JP6960648B2 - スターリングエンジン発電システム - Google Patents
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Description
近年、規制緩和にともない高効率の自家発電装置への適用の道がひらけ、小出力のスターリングエンジンを用いた発電設備の研究が進められている。
詳しくは、2014年10月に経済産業省より電気事業法施行規則及び発電用火力設備に関する技術基準を定める省令の一部改正において,出力10kW未満のスターリングエンジン発電(SEG: Stirling Engine Generator)設備が一般電気工作物として区分されることが決定され,2014年11月5日に公布・施行された。これにより,出力10kW未満のSEG設備による発電・売電が現実的なものとなった。
発電したものを自家使用または売電するにしても、フリーピストン形スターリングエンジン発電機の品質に鑑みれば、蓄電する必要がある。
特許文献2は、スターリングエンジン発電機等のプライム・ムーバ駆動式交流電源を、メイン電源といった既存の交流通電回路に接続および切断する方法を開示している。
2 重畳高調波カット回路
3 交直変換回路
4 負荷
41 加熱部
42 熱交換フィン
43 冷却部
45 ディスプレーサ
46 パワーピストン
47 永久磁石
48、49 コイル
50 バネ(スプリング)
61 熱交換器
62 冷却水タンク
63 スターリングエンジン発電機
64 焼却炉
65 表示器
66 負荷(蓄電池)
67 燃料(灯油)
CF キャパシタ
LF インダクタ
C1 無効電力補償キャパシタ
図1は本発明に係るスターリングエンジン発電システムの基本構成を示す概念図である。また、図2は本発明に係るスターリングエンジン発電システムの回路構成を示す図であり、図3は本発明に係るスターリングエンジン発電システムの回路構成を示す図である。
本発明のスターリング発電システムは、図1に示すように、フリーピストン形のスターリングエンジン発電機1と、このスターリングエンジン発電機1の交流出力を直流出力に変換する交直変換回路3との間に、交流出力の重畳高調波成分をカットする重畳高調波カット回路を設け、交直変換回路の直流出力をバッテリや蓄電池などの負荷を接続し、スターリングエンジン発電機1からの発電電力を制御するシステムを構成する。これにより、スターリング発電機1内のコイルや永久磁石に対してリップル電流(脈動電流)によって高周波振動を引き起こして安定稼働しないという課題が解決できるので、安定稼働が実現できる。
また、前記スターリングエンジン発電システムにおいて、図2または図3に示すように、前記重畳高調波カット回路2または5に加えて、スターリングエンジン発電機1の出力部と、出力部からの交流を直流に変換する交直変換回路3と、の間に補償キャパシタC1を直列に挿入した構成とする。
これにより、本発明によれば、フリーピストンを用いたスターリングエンジン発電システムにおいて、蓄電するに際してスターリング発電機1内のコイルや永久磁石に対してリップル電流(脈動電流)によって高周波振動を引き起こして安定稼働しないという課題が解決できるので、安定稼働が実現できる。
(実施形態1)
本発明者らは,フリーピストンスターリングエンジン発電機(FPSEG: Free Piston Stirling Engine Generator)システムにおいて,安定稼動,高効率運転,余剰電力の蓄電および系統連携を念頭にモータドライブ用インバータや太陽光発電機用パワーコンディショナなどの応用事例をもとにフリーピストンスターリングエンジン発電機の特殊性を考慮した実用的なプロトタイプ発電システムを構築し,実験により検証した。
様々な負荷条件に対しフリーピストンスターリングエンジン発電機を安定かつ高効率に運転するためにフリーピストンスターリングエンジン発電機の特性を詳細に知ることは不可欠である。フリーピストンスターリングエンジン発電機に供給する熱量と電気出力のバランスによって, フリーピストンスターリングエンジン発電ヘッドの温度上昇と発電量間に最適な状態が存在し, 供給電圧を変えることで最大電力を得る条件が存在することが実験によって確認されている。しかしながら,力率改善のためのキャパシタの設定値に対するフリーピストンスターリングエンジン発電機の電気的な特性はまだ明らかにされていない。そこで,まず、本発明では,無効電力補償キャパシタC1の最適な値を検討した。
図4は,マイクロジェンエンジン社(Microgen Engine Corporation)製のフリーピストンスターリングエンジン発電機であり,図5はその仕様である。図4は内部構造である。フリーピストンスターリングエンジン発電機の上部の熱交換フィン42をバーナー等で加熱して高温部を発生させ、冷却部に冷却水を送り込んで低温部を発生させる。フリーピストンスターリングエンジン発電機のシリンダの上部にはシリンダの内径より少し小さくわずかな隙間を有するディスプレーサピストン45が配置されている。シリンダの下部にはシリンダに密着したパワーピストン46が配置され,シリンダ内に密封空間を構成している。そして,シリンダとディスプレーサピストン45の隙間には再生器が挿入されており、シリンダ内の密封空間には2.3MPa(23℃)のヘリウムガスが封入されている。ディスプレーサピストン45とパワーピストン46は、スプリングにより連結された機械機構によって、90°の位相差をもち機械的共振周波数50Hzで上下運動するように調整されている。パワーピストン46には永久磁石47が取り付けられており、パワーピストン46の上下運動によって50Hzの起電力が誘導される。
図7は本発明の実施形態1のフリーピストン形スターリングエンジン発電システムの回路構成の一例を示す図である。
図7において、1はフリーピストン形スターリングエンジン発電機、2はスターリングエンジン発電機1の出力端子に直列に接続された無効電力補償キャパシタC1を介して、重畳高調波カット回路としてのローパスフィルタが設けられている。重畳高調波カット回路2はインダクタLFとキャパシタCFとから構成されローパスフィルタを構成する。71はインダクタLFによって昇圧されたAC電圧をDC電圧に交直変換する昇圧型AC−DCコンバータ、72は安定化回路、73は昇圧したDC電圧出力を平滑化するスムージングキャパシタ、74はDC電圧を所望の電圧に降圧し、蓄電池などの負荷を接続するための降圧型DC−DCコンバータ、4はバッテリや蓄電池の負荷である。昇圧型AC−DCコンバータ71、安定化回路72、スムージングキャパシタ73と降圧型DC−DCコンバータ74とから発電制御用コンバータシステム(コンバータユニット)を構成する。また、昇圧型AC−DCコンバータ71や降圧型DC−DCコンバータ74は、スイッチング素子タイプのコンバータであり、各素子はFETF(Q)やダイオード(D)で構成される。ここで、スターリング発電機1は等価的に誘導起電力e0と巻線抵抗r0および自己インダクタンスL0から構成されるものとし、v1,i1はフリーピストンスターリングエンジン発電機の出力電圧(端子対ab間の電圧)と出力電流、v2は端子対cd間の電圧である。図8に25℃におけるフリーピストンスターリングエンジン発電機の実測パラメータを示す。
フリーピストンスターリングエンジン発電機1と昇圧型AC−DCコンバータ71の間に無効電力補償キャパシタC1が直列に接続され、重畳高調波回路2のローパスフィルタを設けた構成に特徴がある。これらの構成を除けば,コンバータユニットは基本的に汎用の三相モータ用インバータの主回路とほぼ同じ構成である。H-ブリッジQ1,Q2,Q4,Q5から構成される単相昇圧コンバータ71は,電圧v2のフィードバック制御により,フリーピストンスターリングエンジン発電機の発電電力が直流中間PNを通ってバッテリなどを有する負荷へもれなく伝送される。負荷の消費が少なくバッテリが満充電の場合、フリーピストンスターリングエンジン発電機を安定動作させるために、Q7をターンオンさせてRBで余剰電力を消費させる。この動作はモータドライブにおける制動ブレーキに該当する。これは安定から安全な発電動作のために非常に重要な操作であり、フリーピストンスターリングエンジン発電機の余剰電力を適切に処理できない場合,フリーピストンスターリングエンジン発電機は破壊に至る。
(フリーピストンスターリングエンジン発電機の定常特性)
図9はフリーピストンスターリングエンジン発電システムの基本特性を計測するための実験回路を示す図である。
図7において,AC−DCコンバータ71が適切に動作し,PWMの高調波成分を無視すれば、フリーピストンスターリングエンジン発電機の基本特性を計測するための実験回路が図9として得られる。なお,系統電源vsに発電電力を逆潮流させないための負荷を挿入している。
つぎに、電圧V2を基準にとり、各電圧と電流のフェーザを次のように定義する。
P2,Q2はその有効電力と無効電力を表す。また、E0,V1,V2 はそれぞれE0,V1,V2の共役複素数を表す。
図10(a)(b)はフリーピストンスターリングエンジン発電機の燃焼系各部の温度の推移を示す図、図11(a)(b)はフリーピストンスターリングエンジン発電機の発電機内部の誘導起電力に関する電圧,電流,電力,力率の推移を示す図、図12(a)(b)はフリーピストンスターリングエンジン発電機の出力端子(a-b間)における電圧,電流,電力,力率の推移を示す図、図13(a)(b)はフリーピストンスターリングエンジン発電機の電源端子(c-d間)における電圧,電流,電力,力率の推移を示す図、図14(a)(b)はフリーピストンスターリングエンジン発電機の内部の抵抗損、無効電力、効率の推移を示す図である。以下、図10(a)(b)〜図14(a)(b)に基づいて発電実験結果について説明する。
(実施形態2)
<本実施形態2の全体回路構成例>
図15は本発明の実施形態2を示すフリーピストンスターリングエンジン発電機の発電制御システムの回路構成の一例を示す図である。また、図16は図15のキャパシタCFなしの等価回路を示す図である。
図15、図16において、1はフリーピストン形スターリングエンジン発電機、2はスターリングエンジン発電機1の出力端子に直列に接続された無効電力補償キャパシタC1を介して、重畳高調波カット回路としてのローパスフィルタが設けられている。重畳高調波カット回路2はインダクタLFとキャパシタCFとから構成されローパスフィルタを構成する。151はインダクタLFによって昇圧されたAC電圧をDC電圧に交直変換する昇圧型AC−DCコンバータであり、本実施形態1の昇圧型AC−DCコンバータ71と同様である。153は昇圧したDC電圧出力を平滑化するスムージングキャパシタである。4はバッテリや蓄電池の負荷である。昇圧型AC−DCコンバータ71、スムージングキャパシタ73とから発電制御用コンバータシステム(コンバータユニット)を構成する。また、昇圧型AC−DCコンバータ71は、スイッチング素子タイプのコンバータであり、各素子はFET(Q)やダイオード(D)で構成される。図15では安定化回路72や降圧型DC−DCコンバータ74は省略されており、本実施形態1と同様であり、必要に応じて適宜変更は可能である。
そこで、本実施形態2ではキャパシタCFの作用が重要であるので、種々実験を行った。
<シミュレーション>
図15と図16において,キャパシタCF の有無に対するシミュレーションを実施し,電圧,電流,電力の波形を観測して,その作用を調べた。
以下、キャパシタCFの有無に対するシミュレーションについて説明する。
図17は図9の正弦波電源駆動のシミュレーションの回路構成を示す図であり、図18(a)は図15のデッドタイムなしでCF有のシミュレーションの回路構成を示す図であり、図18(b)は図16のデッドタイムなしでCF無のシミュレーションの回路構成を示す図である。図18(a)(b)は回路シミュレータPSIMで作成したブロック図を示す。
<シミュレーション結果>
図19は図17の正弦波電源駆動のシミュレーション結果を示す図である。図20(a)は図18(a)のデッドタイムなしでキャパシタCFありのシミュレーション結果を示す図であり、図20(b)は図18(b)のデッドタイムなしでキャパシタCFありのシミュレーション結果を示す図である。
<比較検討>
まず、図19の正弦波駆動シミュレーション結果と図20(a)のデッドタイムなしでキャパシタCFありのシミュレーション結果とを比較する。
図18(a)の電圧e0,電圧v1,電圧v2はほぼ同じ値を示している。図18(a)の電流I1はほぼ同じ値を示しているが、図18(a)の電流I2は図20(a)では大きなリップル(脈動)が見られる。図21は図20(a)の時間に対する拡大図である。
図20の電流I2のギザギザの周波数は20kHzである。これはPWMキャリア周波数10kHzの2倍であり、電流I1-I2は単相インバータの各レギュレーションごとに180度位相をずらした正弦波で変調しているため2倍の周波数にリップルが現れる。図18(a)の出力W0,W1,W2はほぼ同じ値を示している。
よって,LFCFの共振現象である。
図18(a)の出力W0,W1,W2はほぼ同じ値を示している。
図18(a)(b)の電圧e0はほぼ同じ値である。図18(a)(b)の電圧v1,v2と出力W1,W2は図20(b)にはPWMパルスの影響が現れている。その他の値はほぼ同じ値である。
上述したように、発電電力の大きさは影響ないが,パルス脈動は発電機内のコイルや磁石に対して高周波振動を引き起こして異常音や異常振動の原因になる可能性がある。
ここで、キャパシタC1は、44μFを用いたが、実験結果より、43μF〜49μFの範囲であれば、適用できる。
このように、本実施形態2によれば、デッドタイムなしでインダクタLFとキャパシタCFの直列回路からなるローパスフィルタ(LPF)のキャパシタCFについて,その効果を調べた。キャパシタCFの有無は発電電力の大きさには影響ないが,パルス脈動は発電機内のコイルや磁石に対して高周波振動を引き起こして異常音や異常振動の原因になる可能性があることが分かった。実際のコンバータではデッドタイムが存在するので,その影響について調べる必要がある。
(実施形態3)
本実施形態2に引き続き,図15と図16において,デッドタイムがキャパシタCF の有無に与える影響についてシミュレーションにより電圧,電流,電力の波形を観測して,その作用を調べた。
以下、デッドタイムがキャパシタCF の有無に与える影響に対するシミュレーションについて説明する。
図23はデッドタイムありのシミュレーションの回路構成を示す図である。また、図24はデッドタイム補償ありのシミュレーションの回路構成を示す図である。ここで、デッドタイムは5μsに設定する。
図25(a)は図23のデッドタイムありでキャパシタCFありのシミュレーション結果を示す図である。また、図25(b)は図23のデッドタイムありでキャパシタCFなしのシミュレーション結果を示す図である。
図26(a)は図24のデッドタイム補償ありでキャパシタCFありのシミュレーション結果を示す図であり、図26(a)は図24のデッドタイム補償ありでキャパシタCFありのシミュレーション結果を示す図である。
整理すると、
図25(a) キャパシタCFあり、デッドタイム5μsあり、
図25(b) キャパシタCFなし、デッドタイム5μsあり、
図26(a) キャパシタCFあり、デッドタイム5μsあり、デッドタイム補償あり、
図26(b) キャパシタCFなし、デッドタイム5μsあり、デッドタイム補償あり、
まず、図20(a)のデッドタイムなしでキャパシタCFありのシミュレーション結果と図25(a)のデッドタイムありでキャパシタCFありのシミュレーション結果を比較する。
キャパシタCFがある場合、電圧e1,v2はあまり減少していないが電圧v1と電流I1が大きく減少し、出力W0,W1,W2も大幅に減少している。
キャパシタCFがない場合も電圧e1,v2はあまり減少していないが、v1とI1がさらに大きく減少し、出力W0,W1,W2はほとんど得られていない。また、PWMに起因するパルスは同様に存在する。
このように、シミュレーション結果から、デッドタイムの影響で電圧が下がり、フリーピストンスターリングエンジン発電機の出力が大幅に減少する。
図20(a)、図25(a)と図26(a)を比較すると、デッドタイムの補償によって電圧v1と電流I1および出力W0,W1,W2の低下が改善される。しかし,完全な補償ではない。図26(a)と図26(b)の比較より,キャパシタCFがない場合はパルス脈動が付加される。
したがって、キャパシタCFはPWMパルスの高調波電圧を吸収する働きがある。
デッドタイム補償は出力を増やし,特性改善につながる。キャパシタCFがないとパルス脈動が発生し,発電機内のコイルや磁石に対して高周波振動を引き起こして異常音や異常振動の原因になる可能性あることが分かった。
以上の結果から、本実施形態3によれば、キャパシタCFを挿入し、適切なデットタイムの設定とそのデットタイム補償を組み合わせれば、さらなる安定稼働が実現できる。
Claims (4)
- スターリングエンジン発電機の出力部と、
出力部からの交流を蓄電するために直流に変換するスイッチングモード交直変換回路と、
前記スターリングエンジン発電機の出力側と前記交直変換回路間に配置される重畳高調波カット回路と、
からなる蓄電するためのスターリングエンジン発電システムであって、
スイッチングモード交直変換回路の入力側の電流を検出した結果を比例倍した値を、スイッチングモード交直回路を構成するスイッチング素子を動作させるための発電機動作周波数と同じ周波数の正弦波源からの正弦波に加算するデッドタイム補償回路により、スイッチングモード交直変換回路のデッドタイムによる出力低下を改善させる
スターリングエンジン発電システム。 - 前記重畳高調波カット回路は、負荷と並列に配置される容量成分素子と、出力電圧線と直列に挿入されるインダクタ成分素子とによって構成される請求項1に記載の蓄電するためのスターリングエンジン発電システム。
- 前記重畳高調波カット回路は、負荷と並列に配置される容量成分素子と、出力電圧線と直列に挿入されるインピーダンス成分素子とによって構成される請求項1に記載の蓄電するためのスターリングエンジン発電システム。
- スターリングエンジン発電機の出力部と、
出力部からの交流を直流に変換する交直変換回路と、
の間に補償キャパシタを直列に挿入した
請求項1から3のいずれか一に記載の蓄電するためのスターリングエンジン発電システム。
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