JP6950287B2 - 動物の体表面の菌抑制方法、人間を除いた動物の白癬菌治療方法、および動物用の衣類 - Google Patents

動物の体表面の菌抑制方法、人間を除いた動物の白癬菌治療方法、および動物用の衣類 Download PDF

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Description

本発明は、動物の体表面の菌抑制方法、人間を除いた動物の白癬菌治療方法、および抗菌性を有する動物用の衣類に関する。
従来から、犬、猫またはハムスター等の、人間以外の動物(以下、「動物」という。)も白癬菌等による皮膚病に罹患することが知られており、動物の白癬菌治療のための方法が多数提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3)。
また、上記動物の皮膚および体毛(以下、体表面)には、バルトネラ菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌および白癬菌等の多数の菌(細菌および真菌)が多数常在しており、これらに接触した人間が菌に感染することがある。これに対して、上記動物を定期的に入浴させる(動物の体表面を洗い流す)ことで、体表面に常在する菌の増殖を抑制する方法が考えられる。
特開2004−224720号公報 特開2007−332126号公報 特開2002−272861号公報 特開2006−67878号公報 特開2001−333655号公報
しかし、上述した白癬菌の治療方法では、薬剤等によるアレルギー反応が生じる場合がある。また、水を嫌う動物や大型動物の体表面を頻繁に洗い流すことは、非常に困難である。
本発明の目的は、簡素な方法により、薬剤等の使用よりも安全性の高い、動物の体表面の菌の増殖を抑制する方法、および人間を除いた動物の体表面の白癬菌治療の方法を提供することにある。
また、本発明は、薬剤等よりも安全性の高く、体表面の菌の増殖を抑制が可能な、動物用の衣類を提供することにある。
(1)本発明の動物の体表面の菌抑制方法は、
動物の皮膚の少なくとも一部に、圧電体を含んだ布を対向させるように配置し、
前記圧電体に外力が加えられた時に発生する電荷によって、前記布と対向する前記動物の体表面の菌の増殖を抑制することを特徴とする。
従来から、電場により菌の増殖を抑制することができる旨が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御−科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。また、この電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路や、局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌の細胞膜が部分的に破壊されて菌の増殖を抑制することが考えられる。本発明では、衣類を動物に装着したときに、動物の動きによって、布の繊維間に電場が発生する、或いは電流が流れる。または、動物の皮膚の少なくとも一部に対向するように布が近接して配置されるため、布に外力が加えられると、動物の皮膚と布との間に電場が発生する、或いは電流が流れる。したがって、本発明の衣類を動物に装着するだけで、布自体の菌の増殖が抑制される。或いは、布と対向する動物の体表面(皮膚および体毛)の悪性菌(細菌・真菌)の増殖が抑制され、体表面や体毛での菌の増殖に起因した悪臭の発生も抑制できる。
また、本発明における布は、圧電により電場を生じさせるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。また、圧電体の寿命は、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、薬剤よりもアレルギー反応が生じるおそれは低い。
(2)上記(1)において、前記布は、前記圧電体からなる複数の糸が織り込まれていてもよい。
(3)上記(2)において、前記複数の糸は、第1の圧電体からなる第1の糸と、第2の圧電体からなる第2の糸と、を有し、前記布は、前記第1の糸と、前記第2の糸と、が織り込まれてなる布であり、前記第1の糸は、外力が加えられた時に正の電荷を発生し、前記第2の糸は、外力が加えられた時に負の電荷を発生することが好ましい。この構成により、布が単体で電場を生じさせ、抗菌効果を生じさせることができる。
(4)上記(3)において、前記第1の糸と、前記第2の糸と、は並列して配置されていてもよい。電場の強度は、電荷を生じる物質間の距離に反比例して大きくなる。この構成により、第1の糸と第2の糸との間の距離を小さくできるため、布が生じる電場の強度を非常に大きな値とできる。したがって、布に高い抗菌作用を生じさせることができる。
(5)上記(3)または(4)において、前記第1の糸と、前記第2の糸と、は交差して配置されていてもよい。
(6)上記(3)から(5)のいずれかにおいて、前記複数の糸は、前記第1の糸と、前記第2の糸とが、組紐として組まれてなる第3の糸を有していてもよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記布を備えた衣類を前記動物に装着させることが好ましい。この構成により、動物に衣類を装着させるだけで、動物の体表面の菌の増殖を抑制できる。
(8)上記(1)において、前記圧電体は、圧電性ポリマーであってもよい。
(9)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記圧電体は、圧電性ポリマーであり、前記糸は、前記圧電性ポリマーが撚られてなっていてもよい。
(10)上記(8)または(9)において、前記圧電性ポリマーは、ポリ乳酸を含んでいてもよい。
(11)本発明の人間を除いた動物の白癬菌治療方法は、上記(1)から(10)のいずれかの動物の体表面の菌抑制方法を用いる。
(12)本発明の動物用の衣類は、
圧電体を含んだ布を備え、
前記圧電体に外力が加えられた時に発生する電荷によって菌の増殖を抑制することを特徴とする。
従来から、電場により菌の増殖を抑制することができる旨が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御−科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。或いは、電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路や、局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌の細胞膜が部分的に破壊されて菌の増殖を抑制することが考えられる。本発明では、衣類を動物に装着したときに、動物の動きによって、布の繊維間に電場が発生する、或いは電流が流れる。または、動物の皮膚の少なくとも一部に対向するように布が近接して配置されるため、布に外力が加えられると、動物の皮膚と布との間に電場が発生する、電流が流れる。さらに、電場もしくは電流によって水分中に含まれる酸素が活性酸素種に変化する場合がある、または、電場もしくは電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある。これらのラジカル類を含む活性酸素種の作用により菌が死滅する、または弱体化する。また、上記理由が複合して抗菌効果(菌の増殖を抑制する効果)・殺菌効果を生じている場合もある。そのため、本発明の衣類を動物に装着するだけで、布と対向する動物の体表面(皮膚および体毛)の悪性菌(細菌・真菌)の増殖が抑制され、体表面や体毛での菌の増殖に起因した悪臭の発生も抑制できる。
また、本発明における布は、圧電により電場を生じさせるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。また、圧電体の寿命は、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、薬剤よりもアレルギー反応が生じるおそれは低い。
(13)上記(12)において、装着したときに動物の皮膚と対向するように前記布が配置されていることが好ましい。本発明における衣類を装着することで、白癬菌等による皮膚病の治癒が促される。
(14)上記(12)または(13)において、前記布は、前記圧電体からなる複数の糸が織り込まれていてもよい。
(15)上記(14)において、前記複数の糸は、第1の圧電体からなる第1の糸と、第2の圧電体からなる第2の糸と、を有し、前記布は、前記第1の糸と、前記第2の糸と、が織り込まれてなる布であり、前記第1の糸は、外力が加えられた時に表面に正の電荷を発生し、前記第2の糸は、外力が加えられた時に表面に負の電荷を発生することが好ましい。この構成により、布が単体で電場を生じさせ、抗菌効果を生じさせることができる。
(16)上記(15)において、前記第1の糸と、前記第2の糸と、は並列して配置されていることが好ましい。電場の強度は、電荷を生じる物質間の距離に反比例して大きくなる。この構成により、第1の糸と第2の糸との間の距離を小さくできるため、布が生じる電場の強度を非常に大きな値とできる。したがって、布に高い抗菌作用を生じさせることができる。
(17)上記(15)または(16)において、前記第1の糸と、前記第2の糸と、は交差して配置されていてもよい。
(18)上記(15)から(17)のいずれにおいて、前記複数の糸は、前記第1の糸と、前記第2の糸とが、組紐として組まれてなる第3の糸を有していてもよい。
(19)上記(12)または(13)において、前記圧電体は、圧電性ポリマーであってもよい。
(20)上記(14)から(18)のいずれかにおいて、前記圧電体は、圧電性ポリマーであり、前記糸は、前記圧電性ポリマーが撚られてなっていてもよい。
(21)上記(19)または(20)において、前記圧電性ポリマーは、ポリ乳酸を含んでいてもよい。
本発明によれば、簡素な方法により、薬剤等の使用よりも安全性の高い、動物の体表面の菌の増殖を抑制する方法、および人間を除いた動物の体表面の白癬菌治療の方法を実現できる。
また、本発明によれば、薬剤等よりも安全性の高く、体表面の菌の増殖を抑制が可能な、動物用の衣類を実現できる。
図1(A)は、第1の実施形態に係る動物用の衣類101の外観図であり、図1(B)は、動物用の衣類101を犬201に装着した状態を示す外観図である。 図2(A)は、布100の平面概略図であり、図2(B)は、各糸の間で生じる電場を示す図である。 図3(A)は、圧電糸1の構成を示す一部分解図であり、図3(B)は、圧電糸2の構成を示す一部分解図である。 図4は、圧電フィルム10の平面図である。 図5(A)および図5(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、圧電フィルム10の変形と、の関係を示す図である。 図6(A)は、外力が係った時の圧電糸1を示す図であり、図6(B)は、外力が係った時の圧電糸2を示す図である。 図7(A)は、第2の実施形態に係る動物用の衣類102の外観図であり、図7(B)は動物用の衣類102を猫202に装着した状態を示す外観図である。 図8(A)は、第3の実施形態に係る動物用の衣類103の外観図であり、図8(B)は動物用の衣類103を犬201に装着した状態を示す外観図である。 図9(A)は、第4の実施形態に係る布100Aの平面概略図であり、図9(B)は、各糸の間で生じる電場を示す図である。 図10(A)は、圧電糸31の構成を示す一部分解図であり、図10(B)は、圧電糸32の構成を示す一部分解図である。 図11(A)は、圧電糸33の構成を示す一部分解図であり、図11(B)は、圧電糸34の構成を示す一部分解図である。 図12は、圧電糸33における圧電フィルム10の隙間を誇張して示した図である。 図13は、圧電糸35の構成を示す一部分解図である。 図14は、圧電糸36の構成を示す図である。
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
《第1の実施形態》
図1(A)は、第1の実施形態に係る動物用の衣類101の裏地部分を示す図であり、図1(B)は、動物用の衣類101を犬201に装着した状態を示す外観図である。図1(A)では、布100をハッチングで示している。
衣類101は、圧電体を含んだ布100を備える。本実施形態に係る衣類101は、動物用の衣類であって、例えば犬用の服である。
衣類101は、図1(A)および図1(B)に示すように、裏地の略全体に布100が用いられており、犬201(動物)に装着される。そのため、装着したときに犬の皮膚と対向するように布100が配置されている。なお、衣類101では、布100が裏地の一部に設けられていてもよい。
「動物」とは、例えば愛玩動物、動物園等で飼育される動物、家畜として飼育される動物等を指す。本発明における「動物」は、例えば、人間以外の哺乳類(犬、猫、ハムスター、リス、ウサギ、鹿、羊、山羊、馬、牛、豚、象、キリン、猿、チンパンジー等)、爬虫類(ワニ、トカゲ、イグアナ、蛇、亀等)、鳥類(鳩、インコ、オウム、九官鳥、鷲、鷹、梟等)等である。
また、本発明における「衣類」とは、動物が身に付ける物品全般を指す。本発明における「衣類」には、例えば一般的な衣服(服、シャツ、帽子、頭巾、ズボン、パンツ、靴下、靴、マフラー、ストール、スカーフ、手袋、マント、水着、雨具等)だけでなく、治療の際に用いられる衛生材料(包帯、ガーゼ、絆創膏、パッド、テープ、サポーター、マスク)等も含まれる。
また、本発明における「装着」とは、身に付ける行為全般を指す。本発明における「装着」には、例えば一般的な衣服を身に纏う(着る、履く、被る、羽織る、巻き付ける、留める等)行為だけでなく、衛生材料を身に付ける行為(貼る、巻き付ける、留める、縛る等)等も含まれる。
次に、衣類101の裏地に用いられる布100について、図を参照して説明する。図2(A)は、布100の平面概略図であり、図2(B)は、各糸の間で生じる電場を示す図である。
布100は、圧電体からなる圧電糸1と、圧電体からなる圧電糸2と、普通糸3と、が織り込まれてなる。普通糸3は、圧電体が設けられていない糸であり、誘電体に相当する。
図2(B)に示すように、圧電糸1、圧電糸2、および普通糸3は、並列して配置されている。圧電糸1と圧電糸2は、誘電体に相当する普通糸3を介して、所定の距離だけ離間して配置されている。
後述するように、圧電糸1は軸方向に引っ張られると、表面に負の電荷が生じる。また、後述するように、圧電糸2は軸方向に引っ張られると、表面に正の電荷が生じる。
そのため、これら糸に外力が係った場合、正の電荷を発生する圧電糸2と負の電荷を発生する圧電糸1の間に電場が生じる。圧電糸1と圧電糸2とが近接すると、近接する部分は同電位になろうとする。この同電位部分(圧電糸1と圧電糸2とが近接する部分)の電位を0Vとすれば、表面に負の電荷を発生する圧電糸1では糸の芯に相当する部分が正の電荷となる。逆に、圧電糸2では、糸の芯に相当する部分が負の電荷となる。圧電糸1の周りの空間では糸の芯から外側へ向かう電場が形成され、圧電糸2の周りの空間では糸の外側から芯に向かう電場が形成される。これらの電場が結合した結果、圧電糸1と圧電糸2との間には、図2(B)中の白矢印で示す電場が生じる。すなわち、布100は、電場を生じる布として機能する。
圧電糸1、圧電糸2、および普通糸3は、極めて近接した状態で配置されているため、距離はほぼ0である。電場の強度は、E=V/dで表されるように、電荷を生じる物質間の距離に反比例して大きくなるため、布100が生じる電場の強度は、非常に大きな値となる。
次に、圧電糸1および圧電糸2の構造について、図を参照して説明する。図3(A)は、圧電糸1の構成を示す一部分解図であり、図3(B)は、圧電糸2の構成を示す一部分解図である。図4は、圧電フィルム10の平面図である。
圧電糸1および圧電糸2は、芯糸11に圧電フィルム10が巻かれてなる。圧電フィルム10は、本発明における「圧電体」の一例である。芯糸11は、綿、絹、または一般的な合成繊維等の中から適宜選択される。芯糸11は、導電性を備えた導電糸であってもよい。芯糸11を導電糸とした場合、圧電糸の圧電性を検査する際に、圧電糸1(または圧電糸2)の外周の一部に形成した電極と、芯糸11とを用いて圧電糸1(または圧電糸2)に生じる電荷を計測することができる。これにより圧電糸1および圧電糸2に用いられた圧電フィルム10の圧電性能を検査することができる。また、導電糸同士を短絡させることにより、各糸同士に明確に回路が形成され、各糸の表面間に生じる電場は飛躍的に大きくなる。
圧電フィルム10は、例えば圧電性ポリマーからなる。圧電フィルムは、焦電性を有するものと、焦電性を有していないものがある。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、焦電性を有しており、温度変化によっても電荷が発生する。また、ポリ乳酸(PLA)は、焦電性を有していない圧電フィルムである。ポリ乳酸は、一軸延伸されることで圧電性が生じる。ポリ乳酸には、L体モノマーが重合したPLLAと、D体モノマーが重合したPDLAと、がある。
ポリ乳酸のようなキラル高分子は、主鎖が螺旋構造を有する。キラル高分子は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を有する。一軸延伸されたポリ乳酸からなる圧電フィルム10は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸および第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14およびd25のテンソル成分を有する。したがって、ポリ乳酸は、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に、電荷を発生する。
図5(A)および図5(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、圧電フィルム10の変形と、の関係を示す図である。図6(A)は、外力が係った時の圧電糸1を示す図であり、図6(B)は、外力が係った時の圧電糸2を示す図である。
図5(A)に示すように、圧電フィルム10は、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びると、紙面の裏側から表側に向く方向に電場を生じる。すなわち、圧電フィルム10は、紙面表側では、負の電荷が発生する。圧電フィルム10は、図5(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も、電荷を発生するが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電場を生じる。すなわち、圧電フィルム10は、紙面表側では、正の電荷が発生する。
ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDF等の他の圧電性ポリマーまたは圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5〜30pC/N程度であり、高分子の中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
圧電フィルム10は、上記の様な一軸延伸されたポリ乳酸のシートを、例えば幅0.5〜2mm程度に切り取られることにより生成される。圧電フィルム10は、図4に示すように、長軸方向と延伸方向900が一致している。
図3(A)に示すように、圧電糸1は、圧電フィルム10が芯糸11に対して左旋回して撚られた左旋回糸(以下、S糸と称する。)である。延伸方向900は、圧電糸1の軸方向に対して、左45度に傾いた状態となる。そのため、図6(A)に示すように、圧電糸1に外力が係ると、圧電フィルム10は、図5(A)に示した状態のようになり、表面に負の電荷を生じる。これにより、圧電糸1は、外力が係った場合に、表面に負の電荷を生じる。
また、図3(B)に示すように、圧電糸2は、圧電フィルム10が芯糸11に対して右旋回して撚られた右旋回糸(以下、Z糸と称する。)である。延伸方向900は、圧電糸2の軸方向に対して、右45度に傾いた状態となる。そのため、図6(B)に示すように、圧電糸2に外力が係ると、圧電フィルム10は、図5(B)に示した状態のようになり、表面に正の電荷を生じる。これにより、圧電糸2は、外力が係った場合に、表面に負の電荷を生じる。
従来から、電場により菌の増殖を抑制することができる旨が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御−科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。或いは、電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路や、局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。電場もしくは電流によって水分中に含まれる酸素が活性酸素種に変化する場合がある、または、電場もしくは電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある。これらのラジカル類を含む活性酸素種の作用により菌が死滅する、または弱体化する。また、上記理由が複合して抗菌効果(菌の増殖を抑制する効果)・殺菌効果を生じている場合もある。したがって、布100は、自身が発生する電場とその強度の変化によって、抗菌効果を発揮すると考えられる。なお、本実施形態で言う菌とは、細菌、真菌、またはダニやノミ等の微生物を含む。
本実施形態に係る衣類101は、次のような効果を奏する。
(a)本実施形態に係る布100は、圧電により電場を生じさせるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。また、圧電体の寿命は、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、薬剤よりもアレルギー反応が生じるおそれは極めて低い。また、布100は、自身を構成する圧電糸1および圧電糸2によって、布単体で電場を生じさせる。そのため、布100に移ってくる菌に対して直接的に抗菌作用・抗カビ作用を発揮する。あるいは、布100は、汗等の水分を介して、動物等の所定の電位を有する物に近接した場合に電流を流す。この電流によっても、直接的に抗菌効果または殺菌効果を発揮する場合がある。あるいは、電流や電圧の作用により水分に含まれる酸素が変化したラジカル種、さらに繊維中に含まれる添加材との相互作用や触媒作用によって生じたラジカル種やその他の抗菌性化学種(アミン誘導体等)によって、間接的に抗菌効果または殺菌効果を発揮する場合がある。生じるラジカル種としては、スーパーオキシドアニオンラジカル(活性酸素)やヒドロキシラジカル等が考えられる。また、電場もしくは電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある。これらのラジカル類を含む活性酸素種の作用により菌が死滅する、または弱体化する。また、上記の理由が複合して抗菌効果(菌の増殖を抑制する効果)・殺菌効果を生じている場合もある。後述するように、衣類101は、白癬菌等による皮膚病に罹患した動物の治療用の衣類として利用できる。
また、本実施形態に係る衣類101を動物に装着することで、次のような効果を奏する。
(b)布100を構成する圧電糸1および圧電糸2は、動物の皮膚の電位(グランド電位を含む。)に近接した場合に、電場を生じさせる。本実施形態では、衣類101を動物に装着したときに、動物の皮膚の少なくとも一部に対向するように布100が近接して配置されるため、布100(圧電糸1および圧電糸2)に外力が加えられると、動物の皮膚と布100との間に電場が発生する。したがって、衣類101を動物に装着するだけで、布100と対向する動物の体表面(皮膚および体毛)の悪性菌(細菌)の増殖が抑制され、体表面や体毛での菌の増殖に起因した悪臭の発生も抑制できる。
(c)同様に、衣類101を動物に装着するだけで、布100と対向する動物の皮膚の白癬菌等(真菌)の増殖が抑制される。すなわち、本実施形態に係る衣類101を装着することで、白癬菌等による皮膚病の治癒が促される。
また、動物は絶えず動き回るため、布100(圧電糸1および圧電糸2)には何度も外力が加わり、動物の皮膚と布100との間に電場が発生する。したがって、本実施形態で示したように、衣類101を動物に装着することによる体表面の抗菌効果・防臭効果は高い。
また、衣類101を動物に装着したときに、布100と対向する部分に体毛が無いほうが、動物の皮膚と布100とが密着しやすくなるため、上述した抗菌効果・抗カビ効果が高まると考えられる。動物の皮膚と布100とが密着していると、動物の皮膚と布100との間の距離が短くなるため、動物の皮膚と布100とが対向する部分の電場の強度が、非常に大きな値となる。したがって、白癬菌等による皮膚病を発症した部分周辺の体毛を剃ることで、白癬菌等による皮膚病の治療効果は高まると考えられる。
なお、多くの菌は、負の電荷を有する。そのため、圧電糸2は、外力が加わったときに発生する正の電荷により、多くの菌を吸着することができる。また、圧電糸2のみを織り込んだ布を衣類に使用することで、負の電荷を有する菌を不活化することもできる。
なお、本実施形態では、圧電体の例として、圧電フィルムを示したが、圧電体は、例えば糸としてノズルから吐出されて延伸されたもの(断面が略円形状の圧電糸、或いは異型断面形状の圧電糸)であってもよい。例えば、ポリ乳酸(PLLA)圧電糸は、溶融紡糸、高延伸処理、または(結晶化のための)熱処理を通じて作成されうる。このような、PLLA圧電糸(フィラメント)を複数撚ってなる糸(マルチフィラメント糸)を構成してもよい。このようなマルチフィラメント糸に張力を掛けた場合にも、S糸では表面に負の電荷が発生し、Z糸では表面に正の電荷が発生する。このような糸では、芯糸を用いず、単に撚糸とすることができる。このような糸は低コストで製造することができる。マルチフィラメント糸のフィラメント数は、糸の用途を鑑みて設定される。また、撚り数についても適宜設定される。複数のフィラメントの中に部分的に圧電体でないフィラメントが含まれていてもよい。また、それぞれのフィラメントの太さも一様でなくてもよい。複数のフィラメントの太さを一様としないことにより、糸の断面に生じる電位分布に偏りが生じ、対称性が崩されるため、S糸とZ糸との間の電場回路が形成されやすくなる。
また、本実施形態では、圧電フィルム10が芯糸11に撚られてなる糸の例を示したが、S糸およびZ糸いずれの場合も、芯糸11は必ずしも必要ではない。芯糸11が無くても、圧電フィルム10を螺旋状に旋回して圧電糸(旋回糸)とすることは可能である。芯糸11が無い場合には、旋回糸は、中空糸となり、保温能力が向上する。また、旋回糸そのものに接着剤を含侵させると強度を増すことができる。断面が円形状の圧電糸を芯糸無しで撚り合わせた撚糸であっても構わない。このような糸は低コストで作製が可能である。
また、圧電糸は、エネルギーが加えられた際に電荷が発生するものであればよく、例えば上述のPVDFなども有用である。PVDF等の焦電性を有する圧電体は、動物の体表面の熱エネルギーによって表面に電荷が生じる。これにより、PVDF等の焦電性を有する圧電体は、抗菌効果を発揮する。すなわち、本発明の圧電糸は、外力が加えられた時に電荷を生じる圧電体であれば、どの様な圧電体であってもよい。
さらに、圧電糸の製造方法としては、あらゆる公知の方法を、採用してもよい。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、または圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。
なお、以上に示した各実施形態では、布100が、同じポリ乳酸(例えばPLLA)からなるS糸とZ糸とを組み合わせてなる例を示したが、例えばPLLAからなるS糸と、PDLAからなるS糸を組み合わせる場合にも、同じ効果を発揮する。また、PLLAからなるZ糸と、PDLAからなるZ糸を組み合わせる場合にも、同じ効果を発揮する。
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なる動物用の衣類の例を示す。
図7(A)は、第2の実施形態に係る動物用の衣類102の外観図であり、図7(B)は動物用の衣類102を猫202に装着した状態を示す外観図である。
衣類102は、圧電体を含んだ布を備える。本実施形態に係る衣類102は、動物用の衣類であって、例えば猫用の服である。
衣類102は、裏地の少なくとも一部に布(第1の実施形態で示した布100)が用いられており、猫(動物)に装着される。そのため、装着したときに猫の皮膚と対向するように布(第1の実施形態で示した布100)が配置されている。
このように衣類を装着する動物が異なっていても、衣類102を動物に装着するだけで、布(第1の実施形態で示した布100)と対向する動物の体表面(皮膚および体毛)の悪性菌(細菌)の増殖が抑制され、体表面や体毛での菌の増殖に起因した悪臭の発生も抑制できる。
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、動物用の衣類が衛生材料である例を示す。
図8(A)は、第3の実施形態に係る動物用の衣類103の外観図であり、図8(B)は動物用の衣類103を犬201に装着した状態を示す外観図である。図8(A)では、布100をハッチングで示している。
衣類103は、圧電体を含んだ布100を備える。本実施形態に係る衣類103は、動物用の衛生材料(医療部材)であって、例えば犬用のサポーターである。
衣類103は、裏地の略全面に布100が用いられており、犬(動物)の足に装着される。そのため、装着したときに犬の皮膚と対向するように布100が配置されている。
このように、本発明における衣類は、衛生材料(包帯、ガーゼ、絆創膏、パッド、テープ、サポーター、マスク)等であってもよい。
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第1の実施形態で示した布とは異なる例を示す。
図9(A)は、第4の実施形態に係る布100Aの平面概略図であり、図9(B)は、各糸の間で生じる電場を示す図である。
図9(B)に示すように、布100Aは、圧電糸1、圧電糸2、および普通糸3が、交差して配置されている。このような構成でも、圧電糸1および圧電糸2が交差する位置において電場が生じる。
なお、以上に示した各実施形態では、圧電糸1、圧電糸2、および普通糸3が織られてなる布の例を示したが、この構成に限定されるものではない。本発明における布は、第1の実施形態での定量試験(抗菌性評価、抗カビ性評価)で使用された試験試料のように、圧電体からなる複数の糸が編まれてなる構成であってもよい。また、圧電体の繊維を織らずに絡み合わせてシート状にした不織布であってもよい。
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第1の実施形態で示した糸とは異なる例を示す。
図10(A)は、圧電糸31の構成を示す一部分解図であり、図10(B)は、圧電糸32の構成を示す一部分解図である。
圧電糸31は、S糸である圧電カバリング糸1Aの上にさらに圧電フィルム10が巻かれてなる。圧電糸32は、Z糸である圧電カバリング糸2Aの上にさらに圧電フィルム10が巻かれてなる。
図10(A)に示すように、圧電糸31は、圧電カバリング糸1Aに対して圧電フィルム10が左旋回してカバーされた左旋回糸(S糸)である。延伸方向900は、圧電糸31の軸方向に対して、左45度に傾いた状態となる。延伸方向900は、圧電カバリング糸1Aの延伸方向900Aと一致している。圧電カバリング糸1A、2Aは芯糸を備えない撚糸であっても良い。また芯糸が導電糸であってもよい。
圧電糸31が軸方向に引っ張られると(外力が係ると)、圧電カバリング糸1Aの表面には負の電荷が生じる。一方、圧電カバリング糸1Aの表面に対向する圧電フィルム10の裏面には、正の電荷が生じる。これら圧電カバリング糸1Aの表面と圧電フィルム10の裏面とが完全に密着したとき、この部分は同電位となる。しかし、糸の伸縮等により偶発的に生じた隙間等において、電位差が定義されたときにこの隙間に電場が生じる。各所の電位差は、糸同士が複雑に絡み合うことにより形成される電場結合回路、或いは水分等で糸の中に偶発的に形成される電流パスで形成される回路により定義される。回路が形成された時、電場の強度は、電荷を生じる物質間の距離に反比例して大きくなるため、圧電カバリング糸1Aの表面と、圧電フィルム10の裏面との間に生じる電場の強度は、極めて高くなる場合がある。すなわち、この構成により、糸自体の抗菌作用・抗カビ作用はさらに高まる。なお、圧電糸31が軸方向に引っ張られると(外力が係ると)、圧電糸31の表面(圧電フィルム10の表面)には、負の電荷が生じる。したがって、表面に正の電荷が生じる糸(後述する圧電糸32)と組み合わせることにより、さらに糸同士の間で電場を生じさせることもできる。
一方、図10(B)に示すように、圧電糸32は、圧電カバリング糸2Aに対して圧電フィルム10右旋回してカバーされた右旋回糸(Z糸)である。延伸方向900は、圧電糸32の軸方向に対して、右45度に傾いた状態となる。延伸方向900は、圧電カバリング糸2Aの延伸方向900Aと一致している。
圧電糸32が軸方向に引っ張られると(外力が係ると)、圧電カバリング糸2Aの表面(圧電フィルム10の表面)には正の電荷が生じる。一方、圧電カバリング糸2Aの表面に対向する圧電フィルム10の裏面には、負の電荷が生じる。これら圧電カバリング糸2Aの表面と圧電フィルム10の裏面とが完全に密着したとき、この部分は同電位となる。しかし、糸の伸縮等により偶発的に生じた隙間等において、電位差が定義されたときにこの隙間に電場が生じる。各所の電位差は、糸同士が複雑に絡み合うことにより形成される電場結合回路、或いは水分等で糸の中に偶発的に形成される電流パスで形成される回路により定義される。回路が形成された時、電場の強度は、電荷を生じる物質間の距離に反比例して大きくなるため、圧電カバリング糸2Aの表面と、圧電フィルム10の裏面との間に生じる電場の強度は、極めて高くなる場合がある。すなわち、この構成により、圧電糸31の場合と同様に、糸自体の抗菌作用・抗カビ作用はさらに高まる。なお、圧電糸32が軸方向に引っ張られると(外力が係ると)、圧電糸32の表面(圧電フィルム10Aの表面)には、正の電荷が生じる。したがって、圧電糸31のように表面に負の電荷が生じる糸と組み合わせることにより、糸同士の間で電場を生じさせることもできる。
また、本発明における糸は、次に示すような構成であってもよい。図11(A)は、圧電糸33の構成を示す一部分解図であり、図11(B)は、圧電糸34の構成を示す一部分解図である。
圧電糸33は、圧電カバリング糸1Aの上に圧電フィルム10が巻かれてなる。圧電糸34は、圧電カバリング糸2Aに圧電フィルム10が巻かれてなる。
図11(A)に示すように、圧電糸33は、圧電カバリング糸1Aに対して圧電フィルム10が右旋回してカバーされた右旋回糸(Z糸)である。延伸方向900は、圧電糸33の軸方向に対して、右45度に傾いた状態となる。延伸方向900は、圧電カバリング糸1Aの延伸方向900Aと異なっている。
また、図11(B)に示すように、圧電糸34は、圧電カバリング糸2Aに対して圧電フィルム10が左旋回してカバーされた左旋回糸(S糸)である。延伸方向900は、圧電糸34の軸方向に対して、左45度に傾いた状態となる。延伸方向900は、圧電カバリング糸2Aの延伸方向900Aと異なっている。
図12は、圧電糸33における圧電フィルム10の隙間を誇張して示した図である。圧電糸33は、圧電フィルム10をカバリング糸に巻く場合、ある程度の隙間Dが生じる。この隙間Dにより、圧電糸33が軸方向に引っ張られた場合、圧電カバリング糸1Aの表面と、圧電フィルム10の表面との間に電場が生じ、回路が形成される。したがって、この構成により、糸自体の抗菌作用・抗カビ作用はさらに高まる。圧電糸34も同様である。
なお、圧電糸33において、圧電カバリング糸1Aまたは圧電フィルム10のいずれか一方にPDLAを用いた場合、圧電カバリング糸1Aの表面に生じる電荷と圧電フィルム10の裏面に生じる電荷の極性が異なるため、圧電糸31と同様の構成となり、圧電カバリング糸1Aの表面と、圧電フィルム10の裏面との間に強い電場が生じる。圧電糸34において、圧電カバリング糸2Aまたは圧電フィルム10のいずれか一方にPDLAを用いた場合も同様である。
さらに、本発明における糸は、次に示すような構成であってもよい。図13は、圧電糸35の構成を示す一部分解図である。
圧電糸35は、圧電糸1および圧電糸2が互いに左旋回して撚られた糸(S糸)である。圧電糸35は、表面に負の電荷を生じる圧電糸1と、表面に正の電荷を生じる圧電糸2とが交差してなるため、糸単体で電場を生じさせることができる。上述したように、圧電糸1の表面と圧電糸2の表面とにそれぞれ生じた電位は、圧電糸1の表面と圧電糸2の表面とが近接する部分で同電位になろうとする。それに応じて、糸の内部の電位が変化して、糸の表面と内部との電位差を保とうとする。それぞれの糸において、糸の内部と表面との間に形成される電場が空気中に漏れ出て、結合し、圧電糸1と圧電糸2とが近接する部分には強い電場が形成される。撚糸の構造は複雑であり、圧電糸1と圧電糸2とが近接する部分は一様ではない。また、圧電糸1および圧電糸2に張力が加わると、圧電糸1と圧電糸2とが近接する部分も変化する。これにより、それぞれの部分での電場の強度には変化があり、対称形が崩された電場回路が生じることとなる。なお、圧電糸1および圧電糸2が互いに右旋回して撚られた糸(Z糸)も、表面に負の電荷を生じる圧電糸1と、表面に正の電荷を生じる圧電糸2とが交差してなるため、糸単体で電場を生じさせることができる。圧電糸1の撚り数、圧電糸2の撚り数、またはこれらの糸を撚り合わせた圧電にと35の撚り数は、抗菌効果を鑑みて決定される。これまでに示してきた応用例の全ては、圧電糸35を用いて構成することができる。なお、圧電糸1および圧電糸2が互いに右旋回して撚られた糸(Z糸)も、表面に負の電荷を生じる圧電糸1と、表面に正の電荷を生じる圧電糸2とが交差してなるため、糸単体で電場を生じさせることができる。
また、他にも、S糸(またはZ糸)の側面に普通糸を撚り、さらに側面にZ糸(またはS糸)を撚った、3重のカバリング糸であっても、糸単体で電場を生じさせることができる。
また、本発明における糸は、図14に示す圧電糸36のように、普通糸の表面に右旋回させる圧電糸1と左旋回させる圧電糸2とを同時に構成する組紐からなる糸(第3の糸)であってもよい。図14は、圧電糸36の構成を示す図である。このような構成であっても、図14に示すように、圧電糸1と圧電糸2が交差する位置において電場が生じるため、糸単体で電場を生じさせることができる。
なお、表面に負の電荷を生じる糸としては、PLLAを用いたS糸の他にも、PDLAを用いたZ糸も考えられる。また、表面に正の電荷を生じる糸としては、PLLAを用いたZ糸の他にも、PDLAを用いたS糸も考えられる。したがって、例えば、図14に示した構成において、PLLAを用いたS糸と、PDLAを用いたZ糸を互いに左旋回して撚られた糸(S糸)または右旋回して撚られた糸(Z糸)からなる圧電糸も、糸単体で電場を生じさせることができる。
次に、圧電体からなる糸の抗菌効果を説明する。本発明の発明者は、圧電体からなる糸が織り込まれた布の菌抑制効果を評価するため、以下の(1)(2)に示す定量試験を行った。
(1)圧電体からなる糸が織り込まれた布の抗菌性評価
a)試験方法 : 菌液吸収法(JIS L1902)
b)試験菌 : 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)
c)接種菌液濃度: 1.4×105(CFU/mL)
d)標準布 :綿糸で織られた布、および綿糸で編まれた布
e)試験試料(抗菌加工試料): S糸(圧電糸1)とZ糸(圧電糸2)とを左旋回して撚られたS糸(圧電糸35)で編まれた布。
[計算式]
・増殖値 : G=Mb−Ma
・抗菌活性値: A=(Mb−Ma)−(Mc−Mo)
通常の抗菌加工製品は、抗菌活性値A≧2.0〜2.2とされる。
・Ma :試験菌接種直後における標準布の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Mb :18〜24時間培養後における標準布の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Mo :試験菌接種直後における試験試料(抗菌加工試料)の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Mc :18〜24時間培養後における試験試料(抗菌加工試料)の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
Figure 0006950287
表1から明らかなように、試験試料(圧電体からなる糸が織り込まれた布)は、細菌に対して、標準布に比べて高い抗菌作用を有する。また、試験試料を静置した状態に比べて、試験試料を振動させているほうが、抗菌作用が高いことが分かる。特に、試験試料を振動させて電場が生じている場合には、試験菌(細菌)接種から18時間後に正菌がほとんど観測されず、高い抗菌作用を発揮する。
(2)圧電体からなる糸が織り込まれた布の抗カビ性評価
a)試験方法 : 抗かび性定量試験法(一般社団法人繊維評価技術評議会が定める方法)
b)試験菌 : クロコウジカビ(Aspergillus niger NBRC105649)
c)接種菌液濃度: 1.1×105(CFU/mL)
d)標準布 :綿糸で織られた布、および綿糸で編まれた布
e)試験試料(抗菌加工試料): S糸(圧電糸1)とZ糸(圧電糸2)とを左旋回して撚られたS糸(圧電糸35)で編まれた布。
[計算式]
・発育値 : F=Fb−Fa
・抗かび活性値: FS=(Fb−Fa)−(Fc−Fo)
・Fa :試験菌接種直後における標準布の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Fb :42時間培養後における標準布の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Fo :試験菌接種直後における試験試料(抗菌加工試料)の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
・Fc :42時間培養後における試験試料(抗菌加工試料)の3検体の生菌数(またはATP量)の算術平均常用対数
Figure 0006950287
表2から明らかなように、試験試料(圧電体からなる糸が織り込まれた布)は、真菌(カビ等)に対しても、標準布に比べて高い抗菌作用を有する。また、試験試料を静置した状態に比べて、試験試料を振動させているほうが、抗カビ作用が高いことが分かる。すなわち、試験試料を振動させて電場を生じさせている場合に、高い抗カビ作用を発揮する。
以上の結果から、圧電体からなる糸が織り込まれた布100は抗菌性および抗カビ性を有することが明らかとなった。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
D…隙間
1,2…圧電糸
1A,2A…圧電カバリング糸
3…普通糸
10…圧電フィルム
11…芯糸
31,32,33,33A,34,35,36…圧電糸
100,100A…布
101,102,103…衣類
201…犬(動物)
202…猫(動物)
900,900A…延伸方向
910A…第1対角線
910B…第2対角線

Claims (7)

  1. 圧電体を含んだ布を備え、
    前記圧電体に外力が加えられた時に発生する電荷によって菌の増殖を抑制
    前記布は、前記圧電体からなる複数の糸が織り込まれてなり、
    前記複数の糸は、第1の圧電体からなる第1の糸と、第2の圧電体からなる第2の糸と、を有し、
    前記布は、前記第1の糸と、前記第2の糸と、が織り込まれてなる布であり、
    前記第1の糸は、外力が加えられた時に正の電荷を発生し、
    前記第2の糸は、外力が加えられた時に負の電荷を発生する、動物用の衣類。
  2. 装着したときに動物の皮膚と対向するように前記布が配置されている、請求項1に記載の動物用の衣類。
  3. 前記第1の糸と、前記第2の糸と、は並列して配置されている、
    請求項1または2に記載の動物用の衣類。
  4. 前記第1の糸と、前記第2の糸と、は交差して配置されている、
    請求項1または2に記載の動物用の衣類。
  5. 前記複数の糸は、前記第1の糸と、前記第2の糸とが、組紐として組まれてなる第3の糸を有する、
    請求項1または2のいずれかに記載の動物用の衣類。
  6. 前記圧電体は、圧電性ポリマーであり、
    前記糸は、前記圧電性ポリマーが撚られてなる、請求項1から5のいずれかに記載の動物用の衣類。
  7. 前記圧電性ポリマーは、ポリ乳酸を含む、請求項に記載の動物用の衣類。
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