JP6950942B2 - 窒化レニウムを含有する硬質材料、その製造方法およびそれを用いた切削工具 - Google Patents

窒化レニウムを含有する硬質材料、その製造方法およびそれを用いた切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、窒化レニウムを含有する硬質材料、その製造方法およびそれを用いた切削工具に関する。
切削工具等に使用する金属系硬質材料としては炭化タングステンが広く用いられている。炭化タングステンは鉄系材料を切削する際に、結晶中の炭素成分が鉄と反応するため、工具の摩耗の原因となっている。そのため、それに代わる、遷移金属の窒化物を主成分とする硬質材料の開発、その切削工具への適用が切望されている。
このような遷移金属の窒化物として窒化レニウムが知られている(例えば、非特許文献1〜3)。非特許文献1は、窒素量が多く、層状構造(二硫化モリブデン型構造)を有するReNが高圧下で合成されることを報告している。しかしながら、ReNは、体積弾性率が炭化タングステンの半分ほどしかなく、構造的に異方性が大きいことから、硬質材料として適さない。非特許文献2および3によれば、金属Reと流体窒素とを、レーザ加熱により、30GPaを超える圧力下、2000Kの温度下で処理することにより、ReNとReNとが製造される。これらのReNとReNとは、全体の窒素量が少ないため、鉄系材料切削時の耐摩耗効果が十分ではない。
F.Kawamuraら,Appl.Phys.Lett.,100,251910,2012 A.Friedrichら,Phys.Rev.Lett.,105,085504,2010 A.Friedrichら,Phys.Rev.B 82,224106,2010
以上から、本発明の課題は、窒化レニウムを主成分とする耐摩耗性に優れた硬質材料、その製造方法およびそれを用いた切削工具を提供することである。
本発明による硬質材料は、少なくともRe(レニウム)とN(窒素)とを含有する窒化レニウムを含有し、前記窒化レニウムは、ReNで示される結晶を含有し、前記ReNで示される結晶は、炭化タングステン型構造を有し、これにより上記課題を解決する。
前記ReNで示される結晶は、六方晶系の結晶であり、空間群P6−m2(ここで、“−”は、6のオーバーラインを示す)の対称性を有し、格子定数aおよびcは、それぞれ、
a=0.2798±0.05(nm)
c=0.2715±0.05(nm)
の範囲を満たしてもよい。
前記窒化レニウムは、前記ReNで示される結晶を70重量%以上含有してもよい。
前記窒化レニウムは、ReN(xは、1<x≦2を満たす)で示される窒化レニウムをさらに含有してもよい。
前記ReNは、0重量%より多く5重量%未満の範囲で含有されてもよい。
前記窒化レニウムは、前記Reに対する前記Nのモル比が0.8以上1.2以下の範囲を満たしてもよい。
前記窒化レニウムは、前記Reに対する前記Nのモル比が0.95以上1.05以下の範囲を満たしてもよい。
TiN、BN、WC、WN、TaC、Co、NiおよびCrからなる群から選択される材料をさらに含有してもよい。
本発明による硬質材料を製造する方法は、少なくとも二硫化モリブデン型を有する窒化レニウムを、2200Kより高く3200K以下の温度範囲で、25.5GPa以上100GPa以下の圧力範囲で処理する工程を包含し、これにより上記課題を解決する。

前記処理する工程において、前記圧力範囲は、30GPa以上60GPa以下の範囲であってもよい。 前記処理する工程において、前記圧力範囲は、37GPaより大きく45GPa以下の範囲であってもよい。
前記処理する工程は、ダイヤモンドアンビル装置またはマルチアンビル装置を用いた高温高圧処理法または衝撃圧縮法によって行われてもよい。
前記二硫化モリブデン型を有する窒化レニウムは、100nm以上500μm以下の粒径を有する粉末であってもよい。
前記処理する工程によって得られた反応物を粒度調整し、焼結する工程をさらに包含してもよい。
前記粒度調整し、焼結する工程は、前記反応物を10nm以上10μm以下の粒径を有する粉末状にしてもよい。
前記粒度調整し、焼結する工程は、前記反応物を1500K以上3000K以下の温度範囲で焼結してもよい。
本発明による硬質材料を用いた切削工具は、前記硬質材料は、上述の硬質材料であり、これにより上記課題を解決する。
本発明の硬質材料は、炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とするため、大きな体積弾性率を有し、硬度に優れる。また、窒素含有量が多いため、耐摩耗性が向上し得る。このような硬質材料は切削工具に適用でき、とりわけ鉄系材料の切削に好ましい。本発明の硬質材料の製造方法は、出発原料に二硫化モリブデン構造を有する窒化レニウムを用い、上述の所定条件で高温高圧処理するだけで、脱窒を生じさせ、炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを製造できる。
本発明の硬質材料を構成するReN結晶の結晶構造を示す図 本発明の硬質材料を製造するプロセスを説明する図 ダイヤモンドアンビルセルを備えたダイヤモンドアンビル装置の全体を示す模式図 図3のダイヤモンドアンビル装置の細部を示す模式図 X線構造解析および体積弾性率の測定のための測定系を示す図 実施例2の試料によるX線回折パターンを示す図 実施例2の試料による体積比の圧力依存性を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
本発明の硬質材料について説明する。
本願発明者らは、少なくとも、Re(レニウム)とN(窒素)とを含有する窒化レニウムに着目し、詳細に研究を行った結果、窒化レニウムの中でも、炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶が硬質材料として機能することを見出した。
炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶は、本願発明者らが新たに合成し、結晶構造解析により新規結晶であると確認した、本発明より以前において報告されていない結晶である。
図1は、本発明の硬質材料を構成するReN結晶の結晶構造を示す図である。
本発明者らが合成したReN結晶について行った単結晶構造解析によれば、ReN結晶は、六方晶系に属し、P6−m2(ここで“−”は6のオーバーラインを表す)空間群(International Talbes for Crystallographyの187番の空間群)に属し、表1に示す結晶パラメータおよび原子座標位置を占める。本願明細書において、炭化タングステン型構造とは、炭化タングステン(WC)と同じく、六方晶系に属し、P6−m2空間群に属すことを意図する。
Figure 0006950942
表1において、格子定数a、bおよびcは単位格子の軸の長さを示し、α、β、γは単位格子の軸間の角度を示す。原子座標は、単位格子中の各原子の位置を示す。図1は、表1に示す結晶構造パラメータを使った解析から得られる結晶構造である。なお、格子定数aとbとはa=bの関係にある。
ReNで示される結晶は、構成成分であるReとNとの比率が変わったり、他の元素で置き換わったりすることによって格子定数が変化するが、結晶構造と、原子が占めるサイトおよびその座標によって与えられる原子位置とは、骨格原子間の化学結合が切れるほどには大きく変わることはない。本発明では、対象となる物質のX線回折や中性子回折の結果をP6−m2の空間群でリートベルト解析して求めた格子定数と原子座標とから計算されたRe−Nの化学結合の長さが、表1に示すReN結晶の格子定数と原子座標とから計算されたそれと比べて±5%以内の場合は同一の結晶構造と判定できる。化学結合の長さが±5%を超えると、化学結合が切れて別の結晶となり得る。別の簡易的な判定方法として、ReN結晶のX線回折の主要ピーク(例えば、回折強度の強い10本程度)と、対象となる物質のそれとを比較してもよい。
このような観点から、本発明の硬質材料において、ReNで示される結晶は、ReNそれ自身、ReとNとのモル比が1からずれているもの(すなわち、ReリッチまたはNリッチ)、または、ReおよびNの一部が他の元素(例えば、C、O、B等)で置き換わったものも含むものとする。
本発明の硬質材料において、ReNで示される結晶は、表1に示すように、六方晶系の結晶であり、空間群P6−m2の対称性を有するが、格子定数aおよびcは、好ましくは、それぞれ、
a=0.2798±0.05(nm)
c=0.2715±0.05(nm)
の範囲を満たす。この範囲内であれば、結晶が安定であるため、硬度および耐摩耗性に優れる硬質材料となる。ここでも、格子定数a=bの関係を満たす。
本発明の硬質材料は、窒化レニウムを主成分とするが、窒化レニウムは、ReNで示される結晶を70重量%以上含有することが好ましい。これにより、ReNで示される結晶による硬度および耐摩耗性に優れる硬質材料となる。より好ましくは、窒化レニウムは、ReNで示される結晶を90重量%以上含有する。さらに、好ましくは、窒化レニウムは、ReNで示される結晶を95重量%以上含有する。
本発明の硬質材料において、窒化レニウムは、ReNで示される結晶から極力構成されることが望ましいが、ReNで示される結晶以外に、ReN(xは、1<x≦2)で示される窒化レニウムを含有してもよい。xが2である場合、ReNは、製造時の原料に用い、一部未反応で残った二硫化モリブデン(MoS)型構造を有する窒化レニウム(ReN)である。xが1<x<2である場合、ReNは、ReNからの脱窒が不十分な窒化レニウムである。これらのReNの含有量は、好ましくは、0重量%より多く5重量%未満の範囲である。この範囲であれば、硬度および耐摩耗性を有する硬質材料を提供できる。
本発明の硬質材料において、窒化レニウムは、好ましくは、Reに対するNのモル比が0.8以上1.2以下の範囲を満たす。これにより、ReNで示される結晶による硬度および耐摩耗性に優れる硬質材料となる。より好ましくは、Reに対するNのモル比が0.95以上1.05以下の範囲を満たす。これにより、ReNで示される結晶の含有量が増大するため、より硬度および耐摩耗性に優れる硬質材料となる。
なお、本明細書において、窒化レニウムの主成分とする量は、90重量%以上である。90重量%を下回ると、窒化レニウム以外の成分の効果が大きくなり、十分な硬度および耐摩耗性が得られない場合がある。ここで、本発明の硬質材料は、窒化レニウム以外の成分として、TiN、BN、WC、WN、TaC、Co、NiおよびCrからなる群から選択される材料を含有してもよい。これらの材料は焼結助剤として機能し得るので、硬度および耐摩耗性を有する硬質材料を提供できる。
本発明の硬質材料は、ReNで示される結晶の結晶構造に基づき硬度に優れ、また窒素含有量も多いため、耐摩耗性を有する。このような本発明の硬質材料は、300GPa以上400GPa以下の範囲の体積弾性率を有し、既存の硬質材料である立方晶窒化ホウ素(381GPa)、炭化タングステン(329〜384GPa)、ダイヤモンド(442GPa)の体積弾性率に匹敵し得る。このことからも本発明の硬質材料は、切削工具に適用できる。
次に、本発明の硬質材料を製造する例示的な方法を説明する。
図2は、本発明の硬質材料を製造するプロセスを説明する図である。
本発明の製造方法では、出発原料に二硫化モリブデン(MoS)型窒化レニウム(以降では、MoS型ReNと称する)を用いる。MoS型ReNは、例えば非特許文献1の方法によって製造される。本願発明者らは、MoS型ReNが、2200Kより高く3200K以下の温度範囲で、25.5GPa以上100GPa以下の圧力範囲で高温高圧処理(以降では単に処理と称する)することにより、脱窒(例示的には図2における点線部分で示す窒素の脱離)が生じ、上述したReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とする硬質材料を製造できることを見出した。2200K以下の温度範囲、ならびに、25.5GPa未満の圧力範囲では、MoS型ReNからの脱窒が生じない。3200Kより高い温度範囲、ならびに、100GPより高い圧力範囲は、MoS型ReNからの脱窒は生じるが、より特殊な装置が必要となり、製造コストが高くなるため、好ましくない。なお、高温高圧処理の時間は、原料の量や用いる装置によって異なることに留意されたい。
より好ましくは、上記処理工程は、30GPa以上60GPa以下の圧力範囲で行われる。これにより、確実に、MoS型ReNから脱窒が生じ、上述のReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とする硬質材料が製造される。さらに好ましくは、上記処理工程は、37GPa以上45GPa以下の圧力範囲で行われる。これにより、MoS型ReNから脱窒が生じ、第二相の生成が抑制された、上述のReNで示される結晶からなる窒化レニウムを主成分とする硬質材料が製造される。
上述の処理工程は、例えば、ダイヤモンドアンビル装置またはマルチアンビル装置を用いた高温高圧処理法または衝撃圧縮法によって行われる。これらの方法は、上述の温度範囲および圧力範囲を達成できる。なお、上述の高温および高圧条件を達成できれば、装置に制限はない。
出発原料に用いるMoS型ReNは、好ましくは、100nm以上500μm以下の粒径を有する粉末である。この範囲の粒径であれば、脱窒の進行を促進する。より好ましくは、MoS型ReNは、好ましくは、200nm以上200μm以下の粒径を有する粉末である。なお、本願明細書において、粒径は、マイクロトラックやレーザ散乱法によって測定される体積基準のメディアン径(d50)とする。
なお、ReNで示される結晶が、ReおよびNの一部が他の元素で置き換わったものを意図する場合には、出発原料MoS型ReNに加えて、他の元素の窒化物等を用いればよい。
上述の処理工程によって本発明の硬質材料が得られるが、さらに、得られた反応物を粒度調整し、焼結する工程を行ってもよい。例えば、上述の処理工程によって得られた反応物を原料として、より大きな焼結体を製造し、切削工具に加工する場合に好ましい。
粒度調整し、焼結する工程において、好ましくは、反応物が、10nm以上10μm以下の範囲を満たす粉末となるまで、粒度調整を行う。これにより、緻密な焼結体である硬質材料を製造できる。より好ましくは、反応物が、50nm以上5μm以下の範囲を満たす粉末となるまで、粒度調整を行う。これにより、緻密で粒成長が抑制された焼結体である硬質材料を製造できる。なお、粒度調整は、湿式または乾式によるボールミル、ジェットミル等を使用し、篩い分け等の分級を行ってもよい。
粒度調整し、焼結する工程において、好ましくは、粒度調整した粉末状の反応物を、1500K以上3000K以下の温度範囲で焼結する。この温度範囲であれば、焼結が進行する。より好ましくは、反応物を1800K以上2500K以下の温度範囲で焼結する。この温度範囲であれば、粒成長を抑制したまま、緻密な焼結体である硬質材料を製造できる。なお、焼結時間は、成形体の大きさにもよるが、例示的には、1時間以上24時間以下の範囲である。焼結に際して、成型後通常の雰囲気炉にて焼結してもよいが、ホットプレスや熱間静水圧プレス(HIP)などを用いて加圧下にて焼結してもよい。焼結は、好ましくは、窒素雰囲気中など還元雰囲気で行われる。
粒度調整し、焼結する工程において、粒度調整した粉末状の反応物に加えてTiN、BN、WC、WN、TaC、Co、NiおよびCrからなる群から選択される材料を添加してもよい。これらは焼結助剤として機能し、より緻密な焼結体である硬質材料を提供できる。添加する量は、10重量%未満が好ましい。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
実施例1では、出発原料としてMoS型ReNに、32.2GPaの圧力下、2250K〜2750Kの温度範囲で、図3および図4に示すダイヤモンドアンビル装置を用いたレーザ加熱による高温高圧処理法を実施した。まず、出発原料であるMoS型ReNを、非特許文献1にしたがって合成した。合成の手順を説明する。
ReCl(シグマアルドリッチ製)とLiN(シグマアルドリッチ製)とをそれぞれ400wt%のNaCl(和光純薬工業株式会社製)粉末で薄めた。希釈後のReClおよびLiNを、重量比で1:1となるように混合した。なお、混合は、窒素ガスを充填したグローブボックス(HOおよびOの濃度は1ppm以下に制御された)内で行った。混合後のReCl、LiNおよびNaClのモル比(ReCl:LiN:NaCl)は、1:10:50であった。
ReCl、LiNおよびNaClの混合物をプラチナカプセルに充填し、高圧セルにセットした。充填量は、約200mgであった。ベルト型高圧装置を用いて、高圧セルに7.7GPaの圧力を印加し、1873Kに加熱した。加熱時間は、30分から10時間であった。高温高圧後、70℃の温水で生成物を洗浄し、LiClおよびNaClを溶解させた。乾燥後の生成物が、MoS型ReNであり、不純物および第二相を含有しないことをX線光電子分光法(XPS)および粉末X線回折(XRD)から確認した。
図3は、ダイヤモンドアンビルセルを備えたダイヤモンドアンビル装置の全体を示す模式図である。
図4は、図3のダイヤモンドアンビル装置の細部を示す模式図である。
ダイヤモンドアンビル装置は既存のものを使用でき、図3に示すように、底面が平らになるよう研磨されたダイヤモンドが、底面を対向した状態で設置されており、この底面に圧力が印加される。図4に示すように、出発原料であるMoS型ReNを、圧力伝達物質であるNaClで固め、ガスケットとダイヤモンドとで保持した。充填したMoS型ReNは、粒径約100μmを有し、約0.3〜0.8μgであった。
次いで、表2に示すように、ダイヤモンドアンビル装置に32.2GPaの圧力を印加し、100WのファイバーレーザからレーザビームをMoS型ReNに照射した。なお、レーザビームは、10μmφに集光されており、MoS型ReN全体をスキャンした。このときのMoS型ReNの温度は、色温度から判断して、2250K〜2750Kの範囲内であった。レーザの照射時間は、温度が一定になってから数分であった。また、加熱後の圧力は、32.1GPaであり、実質的に変化はないことを確認した。
反応後の試料について、図5に示す測定系によりX線構造解析を行った。結果を表3に示す。なお、実施例1では、反応後のダイヤモンドアンビルセルを減圧することなくそのまま測定系のセルに使用した。
図5は、X線構造解析および体積弾性率の測定のための測定系を示す図である。
放射光からのX線をシリコンで単色化し(λ=0.041476nm、もしくは0.033242nm、もしくは0.074996nm)、種々の圧力における試料のX線回折パターンを得た。X線回折パターンからX線構造解析を行い、格子定数を求めた。この際、圧力標準物質としてNaClを採用した。
[実施例2]
実施例2では、表2に示すように、圧力が異なる以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例1と同様に、実施例2で得られた試料について、X線構造解析を行い、格子定数を求めた。結果を図6および表3に示す。実施例2では、反応後、ダイヤモンドアンビルセルを1気圧に減圧し、セルから試料を取り出し、再度ダイヤモンドアンビルセルに充填した。その際、アルコール媒体(メタノール:エタノール:水=16:3:1)とともに試料を封入した。また、圧力標準物質としてAuを採用した。そこでさらに、圧力を変えながら、X線構造解析を行い、体積弾性率を求めた。結果を図7に示す。
[比較例3]
比較例3では、表2に示すように、圧力および加熱温度が異なる以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例1と同様に、比較例3で得られた試料について、X線構造解析を行い、格子定数を求めた。結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例4では、表2に示すように、圧力および加熱温度が異なる以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例4では、反応後、ダイヤモンドアンビルセルを1気圧に減圧し、セルから試料を取り出し、X線構造解析を行い、格子定数を求めた。結果を表3に示す。
[実施例5]
実施例5では、表2に示すように、圧力および加熱温度が異なる以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例4と同様に、実施例5で得られた試料について、X線構造解析を行い、格子定数を求めた。結果を表3に示す。
[実施例6]
実施例6では、表2に示すように、圧力および加熱温度が異なる以外は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。実施例4と同様に、実施例6で得られた試料について、X線構造解析を行い、格子定数を求めた。結果を表3に示す。
以上の実施例/比較例1〜6の試料の合成条件を簡単のために表2に示し、結果を説明する。
Figure 0006950942
図6は、実施例2の試料によるX線回折パターンを示す図である。
図6によれば、回折ピークは、六方晶系の空間群P6−m2の対称性を有するWC型ReNおよびNaClに指数付けできた。それ以外の第二相を示すピークは見られなかった。ここで、NaClのピークは、ダイヤモンドアンビルセルで用いた圧力伝達物質(NaCl)に基づく。リートベルト解析プログラム(GSAS)によれば、a=b=2.798(1)Åおよびb=2.715(1)Åであった。図示しないが、実施例1、2、4〜6の試料のXRDパターンは、ごくわずかな未知のピークを有すものの、図6と同様のXRDパターンを主として有した。未知のピークは、出発原料に用いたMoS型ReNから窒素の一部が脱離したReN(1<x≦2)と考えられる。一方、比較例3の試料のXRDパターン(図示せず)は、出発原料に用いたMoS型ReNのそれに一致した。これらの結果から得られた生成物の主相を表3にまとめる。
Figure 0006950942
実施例1、4〜6の試料は、いずれも、第二相を含有するものの、炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とする材料であった。実施例2の試料は、第二相を含有しない、炭化タングステン型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムからなる材料であり、Reに対するNのモル比は、0.95以上1.05以下を満たすと推定される。
以上から、本発明の製造方法を実施すれば、WC型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とする材料が得られることが示された。特に、圧力範囲を37GPaより大きく45GPa以下に制御するだけで、WC型構造を有するReNで示される結晶を極めて高純度で含有する窒化レニウムを主成分とする材料が得られることが示された。
図7は、実施例2の試料による体積比の圧力依存性を示す図である。
図7によれば、実施例2の試料の体積弾性率は323±3GPaと算出された。図示しないが、実施例1、4〜6の試料の体積弾性率も、300GPa以上400GPa以下の範囲の範囲を有することを確認した。これらの値は、既存の硬質材料である立方晶窒化ホウ素(381GPa)、炭化タングステン(329〜384GPa)、ダイヤモンド(442GPa)の体積弾性率に匹敵し得る。
以上から、本発明の製造方法によって得られた材料は、WC型構造を有するReNで示される結晶を含有する窒化レニウムを主成分とする硬質材料であることが示された。
本発明の硬質材料は、硬度および耐摩耗性に優れるため、切削工具に適用できる。特に、本発明の硬質材料を適用した切削工具は、鉄系材料を切削しても反応することはないので、鉄系材料の加工用の切削工具に好ましい。

Claims (17)

  1. 少なくともRe(レニウム)とN(窒素)とを含有する窒化レニウムを含有する硬質材料であって、
    前記窒化レニウムは、ReNで示される結晶を含有し、
    前記ReNで示される結晶は、炭化タングステン型構造を有する、硬質材料。
  2. 前記ReNで示される結晶は、六方晶系の結晶であり、空間群P6−m2(ここで、“−”は、6のオーバーラインを示す)の対称性を有し、格子定数aおよびcは、それぞれ、
    a=0.2798±0.05(nm)
    c=0.2715±0.05(nm)
    の範囲を満たす、請求項1に記載の硬質材料。
  3. 前記窒化レニウムは、前記ReNで示される結晶を70重量%以上含有する、請求項1または2に記載の硬質材料。
  4. 前記窒化レニウムは、ReN(xは、1<x≦2を満たす)で示される窒化レニウムをさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の硬質材料。
  5. 前記ReNは、0重量%より多く5重量%未満の範囲で含有される、請求項4に記載の硬質材料。
  6. 前記窒化レニウムは、前記Reに対する前記Nのモル比が0.8以上1.2以下の範囲を満たす、請求項1〜5のいずれかに記載の硬質材料。
  7. 前記窒化レニウムは、前記Reに対する前記Nのモル比が0.95以上1.05以下の範囲を満たす、請求項6に記載の硬質材料。
  8. TiN、BN、WC、WN、TaC、Co、NiおよびCrからなる群から選択される材料をさらに含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の硬質材料。
  9. 少なくとも二硫化モリブデン型を有する窒化レニウムを、2200Kより高く3200K以下の温度範囲で、25.5GPa以上100GPa以下の圧力範囲で処理する工程を包含する、請求項1〜8のいずれかに記載の硬質材料を製造する方法。
  10. 前記処理する工程において、前記圧力範囲は、30GPa以上60GPa以下の範囲である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記処理する工程において、前記圧力範囲は、37GPaより大きく45GPa以下の範囲である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記処理する工程は、ダイヤモンドアンビル装置またはマルチアンビル装置を用いた高温高圧処理法または衝撃圧縮法によって行われる、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記二硫化モリブデン型を有する窒化レニウムは、100nm以上500μm以下の粒径を有する粉末である、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記処理する工程によって得られた反応物を粒度調整し、焼結する工程をさらに包含する、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記粒度調整し、焼結する工程は、前記反応物を10nm以上10μm以下の粒径を有する粉末状にする、請求項14に記載の方法。
  16. 前記粒度調整し、焼結する工程は、前記反応物を1500K以上3000K以下の温度範囲で焼結する、請求項14または15に記載の方法。
  17. 硬質材料を用いた切削工具であって、
    前記硬質材料は、請求項1〜8のいずれかに記載の硬質材料である、切削工具。
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