以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
本明細書において、「人工衛星」という用語は、天体、特に地球のまわりを周回可能な人工物として規定される。したがって、人工衛星は、天体、特に地球のまわりを現に周回している状態に限らず、周回する予定又は可能性のある人工物であればよい。
本実施形態における人工衛星システムは、少なくとも1つ、好ましくは複数の人工衛星を有する。複数の人工衛星は、打ち上げ前に互いに密集して取り付けられた人工衛星組立体を構成していてよい。
[人工衛星組立体]
図1は、一実施形態に係る人工衛星組立体の模式的斜視図である。図2は、基準軌道に沿った方向に整列させた複数の第1人工衛星を示す模式的斜視図である。図3は、人工衛星組立体に設けられた一実施例に係る第1人工衛星の模式的斜視図である。図4は、人工衛星組立体に設けられた一実施例に係る第2人工衛星の模式的斜視図である。図5は、パネル展開中の第2人工衛星の模式的斜視図である。図6は、複数の人工衛星を含む人工衛星システム、及び制御システムの構成を示すブロック図である。なお、各図において、発明の説明上必要のないものについては、図示していない構成もあり得ることに留意されたい。
人工衛星組立体100は、少なくとも1つの第1人工衛星200(以下、「基準衛星」と称することもある。)と、少なくとも1つの第2人工衛星300(以下、単に「人工衛星」と称することもある。)と、を有していてよい。好ましくは、人工衛星組立体100は、複数の第1人工衛星200と複数の第2人工衛星300を有している。
人工衛星組立体100は、底板110と、少なくとも1つのロッド120と、を有していてよい。少なくとも1つ、好ましくは複数の第1人工衛星200は、底板110に取り付けられている。
図1に示す例では、複数の第1人工衛星200が、底板110に交差する方向に積み重ねられている。さらに、複数の第1人工衛星200が、底板110に平行な面内で配列されている。これにより、人工衛星組立体100は、多数の第1人工衛星200を密に含むことができる。
図1に示す例の代わりに、第1人工衛星200は、底板110に交差する方向に積み重ねられていなくてもよい。また、第1人工衛星200は、底板110に平行な面内で配列されていなくてもよい。この場合、人工衛星組立体100は、1つの第1人工衛星200だけを含んでいてもよい。
各々の第1人工衛星200は、治具220と、底板230と、筐体240と、を有していてよい。治具220及び筐体240は、底板230に取り付けられていてよい。各々の人工衛星200は、一対の治具220を有していてよい。
治具220は、筒形状であってよい。複数の第1人工衛星200は、それぞれの治具220を同軸状に位置合わせした状態で、互いに積み重ねられていることが好ましい(図1参照)。複数の第1人工衛星200が互いに積み重ねられた状態において、ロッド120は、筒状の治具220を貫通するよう配置される(図1参照)。
底板110とは反対側のロッド120の先端は、筒状の治具220の内径よりも大きい径を有する部材を含む。これにより、人工衛星組立体100の底板110から延びたロッド120によって、互いに積み重ねられた複数の第1人工衛星200は、底板110に固定される。
ロッド120は、底板110とは反対側のロッド120の先端部を破断する不図示の破断機構を有していてよい。この破断機構は、例えば火工品であってよい。火工品は、電源から給電される点火用電力によって点火される。破断機構によりロッド120の先端部が破断されると、第1人工衛星200は人工衛星組立体100の底板110から解放され、地球を周回する軌道上に投入される。
第1人工衛星200は、第2人工衛星300を収容する複数の収容部210を有していてよい。図3に示す例では、第1人工衛星200は、16個の第2人工衛星300を収容可能に構成されている。収容部210は、第2人工衛星300が軌道に投入される前には、蓋212によって閉じられていてよい。蓋212は、例えば電気信号に起因して解放可能に構成されていてよい。第1人工衛星200が複数の第2人工衛星300を収容することによって、一度の打ち上げによって多数の人工衛星を飛翔させることができる。
第1人工衛星200は、必要に応じて、第1推進機250、第1通信機260、第2通信機262を有していてよい。推進機250は、第1人工衛星200に蓄えられたエネルギーを利用して、第1人工衛星200を推進させる。推進機250は、第1人工衛星200を所望の軌道に投入したり、軌道のずれを修正したりするために用いられる。
第1通信機260は、例えばマイクロ波の周波数帯の電波によって地上の基地局600と通信可能に構成されていてよい。第2通信機262は、後述する第2人工衛星300と通信するために設けられていてよい。第2通信機262は、第2人工衛星300の後述する第4通信機362を介して第2人工衛星300と無線通信可能に構成されていてもよい。
第1人工衛星200は、必要に応じて、以下の第2人工衛星300に設けられているような光源(不図示)を有していてもよい。また、第1人工衛星200は、必要に応じて、第1人工衛星200の姿勢(向き)を調整する第1姿勢制御装置252を有していてもよい。これにより、天体、特に地球の中心を基準とした第1人工衛星200の姿勢を制御することができる。
第1姿勢制御装置252は、例えば角速度センサ(ジャイロセンサ)や、地磁気を計測するセンサ等を含んでいてよい。第1姿勢制御装置252として、例えば特許文献4に記載されているような装置を利用することもできる。
さらに、第1人工衛星200は、天体に対する自身の位置情報を計測又は取得するための第1位置情報取得装置270を有していてもよい。第1位置情報取得装置270は、特に限定されないが、例えばGPS衛星から発せられるGPS信号を受信する装置であってよい。
第2人工衛星300は、必要に応じて、推進機350、第3通信機360、第4通信機362、太陽光発電パネル375及び光源390を有していてよい。各々の第2人工衛星300は、例えば1〜60kg程度の小型の人工衛星であることが好ましい。これにより、人工衛星組立体100の全体の重量の増加を抑制することができる。
推進機350は、第2人工衛星300に蓄えられたエネルギーを利用して、第2人工衛星300を推進させる。推進機350は、第2人工衛星300を所望の軌道に投入したり、軌道のずれを修正したり、第2人工衛星300の姿勢を制御したりするために用いられる。
太陽光発電パネル375は、太陽光を電気エネルギーに変換するために用いられる。これにより、第2人工衛星300は、天体のまわりを周回している間に、電気エネルギーを蓄えることができる。なお、第2人工衛星300は、電気エネルギーを蓄えるための不図示の蓄電池を有していてもよい。
第2人工衛星300の太陽光発電パネル375は、図5に示すように、展開可能に構成されていてよい。これにより、第2人工衛星300は、太陽の光が当たっている間に、効率よくエネルギー蓄えることができる。
第3通信機360は、例えばマイクロ波の周波数帯の電波によって地上の基地局と通信可能に構成されていてよい。第4通信機362は、前述したように第1人工衛星200と通信するために設けられていてよい。
光源390は、指向性を有する可視光線を発生可能であることが好ましい。光源390は、好ましくはレーザ光源である。具体的な例では、光源390は、複数並べられたレーザダイオードを有していてよい。必要に応じて、レーザダイオードの至近にコリメートレンズが設けられていても良い。コリメートレンズの位置及び/又は角度は微調節可能に構成されていてよく、これにより光源390から発せられた可視光線の発散角や、照射方向が調整可能になっていてもよい。
光源390から発せられる可視光線の光量は調整可能であることが好ましい。1つのレーザダイオードから発せられる光の光量が調整可能に構成されていてもよい。この代わりに、又はこれに加えて、光源390から発せられる可視光線の光量は、発光させるレーザダイオードの数によっても調整可能である。さらに、光源390から発せられる可視光線の色が調整可能であってもよい。
光源390から発生された可視光線の発散角は、特に限定されないが、例えば0〜20deg、好ましくは0.1〜1.0deg程度であってよい。これにより、人工衛星から地上の局所的な領域にのみ、可視光線を照射することができる。人工衛星から地上の特定の領域に光を照射することにより、当該特定の領域に人工衛星から光による演出を視認させることができる。また、地上の意図しない地域に可視光線が照射されないため、光害の影響を抑止することができる。
第2人工衛星300は、第2人工衛星300の姿勢(向き)を調整する第2姿勢制御装置352を有していてもよい。これにより、天体、特に地球の中心を基準とした第2人工衛星300の姿勢を制御することができる。
第2姿勢制御装置352は、例えば角速度センサ(ジャイロセンサ)や、地磁気を計測するセンサ等を含んでいてよい。第2姿勢制御装置352として、例えば特許文献4に記載されているような装置を利用することもできる。
さらに、第2人工衛星300は、天体に対する自身の位置情報を計測又は取得するための第2位置情報取得装置370を有していてもよい。第2位置情報取得装置370は、特に限定されないが、例えばGPS衛星から発せられるGPS信号を受信する装置であってよい。
第1人工衛星200は、人工衛星組立体100、及び/又は人工衛星組立体100から解放された複数の人工衛星からなる人工衛星群の各種の制御を行う制御システム400を備えていてよい。
制御システム400は、第1人工衛星200、第2人工衛星300及び基地局600のコンピュータ端末に備えられたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含んでいてよい。この場合、制御システム400は、第1人工衛星200、第2人工衛星300及び基地局600のコンピュータ端末に備えられた制御系の組み合わせによって構成される。この代わりに、制御システム400は、第1人工衛星200、第2人工衛星300及び基地局600のコンピュータのうちの1つ、又は2つのみを含んでいてもよい。
CPUは、人工衛星システムを制御する演算装置のうちの1つであってよい。ROMは、CPUによる各種の処理を実現するプログラムなどを記憶する。そのようなプログラムは、例えば後述の実施形態で説明した各種の制御を実行するためのプログラムであってよい。RAMは、CPUによる各種の処理に必要なデータを記憶する。
好ましい態様の1つでは、第1人工衛星200は、第1制御部410を有する。第1制御部410は、CPU、ROM及びRAMを含んでいてよい。第1制御部410は、第1人工衛星200における各種の制御を行う。
また、第1制御部410は、基地局600のコンピュータと第2人工衛星300とを通信させるための中継器(ハブ)としての機能を有していてもよい。この場合、基地局600のコンピュータからの指令は、第1人工衛星200の第1通信器260を介して第1制御部410に送られる。第1制御部410は、基地局600のコンピュータからの指令を受けて、当該指令、又は当該指令基づいて生成された指令を、第2通信機262及び第4通信機362を介して第2人工衛星300へ送る。この場合、第1制御部410は、第2人工衛星300に関する制御指令を行うための各種の演算を行ってよい。
第2人工衛星300は、第2制御部420を有する。第2制御部420は、CPU、ROM及びRAMを含んでいてよい。第2制御部420は、第2人工衛星300における各種の制御を行う。
制御システム400は、軌道制御システム430、発光制御システム440及び姿勢制御システム450を有していてよい。軌道制御システム430は、第1人工衛星200及び第2人工衛星300の軌道に関する制御を行う。
軌道制御システム430は、第1軌道制御ユニット432及び第2軌道制御ユニット434を含んでいてよい。第1軌道制御ユニット432は、第1人工衛星200に設けられており、第1人工衛星200の軌道に関する制御を行う。
第1軌道制御ユニット432は、第1人工衛星200を目標とする軌道、例えば以下に詳述する軌道へ投入したり、第1人工衛星200の目標とする軌道からのずれを解消したりするように、第1人工衛星200を制御してよい。
例えば、第1軌道制御ユニット432は、第1位置情報取得装置270から第1人工衛星200の位置を取得し、第1人工衛星200の実際の位置と目標とする軌道との差分を算出してもよい。第1軌道制御ユニット432は、この差分を解消するように、第1推進機250を稼働させればよい。目標とする軌道の好ましい例については後述する。
第2軌道制御ユニット434は、第2人工衛星300に設けられており、第2人工衛星300の軌道に関する制御を行う。第2軌道制御ユニット434は、第2人工衛星300を目標とする軌道、例えば以下に詳述する軌道へ投入したり、第2人工衛星300の目標とする軌道からのずれを解消したりするように、第2人工衛星300を制御してよい。
例えば、第2軌道制御ユニット434は、第2位置情報取得装置370から第2人工衛星300の位置を取得し、第2人工衛星300の実際の位置と目標とする軌道との差分を算出してもよい。第2軌道制御ユニット434は、この差分を解消するように、第2推進機350を稼働させればよい。目標とする軌道の好ましい例については後述する。
前述した人工衛星組立体100は、例えばロケットの先端に設けられたフェアリング内に収容された状態で打ち上げられてよい。ロケットが、後述する目標の基準軌道付近に到達したときに、フェアリングが解放され、人工衛星組立体100が基準軌道付近に投入される。次に、人工衛星組立体100に設けられた上記の破断機構を作用させることによって、少なくとも1つ、好ましくは複数の第1人工衛星200が、基準軌道付近に投入される。
複数の第1人工衛星200が解放された場合、各々の第1人工衛星200の位置は、軌道制御システム430による制御に基づいて推進機250によって調整される。例えば、後述する好ましい基準軌道の場合、軌道制御システム430は、複数の第1人工衛星200を、天体を周回する基準軌道上の周回方向(以下、「トラック方向(along track direction)」と称することがある。)に沿って並んで飛行するよう制御することが好ましい。ただし、複数の第1人工衛星200の配列は、これに制限されないことに留意されたい。
次に、第2人工衛星300が、第1人工衛星200から放出される。複数の第1人工衛星200は、時間を隔てて順番に放出されてもよい。第1人工衛星200から放出された第2人工衛星300は、軌道制御システム430により制御された推進機350の作用によって、第1人工衛星200を基準とした相対軌道へ遷移することが好ましい。
第1人工衛星200から放出された第2人工衛星300が、何らかの不具合、例えば通信不能の不具合を有する場合、第2人工衛星300の第2推進機350は稼働せず、第2人工衛星300は、予定された軌道から外れる。ここで、予定された軌道が、大気圏内における軌道である場合、不具合を有する第2人工衛星300は、大気の影響で高度を下げ、大気によってすべて又はほとんど燃え尽きてもよい。なお、第2人工衛星300の高度が例えば1000km程度を超える場合、大気の影響による高度の低下は小さいので、第2推進機350を稼働させて第2人工衛星300の高度を積極的に低下させてもよい。
第1人工衛星200及び第2人工衛星300が目標とする軌道に投入されると、制御システムは、定常運用フェーズに入る。定常運用フェーズにおいて、第1軌道制御ユニット432及び第2軌道制御ユニット434は、それぞれ第1人工衛星200及び第2人工衛星300の実際の位置と目標とする軌道との差分を解消するように、それぞれ第1推進機250及び第2推進機350を稼働してもよい。
また、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300が故障した場合、もしくは第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の運用が終了した場合には、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の電源をOFFにすればよい。これにより、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300は、大気の影響で高度を下げ、大気によってすべて又はほとんど燃え尽きてもよい。なお、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の高度が例えば1000km程度を超える場合、大気の影響による高度の低下は小さいので、第1推進機250及び/又は第2推進機350を稼働させて第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の高度を積極的に低下させてもよい。
姿勢制御部450は、定常運用フェーズにおいて、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の姿勢を制御するよう構成されている。姿勢制御部450は、第1姿勢制御ユニット452と第2姿勢制御ユニット454を含んでいてよい。
第1姿勢制御ユニット452は、第1人工衛星200に設けられており、第1人工衛星200の姿勢に関する制御を行う。第1姿勢制御ユニット452は、第1姿勢制御装置252をコントロールすることによって第1人工衛星200の姿勢を制御することができる。
第2姿勢制御ユニット454は、第2人工衛星300に設けられており、第2人工衛星300の姿勢に関する制御を行う。第2姿勢制御ユニット454は、第2姿勢制御装置254をコントロールすることによって第2人工衛星300の姿勢を制御することができる。
例えば、第2人工衛星300が地球と太陽の間に位置する場合、第2姿勢制御ユニット454は、太陽光発電パネル375を太陽に向けるよう第2人工衛星300の姿勢を制御してもよい。
また、第2人工衛星300が地球に関して太陽と概ね反対に位置する場合、第2姿勢制御ユニット454は、光源390から出射された可視光線が地球上の特定の領域に向かうように、第2人工衛星300の姿勢を制御してもよい。
発光制御システム440は、定常運用フェーズにおいて、光源390の発光条件を決定したり、当該発光条件に基づいて光源390を制御したりするよう構成されていてよい。発光制御システム440は、必要に応じて第1発光制御ユニット442と第2発光制御ユニット444を含んでいてよい。
第1発光制御ユニット442は、第1人工衛星200に設けられていてよい。この代わりに、第1発光制御ユニット442は、第2人工衛星300に設けられていてもよい。さらに、第1発光制御ユニット442は、基地局600又は地上に存在するコンピュータに設けられていてもよい。第1発光制御ユニット442は、各種の情報に基づいて、光源390の発光条件を決定すればよい。
発光条件は、光源390のON/OFF、可視光線の光量、可視光線の発散角及び可視光線の色のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つを含んでいてよい。発光制御システム440は、いっそう好ましくは、前述の発光条件を発光予定時間(時刻)と紐づけて決定するよう構成されていてよい。このようにして、発光制御システム440は、飛行中の人工衛星に搭載された光源390の発光条件を決定する。
第2発光制御ユニット444は、第2人工衛星300に設けられていてよい。第2発光制御ユニット444は、前述のように決定された発光条件に基づいて、光源390を発光させるよう制御する。なお、第1発光制御ユニット442と第2発光制御ユニット444は、可能であれば一つの制御装置に搭載されていてもよい。
発光制御システム440は、光源390から発せられた可視光線を照射すべき位置に関する情報と、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の位置に関する情報の少なくとも一方、好ましくは両方に基づいて、光源390の発光条件を決定してもよい。
発光制御システム440は、可視光線を照射すべき位置に関する情報を、基地局600に設けられたコンピュータ610からの指令に基づいて取得することができる。具体的には、基地局600に設けられたコンピュータ610は、第5通信機660を介して、第1通信機260及び/又は第2通信機360と通信する。
可視光線を照射すべき位置は、例えば地球上の緯度及び経度に関する情報であってよい。可視光線を照射すべき位置に関する情報は、ユーザによって変更可能になっていてよい。
発光制御システム440は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の位置に関する情報を、第1位置情報取得装置270及び/又は第2位置情報取得装置370から取得することができる。発光制御システム440は、可視光線を照射すべき位置と、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の位置との関係に基づいて、発光条件を決定してもよい。
図7は、人工衛星に搭載された光源から可視光線を出射する様子を示す模式図である。図8は、図7とは異なる位置にいる人工衛星に搭載された光源から可視光線を出射する様子を示す模式図である。具体的には、図8において人工衛星300は、図7に示す人工衛星300と同じ軌道O上の異なる位置にいる。また、図7及び図8では、説明の都合上、簡略化のため、1つの第2人工衛星300のみが示されている。
図7及び図8に示すように、光源390から出射した可視光線が地上Gの特定の領域Sに照射され続けるように、人工衛星300が飛行している間、人工衛星300の姿勢が制御されている。これにより、可視光線が意図しない方向へ照射されないようにすることができる。このように、姿勢制御部450は、光源390から可視光線を発光中に、人工衛星300の姿勢を制御するよう構成されていてよい。すなわち、姿勢制御部450は、光源390の発光スケジュールと同期するよう人工衛星300の姿勢を制御してもよい。
図7では、人工衛星300は、光源390から発せられた可視光線を照射すべき位置Sにおける天頂から大きくずれた位置に存在する。この場合、光源390から発せられた可視光線は、光源390から位置Sまで比較的長い距離を進行する。一方、図8では、人工衛星300は、光源390から発せられた可視光線を照射すべき位置Sにおける天頂付近に存在する。この場合、光源390から発せられた可視光線は、光源390から位置Sまで比較的短い距離を進行する。
光源390から発せられた可視光線が比較的長い距離を進行する場合、大気による拡散により、地上の位置Sから観測される可視光線の見かけの明るさが低下する。したがって、図8に示す人工衛星300の位置では、光源390から発せられる可視光線の光量を相対的に増大させてもよい。言い換えると、発光制御システム440は、可視光線を照射すべき位置に関する情報、及び/又は人工衛星300の位置に関する情報に基づいて光源390の光量(発光条件)を決定してよい。これにより、地上の観測者により観測される可視光線は、人工衛星300の位置によらず、比較的同程度の見かけの明るさになる。
また、人工衛星300は、天体の自転により、天体を周回する度に、異なる緯度又は経度を有する地域の上空を通過することがある。したがって、地上の同一の領域に可視光線を照射する場合であっても、人工衛星300の周回数に応じて、可視光線を照射すべき領域Sと人工衛星300の位置関係が変わる。これに伴う可視光線の見かけの明るさの変化を抑制するために、光源390から発せられる可視光線の光量を調整してもよい。この場合、発光制御システム440は、可視光線を照射すべき位置Sに関する情報と、人工衛星330の位置に関する情報と、に基づいて光源390から発せられる可視光線の光量(発光条件)を決定すればよい。
また、光源390から出射される可視光線の発散角が同一である場合、図7及び図8に示すように、可視光線が照射される領域Sの大きさが変化する。この変化を抑制するため、発光制御システム440は、可視光線を照射すべき位置Sに関する情報と、人工衛星330の位置に関する情報と、に基づいて光源390から発せられる可視光線の発散角(発光条件)を決定すればよい。
好ましい実施形態では、第1人工衛星200は、複数の第2人工衛星300に紐づいている。より具体的には、第1人工衛星200の第1制御部410は、第1人工衛星200に紐づいた複数の第2人工衛星300の第2制御部420のハブとして機能する。
ここで、第1人工衛星200に不具合が発生した場合、第2人工衛星300の第2制御部420が、第1人工衛星200の第1制御部410が行っていたハブとしての機能を引き継いでもよい。これを実現するため、第2制御部420は、第1制御部410が担う制御プログラムをすべて内蔵していることが好ましい。第1人工衛星200とそれに紐づいた第2人工衛星300とは、互いに定期的に通信している。第1人工衛星200の第2制御部420は、この通信のエラーに基づいて、第1人工衛星200の不具合を判断し、第1制御部410の代わりに、ハブとして機能を受け継げばよい。
[人工衛星群の軌道]
次に、第1人工衛星200と第2人工衛星300を含む人工衛星群の軌道、特に地球のまわりを周回する基準軌道の好ましい一例について説明する。基準軌道は、人工衛星群の代表的な点(仮想点)が描く軌跡によって規定される軌道である。好ましい態様では、基準軌道は、第1人工衛星200の周回軌道に相当する。基準軌道は、ケプラー運動に基づく軌道であってよい。
基準軌道は、地表から例えば200km〜10000kmの高度にあってよい。好ましくは、地表の観測者が光源390から発せられた可視光線を観測し易くするため、基準軌道は、例えば200〜800km以下の高度にあってもよい。人工衛星群の基準軌道がこのような低高度にあることによって、光源390から発生られる光の光量を強くしすぎる必要がない。したがって、光源390の発光に伴う電力消費を抑制することができる。
また、基準軌道が、例えば500km以下の高度にある場合、各々の人工衛星は大気抵抗により自然に高度を下げるため、スペースデブリの発生を防止することができる。したがって、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300が故障した場合であっても、スペースデブリの発生を防止することができる。
また、正常な飛行中における大気の抵抗をなるべく抑制する観点から、基準軌道は、例えば200km以上、好ましくは300km以上、いっそう好ましくは400km以上の高度にあってもよい。
上記の例の代わりに、光源390から発せられた光を地上の特定の地域から常に観測できるようにするという観点では、基準軌道は、約36000kmの高度を有する静止軌道であってもよい。
人工衛星の軌道上の位置(位相)に応じて地表からの高度が変わることを抑制するため、基準軌道の軌道離心率は、なるべく小さいことが好ましい。基準軌道の軌道離心率は、例えば0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下であってよい。
基準軌道は、実質的に太陽同期軌道地表準回帰軌道であることが好ましい。実質的な太陽同期軌道地表準回帰軌道は、大気抵抗や地球の扁平等の摂動に基づく軌道のずれを含むものとする。これにより、人工衛星群が地上の同一地域を通過する時間(太陽方位角)が同じになる。したがって、人工衛星群はある一定の範囲の地域を同一の時間帯に何度も通過することになる。よって、特定の地域に対して、光源390からの可視光線を観測させるというサービスを提供し易くなる。
なお、同様の観点から、基準軌道における回帰周期は、比較的短いことが好ましく、例えば7日以下、好ましくは4日以下、いっそう好ましくは3日であってよい。
軌道制御システム430は、複数の人工衛星を互いに伴走させるよう第1人工衛星と第2人工衛星の軌道を制御するよう構成されていることが好ましい。好ましくは、軌道制御システム430、例えば第1軌道制御ユニット432は、第1人工衛星(基準衛星)200を、天体を周回する前述した基準軌道に基づいて制御するよう構成されていてよい。
人工衛星群が複数の第1人工衛星200を含む場合、複数の第1人工衛星200は同一の基準軌道に投入されることが好ましい。この場合、複数の第1人工衛星200は、基準軌道上において、互いに間隔をあけて飛行すればよい。複数の第1人工衛星200どうしの間の間隔Liは、例えば10〜10000m、好ましくは30〜1000m、いっそう好ましくは50〜500mである。複数の第1人工衛星200どうしの間の間隔Liの下限は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300どうしの衝突を回避するよう決定することが好ましい。また、複数の第1人工衛星200どうしの間の間隔Liの上限は、例えば後述するような可視光線を用いた光画素どうしの間隔をなるべく小さくするという観点で決定することが好ましい。
第2人工衛星300の軌道の好ましい例について説明する。図9は、第1人工衛星(基準衛星)を基点とした座標系における第2人工衛星の軌道(以下、単に「相対軌道」と称する。)を説明するための図である。図10は、図9に示す相対軌道を図9の交差方向から見た図である。図11は、第1人工衛星(基準衛星)を基点とした座標系における第2人工衛星の隊列の様子を示す図である。なお、図9及び図10では、3つの第1人工衛星(基準衛星)200と3つの相対軌道が示されている。また、図11では、8つの相対軌道が示されている。ただし、第1人工衛星(基準衛星)200及び相対軌道の数は、特に限定されない。
第1人工衛星(基準衛星)を基点とした座標系(LVLH座標系)において、原点は第1人工衛星200の重心によって規定される。また、x軸は、地球中心方向によって規定される(radial方向)。x軸は、基準軌道の動径方向と同方向を向く。y軸は基準軌道を飛行する第1人工衛星の速度ベクトルが向く方向によって規定される(along-track方向)。y軸は基準軌道の周回方向を向く。z軸は基準軌道の軌道面に直交する方向によって規定される(cross-track方向)。z軸は、基準軌道の動径方向と基準軌道の周回方向の両方に直交する方向であり、以下では交差方向と称されることもある。
相対軌道O2は、第1人工衛星(基準衛星)200を基点とした座標系(LVLH座標系)において振動又は周期的な軌跡を描く軌道であることが好ましい。これにより、第2人工衛星300は、第1人工衛星(基準衛星)200のまわりで振動又は周期的な軌跡を描く。そのため、第2人工衛星300は、第1人工衛星200に伴走して飛行できる。
相対軌道O2は、第1人工衛星(基準衛星)200を基点とした座標系(LVLH座標系)において、例えば円軌道、楕円軌道、リサージュ曲線軌道又は単振動軌道等であってよい。
相対軌道O2は、基準軌道O1の動径方向(x軸)と基準軌道の周回方向(y軸)の少なくとも一方から傾斜していてよい(図10の角度θ参照)。これにより、複数の第2人工衛星300が同一の相対軌道O2上にある場合、複数の第2人工衛星300は、天体の地表から互いに異なる高度に位置し得る(図12も参照)。そのため、地上のある地点にいる観測者から複数の人工衛星300が密集しているように見えたとしても、複数の人工衛星300は、互いに異なる高度に位置していることがある。言い換えると、観測者からの見かけ上、複数の人工衛星300が密集していたとしても、複数の人工衛星300は、実際にはx軸方向に互いに離れた位置に配置できる。これにより、複数の人工衛星300どうしの衝突のリスクを回避しつつも、観測者からの見かけ上、複数の人工衛星300を密集させることができる。したがって、後述するように、複数の人工衛星300に設けられた光源390から射出される可視光線を利用したディスプレイにおける光画素間の距離が短くなり、可視光線を利用したディスプレイのようなサービスにとって有効である。
上記の観点から、相対軌道O2は、周回方向(y軸)から好ましくは20〜80度、より好ましくは30〜75度、いっそう好ましくは45〜70度傾斜していてよい。
また、相対軌道O2が、基準軌道O1の動径方向(x軸)と基準軌道O1の周回方向(y軸)の少なくとも一方から傾斜していると、周回方向における相対軌道O2の幅Wyが短くなる。そのため、複数の第1人工衛星200を同一の基準軌道上に比較的に密に配置させることができる。
基準軌道O1の動径方向と基準軌道O1の周回方向の両方に直交する交差方向における相対軌道O2の幅Wzは、動径方向における相対軌道O2の幅Wxよりも大きいことが好ましい。図11に示すように、複数の第1人工衛星200が基準軌道O1に配列される場合、人工衛星群全体の周回方向における長さは、複数の第1人工衛星200の数によって変えられる。一方、人工衛星群全体の交差方向(z軸)における長さは、交差方向における相対軌道O2の幅Wzによって決まる。したがって、周回方向(y軸)と交差方向(z軸)の両方において人工衛星群全体の長さを確保するためには、前述したように、交差方向における相対軌道O2の幅Wzが動径方向における相対軌道O2の幅Wxよりも大きいことが好ましい。このような基準軌道O1及び相対軌道O2は、後述するような可視光線を利用したディスプレイのようなサービスにとって、広い画角という観点から特に好ましい。
交差方向における相対軌道O2の幅Wzは、例えば500m〜100000mの範囲であってよく、好ましくは1000m〜10000mの範囲であってよい。また、動径方向(x方向)における相対軌道O2の幅Wxは、例えば50m〜1000mであってよく、好ましくは100m〜500mの範囲であってよい。
相対軌道O2は、LVLH座標系において、次の方程式(1)を満たすことがより好ましい。
x=a×cоs(ωt+α)
y=d−2×a×sin(ωt+α)
z=b×cоs(ωt+β)
ここで、「x」は、基準軌道O1の動径方向における位置を表す。「y」は、基準軌道O1の周回方向における位置を表す。「z」は、動径方向と周回方向に直交する交差方向における位置を表す。「t」は時間を表す。「ω」は、角速度を表しており、基準軌道O1を飛行する基準衛星200の角速度と一致することが好ましい。「a」、「b」、「d」、「α」、「β」は定数である。
また、「a」は、動径方向における相対軌道O2の幅Wxに相当する。「a」の2倍が、周回方向における相対軌道O2の幅Wyに相当する。「b」は、交差方向における相対軌道O2の幅Wzに相当する。これらの好ましい値については前述したとおりである。
「d」は、基準軌道の周回方向におけるオフセット値である、「α」及び「β」は、相対軌道上での初期位相を表している。オフセット値及び初期位相は、任意に決定すればよい。なお、初期位相の値を変えることにより、複数の人工衛星300が衝突することなく同一の相対軌道O2上を飛行可能である。
また、位相αと位相βの差(位相差)に応じて、相対軌道O2を、基準軌道O1の周回方向から任意の角度で傾斜させることができる。
なお、図11に示されているそれぞれの相対軌道O2は、上記方程式(1)によって表される軌道であることに留意されたい。また、上記方程式(1)によって表される相対軌道O2は、z軸に沿った方向から見て、長半径が短半径の2倍となる楕円形状を示す。また、上記方程式(1)によって表される相対軌道O2は、x軸に沿った方向から見ても、y軸に沿った方向から見ても、楕円形状を示す。
ここで、前述した方程式(1)は、以下の連立微分方程式における「Fx=Fy=Fz=0」としたときの周期解となっている。
この連立微分方程式は、回転座標系における運動方程式(Hill−Clohessy−Wilshire(HCW)方程式)として知られている。より具体的には、上記方程式(1)は、回転座標系の原点からの距離rが回転座標系の回転半径Rよりも十分に短い場合として「r/R」に関して線形化したHCW方程式に相当する。したがって、人工衛星300に関する(近似化された)運動方程式は、離心率が0である基準軌道を飛行する基準衛星200を原点とした座標系において、上記方程式(1)となる。
ここで、「x」は、基準軌道O1の動径方向における位置を表す。「y」は、基準軌道O1の周回方向における位置を表す。「z」は、動径方向と周回方向に直交する交差方向における位置を表す。「Fx」は外力のx軸成分を表し、「Fy」は外力のx軸成分を表し、「Fz」は外力のx軸成分を表す。「ω」は、角速度を表しており、基準軌道O1を飛行する基準衛星200の角速度と一致する。また、各変数の上に1つのドットが付されたものは、時間変数による1回微分を意味する。各変数の上に2つのドットが付されたものは、時間変数による2回微分を意味する。
上記の方程式(1)で規定される相対軌道O2は、人工衛星300が外力を受けなかった場合に描く軌道(ドップラー運動に基づく軌道)となる。よって、人工衛星300が相対軌道O2上に投入された後、人工衛星300の第2推進機350をほとんど稼働しなくても人工衛星300は基本的には相対軌道O2上を飛行する。これにより、人工衛星300のエネルギー消費を抑制することができる。
実際には、大気抵抗、地球の扁平、太陽風等に伴う摂動が人工衛星300にかかるため、人工衛星300の第2推進機350を稼働することによって、人工衛星300を相対軌道O2に留める必要がある。ただし、この場合であっても、人工衛星300のエネルギー消費を抑制することができることに留意されたい。
軌道制御システム430、例えば第2軌道制御ユニット434は、第2人工衛星300を、前述した相対軌道O2に基づいて制御するよう構成されていてよい。
なお、上記の方程式(1)で規定される相対軌道O2では、人工衛星300の位置は、時間の関数で表される。すなわち、複数の人工衛星300どうしの位置関係は、時間とともに変化することになる。
図12は、ある地上の観測点から見た人工衛星群の見え方をシミュレーションした1つの結果を示す図である。ここで、人工衛星群は、基準軌道O1を飛行する複数の第1人工衛星200と、上記の方程式(1)に基づく相対軌道O2を飛行する複数の第2人工衛星300と、を含む。図12は、各々の人工衛星300の光源390から可視光線を地上の特定の領域に照射したときに、当該領域にいる観測者によって観測される可視光線の様子を示しているものとも言える。
人工衛星300に設けられた光源390の発光条件の決定及び制御は、一例として、前述した発光制御システム440及び発光制御方法に従って行われればよい。
[光源の発光態様の一例]
(人工衛星ディスプレイ)
次に、人工衛星群を構成する複数の人工衛星300に設けられた光源390を利用した可視光線の制御、及びそれに伴う情報処理装置等について説明する。本例では、複数の人工衛星390に設けられた光源390によって夜空にディスプレイを形成することを意図している。
本例において、好ましくは、人工衛星群は、前述した軌道(基準軌道及び相対軌道)を飛行する。具体的には、光源390を搭載した複数の人工衛星300は、図11や図12に示すように、非格子状の配置で飛行していてよい。すなわち、複数の人工衛星300は、正方形又は長方形の格子点を構成していない。
ここで、前述した特許文献2及び特許文献3では、複数の人工衛星が、正方形の格子点の位置に配置されている様子が図示されている。この場合、複数の人工衛星に設けられた光源によって有意な像を形成するためには、テレビやパソコンのモニターのように、各格子の格子点(光画素)に位置する人工衛星の光源のON/OFFや発光色を制御すればよい。
しかしながら、前述した基準軌道O1及び相対軌道O2を飛行する人工衛星は、非格子状の配置で飛行するため、同様の発光制御処理を適用することはできない。すなわち、有意な像(光の像)を形成するために、どの人工衛星に設けられた光源をONにするべきかという処理を、同様に実行することができない。このため、本願の発明者は、以下で説明する新規な発光制御を見出した。
なお、前述した「有意な像」とは、複数の可視光線によって表示される意味のある像(光の像)を意味する。意味のある像とは、人によりが直接的に意味を認識できるものに限らず、コンピュータ等による処理を行うことよって意味を成すような像をも含む。
図13は、人工衛星に設けられた光源の発光条件の一例を説明するための図である。図14は、人工衛星群に搭載された複数の光源を、図13に示す発光条件で発光させたときのシミュレーションの結果を示す図である。図13及び図14において、黒い円は、人工衛星からの光の光量を示している。図15は、発光制御システムによる発光条件の決定方法の一例を説明するフローチャートである。
本例において、まず、人工衛星群に搭載された光源390から発せられる可視光線によって表示されるべき像(光の像)が決定される。表示されるべき像の決定は、後述するようにユーザによって行われてよい。
次に、発光制御システム440は、可視光線によって表示させるべき像(光の像)に関する情報、表示すべき時間帯に関する情報、及び表示させる地域に関する情報を取得する(ステップS1)。
可視光線によって表示されるべき像は、例えば数字、文字、図形又は画像等であってよい。この場合、代表的な座標値RLは、例えば数字、文字、図形又は画像等を構成する点の中心、又は線分の中心線の座標であってよい。表示させる地域に関する情報は、人工衛星300からの可視光線を照射すべき特定の地域に関する情報であってよい。表示すべき時間帯に関する情報は、当該可視光線が照射される時間帯に関する情報である。
可視光線によって表示されるべき像(光の像)に関する情報を取得すると、発光制御システム440は、可視光線によって表示されるべき像に関する代表的な座標値RLを算出する(ステップS2)。
代表的な座標値RLは、前述した周回方向(y軸)と前述した交差方向(z軸)とによって張られる2次元座標における座標値によって構成されていてもよい。この場合、座標値RLは、可視光線によって表示させるべき像(光の像)に関する情報と、人工衛星300の位置に関する情報とによって決定することができる。
次に、発光制御システム440は、代表的な座標値RLから計測した人工衛星の距離L11に基づいて、発光条件を決定する(ステップS3)。ここで、距離L11は、前述した周回方向(y軸)と前述した交差方向(z軸)とによって張られる2次元座標内における距離によって定義されてもよい。
具体的には、発光制御システム440は、距離L11が所定の閾値(カットオフ値)より小さければ光源390をONにし、距離L11が所定の閾値以上であれば光源390をOFFにするよう発光条件を決定すればよい(条件1)。閾値は、地上の特定の領域から観測されたときに、光の像の各ラインの太さが適切化されるよう適宜決定されればよい。
また、発光制御システム440は、この代わりに、又はこれに加えて、距離L11に基づいて光源390から発せられる可視光線の光量を変えるよう発光条件を決定してもよい。より好ましくは、発光制御システム440は、距離L11が小さくなるほど光源390から発せられる可視光線の光量を大きくするよう発光条件を決定する(条件2)。これにより、代表的な座標値RLに近いほど光量が大きくなるため、観測者は、可視光線によって表示されるべき像を認識し易くなる。
ここで、前述したように複数の人工衛星300どうしの相対的な位置関係が時間とともに変化する場合、前述した距離L11は時間とともに変化し得る。この場合、発光制御システム440は、前述した一連のステップS1〜S3において、発光条件を時間の関数として決定する。これにより、複数の光源390の発光スケジュールが決定される。
前述した一連のステップS1〜S3において、発光制御システム440は、少なくとも、光源390から発せられた可視光線を照射すべき位置に関する情報と、人工衛星300の位置に関する情報(人工衛星300が将来通る位置)に基づいて、光源390の発光条件(ON/OFFや光量等)を決定していることに留意されたい。
図14は、人工衛星群に搭載された複数の光源390を、前述した条件1及び条件2の下で発光させたときのシミュレーションの結果を示している。図14では、縦軸は、前述した交差方向(z軸)であり、横軸は、前述した周回方向(y軸)である。なお、図14では、可視光線によって表示されるべき像は、日本語の漢字である「漢」の字である。発光制御システム440は、前述のように決定された発光条件に従って光源390を発光させることによって、図14に示すように光の像を形成することができる。
また、発光制御システム440は、必要に応じて、可視光線を照射すべき特定の領域Sと人工衛星群が通る位置との関係、例えば仰角等に基づいて、前述のように決定した発光条件を修正してもよい。相対軌道O2の軌道面が仰角の方向に対して直交していない場合、前述した周回方向(y軸)と前述した交差方向(z軸)とによって張られる2次元座標は、特定の地域Sにいる観測者から見た視点で傾く。そのため、可視光線によって表示されるべき像も傾いて見えることがある。
この傾きを修正するため、発光制御システム440は、相対軌道O2の軌道面と上記の仰角との関係、すなわち複数の人工衛星300の位置に基づいて発光条件を修正してもよい。この修正は、周回方向(y軸)と前述した交差方向(z軸)とによって張られる2次元座標を所定の軸まわりに所定の角度回転させる操作をすることによって実行できることに留意されたい。
また、発光制御システム440は、必要に応じて、前述したように、可視光線を照射すべき位置Sに関する情報と、人工衛星330の位置に関する情報と、に基づいて光源390から発せられる可視光線の発散角を決定してもよい。
[人工衛星システム及び情報処理システムの一例]
図16は、人工衛星システム及び情報処理システムの構成を示す概略図である。人工衛星システムについては、前述したとおりであるため、その説明を省略する。図17は、情報処理システム700の構成を示すブロック図である。
情報処理システム700は、人工衛星を監視する監視用コンピュータ610とは異なるコンピュータシステムによって構成されていてよい。
監視用コンピュータ610は、人工衛星群に関する監視を含む各種の処理を行う第3制御部630を有していてよい。第3制御部630は、コンピュータ端末に備えられたCPU、ROM、RAMを含んでいてよい。
第3制御部630は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の位置に関する情報を取得する位置情報取得部632を有していてよい。また、第3制御部630は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300の軌道のずれや正常性を監視し、必要に応じて復帰を促す監視制御部634を有していても良い。
情報処理システム700は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300と直接又は間接的に通信可能であることが好ましい。好ましくは、情報処理システム700は、監視用コンピュータ610を経て、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300と間接的に通信可能であることが好ましい。情報処理システム700は、例えばパーソナルコンピュータ、携帯情報端末、もしくはスマートフォン、又はこれらの組み合わせによって構成されていてよい。
図16及び図17に示す例では、情報処理システム700は、クライアント側のユーザ端末710と、サーバ750と、を含むクライアント・サーバシステムによって構成されている。ユーザ端末710とサーバ750は、例えば既存のインターネット網790によって互いに通信可能に構成されていてよい。
サーバ750は、制御部760と、通信装置770と、を有していてよい。制御部760は、コンピュータ端末に備えられたCPU、ROM、RAMを含んでいてよい。通信装置770は、ユーザ端末710の通信装置730及び基地局のコンピュータ610と通信可能に構成されていてよい。
ユーザ端末710は、例えばパーソナルコンピュータ、携帯情報端末、又はスマートフォン等であってよい。ユーザ端末710は、表示装置712や、カメラのような撮像装置716を備えていてよい。表示装置712及び撮像装置716は、端末に一体的に備わっていてもよく、外付け式のものであってもよい。
ユーザ端末710は、制御部720と、前述した通信装置730と、を有していてよい。制御部720は、コンピュータ端末に備えられたCPU、ROM、RAMを含んでいてよい。制御部720は、コンピュータ端末に備えられたCPU、ROM、RAMを含んでいてよい。
図18は、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712に表示された画面の一例を示している。図19は、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712に表示された画面の別の一例を示している。図20は、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712に表示された画面のさらに別の一例を示している。なお、これらの画面は、ユーザ端末にインストールされたアプリケーションを実行することによって表示されるものであってよい。
情報処理システム、具体的にはユーザ端末710の制御部720は、発光条件に関する情報を受け付ける入力情報受付部721を有していてよい。制御部720は、入力情報受付部721で受け付けた情報に基づいて発光条件に関する情報を、発光制御システム440に送る。具体的には、制御部720は、発光条件に関する情報を、サーバ750を経由して発光制御システム440に送る。
図18に示すように、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712に表示された画面は、発光条件に関する情報を入力する画面を表示している。具体的には、光源のON/OFFのボタン800、光量の調整レベルを変更するバー810、光の色を変更するボタン820が表示されている。
ユーザがこれらのボタンやバー800,810,820を操作することによって、制御部720の入力情報受付部721は、光源のON/OFFに関する情報、光源から発せられる可視光線の光量に関する情報、及び光源から発せられる可視光線の色に関する情報を取得する。これらの情報は、ユーザ端末700の制御部720によってサーバ750に送られ、サーバ750から発光制御システム440に送られる。発光制御システム440は、これらの発光条件に関する情報に基づき光源390の発光条件を決定し、光源390を操作する。
これにより、ユーザは、ユーザ端末700から人工衛星に搭載された光源390を操作することができる。
なお、入力可能な発光条件に関する情報は、光源のON/OFFに関する情報と、光源から発せられる可視光線の光量に関する情報と、光源から発せられる可視光線の色に関する情報のうちの少なくとも1つであってよい。また、光源から発せられる可視光線の色に関する情報は、RGB値等によってより細かく入力可能であってもよい。
また、図18に示すように、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712に表示された画面では、撮影ボタン830の押下によって、撮像装置716による撮影が可能となっている。これにより、撮像装置716を人工衛星300の方に向けることによって、光源390から発せられた可視光線を撮影することができる。図18に示す例では、撮像装置716は、複数の人工衛星300に搭載された光源390によって形成された日本語の漢字の「東京」という文字を撮影している。
制御部720は、人工衛星300に設けられた光源390から照射された可視光線を撮像することによって得られた画像データに基づいて所定の処理を行ってもよい。この場合、制御部390は、当該所定の処理が行われた結果を、例えば表示装置712出力するよう構成されていてよい。
制御部720による所定の処理は、単純に、撮像装置716によって取得した画像を表示する処理であってもよい。
この代わりに、制御部720による所定の処理は、撮像した可視光線のパターンを何らかの情報に変換する処理であってもよい。この場合、複数の人工衛星300に設けられた光源390から照射された可視光線のパターンは所定の情報に紐づけられていてよい。制御部720は、画像データにおける可視光線のパターンを解析することによって、所定の情報を出力するよう構成されていてよい。
可視光線のパターンに紐づけられた所定の情報は、例えば特定のWEBページへアクセスするための情報やリンクであったり、可視光線が照射される特定の地域で使用可能なクーポン券等であってよい。
また、図19に示すように、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712には、人工衛星300の光源390を制御するための予約の申し込み画面が示されている。このように、情報処理システムは、予約に応じて、ユーザに対して光源390の制御390を許可してもよい。
このため、図19において、ユーザ端末710の表示装置712には、ユーザに関する情報840と、光源390の発光条件に関する情報とが入力可能になっている。ここで、ユーザに関する情報840は、例えば、ユーザの氏名、メールアドレス及び/又は電話番号等であってよい。
ユーザに関する情報840が入力された後に予約が確定すると、ユーザに関する情報840はサーバ750に送られる。サーバ750は、予約された日時ごとに登録されたユーザに対して、光源390を制御するための許可を与える。この目的のため、サーバ750の制御部760は、ユーザ認証部761を有していてよい。
ユーザ認証部761は、ユーザ端末710によって所定の日時に人工衛星300の光源390を制御しようとするユーザが、予め予約した者であるか否かを判断する。予め予約したユーザである場合には、光源390の発光条件に関する情報の入力が許可される。
このように、情報処理システムは、発光条件に関する情報の入力の許可及び拒否に関する認証を行うユーザ認証部を有することが好ましい。
また、サーバ750の制御部762は、人工衛星300の位置に応じて、発光条件に関する情報の入力の受付を禁止する入力期間制御部762を有していてもよい。例えば、人工衛星300が見えない位置にある場合、人工衛星300の光源390に対して発光の指令を与えることは好ましくはない。したがって、入力期間制御部762は、人工衛星300の位置に応じて、光源390の制御を禁止するよう構成されていてよい。
また、図19に示すように、情報処理システムの表示装置、具体的にはユーザ端末710の表示装置712には、発光条件に関する情報を入力する部分が表示されている。具体的には、「地域選択」、「予約日時」及び「表示図形」が入力可能になっている。
「地域選択」は、光源390からの可視光線を照射すべき地域に関する情報を入力することができる。「予約日時」は、光源390からの可視光線を照射すべき時間帯に関する情報を入力することができる。「表示図形」は、可視光線によって表示すべき像に関する情報、すなわち前述の人工衛星ディスプレイにおいて描くべき図形等の情報を入力することができる。
これらの情報は、制御部720によってサーバ750に送られ、サーバ750から発光制御システム440へ送られる。発光制御システム440は、これらの情報と、人工衛星300の位置に関する情報に基づき、光源390の発光条件を決定すればよい。
また、情報処理システム、具体的にはユーザ端末710の制御部720は、人工衛星システムに関する情報を取得する情報取得部723と、人工衛星システムに関する情報を通知する通知部722と、を有していてよい。
人工衛星システムに関する情報は、光源390から発せられた可視光線が照射される地域、光源390から発せられた可視光線を観測可能な日付及び時間帯のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。人工衛星システムに関する情報は、基地局600のコンピュータ610からサーバ750に送られ、それからサーバ750からユーザ端末710に送られてよい。
これらの人工衛星システムに関する情報は、可視光線が照射される地域から人工衛星300が直接観測可能になる前に通知されてもよく、可視光線が照射される地域から人工衛星300が直接観測され始めた時点に通知されてもよい。
通知部722により通知された人工衛星システムに関する情報は、例えばユーザ端末710の表示装置712に表示される。図20は、通知部722により通知された情報が表示された表示装置712を示している。
図20では、光源390から発せられた可視光線が照射される地域、光源390から発せられた可視光線を観測可能な日付及び時間帯が示されている。なお、観測可能な日付及び時間帯は、前述したような光源390の制御が可能な日付及び時間帯と同じであってもよい。
前述した例の他に、通知部722により通知される人工衛星に関する情報は、可視光線が照射される地域を基準にしたときに、光源390から発せられた可視光線を観測可能な方位角及び仰角のうちの少なくとも1つ、好ましくは両方を含んでいてもよい。これにより、ユーザは、人工衛星300から発せられる可視光線の方角を予め認識することができる。
さらに、前述した例の他に、通知部722により通知される人工衛星に関する情報は、人工衛星300の姿勢に関する情報や、人工衛星300の電力状況の情報などを含んでいても良い。
ここで、人工衛星の監視制御用のコンピュータ610は、通常、人工衛星用の基地局600に置かれる。人工衛星300の光源390から発せられた可視光線を、地上の特定の領域、例えば基地局とは異なる領域に局所的に照射する場合、基地局にいる者は光源390から照射された可視光線を観測できない。
本例では、人工衛星を監視する監視用コンピュータ610とは異なるコンピュータシステム、好ましくは携帯情報端末から、後述するように光源390の発光条件を制御することができる。これにより、基地局600とは異なる領域に局所的に可視光線を照射する場合であっても、可視光線が照射される特定の領域に情報処理システム700又はユーザ端末710を置く又は携帯することができる。これにより、ユーザは、当該特定の領域で人工衛星300の光源390から発せられた可視光線を直接観測しつつ、光源390の操作を行うことができる。
図18に示す例は、図14を用いて説明したように複数の人工衛星300の光源390によって有意な像を描くことを意図している。この代わりに、ユーザ端末710からの人工衛星300の光源390の制御は、人工衛星300及び光源390が1つの場合であっても適用できることに留意されたい。この場合であっても、ユーザは、同様のシステムにより、光源390のON/OFFや光量や発光色の制御を行うことが可能である。
[光源の発光態様の別の例]
(タイムラスプディスプレイ)
図21は、本例における人工衛星300の光源390の発光態様に関する人工衛星群の配列の一例を示す図である。図22は、本例における情報処理システムの表示装置に表示された画面の一例を示している。図23は、情報処理システムで撮影中の人工衛星群からの可視光線の一例を示している。図24は、撮影した画像を合成した合成画像の一例を示す図である。
本例において、人工衛星システム及び情報処理システムの構成は、実質的に図16及び図17に示す構成とほぼ同様である。すなわち、本例においても、人工衛星300の光源390は、ユーザ端末710から制御可能であってよい。
図21に示すように、本例において、人工衛星群は、1つの第1人工衛星(基準衛星)200と、基準衛星200に紐づいた複数の第2人工衛星300を含んでいてよい。第1人工衛星200と第2人工衛星300の好ましい軌道については、前述したとおりである。
本例では、ユーザ端末710は、長期間にわたって人工衛星300から照射された可視光線を撮影し続けることができるよう構成されている。
図19で説明したものと同様に、情報処理システムは、人工衛星300の光源390の発光条件を指定するための予約の申し込み機能を有していてよい。本例においても、ユーザ端末710は、光源390の発光条件に関する情報を受け付け可能に構成されていてよい。
本例において、発光条件に関する情報は、少なくとも、可視光線を照射すべき地域に関する情報と、可視光線を照射すべき時間帯に関する情報と、可視光線によって表示すべき像に関する情報と、を含んでいてよい。また、本例において、可視光線によって表示すべき像は、比較的横長、具体的には人工衛星群の周回方向に沿って長い像であってよい。
可視光線によって形成すべき、人工衛星群の周回方向に沿って長い像に関する情報は、ユーザ端末710からサーバ750を経て、発光制御システム440に送られる。人工衛星群の周回方向に沿って長い像は、人工衛星300の光源390を瞬間的に発光させただけで形成することができない。そのため、発光制御システム440は、人工衛星300の飛行、すなわち時間経過とともに、人工衛星300の光源390の発光を制御させることにより、長期間かけて光の像を形成するよう発光条件を決定する。
より具体的には、発光制御システム440は、所望の時間間隔で観測された可視光線の合成によって有意な像(光の像)が形成されるように発光条件を決定する(図24も参照)。このため、発光制御システム440は、連続的に、又は所望の時間間隔よりも短い時間間隔で断続的に、可視光線を発光させるよう光源390を制御することが好ましい。ここで、所望の時間間隔は、後述するように、ユーザ端末710の制御部720による合成すべき画像が取得された時間間隔に相当する。
情報処理システム、具体的にはユーザ端末710の制御部720は、前述したように、人工衛星システムに関する情報を取得する情報取得部723と、人工衛星システムに関する情報を通知する通知部722と、を有していてよい(図22も参照)。
人工衛星システムに関する情報は、光源390から発せられた可視光線が照射される地域、光源390から発せられた可視光線を観測可能な日付及び時間帯を含んでいてよい。この他に、通知部722により通知される人工衛星に関する情報は、可視光線が照射される地域を基準にしたときに、光源390から発せられた可視光線を観測可能な方位角及び仰角のうちの少なくとも1つ、好ましくは両方を含んでいてもよい。
これらの人工衛星システムに関する情報は、可視光線が照射される地域から人工衛星300が直接観測可能になる前に通知されてもよく、可視光線が照射される地域から人工衛星300が直接観測され始めた時点に通知されてもよい。
図22では、撮影準備ボタンが表示されている。撮影準備ボタンが押されると、情報処理システムは、ワイド画面での撮影モードに移行することが好ましい。情報処理システムは、ワイド画面で長期にわたって人工衛星300の軌跡を撮影することができる。
制御部720は、人工衛星300に設けられた光源390から照射された可視光線を撮像することによって得られた画像データに基づいて所定の処理を行う。本例では、制御部720は、所望の時間間隔で取得した画像データのうちの少なくとも一部を合成した合成画像を出力する。
具体的には、ある瞬間に撮像した画像データは、例えば図23に示すような画像となる。なお、図23では、画面の右上に、複数の人工衛星300から照射された光が、白い点で示されている。この画像データは、ある地点にいる人工衛星300から照射された可視光線の像のみを含む。これに対し、所望の時間間隔で取得した画像データのうちの少なくとも一部、特に人工衛星300の光源390からの可視光線の部分を合成することによって、図24に示すような合成画像が出力される。なお、図24では、人工衛星からの光が横方向にライン上に形成されており、光が照射されなかった部分によって黒い文字「STAY HOME SAVE LIVES」が形成されている。
本例では、人工衛星300の数が比較的少数である場合であっても、ユーザ端末710にインストールするアプリケーションを工夫することによって、ユーザ端末710に有意な像を生成させることができる。
また、前述した例と同様に、生成された可視光線のパターンが所定の情報に紐づけられており、制御部720は、画像データにおける可視光線のパターンを解析することによって、所定の情報を出力するよう構成されていてもよい。
前述した人工衛星300によるディスプレイのいずれの例においても、発光制御システムは、光源390から発せられた可視光線を照射すべき位置に関する情報と、人工衛星の位置に関する情報の少なくとも一方に基づいて、光源390の発光条件を決定するよう構成されていてよいことは前述したとおりである。
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
例えば、前述した発光制御システム、軌道制御システム、情報処理システムのそれぞれが行う方法、すなわち発光制御方法、軌道制御方法、情報処理方法も、本発明の範囲に含まれる。
また、上記の発光制御方法、上記の軌道制御方法、上記の情報処理方法のうちの1つを、コンピュータに実行させるプログラムも、本発明の範囲に含まれる。
このようなコンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)に格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
また、第2人工衛星300は、必要に応じて、磁気センサ及び/又は放射線測定器を備えていても良い。磁気センサは、第2人工衛星300の飛行中に、地磁気を測定することができる。また、放射線測定器は、第2人工衛星300の飛行中に、太陽風のような荷電粒子(プラズマ粒子)を測定することができる。これにより、人工衛星群は、天体、特に地球の地磁気や、太陽風のような荷電粒子等を観測することができる。
前述した好ましい軌道の代わりに、人工衛星群、特に複数の第2人工衛星300は、正方格子又は長方格子の格子点の位置を維持する相対軌道を飛行してもよい。この場合、人工衛星を利用したディスプレイに関する発光制御が簡素化される。
前述した軌道制御システム430、発光制御システム440、姿勢制御システム450は、図6に示す態様では、第1人工衛星200と第2人工衛星300の両方に設けられたコンピュータの制御システムによって構成されている。この代わりに、軌道制御システム430、発光制御システム440、姿勢制御システム450は、第1人工衛星200と第2人工衛星300のどちらか一方のみに設けられたコンピュータの制御システムによって構成されていてもよい。また、軌道制御システム430、発光制御システム440、姿勢制御システム450は、第1人工衛星200及び/又は第2人工衛星300に設けられたコンピュータだけでなく、基地局600及び/又は情報処理システム700の制御システムにわたる分散処理システムであってもよい。このように、軌道制御システム430、発光制御システム440、姿勢制御システム450は、可能な限り、いずれかのコンピュータ単独により構成されるシステムであってもよく、複数のコンピュータにより構成される分散処理システムであってもよい。
図16及び図17に示す例では、情報処理システム700は、クライアント側の端末710と、サーバ側の端末750と、を含むクライアント・サーバシステムによって構成されている。この例の代わりに、情報処理システム700は、単一のコンピュータによって構成されていてもよく、複数のコンピュータによる分散処理システムによって構成されていてもよい。
また、第1人工衛星200及び第2人工衛星300の構造は、本発明を実施可能な限りにおいて、上述したものに制限されないことに留意されたい。
また、図16〜図24に示す例では、1つのユーザ端末710から、人工衛星300の光源390の制御を行う方法について例示した。この代わりに、人工衛星300の光源390の制御は、複数のユーザ端末710からの指示に基づいて行われても良い。この場合、サーバ750は、複数のユーザ端末710と通信可能であってよい。各々のユーザ端末710の基本的な構成については前述したとおりである。
この場合、サーバ750は、複数のユーザ端末710から、光源390の発光条件に関する指令を受け付けてもよい。言い換えると、それぞれのユーザ端末710は、光源390の発光条件に関する指令をサーバ750に通知可能であってよい。ここで、発光条件に関する指令は、光源390のON/OFF、光量の調整レベル、光の色等であってよい。サーバ750は、複数のユーザ端末710から受け付けた指令に基づいて、光源390の発光条件を決定すればよい
例えば、サーバ750は、複数のユーザ端末710から受け付けた複数の指令のうち最も多い指令、又は複数の指令の平均値に基づいて、光源390の発光条件を決定すればよい。一例では、光源390をONにする指令が最も多ければ、サーバ750は、光源390の「ON」にするよう発光条件を決定する。また、別の例では、サーバ750は、複数のユーザ端末710から受け付けた光量の値を平均化した値を、光源390の発光条件として決定してもよい。