JP6970405B2 - 流動性食品の評価方法、流動性食品の製造方法、及び流動性食品の選択方法 - Google Patents

流動性食品の評価方法、流動性食品の製造方法、及び流動性食品の選択方法 Download PDF

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本技術は、流動性食品の評価方法、流動性食品の製造方法、及び流動性食品の選択方法に関する。より詳しくは、本技術は、舌圧を利用して流動性食品を評価することを含む、流動性食品の評価方法、流動性食品の製造方法、及び流動性食品の選択方法に関する。
食品の開発において着目される指標の一つに粘度がある。粘度は、例えば食べやすい食品又は飲み込みやすい食品の設計において参考とされる。例えば下記特許文献1には、「咀嚼・嚥下困難者が喫食しやすい食塊形成性などの物性を液状食品に付与するために、種々の増粘化剤が開発されて」いると記載されており(段落0002)、さらに「キサンタンガム1質量部に対し、0.001質量部以上0.5質量部未満のプルランを含有することを特徴とする咀嚼・嚥下困難者用増粘化剤。」(請求項1)が記載されている。
また、下記特許文献2には、咀嚼及び嚥下時における硬口蓋部に対する舌の接触圧を計測するための舌圧センサシートが記載されている(段落0001)。舌圧に関して、下記非特許文献1には、食品の押し潰し時の舌圧、嚥下時の舌圧、及び嚥下音から得られるデータによって摂食時の食べ易さや食塊のばらけにくさを数値化できたこと及び3パラメータを主成分分析し、第1主成分と第2主成分にて2次元マッピングすると、それぞれの座標が各食品の特徴をよく表していることが記載されている(結果・考察欄)。
特開2009−291176号公報 特開2006−000234号公報
第22回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 プログラム・抄録集第489頁
同じ粘度の食品であっても、口腔又は咽頭内における挙動は相違する場合があり、その結果口腔又は咽頭における生体側の動作も相違することがある。そして、これらの相違は、口腔咽頭機能の相違をもたらす。例えば、同じ粘度であっても、咽頭への早期流入又は口腔咽頭内の食物残留が起こりやすい食品もあれば、起こりにくい食品もある。そこで、食品の口腔咽頭機能に及ぼす影響を評価するための新たな指標が求められている。
本技術は、新たな食品の評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、流動性食品の口腔内で測定される舌圧と口腔咽頭機能における当該流動性食品の挙動又は口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性に着目し、本技術を完成するに至った。
すなわち、本技術は、
流動性食品の評価方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものであるとして選択すること、
を含む、前記評価方法を提供する。
また、本技術は、
流動性食品の評価方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものであるとして選択すること、
を含む、前記評価方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の評価方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものであるとして選択すること、
を含む、前記評価方法も提供する。

また、本技術は、
流動性食品の製造方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
を含む、前記製造方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の製造方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
を含む、前記製造方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の製造方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
を含む、前記製造方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の選択方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものであるとして選択すること、
を含む、前記選択方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の選択方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものであるとして選択すること、
を含む、前記選択方法も提供する。
また、本技術は、
流動性食品の選択方法であって、
複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものであるとして選択すること、
を含む、前記選択方法も提供する。
本技術により、流動性食品による口腔咽頭機能への影響を評価するための新たな方法が提供される。
なお、本技術により奏される効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
舌圧が測定される位置の例を示す図である。 舌圧センサシートが装着された口蓋を示す写真である。 咽頭マイクを装着した状態を示す写真である。 各試料の早期流入出現率を示すグラフである。 各試料の嚥下時における(ch3の舌圧値−ch1の舌圧値)を示すグラフである。
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の例を示したものであり、本技術はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
<1.流動性食品の評価方法>
本技術は、流動性食品の評価方法を提供する。当該方法は、口腔咽頭機能に適した流動性食品を、当該食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の、口蓋の少なくとも1つの位置での圧力(以下、食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の圧力を「舌圧」ともいう)を指標とし、当該流動性食品の口腔若しくは咽頭内における挙動、及び/又は、当該流動性食品の口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性に基づいて評価することを含む。
本発明者らは、粘度などの従来用いられていた指標では区別することができない食品間の相違と舌圧との間の関連性を見出した。当該関連性に基づき、食品が口腔及び/又は咽頭の機能に与える影響を評価することができる。
本技術において、「食品」とは、ヒトによって摂取されることができる食物及び飲料を包含する。本技術において食品は、例えば健常人により摂取される一般的な食品、摂食・嚥下機能を改善するための食品、摂食・嚥下困難者用の食品、高齢者用の食品、及び乳幼児用の食品を包含する。
本技術の評価方法は、上記のとおり食品の食べ易さ及び/又は飲み込み易さを評価するために適しているので、本技術において評価される食品は、特にはこのような評価を行うことが求められる食品である。例えば、本技術の一つの実施態様において、摂食・嚥下機能を改善するための食品、嚥下困難者用の食品、及び/又は高齢者用の食品が評価される。
本技術の方法は、特には流動性食品の評価に適している。そのため、本技術の好ましい実施態様において、本技術の方法は流動性食品の評価に用いられる。流動性食品とは、例えば試験管傾斜法又はこれと同様の方法によって流動性を評価可能な食品である。当該試験管傾斜法は、日本食品科学工学会誌第43巻第8号第970〜974頁、特には第971頁に記載されている。当該試験管傾斜法では、所定の試験管内に試料を入れ、当該試験管を110°(水平面から−20°)に素早く傾けた場合に、試料が試験管の口に達するまでの時間(以下、「流動時間」という)が測定される。当該流動時間が流動性の尺度である。本技術において、流動性食品とは、例えば当該方法に従い流動時間を測定可能な食品であり、特には当該流動時間が20分以下の食品、より特には10分以下の食品、さらにより特には10分以下且つ0.1秒以上、さらにより特には10分以下且つ0.2秒以上の食品であってよい。
流動性食品として、例えば液体食品及びとろみ状食品を挙げることができるが、これらに限定されない。とろみ状食品として、例えば「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」に記載されたとおりの薄いとろみ(粘度50〜150mPa・s)を有する食品、中間のとろみ(粘度150〜300mPa・s)を有する食品、及び濃いとろみ(粘度300〜500mPa・s)を有する食品を挙げることができる。
とろみ及び粘度は、市販されているとろみ剤、増粘多糖類、増粘安定剤、ゲル化剤を用いて付与することが出来る。例えば、デンプン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、プルラン、カラギナン、タラガム、片栗粉、コーンスターチ、ゼラチン、寒天等を利用して、とろみ及び粘度を食品に付与することが出来る。なかでも増粘多糖類である、キサンタンガムを用いることが好ましい。
本技術の流動性食品は、好ましくは水分を含有し、流動性のある液状の食品であれば特に限定されず、種々の食品が挙げられる。具体例として、水、牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ドリンクヨーグルト、果汁入り清涼飲料、機能性飲料、アルコール類、各種スープ、カレー、グラタン等の液状食品、醤油、ドレッシング、ソース等の液状調味料、ミキサー処理しピューレ状、ペースト状に調整された食品組成物、咀嚼、嚥下困難者等への流動食等を挙げることができる。咀嚼、嚥下困難者等への流動食には、水分補給用ゲル状食品、栄養補給用ゲル状・ペースト状食品、タンパク質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食が含まれる。
本技術において、嚥下の方法は、制限されないが、1-20mLの試料を一飲み(1回で嚥下)することが望ましい。
本技術における「流動性食品の評価方法」とは、流動性食品において、同一の物性パラメーターの食品における口腔咽頭機能に適した食品の評価することを意味するものであってよい。同一の物性パラメータとは、例えば粘度、流動性、弾性、外観、温度、テクスチャーを意味する。「口腔咽頭機能に適した食品の評価」とは、個々の患者における、例えば、食品の口腔咽頭機能への適性の評価、食品による口腔咽頭機能への影響の評価、食品の食べ易さ及び/又は飲み込みやすさの評価、及び、食品による摂食・嚥下異常の引き起こし易さの評価を包含する。
本技術において、「口腔咽頭機能」とは、食品の摂取時における口腔及び/又は咽頭の機能を意味し、例えば、嚥下、口唇閉鎖、咽頭流入、唾液分泌、咀嚼、口唇口頭筋力、発声等の生体動作が挙げられる。本技術により、流動性食品が個々の患者の口腔咽頭機能に適した食品か否かを評価できる。
本技術により選択された流動性食品は、摂食・嚥下困難者、高齢者、咀嚼困難者、口腔サルコペニア疾患、口腔フレイル疾患、ロコモティブシンドローム患者等に好適である。
本技術において、舌圧とは、口に取り込んだ食品を舌が口蓋前方部との間でつぶす力、すなわち食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の圧力を意味するものであってよい。
本技術において、「流動性食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の圧力(舌圧)」は例えば、舌圧センサによって測定される圧力である。本技術において、舌圧は、口蓋上の少なくとも一つの位置で測定される。本技術の好ましい実施態様において、舌圧は、口蓋上の1つの位置、又は、口蓋上の異なる2つ〜5つの位置で測定される。より好ましい実施態様において、舌圧は、口蓋上の1つの位置又は口蓋上の異なる2つの位置で測定される。
本技術において、舌圧は、例えば嚥下時における口蓋部(硬口蓋及び軟口蓋)、好ましくは硬口蓋部(口蓋床又は上顎義歯口蓋部を包含する)に対する舌の接触圧である。すなわち、本技術の好ましい実施態様において、硬口蓋部の少なくとも一つの位置での舌圧に関するパラメータと口腔若しくは咽頭内における食品の挙動及び/又は食品の口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性に基づき、食品の評価が行われる。
本技術の好ましい実施態様において、流動性食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の、口蓋の少なくとも1つの位置での圧力の指標として、以下を挙げることができる:
口蓋の1つの位置で測定される圧力値、
口蓋の1つの位置で測定される圧力の継続時間又は増加減少時間
口蓋の1つの位置で測定される圧力の最大値若しくは平均値、
口蓋の異なる2つ〜5つ(例えば2つ)の位置で測定される圧力値、
口蓋の異なる2つ〜5つ(例えば2つ)の位置で測定される圧力の継続時間又は増加減少時間
口蓋の異なる2つ〜5つ(例えば2つ)の位置で測定される圧力の最大値若しくは平均値、及び
口蓋の異なる2つ〜5つ(例えば2つ)で測定される圧力値の差、和、積、又は商、より特には差。
口蓋の異なる2つ〜5つ(例えば2つ)で測定される圧力の発現順序
前記圧力の継続時間は例えば、1回の嚥下動作において口蓋の或る位置に圧力がかかり続けた時間、又は、複数回の嚥下動作のそれぞれについて測定された前記時間の平均値である。
前記圧力の最大値は例えば、1回の嚥下動作の間に測定される圧力の最大値、又は、複数回の嚥下動作のそれぞれについて測定された前記最大値の平均値である。
前記圧力の平均値は例えば、1回又は複数回の嚥下動作の間において測定される圧力の平均値である。
本技術の方法において用いられる舌圧センサは例えば、複数の感圧部を有し且つ当該舌圧センサが口蓋に貼り付けられたときに当該複数の感圧部が所望の位置に配置されるように構成されているものである。当該感圧部として、当業者に既知の感圧センサが用いられてよく、例えば上記特許文献2に記載されたとおりの感圧インク層を含む感圧センサが用いられてよい。感圧部の形状は、例えば直径0.5〜8mm、好ましくは1〜5mmの円形(略円形を包含する)である。また、感圧部の厚みは、例えば15〜500μm、好ましくは20〜300μmである。舌圧センサとして、例えば上記特許文献2に記載されたとおりの舌圧センサシートが用いられてよい。
本技術において、「流動性食品の口腔若しくは咽頭内における挙動」とは、例えば、摂食・嚥下動作における、食品(又は咀嚼後の食塊)の口腔咽頭内における移動の仕方又は移動の早さなどである。
摂食・嚥下動作は、一般的に、先行期、準備期、口腔期、咽頭期、及び食道期の5期に分けられる。先行期では、食物が五感によって認識され、そして、食物が口腔内に取り込まれる。準備期では、食物が咀嚼されて、食塊が形成される。口腔期では、主に舌の運動によって、食塊が口腔から咽頭に送り込まれる。咽頭期では、食塊が咽頭を通り、食道に運ばれる。食道期では、食塊が食道から胃に運ばれる。本技術において、当該生体動作は例えば、嚥下時(特には口腔期又は咽頭期)における咽頭部分の筋肉の収縮、喉頭蓋の挙動、喉頭蓋付近の組織の挙動、又は舌の運動などである。
本技術の一つの実施態様において、「流動性食品の口腔若しくは咽頭内における挙動」は、口腔期、咽頭期、及び/又は食道期における、食品(又は咀嚼後の食塊)の口腔内及び咽頭内における移動の仕方及び/又は移動の速さである。より特には、「流動性食品の口腔若しくは咽頭内における挙動」は、口腔期及び/又は咽頭期における食品(又は咀嚼後の食塊)の口腔内及び咽頭内における移動の仕方又は移動の速さであり、例えば口腔咽頭内の所定の位置から他の所定の位置までの移動に要する時間などである。
本技術の好ましい実施態様において、当該挙動は、流動性食品の咽頭への流入挙動であり、より特には嚥下反射が起きる前の口腔内の食品の嚥下内視鏡視野内への移動である。嚥下反射が起きる前に、口腔内の食品が嚥下内視鏡視野内へ移動することによって、誤嚥の可能性、特には嚥下前又は嚥下中の誤嚥の可能性が高まる。
当該移動が観察されやすい食品ほど又は嚥下内視鏡視野内への移動が速い食品ほど、口腔咽頭機能へ適していないこと又は嚥下異常を引き起こしやすい食品であると評価することができる。すなわち、当該移動は、食品の口腔咽頭機能への適性の指標であり、より特には食品の食べ易さ及び/又は飲み込み易さの指標である。本発明者らは、舌圧と当該移動との間に関連性を見出した。そのため、当該関連性に基づき、食品が口腔咽頭機能に与える影響を評価することができる。
本技術において、「流動性食品の口腔咽頭機能における生体動作」とは、例えば、一連の摂食・嚥下動作における口腔及び/又は咽頭の生体構成要素(例えば筋肉、骨、及び軟骨など)の動作をいう。より特には、当該生体動作は、一連の摂食・嚥下動作のうち、口腔期、咽頭期、及び/又は食道期におけるものであり、さらにより特には口腔期及び/又は咽頭期におけるものである。
本技術の好ましい実施態様において、当該生体動作は、嚥下時咽頭収縮、特には嚥下時咽頭収縮の持続時間である。嚥下時咽頭収縮はホワイトアウトという現象によって観察される。ホワイトアウトとは、嚥下時における咽頭収縮により、嚥下内視鏡(VE)の視野が遮られて、当該嚥下内視鏡の画像が白くなり咽頭内が一時的に観察できなくなることをいう。ホワイトアウトの持続時間は、喉頭蓋が閉じている時間、すなわち嚥下時に咽頭が収縮している時間に対応する。嚥下時咽頭収縮は、例えば嚥下反射の惹起性の指標とされる。嚥下反射の惹起性には、咽頭の感覚機能、嚥下中枢の神経機能、中咽頭又は下咽頭の収縮筋などの運動機能が関与する。そのため、ホワイトアウトは、嚥下時の咽頭部分(特には中咽頭又は下咽頭)の筋肉の収縮の指標となる。
食品の嚥下時における嚥下時咽頭収縮の持続時間がより短いほど、摂取者への負荷はより少なくなる。すなわち、嚥下時咽頭収縮の持続時間は、食品の口腔咽頭機能への適性の指標であり、より特には食品の食べ易さ及び/又は飲み込み易さの指標である。本発明者らは、舌圧と嚥下時咽頭収縮の持続時間との間に関連性を見出した。そのため、当該関連性に基づき、食品が口腔咽頭機能に与える影響を評価することができる。
本技術の他の好ましい実施態様において、当該生体動作は、嚥下動作、嚥下動作の持続時間、特には嚥下時の嚥下音持続時間である。嚥下時の嚥下音持続時間は、咽頭の或る1か所(例えば喉頭蓋付近の咽頭部分)を食品が通過するのに要する時間である。
食品の嚥下時の嚥下音持続時間がより短いほど、当該食品はより食べ易いこと又は飲み込み易いことを意味する。すなわち、当該嚥下音持続時間は、食品の口腔咽頭機能への適性の指標であり、より特には食品の食べ易さ及び/又は飲み込みやすさの指標である。本発明者らは、舌圧と嚥下時の嚥下音持続時間との間に関連性を見出した。そのため、当該関連性に基づき、食品が口腔咽頭機能に与える影響を評価することができる。
本技術において、舌圧が測定される位置の例を、図1を参照して説明する。図1は、口蓋の模式図である。本技術の一つの実施態様において、舌圧が測定される位置は、図1に示されるch1〜ch5から選ばれる少なくとも一つの位置である。ch1〜ch5の位置を以下に説明する。
ch1は、口蓋正中線上の、切歯乳頭から1mm〜10mm後方、特には切歯乳頭から3〜8mm後方、より特には5mm後方の位置である。
ch2は、2つの鉤切痕を結ぶ線と口蓋正中線との交点と切歯乳頭とを結ぶ線上であり且つ切歯乳頭から1/3の位置であり、例えば口蓋正中線上且つ左右2つの第一小臼歯又は左右2つの第二小臼歯の間の位置である。
ch3は、2つの鉤切痕を結ぶ線と口蓋正中線との交点と切歯乳頭とを結ぶ線上で切歯乳頭から2/3の位置であり、例えば口蓋正中線上且つ左右2つの第一大臼歯又は左右2つの第二大臼歯の間の位置である。
ch4は、咽頭側からみて左側の鉤切痕と切歯乳頭とを結ぶ線上の前方から2/3の位置であり、例えばch3と咽頭側からみて左側の第一大臼歯又は第二大臼歯との間の位置、より特にはch3と咽頭側からみて左側の第一大臼歯又は第二大臼歯との中間位置よりも当該第一大臼歯側又は当該第二大臼歯側の位置である。
ch5は、咽頭側からみて右側の鉤切痕と切歯乳頭とを結ぶ線上の前方から2/3の位置であり、例えばch3と咽頭側からみて右側の第一大臼歯又は第二大臼歯との間の位置、より特にはch3と咽頭側からみて右側の第一大臼歯又は第二大臼歯との中間位置よりも当該第一大臼歯側又は当該第二大臼歯側の位置である。
図2に、舌圧センサシート1を硬口蓋に貼り付けた状態の一例の写真を示す。ch1〜ch5は、例えば図2に示されるとおりの位置にある。
本技術の一つの好ましい実施態様において、舌圧に関する指標は、口蓋正中部の咽頭側の1つの位置で測定される圧力又は圧力の持続時間若しくは増加減少時間であり、特には上記で述べたch3の位置で測定される圧力又は圧力の持続時間若しくは増加減少時間である。
口蓋正中部の咽頭側の1つの位置(より特にはch3の位置)で測定された舌圧の持続時間が、ホワイトアウト(より特にはホワイトアウトの持続時間)との間で、特に良い関連性を示す。そのため、口蓋正中部の咽頭側の1つの位置で測定された舌圧の持続時間とホワイトアウト(より特にはホワイトアウトの持続時間)との間の関連性に基づき、食品の口腔咽頭機能への影響を評価することができる。
また、口蓋正中部の咽頭側の位置(より特にはch3の位置)で測定された舌圧の最大値が、嚥下時の嚥下音持続時間との間で、特により良い関連性を示す。そのため、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定された舌圧の最大値と、嚥下時の嚥下音持続時間との間の関連性に基づき、食品の口腔咽頭機能への影響を評価することができる。
本技術の他の好ましい実施態様において、舌圧は、口蓋正中部の前歯側及び咽頭側の2つの位置で測定される圧力の差であり、特には上記で述べたch1及びch3の位置で測定される圧力の差である。
口蓋正中部の前歯側及び咽頭側の2つの位置(より特にはch1及びch3の位置)において測定された舌圧の差が、食品の咽頭内への流入挙動(特には口腔から嚥下内視鏡視野内への移動)との間で、特に良い関連性を示す。そのため、口蓋正中部の前歯側及び咽頭側の2つの位置で測定された舌圧と、食品の咽頭内への流入挙動との間の関連性に基づき、食品の口腔咽頭機能への影響を評価することができる。
本技術において、口蓋の少なくとも一つの位置での舌圧と、口腔若しくは咽頭内における流動性食品の挙動及び/又は流動性食品の口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性は、当業者により適宜選択されてよい。
本技術において、当該関連性は例えば相関関係、特には正の相関又は負の相関であってよく、又は、前記舌圧に関するパラメータと前記挙動及び/又は前記生体動作に関するパラメータのプロットにより見出される、相関関係以外の関係性であってもよい。当該相関関係以外の関係性は、例えば両パラメータのプロットによる散布図から見出される関係性であってよい。
また、本技術において、当該関連性は、多変量解析法により得られる関係性であってもよい。多変量解析として例えば主成分分析、因子分析、及び重回帰分析などの公知の手法を挙げることができる。
本技術に従う方法は、口腔咽頭機能に適した流動性食品を前記舌圧と前記挙動及び/又は前記生体動作との間の関連性に基づいて評価する工程に加えて、さらに他の工程を含んでもよい。当該他の工程として、当該食品のテクスチャーを評価する工程、当該食品の風味(味及び/又はにおい)を分析する工程、及び当該食品の物理的特性を評価する工程を含みうる。これらの工程は、当業者に既知の方法により行われてよい。本技術の方法がさらに食品のテクスチャーを評価する工程を含む場合、当該テクスチャー評価工程は、好ましくは上記で述べた舌圧センサを用いて行われる。これにより、舌圧センサを利用して、食品の口腔咽頭機能に対する影響及び当該食品のテクスチャーを同時に評価することができる。当該テクスチャー評価は、例えば、上記非特許文献1に記載のとおりに行われてよい。
本技術の方法により、流動性食品が個々の投与対象の口腔咽頭機能に適しているか、および/または口腔咽頭機能を向上させる傾向にあるかどうかを評価することが出来る。さらに本技術により、VE(嚥下内視鏡)検査を伴わず、口腔咽頭機能に適した流動性食品であるかどうかを評価することが出来、高齢者や嚥下困難者の嚥下の安全確保に効果的である。
さらに本技術により、多くの流動性食品の中から高齢者や嚥下困難者にとって、安全に嚥下しやすい飲食物を評価することができる。例えば口腔咽頭機能の指標としては、咽頭流入、嚥下が挙げられ、特に早期咽頭流入、嚥下時咽頭収縮、嚥下音持続時間等を選択することが出来る。
望ましい態様として、口腔咽頭機能において、流動性食品が早期咽頭流入に関与するかどうかは、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の圧力(特にはch3での舌圧)と、口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧(特にはch1での舌圧)の圧力差によって評価されることが好ましい。テストされる複数の試料のうち、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の圧力と、口蓋正中部の前歯側の位置で測定される舌圧の圧力の差が最も小さいものが、早期流入が起こりにくい傾向にある。嚥下反射が生じる前に早期咽頭流入によって誤嚥が生じることがあるので、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の圧力と、口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力の差が最も小さい流動性食品を選択し、その流動性食品または流動性食品の物性パラメーターを持つ食品は口腔咽頭機能に適した食品として、高齢者や嚥下困難者にとって安全に嚥下しやすい飲食物として提供することが可能である。
望ましい態様として、口腔咽頭機能において、流動性食品が嚥下時咽頭収縮に関与するかどうかは、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧(特にはch3)に圧力信号が入力され続ける時間によって評価されることが好ましい。テストされる複数の試料のうち、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される圧力の圧力信号が入力され続ける時間が短いものが、嚥下時の咽頭収縮時間が短い傾向にある。
嚥下時の咽頭収縮時間が短い方が、より早期に次の食品を口腔内に投与することが可能となる。従って、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の圧力信号が入力され続ける時間が短い流動性食品を選択し、その流動性食品または流動性食品の物性パラメーターを持つ食品を口腔咽頭機能に適した食品として、高齢者や嚥下困難者にとって安全に嚥下しやすい飲食物として提供することが可能である。
望ましい態様として、口腔咽頭機能において、流動性食品が嚥下音持続時間に関与するかどうかは、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧(特にはch3での舌圧)の大きさによって、評価されることが好ましい。テストされる複数の試料のうち、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される圧力が大きい方が、嚥下音持続時間が短い傾向にある。
嚥下音持続時間が短い方が、口腔内でスムーズに嚥下していると判断される。従って、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の圧力信号が大きい流動性食品を選択し、その流動性食品または流動性食品の物性パラメーターを口腔咽頭機能に適した食品として、高齢者や嚥下困難者にとって安全に嚥下しやすい飲食物として提供することが可能である。
<2.流動性食品の製造方法>
本技術は、流動性食品の製造方法も提供する。当該製造方法は、口腔咽頭機能に適した食品を、当該食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の、口蓋の少なくとも一つの位置での圧力を指標とし、当該食品の口腔若しくは咽頭内における挙動、及び/又は、当該食品の口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性に基づいて評価することを含む。すなわち、本技術に従う製造方法は、本技術に従う評価方法を含むものである。これにより、口腔咽頭機能に適した食品を製造することが可能である。
本技術の製造方法により、例えば、上記「1.流動性食品の評価方法」で述べた流動性食品を製造することができる。
本技術の食品は、舌圧を指標とし、同一の物性パラメーターをもつ複数の流動性食品の流動性食品の口腔もしくは咽頭内の当該食品の挙動及び/又は当該食品の口腔咽頭機能における生体動作との関連性、すなわち飲みこみやすさ、または食べやすさを評価することにより、選択された流動性食品または物性パラメーターをもとに製造される。当該食品の選択の方法として、上記「1.流動性食品の評価方法」において述べた方法を用いることができ、特には早期咽頭流入、嚥下時咽頭収縮、又は嚥下音持続時間に基づく流動性食品の選択方法が例示できる。
すなわち、本技術の方法により製造される食品は、食べやすい、飲み込みやすい、早期流入を起こしにくい、咀嚼しやすい等の1または複数の性質を保有している。
本技術で製造される食品は、好ましくは水分を含有し、流動性のある液状の食品であれば特に限定されず、種々の食品が挙げられる。具体例として、水、牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ドリンクヨーグルト、果汁入り清涼飲料、機能性飲料、アルコール類、各種スープ、カレー、グラタン等の液状食品、醤油、ドレッシング、ソース等の液状調味料、ミキサー処理しピューレ状、ペースト状に調整された食品組成物、咀嚼、嚥下困難者等への流動食等を挙げることができる。咀嚼、嚥下困難者等への流動食には、水分補給用ゲル状食品、栄養補給用ゲル状・ペースト状食品、タンパク質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食が含まれる。
本技術で製造される食品は、評価により選択された食品が保有する物性パラメーターを上述の食品群に付与すること、添加することによっても達成できる。
さらに本技術の食品には、糖類、ビタミン、ミネラル、機能性成分、色素、香料、人工甘味料、栄養補給剤等を添加してもよい。
また、本技術の製造方法において、前記評価方法が、食品の品質検査を行うために用いられてもよい。これにより、例えば食品の口腔咽頭機能への所望の適性を有するかを検査することができる。
また、本技術の製造方法において、上記評価方法によって得られた評価結果が食品に表示されてもよい。具体的には、例えば、食品の包装若しくは容器、梱包材、又は同梱される付属品などに当該評価結果が表示されてよい。このような表示は、食品の口腔咽頭機能に対する影響を指標とした食品の選択において有用である。例えば、咀嚼・嚥下困難者に提供する食品を選択する際に、当該表示された評価結果を参考にして、個人の咀嚼力や嚥下力に応じた適切な食品を選択することがきる。
本技術に従う製造方法において、口腔咽頭機能に適した食品の評価は、食品の製造工程における任意の段階において行われてよい。例えば、本技術の製造方法において、食品の製造後に前記評価を行い、当該評価の結果に基づき、製造された食品の特性をさらに調整することが行われてよい。又は、本技術の製造方法において、食品の製造後に前記評価を行い、当該評価の結果に基づき、食品の組成又は製造方法を変更し、所望の特性を有する食品を製造することが行われてもよい。
<3.流動性食品の選択方法>
本技術は、流動性食品の選択方法も提供する。本方法によれば、多くの流動性食品から高齢者や嚥下困難者にとって、安全な嚥下しやすい流動性食品を選別することが出来る。当該選択方法は、複数の流動性食品の口腔咽頭機能における影響を、各流動性食品の嚥下時に舌が口蓋を押さえる際の、口蓋の少なくとも一つの位置での圧力を指標とし、各流動性食品の口腔若しくは咽頭内における挙動、及び/又は、当該流動性食品の口腔咽頭機能における生体動作との間の関連性に基づいて評価すること、及び前記口腔咽頭機能に基づき、当該複数の流動性食品のうちから所望の流動性食品を選択することを含む。当該食品の選択方法として、上記「1.流動性食品の評価方法」において述べた方法を用いることができ、特には早期咽頭流入、嚥下時咽頭収縮、又は嚥下音持続時間に基づく流動性食品の選択方法が例示できる。
本技術に従う流動性食品の選択方法において、前記評価が行われ、当該評価の結果に基づき流動性食品が選択されるので、口腔咽頭機能により適した流動性食品を選択することが可能となる。
例えば、本技術に従う流動性食品の選択方法において、或る食品を製造するための材料のうち、特定の材料(例えば増粘剤又はゲル化剤など)のみを変更した複数の食品を用意し、そして、当該複数の食品を用いて上記選択方法が行われる。これにより、例えば食べ易い又は飲み込み易い食品を選択することができる。
本技術に従い評価、製造、又は選択された飲食品組成物は、嚥下困難者用食品等の保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。かかる表示としては、例えば、嚥下困難者であるヒトを対象として、「食べ物がうまく飲み込めない方へ」、「食事の時にむせる方へ」等と表示することが挙げられる。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
斯様にして本技術の製造方法により得られた食品により、嚥下が難しい高齢者等が、簡単に嚥下をし、誤嚥や窒息を防ぐことが可能になる。
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、本技術の範囲はこれら実施例に限定されるものでない。
<被験食品>
キサンタンガム、澱粉、グァガムの3品を水に溶解させ、E型回転粘度計(TOKI産業 TPE-100型粘度計)における20℃、ずり速度50sec-1の粘度を所定の値に調製した溶液を被験食品とした。
<舌圧測定>
健常有歯顎者の口腔内に、図2に示されるとおりに、舌圧センサ(Swallow Scan、ニッタ株式会社製)を装着した。すなわち、舌圧センサのch1〜ch5の位置で舌圧が測定されるように、当該舌圧センサは装着された。
上記7種の試料それぞれを3ml又は15mlずつ20℃で上記健常有歯顎者に口内に含ませ、そして、指示を与えることで当該試料を嚥下させた。当該試料を嚥下した際のch1〜ch5の舌圧を測定した。舌圧の単位はkPaで示す。
<被験者>
以上の舌圧測定を合計10人の健常有歯顎者に対して行った。
<嚥下内視鏡検査>
上記舌圧測定の際に、被験者の鼻から内視鏡(鼻咽頭喉頭ファイバースコープ)を10cm程度入れて、食塊の動態、試料の挙動及び嚥下諸器官の動作を観察した。
1)嚥下時咽頭収縮時間の測定
当該嚥下諸器官の動作として、嚥下時咽頭収縮時間の持続時間を測定した。また、嚥下時に内視鏡視野が咽頭収縮によって遮られる時間を、嚥下時咽頭収縮時間の持続時間とした。
2)早期咽頭流入の測定
嚥下反射が生じる前に内視鏡視野内に侵入した試料があった場合に、早期咽頭流入が起こったと判定した。
<嚥下音測定>
上記舌圧測定の際に咽頭マイク(Voice Touch、有限会社南豆無線電機製)を装着し、当該嚥下諸器官の動作として嚥下音持続時間を測定した。図3に示されるとおり、咽頭マイク2は被験者の喉頭蓋の位置に装着された。
<舌圧と早期咽頭流入との間の関係>
試料として、粘度が400mPa・sであるキサンタンガム水溶液、澱粉水溶液、グァガム水溶液の3品を用い、被験者10人に3mLをそれぞれ3回ずつ摂取させた。以下表1に、被験者10人における早期咽頭流入が観察された人数及び観察されなかった人数、及び早期咽頭流入が起こった人数の割合(早期流入出現率)を示す。図4に、早期流入出現率に関するグラフを示す。
Figure 0006970405
以下表2に、ch3での舌圧値とch1での舌圧値との差を示す。下記表2に記載された舌圧値(ch3−ch1)は、被験者の平均値である。また、図5に、当該差に関するグラフを示す。
Figure 0006970405
表1及び図4に示されるとおり、同じ粘度であっても、キサンタンガム水溶液の場合が最も低い早期流入出現率を示し、デンプン水溶液の場合がより高い早期流入出現率を示し、そして、グァガム水溶液の場合が最も高い早期流入出現率を示した。表2及び図5に示されるとおり、(ch3における舌圧値−ch1における舌圧値)の値は、キサンタンガム水溶液の場合が最も低く、次がデンプン水溶液の場合であり、そして、グァガム水溶液の場合が最も高かった。以上のとおり、(ch3における舌圧値−ch1における舌圧値)の値が低いほど、早期咽頭流入が起こりにくい。
以上より、早期流入のしやすさと(ch3における舌圧値−ch1における舌圧値)の値との間には関連性があることが確認された。従って、早期流入のしやすさと(ch3における舌圧値−ch1における舌圧値)の値との間の関連性に基づき、食品の口腔咽頭機能に対する影響を評価することができる。
<舌圧と嚥下時咽頭収縮時間との関係>
試料として、粘度が200mPa・sであるキサンタンガム水溶液及び澱粉水溶液の2品を用い、被験者に15mL摂取させた。以下表3に、被験者10人における舌圧と嚥下時咽頭収縮時間の関係を示す。表3に示すとおり、当該10人の嚥下時咽頭収縮時間の平均値とch3に圧力信号が入力された持続時間の平均値の間に正の相関(0.39)が認められた。また、デンプン水溶液とキサンタンガム水溶液のch3に圧力信号が入力された持続時間の間に有意差(p=0.047)が確認され、ch3における舌圧値持続時間が短いデンプン水溶液がより嚥下時咽頭収縮時間が短いことが明らかになった。
以上より、嚥下時咽頭収縮時間とch3における舌圧値持続時間との間に関連性があることが確認された。従って、嚥下時咽頭時間収縮とch3の舌圧値持続時間との間の関連性に基づき、食品の口腔咽頭機能に対する影響を評価することができる。
Figure 0006970405
<舌圧と嚥下音持続時間との関係>
試料として、粘度が400mPa・sであるキサンタンガム水溶液、澱粉水溶液、グァガム水溶液の3品を用い、被験者に3mL摂取させた。以下表4に、被験者10人における舌圧と嚥下音持続時間の関係を示す。表4に示すとおり、当該10人の嚥下時の流動音継続時間の平均値とch3の舌圧最大値の平均値の間に負の相関(-0.27)が認められた。また、デンプン水溶液とキサンタンガム水溶液のch3の舌圧最大値の間に有意差(p=0.043)、及びデンプン水溶液とグァガム水溶液のch3の舌圧最大値の間に有意差(p=0.017)が認められ、ch3における舌圧最大値が大きいグァガム水溶液が嚥下音持続時間が短いことが明らかになった。
以上より、嚥下時の流動音継続時間とch3における舌圧最大値との間に関連性があることが確認された。従って、嚥下時の流動音継続時間とch3の舌圧値持続時間との間の関連性に基づき、食品口腔咽頭機能に対する影響を評価することができる。
Figure 0006970405
本技術により、食品が口腔咽頭機能に与える影響を評価するための新たな方法が提供される。本技術に従う方法は、幅広い食品に対して適用可能であり、粘度などの従来の指標では区別できなかった食品の特性を評価することができる。

Claims (9)

  1. 流動性食品の評価方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
    前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものであるとして選択すること、
    を含む、前記評価方法。
  2. 流動性食品の評価方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものであるとして選択すること、
    を含む、前記評価方法。
  3. 流動性食品の評価方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものであるとして選択すること、
    を含む、前記評価方法。
  4. 流動性食品の製造方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
    前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
    を含む、前記製造方法。
  5. 流動性食品の製造方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
    を含む、前記製造方法。
  6. 流動性食品の製造方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものである、前記製造方法における製造対象として選択すること、
    を含む、前記製造方法。
  7. 流動性食品の選択方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧と口蓋正中部の前歯側で測定される舌圧の圧力差を測定すること、及び
    前記複数の流動性食品のうちから、前記圧力差がより小さいものを、早期咽頭流入がより起こりにくいものであるとして選択すること、
    を含む、前記選択方法。
  8. 流動性食品の選択方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧の継続時間を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記継続時間がより短いものを、嚥下時の咽頭収縮時間がより短いものであるとして選択すること、
    を含む、前記選択方法。
  9. 流動性食品の選択方法であって、
    複数の流動性食品について、口蓋正中部の咽頭側の位置で測定される舌圧を測定すること、及び、
    当該複数の流動性食品のうちから、前記舌圧がより大きいものを、嚥下音持続時間がより短いものであるとして選択すること、
    を含む、前記選択方法。
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