以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置及び医用情報処理方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では、治療前の検査結果、クリニカルパス、手術、放射線治療などの一連の治療情報を含めた情報を治療全体情報と記載する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、ネットワーク400を介して、電子カルテ保管装置200及び治療詳細情報保管装置300と通信可能に接続される。例えば、医用情報処理装置100、電子カルテ保管装置200及び治療詳細情報保管装置300は、病院等に設置され、院内LAN等のネットワーク400によって相互に接続される。なお、図1においては、ネットワーク400に医用情報処理装置100、電子カルテ保管装置200及び治療詳細情報保管装置300のみが接続されているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、その他種々の装置がネットワーク400に接続される場合であってもよい。
電子カルテ保管装置200は、病院等で行われた各種の診療に関する診療データを保管する。例えば、電子カルテ保管装置200は、病院等で導入されている電子カルテシステムの一部として設置され、電子カルテシステムによって生成された診療データを保管する。例えば、電子カルテ保管装置200は、DB(Database)サーバ等のコンピュータ機器によって実現され、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の記憶回路に診療データを記憶させる。
治療詳細情報保管装置300は、病院で行われた各種の治療に関する治療詳細データを保管する。例えば、治療詳細情報保管装置300は、病院等で導入されている電子カルテシステムの一部として設置され、電子カルテシステムによって生成された治療詳細データを保管する。例えば、治療詳細情報保管装置300は、DB(Database)サーバ等のコンピュータ機器によって実現され、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の記憶回路に治療詳細データを記憶させる。
医用情報処理装置100は、図1に示すように、I/F(インターフェース)回路110と、記憶回路120と、入力回路130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。医用情報処理装置100は、ネットワーク400を介して電子カルテ保管装置200から診療データを取得する。また、医用情報処理装置100は、ネットワーク400を介して治療詳細情報保管装置300から治療詳細データを取得する。そして、医用情報処理装置100は、取得した診療データ及び治療詳細データを用いて各種情報処理を行う。例えば、医用情報処理装置100は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。なお、診療データ及び治療詳細データについては、後に詳述する。
I/F回路110は、処理回路150に接続され、電子カルテ保管装置200及び治療詳細情報保管装置300との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、I/F回路110は、電子カルテ保管装置200から診療データを受信し、受信した診療データを処理回路150に出力する。また、例えば、I/F回路110は、治療詳細情報保管装置300から治療詳細データを受信し、受信した治療詳細データを処理回路150に出力する。例えば、I/F回路110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
記憶回路120は、処理回路150に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路120は、電子カルテ保管装置200から受信した診療データや、治療詳細情報保管装置300から受信した治療詳細データを記憶する。また、例えば、記憶回路120は、種々の設定情報や、処理回路150による処理結果などを記憶する。例えば、記憶回路120は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
入力回路130は、処理回路150に接続され、操作者(ユーザ)から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力回路130は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。
ディスプレイ140は、処理回路150に接続され、処理回路150から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
処理回路150は、入力回路130を介してユーザから受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、I/F回路110から出力される診療データや、治療詳細データを記憶回路120に記憶させる。また、例えば、処理回路150は、記憶回路120から診療データや、治療詳細データを読み出し、各種処理を実行して、処理結果をディスプレイ140に表示する。例えば、処理回路150は、プロセッサによって実現される。
以上、本実施形態に係る医用情報処理装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、治療の全体情報を用いてバリアンスを分析することを可能にする。具体的には、医用情報処理装置100は、クリニカルパスに関係する治療の情報の他に、クリニカルパスの適用期間以外の期間の治療に関する情報を取得し、クリニカルパスに関係する情報とクリニカルパスの適用期間以外の期間の情報とを統合して分析を行うことで、治療の全体情報を用いたバリアンスの分析を可能とする。これにより、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、種々の目的に応じた解析が可能となる。以下、医用情報処理装置100の詳細について説明する。
医用情報処理装置100における処理回路150は、制御機能151と、データ統合機能152と、カテゴリ分類機能153と、影響度算出機能154と、表示制御機能155とを有する。なお、データ統合機能152は、特許請求の範囲における統合部の一例である。また、カテゴリ分類機能153は、特許請求の範囲における分類部の一例である。また、影響度算出機能154は、特許請求の範囲における算出部の一例である。また、表示制御機能155は、特許請求の範囲における提示部の一例である。
制御機能151は、他装置との通信に関する各種処理や、他装置からのデータ取得に関する各種処理を制御する。例えば、制御機能151は、患者に対して実施された一連の治療に関する情報を取得する。すなわち、制御機能151は、クリニカルパスに関連していない診療行為、及び、クリニカルパスに沿って実施された診療行為に関するデータを取得する。また、制御機能151は、クリニカルパスで発生したバリアンスに関するデータを取得する。
一例を挙げると、制御機能151は、電子カルテ保管装置200から診療データを取得する。また、制御機能151は、治療詳細情報保管装置300から治療詳細データを取得する。ここで、診療データには、例えば、検査データ、クリニカルパスマスタデータ、診療行為/アウトカムマスタデータ、クリニカルパス計画データ、診療行為/アウトカム詳細マスタデータ、患者データ、実績データ、バリアンスデータ、及び、バリアンスIDマスタデータ等が含まれる。また、治療詳細データには、例えば、手術記録データや、放射線治療記録データ等のケースレポートが含まれる。そして、制御機能151は、取得した各データを記憶回路120に記憶させる。
ここで、検査データは、患者ごとの検査結果が記憶されたデータである。また、クリニカルパスマスタデータは、パスの名称とそのIDが記憶されたデータである。また、診療行為/アウトカムマスタデータは、診療行為と、アウトカム(特定の期間に達成されるべき患者の目標の状態)と、それらの診療行為/アウトカムIDが記憶されたデータである。また、クリニカルパス計画データは、クリニカルパスのパスIDと、診療行為/アウトカムIDと、それらの実施予定日数などが記憶されたデータである。また、診療行為/アウトカム詳細マスタデータは、診療行為/アウトカムの具体的な項目名とその項目IDが記憶されたデータである。また、患者データは、患者の基本情報を記録したデータである。また、実績データは、患者に対して実施された診療行為の履歴や、患者状態に関する経過等を記録したデータである。また、バリアンスデータは、クリニカルパスから逸脱した際に生成されるデータであり、バリアンスが発生した診療行為またはアウトカムや、バリアンスの内容、日数などが記憶されたデータである。また、バリアンスIDマスタデータは、バリアンスが発生した原因に関するIDや、バリアンスの分類などが記録されたデータである。また、手術記録データは、患者に対する手術の記録が記憶されたデータである。また、放射線治療記録データは、患者に対する放射線治療の記録が記憶されたデータである。
例えば、制御機能151は、電子カルテ保管装置200や、治療詳細情報保管装置300から取得した各データを分析に最適なフォーマットに変換して、記憶回路120に記憶させる。なお、ここでは、各データに含まれる情報が電子カルテ保管装置200や、治療詳細情報保管装置300に保管されているデータから直接的に得られるものとするが、実施形態はこれに限られない。例えば、各データに含まれる情報に、電子カルテ保管装置200や、治療詳細情報保管装置300に保管されているデータから直接的に得られないものが含まれている場合には、制御機能151は、変換用のテーブルを用いて情報を変換したうえで、記憶回路120に記憶させてもよい。その場合には、変換用のテーブルは、予め記憶回路120に記憶される。
図2は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される検査データの一例を示す図である。例えば、図2に示すように、検査データは、データ項目として、患者IDと、項目IDと、項目と、値と、日付とを含む。ここで、患者IDには、当該患者を一意に識別するIDが設定される。また、項目IDには、当該項目を一意に識別するIDが設定される。また、項目には、検査の項目が設定される。また、値には、検査結果の値が設定される。また、日付には、検査が実施された日付が設定される。なお、検査項目における項目IDは、診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。
図3は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される手術記録データの一例を示す図である。例えば、図3に示すように、手術記録データは、データ項目として、患者IDと、項目IDと、項目と、値とを含む。ここで、項目には、手術に関する情報の項目が設定される。また、値には、対応する項目の値が設定される。なお、項目IDは、診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。
図4は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される放射線治療記録データの一例を示す図である。例えば、図4に示すように、放射線治療記録データは、データ項目として、患者IDと、項目IDと、項目と、値とを含む。ここで、項目には、放射線治療に関する情報の項目が設定される。また、値には、対応する項目の値が設定される。なお、項目IDは、診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。
図5は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得されるクリニカルパスマスタデータの一例を示す図である。例えば、図5に示すように、クリニカルパスマスタデータは、データ項目として、パスIDと、パス名称とを含む。ここで、パスIDには、当該パスを一意に識別するIDが設定される。また、パス名称には、当該パスIDが設定されたパスの名称が設定される。
図6は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される診療行為/アウトカムマスタデータの一例を示す図である。例えば、図6に示すように、診療行為/アウトカムマスタデータは、データ項目として、診療行為/アウトカムIDと、診療行為/アウトカム名称と、診療行為/アウトカムとを含む。ここで、診療行為/アウトカムIDには、当該診療行為/アウトカムを一意に識別するIDが設定される。また、診療行為/アウトカム名称には、当該診療行為/アウトカムIDが設定された診療行為/アウトカムの名称が設定される。また、診療行為/アウトカムには、当該診療行為/アウトカムIDに対応する診療行為/アウトカムが、実施された診療行為であるか、或いは、評価されたアウトカムであるかが設定される。なお、診療行為には、一般的にクリニカルパスに含まれる観察、投薬、検査、処置、指示、栄養、説明に関する内容などが含まれる。
図7は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得されるクリニカルパス計画データの一例を示す図である。例えば、図7に示すように、クリニカルパス計画データは、データ項目として、パスIDと、診療行為/アウトカムIDと、日数とを含む。ここで、パスIDには、クリニカルパスマスタデータにおけるパスIDと共通の値が設定される。また、診療行為/アウトカムIDには、上述した診療行為/アウトカムマスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。また、日数には、対応する診療行為/アウトカムの実施を予定している日数(クリニカルパス適用日(或いは、入院日)からの経過日数)が設定される。
図8は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される診療行為/アウトカム詳細マスタデータの一例を示す図である。例えば、図8に示すように、診療行為/アウトカム詳細マスタデータは、データ項目として、診療行為/アウトカムIDと、項目IDと、項目名とを含む。ここで、診療行為/アウトカムIDには、上述した診療行為/アウトカムマスタデータにおける診療行為/アウトカムIDと共通の値が設定される。また、項目IDには、診療行為/アウトカムにおける項目を一意に識別するIDが設定される。また、項目名には、項目IDに対応する具体的な項目が設定される。
図9は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される患者データの一例を示す図である。例えば、図9に示すように、患者データは、データ項目として、患者IDと、パスIDと、性別と、年齢と、病名と、入院日と、手術日と、退院日とを含む。ここで、患者IDには、当該患者を一意に識別するIDが設定され、上述した検査データ等における患者IDと共通の値がされる。また、パスIDには、上述したクリニカルパスマスタデータにおけるパスIDと共通の値が設定される。また、性別には、当該患者の性別が設定される。また、年齢には、当該患者の年齢が設定される。また、病名には、当該患者が診断された病名が設定される。また、入院日には、当該患者が入院した日付が設定される。また、手術日には、当該患者に対して手術が施された日付が設定される。また、退院日には、当該患者が退院した日付が設定される。
図10は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得される実績データの一例を示す図である。例えば、図10に示すように、実績データは、データ項目として、患者IDと、診療行為/アウトカムIDと、項目IDと、結果と、日数とを含む。ここで、患者IDは、上述した患者IDと共通の値が設定される。また、診療行為/アウトカムIDは、上述した診療行為/アウトカムIDと共通の値が設定される。また、項目IDは、上述した診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。また、結果には、診療行為又はアウトカムの評価によって得られた結果が設定される。なお、結果には、診療行為の実施結果(実施済み/未実施)の他に、診療行為の結果として得られたデータ(例えば、バイタルチェックの結果として得られるバイタル値等)が設定される。また、結果には、アウトカムの評価結果(達成/未達成)が設定される。また、日数には、診療行為又はアウトカムの評価が実施された実施日が設定され、クリニカルパス適用日からの日数を示す。
図11は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得されるバリアンスデータの一例を示す図である。例えば、図11に示すように、バリアンスデータは、データ項目として、患者IDと、診療行為/アウトカムと、バリアンスIDと、日数とを含む。ここで、バリアンスデータでは、診療行為/アウトカム、バリアンスID及び日数が、それぞれ患者IDと関連付けられて設定される。ここで、患者IDには、上述した患者IDと共通の値が設定される。また、診療行為/アウトカムには、当該患者に対して実施された診療行為又はアウトカムを示す情報が設定される。また、バリアンスIDには、バリアンスが発生した原因に関するIDが設定される。また、日数には、バリアンスが発生した発生日が設定され、クリニカルパス適用日からの日数を示す。
図12は、第1の実施形態に係る制御機能151によって取得されるバリアンスIDマスタデータの一例を示す図である。例えば、図12に示すように、バリアンスIDマスタデータは、データ項目として、バリアンスIDと、大分類と、バリアンス分類と、バリアンス内容とを含む。ここで、バリアンスIDには、上述したバリアンスデータにおけるバリアンスIDと共通の値が設定される。また、大分類には、当該バリアンスが発生した原因の大分類(患者要因、職員要因、施設要因、社会要因等)が設定される。また、バリアンス分類には、当該バリアンスが発生した原因の小分類(身体的要因、患者の意思又は希望、医師からの指示等)が設定される。また、バリアンス内容には、クリニカルパスで発生したバリアンスの内容を示す情報が設定される。例えば、バリアンス内容には、バリアンスの詳細な内容を記載したテキスト情報が設定される。
制御機能151は、上述した診療データ及び治療詳細データを、電子カルテ保管装置200及び治療詳細情報保管装置300から取得して、記憶回路120に格納する。なお、記憶回路120は、上述した診療データ及び治療詳細データの他にも種々の設定情報を記憶する。具体的には、記憶回路120は、処理回路150による処理に用いられる設定情報を記憶する。
図13〜16は、第1の実施形態に係る記憶回路120によって記憶される設定情報の一例を示す図である。例えば、図13に示すように、記憶回路120は、除外リストテーブル(患者)を記憶する。除外リストテーブル(患者)は、データ項目として、患者IDを含む。ここで、患者IDは、当該患者を一意に識別するIDが設定され、上述した患者IDと共通の値が設定される。また、例えば、図14に示すように、記憶回路120は、除外リストテーブル(項目)を記憶する。除外リストテーブル(項目)は、データ項目として、項目IDと、項目とを含む。ここで、項目IDは、上述した診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。また、項目は、項目IDに対応する項目が設定される。なお、上述した除外リストテーブルは、データ統合機能152によって用いられる情報であり、データを統合する際に除外する内容が設定されたものである。
また、例えば、図15に示すように、記憶回路120は、治療成績マスタテーブルを記憶する。治療成績マスタテーブルは、データ項目として、項目IDと項目名を含む。ここで、項目IDは、上述した診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。また、項目名は、上述した診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目名と共通の値が設定される。なお、上述した治療成績マスタテーブルは、カテゴリ分類機能153によって用いられる情報であり、種々の項目のうち、治療成績とする項目名が設定されたものである。
また、例えば、図16に示すように、記憶回路120は、影響度算出設定テーブルを記憶する。影響度算出設定テーブルは、データ項目として、項目IDと、項目と、実施日考慮と、カテゴリとを含む。ここで、項目IDは、上述した診療行為/アウトカム詳細マスタデータにおける項目IDと共通の値が設定される。また、項目は、項目IDに対応する項目が設定される。また、実施日考慮は、項目の内容が実施された実施日を影響度算出に考慮するか否かの情報が設定される。また、カテゴリは、当該項目が含まれるカテゴリが設定される。なお、上述した影響度算出設定テーブルは、影響度算出機能154によって用いられる情報である。
なお、上述した種々の設定情報は、ユーザによって適宜編集することができる。例えば、表示制御機能155が、設定情報を編集するためのGUIをディスプレイ140に表示させ、ユーザが入力回路130を介して、設定情報を所望の情報に編集する。
図1に戻って、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用期間前後の情報と、クリニカルパスの適用期間中の情報とを統合した統合データを生成する。具体的には、データ統合機能152は、クリニカルパスに紐付く情報と、クリニカルパスに紐付いていない情報とを統合した統合データを生成する。すなわち、データ統合機能152は、患者の治療全体情報を示す統合データを生成する。
例えば、データ統合機能152は、分析に用いる臨床情報を記憶回路120から取得する。一例を挙げると、データ統合機能152は、手術記録データと、検査データとを取得して、統合する。ここで、データ統合機能152は、記憶回路120によって記憶された除外リストテーブルに含まれる内容を除外したデータを統合データとして生成する。図17は、第1の実施形態に係るデータ統合機能152による処理の一例を説明するための図である。ここで、図17においては、図3に示す手術記録データからデータを取得する場合について示す。
例えば、データ統合機能152は、図13に示す除外リストテーブル(患者)及び図14に示す除外リストテーブル(項目)に含まれる内容を手術記録データから除外したデータを統合データとして取得する。すなわち、データ統合機能152は、図17に示すように、図3に示す手術記録データから、図13に示す患者ID及び図14に示す項目を除外したデータを取得する。なお、上述した例では、除外リストテーブルに基づいて、対象外とする患者及び項目を除外する例について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、除外せずに全ての患者及び項目を対象とする場合であってもよい。
そして、データ統合機能152は、取得した手術記録データと、記憶回路120が記憶する検査データとを統合する。ここで、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用日(例えば、入院日)を基準として統合した統合データを生成する。例えば、データ統合機能152は、図17に示す「入院日:2017/2/8」を基準として統合データを生成する。また、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用期間前後の所定の期間のデータを対象データとして、検査データを取得する。
図18は、第1の実施形態に係るデータ統合機能152によって統合されるデータの一例を示す図である。例えば、データ統合機能152は、図18の上段に示すように、「入院日から30日前」から「退院日から30日後」までの範囲を対象データの範囲として設定し、検査データに含まれる日付から範囲内のデータを対象データとして取得する。例えば、データ統合機能152は、図17に示すように、「患者ID:p01」の患者に関する対象データとして「入院日:2017/2/8」の30日前から、「退院日:2017/2/20」から30日後の検査データを対象データとして取得する。
そして、データ統合機能152は、図18の下段のテーブルに示すように、「入院日:2017/2/8」を基準として、手術記録データと、検査データとを統合した統合データを生成する。すなわち、データ統合機能152は、図18に示すように、「入院日:2017/2/8」を「実施日:0」として、各項目に「入院日:2017/2/8」を基準とした「実施日」を付与した統合データを生成する。
さらに、データ統合機能152は、患者IDと入院日とを用いて、クリニカルパスに紐づく実績データ(例えば、図10参照)とバリアンスデータ(例えば、図11参照)を統合データに統合する。図19は、第1の実施形態に係るデータ統合機能152によって生成される統合データの一例を示す図である。例えば、データ統合機能152は、図19に示すように、データ項目として、パスIDと、患者IDと、項目IDと、項目と、結果と、実施日とを含む統合データを生成する。ここで、データ統合機能152は、実績データ及びバリアンスデータに含まれる日数(クリニカルパス適用日からの日数)に基づいて、各項目を統合データに含めるか否かを判定する。すなわち、データ統合機能152は、実績データとバリアンスデータの各項目について、対応する日数が上述した対象データの範囲に含まれている項目を統合データに統合する。
ここで、データ統合機能152は、実績データにおいて、クリニカルパスの項目IDと、実施日との両方が重複する項目が既に含まれている場合には、重複したレコードを対象データから除外する。例えば、データ統合機能152は、図10に示す実績データに、図18に示す「患者ID:p01、項目ID:101、項目:収縮期血圧、結果:160mmHg、実施日:1」と項目ID及び日数(実施日)が重複するレコードが含まれることから、一方のレコードを統合データから除外する。
上述したように、データ統合機能152は、手術記録データと、検査データと、実績データと、バリアンスデータとから統合データを生成する。データ統合機能152は、対象となる患者について、上述した統合データをそれぞれ生成し、生成した統合データを記憶回路120に格納する。
図1に戻って、カテゴリ分類機能153は、統合データに含まれる情報を、対応する期間と種類に基づいて複数のカテゴリに分類する。具体的には、カテゴリ分類機能153は、記憶回路120によって記憶される統合データを、複数のカテゴリに分類する。例えば、カテゴリ分類機能153は、統合データに含まれる情報を、治療前の患者情報、手術に関する情報、クリニカルパスに関する情報、及び、治療成績に関する情報のカテゴリに分類する。以下、図20〜23を用いて統合データの分類について説明する。図20〜図23は、第1の実施形態に係るカテゴリ分類機能153による統合データの分類の一例を示す図である。
例えば、カテゴリ分類機能153は、図19に示す統合データについて、実績データ及びバリアンスデータから統合した項目を「カテゴリ:クリニカルパス」に分類する。すなわち、カテゴリ分類機能153は、図20に示すように、入院日から退院日までの期間でクリニカルパスに紐づくレコードを「カテゴリ:クリニカルパス」に分類する。一例を挙げると、カテゴリ分類機能153は、図20に示すように、図19に示す統合データのうち、レコード「パスID:P0001、患者ID:p01、項目ID:900、項目:バイタルチェック実施、結果:実施済み、実施日:1」を「カテゴリ:クリニカルパス」に分類する。同様に、カテゴリ分類機能153は、実績データ及びバリアンスデータから統合した各レコードを「カテゴリ:クリニカルパス」に分類する。
また、例えば、カテゴリ分類機能153は、図19に示す統合データについて、実施日が入院日よりも前のレコードを「カテゴリ:治療前患者情報」に分類する。すなわち、カテゴリ分類機能153は、図21に示すように、入院日から30日前までの期間のレコードを「カテゴリ:治療前患者情報」に分類する。一例を挙げると、カテゴリ分類機能153は、図21に示すように、図19に示す統合データのうち、レコード「パスID:0001、患者ID:p01、項目ID:101、項目:拡張期血圧、結果:60mmHg、実施日:−6」を「カテゴリ:治療前患者情報」に分類する。同様に、カテゴリ分類機能153は、入院日から30日前までの期間のレコードを「カテゴリ:治療前患者情報」に分類する。
また、例えば、カテゴリ分類機能153は、図19に示す統合データについて、治療成績マスタデータに含まれる項目IDと対応する項目IDを有するレコードを「カテゴリ:治療成績」に分類する。例えば、カテゴリ分類機能153は、図22に示すように、治療成績マスタデータ(例えば、図15)を参照して、治療成績マスタデータに含まれる「項目ID:505、項目名:術後感染」に対応するレコード「パスID:0001、患者ID:p01、項目ID:505、項目:術後感染、結果:なし、実施日:14」を「カテゴリ:治療成績」に分類する。同様に、カテゴリ分類機能153は、治療成績マスタデータに含まれる項目IDと対応する項目IDを有するレコードを「カテゴリ:治療成績」に分類する。なお、「カテゴリ:治療成績」は、例えば、退院日から30日後までの期間のレコードに含まれる。
また、例えば、カテゴリ分類機能153は、図19に示す統合データについて、実施日が入院日から退院日までの間であり、かつ、手術記録データから統合されたレコードを「カテゴリ:手術」に分類する。すなわち、カテゴリ分類機能153は、図23に示すように、入院日から退院日までの期間で手術に紐づくレコードを「カテゴリ:手術」に分類する。一例を挙げると、カテゴリ分類機能153は、図23に示すように、図19に示す統合データのうち、レコード「パスID:0001、患者ID:p01、項目ID:002、項目:手術日、結果:2017/2/12、実施日:4」を「カテゴリ:手術」に分類する。同様に、カテゴリ分類機能153は、実施日が入院日から退院日までの間であり、かつ、手術記録データから統合されたレコードを「カテゴリ:手術」に分類する。
上述した実施形態では、カテゴリを「クリニカルパス」、「治療前患者情報」、「治療成績」、「手術」の4つのカテゴリに分類する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、その他のカテゴリに分類する場合であってもよい。図24A及び図24Bは、第1の実施形態に係るカテゴリ分類機能153による分類の変形例を示す図である。例えば、カテゴリ分類機能153は、図24Aに示すように、カテゴリを「クリニカルパス」、「治療前患者情報」、「治療成績」、「手術」、「放射線治療」の5つのカテゴリに分類する場合であってもよい。或いは、カテゴリ分類機能153は、図24Bに示すように、カテゴリを「クリニカルパス」、「治療前患者情報」、「治療成績」、「手術」と「放射線治療」とを合わせた「治療詳細情報」の4つのカテゴリに分類する場合であってもよい。
かかる場合には、データ統合機能152は、放射線治療記録データ(例えば、図4参照)をさらに統合した統合データを生成する。例えば、データ統合機能152は、手術記録データの統合と同様に、患者IDと項目IDを用いて、放射線治療記録データを統合データに統合する。カテゴリ分類機能153は、手術記録データから統合したレコードを「手術」、放射線治療記録データから統合したレコードを「放射線治療」に分類する。
図1に戻って、影響度算出機能154は、統合データに含まれる情報から指定された分析対象の項目に対する、複数のカテゴリに含まれる各情報の影響度を算出する。具体的には、影響度算出機能154は、入力回路130を介して受け付けた分析対象の情報に対する各カテゴリに含まれる各項目の影響度をそれぞれ算出する。ここで、影響度算出の対象となる分析対象を指定する際の指定方法は、種々の方法をとることができる。例えば、表示制御機能155が分析対象を指定するためのGUIを表示し、入力回路130がGUIを介して分析対象の指定操作を受け付ける。
図25は、第1の実施形態に係る分析対象を指定するためのGUIの一例を示す図である。例えば、表示制御機能155は、図25に示すように、「取得データ条件」として、「パス名」及び「治療成績」の入力を受け付け、「影響度算出設定」として、「カテゴリ」、「項目」、「実施日考慮」を受け付けるためのGUIをディスプレイ140に表示させる。例えば、入力回路130は、分析対象とする(データを取得する対象となる)クリニカルパスのパス名として「直腸S状部結腸癌」の入力を受け付け、当該パスにおける治療成績として「術後感染」の入力を受け付ける。また、入力回路130は、影響度を算出する対象として、カテゴリと、項目と、実施日考慮との指定を受け付ける。入力回路130がこれらの入力を受け付けると、受け付けた各情報が記憶回路120に格納される。
影響度算出機能154は、記憶回路120に記憶された情報に基づいて、項目の影響度を算出する。例えば、「取得データ条件」として、「パス名:直腸S状部結腸癌」、「治療成績:術後感染」が入力されると、影響度算出機能154は、条件を取得し、各マスタデータを参照して、取得した条件に対応するIDに変換する。すなわち、影響度算出機能154は、各条件を統合データで検索可能な情報に変換する。例えば、影響度算出機能154は、クリニカルパスマスタデータ(例えば、図5)及び治療成績マスタテーブル(例えば、図15)を参照して、図26に示すように、「パス名:直腸S状部結腸癌」及び「治療成績:術後感染」を、それぞれ「パスID:P0001」及び「項目ID:505」に変換する。なお、図26は、第1の実施形態に係る条件の変換の一例を示す図である。
次に、影響度算出機能154は、カテゴリ分類機能153によってカテゴリに分類された統合データから影響度を算出するためのレコードを抽出する。具体的には、影響度算出機能154は、変換したIDを用いて、IDに対応するレコードを統合データから抽出する。例えば、影響度算出機能154は、カテゴリに分類済みの統合データ(例えば、図23参照)の「パスID:0001」を対象として、受け付けた治療成績に対応するレコードと、受け付けたカテゴリに対応するレコードとを抽出する。
図27A及び図27Bは、第1の実施形態に係る影響度算出機能154によるレコード抽出の一例を示す図である。例えば、影響度算出機能154は、図27Aに示すように、「パスID:P0001」のレコードのうち、カテゴリが「手術」、「治療前患者情報」、「クリニカルパス」となっているレコードを抽出する。また、例えば、影響度算出機能154は、図27Bに示すように、「パスID:P0001」のレコードのうち、「項目ID:505」となっているレコードを抽出する。
そして、影響度算出機能154は、抽出したレコードのうち、カテゴリが「手術」、「治療前患者情報」、「クリニカルパス」のレコードを説明変数とし、カテゴリが「治療成績」、すなわち、治療成績として指定された「術後感染」のレコードを目的変数として設定する。換言すると、影響度算出機能154は、目的変数として設定した治療成績(例えば、術後感染)に対する、説明変数に含まれる各項目の影響度をそれぞれ算出する。
図28Aは、第1の実施形態に係る影響度算出機能154による説明変数の設定の一例を示す図である。図28Bは、第1の実施形態に係る影響度算出機能154による目的変数の設定の一例を示す図である。例えば、影響度算出機能154は、図28Aに示すように、カテゴリが「手術」、「治療前患者情報」、「クリニカルパス」のレコード(例えば、図27A参照)における項目を説明変数として設定する。また、例えば、影響度算出機能154は、図28Bに示すように、「項目ID:505」のレコード(例えば、図27B参照)における「術後感染」を目的変数に設定する。すなわち、影響度算出機能154は、目的変数「術後感染」に対する、説明変数における各項目の影響度を算出する。
なお、影響度算出機能154は、各項目における実施日ごとに分けて影響度を算出することもできる。例えば、1日目と2日目に測定した収縮期血圧を別項目とし、収縮期血圧(1)、収縮期血圧(2)とする。一方、手術時間や術式など実施日を考慮しなくてもよい項目もある。影響度算出機能154は、各項目に対し、実施日を考慮するかどうかは、上述した影響度算出設定テーブルを参照して決定する。このように、同一の項目を実施日に基づいて分別することで、より正確な分析ができる。
次に、影響度算出機能154は、目的変数と説明変数の全組み合わせで影響度を算出する。例えば、影響度算出機能154は、相関比やピアソンの相関係数、クラメールの連関係数などにより影響度を算出する。ここで、影響度算出機能154は、結果が数値の場合、数値をそのまま相関の計算に使用し、「あり/なし」といった文字データの場合「0/1」のような番号付けをして、相関計算に使用する。
図29A及び図29Bは、第1の実施形態に係る影響度算出機能154による影響度算出の一例を説明するための図である。ここで、図29Aにおいては、影響度をピアソンの相関係数で算出する場合の算出例を示す。また、図29Bにおいては、影響度を標準偏回帰係数で算出する場合の算出例を示す。
例えば、影響度算出機能154は、術後感染に対する収縮期血圧(1)の影響度をピアソンの相関係数で算出する場合、図29Aに示すように、説明変数「収縮期血圧(1)」の数値をx=(162,154,126,146,110,122,103,128)と、目的変数「術後感染」の「あり/なし」をそれぞれ「1/0」に変換したy=(1,1,1,1,0,0,0,0)を以下の式(1)に適用することで、ピアソンの相関係数を算出する。
例えば、上記したx及びyを式(1)に適用すると、ピアソンの相関係数「r」は、「62.5/78.2=0.80」となる。例えば、影響度算出機能154は、術後感染に対する収縮期血圧(1)の影響度を「0.80」と算出する。
また、例えば、影響度算出機能154は、術後感染に対する収縮期血圧(1)の影響度を標準偏回帰係数で算出する場合、図29Bに示すように、説明変数「収縮期血圧(1)」の数値をx1=(162,154,126,146,110,122,103,128)と、説明変数「腹水」の「あり/なし」をそれぞれ「1/0」に変換したx2=(1,1,0,1,1,0,0,1)と、目的変数「術後感染」の「あり/なし」をそれぞれ「1/0」に変換したy=(1,1,1,1,0,0,0,0)を以下の式(2)に適用することで、標準偏回帰係数を算出する。
なお、式(2)における「rx1y」は、yとx1の相関係数を示し、「rx2y」は、yとx2の相関係数を示し、「rx1x2」は、x1とx2の相関係数を示す。例えば、上記したx1、x2及びyを式(2)に適用すると、偏回帰係数「β」は、「0.80−(0.26×0.57)/1−(0.57)2=0.97」となる。例えば、影響度算出機能154は、術後感染に対する収縮期血圧(1)の影響度を「0.97」と算出する。
上述した例は、あくまでも一例であり、実施形態は、これに限定されるものではない。すなわち、影響度算出機能154における、影響度の算出方法は任意であり、影響度(例えば、相関)が算出できる手法であれば、その他種々の手法により影響度を算出することができる。
影響度算出機能154は、指定された目的変数(治療成績)に対して各説明変数(各項目)の影響度をそれぞれ算出し、算出した影響度を表示制御機能155に出力する。図30は、第1の実施形態に係る影響度算出機能154による影響度の算出結果の一例を示す図である。例えば、影響度算出機能154は、図30に示すように、「目的変数:術後感染」について、各説明変数「各項目」の影響度をそれぞれ算出する。
図1に戻って、表示制御機能155は、影響度を提示する。図31は、第1の実施形態に係る表示制御機能155による影響度の表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能155は、図31に示すように、ユーザが指定した「パス名:直腸S状部結腸癌」及び「治療成績:術後感染」とともに、治療成績に対する影響度の一覧を表示させる。ここで、例えば、表示制御機能155は、図31に示すように、各項目の影響度を降順で並べて、ディスプレイ140に表示させる。また、例えば、表示制御機能155は、影響度の範囲ごとに色分けして表示させる。例えば、表示制御機能155は、影響度が「0.70以上」の項目を赤で示し、影響度が「0.4以上0.7未満」の項目を黄色で示し、影響度が「0.4未満」の項目を緑で示した影響度一覧をディスプレイ140に表示させる。
以上、処理回路150が有する各処理機能について説明した。上述した各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。処理回路150は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
なお、図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路150によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路150は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路150が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路120に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路120等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
次に、図32〜35を用いて、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100による処理の手順を説明する。図32〜35は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100による処理の手順を示すフローチャートである。なお、図33は、図32におけるステップS102の処理の詳細を示す。また、図34は、図32におけるステップS103の処理の詳細を示す。また、図35は、図32のステップS105の処理の詳細を示す。
ここで、図32におけるステップS101は、入力回路130によって実行されるステップである。また、ステップS102は、処理回路150が、記憶回路120からデータ統合機能152に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、ステップS103、104は、処理回路150が、記憶回路120からカテゴリ分類機能153に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。また、ステップS105は、処理回路150が、記憶回路120から影響度算出機能154及び表示制御機能155に対応するプログラムを読み出して実行するステップである。
図32に示すように、ステップS101では、入力回路130が、ユーザから画面を介して実行ボタンの押下を受け付ける。ステップS102では、処理回路150が、電子カルテ保管装置(電子カルテDB)、治療詳細情報保管装置(治療詳細DB)、電子カルテ保管装置(クリニカルパスDB)から各患者の情報を取得して、統合する。
そして、ステップS103では、処理回路150が、統合したデータの各項目を治療計画フェーズのどこに属するか分類する。すなわち、処理回路150は、各項目が一連の治療期間においてどのカテゴリに属するか分類する。そして、ステップS104では、処理回路150が、統合・分類したデータを記憶回路120(統合データ分析DB)に保存する。
次に、ステップS105では、処理回路150が、指定された分析対象の項目に対する統合データの各項目の影響度を算出し、算出した影響度を提示する。
また、図33に示すように、ステップS1021では、処理回路150は、治療詳細DBから各患者の治療詳細情報を取得する。ステップS1022では、処理回路150が、取得した治療詳細情報の各項目IDを基に、電子カルテDBから日付情報と値を統合する。そして、ステップS1023では、処理回路150は、クリニカルパスDBからクリニカルパスを抽出する。ステップS1024では、処理回路150におけるデータ統合機能152は、統合したデータをカテゴリ分類機能153に渡す。
また、図34に示すように、ステップS1031では、処理回路150におけるカテゴリ分類機能153は、統合データをデータ統合機能152から取得する。そして、ステップS1032では、処理回路150は、クリニカルパスDBから取得した項目のカテゴリをクリニカルパスとする。そして、ステップS1033では、処理回路150は、入院日から治療前患者情報を取得する。
さらに、ステップS1034では、処理回路150は、治療成績情報マスタテーブルの項目IDを用いた統合データから治療成績を抽出する。そして、ステップS1035では、処理回路150は、入院日‐退院日に記録された残りの項目を手術する。その後、ステップS1036では、処理回路150におけるカテゴリ分類機能153は、分類した統合データを影響度算出機能154に渡す。
また、図35に示すように、ステップS1051では、処理回路150は、影響度算出条件を取得する。そして、ステップS1052では、処理回路150における影響度算出機能154は、影響度算出条件を基に、カテゴリ分類機能153から影響度を算出するための統合データを取得する。そして、ステップS1053では、処理回路150は、影響度を算出する。さらに、ステップS1054では、処理回路150における影響度算出機能154は、影響度算出結果を表示制御機能155に渡す。そして、ステップS1055では、処理回路150は、結果を提示する。
上述したように、第1の実施形態によれば、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用期間前後の情報と、クリニカルパスの適用期間中の情報とを統合した統合データを生成する。カテゴリ分類機能153は、統合データに含まれる情報を、対応する期間と種類に基づいて複数のカテゴリに分類する。影響度算出機能154は、統合データに含まれる情報から指定された分析対象の項目に対する、複数のカテゴリに含まれる各情報の影響度を算出する。表示制御機能155は、影響度を提示する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、治療の全体情報を用いてバリアンスを分析することを可能にする。
例えば、現在、クリニカルパスを用いて診療計画を標準化することで、治療プロセスの改善と医療の質の向上を実現することが重視されている。ここで、クリニカルパスを用いて医療の質を向上させるためには、クリニカルパスと実際の診療との差異であるバリアンスを収集・分析し、医療の質に影響を及ぼすバリアンスの要因への対処を持続的に行うPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルが重要とされている。
しかしながら、現在の分析では、クリニカルパスに紐づいた情報のみを用いた分析を行っているため、クリニカルパスに紐づいていない情報に起因するバリアンスについては、正確に分析することが困難であった。例えば、バリアンスの要因のうち、スタッフやシステムに起因するものは、バリアンス発生時の状況からその要因が明らかなものもあるが、合併症による治癒の遅れなどの患者起因のものは、バリアンス発生時の状況だけでは要因が分からないものが多い。
そこで、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100のように、治療全体情報を用いて各項目の影響度を分析することで、クリニカルパスに紐づいていない情報を加味した分析を行うことができる。すなわち、医用情報処理装置100は、これまで分析することができなかった種々の目的について、分析することを可能とする。例えば、医用情報処理装置100は、クリニカルパス適用前に記録されたデータ(例えば、決定した術式や、検査値など)を含んで分析することができ、この結果に応じてユーザがクリニカルパスの適用条件を修正することができる。
また、例えば、外科手術における縫合不全のバリアンスには、クリニカルパスに含まれる項目だけでなく、ケースレポートなど手術の詳細項目(例:術前輸血など)も影響している場合がある。第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、このような場合でも、より正確な分析を行うことを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、カテゴリ分類機能153は、統合データに含まれる情報を、治療前の患者情報、手術に関する情報、クリニカルパスに関する情報、及び、治療成績に関する情報のカテゴリに分類する。影響度算出機能154は、治療成績に関する情報から指定された分析対象の項目に対する、治療前の患者情報、手術に関する情報、及び、クリニカルパスに関する情報の影響度をそれぞれ算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、種々の目的に応じた分析を可能にする。例えば、医用情報処理装置100は、治療成績について、種々の視点から解析することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用期間前後の所定の期間における情報を取得する。また、データ統合機能152は、クリニカルパスの適用日を基準として統合した統合データを生成する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、クリニカルパスの適用期間内の情報と、クリニカルパスの適用期間外の情報との正確な統合を可能にする。例えば、検査データや、手術記録データなどのケースレポートは、クリニカルパスを考慮して記憶されておらず、単純にクリニカルパスと統合すると、正確な分析を行うことができない。一例を挙げると、ケースレポートでは術前情報の検査値は「30日以内の直近を記録する」という形式になっており、記録された項目に対し、明確な日付情報が含まれていない。そのため、このような値について、クリニカルパス適用範囲内に記憶されたのか、或いは、範囲外に記録されたのか判断することができない。すなわち、クリニカルパスに含まれる項目との関連を分析する場合に、正確な分析を行うことができない。
例えば、逆流性食道炎のケースレポートで術式「拡大リンパ節郭清」と記載されていたとする。術式「拡大リンパ節郭清」がパス適用前に決定していれば、パスの適用条件分析項目に術式「拡大リンパ節郭清」を用いることができるが、術式変更などによりパス適用期間中に記録された場合、パスの適用条件分析項目には用いられない。
そこで、医用情報処理装置100は、クリニカルパスの適用期間(例えば、入院日)を基準としてデータを統合することで、各項目を正確に関連付けることができ、正確な分析を行うことを可能にする。このように、クリニカルパスの適用期間を基準にデータを統合することで、同一の項目が含まれた場合であっても、日数により分別することができ、同一の項目についてそれぞれ正確に分析することができる。
また、表示制御機能155は、影響度の高い順に対応する項目を提示する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、影響の高い項目を即座に判断させることを可能にする。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、項目ごとの影響度を算出する場合について説明した。第2の実施形態では、カテゴリごとの影響度を算出する場合について説明する。図36は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。なお、第2の実施形態に係る医用情報処理装置100aは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100と比較して、処理回路150aが影響度集約機能156を実行する点が異なる。以下、この点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。なお、第2の実施形態に係る影響度集約機能156は、特許請求の範囲の算出部の一例である。
影響度集約機能156は、各情報の影響度をカテゴリごとに集約し、カテゴリごとの影響度をさらに算出する。図37は、第2の実施形態に係る影響度集約機能156による影響度の集約の一例を示す図である。なお、図37においては、影響度算出機能154が各項目について影響度を算出した後の、影響度集約機能156の処理について示す。例えば、影響度集約機能156は、図37に示すように、影響度算出機能154によって算出された項目ごとの影響度を、カテゴリごとに集約する。
例えば、影響度集約機能156は、各項目からカテゴリ「手術」に対応する項目の影響度を抽出し、最大値、平均値及び中央値をそれぞれ算出する。また、例えば、影響度集約機能156は、各項目からカテゴリ「治療前患者情報」に対応する項目の影響度を抽出し、最大値、平均値及び中央値を算出する。また、例えば、影響度集約機能156は、各項目からカテゴリ「クリニカルパス」に対応する項目の影響度を抽出し、最大値、平均値及び中央値を算出する。
第2の実施形態に係る表示制御機能155は、影響度集約機能156によって集約されたカテゴリごとの影響度をディスプレイ140に表示させる。図38は、第2の実施形態に係る表示制御機能155による影響度の表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能155は、図38に示すように、治療成績ごとに、各カテゴリの影響度をそれぞれ示した表示情報をディスプレイ140に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能155は、クリニカルパスのパス名「直腸S状部結腸癌」について、「術後感染」や、「縫合不全」、「再手術」、「術後感染症」、「再入院」などの各治療成績に対する「治療前患者情報」、「クリニカルパス」、「手術」の3つのカテゴリの影響度をそれぞれ表示させる。
ここで、表示制御機能155は、各治療成績に対して、影響度の最も大きいカテゴリを強調して表示させるように制御する。例えば、表示制御機能155は、図38に示すように、「術後感染」に対する影響度が最も高いカテゴリ「手術」を強調して表示させる。そして、表示制御機能155は、図38に示す「詳細へ」ボタンの押下を受け付けると、押下されたボタンに対応する治療成績に対する詳細な影響度の情報を表示させることができる。例えば、ユーザが、入力回路130を介して「術後感染」に対応付けられた「詳細へ」ボタンを押下すると、表示制御機能155は、「術後感染」に対して算出されたカテゴリ項目ごとの影響度をディスプレイ140に表示させる。これにより、ユーザは、各治療成績に対して、目的とする改善効果を得られるか俯瞰できるとともに、詳細な影響度についても容易に確認することができる。
なお、図38に示す表示例は、あくまでも一例であり、表示制御機能155による影響度の表示はこれに限定されるものではない。以下、図39及び図40を用いて、表示制御機能155による影響度の表示の例を説明する。図39及び図40は、第2の実施形態に係る表示制御機能155による影響度の表示の一例を示す図である。例えば、表示制御機能155は、図39の上段に示すように、カテゴリごとの影響度を円で示した表示情報をディスプレイ140に表示させる。ここで、表示制御機能155は、各カテゴリの影響度の違いを円の大きさによって表現した情報を表示させる。
一例を挙げると、表示制御機能155は、クリニカルパスのパス名「直腸S状部結腸癌」について、「手術」の影響度を示す円を最大の円とした表示情報を表示させる。そして、表示制御機能155は、図39に示す各円に対する指定操作を受け付けると、指定された円に対応するカテゴリの各項目の影響度の情報を表示させることができる。例えば、ユーザが、入力回路130を介して「手術」に対する指定操作を受け付けると、表示制御機能155は、カテゴリ「手術」に含まれる各項目の影響度をディスプレイ140に表示させる。ここで、表示制御機能155は、指定されたカテゴリの中で影響度の高い項目を選択して表示させる。
また、例えば、表示制御機能155は、図40に示すように、指定されたパスと治療成績に対する各項目間の影響度の強さを距離として提示し、影響度が高かった項目間で相関があるのかが判断できる表示情報を表示させる。ここで、図40に示す表示情報では、例えば、中心の十字が治療成績「術後感染あり/なし」に相当し、中心に近いプロットほど影響度が高い(相関が高い)ことを示す。また、図40においては、各プロット間(各項目間)の距離によって、各項目間の相関も示される。なお、図40に示す2次元プロットは、多次元尺度法を用いることで実現することができる。
例えば、ユーザは、図40に示す表示情報を参照して、術後感染あり/なしの治療成績には、クリニカルパスが最も相関が高い(影響度が高い)ことを認識することができる。ここで、ユーザは、入力回路130を介して、図40に示すように、各項目を示す各プロットに対して矢印で示すポインタを重畳させることで、当該プロットの詳細情報を表示させることもできる。また、表示制御機能155は、図40の右側の図に示すように、2次元プロットとともに、指定された治療成績「術後感染症あり/なし」との影響度が高い項目を降順に表示させることができる。
上述したように、第2の実施形態によれば、影響度集約機能156は、各情報の影響度をカテゴリごとに集約し、カテゴリごとの影響度をさらに算出する。従って、第2の実施形態に係る医用情報処理装置100aは、カテゴリごとの影響度、項目ごとの影響度、項目の実施日ごとの影響度を、それぞれ段階的に表示させることができる。これにより、医用情報処理装置100aは、治療対象に対する影響度を種々の観点から分析することを可能にする。
(第3の実施形態)
さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
例えば、上述した実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、治療の全体情報を用いてバリアンスを分析することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。