加速度計は、微小電気機械(MEMS)加速度計として設計され製造される。MEMS層は、半導体処理技術を使用して、センサの機械構成要素と、センサダイ(例えば、基板又はキャップの層としても機能するCMOS層)内にあるかセンサダイの外にあるCMOS回路などの、MEMS加速度計の他の構成要素への電気接続とを含むように構成される。MEMS層は、基礎となる基板層やキャップ層などの他の半導体層内に密封される。
MEMS層は、1つ以上のプルーフマスがばねによってMEMS層内に懸架された懸架ばねマスシステムを含む。プルーフマスの運動は、ばねと、幾つかの実施形態では、マスやレバーなどの付加構成要素によって制限される。これらのばねと付加構成要素は、集合的に、直線加速度の検出に使用される1つ以上の軸に沿ったプルーフマスの運動を容易にする。センス電極は、検出された直線加速度の方向の各プルーフマスの隣に配置され、プルーフマスとセンス電極の距離に基づいて変化するキャパシタを構成する。
プルーフマスとセンス電極の隣接部分は、センス電極に対するプルーフマスの動きの静電容量検出を容易にするように、幾つかの異なる構成で設計されうる。幾つかの実施形態では、プルーフマスとセンス電極は、容量電極として機能する平行面を有してもよく、その結果、プルーフマスがセンス電極に近づくか遠ざかる(例えば、プルーフマスの平行面に垂直に)と静電容量が変化する。追加の他の構成が利用されうるが、別の典型的構成は、インターデジット型センス櫛歯を含みうる。プルーフマスとセンス電極はそれぞれ、プルーフマスとセンス電極の面から延在する幾つかのフィンガを有しうる。直線加速度(例えば、プルーフマスの面に平行な方向)によるプルーフマスの動きに応じて、インターデジット型センス櫛歯の間の距離が変化し、それにより、プルーフマスとセンス電極の間の全静電容量が変化する。
MEMS加速度計は、直線加速度を検出するために関連付けられた複数のプルーフマスとセンス電極を含みうる。各プルーフマスは、直線加速度に対して同じように応答でき、その結果、それぞれのセンス電極に対する位置が同じように変化する。センス駆動周波数を有するセンス駆動信号が、プルーフマス又はセンス電極の一方を介して、各キャパシタ(例えば、各プルーフマス/センス電極の対)に提供されうる。幾つかの実施形態では、キャパシタに印加されるセンス駆動信号は差分信号でよく、その結果、各キャパシタにおけるセンス信号は180°位相がずれる。キャパシタによって出力される差分信号は、静電容量−電圧(C2V)変換器などの変換回路によって、静電容量と直線加速度の変化に基づく電圧を有するセンス信号に変換されうる。
正常動作条件下では、キャパシタから出力される信号は、任意の共通モード信号成分に対して実質的に互いに打ち消さなければならない。センス駆動信号が差分であり、またプルーフマスが直線加速度に対して同じように応答するように設計されているので、それぞれのキャパシタから(例えば、プルーフマス又はセンス電極から)出力される静電容量信号も、位相と大きさの両方がほぼ差分信号のみでなければならない。しかしながら、キャパシタのうちの1つが破損した場合(例えば、プルーフマス又はセンス電極が位置ずれ又は破損、センス櫛歯の破損などの結果として)、破損したキャパシタから出力される静電容量信号は、設計応答から位相又は振幅が変化し、その結果、静電容量信号間の同相モード成分が生じることがある。
同相モード試験回路は、静電容量信号を監視して、静電容量信号の同相モード成分が1つ以上のしきい値を超えるかどうか決定できる。一実施形態では、同相モード試験回路は、同相モード入力回路、増幅器回路、並びに比較及び試験回路を含みうる。同相モード入力回路と増幅器回路は、静電容量信号を受け取りフィルタリングして、受け取った静電容量信号間の同相モード成分を表す同相モード信号を生成できる。同相モード信号は、1つ以上の同相モード信号と比較されうる(例えば、1つ以上のしきい値に基づいて)。この比較に基づいて、例えば、スケーリングファクタ又はセンス駆動信号を修正することによって、同相モード信号と関連付けられた静電容量の変化を補償できるかどうかを決定できる。補償ができない場合、加速度計は動作を停止しうる。
図1は、本開示の幾つかの実施形態による典型的な運動検出システム10を示す。図1に特定の構成要素が示されているが、センサ、処理構成要素、メモリ、及び他の回路の任意の適切な組み合わせが、必要に応じて、様々な用途及びシステムに利用されうることを理解されよう。本明細書に記載されたような一実施形態では、運動検出システムは、少なくともMEMS加速度計12と、処理回路14やメモリ16などの支援回路を含みうる。幾つかの実施形態では、統合運動処理ユニット(「MPU」)(例えば、3軸のMEMSジャイロスコープ検出、3軸のMEMS加速度計検出、マイクロフォン、圧力センサ、及びコンパスを含む)を提供するために、運動処理システム10内に、1つ以上の追加センサ18(例えば、追加MEMSジャイロスコープ、MEMS加速度計、MEMSマイクロフォン、MEMS圧力センサ及びコンパス)が含まれうる。
処理回路14は、運動処理システム10の要件に基づいて必要な処理を提供する1つ以上の構成要素を含みうる。幾つかの実施形態では、処理回路14は、加速度計12又は他のセンサ18の動作を制御し加速度計12又は他のセンサ18の処理の一部を実行するために、センサのチップ内(例えば、加速度計12又は他のセンサ18の基板又はキャップ上、或いは加速度計12又は他のセンサ18に対するチップの隣接部分上)に一体化されうるハードウェア制御ロジックを含みうる。幾つかの実施形態では、加速度計12及び他のセンサ18は、ハードウェア制御ロジックの動作の一部の修正を可能にする(例えば、レジスタの値の修正によって)1つ以上のレジスタを含みうる。幾つかの実施形態では、処理回路14は、また、例えばメモリ16に記憶されたソフトウェア命令を実行するマイクロプロセッサなどのプロセッサを含みうる。マイクロプロセッサは、ハードウェア制御ロジックと相互作用することによって加速度計12の動作を制御し、加速度計12から受け取った測定信号を処理できる。マイクロプロセッサは、他のセンサ18と同じように相互作用できる。
幾つかの実施形態(図1に示されていない)では、加速度計12又は他のセンサ18は、外部回路と(例えば、シリアルバスによって、又はセンサ出力及び制御入力への直接接続によって)直接通信してもよく、一実施形態では、処理回路14は、加速度計12及び他のセンサ18から受け取ったデータを処理し、通信インタフェース20(例えば、SPI又はI2Cバス、又は、自動車アプリケーション、コントローラエリアネットワーク(CAN)又はローカルインターコネクトネットワーク(LIN)バス)を介して外部構成要素と通信できる。処理回路14は、加速度計12及び他のセンサ18から受け取った信号を適切な測定ユニットに変換し(例えば、通信バス20を介して通信する他の計算処理ユニットによって提供される設定に基づいて)、より複雑な処理を実行して、向きやオイラー角度などの測定値を決定し、幾つかの実施形態では、特定の活動(例えば、徒歩、走行、制動、滑り、ローリングなど)が行われているかどうかをセンサデータから決定できる。
幾つかの実施形態では、複数の加速度計12とセンサ18からのデータに基づき、センサフュージョンと呼ばれうるプロセスで、特定タイプの情報が決定されうる。様々なセンサからの情報を組み合わせることによって、画像安定化、ナビゲーションシステム、自動車制御及び安全性、推測航法、リモート制御及びゲーム装置、活動センサ、三次元カメラ、産業オートメーション、及び多数の他の用途など、様々な用途に役立つ情報を正確に決定できる。
典型的なMEMS加速度計(例えば、加速度計12)は、MEMS加速度計が軸に沿った直線加速度の測定を可能にするように構成された1つ以上の可動プルーフマスを含みうる。幾つかの実施形態では、1つ以上の可動プルーフマスは、装置のMEMS層に平行な層(例えば、CMOS層)から延在するアンカー、装置のMEMS層のフレーム、又は可動プルーフマスに対して固定されたMEMS装置の他の適切な部分など、MEMSセンサの固定された任意の部分を指しうるアンカー点から懸架されうる。プルーフマスは、直線加速度に応じて動くように配置されうる。直線加速度に応じた固定面(例えば、固定センス電極)に対するプルーフマスの動きが、直線加速度又は他の運動パラメータを決定するために測定され評価される。
プルーフマスとセンス電極が、キャパシタを構成でき、その静電容量は、センス電極に対するプルーフマスの動きに基づいて変化する。センス駆動周波数を有するセンス駆動信号は、プルーフマス又はセンス電極の一方によって各キャパシタに印加され、センス駆動周波数における出力容量信号の分析に基づいて、直線加速度が検出されうる。幾つかの実施形態では、差分センス駆動信号(例えば、位相が180°ずれた同じセンス駆動信号を有する)が各キャパシタに印加されるように、キャパシタが互いに関連付けられうる。各キャパシタから出力される静電容量信号は差分信号でもよく、直線加速度を表す差動電圧を有するセンス信号は、静電容量信号に基づいて決定されうる。
場合によって、キャパシタには、例えばプルーフマスとセンス電極の位置ずれ又はセンス櫛歯などの構成要素の物理的破損により、欠陥(例えば、製作誤差による)又は動作中の破損が生じうる。破損したキャパシタによって提供される静電容量信号は、設計応答に一致しなくなることがあり、その結果、この静電容量信号に基づいて決定された加速度が正確でなくなることがある。幾つかの実施形態では、関連付けられたキャパシタからの静電容量信号が、静電容量信号の同相モード成分を決定するために測定されフィルタリングされうる。この同相モード成分は、通常環境ではきわめて小さいことがあり、破損したキャパシタによって関連キャパシタの平衡差動設計が変化するときに増大しうる。同相モード成分が特定のしきい値を超えた場合、加速度計の動作が修正されるか、加速度計が動作を停止しうる。
図2は、本開示の幾つかの実施形態による同相モード試験を有する実例となる加速度計を表す。図2に表されたように、典型的な加速度計は、懸架ばねマスシステム、複数のセンス電極、及び静電容量信号のための複数のセンス経路を含む。典型的な加速度計200が、図2に、特定の構成要素を含むように表されているが、本開示が、任意の適切な数と構成のプルーフマス、ばね、結合マス、レバー、結合アーム、電極、及び1つ以上の方向の直線加速度の検出を可能にする他の適切な構成要素を含む様々な適切な加速度計設計によって実現されうることを理解されよう。
一実施形態では、加速度計は、加速度計のMEMS層内のプルーフマス202とプルーフマス204を含み、プルーフマス202とプルーフマス204は、それぞれのばね214a/214b及び216a/216bによって複数のアンカー210a/210b及び212a/212bから懸架される。典型的なアンカー210a/210b及び212a/212bは、MEMS層内のばね214a/214b及び216a/216bが、プルーフマス202及び204の懸架を容易にするように、基板(例えば、負のz方向のMEMS層の下にある)からMEMS層内に延在する。一実施形態では、ばね214a/214b及び216a/216bは、加速度計200のMEMS平面内の第1の軸に沿って従順で、MEMS平面内の第2の軸に沿って剛性があるように構成され配置された折りたたみばねである。図2の典型的実施形態で、加速度計200は、X軸に沿った直線加速度を検出でき、ばね214a/214b及び216a/216bは、X軸に沿って従順でY軸に沿って剛性がある。
加速度計は、直線加速度に応じてプルーフマス202及び204の動きを検出するように構成要素を含んでもよく、この構成要素は、光学検出、圧電性検出、容量性検出、又は他の適切な検出技術などの任意の適切な検出機構を含みうる。一実施形態では、固定センス電極に対するプルーフマス202及び204の動きに基づいて検出が行われうる。図2に静電容量電極を構成するように表されたが、実施形態では、プルーフマスとセンス電極は、それぞれのプルーフマスと固定センス電極の間の距離によって変化する静電容量を有するキャパシタを構成するように、駆動櫛歯などの他の適切な検出構成要素を含みうる。
一実施形態では、第1のプルーフマスアーム206は、正y方向にプルーフマス202から延在でき、第2のプルーフマスアーム208は、負y方向にプルーフマス204から延在でき、その結果、プルーフマスアームはそれぞれ、直線加速度が検出されている軸の方向に向いている(例えば、正x方向及び負x方向のそれぞれに向いている)露出面(例えば、z方向にMEMS層の深さを有する)を構成する。図2に表されたように、典型的実施形態では、複数のセンス電極がそれぞれ、プルーフマス202/204のプルーフマスアーム206/208に隣接していてもよい。本開示の文脈では、プルーフマスに「隣接」した電極又は類似の検出構成要素の記述は、プルーフマス又はその任意の構成要素、あるいはプルーフマスと比例的かつ一致して動く他の構成要素を含むことを理解されよう。
図2の実施形態では、センス電極218a、218b、220a及び220bはそれぞれ、基板からMEMS層内に延在し、その結果、各プルーフマスは、加速度計の検出直線加速度の軸に沿ったプルーフマスアーム206/208のうちの1つの平面に面する面(例えば、プルーフマス206の正x方向の面に面するセンス電極220aの面、プルーフマス206の負x方向の面に面するセンス電極218aの面、プルーフマス208の正x方向の面に面するセンス電極218bの面、及びプルーフマス208の負x方向の面に面するセンス電極220bの面)を含む。このようにして、センス電極220a及び218aはそれぞれ、固定センス電極220a/218aに対するプルーフマスアーム206の動きに基づいて静電容量を変化させるプルーフマスアーム206を有するキャパシタを構成し、センス電極218b及び220bはそれぞれ、固定センス電極218b/220bに対するプルーフマスアーム208の動きに基づいて静電容量を変化させるプルーフマスアーム208を有するキャパシタを構成する。
幾つかの実施形態では、周期信号が、検出軸に沿った直線加速度を検出するために、センス電極及び/又はプルーフマスに印加されうる。周期信号は、プルーフマスが動いていないとき(即ち、直線加速度がないとき)に印加され、実質的に一定の大きさを有するように検出されるセンス駆動信号でよい。検出軸に沿った直線加速度に応じて、プルーフマスが動いてもよく、その結果、固定センス電極に対する振動の大きさが、直線加速度の大きさに比例して変化する。
図2の典型的な加速度計の一実施形態では、差分センス駆動信号が、特定のプルーフマスのそれぞれのセンス電極に印加されてもよいが、幾つかの実施形態では、同相モード駆動信号が利用されうることを理解されよう。図2に表されたように、ラベルSD1が、センス電極218a及び218bのそれぞれと関連付けられ、ラベルSD2が、センス電極220a及び220bのそれぞれと関連付けられる。一実施形態では、各ラベルは、共通駆動周波数を有するが位相が180°ずれた差分センス駆動信号SD1とSD2に対応する。このようにして、第1のセンス駆動信号SD1が、センス電極218aとプルーフマスアーム206によって構成されたキャパシタによってプルーフマス202に印加され、第2のセンス駆動信号SD2が、センス電極220aとプルーフマスアーム206によって構成されたキャパシタによってプルーフマス202に印加され、第1のセンス駆動信号SD1が、センス電極218bとプルーフマスアーム208によって構成されたキャパシタによってプルーフマス204に印加され、第2のセンス駆動信号SD2が、センス電極220bとプルーフマスアーム208によって構成されたキャパシタによってプルーフマス204に印加される。図2の典型的実施形態では、センス駆動信号のこの構成及び応用は、プルーフマス202及び204が、センス軸に沿った直線加速度に応じて動く構成に適しており、その結果、プルーフマス202とセンス電極218aの間の相対位置と静電容量は、プルーフマス204とセンス電極220bの間の相対位置と静電容量に等しくなり、また、プルーフマス202とセンス電極220aの間の相対位置と静電容量が、プルーフマス204とセンス電極218bの間の相対位置と静電容量に等しくなる。
直線加速度に対するプルーフマスの応答が、様々なセンス機構(例えば、センス電極などからの信号の測定)からの様々な適切な技術に基づいて測定されうることが理解されるが、一実施形態では、センス電極に対するプルーフマスの動きは、プルーフマス202(PM1)とプルーフマス204(PM2)から出力される静電容量信号出力CPM1及びCPM2に基づいて測定されてもよい。静電容量の変化を表すそのような信号(例えば、電圧、電流など)は、プルーフマス202のセンス経路222とプルーフマス224のセンス経路224を介して測定されうる。図2には、センス経路が、直接接続として表さているが、センス経路が、検出される構成要素(例えば、プルーフマス202及び204)と、センス電極に対してプルーフマスの動きに応じる信号を生成する検出回路との間の電気経路を構成する任意の適切な構成要素又はその組み合わせを含みうることを理解されよう。典型的な実施形態では、センス経路は、MEMS層の1つ以上の構成要素(例えば、プルーフマス、ばね、結合マス、レバーなど)、MEMSダイの他の層(例えば、アンカー、電気トレース、配線など)、及び加速度計ダイに結合された他の構成要素(例えば、外部検出回路に接続された配線又はリード線)を含みうる。幾つかの実施形態(図2に表されていない)では、センス経路が、プルーフマスではなくセンス電極から提供されうる。本開示は、静電容量信号がプルーフマスに結合されたセンス経路を介して出力される実施形態について概略的に述べるが、幾つかの実施形態及び加速度計構成では、静電容量信号が、センス電極に結合されたセンス経路によって提供されうることを理解されよう。
静電容量信号出力CPM1及びCPM2が、センス電極218a/218b/220a/220bを介して印加された差分センス駆動信号に基づくセンス駆動周波数における差分信号でよい。図2の差分センス駆動信号を有する平衡設計などの幾つかの実施形態では、CPM1とCPM2から出力された静電容量信号は、差分センス駆動信号と、センス軸に沿った直線加速度に応じたプルーフマス202及び204の類似の動きとの相殺及び相加効果に基づく最小同相モード信号を有しうる。プルーフマス又はセンス電極の1つ以上が位置ずれした又は破損した一実施形態では、静電容量信号のうちの1つが、直線加速度に対するその設計応答から変化しうる。例えば、プルーフマスアーム206、センス電極218a又はセンス電極220aの1つ以上の破損によって、プルーフマス202で構成されたキャパシタの面積が減少しうる。直線加速度による動きが、異なる初期キャパシタ構成を基準にするので、プルーフマスアーム206、センス電極218a及びセンス電極220aの位置ずれ又は不適切な位置決めによってキャパシタの値が変化しうる。この結果、直線加速度に応じて予想静電容量信号CPM1から変化する。同様に、プルーフマスアーム、センス電極218b又はセンス電極220bに対して破損、位置ずれ、又は不適切な位置決めが起こることがあり、その結果、直線加速度に応じて予想静電容量信号CPM2から変化する。
図3は、本開示の幾つかの実施形態による処理回路に結合された図2の加速度計の典型的な回路図を示す。図3の回路図では、プルーフマスセンス電極、センス経路及び静電容量信号の番号付けは、図2の番号付けに対応し、これらの物理要素は、図3では円形ノードによって示される。プルーフマス202及び204はノード202及び204に対応し、センス電極218a及び218bはノード218a/bに対応し、センス電極220a及び220bはノード220a/bに対応し、センス経路222及び224はセンス経路222及び224に対応し、静電容量信号は、CPM1及びCPM2とラベル付けされる。図3に表されたように、各対218a/b及び220a/bがそれぞれセンス駆動信号SD1又はSD2を提供するので、センス電極218a/b及び220a/bはそれぞれ単一ノードとして表される。
プルーフマスとセンス電極によって構成されたキャパシタは、キャパシタ340(例えば、プルーフマス202とセンス電極218aの間)、キャパシタ342(例えば、プルーフマス202とセンス電極220aの間)、キャパシタ344(例えば、プルーフマス204とセンス電極220bの間)、及びキャパシタ346(例えば、プルーフマス204とセンス電極218bの間)として表される。図2と図3の実施形態では、キャパシタ340、342、344及び346の静電容量は、センス軸に沿った直線加速度に応じて変化する。
キャパシタはそれぞれ、キャパシタの静電容量と、キャパシタのそれぞれに印加される信号(例えば、信号SD1及びSD2)とに基づいて、充放電できる。そのような電荷の変化は、印加されたセンス駆動信号の周波数に基づく周期的成分を含む。図2の正X軸に沿って直線加速度がある実施形態では、プルーフマス202が、センス電極220aに近づき、プルーフマス204が、センス電極218bに近づく。同時に、プルーフマス202がセンス電極218aから遠ざかり、プルーフマス204がセンス電極220bから遠ざかる。同様に、負X軸に沿った直線加速度によって、プルーフマス202がセンス電極218aに近づき、センス電極220aから遠ざかり、プルーフマス204がセンス電極220bに近づきセンス電極218bから遠ざかる。プルーフマスとセンス電極が互いに近づくとき、それにより構成されたキャパシタの静電容量が増大する。プルーフマスとセンス電極が互いに遠ざかるとき、それにより構成されたキャパシタの静電容量は減少する。図3の矢印は、負X軸に沿った直線加速度に対する応答を表し、プルーフマス202とセンス電極218aによって構成されたキャパシタ340の静電容量が増大し、プルーフマス202とセンス電極220aによって構成されたキャパシタ342の静電容量が減少し、プルーフマス204とセンス電極220bによって構成されたキャパシタ344の静電容量が増大し、プルーフマス204とセンス電極218bによって構成されたキャパシタ346の静電容量が減少する。
本明細書に述べられ表された図2と図3の典型的実施形態では、差分センス駆動信号が、それぞれのセンス電極218a/218b及び220a/220bに印加される。静電容量の変化は、そのような差分信号に基づいてプルーフマス202及び204で検出され、静電容量信号CPM1及びCPM2は、センス経路222とセンス経路224を介して加速処理回路372(例えば、処理回路14の)と試験回路376(例えば、処理回路14の)に提供される。
本明細書で述べるように、それぞれ個別のキャパシタの基本静電容量特性は、例えば、製造欠陥、破損、位置ずれ又は不適切な位置決めの結果として、キャパシタの構成要素のうちの1つ(プルーフマス又はセンス電極)の分散により変化しうる。図3は、直線加速度によるプルーフマスの動きに応じたキャパシタ340、342、344及び346のそれぞれの静電容量の変化を表す。これは、プルーフマスの動きの結果として関連キャパシタの隣のかっこ内に静電容量の変化として表される。図3の典型的実施形態の場合、プルーフマス202がセンス電極218aの近づくと、静電容量が正変化し、プルーフマス202がセンス電極220aから離れると、静電容量が負変化し、プルーフマス204がセンス電極220bに近づくと、静電容量が正変化し、プルーフマス204がセンス電極218bから遠ざかると、静電容量が負変化する。
図3の典型的実施形態では、キャパシタ346の構成要素のうちの1つ(例えば、プルーフマス204又は218b)が、所望又は設計の構成から変化し(例えば、製造欠陥、破損、位置ずれ又は不適切な位置決めの結果として)、その結果、キャパシタ346の容量特性は、他のキャパシタ340、342及び344と異なることになる。キャパシタ340、342及び344のそれぞれの静電容量は、比較的均一であるが、キャパシタ346の静電容量は、容量特性の分散により実質的に異なる。同様に、キャパシタ340、342及び344は直線加速度による静電容量変化は類似するが(例えば、静電容量ΔCの正又は負変化により)、キャパシタ346は、静電容量特性の変化により異なる(例えば、ΔCと異なる値を有する)。図3の典型的実施形態では、キャパシタ346は値0.9*Cを有し、一方、他のキャパシタは全てCの値を有する。同様に、直線加速度が同じだと、キャパシタ346の静電容量の変化が異なる(例えば、X軸直線加速度では−0.9ΔC又は+0.9ΔC)。例えば、図3の実施形態では、静電容量の変化は、キャパシタ340では+ΔC、キャパシタ342では―ΔC、キャパシタ344では+ΔC、及びキャパシタ346では−0.9*ΔCでよい。
加速度計300からの静電容量信号CPM1及びCPM2は、センス経路222及び224を介して加速処理回路372及び試験回路376に提供されうる。一実施形態では、加速処理回路は、静電容量信号CPM1及びCPM2(例えば、静電容量間の差に比例する)に基づいている電気的出力(例えば、電圧又は電流)を有する検出信号を出力する変換回路(例えば、静電容量−電圧変換回路)を使用して、静電容量信号CPMI及びCPM2に基づいて検出加速を測定できる。加速処理回路は、フィルタ、アナログデジタル変換、スケーリング、しきい値との比較、信号分析、及び警告と通知の生成などの他の動作を実行できる。典型的実施形態では、加速度信号374は、加速度(例えば、センス駆動周波数の検出信号の一部、プルーフマスの物理的運動に正比例する信号など)、加速度測定値(例えば、加速度値)、又はその表現(例えば、通知、警告など)を決定するために使用されうる任意の適切な信号でよい。
正常条件下では、全てのキャパシタが類似の静電容量特性を有するとき、静電容量信号CPM1及びCPM2は、センス駆動周波数の差分信号になり、その結果、正味同相モード信号は実質的に相殺できる(例えば、構成要素と製造公差に基づく最小予想同相モード成分により)。しかしながら、キャパシタのうちの1つが、公差を超えるように変化したとき、異常キャパシタ(例えば、図3のキャパシタ346)の静電容量値の差に基づいて、静電容量信号間の正味同相モード成分が分かる。
試験回路376は、センス経路222及び224に結合され、静電容量信号CPM1及びCPM2を受け取り、静電容量信号に基づいて異常静電容量の存在を識別できる。本明細書に記載されたように、試験回路376は、同相モード信号を利用して、例えば、受け取った静電容量信号を抽出しフィルタリングして、1つ以上のしきい値と比較された同相モード信号を出力することによって、加速度計がキャパシタエラーを含むかどうかを決定できる。同相モード信号がしきい値を超える場合、キャパシタのうちの1つが異常であることが決定されうる。幾つかの実施形態では、キャパシタエラーが識別されうる。また、キャパシタエラーと、同相モード信号がしきい値を超える程度(又は、幾つかの実施形態では、複数のしきい値のうちのどれを同相モード信号が超えたか)とに基づいて、補償が実行されうる。例えば、処理は、受け取った加速度信号に適用されたスケーリングファクタを加速処理回路372によって調整でき、フィルタリングは、受信信号の同相モード成分を減少できるか印加センス駆動信号を修正できる。補償が行われない場合、加速度計の動作を停止させる通知又は警告が提供されうる。試験回路376は、試験信号378を出力でき、試験信号378は、同相モード信号、キャパシタエラー、補償、エラー、通知、又はこれらの任意の適切な組み合わせに関する情報を提供するアナログ信号、デジタル信号、データ信号、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含みうる。
図4は、本開示の幾つかの実施形態による処理回路14の試験回路376の実例となるブロック図を示す。試験回路376に様々な回路を使用できること、その回路の機能を修正できること、特定の回路を除去又は再構成できることが理解されるが、一実施形態では、試験回路376は、入力回路402、フィルタ及び増幅器回路404、及び比較回路406を含みうる。
入力回路402は、センス経路222/224から1つ以上の信号を受け取り、未処理の同相モード信号を試験回路376の追加の回路に提供できる。幾つかの実施形態では、センス経路222/224を介して受け取った信号がそれぞれ、入力回路402に提供される前に処理されて、例えば、プルーフマス又はセンス電極から出力された静電容量信号が増幅又はフィルタリングされる。一実施形態では、静電容量信号CPM1及びCPM2が、入力回路402に直接提供されうる。入力回路は、静電容量信号CPM1及びCPM2の間の同相モードを表す信号を出力するように構成された回路及び構成要素を含みうる。一実施形態では、入力回路は、静電容量信号CPM1及びCPM2の間に同相モード信号成分が存在するとき、電流及び電圧を増大させる回路を含みうる。この未処理の同相モード信号は、フィルタと増幅器回路404に出力されうる。
フィルタ及び増幅器回路404は、入力回路402などの回路から未処理同相モード信号を受け取ることができ、また未処理同相モード信号にフィルタリングを適用して、加速度計内にキャパシタエラーが存在するかどうかの更なる分析に使用されうる同相モード信号を出力できる。様々な未処理同相モード信号(例えば、静電容量信号、フィルタリングされた静電容量信号、デジタル化された静電容量信号、組み合わされた静電容量信号など)を様々な方法(例えば、RCフィルタリング、増幅、通過帯域フィルタリングなど)でフィルタリングして、様々な同相モード信号(例えば、静電容量信号の同相モード成分の大きさを表わすアナログ又はデジタル信号)を提供できるが、一実施形態では、未処理同相モード信号は、センス駆動周波数の周期信号でよく、その大きさは、入力回路402で受け取った静電容量信号の同相モード成分に基づいて変化する。フィルタ回路は、静電容量信号の同相モード成分の大きさを表す(例えば、比例する)同相モード信号を出力する回路を増幅しRCフィルタリングできる。一実施形態では、同相モード信号は、キャパシタ346による非対称性により全体的な同相モード成分に比例して変化する値を有する非周期的信号(例えば、アナログ電圧)でよい。
同相モード信号は、比較回路406に提供されてもよく、比較回路406は、加速度計が受け取った同相モード信号に基づいたキャパシタエラーを含むかどうかを決定できる。幾つかの適切な信号分析技術に基づいて比較が行われうるが、一実施形態では、比較は、受け取った同相モード信号と1つ以上のしきい値との比較に基づきうる。一実施形態では、典型的なしきい値は、キャパシタの構成要素(例えば、プルーフマスとセンス電極)の許容公差に基づいてもよく、構成要素の完全耐性スタックアップの結果として静電容量が変化する。幾つかの実施形態では、追加のエラー要素がしきい値に適用され、その結果、公差より大きい、限られた大きさの同相モードエラーが許容される。幾つかの実施形態では、同相モードエラーが生じる可能性が高いという通知、様々な補償技術の開始、警告及びエラーメッセージの生成、加速度計による動作の停止など、加速度計による様々な処置をもたらす複数のしきい値が使用されうる。比較回路406は、この処理の一部又は全てを実行でき、又は、幾つかの実施形態では、比較結果(例えば、同相モード信号としきい値との比較に基づいて「1」及び「0」値)を、更なる処理のための処理回路14の他の回路に提供できる。比較回路406の出力は、本明細書に記載されたような比較結果及び/又は他の情報(例えば、通知、エラーメッセージ、補償の制御信号など)を含みる試験出力でよい。
図5は、本開示の幾つかの実施形態による試験回路376の説明的回路図を示す。一実施形態では、回路図は、入力回路402、フィルタ及び増幅器回路404、及び比較回路406の構成要素を表してもよいが、他の実施形態では、他の回路が使用されてもよく、表された構成要素が再構成されてもよく、1つ以上の構成要素が追加又は除去されてもよく、構成要素の1つ以上が類似機能を実行する他の構成要素と置き換えられてもよいことを理解されよう。
入力回路402の典型的実施形態では、静電容量信号CPM1及びCPM2が、センス経路222及び224によって入力回路402に提供されてもよく、未処理同相モード信号が、入力回路402から(例えば、フィルタ及び増幅器回路404に)出力されてもよい。入力回路402は、この機能を実行するための任意の適切な構成要素を含みうるが、一実施形態では、入力回路402が、電流源508、第1の入力トランジスタ502、第2の入力トランジスタ504、及びイネーブルスイッチ506を含みうる。
一実施形態では、試験回路376の動作は、イネーブル信号に基づいてイネーブル又はディスエーブルされうる。イネーブル信号は、任意の適切な方法で提供されうるが、一実施形態では、イネーブル信号は、電流源508とイネーブルスイッチ506に提供されうる。イネーブル信号が「オン」のとき、電流源508が、入力回路402の他の構成要素に電流を提供できる。一実施形態では、電流源によって提供される電流は、静電容量信号間に同相モード成分がある条件下でキャパシタ510上に電圧が十分に蓄積できるほどでよい。一実施形態では、イネーブル信号もイネーブルスイッチ506に提供されうる。各イネーブルスイッチは、第1のトランジスタ502とアースの間、又は第2のトランジスタ504とアースの間に接続されうる。イネーブル信号が「オン」のとき、イネーブルスイッチ506が閉じて、第1のトランジスタ502とアースの間、及び第2のトランジスタ504とアースの間に電気接続を作り出す。
イネーブル信号が「オン」のとき、入力回路402が、受け取った静電容量信号に応じて未処理同相モード信号を提供できる。一実施形態では、静電容量信号CPM1が、センス経路222によって第1の入力トランジスタ502に提供されてもよく、静電容量信号CPM2が、センス経路224によって第2の入力トランジスタ504に提供されてもよい。本明細書に記載されたように、入力回路402の構成要素は、静電容量信号CPM1と静電容量信号CPM2の間に同相モード成分が存在するときに、電圧が未処理同相モード信号として出力されるように構成されうる。様々な実施形態で、これは、複数の相互接続されたトランジスタ、キャパシタ、抵抗器、ダイオードなどを含む様々な構成要素によって実行されうる。
図5の典型的実施形態では、静電容量信号がそれぞれ、pチャネルエンハンスメント形MOSFETの(例えば、第1のトランジスタ502と第2のトランジスタ504の)ゲートに入力されうる。第1のトランジスタ502と第2のトランジスタ504が、電流源508とキャパシタ510に接続された第1のノードと、アースに接続された第2のノードとによって、第1のノードと第2のノードの間に並列に結合されうる。正常動作条件下(例えば、キャパシタ特性が全て公差内にあるとき)で、第1のトランジスタ502と第2のトランジスタ504に提供される信号は、ほぼ差分信号だけのはずである。
一実施形態では、第1のトランジスタ502と第2のトランジスタ504は、大きいオーバードライブを有してもよく、差動対として機能してもよく、その結果、入力信号CPM1及びCPM2が差分信号である(例えば、加速度計の静電容量が等しく、差分センス信号が加速度計に印加される)とき、pチャネルMOSFET(例えば、共通ソース構成)のソースは同じ電圧になる。差動対への入力信号が同相モードを有するとき(例えば、CPM1がCPM2と等しいとき)、差動対は、電圧フォロワーとして働くことがある。CPM1=CPM2の電圧は、しきい電圧を有する共通ソースに伝播される。
フィルタと増幅器回路の404の典型的実施形態では、未処理同相モード信号が、入力回路402からのフィルタと増幅器回路の404に提供され、その結果、フィルタ及び増幅器回路404が、フィルタリングされた同相モード信号を(例えば、比較回路406に)出力できる。フィルタ及び増幅器回路404が、この機能を実行する任意の適切な構成要素を含みうるが、一実施形態では、フィルタと増幅器回路404は、キャパシタ510、電圧入力512、増幅器514、キャパシタ516、抵抗器518及びリセットスイッチ520を含みうる。
一実施形態では、未処理同相モード信号が、キャパシタ510に提供され、キャパシタ510から増幅器514の第1の入力に提供されてもよく、一方、電圧入力512VCMは、増幅器の他の入力に提供される適切な電圧でよい。増幅器514の出力は、並列の帰還コンデンサ516と帰還抵抗器518によって増幅器514の入力に結合されうる。一実施形態では、キャパシタ510及び516並びに抵抗器518は、増幅器514からの出力同相モード信号が、未処理同相モード信号からの交流成分の除去(例えば、静電容量信号の一定大きさの同相モード成分に応じて実質的に固定されたアナログ電圧を出力する)や、予想同相モード大きさに対応するのに適したダイナミックレンジの提供など、望ましい特徴を有するように大きさが決められうる。静電容量510は、交流結合として作用する。共通ソース上の信号は、静電容量510と静電容量516の比率によって増幅されうる。抵抗器518は、増幅器514上で直流帰還を保持できる。一実施形態では、抵抗器518、キャパシタ516及び増幅器514と並列に、それらの構成要素を選択的に短絡させるためにリセットスイッチ520が提供されうる(例えば、起動中に増幅器の負入力の電圧を設定するため)。
フィルタ及び増幅器回路404から出力された同相モード信号は、比較回路406に提供されうる。本明細書に記載されたように、比較回路は、様々な実施形態で様々な試験出力を生成するために、同相モード成分(例えば、同相モード信号)を表す信号の適切な比較を実行できる。図5に表された一実施形態では、比較回路は、比較器522と比較器しきい電圧524を含みうる。
典型的実施形態では、しきい電圧524は、同相モード成分の大きさと同相モード信号との既知の関係に基づいて選択されうる。選択されたしきい電圧は、加速度計のキャパシタの1つ以上が許容公差から外れた電圧でよい(例えば、製造欠陥、破損、位置ずれ、又は不適当な位置決めによる)。同相モード信号の電圧が、しきい電圧524を超える場合、「High」信号が、比較器522から試験出力378として出力され、それにより、加速度計が動作を停止すべきであることを示す。試験出力378は、適切な処置と通知のために他の処理回路14に提供されうる。
他の典型的な実施形態(図5に表されていない)では、比較は、他の方法、例えば、複数のしきい値との比較や、時間の経過による同相モード信号の分析によって行われうる(例えば、パターンや変化などを識別するために)。比較回路406の1つの典型的実施形態では、同相モード信号が、1つ以上のしきい値と比較されうる。本明細書に記載されているように、同相モード信号は、同相モード成分の大きさに基づいて変化することがあり、同相モード成分の大きさは、キャパシタ異常の重大度によって変化しうる。キャパシタ異常の重大度は、同相モード信号が複数のしきい値と比べてどうであるかにより決定されうる。適切な値としきい値が、様々な方式で比較されうるが、典型的実施形態では、より深刻なキャパシタ異常が、同相モード信号の増大に対応する。
一実施形態では、複数のしきい値に複数の比較が実行され、それにより、比較回路の様々な信号レベルによって、様々な応答又は通知が得られる。典型的実施形態では、3つのしきい値(VTH1、VTH2及びVTH3)が比較のために利用されてもよく、各しきい値は、異なる起こりうる異常重大度レベルに対応する。比較は、様々な方式で実行されうるが、一実施形態では、しきい値がそれぞれ、それぞれの比較器に入力されるアナログ電圧に対応し、同相モード信号は、しきい値のそれぞれと比較される。同相モード信号の大きさの増大が、検出されたキャパシタ異常の程度の増大に対応する実施形態では、しきい値VTH1が、しきい値VTH2より小さいことがあり、しきい値VTH2が、しきい値VTH3より小さいことがある。VTH1より小さい同相モード信号電圧値は、正常動作条件に対応できる。VTH1より大きくVTH2より小さい比較電圧は、第1のエラー状態を示しうる。VTH2より大きくVTH3より小さい比較電圧は、第1のエラー状態より深刻な第2のエラー状態を示しうる。最後に、VTH3より大きい比較電圧は、最高重大度レベルの第3のエラー状態を示しうる。
一実施形態では、比較器からの出力が、比較回路406によって処理されてもよく、更なる処理のために処理回路14の他のものに提供されてもよい。これらの出力は、警告と補償処理を実行するために処理されうる。警告及び補償処理は、プログラム可能でよく、それにより、様々な重大度レベルに基づいて異なる処置が取られうる。典型的な処置には、通知の提供、警告の生成、加速度計の動作の停止、加速度計の動作パラメータの修正、加速出力信号に適用される利得値の修正、加速度計からの出力データの修正(例えば、他のセンサからのスケーリングファクタ又はデータに基づく)、他の適切な動作、及びこれらの任意の適切な組み合わせがある。
典型的実施形態では、正常動作条件下で、加速度計が、正常に動作し続けることができ、通知は提供されえない(例えば、正常動作の通知以外)。第1のエラー状態の場合、エラーの存在の警告通知が提供されることがあり、エラーを調整するために加速度計からの出力データが修正されうる(例えば、第1のタイプの補償)。第2のより深刻なエラー状態の場合、エラーの存在の警告通知が提供されることがあり、エラーを補償するための試みで、動作パラメータ(例えば、センス駆動信号の修正、補償電極への信号の印加など)が実行されうる(例えば、第2のタイプの補償)。一実施形態では、第2のエラー状態に応じて、出力値の修正も実行されうる。第3のエラー状態の場合、加速度計が動作を停止すべきであることが決定されてもよく、加速度計を遮断させる通知が提供されてもよい。
幾つかの実施形態では、警告と補償処理が、前のエラー状態と応答のメモリを保持でき、その結果、様々な補償技術が、技術の有効性に基づいて実行されることがあり、現在実行されている特定の補償に基づいて組み合わされうる。例えば、動作パラメータの修正によって、加速度計が第2のエラー状態から正常状態又は第1のエラー状態に首尾よく移行した場合、動作パラメータの修正が維持されうる。別の例では、出力データの様々な修正が、動作パラメータの様々な変化に対応でき、またエラーを改善するために使用される動作パラメータの変化に基づいて使用されうる。
図6〜図7は、本開示の幾つかの実施形態によるキャパシタ異常を識別するための典型的なステップを表す。図6〜図7は、本開示の文脈で述べられているが、図6〜図7に示された方法及びステップが、様々なセンサ及び加速度計の設計、信号経路、エラー、及び補償技術に適用されうることを理解されよう。図6〜図7に特定の順序及び流れのステップが示されているが、幾つかの実施形態では、ステップの1つ以上が、修正、移動、除去又は追加されてもよく、図6〜図7に表された流れが修正されてもよいことを理解されよう。
図6は、本開示の幾つかの実施形態による同相モード信号を利用してキャパシタ異常を識別する典型的なステップを表す。本明細書に記載されているように、典型的な加速度計は、加速度計のプルーフマス及びセンス電極によって構成されたキャパシタから静電容量信号を受け取るために結合された試験回路を含みうる。
ステップ602で、センス駆動信号が、センス電極に印加されうる。センス駆動信号は、センス駆動周波数を有してもよいが、幾つかの実施形態では、センス電極のうちの様々なものに差分信号として提供されうる。センス駆動信号がセンス電極に印加された後で、処理は、ステップ604に進みうる。
ステップ604で、加速度計処理回路が、キャパシタから静電容量信号を受け取りうる。本明細書に記載されたように、静電容量信号は、センス電極に対するプルーフマスの動きと周期的センス駆動信号に基づいて変化しうる。静電容量信号が、加速度計処理回路によって受け取られた後で、処理は、ステップ606に進みうる。
ステップ606で、試験回路が、キャパシタから静電容量信号を受け取りうる。一実施形態では、静電容量信号は、入力回路によって受け取られてもよく、入力回路は、受け取った静電容量信号に基づいて未処理同相モード信号を決定する構成要素(例えば、電流源、トランジスタ及びキャパシタ)を含みうる。未処理同相モード信号は、静電容量信号の同相モード成分を表しうる。未処理同相モード信号が決定された後、処理は、ステップ608に進みうる。
ステップ608で、未処理同相モード信号が、分析に適した同相モード信号を生成するために処理されうる。処理は、様々な方法で実行されうるが、一実施形態では、帰還RC回路を有する増幅器が、未処理同相モード信号からの交流部分とノイズの除去を提供し、同相モード信号に適したダイナミックレンジに提供できる。ステップ608で同相モード信号が決定された後、処理は、ステップ610に進みうる。
ステップ610で、同相モード信号が、1つ以上のしきい値と比較されうる。本明細書に記載されたような典型的実施形態では、同相モード信号の電圧は、より高い電圧がより深刻な異常に対応するように、キャパシタ異常の重大度に基づいて増加されてもよい。複数のしきい値の典型的実施形態では、処理は、全てのしきい値を超えた場合、又は幾つかの実施形態では、警告しきい値だけを超えた場合に、ステップ612に進みうる。ステップ612で、センス駆動信号への応答に基づいて加速度が決定されてもよく、処理は、ステップ602に戻りうる。同相モード信号がしきい値より大きい場合、又は幾つかの実施形態では、動作を停止するか動作を補償する要件と関連付けられたしきい値より大きい場合、処理は、ステップ614に進みうる。
ステップ614で、処理回路は、異常に応じて補償が行われるかどうか、又は加速度計がエラーに応じて動作を停止すべきかどうかを決定できる。補償が行われる場合、処理は、図7に示された処理に進みうる。補償が行われない場合、処理はステップ616に進むことができ、通知が提供され、加速度計が動作を停止できる(例えば、加速度計の幾つか又は全ての構成要素から電圧が除去されてもよく、センス駆動信号が提供されなくなってもよい)。次に、図6の処理が終了できる。
図7は、本開示の幾つかの実施形態によるキャパシタ異常を補償するための典型的なステップを示す。図6のステップで異常が識別された場合(例えば、同相モード信号の電圧が1つ以上のしきい電圧より低下したことによる)と、特定の加速度計内でエラーの補償が許可される場合に、図7の処理が実行されうる。
ステップ702で、異常の重大度が、例えば同相モード信号用の電圧の値に基づいて、決定されうる。一実施形態では、重大度は、複数の異常状態のうちの1つを識別するために、同相モード信号と複数のしきい値との比較(例えば、複数の比較器における)に基づいてもよい。一実施形態では、異常状態の1つ以上が、重大度と、単独で関連付けられるか、他の入手可能な情報(例えば、補償又は加速度データ履歴、同時加速度データなど)に合わせて検討されうる。重大度が決定された後、処理は、ステップ704に進みうる。
ステップ704で、異常の重大度に基づいて補償が可能かどうかが決定されうる。一実施形態では、1つ以上のエラー状態又は重大度レベルが、様々な応答と関連付けられうる。異常状態又は重大度レベルが補償を可能にしない場合、処理は、ステップ706に進むことができ、そこで、通知が提供され、加速度計が動作を停止することがある(例えば、加速度計の幾つか又は全ての構成要素から電圧が除去され、センス駆動信号が提供されなくなる、など)。次に、図7の処理が終了できる。補償が可能な場合、処理は、ステップ708に進みうる。
ステップ708で、エラーの重大度に基づいて可能な補償のタイプが決定されうる。様々な適切なタイプの補償が可能でありうるが、一実施形態では、補償のタイプは、加速度計からの出力データの修正(例えば、スケーリングファクタの修正による)、又は加速度計の動作パラメータの修正(例えば、センス駆動信号を修正するか、補償電極に補償信号を提供することにより)を含みうる。様々な重大度レベルが、様々な補償タイプ、及び幾つかの実施形態では様々なタイプ内の様々な補償技術と関連付けられうる。幾つかの実施形態では、補償タイプを決定するときに、履歴補償情報や加速度計データなどの追加情報、又は電流加速度計データが考慮されうる。実行される補償が決定された後、補償が実施されてもよく、処理は、ステップ710に進みうる。
ステップ710で、補償に対する応答が測定されうる。スケーリングファクタが修正される実施形態では、スケーリングによる影響を受ける加速出力値又は他の信号値の変化などの変化が測定されうる。動作パラメータの修正の実施形態では、センス駆動信号及び/又は補助駆動信号の変化が決定されうる。応答がステップ710で測定された後、処理は、ステップ712に進みうる。
ステップ712で、補償が成功したかどうかが決定されうる。典型的実施形態では、測定された応答値が、ステップ714で、補償に基づく予想測定応答値と比較されうる。測定応答値が期待値(例えば、しきい値範囲内)に対応する場合、処理は、図6のステップ602に戻りうる。測定応答値が期待値(例えば、しきい値範囲内の)に対応しない場合、処理は、ステップ714に進みうる。
ステップ714で、補償が続くべきかどうかが決定されうる。典型的実施形態では、測定応答値が、出力データの改善又は静電容量信号の同相モード成分の減少を示す場合、補償は幾つかのステップで続いてもよく、測定応答を許容可能な境界内にするために複数の補償技術が使用されうる。補償が続く場合、処理は、ステップ708に戻りうる。補償が続くことができない場合、処理は、ステップ716に進むことができ、そこで、通知が提供されてもよく(例えば、補償が失敗したこと)、加速度計が動作を停止されてもよい(例えば、加速度計の幾つか又は全ての構成要素から電圧が除去される、センス駆動信号が提供されなくなる、など)。そこで、図7の処理が終了できる。
以上の説明は、本開示による典型的実施形態を含む。これらの例は、説明のためのものであり、限定するためのものではない。本開示が、本明細書に明示的に記述され描かれた形態と異なる形態で実施されてもよく、以下の特許請求の範囲と一致する様々な修正、最適化及び変形が、当業者によって実現されうることを理解されよう。