されている送達システムの変形では、細長部材は内腔を備えてもよい。細長部材の内腔は、流体組成物をシュレム管に送達するために貯蔵部に動作可能に連結し得る。細長部材は、概して、近位端、遠位端、及び壁を有し、この壁は、その中を通して延在する内腔を画定する壁を有する。しかしながら、いくつかの例では、本送達システムは細長部材導管を欠き、流体組成物はカニューレのみを通して送達される。他の例では、2つの細長部材を用いてもよく、これらの細長部材は、各々が同時に時計方向と反時計方向との両方でカナルを通して前進して、より急速にシュレム管にカニューレを挿入し治療薬を送達する。
本送達システムを用いて流体組成物を送達するとき、流体組成物は、本システムの貯蔵部に事前充填しもよく、あるいは本システムの使用前に貯蔵部に充填してもよい。流体組成物をシュレム管に送達するための例示的な送達システムを図10A及び10Bに示す。図10Aを参照すると、送達システム(1000)は、把持部分(1004)及びハウジング(1006)を有する汎用ハンドル(1002)を含む。ハウジング(1006)は、近位端(1008)及び遠位端(1010)を有する。カニューレ(1012)がハウジング遠位端(1010)に連結し、そこから延在している。駆動組立体(1014)が、摺動可能な細長部材(図示せず)の移動を起動するハウジング(1006)内に実質的に収容される。カニューレ(1012)及び駆動組立体(1014)は、眼内デバイスの埋め込みに適合させた本システムに対して図3及び4A〜4Bに示し記載するものと同じ構成を有するため、ここでは詳述しない。
送達システム(1000)はまた、外部供給源から流体組立体及びリニアギアによって定義される貯蔵部(1020)への流体組成物の移送を可能にするように構成されている充填構成要素(1018)を有するハンドル(1002)内に流体組立体(1016)(図10Bに示す)を含む。摺動可能な細長部材(1022)は、貯蔵部と流体連通しているカニューレの内腔内で同軸上に配設される。前述のように、インプラントまたは流体を送達しない器具系のシステムでは、本システムは、貯蔵部を含まない場合がある。
例示的な方法では、図11A〜11Cによって例証するように、流体組成物は、充填構成要素(1104)を通した充填によってシステム(1100)の貯蔵部(1102)へと移送され得る。図面に示すように、貯蔵部(1102)は、流体組立体(1106)及びリニアギア(1108)によって定義される。リニアギア(1108)は、近位端(1110)及び遠位端(1112)、ならびに近位端(1110)から遠位端(1112)へと延在する内腔(1114)を有する。内腔(1114)は、摺動可能な細長部材(1118)の内腔(図示せず)と流体連通している。流体組成物を貯蔵部(1102)から展開するために、リニアギア(1108)を矢印(図11B)の方向に格納して、貯蔵部(1102)が加圧された状態となるようにする。格納は、ピニオンギア機構(1120)の回転によって達成し得る。十分な量の圧力が貯蔵部(1102)中で創出されたら、中に収容されている流体組成物を、リニアギア内腔(1114)及び細長部材(1118)の内腔を通してシュレム管へと注射する。
ここでは、送達されるいずれの流体も遠位端(1202)を通って流れてシュレム管に達する。他の変形では、摺動可能な細長部材(1300)は、その軸方向の長さに沿って離間された複数の開口部を含むように構成され得る。開口部は、任意の好適な形状、例えば、スロット(1302)(図13A)または円(1304)(図13B)を有してもよい。図13A及び図13Bに示す細長部材を使用して送達される流体組成物は、開口部を通して部分的に細長部材から出て、部分的に細長部材の遠位端を通って出てもよい。細長部材の遠位端はまた、半分の管(1306)として構成されてもよい(図13C)。
流体組立体のいくつかの変形は、例えば、リニアギアが前進しているかまたは格納されているときに、ハンドル内での組立体の移動を防止するためのロック機構を含む。ロック機構は、ロックされて流体組立体の移動を防止し、ロック解除されて流体組立体の移動を可能にし得る、ラチェット爪、ラチェット爪の組み合わせ、または任意の他の好適な機構を備えてもよい。
戻って図23A〜23Fを参照すると、そこに示す流体組成物をシュレム管に送達するための別の例示的な送達システム(2300)は、ハウジング(2334)、及びハウジングの遠位端から延在するカニューレ(2344)を備えてもよい。駆動組立体(2202)(図22A〜22Dに関して上述した)は、流体組立体(2316)がそうであり得るように(上でより詳細に説明した)に、ハウジング(2334)内に位置してもよい。上記のように、駆動組立体(2202)は、リニアギア(2204)、及び車輪(2208)に連結した一対のピニオンギア機構(2206)を備えてもよい。送達システム(2300)は、摺動可能な細長部材(2336)を備えてもよい。細長部材の近位端は、リニアギア(2204)に対して固定され得る一方で、細長部材の遠位端は、カニューレ(2334)の内腔内で摺動可能に同軸上に配設され得る。流体組立体(2316)の貯蔵部(2302)は、細長部材の内腔に流体連通していてもよい。例えば、内腔を備えるプランジャ(2338)は、貯蔵部(2302)を細長部材の内腔に流体連通させる。プランジャ(2338)の近位端(2350)は、貯蔵部(2302)内に摺動可能に位置してもよく、プランジャの遠位(2352)は、駆動組立体(2202)のリニアギア(2204)に固定して取り付けられてもよい。
流体組立体(2316)及び駆動組立体(2202)は、図23Dで最もよく示されているように、リンケージ(2348)によって接続し得る。(送達システム(2300)は、他の構成要素をよりよく示すために、図23A中ではリンケージ組立体なしで示す。)リンケージ(2348)は、流体組立体(2316)及び駆動組立体(2202)が一体として移動することを可能にするように構成されてもよく、流体組立体及び駆動組立体の互い対する制限された移動を可能にしてもよい。いくつかの変形では、リンケージ(2348)は、流体組立体(2316)を、より近くであるが、駆動組立体(2202)から遠ざからずに移動させることを可能にし得る。例えば、図23Dで最もよく示されているように、リンケージ(2348)の近位端(2340)は、流体組立体(2316)に固定して取り付けられてもよい。リンケージ(2348)の遠位端(2342)は、駆動組立体(2202)のリニアギア(2204)に一方向ラチェットによって取り付けられ得る。遠位端(2342)は、リニアギア(2204)中の軌道に沿って遠位に移動することができてもよいが、軌道中の歯は、軌道に沿った遠位端(2342)の近位の移動に抵抗し得る。このように、流体組立体(2316)は、流体組立体及びリニアギアが共により近づく(流体組立体とリニアギアとの間のリンケージ(2348)の部分を短縮することによって)ように、リニアギア(2204)に向けて遠位に移動することができてもよいが、流体組立体は、リニアギアから離れて近位に移動することができない場合がある。他の変形では、リンケージは、リニアギアに固定して取り付けられ、流体組立体に摺動可能に取り付けられてもよいことを理解されたい。
このように、リニアギア(2204)及び流体組立体(2316)は、互いに対して移動可能であってもよく、ハウジング(2334)内で移動可能であってもよい。リニアギア(2204)及び流体組立体(2316)の互いに対する移動、及びハウジング(2334)に対する移動は、1つ以上の効果を引き起こし得、これらは、摺動可能な細長部材の延出及び格納、ならびに/または流体組成物の送達を含む。より具体的には、プランジャ(2338)の近位端(2350)が貯蔵部(2302)内に摺動可能に位置し、プランジャの遠位端(2352)がリニアギア(2204)に固定して取り付けられ得るため、リニアギアに近づく貯蔵部の移動は、貯蔵部内でのプランジャの近位の移動を引き起こし得る。これが、貯蔵部(2302)内に位置するプランジャ(2338)の長さを増大させる。プランジャ(2338)の貯蔵部(2302)内にある部分が、貯蔵部内の流体を変位させ得る。変位された流体は、プランジャ(2338)の内腔を通り、細長部材の内腔(2336)を通って遠位に移動し得、細長部材の内腔の遠位開口部から送達され得る。
加えて、上述のように、リニアギア(2204)のハウジング(2334)に対する移動により、摺動可能な細長部材(2336)が延出し得るかまたは格納され得る。リニアギア(2204)は、車輪(2208)の回転によって近位部分と遠位部分との間で移動可能であり得る一方で、車輪(2208)は、ハウジング(2334)に対して固定されたままである。細長部材の近位端がリニアギア(2204)に対して固定され、細長部材の遠位端がカニューレ(2344)の内腔内で摺動可能であり得るため、駆動組立体(2202)が近位位置にあるとき、細長部材は、対応して、カニューレ(2344)に対して格納位置にあり得る。細長部材が格納位置にあるとき、細長部材の遠位端は、カニューレ(2344)内に(例えば、カニューレの遠位先端の近位に)位置し得る。駆動組立体(2202)が遠位部分にあるとき、細長部材は、対応して、カニューレ(2344)に対して延出位置にあり得る。細長部材(2336)が延出位置にあるとき、細長部材の遠位端は、カニューレから(例えば、カニューレの遠位先端の遠位に)延出し得る。
駆動組立体(2202)、流体組立体(2316)、及びハウジング(2334)の相対運動は、このように、シュレム管内で摺動可能な細長部材(2336)を延出させ、細長部材をシュレム管内に格納すると同時に、流体を送達するために使用し得る。送達システム(2300)は、流体組立体(2316)及びリニアギア(2204)がリンケージ(2348)の全長にかけて分離している構成で開始してもよく、流体組立体は、ハウジング(2334)の近位端に位置し、摺動可能な細長部材は、カニューレ(2344)内の格納位置にある。この構成を図23A〜23Dに示す。車輪(2208)は、第1の方向に回転して、リニアギア(2204)をハウジング(2334)内で遠位に前進させてもよい。リンケージ(2348)は、流体組立体(2316)を等距離でハウジング内で遠位に移動させて、流体組立体とリニアギア(2204)との間の離間を維持する。リニアギア(2204)が前進するにつれて、細長部材(2336)は格納位置から延出位置に移動し得る。これにより、細長部材(2336)がシュレム管を通して移動し得る。この構成を図23Fに示し、この図は、遠位位置にあるリニアギア(2204)を示すためにハウジング(2334)の上部を除いた送達システム(2300)を示している。そこで見ることができるように、細長部材(2336)はカニューレ(2344)に対して延出位置にあり、流体組立体(2316)もハウジング(2334)内の遠位位置にある。
車輪(2208)は、その後、第2の方向に回転して、リニアギア(2204)をハウジング(2334)内で近位に格納してもよい。これにより、摺動可能な細長部材(2336)が延出位置から格納位置に移動し得る。しかしながら、流体組立体(2316)は、対応してハウジング(2334)内で近位に移動しない場合がある。ハウジング(2334)は、流体組立体上の外側の歯に係合するように構成されている流体組立体(2316)付近に内側の歯(2446)を備えてもよい。これらの歯により、流体組立体(2316)は、ハウジング(2334)内で遠位に移動するが、ハウジング内で近位には移動しないようになり得る。そのため、リニアギア(2204)がハウジング(2334)に格納されるとき、流体組立体(2316)は、ハウジングに対して固定されたままであり得る。リニアギア(2204)及び流体組立体(2316)は、したがって、共により近づくように移動し、リンケージ(2348)は、リニアギア(2204)中の軌道に沿って遠位に移動してこの運動に対応する。リニアギア(2204)及び流体組立体(2316)が共に近づくように移動するにつれて、上でより詳細に説明したように、プランジャ(2338)は、貯蔵部(2302)内の流体を変位させ得る。流体はその後、プランジャ(2338)の内腔を通って移動し、細長部材の内腔(2336)を通して送達され得る。
このようにして、細長部材が格納されるにつれて、流体が同時に細長部材から送達され得る。流体は、細長部材が格納されるときに細長部材に取って代わってもよく、それにより、流体は、細長部材が前進した角度及び長さと同じであるシュレム管の角度及び長さに送達され得る。一定かつ所定の体積の流体が、プランジャによる貯蔵部中の流体の変位に起因して、細長部材の所与の量の格納に対して送達されてもよく、細長部材の格納及び流体組成物の送達は、単一のユーザの運動(車輪(2208)の回転)によって遂行され得る。いくつかの例では、細長部材の完全格納が、約2μl〜約9μlの流体の送達をもたらし得る。これらの例のうちのいくつかでは、細長部材の完全格納は、約4.5μlの流体の送達をもたらし得る。細長部材(2336)が格納されるときに、送達システム(2300)は、可聴性及び/または触知性のクリックを増分で生み出してもよい。これらのクリックは、例えば、リニアギア(2204)に対して遠位である、リンケージ(2348)の遠位端(2342)のラチェッティングに起因し得る。各クリックは、流体の一定かつ所定の体積、いくつかの場合には約0.5μlに対応してもよい。
いくつかの変形では、送達システムは、摺動可能な細長部材の一定の累積量の延出及び/または格納を可能にするように構成され得る。延出/格納の一定の累積量は、例えば、シュレム管の全円周、シュレム管の全円周2つ分、または任意の所望の距離に対応してもよい。例示的な一定の累積量は、約39mm〜約41mm、約38mm〜約40mm、約35mm〜約45mm、約78mm〜約82mm、約76mm〜約80mm、または約70mm〜約90mmであり得るが、これらに限定されない。加えてまたはあるいは、送達システムは、流体の一定の累積送達(例えば、いくつかの変形では、約9μlの流体)を可能にするように構成されてもよい。例えば、送達システム(2300)では、上記のように、流体組立体(2316)は、ハウジング(2334)内で遠位に移動することはできるが、ハウジング内で近位には移動せず、流体組立体は、リニアギア(2204)に向かって移動することはできるが、リニアギア(2204)から離れて移動はしない。このように、摺動可能な細長部材の各延出により、リニアギア(2204)及び流体組立体(2316)は遠位に移動してもよいが、細長部材の各格納により、リニアギアは近位に移動しながらも、流体組立体は固定されたままであり得る。送達システム(2300)は、流体組立体(2316)がある特定の点を越えて遠位に移動するのを防止し得る止め具(例えば、ハウジングの内壁にある突起部)を備えてもよい。流体組立体(2316)がその最遠位部分に達すると、流体組立体またはリニアギア(2204)のいずれも遠位または近位に移動しない場合があり、車輪(2208)はそれ以上回転しない場合がある。流体組立体(2316)の初期位置とその最終の再遠位位置との間の距離が、摺動可能な細長部材の延出/格納の一定の累積量、及び流体の一定の累積送達を決定し得る。しかしながら、送達システムの他の変形は、細長部材の延出及び/または格納の制限された累積量を有しない場合があることを理解されたい。これはつまり、いくつかの送達システムは、一定の制限なしに繰り返し延出及び格納することができてもよいということである。
送達システム(2300)は、摺動可能な細長部材を、合計の累積量が制限を下回る限り、複数回前進させ格納し得ることを理解されたい。実際に、いくつかの変形では、細長部材が格納されずに前進し得る最大量は、その合計の累進量未満であり得る。例えば、細長部材は、1回目は、第1の方向にシュレム管の周囲の約半分(即ち、180度、または約19mm〜約20mm)で前進してもよく、これは、細長部材が格納されずに前進し得る最大量であり得る。細長部材は、その後、完全に格納され得る(その間に流体が送達され得る)。この第1の延出の後で、流体組立体(2316)は、その最大距離の半分で移動していてもよく、そのリニアギア(2204)への距離は、その全ての可能な減少の約半分で減少していてもよい。送達システム(2300)は、次に、ハンドルを中心として回転してもよく、細長部材は、2回目は、第2の方向にシュレム管の周囲の約半分で前進してもよい。細長部材は、その後、格納され得る(その間に流体が送達され得る)。第2の延出の完了時に、流体組立体(2316)は、その最遠位位置として位置してもよく、そのリニアギア(2204)への距離は、その最小であってもよい。この時点で、細長部材はそれ以上前進しなくてもよく、更なる流体は送達可能でなく、車輪はそれ以上回転しなくてもよい。
流体を送達するように構成されていないデバイス
本明細書に記載の全ての送達システムが流体組成物を送達するように構成されているわけではないことを理解されたい。流体組成物を送達するように構成されていないデバイスは、流体組成物を送達するように構成されている送達システムと同様に動作し得るが、細長部材の格納または前進は、流体組成物の同時送達を引き起こさない場合がある。いくつかの例では、本送達システムは、流体組成物を送達するように構成されているものと同一であり得るが、流体組成物が充填されない場合がある。他の例では、流体組成物を送達するように構成されていない送達システムの細長部材は、内腔を備える必要がない。同様に、流体組成物を送達するように構成されていない送達システムは、貯蔵部またはプランジャを備える必要がない。貯蔵部の代わりに、本送達システムは、流体組立体と同様の外形を有する固体の代理構成要素を備えてもよい。代理構成要素は、代理構成要素と一体である場合もそうでない場合もあるリンケージを介して送達システムのリニアギアに接続してもよい。これにより、構成要素の多くが、流体組成物を送達するように構成されている送達システムと流体組成物を送達するように構成されていない送達システムとの間で互換性となり得ることで、製造を単純化し得る。故に、流体を送達するように構成されている送達システムのように、流体を送達するように構成されていないシステムは、本明細書でより詳細に説明するように、一定の累積量の延出及び/または格納を可能にするように構成される場合もされない場合もある。
流体組成物を送達するように構成されていないいくつかの送達システムは、細長部材が小柱網を分断するように構成され得る。いくつかの変形では、細長部材は、細長部材の前進及び/または格納が小柱網を分断し得るように構成されてもよく、細長部材は、前進または格納の際に小柱網の分断を促進するための1つ以上の特徴部、例えば、返し、フック、バルーン、または同様のものなどの細長部材の遠位端にある分断構成要素を備えてもよい。他の変形では、細長部材は、細長部材の胴体が小柱網を切断するかまたは裂くように構成されるように、構成され得る。例えば、送達システムは、細長部材がカニューレから出てシュレム管の周囲を前進するように構成されてもよく、カニューレがその後細長部材を格納することなく眼から除去される場合には、細長部材の胴体は、カニューレが除去されるときに小柱網を切断し得るかまたは裂き得る。細長部材の胴体は、網の「ジッパーを外し」て、カニューレ先端付近の(即ち、細長部材の近位端にある)小柱網の第1の位置から、続いて小柱網の周りを細長部材の遠位端に向けて切断するかまたは裂くように構成され得る。細長部材は、分断力を適用して、網を、一度に1つの網の位置にて、続いてシュレム管の周囲にて、切断するかまたは裂くように構成され得るのであって、分断力により、切断するかまたは裂く予定の小柱網全体に渡って網を同時に切断するかまたは裂くのではない。
眼内デバイスの埋め込み
本明細書に記載のシステムのカニューレはまた、様々な外科用器具をアブインテルノ法によって送達してもよい。例えば、シュレム管にアクセスし、その後、目立たない位置でまたは小柱網若しくはシュレム管の内壁全体に沿って、孔、部分的な厚さの分断、または穿孔を創出するために、カテーテル、ワイヤ、プローブ、及び他の器具をアブインテルノで用いることもできる。外科医は、また、器具を、カナル全体を横切ってコレクターチャネルの外壁を通して前進させて、強膜及び結膜下腔にアクセスし(ここでも全てアブインテルノ手法による)、房水が中に排液されて強膜静脈若しくは結膜下腔へと流れ得る強膜空間(lake)を創出する切開部を作製するか、または強膜空間若しくは結膜下腔中に存在し、前房またはシュレム管からその中へと排液される眼内デバイスをアブインテルノで送達する。
送達システムを使用して眼内デバイスを埋め込む場合、カニューレは、カニューレの内腔内で同軸上に配設された摺動可能な位置決め要素を備えてもよい。この摺動可能な位置決め要素は、概して、操作用、例えば、眼内デバイスの解放可能な係合、前進、及び/または格納用の係合機構を含む。例示的な係合機構を図5〜9に示す。
図5Aでは、係合機構(500)は、第1の顎部(502)及び第2の顎部(504)を備える。これらの閉鎖構成(図5Aに示す)では、顎部(502、504)は、カニューレ(512)内に制約され、支持体(508)及び少なくとも1つの開窓(510)を備える眼内デバイス(506)を保持する。顎部(502、504)がカニューレ(512)から出て前進すると、顎部はそれ以上制約されないため、図5Bに示すように、それらの開放構成の形態をとる。顎部(502、504)の開放により、眼内デバイス(506)が係合機構(500)から解放される。顎部がその閉鎖構成にあるときに有窓眼内デバイスを固定するのを助けるために、少なくとも1つのタイン(514)が第1の顎部(502)中に提供されてもよく、少なくとも1つのアパーチャー(516)が第2の顎部(504)中に提供されてもよい。図6では、係合機構(600)の変形を示し、ここでは、第1の顎部(602)及び第2の顎部(604)は、有窓眼内デバイス(610)を掴むのを助けるために、タイン(606)とアパーチャー(608)との両方を含む。
図7A〜7Bを参照すると、更なる例示的な係合機構が示される。図7Aでは、係合機構(700)は、相補的噛み合い要素を備える。具体的には、係合機構(700)は、雌要素である切り欠き(702)を含み、これは、眼内デバイス(706)上のフック様の突起部として示す相補的な雄要素(704)と接合するように構成されている。ここでは、切り欠き(702)は、皮下管(708)(位置決め要素として働き得る)の端部に製造し得る。切り欠き(702)の代わりに、係合機構(710)の雌要素は、図7bに示すように、開口部(712)を有してもよく、これは、眼内デバイス(706)上の雄要素(704)と接合する。図7Bでは、位置決め要素(714)は、金属線またはロッドから製造してもよく、開口部(712)は、レーザー加工または当該技術分野で既知の他のプロセスによって創出する。
他の変形では、係合機構は、図8A及び8Bに示すように構成され得る。これらの図では、係合機構(800)は、環状部分(802)を備える。この特定の係合機構は、閉鎖構成及び展開構成を有するアームまたはつまみ(808)付きの留め具(806)を含む眼内デバイス(804)と共に使用することが有益であり得る。図5A及び5Bに示す変形と同様に、つまみ(808)は、カニューレ(810)からの前進の前は、カニューレ(810)内に閉鎖構成で制約されている。これらの制約構成では、つまみ(808)が係合機構(800)の環状部分(802)に係合して、眼内デバイス(804)の本システムからの解放を防止する。係合機構(800)の環状部分(802)が、つまみ(808)がそれ以上カニューレ(810)によって制約されなくなるのに十分に前進すると、図8Bに示すように、つまみ(808)は、その展開構成をとることで、眼内デバイス(804)を環状部分(802)からシュレム管へと解放する。
コイル状部分(902)及びフック(904)を備える別の例示的な係合機構(900)を図9に示す。少なくとも1つの開窓(908)(例えば、近位開窓)を有する眼内デバイス(906)が実装される場合、フック(904)は、その開窓(908)に解放可能に係合し得る。眼内デバイス(906)は、コイル(902)への穏やかな力の適用によって、またはコイル(902)上を前進してデバイス(906)をフック(904)から押し出すことができる別の構成要素(図示せず)によって、フックから脱係合し得る。眼内デバイス(906)の格納が所望されるときにフック(904)を使用することが有利であり得る。
眼内送達システムは、シュレム管における眼内デバイスの制御された実装のために、カニューレの内腔内で同軸上に配設された摺動可能な位置決め要素を更に含んでもよい。位置決め要素は、概して、近位端、遠位端、及び遠位端にある係合機構を備える。眼内デバイスは、概して、係合機構に解放可能に連結する。位置決め要素は、前進して、カニューレ内の眼内デバイスをシュレム管へと展開してもよく、あるいは格納されて、眼内デバイスの位置決め及び/若しくは再位置決め、または眼内デバイスの係合機構からの脱係合を助けてもよい。
係合機構のいくつかの変形は、近位コイル状部分及び遠位フックを含む。少なくとも1つの開窓(例えば、近位開窓)を有するインプラントが実装される場合、フックは、その開窓に解放可能に係合し得る。眼内デバイスは、コイルへの穏やかな力の適用によって、またはコイル上を前進してデバイスをフックから押し出すことができる別の構成要素によって、またはカニューレを出るときに受動的に脱係合する形状記憶材料を使用することによって、フックから脱係合し得る。眼内デバイスの格納が所望されるときにフックを使用することが有利であり得る。外科医は、送達システム及び係合機構を、それらがインプラント上のいずれの開窓または切り欠きからも脱係合するように単純に移動させ得る。
別の変形では、係合機構は、対向する顎部を含む。ここでは、係合機構は、第1の顎部及び第2の顎部を含んでもよく、顎部は、閉鎖構成及び開放構成を有する。顎部を使用して、眼内デバイスを掴んで操作し、眼内デバイスを位置決め要素に解放可能に連結し得る。顎部は、ワイヤの遠位端を、例えば、レーザー切断によって、分割または分岐させることによって形成してもよい。顎部の把持力は、顎部をカニューレ内に制約することによって獲得され得る。眼内デバイスは、顎部がカニューレから前進して展開すると解放され得る。顎部はまた、旋回可能に接続してもよい。更に別の変形では、第1の顎部は、少なくとも1つのタインを含んでもよく、第2の顎部は、顎部が閉鎖構成にあるときにタインを受容するための少なくとも1つのアパーチャーを含んでもよい。
更なる変形では、係合機構は、環状部分を備える。係合機構のこの変形は、典型的には、折り畳み構成と拡張構成とを有するばね状留め具をその近位端に備える眼内デバイスと共に使用することになる。留め具は、概して、展開位置で製造される。このため、留め具を有するデバイスがカニューレ内に配設される場合、留め具の第1及び第2のアームまたはつまみは、係合機構の環状部分の周囲で折り畳まれる。デバイスの留められた部分がカニューレを出ると、アームまたはつまみが展開して、眼内デバイスを環状部分から解放し得る。
係合機構のまた別の変形は、雌雄接合を含む。例えば、係合機構は、眼内デバイス上の相補的噛み合い要素(例えば、つまみ)と接合するように構成されている切り欠きを備えてもよい。切り欠き(雌構成要素)は、皮下管内に形成されてもよく、あるいはソリッドワイヤまたは要素から作製される位置決め要素の遠位端を通した開窓を創出することによって作製されてもよく、つまみまたはフック(雄構成要素)は、眼内デバイスの一部として形成されてもよく、位置決め要素中の開窓または切り欠き中に挿入されてもよい。この構成により、眼内デバイスは、それが、外科医の操作、若しくはそれを眼内デバイスから受動的に離脱させる位置決め要素の形状設定のいずれか、またはその両方によって、カニューレから前進するときに、位置決め要素から解放され得る。
II.キット
本明細書に記載の送達システムは、特殊化したパッケージ中に配置されてもよい。パッケージは、本システムを保護するように、特に、カニューレを保護するように設計され得る。パッケージは、カニューレの遠位先端とあらゆる他の物体または表面との間の接触を防止することが望ましくあり得る。そうするために、パッケージは、カニューレの遠位先端に近位の1つ以上の場所にて送達システムをパッケージングに固定するように構成されている1つ以上の要素を備えてもよい。送達システムがパッケージングに対して旋回する能力を制限するために、カニューレの遠位先端に近位の少なくとも2つの場所にて送達システムを固定することが望ましくあり得る。
1つの例示的な変形では、パッケージングは、送達システムの形状に概して対応する形状を有する陥凹と、送達システムをカニューレに近位の場所に固定するように構成されている対応する1つ以上のピンチポイントと、を備えるトレイを備えてもよい。図26Aは、送達システム(2600)のための例示的なトレイ(2604)を示す。トレイ(2604)は、送達システム(2600)を受容するように構成されている陥凹(2606)を備えてもよい。トレイ(2604)は、送達システム(2600)を陥凹(2606)内に固定するように構成されている、第1の遠位ピンチポイント(2608)及び第2の遠位ピンチポイント(2610)、ならびに第1の近位ピンチポイント(2612)及び第2の近位ピンチポイント(2614)を備えてもよい。送達システム(2600)がトレイ(2604)の中で固定されているとき、送達システムのカニューレ(2602)は、カニューレがトレイと接触しないように懸吊されてもよく、ピンチポイントは、カニューレ(2602)がトレイと接触状態になり得るような方法で送達システム(2600)が旋回することを制限し得る。ピンチポイントは、送達システム(2600)をトレイ(2604)中に安全に固定すると同時に、ユーザが制御された様式で送達システムをトレイから除去できるようにも構成され得る。本明細書に記載のキットが更なる構成要素を備える変形では、パッケージングは、これらの更なる構成要素を保持するように設計され得る。例えば、図26Bは、充填器具(2624)及び送達システム(2620)を保持するように構成されている陥凹(2628)を備える例示的なトレイ(2626)を示す。図26Cに示すように、トレイ(2640)は、蓋(2642)によって封止され(例えば、ヒートシール)、箱(2644)中に配置されるように構成されてもよい。箱(2644)は、任意選択で、使用説明書(2646)を更に収容してもよい。任意選択で、蓋(2642)及び/または箱(2644)にラベル(2648)を貼付してもよい。
パッケージングは、カニューレの遠位先端を保護する他の構成を有し得ることを理解されたい。例えば、別の変形では、パッケージングは剛性の平面シートを備えてもよく、これに、送達システムを、カニューレが平面シートに接触しないような配向で取り付けてもよい。送達システムは、送達システムの平面シートに対する移動を防止するために、ハウジングに沿った2つ以上の点にて取り付けてもよい(例えば、ハウジングに巻き付けた紐または他の材料によって)。カニューレを少なくとも2つの側で保護することが望ましくあり得る。例えば、カニューレを少なくとも2つの側で保護するために、平面シートのカニューレに近い部分をカニューレの周囲で屈曲させてもよく、あるいは、第2の剛性の平面シートを第1の平面シートの反対側で送達システムに取り付けてもよい。
本明細書に記載のいくつかのキットは、複数の送達システムを備え得る。例えば、キットは、2つの送達システムを備えてもよい。いくつかの変形では、キットは、同じシステムを2つ備えてもよく、その結果、例えば、第1の送達システムを患者の第1の眼において使用し得、第2の送達システムを患者の第2の眼において使用し得る。他の変形では、キットは、2つの異なるシステムを備えてもよい。例えば、第1の送達システムは、流体組成物を送達するように構成されてもよく、第2の送達システムは、流体組成物を送達するように構成されない場合があるが、代わりに、細長部材を使用して小柱網を分断するように構成されてもよい。複数のシステムを備えるキットは、任意の好適な方法でパッケージ化され得る。例えば、図27Aは、2つの送達システム(2700、2702)を備えるキットを積み重ねた構成で示し(外側パッケージなしで示す)、図27Bは、2つの送達システム(2704、2706)を備えるキットを並列した構成で示す(外側パッケージなしで示す)。ここでも、送達システム(2700、2702)は、両方とも流体組成物を送達するように構成されてもよく、両方とも流体組成物を送達しないように構成されてもよく(例えば、細長部材を送達して小柱網を分断するように構成されてもよく)、あるいは一方が流体組成物を送達するように構成され、もう一方がそうでないように構成されてもよい。同様に、送達システム(2704、2706)は、両方とも流体組成物を送達するように構成されてもよく、両方とも流体組成物を送達しないように構成されてもよく、あるいは一方が流体組成物を送達するように構成され、もう一方がそうでないように構成されてもよい。
いくつかのキットは、本明細書に記載の1つ以上の送達システムに加えて眼内インプラントを備えてもよい。例えば、キットは、シュレム管に埋め込まれるように構成されている1つ以上のデバイスを備えてもよく、このデバイスは、概して、カナルを横切る貫壁性流体流動に大きく干渉することなく、シュレム管の開存性を維持するように構成され得る。キットは、シュレム管に配置するためのステントなどであるがこれに限定されない、1つ以上の眼内インプラントを備えてもよい。いくつかの変形では、眼内インプラントは、既に全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,909,789号、及び既に全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,529,622号に開示されているもののうちの1つ以上であってもよい。1つの変形では、デバイスは、ねじったリボン部材を備えてもよく、これは、第1の細長縁と、第2の細長縁と、ねじったリボン部材の長手方向中心軸に対して実質的に垂直な方向でこれらの細長縁の間に延在する複数の支柱と、を備える二重螺旋を備える。支柱は、ねじったリボン部材の長さの少なくとも一部に沿って離間した複数の開窓を定義し得る。
III.方法
眼の状態を治療するための方法及び/または眼内デバイスを埋め込み、上記のシステムを使用して流体組成物をシュレム管に送達し、かつ/あるいは器具をシュレム管に送達するための方法も提供される。いくつかの例では、眼の状態を治療することは、房水排水の増加、房水流出に対する抵抗性の低減、及び/または眼圧の低減に繋がり得る。本明細書に記載のいくつかの方法は、シュレム管を拡張し、コレクターチャネルを拡張し、かつ/あるいはシュレム管を通した円周流を閉塞させ得るいずれの中隔も破壊し得る。シュレム管の拡張は、カナルの閉塞した内壁を分断し、小柱網を引張し、かつ/あるいは小柱網の多孔性を増大させ得る。これにより、自然な房水流出路が改善される。拡張は、器具(例えば、本明細書に記載の摺動可能な細長部材)を前進させることによって行い得る。加えてまたはあるいは、拡張は、流体組成物(例えば、本明細書に記載の粘弾性流体)を送達することによって行ってもよい。加えてまたはあるいは、本明細書に記載のいくつかの方法は、トラベクロトミーを行って小柱網を切断することを含んでもよい。加えてまたはあるいは、本明細書に記載のいくつかの方法は、眼内デバイスをシュレム管に埋め込むことを含んでもよい。いくつかの例では、本明細書に記載のシステムを使用して、アブインテルノトラベクロトミー、アブインテルノ経管トラベクロトミー、透明角膜トラベクロトミー、透明角膜経管トラベクロトミー、アブインテルノ管形成術、及び/または透明角膜管形成術を行ってもよい。本送達システムはまた、いくつかの例では、前房癒着の溶解、粘弾性物質による隅角癒着解離術(viscogonioplasty)、眼内レンズ交換の支援、落としたレンズまたは異物の浮上させる、及び/または脱出した虹彩組織の再配置に使用してもよい。
本方法は、概して、侵襲性が最低限である、単独の操作者が片手で制御する方法であり、例えば、これらは、前述のようにより侵襲性のアブエクステルノ手順よりも有利であり得るアブインテルノ手順に適合される。しかしながら、アブエクステルノ法での眼内システムの使用がいくつかの例では企図されているため、本明細書では除外しない。眼内デバイス若しくは流体を送達するための方法または分断力を提供するための方法を使用して、緑内障、前段階緑内障、または高眼圧症を治療または防止し得る。緑内障を治療する場合、本方法はまた、同じセッション中に同じ切開部を使用して、または別の時に、白内障手術と組み合わせて(前または後で)使用してもよい。
以下でより詳細に説明する、本方法のうちのいくつかは、本明細書に記載の送達システムを使用してシュレム管及び/または房水コレクターチャネルを拡張すること(例えば、粘弾性流体によって)を含んでもよい。同様に以下でより詳細に説明する、本方法のうちの他のものは、シュレム管の小柱網を裂くかまたは切断することを含んでもよい。これらの方法は、別個に実行してもよく、あるいは組み合わせて単一の手順としてもよい。例えば、いくつかの例では、シュレム管の一部(例えば、半分)を拡張してもよく(例えば、流体組成物若しくは器具、またはその両方を使用して)、シュレム管の同じ部分または異なる部分の小柱網を同じ眼の中で裂くかまたは切断し得る。別の例として、シュレム管の全てを拡張し、その後、小柱網の全てまたは一部を続いて裂くかまたは切断してもよい。これは、例えば、コレクターチャネルを拡張することと、小柱網を裂くかまたは切断することとの両方を行うために、望ましくあり得る。
これらの変形のうちのいくつかでは、拡張すること及び裂くことまたは切断することは、単一の送達システム、例えば、流体組成物を送達するように構成されている本明細書に記載のものを使用して行い得る。例えば、流体組成物を送達するように構成されている送達システムの細長部材をまず使用して、流体組成物を、本明細書に記載のように、シュレム管の一部(例えば、カナルの約180度の弧、カナルの約90度の弧)に送達し、続いて、本明細書に記載のように、カナルの同じ部分において小柱網を裂くかまたは切断し得る。別の例として、流体組成物を送達するように構成されている送達システムの細長部材をまず使用して、流体組成物を、シュレム管の一部(例えば、カナルの約180度の弧、カナルの約90度の弧など)に送達し、続いて、カナルの異なる部分(例えば、一方は約180度の弧、もう一方は90度の弧など)において小柱網を裂くかまたは切断し得る。更に別の例として、流体組成物を送達するように構成されている送達システムの細長部材をまず使用して、流体組成物をシュレム管の全てに送達し(例えば、約180度の流体組成物を第1の方向に送達し、次に約180度の流体組成物を第2の方向に送達することによって)、その後続いて、全360度の小柱網を裂くかまたは切断し得る(例えば、約180度の小柱網を第1の方向に裂くかまたは切断し、次に約180度の小柱網を第2の方向に裂くかまたは切断することによって)。
他の変形では、拡張すること及び裂くことまたは切断することは、異なる送達システムを使用して行ってもよい(例えば、拡張することは、流体組成物を送達するように構成されている送達システムを使用して行ってもよく、裂くことまたは切断することは、流体を送達するように構成されていない送達システムを使用して行ってもよい)。更に別の例として、いくつかの場合には、患者の一方の眼において拡張を行ってもよく、同時に患者のもう一方の眼において小柱網を裂くかまたは切断する。
シュレム管を拡張する手段及び/または小柱網を裂くか若しくは切断する手段は、眼内デバイス(本明細書でより詳細に説明する)を、同じ眼に、または同じ患者の異なる眼に送達する手順と組み合わせてもよい。例えば、シュレム管の全てまたは一部を拡張した後で、眼内デバイスを挿入してもよい。別の例としては、小柱網の一部を裂くかまたは切断してもよく、同時に眼内インプラントをシュレム管の別の部分に送達してもよい。更に別の例として、シュレム管の一部を拡張してもよく、同時に眼内インプラントをシュレム管の別の部分に送達してもよい。更に別の例として、眼内インプラントをシュレム管の一部に送達してもよく、その後続いて、眼内インプラントの機能を改善するためにシュレム管を拡張してもよい。
眼内デバイス送達
概して、眼内デバイスをシュレム管に埋め込むための方法は、まず、眼壁(例えば、強膜または角膜または角膜強膜縁若しくは連結部)に、眼の前房へのアクセスを提供する切開部を創出するステップを含む。図14中の眼の様式化した描写に示すように、次に、眼内送達システムのカニューレ(1400)を、切開部を通して、前房(1402)を少なくとも部分的に横切って、小柱網(図示せず)へと前進させる。次に、シュレム管(即ち、シュレム管の内腔)(1404)に、カニューレの遠位湾曲部分(1406)及び摺動可能な位置決め要素(または例えば、摺動可能な器具若しくはガイドワイヤ)によってアクセスするか、あるいは細長部材(要素1408によって一般的に表す)をカニューレから前進させて、眼内デバイスをシュレム管に埋め込むか、シュレム管内または近隣の小柱細管組織のうちのいずれかで手順を行うか、または流体をカナルに送達する。しかしながら、いくつかの例では、送達されるいずれの流体もカニューレを通して送達されるように、細長部材を用いない場合がある。また更なる変形では、小柱網のみを突き刺して、シュレム管を一周することなく流体組成物を送達する。
前述のように、いくつかの変形では、カニューレは、近位端及び遠位湾曲部分を含むように構成されてもよく、遠位湾曲部分は、近位端、遠位端、及びこれらの端部の間に定義される曲率半径を有する。ここでは、カニューレはまた、胴体と、曲率半径に直接係合する、例えば、曲率半径に隣接するベベルを有する遠位先端とを含んでもよい。他の変形では、直線状のカニューレ(即ち、遠位湾曲部分を有しないもの)を用いてシュレム管にアクセスしてもよい。本方法はまた、本システムに流体を流すステップ(例えば、本システムから空気を除去するため)及び/または血液を一掃するか若しくは術野の可視化を改善するために術野を潅注するステップを含んでもよい。
シュレム管の開存性を維持するかまたは房水の流出を改善する任意の好適な眼内デバイスを本明細書に記載のシステムによって埋め込み得る。例えば、カナルを渡る、カナルに沿う、またはカナルから出る流体流動に大きく干渉することなく、シュレム管の開存性を維持する眼内デバイスを埋め込んでもよい。かかるデバイスは、少なくとも1つの開窓を有する支持体を備えてもよく、これは、既に全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,909,789号及び米国特許第8,529,622号に開示されている。近傍細管小柱網または隣接するシュレム管の内壁を分断する眼内デバイスも埋め込み得る。金属または金属合金から作製される眼内デバイスに加えて、縫合糸、変性縫合糸、変性ポリマー、ポリマーフィラメント、または固体の粘弾性構造を送達してもよい。流体組成物、例えば、生理食塩水、粘弾性流体、空気、薬物混合物または溶液、及びガスも送達し得る。
流体組成物をシュレム管に送達する場合、本方法は、概して、眼の前房へのアクセスを提供する眼壁(例えば、強膜または角膜)中の切開部を創出するステップ、眼内送達システムのカニューレをこの切開部を通して前房を少なくとも部分的に横切って小柱網へと前進させるステップ、カニューレを用いてシュレム管にアクセスするステップ、及びカニューレの内腔内で摺動可能である細長部材を使用して流体組成物をカナルに送達するステップを含む。カニューレは、近位端及び遠位湾曲部分を含むように構成されてもよく、遠位湾曲部分は、近位端及び遠位端、ならびにこれらの端部の間に定義される曲率半径を有する。ここでは、カニューレはまた、胴体と、曲率半径に直接係合する、例えば、曲率半径に隣接するベベルを有する遠位先端とを含んでもよい。更に有利なカニューレ特徴部を含めてもよく、これについては上に記載した。本方法はまた、本システムに流体を流すステップ(例えば、本システムから空気を除去するため)及び/または血液を一掃するか若しくは術野の可視化を改善するために術野を潅注するステップを含んでもよい。
眼内デバイスを埋め込むためにアブインテルノ法を用いる場合、本方法は以下のステップを含み得る。外科医はまず、手術用顕微鏡及びゴニオスコープまたはゴニオプリズムを使用して、前房及び小柱網(シュレム管が下層にある)を見てもよい。次に、0.5mm以上の角膜、縁、または強膜切開を使用して、外科医は前房へのアクセスを得てもよい。次に、生理食塩溶液または粘弾性組成物を前房に導入してそれが潰れるのを防止し得る。ここでは、生理食塩溶液または粘弾性組成物を、送達システムカニューレを通して、または別のやり方で、例えば、カニューレ上の潅注スリーブを通した注入によって、送達し得る。外科医はその後、直接顕微鏡法による可視化の下で、送達システムのカニューレを、切開部を通して前房隅角に向けて前進させる。隅角(及び故に小柱網)に接近すると、外科医は、ゴニオスコープまたはゴニオプリズムを角膜に適用して、隅角を可視化し得る。角膜への流体(例えば、既に記載したような粘性溶液または粘弾性組成物)の適用及び/またはゴニオスコープまたはゴニオプリズムの適用は、良好な光学的接触を達成し、全内部反射をなくすことによって、前房隅角の可視化を可能にし得る。外科医が小柱網を可視化すると、次に、カニューレの湾曲した遠位部分の遠位端にあるベベルが網を穿刺し、シュレム管の内腔と連通するように、カニューレを前進させ得る。外科医は、生理食塩水または粘弾性組成物をカナルまたは前房に潅注して、前房が潰れるのを防止するか、シュレム管を拡張するか、またはカニューレの可視化及び眼内デバイス送達を妨げ得る一切の血液を洗い流し得る。次に、外科医が所望する程度に眼内デバイスが前進すると、デバイスは係合機構から解放され、その結果、シュレム管中に存在することとなり得る。眼内デバイスの再配置が必要とされるかまたは所望される場合、外科医は、送達システムの位置決め要素を使用して、眼内デバイスを格納及び/または再配置し得る。外科医はその後、送達システムを眼から引き抜き得る。
眼内デバイスを埋め込むためのアブインテルノ法の他の変形は、内視鏡の使用を含む。上の方法と同様に、まず、角膜、縁、または強膜を切開することによって、前房にアクセスする。ここでも、これは、白内障手術と併せて白内障手術の前または後で一度に行ってもよく、あるいは独立して行ってもよい。前房に生理食塩溶液を注入してもよく、あるいは粘弾性組成物を前房の中に配置して、それが潰れるのを防止してもよい。生理食塩水または粘弾性物質は、別個のステップとして送達してもよく、あるいは送達システムの細長部材、細長部材若しくはカニューレ上の潅注スリーブ、または別個の注入カニューレを用いて注入してもよい。外科医はその後、直接顕微鏡法による可視化の下で、内視鏡を、切開部を通して隅角及び小柱網に向けて前進させる。外科医が内視鏡または任意の関連するビデオ表示を使用して小柱網を可視化すると、カニューレのベベルが前進して、網を穿刺する。その後、眼内デバイスを、内視鏡による可視化の下で位置決め要素を使用して前進させる。外科医は、生理食塩水または粘弾性組成物をカナルまたは前房に潅注して、前房が潰れるのを防止するか、シュレム管を拡張するか、またはカニューレの可視化及び眼内デバイス送達を妨げ得る一切の血液を洗い流し得る。外科医が所望する程度に眼内デバイスが前進すると、デバイスは係合機構から解放され、その結果、シュレム管中に存在することとなり得る。眼内デバイスの再配置が必要とされるかまたは所望される場合、外科医は、送達システムの位置決め要素を使用して、眼内デバイスを格納及び/または前進させ得る。外科医はその後、送達システムを眼から引き抜き得る。
流体組成物送達
本明細書に記載のいくつかの方法は、流体組成物をシュレム管内など眼内に送達することを含んでもよい。いくつかの方法では、内腔を備える細長部材をシュレム管内に前進させてもよく、流体組成物は、細長部材を介して送達し得る。細長部材及び流体両方の送達により、シュレム管が拡張し、流体送達により、更にコレクターチャネルが拡張し得る。流体組成物の送達については、本方法は、眼内デバイスの埋め込みと同様である。しかしながら、位置決め要素を使用する代わりに、送達システムは、流体組成物をシュレム管に注入するために摺動可能な細長部材を用い得る。
流体組成物を送達してシュレム管を拡張し得る。シュレム管の長さ全体またはその一部を流体によって拡張し得る。例えば、カナルの少なくとも75%、少なくとも50%、少なくとも25%、少なくとも10%、またはカナルの少なくとも1%を拡張してもよい。流体組成物はまた、眼の様々な医学的状態を治療するために送達されてもよく、これらの状態としては、緑内障、前段階緑内障、前部若しくは後部の血管新生疾患、前部若しくは後部の炎症性疾患、高眼圧症、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、遺伝性眼障害、白内障手術の合併症、血管閉塞、血管疾患、または炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
外科医はまず、手術用顕微鏡及びゴニオスコープまたはゴニオプリズムを使用して、前房及び小柱網(シュレム管が下層にある)を見てもよい。次に、0.5mm以上の角膜、縁、または強膜切開を使用して、外科医は前房へのアクセスを得てもよい。次に、生理食塩溶液または粘弾性組成物を前房に導入してそれが潰れるのを防止し得る。ここでは、生理食塩溶液または粘弾性組成物を、送達システムカニューレを通して、または別のやり方で、例えば、カニューレ上の潅注スリーブを通した注入によって、送達し得る。外科医はその後、直接顕微鏡法による可視化の下で、送達システムのカニューレを、切開部を通して前房隅角に向けて前進させる。隅角(及び故に小柱網)に接近すると、外科医は、ゴニオスコープまたはゴニオプリズムを角膜に適用して、隅角を可視化し得る。角膜への様々な流体(例えば、既に記載したような粘弾性組成物)の適用及び/またはゴニオスコープまたはゴニオプリズムの適用は、良好な光学的接触を達成し、全内部反射をなくすことによって、前房隅角の可視化を可能にし得る。外科医が小柱網を可視化すると、次に、カニューレの湾曲した遠位部分の遠位端にあるベベルが網を穿刺し、シュレム管の内腔と連通するように、カニューレを前進させ得る。
次に、カニューレの内腔内で同軸上に配設された摺動可能な細長部材を、ゴニオスコープによる可視化の下でカナル内に前進させ得る。細長部材は、任意の好適な量及びカナルの周囲の方向で前進し得る。例えば、細長部材は、カナルの周囲を約1度〜約360度、カナルの周囲を約10度〜約360度、カナルの周囲を約150〜約210度、または任意の好適な距離、カナルの周囲を約360度、カナルの周囲を約270度、カナルの周囲を約180度、カナルの周囲を約120度、カナルの周囲を約90度、カナルの周囲を約60度、カナルの周囲を約30度、またはカナルの周囲を約5度、前進してもよい。いくつかの変形では、細長部材は、2ステップで、例えば、カナルの周囲をまず時計方向で(例えば、約180度、約90度など)、次に反時計方向で(例えば、約180度、約90度など)(例えば、それにより360または180度のアブインテルノビスコカナロストミーまたは管形成術を達成する)前進してもよい。流体は、細長部材の前進または格納の際に注射され得る。摺動可能な細長部材をカナル内に位置付けたら、流体組成物、例えば、粘弾性溶液を、細長部材の内腔を通して継続的にまたは断続的に送達し得る。流体組成物は、細長部材の内腔を、その遠位端を通して(例えば、遠位先端を通して)、またはそのシャフトに沿って提供される開口部若しくは開窓を通して、またはその両方の組み合わせで出る。開口部または開窓は、細長部材の軸方向の長さに沿って、任意の好適な様式で、例えば、その長さに沿って対称または非対称で、離間され得る。所望の場合、薬物、空気、またはガスなどの他の物質を同じ様式で送達してもよい。
いくつかの変形では、摺動可能な細長部材は、格納または反復した前進及び格納によって位置付け直してもよい。本方法のいくつかの変形では、同じまたは異なる切開部を使用してもよいが、異なる方向から(例えば、時計回りの代わりに反時計回りで)シュレム管にアクセスしそれを拡張するために、送達システムカニューレを用いる。十分な量の流体が送達されると、外科医は、摺動可能な細長部材をカニューレに格納し、送達システムを眼から除去し得る。本明細書に記載のカニューレは、遠位先端にて二表面構成(即ち、鋭い面及び平滑な面)を備えるように特に製造され得、これにより、細長部材を、カニューレの遠位先端上でそれを断絶させることなく、前進、再配置、及び/または格納することが可能となり得ることを理解されたい。これらのステップは、単独で、または白内障手術と組み合わせて(一度に)、使用し得ることも理解されたい。
本明細書に記載の送達システムのうちのいくつかは、摺動可能な細長部材の前進及び/または格納の累積量が制限されるように構成され得る。例えば、上記のように、細長部材は、特定の累積距離(例えば、シュレム管のおよその円周に対応して、前進及び格納の各々、約39mm〜約40mm;またはシュレム管の円周の約2倍に対応して、前進及び格納の各々、約78mm〜約80mm;または任意の他の好適な距離)で前進し格納された後は、それ以上前進することができない。この前進及び格納は、複数の前進格納サイクルにかけて生じ得る。例えば、細長部材は、約20mm前進し、次に約20mm格納され、次に約20mm前進し、次に約20mm格納してもよい。累積距離が約40mmに制限される場合、これら2サイクルの前進及び格納の後、細長部材はそれ以上前進することができない場合がある。
アブインテルノ法のいくつかの変形では、流体組成物は、細長部材の格納と同時に送達されてもよい(即ち、流体組成物は、システム構成要素の格納によって本システムのカニューレからの流体の前進が可能となる様式で送達されてもよい)。再び図11A〜11Cを参照すると、リニアギア(1108)を矢印(図11B)の方向に格納して、貯蔵部(1102)が加圧された状態となるようにする。格納は、ピニオンギア機構(1120)の回転によって達成し得る。十分な量の圧力が貯蔵部(1102)中で創出されたら、中に収容されている流体組成物を、リニアギア内腔(1114)及び細長部材(1118)を通してシュレム管へと注射する。眼内送達システムは、流体組成物が、継続的に、受動的に、自動的に、または能動的に、外科医によって送達されるように構成され得ることを理解されたい。流体組成物はまた、ポンプまたは補助プランジャによって、ギアシャフトの移動とは無関係にカナルに送達されてもよい。いくつかの変形では、細長部材の格納は、細長部材の内腔を介して送達される一定体積の流体組成物に対応し得る。流体組成物は、細長部材の内腔の遠位開口部を介して、それが格納される際に送達され得、このため、流体は、細長部材が前進するカナルの部分全体で均一に送達され得る。
本明細書に記載の眼内デバイスによって送達され得る本流体組成物としては、生理食塩水及び粘弾性流体は挙げられるが、これらに限定されない。粘弾性流体は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、セルロース、これらの誘導体若しくは混合物、またはこれらの溶液を含んでもよい。1つの変形では、粘弾性流体はヒアルロン酸ナトリウムを含む。別の変形では、粘弾性組成物は薬物を更に含んでもよい。例えば、粘弾性組成物は、緑内障の治療、眼圧の低減若しくは低下、炎症、線維症、血管新生、若しくは瘢痕化の低減、及び/または感染症の防止に好適な薬物を含んでもよい。粘弾性組成物はまた、粘弾性組成物の可視化を支援する薬剤を含んでもよい。例えば、フルオレセイン、トリパンブルー、またはインドシアニングリーンなどであるがこれらに限定されない染料を含めてもよい。いくつかの変形では、蛍光化合物または生物発光化合物を粘弾性組成物に含めて、その可視化を助ける。他の変形では、本システムは、粘弾性組成物なしで薬物のみを送達する。この場合、薬物は、数週、数カ月、または数年かけて薬剤を溶出する持続放出性の生分解性ポリマー上にまたはその中に充填し得る。空気またはガスを、本明細書に記載のように本システムを用いて送達することも企図される。
流体組成物を送達するためのアブインテルノ法の他の変形は、内視鏡の使用を含む。直上に記載した方法と同様に、まず、角膜、縁、または強膜を切開することによって、前房にアクセスする。ここでも、これは、白内障手術と併せて白内障手術の前または後で一度に行ってもよく、あるいは独立して行ってもよい。前房に生理食塩溶液を注入してもよく、あるいは粘弾性組成物を前房の中に配置して、それが潰れるのを防止してもよい。生理食塩水または粘弾性物質は、別個のステップとして送達してもよく、あるいは送達システムの細長部材、細長部材若しくはカニューレ上の潅注スリーブ、または別個の注入カニューレを用いて注入してもよい。外科医はその後、直接顕微鏡法による可視化の下で、内視鏡を、切開部を通して隅角及び小柱網に向けて前進させる。外科医が内視鏡または任意の関連する表示によって小柱網を可視化すると、カニューレのベベルが前進して、網を穿刺する。その後、細長部材を、内視鏡による可視化の下で前進させる。細長部材は、任意の好適な量及びカナルの周囲の方向で前進し得る。例えば、細長部材は、カナルの周囲を約10度〜約360度で前進してもよく、2ステップで、例えば、カナルの周囲を時計方向に180度、及び反時計方向に180度(それにより全360度のアブインテルノビスコカナロストミーを達成する)、前進してもよい。細長部材をカナル内に位置付けたら、流体組成物、例えば、粘弾性流体を、細長部材の内腔を通して継続的にまたは断続的に送達し得る。流体組成物は、細長部材の内腔を、その遠位端を通して(例えば、遠位先端を通して)、またはそのシャフトに沿って提供される開口部若しくは開窓を通して、またはその両方の組み合わせで出る。開口部または開窓は、細長部材の軸方向の長さに沿って、任意の好適な様式で、例えば、その長さに沿って対称または非対称で、離間され得る。所望の場合、薬物、空気、またはガスなどの他の物質を同じ様式で送達してもよい。細長部材は、格納または反復した前進及び格納によって位置付け直してもよい。本方法のいくつかの変形では、同じまたは異なる切開部を使用してもよいが、異なる方向から(例えば、時計回りの代わりに反時計回りで)シュレム管にアクセスしそれを拡張するために、送達システムカニューレを用いる。十分な量の流体が送達されると、外科医は、摺動可能な細長部材をカニューレに格納し、送達システムを眼から除去し得る。
本明細書に記載の1つの変形を図28A〜Dに例証し、これは、図23A〜23Fに関して説明した送達システムを使用して実行し得る。図28Aは、本方法を例証する流れ図を示す。そこで示す方法により、内腔を備える摺動可能な細長部材(例えば、マイクロカテーテル)を介して流体(例えば、粘弾性流体またはゲル)をシュレム管へと片手による手動操作で送達することが可能となり得る。粘弾性流体の送達は、制御された少量の粘弾性が眼に送達され得るように、計量され得る。本方法により、アクセスのために単一の透明角膜切開を使用するシュレム管の360度のカテーテル挿入及び経管性の粘弾性物質による拡張(viscodilation)が可能となり得る。これは、例えば、緑内障(例えば、開放隅角緑内障)を患う患者において眼圧を低減し得る。
まず、送達システムをそのパッケージから取り出し得る。次に、送達システムに粘弾性流体を充填し得る。キット中で送達システムと共に供給され得る充填器具(例えば、ノズル)を粘弾性カートリッジに取り付け得る。好適な市販の粘弾性物質としては、Healon(商標)、HealonGV(商標)、Amvisc(商標)、及びPROVISC(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。その後、充填器具に粘弾性物質を流し得る。その後、送達システムの近位端上のロックを回転させて(デバイスデバイスのハンドルに取り付けたままにしながら)、デバイス中の近位開口部を露出させ得る。その後、ノズルを近位開口部に挿入し、粘弾性流体を粘弾性カートリッジから送達システムの貯蔵部に注射し得る。注射中に送達システム及び粘弾性カートリッジを直立状態に保持することは望ましくあり得る。粘弾性流体を、カニューレの遠位先端からの粘弾性物質の流れが可視となるまで注射し得る。その後、ロックを送達システムから除去する。
粘弾性流体を眼中に送達するために、カニューレを、既存の角膜または強膜切開部を通して前房に前進させ得る。切開部が少なくとも約1mm幅であることが望ましくあり得る。カニューレの遠位先端を使用して、小柱網を穿刺しシュレム管に進入し得る。カニューレは、細長部材をシュレム管に前進させる間、隅角に対して固定して保持し得る。駆動組立体の車輪のうちの1つ以上の露出部分を、細長部材がシュレム管の周囲を最大約180度(約18mm、約19mm、約20mm、約18mm〜約20mm、または約15mm〜約25mmの円周方向のカナル移動)で前進するように近位に回転させ得る。この時点で、細長部材は完全に延出してもよく、車輪はそれ以上回転できなくてもよい。この手順中、直接顕微鏡またはゴニオスコープによるカニューレ先端の可視化を維持してもよく、前房は、粘弾性物質または連続的平衡塩類溶液注入によって維持し得る。
その後、1つ以上の車輪を遠位に回転させて細長部材を格納し得る。細長部材を格納するとき、特定の所定の体積の粘弾性物質を、計量した様式で細長部材の内腔から絶え間なく送達してもよく、これが、シュレム管及び/またはコレクターチャネルの粘弾性物質による拡張を引き起こし得る。いくつかの変形では、細長部材の完全格納は、約2μl〜約9μlの粘弾性流体(例えば、約4.5μlの粘弾性流体)の送達をもたらす。車輪は、増分式回転時の可聴性及び/または触知性のクリックで増分式に回転するように構成され得、いくつかの場合には、約0.5μlの粘弾性流体が各クリックで送達され得る。細長部材(2806)のカニューレ(2808)への格納中の粘弾性物質(2800)のシュレム管(2802)及びコレクターチャネル(2804)への送達を図28B〜28Dに示す。図28C〜28Dに見られるように、粘弾性物質(2800)のシュレム管への送達の角度及び長さは、細長部材のカナル中への前進の角度及び長さに対応する。いくつかの例では、粘弾性物質を使用して、前房に戻るあらゆる血液の逆流をタンポナーデしてもよい。
その後任意選択で、粘弾性物質をシュレム管の別の半分に送達されてもよい。カニューレ先端をシュレム管から除去してもよく、本送達システムを、カニューレ先端が180度回転して反対方向を向くように反転させてもよい。いくつかの例では、本送達システムは、カニューレを眼から除去することなく、前房中で反転させ得る。他の例では、本送達システムは、眼から除去し、反転させ、切開部に再挿入してもよい。その後、カニューレ先端を、小柱網中の同じ切開部を介してシュレム管に再挿入してもよく、上記の粘弾性流体の前進、格納、及び送達を繰り返して、シュレム管の残りの180度を粘弾性物質によって拡張してもよい。手順を完了すると、合計で約4μl〜約18μlの粘弾性流体(例えば、約9μlの粘弾性流体が眼に送達され得る。
手順終了時に、前房を、角膜創を通して潅注してもよい(例えば、平衡塩類溶液によって)(手動または自動で)。平衡塩類溶液または粘弾性物質を使用して、生理的圧力を達成するために必要に応じて前房を再形成し、コレクターチャネルから前房に戻るあらゆる血液の逆流を更にタンポナーデしてもよい。必要であれば、縫合糸を使用して角膜または強膜切開を封止してもよい。術後、抗生物質若しくは殺菌剤、散瞳薬、または縮瞳薬を適切に使用してもよい。例えば、縮瞳点眼薬を数週間または数カ月使用して、癒着形成及び隅角閉塞の防止を助けてもよい。
より一般的には、本明細書に記載の方法において、送達し得る粘弾性流体の例示的な体積は、いくつかの例では、約1μl〜約200μl、またはいくつかの例では、約1μl〜約100μlであり得る。いくつかの例では、分断力を提供するのに十分な体積は、約1μl〜約50μl、約1μl〜約30μl、または約2μl〜約16μlの範囲であり得る。1つの変形では、約4μlの体積がシュレム管及び/または周辺組織を分断するのに十分である。他の変形では、小柱細管組織を分断するのに十分な粘弾性物質の体積は、約2μl、約3μl、約4μl、約5μl、約6μl、約7μl、約8μl、約9μl、約10μl、約11μl、約12μl、約13μl、約14μl、約15μl、約16μl、約17μl、約18μl、約19μl、約20μl、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、または約50μlであり得る。
組織分断は、カナルの360度の弧あたり、少なくとも約1μl、少なくとも約2μl、少なくとも約3μl、少なくとも約4μl、少なくとも約5μl、少なくとも約6μl、少なくとも約7μl、少なくとも約8μl、少なくとも約9μl、少なくとも約10μl、少なくとも約11μl、少なくとも約12μl、少なくとも約13μl、少なくとも約14μl、少なくとも約15μl、少なくとも約16μl、少なくとも約17μl、少なくとも約18μl、少なくとも約19μl、または少なくとも約20μlの粘弾性流体を用いた、過度かつ意図的な粘弾性物質による拡張によって生じ得る。いくつかの変形では、少なくとも約20μl、少なくとも約25μl、少なくとも約30μl、少なくとも約35μl、少なくとも約40μl、少なくとも約45μl、または少なくとも約50μlの粘弾性流体を送達してもよい。
治療する状態の種類及び重症度などの因子に応じて、分断力は、小柱網を部分的にまたは完全に破壊及び/または除去するように生成してもよく、送達する粘弾性流体の体積を変化させることによって調整してもよい。例えば、8μlを使用して、網を穿孔するかまたは穏やかに裂いてもよく、一方で16μlを使用して、網を最大限に切断するかまたは裂いてもよい。より具体的には、約1〜2μlを使用して、シュレム管及びコレクターチャネルを拡張してもよく、約2〜4μlを使用して、シュレム管及びコレクターチャネルを拡張し、近傍細管組織を引張してもよく、約4〜6μlを使用して、前述の全てならびに小柱網及び近傍細管組織中の微小な裂け目または微小な穿孔の創出を行ってもよい(それにより多孔性及び流出を更に増大させる)。約8〜16μlの体積を、前述の全てを行い、小柱網及び近傍細管組織を大幅に穿孔する/裂くために使用してもよい。約16〜50μlの体積を、小柱網を大幅にまたは完全に裂くかまたは切断するために使用してもよい。
粘弾性流体の全体積は、カナル中の単一のアクセスポイント(1602)からの単回の前進中(例えば、図16に示す通り)若しくは細長部材(1604)の引き抜き中に、シュレム管の360度の弧(1600)に沿って、または細長部材の複数回の前進若しくは引き抜きにおいて、より少ない度数の弧に沿って、送達され得る。例えば、図17に示すように、細長部材(1700)は、時計方向(1702)と反時計方向(1704)との両方でカナルの180度の弧に沿って前進して、流体を、例えば、カナル中の単一のアクセスポイント(1706)から送達してもよい。図16及び17を参照すると、約4μl〜約18μlの例示的な分断体積が、カナルの360度の弧に沿って送達され得、同時に細長部材がカナル中の単一のアクセスポイントから前進するか、あるいはカナル中の単一のアクセスポイントからの細長部材の2回の前進(時計方向に1回、半時計方向に1回)の間に、約2μl〜約9μlがカナルの180度の弧に沿って送達され得る。より具体的には、例示的な分断体積は、カナルの360度の弧に沿って送達される約9μlであってもよく、あるいは2回の前進の各々の間にカナルの180度の弧に沿って送達される約4.5μlであってもよい。細長部材は、単一のポイントから、または複数のポイントから、カナルにアクセスし得る。
加えて、流体組成物を送達して、シュレム管の管構造を回復し、カナル内の閉塞を一掃し、カナル内の近傍細管小柱網またはシュレム管の内壁を分断し、あるいはカナルを拡大してもよい。ここでは、送達システムは、これらの方法を助けるために、ワイヤ、チューブ、バルーン、エネルギーを組織に送達する機器、及び/または他の特徴部を含み得る。追加の特徴部を持つかかるシステムを使用して緑内障を治療し得ることが企図される。これらのシステムの表面は、シュレム管の内壁及び近傍細管小柱網を更に分断して房水の流出または透過性を強化するために、粗化されているか、または突起部を有してもよい。
粘弾性流体は、単独操作者が片手で制御するデバイスの細長部材をシュレム管から時計方向、半時計方向、若しくはその両方に前進させている間に、及び/または細長部材をシュレム管からの引き抜く間に、送達してもよい。前述のように、粘弾性流体を送達して、シュレム管及び周囲の小柱細管組織を分断し得る。例えば、送達した粘弾性流体は、シュレム管の拡張、小柱網の多孔性の増大、小柱網の引張、近傍細管組織における微小な裂け目若しくは穿孔の形成、シュレム管からの中隔の除去、コレクターチャネルの拡張、またはこれらの組み合わせによって分断を引き起こしてもよい。流体が単一のデバイスによって送達され得るように、眼科手順の開始時に細長部材に粘弾性流体を充填してもよい。流体送達カテーテルをシュレム管に前進させるための鉗子若しくは他の前進器具、及び/または送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具とは分離しているか若しくはそれから独立しており、手順中、外科医によって送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具が保持されている間、助手によって送達カテーテル若しくはカテーテル前進器具に繋いでいる必要がある、粘弾性流体を収容するデバイスを使用する他のシステムとは対照的である。
器具送達
隅角切開術及びトラベクロトミー(両方とも、若年で遺伝による場合が多い閉塞した小柱網の治療に典型的に使用される)の導入の前は、先天性緑内障は一様に失明に繋がっていた。隅角切開術(アブインテルノで行われるが、網を30〜60度切断して流出を改善させるために鋭利な外科用メスを使用する)及びトラベクロトミー(深い強膜切開によってシュレム管の屋根を剥がし、プローブによって網を切断する、アブエクステルノ法)の侵襲性にもかかわらず、本手順は有効であると見なされており、多くの小児患者が一生涯の失明を回避する可能性を可能にしてきた。1960年には、Burian及びSmithが、各々別々にアブエクステルノのトラベクロトミーを説明した。この極めて侵襲性であるアブエクステルノ手術では、外科医は、深い強膜切開を作製し、シュレム管を見つけ、カテーテル、またはトラベクトームと呼ばれる特別に設計されたプローブを用いて、シュレム管の全360度に外的にカニューレ挿入し、最後に、カテーテルまたはプローブの両端部を、トラベクトームが小柱網全体を前房まで切断し通すまで引っ張って、排液を改善する。
トラベクロトミーの侵襲性を減少させるためのより最近の試みは、「Trabectome」と呼ばれるデバイスを商品化しているNeoMedixによって開発された。このTrabectomeは、アブインテルノ手法の使用によってトラベクロトミーをより容易にすることを試みる。この機器及び方法は、注入及び吸引も提供する機器を使用する電気焼灼器によってアブインテルノで小柱網を除去することを伴う。Trabectomeの欠点は3つからなる。1)このデバイスは、小柱網を取り除くためにエネルギーに基づく機構を用い、これは、眼中の炎症及び瘢痕化を引き起こし、同様に流出及び圧力に悪影響を及ぼし得ると考えられている;2)このデバイス/手順は、電気焼灼器及び潅注を起動するために足踏みペダル及び電源コードを必要とするため、人間工学的に限定され、加えて、角膜または強膜進入切開あたり60〜120度の網治療に限定される;3)エネルギーに基づく取り除き及び潅注を伴うため、資本設備が必要とされる。
分断力を小柱細管組織に提供するための方法を含む本明細書に記載の方法(ならびにシステム及びデバイス)は、これらが、電気焼灼器の使用を回避し、細長部材をシュレム管のより大きい度数の弧に渡って前進させることが可能であるため、トラベクロトミー及び隅角切開術に極めて好適であり得る。本システム及びデバイスが、分断力を小柱細管組織に提供するように適合される場合、インプラントを含まない方法を用いてもよく、これらの方法は、例えば、分断体積の粘弾性流体を送達すること、分断器具、例えば、カニューレ、細長部材、カテーテルなどを前進させること、またはその両方による。いくつかの例では、分断器具は、それらの遠位部分に分断構成要素を備えてもよい。例示的な分断構成要素としては、切り欠き、フック、返し、バルーン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の例では、分断器具は、それらの遠位部分に分断構成要素を備えない場合があり、実際には非外傷性の先が丸い遠位部分を有し得る。例示的な非外傷性遠位部分としては、傘またはドーム形状の遠位部分が挙げられるが、これらに限定されない。
アブインテルノトラベクロトミー及び隅角切開術のいくつかの変形では、本手順は、カニューレを、少なくとも部分的に眼の前房を通して前進させること、カニューレを使用して単一のアクセスポイントにてシュレム管に進入すること、及びシュレム管及び周辺組織の構造を分断して、眼圧を低減するのに十分な体積の粘弾性流体を、内腔を備えカニューレ内で摺動可能かつカニューレから延出可能な細長部材を通して送達することを含む。眼の状態を治療するのに有用であり得る他の方法は、流体貯蔵部を備える単独の操作者が制御するハンドルから延出可能な細長部材を使用してシュレム管に進入するステップと、流体貯蔵部内の圧力を増大させることによって、ある体積の粘弾性流体を流体貯蔵部から細長部材を通して送達するステップと、を含み、この送達された粘弾性流体の体積は、シュレム管及び周辺組織の構造を分断して眼圧を低減するのに十分なものである。分断体積は、約2μl〜約16μlであり得る。1つの変形では、分断体積は、約4μlの粘弾性流体である。前述のように、いくつかの例では、分断体積は、約20μl〜約50μl程度の範囲であってもよい。流体送達に基づく方法は、上でより詳細に説明する。
流体を使用せず、分断器具のみを用いる場合、細長部材または器具の外径は、分断のレベルを変化させるために流体体積を変化させ得る方法と類似して、組織の分断に対して様々にサイズ決定され得る。例えば、外形が約50〜約100ミクロンの範囲である細長部材または器具を、カナルを通して前進させて、カナルをわずかに拡張し、円周方向の細管流を閉塞している中隔を破壊または除去し得る。外径が約100〜200ミクロンの範囲である細長部材または器具を用いて前述のことを行ってもよく、また小柱網及び近傍細管組織の引張を開始してもよい。外径が約200〜約300ミクロンの範囲である細長部材または器具は、上記のことを行うことが可能であり得るが、また小柱網及び近傍細管組織中に微小な裂け目を創出し得、コレクターチャネルを最大限に拡張し得る。外径が約300〜約500ミクロンの範囲である細長部材または器具は、組織を最大限に分断し得、小柱網及び近傍細管組織全体に沿って裂け目または穿孔を創出し得る。加えて、細長部材または器具のカナルを通した前進が長いほど、手順の有効性が高くなる。例えば、細長部材または器具は、最大の有効性及び最大の眼圧低減のために、カニューレの先端から出てカナルへと、カナルの30度の弧の周囲を前進し(例えば、カニューレから約3〜4mm前進し)、カナルの60度の弧の周囲を前進し(例えば、カニューレから約6〜8mm前進し)、カナルの90度の弧の周囲を前進し(例えば、カニューレから約10mm前進し)、カナルの120の弧の周囲を前進し(例えば、カニューレから約15mm前進し)、カナルの180度の弧の周囲を前進し(例えば、カニューレから約20mm前進し)、またはカナルの全360度の周囲を前進し(例えば、カニューレから約36〜40mm前進し)てもよい。いくつかの変形では、細長部材は、不均一な外径を有し得る。例えば、細長部材は、外径が遠位端から近位端へと増大するように、テーパ状の外径を有してもよい。
いくつかの変形では、本明細書に開示の方法は、細長部材(または器具)を、シュレム管の5度の弧〜360度の弧の周囲で前進させることを含み得る。いくつかの変形では、本方法は、細長部材(または器具)を、シュレム管の360度の弧の周囲、シュレム管の270度の弧の周囲、シュレム管の120度の弧の周囲、シュレム管の180度の弧の周囲、またはシュレム管の90度の弧の周囲で前進させることを含み得る。また更なる変形では、細長部材(または器具)の前進は、シュレム管の0〜5度の弧の周囲、シュレム管の30度の弧の周囲、またはシュレム管の60度の弧の周囲であってもよい。前進は、シュレム管における単一のアクセスポイントから、またはカナルにおける複数のアクセスポイントから生じ得る。分断力を提供するときには、細長部材を、時計方向と反時計方向との両方に、カナル中の単一のアクセスポイントから、シュレム管の180度の弧の周囲で前進させることが有益であり得る。
治療する状態の種類及び重症度などの因子に応じて、分断力は、小柱網を部分的にまたは完全に破壊及び/または除去するように生成してもよく、器具構成を変化させることによって調整してもよい。いくつかの方法では、小柱網は、摺動可能な細長部材の前進中に分断され得る。また、遠位先端がシュレム管に沿って誘導され前進するときに網を捕捉する1つ以上の切り欠き、返し、またはバルーンを用いた、先端に近位である細長部材の胴体セグメントのカスタマイズを使用することによって、前進の際に小柱網を分断する、部分的に裂く、完全に裂く、及び/または除去することができる。加えて、網を切断するように特別に設計された縁部を持つインプラントを使用し得る。
更に他の方法では、小柱網は、摺動可能な細長部材の格納中に分断され得る。組織を分断するためのまた他の方法は、カナルを通した前進が完了した後で格納の際に網を捕捉するかまたは掴むように、本システム(例えば、細長部材、任意のカテーテルまたはワイヤ、プローブ先端など)をカスタマイズすることを含み得る。これは、カテーテルの内腔を通して前進し、その後、格納の際に網を引っ掛けて、その長さに沿って網を裂くか、または網をまとめて除去する、屈曲した先端、フック、切り欠き、または返しを端部に持つワイヤを使用するか、あるいは先端(及び/または胴体)が、網を裂くことなくシュレム管を前進し得るが、格納の際に網を引っ掛け、網を裂き、かつ/または網を完全に除去するように、フック、切り欠き、または返しとなっている、金属線若しくはポリマーワイヤまたは縫合糸(カテーテルなし)のみによって、行ってもよい。あるいは、図18Cに示すように、細長部材(1806)に、分断器具、例えば、カニューレ(1800)へと格納される間に小柱網を切断するかまたは裂くことができる、縁の鋭い要素(1808)を提供してもよく、これを固定して保持する。例示的な縁が鋭い要素は、カニューレから延在して小柱網を裂く、切断する、または除去することができる、フック、ワイヤ、または任意の他の好適な形状記憶構成要素であり得る。
組織を分断するための別の方法は、特大の細長部材(例えば、外径が300〜500ミクロンのもの)を使用して送達の際に網を裂くこと、あるいは細長部材を、それがシュレム管に完全に前進した後で膨張または拡大させて、網を引張する、分断する、断裂させる、または完全に裂くことを含み得る。例えば、先端の外径が200〜250ミクロンであるが、シュレム管の3時間後に(即ち、およそカテーテル/細長部材の5または10mmマークにて)、最大約300、最大約400、または最大約500ミクロン、外側に広がり始めるシャフトを有する、カテーテル/細長部材、プローブ、またはワイヤ(内腔を持つまたは持たない)を使用し、その結果、先端がシュレム管内を楽に前進するときに、拡大したシャフトが後方に付き従い、それが前進するときに小柱網を断裂させる。
別の方法では、小柱網の切断、破壊、除去などは、細長部材をカナルに残しながらカニューレを眼から除去することで網を裂き通すことによって達成してもよい。図18Aを参照すると、カニューレ(1800)を前房(1802)及びシュレム管(1804)に挿入してもよく、器具(例えば、摺動可能な細長部材(1806))をカナル(1804)内で前進させてもよい。図18Bに示すように、カニューレ(1800)は、細長部材(1806)を格納することなく前房(1802)から除去し得る。この動作自体が小柱網を裂いてもよい。カニューレ(1800)が前房(1802)から除去されるとき、細長部材(1806)は、カニューレ(1800)がシュレム管(1804)に挿入された地点から小柱網を裂き始めてもよく、小柱網の周囲を細長部材の遠位端に向けて裂き続けてもよい。
本明細書に記載の方法の変形を図29A〜29Dに例証し、これは、図23A〜23Fに関して記載したものなどの送達システムを使用して実行し得る。図29Aは、本方法を例証するフローチャートを示す。本方法は、単一の透明角膜切開を使用して小柱流出システムにアクセスするために使用してもよく、最大360度の経管トラベクロトミーを可能にし得る。本方法は、片手による使い捨て手動機器を使用して前進し格納され得る可撓性細長部材を使用し得る。まず、デバイスをパッケージから取り出し得る。その後、ロックを送達システムから除去する。カニューレを、既存の角膜または強膜切開部を通して前房に前進させ得る。切開部が少なくとも約1mm幅であることが望ましくあり得る。カニューレの遠位先端を使用して、小柱網を穿刺しシュレム管に進入し得る。カニューレは、可撓性細長部材をシュレム管に前進させる間、隅角に対して固定して保持し得る。車輪のうちの1つ以上の露出部分を、可撓性細長部材がシュレム管の周囲を最大約180度(約20mmの円周方向のカナル移動)で前進するように近位に回転させ得る。この時点で、可撓性細長部材は完全に延出してもよく、車輪はそれ以上回転できなくてもよい。この手順中、直接顕微鏡またはゴニオスコープによるカニューレ先端の可視化を維持してもよく、前房は、粘弾性物質または連続的平衡塩類溶液注入によって維持し得る。
可撓性細長部材が前進すると、可撓性細長部材を格納することなく、切開部を通してカニューレを眼から除去し得る。これにより、可撓性細長部材が小柱網を切断しきってもよい。いくつかの例では、カニューレの遠位先端を切断される小柱網に向けて付勢することが望ましい場合があり、これは、いくつかの例では、カニューレの除去中に可撓性細長部材がカナルから滑脱するのを防止することを助け得る。小柱網(2904)を裂くための可撓性細長部材(2902)の格納なしのカニューレ(2900)の除去を、図29B〜29Dに例証する。そこで見ることができるように、細長部材(2902)は、カニューレ(2900)の除去からの力を、小柱網を裂く力に変換する。カニューレ(2900)の除去は、小柱網を裂く「ジッパーを外す」効果をもたらす。つまり、小柱網は、細長部材(2902)の胴体によってその近位端から遠位端へと裂かれる。まず、細長部材(2902)の胴体の近位端からの小柱網に対する力により、小柱網は、カニューレ(2900)の挿入地点付近で裂ける。カニューレ(2900)が目から引き抜かれる続けるにつれて、図29C及び29Dに示すように、細長部材(2902)の胴体は、小柱網を細長部材の遠位先端に向けて裂き通し続ける。この方法により、小柱網は、第1の場所(延出した細長部材の近位端、カニューレの挿入地点付近)から第2の場所(延出した細長部材の遠位端)へと漸進的に裂かれ、これは、第1の場所から第2の場所への距離に沿って同時に切断されるかまたは裂かれるのとは対照的であることに留意されたい。更に、この方法では、小柱網の各部分は、細長部材の単一の特徴部(例えば、前進または格納の際の細長部材の遠位端)によって裂かれるのではなく、小柱網の各部分は、細長部材が前進した後で、それに隣接する細長部材の部分によって裂かれることに留意されたい。
送達システムを眼から完全に除去した後、可撓性細長部材を、車輪のうちの1つ以上を遠位に回転させることによってカニューレに戻して格納し得る。可撓性細長部材を完全に格納したら、送達システムを、カニューレ先端が180度回転して反対方向を向くように反転させてもよい。次に、カニューレ先端を、角膜または強膜切開部を通して前房に前進させてもよく、遠位先端をシュレム管への同じ進入口の中に前進させてもよい。その後、上記の方法をシュレム管の第2の半分に対して繰り返して、小柱網を切断し得る。いくつかの例では、粘弾性物質を使用して、前房に戻るあらゆる血液の逆流をタンポナーデしてもよい。
手順終了時に、前房を、角膜創を通して潅注してもよい(例えば、平衡塩類溶液によって)(手動または自動で)。平衡塩類溶液または粘弾性物質を使用して、生理的圧力を達成するために必要に応じて前房を再形成し、コレクターチャネルから前房に戻るあらゆる血液の逆流を更にタンポナーデしてもよい。必要であれば、縫合糸を使用して角膜または強膜切開を封止してもよい。術後、抗生物質若しくは殺菌剤、散瞳薬、または縮瞳薬を適切に使用してもよい。例えば、縮瞳点眼薬を数週間または数カ月使用して、癒着形成及び隅角閉塞の防止を助けてもよい。
また更なる方法では、組織分断は、シュレム管全体を通した縫合糸のアブインテルノ送達によって達成してもよく、これは、次に、カナルを引張し、小柱網を分断し、かつ/または網を裂き通すのに十分に引っ張られる(「アブインテルノ縫合トラベクロトミー」)。ここでは、カニューレを眼から引き抜いているときに遠位縫合糸端を内向きに引くことで、小柱網の全360度またはセグメントを断絶させるため、または縫合糸の端部を共に結んで、網に、それを裂く必要なく張力を提供するために、把持要素を含む器具を用いてもよい。
アブエクステルノ手法
眼内デバイスを埋め込むかまたは流体組成物を送達するためのアブエクステルノ手法は、追加のステップまたはわずかに異なるステップを含んでもよい。例えば、組織弁の創出、縫合などが、アブエクステルノ法の一部であり得る。概して、眼内デバイスを埋め込むためのアブエクステルノ法は、以下のステップを含み得る。まず、顕微鏡法による可視化の下で、結膜を切開し、強膜弁を創出し、組織を解離させて、シュレム管への口を特定する。前房に個別に生理食塩水を注入してもよく、あるいはその中に粘弾性組成物を配置して、前房隅角が潰れるのを防止してもよい。この操作は、独立した手順として行ってもよく、あるいは白内障手術と組み合わせて一度に行ってもよい。これはまた、白内障手術部分の前、またはその後に行ってもよい。
本明細書に記載の送達システムを使用して、カニューレをシュレム管に前進させ、直接顕微鏡法による可視化の下で、またはゴニオスコープまたはゴニオプリズムを通して、位置決め要素を使用して、眼内デバイスを前進させてもよい。眼内デバイスを所望の量で前進させる場合、外科医は、係合機構を起動することで眼内デバイスを位置決め要素から解放し、送達システムを眼及び術野から除去してもよい。強膜創は自己封止性であってもよく、あるいは、例えば、縫合糸または組織接着剤を使用してそれを閉じてもよい。眼内デバイスの再配置が必要とされるかまたは所望される場合、外科医は、送達システムの位置決め要素を使用して、眼内デバイスを格納及び/または前進させ得る。
流体組成物の送達については、アブエクステルノ法は、アブインテルノ送達と同様である。しかしながら、位置決め要素を使用する代わりに、送達システムは、流体組成物をシュレム管に注入するために摺動可能な細長部材を用いる。まず、顕微鏡法による可視化の下で、結膜を切開し、強膜弁を創出し、組織を解離させて、シュレム管への口を特定する。前房に個別に生理食塩水を注入してもよく、あるいはその中に粘弾性組成物を配置して、前房隅角が潰れるのを防止してもよい。この操作は、独立した手順として行ってもよく、あるいは白内障手術と組み合わせて一度に行ってもよい。これはまた、白内障手術部分の前、またはその後に行ってもよい。
本明細書に記載の送達システムを使用して、カニューレをシュレム管に前進させ、カニューレの内腔内で同軸上に配設された細長部材を、ゴニオスコープによる可視化の下でカナルに前進させ得る。細長部材をカナル内に位置付けたら、流体組成物、例えば、粘弾性流体を、細長部材を通して継続的にまたは断続的に送達し得る。流体組成物は、細長部材の内腔を、その遠位端を通して(例えば、遠位先端を通して)、またはそのシャフトに沿って提供される開口部若しくは開窓を通して、またはその両方の組み合わせで出る。開口部または開窓は、細長部材の軸方向の長さに沿って、任意の好適な様式で、例えば、その長さに沿って対称または非対称で、離間され得る。所望の場合、薬物、空気、またはガスなどの他の物質を同じ様式で送達してもよい。細長部材は、格納または反復した前進及び格納によって位置付け直してもよい。その後、送達システムを眼から除去し得る。
本眼内送達システムの構成は、多くの異なる点で有利であり得る。1つの態様では、本送達システムは、眼内デバイスをシュレム管に埋め込むアブインテルノ法または流体組成物若しくは器具をカナルに送達するアブインテルノ法において使用することができる。別の態様では、送達システムのカニューレは、シュレム管への容易かつ非外傷性のアクセスを可能にするように構成される。更に、本送達システムは、外科医に、全てを単一の機器で行える、より自由な使用を付与する様式で構成される。例えば、本システムのハンドルは、いずれの側が上でも(即ち、ハンドルを反転させるかまたはカニューレを回転させることによって)使用できるように構成される。このため、本送達システムは、いずれの手でもいずれの眼にも時計方向または反時計方向で使用するように設計される。例えば、本送達システムは、いずれの眼にも、右手若しくは左手で使用して反時計回りの様式でシュレム管にアクセスするか、または右左手で使用して反時計回りの様式でカナルにアクセスすることができる。このため、眼の4つ全ての四半部からのカナルへのアクセスを達成し得る。また更なる点において、本送達システムは、小柱細管流出路を通した流れを改善するために、シュレム管及び周辺組織を分断するのに十分な力を提供するように構成されている、片手による単独の操作者が制御するデバイスを備える。本システムは、概して、1人でまたは片手で細長部材または器具を前進させることができるか、または流体を送達できるように、アクセスカニューレ、送達細長部材、細長部材前進機構、分断器具、及び粘弾性流体を組み合わせて、単一のデバイスとする。
カニューレの製造方法
上述のように、本明細書に記載のカニューレは、小柱網または他の組織を穿刺することと、細長部材を切断、破損、または損傷することなく、細長部材を可逆的に送達することとの両方を行うように構成され得る。この2つの目的を達成するために、カニューレは、先が尖った部分と鈍った部分または先が丸い部分との両方を持つ遠位端を備えるように製造してもよい。概して、本明細書に記載のカニューレの製造方法は、カニューレの遠位先端にてベベルを創出すること、遠位先端の遠位端の先鋭化によって尖った穿刺先端を創出すること、カニューレの遠位先端の一部を平滑化すること、及びカニューレの一部をカニューレの長手方向の軸に沿って屈曲させることを含み得る。いくつかの変形では、本方法はまた、適切な作業長さのカニューレの入手、カニューレの外面の粗化、遠位先端の一部への保護カバーの適用、カニューレの一部の研磨、及びカニューレの清掃を含み得る。
図19は、本明細書に記載のデバイス、システム、及び方法と共に使用するためのカニューレの例示的な製造方法を示す。そこで示すように、カニューレの製造方法(1900)は、適切な作業長さのカニューレの入手(1902)、カニューレの外面の粗化(1904)、カニューレの遠位先端でのベベルの創出(1906)、カニューレの遠位先端の先鋭化(1908)、カニューレの遠位先端への保護カバーの適用(1910)、カニューレの遠位先端の一部の平滑化(1912)、カニューレの屈曲(1914)、カニューレの研磨(1916)、及びカニューレの洗浄(1918)を含んでもよい。図19における方法ステップは特定の順序で示されているが、以下でより詳細に考察するように、ステップの多くは、異なる順序で完了してもよく、ステップのいくつかは、全てまとめて任意選択であってもよいことを理解されたい。
本プロセスを始めるためには、好適な作業長さのカニューレを入手し得る(1902)。カニューレは、所望の作業長さに事前に切断された状態で購入してもよく、あるいはカニューレを創出するために使用される原材料、例えば、ステンレス鋼製の皮下管をまとめ買いし、カニューレ製造プロセス中に適切な長さに切断してもよい。カニューレは、入手の際に、及び製造プロセス全体に渡って、破損または他の目に見える欠陥について検査し得る。いくつかの変形では、作業長さ(即ち、製造中のカニューレの取り扱いに好適な長さ)は、カニューレの所望の最終長さに対応し得る。他の変形では、例えば製造の簡易性のために、作業長さは、所望の長さより長くてもよく、カニューレは、プロセスの最終ステップを含む製造プロセス中のいずれかの時点で所望の最終長さに切断または短縮してもよい(例えば、カニューレの近位端を切断することによって)。例示的な作業長さとしては、約50mm〜約70mm、約40mm〜約90mm、及びより具体的には約60mmが挙げられるが、これらに限定されない。
カニューレの近位端は、製造プロセス中いつでも、切断、処理、及び/または仕上げをし得る。いくつかの例では、カニューレの近位端は、直角切断(即ち、カニューレの長手方向軸に実質的に垂直に切断)してもよい。近位端の縁部は、任意の好適な方法を使用して、例えば、媒体噴出によって、平滑化または丸くし得る。このカニューレの近位端の平滑化は、細長部材を切断すること、裂くこと、または損傷することを防止し得る。例えば、近位端の平滑化は、いずれの先が尖った縁部または波状の表面も近位端から除去し、切断プロセスからの内腔の近位端に残留しているいずれの破片または堆積物も除去し得る。カニューレの近位端を平滑化の後で検査して、先が尖ったまたは鋸歯状の縁部が残っている場合には、近位端を更に平滑化してもよい。
いくつかの変形では、カニューレの外面は、任意選択で粗化(1904)するかまたはテクスチャ化してもよく、これは、カニューレのハンドルへの接着を支援し得る。例えば、いくつかの例では、カニューレの外面の近位部分または中央部分を摩耗的に噴出してテクスチャ化または粗化表面を創出し、これに接着剤を適用してもよい。カニューレの外面を摩耗的に噴出することにより、摩耗的に噴出した部分の表面積が増大し、これが、ハンドルとカニューレとの間のより良好な接着を提供し得る。
上記のように、カニューレの遠位端にベベルを付けてもよい。ベベルは、カニューレの遠位端を、カニューレの長手方向軸に対して角度を付けて切断するかまたは研ぐことによって創出し得る(1906)。より具体的には、ベベルは、カニューレの内腔を横断し、それに対して直角であるように設置し得る。図3は、ベベル(312)を遠位先端(306)に備えるカニューレ(300)の側面図を示す。ベベル(312)は、約5度〜約85度の角度(A)を備えてもよい。上述のように、角度(A)は、他の周辺組織を損傷することなく適切に小柱網を突き刺し、シュレム管にアクセスするために、及び/または細長部材の前進及び格納を十分に可視化するために重要であり得る。いくつかの変形では、角度(A)は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85度であり得る。いくつかの変形では、角度(A)は、約23度〜約27度であってもよい。これらの変形のうちのいくつかでは、角度(A)は、約25度であってもよい。
図20は、ベベルを創出した後のカニューレ(2000)の遠位先端(2002)の斜視図を示す。示すように、ベベルを付けた遠位先端(2002)は、今や近位端(2008)及び遠位端(2010)を備える。加えて、ベベルを遠位先端(2002)に創出することで、遠位先端(2002)にある開口部(2012)が伸長し、円形というよりは楕円形状の開口部を創出する。このため、遠位先端(2002)にベベルを付けることは、楕円形開口部の上部が楕円形開口部の底部よりもカニューレの近位部分に接近するように傾斜している、楕円形状の内腔開口部を生み得る。内周縁及び外周縁(2004、2006)も図20に示す。
ベベルの設置は、先が尖った縁部、及びいくつかの例では先が尖った遠位先端を創出し得るが、カニューレの遠位先端の一部を更に尖らせて、より高い精度でのより容易なシュレム管へのアクセスを達成することが望ましくあり得る。したがって、いくつかの例では、ベベルを創出した後、遠位先端を更に尖らせて(1908)、小柱網の穿刺を更に支援し得る尖った穿刺先端を創出してもよい。遠位先端は、任意の好適な手法を使用して、例えば、外面の一部及び/またはカニューレの遠位先端の遠位端の外周縁の一部を研ぐか、あるいは除去することによって、尖らせてもよい。細長部材を損傷し得る望ましくない尖った縁部を最低限にするため、遠位先端での壁厚を可能な限り厚く維持し、壁厚が均一であることを確実にすることが望ましくあり得る。カニューレの材料または他の先鋭化による副生物が内腔内のカニューレの内面に形成、蓄積、接着、あるいは堆積するのを防止することが有益であり得る。かかる材料は、破片となって、送達システムの使用中に細長部材を切断または損傷し得る隆起または尖った表面または縁部を創出し得る。
図21A及び21Bは、それぞれ、ベベル(2102)及び尖った穿刺先端(2114)の両方を備えるカニューレの遠位先端(2100)の変形の斜視図及び正面図を示す。遠位先端(2100)は、近位端(2108)、遠位端(2110)、内周縁及び外周縁(2104、2106)、ならびに内腔開口部(2112)も備える。尖った穿刺先端(2114)は、遠位先端(2100)の遠位端(2110)を研ぐことによって創出され、それにより、合流して尖った先を形成する2つの傾斜面(2116)を創出し得る。傾斜面(2116)は、尖った穿刺先端(2114)をもたらす任意の好適な角度で形成し得る。例えば、いくつかの例では、傾斜面(2116)は、約20、25、30、35、40、45、若しくは50度、約25〜約50度、または約37.5〜約42.5度の遠位先端(2100)の長手方向軸に対する角度(B)を有し得る。したがって、いくつかの変形では、2つの傾斜面(2116)の間の角度は、約50〜約100度であってもよい。遠位先端(2100)は2つの傾斜面で示すが、単一の傾斜面を持つ遠位先端も使用し得ることを理解されたい。
図19に戻ると、カニューレを製造するための方法(1900)は、カニューレの遠位先端(1912)の一部を平滑化することを更に含み得る。カニューレの遠位先端が尖っている変形では、図21A及び21Bに関して上で記載したように、本方法は、遠位先端の平滑化(1912)の前に、保護カバーを、遠位先端の尖った部分、例えば、尖った穿刺先端(2114)の遠位端及び/または傾斜面(2116)上に適用すること(1910)を更に含み得る。ベベルを付けた後で遠位先端が尖っていない変形でも、保護カバーを遠位先端の遠位端上に適用することが依然として望ましくあり得る(上で図20に関して記載した通り)。保護カバーの適用は、平滑化中に尖った縁部(複数可)を維持するのに役立ち得る。
上述のように、カニューレの遠位先端は、組織の穿刺と、細長部材の送達との両方を行うように構成され得る。細長部材自体は、カニューレによる穿刺、切断、断絶、あるいは損傷の影響を受けやすくてもよい。細長部材を保護するために、細長部材が接触し得るカニューレの遠位先端の表面及び/または縁部を平滑化または面取りすることが重要であり得る。例えば、再度図21A及び21Bを参照すると、いくつかの変形では、内周縁及び/若しくは外周縁(2104、2106)の一部、縁部間の表面(2118)、ならびに/または開口部(2112)に隣接するカニューレの内面及び/若しくは外面を平滑化してもよい。これにより、これらの縁部及び表面を均一化及び/または鈍化し得る。例えば、遠位先端(2100)の近位端または遠位端(2108、2110)にて内周縁(2104)の一部を平滑化すること、あるいは内周縁全体を平滑化することが望ましくてもよい。いくつかの例では、外周縁(2106)の一部も、遠位先端の尖った縁部(例えば、尖った穿刺先端)を維持しながら平滑化し得る。例えば、外周縁(2106)の一部を遠位先端(2100)の近位端(2108)にて平滑化してもよく、あるいは外周縁(2106)全体を傾斜面(2116)まで平滑化してもよい。加えて、縁部(2118)間の表面、及び/あるいは遠位先端(2100)の近位端(2108)若しくは遠位端(2110)にて開口部(2112)に隣接するかまたは開口部(2112)の円周方向の周囲にあるカニューレの内面若しくは外面を平滑化または面取りすることが望ましくあり得る。
カニューレの遠位先端(2100)の一部に、任意の好適な機構を使用して、面取り、平滑化、均一化、丸め、鈍化、または同様のことを行ってもよい。例えば、カニューレの遠位先端の一部の平滑化は、機械的及び/若しくは手動の面取り、摩耗的若しくはソーダ媒体による噴出、やすり掛け、研ぐこと、ワイヤブラシ仕上げ、レーザーアブレーション、研磨(例えば、電解研磨)、これらの組み合わせ、または同様のことを含んでもよい。
図19に戻ると、カニューレの製造方法(1900)は、カニューレ(1914)の遠位部分を屈曲させて、上記の遠位湾曲部分を形成することを更に含み得る。カテーテルを屈曲させることで、遠位先端が、小柱網を非外傷的に突き刺し得るように適当に配向され得る。戻って図3を参照すると、いくつかの変形では、カニューレの遠位部分は、尖った穿刺先端が湾曲したカニューレの外半径(322)に沿って位置するように屈曲させてもよい。いくつかの例では、カニューレの遠位部分は、カニューレの近位部分の外面に対して、約100〜約125度、約115〜約125度、または約118度の角度に屈曲させ得る。
カニューレの遠位部分は、任意の好適な機械的または手動の屈曲プロセスを使用して屈曲させ得る。屈曲プロセス中にカニューレの断面サイズ及び形状を改変しない屈曲プロセスを選択することが重要であり得る。加えて、カニューレは、製造プロセス中のいずれの時点で屈曲させてもよく、図19中の方法(1900)に示すように、屈曲を必ずしもカニューレの遠位先端の平滑化後に行う必要はないことを理解されたい。
カニューレの製造方法(1900)は、任意選択で、カニューレの全てまたは一部、例えば、カニューレの遠位先端を研磨すること(1916)を含んでもよい。カニューレを研磨する変形では、カニューレを研磨すること(1916)により、カニューレの表面の残った破片、マーキング、刻み目、溝、または同様のものが除去され得る。これらのマーキングは、製造プロセスのいずれかの部分からの遺物であり得、特に、カニューレの遠位先端にてベベルを創出すること(1906)、カニューレの遠位先端を尖らせること(1908)、及び/またはカニューレの遠位先端の一部を平滑化すること(1912)からのものであり得る。カニューレを研磨すること(1916)は、カニューレの遠位先端の一部を平滑化すること(1912)が、概して破片またはマーキングを後に残すプロセス、例えば、レーザーアブレーションを含む変形において特に有用であり得る。カニューレを研磨すること(1916)は、任意の好適な方法、例えば、電解研磨、粒径が増大していく媒体を使用する段階的媒体噴出、または同様の物を使用して完了し得る。
所望の場合、本明細書に記載の送達システム中に設置する前にカニューレの清掃(1918)を行ってもよい。例えば、いくつかの変形では、カニューレを不動態化して、酸化鉄または他の汚染物質を除去してもよい。いくつかの例では、カニューレは、例えば酸化窒素などの酸を使用して不動態化し得る。他の変形では、カニューレは、洗浄剤、超音波浴、または任意の好適な清掃プロセスを使用して清掃し得る。
カニューレ及び/または組み立てた送達システムは、例えば、ガンマ線照射を使用して、滅菌してもよい。ガンマ線照射の線量範囲は、例えば、25〜40kGyであり得る。他の照射エネルギー、例えば、Eビーム照射を滅菌に使用してもよい。代替的な滅菌方法としては、ガス滅菌、例えば、エチレンオキシドガス滅菌が挙げられる。本システムの全てまたは一部が再利用可能である変形では、本明細書に記載のように、これらの部分を滅菌し再利用し得る。例えば、ハンドルが再利用可能であり、カニューレ及び細長部材が使い捨てである変形では、使用後、使用済みのカニューレ及び細長部材を除去し、ハンドルを滅菌し、新しいカニューレ及び細長部材を滅菌したハンドルに取り付け得る。
発明のデバイス、システム、キット、及び方法を、例証目的である程度詳細に記載したが、かかる例証は、理解を明確にする目的のみのためである。本明細書の教示を踏まえて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、ある特定の変更及び改変をそれに行い得ることが、当業者には容易に明らかとなる。