以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。なお、各図には、理解を容易にするために図示を省略または簡略化した部分がある。また、各図における各部の形状や寸法比は、必ずしも正確なものではない。
<1.第1の実施の形態>
<1−1.全体構成>
図1及び図2を参照して本発明の第1の実施の形態におけるインプラントである有角プレート1について以下説明する。有角プレート1は、骨折部分を固定するための器具であって、骨補助プレート部10と、ブレード部11とを備える。
骨補助プレート部10は、略プレート状に形成される。骨補助プレート部10の厚み方向の一方の平面が、骨補助プレート部10の内面10aを構成する。一方、骨補助プレート部10の厚み方向の他方の平面が、骨補助プレート部10の外面10bを構成する。骨補助プレート部10の内面10aは、後述するように、骨に当接させる面である。
骨補助プレート部10は、図1(a)に示すように、略直線上に延び、途中から骨補助プレート部10の外面10b側へ湾曲するように形成される。なお、骨補助プレート部10は、図1(a)では途中から骨補助プレート部10の外面10b側へ反るように緩やかに湾曲しているが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、骨補助プレート部10は、途中から骨補助プレート部10の外面10b側へL字状に屈曲するような態様であってもよい。
また、骨補助プレート部10は、骨補助プレート部10の厚み方向に、骨補助プレート部10を貫通する複数の孔13を有する。複数の孔13は、複数のスクリュー部材12を通すものである。また、複数の孔13は、骨補助プレート部10の長さ方向に沿って等間隔で一列に配置される。
また、複数の孔13は、それぞれスクリュー部材12の頭部12aと係合可能な形状を有する。骨補助プレート部10の外周面10b側から内周面10a側へ向かって孔13からスクリュー部材12を挿入して孔13と頭部12aとを係合させると、スクリュー部材12のそれ以上の内周面10a側への動きが制限される。
ブレード部11は、図1(a)に示すように、骨補助プレート部10と一体形成されている。なお、ブレード部11は、一体形成に限定されるものではなく、骨補助プレート部10とブレード部11とは別部材として連結されたものであってもよい。そして、ブレード部11は、骨補助プレート部10と所定の角度α(0°<α<180°)を成すように骨補助プレート部10の一端(ここでは湾曲または屈曲している側の端部)から延びる。なお、ここではブレード部11と骨補助プレート部10が向かい合う側を内側、その反対側を外側と定義している。
ブレード部11は、骨内に挿入又は貫通可能な帯状のプレート14を有している。具体的にブレード部11は、例えば、図1(b)に示すように、プレート14の幅方向両端において、プレート14の外面11b側へ立設するよう形成される立設部14aを設けた構造が一例として挙げられる。この場合、ブレード部11の幅方向に平行に切った断面は、略コの字形状になる。
なお、ブレード部11は、上記の構造に限定されるものではなく、例えば、図1(c)に示すように、プレート15の厚み方向外面11b側のプレート面15aに、プレート面15aに対して垂直方向へ立設された突起部15bを設けた構造であってもよい。突起部15bは、プレート15の長さ方向に沿ってプレート15の幅方向中央を連なるように延びる。
有角プレート1の剛性が強いと、有角プレート1で固定した骨折部に力が加わった場合、有角プレート1により骨を含む生体を損傷する危険性がある。一方で、有角プレート1が弾性変形可能であれば、有角プレート1で固定した骨折部に力が加わっても有角プレート1の弾性変形により、有角プレート1が骨を含む生体を損傷する状況を回避することができ得る。このため、有角プレート1は、弾性変形可能な弾性変形部を少なくとも一部に備えることが好ましい。
弾性変形部を構成する部分として、例えば、有角プレート1全体、又は、骨補助プレート部10、又は、ブレード部11、又は、骨補助プレート部10とブレード部11との結合部分、又は、以上のうちの一部、又は、以上の部分の組み合わせが挙げられる。弾性変形部は、弾性変形可能な材質により形成させればよい。
また、有角プレート1の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成されることが好ましい。このようにすると、有角プレート1の少なくとも一部(例えば、骨補助プレート部10)を容易に塑性変形させることができる。
<1−2.有角プレートの骨折部分への取り付け>
次に、図3を参照して、骨19が、端部近傍となる一方の骨部19aと、本体側となる他方の骨部19bに骨折した場合に、有角プレート1を骨折部分への取り付ける方法について以下説明する。有角プレート1を骨折部分に取り付ける場合、図3に示すように、骨補助プレート部10は、骨19が折れた面である骨折部18を跨いで、骨補助プレート部10の内面10aの一部が他方の骨部19bの外周面に当接されるように配置される。この際、骨補助プレート部10におけるブレード部11と連続する端部近傍は、外側に湾曲していることから、骨部19bの外周面と骨補助プレート部10の内面10aとが当接せずに離れている部分である非当接部16が形成される(この非当接部は湾曲部と定義することもできる)。この非当接部16の面積を小さくするため、骨補助プレート部10に弾性限を超える力を加えて、骨補助プレート部10を変形させて、骨補助プレート部10を骨部19bの外周面の形状に合うように形状付けしてもよい。
一方、ブレード部11は、骨折部18により2分される一方の骨部19a内に挿入される。この状態において、骨補助プレート部10の外面10b側から孔13を通じてスクリュー部材12を他方の骨部19b内部に螺入させて、スクリュー部材12を骨部19bに螺合させる。なお、一部のスクリュー部材12は一方の骨部19aに螺入させてもよい。骨補助プレート部10を弾性変形部として構成すれば、スクリュー部材12により骨補助プレート部10が骨部19bの外周面へ向かって押し付けられると、自身が弾性変形して骨部19bの外周面に沿うことができる。さらに、弾性限を超えるように変形させて、ブレード部11と骨補助プレート部10の角度αを、実際の接合時の角度よりも多少小さく設定しておくことにより、固定時において非接触部16等が弾性変形して付勢部材として機能し、ブレード部11によって骨部19aを他方の骨部19bに押し付けることができる。すなわち、有角プレート1は、骨折部18により2分される骨部19aと骨部19bとが接合される状態で骨19の骨折部分を固定する。以上のようにして、骨19の骨折部分は、有角プレート1によって接合される。
<1−3.有角プレートの材質>
次に、有角プレート1の具体的な材質について説明する。有角プレート1は、少なくともチタン(Ti)およびタンタル(Ta)を含有するチタンタンタル(Ti−Ta)系合金から構成される。
有角プレート1を構成する合金は、少なくともチタンおよびタンタルを含有するものであれば特に限定されるものではなく、チタンおよびタンタル以外の元素を含有するものであってもよい。例えば、有角プレート1を構成する合金は、チタンおよびタンタルに加え、スズ(Sn)を含有するものであってもよく、この場合、より良好な機械的性質を得ることが可能となる。
具体的に、本発明の実施の形態におけるスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金は、全体を100原子%(at%)とした場合に、15原子%以上27原子%以下のタンタルおよび0原子%以上8原子%以下のスズを含有し、残部がチタンおよび不可避不純物からなるものであることが好ましい。このような合金は、より良好な機械的性質、すなわち高い引張強度、低いヤング率および適度な弾性限が得られるだけでなく、高い生体親和性を得ることが可能となっている。
なお、スズ(Sn)の含有率の下限値は、上記のように0原子%であってもよい。Snを添加しなくとも、Taの含有率が15at%以上であれば、有角プレート1に要求される機械的性質(ヤング率、引張強度、および弾性変形ひずみ)を有するチタン合金を得ることが可能であるからである。
但し、機械的性質をより向上させるためには、チタンタンタル系合金にスズ(Sn)を添加することが好ましい。例えば、チタンタンタル系合金の超弾性効果の観点から見ると、スズ(Sn)は、ヤング率を上昇させる要因となるω相の析出を抑制し、チタンタンタル系合金の超弾性効果を高める機能を有する。この超弾性は、意図しない変形に柔軟に対応できることになる。具体的には、本素材を有角プレート1に適用することで、日常生活中の何らかの衝撃により治療中の骨部19a、19bが強制的に離れてしまう場合であっても、その離反を柔軟に許容しつつ、その後は、元の固定状態に自然復帰させることが可能になる。このため、スズ(Sn)をチタンタンタル系合金に添加することは好ましい。なお、上記ω相抑制機能を十分に発揮させるためには、チタン合金全体を100at%としたときのSnの含有率は、1at%以上であることが好ましい。
また、スズ(Sn)を含有する上記チタンタンタル系合金は、構成元素であるTi、Ta、Snの金属イオンの溶出量が極めて少ない上に、優れた耐食性を示し、細胞毒性が低く、生体親和性が高く、外部の磁界により磁化がされにくい非磁性体であって磁気を嫌う医療機器(MRI等)に悪影響を及ぼすおそれが極めて低く、高弾性で適度な剛性を有し、加工性の高い合金である。すなわち、スズ(Sn)を含有する上記チタンタンタル系合金は、従来のチタン合金に比べて細胞毒性が低く、磁気特性、耐食性、機械的性質および加工性に優れたチタンタンタル系合金となっている。
<1−3−1.有角プレートの材質のヤング率>
また、図5を参照してスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の加工率を変化させた際のヤング率の変化について説明する。図5ではTi−23Ta−3Sn合金の加工率が0%の場合、25%の場合、50%の場合、75%の場合のヤング率が示されている。図5に示すように、Ti−23Ta−3Sn合金の加工率を0%から25%に上げた場合、及びTi−23Ta−3Sn合金の加工率を25%から50%に上げた場合のいずれもヤング率が下がる。すなわち、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の加工率を上げると、それに伴ってチタンタンタル系合金のヤング率は下がると考えられる。一方で表面硬さはほとんど変わらないことから、スクリュー部材12による締結強度に悪影響を生じさせないで済む。
有角プレート1を骨折部分に取り付ける場合、上記説明したように、有角プレート1は、適度な柔軟性を備えて、弾性変形するように形成されることが好ましい。このため、有角プレート1は、加工率を上げてヤング率を下げたスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金により形成させることが好ましい。特に、有角プレート1は、加工率を20%以上にしたスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金により形成させることが好ましく、より好ましくは加工率を40%以上にしたスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金により形成させることが好ましい。
なお、有角プレート1を形成するチタンタンタル系合金のうち一部のみの加工率を変化させてもよい。有角プレート1の一部として、例えば、骨補助プレート部10、または、ブレード部11、または、骨補助プレート部10とブレード部11との結合部分、または、以上の部分の組み合わせ、または、以上のうちの一部が挙げられる。これにより、ヤング率が低く、柔軟性があって弾性変形が容易な部分と、剛性が高い部分とを、有角プレート1に形成させることができる。
<1−3−2.有角プレートの材質の造影性>
また、従来、例えば、骨折時に体内で使用されるインプラントは、必要な機械的性質(引張強度、ヤング率および弾性限等)を得るために、SUS316L等のステンレス鋼や超弾性合金であるニッケルチタン(Ni−Ti)系合金等から構成されていたが、これらの材質は、X線吸収率が低いため、X線撮影画像中に映し出されにくかった。これに対し、チタンタンタル系合金は、超弾性合金であるニッケルチタン系合金と同等の引張強度およびヤング率を有しながらも、原子量の大きいタンタルを含有することからX線吸収率が高い(X線不透過性)という特性を有している。したがって、チタンタンタル系合金により構成される有角プレート1は、X線撮影時の造影性に優れている。
<1−3−3.有角プレートの材質の塑性変形>
チタンタンタル系合金は、ニッケルチタン系合金よりも適度に低い弾性限を有している。したがって、有角プレート1をチタンタンタル系合金から構成することで、ニッケルチタン系合金と同等の強度および柔軟性を得ながらも、曲折により適宜に塑性変形させることが可能となるため、骨補助プレート部10が骨19の外周面に沿うように骨補助プレート部10を容易に湾曲・変形させることが可能となる。
<1−3−4.有角プレートの材質の時効処理>
次に、図6を参照してスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対して時効処理を行った際の上記チタンタンタル系合金の硬度について説明する。本願発明者は、Ti−23Ta−3Sn合金で形成される試料に対して450℃及び500℃で時効処理を行った。時効処理は、真空炉に上記試料を投入し、1時間、3時間、7時間、28時間の4パターン行った。上記試料は4種類用意され、4種類の試料それぞれの断面の径は13(mm)で、加工率はそれぞれ0%、25%、50%、75%である。そして、マイクロビッカース硬さ試験機で、上記時効処理を行った上記4種類の試料の硬さを測定した。なお、マイクロビッカース硬さ試験は、各試料の軸方向に略垂直な断面において外周縁から中心に向かって等間隔(0.5mm間隔)に並ぶ13箇所を測定点として行い、13箇所の平均値を試験結果とした。
まず、450℃で上記4種類の試料に対して時効処理を行った場合について図6(a)を参照して説明する。加工率が0%の試料では、保持時間が長くなる程に、硬度が上がる。特に、加工率が0%の試料において、保持時間が7時間辺りまでの硬さが上がる勾配と7時間以降の硬さが上がる勾配とを比べると、保持時間が7時間以降の硬さが上がる勾配の方がかなり緩やかである。加工率が25%、50%の試料は、保持時間が7時間辺りまでは硬さが上がるが、保持時間が7時間辺りを過ぎると、硬さがゆるやかな勾配で下がる。特に、加工率が25%、50%の試料おいて、保持時間が7時間辺りまでの硬さが上がる勾配と7時間以降の硬さが下がる勾配とを比べると、保持時間が7時間以降の硬さが下がる勾配の方がかなり緩やかである。また、保持時間が7時間以降の硬さが下がる勾配は、加工率が25%の試料の方が、加工率が50%の試料よりも急である。加工率が75%の試料は、概ね保持時間が長くなる程に、硬度が上がる。特に、加工率が75%の試料において、保持時間が1時間辺りまでの硬さが上がる勾配と3時間以降の硬さが上がる勾配とを比べると、保持時間が3時間以降の硬さが上がる勾配の方がかなり緩やかである。また、加工率が75%の試料において、保持時間が1時間から3時間の間、硬さが下がる勾配はかなり緩やかになる。
次に、500℃で上記試料に対して時効処理を行った場合について図6(b)を参照して説明する。加工率が0%の試料は、保持時間が長くなる程に、硬度が上がる。特に、加工率が0%の試料において、保持時間が7時間辺りまでの硬さが上がる勾配と7時間以降の硬さが上がる勾配とを比べると、保持時間が7時間以降の硬さが上がる勾配の方がかなり緩やかである。加工率が25%の試料は、保持時間が3時間までは硬さが上がり、保持時間が3時間〜7時間では、硬さが上がる勾配がかなり緩やかに下がっており、保持時間が7時間辺りを過ぎると、硬度がさらにゆるやかな勾配で下がる。加工率が50%、75%の試料は、保持時間が7時間辺りまでは硬さが上がるが、保持時間が7時間辺りを過ぎると、硬さがゆるやかな勾配で下がる。硬さが下がる勾配は、加工率が50%の試料の方が、加工率が75%の試料よりも急である。
また、加工率が0%、25%、50%、75%の試料全体をまとめて見ると、保持時間帯が0〜1時間辺りまでは、硬度が上がる勾配は1時間以降の他の保持時間帯のものよりも大きい。つまり、保持時間帯が1時間辺りを超えると、硬度が上がる勾配は小さくなる。なお、1時間以降の保持時間帯とは、保持時間帯が1〜3時間、3〜7時間、7〜28時間、1〜7時間、1〜28時間、3〜28時間、その他の1時間以降の任意の時間帯を指す。したがって、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理における保持時間は、少なくとも1時間程度行えば、ある程度の硬さが得られる。このため、時効処理におけるスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の保持時間は1時間以内であってもよい。
また、加工率が0%、25%、50%、75%の試料全体をまとめて見ると、保持時間帯が7〜28時間では、硬さが変化する勾配が、保持時間帯が0〜7時間の場合に比べて緩やかである。つまり、保持時間帯が7〜28時間では、試料はある程度の硬さに達している状態にあると共に、試料の硬さは急激に変化しない。したがって、保持時間帯が7〜28時間では、多少の時間が経過してもそれ程硬度が変化しない状態にあると見做せる。
また、全体的に見て加工率が0%の試料よりも加工率が25%、50%、75%の試料の方が、硬さの値が大きい。したがって、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金を硬くするには、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に変形加工処理を施すことが好ましい。変形加工処理として、例えば、熱間加工や冷間加工等が一例として挙げられる。
次に、変形加工処理を行って上記試料の加工率をそれぞれ0%,25%,50%,75%にした後に、その試料に対して850℃で3時間保持して溶体化処理を行い、次に、500℃で時効処理を行った場合について図6(c)を参照して説明する。加工率が0%の試料は、保持時間が長くなる程に、硬度が上がる。加工率が25%、50%、75%の試料は、保持時間が7時間辺りまでは硬さが上がるが、保持時間が7時間辺りを過ぎると、硬さがかなり緩やかに下がる。硬さが下がる勾配は、加工率が25%、50%、75%の試料のいずれも概ね似たようなものであった。溶体化処理および時効処理を行った場合において、保持時間帯が7〜28時間では、試料はある程度の硬さに達している状態にあると共に、試料の硬さはほぼ一定の状態にあると見做せる。
図6(a)〜(c)における以上の結果を見ると、450℃及び500℃で上記試料に対して時効処理を行った場合、上記試料の加工率をどのようにしても保持時間が少なくとも7時間辺りまでは、上記試料の硬さは上がっている。保持時間が7時間辺りを超えると、試料の条件によって硬さの値が上がるものもあれば、下がるものもある。硬さの値が下がる場合であっても保持時間が7時間を超えると、硬さの値が下がる勾配はゆるやかである。これらは、時効処理に適したその他の温度(時効処理温度)でも同様の特性を奏すると推定される。時効処理温度として、例えば、略300℃〜600℃程度が一例として挙げられる。なお、時効処理温度の下限として、略350℃がより好ましい。また、時効処理温度の上限として、略550℃がより好ましい。
したがって、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理では、試料の条件によらず保持時間帯が0〜1時間程度までは急激に硬度が上がり、保持時間帯が1〜7時間程度までは保持時間帯が0〜1時間程度までより硬度が上がる勾配がゆるやかになり、7時間以上の保持時間帯では、さらにゆるやかな勾配で硬度が下がっていく。このため、保持時間が10時間以下程度であれば、試料の条件によらず試料を最大値付近の硬さにすることができると言える。したがって、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理は、時効処理温度での保持時間が10時間以下であることが好ましく、7時間以下であればより好ましい。また、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理は、製造工程の時間短縮の観点から保持時間が1時間以上7時間以内であってもよい。また、保持時間が1時間以内では急激に硬度が上がるため、比較的低い硬度の範囲で硬度のコントロールが必要な場合、保持時間が1時間以内であることが好ましい。
一方、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理において、保持時間帯が7〜28時間では、保持時間帯が0〜7時間の場合に比べて当該合金の硬さの変化の範囲が小さく、当該合金の硬さについて大きく変化しない状態にあると言える。このため、保持時間帯が7〜28時間では、時効処理において分単位、秒単位の厳密な管理をしなくても大きな問題にならない。これにより、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理において、保持時間帯を7〜28時間にすれば、製造品質を簡単に安定させることができ、更には、品質管理コストを低減することができる。
以上のことは、図6(a)〜(c)を見れば、保持時間を30時間に延長しても変わらないと推定できる。したがって、30時間以上も処理を継続することは、製造コストの関係であまり合理的ではない。結果、(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理は、製造コストと、合金の硬さの安定性を両立させる観点からすると、時効処理温度での保持時間が7時間以上30時間以下であることが好ましく、7時間以上28時間以下であればより好ましい。
<1−3−5.有角プレートの材質に対する部分的熱処理>
溶体化処理、時効処理等の熱処理に対して以上のような特性を有するスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金で形成される有角プレート1は、有角プレート1の成形前の材料全体または一部、または成形後の有角プレート1全体または一部に、上記熱処理を行って有角プレート1全体または一部の硬度を上げてもよい。なお、有角プレート1の硬度を上げた部分を硬化部と称する。有角プレート1における硬化部は、有角プレート1のいずれの部分に設けられてもよい。また、有角プレート1における硬化部は、1つでも複数あってもよい。
また、図7(a)のTi−23Ta−3Sn合金における熱処理条件とヤング率との関係を表すグラフに示すように、500℃の状況下で保持時間が3時間の時効処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金のヤング率と、500℃の状況下で保持時間が7時間の時効処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金のヤング率とを比較すると、前者のヤング率の方が小さい。また、850℃で3時間保持して溶体化処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金をさらに、500℃の状況下で保持時間が28時間の時効処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金は、上記2つの条件のものよりもヤング率が小さい。
したがって、Ti−23Ta−3Sn合金に対して行う熱処理の条件を変化させることにより、Ti−23Ta−3Sn合金のヤング率を制御することができる。このことは、Ti−23Ta−3Sn合金のみならず、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金全体も同様であると推定される。このため、熱処理により有角プレート1の各部のヤング率を細かく制御することができる。
なお、有角プレート1の成形前の材料の一部、または成形後の有角プレート1の一部に熱処理を行う場合、例えば、該当部分にレーザー光を照射して加熱することが、一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、高周波誘導加熱、炎による加熱、電子ビームの照射による加熱をはじめとする様々なものであってもよい。
また、図7(b)のTi−23Ta−3Sn合金における熱処理条件と引張強度との関係を表すグラフに示すように、500℃の状況下で保持時間が3時間の時効処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金の引張強度と、500℃の状況下で保持時間が7時間の時効処理を行ったTi−23Ta−3Sn合金の引張強度を比較すると、加工率75%の場合を除いて、ほぼ同じ値であり、かつ、両者共に高い引張強度を有すると言える。
したがって、Ti−23Ta−3Sn合金に対して、時効処理を行っても、少なくとも7時間以下であるなら引張強度は変わらず、高い引張強度を維持すると推定される。このことは、Ti−23Ta−3Sn合金のみならず、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金全体も同様であると推定される。
以上の図6及び図7を考慮すると、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対して、硬度を上げつつも柔軟性を求める場合、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対する時効処理は略7時間以下であることが好ましい。そして、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に対して7時間以下の時効処理ならば、高い引張強度が維持される。
<1−3−6.有角プレートの材質に対する表面改質>
上記説明したようなチタンタンタル系合金で有角プレート1を形成した場合、有角プレート1の表面に所定の処理を施すことが好ましい。所定の処理として、有角プレート1の表面形状、または、表面性状を制御する処理が想定される。
有角プレート1の表面形状は、細胞の接着、進展、配列、集簇、細胞の分化・発現形態に大きな影響を与える。また、一般的になめらかな鏡面より粗面の方が細胞の付着力が大きい。このため、有角プレート1に対してその表面形状を制御する処理を施すことは好ましい。有角プレート1の表面形状を制御する処理として、例えば、機械加工(Lath-machined surface)、チタンプラズマ溶射(Titaniumplasma-sprayed surface)、ブラスティング(Blasted surface)、エッチング(Etched surface)、SLA(Sand-blasted Large-grit Acid-etched surface)、球状被覆(Sintered porous-structured surface)、ワイヤー放電加工、陽極酸化、レーザー光照射及び酸エッチングによる有角プレート1表面粗面化処理等が一例として挙げられる。
また、表面性状は、生体反応に重要な材料とタンパク、細菌、細胞との吸着や接着のみならず、細胞の増殖や分化にも影響を与える。このため、有角プレート1に対してその表面性状を制御する処理を施すことは好ましい。有角プレート1の表面性状を制御する処理として、例えば、有角プレート1表面に水和チタニアゲルの被覆層を形成させる処理、リン酸化したアミノ酸及び/またはリン酸化したペプチドで有角プレート1表面をコーティングする表面処理、有角プレート1表面の被覆層に表面にOH基を与える処理、有角プレート1表面にリン化チタン層及びリン酸カルシウム層を与える処理、有角プレート1表面をプラズマコーティングする処理、有角プレート1表面をリン酸カルシウムコーティングする処理、有角プレート1表面に対して水熱アルカリ処理を行う処理等が一例として挙げられる。
<1−3−7.有角プレートの材質の酸化皮膜>
また、チタンタンタル系合金の表面に酸化皮膜が設けられると、その酸化皮膜は保護膜として機能し、チタンタンタル系合金の耐食性を向上させる。したがって、酸化皮膜が設けられるチタンタンタル系合金で有角プレート1を構成させると、有角プレート1の耐食性が向上するため、有角プレート1を体内に長期間留置させても安全である。なお、本発明においてチタンタンタル系合金の表面に設けられる酸化皮膜の厚さを製造段階で制御するように構成してもよい。
<1−3−8.有角プレートの材質に対するヤング率傾斜変化処理>
また、有角プレート1は、上記説明したように弾性変形部を備えることが好ましい。有角プレート1の弾性変形部に相当する部分に、ヤング率を変化させる処理を行えば、弾性変形部における弾性変形の度合いを調整することができる。ヤング率の変化態様は、様々なものが想定される。
例えば、骨補助プレート部10の長さ方向に沿って骨補助プレート部10の下方から上方に向かうにしたがって連続して徐々にヤング率が下がる(または上がる)ヤング率傾斜変化態様や、骨補助プレート部10の長さ方向に沿って不連続にヤング率が変化するヤング率不連続変化態様などのものが、ヤング率の変化態様の一例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他の態様であってもよい。
上記説明したようにチタンタンタル系合金は加工率を変化させると、ヤング率も変化する。チタンタンタル系合金のその特性を利用して、チタンタンタル系合金材料の少なくとも一部に対して変形加工を行ってチタンタンタル系合金材料の少なくとも一部の加工率を変化させることにより実現可能である。
ヤング率傾斜変化態様は、骨補助プレート部10の長さ方向に沿って骨補助プレート部10の下方から上方に向かうにしたがって連続して徐々に加工率を高くするよう変形加工を行えば実現可能である。また、ヤング率不連続変化態様は、骨補助プレート部10の長さ方向に沿って不連続に加工率を高くするよう変形加工を行えば実現可能である。すなわち、弾性変形部は、有角プレート1における加工率を連続または不連続に変化させるよう処理することにより実現することができる。
例えば、図3の右側部分に示す非当接部16の加工率のグラフに示すように、非当接部16のヤング率傾斜変化態様は、非当接部16の頂部16aから中央部16bに向かうに従って連続して曲線状に上がっていき、中央部16bから底部16cに向かうに従って連続して曲線状に下がっていく。
このような非当接部16の製造方法を、図4を参照して以下説明する。まず、図4(a)に示すように、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の板材700の表面に対して、板材700の厚み方向へ向かう力を加える。そして、図4(b)に示すように、板材700の表面を凹ませる。板材700は、図4(b)に示すように、湾曲するように凹んでいるため、板材700の加工率が連続して曲線状に変化する。すなわち、板材700の中心部分は加工率が高く、板材700の両端へ向かうに従って加工率が連続して下がっている。
以上のように変形させた板材700の表面から厚み方向へ所定の深さ(図4(b)の点線701まで)切削すると、図4(c)に示すように、加工率が連続して変化する部分を有する板材710が得られる。板材710の加工率が連続して変化する部分が図3に示す非当接部16になるように有角プレート1を製造すればよい。
また、図4(d)に示すように、上記のように、板材700の表面から厚み方向へ所定の深さ切削せずに、図4(b)に示す湾曲状に凹ませた部分をそのまま非当接部16にした有角プレート1aを製造してもよい。
図5に示すように、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金は、加工率が高くなるに従って、ヤング率が下がる特性を有する。したがって、非当接部16を上記のように製造すれば、非当接部16のヤング率を他の部分よりも下げることができる。また、図7(a)に示すように、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金は、熱処理の保持時間を長くするに従って、ヤング率が高くなる特性を有する。したがって、非当接部16は、熱処理の保持時間を短くするようにすることが好ましい。
一方で、非当接部16以外の部分、例えば、骨補助プレート部10の骨部19aに当接する部分である当接部17やブレード部11は、硬度及び強度が非当接部16よりも高い方が好ましい。したがって、当接部17やブレード部11は、加工率を高くしないように製造する方が好ましい。また、当接部17やブレード部11は、熱処理の保持時間を長くすることが好ましい。
<1−3−9.有角プレートを構成するその他の材質>
また、有角プレート1は、チタンタンタル系合金、及び、ポリマーで形成されるものであってもよい。ポリマーを含む有角プレート1として、例えば、図2(b)に示すように、有角プレート1の孔13の周囲部分13aをポリマーで形成させ、その他の大部分をチタンタンタル系合金等で形成させたものが一例として挙げられる。また、その他の実施形態として、上記実施形態とは逆に、有角プレート1の孔13の周囲部分13aをチタンタンタル系合金で形成させ、その他の部分をポリマー等で形成させたものであってもよい。なお、上記ポリマーとして、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone:PEEK)が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他のポリマーであってもよい。
また、有角プレート1は、チタンタンタル系合金、及び、生体適応性のある生分解性材料で形成されるものであってもよい。例えば、図2(b)に示すように、チタンタンタル系合金、及び、生分解性材料で形成される有角プレート1bは、骨補助プレート部10の湾曲する部分10e付近が、骨補助プレート部10の厚み方向にチタンタンタル系合金と生分解性材料との2層で形成される。この場合、2層の一方のヤング率が低い層10c(例えば、骨補助プレート部10の外周面10b側)をチタンタンタル系合金で形成させ、他方の層10d(例えば、骨補助プレート部10の内周面10a側)を生分解性材料で形成させる。生分解性材料として、生分解性プラスチック、生分解性金属等が挙げられる。生分解性プラスチックは、生体内で酸やアルカリにより加水分解されて体外へ排出されるものであり、例えば、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ乳酸で構成されるものが一例として挙げられる。また、生分解性金属として、例えば、マグネシウム(Mg)、マグネウム合金等が一例として挙げられる。
骨折の初期段階では、骨折箇所の修復状態は十分ではないため、骨折箇所に取り付けられる有角プレート1の剛性は高い方が好ましい。骨折箇所の修復状態が十分でない場合、骨折箇所を強固に固定することを優先する方が好ましいためである。
一方、有角プレート1が骨折箇所に取り付けられた後は、骨折箇所の修復が進むにしたがって有角プレート1は徐々に弾性変形がより容易な状態になることが好ましい。骨折箇所の修復に寄与する骨芽細胞を活性化するには、加えられる力により骨折箇所に過度なストレスがかからないよう、ある程度、骨折箇所を動かすことを優先する方が好ましいからである。
上記のように、骨補助プレート部10の湾曲する部分10e付近を、例えば、生分解性プラスチック等を用いて骨補助プレート部10の厚み方向に2層構造で形成させれば、有角プレート1を骨折部分に取り付ける初期段階では、生分解性プラスチック等は加水分解の度合いが進んでいないため、骨補助プレート部10の湾曲する部分10e付近における生分解性プラスチック等は剛性が高い状態にある。その結果、骨補助プレート部10の湾曲する部分10e付近は、生分解性プラスチック等に補強され、剛性が高い状態になる。一方、有角プレート1を骨折部分に取り付けた後、生分解性プラスチック等は加水分解の度合いが徐々に進んで、時間の経過と伴に徐々に生分解性プラスチック等が体内からなくなっていく。このため、生分解性プラスチック等による補強の度合いが徐々に弱くなっていき、それに応じて骨補助プレート部10の湾曲する部分10e付近は、徐々に弾性変形がより容易になっていく。生分解性金属についても生分解性プラスチック等に準じて上記説明を適宜適用することができる。
<2.第2の実施の形態>
<2−1.全体構成>
図8及び図9を参照して本発明の第2の実施の形態におけるインプラントである骨端プレート2について以下説明する。骨端プレート2は、主として骨端に用いられるものであり、有角プレート1に備えられたブレードを有しない。骨端プレート2は、骨補助プレート部20と、端部プレート部21とを備える。
骨補助プレート部20は、図8に示すように、帯のようなプレート状に形成され、骨補助プレート部20の幅方向の長さは全体にわたって略一様である。骨補助プレート部20の厚み方向の一方の平面(紙面裏側面)が、骨補助プレート部20の内面20aを構成する。一方、骨補助プレート部20の厚み方向の他の平面(紙面表側面)が、骨補助プレート部20の外面20bを構成する。骨補助プレート部20の内面20aは、後述するように、骨に当接させる面である。
端部プレート部21は、図8に示すように、プレート状に形成され、骨補助プレート部20の長さ方向一端(上端)から、さらに骨補助プレート部20の長さ方向へ延長されるように、骨補助プレート部20と一体形成されている。端部プレート部21は、骨補助プレート部20よりも幅方向外側へ広がった構造になっている。すなわち、端部プレート部21の幅方向の長さは、骨補助プレート部20の幅方向の長さよりも長い。
また、骨端プレート2は、複数の孔23,24を有する。複数の孔23は、スクリュー部材22を通す孔である。また、複数の孔23は、骨補助プレート部20の長さ方向へ等間隔で一列に配置される。また、端部プレート部21に設けられる少なくとも2つの孔24は、骨補助プレート部20の幅方向へ一列に配置された態様をしている。スクリュー部材22及び孔23,24は、図1で説明済みのスクリュー部材12及び孔13とほぼ同様のものであり、その説明を省略する。
なお、図8に示すように、骨補助プレート部20の幅方向の長さは、長手方向全体にわたって略一様であったが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、骨補助プレート部20は、骨補助プレート部20と端部プレート部21との境界(骨補助プレート部20の一端(上端))から離れる方向の他端(下端)に進むにしたがって、骨補助プレート部20の幅方向の長さが短くなっていくテーパ状に形成されてもよい。
また、骨補助プレート部20及び端部プレート部21に設けられる孔は、例えば、図9に示すように、様々な大きさの径を有するものが混在していてもよい。そして、スクリュー部材は、図9に示すように、孔の径の大きさに対応するものが用いられる。
また、骨端プレート2は、有角プレート1における説明と同様の理由から、弾性変形可能な弾性変形部を少なくとも一部に備えることが好ましい。弾性変形部を構成する部分として、例えば、骨端プレート2全体、または、骨補助プレート部20、または、端部プレート部21、または、骨補助プレート部20と端部プレート部21との結合部分、または、以上のうちの一部、または、以上の部分の組み合わせが挙げられる。弾性変形部は、弾性変形可能な材質により形成させればよい。
また、骨端プレート2の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成されることが好ましい。骨端プレート2の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成される場合、骨端プレート2の少なくとも一部を容易に塑性変形させることができる。
<2−2.骨端プレートの骨折部分への取り付け>
次に、図10を参照して、骨29が、端部近傍となる一方の骨部29aと、本体側となる他方の骨部29bに骨折した場合に、骨端プレート2を骨折部分への取り付ける方法について以下説明する。骨端プレート2を骨折部分に取り付ける場合、図10に示すように、骨補助プレート部20は、骨29が折れた面である骨折部28を跨いで、骨部29bの外周面に骨補助プレート部20の内面20aが当接されるように配置される。この際、骨部29bの外周面と骨補助プレート部20の内面20aとが当接されるように、骨補助プレート部20に弾性限を超える力を加えて、骨補助プレート部20を変形させて、骨部29bの外周面の形状に合うように形状付けしてもよい。
また、端部プレート部21は、骨折部28により2分される一方の骨部29aの外周面に当接させる。端部プレート部21も骨補助プレート部20と同様に、骨部29aの外周面の形状に合うように形状付けしてもよい。
この状態において、骨補助プレート部20の外面20b側から孔23を通じてスクリュー部材22を骨部29b内部に螺入させて、スクリュー部材22を骨部29bに螺合させる。なお、スクリュー部材22aのように、骨部29b及び骨部29aを跨ぐように螺合されてもよい。同様に、端部プレート部21の外面21b側から孔24を通じてスクリュー部材22を骨部29a内部に螺入させて、スクリュー部材22を骨部29aに螺合させる。スクリュー部材22を骨部29a,29bに螺合させると、骨補助プレート部20及び端部プレート部21は、弾性変形して、骨29の外周面に密着する。すなわち、骨端プレート2は、骨折部28を跨いで、骨29の外周面に当接される状態で、骨29の骨折部分を固定する。以上のようにして、骨29の骨折部分は、骨端プレート2により接合される。
<2−3.骨端プレートの材質>
骨端プレート2の材質は、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものであり、<1−3.有角プレートの材質>での説明は骨端プレート2にも適用可能である。
<3.第3の実施の形態>
<3−1.全体構成>
図11及び図12を参照して本発明の第3の実施の形態におけるインプラントである髄内釘3について以下説明する。髄内釘3は、所謂、エンダー釘と称されるものである。髄内釘3は、図11に示すように、線状部30と、頭部31とを備える。
線状部30は、線状または棒状に形成される。線状部30は、例えば、断面を円形、楕円形等の曲線形、または、四角形、五角形等の多角形のいずれかの形状にしたものが一例として挙げられるが、いずれかに限定されるものではなく、どのような断面形状であってもよい。また、線状部30は、図11に示すように、例えば、弓状に湾曲した形状となっているが、所定の器具を用いて別の態様に湾曲させたり、屈曲させたりすることができるように構成してもよい。
また、頭部31は、線状部30の一端でプレート状に形成された部分である。そして、頭部31は、線状部30の幅方向両端よりも線状部30の幅方向外側へ広がった構造になっている。すなわち、頭部31の幅方向の長さは、線状部30の幅方向の長さよりも長い。
また、髄内釘3は、有角プレート1における説明と同様の理由から、弾性変形可能な弾性変形部を少なくとも一部に備えることが好ましい。弾性変形部を構成する部分として、例えば、髄内釘3全体、または、線状部30、または、頭部31、または、線状部30と頭部31との結合部分、または、以上のうちの一部、または、以上の部分の組み合わせが挙げられる。弾性変形部は、弾性変形可能な材質により形成させればよい。
また、髄内釘3の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成されることが好ましい。髄内釘3の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成される場合、髄内釘3の少なくとも一部を容易に塑性変形させることができる。これにより、患者の骨の形状や太さに合わせて髄内釘3を変形させることが可能となる。
<3−2.髄内釘の骨折部分への取り付け>
次に、図12を参照して、骨39が、端部近傍となる一方の骨部39aと、本体側となる他方の骨部39bに骨折した場合に、髄内釘3を骨折部分への取り付ける方法について以下説明する。髄内釘3を骨折部分に取り付ける場合、例えば、骨39が折れた面である骨折部38を跨いで、骨折して2分される骨部39bと骨部39aの内部に線状部30を通す。そして、頭部31が他方の骨部39bの下方(一方の骨部39aを基準として遠位側)に配置されるようにする。
骨39に3本の髄内釘3を挿入する場合、例えば2本の髄内釘3は、平行に通し、残りの1本の髄内釘3は上記2本と途中でクロスするように骨39内に挿入する。具体的には、2本の髄内釘3は、骨部39aを基準とする骨部39bの長手方向の遠位端の一方の側面39cに形成した穴39d,39eから長手方向に挿入され、長手方向の途中で骨部39bの一方の内側面39fに当接しつつ、折り返すようにして先端が骨部39aに突き刺さる。残りの1本の髄内釘3は、骨部39aを基準とする骨部39bの長手方向の遠位端の他方の側面39gに形成した穴39hから長手方向に挿入され、長手方向の途中で骨部39bの一方の内側面39iに当接しつつ、折り返すようにして先端が骨部39aに突き刺さる。したがって、骨部39aは、進行方向の異なる複数本の髄内釘3によって保持される結果、姿勢が安定する。このようにして、3本の髄内釘3は、骨折部38を跨いで、骨部39bの内部を貫通し、骨部39aを骨部39bに固定する。
<3−3.髄内釘の材質>
髄内釘3の材質は、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものであり、<1−3.有角プレートの材質>での説明は髄内釘3にも適用可能である。
<4.第4の実施の形態>
<4−1.全体構成>
図13及び図14を参照して本発明の第4の実施の形態におけるインプラントであるネイル4及びラグスクリュー5について以下説明する。ネイル4は、例えば、大腿骨の近位端側から髄腔内に挿入されるものであり、略柱状の部材により構成される。なお、ネイル4は、図13に示すように、例えば、髄腔内に挿入しやすいように、テーパ状に形成される略柱状の部材が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の形状に形成されるものであってもよい。
そして、ネイル4には、例えば、ネイル4の径方向(厚み方向)にネイル4を貫通する複数の孔42が設けられる。孔42には、スクリュー部材41が通される。また、孔42は、ネイル4の長さ方向に沿って等間隔で一列に配置される。また、ネイル4の長さ方向上方には、ネイル4の径方向(厚み方向)に対して所定の角度β(0°<β<90°)を有するよう斜めにネイル4を貫く貫通孔43が設けられる。
ラグスクリュー5は、略円柱状の部材により構成される。ラグスクリュー5を構成する略円柱状の部材の先端には、スクリュー溝51が形成される。ラグスクリュー5は、図13に示すように、ネイル4の貫通孔43に通される。ラグスクリュー5は、貫通孔43を通されると、ネイル4の径方向に対して所定の角度β(0°<β<90°)を有するよう斜めにネイル4を貫く。
また、ネイル4及びラグスクリュー5は、弾性変形可能な弾性変形部を少なくとも一部に備えることが好ましい。弾性変形部を構成する部分として、例えば、ネイル4、または、ラグスクリュー5、または、以上のうちの一部、または、以上の部分の組み合わせが挙げられる。弾性変形部は、弾性変形可能な材質により形成させればよい。
また、ネイル4及びラグスクリュー5の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成されることが好ましい。ネイル4及びラグスクリュー5の少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成される場合、ネイル4及びラグスクリュー5の少なくとも一部(例えば、ネイル4)を容易に塑性変形させることができる。
<4−2.ネイル及びラグスクリューの骨折部分への取り付け>
次に、図14を参照してネイル4及びラグスクリュー5の骨折部分への取り付け方法について以下説明する。例えば、図14に示すように、大腿骨49の大腿骨本体部49aと骨頭49bとの間を骨折した際に、ネイル4及びラグスクリュー5を用いる場合を例として説明する。まず、ネイル4を大腿骨49の近位端側から髄腔48内に挿入する。
そして、骨折部47を横断して貫通孔43を貫通するように、大腿骨本体部49aから骨頭49bへ向かってラグスクリュー5を螺入させて、ラグスクリュー5を大腿骨49に螺合させる。これにより、ラグスクリュー5は骨頭49bを大腿骨本体部49a側へ引き寄せて、大腿骨本体部49aと骨頭49bとを接合する。
この状態において、大腿骨本体部49aの外周面49c側からネイル4の孔42に向かってスクリュー部材41を螺入させて、スクリュー部材41を大腿骨49に螺合させる。これにより、ネイル4は、自身の上方においてラグスクリュー5により大腿骨49内で姿勢を固定され、自身の下方においてスクリュー部材41により大腿骨49内で姿勢を固定される。以上のようにして、大腿骨49の骨折部分は、ネイル4及びラグスクリュー5によって接合される。
<4−3.ネイル及びラグスクリューの材質>
ネイル4及びラグスクリュー5の材質は、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものであり、<1−3.有角プレートの材質>での説明はネイル4及びラグスクリュー5にも適用可能である。
<5.第5の実施の形態>
<5−1.全体構成>
図15を参照して本発明の第5の実施の形態におけるインプラントである人工股関節6について以下説明する。人工股関節6は、ステム61と、骨頭ボール62と、ライナー63と、ソケット64とで構成される。ステム61は、例えば、大腿骨内部に差し込んで固定されるものである。大腿骨等の骨との固定性を向上させるため、ステム61の表面には、例えば、ハイドロキシアパタイトのコーティングが施される。
骨頭ボール62は、テーパー部61aと係合する係合孔62aを有するボール状の部材である。骨頭ボール62の係合孔62aがステム1の先端のテーパー部61aに差し込まれると、骨頭ボール62はステム61に保持される。
ライナー63及びソケット64は、半球状のカップで形成され、ソケット64の内側面にライナー63が配設される。骨頭ボール62がライナー63の内面で揺動可能な状態で、骨頭ボール62はライナー63に取り付けられる。
<5−2.人工股関節の材質>
人工股関節6の材質は、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものであり、<1−3.有角プレートの材質>での説明は人工股関節6にも適用可能である。
また、人工股関節6のうちステム61と、骨頭ボール62と、ソケット64とは、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものを用いて形成され、ライナー63は、例えば、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリマーで形成されてもよい。また、ライナー63はその表面をMPCポリマーで表面処理してもよい。なお、MPCポリマーとは、分子中にリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)とメタクリロイル基とを有する2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)の重合体を言う。また、ライナー63は、例えば、64チタン(例えば、Ti−6Al−4V)、Co−Cr−Mo合金で形成されていてもよい。これにより、骨頭ボール62とライナー63との間の摩耗を低減させることができる。
<6.その他の実施の形態>
その他の実施の形態のインプラントとして、例えば、鎖骨が骨折した際に用いられる鎖骨プレート、踵骨が骨折した際に用いられる踵骨プレートが一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の整骨に用いられる全てのインプラントが本発明に含まれる。
また、本発明のインプラントは、整骨に用いられるものに限定されるものではない。例えば、筋層下ナス法による漏斗胸手術に用いられる皮下に入れるバーを含む各種生体の手術で用いられるインプラントをはじめとする生体の各部で用いられる全てのインプラントも本発明に含まれる。
さらに、本発明のインプラントは、例えば、骨折箇所等へハの字状に螺入された2本のスクリュー部材の頭部それぞれを摺動、または、滑動、または、遊動可能な態様で保持する頭部保持部材であってもよい。頭部保持部材は、一方のスクリュー部材の動きにより、他方のスクリュー部材の動きを制限する。これにより、骨折箇所等へ螺入された2本のスクリュー部材が骨折箇所等から外れることを防止することができる。
以上のようなインプラントも同様に、弾性変形可能な弾性変形部を少なくとも一部に備えることが好ましい。また、以上のようなインプラントの少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成されることが好ましい。以上のようなインプラントの少なくとも一部が適度に低い弾性限を有する材質により形成される場合、以上のようなインプラントの少なくとも一部を容易に塑性変形させることができる。
また、以上のようなインプラントの材質は、<1−3.有角プレートの材質>で説明した有角プレート1の材質と同様のものであり、<1−3.有角プレートの材質>での説明は以上のようなインプラントにも適用可能である。
<7.製造方法>
次に、図16を参照して本発明の実施の形態におけるインプラントの製造方法の一例について以下説明する。
まず、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の1つのインゴットに対して、変形加工する処理(以下、第1変形加工処理と呼ぶ)を行う(S100)。これにより、1つのインゴットの加工率が変化する。第1変形加工処理として、例えば、熱間加工が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の変形加工に関する処理であってもよい。なお、熱間加工処理は、金属を再結晶温度以上に加熱して行う塑性加工を言う。塑性加工として、例えば、圧延加工、延伸加工、引抜き加工等が一例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他の塑性加工であってもよい。
次に、上記1つのインゴットに第1変形加工処理を施されることにより形成されるインプラントの中間体に対して、上記第1変形加工処理とは別の変形加工する処理(以下、第2変形加工処理と呼ぶ)を行う(S101)。第2変形加工処理は、所謂、成形処理であり、第2変形加工処理によりインプラントの外観形状が形成される。また、第2変形加工処理によりインプラントの中間体の加工率が変化する。第2変形加工処理として、例えば、冷間加工(曲げ加工、絞り加工、プレス加工、鍛造、圧延加工、押出し加工、引抜き加工等)や切削加工等が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の成形に関する変形加工に関する処理であってもよい。なお、冷間加工処理は、常温もしくは材料の再結晶温度未満で行なう加工を言う。冷間加工処理における加工として、例えば、曲げ加工、絞り加工、切断加工、プレス加工、圧延加工、鍛造加工、押出し加工、引抜き加工等様々な加工が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他の加工であってもよい。
なお、第1変形加工処理または第2変形加工処理は、それぞれ1つのインゴット全体またはインプラントの中間体全体に対して行ってもよいし、1つのインゴットの一部またはインプラントの中間体の一部に対して行ってもよい。また、第1変形加工処理および第2変形加工処理は、それぞれ1つのインゴットの一部またはインプラントの中間体の一部を特定の加工率に至るまで変形加工させ、1つのインゴットの残りの少なくとも一部またはインプラントの中間体の残りの少なくとも一部を上記特定の加工率とは異なる加工率(高い加工率、または、低い加工率)に至るまで変形加工させる態様であってもよい。
図5を参照して説明したように、第1変形加工処理および第2変形加工処理でインゴットの加工率を高く変化させることにより、インゴットのヤング率を低く変化させることができる。このため、いずれの場合であっても1つのインゴットの加工率が高くなった部分のヤング率は低くなる。そして、1つのインゴットのうち、加工率が高い部分を、適宜、インプラントにおける弾性変形部として用いればよい。
次に、第2変形加工処理を施されたインプラントの中間体に対して、必要に応じて熱処理が施される(ステップS102)。なお、熱処理は、第2変形加工処理を施されたインプラントの中間体全体に行ってもよいし、第2変形加工処理を施されたインプラントの中間体の所望の場所のみに行って、インプラントの中間体の中に他の部分よりも硬度を上げた部分(硬化部)を設けてもよい。なお、ステップS102における熱処理は、ステップS100における第1変形加工処理の前後に行ってもよい。すなわち、ステップS102における熱処理は、ステップS100前の1つのインゴット、または、ステップS100後のインプラントの中間体のいずれに施してもよい。
なお、上記熱処理として、例えば、溶体化処理や時効処理等が一例として挙げられる。溶体化処理は、加熱して析出物を固溶体に溶け込ませて、β相の単相組織を得るための熱処理である。なお、α+β合金に対して溶体化処理を行うと、α相を残しつつ、β相組織を得ることができる。時効処理は、加熱してβ相中に析出物(α相)を析出させるための熱処理である。以上の溶体化処理や時効処理それぞれは別個の処理であり、それぞれが別個にステップS100の前〜ステップS101の後のうちのいずれのタイミングで行なわれてもよく、そのようなもの全てが本発明に含まれる。
次に、以上の工程を経たインプラントの中間体に対して最終機械加工を行う(S103)。これにより、インプラントが完成する。最終機械加工として、例えば、インプラントの中間体の表面を研磨したり、インプラントの中間体に出るバリを取ったり、スクリュー部材を通す孔を開けたり等が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の製品の最終機械加工の全てが本発明に含まれる。
以上の製造工程において、1つのインゴットに対して部分毎に異なる加工率が与えられるように第1変形加工処理および第2変形加工処理が施された場合、1つのインゴットにおいて様々なヤング率を有する部分が混在する。この場合、インプラントを構成する部分毎に、弾性変形の度合いを変えたインプラントを生成することができる。例えば、インプラントの構成部分の中でも弾性変形を一番容易にさせたい部分は、インプラント全体の中でも、より加工率を高くした部分によって構成されるようにすることが好ましい。以上のようにすれば、1つのインゴットまたはインプラントの中間体に対する加工率のコントロールにより、部分毎に剛性および、ヤング率を変えた理想的なインプラントを製造することができる。
また、上記製造工程のいずれかの段階で、1つのインゴット、または、インプラントの中間体に酸化皮膜を形成させてもよい(酸化皮膜形成工程)。上記酸化皮膜が形成されると、その酸化皮膜は保護膜として機能し、インプラントの耐食性を向上させる。
次に、図17を参照して本発明の別の実施の形態におけるインプラントの製造方法の一例について以下説明する。なお、本実施形態におけるインプラントの製造方法は、第1インゴットからインプラントの第1部分が形成され、第2インゴットからインプラントの第2部分が形成され、そのインプラントの第1部分とインプラントの第2部分とを組み合わせてインプラントの完成体が形成されることを前提としたものである。
まず、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の第1インゴットに対して、第1変形加工処理(以下、第1インゴット第1変形加工処理と呼ぶ)を行う(S110)。また、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の第2インゴットに対して、第1変形加工処理(以下、第2インゴット第1変形加工処理と呼ぶ)を行う(S111)。
次に、上記第1インゴットに第1変形加工処理を施されることにより形成されるインプラントの第1中間体に対して、第2変形加工処理(以下、第1中間体第2変形加工処理と呼ぶ)を行う(S112)。また、上記第2インゴットに第1変形加工処理を施されることにより形成されるインプラントの第2中間体に対して、第2変形加工処理(以下、第2中間体第2変形加工処理と呼ぶ)を行う(S113)。第2変形加工処理は、上記説明したように、所謂、成形処理であり、第2変形加工処理によりインプラントの第1部分及び第2部分の外観形状が形成される。
なお、第1インゴット第1変形加工処理は、第1インゴット全体、または、第1インゴットの一部に対して行ってもよい。また、第1インゴット第1変形加工処理は、第1インゴットの一部を特定の加工率に変化させ、第1インゴットの残りの少なくとも一部を上記特定の加工率とは、異なる加工率(高い加工率、または、低い加工率)に変形させる態様であってもよい。同様に、第2インゴット第1変形加工処理は、第2インゴット全体、または、第2インゴットの一部に対して行ってもよい。また、第2インゴット第1変形加工処理は、第2インゴットの一部を特定の加工率に変化させ、第2インゴットの残りの少なくとも一部を上記特定の加工率とは、異なる加工率(高い加工率、または、低い加工率)に変形させる態様であってもよい。また、第1中間体第2変形加工処理は、第1中間体全体、または、第1中間体の一部に対して行ってもよい。また、第1中間体第2変形加工処理は、第1中間体の一部を特定の加工率に変化させ、第1中間体の残りの少なくとも一部を上記特定の加工率とは、異なる加工率(高い加工率、または、低い加工率)に変形させる態様であってもよい。また、第2中間体第2変形加工処理は、第2中間体全体、または、第2中間体の一部に対して行ってもよい。また、第2中間体第2変形加工処理は、第2中間体の一部を特定の加工率に変化させ、第2中間体の残りの少なくとも一部を上記特定の加工率とは、異なる加工率(高い加工率、または、低い加工率)に変形させる態様であってもよい。
いずれの場合であっても加工率を上げた部分のヤング率は、加工率を上げる前よりも低くなる。そして、上記説明したように、本発明のインプラントには、部分的に弾性変形部が含まれる場合がある。第1中間体、または、第2中間体のうち加工率を上げたいずれかの部分を、適宜、インプラントの弾性変形部として用いればよい。なお、インプラントの弾性変形部の加工率は、そのインプラントにおいて求められる弾性変形の度合いに応じて様々なものであってよい。
次に、インプラントの第1中間体または第2中間体に対して、必要に応じて熱処理が施される(ステップS114)。なお、熱処理は、上記図16を参照して説明した実施形態と同様のものであり、既に説明済みであるため、その説明を省略する。また、熱処理は、インプラントの第1中間体の全体またはその一部、または、インプラントの第2中間体の全体またはその一部に行ってもよい。これにより、第1中間体または第2中間体中に他の部分よりも硬度を上げた硬化部を設けることができる。
また、熱処理は、ステップS112及びステップS113の直後に行われるものに限定されず、いずれの工程の前後に行われてもよい。すなわち、熱処理は、ステップS112及びステップS113よりも前の工程で行ってもよいし、ステップS115の最終機械加工の工程よりも後の工程で行ってもよい。
次に、以上の工程を経たインプラントの第1中間体または第2中間体に対して最終機械加工を行う(S115)。これにより、インプラントの第1部分または第2部分が完成する。なお、最終機械加工は、上記図16を参照して説明した実施形態と同様のものであり、既に説明済みであるため、その説明を省略する。以上のようにして、インプラントの第1部分と第2部分とは、組み立てられて(S116)、インプラントが完成する。
また、上記製造工程のいずれかの段階で、第1インゴット、または、第2インゴット、または、第1中間体、または第2中間体の表面に酸化皮膜を形成させてもよい(酸化皮膜形成工程)。上記酸化皮膜が形成されると、その酸化皮膜は保護膜として機能し、最終的にインプラントの耐食性を向上させる。
以上説明した各処理のいずれかの工程を適宜選択して、組み合わせた全てのインプラントの製造方法が本発明に含まれる。
以上の製造工程において、インプラントの構成部分の中でも弾性変形を一番容易にさせたい部分は、インプラントの第1中間体または第2中間体の中でもより加工率を高くした部分により構成されるようにすることが好ましい。以上のようにすれば、インプラントの第1中間体または第2中間体に対する加工率のコントロールにより、部分毎に剛性、ヤング率を変えた理想的なインプラントを製造することができる。
なお、以上の図16及び図17に示すインプラントの製造方法では、インゴットに対して第1変形加工処理、第2変形加工処理および熱処理を行ってヤング率を制御している。そのヤング率の制御の具体的態様の一例について以下説明する。
例えば、図1に示す有角プレート1を製造する際に、曲げ加工(第2変形加工処理)により骨補助プレート部10とブレード部11を形成させる場合、曲げ加工(第2変形加工処理)された部分のヤング率は下がる。この場合、曲げ加工(第2変形加工処理)によりヤング率が制御される。
また、チタンタンタル系合金に対する熱処理の保持時間が長くなるに従って、図7(a)に示すように、チタンタンタル系合金のヤング率は上がるように変化するため、有角プレート1への曲げ加工(第2変形加工処理)に追加して、または、曲げ加工(第2変形加工処理)の代わりに、熱処理でヤング率の制御を行うようにしてもよい。
次に、図18を参照して本発明の別の実施の形態におけるインプラントの製造方法の一例について以下説明する。まず、スズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金の1つまたは複数のインゴットに対して熱間加工処理を行う(S120)。熱間加工処理後に、1つまたは複数のインゴットは、インプラントの中間体になる。
具体的に、ステップS120における熱間加工処理では、1つまたは複数のインゴットを所定の温度に加熱して、1つまたは複数のインゴットを所定の厚さの板材や所定の径の棒材にする。すなわち、熱間加工処理を通じて、インプラントの中間体として板材や棒材を作り出す。なお、熱間加工処理において1つまたは複数のインゴットを所定の温度に加熱すると、1つまたは複数のインゴットに対して溶体化処理を行う場合と同様の効果を得ることができる場合がある。
次に、熱間加工処理後のインプラントの中間体に対して、冷間加工処理を行う(S121)。冷間加工処理における加工として、例えば、曲げ加工、切断加工、プレス加工、圧延加工、鍛造加工等様々な加工が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他の加工であってもよい。ステップS121における冷間加工処理は、所謂、成形処理に相当し、ステップS121における冷間加工処理によりインプラントの外観形状が形成される。また、冷間加工処理によりインプラントの中間体の加工率を制御してもよい。
次に、上記冷間加工処理を施されたインプラントの中間体に対して、熱処理を行う(ステップS122)。ここでの熱処理の態様は、いろいろなものがある。例えば、冷間加工処理を施されたインプラントの中間体全体に対して、熱処理として時効処理を行ってもよい(S123)。この場合、インプラントの中間体は、全体的に硬度が上がる。上記時効処理を経たインプラントの中間体に対して、最終機械加工を施すと(S124)、インプラントが完成する。
また、例えば、冷間加工処理を施されたインプラントの中間体に対して、熱処理として溶体化処理を行ってもよい(S125)。溶体化処理を施すと、インプラントの中間体を構成するスズ(Sn)を含有するチタンタンタル系合金に析出する析出物が固溶体中に溶け込む。
溶体化処理後に、インプラントの中間体の一部に対して、例えば、冷間加工(部分冷間加工処理)を行う(S126)。これにより、インプラントの中間体の一部の加工率を変化させることができる。なお、インプラントの中間体の一部の加工率の変化態様は、様々な態様が挙げられる。例えば、インプラントの中間体の長さ方向に沿って連続して加工率が変化する態様や、インプラントの中間体の長さ方向に沿って不連続に加工率が変化する態様等が一例として挙げられる。
また、溶体化処理後に、インプラントの中間体の一部に対して、例えば、時効処理(部分時効処理)を行ってもよい(S127)。これにより、インプラントの中間体の一部の硬度を他の部分よりも上げることができる。
以上のステップS126の部分冷間加工処理、または、ステップS127の部分時効処理を経たインプラントの中間体に対して、最終機械加工を施すと(S124)、インプラントが完成する。
尚、本発明のインプラント、及び、インプラントの製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。