実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。図2は、図1の観測体に設けられた受波センサアレイと、受波センサアレイによる観測対象である目標体との位置関係を示す観測系および運動系の幾何学的説明図である。図3は、図1の表示部でのBTR表示の一例を示す説明図である。図4は、図1の表示部でのBTR表示において、時刻および方位を指定する様子を例示した説明図である。図5は、図1の表示部でのLOFAR表示の一例を示す説明図である。図6は、図1の表示部でのLOFAR表示において、周波数を指定する様子を例示した説明図である。図1〜図6を参照して、本実施の形態1の目標運動解析システム100の構成を説明する。
図1に示すように、目標運動解析システム100は、観測体10と、目標運動解析装置20と、表示処理装置90と、を有している。観測体10は、移動可能に構成されており、受波センサアレイ(受波器アレイ)10aが設けられている。受波センサアレイ10aは、移動する目標体500から放射される目標信号を含む受波信号を逐次受信し、受波信号を目標運動解析装置20へ出力する。ここで、目標体500から放射される目標信号は、音響信号又は電磁波信号であり、目標体500の位置および速度などの状態が現れる。
表示処理装置90は、表示部91と、操作部92と、制御部93と、記憶部94と、を有している。表示処理装置90としては、デスクトップ型PC(Personal Computer)、ノートPC、又はタブレットPCなどを用いることができる。
表示部91は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、種々のデータを表示する。例えば、表示部91は、BTR(Bearing Time Recording)表示、およびLOFAR(Low Frequency Analysis Recorder)表示を行うことができる。BTR表示は、横軸を方位とし、縦軸を時刻として、信号強度を濃淡で示すものである。よって、BTR表示には、方位毎の信号強度の経時変化が表れる。BTR表示では、表示される色が濃いほど、信号の強度が大きいことを示す。LOFAR表示は、横軸を周波数とし、縦軸を時刻として、信号強度を濃淡で示すものである。よって、LOFAR表示には、周波数毎の信号強度の経時変化が表れる。
操作部92は、操作員などのユーザによる入力操作を受け付ける。操作部92は、例えば、後述する時刻カーソルTおよび方位カーソルDを移動させて複数組の時刻および方位を指定する操作を受け付ける。操作部92は、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、複数の物理ボタンを含むキーボードなどにより構成される。例えば、操作部92は、BTR表示上で時刻および方位を指定する操作、およびLOFAR表示上で周波数を指定する操作を受け付ける。
制御部93は、目標運動解析装置20から出力される制御信号に基づき、表示部91にBTR表示およびLOFAR表示などを行わせる。制御部93は、操作部92への入力操作の内容に応じた情報を目標運動解析装置20へ出力する。制御部93は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させるソフトウェアとによって構成することができる。
記憶部94には、制御部93によって種々のデータが記憶される。また、記憶部94には、制御部93を目標運動解析装置20と連携して動作させるための制御プログラムが予めインストールされている。記憶部94は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)等により構成することができる。
ところで、操作部92は、ユーザによってタッチされた位置を検出し、検出した位置の情報を制御部93へ出力するタッチパネルであってもよい。この場合、表示部91と操作部92とは、積層されて一体的に形成される。もっとも、表示処理装置90は、タッチパネルと共に、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスを有していてもよい。この場合、タッチパネルおよびポインティングデバイスが操作部92として機能する。
ここで、図2を参照して、観測体10および目標体500のそれぞれの位置および速度について定義する。図2において、(X,Y)は原点oの固定座標系であり、この固定座標系に観測体10と目標体500とが存在するものとする。時刻tにおける観測体10の位置を示す観測体位置ベクトルxO(t)は下記の式(1)のように表され、時刻tにおける観測体10の速度を示す観測体速度ベクトルvO(t)は下記の式(2)のように表される。時刻tにおける目標体500の位置を示す目標体位置ベクトルxT(t)は下記の式(3)のように表され、時刻tにおける目標体500の速度を示す目標体速度ベクトルvTは下記の式(4)のように表される。方位角θ(t)は、時刻tにおけるY軸を基準とした観測体10に対する目標体500の方位を示す。なお、式(1)〜式(4)では、ベクトルを表す記号として矢印を用いている。後述する各数式においても同様である。
目標体500の運動解析の基準とする時刻を「tr」としたとき、目標運動解析装置20による目標運動解析方法の原理は以下の通りである。すなわち、時刻trにおける目標体500の位置のx座標をxT(tr)、y座標をyT(tr)とし、目標体500の速度のx成分をvxT、y成分をvyTとする。そして、時刻trにおける目標体500の位置および速度を示す位置速度ベクトルXT(tr)を、下記の式(5)で表す。ここで、Tはベクトルの転置を表す記号である。
すると、時刻tkにおける目標体500の位置速度ベクトルXT(tk)は、位置速度ベクトルXT(tr)を用いて下記の式(6)で表される。
一方、時刻tkにおける観測体10の位置のx座標xO(tk)およびy座標yO(tk)と、観測体10の速度のx成分vxO(tk)およびy成分vyO(tk)とは、既知であるものとする。
時刻tkにおいて、観測体10から見た目標体500の方位θ(tk)は、下記の式(7)で表される。
また、目標体500から放射される目標信号の周波数である固有周波数をf0とした場合に、時刻tkにおいて、観測体10で受信されるドップラ周波数ν(tk)は、下記の式(8)で表される。ここで、cは信号の伝搬速度である。
図1に示すように、目標運動解析装置20は、整相処理部30と、方位データ算出部41と、周波数分析部42と、方位指定処理部51と、周波数指定処理部52と、目標諸元計算部80と、記憶部26と、を有している。また、目標運動解析装置20は、信号入力端子21と、表示出力端子22と、指定入力端子23と、観測体情報入力端子24と、目標諸元出力端子25と、を有している。
信号入力端子21は、受波センサアレイ10aから出力される受波信号が入力される端子である。受波センサアレイ10aで受信される受波信号は、信号入力端子21を介して整相処理部30に送られる。表示出力端子22は、方位指定処理部51および周波数指定処理部52から表示処理装置90に出力されるデータを中継する端子である。
指定入力端子23は、操作部92への入力操作の内容に応じた情報を入力し、方位指定処理部51、周波数指定処理部52、又は目標諸元計算部80に受け渡す端子である。例えば、操作部92において、音源である目標体500の固有周波数f0が指定されると、制御部93は、指定された固有周波数f0の情報を、指定入力端子23を介して目標諸元計算部80に出力する。
観測体情報入力端子24は、例えば、観測体10を監視するGPS装置又は慣性航法装置などから、各時刻Ti(i=1,…)の観測体10の位置および速度(針路および速力)の情報を入力する端子である。目標諸元出力端子25は、目標諸元計算部80によって求められた目標諸元の計算結果を外部の機器等に出力する端子である。
整相処理部30は、受波信号に対して整相を行うものである。すなわち、整相処理部30は、時刻tkにおいて、信号入力端子21を介して取得する受波信号に対し、n=1〜NのN方位のビームを形成するように整相する。そして、整相処理部30は、整相処理の結果である整相データSθ(k,n)(n=1〜N)を、方位データ算出部41、周波数分析部42、および方位指定処理部51に送出する。
方位データ算出部41は、整相処理部30から送出される整相データSθ(k,n)から目標信号を検出し、目標体500の方位の情報を算出する。より具体的に、方位データ算出部41は、整相データSθ(k,n)のエネルギーのピークを検出し、検出したピークビームから目標体500の方位を示す方位データを算出する。ここで、方位データ算出部41による算出結果である方位データを目標方位の観測値θm(tk)とする。方位データ算出部41は、算出した目標方位の観測値θm(tk)を周波数分析部42に送出する。
周波数分析部42は、整相処理部30から送出される整相データSθ(k,n)の周波数分析を行う。つまり、周波数分析部42は、方位データ算出部41から方位データを取得し、方位データの方位方向の整相データSθ(k,n)を周波数分析して分析データSf(k,l)(l=1〜L)を生成する。本実施の形態1において、周波数分析部42は、θm(tk)方向の整相データSθ(k,n)を用いて1=1〜LのLビンに周波数分析し、周波数分析の結果である分析データSf(k,l)を周波数指定処理部52に送出する。
方位指定処理部51は、整相処理部30から送出される整相データSθ(k,n)に基づくBTR表示、すなわち図3に示すような時刻および方位ごとの信号強度の濃淡表示を表示部91に行わせる。また、方位指定処理部51は、表示部91のBTR表示を通じて時刻および方位を指定する操作を受け付ける。
すなわち、方位指定処理部51は、整相データSθ(k,n)を表示部91にBTR表示する際、BTR表示上において時刻および方位を指定できるよう、制御部93との連携制御を行う。本実施の形態1において、方位指定処理部51は、図4に示すように、時刻指定用の時刻カーソルTと、方位指定用の方位カーソルDとを、表示部91のBTR表示上に表示させる。そして、方位指定処理部51は、ユーザに対し、2組の時刻および方位の指定を要求する。
ユーザは、BTR表示上で任意の2時刻について、図4に示すように、信号強度の大きい方位に各カーソルを合わせて時刻および方位を指定する。つまり、ユーザは、時刻カーソルTと方位カーソルDとが、信号強度の大きい箇所、つまり表示される色が濃い箇所で交差するように、時刻カーソルTおよび方位カーソルDの位置を調整する。そして、ユーザは、操作部92を操作し、2組の時刻および方位を指定する。
方位指定処理部51は、操作部92を介して2組の時刻および方位の指定を受け付けると、受け付けた2組の時刻および方位の情報を目標諸元計算部80に送出する。ここで、ユーザにより指定された2時刻は時刻T1および時刻T2であり、この2時刻に対応する2組の時刻および方位の情報を{T1,θm(T1)}および{T2,θm(T2)}とする。
周波数指定処理部52は、周波数分析部42から送出される分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示、すなわち図5に示すような時刻および周波数ごとの信号強度の濃淡表示を表示部91に行わせる。また、周波数指定処理部52は、表示部91のLOFAR表示を通じて周波数を指定する操作を受け付ける。そして、周波数指定処理部52は、LOFAR表示を通じて指定され、BTR表示上で指定された各時刻のそれぞれに対応する周波数の情報を取得する。
すなわち、周波数指定処理部52は、分析データSf(k,l)を表示部91にLOFAR表示する際、LOFAR表示上において、BTR表示上で指定された各時刻に対応づけて周波数を指定できるよう、制御部93との連携制御を行う。本実施の形態1において、周波数指定処理部52は、図6に示すように、BTR表示上で方位と共に指定された時刻を示す時刻カーソルTと、周波数指定用の周波数カーソルFと、をLOFAR表示上に表示させる。そして、周波数指定処理部52は、ユーザに対し、2時刻のそれぞれに対応する周波数の指定を要求する。
ユーザは、時刻T1および時刻T2について、図6に示すように、LOFAR表示上で、信号強度の大きい周波数に周波数カーソルFを合わせて、目標信号の周波数を指定する。より具体的に、ユーザは、信号強度の大きい箇所、つまり表示される色が濃い箇所と、時刻カーソルTとが交差する位置に、周波数カーソルFを合わせる。そして、ユーザは、操作部92を操作し、時刻T1および時刻T2のそれぞれに対応する周波数を指定する。
周波数指定処理部52は、操作部92を介して2組の周波数の指定を受け付けると、受け付けた2組の時刻および周波数の情報を目標諸元計算部80に送出する。ここで、ユーザにより指定された2組の時刻および周波数の情報を{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}とする。2組の時刻および周波数の情報は、目標体500の状態を示す目標状態情報に相当する。
目標諸元計算部80は、BTR表示を通じて指定された複数組の時刻および方位を用いて目標体500の時刻T1における位置および速度を示す位置速度ベクトルXT(T1)を求める。つまり、目標諸元計算部80は、入力された各時刻Ti(i=1,…)に対応する方位の情報および周波数の情報を用いて、目標体500の時刻T1における速度および位置を計算する。
より具体的に、目標諸元計算部80は、観測体情報入力端子24を介して、時刻T1における、観測体10の位置のx座標xO(T1)およびy座標をyO(T1)と、観測体10の速度のx成分vxO(T1)およびy成分vyO(T1)と、を取得する。目標諸元計算部80は、観測体情報入力端子24を介して、時刻T2における観測体10の位置のx座標xO(T2)およびy座標yO(T2)と、時刻T2における観測体10の速度のx成分vxO(T2)およびy成分vyO(T2)と、を取得する。目標諸元計算部80は、指定入力端子23を介して、目標体500の固有周波数f0を取得する。目標諸元計算部80は、方位指定処理部51から2組の時刻および方位の情報である{T1,θm(T1)}および{T2,θm(T2)}を取得する。目標諸元計算部80は、周波数指定処理部52から、2組の時刻および周波数の情報である{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}を目標状態情報として取得する。
そして、目標諸元計算部80は、取得した上記の各情報をもとに、式(7)および式(8)の関係を用い、下記の式(9)で表される連立方程式を解いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。また、目標諸元計算部80は、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部の機器等に出力する。外部の機器等は、位置速度ベクトルXT(T1)をもとに、目標体500の位置、針路、および速力、ならびにそれらの変化を把握することができる。
ここで、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を、下記の式(10)で定義する。
記憶部26には、目標運動解析装置20に上記の各機能を実現させるための動作プログラムが格納されている。また、記憶部26は、目標運動解析装置20の各構成部材が種々の情報を記憶し、演算を行う領域として利用される。ところで、目標運動解析装置20は、マイコンなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各機能を実現させるソフトウェアとによって構成することができる。もっとも、目標運動解析装置20は、上記の各機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアにより構成してもよい。
図7は、図1の目標運動解析装置の動作を例示したフローチャートである。図7を参照して、本実施の形態1における目標運動解析方法について説明する。
整相処理部30は、信号入力端子21を介して受波信号を取得する(ステップS101)。そして、整相処理部30は、取得した受波信号に対して整相処理を施し、整相処理の結果である整相データSθ(k,n)を、方位データ算出部41、周波数分析部42、および方位指定処理部51に送出する(ステップS102)。
方位データ算出部41は、整相処理部30から送出された整相データSθ(k,n)から目標信号を検出し、方位データとしての目標方位の観測値θm(tk)を求める。そして、方位データ算出部41は、求めた目標方位の観測値θm(tk)を周波数分析部42に送出する(ステップS103)。
周波数分析部42は、整相処理部30から送出された整相データSθ(k,n)の周波数分析を行うことにより、分析データSf(k,l)を求め、求めた分析データSf(k,l)を周波数指定処理部52に送出する(ステップS104)。
方位指定処理部51は、表示部91に、整相処理部30から送出された整相データSθ(k,n)に基づくBTR表示を行わせる(ステップS105)。そして、方位指定処理部51は、2組の時刻および方位が指定されるまで待機する(ステップS106/No)。このとき、方位指定処理部51は、ユーザの操作に応じて、図4に示すように、表示部91のBTR表示上に時刻カーソルTと方位カーソルDとを表示させる。そして、方位指定処理部51は、ユーザによるマウスの操作などに応じて、時刻カーソルTと方位カーソルDとを移動させる。
方位指定処理部51は、ユーザによるキーボードの操作などにより、2組の時刻および方位が指定されると(ステップS106/Yes)、指定された2組の時刻および方位の情報を目標諸元計算部80に送出する(ステップS107)。
周波数指定処理部52は、表示部91に、周波数分析部42から送出された分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示を行わせる(ステップS108)。そして、周波数指定処理部52は、2時刻のそれぞれに対応する周波数が指定されるまで待機する(ステップS109/No)。このとき、周波数指定処理部52は、ユーザの操作に応じて、図6に示すように、表示部91のLOFAR表示上に、固定の時刻カーソルTと、移動可能な周波数カーソルFとを表示させる。LOFAR表示上に表示させる時刻カーソルTは「固定時刻カーソル」に相当する。そして、周波数指定処理部52は、ユーザによるマウスの操作などに応じて周波数カーソルFを移動させる。
周波数指定処理部52は、ユーザによるキーボードの操作などにより、2つの周波数が指定されると(ステップS109/Yes)、2組の時刻および周波数の情報を目標諸元計算部80に送出する(ステップS110)。
目標諸元計算部80は、指定入力端子23および観測体情報入力端子24を介して取得した各データと、ユーザにより指定された2時刻に対応する方位の情報および周波数の情報とを用いて、式(9)により、位置速度ベクトルXT(T1)を求める。そして、目標諸元計算部80は、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力する(ステップS111)。なお、ステップS103およびS104の処理と、ステップS105〜S107の処理とは、並行して行うことができる。
以上のように、本実施の形態1では、整相データSθ(k,n)に基づくBTR表示を通じて指定された複数組の時刻および方位を用いて位置速度ベクトルを求める。よって、目標運動解析装置が位置速度ベクトルXT(T1)を求める際に用いるデータに、誤差の大きなデータが混入することを抑制できるため、目標体500の位置および速度の推定誤差を小さくすることができる。
また、目標運動解析装置20は、分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示を表示部91に行わせる周波数指定処理部52を有し、目標諸元計算部80は、LOFAR表示を通じて指定された周波数を用いて位置速度ベクトルXT(T1)を求める。よって、周波数分析の結果からのピーク検出による誤差の混入を防ぐことができるため、位置速度ベクトルXT(T1)の演算を精度よく行うことができる。
さらに、方位指定処理部51は、表示部91のBTR表示上に、時刻カーソルTと方位カーソルDとを表示させる。そして、操作部92は、時刻カーソルTおよび方位カーソルDを移動させて、複数組の時刻および方位を指定する操作を受け付ける。よって、ユーザは、BTR表示上での複数組の時刻および方位の指定を容易に行うことができる。また、周波数指定処理部52は、LOFAR表示上に、BTR表示を通じて指定された各時刻に対応する時刻カーソルTと、周波数カーソルFと、を表示させる。そして、操作部92は、周波数カーソルFを移動させて、BTR表示を通じて指定された各時刻のそれぞれに対応する周波数を指定する操作を受け付ける。よって、ユーザは、LOFAR表示上での周波数の指定を容易に行うことができる。
もっとも、方位指定処理部51は、表示部91のBTR表示上に、時刻カーソルTおよび方位カーソルDを表示させなくてもよい。例えば、表示部91のBTR表示上で複数の点を指定できるようにし、方位指定処理部51は、ユーザにより指定されたBTR表示上の点の位置から、時刻および方位の情報を抽出するようにしてもよい。同様に、周波数指定処理部52は、ユーザにより指定されたLOFAR表示上の点の位置から、時刻および周波数の情報を抽出するようにしてもよい。
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施の形態2の目標運動解析システム100Aを構成する目標運動解析装置20Aは、代替情報指定処理部60を有する点で、実施の形態1の目標運動解析装置20とは異なる。前述した実施の形態1と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
本実施の形態2において、操作部92は、目標針路CT、目標速力VT、目標距離{T1,R(T1)}、および目標距離{T2,R(T2)}を指定する操作を受け付ける。すなわち、ユーザは、事前情報又は自身の推定に基づいて操作部92を操作し、目標針路CT、目標速力VT、時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}、および時刻T2の目標距離{T2,R(T2)}を指定する。
ここで、目標針路CTは、目標体500の針路である。目標速力VTは、目標体500の速力である。目標距離{T1,R(T1)}は、時刻T1における観測体10から目標体500までの距離である。目標距離{T2,R(T2)}は、時刻T2における観測体10から目標体500までの距離である。以降では、目標針路CT、目標速力VT、目標距離{T1,R(T1)}、および目標距離{T2,R(T2)}を代替情報ともいう。本実施の形態2において、代替情報は、2組の時刻および周波数の情報である{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}と共に、目標体500の状態を示す目標状態情報を構成する。制御部93は、操作部92を介して指定された代替情報を代替情報指定処理部60へ出力する。
代替情報指定処理部60は、制御部93を介して表示部91に、代替情報の入力を要求する画面などを表示させ、ユーザに代替情報の入力を要求する。そして、代替情報指定処理部60は、ユーザによる操作部92の操作に応じて制御部93から出力される代替情報を目標諸元計算部80Aに送出する。
目標諸元計算部80Aは、代替情報指定処理部60から代替情報を取得する。また、目標諸元計算部80Aは、目標諸元計算部80と同様、xO(T1)、yO(T1)、vxO(T1)、vyO(T1)、xO(T2)、yO(T2)、vxO(T2)、vyO(T2)、および目標体500の固有周波数f0を取得する。目標諸元計算部80Aは、方位指定処理部51から2組の時刻および方位の情報を取得し、周波数指定処理部52から、2組の時刻および周波数の情報を取得する。
そして、目標諸元計算部80Aは、取得した上記の各情報をもとに、式(7)および式(8)の関係を用い、式(9)および下記の式(11)〜式(15)のうちの何れかで表される連立方程式を解いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。また、目標諸元計算部80Aは、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力する。
目標諸元計算部80Aは、周波数指定処理部52から取得する{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}と、代替情報指定処理部60から取得する目標針路CT、目標速力VT、目標距離{T1,R(T1)}、および目標距離{T2,R(T2)}のうちから、何れか2つの情報のみを選択して位置速度ベクトルXT(T1)の演算に用いる。
例えば、LOFAR表示で目標信号の周波数を確認することができ、かつ固有周波数f0が既知であるような場合は、{T1,Nm(T1)}と{T2,Nm(T2)}とを指定すればよい。一方、LOFAR表示で周波数情報が得られないような場合は、代替情報の中から、何れか2つの情報を指定すればよい。ここで、LOFAR表示で周波数情報が得られないような場合としては、目標体500が放射する目標信号が広帯域信号である場合、又は受波信号のS/N比が極めて小さい場合などが考えられる。
目標諸元計算部80Aによる情報の選択については、ユーザが代替情報を入力する際に、操作部92を介して目標諸元計算部80Aに選択する2つの情報を指示するようにしてもよい。もっとも、ユーザは、実施の形態1と同様、目標状態情報として、2組の時刻および周波数の情報を用いる場合、代替情報の入力を省略することができる。加えて、ユーザは、代替情報のうちの3つ以下の情報を入力し、残りの情報の入力を省略することもできる。また、目標諸元計算部80Aによる情報の選択については、目標状態情報としての6つの情報に予め優先順位を設定しておいてもよい。この場合、目標諸元計算部80Aが、優先順位をもとに2つの情報を選択するとよい。
より具体的に、指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,Nm(T1)}、および{T2,Nm(T2)}である場合を考える。この場合、目標諸元計算部80Aは、実施の形態1と同様、式(9)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,Nm(T1)}、および{T1,R(T1)}の場合、目標諸元計算部80Aは、式(11)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,Nm(T1)}、およびCTの場合、目標諸元計算部80Aは、式(12)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,Nm(T1)}、およびVTの場合も、目標諸元計算部80Aは、式(12)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,R(T1)}、およびCTの場合、目標諸元計算部80Aは、式(13)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,R(T1)}、およびVTの場合も、目標諸元計算部80Aは、式(13)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T1,R(T1)}、および{T2,R(T2)}の場合、目標諸元計算部80Aは、式(14)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
指定された情報が{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、CT、およびVTの場合、目標諸元計算部80Aは、式(15)により、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
ここで、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)は、実施の形態1と同様、上述した式(10)で定義する。なお、指定された情報に周波数の情報、つまり{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}のうちの少なくとも1つが含まれる場合は、固有周波数f0の指定が必須である。一方、指定された情報に周波数の情報が含まれない場合は、固有周波数f0の指定を省略することができる。
ところで、上記の説明では、目標諸元計算部80Aが、目標状態情報としての6つの情報の中から2つの情報を選択する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、代替情報指定処理部60が、代替情報の中から予め設定された1つ又は2つの情報を目標諸元計算部80Aの送出するようにしてもよい。
また、上記の説明では、代替情報指定処理部60が代替情報のうちの全ての情報の入力を要求する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、代替情報指定処理部60は、事前の設定内容に応じて、代替情報のうちの少なくとも1つの入力を要求するようにしてもよい。
図9は、図8の目標運動解析装置の動作を例示したフローチャートである。図9を参照して、本実施の形態2における目標運動解析方法について説明する。図7と同様の工程については同一の番号を用いて説明は省略する。
目標運動解析装置20Aは、ステップS101〜S110の処理を図7の場合と同様に実行する。また、代替情報指定処理部60は、表示部91を介して、ユーザに代替情報の入力を要求する(ステップS201)。そして、代替情報指定処理部60は、ユーザの入力操作に応じて表示処理装置90から出力される代替情報を取得し、目標諸元計算部80Aに送出する(ステップS202)。なお、ステップS103、S104、およびS108〜S110の処理と、ステップS105〜S107の処理と、ステップS201およびS202の処理とは、並行して行うことができる。
目標諸元計算部80Aは、目標状態情報としての6つの情報の中から2つの情報を選択する。そして、選択した2つの情報に対応する式(9)および式(11)〜式(15)のうちの何れか1つを用いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。そして、目標諸元計算部80Aは、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力する(ステップS203)。
以上のように、本実施の形態2によっても、前述した実施の形態1と同様、演算用のデータに誤差の大きなデータが混入することを抑制できるため、目標体500の位置および速度の推定誤差を小さくすることができる。また、目標諸元計算部80Aは、ユーザに代替情報の指定を促す代替情報指定処理部60を有している。したがって、ユーザは、目標針路、目標速力、および目標距離の少なくとも1つを想定できるような場合に情報入力を行うことができる。そして、目標運動解析装置20Aは、代替情報のうちの少なくとも1つを使用することができる。したがって、LOFAR表示で目標信号の周波数が確認できないような場合でも、目標体500の運動諸元を示す位置速度ベクトルXT(T1)を精度よく算出することができる。他の効果については、実施の形態1と同様である。
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3に係る目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態3の目標運動解析システム100Bを構成する目標運動解析装置20Bは、図10に示すように、実施の形態2の目標運動解析装置20Aとは異なり、方位データ算出部41の代わりに目標方位予測部71を有している。上述した実施の形態1および2と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
本実施の形態3の整相処理部30は、整相データSθ(k,n)(n=1〜N)を、周波数分析部42Bおよび方位指定処理部51に送出する。目標諸元計算部80Bは、実施の形態2の目標諸元計算部80Aと同様に位置速度ベクトルXT(T1)を求め、目標諸元出力端子25を介して外部に出力すると共に、目標方位予測部71に送出する。
目標方位予測部71は、目標諸元計算部80Bにおいて求められた位置速度ベクトルXT(T1)と、観測体10の位置および速度の情報とを用いた予測演算により、目標体500の方位を示す方位データを求める。目標方位予測部71は、目標諸元計算部80Bから送出される位置速度ベクトルXT(T1)から、BTR表示およびLOFAR表示を行っている全時刻tk(k=1〜K)の目標方位を予測する。
より具体的に、目標方位予測部71は、目標諸元計算部80Bから位置速度ベクトルXT(T1)を取得する。また、目標方位予測部71は、観測体情報入力端子24を介して、各時刻tk(k=1〜K)における、観測体10の位置のx座標xO(tk)およびy座標をyO(tk)と、観測体10の速度のx成分vxO(tk)およびy成分vyO(t1)と、を取得する。そして、目標方位予測部71は、取得した各データを用いて、下記の式(16)により、各時刻tkのそれぞれの予測目標方位θp(tk)を求める。そして、目標方位予測部71は、経時的なデータである予測目標方位θp(tk)を周波数分析部42Bに送出する。
周波数分析部42Bは、目標方位予測部71から送出される予測目標方位θp(tk)を方位データとして取得する。そして、周波数分析部42Bは、θp(tk)方向の整相データSθ(k,n)を用いてl=1〜LのLビンに周波数分析して分析データSf(k,l)を生成し、周波数指定処理部52に送出する。
ここで、目標方位予測部71から周波数分析部42Bに予測目標方位θp(tk)が送られていない場合、周波数分析部42Bは、分析データSf(k,l)(l=1〜L)を求めることができない。すると、周波数指定処理部52は、分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示を行うことができない。よって、この場合、目標諸元計算部80Bは、代替情報である目標針路CT、目標速力VT、目標距離{T1,R(T1)}、および目標距離{T2,R(T2)}のうちの何れか2つを用いて位置速度ベクトルXT(T1)の計算を行う。もっとも、目標方位予測部71から周波数分析部42Bに予測目標方位θp(tk)が送られていない場合、周波数分析部42Bは、予め設定されたデフォルトの予測目標方位θp(tk)を用いるようにしてもよい。
図11は、整相データのピークの検出が一時的に困難な状態にある時刻を含む場合におけるBTR表示およびLOFAR表示の比較例を示す図である。図12は、整相データのピークの検出が一時的に困難な状態にある時刻を含む場合において、図10の表示部に表示されるBTR表示およびLOFAR表示を例示した図である。図11および図12を参照して、本実施の形態3で改善されるポイントについて説明する。
図11に示すように、整相データSθ(k,n)のピークの検出が困難になっている時刻を含む場合、BTR表示で方位が不明瞭となり、かつ、LOFAR表示で信号が不明瞭となる。しかし、本実施の形態3では、目標方位予測部71によって予測目標方位θp(tk)を求めることができる。そのため、周波数指定処理部52は、周波数分析部42Bが生成した分析データSf(k,l)を用いて、図12のような明瞭なLOFAR表示を表示部91に行わせることができる。
図13は、図10の目標運動解析装置の動作を例示したフローチャートである。図13を参照して、本実施の形態3における目標運動解析方法について説明する。図7および図9と同様の工程については同一の番号を用いて説明は省略する。
整相処理部30は、信号入力端子21を介して受波信号を取得し(ステップS101)、取得した受波信号に整相処理を施して整相データSθ(k,n)(n=1〜N)を生成する。そして、整相処理部30は、生成した整相データSθ(k,n)を、周波数分析部42および方位指定処理部51に送出する(ステップS102)。
次いで、周波数分析部42Bは、目標方位予測部71から予測目標方位θp(tk)を方位データとして取得する(ステップS301)。周波数分析部42Bは、予測目標方位θp(tk)を用いて整相データSθ(k,n)の周波数分析を行い、分析データSf(k,l)(l=1〜L)を求める。そして、周波数分析部42Bは、求めた分析データSf(k,l)を周波数指定処理部52に送出する(ステップS302)。また、目標運動解析装置20Bは、ステップS105〜S110、S201〜S203の処理を図9の場合と同様に実行する。
次いで、目標諸元計算部80Bから位置速度ベクトルXT(T1)が送出されると、目標方位予測部71は、位置速度ベクトルXT(T1)などを用い、式(16)により、各時刻tkのそれぞれの予測目標方位θp(tk)を求める。そして、目標方位予測部71は、求めた予測目標方位θp(tk)を周波数分析部42Bへ送出する(ステップS303)。
以上のように、本実施の形態3によっても、上述した実施の形態1および2と同様、演算用のデータに誤差の大きなデータが混入することを抑制できるため、目標体500の位置および速度の推定誤差を小さくすることができる。加えて、本実施の形態3の目標運動解析装置20Bは、本実施の形態3では必要であった方位データ算出部41を設けずに構成することができる。
また、本実施の形態3の目標運動解析システム100Bは、図11に示すように、S/N比が小さく、整相データSθ(k,n)のピークの検出が困難な時刻が含まれるような場合であっても、図12に示すように、予測目標方位θp(tk)を用いてLOFAR表示を作成することができる。すなわち、目標運動解析システム100Bによれば、各表示に対応する時刻に、S/N比が小さい時刻が含まれるような場合であっても、周波数の情報を使用した位置速度ベクトルXT(T1)の算出を行うことができる。
実施の形態4.
図14は、本発明の実施の形態4に係る目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。図15は、図14の表示部において、BTR表示に予測目標方位が表示され、LOFAR表示に予測周波数が表示されている様子を示す図である。本実施の形態4の目標運動解析システム100Cを構成する目標運動解析装置20Cは、図14に示すように、目標方位予測部71Cおよび周波数予測部72を有している点に特徴がある。また、目標運動解析装置20Cは、方位指定処理部51Cと周波数指定処理部52Cとを有している。上述した実施の形態1〜3と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
目標諸元計算部80Cは、実施の形態2の目標諸元計算部80Aと同様に位置速度ベクトルXT(T1)を求める。そして、目標諸元計算部80Cは、位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力すると共に、目標方位予測部71Cおよび周波数予測部72に送出する。
目標方位予測部71Cは、実施の形態3の目標方位予測部71と同様、取得した各データを用いて、式(16)により、各時刻tk(k=1〜K)のそれぞれの予測目標方位θp(tk)を求める。予測目標方位θp(tk)は、目標体500の方位の経時的な予測データである。そして、目標方位予測部71Cは、予測目標方位θp(tk)を方位指定処理部51Cに送出する。
方位指定処理部51Cは、上述した方位指定処理部51と同様、整相処理部30から送出される整相データSθ(k,n)に基づくBTR表示を表示部91に行わせる。また、目標方位予測部71Cから予測目標方位θp(tk)が送られると、方位指定処理部51Cは、図15に示すように、表示部91のBTR表示上に、表示中の全時刻tk(k=1〜K)にわたって予測目標方位θp(tk)を重畳表示する。つまり、方位指定処理部51Cは、予測目標方位θp(tk)の重畳表示として、表示中の全時刻にわたる予測目標方位θp(tk)を示す線と、BTR表示を通じて指定された複数組の時刻に対応する予測目標方位θp(tk)を示す点と、を出力させる。
ここで、図15(a)のように、BTR表示上に重畳表示された予測目標方位θp(tk)を示す線が、信号強度の大きい方位からずれていることを想定する。この場合、ユーザは、予測目標方位θp(tk)を示す線が、BTR表示において信号強度の大きい方位と合致するよう、図15(b)のように、予測目標方位θp(tk)の線の位置を調整することができる。これにより、後述するLOFAR表示上の予測周波数νp(tk)を示す線は、図15(a)のように信号強度の大きい周波数からずれている状態から、図15(b)のように信号強度の大きい周波数と重なる状態に移動する。
図15(a)のように、既に指定されている2時刻に対応する2組の時刻および方位を示す点を点D1、点D2とする。点D1および点D2は、BTR表示を通じて指定された2組の時刻に対応する予測目標方位θp(tk)を示す点に相当し、予測目標方位θp(tk)を示す線の調整用に用いられる。すなわち、ユーザは、例えば操作部92としてのマウスを移動し、表示部91上のカーソルを点D1又は点D2に重ねてマウスをクリックし、その状態でカーソルを移動させることにより、2時刻に対応する2組の時刻および方位のうちの一方の指定を変更する。このようにして、ユーザは、予測目標方位θp(tk)を示す線を移動させる。ここで、点D1には時刻T1が対応し、点D2には時刻T2が対応しているものとする。つまり、本実施の形態4においても、2時刻に対応する2組の時刻および方位の情報を{T1,θm(T1)}および{T2,θm(T2)}とする。
周波数予測部72は、目標諸元計算部80Cから送出される位置速度ベクトルXT(T1)および固有周波数f0などを用いて、目標信号の周波数を予測する。すなわち、周波数予測部72は、目標諸元計算部80Cから位置速度ベクトルXT(T1)が送られると、下記の各データを取得する。つまり、周波数予測部72は、観測体情報入力端子24を介して、各時刻tk(k=1〜K)における、観測体10の位置のx座標xO(tk)およびy座標をyO(tk)と、観測体10の速度のx成分vxO(tk)およびy成分vyO(t1)と、を取得する。また、周波数予測部72は、指定入力端子23を介して、ユーザにより指定された固有周波数f0を取得する。
そして、周波数予測部72は、位置速度ベクトルXT(T1)と共に取得した上記の各データを用いて、下記の式(17)により、各時刻tkのそれぞれの予測周波数νp(tk)を求める。予測周波数νp(tk)は、目標体500から放射される目標信号の周波数の経時的な予測データである。そして、周波数予測部72は、予測周波数νp(tk)を周波数指定処理部52Cに送出する。ここで、cは信号の伝搬速度である。また、θp(tk)は上記の式(16)で得られる予測目標方位である。
周波数指定処理部52Cは、上述した周波数指定処理部52と同様、周波数分析部42から送出される分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示を表示部91に行わせる。また、周波数指定処理部52Cは、周波数予測部72から予測周波数νp(tk)が送られると、図15に示すように、LOFAR表示上に、表示中の全時刻tk(k=1〜K)にわたって予測周波数νp(tk)を重畳表示する。LOFAR表示上の予測周波数νp(tk)を示す線は、BTR表示上の予測目標方位θp(tk)を示す線に連動して動作する。
図16は、図14の目標運動解析装置の動作を例示したフローチャートである。図16を参照して、本実施の形態4における目標運動解析方法について説明する。図7、図9、および図13と同様の工程については同一の番号を用いて説明は省略する。
目標運動解析装置20Cは、図9の場合と同様、ステップS101〜S106の処理を実行する。そして、ユーザによるキーボードの操作などにより、2組の時刻および方位が指定される(ステップS106/Yes)。すると、方位指定処理部51Cは、図15に示すように、表示部91のBTR表示上に、全時刻tk(k=1〜K)にわたって、目標方位予測部71Cから送られた予測目標方位θp(tk)を重畳表示させる。その際、方位指定処理部51Cは、指定された2時刻に対応する2組の時刻および方位を示す点を、図15(a)の点D1、点D2のように表示させる(ステップS401)。また、方位指定処理部51Cは、指定された2組の時刻および方位の情報を目標諸元計算部80Cに送出する(ステップS107)。
周波数指定処理部52Cは、周波数分析部42から送出された分析データSf(k,l)に基づくLOFAR表示を表示部91に行わせる(ステップS108)。また、周波数予測部72から予測周波数νp(tk)が送られると、周波数指定処理部52Cは、図15に示すように、LOFAR表示上に、全時刻tk(k=1〜K)にわたって予測周波数νp(tk)を重畳表示させる(ステップS402)。そして、周波数指定処理部52Cは、指定された2時刻に対応する2組の時刻および周波数の情報を目標諸元計算部80Cに送出する(ステップS110)。
方位指定処理部51Cは、方位の指定が変更されるまで待機する(ステップS403/No)。このとき、ユーザは、操作部92を操作して、既に指定されているBTR表示上の2組の時刻および方位のうちの一方を移動させ、方位の指定を変更する。例えば図15の場合、ユーザは、マウスのカーソルを点D1又は点D2に重ね、マウスをクリックした状態で点D1又は点D2を移動させる。その際、ユーザの操作に応じて、方位指定処理部51Cは、予測目標方位θp(tk)を示す線を移動させ、周波数指定処理部52Cは、予測周波数νp(tk)を示す線を移動させる。
方位指定処理部51Cは、2組の時刻および方位のうちの一方の指定が変更されると(ステップS403/Yes)、変更された時刻および方位の情報と、変更されていない時刻および方位の情報とを、2組の時刻および方位の情報として目標諸元計算部80Cに送出する。例えば図15の場合、ユーザが点D1又は点D2の移動を停止し、マウスをクリックした状態を解除することにより、2組の時刻および方位のうちの一方の指定が変更される。もっとも、時刻および方位の指定変更は、マウスをクリックした状態を解除する操作に限定されない。例えば、方位指定処理部51Cは、ユーザがマウスをクリックした状態を解除した後、移動させた点D1又は点D2上で再度マウスをクリックする等の操作を別途行ったときに、時刻および方位の指定変更を受け付けるようにしてもよい(ステップS404)。周波数指定処理部52Cは、方位が変更された時刻に対応する時刻および周波数の情報と、方位が変更されていない時刻に対応する時刻および周波数の情報とを、2組の時刻および周波数の情報として目標諸元計算部80Cに送出する(ステップS405)。
目標運動解析装置20Cは、図9の場合と同様に、ステップS201〜S203の処理を実行する。すなわち、目標諸元計算部80Cは、方位指定処理部51Cから送出される2組の時刻および方位の情報(ステップS107又はS404)、および周波数指定処理部52Cから送出される2組の時刻および周波数の情報(ステップS110又はS405)などを用いて、位置速度ベクトルXT(T1)を求める。
目標方位予測部71Cは、目標諸元計算部80Cから送出される位置速度ベクトルXT(T1)などを用い、式(16)により、各時刻tkのそれぞれの予測目標方位θp(tk)を求める。そして、目標方位予測部71は、求めた予測目標方位θp(tk)を方位指定処理部51Cへ送出する(ステップS406)。
また、周波数予測部72は、目標諸元計算部80Cから送出される位置速度ベクトルXT(T1)および固有周波数f0などを用いて、式(17)により、各時刻tkのそれぞれの予測周波数νp(tk)を求める。そして、周波数予測部72は、求めた予測周波数νp(tk)を周波数指定処理部52Cへ送出する(ステップS407)。
以上のように、本実施の形態4によっても、上述した実施の形態1〜3と同様、演算用のデータに誤差の大きなデータが混入することを抑制できるため、目標体500の位置および速度の推定誤差を小さくすることができる。加えて、本実施の形態4の目標運動解析装置20Cは、実施の形態2では必要であった方位データ算出部41を設けずに構成することができる。
また、目標運動解析装置20Cは、計算した位置速度ベクトルXT(T1)を用いて予測目標方位θp(tk)を求め、求めた予測目標方位θp(tk)をBTR表示に重畳表示する。さらに、目標運動解析装置20Cは、計算した位置速度ベクトルXT(T1)を用いて予測周波数νp(tk)を求め、計算した予測周波数νp(tk)をLOFAR表示に重畳表示する。よって、ユーザは、信号強度の大きい方位に対する予測目標方位θp(tk)の位置、又は信号強度の大きい方位に対する予測周波数νp(tk)の位置を視認することにより、目標運動諸元としての位置速度ベクトルXT(T1)の良否の判断を容易に行うことができる。そして、ユーザは、図15に示すように、予測目標方位θp(tk)を示す線がBTR表示の信号強度が大きい方位と合致するように調整することにより、方位、周波数、目標距離、針路、速力の指定値を調整することができる。よって、理想的なデータをフィードバックさせることができるため、位置速度ベクトルXT(T1)の算出精度を向上させることができる。
ここで、上記の説明では、BTR表示上の予測目標方位θp(tk)を示す線を移動させる場合を例示したが、LOFAR表示上の予測周波数νp(tk)を示す線を移動できるようにしてもよい。このようにすれば、LOFAR表示の信号強度が大きい周波数と重なるように、予測周波数νp(tk)を示す線の微調整等を行うことができるため、位置速度ベクトルXT(T1)の算出精度をさらに高めることができる。
ところで、予測目標方位θp(tk)がBTR表示の信号強度が大きい方位と一致し、かつ予測周波数νp(tk)がLOFAR表示の信号強度が大きい周波数と一致している場合は、目標体500の針路および速力に変化はない。一方、予測目標方位θp(tk)および予測周波数νp(tk)が信号強度の大きい位置から外れ始めると、目標体500の針路または速力が変化したことになる。よって、ユーザは、予測目標方位θp(tk)および予測周波数νp(tk)と信号強度の大きい位置との位置関係を監視することにより、目標の針路、速力の変化の兆候を把握することができる。さらに、ユーザは、目標体500の針路、速力の変化の兆候を把握した場合、方位および周波数を指定する2時刻を、目標体500の針路、速力の変化時刻の前のみ、あるいは変化時刻の後のみにすることで、目標体500の針路、速力の変化に追従可能となる。
実施の形態5.
図17は、本発明の実施の形態5に係る目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。図18は、図17の表示部に表示される代替情報指定用の各表示を示す図である。図17に示すように、本実施の形態5の目標運動解析システム100Dを構成する目標運動解析装置20Dは、実施の形態2の目標運動解析装置20Aは異なり、表示用データ算出部61を有している。そして、目標運動解析装置20Dは、代替情報指定処理部60の代わりに、代替情報指定処理部60Dを有している。上述した実施の形態1〜4と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
方位指定処理部51Dは、操作部92を介して2組の時刻および方位の指定を受け付けると、受け付けた2組の時刻および方位の情報を、目標諸元計算部80と共に、表示用データ算出部61へ送出する。方位指定処理部51Dの他の機能は、実施の形態2の方位指定処理部51と同様である。
表示用データ算出部61は、ユーザにより指定された2組の時刻および方位の情報と、観測体情報入力端子24を介して入力される観測体10の位置および速度の情報とを用いて、表示用データを算出する。表示用データとは、目標針路CTと目標速力VTと目標距離R(T1)との関係を示す情報である。
より具体的に、表示用データ算出部61は、2組の時刻および方位の情報である{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}が送られると、観測体情報入力端子24を介して、時刻T1における観測体10の位置および速度の情報を取得する。つまり、表示用データ算出部61は、時刻T1における観測体10の位置のx座標xO(T1)およびy座標をyO(T1)と、時刻T2における観測体10の速度のx成分vxO(T2)およびy成分vyO(T2)と、を取得する。
そして、表示用データ算出部61は、2組の時刻および方位の情報と、時刻T1における観測体10の位置および速度の情報とを用いて、表示用データを求め、代替情報指定処理部60Dへ送出する。ここで、表示用データ算出部61が求める。表示用データは、下記の3つの方法で算出することができる。
(針路−速力指定表示のための目標距離を算出する場合)
図18(a)のような針路−速力指定表示のための表示用データを求める場合、表示用データ算出部61は、複数の目標針路CTを下記の式(18)により求め、複数の目標速力VTを下記の式(20)により求める。式(18)において、ΔCTは予め決めた目標針路間隔であり、Iは下記の式(19)のように定義される。式(20)において、ΔVTは予め決めた目標速力間隔であり、Jは下記の式(21)のように定義される。式(21)のVMAXは予め決めた目標速力VTの最大値である。
表示用データ算出部61は、式(18)〜式(21)により求めた目標針路CT[i]および目標速力VT[j]を用いて上述した式(15)を解き、複数の目標距離R(T1)である目標距離R(T1)[i,j]を求める。そして、表示用データ算出部61は、求めた目標針路CTと目標速力VTと目標距離R(T1)との組{CT[i],VT[j],R(T1)[i,j]}(i=1〜I,j=1〜J)を、表示用データとして代替情報指定処理部60Dへ送出する。
(針路−距離指定表示のための目標速力を算出する場合)
図18(b)のように、針路−距離指定表示のための表示用データを求める場合、表示用データ算出部61は、複数の目標針路CTを式(18)により求め、複数の目標距離R(T1)を下記の式(22)により求める。式(22)において、ΔRは予め決めた目標距離間隔であり、KKは下記の式(23)により定義される。式(23)において、RMAXは予め決めた目標距離の最大値である。
表示用データ算出部61は、式(18)、式(19)、式(22)、および式(23)により求めた目標針路CT[i]および目標距離R(T1)[kk]を用いて上述した式(13)を解き、複数の目標速力VTである目標速力VT[i,kk]を求める。そして、表示用データ算出部61は、求めた目標針路CT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標速力VT[i,kk]との組{CT[i],R(T1)[kk],VT[i,kk]}(i=1〜I,kk=1〜KK)を、表示用データとして代替情報指定処理部60Dへ送出する。
(速力−距離指定表示のための目標針路を算出する場合)
図18(c)および図18(d)のような速力−距離指定表示のための表示用データを求める場合、表示用データ算出部61は、複数の目標速力VTを式(20)により求め、複数の目標距離R(T1)を式(22)により求める。
そして、表示用データ算出部61は、式(20)〜式(23)により求めた目標速力VT[i]および目標距離R(T1)[kk]を用いて式(13)を解き、複数の目標針路CTである目標針路CT[j,kk]を求める。そして、表示用データ算出部61は、求めた目標速力VT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標針路CT[j,kk]との組{VT[i],R(T1)[kk],CT[j,kk]}(j=1〜J,kk=1〜KK)を、表示用データとして代替情報指定処理部60Dへ送出する。
なお、式(13)を解いた場合、目標針路CT[j,kk]として2種類の解が存在する。そのため、一方を近距離の解をCT_near[j,kk]とし、他方を遠距離の解をCT_far[j,kk]として区別する。
代替情報指定処理部60Dは、表示用データ算出部61から送出される表示用データを用いて、図18に示すように、目標針路CT、目標速力VT、および時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}を指定させる指定用画像を表示部91に表示させる。本実施の形態5において、代替情報指定処理部60Dは、指定用画像として、図18(a)のような針路−速力指定画像、図18(b)のような針路−距離指定画像、および図18(c)(d)のような速力−距離指定画像のうちの少なくとも1つを表示部91に表示させる。針路−速力指定画像は、針路軸と速力軸とを持ち、針路−距離指定画像は針路軸と距離軸とを持ち、速力−距離指定画像は速力軸と距離軸とを持つ。
指定用画像では、データが存在し得ない不存在領域と、データが存在し得る存在領域とが区別されている。針路−速力指定画像の存在領域には、目標針路CTと目標速力VTとに対応する目標距離R(T1)の情報が表示される。針路−距離指定画像の存在領域には、目標針路CTと目標距離R(T1)とに対応する目標速力VTの情報が表示される。速力−距離指定画像の存在領域には、目標速力VTと目標距離R(T1)とに対応する目標針路CTの情報が表示される。
より具体的に、代替情報指定処理部60Dは、目標針路CTと目標速力VTと目標距離R(T1)との組を用いて、図18(a)のように、針路−速力指定画像上に等距離線DLを表示する。代替情報指定処理部60Dは、目標針路CT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標速力VT[i,kk]との組を用いて、図18(b)のように、針路−距離指定表示上に等速力線SLを表示する。代替情報指定処理部60Dは、目標速力VT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標針路CT_near[j,kk]との組を用いて、図18(c)のように、針路−距離指定表示(遠距離)上に等針路線CLを表示する。代替情報指定処理部60Dは、目標速力VT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標針路CT_far[j,kk]との組を用いて、図18(d)のように、針路−距離指定表示(遠距離)上に等針路線CLを表示する。
また、代替情報指定処理部60Dは、目標針路CTと目標速力VTと目標距離R(T1)との組で、物理的にとり得ない針路と速力との領域Edに対しては、図18(a)のように、等距離線DLの代わりに灰色表示する等の区別を行う。代替情報指定処理部60Dは、目標針路CT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標速力VT[i,kk]との組で、物理的にとり得ない針路と距離との領域Esに対しては、図18(b)のように、等速力線SLの代わりに灰色表示する等の区別を行う。代替情報指定処理部60Dは、目標速力VT[i]と目標距離R(T1)[kk]と目標針路CT[j,kk]との組で、物理的にとり得ない速力および目標距離の領域Ecに対しては、図18(c)(d)に示すように、等針路線CLの代わりに灰色表示する等の区別を行う。領域Ed、領域Es、および領域Ecは、前述した不存在領域に相当する。
代替情報指定処理部60Dは、ユーザによって指定用画像上の1点である抽出点が指定されると、指定された抽出点の位置に応じた目標針路CT、目標速力VT、時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}を取得する。すなわち、代替情報指定処理部60Dは、指定された抽出点に対応する目標針路CT、目標速力VT、時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}の情報を抽出して、目標諸元計算部80Dへ送出する。
本実施の形態5において、目標針路CT、目標速力VT、時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}の情報は、代替情報に相当する。そして、代替情報は、2組の時刻および周波数の情報である{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}と共に、目標体500の状態を示す目標状態情報を構成する。
目標諸元計算部80Dは、入力された各時刻Ti(i=1,…)の方位および周波数の情報と、代替情報指定処理部62から送られる代替情報とから、位置速度ベクトルXT(T1)を求める。ここで、目標諸元計算部80Dには、2組の時刻および周波数の情報である{T1,Nm(T1)}および{T2,Nm(T2)}と共に、代替情報指定処理部60Dから、代替情報としての目標針路CT、目標速力VT、および時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}が入力される。目標諸元計算部80Dは、実施の形態2の目標諸元計算部80Aと同様、目標状態情報を構成する上記5つの情報の中から、何れか2つの情報のみを選択して位置速度ベクトルXT(T1)の演算に用いる。
すなわち、目標諸元計算部80Dは、観測体情報入力端子24を介して、時刻T1における観測体10の位置のx座標xO(T1)およびy座標をyO(T1)と、時刻T1における観測体10の速度のx成分vxO(T1)およびy成分vyO(T1)と、を取得する。目標諸元計算部80は、観測体情報入力端子24を介して、時刻T2における観測体10の位置のx座標xO(T2)およびy座標yO(T2)と、時刻T2における観測体10の速度のx成分vxO(T2)およびy成分vyO(T2)と、を取得する。目標諸元計算部80Dは、指定入力端子23を介して、目標体500の固有周波数f0を取得する。目標諸元計算部80Dは、方位指定処理部51から2組の時刻および方位の情報である{T1,θm(T1)}および{T2,θm(T2)}を取得する。目標諸元計算部80Dは、目標状態情報を構成する上記5つの情報の中から、何れか2つの情報を選択する。
目標諸元計算部80Dは、取得した上記の各情報をもとに、式(7)および式(8)の関係を用い、式(9)、式(11)〜式(13)、および式(15)のうちの何れかで表される連立方程式を解いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。また、目標諸元計算部80Dは、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力する。ここで、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)は、上記の各実施の形態と同様に式(10)で定義する。なお、指定された情報に周波数の情報が含まれない場合には、固有周波数f0の指定は不要となる。
図19は、図17の目標運動解析装置の動作を例示したフローチャートである。図19を参照して、本実施の形態5における目標運動解析方法について説明する。図7、図9、図13、および図16と同様の工程については同一の番号を用いて説明は省略する。
目標運動解析装置20Dは、ステップS101〜S110の処理を図7の場合と同様に実行する。また、表示用データ算出部61は、2組の時刻および方位の情報と、観測体10の位置および速度の情報とを用いて表示用データを求め、代替情報指定処理部60Dに送出する(ステップS501)。
次いで、代替情報指定処理部60Dは、表示用データ算出部61から取得した表示用データを用いて、図18に示すような指定用画像を表示部91に表示させる(ステップS501)。そして、代替情報指定処理部60Dは、ユーザにより、抽出点が指定されるまで待機する(ステップS503/No)。このとき、ユーザは、代替情報指定処理部60Dによって指定用画像に表示された等距離線DL、等速力線SL、等針路線CLを参考にし、指定用画像上の1点である抽出点を指定する。すなわち、ユーザは、針路−速力指定画像、針路−距離指定画像、および速力−距離指定画像のうちの何れかにおいて抽出点を指定する。
代替情報指定処理部60Dは、ユーザにより抽出点が指定されると(ステップS503/Yes)、指定された抽出点に対応する目標針路CT、目標速力VT、時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}を代替情報として抽出する。そして、代替情報指定処理部60Dは、抽出した代替情報を目標諸元計算部80Dへ送出する(ステップS504)。
目標諸元計算部80Dは、目標状態情報としての5つの情報の中から2つの情報を選択する。そして、選択した2つの情報に対応する式(9)、式(11)〜式(13)、および式(15)のうちの何れか1つを用いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求める。そして、目標諸元計算部80Dは、求めた位置速度ベクトルXT(T1)を、目標諸元出力端子25を介して外部に出力する(ステップS505)。
以上のように、本実施の形態5によっても、上述した実施の形態1〜4と同様、演算用のデータに誤差の大きなデータが混入することを抑制できるため、目標体500の位置および速度の推定誤差を小さくすることができる。また、本実施の形態5では、表示部91に、指定用画像として、針路―速力指定画像、針路−距離指定画像、および速力−距離指定画像を表示させ、これらの画像表示上の1点である抽出点を指定できるようになっている。よって、ユーザは、指定用画像上の1点を指定するという簡易な操作により、目標針路CT、目標速力VT、および時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}を指定することができる。
また、針路−速力指定画像には等距離線DL、針路−距離指定画像には等速力線SL、速力−距離指定画像には等針路線CLを表示するようになっている。よって、ユーザは、等距離線DL、等速力線SL、および等針路線CLを参考にして、目標針路CT、目標速力VT、および時刻T1の目標距離{T1,R(T1)}を指定することができる。そのため、上述した実施の形態1〜4の場合よりも、ユーザによる指定操作が容易となることから、ユーザによる調整作業に要する時間が短縮され、ユーザビリティーの向上を図ることができる。
ここで、従来の構成を参照して、上記各実施の形態の目標運動解析システムおよび目標運動解析方法によって得られる効果を詳細に説明する。まず、従来の目標運動解析方法の原理について説明する。観測体10および目標体500のそれぞれの位置および速度は、図2の場合と同様に定義される。
時刻trにおける目標体500の位置速度ベクトルXT(tr)は、上記の式(5)で表される。よって、時刻tkにおける目標体500の位置速度ベクトルXT(tk)は、位置速度ベクトルXT(tr)を用いて上記の式(6)で表される。そして、時刻tkにおいて、観測体10から見た目標体500の方位θ(tk)は、上記の式(7)で表される。また、目標体500から放射される目標信号の周波数である固有周波数をf0とした場合に、時刻tkにおいて、観測体10で受信されるドップラ周波数ν(tk)は、上記の式(8)で表される。
ただし、実際に観測される方位は真値に観測誤差が加わったものであり、実際に観測される方位θm(tk)およびドップラ周波数νm(tk)は、下記の式(24)および式(25)のように表される。
ここで、nθ(tk)は、時刻tkにおける平均0、分散σθ 2(tk)の方位の観測誤差である。また、nν(tk)は、時刻tkにおける平均0、分散σν 2(tk)のドップラ周波数の観測誤差である。また、時刻tk(k=1〜K)の時系列を用いて目標運動解析を行うものとする。
そして、式(7)、式(8)、式(26)、および式(27)を用いて、下記の式(28)〜式(31)で表されるベクトルを定義する。
ここで、式(26)および式(28)において変数とされ、位置速度ベクトルXT(tr)を含むベクトルを、下記の式(30)のように目標状態量ベクトルと定義する。
すると、基準時刻trにおける目標の位置速度ベクトルXT(tr)および固有周波数f0の推定は、下記の式(31)で定義される式(11)で定義される評価関数Lを最小とする目標状態量ベクトルを求めることになる。
ここで、Σθは下記の式(32)で定義され、Σνは下記の式(33)で定義される。[・]-1は、[・]の逆行列を表す。
上記の式(33)で表される評価関数Lを最小にする目標状態量ベクトルの推定には、逐次処理の拡張カルマンフィルタ、又はバッチ処理のガウス・ニュートン法などが用いられる。
図22は、従来の目標運動解析装置および目標運動解析システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1の目標運動解析システム100と同等の構成については同一の符号を用いて説明は省略する。図22に示すように、目標運動解析システム1000は、観測体10と目標運動解析装置200とにより構成されている。目標運動解析装置200は、信号入力端子21と、整相処理部30と、方位データ算出部410と、周波数分析部42と、周波数情報算出部520と、観測体情報入力端子24と、目標諸元計算部800と、目標諸元出力端子25と、を有している。
整相処理部30は、整相処理の結果である整相データSθ(k,n)を、方位データ算出部41および周波数分析部42に送出する。方位データ算出部410は、整相データSθ(k,n)のエネルギーのピークとなるビームを検出し、検出したビームの方位を示す目標方位の観測値θm(tk)とその誤差分散σθ 2(tk)とを算出する。ここで、目標方位の観測値θm(tk)の誤差分散σθ 2(tk)の算出方法には、目標方位の観測値θm(tk)を一定時間蓄積し、その平均値の周りの分散として算出する方法などがある。方位データ算出部410は、算出した目標方位の観測値θm(tk)および誤差分散σθ 2(tk)を目標諸元計算部800に送出する。また、方位データ算出部410は、算出した目標方位の観測値θm(tk)を周波数分析部42に送出する。
周波数情報算出部520は、周波数分析部42から送出される周波数分析処理の結果から目標信号を検出し、周波数情報を算出する。周波数情報算出部520は、分析データSf(k,l)のエネルギーのピークとなるビンを検出し、検出したビンから周波数を算出し、算出結果を目標信号周波数の観測値νm(tk)およびその誤差分散σf 2(tk)として、目標諸元計算部800に送出する。ここで、目標信号周波数の観測値νm(tk)の誤差分散σf 2(tk)の算出方法には、目標信号周波数の観測値νm(tk)を一定時間蓄積し、その平均値の周りの分散として算出する方法などがある。
目標諸元計算部800には、観測体情報入力端子24を介して、時刻tkにおける観測体10の位置および速度(針路および速力)を示す位置速度データが入力される。位置速度データは、時刻tkにおける、観測体10の位置のx座標xO(tk)およびy座標yo(tk)と、観測体10の速度のx成分vxO(tk)およびy成分vyO(tk)と、により構成される。
目標諸元計算部800は、目標方位の観測値θm(tk)およびその誤差分散σθ 2(tk)と、目標信号周波数の観測値νm(tk)およびその誤差分散σf 2(tk)と、位置速度データとが入力されると、入力された時刻tk(k=1〜K)の各情報を内部メモリなどに蓄積する。そして、目標諸元計算部800は、蓄積した各時刻tk(k=1〜K)の情報を用いて、式(33)の評価関数Lを最小とする基準時刻trにおける目標体500の位置速度ベクトルXT(tr)および固有周波数f0を推定する。そして、推定結果を目標諸元出力端子25を介して外部に出力する。
上記のとおり、従来の目標運動解析方法は、整相処理の結果からピークを検出して目標方位の観測値θm(tk)およびその誤差分散σθ 2(tk)を算出する処理が必要となる。また、従来の目標運動解析方法は、周波数分析の結果からピークを検出して目標信号周波数の観測値νm(tk)およびその誤差分散σf 2(tk)を算出する処理も必要となる。そして、これらのピークの検出は、雑音に埋もれた中で行われるため、特にS/Nが小さい場合は、雑音の影響によって目標方位の観測値θm(tk)および目標信号周波数の観測値νm(tk)の誤差が大きくなる。つまり、従来の目標運動解析方法には、目標諸元の推定に使用される観測値に、誤差の大きな目標方位の観測値θm(tk)および誤差の大きな目標信号周波数の観測値νm(tk)が混入し、目標諸元の推定誤差が大きくなるという課題がある。
この点、実施の形態1の目標運動解析装置20は、方位指定処理部51を有すると共に、周波数情報算出部520ではなく周波数指定処理部52を有している。そして、目標運動解析装置20は、目標諸元計算部80により、式(9)で表される連立方程式を解き、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求めるようになっている。すなわち、実施の形態1の目標運動解析システム100は、周波数分析結果からピークを検出して目標信号周波数の観測値およびその誤差分散を算出する処理が不要となっている。また、整相処理の結果のピーク方位、周波数分析の結果のピーク周波数を検出して計算に使用する代わりに、ユーザがBTR表示上およびLOFAR表示上で目標方位の観測値θm(tk)、目標信号周波数の観測値νm(tk)を指定できるようになっている。したがって、S/Nが小さい場合であっても、誤差の大きな観測値が混入することを防ぐことができるため、推定誤差の増大を抑制することができる。実施の形態2〜5の目標運動解析システム100A〜100Dについても同様である。
上述した各実施の形態は、目標運動解析システムおよび目標運動解析方法における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、実施の形態3および4の構成は、実施の形態1の構成にも適用することができる。つまり、実施の形態3および4の目標運動解析システム100Bおよび100Cは、代替情報指定処理部60を除いて構成してもよい。また、実施の形態2の目標運動解析システム100Aは、代替情報を用いることができるため、方位データ算出部41、周波数分析部42、および周波数指定処理部52を設けずに構成してもよい。同様に、実施の形態4の目標運動解析システム100Cは、方位データ算出部41、周波数分析部42、周波数指定処理部52C、および周波数予測部72を設けずに構成してもよい。実施の形態5の目標運動解析システム100Dは、方位データ算出部41、周波数分析部42、および周波数指定処理部52を設けずに構成してもよい。
実施の形態1では、目標諸元計算部80における連立方程式を式(9)のように構成しているが、これに限定されない。例えば、方位指定処理部51は、3組の時刻および方位を指定できるように制御し、周波数指定処理部52は、1組の時刻および方位を指定できるように制御してもよい。そして、目標諸元計算部80は、下記の式(34)で構成した連立方程式を解いて、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を計算するようにしてもよい。
この場合、ユーザによって指定された3つの時刻をT1、T2、T3とし、3組の時刻および方位の情報を{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、{T3,θm(T3)}とする。方位指定処理部51は、{T1,θm(T1)}、{T2,θm(T2)}、および{T3,θm(T3)}を目標諸元計算部80に送出する。また、ユーザによって指定された1組の時刻および周波数の情報を{T1,Nm(T1)}とすると、周波数指定処理部52は、{T1,Nm(T1)}を目標諸元計算部80に送出する。そして、目標諸元計算部80は、取得した各データを用いて、式(34)で構成された連立方程式を解き、時刻T1における位置速度ベクトルXT(T1)を求めてもよい。
実施の形態2〜4では、周波数指定処理部52(52C)および代替情報指定処理部60を通じて指定される目標状態情報としての6つの情報の中から、何れか2つの情報のみを指定すればよい。また、実施の形態5では、周波数指定処理部52および代替情報指定処理部60Dを通じて指定される目標状態情報としての5つの情報の中から、何れか2つの情報のみを指定すればよい。ここで、目標状態情報の中から何れか2つの情報が指定された状態で、1つの情報の指定を変更したい場合は、既に指定されている情報のうち、1つの情報の指定を解除する必要がある。そこで、目標状態情報を構成する複数の情報に、解除に関する優先順位を設けておくとよい。このようにすれば、ユーザが追加的に1つの情報を指定したとき、既に指定されている2つの情報のうちで、優先順位の低い情報を自動的に解除することができる。
実施の形態5では、実施の形態2における代替情報指定処理部60の代わりに、表示用データ算出部61と代替情報指定処理部60Dとを設けるようにしているが、この代替構成は、実施の形態3および4にも適用することができる。すなわち、実施の形態3および4においても、代替情報指定処理部60の代わりに、表示用データ算出部61と代替情報指定処理部60Dとを設けてもよい。
図20は、指定用画像に含まれる距離、速力、および針路の情報の他の例を示す説明図である。実施の形態5では、針路−速力指定画像、針路−距離指定画像、および速力−距離指定画像に表示させる距離、速力、および針路の情報として、等距離線DL、等速力線SL、および等針路線CLを例示しているが、これに限定されない。例えば、距離、速力、および針路の情報は、線での表示ではなく、図20に示すように、等範囲を濃淡もしくは色彩の違いで区別するようにしてもよい。
図21は、指定用画像のその他の例を示す説明図である。実施の形態5では、図18に示す通り、針路−速力指定画像、針路−距離指定画像、および速力−距離指定画像として、直交座標の表示例を示したが、これに限定されない。指定用画像として、図21に示すように、距離又は速力を原点からの長さに対応づけ、針路を矢印の角度に対応づける極座標画像を採用し、表示部91に表示させてもよい。