JP6954396B2 - 映像表示方法及び映像表示システム - Google Patents

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Description

本発明は映像表示方法及び映像表示システムに関し、特にキャラクターの像を観察者に提示するのに適した映像表示方法及び映像表示システムに関する。
特許文献1は投影システムを開示している。図9にはこれと同等の投影システム95が示されている。投影システム95ではスクリーン96に画像を投影することで、スクリーン96の前に立った観察者に画像を認知させる。図中では画像として、顔を含んだキャラクター91の像を映している。キャラクター91を投影することで、投影システム95を宣伝広告用のマネキン(signage manneguin)として機能させることが出来る。
特開2016−061983号公報 特開2015−007734号公報
図9に示す投影システム95では、スクリーン96の輪郭形状及び大きさはキャラクター91の輪郭形状及び大きさと同一である。キャラクター91の周囲の余白は極力小さくなるように設計されている。これにより、スクリーンの後ろ側の背景93(scenery 93)も見えるため、投影システム95を実物のマネキンの代わりとして設置するために有益である。
しかしながら、図9に示すスクリーン中で、キャラクター91が動くと、キャラクター91がスクリーン外にはみ出してしまう場合がある。このため、投影システム95では、例えば身振り手振りを交えた動作をキャラクター91に演じさせるのは難しい。
図9に示すキャラクター91の大きさを考慮せずに、キャラクター91をスクリーン96よりも大きいスクリーン97に投影してもよい。これにより、キャラクター91は大きな動作を行ってもスクリーン外にはみ出すことがない。しかしながら、この場合、背景93はスクリーン97の背後に隠れてしまう。またスクリーン97の余白には、キャラクター91の周りに背景の画像も投影する必要がある。
舞台装置の分野では、背景を隠さないようにスクリーンを透明にする方法も知られている。特許文献2にはこのような方法としてペッパーズ・ゴーストの技法が開示されている。しかしながら、係る技法ではスクリーンに投影される像と等倍の大きさのキャラクター映像を生成するとともに、斜め向きに配置されたスクリーンにて映像を反射角約45度で反射する必要がある。ペッパーズ・ゴーストは極めて大がかりな装置を必要とするため、任意のロケーションに配置することが求められるマネキンには適さない。
図9に示す投影システム95に戻る。図9に示す状況において、観察者はスクリーン96の表面を感知できることから、観察者はキャラクター91がスクリーン96の表面に描かれた平面的な絵であると認識せざるを得ない。このため、キャラクター91と、実物のマネキンとでは実在感(Sense of Presence)に著しい差が生じる。
また実物のマネキンを、実在の対話型ロボットとする例も知られている。このような対話型(interactive)ロボットは音声等による情報提供のみならず、対話を試みる人間の意思表示に対して受け答えできるようになっている。
ここで図9に示すようなキャラクター91を対話型のキャラクターとすることもまた可能である。しかしながら対話を試みる人間の立場に立てば、キャラクター91と対話しているという実感は実物の対話型ロボットに比べて乏しい。なぜなら、対話を試みる人間がキャラクター91を観察した場合、それはスクリーン96の表面に描かれた平面的な絵であると認識せざるを得ないからである。
本発明は映像表示方法及び映像表示システムを提供することを課題とする。かかる映像表示方法及び映像表示システムは特にキャラクターの像を観察者に提示するのに適したものである。本発明は係る映像表示方法及び映像表示システムでキャラクターを提示する際、提示されたキャラクターの実在感を高めることを目的とする。
本発明は、以下[1]〜[10]の構成を有する映像表示方法、及び映像表示システムを提供する。
[1]: 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションのなす実存背景と、前記実存背景の前方に設置された透明スクリーンと、前記透明スクリーンに映像を拡大投影するプロジェクターと、を備える環境において、
前記透明スクリーンにキャラクターを含む映像を拡大投影することで、前記透明スクリーンのさらに前方に位置する観察者に対し、前記実存背景の透過像を背にした前記キャラクターの投影像を提示する、映像表示方法であって、
前記映像中の前記キャラクターの周囲の背景画像を暗黒とし、
前記透明スクリーン上における前記投影像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
映像表示方法。
[2]: 前記実存背景の前記平均照度は10ルクス以上である、
[1]に記載の映像表示方法。
[3]: 前記投影像には前記キャラクターの全身が含まれており、
前記投影像は前記透明スクリーンの下端から浮いている、
[1]又は[2]に記載の映像表示方法。
[4]: 前記透明スクリーンは、直立しているとともに、前記透明スクリーンより後方にある鉛直軸を中心として湾曲している、
[1]〜[3]のいずれかに記載の映像表示方法。
[5]: 前記透明スクリーンの上方に、ひさしを設ける、
[1]〜[4]のいずれかに記載の映像表示方法。
[6]: 前記キャラクターに前記観察者と対話をさせる、
[1]〜[5]のいずれかに記載の映像表示方法。
[7]: 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションのなす実存背景と、前記実存背景に対向するように設置されたハーフミラーと、キャラクターを含む映像を表示するディスプレイと、を備える環境において、
前記ハーフミラーの裏面から鏡面に向かって前記映像を透過させることで、前記ハーフミラーの鏡面側に位置する観察者に対して、前記実存背景の反射像を背にした前記キャラクターの透過像を提示する、映像表示方法であって、
前記映像中の前記キャラクターの周囲の背景画像を暗黒とし、
前記ハーフミラーの鏡面における前記透過像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
映像表示方法。
[8] 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションを実存背景として用いることができ、
前記実存背景の前方に設置される透明スクリーンと、前記透明スクリーンに映像を拡大投影するプロジェクターとを備え、
前記透明スクリーンにキャラクターを含む映像を拡大投影することで、前記透明スクリーンのさらに前方に位置する観察者に対して、前記実存背景の透過像を背にした前記キャラクターの投影像を提示する、映像表示システムであって、
前記映像中の前記キャラクターの周囲の背景画像を暗黒とし、
前記透明スクリーン上における前記投影像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
映像表示システム。
[9] 前記実存背景の前記平均照度を取得し、
前記投影像の前記平均照度が、前記実存背景の前記平均照度の2倍以上となるように、前記映像の光の強度を調整する、
[8]に記載の映像表示システム。
[10] 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションを実存背景として用いることができ、
前記実存背景に対向するように設置されるハーフミラーと、キャラクターを含む映像を表示するディスプレイと、を備え、
前記ハーフミラーの裏面から鏡面に向かって前記映像を透過させることで、前記ハーフミラーの鏡面側に位置する観察者に対して、前記実存背景の反射像を背にした前記キャラクターの透過像を提示する、映像表示システムであって
前記映像中の前記キャラクターの周囲の背景画像を暗黒とし、
前記ハーフミラーの鏡面における前記透過像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
映像表示システム。
本発明により、提示されたキャラクターの実在感を高めることができる。
実施例1の映像表示方法を実施する環境の全体図である。 実施例1の映像表示システムの側面図である。 表示される映像のフレームである。 背景画像を暗黒としなかった場合を表す図である。 映像表示システムの平面図である。 実施例2の映像表示方法を実施する環境の全体図である。 実施例2の映像表示システムの正面図である。 比較例に係るペッパーズ・ゴーストの全体図である。 従来の投影システムが置かれたロケーションの全体図である。
本明細書における「ロケーション」の用語は、拡大鏡を用いなくても人間が視覚的に認識可能なあらゆる場所を指す。ロケーションには屋内及び屋外が含まれる。ロケーションには空中や水中の場所も含まれる。
本明細書において用いられる「実存背景」の用語は、映像で再現された背景ではなく、実在物で構成される背景を表す。すなわち実在物で反射した光が観察者の目に直接入射して、視角的に認識されることを表す。ただし実在物から発せられた光が透明スクリーンを透過したり、ハーフミラーで反射したりしてから、観察者の目に入射する場合がこれに含まれる。また「実存背景」の用語は、その実在物そのものを表す場合がある。
本明細書において用いられる「環境光」の用語は、日光又は人工的な光を指す。環境光は特に実存背景に照射される光を指す。実存背景内に発光体があることで、実存背景がこれに照らされている場合も、係る光は環境光に含まれる。例えば実存背景内にスポットライトが設置されている例がこれにあたる。
本明細書において用いられる「暗闇」の用語は、暗視装置を用いなければ人間が実在物を視覚的に認識できない程度に環境光が弱いか、環境光が全くない状態を指す。暗闇を照度10ルクス未満と定義してもよい。任意のロケーションでは、環境光を反射していることで暗闇となっていないことが好ましい。
本明細書において用いられる「透明スクリーン」の用語は、スクリーンの正面側からスクリーンの背後が視認可能なスクリーンを表す。透明スクリーンは入射光を透過する。透明スクリーンはまた、その表面に投影像を得ることが出来る。透明スクリーンは透明スクリーンに投射された映像光の少なくとも一部を投影像として取り出すことができる。一例において透明スクリーンは機能層を有する。機能層はその背後から照射された映像光を光散乱させる。機能層はその正面側から照射された映像光を拡散反射する。機能層はコレステリック液晶を有するものでもよい。透明スクリーンとして例えば旭硝子株式会社より提供されるGlascene(登録商標)を利用できる。
本明細書において用いられる「プロジェクター」の用語は、映像を拡大して投射する装置を表す。プロジェクターにより、透明スクリーンに対して映像が拡大投影されることが好ましい。
本明細書において用いられる「ハーフミラー」の用語は、鏡面側に入射する光を反射するとともに、裏面側に入射する光を透過させて鏡面側に導く鏡を表す。
本明細書において用いられる「ディスプレイ」の用語は180度以下の特定の視野角をもって映像を表示する装置を表す。ディスプレイには液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが含まれる。
本明細書においても用いられる「映像」の用語は、動画像を表す。映像は実写、アニメーション、及びコンピューターグラフィックスのいずれでもよい。コンピューターグラフィックス映像は3Dモデリングにより制作されたものでもよい。本明細書において映像はキャラクターの画像を含んでいる。
本明細書で用いられる「キャラクター」の用語は、いわゆる記述的な記号や標識とは異なるものを指す。キャラクターには人間、動物、植物及びロボットが含まれる。キャラクターは実存のものでもよく、空想のものでもよい。非実存のキャラクターには、空想上の動物が含まれる。キャラクターはカメラによって撮像された像でもよく、撮影された像を加工したものでもよく、写実的に描かれたイラストでもよく、創造的に描かれたイラストでもよい。
キャラクターは、これを観察するものがその個性を認識できるものであることが好ましい。個性を認識するとは例えば、キャラクターは子供であるとか、キャラクターはロボットであるとか、キャラクターは動物であるといった認識を持つことである。なおキャラクターの個性は映像表示システムの設置された箇所に依拠しなくともよい。例えば映像表示システムを水の無いロケーションに設置したときに、映像表示されるキャラクターが遊泳する魚であってもよい。
キャラクターは単なるニコニコマーク(Smiling mark)のような記号的なキャラクターよりも、図1に示すキャラクター11のような個性がより強く表現されたものであることが好ましい。なぜなら、本実施形態の映像表示方法や映像表示システムはキャラクターの実在感を高めることを目的とするものであり、キャラクターそのものが実在感の恩恵を受けやすいものである場合により高い利益を得られるからである。
キャラクターは顔を有することが好ましい。キャラクターは表情を有することが好ましい。キャラクターは動作することが好ましい。キャラクターは全身像を有することが好ましい。これらの要素はキャラクターの実在感をより高めるのに役立つからである。
映像中に表示されるキャラクターは一体のみでもよい。他のキャラクターを一又は二以上、さらに表示してもよい。キャラクターの周囲には補助的なアイテムが配置されていてもよい。例えばキャラクターの足元に植物が生えていてもよい。
本明細書においても用いられる「背景画像」の用語は、映像のフレーム中の画像であって少なくともキャラクターの周囲の画像を表す。本実施形態では背景画像は暗黒であることが特徴である。映像中のキャラクター以外の部分全てを背景画像としてもよい。
本明細書で用いられる「暗黒」の用語は、映像中の色味を表す。映像中で暗黒を表現するには、所定の信号に基づき映像を生成する。例えばRGBを基準として暗黒を生成出来る。黒色のRGB表記は(0,0,0)である。日本で伝統的に用いられる暗黒色のRGB表記は(22,22,14)である。本実施形態の暗黒においてRは0〜22の間のいずれかの値でもよい。Gは0〜22の間のいずれかの値でもよい。Bは0〜14の間のいずれかの値でもよい。同等の色であればRGB以外の他の基準に基づいて色を生成してもよい。映像における暗黒とは、その部分の映像光がごく弱いか全くないことを指す。
本明細書で用いられる「実在感(Sense of Presence)」の用語は、仮想現実(Virtual Reality)又は拡張現実(Augmented Reality)として研究されるものと同じ技術分野に属するものを表す。すなわち人間の視角認識機能に働きかけて、人工的な映像を一定程度、実存物の像として錯覚させることを指す。またはそのような錯覚が強まった状態を指す。ここでいう実存物とは、キャラクターが上述の空想のものである場合を除外する意図を有しない。すなわち空想上のキャラクターがあたかも実存しているかのように、視覚的に錯覚されることも実在感に含まれる。
図面を参照しながら実施例を説明する。同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
[実施例1]
図1には映像表示方法を実施するロケーション10が示されている。本実施例の方法ではキャラクター11が観察者12に提示される。ロケーション10は建物13を含んでいる。ロケーション10には環境光が照射されている。ロケーション10は環境光を反射している。具体的には建物13が環境光を反射している。このため、観察者12から見てロケーション10は暗闇となっていない。ロケーション10は例示であり、本発明の実施者は暗闇となっていない任意の場所をロケーションとして選択できる。
本実施例では図1に示す建物13を含むロケーション10を実存背景として用いる。実存背景には建物13以外の実存物が含まれてもよい。例えば建物13の立つ地面がこれに含まれる。しかしながら説明を簡単にするため、以下においては建物13を実存背景として説明する。
図1に示すロケーション10の近傍には映像表示システム15が設置されている。映像表示システム15は透明スクリーン16、ステージ18及びひさし19を備える。透明スクリーン16はステージ18上に設置されている。透明スクリーン16は直立している。ひさし19は透明スクリーン16の上方に設置されている。ひさし19は環境光のスクリーン16への映り込みを防止する。映像表示システム15は建物13の内部に設置されているプロジェクターをさらに備える。
図1に示す透明スクリーン16は建物13の手前に設置されている。以下の説明では建物13から見て透明スクリーン16の方向を前方とする。また透明スクリーン16から見て建物13の方向を後方とする。観察者12は透明スクリーン16のさらに前方に位置する。
図2には側面視した映像表示システム15が示されている。プロジェクター17は透明スクリーン16の後方に設置されている。プロジェクター17は建物13の内部に設置されている。プロジェクター17は、透明スクリーン16の後方から透明スクリーン16に映像を投射する。プロジェクター17は透明スクリーン16に対して映像を拡大投影する。
図2に示すプロジェクターの配置は例示であり、プロジェクター17の位置は限定されない。例えばプロジェクター17を建物13の外部に設置してもよい。プロジェクター17を透明スクリーン16の前方に設置してもよい。プロジェクター17は透明スクリーン16の前方から透明スクリーン16に映像を投射してもよい。
図2に示すように、映像表示システム15はさらにモーションセンサー20及びコンピューター30を備える。モーションセンサー20は観察者12の存在を感知してもよい。コンピューター30は有線又は無線でモーションセンサー20及びプロジェクター17と接続されている。コンピューター30はモーションセンサー20から観察者12の存在の情報を取得してもよい。コンピューター30は透明スクリーン16の前に観察者12が存在するときのみ、キャラクターを透明スクリーン16に投影するようプロジェクター17を制御してもよい。
図1に戻る。観察者12は透明スクリーン16越しに建物13を見る。このため観察者12は建物13の透過像を見る。映像にはキャラクター11が含まれている。観察者12には建物13の透過像と、投影されたキャラクター11の像が重なって見える。このため、観察者12に対して、実存背景の透過像を背にしたキャラクターの投影像を提示することができる。キャラクターの投影像が実存背景の透過像を背にしているとは、キャラクターの投影像と実存背景の透過像との間に境界が存在するとともに、この境界を挟んでこれらの像が近接していることを含む。
図3には本実施例で表示される映像のフレーム25を示す。フレーム25にはキャラクター11の全身の像が含まれている。キャラクター11の周囲は背景画像となっている。図中では映像中のキャラクター11以外の部分全てを背景画像21としている。背景画像21はフレーム25全体の面積の30、50、60、70、80及び90%以上のいずれかを占めることが好ましい。
図3に示す背景画像21は暗黒である。フレーム25における暗黒とは、その部分の映像光がごく弱いか全くないことを指す。したがって透明スクリーン中の背景画像が映る部分は透明のままである。これは背景画像21が暗黒であっても、透明スクリーン越しに見る実存背景までが黒くなるわけではないことを表す。このため図1に示す観察者12は、建物13の透過像とキャラクター11の投影像とをいずれもよく視角認識できる。
図1及び2に戻る。図に示すように観察者12から透明スクリーン16までの距離は観察者12から建物13までの距離よりも短い。したがって、図1に示すキャラクター11の投影像と、建物13の透過像との間には焦点距離の差を生じる。このように実存背景の位置と投影像の位置との間に奥行の差があるため、観察者12には、キャラクター11の実在感が高く感じられる。言い換えれば、観察者はキャラクター11が建物13の前方に実在しているかのように錯覚する。
図4は図1と異なり、背景画像を暗黒にしなかった例を表す。係る例では観察者12には、建物13の透過像が、背景画像に埋没した状態で視角認識される。この場合、観察者12はキャラクター11の周囲にもキャラクター11と同一の焦点距離の背景画像を認識できる。したがって観察者12はキャラクター11を平板な絵の中に存在するキャラクターとして認識する。このため、キャラクター11の実在感を高めることは難しい。
図1に戻る。透明スクリーン16上におけるキャラクター11の投影像の平均照度を、建物13における環境光の平均照度の2倍以上とする。映像表示システム15は建物13の平均照度を取得してもよい。また映像表示システム15は映像の光の強度を調整することで、上記の照度の条件を満たすようにしてもよい。これによりキャラクターの投影像が実存背景の透過像に埋没することを防止する。
図1に示すキャラクター11の投影像にはキャラクター11の全身が含まれている。このため、観察者12には、キャラクター11がステージ18の上に立っているかのように感じられる。またキャラクター11の投影像は透明スクリーン16の下端から浮いている。投影像は好ましくは50〜200mm、さらに好ましくは100mm浮いている。このため、観察者12には、キャラクター11が透明スクリーン16の後方の位置にいるかのように錯覚する。
図1に示す建物13における環境光の平均照度は10ルクス以上とする。建物13を含む実存背景が10ルクス未満のロケーション、すなわち暗闇の場所である場合、観察者12は、実存背景の位置と投影像の位置との間の奥行の差が視角認識できない。この時、観察者12には、図3に示すようなフレーム25だけが視角認識される。したがって、観察者はキャラクターと周辺との間に焦点距離差を認識できないため、キャラクターの実在感を高めることは難しい。
図5には平面視した映像表示システム15が表されている。図1にも示したように透明スクリーン16は前方に向かって張り出すように湾曲している。具体的には透明スクリーン16は軸27を中心にして湾曲している。軸27は透明スクリーン16よりも後方に位置する。軸27は鉛直でもよい。また先に述べたとおり、スクリーン16は直立している。
上述した通り図5に示す観察者12は、キャラクター11が透明スクリーン16の後方にある位置IL1にいるかのように錯覚する。さらに、透明スクリーン16が上述の通り湾曲しているので、観察者12は、キャラクター11が透明スクリーン16に囲まれた位置IL1にいるかのように錯覚する。
図5に示すように、透明スクリーン16の前方に領域AR1〜4を設定してもよい。図中では透明スクリーン16に近い順に領域AR1、2、3、及び4が描かれている。図中では観察者12はAR3内にいる。モーションセンサー20は領域AR1〜4のいずれかに観察者がいるのかを検出する。映像表示システム15は観察者12のいる領域に応じて、キャラクター11の動作を変更してもよい。
図2において、コンピューター30にて観察者12の発する音声の情報をさらに取得してもよい。係る情報を元にコンピューター30はキャラクターに動作を与え、またキャラクターの動作に合わせた音声を出力してもよい。これにより、透明スクリーン16に投影されるキャラクターを観察者12と仮想現実的に対話させることができる。
図2に示すコンピューター30を用いることでキャラクターを疑似的な対話型ロボットとして機能させることができる。本実施例により表示されるキャラクターは従来技術に係る宣伝広告用のマネキンよりも実在感が高い。対話を試みようとする観察者にとっての、対話の実感を高めることができる。
[実施例2]
図6には実施例2の映像表示方法を実施するロケーション40が示されている。建物43を含むロケーション40は環境光を反射している実存背景である。ロケーション40は暗闇となっていない。本実施例の方法を実施する際にロケーション40は任意に選択できる。説明を簡単にするため、以下においては建物43を実存背景として説明する。
図6には本実施例の方法を実施するための映像表示システム45が示されている。映像表示システム45はハーフミラー46及びディスプレイ47を備える。ハーフミラー46は鏡面41及び裏面42を備える。ハーフミラー46は直立している。
図6に示すようにハーフミラー46は建物43に対向するように設置されている。具体的には鏡面41が建物43を向く。鏡面41の側には観察者12が位置する。建物43の像は鏡面41で反射する。観察者12は建物43の反射像を視覚認識できる。
図6に示すディスプレイ47は表示面44を備える。表示面44には図3に示すフレーム25と同等のフレームで構成される映像が表示される。係る映像にはキャラクター11が含まれている。表示面44はハーフミラー46の裏面42と対向する。裏面42と表示面44との間には接着層48が設けられていることが好ましい。接着層48を有することにより、ハーフミラー46とディスプレイ47とが直接的に結合されることで、ディスプレイ47の表示面44での再反射を防止でき、の映像のコントラストを高くできる。以下の本実施例の説明では、接着層48を有する形態を用いて説明する。
図6に示す接着層48は透明であるため、映像の光は接着層48を透過し、裏面42に達する。映像の光はさらに裏面42から鏡面41に向かってハーフミラー46内を透過する。鏡面41から出射した映像の光は観察者12に達する。
図6に示す裏面42にはさらにカバー49が取り付けられている。カバー49はディスプレイ47を覆う。カバー49は裏面42側の迷光を減らすために黒色が好ましい。
図6に示す映像表示システム45はさらにモーションセンサー20及びコンピューター30を備える。コンピューター30は有線又は無線でモーションセンサー20及びディスプレイ47と接続されている。モーションセンサー20が観察者12を感知する働きは実施例1と同様である。
図7には正面から見た映像表示システム45が示されている。映像表示システム45は建物43の反射像を背にしたキャラクター11の透過像を提示する。図3に示すように映像中のキャラクター11の周囲の背景画像21を暗黒とする。
図7に示す鏡面41におけるキャラクター11の透過像の平均照度を、図6に示す建物43における環境光の平均照度の2倍以上とする。映像表示システム45は建物43の平均照度を取得してもよい。映像表示システム45は取得した建物43の平均照度に応じて、透過像の平均照度を調整してもよい。
図7に示す観察者12には、キャラクター11が建物43とハーフミラー46との間にある位置IL2にいるかのように感じられる。これは観察者12が鏡面41を通じて見た建物43と、表示面44との間には、焦点距離に差があるためである。このため、実施例1と同様に、実施例2でもキャラクターの像の実在感を高めることができる。実施例2においても実施例1と同様にキャラクターを観察者と対話させてもよい。
[比較例]
比較例を用いて、上記実施例の奏する他の優れた効果を説明する。比較例として、図8にはペッパーズ・ゴーストの視角トリックが表されている。上記実施例の映像表示方法や映像表示システムは、ペッパーズ・ゴーストと類似する特徴を有する。
図8に示すように、実在する背景63の発する光は板ガラス66を透過することで、板ガラスの手前側にいる観察者12に背景63の像として認識される。板ガラス66の側方には実物大のゴースト61の模型が設置されている。実在するゴースト61の光は板ガラス66上で反射することで、観察者12にゴーストの像として認識される。また観察者12にはゴーストが背景63と同一の方向にある位置GHにいるかのように錯覚する。
図8においてゴースト61の回りから発せられる光も板ガラス66で反射する。したがって、板ガラス66上で疑似背景64の像を背景63の像に重ね合わせる必要がある。ここでゴースト61をディスプレイに表された実物大のゴーストに置き換えてもよい。ディスプレイであればゴースト61の回りを暗黒とすることができるので、疑似背景64をディスプレイに表示する必要はない。なお、斜めに設置されている板ガラス66にゴーストを拡大投影すると板ガラス66内で焦点距離がずれる。このため、実物大のゴーストの像を必要とする点が上記実施例と異なる。
図8に示すペッパーズ・ゴーストでは板ガラス66の角度を厳密に調整した光学系が必要になる。したがってかかる光学系は背景及び実物大のゴーストと一体として作製される。したがってペッパーズ・ゴーストは例えば舞台装置の用途には適するが、マネキンや対話型のキャラクターの用途には適さない。しかしながら、実存物の像を実存の背景の像と合成できるので、観察者は非常に高い実在感を得ることが出来る。したがって演劇やライブに適する。
これに対して上記実施例は、実存の背景を利用する点で本比較例と類似する。上記実施例の映像表示システムは透明スクリーン又はハーフミラーといった光学素子を用いている。投影像を作るために透明スクリーン上ではキャラクターの映像光を乱反射又は散乱させる。透過像を作るためハーフミラーでは裏面から鏡面に向かってディスプレイの映像を透過させる。これらの光学素子を用いることで、上記実施例における光学系の制限は、ペッパーズ・ゴーストにおける光学系の制限よりも緩やかなものとなる。また映像表示システムはペッパーズ・ゴーストの装置よりもコンパクトにできる。
なお、本発明は上記実施例に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
10 ロケーション、11 キャラクター、12 観察者、13 建物、15 映像表示システム、16 透明スクリーン、17 プロジェクター、18 ステージ、19 ひさし、20 モーションセンサー、21 背景画像、25 フレーム、27 軸、30 コンピューター、40 ロケーション、41 鏡面、42 裏面、43 建物、44 表示面、45 映像表示システム、46 ハーフミラー、47 ディスプレイ、48 接着層、49 カバー、61 ゴースト、63 背景、64 疑似背景、66 板ガラス、91 キャラクター、93 背景、95 投影システム、96 スクリーン、97 スクリーン、AR1−4 領域、GH 位置、IL1 位置、IL2 位置

Claims (11)

  1. 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションのなす実存背景と、前記実存背景に対向するように設置されたハーフミラーと、マネキン大のキャラクターを含む映像を表示するディスプレイとを備える環境において、
    前記ハーフミラーの裏面から鏡面に向かって前記映像を透過させることで、前記ハーフミラーの鏡面側に位置する観察者に対して、前記実存背景の反射像を背にした前記キャラクターの透過像を提示する、映像表示方法であって、
    前記映像中において、前記マネキン大のキャラクターはその輪郭形状及び大きさと同一の輪郭形状及び大きさの領域からはみ出るように身振り手振りを交えた動作を演じ、さらに前記動作を演じる前記マネキン大のキャラクターの周囲の背景画像が暗黒となっており、
    前記ハーフミラーの鏡面における前記透過像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
    映像表示方法。
  2. コンピューターがモーションセンサーを通じて、前記ハーフミラーから近い順に設定された複数の領域のいずれに前記観察者がいるのかを検出し、
    コンピューターが前記観察者のいる領域に応じて、前記映像中の前記マネキン大のキャラクターの前記動作を変更する、
    請求項1に記載の映像表示方法。
  3. コンピューターが前記観察者の発する音声の情報を取得し、
    前記コンピューターが前記情報を元に前記マネキン大のキャラクターに前記動作を与える、
    請求項1に記載の映像表示方法。
  4. コンピューターがモーションセンサーを通じて、前記観察者の存在を感知し、
    前記ハーフミラーの前に前記観察者が存在する時に、前記コンピューターが前記映像を前記ディスプレイに表示させる、
    請求項1に記載の映像表示方法。
  5. 前記ディスプレイの表示面は前記ハーフミラーの裏面に対して接着層を介して直接的に結合されている、
    請求項1〜4のいずれかに記載の映像表示方法。
  6. 前記ハーフミラーの前記裏面に対して、前記ディスプレイを覆う黒色のカバーが取り付けられている、
    請求項1〜5のいずれかに記載の映像表示方法。
  7. 前記実存背景の前記平均照度は10ルクス以上である、
    請求項1〜6のいずれかに記載の映像表示方法。
  8. 前記映像には前記マネキン大のキャラクターの全身が含まれており、
    前記映像は前記ハーフミラーの下端から浮いている、
    請求項1〜7のいずれかに記載の映像表示方法。
  9. 前記キャラクターに前記観察者と対話をさせる、
    請求項1〜8のいずれかに記載の映像表示方法。
  10. 環境光を反射していることで暗闇となっていない任意のロケーションを実存背景として用いることができ、
    前記実存背景に対向するように設置されるハーフミラーと、マネキン大のキャラクターの映像を含む映像を表示するディスプレイと、を備え、
    前記ハーフミラーの裏面から鏡面に向かって前記映像を透過させることで、前記ハーフミラーの鏡面側に位置する観察者に対して、前記実存背景の反射像を背にした前記キャラクターの透過像を提示する、映像表示システムであって、
    前記映像中において、前記マネキン大のキャラクターはその輪郭形状及び大きさと同一の輪郭形状及び大きさの領域からはみ出るように身振り手振りを交えた動作を演じ、さらに前記動作を演じる前記マネキン大のキャラクターの周囲の背景画像を暗黒とし、
    前記ハーフミラーの鏡面における前記透過像の平均照度を、前記実存背景における前記環境光の平均照度の2倍以上とする、
    映像表示システム。
  11. 前記実存背景の前記平均照度を取得し、
    前記映像の前記平均照度が、前記実存背景の前記平均照度の2倍以上となるように、前記映像の光の強度を調整する、
    請求項10に記載の映像表示システム。
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