図1に、CD−RAP前駆体タンパク質からネイティブCD−RAPを調製する一般的な方法の概略図を示す。
図2Aに、切断前のCD−RAP前駆体タンパク質のクロマトグラム(Zorbax Column、水からアセトニトリルへの移動相勾配、0.8ml/分、60℃のオーブン、波長214nm)を示し、図2Bに、切断後のCD−RAPのクロマトグラムを示す。
図3に、プレ配列の鎖長が様々であるCD−RAP構築物の発酵収量データを示す。
図4に、プレ配列の鎖長に対してプロットしたCD−RAPの発酵収量データ[g/L]を示す。
図5に、様々なトリプシン濃度(U/リットルで表し、括弧内にプレCD−RAP 1mgのあたりの単位として表す)で切断した後のCD−RAPの経時的増加を示す。
図6に、様々なpHでのトリプシンによる切断 − CD−RAPの増加 − を示す。
図7に、様々な温度でのトリプシンによる切断 − CD−RAPの増加 − を示す。
図8に、DSFによる2つのバッファー系における異なるrhCD−RAPバッチの融解点測定を示す;アッセイ濃度0.5mg/mL。
図9に、1回目に調製した製剤のpHおよび重量オスモル濃度を示す。
図10に、1回目に調製した製剤の、T=0およびストレス後の外観を示す。
図11に、CD−RAPを用いて1回目で得られたRP−HPLCの結果を示す。
図12に、3回目の洗浄ステップの後および希HCl溶液によるpH調整後の製剤のpHを示す。
図13に、2回目に調製した製剤のpHおよび重量オスモル濃度を示す。
図14に、2回目に調製した製剤の、T=0およびストレス後の外観を示す。
図15に、2回目で得られたRP−HPLCの結果を示す。
図16に、CD−RAP医薬製剤バッチF531−03−003p064bの安定性の結果を示す。
図17に、プラセボバッチF531−03−003p063の安定性の結果を示す。
図18に、プロセス構成を示す。
図19に、脂質の溶解度の結果を示す。
図20に、有機相中の脂質濃度が粒子径に及ぼす影響を示す。
図21に、スタティックミキサーの内径がリポソームのサイズに及ぼす影響を示す。
図22に、水性相の流量がリポソームのサイズに及ぼす影響を示す。
図23に、1つのバッチにおける試験パラメーターの組合せを示す。
図24に、バッファーと原薬とを混合した後のリポソームの粒子径を示す。
図25Aに、凍結乾燥プログラム試験1を示し、図25Bに、凍結乾燥プログラム試験2を示す。
図26に、試験した製剤の概要および得られたEE%を示す。
図27に、脂質含分がEE%に及ぼす影響を示す:図27A:段階的な再構成;図27B:1ステップでの再構成。
図28Aに、凍結乾燥方法がEE%に及ぼす影響を示し、図27Bに、再構成方法がEE%に及ぼす影響を示す。
図29に、試験した製剤の概要および得られたEE%を示す。
図30Aに、製剤F531−03−008P056のサブバッチについて得られたEE%の結果を示し、図30Bに、製剤F531−03−008P064のサブバッチについて得られたEE%の結果を示す。
図31に、リポソームCD−RAP Pkバッチについての安定性の結果を示す。
配列表
配列番号1 CD−RAPのアミノ酸配列(107のアミノ酸):GPMPKLADRKLCADQECSHPISMAVALQDYMAPDCRFLTIHRGQVVYVFSKLKGRGRLFWGGSVQGDYYGDLAARLGYFPSSIVREDQTLKPGKVDVKTDKWDFYCQ
配列番号2 プレ配列のアミノ酸配列:MATTST
配列番号3 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLT
配列番号4 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTG
配列番号5 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTG
配列番号6 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGN
配列番号7 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTGN
配列番号8 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNS
配列番号9 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTGNS
配列番号10 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNSA
配列番号11 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTGNSA
配列番号12 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTR
配列番号13 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTR
配列番号14 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNSAR
配列番号15 プレ配列のアミノ酸配列:MATTLTGNSAR
配列番号16 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTLTTHWHWHGNSAR
配列番号17 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR
配列番号18 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR
配列番号19 プレ配列のアミノ酸配列:MATTSTGNSARFVNQHLHHHHHHHHGGGENQQQR
配列番号20 前駆体タンパク質のアミノ酸配列:MATTSTGNSARFVNQHLHHHHHHHHGGGENQQQRGPMPKLADRKLCADQECSHPISMAVALQDYMAPDCRFLTIHRGQVVYVFSKLKGRGRLFWGGSVQGDYYGDLAARLGYFPSSIVREDQTLKPGKVDVKTDKWDFYCQ
配列番号21 CD−RAPのアミノ酸配列(105のアミノ酸):MPKLADRKLCADQECSHPISMAVALQDYMAPDCRFLTIHRGQVVYVFSKLKGRGRLFWGGSVQGDYYGDLAARLGYFPSSIVREDQTLKPGKVDVKTDKWDFYCQ。
発明の詳細な説明
定義
本発明につき以下に詳説する前に、本発明は、本明細書に記載した特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは様々であってよいものと理解されたい。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態について説明することのみを目的としたものであって、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲によってのみ限定されるものと理解されたい。特に指定がない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語はいずれも、当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
本明細書の文面全体を通して、若干の文献が引用されている。本明細書に引用された各文献(特許明細書、特許出願明細書、科学刊行物、製造業者による仕様書、指示書などすべてを含む)については、前掲・後掲の如何を問わず、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する。本明細書に記載のいかなるものも、本発明には先行発明ゆえにかかる開示よりも先行する資格が与えられないことの自認と解釈されるべきではない。本明細書に引用される文献には、「援用される」ものとして特徴付けられるものがある。かかる援用された文献の定義または教示と、本明細書に列挙される定義または教示との間に矛盾が生じた場合には、本明細書の文面が優先される。
以下に、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されるが、これらの要素を任意の様式で任意の数で組合せて追加の実施形態を創作してもよいものと理解されるべきである。様々に記載された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素と組合せた実施形態をサポートしかつこれらを包含するものと理解されるべきである。さらに、文脈上特に指定がない限り、本出願の記載によって、本出願に記載されたすべての要素の任意の順列および組合せ物が開示されているものと考えられるべきである。
本明細書および付属の特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の解釈が必要でない限り、「含む(comprise)」なる単語および変化形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、記載された整数またはステップまたは整数群またはステップ群の包含を意味するが、他のいずれの整数またはステップまたは整数群またはステップ群も排除されないものと理解される。
本明細書および付属の特許請求の範囲で用いられる場合に、単数形「a」、「an」および「the」は、内容上別段の解釈の明示がない限り、複数の指示対象を包含する。
数値と関連して用いられる場合に、「約」なる用語は、示された数値よりも5%小さい下限を有しかつ示された数値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
本明細書で用いられる場合の「脂質」なる用語は、任意の脂溶性分子を表す。脂質類は、典型的には脂肪族炭化水素鎖からなり、水に難溶性であるが非極性有機溶媒には溶解する。脂質類は、生存細胞における必須の分子群であり、エネルギー貯蔵において細胞膜の構造成分として重要な役割を果たすとともに、シグナル伝達分子としての役割も果たす。脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、脂肪アシル類、脂肪アルコール類、ステロール脂質類、例えばコレステロール、グリセロ脂質類、例えばモノグリセリド類(モノアシルグリセロール)、ジグリセリド類(ジアシルグリセロール)またはトリグリセリド類(トリアシルグリセロール、TAG)、グリセロリン脂質類、サッカロ脂質類、スフィンゴ脂質類、スルホ脂質類、ポリケタイド類、プレノール脂質類が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「脂肪アシル類」なる用語は、マロニル−CoA(またはメチルマロニル−CoA)基によるアセチル−CoAプライマーの鎖伸長によって合成され、環式官能基を含むことができかつ/またはヘテロ原子で置換されている多様な分子群を意味する。脂肪アシル類の例としては、これらに限定されるものではないが、脂肪酸類およびコンジュゲート(FA01)、例えば直鎖脂肪酸類(FA0101)、分枝脂肪酸類(FA0102)、不飽和脂肪酸類(FA0103)、ヒドロペルオキシ脂肪酸類(FA0104)、ヒドロキシ脂肪酸類(FA0105)、オキソ脂肪酸類(FA0106)、エポキシ脂肪酸類(FA0107)、メトキシ脂肪酸類(FA0108)、ハロゲン化脂肪酸類(FA0109)、アミノ脂肪酸類(FA0110)、シアノ脂肪酸類(FA0111)、ニトロ脂肪酸類(FA0112)、チア脂肪酸類(FA0113)、炭素環式脂肪酸類(FA0114)、複素環式脂肪酸類(FA0115)、ミコール酸類(FA0116)およびジカルボン酸類(FA0117);オクタデカノイド類(FA02)、例えば12−オキソフィトジエン酸代謝産物(FA0201)、ジャスモン酸類(FA0202)および他のオクタデカノイド類(FA0200);エイコサノイド類(FA03)、例えばプロスタグランジン類(FA0301)、ロイコトリエン類(FA0302)、トロンボキサン類(FA0303)、リポキシン類(FA0304)、ヒドロキシ/ヒドロペルオキシエイコサトリエン酸類(FA0305)、ヒドロキシ/ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸類(FA0306)、ヒドロキシ/ヒドロペルオキシエイコサペンタエン酸類(FA0307)、エポキシエイコサトリエン酸類(FA0308)、ヘポキシリン類(FA0309)、レブグランジン類(FA0310)、イソプロスタン類(FA0311)、クラブロン類および誘導体(FA0312)、および他のエイコサノイド類(FA0300);ドコサノイド類(FA04);脂肪アルコール類(FA05);脂肪アルデヒド類(FA06)、脂肪エステル類(FA07)、例えばワックスモノエステル類(FA0701)、ワックスジエステル類(FA0702)、シアノエステル類(FA0703)、ラクトン類(FA0704)、脂肪アシルCoA類(FA0705)、脂肪アシルACP類(FA0706)、脂肪アシルカルニチン類(FA0707)および脂肪アシルアデニレート類(FA0708);脂肪アミド類(FA08)、例えば第1級アミド類(FA0801)、N−アシルアミン類(FA0802)、脂肪アシルホモセリンラクトン類(FA0803)およびN−アシルエタノールアミン類(エンドカンナビノイド類)(FA0804);脂肪ニトリル類(FA09);脂肪エーテル類(FA10);炭化水素類(FA11);含酸素炭化水素類(FA12);脂肪アシルグリコシド類(FA13);ならびに他の脂肪アシル類(FA00)が挙げられる。脂肪酸構造は、生体脂質の最も基本的な構造の1つであり、構造的に比較的複雑な脂質の構成単位として一般的に使用されている。「脂肪酸類」は、カルボン酸基を含む炭化水素鎖から構成され、極性の親水性頭部(例えばグリセロール、スフィンゴシン)と、水に不溶の非極性の疎水性尾部とが分子に付与されている。炭素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、すなわち2個の炭素原子の間に二重結合を含んでいなくてもよく、また1個または複数個含んでいてもよく、また4〜28個の炭素原子を有してよく、すなわち4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個または28個の炭素原子を有してよい。不飽和脂肪酸類中の二重結合は、シス幾何異性またはトランス幾何異性のいずれかとして存在し、これは分子の分子構造に影響を及ぼす。酸素、ハロゲン、窒素および/または硫黄を含むさらなる官能基が結合していてもよい。生存細胞では、脂肪酸合成と呼ばれるプロセスで酵素による脂肪酸合成によりアセチル−CoAプライマーをマロニル−CoAまたはメチルマロニル−CoA基で鎖伸長することによって脂肪酸類が合成される。飽和脂肪酸類の例としては、これらに限定されるものではないが、カプリル酸(CH3(CH2)6COOH;8:0)、カプリン酸(CH3(CH2)8COOH;10:0)、ラウリン酸(CH3(CH2)10COOH;12:0)、ミリスチン酸(CH3(CH2)12COOH;14:0)、パルミチン酸(CH3(CH2)14COOH;16:0)、ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH;18:0)、アラキン酸(CH3(CH2)18COOH;20:0)、ベヘン酸(CH3(CH2)20COOH;22:0)、リグノセリン酸(CH3(CH2)22COOH;24:0)およびセロチン酸(CH3(CH2)24COOH;26:0)が挙げられる。
不飽和脂肪酸類の例としては、これらに限定されるものではないが、ミリストレイン酸(CH3(CH2)3CH=CH(CH2)7COOH;14:1)、パルミトオレイン酸(CH3(CH2)5CH=CH(CH2)7COOH;16:1)、サピエン酸(CH3(CH2)8CH=CH(CH2)4COOH;16:1)、オレイン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH;18:1)、エライジン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH、18:1)、バクセン酸(CH3(CH2)5CH=CH(CH2)9COOH;18:1)、リノール酸(CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH;18:2)、リノエライジン酸(CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH;18:2)およびα−リノレン酸(CH3CH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH;18:3)が挙げられる。
「グリセロ脂質類」または「グリセリド」なる用語は、主に一、二および三置換グリセロールから構成されるエステル化グリセロールを意味し、最も代表的な群員は、グリセロールの脂肪酸トリエステル類(いわゆるトリグリセリド類)であり、ここで、グリセロールの3つのヒドロキシル基がそれぞれ、典型的には異なる脂肪酸によりエステル化されている。グリセロ脂質類は、主にエネルギー貯蔵体として機能し、したがって動物組織における貯蔵脂肪の大部分を構成する。グリセロ脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、モノラジルグリセロール類、ジラジルグリセロール類(GL02)、トリラジルグリセロール類(GL03)、例えばグリセリルトリステアレート(ステアリン);グリコシルモノラジルグリセロール(GL04)、グリコシルジラジルグリセロール類(GL05)および他のグリセロ脂質類(GL00)が挙げられる。
リン脂質類は、細胞膜の主成分ならびに細胞内および細胞間タンパク質の結合部位として働く細胞の脂質二重層の重要な成分である。リン脂質類は、グリセロール(グリセロリン脂質類)またはスフィンゴシン(スフィンゴ脂質類)と、このグリセロールまたはスフィンゴシンにエステル結合を介して結合した脂肪酸と、リン酸基と、単純な有機分子、例えばコリン、セリンまたはエタノールアミンとを含む。
グリセロホスフィノ脂質類は、アルコールとしてグリセロールを含み、このグリセロールのヒドロキシル基が2つの脂肪酸およびホスフィン(IUPAC名:ホスファン)によりエステル化されている。グリセロホスホノ脂質類は、アルコールとしてグリセロールを含み、このグリセロールのヒドロキシル基が2つの脂肪酸および亜リン酸によりエステル化されている。
真核細胞におけるグリセロリン脂質類の中には、例えばホスファチジルイノシトールおよびホスファチジン酸のように、膜由来のセカンドメッセンジャーの前駆体として機能するものや、直接的にこうしたセカンドメッセンジャーとして機能するものもある。さらに、こうしたグリセロリン脂質類は、代謝および細胞シグナル伝達に関与している。さらに、古細菌には、アルキル結合および1Z−アルケニル結合(プラスマローゲン)グリセロリン脂質類ならびにジアルキルエーテル多様体も存在する。グリセロリン脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、グリセロホスホコリン類(GP01)、例えばジアシルグリセロホスホコリン類(GP0101)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン類(GP0102)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホコリン類(GP0103)、ジアルキルグリセロホスホコリン類(GP0104)、モノアシルグリセロホスホコリン類(GP0105)、モノアルキルグリセロホスホコリン類(GP0106)、1Z−アルケニルグリセロホスホコリン類(GP0107)、1−アシル−2−アルキルグリセロホスホコリン類(GP0108)および1−アシル−2−(1Z−アルケニル)−グリセロホスホコリン類(GP0109);グリセロホスホエタノールアミン類(GP02)、例えばジアシルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0201)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0202)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0203)、ジアルキルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0204)、モノアシルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0205)、モノアルキルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0206)、1Z−アルケニルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0207)および1−アシル−2−アルキルグリセロホスホエタノールアミン類(GP0208);グリセロホスホセリン類(GP03)、例えばジアシルグリセロホスホセリン類(GP0301)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホセリン類(GP0302)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホセリン類(GP0303)、ジアルキルグリセロホスホセリン類(GP0304)、モノアシルグリセロホスホセリン類(GP0305)、モノアルキルグリセロホスホセリン類(GP0306)および1Z−アルケニルグリセロホスホセリン類(GP0307);グリセロホスホグリセロール類(GP04)、例えばジアシルグリセロホスホグリセロール類(GP0401)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホグリセロール類(GP0402)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホグリセロール類(GP0403)、ジアルキルグリセロホスホグリセロール類(GP0404)、モノアシルグリセロホスホグリセロール類(GP0405)、モノアルキルグリセロホスホグリセロール類(GP0406)、1Z−アルケニルグリセロホスホグリセロール類(GP0407)、ジアシルグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP0408)、ジアシルグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP0409)、モノアシルグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP0410)および1−アシル−2−アルキルグリセロホスホグリセロール類(GP0411);グリセロホスホグリセロホスファート類(GP05)、例えばジアシルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0501)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0502)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0503)、ジアルキルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0504)、モノアシルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0505)、モノアルキルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0506)および1Z−アルケニルグリセロホスホグリセロホスファート類(GP0507);グリセロホスホイノシトール類(GP06)、例えばジアシルグリセロホスホイノシトール類(GP0601)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホイノシトール類(GP0602)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホイノシトール類(GP0603)、ジアルキルグリセロホスホイノシトール類(GP0604)、モノアシルグリセロホスホイノシトール類(GP0605)、モノアルキルグリセロホスホイノシトール類(GP0606)および1Z−アルケニルグリセロホスホイノシトール類(GP0607);グリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP07)、例えばジアシルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0701)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0702)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0703)、ジアルキルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0704)、モノアシルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0705)、モノアルキルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0706)および1Z−アルケニルグリセロホスホイノシトールモノホスファート類(GP0707);
グリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP08)、例えばジアシルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0801)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0802)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0803)、モノアシルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0804)、モノアルキルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0805)および1Z−アルケニルグリセロホスホイノシトールビスホスファート類(GP0806);グリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP09)、例えばジアシルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0901)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0902)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0903)、モノアシルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0904)、モノアルキルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0905)および1Z−アルケニルグリセロホスホイノシトールトリスホスファート類(GP0906);グリセロホスファート類(GP10)、例えばジアシルグリセロホスファート類(GP1001)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスファート類(GP1002)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスファート類(GP1003)、ジアルキルグリセロホスファート類(GP1004)、モノアシルグリセロホスファート類(GP1005)、モノアルキルグリセロホスファート類(GP1006)および1Z−アルケニルグリセロホスファート類(GP1007);グリセロピロホスファート類(GP11)、例えばジアシルグリセロピロホスファート類(GP1101)およびモノアシルグリセロピロホスファート類(GP1102);グリセロホスホグリセロホスホグリセロール類(GP12)、例えばジアシルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1201)、ジアシルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1202)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1203)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1204)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1205)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1206)、モノアシルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1207)、モノアルキルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1208)、モノアルキルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1209)、1Z−アルケニルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1210)、1Z−アルケニルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1211)、ジアルキルグリセロホスホグリセロホスホジラジルグリセロール類(GP1212)およびジアルキルグリセロホスホグリセロホスホモノラジルグリセロール類(GP1213);CDPグリセロール類(GP13)、例えばCDPジアシルグリセロール類(GP1301)、CDP−1−アルキル−2−アシルグリセロール類(GP1302)、CDP−1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロール類(GP1303)、CDPジアルキルグリセロール類(GP1304)、CDPモノアシルグリセロール類(GP1305)、CDPモノアルキルグリセロール類(GP1306)およびCDP−1Z−アルケニルグリセロール類(GP1307);グリコシルグリセロリン脂質類(GP14)、例えばジアシルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1401)、1−アルキル−2−アシルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1402)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1403)、モノアシルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1404)、モノアルキルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1405)、1Z−アルケニルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1406)およびジアルキルグリコシルグリセロリン脂質類(GP1407);グリセロホスホイノシトールグリカン類(GP15)、例えばジアシルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1501)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1502)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1503)、モノアシルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1504)、モノアルキルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1505)、1Z−アルケニルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1506)およびジアルキルグリセロホスホイノシトールグリカン類(GP1507);グリセロホスホノコリン類(GP16)、例えばジアシルグリセロホスホノコリン類(GP1601)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホノコリン類(GP1602)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホノコリン類(GP1603)、ジアルキルグリセロホスホノコリン類(GP1604)、モノアシルグリセロホスホノコリン類(GP1605)、モノアルキルグリセロホスホノコリン類(GP1606)および1Z−アルケニルグリセロホスホノコリン類(GP1607);グリセロホスホノエタノールアミン類(GP17)、例えばジアシルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1701)、1−アルキル−2−アシルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1702)、1−(1Z−アルケニル)−2−アシルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1703)、ジアルキルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1704)、モノアシルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1705)、モノアルキルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1706)および1Z−アルケニルグリセロホスホノエタノールアミン類(GP1707);ジグリセロールテトラエーテルリン脂質類(カルドアーキオール類)(GP18);グリセリンノニトールテトラエーテルリン脂質類(GP19);酸化グリセロリン脂質類(GP20)、例えば酸化グリセロホスホコリン類(GP2001)、酸化グリセロホスホエタノールアミン類(GP2002)および酸化カルジオリピン類(GP2003);ならびに他のグリセロリン脂質類(GP00)が挙げられる。
生体膜においては、グリセロリン脂質類としては、これらに限定されるものではないが、ホスファチジン酸(ホスファチダート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスホイノシチド類、例えばホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスファート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリホスファート(PIP3)、カルジオリピンおよびリゾリン脂質類が挙げられ、これらが最も代表的である。
天然に存在するリン脂質誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、卵PC、卵PG、大豆PC、水素添加大豆PCおよびスフィンゴミエリンが挙げられる。合成リン脂質誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、ホスファチジン酸(DMPA、DPPA、DSPA)、ホスファチジルコリン(DDPC、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DEPC)、ホスファチジルグリセロール(DMPG、DPPG、DSPG、POPG)、ホスファチジルエタノールアミン(DMPE、DPPE、DSPE、DOPE)、ホスファチジルセリン(DOPS)およびPEGリン脂質(mPEGリン脂質、ポリグリセリンリン脂質、官能化リン脂質、末端活性化リン脂質)が挙げられる。
「スフィンゴ脂質類」はスフィンゴイド塩基骨格を含むが、ここで、哺乳動物の主要なスフィンゴイド塩基はスフィンゴシンである。哺乳動物の主なスフィンゴイド塩基類は、ジヒドロスフィンゴシンおよびスフィンゴシンであるが、一方で酵母の主要なスフィンゴイド塩基類は、ジヒドロスフィンゴシンおよびフィトスフィンゴシンである。スフィンゴシン骨格は、典型的に荷電した頭部基、例えばエタノールアミン、セリンまたはコリンにはO−結合することができ、アシル基、例えば脂肪酸にはアミド結合することができる。脂肪酸は、典型的には飽和または一不飽和であり、炭素原子16〜26個分の鎖長を有する。スフィンゴ脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、スフィンゴイド塩基類(SP01)、例えばスフィング−4−エニン類(スフィンゴシン類)(SP0101)、スフィンガニン類(SP0102)、4−ヒドロキシスフィンガニン類(フィトスフィンゴシン類)(SP0103)、スフィンゴイド塩基のホモログおよび多様体(SP0104)、スフィンゴイド塩基1−ホスファート類(SP0105)、リゾスフィンゴミエリン類およびリゾスフィンゴ糖脂質類(SP0106)、N−メチル化スフィンゴイド塩基類(SP0107)およびスフィンゴイド塩基のアナログ(SP0108);セラミド類(SP02)、例えばN−アシルスフィンゴシン類(セラミド類)(SP0201)、N−アシルスフィンガニン類(ジヒドロセラミド類)(SP0202)、N−アシル−4−ヒドロキシスフィンガニン類(フィトセラミド類)(SP0203)、アシルセラミド類(SP0204)およびセラミド1−ホスファート類(SP0205);ホスホスフィンゴ脂質類(SP03)、例えばセラミドホスホコリン類(スフィンゴミエリン類)(SP0301)、セラミドホスホエタノールアミン類(SP0302)およびセラミドホスホイノシトール類(SP0303);ホスホノスフィンゴ脂質類(SP04);中性スフィンゴ糖脂質類(SP05)、例えば単純なGlc系(SP0501)、GalNAcβ1−3Galα1−4Galβ1−4Glc−(Globo系)(SP0502)、GalNAcβ1−4Galβ1−4Glc−(Ganglio系)(SP0503)、Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc−(Lacto系)(SP0504)、Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc−(Neolacto系)(SP0505)、GalNAcβ1−3Galα1−3Galβ1−4Glc−(Isoglobo系)(SP0506)、GlcNAcβ1−2Manα1−3Manβ1−4Glc−(Mollu系)(SP0507)、GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glc−(Arthro系)(SP0508)、Gal−(Gala系)(SP0509)および他の中性スフィンゴ糖脂質類(SP0500);酸性スフィンゴ糖脂質類(SP06)、例えばガングリオシド類(SP0601)、スルホスフィンゴ糖脂質類(スルファチド類)(SP0602)、グルクロノスフィンゴ脂質類(SP0603)、ホスホスフィンゴ糖脂質類(SP0604)および他の酸性スフィンゴ糖脂質類(SP0600);塩基性スフィンゴ糖脂質類(SP07);両性スフィンゴ糖脂質類(SP08);ヒ素スフィンゴ脂質類(SP09);ならびに他のスフィンゴ脂質類(SP00)が挙げられる。
セラミド類(N−アシルスフィンゴイド塩基類)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。生物学的に関連のあるセラミド類の例としては、これらに限定されるものではないが、セラミドホスホリルコリン(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(Cer−PE)およびセラミドホスホリルグリセロールが挙げられる。哺乳動物の主要なホスホスフィンゴ脂質類は、スフィンゴミエリン類(例えばセラミド、ホスホコリン類)である。「スフィンゴ糖脂質類」は、グリコシド結合を介してスフィンゴイド塩基に連結された1つまたは複数の糖残基から構成される。スフィンゴ糖脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、セレブロシド類およびガングリオシド類が挙げられる。
「サッカロ脂質類」なる用語は、脂肪酸が糖骨格に直接結合して、膜二重層に適合する構造を形成している分子を意味する。サッカロ脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、アシルアミノ糖類(SL01)、例えばモノアシルアミノ糖類(SL0101)、ジアシルアミノ糖類(SL0102)、トリアシルアミノ糖類(SL0103)、テトラアシルアミノ糖類(SL0104)、ペンタアシルアミノ糖類(SL0105)、ヘキサアシルアミノ糖類(SL0106)およびヘプタアシルアミノ糖類(SL0107);アシルアミノ糖グリカン類(SL02);アシルトレハロース類(SL03);アシルトレハロースグリカン類(SL04);他のアシル糖類(SL05);ならびに他のサッカロ脂質類(SL00)が挙げられる。
グリセロリン脂質類およびスフィンゴ脂質類の他に「ステロール脂質類」も、ホルモンおよびシグナル伝達分子として様々な生物学的役割を果たす細胞膜脂質の重要な成分である。この「ステロール脂質類」は「ステロイド類」とも呼ばれ、例としては、これらに限定されるものではないが、コレステロールおよびその誘導体が挙げられる。ステロイド類は、4つの縮合炭素環のコア構造を有し、このコア構造は、エステル化により炭素鎖に結合していてもよい。炭素数18の(C18)ステロイド類としては、エストロゲンファミリーが挙げられ、一方でC19ステロイド類には、アンドロゲン類、例えばテストステロンおよびアンドロステロンが含まれる。C21サブクラスとしては、例えばプロゲストーゲン類および糖質コルチコイド類および鉱質コルチコイド類が挙げられる。セコステロイド類には様々な形態のビタミンDが含まれ、このセコステロイド類は、コア構造のB環の切断を特徴とする。ステロール類の他の例は、胆汁酸およびその抱合体であり、これらは、哺乳動物ではコレステロールの酸化誘導体であり、肝臓で合成される。植物における相当物は、フィトステロール類、例えばβ−シトステロール、スチグマステロールおよびブラシカステロールであり;最後に記載した化合物は、藻類生育のバイオマーカーとしても使用される。真菌細胞膜における主なステロールは、エルゴステロールである。ステロール脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、ステロール類(ST01)、例えばコレステロールおよび誘導体(ST0101)、コレステリルエステル類(ST0102)、エルゴステロール類およびC24−メチル誘導体(ST0103)、スチグマステロール類およびC24−エチル誘導体(ST0104)、C24−プロピルスチロール類および誘導体(ST0105)、ゴルゴステロール類および誘導体(ST0106)、フロスタノール類および誘導体(ST0107)、スピロスタノール類および誘導体(ST0108)、フロスピロスタノール類および誘導体(ST0109)、シクロアルタノール類および誘導体(ST0110)、カリステロール類およびシクロプロピル側鎖誘導体(ST0111)、カルダノリド類および誘導体(ST0112)、ブファノリド類および誘導体(ST0113)、ブラシノリド類および誘導体(ST0114)、ソラニジン類およびアルカロイド誘導体(ST0115)、およびウィタノリド類および誘導体(ST0116);ステロイド類(ST02)、例えばC18ステロイド類(エストロゲン類)および誘導体(ST0201)、C19ステロイド類(アンドロゲン類)および誘導体(ST0202)、およびC21ステロイド類(糖質/鉱質コルチコイド類、プロゲストージン類)および誘導体(ST0203);セコステロイド類(ST03)、例えばビタミンD2および誘導体(ST0301)、ビタミンD3および誘導体(ST0302)、ビタミンD4および誘導体(ST0303)、ビタミンD5および誘導体(ST0304)、ビタミンD6および誘導体(ST0305)、およびD7および誘導体(ST0306);胆汁酸類および誘導体(ST04)、例えばC24胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0401)、C26胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0402)、C27胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0403)、C28胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0404)、C22胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0405)、C23胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0406)、C25胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0407)、およびC29胆汁酸類、アルコール類および誘導体(ST0408);ステロイド抱合体(ST05)、例えばグルクロニド類(ST0501)、スルファート類(ST0502)、グリシン抱合体(ST0503)、タウリン抱合体(ST0504)および他のステロイド抱合体(ST0505);ならびに他のステロール脂質(ST00)が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「ポリケタイド類」なる用語は、構造的に非常に多様な群員を含むファミリーを意味し、それらはすべて、脂肪酸合成と同様のプロセスでマロニル−CoA由来の伸長単位の脱カルボキシル縮合によるポリケタイドシンターゼ経路を介して合成される。ポリケタイド類は、次の3つのクラスに大別される:I型ポリケタイド類(典型的には、多重モジュール型のメガシンターゼにより生成されるマクロライド類)、II型ポリケタイド類(典型的には、解離された酵素の反復作用により生成される芳香族分子)およびIII型ポリケタイド類(典型的には、真菌種により生成される芳香族小分子)。商業的に使用されるポリケタイドとしては例えば、天然抗生物質、抗真菌剤、細胞増殖抑制剤、抗コレステロール剤、抗寄生虫剤、抗コクシジウム剤、動物成長促進剤および殺虫剤が挙げられる。ポリケタイド類の例としては、これらに限定されるものではないが、線状ポリケタイド類(PK01);ハロゲン化アセトゲニン類(PK02);バンレイシ科(annonaceae)アセトゲニン類(PK03);マクロライド類およびラクトンポリケタイド類(PK04);アンサマイシン類および関連するポリケタイド類(PK05);ポリエン類(PK06);線状テトラサイクリン類(PK07);アングサイクリン類(PK08);ポリエーテルポリケタイド類(PK09);アフラトキシン類および関連物質(PK10);サイトカラシン類(PK11);フラボノイド類(PK12)、例えばアントシアニジン類(PK1201)、フラバン類、フラバノール類およびロイコアントシアニジン類(PK1202)、プロアントシアニジン類(PK1203)、ビフラボノイド類およびポリフラボノイド類(PK1204)、イソフラボノイド類(PK1205)、ロテノイドフラボノイド類(PK1206)、プテロカルパン類(PK1207)、イソフラバン類(PK1208)、クメスタンフラボノイド類(PK1209)、ネオフラボノイド類(PK1210)、フラボン類およびフラボノール類(PK1211)、カルコン類およびジヒドロカルコン類(PK1212)、オーロンフラボノイド類(PK1213)、フラバノン類(PK1214)、ジヒドロフラボノール類(PK1215)および他のフラボノイド類(PK1216);芳香族ポリケタイド類(PK13)、例えば単環式芳香族ポリケタイド類(PK1301)、ナフタレン類およびナフトキノン類(PK1302)、ベンゾイソクロマンキノン類(PK1303)、アントラセン類およびフェナントレン類(PK1304)、アントラサイクリノン類(PK1305)、ジベンゾフラン類、グリセオフルビン類、ジベンゾピラン類およびキサントン類(PK1306)、ジフェニルメタン類、アシルフロログルシノール類およびベンゾフェノン類(PK1307)、デプシド類およびデプシドン類(PK1308)、ジフェニルエーテル類、ビフェニル類、ジベンジル類およびスチルベン類(PK1309)、ベンゾフラノイド類(PK1310)、ベンゾピラノイド類(PK1311)および他の芳香族ポリケタイド類(PK1312);非リボソームペプチド/ポリケタイド融合体(PK14);ならびに他のポリケタイド類(PK00)が挙げられる。
「プレノール脂質類」または「イソプレノイド類」なる用語は、5つの炭素前駆体イソペンテニル二リン酸およびジメチルアリル二リン酸から合成され、主にメバロン酸経路を介して生成される分子を意味する。いくつかの細菌(例えば大腸菌)および植物において、メチルエリスリトールリン酸経路を介してイソプレノイド前駆体が生成される。単純なイソプレノイド類(直鎖状アルコール、ジホスファート類など)は、C5単位の連続的な付加により形成されるため、イソプレノイド類は、40個を超える炭素を含む構造(すなわち8イソプレノイド単位)のポリテルペンサブクラスに便宜的に分類される。プレノール脂質類およびそれらのリン酸化誘導体は、膜を横断するオリゴ糖類の輸送において重要な役割を果たす。ポリプレノールリン酸糖類およびポリプレノール二リン酸糖類は、細胞質外でのグリコシル化反応、細胞外での多糖類生合成(例えば細菌におけるペプチドグリカン重合)および真核生物のタンパク質のN−グリコシル化において機能する。プレノール脂質類の例としては、これらに限定されるものではないが、イソプレノイド類(PR01)、例えばC5イソプレノイド類(ヘミテルペン類)(PR0101)、C10イソプレノイド類(モノテルペン類)(PR0102)、C15イソプレノイド類(セスキテルペン類)(PR0103)、C20イソプレノイド類(ジテルペン類)(PR0104)、C25イソプレノイド類(セステルテルペン類)(PR0105)、C30イソプレノイド類(トリテルペン類)(PR0106)、C40イソプレノイド類(テトラテルペン類)(PR0107)、ポリテルペン類(PR0108)およびレチノイド類(PR0109);キノン類およびヒドロキノン類(PR02)、例えばユビキノン類(PR0201)、ビタミンE(PR0202)およびビタミンK(PR0203);ポリプレノール類(PR03)、例えばバクトプレノール類(PR0301)、バクトプレノールモノホスファート類(PR0302)、バクトプレノールジホスファート類(PR0303)、フィトプレノール類(PR0304)、フィトプレノールモノホスファート類(PR0305)、フィトプレノールジホスファート類(PR0306)、ドリコール類(PR0307)、ドリコールモノホスファート類(PR0308)およびドリコールジホスファート類(PR0309);ホパノイド類(PR04);ならびに他のプレノール脂質類(PR00)が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「脂質二重層」なる用語は、脂質の二重層構造を意味し、これは典型的には水性環境中で自発的に形成され、その親水性頭部は二重層の両面で水に面し、疎水性尾部は内部で水から遮断されている。本明細書で用いられる場合に、この用語にはすべての形状の二重層が包含され、こうした二重層としては、これらに限定されるものではないが例えば平面状の二重層および湾曲した二重層が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「ミセル」なる用語は、液体コロイド中に分散された脂質類の凝集体を意味する。水性溶液中の典型的なミセルは、親水性頭部が周囲の溶液と接触しており疎水性尾部がミセルの中心に存在している凝集体を形成する。非極性溶媒中で、ある種の脂質類は逆ミセルも形成しうる。
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて用いられる「リポソーム」なる用語は、脂質二重層膜を含む小胞を意味する。ミセルは脂質単層から構成されており、したがってリポソームは、脂質二重層を含む点でミセルと異なる。リポソームの脂質膜は、これらに限定されるものではないが例えば脂質類、タンパク質類および他の膜関連成分などの成分を含むことができる。リポソームの主な種類としては、多層小胞(multilamellar vesicle、MLV)、小型単層小胞(small unilamellar vesicle、SUV)、大型単層小胞(large unilamellar vesicle、LUV)、巨大単層小胞(giant unilamellar vesicle、GUV)が挙げられる。典型的には、SUVおよびLUVリポソームの直径は1nm〜1μmであり、GUVリポソームの直径は1μm〜300μmであり、すなわちGUVリポソームの直径は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μmまたは300μmである。典型的には、リポソームは、疎水性膜の内部に液体コア、しばしば水溶液を封入する。溶解された親水性溶質は、この脂質二重層を容易に通過することができないが、疎水性化学物質は、この膜を溶解させてこの膜の内部に入り込むことができる。したがってリポソームは、疎水性分子と親水性分子の双方を含むことができる。リポソームの脂質二重層は、他の二重層、例えば他のリポソームまたは細胞膜と融合しうる。これにより、リポソームは、その内容物を第2のリポソームまたは細胞に送達することができる。したがって、2つの隣接するリポソームの融合を避けるために、これらのリポソームは典型的には、脂質二重層の融合を防止するために互いに一定の距離に保たれる。2つのリポソーム間の距離の程度は、リポソームのサイズ、リポソームの組成および溶媒の化学的性質に依存する。
「核酸」または「核酸分子」なる用語は同義的に使用され、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基またはそれら双方の一本鎖または二本鎖のオリゴマーまたはポリマーと理解される。典型的には、個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合を介して核酸が形成される。本発明の文脈において、核酸なる用語は、これらに限定されるものではないが例えばリボ核酸(RNA)分子およびデオキシリボ核酸(DNA)分子を包含する。核酸の一本鎖についての記述によって、相補鎖の配列も(少なくとも部分的に)定められる。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、二本鎖および一本鎖の双方の配列の一部を含んでいてもよい。核酸は、生物学的、生化学的もしくは化学的な合成方法または当技術分野で知られている任意の方法により取得することができる。本明細書で用いられる場合に、「核酸」なる用語は、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」なる用語を包含する。本発明の異なる態様のうちの1つの文脈において用いられる場合に、「オリゴヌクレオチド」なる用語は、約50までのヌクレオチド、例えば2〜約50のヌクレオチドの長さの核酸を意味する。本発明の異なる態様のうちの1つの文脈において用いられる場合に、「ポリヌクレオチド」なる用語は、約50を上回るヌクレオチドの長さの核酸を意味し、例えば51以上のヌクレオチドの長さの核酸を意味する。プローブおよびプライマーとは、標的核酸に(プローブを)ハイブリダイズすることによって、または標的核酸へのハイブリダイゼーションおよび標的核酸の増幅によって、サンプル内またはインビボで核酸を検出するための短いポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。「オープンリーディングフレーム(ORF)」なる用語は、アミノ酸に翻訳可能なヌクレオチドの配列を意味する。典型的には、こうしたORFは、開始コドンと、3の倍数のヌクレオチドの長さを通常有する後続の領域とを含むが、所与のリーディングフレームには、終止コドン(TAG、TAA、TGA、UAG、UAAまたはUGA)は含まれない。典型的には、ORFは、天然に存在するか、人工的に、すなわち遺伝子工学的手段により構築される。ORFは、該ORFを翻訳して得ることができるアミノ酸がペプチド結合鎖を形成しているタンパク質をコードする。
アミノ酸は、アミノ(−NH2)官能基と、カルボキシル(−COOH)官能基と、各アミノ酸固有の側鎖とから構成される有機化合物である。典型的には、アミノ酸は、その側鎖の性質によって4つの群に分類される:側鎖によって、アミノ酸は弱酸にも弱塩基にもなりうる。側鎖が極性である場合には親水性であり、側鎖が非極性である場合には疎水性である。標準的なアミノ酸を以下に示す:
本発明の様々な態様の文脈において、「ペプチド」なる用語は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の短いポリマーを意味する。ペプチドは、タンパク質と同様の化学(ペプチド)結合を有するが、一般に長さがより短い。最短のペプチドはジペプチドであり、これは、1つのペプチド結合によって結合された2つのアミノ酸からなる。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドなども存在しうる。好ましくは、ペプチドは、8、10、12、15、18または20までのアミノ酸の長さを有する。ペプチドは、環状ペプチドでない限り、アミノ末端およびカルボキシル末端を有する。
本発明の様々な態様の文脈において、「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合により結合してまとまったアミノ酸の単一の直鎖を意味し、これは、好ましくは少なくとも約21のアミノ酸を含む。ポリペプチドは、2以上の鎖から構成されるタンパク質の1つの鎖であってもよく、またタンパク質が1つの鎖から構成される場合にはタンパク質自体であってもよい。
本発明の様々な態様の文脈において、「タンパク質」なる用語は、2次および3次構造を再開する1つまたは複数のポリペプチドを含む分子を意味するとともに、さらには、いくつかのポリペプチド、すなわちいくつかのサブユニットから構成されて4次構造を形成しているタンパク質をも指す。本発明の文脈において、タンパク質またはポリペプチドの1次構造とは、ポリペプチド鎖中のアミノ酸の配列である。タンパク質の2次構造とは、タンパク質の局所セグメントの一般的な3次元形態である。しかしこれは、3次構造と考えられる3次元空間における特定の原子位置を記述するものではない。タンパク質において、2次構造は、主鎖のアミド基とカルボキシル基との間の水素結合のパターンによって定められる。タンパク質の3次構造とは、原子座標によって決定されるタンパク質の3次元構造である。4次構造とは、多重サブユニット複合体中の多重に折りたたまれたまたはコイル状のタンパク質またはポリペプチドの分子の配列である。「アミノ酸鎖」および「ポリペプチド鎖」なる用語は、本発明の文脈において同義語として使用される。
本明細書で用いられる場合の「フォールディング(折りたたみ)」または「タンパク質のフォールディング(折りたたみ)」なる用語は、タンパク質がその3次元形状または立体配座をとるようにするプロセスを意味し、すなわち最初に、これらに限定されるものではないが例えば水素結合、金属配位、疎水性力、ファンデルワールス力、π−π相互作用および/または静電作用といった共有結合によらない相互作用を介して特定の3次元形状が形成されるようにタンパク質を導くプロセスを意味する。次に、フォールディングの過程で2つの分子内ジスルフィド結合が形成される。したがって「折りたたまれた(フォールディング済みの)タンパク質」なる用語は、タンパク質の3次元形状、例えばその2次、3次または4次構造を意味する。
「変性」とは、タンパク質が、そのネイティブ状態で存在するそれらの4次、3次および/または2次構造を失うプロセスであり、それによって典型的にはそれらの生物学的機能が失われる。変性タンパク質は、これらに限定されるものではないが例えば、立体配座の変化、溶解性の損失、凝集または完全な分解といった広範な特性を示しうる。
タンパク質の安定性、すなわちタンパク質がその機能を果たすことを可能にする構造上の3次元的完全性は、いくつかの環境因子に影響を受ける。こうした因子としては、これらに限定されるものではないが例えば、温度、放射線、周囲培地のpH値、ペプチダーゼ/プロテアーゼの存在、タンパク質濃度、塩濃度、溶媒および時間が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「分解」なる用語は、タンパク質がそれらの1次、2次、3次および/または4次構造を失うプロセスを意味する。したがって、「分解」なる用語には、タンパク質の変性、およびペプチド鎖からの単一のアミノ酸もしくは複数のアミノ酸の除去、またはペプチド鎖の2つ以上の断片への切断が包含される。
本明細書で用いられる場合の「凝集」なる用語は、2つ以上のタンパク質がまとまって蓄積および/または集塊化するプロセスを意味する。凝集によって、インタクトなネイティブタンパク質が生じることも、分解タンパク質が生じることもある。タンパク質の凝集は、タンパク質の疎水性基が露出し、次いでこれが蓄積することによって引き起こされることが多い。
CD−RAPは、逆平行βシートと2つのジスルフィド結合とを含む、分泌された単一ドメインタンパク質(107aa成熟タンパク質、12kDa、Genbankアクセッション番号:AAH05910.1、GI:13543500)である。TANGO、MIA−2、OTORは、CD−RAP相同タンパク質である(配列同一性は44%であり、配列相同性は約80%である)。CD−RAPの別名は、自己分泌性メラノーマ腫瘍増殖阻害活性を表すMIAである。Bleschら(1994)は、悪性メラノーマ細胞株HTZ−19dMの上清からの新規なタイプの成長調節因子として、MIAをクローニングした。Weilbachら(1990)は、MIAが成長調節ネットワークの一部であるとの仮説を立てた。それとは別にDietzおよびSandell(1996)は、レチノイン酸処理によって発現が下方制御されるタンパク質として、ウシ軟骨細胞からCD−RAPをクローニングした。レチノイン酸によって軟骨細胞の分化表現型が抑制されるため、軟骨細胞の分化表現型を保持した状態でCD−RAP(軟骨由来のレチノイン酸感受性タンパク質)の機能的背景、すなわち軟骨細胞が軟骨基質の合成を維持することが明らかとなった。
CD−RAPは、転写因子Sox9の上流で軟骨への分化に必要とされる(Moser, Bosserhoff, Hunziker, Sandell, Fassler, Buettner 2002. Ultrastructural cartilage abnormalities in MIA/CD−RAP− deficient mice. Molecular and Cellular Biology (2002), 22(5), 1438−1445)。CD−RAPの存在下で、ヒト間葉系幹細胞は、ペレット培養物において軟骨マーカーアグリカン、オステオカルシンおよびII型コラーゲンmRNAの上方制御を示した(Tscheudschilsuren, Bosserhoff, Schlegel, Vollmer, Anton, Alt, Schnettler, Brandt, Proetzel, 2006. Regulation of mesenchymal stem cell and chondrocyte differentiation by MIA. Exp Cell Res. 2006 Jan 1; 312(1):63−72)。CD−RAPは、BMP−2およびTGFβ3と共同してそれらの表現型を維持することにより軟骨細胞の骨形成分化を防ぎ、それによりそれらのさらなる骨への分化を防ぐ(Tscheudschilsuren, Bosserhoff, Schlegel, Vollmer, Anton, Alt, Schnettler, Brandt, Proetzel, 2006. Regulation of mesenchymal stem cell and chondrocyte differentiation by MIA. Exp Cell Res. 2006 Jan 1;312(1):63−72)。CD−RAPは、フィブロネクチン(多くの細胞外基質に見られる)と相互作用してインテグリンα4β1およびα5β1に直接結合し、インテグリン活性を負に調節すると記載されている。インテグリンは、自身の周囲の基質の変化を検出するための「センサー」として軟骨細胞を提供する。インテグリンα5との相互作用によって、軟骨分化をブロックすることが知られているERKによるシグナル伝達が調節される(Schubert, Schlegel, Schmid, Opolka, Grassel, Humphries, Bosserhoff, 2010. Modulation of cartilage differentiation by melanoma inhibiting activity/cartilage−derived retinoic acid−sensitive protein (MIA/CD−RAP). Exp Mol Med. 2010 Mar 31;42(3):166−74)。
本発明のタンパク質およびポリペプチド(タンパク質誘導体、タンパク質多様体、タンパク質断片、タンパク質セグメント、タンパク質エピトープおよびタンパク質ドメインを含む)を、化学修飾によりさらに修飾することができる。これは、そのような化学的に修飾されたポリペプチドが、天然に存在する20のアミノ酸以外の他の化学基を含むことを意味する。このような他の化学基の例としては、これらに限定されるものではないが、グリコシル化アミノ酸およびリン酸化アミノ酸が挙げられる。ポリペプチドの化学修飾によって、親ポリペプチドと比較して有利な特性、例えば安定性の向上、生物学的半減期の延長または水溶性の増加のうちの1つまたは複数が生じうる。本発明において使用できる多様体に適用することができる化学的修飾としては、これらに限定されるものではないが、PEG化、非グリコシル化親ポリペプチドのグリコシル化または親ポリペプチド中に存在するグリコシル化パターンの修飾が挙げられる。タンパク質にはまた、例えば補欠分子族または補因子のような非ペプチド基が結合していてもよい。
「発現レベル」なる用語は、特定の時点に身体またはサンプル中に存在する遺伝子産物の量を意味する。例えば、遺伝子から発現されたタンパク質またはmRNAを用いて発現レベルを測定/定量/検出することができる。例えば、サンプル中に存在する対象となる遺伝子産物の量を、同一サンプルもしくは参照サンプル(例えば、同一個体から同一時間に採取したサンプル、もしくは同一サンプルの同一サイズ(重量、体積)分)中の同一カテゴリー(全タンパク質もしくはmRNA)の遺伝子産物の総量で正規化することにより、または所定のサンプルサイズ(重量、体積など)あたりの対象となる遺伝子産物の量を同定することにより、発現レベルを定量することができる。発現レベルの測定または検出を、当技術分野で知られている任意の方法により行うことができ、例えば対象となる遺伝子産物を直接的に検出および定量するための方法(例えば質量分析法)、または対象となる遺伝子産物を間接的に検出および測定するための方法により行うことができ、この間接的に検出および測定するための方法では通常は、対象となる遺伝子産物と、この対象となる遺伝子産物に特異的な1つまたは複数の異なる分子または検出手段(例えば1つまたは複数のプライマー、プローブ、抗体、足場タンパク質)とを結合させることにより行われる。遺伝子コピーのレベルの測定は、(例えば核酸プローブまたはプライマー、例えば定量的PCR、マルチプレックスライゲーション依存的プローブ増幅(MLPA)PCRによる)1つまたは複数の断片の存在の有無の決定をも含み、これも当業者に知られている。
本明細書で用いられる「翻訳後」なる用語は、ヌクレオチドトリプレットがアミノ酸へと翻訳され、その配列において進行するアミノ酸に対してペプチド結合が形成された後に生じる事象を意味する。こうした翻訳後事象は、すべてのポリペプチドが形成された後に生じる場合もあり、また早くも翻訳の過程ですでに翻訳されたポリペプチド部分で生じる場合もある。翻訳後事象によって典型的には、得られるポリペプチドの化学的または構造的な特性が変更または改変される。翻訳後事象の例としては、これらに限定されるものではないが、アミノ酸のグリコシル化もしくはリン酸化、または例えばエンドペプチダーゼによるペプチド鎖の切断などの事象が挙げられる。
本明細書で用いられる「同時翻訳」なる用語は、ヌクレオチドトリプレットからアミノ酸鎖への翻訳の過程で生じる事象を意味する。こうした事象によって典型的には、得られるアミノ酸鎖の化学的または構造的な特性が変更または改変される。同時翻訳事象の例としては、これらに限定されるものではないが、翻訳過程を完全に停止させるか、またはペプチド結合形成を中断させて2つの別個の翻訳産物を生成させる事象が挙げられる。
本明細書で用いられる場合に、「多様体」なる用語は、それが由来するポリペプチドまたはタンパク質と比較して、その長さまたは配列が1つまたは複数変化している点で相違するポリペプチドまたはタンパク質と理解されるべきである。ポリペプチド多様体またはタンパク質多様体が由来するポリペプチドまたはタンパク質は、親ポリペプチドまたは親タンパク質としても知られている。「多様体」なる用語は、親分子の「断片」または「誘導体」を含む。典型的には、「断片」は、親分子よりも長さまたはサイズが小さいが、それに対して「誘導体」は、親分子と比較してその配列に1つまたは複数の相違を示す。これらに限定されるものではないが例えば、翻訳後修飾タンパク質(例えばグリコシル化タンパク質、ビオチン化タンパク質、リン酸化タンパク質、ユビキチン化タンパク質、パルミトイル化タンパク質またはタンパク質分解により切断されたタンパク質)などの修飾分子も包含される。多様体は、人工的に、好ましくは遺伝子工学的手段によって構築される場合があるが、一方で親ポリペプチドまたは親タンパク質は、野生型ポリペプチドまたは野生型タンパク質である。しかし、天然に存在する多様体もまた、本明細書で用いられる場合の「多様体」なる用語に包含されるものと理解されるべきである。さらに、本発明において使用可能な多様体は、該多様体が親分子の少なくとも1つの生物学的活性を示す、すなわち機能的に活性である限り、親分子のホモログ、オルソログまたはパラログから誘導されてもよく、また人工的に構築された多様体から誘導されてもよい。
本明細書で用いられる場合の「多様体」は、それが由来する親ポリペプチドまたは親タンパク質とある程度の配列同一性を特徴としうる。より正確には、本発明の文脈におけるタンパク質多様体は、その親ポリペプチドに対して少なくとも80%の配列同一性を示す。「少なくとも80%の配列同一性」なる用語は、ポリペプチド配列の比較に関連して本明細書全体を通じて使用される。この表記は好ましくは、各参照ポリペプチドまたは各参照ポリヌクレオチドに対する少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を意味する。好ましくは、該当するポリペプチドおよび参照ポリペプチドは、該参照ポリペプチドの20、30、40、45、50、60、70、80、90、100もしくはそれを上回るアミノ酸の連続的伸長にわたって、または該参照ポリペプチドの全長にわたって、示された配列同一性を示す。
本発明の誘導体は、アミノ酸配列において最大で100(最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45または50)の変化(すなわち置換、挿入、欠失、N末端切断および/またはC末端切断)の合計数を示しうる。アミノ酸置換は、保存的および/または非保存的であってよい。好ましい実施形態では、本発明の誘導体は、それが由来するポリペプチドまたはタンパク質またはドメインと、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45または50のアミノ酸の置換、好ましくはアミノ酸の保存的置換の分だけ相違する。
「欠失多様体」および「断片」なる用語は、本明細書では互換的に用いられる。そのような多様体は、N末端切断、C末端切断および/または内部欠失を含む。断片は、天然に存在するものであってもよく(例えばスプライス多様体)、また人工的に、好ましくは遺伝子工学的手段によって構築されていてもよい。好ましくは、断片(すなわち欠失多様体)は、親ポリペプチドと比較して、そのN末端および/またはそのC末端および/または内部に、好ましくはそのN末端、そのN末端およびC末端、またはそのC末端に、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100のアミノ酸の欠失を有する。
2つの配列を比較する際に配列同一性%の算出の比較対象となる参照配列が明記されていない場合には、特に指定がない限り、配列同一性は、比較すべき2つの配列のうち長い方の配列を基準として算出されるべきである。参照配列が示されている場合には、特に指定がない限り、配列同一性は、各配列番号により示される参照配列の全長を基準として求められる。例えば、20のアミノ酸からなるペプチド配列は、配列番号1によるCD−RAPのアミノ酸配列と比較して、18.7%(20/107)の最大の配列同一性%を示しうる。一方で、54のアミノ酸の長さを有する配列は、50.46%(54/107)の最大配列同一性%を示しうる。こうしたアミノ酸配列の類似性、すなわち配列同一性%を、配列アライメントにより求めることができる。このようなアラインメントは、当技術分野で知られているアルゴリズムを用いて行うことができ、好ましくはKarlinおよびAltschulによる数学的アルゴリズム(Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−5877)を用いて、hmmalign(HMMERパッケージ、http://hmmer.wustl.edu/)を用いて、または例えばhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/もしくはhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlもしくはhttp://npsa−pbil.ibcp.fr/cgi−bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_clustalw.htmlにて入手可能なCLUSTALアルゴリズム(Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673−80)を用いて行うことができる。使用される好ましいパラメーターは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/またはhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlに設定されているデフォルトパラメーターである。例えばBLAST、BLATまたはBlastZ(またはBlastX)を用いて配列同一性の程度(配列一致度)を算出することができる。類似のアルゴリズムが、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403−410のBLASTNプログラムおよびBLASTPプログラムに組み込まれている。親ポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTPプログラムでスコア=50、文字長=3でBLASTタンパク質検索が行われる。比較を目的としてギャップありのアライメントを得るためには、Gapped BLASTが、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389−3402に記載の通りに利用される。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを使用する。配列一致度分析を、例えばShuffle−LAGAN(Brudno M., Bioinformatics 2003b, 19 Suppl 1:I54−I62)またはマルコフ確率場のような確立された相同性マッピング技術により補完してもよい。本出願において配列同一性%について言及される場合には、特に指定がない限り、これらのパーセンテージは、より長い方の配列の全長を基準として算出される。
それに加えてまたはそれとは異なって、欠失多様体は、上記のような各アミノ酸の構造的欠失に起因してではなく、これらのアミノ酸が阻害されているかまたはさもなくばそれらの生物学的機能を果たすことができないために生じる場合がある。典型的には、そのような機能的欠失は、アミノ酸配列への挿入またはアミノ酸配列における置換により生じ、それによって、得られるタンパク質の機能的特性が変化する。こうした変化の例としては、これらに限定されるものではないが、得られるタンパク質の化学的特性の変更(すなわち疎水性アミノ酸から親水性アミノ酸への置換)、得られるタンパク質の翻訳後修飾(例えば翻訳後の切断もしくはグリコシル化パターン)の変更、または2次もしくは3次タンパク質構造の変更が挙げられる。それに加えてまたはそれとは異なって、機能的欠失は、転写もしくは転写後の(例えばsiRNAによる)遺伝子サイレンシング、またはこれらに限定されるものではないが例えばタンパク質インヒビターもしくは阻害抗体などの阻害性分子の存在の有無に起因しても起こりうる。
アミノ酸が化学的に関連するアミノ酸で置換される半保存的および特に保存的なアミノ酸置換が好ましい。典型的な置換は、脂肪族アミノ酸の中で、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の中で、酸性残基を有するアミノ酸の中で、アミド誘導体の中で、塩基性残基を有するアミノ酸の中で、または芳香族残基を有するアミノ酸の中で、行われる。典型的な半保存的および保存的置換は、以下の通りである:
新たなシステインが遊離チオールのままであれば、A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCへの変化は半保存的である。さらに、立体的に嵩高い位置にあるグリシンを置換すべきではないこと、およびαヘリックスまたはβシート構造を有するタンパク質の部分にPを導入すべきではないことが、当業者には理解されるであろう。
本明細書で用いられる場合の「切断部位」なる用語は、例えば切断酵素により認識かつ/または分断されうることから、分断を指示するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。典型的には、ポリペプチド鎖は、アミノ酸を連結する1つまたは複数のペプチド結合の加水分解によって切断され、ポリヌクレオチド鎖は、ヌクレオチド間の1つまたは複数のホスホジエステル結合の加水分解によって切断される。ペプチド結合またはホスホジエステル結合の切断は、化学的または酵素的な切断に由来しうる。酵素による切断とは、タンパク質分解酵素によって達成される切断を意味し、ここでこのタンパク質分解酵素としては、これらに限定されるものではないが例えば、制限エンドヌクレアーゼ(例えばI型、II型、III型、IV型もしくは人工制限酵素)およびエンドペプチダーゼもしくはエキソペプチダーゼまたはエンドプロテアーゼもしくはエキソプロテアーゼ(例えばセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ)が挙げられる。典型的には、酵素による切断は、自己切断に起因して生じるかまたは独立したタンパク質分解酵素によって行われる。タンパク質またはポリペプチドの酵素による切断は、同時翻訳後または翻訳後のいずれでも起こりうる。したがって、本明細書で用いられる「エンドペプチダーゼ切断部位」なる用語は、アミノ酸またはヌクレオチド配列内の切断部位であって、この配列がエンドペプチダーゼ(例えばエンテロペプチダーゼまたはPA clanプロテアーゼ)により切断されるかまたは切断可能である部位を意味する。エンドペプチダーゼの例としては、これらに限定されるものではないがトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、エラスターゼ、トロンビン、コラゲナーゼ、フューリン、サーモリシン、エンドペプチダーゼV8、カテプシン、グルタミルエンドペプチダーゼが挙げられる。
あるいは「切断部位」なる用語は、それぞれアミノ酸またはヌクレオチドの間のペプチド結合またはホスホジエステル結合の形成を妨げるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。例えば、ポリペプチドまたはポリタンパク質の同時翻訳自己プロセシングによって結合の形成を妨げることができ、その結果、単一のオープンリーディングフレームの単一の翻訳事象に由来する連続しない2つの翻訳産物が生じる。典型的には、こうした自己プロセシングは、ペプチド結合を形成せずにあるコドンから次のコドンへと移動するように翻訳複合体を誘導する偽終止コドン(pseudo stop−codon)配列により生じる「リボソームスキップ」によって達成される。リボソームスキップを誘導する配列の例としては、これらに限定されるものではないが、ウイルス2Aペプチドまたは2A様ペプチド(本明細書ではこれら双方をまとめて「2Aペプチド」または互換的に「2A部位」または「2A切断部位」と呼ぶ)が挙げられ、これらは、例えばピコルナウイルス、昆虫ウイルス、アフトウイルス科(Aphtoviridae)、ロタウイルスおよびトリパノソーマといった数種の科のウイルスによって用いられる。最もよく知られているのは、単一のORFから複数のポリペプチドを生成するために典型的に使用される、ピコルナウイルス科のライノウイルスおよび口蹄疫ウイルスの2A部位である。
したがって、本明細書で用いられる場合の「自己切断部位」なる用語は、アミノ酸またはヌクレオチド配列内の切断部位であって、いずれかのさらなる分子が関与する切断を伴わずにこの配列が切断されるかもしくは切断可能であるか、またはこの配列におけるペプチド結合もしくはホスホジエステル結合の形成が最初の段階で(例えば上記のような同時翻訳自己プロセシングを介して)防がれる部位を意味する。
切断部位は典型的に、(例えば「切断部位」が、タンパク質へ翻訳されないが、翻訳の中断をもたらす場合に)数個のアミノ酸を含むかまたは数個のコドンによりコードされることが理解される。それゆえ、切断部位はペプチドリンカーという目的をも満たし、すなわち切断部位は2つのペプチドを立体的に分離する。したがって、いくつかの実施形態では、「切断部位」は、ペプチドリンカーでもあり、上記の切断機能を提供するものでもある。本実施形態では、切断部位は、さらなるNおよび/またはC末端アミノ酸を包含してもよい。
本明細書で用いられる場合の「親水性(hydrophil)」または「親水性(hydrophillic)」なる用語は、極性溶媒、特に水または他の極性基と相互作用する分子実体または置換基の能力を意味する(PAC, 1994, 66, 1077. Glossary of terms used in physical organic chemistry (IUPAC Recommendations 1994))。典型的には、親水性分子は、水または他の極性溶媒によく溶解する。対照的に、本明細書で用いられる場合の「疎水性」なる用語は、水に引き寄せられないかもしくは水と相互作用しない分子またはそうした分子の部分を意味する。疎水性分子は、非極性である傾向にあり、したがって他の中性分子および非極性溶媒に対して親和性を示し、しばしば水中で集塊化してミセルを形成する。
「疎水性スケール」とは、アミノ酸残基の相対的な疎水性を定める値である。この値が正の方向に大きくなるほど、各アミノ酸の疎水性が高くなる。疎水性の測定に使用される様々な方法に起因して、様々な疎水性スケール間には顕著な差異がある。Roseらによるスケール[G. Rose, A. Geselowitz, G. Lesser, R. Lee and M. Zehfus, Science 229 (1985) 834−838]およびJaninによるスケール[J. Janin, Nature, 277 (1979) 491−492]の双方とも、システインを最も疎水性の高い残基として位置づけている。なぜなら、これらはいずれも、既知の3−D構造を用いてタンパク質を検査し、疎水特性を、そのタンパク質の表面上ではなくそのタンパク質の内部に認められる残基についての傾向として定めるためである(システインは、球状構造の内部で生じるべきであるジスルフィド結合を形成するため、システインは最も疎水性が高いものとして等級付けされている)。KyteおよびDoolittleによるスケール[Kyte, J. and Doolittle, R.F. (1982) A simple method for displaying the hydropathic character of a protein. J. Mol. Biol. 157, 105−132]およびWolfendenによるスケール[R. Wolfenden, L. Andersson, P. Cullis and C. Southgate, Biochemistry 20 (1981) 849−855]は、アミノ酸側鎖の物理化学的性質に由来する。これらのスケールは、主にアミノ酸構造の検査によって得られる。Kyte−Doolittleによれば、個々のアミノ酸は、以下のハイドロパシー値を示す:
「GRAVY(ハイドロパシーの総平均)値」は、ポリペプチドまたはタンパク質の疎水性を表す値の1つであり、全アミノ酸のハイドロパシー値の合計をタンパク質の長さで除することによって定められる。GRAVY値の算出は、Kyte−Doolittleによるスケールに基づいて行われる。評点が正の方向に大きくなることは、疎水性がより高いことを示す。
本明細書で用いられる場合に、「ベクター」なる用語は、タンパク質もしくはポリヌクレオチドまたはそれらの混合物であって、細胞への導入が可能であるものか、またはその中に含まれるタンパク質および/もしくは核酸を細胞に導入することが可能であるものを意味する。本発明の文脈においては、導入されるポリヌクレオチドによりコードされる目的の遺伝子が、1つまたは複数のベクターの導入時に細胞内で発現されることが好ましい。適切なベクターの例としては、これらに限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が挙げられる。1つまたは複数の目的の遺伝子産物をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含むベクターはさらに、発現制御配列を含んでよい。1つまたは複数の目的の遺伝子産物をコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターにおいて、発現を、1つまたは複数の発現制御配列によって一緒に制御することも別々に制御することもできる。より具体的には、ベクターに含まれる各ポリヌクレオチドを別々の発現制御配列によって制御することも、ベクターに含まれるすべてのポリヌクレオチドを単一の発現制御配列によって制御することもできる。単一の発現制御配列によって制御される単一のベクターに含まれるポリヌクレオチドは、好ましくはオープンリーディングフレームを形成する。
本明細書で用いられる場合の「宿主細胞」なる用語は、ベクター(例えばプラスミドまたはウイルス)を宿す細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞(例えば細菌細胞)または真核細胞(例えば真菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞)であってよい。細菌細胞の例としては、これらに限定されるものではないが、大腸菌細胞、例えば大腸菌BL21株または大腸菌K12株が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「バッファー」または「バッファー溶液」なる用語は、弱酸とその共役塩基(逆もまた同様)との混合物からなる水溶液を意味する。この「バッファー」または「バッファー溶液」に少量または中程度の量の強酸または強塩基を加えてもそのpHはほとんど変化しないため、これは溶液のpHの変化を防ぐために使用される。バッファー溶液は、pHをほぼ一定の値に保持する手段として様々な用途で使用される。酸性領域のバッファーについては、例えば塩酸などの強酸をバッファーに加えることによりpHを所望の値に調整することができる。アルカリ性のバッファーについては、例えば水酸化ナトリウムのような強塩基を加えることができる。あるいは、酸とその共役塩基との混合物からバッファー混合物を製造することもできる。例えば、酢酸と酢酸ナトリウムとの混合物から酢酸バッファーを製造することができる。同様に、塩基とその共役酸との混合物からアルカリ性バッファーを製造することができる。バッファーの例としては、これらに限定されるものではないが、リン酸バッファー(例えばPBS)、クエン酸バッファー(例えばSSC)、ヒスチジンバッファー、APSバッファー、ビシンバッファー、トリスバッファー、トリシンバッファー、TAPSOバッファー、HEPESバッファー、TESバッファー、MOPSバッファー、PIPESバッファー、カコジル酸バッファー、MESバッファー、コハク酸バッファーが挙げられる。
リン酸緩衝生理食塩水(略してPBS)は、生物学的試験において一般的に使用されるバッファー溶液である。これは、リン酸ナトリウムと塩化ナトリウムと、製剤によっては塩化カリウムとリン酸カリウムとを含有する塩水溶液である。これらの溶液の浸透圧およびイオン濃度は、人体の浸透圧およびイオン濃度と一致する(等張性)。
クエン酸バッファー溶液としては一般的に使用されるSSCバッファーが挙げられるが、クエン酸バッファー溶液では、pH7.0の中性を保持するためにクエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムが使用される。
本明細書で用いられる場合の「関節」なる用語は、2つ以上の骨が接触する箇所を意味する。この用語は、可動関節を意味する場合も不動関節を意味する場合もある。さらに関節とは、コラーゲンに富む緻密結合組織によって骨が付着されている繊維性連結であってよく、また骨が軟骨によって結合されている軟骨性連結であってもよい。また関節は、滑膜性連結であってもよい。この滑膜性連結では、骨は、直接結合されておらずに滑膜腔を有し、かつ関節軟骨包によって付着されている。この関節軟骨包は、副靭帯および腱を伴う。滑膜性連結の例としては、これらに限定されるものではないが、臼状関節、例えば股関節または肩関節;楕円関節および平面関節、例えば手首の関節;蝶番関節、例えば肘、膝、足首または指およびつま先の関節;鞍関節、例えば親指の関節;ならびに車軸関節、例えば環椎および軸椎の関節が挙げられる。
「組織の現状(tissue status)」、「組織の現状(status of tissue)」、「組織の態様(tissue state)」および「組織の態様(state of tissue)」なる用語は、本明細書では互換的に用いられ、これらは組織の状態を意味する。組織の態様とは、その組織の特定の形態によって特徴付けることができ、またこれらに限定されるものではないが例えばペプチド、タンパク質および核酸またはそれらの組合せ物などの1つまたは複数の特定の分子の発現によって特徴付けることもできる。組織の現状については、疾病または損傷がなくその固有の機能を効率的に果たしている際のその組織の状態に似ている場合に「健康」または「正常」と考えることができる。その組織が疾病または損傷のためにその機能を果たしていない場合、組織の現状を「変性」、「疾患」または「異常」と考えることができる。それに加えてまたはそれとは異なって、組織の形態またはその分子の発現パターンが正常組織と比較して「変更」または「変化」している場合、その組織の現状を「変性」、「疾患」または「異常」と考えることができる。したがって、組織の形態または組織における特定の分子の発現パターンは、組織の態様の指標となりうる。組織の現状の例としては、これらに限定されるものではないが、組織の分解、例えば軟骨の分解、骨の分解および滑膜の分解、組織の炎症、例えば軟骨の炎症もしくは滑膜の炎症、組織のリモデリング、例えば骨のリモデリングもしくは軟骨のリモデリング、硬化、液体蓄積または増殖性組織、例えば創傷治癒過程における増殖、嚢胞形成における増殖もしくは癌における増殖が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「参照サンプル」なる用語は、対象サンプルと実質的に同一の様式で分析され、その情報が対象サンプルの情報と比較されるサンプルを意味する。それにより、参照サンプルは、対象サンプルから得られた情報の評価を可能にする基準を提供する。参照サンプルは、置換、欠落または追加されうる1つの成分を除いて、対象サンプルと同一であってもよい。例示されるように、本発明の文脈では、参照サンプルは、アグリカン結合部分を含まないことがあり、また対象サンプルとは異なるアグリカン結合部分を含む場合もある。
本明細書で用いられる場合の「参照値」なる用語は、特定の状態を示すことが知られている値を意味する。本発明の文脈において、参照値は、アグリカン結合部分を含まないサンプルにおいて存在することが知られている分解の程度を表す場合がある。あるいは、参照値は、既知の異なるアグリカン結合部分が示しうる結合活性を表す場合もある。あるいは、参照値は、抗原結合部分の非存在下での分解の程度の結合活性の変化を表す場合もある。本発明の文脈において、参照値は、CD−RAPがアグリカンに対して示す結合活性である場合がある。あるいは、基準値は、CD−RAPの存在下でのアグリカンの分解の程度の変化である場合もある。
タンパク質の「低下した」または「減少した」レベルなる用語は、サンプル中のそのタンパク質のレベルが、参照体または参照サンプルと比較して低減していることを意味する。タンパク質の「上昇した」または「増加した」レベルなる用語は、サンプル中のそのタンパク質のレベルが、参照体または対照サンプルと比較して高いことを意味する。
「障害」なる用語は、組織、器官または個体がその機能をもはや効率的に果たすことができない異常な状態、特に異常な医学的状態、例えば疾患または損傷を意味する。
典型的には、「損傷」とは、身体的傷害によって引き起こされる組織、器官または個体への損害を意味する。損傷の例としては、これらに限定されるものではないが、外傷性損傷、反復運動過多損傷、放射線損傷、中毒、熱傷もしくは凍傷、毒素による損傷または製薬学的薬物の副作用(例えばワクチンによる損傷)および再灌流による損傷が挙げられる。冒された組織または器官に応じて、損傷を相応して分類することもでき、例えば軟骨損傷、骨損傷または関節損傷に分類することができる。
「疾患」なる用語は、異常な生理学的状態を意味する。疾患の例としては、これらに限定されるものではないが、炎症性疾患、感染性疾患、遺伝的障害、自己免疫疾患、変性疾患および増殖性疾患(例えば様々な種類の癌)が挙げられる。患者において、1つの疾患が、1つまたはいくつかの異なる組織および/または器官を侵す場合がある。冒された組織または器官に応じて、疾患を相応して分類することもでき、例えば軟骨疾患、骨疾患または関節疾患に分類することができる。
必ずとは限らないが典型的には、疾患または損傷は、その疾患または損傷の存在を示す特定の「症状」または「徴候」を伴う。したがって、その症状または徴候の存在は、疾患または損傷を患っている組織、器官または個体を示しうる。これらの症状または徴候の変化は、その疾患または損傷の進行を示しうる。疾患または損傷の進行は、典型的には、その症状または徴候の増加または減少を特徴とし、こうした増加または減少は、その疾患または損傷の「悪化」または「改善」を示しうる。疾患または損傷の「悪化」は、組織、器官または生物がその機能を効率的に果たす能力の低下を特徴とし、一方で疾患または損傷の「改善」は、典型的には、組織、器官または個体がその機能を効率的に果たす能力の増加を特徴とする。疾患または損傷が「発現するリスク」のある組織、器官または個体は、健康な態様ではあるものの、疾患または損傷の可能性を示す。典型的には、疾患または損傷が発現するリスクは、その疾患の初期のまたは弱い徴候または症状を伴う。そのような場合には、疾患または損傷の発症および/または進行を、なおも治療により予防することができる。
「関節損傷」なる用語は、関節の物理的損害を意味し、特に、関節の、外傷性損傷、反復運動過多損傷、放射線損傷、中毒、熱傷もしくは凍傷、毒素による損傷または製薬学的薬物の副作用(例えばワクチンによる損傷)および再灌流傷害を意味する。
本明細書で用いられる場合の「関節疾患」なる用語は、関節の異常な生理学的状態を意味し、特に変性、炎症、感染または自己免疫を原因とするものを意味する。関節疾患の例としては、これらに限定されるものではないが、関節炎、例えば慢性関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎(AS)、若年性特発性関節炎(JIA)、痛風、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎および変形性関節症(OA)、癌、例えば軟骨肉腫、骨肉腫、線維肉腫および多発性骨髄腫、腱炎、滑液包炎、骨折ならびに軟骨または骨への損害が挙げられる。関節疾患は、初期の関節損傷により生じる場合もある。
変形性関節症は、滑膜関節の構造不全および機能不全を招く一連の障害の臨床的および病理学的な転帰と捉えることができる。この変形性関節症は、関節組織の崩壊と修復との間の動的平衡が乱れた場合に生じる。関節軟骨の構造不全は、生理学的および機械的な歪みの影響下で病的に損なわれた軟骨の変性に加えて、健康な軟骨を損傷する異常な機械的歪みに起因しうる。OAは、関節軟骨の進行性の変性を特徴とし、最終的には冒された関節の機能不能を招く。OAの慢性的な進行の過程で、関節軟骨が破壊されて下にある骨組織が外れ、最終的には冒された関節を外科手術により置換することが必要となる。軟骨の破壊に加えて、滑膜および靭帯の病理学的変性が生じている。炎症は、OAにおいては続発症として生じる。OAにおいて認められる形態学的な変化としては、例えば軟骨の侵食および滑膜炎症の程度の変化が挙げられる。これらの変化は、軟骨の巨大分子、特にII型コラーゲン、X型コラーゲンおよびアグリカンの崩壊を招くタンパク質分解酵素を含む生化学的因子の複雑なネットワークに起因する。活性化された滑膜細胞、単核細胞または関節軟骨自体によって生成されるIL−1およびTNF−αなどのサイトカインは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)およびサイトカイン遺伝子発現を有意に上方制御し、かつ代償合成経路を鈍らせる。OAの正確な病因は依然として解明されていないが、この疾患の発症および進行には、いくつかの寄与因子が関連している。最も重要な因子は年齢であるが、周期的な過負荷、肥満、関節の弛緩および遺伝的な素因も重要な役割を果たしている。軟骨基質成分の分解は一般に、細胞外プロテアーゼの合成および活性化の増大と、変性プロセスを増幅するサイトカインとによるものであるとされている。OAの診断は一般に、症状および徴候の緩徐な発症を示す患者の関節の臨床検査に基づいており、X線により診断を確認する。X線によって観察される典型的な変化としては例えば、関節腔の狭小化、縁辺の骨棘、軟骨下硬化症、軟骨下嚢胞形成、骨のリモデリングおよび関節滲出液が挙げられる。
疾患の「症状」とは、その疾患を有する組織、器官または生物で知覚されうる疾患を意味し、これらに限定されるものではないが例えば、その組織、器官または個体の疼痛、衰弱、圧痛、緊張、硬直および攣縮が挙げられる。疾患の「徴候」または「シグナル」としては、これらに限定されるものではないが例えば、特定の指標、例えばバイオマーカーもしくは分子マーカーの変化もしくは変更、例えば存在、欠如、増加もしくは上昇、減少もしくは低下、または症状の発現、存在もしくは悪化が挙げられる。疼痛の症状としては、これらに限定されるものではないが例えば、持続的なまたは変化する灼熱痛、拍動痛、痒感を伴う疼痛または刺痛として知覚されうる、不快な感覚が挙げられる。
本明細書で用いられる場合の「指標」なる用語は、状態の徴候もしくはシグナルを意味するか、または状態を監視するために用いられる。そのような「状態」とは、細胞、組織もしくは器官の生物学的な現状、または個体の健康および/もしくは疾患の現状を意味する。指標は、これらに限定されるものではないが例えばペプチド、タンパク質および核酸といった分子の存在の有無である場合があり、また細胞、組織、器官または個体におけるそうした分子の発現レベルまたは発現パターンの変化である場合もある。指標は、個体における疾患の発症、発現または存在の徴候である場合があり、またそのような疾患のさらなる進行の徴候である場合もある。また指標は、個体において疾患が発現するリスクの徴候である場合もある。例えば、OAのような関節炎疾患に関する既知の指標としては、これらに限定されるものではないが例えば、転写因子、例えばSox−5、Sox−6、Sox−9、Nfat1、pitx1、FoxO、HIF2A、SAF−1、RUNX−2、サイトカイン、例えばIL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFS、TNF−α、NF−κBおよびINF−γ、ホスファターゼ、例えばアルカリホスファターゼ(ALP)、プロテアーゼ、例えばメタロプロテアーゼ(例えばMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−13、MMP−14)、アグリカナーゼ(例えばADAM−8、ADAM−12、ADAM−TS4、ADAM−TS5)ならびにシステインプロテアーゼ(例えばカテプシンB、カテプシンK、カテプシンS、カルパイン、カスパーゼ−3、カスパーゼ−9)、メタロプロテアーゼの組織インヒビター(例えばTIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4)、細胞外基質成分、例えばコラーゲン(例えばII型コラーゲン、VI型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン)、プロテオグリカン(例えばヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸)、アグリカン、エラスチン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ラミニン、CDMP、コンドロモジュリンおよびプレイオトロフィンが挙げられる。典型的には、関節炎、特にOAに冒されている組織、器官または個体において、これらの指標のうちの1つまたは複数が、関節炎に冒されていない組織、器官または個体よりも高いまたは低いレベルで発現または活性化される。例えば、細胞外基質成分であるII型コラーゲンおよびX型コラーゲンならびにアグリカンのレベルは、OAに冒されているかまたはOAを発現するリスクのある組織、器官または個体においては、OAに冒されていないかまたはOAを発現するリスクのない組織、器官または個体と比較して、低下していることが知られている。さらに、転写因子Sox9ならびにメタロプロテアーゼTIMP−1およびTIMP−4の組織インヒビターのレベルは、OAに冒されているかまたはOAを発現するリスクのある組織、器官または個体においては、OAに冒されていないかまたはOAを発現するリスクのない組織、器官または個体と比較して、減少していることが知られている。それとは対照的に、サイトカインIL−1、IL−6およびTNF−αならびにメタロプロテアーゼMMP−1、MMP−2、MMP−3およびMMP−9ならびにホスファターゼALPのレベルは、OAに冒されているかまたはOAを発現するリスクのある組織、器官または個体においては、OAに冒されていないかまたはOAを発現するリスクのない組織、器官または個体と比較して、高まっていることが知られている。指標の「低下した」または「減少した」レベルなる用語は、サンプル中のその指標のレベルが、参照体または参照サンプルと比較して低減していることを意味する。指標の「上昇した」または「増加した」レベルなる用語は、サンプル中のその指標のレベルが、参照体または対照サンプルと比較して高いことを意味する。
本明細書で用いられる場合に、疾患または損傷を「治療する(treat)」、「治療(treating)」または「治療(treatment)」とは、以下のことを1つまたは複数達成することを意味する:(a)疾患または損傷の重篤度を低下させること;(b)治療される疾患または損傷の特徴的な症状の発現を制限または予防すること;(c)治療される疾患または損傷の特徴的な症状の悪化を阻止すること;(d)疾患または損傷を以前有していた個体において、その疾患または損傷の再発を制限または予防すること;および(e)疾患または損傷の症状を以前示していた個体における症状の再発を制限または予防すること。
本明細書で用いられる場合に、疾患または損傷を「予防する(prevent)」、「予防(preventing)」、「予防(prevention)」、または「予防(prophylaxis)」とは、その疾患または損傷が患者に生じるのを妨げることを意味する。
「医薬品」、「医薬組成物」、「薬剤」および「薬物」なる用語は、本明細書では互換的に用いられ、疾患または損傷の特定、予防または治療に使用される物質および/または物質の組合せ物を意味する。
本明細書で用いられる場合に、「投与(administering)」には、インビボ投与と、エキソビボでの組織への直接的な投与、例えば静脈グラフトとが含まれる。投与としては、これらに限定されるものではないが例えば、関節内注射、すなわち膝、股関節、手根中手根関節、中手指節関節、肩、または疾患もしくは損傷に冒された他のいずれかの関節への薬物の適用が挙げられる。透視法により(X線によりまたはコンピュータ断層撮影法により)操作される椎間板への注射も挙げられる。
「有効量」または「治療有効量」とは、狙い通りの目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所与の治療薬の有効量は、例えば該治療薬の性質、投与経路、該治療薬を受容する動物の大きさおよび種類ならびに投与目的などの因子によって変化することとなる。個々の各事例での有効量は、当技術分野において確立されている方法にしたがって当業者が試験により決定することができる。
「製薬学的に許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認を受けているか、または米国薬局方もしくは他の動物、特にヒトにおける使用について一般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
「有効成分」なる用語は、医薬組成物または製剤中の物質であって、生物学的に活性である、すなわち医薬的な価値を提供するものを意味する。医薬組成物は、互いに関連してまたは互いに独立して作用しうる1つまたは複数の有効成分を含有しうる。有効成分は、中性または塩の形態として配合されていてよい。製薬学的に許容される塩としては、これらに限定されるものではないが例えば、遊離アミノ基を用いて形成されるもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものと、遊離カルボキシル基を用いて形成されるもの、例えばこれらに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものとが挙げられる。
「調製物」および「組成物」なる用語は、有効化合物と、担体としての封入材料とを含んで封入体を提供する製剤を包含することを意図しており、ここで、この封入体においては、他の担体を伴うかまたは伴わない有効成分が担体により取り囲まれており、こうしてこの担体とこの有効成分とがまとまった状態にある。
本明細書で用いられる場合の「担体」なる用語は、薬理学的に不活性な物質、例えば、これに限定されるものではないが、治療上有効な成分とともに投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルを意味する。こうした製薬学的担体は、液状であっても固体状であってもよい。液状担体の例としては、これらに限定されるものではないが、滅菌液体、例えば生理食塩水および油が挙げられ、この油としては例えば、石油起源のもの、動物起源のもの、植物起源のものまたは合成起源のものが挙げられ、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液は、特に注射液用の液状担体としても使用可能である。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合の好ましい担体である。適切な製薬学的担体の例は、E.W.Martinによる”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
適切な製薬学的「賦形剤」としては例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
「アジュバント」なる用語は、有効成分の治療効果を増大、刺激、活性化、強化または調節する薬剤を意味する。こうしたアジュバントの例としては、これらに限定されるものではないが、無機アジュバント(例えば無機金属塩、例えばリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム)、有機アジュバント(例えばサポニンもしくはスクアレン)、油性アジュバント(例えばフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えばIL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFSおよびINF−γ)、微粒子状アジュバント(例えば免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソームもしくは生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えばモノホスホリルリピドAもしくはムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログもしくは合成リピドA)または合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えばポリアルギニンもしくはポリリシン)が挙げられる。
本明細書で用いられる場合に、「患者」とは、本発明から利益を得ることができるあらゆる哺乳動物、爬虫類または鳥類を意味する。好ましくは、患者は、試験用動物(例えばマウス、ラットもしくはウサギ)、家畜(例えばモルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、水生のカメ、陸生のカメ、ヘビもしくはトカゲ)または霊長類、例えばチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよびヒトからなる群から選択される。「患者」は、ヒトであることが特に好ましい。
実施形態
プレ配列を用いてCD−RAPを発現させた場合、発酵収量および特にフォールディングが有意に増大することが判明した。このプレ配列自体の存在に加えて、プレCD−RAPの収穫量も、プレ配列の長さが長くなるにつれて高くなる。このタンパク質のフォールディングが成功した後に得られたフォールディング済みのプレCD−RAPの量についても、同様のことが認められた。
したがって第1の態様において、本発明は、
a) そのC末端に切断部位を含むプレ配列と、
b) CD−RAPまたはその多様体と
を含むCD−RAP前駆体タンパク質に関する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPである。さらなる実施形態では、CD−RAPは、配列番号1によるアミノ酸配列またはその多様体を有する。特定の実施形態では、前記多様体は少なくとも80%の配列同一性を有し、すなわち前記多様体は、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。
特定の実施形態では、プレ配列は、CD−RAPのフォールディングを妨害しない。したがって、フォールディング前にプレ配列を除去する必要はない。特定の実施形態では、プレ配列は、CD−RAPのフォールディングを改善する。さらなる実施形態では、化学的または酵素的なシャペロンの非存在下で(すなわち存在しない状態で)CD−RAP前駆体タンパク質のフォールディングを行うことができる。さらなる実施形態では、CD−RAPは、1次構造、2次構造または3次構造で存在する。
特定の実施形態では、プレ配列は、5〜50のアミノ酸の長さを有し、すなわちプレ配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45または50のアミノ酸の長さを有する。特定の実施形態では、プレ配列は、5〜40、6〜35、7〜33、8〜30、9〜25または10〜20のアミノ酸の長さを有する。
第1の態様の特定の実施形態では、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均は、CD−RAPが有するハイドロパシーの総平均よりも低い。
特定の実施形態では、プレ配列が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2未満である。特定の実施形態では、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2〜−1.7であり、特に−0.5〜−1.7であり、特に−0.6〜−1.7であり、特に−0.7〜−1.7であり、特に−0.8〜−1.7である。特に、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2未満、−0.3未満、−0.4未満、−0.5未満、−0.6未満、−0.7未満、−0.8未満、−0.9未満、−1.0未満、−1.2未満、1.3未満、−1.4未満、1.5未満、−1.6未満または−1.7未満である。
特定の実施形態では、前駆体タンパク質が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.03未満である。特定の実施形態では、前駆体タンパク質が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.03〜−0.3である。特に、前駆体タンパク質が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.3未満、−0.2未満、−0.1未満、−0.09未満、−0.08未満、−0.07未満、−0.06未満、−0.05未満、−0.04未満または−0.03未満である。
第1の態様の実施形態では、プレ配列の切断部位は、酵素切断部位である。特定の実施形態では、切断部位は、エンドペプチダーゼ切断部位であり、より具体的には切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位であるか、または混合求核体スーパーファミリーA(PA clan)プロテアーゼ切断部位である。特定の実施形態では、切断部位は、Rアミノ酸またはKアミノ酸である。
さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、エンドペプチダーゼは、トリプシンまたはキモトリプシンであり、特にトリプシンである。
特定の実施形態では、プレ配列は、アフィニティータグを含む。特定の実施形態では、アフィニティータグは、ポリHisタグである。
特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTX1T、MATTX1TG、MATTX1TGN、MATTX1TGNSまたはMATTX1TGNSAを含み、ここで、X1は、LまたはSである。したがって特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、MATTST(配列番号2)、MATTLT(配列番号3)、MATTSTG(配列番号4)、MATTLTG(配列番号5)、MATTSTGN(配列番号6)、MATTLTGN(配列番号7)、MATTSTGNS(配列番号8)、MATTLTGNS(配列番号9)、MATTSTGNSA(配列番号10)、MATTLTGNSA(配列番号11)、MATTSTR(配列番号12)、MATTLTR(配列番号13)、MATTSTGNSAR(配列番号14)、MATTLTGNSAR(配列番号15)、MATTSTLTTHWHWHGNSAR(配列番号16)、MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR(配列番号17)、MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR(配列番号18)およびMATTSTGNSARFVNQHLH HHHHHHHGGGENQQQR(配列番号19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、アミノ酸MATTST、MATTSTG、MATTSTGN、MATTSTGNSもしくはMATTSTGNSAまたはその多様体を含み、かつそのC末端に切断部位を含む。特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、配列番号19のアミノ酸配列のアミノ酸1−6、1−7、1−8、1−9、1−10、1−11、1−12、1−13、1−14、1−15もしくは1−16またはその多様体を含み、かつそのC末端に切断部位を含む。特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTSTGNSAを含み、かつそのC末端に切断部位を含む。さらなる実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTSTGNSARFVNQHLを含み、かつそのC末端に切断部位を含む。
特定の実施形態では、プレ配列のアミノ酸配列は、配列番号19のアミノ酸配列(MATTSTGNSARFVNQHLHHHHHHHHGGGENQQQR)もしくはその多様体を含むかまたはそれからなる。
特定の実施形態では、前駆体タンパク質は、配列番号20によるアミノ酸配列またはその多様体を有する。
第2の態様において、本発明は、上記で詳述した本発明の第1の態様の前駆体CD−RAPタンパク質をコードする核酸に関する。
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様の核酸を含むベクターに関する。
特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、細菌胞子または人工染色体である。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドである。
第3の態様のさらなる実施形態では、ベクターは、耐性遺伝子をコードする核酸をさらに含み、特にアンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンまたはG418に対して耐性を示す遺伝子をコードする核酸をさらに含む。
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、ベクターは、調節エレメントをさらに含む。特定の実施形態では、これらの調節エレメントは、プロモーター、エンハンサーおよびサイレンサーからなる群から選択される。特定の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターは、T7プロモーターである。
特定の実施形態では、プラスミドは、pET−プラスミドであり、特にpET−52b−IIプラスミドである。
第4の態様において、本発明は、第1の態様の前駆体CD−RAPタンパク質、第2の態様の核酸または第3の態様のベクターを含む宿主細胞に関する。
特定の実施形態では、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞である。
特定の実施形態では、原核細胞は、細菌細胞であり、特に大腸菌(E.coli)細胞である。特定の実施形態では、大腸菌細胞は、大腸菌BL21株または大腸菌K12株の細胞である。
特定の実施形態では、真核細胞は、真菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、真菌細胞は、酵母細胞であり、特にクルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis (K.lactis))である。
第5の態様において、本発明は、ネイティブCD−RAPの製造方法であって、
a) 以下:
a) そのC末端に切断部位を含むプレ配列と、
b) CD−RAPまたはその多様体と
を含むCD−RAP前駆体タンパク質を提供するステップと、
b) 前記プレ配列を除去してネイティブCD−RAPを取得するステップと
を含む方法に関する。
特定の実施形態では、CD−RAP前駆体タンパク質は、1次立体配座、2次立体配座または3次立体配座で存在しうる。
特定の実施形態では、本発明の第5の態様の方法は、以下:
c) 前記CD−RAP前駆体タンパク質のフォールディングを行い、適宜、前記フォールディング済みのCD−RAPを精製するステップと、
d) 前記ネイティブCD−RAPを精製するステップと
のうちの1つまたは複数をさらに含む。
本発明の第5の態様の実施形態では、ステップb)においてプレ配列を除去する前かまたはその後に、ステップc)においてCD−RAPのフォールディングを行う。特定の実施形態では、ステップc)を、ステップa)の後でかつステップb)の前に行う。したがって、特定の実施形態では、CD−RAPをフォールディングした後にプレ配列を除去し、すなわちプレ配列を除去する前にCD−RAPのフォールディングを行う。
特に、CD−RAP前駆体タンパク質をステップa)において1次立体配座または2次立体配座で提供する実施形態では、ステップc)においてCD−RAPのフォールディングを行い、その後ステップb)においてプレ配列を除去する。
特に、CD−RAP前駆体タンパク質を、ステップa)において3次立体配座で提供する実施形態では、ネイティブCD−RAPの取得には、フォールディングステップc)は不要である。本発明の第5の態様の実施形態では、前駆体CD−RAPを、ステップa)において生物工学的手段により提供する。特定の実施形態では、前駆体CD−RAPを、第4の態様の宿主細胞からの単離により提供する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPである。さらなる実施形態では、CD−RAPは、配列番号1によるアミノ酸配列またはその多様体を有する。特定の実施形態では、前記多様体は少なくとも80%の配列同一性を有し、すなわち前記多様体は、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。
特定の実施形態では、プレ配列は5〜50のアミノ酸の長さを有し、すなわちプレ配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45または50のアミノ酸の長さを有する。特定の実施形態では、プレ配列は、5〜40、6〜35、7〜33、8〜30、9〜25または10〜20のアミノ酸の長さを有する。
第5の態様の特定の実施形態では、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、CD−RAPが有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)よりも低い。
特定の実施形態では、プレ配列が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2未満である。特定の実施形態では、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2〜−1.7であり、特に−0.5〜−1.7であり、特に−0.6〜−1.7であり、特に−0.7〜−1.7であり、特に−0.8〜−1.7である。特に、プレ配列が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2未満、−0.3未満、−0.4未満、−0.5未満、−0.6未満、−0.7未満、−0.8未満、−0.9未満、−1.0未満、−1.2未満、1.3未満、−1.4未満、1.5未満、−1.6未満または−1.7未満である。
特定の実施形態では、前駆体タンパク質が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.03未満である。特定の実施形態では、前駆体タンパク質が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.03〜−0.3である。特に、前駆体タンパク質が有するハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.3未満、−0.2未満、−0.1未満、−0.09未満、−0.08未満、−0.07未満、−0.06未満、−0.05未満、−0.04未満または−0.03未満である。
第5の態様の実施形態では、プレ配列の切断部位は、酵素切断部位である。特定の実施形態では、切断部位は、エンドペプチダーゼ切断部位であり、より具体的には切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位であるか、または混合求核体スーパーファミリーA(PA clan)プロテアーゼ切断部位である。特定の実施形態では、切断部位は、Rアミノ酸またはKアミノ酸である。
さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、エンドペプチダーゼは、トリプシンまたはキモトリプシンであり、特にトリプシンである。
特定の実施形態では、プレ配列は、アフィニティータグを含む。特定の実施形態では、アフィニティータグは、ポリHisタグである。
特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTX1T、MATTX1TG、MATTX1TGN、MATTX1TGNSまたはMATTX1TGNSAを含み、ここで、X1は、LまたはSである。したがって特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、MATTST(配列番号2)、MATTLT(配列番号3)、MATTSTG(配列番号4)、MATTLTG(配列番号5)、MATTSTGN(配列番号6)、MATTLTGN(配列番号7)、MATTSTGNS(配列番号8)、MATTLTGNS(配列番号9)、MATTSTGNSA(配列番号10)、MATTLTGNSA(配列番号11)、MATTSTR(配列番号12)、MATTLTR(配列番号13)、MATTSTGNSAR(配列番号14)、MATTLTGNSAR(配列番号15)、MATTSTLTTHWHWHGNSAR(配列番号16)、MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR(配列番号17)、MATTSTGNSAHFQHHHGSLAR(配列番号18)およびMATTSTGNSARFVNQHLH HHHHHHHGGGENQQQR(配列番号19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、アミノ酸MATTST、MATTSTG、MATTSTGN、MATTSTGNSもしくはMATTSTGNSAまたはその多様体を含み、かつそのC末端に切断部位を含む。特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端に、配列番号19のアミノ酸配列のアミノ酸1−6、1−7、1−8、1−9、1−10、1−11、1−12、1−13、1−14、1−15もしくは1−16またはその多様体を含み、かつそのC末端に切断部位を含む。特定の実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTSTGNSAを含み、かつそのC末端に切断部位を含む。さらなる実施形態では、プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTSTGNSARFVNQHLを含み、かつそのC末端に切断部位を含む。
特定の実施形態では、プレ配列のアミノ酸配列は、配列番号19のアミノ酸配列(MATTSTGNSARFVNQHLHHHHHHHHGGGENQQQR)もしくはその多様体を含むかまたはそれからなる。
本発明の第5の態様の実施形態では、プレ配列を、ステップb)において酵素による切断によって除去する。特に、プレ配列を、エンテロキナーゼによる切断またはエンドペプチダーゼによる切断によって除去する。特定の実施形態では、プレ配列を、ステップb)においてトリプシンによる切断によって除去する。
本発明の第5の態様のさらなる実施形態では、ステップb)におけるタンパク質分解酵素、特にトリプシンと前駆体CD−RAPタンパク質との比は、タンパク質1mgあたり酵素が1単位となる比である。
本発明の第5の態様のさらなる実施形態では、ステップb)を0.5〜20時間にわたって行い、すなわちステップb)を、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間または20時間にわたって行う。特定の実施形態では、ステップb)を16時間未満で行い、すなわちステップb)を、16時間未満、15時間未満、14時間未満、13時間未満、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満または1時間未満で行う。特定の実施形態では、ステップb)を、0.5〜20時間、1〜15時間、2〜8時間または4〜7時間にわたって行う。
本発明の第5の態様のさらなる実施形態では、ステップb)をpH5〜9で行い、すなわちステップb)を、pH5、pH6、pH7、pH8またはpH9で行う。特定の実施形態では、pHは、7.8および8.8であり、特に8.3である。特定の実施形態では、ステップb)を、pH5〜9、pH6〜9、pH7〜8.5、pH7.5〜8.5またはpH8〜8.5で行う。
本発明の第5の態様のさらなる実施形態では、ステップb)を5〜40℃の温度で行い、すなわちステップb)を、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃または40℃の温度で行う。特定の実施形態では、ステップb)を、5〜40℃、10〜30℃または20〜25℃の温度で行う。
本発明の第5の態様のさらなる実施形態では、ステップc)は、
(i) 前駆体CD−RAPタンパク質を変性バッファー中でインキュベートするステップと、
(ii) 前記ステップ(i)で得られた溶液をフォールディングバッファーに加えるステップと
を含む。
特定の実施形態では、ステップ(i)における変性バッファーは、ジチオトレイトール(DTT)を含有する。DTTの濃度は、溶液中の前駆体CD−RAPタンパク質の濃度が増加するにつれて増加する。特定の実施形態では、変性バッファーは、DTTを5〜15mMの濃度で含有し、すなわちDTTを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mMまたは15mMの濃度で含有し、特に10mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、変性バッファーは、DTTを5〜15mMの濃度で含有し、すなわちDTTを6〜14mM、7〜13mM、8〜12mM、9〜11mMの濃度で含有する。
特定の実施形態では、フォールディングバッファーは、アルギニンを含有する。特定の実施形態では、フォールディングバッファーは、アルギニンを0.5〜1モル/Lの濃度で含有し、すなわちアルギニンを0.5モル/L、0.6モル/L、0.7モル/L、0.75モル/L、0.8モル/L、0.9モル/Lまたは1モル/Lの濃度で含有し、特に0.75モル/Lの濃度で含有する。特定の実施形態では、フォールディングバッファーは、アルギニンを0.5〜1モル/Lの濃度で含有し、すなわちアルギニンを0.55〜0.9モル/L、0.6〜0.8モル/L、0.7〜0.8モル/Lの濃度で含有する。
さらなる実施形態では、フォールディングバッファーは、いかなる化学的シャペロンも酵素的シャペロンも含まない。
特定の実施形態では、変性溶液を、ステップ(ii)においてフォールディングバッファーにゆっくりと加える。特定の実施形態では、ステップ(ii)においてフォールディングバッファーを1〜3時間の時間範囲にわたって加え、すなわちステップ(ii)においてフォールディングバッファーを1時間、1.1時間、1.2時間、1.3時間、1.4時間、1.5時間、1.6時間、1.7時間、1.8時間、1.9時間、2時間、2.1時間、2.2時間、2.3時間、2.4時間、2.5時間、2.6時間、2.7時間、2.8時間、2.9時間または3時間の時間範囲にわたって加える。特定の実施形態では、ステップ(ii)においてフォールディングバッファーを1〜3時間、特に2〜3時間の時間範囲にわたって加える。
特定の実施形態では、フォールディングステップc)を5〜25℃の温度で行い、すなわちフォールディングステップc)を、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃の温度で行い、特に10℃の温度で行う。特定の実施形態では、ステップc)を、5〜25℃、5〜20℃または5〜15℃の温度で行う。
本発明の第5の態様の特定の実施形態では、フォールディング済みの前駆体CD−RAPを、クロマトグラフィーにより精製する。特定の実施形態では、フォールディング済みの前駆体CD−RAPを、HICクロマトグラフィーまたはマルチモーダル(MM)クロマトグラフィーにより精製する。特定の実施形態では、クロマトグラフィーによる精製の前に、CD−RAPをろ過する。
本発明の第5の態様の特定の実施形態では、ネイティブCD−RAPを、クロマトグラフィーにより精製する。特定の実施形態では、ネイティブCD−RAPを、HIC−クロマトグラフィーにより精製する。
第6の態様において、本発明は、CD−RAPタンパク質調製物であって、107のアミノ酸の長さを有する配列番号1の成熟CD−RAP配列を有するCD−RAPタンパク質を含有するCD−RAPタンパク質調製物に関する。
本発明の第6の態様の特定の実施形態では、CD−RAPタンパク質調製物中に存在する他のいずれかのCD−RAPタンパク質に対する前記CD−RAP(107AA)の比は、99重量%以上である。特定の実施形態では、CD−RAPタンパク質調製物中に存在する他のいずれかのCD−RAPタンパク質に対する前記CD−RAP(107AA)の比は、99.5重量%以上または99.9重量%以上である。
特定の実施形態では、本発明の第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物は、105のアミノ酸の長さを有する配列番号21のCD−RAP配列を有するCD−RAP(105AA)を含有しない。
本発明者らにより認識されるように、従来入手可能であるCD−RAPタンパク質調製物は、N末端切断型CD−RAPであるCD−RAP(105AA)をかなりの量で常に含有していた。本明細書に開示されるCD−RAP前駆体タンパク質によって今では、純粋なCD−RAP(107AA)の調製が可能である。CD−RAP(105AA)を含有しない調製物とは特に、CD−RAP(105AA)の含有量が、該調製物中に存在するCD−RAP(107AA)タンパク質を基準として1重量%以下、特に0.5重量%以下、特に0.1重量%以下、特に0.01重量%以下である調製物を意味する。
特定の実施形態では、CD−RAPタンパク質調製物は、40℃以上の融解温度を示す。特定の実施形態では、本発明のCD−RAPタンパク質調製物は、40℃以上、特に45℃以上、特に48℃以上、特に50℃以上、特に52℃以上の融解温度を示す。最も好ましくは、CD−RAPタンパク質調製物は、約54℃の融解温度を有し、最も好ましくは約55℃の融解温度を示す。融解点は特に、200mMのL−アルギニン、50mMのNaH2PO4、pH7.5のバッファー中で1.0mg/mLのCD−RAP濃度で、DSF(示差走査型蛍光定量法)により測定される。
第7の態様において、本発明は、CD−RAPもしくはその多様体または上記で詳述した第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物と、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸と、バッファーとを含む組成物に関する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPまたはその多様体であり、特に配列番号1によるヒトCD−RAPまたはその多様体である。
特定の実施形態では、前記多様体は、配列番号1によるCD−RAPに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、上記で詳述した本発明の第5の態様の方法によって得られるネイティブCD−RAPである。
本発明の第7の態様の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによりCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、CD−RAPの凝集を防止する。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンからなる群から選択される。
本発明の第7の態様の実施形態では、バッファーは、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによってCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、バッファーは、CD−RAPの分解を防止する。特定の実施形態では、バッファーは、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリスバッファーからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の第7の態様の組成物は、糖類またはアミノ糖類をさらに含有する。特定の実施形態では、糖類は、単糖類、二糖類または三糖類であり、特にスクロース、マルトース、トレハロースまたはラフィノースからなる群から選択される。特定の実施形態では、アミノ糖類は、グルコサミン、N−メチルグルコサミン、ガラクトサミンまたはノイラミン酸からなる群から選択される。
特定の実施形態では、本発明の第7の態様の組成物は、アスコルビン酸および/またはグリシンを含有しない。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、アルギニンを50〜500mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、アルギニンを50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、アルギニンを100〜350mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、アルギニンを100〜200mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、アルギニンを200mMの濃度で含有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、ヒスチジンを5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、ヒスチジンを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジンを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、ヒスチジンを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジンを50mMの濃度で含有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、リン酸バッファーを含有する。組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを20mMの濃度で含有する。
組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、リン酸カリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、リン酸カリウムを20mMの濃度で含有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、クエン酸バッファーを含有する。組成物がクエン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、クエン酸塩を水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、クエン酸塩を水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、クエン酸塩を10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、クエン酸塩を20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、クエン酸塩を20mMの濃度で含有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、スクロースをさらに含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロースを5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、スクロースを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロースを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、スクロースを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、スクロースを45mMの濃度で含有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、負に荷電したアミノ酸をさらに含有する。特定の実施形態では、負に荷電したアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される。特定の実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する。
組成物がグルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する実施形態では、アルギニンとグルタミン酸との全濃度は50〜500mMであり、すなわちアルギニンとグルタミン酸との全濃度は、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMである。いくつかの実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を100〜350mM、特に100〜200mMの全濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を、200mMの全濃度で含有する。
組成物がアルギニンとグルタミン酸との組合せ物を含有する実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1.25の比で存在する。さらなる実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、特に1:1.5の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:2の比で存在する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物のpH値は、5.5〜8.0であり、すなわち組成物のpH値は、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0である。いくつかの実施形態では、組成物のpH値は、6.0〜7.5である。さらなる実施形態では、組成物のpH値は、6.0〜6.5である。特定の実施形態では、組成物のpH値は、6である。
本発明の第7の態様の実施形態では、リン酸または塩化水素を用いて組成物のpH値を調整する。特定の実施形態では、リン酸を用いて組成物のpH値を調整する。
本発明の第7の態様の実施形態では、CD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml〜10mg/mlであり、すなわちCD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlである。特定の実施形態では、CD−RAPの濃度は、2mg/ml〜5mg/mlである。
本発明の第7の態様の特定の実施形態では、組成物は、2mg/mlのCD−RAPまたはその多様体と、20mMのクエン酸塩と、200mMのアルギニンとを水溶液中に含有し、かつ該組成物のpH値は6である。
第8の態様において、本発明は、患者において関節の疾患または損傷を治療および/または予防する方法において使用するための、上記で詳述した第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物を提供する。関節の疾患または損傷の特定の実施形態では、軟骨および/または軟部組織が冒されている。特に、関節の疾患または損傷とは、軟骨の疾患もしくは損傷および/または十字靭帯の疾患もしくは損傷および/または側副靭帯の疾患もしくは損傷である。さらなる実施形態では、軟骨は、その分解を招く様式で冒されている。軟骨の分解は、様々な要因によって引き起こされることがある。軟骨の分解は、これらに限定されるものではないが、例えば外傷性損傷または反復運動過多損傷(例えば反復活動による軟骨組織の慢性的な侵食など)といった損傷によって引き起こされまたは誘発される場合がある。軟骨の分解の重篤度は、国際軟骨修復学会の分類によるグレード1からグレード4までの範囲であることができ、すなわち表在性の病変(グレード1)から、骨組織に達する全厚さにわたる病変(グレード4)までの範囲であることができる。軟骨の分解の領域には、初期の軟骨の病変の領域(すなわち外傷性損傷または反復運動過多損傷により生じた病変の領域)に加えて、それ以外の領域における軟骨の病変の領域も包含され、すなわち、上述の損傷が生じた後には、他の関節または同一の関節の他の部分も損傷されることがある。さらなる実施形態では、1つまたは複数の関節が関与する骨折によって軟骨の形態の歪曲も生じることがあり、これによって長期的に軟骨の変性が誘発される。
それに加えてまたはそれとは異なって、軟骨の分解は、これらに限定されるものではないが例えば、炎症性疾患、感染性疾患、遺伝的障害、自己免疫疾患、変性疾患および増殖性疾患であって、特に慢性関節リウマチ、細菌による滑膜炎、滑膜組織または軟骨自体の肉腫によるものといった疾患によって引き起こされる場合がある。
第8の態様の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、軟骨の分解および/または軟骨への水の流入の増加および/または軟骨におけるCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
さらなる実施形態では、軟骨の分解は、プロテオグリカンの分解を含み、特にアグリカンの分解を含む。プロテオグリカンの分解は、プロテアーゼによる切断ゆえに起こりうる。プロテオグリカンの分解に関与するプロテアーゼ、好ましくはアグリカンの分解に関与するプロテアーゼとしては、これらに限定されるものではないが例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ならびにトロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS)が挙げられる。好ましい実施形態では、プロテオグリカン、好ましくはアグリカンは、MMP−1、MMP−3、MMP−2、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MMP−13、カテプシンD、ADAMTS−1、ADAMTS−4、ADAMTS−5、ADAMTS−8、ADAMTS−9、ADAMTS−15、ADAMTS−16およびADAMTS−18からなる群から選択されるプロテアーゼにより分解される。ADAMTS−4および/またはADAMTS−5が特に好ましい。
さらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断は、アグリカンの球状のG1ドメインとG2ドメインとの間に位置する切断部位で生じる。さらなる実施形態では、アグリカンのポリペプチド鎖は、Asn341とPhe342との間のペプチド結合および/またはGlu373とAla374との間のペプチド結合で切断され、好ましくはGlu373とAla374との間のペプチド結合で切断される。
さらなる実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、アグリカンの分解に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、0.5%〜5%のアグリカンが分解され、すなわち0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%のアグリカンが分解される。特定の実施形態では、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、2.5%超、3%超、3.5%超、4%超または4.5%超のアグリカンが分解される。特に、軟骨の分解は、病変のない目立たない軟骨組織と比較して測定されるが、こうした病変のない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、65〜150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示し、すなわち65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/mlまたは150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示す。あるいは、病変のない目立たない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒、450ミリ秒、500ミリ秒、550ミリ秒、600ミリ秒、650ミリ秒、700ミリ秒、750ミリ秒、800ミリ秒、850ミリ秒、900ミリ秒、950ミリ秒または1000ミリ秒に相当するプロテオグリカンの密度を示す。特定の実施形態では、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、65mg/ml未満、60mg/ml未満、55mg/ml未満、50mg/ml未満、45mg/ml未満、40mg/ml未満、35mg/ml未満、30mg/ml未満、25mg/ml未満、20mg/ml未満、15mg/ml未満、10mg/ml未満または5mg/ml未満となる。あるいは、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒未満、350ミリ秒未満、300ミリ秒未満、250ミリ秒未満、200ミリ秒未満、150ミリ秒未満、100ミリ秒未満または50ミリ秒未満の密度となる。
したがって、特定の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、5mg/ml超、10mg/ml超、15mg/ml超、20mg/ml超、25mg/ml超、30mg/ml超、35mg/ml超、40mg/ml超、45mg/ml超、50mg/ml超、55mg/ml超、60mg/ml超または65mg/ml超となる。あるいは、第1の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における50ミリ秒超、100ミリ秒超、150ミリ秒超、200ミリ秒超、250ミリ秒超、300ミリ秒超、350ミリ秒超または400ミリ秒超の密度となる。
特にアグリカンの分解、すなわち切断されたプロテオグリカンの増加、好ましくは切断されたアグリカンの増加によるインタクトなプロテオグリカンの損失、特にインタクトなアグリカンの損失は、軟骨への水の流入をもたらし、それにより軟骨が膨潤し、ひいては関節が膨潤する。したがって、第2の態様の実施形態では、第1の態様の組成物は、軟骨への水の流入の増加に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
CD−RAPは、アグリカンと相互作用して、その分解、特にそのタンパク質分解を防止する。CD−RAPとアグリカンとの相互作用によって、プロテアーゼ、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ならびにトロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS)がアグリカンペプチド鎖を切断しうることが妨害され、ここで、これらのプロテアーゼは好ましくは、MMP−1、MMP−3、MMP−2、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MMP−13、カテプシンD、ADAMTS−1、ADAMTS−4、ADAMTS−5、ADAMTS−8、ADAMTS−9、ADAMTS−15、ADAMTS−16およびADAMTS−18からなる群から選択される。CD−RAPの存在が減少することまたはCD−RAPが完全に存在しなくなることによって、アグリカンの分解が増大する。
したがって、第8の態様の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、関節におけるCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、軟骨においてCD−RAPの存在が減少する。
CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPの発現の低減に起因しうる。それとは異なっておよび/またはそれに加えて、CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPが発現細胞内に保持されることに起因して起こりうるものであり、特にCD−RAPが軟骨細胞内に保持されることに起因して起こりうる。それとは異なっておよび/またはそれに加えて、CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPが発現細胞の内部で、特に軟骨細胞内で、またはCD−RAPがこれらの細胞から細胞外空間、好ましくは軟骨へと分泌された後に分解されることに起因して起こりうる。
第8の態様の特定の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、CD−RAPの発現の低減、細胞内でのCD−RAPの保持、好ましくは軟骨細胞内でのCD−RAPの保持、または細胞内でのCD−RAPの分解、好ましくは軟骨細胞内もしくは細胞外空間でのCD−RAPの分解に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
第8の態様の特定の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものであり、ここで前記軟骨の疾患は、変形性関節症(OA)、慢性関節リウマチ(RA)、軟骨形成不全症、軟骨軟化症、軟骨肉腫、変形性椎間板疾患、股関節形成異常症、指の骨関節症、離断性骨軟骨炎および多発性軟骨炎からなる群から選択される。
特定の実施形態では、変形性関節症は、ケルグレン・ローレンス分類による変形性関節症、変形性足関節症、変形性肘関節症、変形性手指関節症、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性肩関節症、変形性脊椎関節症、変形性足指関節症、変形性手関節症からなる群から選択される。特定の実施形態では、OAは、早期に発症するOAである。
第8の態様の特定の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物は、アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものであり、ここで前記軟骨の損傷は、外傷性損傷または反復運動過多損傷(例えば反復活動による軟骨組織の慢性的な侵食など)である。軟骨の分解の重篤度は、国際軟骨修復学会の分類によるグレード1からグレード4までの範囲であることができ、すなわち表在性の病変(グレード1)から、骨組織に達する全厚さにわたる病変(グレード4)までの範囲であることができる。軟骨の分解の領域には、初期の軟骨の病変の領域(すなわち外傷性損傷または反復運動過多損傷により生じた病変の領域)に加えて、それ以外の領域における軟骨の病変の領域も包含され、すなわち、上述の損傷が生じた後には、他の関節または同一の関節の他の部分も損傷されることがある。さらなる実施形態では、1つまたは複数の関節が関与する骨折によって軟骨の形態の歪曲も生じることがあり、これによって長期的に軟骨の変性が誘発される。
第8の態様の実施形態では、患者とは、哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特定の実施形態では、患者は、試験用動物(例えばマウスもしくはラット)、家畜(例えばモルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、ラクダ、ネコ、イヌ、水生のカメ、陸生のカメ、ヘビもしくはトカゲ)または霊長類、例えばチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよびヒトからなる群から選択される。特にヒトを指す。
第8の態様のさらなる実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物によって、患者における軟骨の分解の程度が変更される。特定の実施形態では、第1の態様の組成物によって、患者における軟骨の分解の程度が低下し、より好ましくは患者におけるアグリカンの分解の程度が低下する。特に、本発明の第1の態様の組成物によって、軟骨の分解の程度が、好ましくはアグリカンの分解の程度が、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも25%低下する。特定の実施形態では、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、2.5%超、3%超、3.5%超、4%超または4.5%超のアグリカンが分解する。特に、軟骨の分解は、病変のない目立たない軟骨組織と比較して測定されるが、こうした病変のない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、65〜150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示し、すなわち65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/mlまたは150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示す。あるいは、病変のない目立たない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒、450ミリ秒、500ミリ秒、550ミリ秒、600ミリ秒、650ミリ秒、700ミリ秒、750ミリ秒、800ミリ秒、850ミリ秒、900ミリ秒、950ミリ秒または1000ミリ秒に相当するプロテオグリカンの密度を示す。特定の実施形態では、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、65mg/ml未満、60mg/ml未満、55mg/ml未満、50mg/ml未満、45mg/ml未満、40mg/ml未満、35mg/ml未満、30mg/ml未満、25mg/ml未満、20mg/ml未満、15mg/ml未満、10mg/ml未満または5mg/ml未満となる。あるいは、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒未満、350ミリ秒未満、300ミリ秒未満、250ミリ秒未満、200ミリ秒未満、150ミリ秒未満、100ミリ秒未満または50ミリ秒未満の密度となる。
したがって、特定の実施形態では、第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、5mg/ml超、10mg/ml超、15mg/ml超、20mg/ml超、25mg/ml超、30mg/ml超、35mg/ml超、40mg/ml超、45mg/ml超、50mg/ml超、55mg/ml超、60mg/ml超または65mg/ml超となる。あるいは、アグリカン結合部分によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における50ミリ秒超、100ミリ秒超、150ミリ秒超、200ミリ秒超、250ミリ秒超、300ミリ秒超、350ミリ秒超または400ミリ秒超の密度となる。
本発明の第6、第7または第8の態様のさらなる実施形態では、CD−RAPタンパク質調製物または組成物は、静脈内および/または関節内の投与のためのものである。
第9の態様において、本発明は、上記で詳述した第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物を含有する医薬品を提供する。特定の実施形態では、上記で詳述した第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物を含有する医薬品は、本発明の第8の態様に関連して上記で上述した患者において関節の疾患または損傷を治療および/または予防する方法において使用するためのものである。第9の態様のさらなる実施形態では、上記で詳述した第6の態様のCD−RAPタンパク質調製物または第7の態様の組成物を含有する医薬品は、静脈内および/または関節内の投与のためのものである。
特定の実施形態では、該医薬品は、製薬学的に許容される担体および/または賦形剤と、適宜1種または複数種の追加の作用物質とをさらに含有する。
特定の実施形態では、担体は、液状である。さらなる実施形態では、液状担体としては、これらに限定されるものではないが例えば、滅菌液体、例えば生理食塩水および油が挙げられ、この油としては例えば、石油起源のもの、動物起源のもの、植物起源のものまたは合成起源のものが挙げられ、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液は、特に注射液用の液状担体としても使用可能である。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合の好ましい担体である。適切な製薬学的担体の例は、E.W.Martinによる”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
さらなる実施形態では、賦形剤としては、これらに限定されるものではないが例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールが挙げられる。
さらなる実施形態では、アジュバントによって、有効成分の効果を増大、刺激、活性化、強化または調節する。特にアジュバントは、無機アジュバント(例えば無機金属塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、有機アジュバント(例えばサポニンまたはスクアレン)、油性アジュバント(例えばフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えばIL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFSおよびINF−γ)、微粒子状アジュバント(例えば免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソームまたは生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えばモノホスホリルリピドAまたはムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログまたは合成リピドA)および合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えばポリアルギニンまたはポリリシン)からなる群から選択される。
追加の作用物質が存在する実施形態では、この作用物質が、医薬的な価値を提供する有効成分であることが好ましい。特に医薬組成物は、互いに関連してまたは互いに独立して作用しうる1つまたは複数の有効成分を含有しうる。有効成分は、中性または塩の形態として配合されていてよい。製薬学的に許容される塩としては、これらに限定されるものではないが例えば、遊離アミノ基を用いて形成されるもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものと、遊離カルボキシル基を用いて形成されるもの、例えばこれらに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインなどから誘導されるものとが挙げられる。
特定の実施形態では、該医薬品は、本発明の第10の態様に関連して以下で詳述する、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸とバッファーとをさらに含有する。
第10の態様において、本発明は、本発明の第7または第8の態様の組成物の製造方法であって、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するバッファーに、CD−RAPまたはその多様体を加えるステップを含む方法を提供する。
第10の態様の特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPまたはその多様体であり、特に配列番号1によるヒトCD−RAPまたはその多様体である。
特定の実施形態では、前記多様体は、配列番号1によるCD−RAPに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、上記で詳述した本発明の第5の態様の方法によって得られるネイティブCD−RAPである。
本発明の第10の態様の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによりCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、CD−RAPの凝集を防止する。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンからなる群から選択される。
本発明の第10の態様の実施形態では、バッファーは、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによってCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、バッファーは、CD−RAPの分解を防止する。特定の実施形態では、バッファーは、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリスバッファーからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、本発明の第10の態様により製造される組成物は、糖類またはアミノ糖類をさらに含有する。したがって、第10の態様の方法は、糖類またはアミノ糖類を加えるステップをさらに含む。特定の実施形態では、糖類は、単糖類、二糖類または三糖類であり、特にスクロース、マルトース、トレハロースまたはラフィノースからなる群から選択される。特定の実施形態では、アミノ糖類は、グルコサミン、N−メチルグルコサミン、ガラクトサミンまたはノイラミン酸からなる群から選択される。
特定の実施形態では、本発明の第10の態様により製造される組成物は、アスコルビン酸および/またはグリシンを含有しない。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、アルギニンを50〜500mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、アルギニンを50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、アルギニンを50〜500mMの濃度で加えるステップを含み、すなわちアルギニンを50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMの濃度で加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、アルギニンを100〜350mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、アルギニンを100〜350mMの濃度で加えるステップを含む。さらなる実施形態では、製造された組成物は、アルギニンを100〜200mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、アルギニンを100〜200mMの濃度で加えるステップを含む。特定の実施形態では、製造された組成物は、アルギニンを200mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、アルギニンを200mMの濃度で加えるステップを含む。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、ヒスチジンを5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、ヒスチジンを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、ヒスチジンを5〜100mMの濃度で加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、ヒスチジンを10〜50mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、ヒスチジンを10〜50mMの濃度で加えるステップを含む。さらなる実施形態では、製造された組成物は、ヒスチジンを20〜50mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、ヒスチジンを20〜50mMの濃度で加えるステップを含む。特定の実施形態では、製造された組成物は、ヒスチジンを50mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、ヒスチジンを50mMの濃度で加えるステップを含む。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、リン酸バッファーを含有する。したがって、第10の態様の方法は、リン酸バッファーにCD−RAPまたはその多様体を加えることを含む。製造された組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、リン酸ナトリウムを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、製造された組成物は、リン酸ナトリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、該組成物は、リン酸ナトリウムを20mMの濃度で含有する。
製造された組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該製造された組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該製造された組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、該組成物は、リン酸カリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、該組成物は、リン酸カリウムを20mMの濃度で含有する。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、クエン酸バッファーを含有する。したがって、第10の態様の方法は、クエン酸バッファーにCD−RAPまたはその多様体を加えることを含む。製造された組成物がクエン酸バッファーを含有する実施形態では、該製造された組成物は、クエン酸塩を水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該製造された組成物は、クエン酸塩を水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、クエン酸塩を10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、製造された組成物は、クエン酸塩を20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、製造された組成物は、クエン酸塩を20mMの濃度で含有する。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、スクロースをさらに含有する。したがって、第10の態様の方法は、スクロースを加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、スクロースを5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該製造された組成物は、スクロースを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、スクロースを5〜100mMの濃度で加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、スクロースを10〜50mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、スクロースを10〜50mMの濃度で加えるステップを含む。さらなる実施形態では、製造された組成物は、スクロースを20〜50mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、スクロースを20〜50mMの濃度で加えるステップを含む。特定の実施形態では、製造された組成物は、スクロースを45mMの濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、スクロースを45mMの濃度で加えるステップを含む。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物は、負に荷電したアミノ酸をさらに含有する。したがって、第10の態様の方法は、負に荷電したアミノ酸を加えるステップを含む。特定の実施形態では、負に荷電したアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される。特定の実施形態では、製造された組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する。
製造された組成物がグルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する実施形態では、グルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は50〜500mMであり、すなわちグルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMである。したがって、第10の態様の方法は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を50〜500mMの全濃度で加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、製造された組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を100〜350mM、特に100〜200mMの全濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を100〜350mM、特に100〜200mMの全濃度で加えるステップを含む。特定の実施形態では、製造された組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を、200mMの全濃度で含有する。したがって、第10の態様の方法は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を200mMの全濃度で加えるステップを含む。
製造された組成物がアルギニンとグルタミン酸との組合せ物を含有する実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1.25の比で存在する。さらなる実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、特に1:1.5の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:2の比で存在する。
本発明の第10の態様の実施形態では、製造された組成物のpH値は、5.5〜8.0であり、すなわち該製造された組成物のpH値は、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0である。したがって、第10の態様の方法は、pH値を5.5〜8.0に調整するステップを含む。いくつかの実施形態では、該組成物のpH値は、6.0〜7.5である。さらなる実施形態では、組成物のpH値は、6.0〜6.5である。特定の実施形態では、組成物のpH値は、6である。
本発明の第10の態様の実施形態では、リン酸または塩化水素を用いて組成物のpH値を調整する。特定の実施形態では、リン酸を用いて組成物のpH値を調整する。
本発明の第10の態様の実施形態では、CD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml〜10mg/mlであり、すなわちCD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlである。特定の実施形態では、CD−RAPの濃度は、2mg/ml〜5mg/mlである。
本発明の第10の態様の特定の実施形態では、製造された組成物は、2mg/mlのCD−RAPまたはその多様体と、20mMのクエン酸塩と、200mMのアルギニンとを水溶液中に含有し、かつ該組成物のpH値は6である。
第11の態様において、本発明は、CD−RAPを保存する方法であって、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するバッファー中でCD−RAPを保持することを含む方法を提供する。
第11の態様の特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPまたはその多様体であり、特に配列番号1によるヒトCD−RAPまたはその多様体である。
特定の実施形態では、前記多様体は、配列番号1によるCD−RAPに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、上記で詳述した本発明の第5の態様の方法によって得られるネイティブCD−RAPである。
本発明の第11の態様の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによりCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、CD−RAPの凝集を防止する。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンからなる群から選択される。
本発明の第11の態様の実施形態では、バッファーは、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによってCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、バッファーは、CD−RAPの分解を防止する。特定の実施形態では、バッファーは、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリスバッファーからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、バッファーは、糖類またはアミノ糖類をさらに含有する。特定の実施形態では、糖類は、単糖類、二糖類または三糖類であり、特にスクロース、マルトース、トレハロースまたはラフィノースからなる群から選択される。特定の実施形態では、アミノ糖類は、グルコサミン、N−メチルグルコサミン、ガラクトサミンまたはノイラミン酸からなる群から選択される。
特定の実施形態では、バッファーは、アスコルビン酸および/またはグリシンを含有しない。
本発明の第10の態様の実施形態では、バッファーは、アルギニンを50〜500mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、アルギニンを50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、アルギニンを100〜350mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、アルギニンを100〜200mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、アルギニンを200mMの濃度で含有する。
本発明の第10の態様の実施形態では、バッファーは、ヒスチジンを5〜100mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、ヒスチジンを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、ヒスチジンを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、ヒスチジンを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、ヒスチジンを50mMの濃度で含有する。
本発明の第11の態様の実施形態では、バッファーは、リン酸バッファーである。バッファーがリン酸バッファーである実施形態では、バッファーは、リン酸ナトリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、リン酸ナトリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、リン酸ナトリウムを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、リン酸ナトリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、リン酸ナトリウムを20mMの濃度で含有する。
バッファーがリン酸バッファーである実施形態では、バッファーは、リン酸カリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、リン酸カリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、リン酸カリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、リン酸カリウムを20mMの濃度で含有する。
本発明の第11の態様の実施形態では、バッファーは、クエン酸バッファーである。バッファーがクエン酸バッファーを含有する実施形態では、バッファーは、クエン酸塩を水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、クエン酸塩を水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、クエン酸塩を10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、クエン酸塩を20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、クエン酸塩を20mMの濃度で含有する。
本発明の第10の態様の実施形態では、バッファーは、スクロースをさらに含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、スクロースを5〜100mMの濃度で含有し、すなわちバッファーは、スクロースを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、バッファーは、スクロースを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、バッファーは、スクロースを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、スクロースを45mMの濃度で含有する。
本発明の第10の態様の実施形態では、バッファーは、負に荷電したアミノ酸をさらに含有する。特定の実施形態では、負に荷電したアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される。特定の実施形態では、バッファーは、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する。
バッファーがグルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する実施形態では、グルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は50〜500mMであり、すなわちグルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMである。いくつかの実施形態では、バッファーは、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を100〜350mM、特に100〜200mMの全濃度で含有する。特定の実施形態では、バッファーは、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を、200mMの全濃度で含有する。
バッファーがアルギニンとグルタミン酸との組合せ物を含有する実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1.25の比で存在する。さらなる実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、特に1:1.5の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:2の比で存在する。
本発明の第11の態様の実施形態では、バッファーのpH値は、5.5〜8.0であり、すなわちバッファーのpH値は、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0である。いくつかの実施形態では、バッファーのpH値は、6.0〜7.5である。さらなる実施形態では、バッファーのpH値は、6.0〜6.5である。特定の実施形態では、バッファーのpH値は、6である。
本発明の第11の態様の実施形態では、リン酸または塩化水素を用いてバッファーのpH値を調整する。特定の実施形態では、リン酸を用いてバッファーのpH値を調整する。
本発明の第11の態様の実施形態では、CD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml〜10mg/mlであり、すなわちCD−RAPまたはその多様体の濃度は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlである。特定の実施形態では、CD−RAPの濃度は、2mg/ml〜5mg/mlである。
本発明の第11の態様の特定の実施形態では、2mg/mlのCD−RAPまたはその多様体を、20mMのクエン酸塩と200mMのアルギニンとを水溶液中に含有するバッファー中で保存し、かつ該バッファーのpH値は6である。
第11の態様の特定の実施形態では、CD−RAPを−80℃〜40℃の温度で保存し、特に−20℃〜25℃の温度で保存し、特に−20℃〜5℃の温度で保存する。
第11の態様の特定の実施形態では、CD−RAPを最長で6カ月間の期間にわたって保存し、すなわちCD−RAPを最長で6カ月間、最長で5カ月間、最長で4カ月間、最長で3カ月間、最長で2カ月間、最長で1カ月間、最長で3週間、最長で2週間、最長で1週間、最長で6日間、最長で5日間、最長で4日間、最長で3日間、最長で2日間、最長で1日間の期間にわたって保存する。特定の実施形態では、CD−RAPを最長で3カ月間保存し、特に最長で1カ月間保存する。
特に、CD−RAPを、上記の期間にわたって実質的に凝集も変性も分解も生じさせずに保存する。
第12の態様において、本発明は、封入されたCD−RAPまたはその多様体を含むリポソームを含有する組成物であって、前記リポソームのサイズは200nm未満である組成物を提供する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、ヒトCD−RAPまたはその多様体であり、特に配列番号1によるヒトCD−RAPまたはその多様体である。特定の実施形態では、前記多様体は、配列番号1によるCD−RAPに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
特定の実施形態では、CD−RAPは、上記で詳述した本発明の第5の態様の方法によって得られるネイティブCD−RAPである。
第12の態様の実施形態では、リポソームのサイズは200nm未満であり、すなわちリポソームのサイズは、200nm未満、190nm未満、180nm未満、170nm未満、160nm未満、150nm未満、140nm未満、130nm未満、120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満または10nm未満である。特定の実施形態では、リポソームのサイズは、150nm未満である。さらなる実施形態では、リポソームのサイズは、120nmであり、特に100nm未満である。
第12の態様の実施形態では、全CD−RAPの20%超をリポソームに封入する。特定の実施形態では、全CD−RAPの少なくとも30%をリポソームに封入する。さらなる実施形態では、全CD−RAPの少なくとも40%をリポソームに封入する。いくつかの実施形態では、全CD−RAPの40〜100%をリポソームに封入し、すなわち全CD−RAPの40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%をリポソームに封入する。特定の実施形態では、全CD−RAPの40%〜90%、40〜80%、50〜90%、50〜80%、60〜90%、60〜80%、70〜80%、70〜90%または80〜90%をリポソームに封入する。
第12の態様の実施形態では、CD−RAP対リポソームの比は、1:0.5〜1:1.5であり、すなわちCD−RAP対リポソームの比は、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5である。特定の実施形態では、CD−RAP対リポソームの比は、1:1.2である。
第12の態様の実施形態では、リポソームの多分散指数(PDI)は、0.3未満である。特定の実施形態では、PDIは0.2未満であり、特に0.15未満である。特定の実施形態では、PDIは、0.132である。
第12の態様の実施形態では、リポソームは、1種または複数種の脂質類から構成される。いくつかの実施形態では、1種または複数種の脂質は、グリセリド類、リン脂質類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択される。特定の実施形態では、リポソームは、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスホイノシチド類、例えばホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスファート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリホスファート(PIP3)、カルジオリピン、リゾリン脂質類およびコレステロールからなる群から選択される脂質類から構成される。いくつかの実施形態では、リポソームは、少なくとも2種の脂質類から構成される。さらなる実施形態では、リポソームは、リン脂質類およびステロールから構成される。特定の実施形態では、リポソームは、ホスファチジルコリンおよびコレステロールから構成される。
さらなる実施形態では、脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとは、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20:85:15または90:10の比で存在する。特定の実施形態では、脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとは、74.8:25.2の比で存在する。
第12の態様の実施形態では、リポソームは、疎水性アスコルビン酸エステルをさらに含有する。特定の実施形態では、疎水性アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである。
さらなる実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9〜1:99の比で存在し、すなわちアスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9、0.2:99.8、0.3:99.7、0.4:99.6、0.5:99.5、0.6:99.4、0.7:99.3、0.8:99.2、0.9:99.1または1.0:99.0の比で存在する。特定の実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9の比で存在する。
第12の態様の実施形態では、CD−RAPおよびリポソームは、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するリン酸バッファーまたはクエン酸バッファー中に存在する。
特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによってCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、CD−RAPの分解を防止する。特定の実施形態では、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンからなる群から選択される。
さらなる実施形態では、バッファーは、特にCD−RAPの分解、変性および/または凝集を防止することによってCD−RAPの安定性を増加させる。特定の実施形態では、バッファーは、CD−RAPの分解を防止する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、アルギニンを20〜500mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、アルギニンを20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、アルギニンを100〜350mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、アルギニンを100〜200mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、アルギニンを200mMの濃度で含有する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、ヒスチジンを5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、ヒスチジンを5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジンを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、ヒスチジンを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジンを20mMの濃度で含有する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、リシンを0.1%〜10%含有し、すなわちリシンを0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10%含有する。第1の態様の実施形態では、組成物は、リシンを0.5%〜7.5%含有する。さらなる実施形態では、組成物は、リシンを1.0%〜5.0%含有する。特定の実施形態では、組成物は、リシンを2.0%〜3.0%含有する。本発明の第1の態様の実施形態では、組成物は、リン酸バッファーを含有する。組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、リン酸ナトリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、リン酸ナトリウムを20mMの濃度で含有する。
組成物がリン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、リン酸カリウムを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、リン酸カリウムを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、リン酸カリウムを20mMの濃度で含有する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、クエン酸バッファーを含有する。組成物がクエン酸バッファーを含有する実施形態では、該組成物は、クエン酸塩を水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち該組成物は、クエン酸塩を水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、クエン酸塩を10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、クエン酸塩を20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、クエン酸塩を20mMの濃度で含有する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、スクロースをさらに含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロースを水溶液中で特に5〜100mMの濃度で含有し、すなわち組成物は、スクロースを水溶液中で5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMの濃度で含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロースを10〜50mMの濃度で含有する。さらなる実施形態では、組成物は、スクロースを20〜50mMの濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、スクロースを45mMの濃度で含有する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物は、負に荷電したアミノ酸をさらに含有する。特定の実施形態では、負に荷電したアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される。特定の実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する。
組成物がグルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を含有する実施形態では、グルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は50〜500mMであり、すなわちグルタミン酸とアスパラギン酸との全濃度は、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mMまたは500mMである。いくつかの実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を100〜350mM、特に100〜200mMの全濃度で含有する。特定の実施形態では、組成物は、グルタミン酸とアスパラギン酸との組合せ物を、200mMの全濃度で含有する。
組成物がアルギニンとグルタミン酸との組合せ物を含有する実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:1.25の比で存在する。さらなる実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、特に1:1.5の比で存在する。特定の実施形態では、アルギニンとグルタミン酸とは、1:2の比で存在する。
本発明の第12の態様の実施形態では、組成物のpH値は、5.5〜8.0であり、すなわち組成物のpH値は、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0である。いくつかの実施形態では、組成物のpH値は、6.0〜7.5である。さらなる実施形態では、組成物のpH値は、6.0〜6.5である。特定の実施形態では、組成物のpH値は、6である。
本発明の第12の態様の実施形態では、リン酸または塩化水素を用いて組成物のpH値を調整する。特定の実施形態では、リン酸を用いて組成物のpH値を調整する。
第13の態様において、本発明は、患者において関節の疾患または損傷を治療および/または予防する方法において使用するための、上記で詳述した第12の態様の組成物を提供する。関節の疾患または損傷の特定の実施形態では、軟骨および/または軟部組織が冒されている。特に、関節の疾患または損傷とは、軟骨の疾患もしくは損傷および/または十字靭帯の疾患もしくは損傷および/または側副靭帯の疾患もしくは損傷である。さらなる実施形態では、軟骨は、その分解を招く様式で冒されている。軟骨の分解は、様々な要因によって引き起こされることがある。軟骨の分解は、これらに限定されるものではないが、例えば外傷性損傷または反復運動過多損傷(例えば反復活動による軟骨組織の慢性的な侵食など)といった損傷によって引き起こされまたは誘発される場合がある。軟骨の分解の重篤度は、国際軟骨修復学会の分類によるグレード1からグレード4までの範囲であることができ、すなわち表在性の病変(グレード1)から、骨組織に達する全厚さにわたる病変(グレード4)までの範囲であることができる。軟骨の分解の領域には、初期の軟骨の病変の領域(すなわち外傷性損傷または反復運動過多損傷により生じた病変の領域)に加えて、それ以外の領域における軟骨の病変の領域も包含され、すなわち、上述の損傷が生じた後には、他の関節または同一の関節の他の部分も損傷されることがある。さらなる実施形態では、1つまたは複数の関節が関与する骨折によって軟骨の形態の歪曲も生じることがあり、これによって長期的に軟骨の変性が誘発される。
それに加えてまたはそれとは異なって、軟骨の分解は、これらに限定されるものではないが例えば、炎症性疾患、感染性疾患、遺伝的障害、自己免疫疾患、変性疾患および増殖性疾患であって、特に慢性関節リウマチ、細菌による滑膜炎、滑膜組織または軟骨自体の肉腫によるものといった疾患によって引き起こされる場合がある。
第13の態様の実施形態では、第12の態様の組成物は、軟骨の分解および/または軟骨への水の流入の増加および/または軟骨におけるCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
さらなる実施形態では、軟骨の分解は、プロテオグリカンの分解を含み、特にアグリカンの分解を含む。プロテオグリカンの分解は、プロテアーゼによる切断ゆえに起こりうる。プロテオグリカンの分解に関与するプロテアーゼ、好ましくはアグリカンの分解に関与するプロテアーゼとしては、これらに限定されるものではないが例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ならびにトロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS)が挙げられる。好ましい実施形態では、プロテオグリカン、好ましくはアグリカンは、MMP−1、MMP−3、MMP−2、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MMP−13、カテプシンD、ADAMTS−1、ADAMTS−4、ADAMTS−5、ADAMTS−8、ADAMTS−9、ADAMTS−15、ADAMTS−16およびADAMTS−18からなる群から選択されるプロテアーゼにより分解される。ADAMTS−4および/またはADAMTS−5が特に好ましい。
さらなる実施形態では、プロテアーゼによる切断は、アグリカンの球状のG1ドメインとG2ドメインとの間に位置する切断部位で生じる。さらなる実施形態では、アグリカンのポリペプチド鎖は、Asn341とPhe342との間のペプチド結合および/またはGlu373とAla374との間のペプチド結合で切断され、好ましくはGlu373とAla374との間のペプチド結合で切断される。
さらなる実施形態では、第12の態様の組成物は、アグリカンの分解に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、0.5%〜5%のアグリカンが分解され、すなわち0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%のアグリカンが分解される。特定の実施形態では、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、2.5%超、3%超、3.5%超、4%超または4.5%超のアグリカンが分解される。特に、軟骨の分解は、病変のない目立たない軟骨組織と比較して測定されるが、こうした病変のない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、65〜150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示し、すなわち65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/mlまたは150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示す。あるいは、病変のない目立たない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒、450ミリ秒、500ミリ秒、550ミリ秒、600ミリ秒、650ミリ秒、700ミリ秒、750ミリ秒、800ミリ秒、850ミリ秒、900ミリ秒、950ミリ秒または1000ミリ秒に相当するプロテオグリカンの密度を示す。特定の実施形態では、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、65mg/ml未満、60mg/ml未満、55mg/ml未満、50mg/ml未満、45mg/ml未満、40mg/ml未満、35mg/ml未満、30mg/ml未満、25mg/ml未満、20mg/ml未満、15mg/ml未満、10mg/ml未満または5mg/ml未満となる。あるいは、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒未満、350ミリ秒未満、300ミリ秒未満、250ミリ秒未満、200ミリ秒未満、150ミリ秒未満、100ミリ秒未満または50ミリ秒未満の密度となる。
したがって、特定の実施形態では、第12の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、5mg/ml超、10mg/ml超、15mg/ml超、20mg/ml超、25mg/ml超、30mg/ml超、35mg/ml超、40mg/ml超、45mg/ml超、50mg/ml超、55mg/ml超、60mg/ml超または65mg/ml超となる。あるいは、第12の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における50ミリ秒超、100ミリ秒超、150ミリ秒超、200ミリ秒超、250ミリ秒超、300ミリ秒超、350ミリ秒超または400ミリ秒超の密度となる。
特にアグリカンの分解、すなわち切断されたプロテオグリカンの増加、好ましくは切断されたアグリカンの増加により、インタクトなプロテオグリカンの損失、特にインタクトなアグリカンの損失は、軟骨への水の流入をもたらし、それにより軟骨が膨潤し、ひいては関節が膨潤する。したがって、第13の態様の実施形態では、第12の態様の組成物は、軟骨への水の流入の増加に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
CD−RAPは、アグリカンと相互作用して、その分解、特にそのタンパク質分解を防止する。CD−RAPとアグリカンとの相互作用によって、プロテアーゼ、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)ならびにトロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS)がアグリカンペプチド鎖を切断しうることが妨害され、ここで、これらのプロテアーゼは好ましくは、MMP−1、MMP−3、MMP−2、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MMP−13、カテプシンD、ADAMTS−1、ADAMTS−4、ADAMTS−5、ADAMTS−8、ADAMTS−9、ADAMTS−15、ADAMTS−16およびADAMTS−18からなる群から選択される。CD−RAPの存在が減少することまたはCD−RAPが完全に存在しなくなることによって、アグリカンの分解が増大する。
したがって、第13の態様の実施形態では、第12の態様の組成物は、関節におけるCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、軟骨においてCD−RAPの存在が減少する。
CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPの発現の低減に起因しうる。それとは異なっておよび/またはそれに加えて、CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPが発現細胞内に保持されることに起因して起こりうるものであり、特にCD−RAPが軟骨細胞内に保持されることに起因して起こりうる。それとは異なっておよび/またはそれに加えて、CD−RAPの存在の減少は、CD−RAPが発現細胞の内部で、特に軟骨細胞内で、またはCD−RAPがこれらの細胞から細胞外空間、好ましくは軟骨へと分泌された後に分解されることに起因して起こりうる。
第13の態様の特定の実施形態では、第12の態様の組成物は、CD−RAPの発現の低減、細胞内でのCD−RAPの保持、好ましくは軟骨細胞内でのCD−RAPの保持、または細胞内でのCD−RAPの分解、好ましくは軟骨細胞内もしくは細胞外空間でのCD−RAPの分解に苦しむ患者における関節の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものである。
第13の態様の特定の実施形態では、第12の態様の組成物は、アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものであり、ここで前記軟骨の疾患は、変形性関節症(OA)、慢性関節リウマチ(RA)、軟骨形成不全症、軟骨軟化症、軟骨肉腫、変形性椎間板疾患、股関節形成異常症、指の骨関節症、離断性骨軟骨炎および多発性軟骨炎からなる群から選択される。
特定の実施形態では、変形性関節症は、ケルグレン・ローレンス分類による変形性関節症、変形性足関節症、変形性肘関節症、変形性手指関節症、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性肩関節症、変形性脊椎関節症、変形性足指関節症、変形性手関節症からなる群から選択される。特定の実施形態では、OAは、早期に発症するOAである。
第13の態様の特定の実施形態では、第12の態様の組成物は、アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAPの存在の減少に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷の治療および/または予防に使用するためのものであり、ここで前記軟骨の損傷は、外傷性損傷または反復運動過多損傷(例えば反復活動による軟骨組織の慢性的な侵食など)である。軟骨の分解の重篤度は、国際軟骨修復学会の分類によるグレード1からグレード4までの範囲であることができ、すなわち表在性の病変(グレード1)から、骨組織に達する全厚さにわたる病変(グレード4)までの範囲であることができる。軟骨の分解の領域には、初期の軟骨の病変の領域(すなわち外傷性損傷または反復運動過多損傷により生じた病変の領域)に加えて、それ以外の領域における軟骨の病変の領域も包含され、すなわち、上述の損傷が生じた後には、他の関節または同一の関節の他の部分も損傷されることがある。さらなる実施形態では、1つまたは複数の関節が関与する骨折によって軟骨の形態の歪曲も生じることがあり、これによって長期的に軟骨の変性が誘発される。
第13の態様の実施形態では、患者とは、哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特定の実施形態では、患者は、試験用動物(例えばマウスもしくはラット)、家畜(例えばモルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、ラクダ、ネコ、イヌ、水生のカメ、陸生のカメ、ヘビもしくはトカゲ)または霊長類、例えばチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよびヒトからなる群から選択される。特にヒトを指す。
第13の態様のさらなる実施形態では、第12の態様の組成物によって、患者における軟骨の分解の程度が変更される。特定の実施形態では、第11の態様の組成物によって、患者における軟骨の分解の程度が低下し、より好ましくは患者におけるアグリカンの分解の程度が低下する。特に、本発明の第11の態様の組成物によって、軟骨の分解の程度が、好ましくはアグリカンの分解の程度が、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも25%低下する。特定の実施形態では、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、2.5%超、3%超、3.5%超、4%超または4.5%超のアグリカンが分解する。特に、軟骨の分解は、病変のない目立たない軟骨組織と比較して測定されるが、こうした病変のない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、65〜150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示し、すなわち65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/mlまたは150mg/mlに相当するプロテオグリカンの密度を示す。あるいは、病変のない目立たない軟骨組織は、必ずしもこうであるとは限らないが典型的には、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒、450ミリ秒、500ミリ秒、550ミリ秒、600ミリ秒、650ミリ秒、700ミリ秒、750ミリ秒、800ミリ秒、850ミリ秒、900ミリ秒、950ミリ秒または1000ミリ秒に相当するプロテオグリカンの密度を示す。特定の実施形態では、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、65mg/ml未満、60mg/ml未満、55mg/ml未満、50mg/ml未満、45mg/ml未満、40mg/ml未満、35mg/ml未満、30mg/ml未満、25mg/ml未満、20mg/ml未満、15mg/ml未満、10mg/ml未満または5mg/ml未満となる。あるいは、軟骨の分解によって、プロテオグリカンの密度は、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における400ミリ秒未満、350ミリ秒未満、300ミリ秒未満、250ミリ秒未満、200ミリ秒未満、150ミリ秒未満、100ミリ秒未満または50ミリ秒未満の密度となる。
したがって、特定の実施形態では、第12の態様の組成物によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、5mg/ml超、10mg/ml超、15mg/ml超、20mg/ml超、25mg/ml超、30mg/ml超、35mg/ml超、40mg/ml超、45mg/ml超、50mg/ml超、55mg/ml超、60mg/ml超または65mg/ml超となる。あるいは、アグリカン結合部分によって軟骨の分解が低減して、プロテオグリカンの密度が、DGEMRIC技術により視覚化されたT1値における50ミリ秒超、100ミリ秒超、150ミリ秒超、200ミリ秒超、250ミリ秒超、300ミリ秒超、350ミリ秒超または400ミリ秒超の密度となる。
本発明の第12または第13の態様のさらなる実施形態では、組成物は、関節内投与のためのものである。
第14の態様において、本発明は、上記で詳述した第12または第13の態様の組成物を含有する医薬品を提供する。特定の実施形態では、該医薬品は、製薬学的に許容される担体および/または賦形剤と、適宜1種または複数種の追加の作用物質とをさらに含有する。
特定の実施形態では、担体は、液状である。さらなる実施形態では、液状担体としては、これらに限定されるものではないが例えば、滅菌液体、例えば生理食塩水および油が挙げられ、この油としては例えば、石油起源のもの、動物起源のもの、植物起源のものまたは合成起源のものが挙げられ、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液は、特に注射液用の液状担体としても使用可能である。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合の好ましい担体である。適切な製薬学的担体の例は、E.W.Martinによる”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。
さらなる実施形態では、賦形剤としては、これらに限定されるものではないが例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールが挙げられる。
さらなる実施形態では、アジュバントによって、有効成分の効果を増大、刺激、活性化、強化または調節する。特にアジュバントは、無機アジュバント(例えば無機金属塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、有機アジュバント(例えばサポニンまたはスクアレン)、油性アジュバント(例えばフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えばIL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFSおよびINF−γ)、微粒子状アジュバント(例えば免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソームまたは生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えばモノホスホリルリピドAまたはムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログまたは合成リピドA)および合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えばポリアルギニンまたはポリリシン)からなる群から選択される。
追加の作用物質が存在する実施形態では、この作用物質が、医薬的な価値を提供する有効成分であることが好ましい。特に医薬組成物は、互いに関連してまたは互いに独立して作用しうる1つまたは複数の有効成分を含有しうる。有効成分は、中性または塩の形態として配合されていてよい。製薬学的に許容される塩としては、これらに限定されるものではないが例えば、遊離アミノ基を用いて形成されるもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものと、遊離カルボキシル基を用いて形成されるもの、例えばこれらに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインなどから誘導されるものとが挙げられる。
第15の態様において、本発明は、リポソーム製剤の製造方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法に関する。
第15の態様の実施形態では、本方法は、
d) ステップa)〜c)によって得られたリポソーム製剤と、CD−RAPを含有する組成物とを混合するステップ
をさらに含む。その際、予め形成されたリポソームにCD−RAPを加える。
いくつかの実施形態では、ステップa)の有機溶媒は、クラス3の溶媒である。特にこの溶媒は、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3−メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピルからなる群から選択され、より好ましくは1−プロパノールである。
第15の態様の実施形態では、ステップa)の少なくとも1種の脂質は、グリセリド類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、リン脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスホイノシチド類、例えばホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスファート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリホスファート(PIP3)、カルジオリピン、リゾリン脂質類およびコレステロールからなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、2種の脂質類の組合せ物であり、特にリン脂質類とステロールとの組合せ物であり、特にホスファチジルコリンとコレステロールとの組合せ物である。
第15の態様の実施形態では、ステップa)において、2種以上の脂質を有機溶媒に溶解させる。いくつかの実施形態では、1種または複数種のリン脂質と1種または複数種のステロールとを有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとを有機溶媒に溶解させる。特に、脂質類と有機溶媒との比は、3:1である。
さらなる実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.02〜0.4g/mlであり、すなわち溶媒中の全脂質濃度は、0.02g/ml、0.03g/ml、0.04g/ml、0.05g/ml、0.06g/ml、0.07g/ml、0.08g/ml、0.09g/ml、0.10g/ml、0.11g/ml、0.12g/ml、0.13g/ml、0.14g/ml、0.15g/ml、0.16g/ml、0.17g/ml、0.18g/ml、0.19g/ml、0.2g/ml、0.21g/ml、0.22g/ml、0.23g/ml、0.24g/ml、0.25g/ml、0.26g/ml、0.27g/ml、0.28g/ml、0.29g/ml、0.30g/ml、0.31g/ml、0.32g/ml、0.33g/ml、0.34g/ml、0.35g/ml、0.36g/ml、0.37g/ml、0.38g/ml、0.39g/mlまたは0.4g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.03〜0.3g/ml、0.03〜0.1g/ml、0.03〜0.05g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.033g/mlである。
第15の態様のさらなる実施形態では、ステップa)における少なくとも1種の脂質に加えて、疎水性アスコルビン酸エステルを有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、疎水性アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである。
さらなる実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9〜1:99の比で存在し、すなわちアスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9、0.2:99.8、0.3:99.7、0.4:99.6、0.5:99.5、0.6:99.4、0.7:99.3、0.8:99.2、0.9:99.1または1.0:99.0の比で存在する。特定の実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9の比で存在する。
第15の態様のさらなる実施形態では、1〜10ml/分の速度で行い、すなわち1ml/分、2ml/分、3ml/分、4ml/分、5ml/分、6ml/分、7ml/分、8ml/分、9ml/分または10ml/分の速度で行う。特定の実施形態では、混合物を5ml/分の速度で注入する。
第15の態様のさらなる実施形態では、水性相は、500〜3000ml/分の速度で循環し、すなわち水性相は、500ml/分、600ml/分、700ml/分、800ml/分、900ml/分、1000ml/分、1100ml/分、1200ml/分、1300ml/分、1400ml/分、1500ml/分、1600ml/分、1700ml/分、1800ml/分、1900ml/分、2000ml/分、2100ml/分、2200ml/分、2300ml/分、2400ml/分、2500ml/分、2600ml/分、2700ml/分、2800ml/分、2900ml/分または3000ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、1000〜2500ml/分、1500〜2500ml/分または2000〜2500ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、2200ml/分の速度で循環する。
特定の実施形態では、水性相を、せん断誘導装置により循環させる。いくつかの実施形態では、せん断誘導装置は、スタティックミキサーまたは通常のスターラーである。特に、せん断誘導装置は、スタティックミキサーである。第1の態様の実施形態では、スタティックミキサーは10〜15mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmの内径を有する。特定の実施形態では、スタティックミキサーは、12〜13mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、12.0mm、12.1mm、12.2mm、12.3mm、12.4mm、12.5mm、12.6mm、12.7mm、12.8mm、12.9mmまたは13.0mmの内径を有する。いくつかの実施形態では、スタティックミキサーは、最終体積が150〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、すなわちスタティックミキサーは、最終体積が150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、210ml、220ml、230ml、240ml、250ml、260ml、270ml、280ml、290mlまたは300mlであるリポソーム製剤の混合に適している。特に、スタティックミキサーは、最終体積が170〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、特に最終体積が200〜250mlであるリポソーム製剤の混合に適している。したがって、特定の実施形態では、スタティックミキサーの内径と混合される脂質製剤の体積との比は、該脂質製剤15mlあたりの内径が0.7mm〜1mmとなる比であり、すなわち該脂質製剤15mlあたりの内径が0.7mm、0.8mm、0.9mmまたは1.0mmとなる比である。特定の実施形態では、ステップb)において、a)の混合物をせん断誘導装置の手前で注入する。特定の実施形態では、a)の混合物をスタティックミキサーの手前で注入する。
さらなる実施形態では、ステップc)において、ろ過を用いて、特にタンジェンシャルフローろ過を用いて溶媒を除去する。
さらなる実施形態では、ステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1〜10mg/mlのCD−RAPを含有し、すなわちステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、2〜9mg/ml、3〜8mg/ml、4〜8mg/ml、5〜8mg/mlまたは6〜8mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、7mg/mlのCD−RAPを含有する。さらなる実施形態では、ステップd)において混合されるCD−RAPは、上記で詳述したアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーに含まれる。
さらなる実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1または1.5:1である。特定の実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は1.2:1である。
第15の態様の実施形態では、本方法は、
e) 前記リポソーム製剤を凍結乾燥するステップ
をさらに含む。
第15の態様の実施形態では、本方法は、
f) 前記凍結乾燥リポソーム製剤を、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファー中で再構成するステップ
を含む。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積を1度に加えて混合することにより、凍結乾燥リポソーム製剤を単一のステップで再構成する。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の複数の部分を2つ以上の引き続くステップで加えることにより、2つ以上の引き続くステップで凍結乾燥リポソーム製剤を再構成し、すなわち、第1のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の半分の体積を加えて混合し、第2のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積のもう一方の半分を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は2つのステップを含み、第1のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1の体積を加えて混合し、第2のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の2を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は3つのステップを含み、各ステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1を加えて混合することができる。
第16の態様において、本発明は、上記で詳述した第14の態様の方法により製造可能であるかまたは該方法により製造されたリポソーム製剤を提供する。
第17の態様において、本発明は、CD−RAPを保存する方法であって、本発明の第11の態様に関して上記で詳述したリポソーム製剤中でCD−RAPを保持することを含む方法を提供する。
第17の態様の実施形態では、リポソーム製剤中でCD−RAPを−80℃〜40℃の温度で保存し、すなわちリポソーム製剤中でCD−RAPを、−80℃、−75℃、−70℃、−65℃、−60℃、−55℃、−50℃、−45℃、−40℃、−35℃、−30℃、−25℃、−20℃、−15℃、−10℃、−5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃または40℃の温度で保存する。第6の態様の実施形態では、リポソーム製剤中でCD−RAPを、−20℃〜25℃または−10℃〜10℃の温度で保存し、特に5℃で保存する。
第17の態様の実施形態では、リポソーム製剤中でCD−RAPを最長で6カ月間の期間にわたって保存し、すなわちリポソーム製剤中でCD−RAPを最長で6カ月間、最長で5カ月間、最長で4カ月間、最長で3カ月間、最長で2カ月間、最長で1カ月間、最長で3週間、最長で2週間、最長で1週間、最長で6日間、最長で5日間、最長で4日間、最長で3日間、最長で2日間、最長で1日間の期間にわたって保存する。第6の態様の実施形態では、リポソーム製剤中でCD−RAPを最長で3カ月間保存し、特に最長で1カ月間保存する。
特に、CD−RAPを、上記の期間にわたって実質的に凝集も変性も分解も生じさせずに保存する。
第18の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に関して上記で詳述したリポソーム製剤中のリポソームのサイズを低下させる方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法を提供する。
第18の態様の実施形態では、本方法は、
d) ステップa)〜c)によって得られたリポソーム製剤と、CD−RAPを含有する組成物とを混合するステップ
をさらに含む。
いくつかの実施形態では、ステップa)の有機溶媒は、クラス3の溶媒である。特にこの溶媒は、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3−メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピルからなる群から選択され、より好ましくは1−プロパノールである。
第17の態様の実施形態では、ステップa)の少なくとも1種の脂質は、グリセリド類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、リン脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスホイノシチド類、例えばホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスファート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリホスファート(PIP3)、カルジオリピン、リゾリン脂質類およびコレステロールからなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、2種の脂質類の組合せ物であり、特にリン脂質類とステロール類との組合せ物である。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、ホスファチジルコリンとコレステロールとの組合せ物である。
第18の態様の実施形態では、ステップa)において、2種以上の脂質を有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとを有機溶媒に溶解させる。特に、脂質類と有機溶媒との比は、3:1である。
さらなる実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.02〜0.4g/mlであり、すなわち溶媒中の全脂質濃度は、0.02g/ml、0.03g/ml、0.04g/ml、0.05g/ml、0.06g/ml、0.07g/ml、0.08g/ml、0.09g/ml、0.10g/ml、0.11g/ml、0.12g/ml、0.13g/ml、0.14g/ml、0.15g/ml、0.16g/ml、0.17g/ml、0.18g/ml、0.19g/ml、0.2g/ml、0.21g/ml、0.22g/ml、0.23g/ml、0.24g/ml、0.25g/ml、0.26g/ml、0.27g/ml、0.28g/ml、0.29g/ml、0.30g/ml、0.31g/ml、0.32g/ml、0.33g/ml、0.34g/ml、0.35g/ml、0.36g/ml、0.37g/ml、0.38g/ml、0.39g/mlまたは0.4g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.03〜0.3g/ml、0.03〜0.1g/ml、0.03〜0.05g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.033g/mlである。
第18の態様のさらなる実施形態では、ステップa)における少なくとも1種の脂質に加えて、疎水性アスコルビン酸エステルを有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、疎水性アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである。
さらなる実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9〜1:99の比で存在し、すなわちアスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9、0.2:99.8、0.3:99.7、0.4:99.6、0.5:99.5、0.6:99.4、0.7:99.3、0.8:99.2、0.9:99.1または1.0:99.0の比で存在する。特定の実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9の比で存在する。
第18の態様のさらなる実施形態では、ステップb)において、a)の混合物を1〜10ml/分の速度で注入し、すなわちa)の混合物を1ml/分、2ml/分、3ml/分、4ml/分、5ml/分、6ml/分、7ml/分、8ml/分、9ml/分または10ml/分の速度で注入する。特定の実施形態では、混合物を5ml/分の速度で注入する。
第17の態様のさらなる実施形態では、水性相は、500〜3000ml/分の速度で循環し、すなわち水性相は、500ml/分、600ml/分、700ml/分、800ml/分、900ml/分、1000ml/分、1100ml/分、1200ml/分、1300ml/分、1400ml/分、1500ml/分、1600ml/分、1700ml/分、1800ml/分、1900ml/分、2000ml/分、2100ml/分、2200ml/分、2300ml/分、2400ml/分、2500ml/分、2600ml/分、2700ml/分、2800ml/分、2900ml/分または3000ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、1000〜2500ml/分、1500〜2500ml/分または2000〜2500ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、2200ml/分の速度で循環する。
特定の実施形態では、水性相を、せん断誘導装置により循環させる。いくつかの実施形態では、せん断誘導装置は、スタティックミキサーまたは通常のスターラーである。特に、せん断誘導装置は、スタティックミキサーである。
さらなる実施形態では、スタティックミキサーは10〜15mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmの内径を有する。特定の実施形態では、スタティックミキサーは、12〜13mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、12.0mm、12.1mm、12.2mm、12.3mm、12.4mm、12.5mm、12.6mm、12.7mm、12.8mm、12.9mmまたは13.0mmの内径を有する。いくつかの実施形態では、スタティックミキサーは、最終体積が150〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、すなわちスタティックミキサーは、最終体積が150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、210ml、220ml、230ml、240ml、250ml、260ml、270ml、280ml、290mlまたは300mlであるリポソーム製剤の混合に適している。特に、スタティックミキサーは、最終体積が170〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、特に最終体積が200〜250mlであるリポソーム製剤の混合に適している。したがって、特定の実施形態では、スタティックミキサーの内径と混合されるリポソーム製剤の体積との比は、該リポソーム製剤15mlあたりの内径が0.7mm〜1mmとなる比であり、すなわち該リポソーム製剤15mlあたりの内径が0.7mm、0.8mm、0.9mmまたは1.0mmとなる比である。
特定の実施形態では、ステップb)において、a)の混合物をせん断誘導装置の手前で注入する。特定の実施形態では、a)の混合物をスタティックミキサーの手前で注入する。
さらなる実施形態では、溶媒を、ステップc)において、ろ過を用いて、特にタンジェンシャルフローろ過を用いて除去する。
さらなる実施形態では、ステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1〜10mg/mlのCD−RAPを含有し、すなわちステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、2〜9mg/ml、3〜8mg/ml、4〜8mg/ml、5〜8mg/mlまたは6〜8mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、7mg/mlのCD−RAPを含有する。さらなる実施形態では、ステップd)において混合されるCD−RAPは、上記で詳述したアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーに含まれる。
さらなる実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1または1.5:1である。特定の実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は1.2:1である。
第18の態様の実施形態では、本方法は、
e) 前記リポソーム製剤を凍結乾燥するステップ
をさらに含む。
第18の態様の実施形態では、本方法は、
f) 前記凍結乾燥リポソーム製剤を、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファー中で再構成するステップ
を含む。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積を1度に加えて混合することにより、凍結乾燥リポソーム製剤を単一のステップで再構成する。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の複数の部分を2つ以上の引き続くステップで加えることにより、2つ以上の引き続くステップで凍結乾燥リポソーム製剤を再構成し、すなわち、第1のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の半分の体積を加えて混合し、第2のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積のもう一方の半分を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は2つのステップを含み、第1のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1の体積を加えて混合し、第2のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の2を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は3つのステップを含み、各ステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1を加えて混合することができる。
第19の態様において、本発明は、リポソーム製剤の多分散度を低下させる方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法を提供する。
第19の態様の実施形態では、本方法は、
d) ステップa)〜c)によって得られたリポソーム製剤と、CD−RAPを含有する組成物とを混合するステップ
をさらに含む。その際、予め形成されたリポソームにCD−RAPを加える。
いくつかの実施形態では、ステップa)の有機溶媒は、クラス3の溶媒である。特にこの溶媒は、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3−メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピルからなる群から選択され、より好ましくは1−プロパノールである。
第19の態様の実施形態では、ステップa)の少なくとも1種の脂質は、グリセリド類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、リン脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)およびホスホイノシチド類、例えばホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスファート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリホスファート(PIP3)、カルジオリピン、リゾリン脂質類およびコレステロールからなる群から選択される。特定の実施形態では、この少なくとも1種の脂質は、2種の脂質類の組合せ物であり、特にホスファチジルコリンとコレステロールとの組合せ物である。
第19の態様の実施形態では、ステップa)において、2種以上の脂質を有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとを有機溶媒に溶解させる。特に、脂質類と有機溶媒との比は、3:1である。
さらなる実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.02〜0.4g/mlであり、すなわち溶媒中の全脂質濃度は、0.02g/ml、0.03g/ml、0.04g/ml、0.05g/ml、0.06g/ml、0.07g/ml、0.08g/ml、0.09g/ml、0.10g/ml、0.11g/ml、0.12g/ml、0.13g/ml、0.14g/ml、0.15g/ml、0.16g/ml、0.17g/ml、0.18g/ml、0.19g/ml、0.2g/ml、0.21g/ml、0.22g/ml、0.23g/ml、0.24g/ml、0.25g/ml、0.26g/ml、0.27g/ml、0.28g/ml、0.29g/ml、0.30g/ml、0.31g/ml、0.32g/ml、0.33g/ml、0.34g/ml、0.35g/ml、0.36g/ml、0.37g/ml、0.38g/ml、0.39g/mlまたは0.4g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.03〜0.3g/ml、0.03〜0.1g/ml、0.03〜0.05g/mlである。特定の実施形態では、溶媒中の全脂質濃度は、0.033g/mlである。
第19の態様のさらなる実施形態では、ステップa)における少なくとも1種の脂質に加えて、疎水性アスコルビン酸エステルを有機溶媒に溶解させる。特定の実施形態では、疎水性アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸パルミチン酸エステルである。
さらなる実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9〜1:99の比で存在し、すなわちアスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9、0.2:99.8、0.3:99.7、0.4:99.6、0.5:99.5、0.6:99.4、0.7:99.3、0.8:99.2、0.9:99.1または1.0:99.0の比で存在する。特定の実施形態では、アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9の比で存在する。
第19の態様のさらなる実施形態では、ステップb)において、a)の混合物を1〜10ml/分の速度で注入し、すなわちa)の混合物を1ml/分、2ml/分、3ml/分、4ml/分、5ml/分、6ml/分、7ml/分、8ml/分、9ml/分または10ml/分の速度で注入する。特定の実施形態では、混合物を5ml/分の速度で注入する。
第19の態様のさらなる実施形態では、水性相は、500〜3000ml/分の速度で循環し、すなわち水性相は、500ml/分、600ml/分、700ml/分、800ml/分、900ml/分、1000ml/分、1100ml/分、1200ml/分、1300ml/分、1400ml/分、1500ml/分、1600ml/分、1700ml/分、1800ml/分、1900ml/分、2000ml/分、2100ml/分、2200ml/分、2300ml/分、2400ml/分、2500ml/分、2600ml/分、2700ml/分、2800ml/分、2900ml/分または3000ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、1000〜2500ml/分、1500〜2500ml/分または2000〜2500ml/分の速度で循環する。特定の実施形態では、水性相は、2200ml/分の速度で循環する。
特定の実施形態では、水性相を、せん断誘導装置により循環させる。いくつかの実施形態では、せん断誘導装置は、スタティックミキサーまたは通常のスターラーである。特に、せん断誘導装置は、スタティックミキサーである。いくつかの実施形態では、スタティックミキサーは10〜15mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmの内径を有する。特定の実施形態では、スタティックミキサーは、12〜13mmの内径を有し、すなわちスタティックミキサーは、12.0mm、12.1mm、12.2mm、12.3mm、12.4mm、12.5mm、12.6mm、12.7mm、12.8mm、12.9mmまたは13.0mmの内径を有する。いくつかの実施形態では、スタティックミキサーは、最終体積が150〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、すなわちスタティックミキサーは、最終体積が150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、210ml、220ml、230ml、240ml、250ml、260ml、270ml、280ml、290mlまたは300mlであるリポソーム製剤の混合に適している。特に、スタティックミキサーは、最終体積が170〜300mlであるリポソーム製剤の混合に適しており、特に最終体積が200〜250mlであるリポソーム製剤の混合に適している。したがって、特定の実施形態では、スタティックミキサーの内径と混合されるリポソーム製剤の体積との比は、該リポソーム製剤15mlあたりの内径が0.7mm〜1mmとなる比であり、すなわち該リポソーム製剤15mlあたりの内径が0.7mm、0.8mm、0.9mmまたは1.0mmとなる比である。特定の実施形態では、ステップb)において、a)の混合物をせん断誘導装置の手前で注入する。特定の実施形態では、a)の混合物をスタティックミキサーの手前で注入する。
さらなる実施形態では、ステップc)において、ろ過を用いて、特にタンジェンシャルフローろ過を用いて溶媒を除去する。
さらなる実施形態では、ステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1〜10mg/mlのCD−RAPを含有し、すなわちステップd)で混合されるCD−RAPの組成物は、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/mlまたは10mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、2〜9mg/ml、3〜8mg/ml、4〜8mg/ml、5〜8mg/mlまたは6〜8mg/mlのCD−RAPを含有する。特定の実施形態では、組成物は、7mg/mlのCD−RAPを含有する。さらなる実施形態では、ステップd)において混合されるCD−RAPは、上記で詳述したアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーに含まれる。
さらなる実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1または1.5:1である。特定の実施形態では、リポソーム製剤とCD−RAPとの比は1.2:1である。
第19の態様の実施形態では、本方法は、
e) 前記リポソーム製剤を凍結乾燥するステップ
をさらに含む。
第19の態様の実施形態では、本方法は、
f) 前記凍結乾燥リポソーム製剤を、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファー中で再構成するステップ
を含む。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積を1度に加えて混合することにより、凍結乾燥リポソーム製剤を単一のステップで再構成する。いくつかの実施形態では、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の複数の部分を2つ以上の引き続くステップで加えることにより、2つ以上の引き続くステップで凍結乾燥リポソーム製剤を再構成し、すなわち、第1のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の半分の体積を加えて混合し、第2のステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積のもう一方の半分を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は2つのステップを含み、第1のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1の体積を加えて混合し、第2のステップで、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の2を加えて混合することができる。いくつかの実施形態では、再構成は3つのステップを含み、各ステップでアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーの全再構成体積の3分の1を加えて混合することができる。
本発明により、特に以下の実施形態が提供される:
1. 以下:
a) そのC末端に切断部位を含むプレ配列と、
b) (特に配列番号1もしくはその多様体による)CD−RAPまたはその多様体と
を含む、CD−RAP前駆体タンパク質。
2. 前記プレ配列は、CD−RAPのフォールディングを妨害せず、特にフォールディング前にプレ配列を除去する必要はない、態様1の前駆体タンパク質。
3. 前記プレ配列は、CD−RAPのフォールディングを改善する、態様1または2の前駆体タンパク質。
4. 前記プレ配列は、5〜50のアミノ酸の長さを有し、特に7〜33のアミノ酸の長さを有する、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
5. 前記プレ配列は、アフィニティータグを含み、特にポリHisタグを含む、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
6. プレ配列が有するハイドロパシーの総平均は、CD−RAPが有するハイドロパシーの総平均よりも低い、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
7. 前記前駆体タンパク質が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.03未満であり、かつ/または前記プレ配列が有するKyteおよびDoolittleによるハイドロパシーの総平均(GRAVY)は、−0.2未満である、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
8. 前記切断部位は、酵素切断部位であり、特にエンドペプチダーゼ切断部位であり、特にエンテロキナーゼ切断部位であるか、または混合求核体スーパーファミリーA(PA clan)プロテアーゼ切断部位であり、特にRアミノ酸またはKアミノ酸である、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
9. 前記エンドペプチダーゼは、システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼからなる群から選択され、好ましくはトリプシンまたはキモトリプシンであり、より好ましくはトリプシンである、態様8の前駆体タンパク質。
10. 前記プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTX1T、MATTX1TG、MATTX1TGN、MATTX1TGNSまたはMATTX1TGNSAを含み、ここで、X1は、LまたはSである、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
11. 前記プレ配列は、そのN末端にアミノ酸MATTST、MATTSTG、MATTSTGN、MATTSTGNSもしくはMATTSTGNSAまたはそれらの多様体を含む、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
12. 前記プレ配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号18、配列番号19からなる群から選択されるアミノ酸配列もしくはその多様体を含むか、または該アミノ酸配列もしくはその多様体からなる、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
13. 前記前駆体タンパク質は、配列番号20によるアミノ酸配列もしくはその多様体を含むか、または該アミノ酸配列もしくはその多様体からなる、先行する態様のいずれかの前駆体タンパク質。
14. 態様1から13までのいずれかの前駆体CD−RAPタンパク質をコードする核酸。
15. 態様14の核酸を含有するベクター。
16. 態様1から13までのいずれかの前駆体CD−RAPタンパク質、態様14の核酸または態様15のベクターを含む宿主細胞。
17. 前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞である、態様16の宿主細胞。
18. 前記宿主細胞は、細菌細胞であり、特に大腸菌細胞である、態様16の宿主細胞。
19. ネイティブCD−RAPの製造方法であって、
a) 態様1から13までのいずれかのCD−RAP前駆体タンパク質を提供するステップと、
b) 前記プレ配列を除去してネイティブCD−RAPを取得するステップと
を含む方法。
20. 以下:
c) 前記CD−RAP前駆体タンパク質のフォールディングを行い、適宜、前記フォールディング済みのCD−RAPを精製するステップと、
d) 前記ネイティブCD−RAPを精製するステップと
のうちの1つまたは複数をさらに含む、態様19の方法。
21. ステップa)において提供される前記CD−RAP前駆体タンパク質は、その1次立体配座、2次立体配座または3次立体配座で存在する、態様19または20の方法。
22. ステップb)において前記プレ配列を除去する前かまたはその後に、特にステップb)において前記プレ配列を除去する前に、ステップc)においてCD−RAPのフォールディングを行う、態様19から21までの方法。
23. 前記前駆体CD−RAPを、ステップa)において生物工学的手段により、特に態様17から19までの宿主細胞から提供する、態様19から22までの方法。
24. ステップb)において、前記プレ配列を、酵素による切断によって除去し、特にエンテロキナーゼによる切断によって、またはエンドペプチダーゼによる切断によって、特にトリプシンによる切断によって除去する、態様19から23までのいずれかの方法。
25. 前記タンパク質分解酵素、特にトリプシンと前記前駆体CD−RAPタンパク質との比は、タンパク質1mgあたり酵素が0.5〜1.5単位となる比である、態様24の方法。
26. ステップb)を、0.5〜20時間にわたって行い、特に0.5〜16時間にわたって行い、特に4〜7時間にわたって行う、態様19から27までのいずれかの方法。
27. ステップb)を、pH7〜9で行い、特にpH8〜8.5で行い、特にpH8.3で行う、態様19から26までのいずれかの方法。
28. ステップb)を、5〜40℃の温度で行い、特に20〜25℃の温度で行う、態様19から27までのいずれかの方法。
29. ステップc)を、ステップa)の後でかつステップb)の前に行う、態様20から29までのいずれかの方法。
30. ステップc)は、
(i) 前駆体CD−RAPタンパク質を変性バッファー中でインキュベートするステップと、
(ii) 前記ステップ(i)で得られた溶液をフォールディングバッファーに加えるステップと
を含む、態様19から29までのいずれかの方法。
31. 前記変性バッファーは、DTTを特に10mMの濃度で含有する、態様30の方法。
32. 前記フォールディングバッファーは、アルギニンを特に0.5〜1モル/mLの濃度で含有し、特に0.75モル/mLの濃度で含有する、態様30または31の方法。
33. 前記ステップ(i)で得られた溶液を、前記フォールディングバッファーに少量ずつ、特に1〜3時間の時間範囲にわたって加える、態様30から32までのいずれかの方法。
34. 前記ステップ(i)で得られた溶液を、前記フォールディングバッファーに毎時0.5〜2体積%の速度で加え、特に毎時1.5体積%の速度で加える、態様30から32までのいずれかの方法。
35. 前記フォールディングステップc)を、5〜25℃の温度で行い、特に10℃で行う、態様30から34までのいずれかの方法。
36. 前記フォールディング済みの前駆体CD−RAPをクロマトグラフィーにより精製し、特にHICクロマトグラフィーまたはマルチモーダル(MM)クロマトグラフィーにより精製する、態様30から35までのいずれかの方法。
37. 前記ネイティブCD−RAPをクロマトグラフィーにより精製し、特にイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはHICクロマトグラフィーにより精製する、態様30から36までのいずれかの方法。
38. CD−RAPタンパク質調製物であって、107のアミノ酸の長さを有する配列番号1の成熟CD−RAP配列を有するCD−RAPタンパク質を含有するCD−RAPタンパク質調製物において、前記CD−RAPタンパク質調製物中に存在する他のいずれかのCD−RAPタンパク質に対する前記CD−RAP(107AA)の比は、99重量%以上である、CD−RAPタンパク質調製物。
39. CD−RAPタンパク質調製物であって、前記CD−RAPタンパク質調製物は、107のアミノ酸の長さを有する配列番号1の成熟CD−RAP配列を有するCD−RAPタンパク質(107AA)を含有するが、105のアミノ酸の長さを有する配列番号21のCD−RAP配列を有するCD−RAP(105AA)を含有しない、CD−RAPタンパク質調製物。
40. 前記CD−RAPタンパク質は、40℃以上の融解温度を示す、態様38または38のCD−RAPタンパク質調製物。
41. CD−RAPもしくはその多様体または態様38から41までのいずれかによるCD−RAPタンパク質調製物と、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸と、バッファーとを含む、組成物。
42. 前記正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、CD−RAPの凝集を防止する、態様41の組成物。
43. 前記正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジンおよびプロリンからなる群から選択される、態様41または42の組成物。
44. 前記バッファーは、CD−RAPの分解を防止する、態様41から43までのいずれかの組成物。
45. 前記バッファーは、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリスバッファーからなる群から選択される、態様41から44までのいずれかの組成物。
46. 糖類またはアミノ糖類をさらに含む、態様41から44までのいずれかの組成物。
47. 前記糖類は、単糖類、二糖類または三糖類であり、特にスクロース、マルトース、トレハロースまたはラフィノースである、態様46の組成物。
48. 前記アミノ糖類は、グルコサミン、N−メチルグルコサミン、ガラクトサミンまたはノイラミン酸である、態様46の組成物。
49. アスコルビン酸および/またはグリシンを含有しない、態様41から48までのいずれかの組成物。
50. アルギニンを50〜500mMの濃度で含有し、特に100〜350mMの濃度で含有し、特に100〜200mMの濃度で含有し、より具体的には200mMの濃度で含有する、態様41から49までのいずれかの組成物。
51. ヒスチジンを5〜100mMの濃度で含有し、特に10〜50mMの濃度で含有し、特に20〜50mMの濃度で含有し、より具体的には50mMの濃度で含有する、態様41から50までのいずれかの組成物。
52. リン酸ナトリウムを5〜100mMの濃度で含有し、特に10〜50mMの濃度で含有し、特に20〜50mMの濃度で含有し、より具体的には20mMの濃度で含有する、態様41から51までのいずれかの組成物。
53. リン酸二水素ナトリウムを5〜100mMの濃度で含有し、特に10〜50mMの濃度で含有し、特に20〜50mMの濃度で含有し、より具体的には20mMの濃度で含有する、態様41から52までのいずれかの組成物。
54. クエン酸塩を5〜100mMの濃度で含有し、特に10〜50mMの濃度で含有し、特に20〜50mMの濃度で含有し、より具体的には20mMの濃度で含有する、態様41から53までのいずれかの組成物。
55. スクロースを5〜100mMの濃度で含有し、特に10〜50mMの濃度で含有し、特に20〜50mMの濃度で含有し、より具体的には45mMの濃度で含有する、態様41から54までのいずれかの組成物。
56. 負に荷電したアミノ酸をさらに含有し、好ましくはグルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される負に荷電したアミノ酸をさらに含有する、態様41から55までのいずれかの組成物。
57. 組合せ物は、アルギニンとグルタミン酸とを50〜500mMの全濃度で含有し、特に100〜350mMの全濃度で含有し、特に100〜200mMの全濃度で含有し、より具体的には200mMの全濃度で含有する、態様56の組成物。
58. アルギニンとグルタミン酸との、1:1の比での、特に1:1.25の比での、特に1:1.5の比での、より具体的には1:2の比での組合せ物を含有する、態様56または57の組成物。
59. 前記組成物のpH値は、5.5〜8.0であり、特に6.0〜7.5であり、特に6.0〜6.5であり、より具体的には6である、態様41から58までのいずれかの組成物。
60. リン酸または塩化水素を用いて、特にリン酸を用いて前記組成物のpH値が調整されている、態様59の組成物。
61. CD−RAPまたはその多様体の濃度は、1〜10mg/mlであり、特に2〜5mg/mlである、態様41から60までのいずれかの組成物。
62. 2mg/mlのCD−RAPまたはその多様体と、20mMのクエン酸塩と、200mMのアルギニンとを含有し、かつpH値が6である、態様41から61までのいずれかの組成物。
63. アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAP発現の低減に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷を治療および/または予防する方法において使用するための、態様41から62までのいずれかの組成物。
64. 静脈内および/または関節内の投与のための、態様41から60までのいずれかの組成物。
65. 態様41から64までのいずれかの組成物の製造方法であって、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するバッファーに、CD−RAPまたはその多様体を加えることを含む方法。
66. CD−RAPを保存する方法であって、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するバッファー中でCD−RAPを保持することを含む方法。
67. CD−RAPを−80℃〜40℃の温度で保存し、特に−20℃〜25℃の温度で保存し、特に−20℃〜5℃の温度で保存する、態様66の方法。
68. CD−RAPを最長で6カ月間の期間にわたって保存し、特に最長で3カ月間の期間にわたって保存し、特に最長で1カ月間の期間にわたって保存する、態様66または67の方法。
69. 態様41から64までのいずれかの組成物を含有する、医薬品。
70. 封入されたCD−RAPまたはその多様体を含むリポソームを含有する組成物であって、前記リポソームのサイズは、200nm未満であり、特に150nm未満であり、特に120nm未満であり、特に100nm未満である、組成物。
71. 全CD−RAPの20%超が前記リポソームに封入されており、特に全CD−RAPの少なくとも30%が前記リポソームに封入されており、特に全CD−RAPの少なくとも40%が前記リポソームに封入されており、特に全CD−RAPの40%〜80%が前記リポソームに封入されている、態様70の組成物。
72. CD−RAP対リポソームの比は、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5である、態様70から71までのいずれかの組成物。
73. 前記リポソームの多分散指数(PDI)は、0.3未満であり、特に0.2未満であり、特に0.15未満であり、特に0.132である、態様70から72までのいずれかの組成物。
74. 前記CD−RAPおよび前記リポソームは、正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸を含有するリン酸バッファーまたはクエン酸バッファー中に存在する、態様70から73までのいずれかの組成物。
75. 前記正に荷電した少なくとも1種のアミノ酸は、アルギニン、ヒスチジンおよびリシンからなる群から選択される、態様74の組成物。
76. ヒスチジンは、50〜500mMの量で存在し、特に100〜400mMの量で存在し、特に20mMの量で存在する、態様75の組成物。
77. 前記クエン酸バッファー中のクエン酸の量は、10〜100mMであり、特に10〜50mMであり、特に20mMである、態様74から76までのいずれかの組成物。
78. 前記リポソームは、グリセリド類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、リン脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択される脂質類から構成され、特にホスファチジルコリンおよびコレステロールから構成される、態様70から77までのいずれかの組成物。
79. 前記脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとは、74.8:25.1の比で存在する、態様78の組成物。
80. 前記リポソームは、疎水性アスコルビン酸エステルをさらに含有し、特にアスコルビン酸パルミチン酸エステルをさらに含有する、態様78または79の組成物。
81. 前記アスコルビン酸エステルは、リン脂質類およびステロール類の量に対して0.1:99.9の比で存在する、態様78から80までのいずれかの組成物。
82. アグリカンの分解および/または軟骨への水の流入の増加および/またはCD−RAP発現の低減に苦しむ患者における軟骨の疾患または損傷を治療および/または予防する方法において使用するための、態様70から81までのいずれかの組成物。
83. 関節内投与のための、態様70から82までのいずれかの組成物。
84. 態様70から83までのいずれかの組成物を含有する、医薬品。
85. リポソーム製剤の製造方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法。
86. 以下:
d) ステップa)〜c)によって得られたリポソーム製剤と、CD−RAPを含有する組成物とを混合するステップ
をさらに含む、態様85の方法。その際、予め形成されたリポソームにCD−RAPを加える。
87. 前記有機溶媒は、クラス3の溶媒であり、好ましくは、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、t−ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3−メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピルからなる群から選択され、より好ましくは1−プロパノールである、態様85または86の方法。
88. 前記少なくとも1種の脂質は、グリセリド類、グリセロリン脂質類、グリセロホスフィノ脂質類、グリセロホスホノ脂質類、スルホ脂質類、スフィンゴ脂質類、リン脂質類、イソプレノイド類、ステロイド類、ステアリン類、ステロール類および炭水化物含有脂質からなる群から選択され、特にホスファチジルコリンおよびコレステロールである、態様85から87までのいずれかの方法。
89. ステップa)において、2種以上の脂質を前記有機溶媒に溶解させる、態様85から88までのいずれかの方法。
90. 前記脂質であるホスファチジルコリンとコレステロールとを、前記有機溶媒に特に3:1の比で溶解させる、態様89の方法。
91. 前記溶媒中の全脂質濃度は、0.02〜0.4g/mlであり、特に0.03〜0.3g/mlであり、特に0.033g/mlである、態様85から90までのいずれかの方法。
92. ステップa)における少なくとも1種の脂質に加えて、疎水性アスコルビン酸エステルを前記有機溶媒に溶解させ、特にアスコルビン酸パルミチン酸エステルを前記有機溶媒に溶解させる、態様85から91までのいずれかの方法。
93. 前記アスコルビン酸エステルは、前記少なくとも1種の脂質に対して0.1:99.9の比で存在する、態様92の方法。
94. ステップb)において、a)の混合物を1〜10ml/分の速度で注入し、特に5ml/分の速度で注入する、態様85から93までのいずれかの方法。
95. 前記水性相は、500〜3000ml/分の速度で循環し、特に1000〜2500ml/分の速度で循環し、特に2200ml/分の速度で循環する、態様85から94までのいずれかの方法。
96. 前記水性相を、せん断誘導装置により循環させ、特にスタティックミキサーにより循環させ、特に10〜15cmの直径を有するスタティックミキサーにより循環させ、特に12.6cmの直径を有するスタティックミキサーにより循環させる、態様85から95までのいずれかの方法。
97. ステップb)において、a)の混合物をせん断誘導装置の手前で注入し、特にスタティックミキサーの手前で注入する、態様85から96までのいずれかの方法。
98. 前記溶媒を、ステップc)においてろ過を用いて除去し、特にタンジェンシャルフローろ過を用いて除去する、態様85から97までのいずれかの方法。
99. ステップd)において混合されるCD−RAPの組成物は、1〜10mg/ml、特に7mg/mlのCD−RAPを、特にアルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファー中に含有する、態様85から98までのいずれかの方法。
100. 前記リポソーム製剤とCD−RAPとの比は、1.2:1である、態様99の方法。
101. 以下:
e) 前記リポソーム製剤を凍結乾燥するステップ
をさらに含む、態様85から100までのいずれかの方法。
102. 以下:
f) 前記凍結乾燥リポソーム製剤を、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファー中で再構成するステップ
をさらに含む、態様101の方法。
103. 態様85から102までのいずれかの方法により製造可能であるリポソーム製剤。
104. CD−RAPを保存する方法であって、態様70から83までのいずれかに記載のリポソーム組成物中でCD−RAPを保持することを含む方法。
105. CD−RAPを−80℃〜40℃の温度で保存し、特に−20℃〜25℃の温度で保存し、特に5℃で保存する、態様104の方法。
106. CD−RAPを最長で6カ月間の期間にわたって保存し、特に最長で3カ月間の期間にわたって保存し、特に最長で1カ月間の期間にわたって保存する、態様104または105の方法。
107. リポソーム製剤中のリポソームのサイズを低下させる方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法。
108. リポソーム製剤の多分散度を低下させる方法であって、
a) 少なくとも1種の脂質を有機溶媒に溶解させるステップと、
b) ステップa)の前記混合物を循環水性相に注入するステップと、
c) 前記溶媒を除去するステップと
を含む方法。
本発明を、実施例および図面においてより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものと理解されるべきではない。
実施例
例1:CD−RAP前駆体タンパク質の製造および単離
プレ配列を含む軟骨由来レチノイン酸タンパク質CD−RAPの以下の構築物を設計する:
a) 発現
大腸菌BL21型株を使用した。この大腸菌BL21型株は、上記の(すなわち、それぞれのプレ配列と配列番号1によるCD−RAPの配列とを含む)CD−RAP前駆体タンパク質をコードするヌクレオチド配列とアンピシリン耐性とを含むpET−52b−IIプラスミドを含有していた。この菌株を、LB中の予備培養物内と、最少培地を入れた37℃、pH7.0の発酵槽内のグルコース供給済みの主培養物内とで培養した。
b) 細胞溶解、溶解およびプレCD−RAPの捕捉
上述の細胞を収穫し、フレンチプレスで2回溶解させ、封入体内の融合タンパク質を含有する溶解物を水で2回洗浄し、遠心分離した。
変性のために、約27g/Lのこの融合タンパク質28.5gをビーカーに入れ、次いで6MのGua−HClと、2mMのEDTAと、10mMのDTTと、50mMのトリス/HClとのpH8.3の混合物を加え、これを周囲温度で2時間撹拌した。この溶液は、暗褐色で、多少混濁していた。
c) プレCD−RAPのフォールディング
リフォールディングステップのために、0.75Mのアルギニンと、1mMのEDTAと、1mMの還元型グルタチオンと、0.5mMの酸化型グルタチオンとのpH8.3の混合物を調製した。この混合物に、変性させたプレCD−RAPを含有する溶液をゆっくりと注ぎ、次いでこれを周囲温度で16時間撹拌した。0.61g/Lのフォールディング済みのプレCD−RAPが得られた。
d) プレCD−RAPの捕捉
導電率が80mS/cmに達するまで、硫酸アンモニウムを加えた。深層ろ過と、0.2μmのろ過とを行った。捕捉ステップ自体は、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより行った。カラムの直径は2.6cmであり、このカラムに高さ26cmまで吸着剤Toyopearl Butyl 650(東ソー社)を充填した。このカラムに、ろ液0.90Lを付与した。平衡バッファーは、pH7.0の50mMのNaHPO4/0.5MのNH4SO4を含有する水であり、溶出バッファーは、pH7.0の50mMのNaHPO4を含有する水であった。溶出体積を、複数の画分に集めた。プレCD−RAPを含有するこれらの画分を合したところ、このプールの体積は、0.35Lであった。このプールにおけるプレCD−RAPの濃度は、0.70g/Lであった。キャプチャークロマトグラフィー後の収率は、47%であった。
e) プレ配列の除去
HIクロマトグラフィーの溶出液(pH4.5の酢酸Na)をNaOHによりpH8.3に調整し、この中で酵素による切断を行った。この切断には、大腸菌で組換えにより製造したエンドプロテアーゼトリプシン(ブタトリプシン)を使用した。(中にプレCD−RAPAPが溶解している)キャプチャークロマトグラフィー溶出液のpHを水酸化ナトリウムにより8.3に調整し、この中で上述の切断を行った。タンパク質1mgあたりの酵素を1単位とすることを目的として、この溶液に164μLのトリプシン溶液を加えた。この溶液を、周囲温度で16時間撹拌した。
この切断をHPLCクロマトグラフィーにより評価したところ、CD−RAPとは別のピークが示された(図2参照)。
プレ配列の長さに応じて様々な全濃度のネイティブCD−RAPが得られたが、その際、CD−RAP構築物に含まれるプレ配列が長いほど、こうしたCD−RAP構築物から得られる収量が高かった(図3および図4参照)。
例2:切断パラメーター
前駆体CD−RAPの切断に最適なパラメーター設定を見出すために、以下のパラメーターを調べた:
a) 酵素濃度
切断とトリプシン濃度との相関関係を調べるために、試験を行って、様々なトリプシン濃度での切断をモニタリングした。
既知の濃度441.8mg/LのプレCD−RAPを、NaOHによりpH4.1からpH8.3に調整して使用した。次いでこの溶液を10個の部分に分け、これらを周囲温度(23〜25℃)で振とうした。各部分に異なる量のトリプシン(50U/L、100U/L、150U/L、200U/L、250U/L、300U/L、400U/L、600U/L、1000U/Lまたは2000U/L)を加え、サンプルを採取して、HPLCにより切断をモニタリングした。結果を図5に示す。
b) pH値
濃度250U/mLのトリプシン(トリプシン溶液の初期活性値9615U/mLを用いて算出)と、0.24g/LのプレCD−RAP含分とを用いて、pH値が切断に及ぼす影響を調べた。この溶液の9つの部分を、HClおよびNaOHにより、pH3、4、5、6、7、8、9、10および11に調整した。この切断物を、ファルコンチューブ内で25℃で撹拌した。HPLCによる試験のために、様々な間隔でサンプルを採取した。図6に、様々なpH値でのプレCD−RAP含分(HPLCピーク面積として表される)の減少を示す。この切断はpH5以下では作用せず、pH6では切断は生じるがゆっくりであることが見てとれる。pH8.3以上ではこの切断は速いが、CD−RAPの量は、最大値をとった後に低下する。これは、おそらくトリプシンによるCD−RAPの消化が原因であり、これは、トリプシン切断部位の露出によって起こりうる。これらのトリプシン切断部位は、pH値が比較的低い場合にはタンパク質の立体構造の内部に隠れている。結論として、切断ステップのpHは7〜8が理想的であると言える。切断を比較的短時間で行うことが望ましい場合には、約8.0〜8.3のpHが好ましいが、この場合には、トリプシンを10時間以内に除去するように留意すべきである。そうしないと、CD−RAPが消化されてしまう可能性がある。この切断を比較的長時間にわたって行うことが望ましい場合には、pH値を7.0とし、20時間後にトリプシンを除去することが好ましい。
c) 温度
温度がトリプシン切断に及ぼす影響を試験した。同一のプレCD−RAP溶液を使用し、溶液1mLあたり1.25単位のトリプシンを付与した。唯一変動させたものは温度であり、5℃刻みで5℃から40℃まで変更した。この試験を、温度調節可能なシェーカーにおいて2.0mLチューブ内で行った。切断の進行を、HPLCによって様々な時間間隔でモニタリングした。結果を以下の図に示す。図7は、HPLCクロマトグラムにおけるプレCD−RAPピークの面積の減少を示す。いずれの温度でも減少が生じる(しかしこの減少は、例えば沈殿などの他の理由によっても生じることがある)。この減少は、温度が高いほど速くなる。比較的高温では、約24時間後にプレCD−RAPの完全な消失が認められたが、低温では、2倍の時間が経過した後にも、プレCD−RAPのある程度の残留が持続するようである。総括すると、適用した条件では、比較的低温の方が収率が高いが、こうした収率に達するまでには比較的長い時間を要するようである。このデータの結果から、20〜25℃の切断温度が良好な作業範囲であると考えられる。
例3:様々なCD−RAP構築物の安定性
その1次配列およびその処方が異なる様々なrhCD−RAP構築物について、その熱安定性およびストレス安定性に関して物理化学的に特性決定を行った。
異なるrhCD−RAP構築物の作用を識別するために、示差走査型蛍光定量法(DSF)による融解点の測定を行った。この測定では、Sypro orangeの存在下でのタンパク質の変性過程で蛍光強度を温度に対して記録する。タンパク質のアンフォールディングによって疎水性パッチが露出し、これらのパッチに結合した色素分子によって、610nmの強い蛍光が放出される。タンパク質のアンフォールディングの程度を、HEXチャネルによってモニタリングする。このHEXチャネルでは、Sypro Orangeとアンフォールディングしたタンパク質との複合体のスペクトル特性を捉える(励起515〜535nm、発光560〜580nm)。
様々なrhCD−RAP構築物のサンプルを、2つのバッファー系(透析チャンバ:D−tube Dialyzer Midi、MWCO 6〜8kDa、Novagen、No.71507−3)内で一晩透析し、対応するバッファーで希釈することにより濃度を1.0mg/mLに固定した。
バッファー調製:
350mMのL−アルギニンリン酸塩、pH7.5
121.94gのL−アルギニンを約1.8Lの水で希釈し、85%のリン酸でpHを7.5に調整し、純水で満たして、最終体積を2Lとした。
200mMのL−アルギニン、50mMのNaH 2 PO 4 、pH7.5
69.68gのL−アルギニンと15.60gのNaH2PO4・2H2Oとを、約1.8Lの水に希釈し、85%のリン酸でpHを7.5に調整し、純水で満たして、最終体積を2Lとした。
各バッファーを、Sypro Orange色素と混合した(2μLの色素+48μLのバッファー=200×Sypro Orange)。各rhCD−RAPサンプル(1.0mg/mLのrhCD−RAP)を希釈して終濃度を0.5mg/mLおよび0.1mg/mLとし、これらそれぞれに、10倍濃度のSypro Orangeを用いて3つの複製物を準備した。
すべてのサンプルについて、3つの複製物をそれぞれ用いて1度に測定を行った。リアルタイムPCR検出システムCFX96 Touch(Bio−Rad)を用いて、タンパク質を、25℃〜95℃の温度勾配で1℃刻みで30秒の保持間隔でインキュベートした。タンパク質のアンフォールディングの程度を、HEXチャネルによってモニタリングする。このHEXチャネルでは、Sypro Orangeとアンフォールドタンパク質との複合体のスペクトル特性を捉える(励起515〜535nm、発光560〜580nm)。CFX Manager Softwareによりデータを分析し、1次導関数スペクトルを用いて融解温度を求めた。
驚くべきことに、生成物CMC−B−0052では、53℃という著しくより低い融解温度が検出されたのに対して、試験した他のrhCD−RAPバッチ(F−MPL.120004.001およびG25−Q131 #003)では、約54℃〜56℃という、より高い融解点が示された。この3℃の差は、2つの異なる製剤で実証された。結果を、以下の表2および図8に示す。
例4:5mg/mlのCD−RAP濃度で、5種の製剤を調製した。製剤化していない非濃縮CD−RAPを、対照標準(製剤0)として分析に含めた。これらの製剤の組成の概要を、表3に示す。
調製したバッファーを、表4に示す。各バッファーを、以下のように調製した:
− 60mlの適切なバッファーを、100mlのガラス瓶またはガラスビーカーに注ぎ入れた。
− 適宜、必要体積のArg/Glu溶液を加えた(表4参照)。
− 適宜、必要量のアルギニン塩酸塩を加えた(粉末、表4参照)。
− 適宜、必要量のスクロースを加えた(粉末、表4参照)。
− pHを、目標値+/−0.1に調整した。
注:いずれの場合にも、1MのNaOHでpHを調整した。
− この溶液をメスフラスコに移し、適切なバッファーを標線まで加え、最終pHを測定した。バッファーを、0.2μmのフィルターでろ過した。
Amicon4チューブ(MWカットオフ 3kDa)を用いたろ過遠心分離により、バッファー交換を行った。予め秤量しておいたチューブにCD−RAP原薬(2ml)を移し、適切なバッファーを等体積加えた。これらのチューブを遠心分離(4000g、15℃)し、透過液および濃縮液の秤量により洗浄プロセスをモニタリングした。4回の洗浄サイクルを行った。最後の遠心分離の際に、5mg/mlのCDRAPを得るために、わずかに濃縮(約10%)を行った(この回で使用したバッチF−AKO−120018Aの補正後の含分は、4.7mg/mlであった)。バッファーの交換後、ストレス試験のためにサンプルの一部を2Rガラスバイアルに分注し、残分は、t=0の分析を待つ間に5℃で保存した。
T=0のサンプルを、方法2〜3;5〜9(表5)を用いて分析した。t=0の分析を、製剤調製後48時間以内に行った。すべての製剤(対照標準製剤を含む)に、40℃で7日間ストレスを与えた。バイアルを安定性キャビネットに入れることによってこれを行った。さらに、凍結/解凍により製剤にストレスを与えた。バイアルを−20℃で保存することによってこれを行った。24時間後、バイアルを周囲温度で1時間解凍させ、次いで再び24時間凍結させた。このようにして、5回の凍結・解凍サイクルを行った。凍結・解凍後、分析を待つ間、これらのバイアルを5℃で保存した。ストレスを与えたサンプルをすべて、方法2〜3;5〜7(表5)により一緒に(すなわち双方のストレステストが完了した後に)分析した。いずれの分析も、ストレス試験終了後48時間以内に行った。
これらの製剤のpHおよび重量オスモル濃度を、T=0で測定した。結果を図9に示す。製剤1のpH、特に製剤2および製剤3のpHは、目標であるpH6.5を上回っていた(それぞれ6.7、7.1および7.0)ことが見てとれる。このことは、アルカリ性(pKa 9.3〜10.3)を示すタンパク質の存在下でpHを6.5に維持するには、20mMのバッファー濃度では低すぎる可能性があることを示している。クエン酸バッファーおよびヒスチジンバッファーの場合には、pH6.5は、これらのバッファーの緩衝能範囲の端部に位置する。したがって、これらのバッファーを選択する場合には、製剤のpHを低下させることが有益でありうる。例えばpHを6.0とすれば、クエン酸塩およびヒスチジンの緩衝能でもおそらく十分であろうと考えられ、それによってバッファー濃度を20mMに保つことができる。
調製した製剤の大部分は、Arg/Glu混合物を含有する製剤4を除いて高張性であった。興味深いことに、SCILにより調製した対照標準製剤も高張性であった。予想通り、製剤へのスクロースの添加は、重量オスモル濃度に大きな影響を及ぼした(製剤5)。製剤2および製剤3において目標pHが得られなかったため、(得られた他の結果に基づいて重要であると判断される場合には)これらの製剤を、2回目で繰り返す。1回目の目的は主に、様々な賦形剤がCD−RAPの安定性に及ぼす影響を評価することであったため、この1回目の製剤を調製する際には、これらの製剤の重量オスモル濃度を考慮しなかった。
これらの製剤の外観を、図10に示す。T=0では、いずれの製剤も無色透明であった。熱ストレスを7日間与えた後では、いずれの製剤も混濁していたが、製剤4が最も混濁していた。いずれの製剤においても、時間が経つとバイアルの底に沈殿物が沈んだ。このことは、この沈殿物が大きな不溶性タンパク質凝集体で構成されていることを示している。また、スクロースを含有する製剤5は、ごく薄い黄色であった。5回の凍結・解凍サイクルの後、これらの製剤は、T=0と同様の外観を有していた。
主ピークについてCD−RAPを用いたRP−HPLCにより得られた結果を、図11に示す。
この過程で、10〜15%のタンパク質の損失が生じた。これは、Amiconチューブの膜へのCD−RAPの吸着または透過液における(すなわち膜孔を通じた)タンパク質の損失が要因であった可能性がある。様々な製剤について、含分は同等であった(3.4〜3.8mg/ml)。このことは、タンパク質の損失が、製剤の組成にもそれらのpHにも関連しないことを示している。
40℃で7日間ストレスを与えたサンプルについて得られた結果を見ると、これらの製剤の性能を以下のように(最も良好から最も劣悪まで)評価できることが分かる:製剤0=2>1=3>4=5。したがって、クエン酸バッファー中の製剤2は、対照標準製剤0と同様に作用した。それぞれArg/Gluおよびスクロースを含有する製剤4および5は、T=0と比較して、ストレス後のCD−RAPの主ピークの回収率が最も低かった。製剤5は、熱ストレス後のCD−RAP純度が大幅に最も低かった(図11の11.6%)。
凍結・解凍ストレスを与えた後では、熱ストレス後に観察されたほど顕著ではないものの、変化が認められた。これらの製剤の性能を、以下のように(最も良好から最も劣悪まで)評価することができた:3>1=2=4=5<0。総括すると、これらの結果は、製剤0(対照標準)が最も劣悪であり、他の製剤は総じて同等であったことを示している。したがって、リン酸ナトリウムバッファーは、凍結・解凍ストレス時に最も劣悪な性能を示しており、バッファー濃度と相関関係にあるという傾向を見てとることができた(20mMのリン酸ナトリウムを含有する製剤1は、この50mMのバッファーを含有する製剤0よりも良好に作用した)。この原因はおそらく、凍結時にこのバッファーにより生じるpHのシフトであろう。ブランクでは存在しなかったクロマトグラムのピークをすべて積分することによって、ストレス後に回収した全タンパク質含分が得られた(図11の最後の3つの列)。したがって、ストレス後に得られた回収物は、サンプルからHPLCカラムによりフィルターで除去されなかった物質を表す。熱ストレス後、全CD−RAP含分は50〜72%で変動したことが見てとれるが、製剤4は明らかな例外であり、これについてはわずか20%の物質しか回収されなかったことが分かる。このことは、この製剤において生じた沈殿が比較的多かったことを示す透明性の結果と一致している。凍結・解凍ストレス後に得られた全CD−RAP量は、熱ストレス後に得られた全CD−RAP量よりもはるかに高く、T=0で測定したものと同等であった。これらのサンプルでは沈殿が観察されなかったため、これは予想していたことであった。例外が1つあり、これは対照標準製剤であった。この対照標準製剤は、凍結・解凍ストレス後に全回収率が80%であった。このサンプルでは沈殿が見られなかったため、このことは、可溶性凝集物の形成によって説明がつくものと考えられる。
例5:
1回目で得られた結果に基づき、5mg/mlの目標CD−RAP濃度で6種の製剤を調製した。さらに、製剤化していない非濃縮DS(1回目と同様、製剤0a)と、バッファー交換プロセスに供した製剤化していない非濃縮DS(製剤0b)との、2つの対照標準製剤を含めた。これらの製剤の組成の概要を、表6に示す。
2回目には、以下のファクターについて調べた:
・ 50mM、pH6.5のバッファーの種類の影響(リン酸ナトリウム対リン酸カリウム対クエン酸塩対ヒスチジン)、
・ 酸化防止剤(アスコルビン酸)の存在の影響。
1回目と比較して、バッファー濃度を50mMに増加させた。これは、製剤の緩衝能を向上させるために行ったものである。Sanofiで得られた新たなデータから、pHが酸性であるとCD−RAPタンパク質はより安定となることが判明したため、調製したすべての製剤のpHを6.5に設定した。安定剤(アルギニン)濃度を、200mMに維持した。この回では、アルギニン塩基をすべての製剤に使用した。
2回目では、バッファーを、1回目とは異なって調製した。1回目では、リン酸ナトリウムバッファーおよびヒスチジンバッファーを、まずは追加の賦形剤なしで調製して、それらのpHをHClまたはリン酸で調整した。次いで、他の賦形剤(アルギニン塩酸塩、Arg/Glu、スクロース)を加え、1NのNaOHでpHを再度調整して、目標pHとした。2回目では、賦形剤添加前のバッファーのpHを、緩衝塩で調整した。これにより、強酸を用いたpH調整ステップを最後に1度だけ行うこととなり、このステップを、賦形剤の添加後に行った。このようにバッファーを調製することで、1回目ではかなり高かった製剤の重量オスモル濃度に有益な影響が及ぶことが予想された。より具体的には、2回目のバッファーを以下のように調製した:
・リン酸カリウムバッファーについては、KH2PO4塩の溶液を調製した。この溶液を、pH6.5に達するまでK2HPO4溶液で滴定した。所定の体積のバッファー溶液を取り出し、アルギニン(塩基)を加え、そして(適宜)アスコルビン酸を加えた。リン酸でpHを調整して、pHを6.5に戻した。次いで、このバッファーをメスフラスコに移し、標線まで水を加えた。
・クエン酸バッファーについては、クエン酸溶液を調製した。この溶液を、pH6.5に達するまで1Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定した。アルギニン(塩基)を加え、そして(適宜)アスコルビン酸を加えた。塩酸(HCl)でpHを調整して、pHを6.5に戻した。次いで、このバッファーをメスフラスコに移し、標線まで水を加えた。
・ヒスチジンバッファーについては、ヒスチジンが単一の塩で構成されていることから最初の滴定ステップを行わなかったことを除いては、他の2つのバッファーに用いたのと同じ手順であった。クエン酸バッファーと同様に、ヒスチジンバッファーのpHをHClで調整した。
調製後、各バッファーの最終pHを測定し、これらの溶液を、0.2μmのフィルターでろ過した。
例4に記載したのと同一の方法を用いて製剤を調製した。バッファー交換前に、製剤0a以外の製剤をすべて、それらの対応するバッファーで希釈して、濃度を5.5mg/mlとした。この濃度は、1回目のRP−HPLCによって得られたT=0の結果により示唆された、プロセス中に生じた10%のタンパク質の損失が補われるように選択したものである。3回目の洗浄ステップの後(例えば最後の2mlのバッファーを加えた後)、希HCl溶液でこれらの製剤のpHを調整して、目標値とした。使用すべき適切なHCl濃度を決定するために、予備試験をこれらのバッファーについて行った。インプロセスでのpH調整の結果を、図12に示す。
T=0のサンプルを、方法2〜3;5;7〜9(表5)を用いて分析した。t=0の分析を、製剤調製後48時間以内に行った。1回目の場合と同様にストレス試験を行ったが、ただし、熱ストレス(40℃)を7日間ではなく2日間与えた点で相違していた。これは、1回目で観察されたタンパク質の大量の沈殿を防ぐ目的で行ったものである。ストレス期間の後、分析を待つ間にこれらのサンプルを5℃で保存した。ストレスを与えたサンプルをすべて、方法2〜3;5;7(表5)を用いて一緒に(すなわち双方のストレステストが完了した後に)分析した。いずれの分析も、最後の凍結・解凍サイクルの48時間以内に行った。
2回目に調製した製剤のpHおよび重量オスモル濃度の結果を、図13に示す。どちらのパラメーターも、T=0で測定したものである。1回目とは対照的に、いずれの製剤のpHも狙い通りであったことが見てとれる。このことは、3回目の洗浄ステップの後に導入したインプロセスのpH調整ステップの結果である。リン酸カリウムバッファー中での製剤1および2の重量オスモル濃度は、高めではあるが許容できるものであった。50mMのリン酸カリウムバッファーの重量オスモル濃度は、1回目で調製した20mMのリン酸ナトリウムバッファーの重量オスモル濃度よりも低かった。2回目に単一のpH調整ステップを導入し、かつアルギニン塩酸塩の代わりにアルギニン塩基を使用することにより、バッファーの重量オスモル濃度が改善された。それぞれクエン酸バッファーおよびヒスチジンバッファー中で調製した製剤3および4ならびに製剤5および6の重量オスモル濃度は、350mOsm/kgの許容値を超えていた。50mMのクエン酸バッファーの場合、このことは、以下の事実から予想されていたことであった:
・pH6.5は、緩衝能の上方範囲(すなわち、大抵は共役塩基であるクエン酸三ナトリウムが存在する)であること。
・ pH調整前に、クエン酸三ナトリウムのイオン化度は4であり、すなわち50mMのクエン酸三ナトリウム=200mMのイオンであり、これにArgの200mMを加算すると、400mOsm/kgとなること。
クエン酸バッファーおよびヒスチジンバッファーの重量オスモル濃度が高いことを説明する他の理由は、これらのバッファーのpHを、リン酸の代わりにHClで調整したことにある。文献から、アルギニンとリン酸イオンとの間には強いイオン相互作用が生じることが知られている。この相互作用は、実質的には共有結合による相互作用と考えられ、質量分析により衝突誘起解離を行うことによる断片化にも耐えることができる。この複合体の形成ゆえ、リン酸でのpH調整が重量オスモル濃度に及ぼす影響は、はるかに低くなる。塩化物イオンはこの複合体を形成しない。それゆえ、図13に見られるように、pH調整をHClで行った製剤3〜6の重量オスモル濃度は高かった。クエン酸バッファーおよびヒスチジンバッファーにHClを使用した目的は、製剤に追加のイオン(リン酸イオン)が導入されないようにすることであった。選択した最終製剤がこれらのバッファーのうちのいずれかに含まれる場合には、pHの調整にはリン酸が考慮されることになろう。
製剤の外観を、図14に示す。t=0では、薄桃色であった製剤6以外は、いずれの製剤も無色透明であった。この変色は、すでにバッファー中で観察されており、調製後数時間で帯黒赤色を呈した。これはおそらく、アスコルビン酸の酸化によって生じたものと思われる。バッファーを3回調製したが、バッファーを遮光状態にしていたにもかかわらず、こうした変色が毎回観察された。アスコルビン酸とヒスチジンとが非相溶性を示す旨の記載は文献にはないため、アスコルビン酸を含有する他のバッファーがこうした急激な変色を示さないことの理由は不明である。40℃で2日間ストレスを与えた後、いずれの製剤も混濁していた。しかし1回目と比較して、沈殿物は、バイアルの底には沈まずに、懸濁液中に留まった。このことは、生じた沈殿物がより少ないことを示している。アスコルビン酸を含有する製剤(2、4および6)はいずれも変色を示し、この変色は、製剤6において比較的顕著であった。この製剤は、最も混濁したもののうちの1つでもあった。
5回の凍結/解凍サイクルの後で、これらの製剤は、t=0の時点と同一の外観を示した。
RP−HPLCによって得られた結果を、図15に示す。t=0での製剤の含分は若干のばらつきを示し、製剤0a、1、4、そして特に6は、目標のCD−RAP濃度である5mg/mlを上回り、製剤0bはこれを下回っている。このことは、Amiconチューブにおけるバッファー交換プロセスの制御が困難であり、正確な含分を得るにはこのプロセスの際にIPCを導入すべきであることを示している。熱ストレスを2日間与えた後、アスコルビン酸を含有する製剤(2、4および6)では、t=0と比較してCD−RAPの含分および純度の有意な低下が観察された。興味深いことに、この純度の低下は、すでに製剤4および6においてt=0で存在していた。これらの3つの製剤では、5回の凍結・解凍サイクルの後にも、熱ストレス後の程度よりは低いものの、純度の低下が見られた。
例6:
温度の影響下でのCD−RAPタンパク質の経時的な安定性を評価するために、6カ月の安定性試験を行った。この化合物を、−80℃、−20±5℃および5±3℃(特に5℃)で保存することを予定する。これらの製剤を、様々な保存条件(−80℃、−20℃、5℃、25℃および40℃)で保存した。この安定性試験では、2つのバッチを使用した。一方は医薬製剤(DP)バッチであり、もう一方は、このDPバッチに対応するプラセボバッチである。これら2つのバッチを、表7〜9に示す:
これらの製剤を、長期/リアルタイムの保存条件(−80℃、−20℃および5℃)および促進保存条件(25℃および40℃)で試験した。−80℃、−20℃、5℃および25℃での安定性を、6カ月間モニタリングした。40℃での安定性を、1カ月間モニタリングした。6カ月間の本試験の間に、これらのサンプルの色および透明性、pH、重量オスモル濃度、主バンドのMWおよび主バンドの純度は、時点を変えても保存温度を変えても変化しなかった。様々な温度で6カ月間保存している間中ずっと、いずれの安定性サンプルにおいても凝集物は観察されなかった。CD−RAP医薬製剤(DP)に対応するプラセボは、RP−HPLC、HPSECおよびSDS−PAGE分析によって、DPとの干渉を示さなかった。放出時のサンプルの総好気性生菌数(TVAC)もまた、標準規定内であった。
製剤を、−80℃、−20±5℃、5±3℃、25±2℃および40±2℃の様々な安定性キャビネット内で直立位置で安定性キャビネット内で保存した。指示された時点で、サンプルをこれらのキャビネットから取り出し、2週間以内に分析した。分析を待つ間、サンプルを5℃で保存した。以下の表10に示すパラメーターおよび試験方法を用いて、これらのバッチの安定性を評価した。
結果を、図16および図17に示す。
目視検査(視認可能な粒子、色および透明性)を、Ph.Eur.により(すなわち、白黒の背景の手前で)行った。しかし、入手可能なサンプルの量では、標準化されたPh.Eur.チューブに移すことができなかったため、検査をバイアル内で直接行った。視認可能な粒子、透明性および色についての目視検査を、2人の作業者が行った。
どちらの製剤においても、様々な温度で6カ月間保存した後に、色および透明性の有意な変化は観察されなかった。これらのサンプルでは、色および透明性が保存温度と相関関係を示すという傾向は観察されなかった。これらのサンプルの色は、注射用水と同様に無色であったため、「B9/BY7/Y7よりも強い着色を示さない」と報告した。これらのサンプルの透明性は、注射用水と同様に透明であったため、「<Ref I」と報告した。プラセボバッチF531−03−003P063は、いずれの保存温度および時点においても、視認可能な粒子を実質的に含んでいなかった。しかし、DPバッチF531−03−003P064Bは、視認可能な粒子が保存温度および時間と相関関係にあるという傾向を示した。放出時に、このサンプルは、視認可能な粒子を実質的に含んでいなかった。−20℃および5℃で保存したDPサンプルは、t=1カ月では、視認可能な粒子をまだ実質的には含んでいなかった。t=3カ月およびt=6カ月の時点では、−20℃および5℃で保存したサンプルにおいて5〜10個の繊維様粒子が観察された。しかしこの量は10個未満であったため、これを、視認可能な粒子を実質的に含まないものとして報告した。興味深いことに、−20℃および5℃で保存したサンプルで検出された粒子の数は、t=3カ月からt=6カ月までの期間に増加しなかった。これらの粒子が−20℃および5℃でのCD−RAP DPバッチの不安定性の指標であることを確認するためには、粒子の性質(すなわち、タンパク質性または非タンパク質性)の特定に加えて、比較的長期間保存したバイアルの目視検査が必要となるものと考えられる。−80℃で保存したサンプルは、6カ月間保存した後に繊維様粒子を20〜30個示したが、これは、−20℃で同一の期間保存したサンプルで検出されたものよりも多かった。したがって、−80℃での保存には、−20℃での保存に比べて利点はない。25℃では、t=1カ月では、サンプルには視認可能な粒子はまだ実質的に含まれていなかった。t=3カ月およびt=6カ月では、これらのサンプルは、それぞれ20個および10〜20個の繊維様粒子を示した。40℃では、サンプルは、t=1カ月で10個超の繊維様の白色粒子を示した。総括すると、このことは、40℃で1カ月間保存した後および25℃で3カ月間保存した後にCD−RAP DPが不安定性を示すことの指標となりうる。全体として、視認可能な粒子についての結果から、CD−RAP DPは、−20℃および5℃で6カ月間保存した後に最も安定であると考えられることが判明した。
様々な温度で6カ月間保存した後のpHの変化は、どちらの製剤においても観察されなかった。サンプルのpHは、6.0〜6.1のままであった。
CD−RAP DPバッチおよびプラセボバッチの重量オスモル濃度を、放出時およびt=6カ月で分析した。この試験全体を通してこれらの製剤の重量オスモル濃度の変化はなく、DPバッチおよびプラセボバッチでそれぞれ、315〜319mOsm/kgおよび309〜313mOsm/kgであった。重量オスモル濃度は、通常は安定性を示すパラメーターではないが、これは予想されたものである。
プラセボバッチのピークは、いずれのサンプルにおいてもRP−HPLCによりDPバッチとの干渉を示さなかった。「そのままの」CD−RAP含分の段階的な低下およびCD−RAP純度の段階的な低下が、保存温度および時間との相関関係を示すものとして観察された。これに、Ox−Met−SAR396049のパーセンテージの増加と、Ox−Met−SAR396049以外の最大の不純物のパーセンテージの増加とを組み合わせた。−80℃では、Ox−Met−SAR396049のパーセンテージと、Ox−Met−SAR396049以外の最大の不純物のパーセンテージはどちらも、放出時に得られた値と比較して、6カ月間の保存後に(それぞれ6.6%から7.0%へ、および1.5%から1.9%への)0.4%の増加を示した。−20℃でも、同一の期間にわたって同様の傾向が観察された(どちらの種類の不純物についても、放出と比較して0.6%および0.4%の増加)。試験全体の間に、全体的なCD−RAP純度の低下は、約1%(t=0カ月での85.0%からt=6カ月での83.9%まで)であり、「そのままの」CD−RAP含分は、どちらの保存温度でも2.2mg/mlから2.0mg/mlへと減少した。5℃では、この温度でOx−Met−SAR396049のパーセンテージの増加がより大きかった(放出時の6.6%からt=6カ月での7.5%)ことを除いては、−80℃および−20℃で観察されたのと同様の傾向が観察された。これに伴い、CD−RAP純度が(85.0%から83.5%へと)1.5%低下した。25℃では、Ox−Met−SAR396049のパーセンテージは、放出時の6.6%から、3カ月間および6カ月間の保存後にそれぞれ8.2%および8.9%に増加した。その温度でt=6カ月で得られたOx−Metのパーセンテージは、40℃で1カ月間保存した後のサンプルで得られたもの(9.1%)とほぼ同等であった。Ox−Met−SAR396049以外の最大の不純物のパーセンテージも、放出時の1.5%から、25℃で6カ月間保存した後に2.8%へと増加した。視認可能な粒子について観察されたのと同様に、これらの結果は、25℃で3カ月以上保存した場合および40℃で1カ月間保存した場合にCD−RAP DPが不安定性を示すことの現れであると考えられる。
CD−RAP DPバッチF531−03−003P064Bでは、いずれの保存温度でも6カ月超ではHPSECにより凝集物が観察されなかった。プラセボのピークは、いずれのサンプルにおいてもDPバッチとの干渉を示さなかった。
この試験で得られた結果に基づいて、CD−RAPタンパク質溶液は、−20℃および5℃で保存した場合に最も安定であると結論付けることができる。−80℃での保存には、−20℃での保存に比べて明らかな利点はなかった。
例7:空のリポソームを生成する溶媒注入法の確立
この試験の目的は、リポソームの調製に現在用いられている方法を改良し、かつリポソーム製剤の組成(例えば脂質)を変更することによって、関節内投与に適した凍結乾燥可能なCD−RAPのリポソーム製剤を開発することであった。
溶媒注入法を用いて空のリポソームを調製するための一般的な方法のスキームを、図18に示す。脂質を含有する有機溶媒混合物を、制御された様式で蠕動ポンプを使用して水相に注入した。図18に示すように、2つの液体を混合するための装置にスタティックミキサーを組み込んだ。リポソーム形成にとって好ましい条件である乱流を増大させるために、この注入を、スタティックミキサーの手前で行った。リポソームをすぐに形成させることができるようにするために、注入後の有機溶媒の量は、10%(v/v)であった。この方法を、周囲温度で行った。脂質の注入後、10%の有機溶媒を含有する水中の空のリポソームが得られた。この空のリポソーム懸濁液を水で洗浄して、有機溶媒を除去した。これを、タンジェンシャルフローろ過(TFF)によって行った。この方法によって、99.5%超の有機溶媒を除去することができる。
pH7.3〜7.4のアルギニン−リン酸ナトリウム(arg−リン酸)バッファー(350mMのアルギニン、50mMのリン酸二水素ナトリウム、リン酸でpH調整済み)中で、約5mg/mlのCD−RAP濃度でCD−RAP溶液を製造した。
溶媒注入法を試験する前に、すべての脂質を可溶化させうる溶媒混合物を見出すために、脂質を用いて溶解度試験を行った。方法を簡便なままとするため、周囲温度で脂質を可溶化させうる溶媒混合物を見出さなければならなかった。以下の脂質および溶媒を試験した:
脂質:− 大豆PC、− アスコルビン酸パルミチン酸エステル、− コレステロール、
溶媒:− エタノール(96%)、− TBA(95%)、− アセトン、− DMSO、− DMA。
大豆PCおよびアスコルビン酸パルミチン酸エステルの溶解度を、エタノールおよびTBA中で試験した。コレステロールを、アセトン、DMSOおよびDMA中で試験した。いずれの場合にも、脂質を秤量し、付与可能な溶媒を加えた。透明になった(すなわち、中に脂質が溶解した)混合物に、さらなる脂質を加えた。透明にならなかった混合物には、追加の溶媒を加えた。目視により溶解度を評価した。
この試験の結果を、図19に示す。大豆PCとアスコルビン酸パルミチン酸エステルは、エタノール(96%)に溶解可能であり、一方でDMAは、コレステロールの最良の溶媒であると結論付けられた。アスコルビン酸パルミチン酸エステルの溶解度は、TBA(95%)中の方が高かったが、複数の脂質に対して1種の溶媒を使用する方が、より都合がよい。周囲温度で透明な1つの脂質溶液を得るために、2つの脂質溶液であるエタノール:DMAを、3:1の比率で混合した。このエタノール/DMA混合物中にすべての脂質を含有する最終脂質溶液は、周囲温度で透明であった。
大豆レシチンおよびアスコルビン酸パルミチン酸エステルをエタノール(96%)に溶解させ、コレステロールをDMAに溶解させた。DMAはクラス2の溶媒であるため、クラス3の溶媒に切り替えることが好ましい。コレステロールを溶解させることができたとともに、他の脂質と混合した際に周囲温度で透明な溶液を形成することができたクラス3の溶媒は、1−プロパノールであった。溶媒の使用量は、変更しなかった。
脂質有機溶液の濃度の影響
有機溶媒中の脂質濃度は、溶媒注入後の粒子径に影響を及ぼしうる。溶媒注入法は、有機溶媒を水相で希釈して約10%(v/v)とすることに基づいているため、脂質濃度が高くなるほど、必要な水が少なくなるとともに、形成されるリポソームの希釈度合いが低くなることを意味する。一方で、有機相中の脂質濃度が高くなるほど、粒子(リポソーム)のサイズが大きくなりうる。同一の注入パラメーターを用いて様々な濃度の脂質を注入することによって、脂質濃度の影響を調べた。
図20は、有機相中の脂質濃度の影響を明確に示している。脂質濃度が低下するとともに、形成されるリポソームの粒子径が減少し、また粒子の分布が狭くなる(PDIが低くなる)。脂質濃度が減少するにつれてリポソームはより高度に希釈され、その結果、濃縮係数が高くなる。濃縮係数とは、CD−RAPタンパク質との混合前に目的の脂質含分を得るのに必要な、注入後のバルクリポソーム懸濁液の濃縮回数を示す。
スタティックミキサーのサイズの影響
スタティックミキサーを用いて、溶媒注入時に水と有機相とを混合した。様々なミキサーを、様々な構成で利用することができる。これらの構成の1つに、ミキサーの内径が挙げられる。内径を変化させることで内部体積が変化し、これにより有機相と水相との混合比が変化する。
各バッチに対して異なるスタティックミキサーを用いて、2つのバッチを調製した。
小型スタティックミキサー:内径5.3mm。
大型スタティックミキサー:内径12.6mm。
他の注入パラメーターはいずれも、各バッチについて同一であった。ミキサーの内径が粒子径に及ぼす影響を、図21に示す。図21に示す結果から、スタティックミキサーの内径が大きいほど、そうしたスタティックミキサーを用いて調製したリポソームは、サイズが小さくなるとともにPDIが低くなると結論付けることができる。
水性相の流量の影響
水性相の流量の変化は、スタティックミキサー内で生じるせん断と、注入される有機溶媒の希釈とに影響を及ぼす。このパラメーターを試験するために、2つのバッチを準備した。水性相の流量が多い場合には大型スタティックミキサーがより適しているため、大型スタティックミキサーを使用した。どちらのバッチも、水性相の流量以外の注入パラメーターはすべて同一であった。結果を図21に示す。水性相の流量を550ml/分から1100ml/分に増加させたところ、粒子径およびPDIが有意に減少した。Z平均は147nmから106nmに減少し、PDIは0.213から0.193に減少した。
溶媒注入速度を5ml/分またはさらには10ml/分に増加させ、これに比較的高い水性相速度である2200ml/分を組み合わせると、1ml/分の注入速度で調製したバッチに見られるものと同等の粒子径データが得られる。したがって、最大で10ml/分という、比較的高い注入速度が実現可能であった。
組合せ
上記で試験したパラメーターの最良の設定値を組み合わせることにより、バッチを調製した。上記の節での最適な設定値は、以下の通りであった:有機相中の脂質濃度:0.033(g/ml);スタティックミキサーの内径:大型(12.6mm);水性相の流量:1100(ml/分)。結果を図23に示す。試験したすべてのパラメーターの最良の設定値を組み合わせることにより、粒子径が72nmでPDIが0.132であるリポソームバッチが得られた。
例8:リポソームとCD−RAPタンパク質との混合
リポソームを調製し、そして(適宜)DSバッファーを交換/濃縮した後、双方の液体を、55:45のリポソーム:CD−RAP比で混合した。バッファー(プラセボとして使用)と混合した後と、CD−RAPと混合した後の、リポソームの粒子径を分析した。図24に見られるように、CD−RAPと混合した後のリポソームの粒子径に変化はなかった。
例9:凍結乾燥および再構成
凍結乾燥の2つの試験を、図25Aおよび図25Bに示すプログラムにしたがって行った。(図25Bに示す)試験2では、1次乾燥を、(図25Aに示す)試験1で行った+5℃の代わりに−10℃で行った。図25Aに示すプログラムにしたがって凍結乾燥を行ったところ、得られたケークには大きなクラックがあった。このケークを再構成した後、再構成を行った後に相分離が観察された。図25Bに示すプログラムにしたがって凍結乾燥を行ったところ、クラックなしのケークが得られた。このケークを再構成した後、相分離は観察されなかった。
ケークの再構成は、バイアルを5℃の冷蔵庫から取り出し、全再構成体積(1mL)の水を周囲温度で段階的にまたは1度に加えて30秒間振とうさせることでこのケークを直ちに再構成することによって行った。
例10:封入率
いずれのパラメーターによって最良の封入率(EE%)が得られるかを調べる目的で、様々なパラメーターがEEおよび再構成の容易性に及ぼす影響を、一連のバッチについて評価した。表12に、調製したすべての製剤の概要を示す。
パラメーター調査 − 製剤F531−03−008P027、F531−03−008P031およびF531−03−008P033
試験した製剤は、標準の脂質含分かまたは2倍の脂質含分のいずれかを有していた。バイアルを、1ステップで(すなわち全再構成体積を1度に加えることによって)、または段階的に再構成した。リポソームへの分子のより高度の封じ込めを促進する方法として、文献には段階的な再構成方法が記載されている。この方法を用いた場合、再構成は次のように進行する:1) 全再構成体積の30%を加え、バイアルを手で渦状に回し、ラボベンチ上で30分間静止させる。2) ステップ1を繰り返す。3) 再構成体積の残分を加え、バイアルを手で渦状に回し、ラボベンチ上で30分間静止させる。
この段階的な再構成方法を用いた場合、脂質含分が標準的である製剤はいずれも、最後の再構成ステップを行った後に均質であった。脂質含分が2倍である製剤は、ラボベンチ上での合計2時間の静止期間後に均質であった。しかし、1ステップでの再構成方法を用いた場合には、いずれの製剤においても、製剤の脂質含分にかかわらず再構成の直後に塊状物は視認できなかった。したがって、1ステップでの再構成方法によって、製剤の再構成がより容易になるものと考えられる。
再構成後、リポソーム懸濁液をアルギニン−リン酸バッファーで20倍に希釈し、直接VivaSpin法(遠心分離4000g、5分)で処理した。RP−HPLCにより、ろ液の遊離タンパク質含分を分析した。バッチ(F−MPL−120004)の調製に使用したDS中のタンパク質含分に、ピペットでバイアルに入れたDS溶液の量を乗じて得られたバイアル1本あたりのCD−RAPの理論量を対照標準として用いて、EE%を算出した。ケーク体積の影響はこの試験計画の後半に判明したため、これらのバッチでは、再構成した生成物の体積を測定しなかったことに留意すべきである。そうではあっても、脂質含分が同一であるバッチの再構成後の体積は同等であることから、これらのバッチのEE%値を互いに比較することができる。
試験した製剤および得られたEE%の概要を、図26に示す。得られたEE%は、17〜53%で様々であった。調査した各パラメーターの影響については、以下の節でより詳細に論じる。
同一の方法で再構成した同一のバッチの2本または3本のバイアルを評価することにより、EE%の結果の再現性について試験した。脂質含分が標準的である製剤において、再現性のあるデータが得られた。脂質含分が2倍である製剤P033Aについて得られた結果は、よりばらつきが多い。
脂質含分の影響を比較した。ケーク体積の補正を行わなかったため、ここでは、EE%の結果について注意深く解釈すべきである。どちらの再構成方法を用いても、脂質含分が高いほど、得られるEE%も高くなった。凍結乾燥前のリポソームと再構成時のリポソームと(P027KとP027Fとを比較)では、濃縮の影響はなかった。製剤P027Hについては、標準的な脂質含分を用いたが、ただしCD−RAP溶液の添加体積を半分にすることよって調製を行った。これにより、脂質:タンパク質比も高くなった。タンパク質含分が減少するとEE%が低下することが判明した。このことは、リポソームがCD−RAPで飽和されていなかったことを示している。なぜならば、利用可能なタンパク質が最大量封入されていた場合、タンパク質含分が減少するとEE%は増加したであろうと考えられるためである。
脂質含分が、再構成した生成物中のリポソームの粒子径に及ぼす影響についても調査した。しかし、脂質含分は、再構成後のリポソームの粒子径にも粒子径分布にも影響を及ぼさなかった。
凍結乾燥方法の影響を、図28Aに示す。脂質含分が標準的であり、かつ凍結乾燥を制御したサンプルについては、Christにより凍結乾燥を行った場合よりも良好なEE%が得られた。この傾向は、脂質含分が2倍であるサンプルにおいては逆である。制御した凍結乾燥に供したサンプルをアニーリングステップにも供したことを考慮すると、ここでは比較が困難であった。
再構成方法が、再構成した生成物中のリポソームの粒子径に及ぼす影響についても調査した。図28Bにおいて見てとれるように、1ステップでの再構成によって、粒子径分布が狭くなる。
パラメーター調査 − 製剤F531−03−008P041およびF531−03−008P050
試験された製剤は、脂質含分が2倍、3倍または4倍のいずれかであった。バイアルを、1ステップ法で(すなわち全再構成体積を1度に加えることによって)再構成した。この方法を用いて、すべての製剤を再構成することができた。再構成後、リポソーム懸濁液を、それらの対応するバッファーで20倍に希釈し、直接VivaSpin法(遠心分離4000g、5分)で処理した。RP−HPLCにより、ろ液の遊離タンパク質含分を分析した。バッチ(F−MPL−120004またはF−AKO−120006)の調製に使用したDS中のタンパク質含分に、ピペットでバイアルに入れたDS溶液の量を乗じて得られたバイアル1本あたりのCD−RAPの理論量を対照標準として用いて、EE%を算出した。ケーク体積の影響はこの試験計画の後半に判明したため、これらのバッチでは、再構成した生成物の体積を測定しなかったことに留意すべきである。そうではあっても、脂質含分が同一であるバッチの再構成後の体積は同等であることから、これらのバッチのEE%値を互いに比較することができる。
以下のことについて評価するために、2倍の脂質含分で、第1の製剤系列(F531−03−008P041A/C/E/G)を調製した:
− 1ステップで再構成した後の高脂質含分サンプルにおけるEE%の反復性および再現性、
− 凍結乾燥方法(制御対Christ)がEE%に及ぼす影響、
− 脂質含分が2倍であるバッチについての、再構成後の静止期間の必要性、
− バイアルのサイズおよび充填体積が、ケークの外観、再構成およびEE%に及ぼす影響。
第2の製剤系列(F531−03−008P050A/C/E/G/J/L)では、リポソームと混合したタンパク質溶液は、アルギニン−リン酸バッファーまたはアルギニン−クエン酸バッファーのいずれかの中に存在していた。すべてのバッチを、ISOに準拠した2Rバイアルに充填し、制御された凍結乾燥機内で凍結乾燥させた。これらのバッチを用いて、以下のパラメーターの影響について評価した:
− 1ステップで再構成した後の高脂質含分サンプルにおけるEE%の反復性および再現性、
− (高脂質含分を得るための)充填体積が、ケークの外観および再構成に及ぼす影響、
− 脂質濃度がEE%に及ぼす影響、
− タンパク質のバッファーの種類がEE%に及ぼす影響。
製剤の概要を、図29に示す。得られたEE%は、39〜62%で様々であった。同一のバッチからの2本または3本のバイアルを評価することにより、EE%の結果の再現性について試験した。10RバイアルにDPを3ml充填した場合には、小型バイアル(3mlおよび6ml)にDPをより少量充填した場合と比較して、より大きなばらつきが得られた。このことは、大型バイアルよりも小型バイアルの方が、よりしっかりとした再現性のある再構成が生じることが要因となっている可能性がある。この方法は、脂質含分が高い製剤について反復可能であった。3mlのバイアルでは、RSD%または差分%は、10%未満であった。RSD%または差分%が10%未満である場合、RP−HPLC法によって得られる遊離タンパク質含分の差は、0.3mg/ml未満である。8.2.1バイアルのサイズおよび充填量の影響。バイアルのサイズおよび充填量がEE%に及ぼす影響を、表71で比較することができる。充填体積が異なるサンプルおよびバイアルのサイズが異なるサンプルについて、脂質含分が2倍である製剤についてのEE%の有意差は得られなかった。バイアルのサイズが6mlおよび3mlである場合と比較して、バイアルのサイズが10mlである場合に、EE%のより多くのばらつきが得られた。
脂質含分が2倍であるサンプルのEE%について、1時間インキュベーションした後のサンプルと、インキュベーションなしのサンプルとでは、有意差は得られなかった。したがって、脂質含分が2倍であるサンプルを再構成した後の静止期間は、不要であった。
脂質含分が2倍であるサンプルのEE%について、Christによる凍結乾燥と制御された凍結乾燥との間に、有意差を観察することはできなかった。
脂質含分の影響についても比較することができる。しかし、ケーク体積の補正を行わなかったため、ここでは、EE%の結果について注意深く解釈すべきである。アルギニン−リン酸バッファー中のDPバッチでは、脂質含分に応じて比較的高いEE%が得られた(脂質量が2倍になると、40%から62%となる)。アルギニン−クエン酸バッファー中のDPバッチでは、脂質含分が2倍であるサンプルのEE%と、脂質含分が3倍であるサンプルのEE%とに、差はなかった。しかし、脂質含分が2倍または3倍から4倍となると、EE%は40%から51%に増加した。
脂質含分が2倍であるDPバッチでは、2つの異なる種類のバッファーについてEE%に有意差はなかった。しかし、脂質含分が3倍であるDPバッチおよび脂質含分が4倍であるDPバッチでは、アルギニン−リン酸バッファー中の製剤について、より高いEE%が得られた。
パラメーター調査 − 製剤F531−03−008P056およびF531−03−008P064
試験したバッチは、凍結乾燥前に4倍の脂質含分を有していた。この脂質濃度は過度に高く、これによってリポソームの滅菌ろ過の際に問題が生じた。再構成後、これらのバッチは、4倍、6倍または8倍の脂質含分を有していた。これらのバッチをアルギニン−クエン酸バッファー中で調製し、凍結乾燥を制御した状態で凍結乾燥させ、そして1ステップ法で再構成した。再構成後、これらのリポソーム懸濁液をクエン酸バッファーで20倍に希釈し、直接VivaSpin法(遠心分離4000g、5分)で処理した。RP−HPLCにより、ろ液の遊離タンパク質含分を分析した。これらのバッチでは、EE%を評価する際に、再構成した生成物の体積を考慮した。
以下のパラメーターの影響を評価するために、製剤F531−03−008P056E/F/H/J/L/Mを調製した:
− 脂質含分(4倍/6倍/8倍)、
− 凍結乾燥前の充填体積、
− バイアルのサイズ(6Rバイアル/2Rバイアル)。
脂質含分の影響を確認し、かつ凍結乾燥中の凍結速度の影響を評価するために、製剤F531−03−008P064E1/E2/F1/F2を調製した。いずれのパラメーターによって最良のEE%が得られるかを確認することだけではなく、最終バッチのバイアルのサイズ/脂質含分/充填体積/凍結速度を選択することも、これらのバッチの目的であった。
凍結乾燥後、P056系列のバッチは、凍結乾燥試験中に生じた問題が原因でケークの浮上および相分離を示した。したがって、そのバッチについては、再構成およびEE%の結果を注意深く解釈しなければならない。しかし、様々なパラメーターの影響を比較することができる。6Rバイアル中のサンプルはいずれも、容易に再構成することができた。塊状物は観察されなかった。しかし、製剤P056H/L(2Rバイアル中で脂質含分は6倍および8倍である)は、再構成することができなかった。これらの知見から、脂質含分が6倍および8倍である場合には、バイアルサイズが6Rであることが望ましいことが実証された。
P064系列のバッチを、低速および高速の2つの異なる凍結速度で凍結乾燥した。この試験を行うために、低速での凍結に供するバイアルを凍結乾燥機の棚に載置し、0.3℃/分の速度で−40℃まで凍結させた。これらのバイアルが凍結したらすぐに、高速での凍結に供するバイアルを、すでに−40℃である棚に載置した。凍結乾燥後、P064系列のバッチはいずれも、良好なケークを示した。他のサンプルはいずれも、1分間渦状に回すことにより再構成することができた。塊状物は観察されなかった。これらの結果から、脂質含分が8倍であると、実現可能な生成物を生じさせることができないことが判明した。
P056系列のバッチのEE%の結果を、図30に示す。バイアルのサイズによって差が生じることはないことが分かる。しかし、脂質含分は少し影響を及ぼすようであった。したがって、脂質含分の増加が影響を及ぼすことが確認された。しかしこれは、観察されたものと比べてはるかに重大性が低い。全体として、30%のEEを達成することができる。
例11:安定性
リポソームCD−RAP製剤の安定性と、その対応するプラセボの安定性とを、3カ月間の安定性試験で試験した。薬物動態(PK)試験での使用が予定されている製剤を、長期/リアルタイムの保存条件(−80℃、−20℃および5℃)および促進保存条件(25℃)で試験した。いずれの保存温度についても、安定性を3カ月間モニタリングした。本試験の3カ月間に、ケークの外観、pH、粒子径、主バンドのMWおよび主バンドの純度(SDS−Pageにより測定)は、時点を変えても保存温度を変えても変化しなかった。CD−RAP製剤に対応するプラセボは、CD−RAP製剤との干渉を示さなかった。全体的に、本試験で得られた結果は、−80℃、−20℃および5℃で保存した場合に凍結乾燥したリポソームCD−RAPが安定であったことを示している。−80℃および−20℃での保存は、5℃での保存に比べて明らかな利点を示さなかった。
表15、16および17に示すように、医薬製剤(DP)の製剤1つと、このDP製剤に対応するプラセボ製剤1つと、の2つの製剤を、安定性試験に供した。
安定性サンプルの保存条件および調製
製剤を、安定性キャビネットに入れた。これらの製剤を、−80℃、−20±5℃、5±3℃および25±2℃の様々な安定性キャビネット内で直立位置で保存した。指示された時点で、サンプルをこれらのキャビネットから取り出し、2週間以内に分析した。分析を待つ間、サンプルを5℃で保存した。表18に示すパラメーターおよび試験方法を用いて、これらのバッチの安定性を評価した。
放出時に、DPバッチおよびプラセボバッチのいずれも、再構成後に均質な懸濁液であった。
CD−RAP製剤およびプラセボ製剤のそれぞれについて、すべての安定性の結果を図31に示す。
1カ月間保存した後、プラセボバッチの5℃で保存したバイアルのうちの1つと、プラセボバッチの25℃で保存したバイアルのうちの1つと、CD_RAP製剤の25℃で保存した双方のバイアルにおいて、塊状物が観察された。これらの結果は、保存温度が再構成の容易性に影響を及ぼすことを示唆している。
3カ月間保存した後、−80℃で保存したサンプルは、いかなる塊状物を示さなかった。このことは、−20℃で保存したプラセボバッチのバイアルについても同様であった。これとは対照的に、−20℃で保存したDPバイアルでは塊状物が観察された。5℃および25℃では、2本のうちそれぞれ1本のバイアルにおいて塊状物が認められ、DPバッチおよびプラセボバッチの双方のバイアルにおいて塊状物が認められた。
総じて、試験した生成物は再構成が困難であり、得られた懸濁液は粘稠であった。したがって、再構成後にしばしば観察される懸濁液の不均質性を、時間および温度に応じた生成物の不安定性の結果として生じたものであると結論付けることは、困難である。
粒子径
再構成後のリポソームの粒子径を、放出時にのみDLSにより測定した。z平均は、DPバッチおよびプラセボバッチではそれぞれ、2.9μmおよび3.6μmであった。これは、レーザー回折法によって得られた結果(DPバッチおよびプラセボバッチについてそれぞれD(0.5)3.9μmおよび4.0μm)と同様の範囲である。粒子径分布は、DPバッチP082Kの2峰性分布を示していた。プラセボバッチP082Lの場合には、粒子径分布からさらに、分析した2本のバイアルのうちの一方に小さなリポソームが存在することが分かった。多分散指数(PdI)はブロードであり(双方のバッチで0.4)、これは常に、多峰性粒子径分布であることの証拠となる。放出時の粒子径は、DPバッチとプラセボバッチとで類似しており、試験全体を通して一定のままであった。このことは、再構成後の塊状物の存在(上記参照)が、バッチの粒子径に影響を与えなかったことを示唆している。
pH
様々な温度で6カ月間保存した後のpHの変化は、どちらの製剤においても観察されなかった。サンプルのpHは、CD−RAP製剤およびプラセボ製剤についてそれぞれ6.2および6.1のままであった。
全タンパク質含分
抽出法により求めた全タンパク質含分
試験中、生成物を−80℃、−20℃および5℃で保存した際の全CD−RAP含分は、3.9±0.2mg/mlであった。1つの例外は、−20℃で1カ月間保存したバイアルであり、これは、2.8mg/mlという、比較的低い全タンパク質含分を示していた。この結果は、異常値である可能性がある。実際に、全CD−RAP含分は、t=3カ月で3.9mg/mlに戻った。さらに、ケーク体積法を用いて同一のバイアル中で測定した全CD−RAP含分は、放出時に得られた結果(3.8mg/ml)と同等の結果を示した。
25℃で保存したサンプルは、より低温で保存したサンプルよりも低い全タンパク質含分(3.5mg/ml)を示した。所与のバッチにおいては全タンパク質含分は一定のままであるはずのため、「そのままの」含分の減少は、CD−RAPの分解によってしか生じえない結果であり、これによってCD−RAP主ピーク面積%が減少する。本試験で得られた結果は、これが事実であったことを示している。所与の時点での、−20℃で保存したサンプルのCD−RAP主ピーク面積%と、25℃で保存したサンプルのCD−RAP主ピーク面積%とを比較すると、CD−RAP主ピーク面積%は、t=1カ月で76%から70%に減少し、t=3カ月で70%から63%に減少したことが判明した。
ケーク体積法により求めた全タンパク質含分
全CD−RAP含分は、試験全体を通じて3.9±0.3mg/mlであった。抽出法で得られた結果とは対照的に、保存温度は全CD−RAP含分に影響を及ぼさなかった。このことは、この方法では「そのままの」含分を用いはするが、対照標準として理論上のCD−RAP濃度を用いるという事実を考慮すると、予想されたものである。この理論上の濃度は、バイアル1本あたりに充填されるタンパク質溶液の量と、再構成体積とに依存する。
遊離CD−RAP含分
生成物を−80℃、−20℃および5℃で保存した場合、遊離CD−RAP含分は、試験全体を通じて2.6±0.3mg/mlであった。
25℃で保存したサンプルは、より低温で保存したサンプルよりも低い遊離タンパク質含分(2.2〜2.3mg/ml)を示した。抽出法で得られた全タンパク質含分の結果で観察されたのと同様に、「そのままの」遊離タンパク質含分の減少は、CD−RAPの分解によって生じた結果であり、これによって、CD−RAP主ピーク面積%が減少する。このことは特に、3カ月間保存した後について該当し、この場合、遊離タンパク質含分は、5℃での2.7mg/ml(CD−RAP主ピーク面積77%)から、25℃での2.3mg/ml(CD−RAP主ピーク面積69%)に減少した。これらの結果は、全タンパク質含分法で得られた結果を支持するとともに、凍結乾燥したリポソームCD−RAP DPが、5℃以下の温度で少なくとも3カ月間安定であるが、25℃で保存した場合には1カ月未満しか安定でないことを示唆している。
封入率
以下の式を用いて、封入率(EE%)を算出した:
EE%=100−[遊離タンパク質(mg/ml)/全タンパク質(mg/ml)×100]。
この算出では、全タンパク質含分を、抽出法またはケーク体積法のいずれかによって得ることができる。遊離タンパク質含分、全タンパク質含分および図30に示すEE%値は、各時点で分析した2本のバイアルから得られた平均値であることに留意すべきである。このため、図30に示す平均データを用いたEE%の算出によって、示されたデータとわずかに異なる結果が生じる場合がある。
抽出法に基づく全タンパク質含分を用いたEE%
放出時、EE%は、33%であった。このEE%は、−20℃で1カ月間保存して11%という比較的低いEE%を示したバイアルを除いて、試験全体を通じて一定(30〜38%)のままであった。この比較的低いEE%は、これらのサンプルで得られた全タンパク質含分が比較的低かったことの結果として生じたものであり、異常値である可能性がある。CD−RAP主ピーク面積%の減少が観察された、25℃で保存したサンプルであっても、EE%は一定のままであった。このことは、これらのサンプルでは遊離タンパク質含分と「そのままの」全タンパク質含分とがどちらも減少し、その結果、比較的EE%に変化が見られなかったという事実によって説明がつく。
ケーク体積法に基づく全タンパク質含分を用いたEE%
放出時に、EE%は、33%であった。このEE%は、生成物を−80℃、−20℃および5℃で保存した場合に、試験全体を通じて一定(30〜37%)のままであった。1つの例外は、−80℃で3カ月間保存したバイアルであり、これは、比較的低い20%というEE%を示した。このことは、遊離CD−RAPがわずかに高い(2.9mg/ml)ことと、全CD−RAPがわずかに低い(3.6mg/ml)こととが組み合わさることによって生じた可能性があり、これによって、封入されるタンパク質のレベルが低下する。
25℃で保存したサンプルでは、放出と比較してより高いEE%が得られた(t=1カ月およびt=3カ月でそれぞれ40%および44%)。このことは、これらのサンプル中の「そのままの」遊離CD−RAP含分が低い(2.2〜2.3mg/ml)ことと、「そのまま」測定されるわけではない全タンパク質含分との組み合わせによって生じた結果である。その結果、CD−RAP主ピーク面積%の減少による遊離CD−RAPの減少は、全CD−RAPの減少によっても補償されず、より高いEE%が得られた。
総括すると、これらの結果は、EE%の結果が、全タンパク質含分を得るために使用する分析方法に依存することを示している。不安定性が観察された場合(すなわちCD−RAP主ピーク面積%が減少する場合)には、抽出に基づく全タンパク質含分法によって、より正確なEE%の結果が得られる。なぜならば、測定される含分は、遊離タンパク質含分について観察されるものと同様に「そのまま」低下するためである。
全体として、本試験で判明したEE%の変化は、方法上のばらつきおよび/または全タンパク質含分の分析方法の選択によって生じたものであり、全体として見ると、EE%の変化は、いずれの温度でも3カ月間観察されなかったと結論付けることができる。
重量オスモル濃度
リポソームCD−RAP DPバッチおよびプラセボバッチの重量オスモル濃度を、放出時にのみ分析した。結果は、DPバッチおよびプラセボバッチについて、それぞれ270mOsm/kgおよび253mOsm/kgであった。
残留含水率
凍結乾燥させたリポソームCD−RAP DPバッチおよびプラセボバッチの残留含水率を、放出時およびt=3カ月に分析した。含水率は、保存温度および時間と相関関係にある傾向を示した。放出時に認められた値(DPバッチおよびプラセボバッチについてそれぞれ0.15%および0.11%)は、t=3カ月でわずかに増加した。この増加の程度は、保存温度と相関関係にあった。3カ月後、−80℃および−20℃で保存したサンプルは、t=0と比較して有意差を示さなかった。しかし、5℃および25℃で保存したサンプルは、同一の期間にそれぞれ0.08%および0.16〜0.17%の含水率の増加を示した。本試験で使用した容器は水蒸気を透過させないことが知られているため、これらの結果についての考えうる説明の1つとして、栓の中に存在する水がケークに拡散したことが挙げられる。これを防ぐために、より十分に乾燥させた栓を使用して、この後のバッチを調製することができる。全体として、含水率の増加はわずかであり、3カ月後に含水率は最大で0.3%であった。
TVAC
混釈平板法を用いて、放出時にのみTVACを測定した。DPバッチおよびプラセボバッチについての結果は、1CFU/1ml未満および1CFU/5ml未満であり、これは標準規定内であった。