(第一の実施形態)
以下に図面を参照して、第一の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の情報処理システムの概要を説明する図である。
本実施形態の情報処理システムでは、情報処理装置100が、歩行状態(身体状態)の推定の対象となる対象者Pの上半身に装着されたセンサ200と、対象者Pの下半身に装着されたセンサ300のそれぞれから、センサ情報210、310を取得する。そして、情報処理装置100は、センサ情報210、310に基づき、対象者Pの歩行状態を推定する。より具体的には、本実施形態の情報処理装置100は、対象者Pが歩行している最中における、異常な動作の有無を推定する。したがって、本実施形態の情報処理装置100は、対象者Pの歩行中における異常の有無を推定する異常歩行推定装置の役割を果たす。
ここで、本実施形態における歩行状態と、歩行状態における異常について説明する。
本実施形態の歩行状態とは、対象者Pが歩行している状態を示す。また、本実施形態の歩行状態における異常とは、歩行中のふらつきや、通常の歩行の動作では見られない上半身の動き等を示す。
歩行において異常が生じる要因の1つとして、脳震盪がある。脳震盪は、主症状の一つとして、バランス能力の低下が知られている。また、脳震盪患者は、バランス能力の低下により、健常者が真直ぐ歩ける距離を歩行した際に、左右にふらつく傾向があることが知られている。
さらに、本願の発明者は、脳震盪患者は、長時間の歩行等の身体的な負荷が加わった場合に、バランスを崩す傾向があることを発見した。
そこで、本実施形態では、この点に着目し、対象者Pの歩行区間のうち、身体的な負荷が加わった状態で歩行している区間を抽出し、この区間における対象者Pの動作の特徴に基づき、歩行の異常の有無を推定することで、推定の精度を向上させる。
尚、本実施形態では、主に、脳震盪患者のバランス能力の低下に基づき、歩行における異常の有無を推定するものとしているが、異常の有無の推定対象となる対象者Pは、脳震盪患者でなくても良い。
本実施形態では、情報処理装置100は、センサ200、300によって検出されたセンサ情報210、310と、に基づき、対象者Pの動作の特徴を示す情報を取得し、動作の特徴を示す情報に基づき、歩行の異常の有無を推定する。
また、本実施形態では、センサ200が装着される上半身とは、対象者Pの身体の腰から上の部分を示し、下半身とは、対象者Pの身体の腰から下の部分を示す。尚、腰は、上半身と下半身とをつなげている部位である。
本実施形態のセンサ200は、例えば、加速度センサ等の慣性センサである。センサ200は、対象者Pの上半身に装着されていれば良いが、上半身全体の動作を示すセンサ情報210を取得するために、腰の近辺に装着される。尚、センサ200は、胸等に装着されても良い。また、本実施形態のセンサ200は、センサ200を装着した対象者Pの脈拍数や、位置情報等を取得するセンサが含まれていても良い。センサ200は、例えば、対象者Pが保持しているスマートフォン等の端末装置に搭載されたものであっても良い。
本実施形態のセンサ情報210は、加速度信号が含まれていれば良く、加速度信号以外にも、例えば脈拍を示す信号等、センサ200によって取得される信号が含まれても良い。
本実施形態のセンサ300は、例えば、ジャイロセンサ等の慣性センサ等であって良い。本実施形態では、センサ300がジャイロセンサである場合には、対象者Pの下半身に装着されていれば良いが、下半身の両下肢の動作を示すセンサ情報310を取得するためには、左右のそれぞれの足首に装着されることが好ましい。本実施形態のセンサ情報310は、角速度信号が含まれていれば良い。
また、以下の説明では、対象者Pの体の正中に対し平行に、体を左右に分ける矢状面をY−Z平面とし、矢状面におけるZ軸方向を上下方向、Y軸方向を前後方向と呼ぶ。尚、矢状面は、正中に沿って体を左右に等分する正中矢状面であることが好ましいが、左か右にずれた平行な面もまた矢状面である。
また、以下の説明では、対象者Pの体軸に垂直な面となる横断面をX−Y平面とし、横断面におけるX軸方向を左右方向と呼ぶ。また、対象者Pの体を前側(腹側)と後側(背側)に分割する任意の平面を示す冠状面は、X−Z平面となる。
次に、図2を参照して、本実施形態の情報処理システムについて説明する。図2は、第一の実施形態の情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
本実施形態の情報処理システム400は、情報処理装置100と、センサ200と、センサ300とを有する。
本実施形態の情報処理システム400において、情報処理装置100と、センサ200と、センサ300とは、ネットワーク等を介して接続されても良い。また、情報処理装置100と、センサ200、300とは、所定の通信規格に基づき、有線等で接続されても良い。
本実施形態の情報処理装置100は、負荷臨界点データベース110、モデルデータベース120、異常歩行推定処理部130を有する。
負荷臨界点データベース110は、対象者Pの身体的な負荷が臨界点に達している区間を特定する際に参照される情報が格納される。
尚、本実施形態における臨界点とは、脳震盪患者がバランスを崩す傾向が強くなるとされる、身体的に正常な状態を保っていられる範囲の限界を示す値である。よって、言い換えれば、負荷臨界点データベース110は、対象者Pに対して、バランスを崩す傾向が強まるとされる所定の大きさの負荷が与えられているか否かを判定する際に参照される閾値が格納される。
本実施形態のモデルデータベース120は、脳震盪患者群と、健常者群と、のそれぞれについて、負荷が臨界点を超えた場合の歩行における動作の特徴から得られたモデルパラメータが格納されている。モデルパラメータは、例えば、平均ベクトルや共分散行列等のパラメータである。各データベースの詳細は後述する。
本実施形態の異常歩行推定処理部130は、センサ情報210と、各データベースとに基づき、センサ情報210を検出したセンサ200を装着した対象者Pの歩行の状態を推定する。
本実施形態のセンサ200は、センサ200が検出したセンサ情報210が格納される記憶部220を有する。また、本実施形態のセンサ300は、センサ300が検出したセンサ情報310が格納される記憶部320を有する。
本実施形態では、例えば、対象者Pがセンサ200、300を装着した状態で、所定の期間行動し、その期間にセンサ200、300が検出したセンサ情報210、310が、記憶部220、320に保持されても良い。そして、センサ200、300が、対象者Pから取り外された後に、記憶部220、320に格納されたセンサ情報210、310は、情報処理装置100に送信されても良い。
本実施形態の情報処理装置100は、例えば、医療機関に設置されたコンピュータ等であって良い。本実施形態では、例えば、医療機関において診察を行った患者や、入院していた患者等が帰宅する際等に、患者にセンサ200、300を装着させ、対象者Pとしても良い。そして、情報処理装置100は、例えば、この対象者Pが医療機関に通院した際等に、センサ200、300から、記憶部220、320に格納されたセンサ情報210、310を取得しても良い。
本実施形態では、このようにして情報処理システム400を用いることで、例えば、高齢者等、運動機能を注意深く観察する必要がある患者の動作を、患者の主観だけでなく、客観的に医療従事者等に把握させることができる。さらに、本実施形態では、対象者Pの歩行の状態に異常があるか否かを推定することができる。よって、本実施形態によれば、例えば、脳震盪を患った患者が回復傾向にあるのか、又は、回復の度合いがどの程度なのか等といったことを、医療従事者が判断する際に、この判断を支援することができる。
尚、図2では、負荷臨界点データベース110とモデルデータベース120とが、情報処理装置100に設けられる構成としたが、これに限定されない。負荷臨界点データベース110、モデルデータベース120は、情報処理装置100の外部の記憶装置等に設けられても良い。
次に、図3を参照して、本実施形態の情報処理装置100のハードウェア構成について説明する。図3は、第一の実施形態の情報処理装置のハードウェア構成を説明する図である。
本実施形態の情報処理装置100は、それぞれバスBで相互に接続されている入力装置11、出力装置12、ドライブ装置13、補助記憶装置14、メモリ装置15、演算処理装置16及びインターフェース装置17を含む情報処理装置である。
入力装置11は、各種の情報を入力するためものであり、例えばキーボードやマウス等で実現される。出力装置12は、各種の情報を出力するためのものであり、例えばディスプレイ等により実現される。インターフェース装置17は、モデム、LANカード等を含み、ネットワークに接続する為に用いられる。
情報処理プログラムは、情報処理装置100を制御する各種プログラムの少なくとも一部であり、異常歩行推定処理部130を実現するための異常歩行推定プログラムを含む。情報処理プログラムは例えば記録媒体18の配布やネットワークからのダウンロードなどによって提供される。情報処理プログラムを記録した記録媒体18は、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
また、情報処理プログラムは、情報処理プログラムを記録した記録媒体18がドライブ装置13にセットされるとは記録媒体18からドライブ装置13を介して補助記憶装置14にインストールされる。ネットワークからダウンロードされた情報処理プログラムは、インターフェース装置17を介して補助記憶装置14にインストールされる。
補助記憶装置14は、インストールされた情報処理プログラムを格納すると共に、必要なファイル、データ等を格納する。メモリ装置15は、コンピュータの起動時に補助記憶装置14から情報処理プログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置16はメモリ装置15に格納された情報処理プログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態の情報処理装置100の有する負荷臨界点データベース110と、モデルデータベース120について説明する。図4は、第一の実施形態の負荷臨界点データベースの一例を示す図である。
本実施形態の負荷臨界点データベース110は、予め生成されて、情報処理装置100に格納されるものである。負荷臨界点データベース110の生成の方法の詳細は後述する。
負荷臨界点データベース110は、情報の項目として、取得項目と、閾値と、を有する。項目「取得項目」の値は、センサ情報210から得られる情報の項目を示す。また、本実施形態の項目「取得項目」の値は、時間と共に値が変化する項目を示す。
図4の例では、取得項目として、経過時間、脈拍数の上昇幅、移動距離等が含まれる。取得項目が「経過時間」である場合、歩行を開始してからの経過時間が46秒となるときが、身体的負荷が臨界点に達したと判定されることがわかる。言い換えれば、歩行を開始してから46秒が経過すると、脳震盪患者がバランスを崩す傾向が強くなる状態となると言える。尚、経過時間は、センサ情報210から算出することができる。また、経過時間は、センサ情報310や、腕等に装着した第3のセンサ情報から算出されても良い。
また、図4の例では、取得項目が「脈拍数の上昇幅」である場合、脈拍数が歩行開始時の値から30[bpm]以上上昇した場合に、身体的負荷が臨界点に達したと判定されることがわかる。言い換えれば、歩行中において脈拍数が、開始時に値から30[bpm]以上上昇した場合、脳震盪患者がバランスを崩す傾向が強くなる状態となると言える。
尚、本実施形態の項目「取得項目」の値には、経過時間、脈拍数の上昇幅、移動距離以外にも、様々な項目が含まれて良い。
具体的には、例えば、歩行開始からのふらつき回数、イベント(歩行開始後転倒した、衝撃が加わった)の発生やイベントの内容、環境変化(コンクリートから砂利道等、床の状態が変わった、周囲の照度が変わった)の有無や環境変化の内容等が含まれても良い。
次に、図5を参照して、モデルデータベース120について説明する。図5は、第一の実施形態のモデルデータベースの一例を示す図である。
本実施形態のモデルデータベース120は、予め生成されて、情報処理装置100に設けられている。モデルデータベース120の生成の方法の詳細は後述する。
本実施形態のモデルデータベース120では、脳震盪患者群と、健常者群と、のそれぞれについて、平均ベクトルと共分散行列と、が対応付けられている。
本実施形態では、平均ベクトルとは、負荷が臨界点を超えた状態で歩行した場合の上半身の動作の特徴を示す上半身特徴量と、両脚の動作の特徴を示す脚特徴量の平均を示す。尚、本実施形態では上半身特徴量は、例えば、歩行中の上下方向の腰の移動幅の平均と標準偏差、歩行中の左右方向の腰の移動幅の平均と標準偏差等の上半身の動作を示す複数の値を含む。また、本実施形態の脚特徴量は、歩行速度の平均値と標準偏差等、歩幅の平均値と標準偏差等の、両脚の動作を示す複数の値を含む。上半身特徴量と脚特徴量の詳細は後述する。
脳震盪患者群の平均ベクトルとは、複数の脳震盪患者の上半身特徴量と脚特徴量の平均値を求めた集合であり、健常者群の平均ベクトルとは、複数の健常者の上半身特徴量と脚特徴量の平均値を求めた集合である。また、本実施形態の共分散行列は、脳震盪患者群の平均ベクトルと、健常者群の平均ベクトルと、から算出されるものである。
次に、図6を参照して、本実施形態の情報処理装置100の有する異常歩行推定処理部130の機能について説明する。図6は、第一の実施形態の異常歩行推定処理部の機能を説明する図である。
本実施形態の異常歩行推定処理部130は、センサ情報取得部131、歩行区間特定部132、負荷区間抽出部(行動区間抽出部)133、区間特定部134、特徴量算出部135、異常歩行推定部136、臨界点データベース作成部137、モデルデータベース作成部138、推定結果出力部139を有する。
本実施形態の異常歩行推定処理部130は、情報処理装置100の演算処理装置16が
メモリ装置15等に格納された情報処理プログラムを実行することで実現される。
本実施形態のセンサ情報取得部131は、センサ200からセンサ情報210を取得する。
歩行区間特定部132は、センサ情報210から、対象者Pが歩行しているとされる区間を抽出する。歩行区間特定部132の処理の詳細は後述する。
負荷区間抽出部133は、負荷臨界点データベース110を参照し、歩行区間特定部132により特定された歩行区間から、対象者Pに対する身体的な負荷が臨界点に達している歩行区間を抽出する。負荷区間抽出部133の詳細は後述する。
区間特定部134は、負荷区間抽出部133により抽出された歩行区間において、特徴量算出部135による特徴量を算出する区間を特定する。具体的には、例えば、区間特定部134は、負荷区間抽出部133により抽出された歩行区間において、負荷が臨界点に達した時刻から、この歩行区間の終了時刻までの区間等を、特徴量を算出する区間として特定しても良い。
特徴量算出部135は、対象者Pの上半身の動作の特徴を示す上半身特徴量と、下半身(両脚)の動作の特徴を示す脚特徴量を算出する。特徴量算出部135の詳細は後述する。
異常歩行推定部136は、特徴量算出部135により算出された上半身特徴量と脚特徴量と、モデルデータベース120とに基づき、対象者Pの歩行における異常の有無を推定する。異常歩行推定部136の処理の詳細は、後述する。
臨界点データベース作成部137は、特徴量算出部135により算出された上半身特徴量と脚特徴量に基づき、項目「取得項目」毎の閾値を設定し、負荷臨界点データベース110を生成する。臨界点データベース作成部137の詳細は後述する。
モデルデータベース作成部138は、区間特定部134により特定された区間における上半身特徴量と脚特徴量に基づき、モデルデータベース120を生成する。モデルデータベース作成部138の詳細は後述する。
推定結果出力部139は、異常歩行推定部136による推定結果を出力する。本実施形態の推定結果出力部139は、推定結果として、情報処理装置100の画面に推定結果を示す情報を表示させても良いし、情報処理装置100の外部に推定結果を示す情報を送信しても良い。以下の説明では。推定結果を示す情報を、推定結果情報と呼ぶ。
尚、本実施形態の推定結果出力部139は、対象者Pの推定結果情報に、対象者Pの回復の度合いを示す情報を含めても良い。
次に、本実施形態の負荷区間抽出部133について説明する。本実施形態の負荷区間抽出部133は、判定用データ算出部141、臨界点判定部142を有する。
本実施形態の判定用データ算出部141は、センサ情報210から、負荷臨界点データベース110の項目「取得項目」が示す値を算出する。言い換えれば、判定用データ算出部141は、対象者Pに対する身体的な負荷が臨界点に達しているか否かを判定するためのデータを算出する。具体的には、判定用データ算出部141は、例えば、センサ情報210から、対象者Pが歩行を開始してからの経過時間、一歩毎の脈拍数の上昇幅等を算出する。
本実施形態の臨界点判定部142は、負荷臨界点データベース110における項目「取得項目」毎の閾値と、判定用データ算出部141により算出された項目「取得項目」の値と、を比較し、対象者Pに対する負荷が臨界点に達したか否かを判定する。
本実施形態の負荷区間抽出部133は、臨界点判定部142により臨界点に達していると判定された歩行区間を、対象者Pに対する身体的負荷が臨界点を超えている負荷区間(行動区間)として、抽出する。
次に、本実施形態の特徴量算出部135について説明する。本実施形態の特徴量算出部135は、上体特徴量算出部151、脚特徴量算出部152、関係性算出部153、ふらつき判定部154、部位関係性算出部155を有する。
本実施形態の上体特徴量算出部151は、センサ情報210から、対象者Pの上半身の動作の特徴を示す上半身特徴量を算出する。
具体的には、上体特徴量算出部151は、センサ情報210に基づき、対象者Pの上半身の動作の特徴を示す各種の特徴量を取得し、この特徴量の統計をとる。そして、上体特徴量算出部151は、各種の特徴量を統計した結果を、上半身特徴量とする。
本実施形態の脚特徴量算出部152は、センサ情報310から、対象者Pの下半身(両脚)の動作の特徴を示す脚特徴量を算出する。
具体的には、脚特徴量算出部152は、センサ情報310に基づき、対象者Pの下半身の動作の特徴を示す各種の特徴量を取得し、この特徴量の統計をとる。そして、脚特徴量算出部152は、各種の特徴量を統計した結果を、脚特徴量とする。
関係性算出部153は、脚特徴量同士、又は、上半身特徴量同士の関係性を示す相関係数、回帰係数(回帰直線の傾き)を算出する。
本実施形態では、例えば、関係性算出部153により、上半身特徴量同士の関係性を示す相関係数、回帰係数が算出された場合には、この相関係数、回帰係数は、上半身特徴量に含まれる。また、本実施形態では、例えば、関係性算出部153により、脚特徴量同士の関係性を示す相関係数、回帰係数が算出された場合には、この相関係数、回帰係数は、脚特徴量に含まれる。
ふらつき判定部154は、負荷区間において、対象者Pの上半身のふらつきが発生したか否かを判定する。具体的には、ふらつき判定部154は、負荷区間における上半身特徴量が、所定の範囲外となった場合に、上半身のふらつきが発生したと判定する。
部位関係性算出部155は、上半身にふらつきが発生した時刻を含む所定区間において、脚特徴量算出部152に脚特徴量を算出させる。
次に、本実施形態の臨界点データベース作成部137について説明する。臨界点データベース作成部137は、特徴量統計部161、負荷臨界点設定部162を有する。
尚、本実施形態の臨界点データベース作成部137には、予め、脳震盪患者群を長時間歩行させた場合のセンサ情報と、健常者群を長時間歩行させた場合のセンサ情報と、が与えられる。また、長時間とは、脳震盪患者に対する身体的負荷の臨界点の検出に十分とされる時間であれば良い。
本実施形態の特徴量統計部161は、特徴量算出部135により、脳震盪患者群のセンサ情報と、健常者群のセンサ情報とから、負荷臨界点データベース110の取得項目の値の時間による変化と対応した特徴量を被験者毎に算出させる。そして、特徴量統計部161は、各取得項目について、所定区間毎の特徴量の統計をとる。言い換えれば、特徴量統計部161は、特徴量算出部135に、各取得項目について、所定区間毎の上半身特徴量と脚特徴量とを算出させる。
負荷臨界点設定部162は、取得項目が示す項目毎に、特徴量統計部161が取得した上半身特徴量及び脚特徴量に基づき、脳震盪患者群と健常者群との間で有意な差が認められる取得項目の値を臨界点(閾値)とする。
そして、臨界点データベース作成部137は、取得項目と、臨界点(閾値)とを対応付けた負荷臨界点データベース110とする。
次に、モデルデータベース作成部138について説明する。本実施形態のモデルデータベース作成部138は、平均ベクトル算出部171、共分散行列算出部172を有する。
尚、本実施形態のモデルデータベース作成部138には、予め、脳震盪患者群を長時間歩行させた場合のセンサ情報と、健常者群を長時間歩行させた場合のセンサ情報と、が与えられる。
本実施形態の平均ベクトル算出部171は、脳震盪患者群のセンサ情報と、健常者群のセンサ情報とから負荷区間を抽出し、さらに、負荷区間において区間特定部134により特定された区間の上半身特徴量と脚特徴量とを、被験者毎に取得する。言い換えれば。平均ベクトル算出部171は、特徴量算出部135に、負荷区間において区間特定部134により特定された区間の上半身特徴量と脚特徴量とを、被験者毎に算出させる。
そして、平均ベクトル算出部171は、脳震盪患者群と健常者群のそれぞれについて、複数の被験者の上半身特徴量と脚特徴量の平均値の集合を示す平均ベクトルを算出する。
本実施形態の共分散行列算出部172は、平均ベクトルから、脳震盪患者群と健常者群のそれぞれについて、共分散行列を算出する。
そして、モデルデータベース作成部138は、脳震盪患者群と健常者群のそれぞれの平均ベクトルと共分散行列とを対応付けて格納し、モデルデータベース120とする。
次に、図7を参照して、本実施形態の異常歩行推定処理部130の動作について説明する。図7は、第一の実施形態の異常歩行推定処理部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の異常歩行推定処理部130は、センサ情報取得部131により、センサ200からセンサ情報210を取得し、センサ300からセンサ情報310を取得する(ステップS701)。
続いて、異常歩行推定処理部130は、歩行区間特定部132により、センサ情報310に基づき、対象者Pが歩行としている区間を示す歩行区間を特定する(ステップS702)。より具体的には、歩行区間特定部132は、センサ情報310における歩行区間の始点と終点を特定し、始点から終点までを1つの歩行区間として特定する。
続いて、異常歩行推定処理部130は、異常歩行推定部136により、歩行区間特定部132によって特定された全ての歩行区間について、ステップS703以降の処理を実行したか否かを判定する(ステップS703)。
ステップS703において、全ての歩行区間について処理を実行した場合、後述するステップS714へ進む。
ステップS703において、全ての歩行区間について処理を実行していない場合、異常歩行推定処理部130は、負荷区間抽出部133により、抽出された歩行区間を選択する(ステップS704)。
続いて、負荷区間抽出部133は、負荷臨界点データベース110を参照し、選択した歩行区間における、対象者Pに対する身体的に負荷と、負荷臨界点データベース110の閾値とを比較する(ステップS705)。ステップS705の処理の詳細は後述する。
続いて、負荷区間抽出部133は、比較した結果か、対象者Pに対する身体的に負荷が閾値を以上であるか否かを判定する(ステップS706)。
ステップS706において、負荷が臨界点未満である場合、異常歩行推定処理部130は、ステップS703へ戻る。
ステップS706において、負荷が臨界点以上である場合、この歩行区間は負荷区間として抽出され、後述するステップS707へ進む。
続いて、異常歩行推定処理部130は、区間特定部134により、抽出された負荷区間において、上半身特徴量と脚特徴量を算出する区間を特定する(ステップS707)。
続いて、異常歩行推定処理部130は、特徴量算出部135の上体特徴量算出部151により、特定された区間における、対象者Pの上半身特徴量を算出する(ステップS708)。ステップS708の詳細は後述する。
続いて、異常歩行推定処理部130は、特徴量算出部135の脚特徴量算出部152により、特定された区間における脚特徴量を算出する(ステップS709)。ステップS709の詳細は後述する。
続いて、特徴量算出部135は、関係性算出部153により、上半身特徴量同士、脚特徴量同士のそれぞれについて、関係性を算出する(ステップS710)。
続いて、特徴量算出部135は、ふらつき判定部154により、上半身特徴量から、選択された歩行区間における対象者Pの上半身のふらつきが発生したか否かを判定する(ステップS711)。ステップS711において、ふらつきが発生していない場合、異常歩行推定処理部130は、後述するステップS713へ進む。
ステップS711において、ふらつきが発生した場合、特徴量算出部135は、部位関係性算出部155により、ふらつきが発生した時刻を含む、ふらつきの発生時刻前後の所定期間の脚特徴量を算出する(ステップS712)。
続いて、異常歩行推定処理部130は、異常歩行推定部136により、上半身特徴量及び脚特徴量を用いて、対象者Pの歩行の状態における異常の有無を推定し、結果を保持し(ステップS713)、ステップS703に戻る。
ステップS703において、全ての歩行区間について、ステップS703以降の処理を行った場合には、推定結果出力部139により、推定結果情報を出力し(ステップS714)、処理を終了する。
次に、図7の各ステップの処理について、説明する。はじめに、図8を参照して、図7のステップS702における歩行区間特定部132の処理について説明する。図8は、第一の実施形態の歩行区間特定部による歩行区間の特定について説明する図である。
図8は、前後方向におけるセンサ情報310を示す。通常、人が歩行している場合、爪先が地面を離れて振り出されている側の下肢に装着されたセンサ情報310にピークが生じる。本実施形態の歩行区間特定部132は、この点に着目し、センサ情報310に基づき、歩行区間を特定する。
図8(A)〜(C)は、センサ情報310に基づく歩行区間の特定を説明している。図8(A)〜(C)に示すグラフは、センサ情報310を示しており、横軸は時間であり、縦軸は角速度である。
対象者Pが歩行している場合、片足毎に周期的にピークが現れる。図8(A)では、左脚のセンサ300から取得したセンサ情報310において、ピークP1、P2、P3、P4というように、ピークが周期的に現れていることがわかる。
本実施形態の歩行区間特定部132は、ピークが周期的に出現し、且つ、ピークとピークの間の期間が一定範囲内である区間を歩行区間として抽出する。図8(B)では、左脚のセンサ情報310において、ピークP1とピークP2との間の期間K1、ピークP2とピークP3との間の期間K2、ピークP3とピークP4との間の期間K3が、一定範囲内であるものとする。
この場合、歩行区間特定部132は、右脚のセンサ300から取得したセンサ情報310に対しても、同様にピークとピークの間の期間が一定範囲内であることを検出した後に、図8(C)に示すように、歩行の開始時刻と終了時刻を特定する。本実施形態では、例えば、両脚のセンサ情報310において、周期的に出現するピーク群のうち、最初のピークが出現した時刻Tsを歩行の開始時刻とし、最後のピークが出現した時刻Teを歩行の終了時刻としても良い。この場合、歩行区間は、時刻Tsから時刻Teの区間Kseとなる。
本実施形態の歩行区間特定部132は、以上のようにして、センサ情報310から歩行区間を特定する。
次に、図9及び図10を参照して、図7のステップS705における負荷区間抽出部133の処理について説明する。図9は、第一の実施形態の負荷区間抽出部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の負荷区間抽出部133は、図7のステップS704で歩行区間が選択されると、判定用データ算出部141により、センサ情報210、310から、判定用データを取得する(ステップS901)。
具体的には、判定用データ算出部141は、センサ情報210、310から、負荷臨界点データベース110の取得項目毎の値を取得するし、こられの値を含むデータを判定用データとする。取得項目とは、例えば、経過時間、脈拍の上昇幅、移動距離等である。
続いて、負荷区間抽出部133は、臨界点判定部142により、ステップS901で取得した判定用データに含まれる取得項目毎の値と、負荷臨界点データベース110における取得項目と対応する閾値と、を比較し(ステップS902)、図7のステップS706へ進む。
ここで、図10を参照して、判定用データ算出部141による判定用データについて説明する。図10は、第一の実施形態における判定用データの一例を説明する図である。
本実施形態では、判定用データ算出部141は、例えば、歩行区間Kseの開始から、ti(i=1,2,3.・・・n)秒毎に取得項目の値を取得する。
図10に示す判定用データ101では、i=1の場合、つまり、歩行区間Kseの開始からt1秒後の経過時間、脈拍数の上昇幅、移動距離等が算出される。尚、取得項目には、経過時間、脈拍数の上昇幅、移動距離以外にも、様々な項目があって良い。本実施形態では、歩行区間Kseにおけるti秒の時点での取得項目の値の集合が、判定用データである。以下の説明では、判定用データを判定用ベクトルと呼ぶ。本実施形態の判定用ベクトルは、ti(i=1,2,3.・・・n)秒毎に取得される。つまり、本実施形態の判定用ベクトルは、時系列に取得される。
図10に示す判定用データ101では、歩行区間Kseにおけるt1秒の時点での判定用ベクトル102は、(1、1、・・・、5)となる。
本実施形態では、負荷区間抽出部133は、判定用データ算出部141により、時刻ti毎の判定用ベクトルを算出すると、臨界点判定部142により、ti毎の判定用ベクトルと、負荷臨界点データベース110の閾値とを比較する。
そして、臨界点判定部142は、ti毎の判定用ベクトルに含まれる取得項目の値のうち、何れか1つでも、負荷臨界点データベース110に格納された閾値を超えた値があった場合に、歩行区間Kseを負荷区間として抽出する。言い換えれば、臨界点判定部142は、歩行区間Kseにおける時刻毎の判定用ベクトルの要素の何れかが閾値以上となった場合に、歩行区間Kseを負荷区間として抽出する。
図10の例では、時刻t(n−1)の判定用ベクトル103における、取得項目「経過時間」の値が「46[sec]」である。この値は、負荷臨界点データベース110における取得項目「経過時間」と対応する閾値と等しい。よって、臨界点判定部142は、歩行区間Kseでは、対象者Pに対する身体的な負荷が、臨界点を超えている、と判定し、歩行区間Kseを負荷区間として抽出する。
本実施形態では、以上のようにして、歩行区間から、脳震盪患者がバランスを崩す傾向が強くなる状態となっている負荷区間を抽出する。
また、センサ情報210及び/又はセンサ情報310を用いて算出した歩行区間前の状態に応じて、取得項目の閾値を変更し、判定用ベクトルと比較しても良い。例えば、歩行区間前の状態が「長期間座位状態」であった場合、取得した閾値に所定値(例えば0.5)を乗算した後、判定用ベクトルと比較しても良い。
次に、図11を参照して、図7のステップS707における区間特定部134の処理について説明する。図11は、第一の実施形態の区間特定部による区間の特定を説明する図である。
図11は、歩行区間Kseにおける、前後方向、左右方向、上下方向それぞれのセンサ情報210に含まれる加速度信号を示しており、縦軸は加速度であり、横軸は時刻である。
図11の例では、開始時刻である時刻Tsから、終了時刻である時刻Teまでの歩行区間Kseにおいて、時刻Tlの判定用ベクトルの要素が閾値を超えた場合を示している。
本実施形態の区間特定部134は、この場合、時刻Tlから時刻Teまでの区間Kaを、特徴量算出部135による上半身特徴量と脚特徴量の算出を行う区間に特定しても良い。
以下の説明では、判定用ベクトルの要素が閾値を超えた時刻から、歩行区間Kseの終了時刻Teまで区間Kaを、後半区間Kaと呼ぶ。また、以下の説明では、判定用ベクトルの要素が閾値を超えた時刻Tlのことを、対象者Pの身体的負荷が臨界点に達した臨界点時刻と呼ぶ。
尚、本実施形態の区間特定部134は、例えば、歩行区間Kse全てを、上半身特徴量と脚特徴量の算出の対象の区間に特定しても良い。また、本実施形態の区間特定部134は、例えば、歩行区間Kseの開始時刻である時刻Tsから所定秒後の時刻Tbまでの区間Kbを、上半身特徴量と脚特徴量の算出の対象の区間に特定しても良い。尚、この場合、所定秒は、情報処理装置100の利用者が任意に設定しても良い。以下の説明では、区間Kbを前半区間Kbと呼ぶ。
さらに、本実施形態では、前半区間Kbと後半区間Kaを、上半身特徴量と脚特徴量が算出される区間に特定しても良いし、歩行区間Kse、前半区間Kb、後半区間Kaの全てを上半身特徴量と脚特徴量が算出される区間に特定しても良い。
次に、図12乃至図14を参照し、図7のステップS708における特徴量算出部135の処理について説明する。
本実施形態の特徴量算出部135は、上体特徴量算出部151により、対象者Pの上半身の動作を示す上半身特徴量を算出する。
より具体的には、上体特徴量算出部151は、対象者Pが2歩歩く毎の腰の移動幅と腰の角度を取得し、取得した腰の移動幅の平均値及び標準偏差を、上半身特徴量として算出する。尚、本実施形態では、腰の移動幅の最大値、最小値を上半身特徴量に含めても良い。
また、本実施形態では、腰の移動幅、腰の角度のそれぞれについて、算術平均や中央値を平均値の代わりに用いても良い。さらに、本実施形態では、腰の移動幅、腰の角度のそれぞれについて、変動係数を標準偏差の代わりに用いても良い。
はじめに、上体特徴量算出部151による腰の移動幅の算出について説明する。
図12は、第一の実施形態の特徴量算出部の処理を説明する図である。図12では、腰の移動幅の算出について説明する。
本実施形態では、歩行区間Kseにおける腰の上下方向の動きを歩行による着地時の動作と考える。そして、本実施形態では、腰の上下方向の動きがある箇所から、次の上下方向の動きがある箇所までを1歩とし、対象者Pの2歩毎の腰の軌跡を算出する。
図12では、対象者Pの2歩毎の腰の軌跡を、センサ情報210の前後方向における座標と、左右方向における座標とが示す点によって示している。
本実施形態の上体特徴量算出部151は、図12に示すように、区間特定部134によって特定された区間における対象者Pの歩行において、2歩毎に、腰の軌跡における左右方向の移動幅Wを算出する。本実施形態の上体特徴量算出部151では、上下方向及び前後方向に対しても、同様にして、腰の移動幅を算出する。
図13は、第一の実施形態の上体特徴量算出部による腰の移動幅の算出の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の上体特徴量算出部151は、区間特定部134により、上半身特徴量を算出する区間が特定されると、特定された区間において、対象者Pの2歩毎の腰の軌跡を算出する(ステップS1301)。続いて、上体特徴量算出部151は、算出された軌跡から、3軸方向における腰の移動幅を算出する(ステップS1302)。3軸方向とは、左右方向、上下方向、前後方向である。
続いて、上体特徴量算出部151は、区間特定部134により特定された区間の全てのステップ(1歩)について、ステップS1301とステップS1302の処理を行ったか否かを判定する(ステップS1303)。ステップS1303において、全てのステップについて処理を行っていない場合、上体特徴量算出部151は、ステップS1301へ戻る。
ステップS1303において、全てのステップについて処理を行った場合、上体特徴量算出部151は、算出された2歩毎の腰の移動幅の統計をとり、その結果を上半身特徴量として保持して(ステップS1304)、後述する図14のステップS1401へ進む。
尚、ステップS1304において、腰の移動幅の統計をとることとは、具体的には、腰の移動幅の平均値及び標準偏差の算出、最大値と最小値の抽出等である。
また、本実施形態では、区間特定部134において、例えば、前半区間Kbと後半区間Kaが特定された場合には、前半区間Kbにおける上半身特徴量と、後半区間Kaにおける上半身特徴量と、の関係を示す比を、上半身特徴量に含めても良い。
次に、上体特徴量算出部151による腰の角度の算出について説明する。
本実施形態の上体特徴量算出部151は、センサ情報210から、前後方向に対するセンサ200の重力加速度に対する傾斜角と、左右方向に対するセンサ200の重力加速度に対する傾斜角と、を腰の角度として算出する。
以下の説明では、前後方向に対するセンサ200の重力加速度に対する傾斜角を前後方向の腰の角度と呼び、左右方向に対するセンサ200の重力加速度に対する傾斜角を左右方向の腰の角度と呼ぶ。
前後方向の腰の角度と、左右方向の腰の角度は、以下の式(1)によって算出される。
尚、ここで、X、Y、Zは、センサ情報210から取得される時系列のX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、Z軸の加速度を示すデータであり、X=(X1,X2,・・・,Xn)、Y=(Y1,Y2,・・・,Yn)、Z=(Z1,Z2,・・・,Zn)である。
図14は、第一の実施形態の上体特徴量算出部による腰の角度の算出の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の上体特徴量算出部151は、式(1)に基づき、区間特定部134により特定された区間において取得したセンサ情報210から、全ての時刻について、前後方向と左右方向の腰の角度を算出する(ステップS1401)。
続いて、上体特徴量算出部151は、ステップS1401で取得した前後方向の腰の角度と、左右方向の腰の角度とのそれぞれについて、統計をとり、その結果を上半身特徴量として保持して(ステップS1402)、図7のステップS709へ進む。
尚、ステップS1402において、腰の角度の統計をとることとは、具体的には、腰の角度の平均値及び標準偏差の算出、最大値と最小値の抽出等である。
つまり、本実施形態の上半身特徴量には、少なくとも、腰の3軸方向の移動幅の平均値と標準偏差、腰の前後方向と左右方向の角度の平均値と標準偏差とが含まれる。
次に、図15及び図16を参照し、図7のステップS709における特徴量算出部135の処理について説明する。
本実施形態の特徴量算出部135は、脚特徴量算出部152により、対象者Pの両脚の動作を示す脚特徴量を算出する。
まず、図15を参照して、本実施形態における対象者Pの脚の動作について説明する。図15は、第一の実施形態における対象者の脚の動作について説明する図である。
図15は、左右の脚のそれぞれに装着されたセンサ300から取得したセンサ情報310を示しており、縦軸は角速度を示し、横軸は時刻を示す。
歩行区間では、両脚のセンサ情報310には、ピークが周期的に出現する。図15では、左脚のセンサ情報310のピークPnを用いて、対象者Pの歩行における1歩(ステップ)について説明する。
本実施形態では、ピークPnが出現した時刻Tnから前後において、センサ情報310の値(角速度の値)が最小となる時刻をステップの開始時刻Tssと終了時刻Tseとする。ステップの開始時刻Tssとは、対象者Pの脚のつま先が地面や床面から離れたタイミングを示す。ステップの終了時刻Tseとは、対象者Pの脚の踵が接地したタイミングを示す。
したがって、図15の例では、開始時刻Tssからピークが検出された時刻Tnまでの区間Knbと、時刻Tnから終了時刻Tseまでの区間Knaと含む区間Kstが、対象者Pの1歩(ステップ)となる。言い換えれば、1歩とは、対象者Pの一方の脚のつま先が地面から離れてから、踵が接地するまでの動作を示す。
以上の動作をふまえて、本実施形態の脚特徴量算出部152は、脚の左右への移動幅、立脚時間、脚上げ幅、歩行速度、遊脚中の脚上げ幅、冠状面の最小回転速度、遊脚中期までの時間、歩幅を算出し、算出結果の統計をとった結果を脚特徴量とする。
脚の左右への移動幅は、ステップの開始時刻Tssから終了時刻Tseまでの区間Kstでの、左右方向の角速度の積分値を示す。尚、本実施形態では、脚の左右への移動幅を、この積分値の定数倍した値としても良い。
立脚時間は、N番目のステップの終了時刻Tseから、N+1番目のステップの開始時刻Tssまでの時間間隔を示す。
脚上げ幅は、ステップの開始時刻Tssから終了時刻Tseまでの区間Kstにおける、上下方向の角速度の積分値を示す。尚、本実施形態では、脚上げ幅を、この積分値の定数倍した値としても良い。
歩行速度は、時刻Tnにおける角速度を示す。尚、本実施形態では、歩行速度を、この角速度を定数倍した値としても良い。
遊脚中の脚上げ幅は、ステップの開始時刻Tssから時刻Tnまでの区間Kstにおける、上下方向の各加速度の積分値を示す。尚、遊脚中の脚上げ幅は遊脚中の脚上げ幅を、この積分値を定数倍した値としても良い。
冠状面の最小回転速度は、ステップの開始時刻Tssから終了時刻Tseまでの区間Kstでの、上下方向の角速度の最小値を示す。
遊脚中期までの時間は、ステップの開始時刻Tssから時刻Tnまでの区間Knbを示す。
歩幅は、ステップの開始時刻Tssから終了時刻Tseまでの移動距離を示す。
以下に、図16を参照して、本実施形態の脚特徴量算出部152による脚特徴量の算出について説明する。図16は、第一の実施形態の脚特徴量算出部による脚特徴量の算出の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の脚特徴量算出部152は、ステップS708において、上体特徴量算出部151による上半身特徴量の算出が完了すると、区間特定部134により特定された区間における各ステップについて、対象者Pの脚の動作を示す値を算出する(ステップS1601)。具体的には、脚特徴量算出部152は、上述した8種類の値を算出する。
続いて、脚特徴量算出部152は、区間特定部134によって特定された区間における全てのステップについて、8種類の値を算出したか否かを判定する(ステップS1602)。ステップS1602において、全てのステップにおいて、特徴量を算出していない場合、脚特徴量算出部152は、ステップS1601に戻る。
ステップS1602において、全てのステップについて8種類の値を算出した場合、脚特徴量算出部152は、算出された値の統計をとった結果を脚特徴量として保持し(ステップS1603)、図7のステップS710へ進む。
具体的には、脚特徴量算出部152は、例えば、8種類の値のそれぞれについて、各値の平均値、標準偏差を算出した値を、脚特徴量としても良い。この場合、脚特徴量には、8つの平均値と標準偏差とが含まれることなる。また、脚特徴量算出部152は、8つの特徴量のそれぞれについて、最小値と最大値を脚特徴量として取得しても良い。また、本実施形態の脚特徴量算出部152は、センサ情報310の波形における左右対称性に基づき取得された特徴量を脚特徴量としても良い。言い換えれば、脚特徴量算出部152は、左脚の歩行速度の平均値、右脚の歩行速度の平均値だけではなく、左と右の歩行速度の平均値の差分(左右対称性の一例)を用いても良い。
次に、図17を参照して、図7のステップS710における関係性算出部153の処理について説明する。
本実施形態の関係性算出部153は、上体特徴量算出部151により算出された上半身特徴量同士の関係性と、脚特徴量算出部152により算出された脚特徴量同士の関係性とを算出する。
図17は、第一の実施形態の関係性算出部による回帰係数の算出について説明する図である。図17では、脚特徴量に含まれる歩幅の平均値と、歩行速度の平均値との関係性を示す回帰係数を算出した例を示している。
図17では、縦軸は歩幅の平均値を示し、横軸が歩行速度の平均値を示している。図17の例では、領域Rに対象者Pの脚特徴量から得られた歩行速度の平均値と歩幅の平均値によって示される点群PGが存在している。そして、図17では、これらの点群PGから、回帰直線Lと、回帰係数=0.4808が算出されたことがわかる。本実施形態では、この回帰係数=0.4808も、脚特徴量に含める。
また、図17では、歩行速度の平均値と歩幅の平均値の関係性を算出する例を説明したが、これに限定されない。
本実施形態の関係性算出部153は、例えば、歩行速度の標準偏差と歩幅の標準偏差の関係性を示す回帰係数を算出し、脚特徴量に含めても良い。
また、本実施形態の関係性算出部153は、上半身特徴量に含まれる3軸方向毎の腰の移動幅の平均値と、前後方向の腰の角度の平均値との関係性を示す回帰係数を算出し、上半身特徴量に含めても良い。また、関係性算出部153は、3軸方向毎の腰の移動幅の標準偏差と、前後方向の腰の角度の標準偏差との関係性を示す回帰係数、3軸方向毎の腰の移動幅の平均値と、左右方向の腰の角度の平均値との関係性を示す回帰係数、3軸方向毎の腰の移動幅の標準偏差と、左右方向の腰の角度の標準との関係性を示す回帰係数を算出し、上半身特徴量に含めても良い。
本実施形態の関係性算出部153は、脚特徴量に含まれる値同士で取り得る全ての組み合わせと、上半身特徴量に含まれる値同士で取り得る全ての組み合わせについて、関係を示す回帰係数や相関係数を算出し、脚特徴量と上半身特徴量に含めても良い。
次に、図18及び図19を参照して、図7のステップS711におけるふらつき判定部154の処理について説明する。
本実施形態の特徴量算出部135では、ふらつき判定部154により、上半身特徴量に基づいて、対象者Pの上半身にふらつきが発生したか否かを判定する。
本実施形態のふらつき判定部154は、上半身特徴量に含まれる腰の上下方向の移動幅が、所定の範囲を超えた場合に、ふらつきが発生したと判定する。尚、図18の例は、上下方向の移動幅としたが、これに限定されない。移動幅は、上下方向に限られず、左右方向、前後方向の移動幅であっても良い。
また、本実施形態のふらつき判定部154では、ふらつきが発生したと判定された場合に、ふらつきの種類まで判定する。
図18は、第一の実施形態のふらつき判定部によるふらつきの判定を説明する第一の図である。図18では、対象者Pが一時的に体勢を崩した場合を示している。
本実施形態のふらつき判定部154は、腰の上下方向の移動幅の値が、所定の範囲外となったとき、ふらつきが発生したと判定する。
図18における所定の範囲とは、腰の上下方向の移動幅の平均値をMwとし、腰の上下方向の標準偏差Swとした場合に、Mw−SwからMw+Swまでである。つまり、ふらつき判定部154は、腰の上下方向の移動幅の値<Mw−Swである場合か、Mw+Sw<腰の上下方向の移動幅の値である場合に、ふらつきが発生したと判定する。
図18の例では、腰の上下方向の移動幅の値が、時刻Tp1で値P11となり、Mw+Swを超える。よって、ふらつき判定部154は、ふらつきが発生したと判定する。
また、図18の例では、時刻Tp1で値P11が所定の範囲外となったあと、値P12も所定の範囲外となっている。そして、図18の例では、時刻Tp2で腰の値P13が所定範囲内に戻っている。つまり、図18の例では、時刻Tp1においてふらつきが発生したと判定されてから、腰の上下方向の移動幅の値が所定の範囲内に戻るまでの区間は、区間K12である。
図18の例では、この区間K12の長さが所定値以下であるものとした。その場合、区間K12における腰の上下方向の移動幅の値は、対象者Pが一時的に体勢を崩したことを示す値と判定される。尚、本実施形態の所定値は、例えば3秒程度であれば良いが、それよりも短くても良い。
以下の説明では、対象者Pが一時的に体勢を崩したことを示す腰の上下方向の移動幅の値を、瞬間特徴量と呼ぶ。よって、図18の例では、腰の上下方向の移動幅の値P11、P12が瞬間特徴量となる。
図19は、第一の実施形態のふらつき判定部によるふらつきの判定を説明する第二の図である。図19では、対象者Pが体勢を崩した後に、しばらくふらついている場合を示している。
本実施形態のふらつき判定部154は、腰の左右方向の移動幅の値が、所定の範囲外となったとき、ふらつきが発生したと判定する。尚、図19の例は、左右方向の移動幅としたが、これに限定されない。腰の移動幅は、左右方向に限られず、前後方向、上下方向の移動幅であっても良い。
図19における所定の範囲とは、腰の左右方向の移動幅の平均値をMw1とし、腰の左右方向の標準偏差Sw1とした場合に、Mw1−Sw1からMw1+Sw1までである。つまり、ふらつき判定部154は、腰の左右方向の移動幅の値<Mw1−Sw1である場合か、Mw1+Sw1<腰の上下方向の移動幅の値である場合に、ふらつきが発生したと判定する。
また、図19の例では、時刻Tp3において腰の左右方向の移動幅の値P21が所定の範囲外となった後の値P22、P23は、所定の範囲外のままである。そして、図19の例では、時刻Tp4において、腰の左右方向の移動幅の値P24が所定の範囲内に戻っている。つまり、図19の例では、時刻Tp3においてふらつきが発生したと判定されてから、腰の左右方向の移動幅の値が所定の範囲内に戻るまでの区間は、区間K34である。
図19の例では、この区間K34の長さが所定値より長いものとした。その場合、区間K34における腰の左右方向の移動幅の値は、対象者Pが体勢を崩した後に、しばらくふらついていることを示す値と判定される。
以下の説明では、対象者Pが体勢を崩した後に、しばらくふらついていることを示す腰の左右方向の移動幅の値を、持続特徴量と呼ぶ。よって、図19の例では、腰の左右方向の移動幅の値P21、P22、P23が持続特徴量となる。
次に、図20を参照して、図7のステップS712における部位関係性算出部155の処理について説明する。
本実施形態では、対象者Pの上半身にふらつきが発生した場合に、ふらつきが発生した時刻の前後の区間において、対象者Pの脚の動きに通常とは異なる動きが含まれる点に着目し、上半身のふらつきと、両脚の動きとの関係性を求める。
図20は、上半身のふらつきと、両脚の動きとの関係を説明する図である。図20(A)、(B)、(C)のそれぞれに示すグラフは、縦軸がセンサ情報310(角速度)であり、横軸が時刻を示している。
図20(A)の例では、時刻T22から時刻T23の区間Kf1において、上半身のふらつきが検出された場合を示している。この場合、ふらつきが発生している区間Kf1よりも前の区間K21において、左脚の踵の着地な乱れがあることがわかる。
また、図20(B)の例では、時刻T26から時刻T27の区間Kf2において、上半身のふらつきが検出された場合を示している。この場合、ふらつきが発生している区間Kf1よりも前の区間K25において、右脚を上げているときの左脚の動きに乱れがあることがわかる。
また、図20(C)の例では、時刻T30から時刻T31の区間Kf3において、上半身のふらつきが検出された場合を示している。この場合、ふらつきが発生している区間Kf1において、右脚の動きに乱れがあることがわかる。
そこで、本実施形態の部位関係性算出部155は、上半身にふらつきが発生した区間をと、その区間の前後の区間と、を含む所定期間における脚の特徴量を算出する。
本実施形態では、ふらつきが発生した区間の前後の区間を、対象者Pの4歩分(4ステップ分)の区間とした。
したがって、図20(A)では、時刻T21から時刻T22までの区間K21を、区間Kf1から4歩前の区間とし、時刻T23から時刻T24までの区間K22を、区間Kf1から4歩後の区間とする。そして、部位関係性算出部155は、脚特徴量算出部152に対し、区間K21、区間Kf1、区間K22を含む時刻T21から時刻T24までの所定区間における脚特徴量を算出させる。
同様に、部位関係性算出部155は、脚特徴量算出部152に対し、時刻T25から時刻T26までの区間K23と、区間Kf2と、時刻T27から時刻T28までの区間K24を含む、時刻T25から時刻T28までの所定区間における脚特徴量を算出させる。
同様に、部位関係性算出部155は、脚特徴量算出部152に対し、時刻T29から時刻T30までの区間K25と、区間Kf3と、時刻T31から時刻T32までの区間K26を含む、時刻T29から時刻T32までの所定区間における脚特徴量を算出させる。
本実施形態では、以上のようにして、部位関係性算出部155が、脚特徴量算出部152に対して所定区間の脚特徴量を算出させることで、複数の部位(上半身と両脚)の関係性を算出している。
次に、図21を参照して、図7のステップS713における異常歩行推定部136の処理について説明する。
本実施形態の異常歩行推定部136は、特徴量算出部135により算出された上半身特徴量と脚特徴量と、モデルデータベース120とに基づき、対象者Pの歩行の状態に異常があるか否かを推定する。
以下の説明では、説明の便宜上、特徴量算出部135により算出された上半身特徴量が、ある1軸方向における腰の移動幅の平均値と、ある1軸方向における腰の角度の平均値であったものとして説明する。
この場合、特徴量算出部135で算出された上半身特徴量f=(f1,f2)で示される。ここで、f1は、ある1軸方向における腰の移動幅の平均値であり、f2は、ある1軸方向における腰の角度の平均値である。
本実施形態の異常歩行推定部136は、各分布とのマハラノビス距離(Dp,Dc)を算出する。尚、各分布とは、モデルデータベース120に格納された脳震盪患者群の平均ベクトルと共分散行列によって示される、腰の移動幅の平均値と腰の角度の分布と、健常者群の平均ベクトルと共分散行列によって示される、腰の移動幅の平均値と腰の角度の分布である。
マハラノビス距離Dpは、以下の式(2)によって算出される。
尚、式(2)では、マハラノビス距離D
cは、脳震盪患者群の分布と、上半身特徴量fとの距離を示す。異常歩行推定部136は、健常者群の分布と、上半身特徴量fとの距離を示すマハラノビス距離D
pについても、式(2)の脳震盪患者群の平均ベクトルと共分散行列を健常者群の平均ベクトルと共分散行列に置き換えて算出する。
図21は、第一の実施形態の異常歩行推定部による推定について説明する図である。
本実施形態の異常歩行推定部136は、例えば、Dp<Dcである場合に、対象者Pは、脳震盪によるバランス能力の低下に起因する歩行の異常が有ると推定する。言い換えれば、本実施形態の異常歩行推定部136は、上半身特徴量fが、健常者群の分布B2よりも脳震盪患者群の分布B1に近い場合に、対象者Pの歩行の状態に異常が有ると推定する。
尚、図21に示す図では、上半身特徴量fの値の数が2つであるため、軸の数も2本であるが、実際には、上半身特徴量の値及び脚特徴量の値の数だけ、対応する軸が存在する。
また、上述した説明では、Dp<Dcである場合に、歩行の異常が有ると推定するものとしたが、これに限定されない。
推定結果を「歩行に異常がある」とするための条件は、例えば、情報処理装置100を使用する医療従事者等によって決められても良い。
例えば、対象者Pの日常生活の中で取得された、複数のセンサ情報210、310を用いる場合には、異常歩行推定部136は、複数のセンサ情報210、310のそれぞれに対して、マハラノビス距離(Dp,Dc)を算出しても良い。そして、異常歩行推定部136は、複数のマハラノビス距離(Dp,Dc)から、対象者Pの歩行の異常の有無を推定しても良い。
また、本実施形態では、例えば、Dp<Dcであって、且つDpが所定の距離よりも短い場合等には、健常者群に近づいていることから、異常歩行推定部136に、回復傾向にあると推定させても良い。
また、本実施形態の異常歩行推定部136は、抽出された全ての負荷区間において、Dp<Dcとなった負荷区間の割合が所定値以上である場合に、対象者Pの歩行の状態に異常があると推定しても良い。
また、本実施形態の異常歩行推定部136は、例えば、日々の記録との差分を算出し回復傾向か否かを推定しても良い。具体的には、例えば、現在のマハラノビス距離Dpと、前日や1週間前のマハラノビス距離Dpと比較し、マハラノビス距離Dpが前日や1週間前の半分以下になったら回復していると推定しても良い。
また、異常歩行推定部136は、性別や年齢が近い脳震盪患者の過去の記録を基に回復傾向か否かを推定しても良い。具体的には、例えば、順調に回復した脳震盪患者の、脳震盪発生日以降のマハラノビス距離Dpを予め記録しておく。そして、その中から、対象者Pと性別や年齢が近い脳震盪患者のマハラノビス距離Dpを抽出する。次に、脳震盪発生日から同日のマハラノビス距離Dpを対象者Pのマハラノビス距離Dpと比較し、同程度であれば回復していると推定しても良い。
次に、図22を参照して、図7のステップS714における推定結果出力部139の処理について説明する。図22は、第一の実施形態の推定結果情報の出力例を示す図である。
図22では、推定結果出力部139によって推定結果情報が情報処理装置100のディスプレイに表示された画面の例を示している。
図22に示す画面221では、推定結果情報として、異常歩行推定処理部130による推定の根拠となる処理の結果を示す情報222と、推定結果を示す情報223と、が表示される。
情報222には、対象者Pの歩行の状態の推定結果として、抽出された歩行区間の数、負荷区間の数、ふらつきの有無、マハラノビス距離(Dp,Dc)等が含まれる。
また、情報223には、情報222から、対象者Pの歩行の状態に異常があるが、回復傾向であることが示されている。
尚、図22の例では、情報222が表示されるものとしたが、これに限定されない。推定結果情報は、情報223のみであっても良い。また、情報222を表示させるか否かは、情報処理装置100の利用者の設定によって決められていても良い。
さらに、図22の画面221は、情報処理装置100のディスプレイに表示されるものとしたが、これに限定されない。画面221は、情報処理装置100と通信が可能な外部の装置のディスプレイ等に表示されても良い。また、センサ200がスマートフォン等の端末装置に搭載されている場合には、画面221は、センサ200が搭載された端末装置のディスプレイに表示されても良い。
さらに、本実施形態では、画面221に表示された情報を印刷物として出力しても良いし、推定結果情報として出力しても良い。
次に、本実施形態の負荷臨界点データベース110とモデルデータベース120の作成について説明する。はじめに、負荷臨界点データベース110の作成について説明する。
図23は、第一の実施形態における臨界点データベース作成部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の臨界点データベース作成部137は、センサ情報取得部131により、脳震盪患者群のセンサ情報と、健常者群のセンサ情報とを取得する(ステップS2301)。尚、これらのセンサ情報は、センサ情報210とセンサ情報310に相当するものであり、予め各群に属する被験者から収集されたものであっても良い。
続いて、臨界点データベース作成部137は、特徴量統計部161により、各被験者のセンサ情報に基づき、1歩(1ステップ)毎の上半身の動作を示す値と、両脚の動作を示す値と、算出する(ステップS2302)。言い換えれば、特徴量統計部161は、被験者毎に、1歩毎の上半身の動作を示す値と、両脚の動作を示す値とを算出する。
尚、上半身の動作を示す値とは、3軸方向の腰の移動幅や、2軸方向の腰の角度であり、両脚の動作を示す値とは、脚の左右への移動幅、立脚時間、脚上げ幅、歩行速度、遊脚中の脚上げ幅、冠状面の最小回転速度、遊脚中期までの時間、歩幅である。
続いて、特徴量統計部161は、負荷臨界点データベース110の各取得項目について、所定の変化幅と対応した区間毎に、上半身の動作を示す値の統計をとった結果を上半身特徴量とし、両脚の動作を示す値の統計をとった結果を脚特徴量として、保持する(ステップS2303)。
続いて、臨界点データベース作成部137は、負荷臨界点設定部162により、取得項目毎に、各区間の上半身特徴量と脚特徴量について、群間の平均値の差検定、例えばt検定を実施する(ステップS2304)。
続いて、負荷臨界点設定部162は、取得項目毎に統計的に有意か否かを判断する指標、例えばp値が、予め設定した有意水準に達したときの最初の値を取得し、この値を対応する取得項目の負荷臨界点に設定し(ステップS2305)、負荷臨界点データベース110を生成する処理を終了する。
以下に、図24乃至図26を参照して、負荷臨界点データベース110の作成についてさらに説明する。
図24は、第一の実施形態における負荷臨界点データベースの作成を説明する第一の図である。
図24に示すグラフは、特徴量統計部161によって算出された、ある被験者の1歩毎の3軸方向の腰の移動幅を示している。腰の移動幅は、上半身の動作を示す値の1つである。図24では、時刻Tsから歩行区間が開始されていることがわかる。
本実施形態の特徴量統計部161は、各取得項目について、所定の変化幅と対応した区間毎に、上半身特徴量と脚特徴量と、算出する。
ここでは、取得項目が「経過時間」であった場合の、特徴量統計部161による上半身特徴量の算出について説明する。
この場合、経過時間の単位は[sec]であるため、図24のグラフの横軸は時刻を示している。
ここで、特徴量統計部161は、歩行区間の開始時刻Tsからi秒後の時刻Tiから始まる所定区間である区間Kieにおける、腰の移動幅の統計をとり、上半身特徴量とする。このとき、取得項目「経過時間」の所定の変化幅を1秒とすると、i=1,2,3,・・・,60となる。
例えば、i=20であった場合には、特徴量統計部161は、時刻Tsから20秒後の時刻Tiから時刻Tieまでの区間Kieにおける上半身特徴量を算出する。この算出が完了すると、次に、特徴量統計部161は、i=21の場合について、同様に、上半身特徴量を算出する。
図24の例では、i=60が最大値であるため、特徴量統計部161は、i=60となるまで、同様の処理を行う。尚、本実施形態では、区間Kieの長さは、任意に設定されて良いが、例えば30秒程度である。
また、例えば、取得項目が「脈拍数の上昇幅」であった場合の、特徴量統計部161による上半身特徴量の算出について説明する。
この場合に、取得項目「脈拍数の上昇幅」の所定の変化幅を1[bpm]とし、i=1,2,3,・・・,40とすると、特徴量統計部161は、歩行区間の開始時刻Tsから脈拍数が1bpm上昇したときの時刻Tiから始まる所定区間である区間Kieにおける、腰の移動幅の統計をとり、上半身特徴量とする。
本実施形態の臨界点データベース作成部137は、以上のようにして、被験者毎に、取得項目の変化幅と対応した区間の上半身特徴量及び脚特徴量を算出する。
図25は、第一の実施形態における負荷臨界点データベースの作成を説明する第二の図である。
図25では、被験者毎に、取得項目「経過時間」について、変化幅と対応した区間の上半身特徴量及び脚特徴量を算出した結果の中間データ251を示している。
i=1の場合の中間データ251−1では、区間Kieについて、脳震盪患者群に含まれる患者A〜患者N上毎の上半身特徴量と脚特徴量と、健常者群に含まれる健常者A〜健常者N毎の上半身特徴量と脚特徴量とが算出されている。
本実施形態の中間データ251では、i=60の場合の中間データ251−60まで、同様に、脳震盪患者群に含まれる患者A〜患者N上毎の上半身特徴量と脚特徴量と、健常者群に含まれる健常者A〜健常者N毎の上半身特徴量と脚特徴量とが算出される。
また、本実施形態では、負荷臨界点データベース110の取得項目毎に、中間データを生成する。
例えば、取得項目「脈拍数の上昇幅」についても、同様に、i=1〜40の場合(脈拍数が1上昇したとき場合)の区間Kieについて、患者A〜患者N上毎の上半身特徴量と脚特徴量と、健常者A〜健常者N毎の上半身特徴量と脚特徴量とが算出される。
図26は、第一の実施形態における負荷臨界点データベースの作成を説明する第三の図である。
図26では、有意水準を0.01として、中間データ251に対してt検定を実施した場合の結果を示す中間データ261を示している。
この場合、経過時間が46秒のときの脚特徴量の1つ(歩幅の平均値)のp値と、経過時間が60秒のときの上半身特徴量の1つ(腰の前後方向の移動幅の平均値)のp値と、が0.01となっている。
よって、本実施形態の負荷臨界点設定部162は、取得項目「経過時間」の値のうち、p値が有意水準に達した最初の値である「46[sec]」を、負荷臨界点データベース110において、取得項目「経過時間」と対応する閾値に設定する。
本実施形態では、以上のようにして、取得項目毎の閾値を設定し、負荷臨界点データベース110を生成する。
尚、これまでの説明では、負荷臨界点データベース110は、取得項目毎の閾値が設定されているものとしたが、これに限定されない。負荷臨界点データベース110には、例えば、取得項目「経過時間」と対応する閾値「46[sec]」のみ格納されていても良い。この場合、46秒以上継続している歩行区間が負荷区間となる。
また、本実施形態では、各上半身特徴量、各脚特徴量に対して、取得項目毎の閾値を設定しても良い。
例えば、上半身特徴量の1つである、腰の前後方向の移動幅の平均値では、経過時間が60[sec]の場合にp値が有意水準に達する。よって、腰の前後方向の移動幅の平均値に対する、取得項目「経過時間」の閾値は、60[sec]となる。また、例えば、脚特徴量の1つである、歩幅の平均値に対する、取得項目「経過時間」の閾値は、46[sec]となる。
また、本実施形態では、健常者群と脳震盪患者群との有意差を認めるための検定を行ったが、対象者Pのセンサ情報210、310を用いて各取得項目の変化幅毎の上半身特徴量と脚特徴量とを算出し、健常者群との有意差を認めるための検定を行っても良い。
また、本実施形態では、取得項目の負荷臨界点は個人ごとに設定しても良い。例えば、本実施形態では、予め対象者Pの過去の歩行区間を複数回取得し、「経過時間」毎に「経過時間」後の所定時間内に歩行が終了する頻度を算出する。例えば、「経過時間」が1[sec]の場合(i=1)、その後5秒間以内に歩行が終了する頻度を、取得した歩行区間毎に算出する。また、「経過時間」が最大値(i=60)となるまで、同様の処理を行う。
本実施形態では、i=2〜60まで、現在の「経過時間」(i)の歩行が終了する頻度と、ひとつ前の「経過時間」(i−1)の歩行が終了する頻度との間に、有意差が認められるかどうかを統計的に調べるために検定を行う。取得項目「経過時間」の値のうち、p値が有意水準に達した最初の値である「経過時間」を、取得項目「経過時間」と対応する閾値に設定する。尚、頻度の代わりに、確率やエントロピーを用いても良い。
次に、モデルデータベース120の作成について説明する。図27は、第一の実施形態におけるモデルデータベース作成部の処理を説明するフローチャートである。
本実施形態のモデルデータベース作成部138は、センサ情報取得部131により、脳震盪患者群のセンサ情報と、健常者群のセンサ情報とを取得する(ステップS2701)。ここで取得されるセンサ情報は、臨界点データベース作成部137により取得されるセンサ情報と同じものであっても良い。
続いて、モデルデータベース作成部138は、センサ情報において、区間特定部134により特定された区間を選択する(ステップS2702)。続いて、モデルデータベース作成部138は、特徴量算出部135により、選択された区間の上半身特徴量と脚特徴量とを、被験者毎に算出する(ステップS2703)。
続いて、モデルデータベース作成部138は、平均ベクトル算出部171により、脳震盪患者群の平均ベクトルと、健常者群の平均ベクトルを算出する(ステップS2704)。続いて、モデルデータベース作成部138は、共分散行列算出部172により、脳震盪患者群の共分散行列と、健常者群の共分散行列とを算出し、平均ベクトルと対応付けてモデルデータベース120に格納し(ステップS2705)、処理を終了する。
以下に、図28を参照して、モデルデータベース120の生成について、さらに説明する。図28は、第一の実施形態のモデルデータベースの作成を説明する図である。
図28に示す中間データ281は、区間特定部134によって、負荷区間における臨界点時刻Tlから負荷区間の終了時刻Teまでの後半区間Kaが、上半身特徴量と脚特徴量を算出する区間に特定されていた場合に、生成される。
中間データ281では、モデルデータベース作成部138は、センサ情報から取得した負荷区間における後半区間について、脳震盪患者群に含まれる患者1〜患者Jまでの上半身特徴量と脚特徴量とが算出されている。また、同様に、中間データ281では、後半区間について、健常者群に含まれる健常者1〜健常者Kまでの上半身特徴量と脚特徴量とが算出されている。
ここで、本実施形態のモデルデータベース作成部138の平均ベクトル算出部171は、脳震盪患者群と、健常者群のそれぞれについて、平均ベクトルを算出する。
脳震盪患者群の上半身特徴量及び脚特徴量を示す行列をFpとすると、Fpは、以下の式(3)で示される。
尚、このとき、f
1(1)は、被験者1の上半身特徴量又は脚特徴量のうちの1つを示す。また、式(3)では、説明の便宜上、上半身特徴量又は脚特徴量をf
1(J)、f
2(J)の2種類としているが、上半身特徴量に含まれる値と脚特徴量に含まれる値の数の合計がNである場合には、f
N(J)まで存在する。
また、上半身特徴量又は脚特徴量のうちの1つであるf1とf2の平均値は、式(4)によって示される。
これらの式(3)、(4)から、脳震盪患者群の上半身特徴量と脚特徴量の平均ベクトルは、式(5)によって示される。
本実施形態の平均ベクトル算出部171は、健常者群の平均ベクトルも、同様にして算出する。
また、本実施形態の共分散行列算出部172は、脳震盪患者群の共分散行列を、以下の式(6)、(7)によって算出する。
また、共分散行列算出部172は、健常者群の共分散行列も、同様の手法で算出する。
以上のように、本実施形態のモデルデータベース作成部138は、脳震盪患者群の平均ベクトルと共分散行列と、健常者群の平均ベクトルと共分散行列とを算出し、記憶領域に格納することで、モデルデータベース120を作成する。
以上のように、本実施形態では、対象者Pの歩行区間から、歩行の状態に異常が発生する傾向が強くなる負荷区間を抽出し、この負荷区間の対象者Pの上半身特徴量と脚特徴量とに基づき、歩行の状態の異常の有無を推定する。したがって、本実施形態によれば、歩行の状態に異常が発生しにくい歩行区間の対象者Pの動作に基づき、異常の有無の推定を行うことが回避される。このため、本実施形態によれば、歩行の状態の推定の精度を向上させることができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、抽出された負荷区間の数や歩行時間の長さを考慮した推定結果情報を出力する点と、ふらつきに関する値を上半身特徴量と脚特徴量に含ませる点が、第一の実施形態と相違する。よって、以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
図29は、第二の実施形態の異常歩行推定処理部の機能を説明する図である。本実施形態の異常歩行推定処理部130Aは、センサ情報取得部131、歩行区間特定部132、負荷区間抽出部133A、区間特定部134、特徴量算出部135A、異常歩行推定部136A、臨界点データベース作成部137、モデルデータベース作成部138、推定結果出力部139を有する。
本実施形態の負荷区間抽出部133Aは、判定用データ算出部141A、臨界点判定部142を有する。本実施形態の判定用データ算出部141Aは、対象者Pの判定用ベクトルの項目に、対象者Pのふらつきの回数や歩行距離を含める。
より具体的には、判定用データ算出部141Aは、対象者Pがふらつきを繰り返している場合に、通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係を示す値を取得し、その値を判定用ベクトルの要素に含めても良い。
その場合、負荷臨界点データベース110の取得項目にも、通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係を示す値と対応する項目と、その閾値が格納されていることが好ましい。通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係の詳細は後述する。
本実施形態の特徴量算出部135Aは、上体特徴量算出部151、脚特徴量算出部152、関係性算出部153、ふらつき判定部154、部位関係性算出部155、ふらつき特徴量算出部156を有する。
本実施形態ふらつき特徴量算出部156は、ふらつき判定部154により、ふらつきがあると判定された場合、特定された区間における瞬間特徴量と持続特徴量(図18参照)の発生割合を算出し、その結果を上半身特徴量に含めても良い。
瞬間特徴量の発生割合は、「区間特定部134により特定された区間における瞬間特徴量の数/区間特定部134により特定された区間における上下方向の腰の移動幅の値の数」によって算出される。また、持続特徴量の発生割合は、「区間特定部134により特定された区間における持続特徴量の数/区間特定部134により特定された区間における上下方向の腰の移動幅の値の数」によって算出される。
本実施形態の異常歩行推定部136Aは、区間数判定部181、歩行時間判定部182を有する。
本実施形態の区間数判定部181は、負荷区間として抽出された区間の数が所定数以上であるか否かを判定する。尚、所定数は、予め設定された値であり、例えば、情報処理装置100を利用する医療従事者等によって設定されても良い。
本実施形態の歩行時間判定部182は、センサ情報210、310から取得される歩行時間が所定時間以上であるか否かを判定する。尚、所定時間は、予め設定された値であり、例えば、情報処理装置100を利用する医療従事者等によって設定されても良い。
以下に、図30を参照して、通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係について説明する。図30は、第二の実施形態における通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係を説明する図である。
本実施形態の判定用データ算出部141Aは、通常歩行とふらつきの繰り返しとの関係を示す値として、通常の歩行からふらつきの状態へ切り替わった回数の累計と、ふらつきが発生するまでの歩行距離及び経過時間の平均値とを取得する。図30では、ふらつきが2回発生した場合を示している。
図30において、1回目のふらつきは、歩行を開始してからの経過時間が35[sec]であり、歩行距離が40.2[m]のときに発生している。そして、2回目のふらつきは、歩行を開始してからの経過時間が30[sec]であり、歩行距離が40[m]のときに発生している。
この場合、判定用データ算出部141Aは、回数の累計として「2回」、歩行距離の平均値「40.1[m]」、経過時間の平均値「32.5[sec]」を算出する。そして、判定用データ算出部141Aは、これらの値を、判定用ベクトルの要素に含める。
次に、図31を参照して、本実施形態の異常歩行推定処理部130Aの動作について説明する。図31は、第二の実施形態の異常歩行推定処理部の処理を説明するフローチャートである。
図31のステップS3101からステップS3112までの処理は、図7のステップS701からステップS712までの処理と同様であるから、説明を省略する。
異常歩行推定処理部130Aは、ステップS3112に続いて、ふらつき特徴量算出部156により、ふらつきに基づき、上半身特徴量に含ませる値を算出する(ステップS3113)。
具体的には、ふらつき特徴量算出部156は、瞬間特徴量の発生割合、持続特徴量の発生割合を算出し、上半身特徴量に含める。
続いて、異常歩行推定処理部130Aは、異常歩行推定部136Aにより、上半身特徴量と脚特徴量を用いて、対象者Pの歩行の状態における異常の有無を推定し、結果を保持し(ステップS3114)、ステップS3103に戻る。
ステップS3103において、全ての歩行区間に対して処理を行った場合、異常歩行推定処理部130Aは、異常歩行推定部136Aの区間数判定部181により、負荷区間抽出部133により抽出された負荷区間が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS3115)。
ステップS3115において、所定数以上でない場合、つまり、負荷区間抽出部133により抽出された負荷区間が所定数未満であった場合、異常歩行推定処理部130Aは、後述するステップS3118へ進む。
ステップS3115において、所定数以上であった場合、異常歩行推定処理部130Aは、歩行時間判定部182により、歩行区間特定部132により抽出された歩行区間全てを合計した歩行時間が、所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS3116)。
ステップS3116において、歩行時間が所定時間以上である場合、異常歩行推定部136Aは、推定結果を出力し(ステップS3117)、処理を終了する。
ステップS3116において、歩行時間が所定時間以上でないとき、つまり、歩行時間が所定時間よりも短いとき、異常歩行推定部136Aは、歩行時のセンサ情報が不足していることを通知すると共に、推定結果情報を出力し(ステップS3118)、処理を終了する。
このように、本実施形態では、ふらつきが発生したと判定された場合には、ふらつきに関連する値を上半身特徴量に含めることができる。
また、例えば、歩行の状態の推定に用いられる負荷区間の数が少ない場合や、歩行時間が短い場合には、十分な推定結果が得られない可能性がある。
そこで、本実施形態では、歩行の状態の推定を行うために必要と思われる負荷区間の数と、歩行時間を、所定数と所定時間として設定する。そして、負荷区間の数が所定数未満である場合と、歩行時間が所定時間未満である場合には歩行中のセンサ情報が不足していることを示す通知も、推定結果情報と共に出力する。
さらに、対象者Pが重度な脳震盪患者である場合、判定用ベクトルの項目が閾値に達する前に歩行が中断される可能性がある。したがって、本実施形態では、例えば、「歩行時間が所定時間未満の割合が5割である。対象者Pさんは長時間(長距離)の歩行が困難である可能性が高い」、等という通知を行っても良い。
また、本実施形態では、負荷区間の数が所定数未満である場合に、個人ごとに設定した閾値を用いて抽出した負荷区間にて、特徴量を算出し、モデルデータベースを用いて異常か否かを推定して良い。
尚、所定数と所定時間は、例えば、情報処理装置100を使用する医療従事者等によって任意に設定されて良い。
図32は、第二の実施形態の推定結果情報の出力例を示す図である。図32に示す画面221Aには、推定結果情報として、異常歩行推定処理部130による推定の根拠となる処理の結果を示す情報222Aと、推定結果を示す情報223と、が表示される。
また、画面221Aには、歩行中のセンサ情報が不足していることを示す通知224が表示される。
本実施形態の情報222Aには、対象者Pの歩行の状態の推定結果として、抽出された歩行区間の数、負荷区間の数、ふらつきの有無、マハラノビス距離(Dp,Dc)に加え、歩行時間を示す情報225が含まれる。
このように、本実施形態では、歩行中のセンサ情報が不足していることを示す通知224を推定結果情報と共に表示させることで、例えば、医療従事者等や対象者Pに対し、さらなる歩行中のセンサ情報の取得を促すことができる。また、本実施形態によれば、推定結果情報と共に、通知224を表示させるとで、推定結果情報の信頼性を医療従事者等に把握させることができる。
(第三の実施形態)
以下に図面をして、第三の実施形態について説明する。第三の実施形態では、端末装置がセンサ情報210、310を取得し、端末装置から情報処理装置へセンサ情報210、310を送信する点が、第一の実施形態と相違する。よって、以下の第三の実施形態の発明では、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
図33は、第三の実施形態の情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。本実施形態の情報処理システム400Aは、情報処理装置100Aと、センサ200、300と、端末装置500と、を有する。
本実施形態の情報処理システム400Aでは、情報処理装置100Aと、端末装置500とが、ネットワークを介して接続される。また、本実施形態の情報処理システム400Aでは、端末装置500と、センサ200、300とが、無線通信等により接続される。尚、端末装置500とセンサ200、300とは、有線によって接続されても良い。
本実施形態の情報処理装置100Aは、負荷臨界点データベース110と、モデルデータベース120と、異常歩行推定処理部130Bと、を有する。
本実施形態の異常歩行推定処理部130Bは、センサ情報取得部131が端末装置500からセンサ情報210、310を取得する点のみ、第一の実施形態の異常歩行推定処理部130と異なる。
本実施形態の端末装置500は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等であっても良いし、メモリ装置と通信機能を有する通信装置であっても良い。
本実施形態の端末装置500は、センサ情報取得部510を有し、端末装置500と接続されたセンサ200の記憶部220と、センサ300の記憶部320のそれぞれに記憶されたセンサ情報210、310を取得する。
本実施形態では、端末装置500がセンサ情報210、310を取得すると、情報処理装置100Aへ送信する。情報処理装置100Aは、異常歩行推定処理部130Bにより、センサ情報210、310を受信し、対象者Pの歩行の状態の推定を行う。
また、本実施形態の異常歩行推定処理部130Bは、推定結果出力部139により、推定結果情報を端末装置500に送信する。
端末装置500は、推定結果情報を受信すると、この推定結果情報をディスプレイ等に表示させる。
このように、本実施形態では、端末装置500からセンサ情報210、310を情報処理装置100Aに送信するため、例えは、情報処理装置100Aがウェブ上に設けられたサーバ等である場合にも、適用することができる。
尚、本実施形態では、異常歩行推定処理部130Bが、センサ情報から歩行区間を特定するものとしているが、これに限定されない。例えば、本実施形態では、端末装置500において、対象者の歩行区間を特定し、異常歩行推定処理部130Bは、歩行区間が特定された状態のセンサ情報を受け取っても良い。その場合、異常歩行推定処理部130Bは、負荷区間抽出部133の処理から開始すれば良い。
さらに、本実施形態では、歩行区間が特定されていれば、センサ情報210のみ受信すれば、上体特徴量算出部151と関係性算出部153により算出された上半身特徴量のみによって、異常歩行推定部136による歩行状態の推定も可能となる。また、歩行区間が特定されていない場合には、腰に装着されたセンサを用いて歩行区間を特定することができる。
本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。