JP6947424B2 - 散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置並びに散乱線強度算出方法 - Google Patents

散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置並びに散乱線強度算出方法 Download PDF

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Description

本発明は、X線撮影で得られる画像に含まれる散乱線成分の強度を算出する散乱線強度算出装置及び散乱線強度算出方法に関する。
X線撮影で得られる画像は、被写体を透過した直接放射線に起因する直接線成分と、直接線成分以外の成分とを含む。直接線成分以外の成分としては、散乱線に起因する散乱線成分と、X線検出素子の光拡散およびX線撮影装置の系から発生する電気的ノイズ等に起因する成分とが存在するが、散乱線成分の方が支配的である。散乱線としては、被写体からの散乱線やフラットパネルディテクタの前面に設置されるカーボンからの散乱線などがある。
特に被写体のX線減弱が大きくなる箇所に相当するピクセル位置では、ディテクタに取り込まれるX 線の大半が散乱放射線となる場合もあり、線形性が大きく崩れ、アーチファクトが現れる要因となる。そして、これがX線撮影で得られる画像の画質の劣化を引き起こし、それが誤診の原因となったり、本来治療すべき病変を見逃すことになったりする場合がある。したがって、X線撮影で得られる画像の画質の劣化を抑えるためには、X線撮影で得られる画像から散乱線成分を低減した画像を導出する必要がある。
佐久間俊光、外7名、「鉛ディスク法による散乱線測定」、東北大学医療技術短期大学部紀要、東北大学医療技術短期大学部、1995年、第4巻、第2号、p.119―124
非特許文献1では、鉛ディスク法による散乱線測定が提案されている。しかしながら、任意の異なる生体を被写体とした場合でも適用可能な具体的な散乱線強度の算出手法については何ら開示されていない。
本発明は、上記の状況に鑑み、任意の異なる生体を被写体とした場合でも適用可能な散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置並びに散乱線強度算出方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために本発明の一局面に係る散乱線強度算出装置においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶する記憶部と、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出部と、前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、前記各領域において、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線それぞれの線上で前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比が最大になるピクセルを探し出し、前記探し出したピクセルの散乱放射線強度を4つの前記特定のピクセル位置の前記パラメータを用いて算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記探し出したピクセルの散乱放射線強度から差し引いたときの強度差を算出し、前記各領域のうち前記第1方向に沿って並ぶ複数の領域において、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセルの前記強度差に基づき、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの強度差を算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度から差し引いて、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度を修正する修正部と、を備える構成(第1の構成)とする。
上記目的を達成するために本発明の他の局面に係る散乱線強度算出装置においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶する記憶部と、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出部と、前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線の各間に位置するピクセルについて、前記第2方向に沿った直線上のピクセルにおける散乱放射線強度の変化量が前記第2方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正し、さらに、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、前記第2方向に沿った直線を複数設定し、複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する修正部と、を備える構成(第2の構成)とする。
上記目的を達成するために本発明の更に他の局面に係る散乱線強度算出装置においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の各ピクセル位置における1フレーム分の散乱放射線強度のデータを取得する取得部と、前記データを修正する修正部と、を備え、前記修正部は、前記データでの各ピクセル位置に関して第1方向及び第2方向を規定し、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、前記第2方向に沿った直線を複数設定し、複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する構成(第3の構成)である。
上記目的を達成するために本発明に係る散乱線補正装置は、上記第1〜第3いずれかの構成の散乱線強度算出装置と、前記算出部の算出結果及び前記修正部の修正結果に基づいて前記被写体のX線撮影で得られる測定画像に対して散乱線補正を行う補正部と、を備える構成(第4の構成)である。
上記目的を達成するために本発明の一局面に係る散乱線強度算出方法においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータ、及び、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶媒体から読み出す読出ステップと、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記読出ステップで読み出された前記パラメータによって定まる前記曲線式を用いて算出する算出ステップと、前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、前記各領域において、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線それぞれの線上で前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比が最大になるピクセルを探し出し、前記探し出したピクセルの散乱放射線強度を4つの前記特定のピクセル位置の前記パラメータを用いて算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記探し出したピクセルの散乱放射線強度から差し引いたときの強度差を算出し、前記各領域のうち前記第1方向に沿って並ぶ複数の領域において、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセルの前記強度差に基づき、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの強度差を算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度から差し引いて、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度を修正する修正ステップと、を備える構成(第5の構成)とする。
上記目的を達成するために本発明の他の局面に係る散乱線強度算出方法においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶媒体から読み出す読出ステップと、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出ステップと、前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線の各間に位置するピクセルについて、前記第2方向に沿った直線上のピクセルにおける散乱放射線強度の変化量が前記第2方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正し、さらに、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、前記第2方向に沿った直線を複数設定し、複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する修正ステップと、を備える構成(第6の構成)とする。
上記目的を達成するために本発明の更に他の局面に係る散乱線強度算出方法においては、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の各ピクセル位置における1フレーム分の散乱放射線強度のデータを取得する取得ステップと、前記データを修正する修正ステップと、を備え、前記修正ステップにおいて、前記データでの各ピクセル位置に関して第1方向及び第2方向を規定し、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、前記第2方向に沿った直線を複数設定し、複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する構成(第7の構成)とする。
本発明によると、任意の異なる生体を被写体とした場合でも適用可能な散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置並びに散乱線強度算出方法を実現することができる。
鉛円板、X線源、及び被写体の位置関係を示す図 鉛円板の直径を変えた場合の全放射線の強度と、鉛円板がない場合の散乱放射線の強度とを示すグラフ 各近似方法で求めた外挿データの誤差を示す表 ディテクタ上の特定のピクセル位置の一例を示す図 10個のプロファイルの位置を示す図 1ブロックのピクセルの座標と強度に関する模式図 測定画像上の特定のピクセル位置の一例を示す図 鉛円板の直径を変えた場合の全放射線の強度と、鉛円板がない場合の散乱放射線の強度とを示すグラフ アキシャル像を示す図 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 着目ピクセル領域を示す測定画像および着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ ディテクタ上の特定のピクセル位置の一例を示す図 散乱放射線の強度及びディテクタ上の特定のピクセル位置の一例を示す図 全放射線の強度と散乱放射線の強度とを示すグラフ 着目ピクセル領域におけるパラメータの計算結果を示すグラフ 縦方向のピクセルラインを示す図 強度差を示すグラフ 散乱放射線の強度を表すイメージ図 全放射線の強度と散乱放射線の強度とを示すグラフ 散乱放射線の強度を示すグラフ 散乱放射線の強度を示すグラフ 散乱放射線の強度を示すグラフ 散乱放射線の強度を表すイメージ図 散乱放射線の強度を示すグラフ 発明の一実施形態に係る散乱線補正装置の構成を示す図
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置を開発するために検討及び評価した結果について説明し、最後に本発明に係る散乱線強度算出装置及びそれを備えた散乱線補正装置について説明する。なお、本実施形態では、ディテクタの各画素でフレーム毎に計数される値である画素値を強度と呼ぶことにする。強度には、直接放射線が寄与する分と、散乱放射線が寄与する分とが含まれている。本実施形態では、前者を直接放射線による強度又は直接放射線の強度と呼び、後者を散乱放射線による強度又は散乱放射線の強度と呼ぶことにする。
<1.ディテクタの各ピクセルで取り込まれる散乱放射線の計算>
<1−1.鉛円板の位置に対応するピクセルにおける散乱放射線の強度>
ディテクタの有感領域での散乱放射線の強度は実験的に求めることができる。その方法としては、直径の異なる数種類の鉛円板1を図1に示すようにX線源2と被写体3の間に設置してCT撮影を行い、鉛円板1の中心位置に対応するディテクタ4のピクセル位置の強度を比較して外挿する。
鉛円板は十分な厚さがあればX線をほぼ遮断できると考えてよい。したがって、鉛円板の中心位置に対応するディテクタのピクセル位置の強度は、直接放射線成分を含まず散乱放射線のみが反映されていると考えることができる。この鉛円板の中心位置に対応するディテクタのピクセル位置の強度に反映される散乱放射線は、鉛円板の外側を通過したX線が被写体に照射した場合に生成する散乱放射線であると考えられる。
しかし、鉛円板に照射するX線は吸収されて被写体に照射しないので、その分散乱放射線が減少することになる。そして、その減少分は鉛円板の直径が小さくなればなるほど少なくなる。つまり、鉛円板の直径が小さいほど散乱放射線が多くなる。そして、鉛円板の直径と散乱放射線との関係を外挿して直径が0のときの散乱放射線の強度(外挿データ)を求めると、鉛円板を設置せずに通常のCT撮影を行った場合にそのピクセルで反映される散乱放射線の強度であるとみなすことができる。
<1−2.外挿データに関する検討>
上記1−1.で説明した外挿データを求める具体的な方法を検討するため、頭部ファントムを模した数学ファントムにX線管から放出されるX線スペクトルのX線束を照射したときのX線の挙動を、モンテカルロ法を用いて計算することによりディテクタの各ピクセルで取り込まれる直接放射線や散乱放射線の数を計算した。ディテクタは蓄積型であるので厳密には異なるが、ピクセルに取り込まれるX線の数と得られる強度とはほぼ比例関係にあると考えることができる。
頭部ファントムは、前歯や臼歯、上顎、下顎、頸椎、軟組織等、形状や構成する組成をできるだけ現実のものに近づけるようにしてジオメトリーを作成した。実際のCT撮影では、患者の余分な被曝を抑えるため、ディテクタの有感領域にのみ直接X線が入射するようX線束をX線管直下において鉛コリメータでカットしているので、モンテカルロ法を用いた計算でも同様にカットした。X線が被写体で散乱せずに取り込まれるべきピクセルで検出された場合は直接放射線とみなし、異なるピクセルで取り込まれた場合は散乱放射線とみなして、直接放射線と散乱放射線をそれぞれ計算した。直接放射線と散乱放射線の和が、実際のCT撮影においてディテクタで検出される放射線に対応する。ここでは、直接放射線と散乱放射線の和を全放射線とする。
X線源と頭部ファントムとの間に設置した鉛円板の直径を2mm、4mm、8mm、12mm、16mm、20mm、24mmと変化させてモンテカルロ法で計算した場合の全放射線の強度から外挿して算出した0mmの場合、すなわち、鉛円板を設置しない場合の散乱放射線の強度と、モンテカルロ法で計算した0mmの場合の散乱放射線の強度とを比較する。
図2は、鉛円板の直径を変えた場合の全放射線の強度と、鉛円板がない場合の散乱放射線の強度とを、正面照射、側面照射、背面照射それぞれにおいて示すグラフである。前者の値から外挿した値を算出するための近似方法として、(I) 軸対称な6次曲線で近似した場合、(II) 軸対称な6次曲線と、直径2mm及び4mmの2点を結ぶ直線との間の平均値で近似した場合、(III)1次式の最小二乗法で近似した場合、の3つのパターンを検討した。
図3は、各照射パターンにおける、各近似方法を用いて得られた鉛円板を設置しない場合の散乱放射線の強度と、モンテカルロ法で計算した0mmの場合の散乱放射線の強度との誤差を示す表である。
全体的に最も安定して誤差が小さいのは近似方法(II)である。したがって、以下の説明では、近似方法(II)で散乱放射線の強度を算出することにした。
しかしながら、近似方法(I)、近似方法(III)、或いは近似方法(I)〜(III)以外の近似方法を採用してよい。なお、近似方法(II)や近似方法(I)のように6次式を用いることで誤差が小さくなるので、6次式を用いた近似を行うことが望ましい。
ディテクタ上の特定のピクセル位置における散乱放射線による強度は上記のようにして求めることができる。以下の説明では、図1において設置する鉛円板の位置を、それに対応するディテクタ上のピクセル位置が図4に示す5×5=25箇所の黒丸部分のいずれかになるように調整して各撮影を行い、得られる実験データから散乱放射線を算出する。
<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>
ディテクタ上において、各ピクセル位置での散乱放射線はピクセル座標が変化してもそれほど急激に変化せず、緩やかに変化する。図5の25箇所の散乱放射線の強度が分かっているので、これが滑らかに変化するように残りのピクセルにおける散乱放射線の強度を計算することが可能である。撮影実験に先立って、計算によりこれを実証したので以下に示す。
上記1−2.と同様にモンテカルロ法を用いて、鉛円板を取り除いたジオメトリーでX線を照射した場合にディテクタの各ピクセルで取り込まれる直接放射線と散乱放射線の数を計算する。このとき、横軸または縦軸方向に平行な1列のピクセル上で取り込まれる散乱放射線の強度のピクセルナンバーに対するプロファイルを考えると、これらは緩やかな曲線を描く。このプロファイルは、その内5点の値が既知であれば、最小二乗法により4次曲線で近似できる。図4に示す25箇所の黒丸部分で考えると、縦方向と横方向で計10個のプロファイルをそれぞれ近似することができる。すると、図5に示す実線上のピクセルにおける散乱放射線の強度は4次曲線での近似により算出することができる。これらの強度から、その他のピクセルにおける散乱放射線の強度を算出することになる。その手順を以下に示す。
ディテクタ上のピクセルは図5に示す実線によって区切られる16個のブロックのいずれかに必ず属するので、その属するブロック内の座標(x,y)のピクセルにおける散乱放射線の強度Bv(x,y)を算出することを考える。この1ブロックのピクセルの座標と強度に関する模式図を図6に示す。
ブロックの角の座標をそれぞれ(x0,y0)、(x1,y0)、(x0,y1)、(x1,y1)とする。すると、ブロックの角4点の強度Bv(x0,y0)、Bv(x1,y0)、Bv(x0,y1)、Bv(x1,y1)および、着目ピクセル(x,y)を通り横軸方向および縦軸方向に平行な直線とブロックの境界位置のピクセルにおける強度Bv(x,y0)、Bv(x1,y)、Bv(x,y1)、Bv(x0,y)は、全て上述した4次曲線での近似により強度を算出することができるピクセルにおける強度であるので、すでに既知である。
ピクセル位置を(x,y0)から(x,y)、 (x,y1)へと移動するとき、Bv(x,y0)、Bv(x,y)、 Bv(x,y1)への強度の変化は、Bv(x0,y0)、Bv(x0,y)、Bv(x0,y1)への強度の変化、および、Bv(x1,y0)、Bv(x1,y)、Bv(x1,y1)への強度の変化の影響を受けることになる。このとき、強度は緩やかに変化するので、強度の比Bv(x,y)/Bv(x0,y)は、Bv(x,y0)/Bv(x0,y0)とBv(x,y1)/Bv(x0,y1)の間の値を緩やかに変化すると考えるのが妥当である。
ここで、y 座標の変化に伴って強度が単調に変化すると仮定すると、強度の比Bv(x,y)/Bv(x0,y)を求めることができ、Bv(x0,y)が既知なので、Bv(x,y)を計算することができる。これをBvs1(x,y) とする。一方、Bv(x,y)/Bv(x1,y)はBv(x,y0)/Bv(x1,y0)とBv(x,y1)/Bv(x1,y1)の間を緩やかに変化すると考えることもできるので、このことからもBv(x,y)を計算することができ、これをBvl1(x,y) とする。一般にBvs1(x,y) とBvl1(x,y)は一致しないので、これをBv(x,y)の仮の値としてBv1(x,y)とした。
Figure 0006947424
しかし、これをブロック内のすべてのピクセルに適用しようとすると、ブロックの境界部分(x= x0およびx= x1 のとき)で強度の不整合が生じる。そこで、x= x0およびx= x1のときのBv(x,y)の値をそれぞれBv00(y), Bv01(y) とする。本来、Bv1(x0,y) はBv00(y)に、Bv1(x1,y) はBv01(y)に一致しなければならないので、x= x0 およびx= x1 でそれぞれ一致するよう以下のようにBv1(x,y) を補正して、その補正した値をBv(x,y)とする。
Figure 0006947424
<2.実験方法>
X線撮影装置は朝日レントゲン工業株式会社製のAUJE SOLIO を使用した。歯科用X線CT装置では、被写体の周りをX線管とディテクタがそれぞれ両端に設置されたアームが360度回転する。フレーム数は510枚、フレームレートは30fpsである。ディテクタの有感領域は156.96mm×159.36mm(654ピクセル×664ピクセル)であり、ディテクタの素子はCsI、厚さは700μmである。焦点からディテクタまでの距離が600mm、焦点から回転中心までの距離が375mmとなる。X線管の管電圧は85kV、管電流は4mAとした。
撮影は、頭部ファントムを最適な位置に設置した場合、横方向に−5mm、−3mm、+3mm、+5mmずらした場合、前後方向に−5mm、+5mmずらした場合、上下方向に−5mm、+5mmずらした場合の9パターン行った。実際はファントムを固定してアームの中心位置および高さを調整することで対応した。
それぞれのパターンについて鉛円板を設置しない通常の撮影、図4に示す25箇所に対応する位置に中心位置がくるように異なる直径の鉛円板をそれぞれ1 つずつ設置した場合の撮影を行った。鉛円板の直径は、2.3mm、4.7mm、8.2mm、11.8mm、15.5mmの5種類である。したがって、撮影は1パターンで5×25+1=126回、全部で9×126=1134 回行った。それぞれの撮影に対して、510枚(フレーム数分)の測定画像のデータがある。
<3.実験結果>
上述した<1.ディテクタの各ピクセルで取り込まれる散乱放射線の計算>で説明した方法に基づいて、各パターン、各鉛円板位置、各フレームの撮影データについて、鉛円板の直径の変化に対する、鉛円板位置に対応するピクセル領域の平均強度をグラフ化して、直径が0の場合の強度を外挿することによって、有感領域内の25箇所の散乱放射線による強度を算出した。これらの内、頭部ファントムを最適な位置に設置したパターンにおいて、図7(i)〜図7(iv)に示すフレームNo. 1(正面照射), 128(側面照射), 256(背面照射), 384(側面照射)の測定画像の4箇所のピクセル領域a〜dについて、鉛円板の直径を横軸、強度を縦軸に取った場合のグラフを図8(a)〜図8(d)に示す。ただし、直径0mmのときの強度は、直径2.3mmから15.5mmのときの5点の強度を用いて外挿により算出した値である。また、図7(i)はcの位置、図7(ii)はdの位置、図7(iii)はaの位置、図7(iv)はbの位置に鉛円板が該当する場合の測定画像を例として示している。なお、暗電流による強度は差し引いている。
図8(a)〜図8(d)に示すグラフでは、被写体の厚みが薄く測定画像の強度が高い箇所では散乱放射線の強度が大きく、被写体が厚い部分では逆に小さくなっており、散乱放射線の特徴が現れている。また、いずれも外挿した0mmのときの強度と撮影で得られた他の強度とは滑らかな曲線を描いており、この方法で妥当な散乱放射線の強度が算出されていると考えてよい。そして、頭部ファントムの位置がずれた他のパターンについても同様にディテクタの有感領域内における散乱放射線の強度を算出することができる。
<4.散乱線補正の効果>
上述した方法で算出した散乱放射線の強度を用いて散乱線補正を行うことによって、CT再構成画像の画質がどの程度向上するのかを確認する必要がある。
そこで、頭部ファントムが最適な位置に設置されているパターンで撮影して得られるデータから、各フレームについて25箇所のピクセル領域の散乱放射線の強度を算出した。そして、フレームごとに、式(2)を用いてディテクタのピクセル全体の散乱放射線の強度を算出して、撮影で得られた測定画像の各ピクセルにおける放射線(直接放射線+散乱放射線)の強度からその散乱放射線の強度を差し引くことによって、散乱線補正を実行した。
そして、これら処理後の測定画像を再構成した三次元CT画像と、特開2015−65993号公報で提案されている散乱線補正を適用した画像とを比較した。その結果を以下に示す。
図9(a)は測定画像を、散乱線補正を行わずに画像再構成した場合の、アキシャル画像を1箇所ピックアップして示したものである。
図9(b)は測定画像に対して、特開2015−65993号公報で提案されている散乱線補正を適用した後に画像再構成した場合の、アキシャル画像を1箇所ピックアップして示したものである。
図9(c)は測定画像に対して、上述した方法で算出した散乱放射線の強度を用いて散乱線補正を行った後に画像再構成した場合の、アキシャル画像を1箇所ピックアップして示したものである。
図9(b)では歯列の内側や歯間に沿った方向や臼歯間にアーチファクトが現れており、図9(a)と比較してそれほど変化がなくあまり画質が改善されていないが、図9(c)ではアーチファクトが解消されている。すなわち、上述した方法で算出した散乱放射線の強度を用いた散乱線補正が有効であることが分かる。
<5.CT撮影における頭部ファントムの異なった位置づけで得られる散乱放射線の強度の割合の曲線近似>
<5−1.近似曲線の算出方法>
上述した散乱線補正を、頭部ファントムの任意の位置づけ、さらには、任意の生体データにも適用できるようにするためには、鉛円板の位置に対応する25箇所のピクセル領域のフレームごとに得られる散乱放射線の強度について、計算式を用いて算出できるようにする必要がある。本節では、頭部ファントムの9種類の位置づけパターンにおいて得られるデータを用いて曲線の計算式を導き、25箇所のピクセル領域のフレームごとのパラメータを算出したので、その方法を以下に示す。なお、以下で述べるピクセルの強度について、暗電流による影響はすでに取り除いているものとする。
曲線の横軸は、被写体を設置しないで撮影を行った場合(このとき得られる測定画像を白画像と呼ぶことにする)に各ピクセルで得られる強度に対する、頭部ファントムを設置して撮影した場合(直接放射線も散乱放射線も含んでいるので、このとき得られる放射線を全放射線と呼ぶことにする。また、鉛円板は設置しない)の強度の比とし、それをXとする。また、曲線の縦軸は、全放射線の強度に対する、上記<3.実験結果>において算出した散乱放射線の強度の比とし、それをYとする。
すると、XとYはともに1より小さい値をもち、被写体が薄い経路を通るときはXが1に近づき、逆に厚い場合は0に近づく。散乱放射線の割合が大きいときはYが1に近づき、小さいときは0に近づく。頭部ファントムのような大きい被写体においては、被写体が厚いと散乱放射線の割合が大きく、薄いと小さくなる傾向がある。以上の傾向に加え、グラフ化した場合のこれらの分布を考慮し、XとYの関係を表す曲線の式を、パラメータaおよびパラメータbを用いた下記の式(3)とした。
Figure 0006947424
前述したように、これを各ピクセル領域の各フレームで得られる9つのデータ分布に対して適用する。式(3)は、両辺に対数をとってYlog=logY、Xlog=logX とすることにより、下記の式(4)に変形でき、YlogをXlogの1 次式で表わすことができる。
Figure 0006947424
このため、最小二乗法を適用することによって、各ピクセル領域のフレームごとに式(3)で近似して、そのパラメータaの値およびパラメータbの値を算出することができる。したがって、Xの値とYの値が式(3)で一意的に決まるので、任意のXの値に対してYの値を求めることができる。すなわち、特定のピクセル領域の特定のフレームにおいて、撮影によって得られる任意の強度に対して散乱放射線による強度を一意的に算出することができる。
<5−2.最小二乗法を用いたパラメータの計算>
撮影した9パターンの頭部ファントムの位置づけに対して得られたデータ群すべてを式(3)で近似して、それぞれについてパラメータaの値およびパラメータbの値を決め、データ群と近似曲線とを比較した。これらの内、特徴的な曲線のグラフについて取り上げ、撮影で得られたデータと曲線の間の誤差を計算したので以下に示す。
図10 〜図15の(a)は、着目したフレームの測定画像の内頭部ファントムの位置づけが最適な位置となっているパターンの測定画像を示し、着目したピクセル領域を四角のマークで示している。
図10 〜図15の(b)は、その着目したフレームの着目したピクセル領域におけるXとYの分布と曲線の近似式をグラフ化したものである。
図10から図12 までは、歯列付近のピクセル領域の曲線近似を表している。図11では、頭部ファントムの位置がずれることで透過X線の経路上の骨の厚さが変化するためX線減弱が大きく変化しており、Xの変化量が大きい。しかし、これらのデータ群の分布は式(3)で表わされる曲線で近似することができ、よく合っていることがグラフからも分かる。その誤差は5%程度以内となっている。誤差の精度は、データ数が増えればさらによくなっていくことが期待される。
図12の着目ピクセル領域は、頭部ファントムの厚みが大きい部分であり、この部分はファントムの位置づけがずれてもX線の透過経路におけるファントムの厚みはほとんど変わらない。このため、XもYも変化量が小さい。したがって、散乱放射線による強度もほとんど変化しない。
図10の(b)は、ちょうど歯列が重なっている部分とその周辺に位置する場合の曲線近似であり、重なり位置となった場合は散乱放射線の割合が非常に高くなる。しかし、この場合でもデータ群は、曲線に沿った形で分布している。
図13〜図14の(b)は、歯列付近から離れたピクセル領域の曲線近似を表している。これらについても、いずれのデータ群も曲線に沿った分布をしており、誤差は歯列付近よりもよい値が得られている。ピクセルライン(直線状に並ぶ複数のピクセルの集合体)に沿った強度の変化が歯列付近よりも緩やかであるため、散乱放射線の割合の変化も少ないと考えられる。
図15の(b)は、ディテクタの端の、頭部ファントムの厚みが非常に薄い領域の曲線近似を表している。これらについても、いずれのデータ群も曲線に沿った分布をしている。
<6.臼歯の重なり部分等、X線減弱が大きい部分の取扱い>
歯列部分、特に歯の重なり部分などX線減弱の大きい部分に対応するディテクタ上のピクセルにおいては、X線減弱が小さい場合よりも散乱放射線による強度が小さい。すると、任意の生体データに適用する場合、実際の投影画像においては、歯の重なり部分が25箇所のピクセル領域の間に位置する場合などは、上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>で求めた4次曲線によるプロファイルでは散乱放射線による強度が実際よりも大きい値で計算される場合がある。そうすると、散乱線補正後の歯列部分の強度が少なくなり、CT再構成画像に少なからず影響を与えるので、散乱放射線の強度を修正する必要がある。この修正方法の一例を以下に示す。
図16に1フレームの投影画像と25箇所の領域が示されている。また、図17には、上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>で計算した、図16に対応する散乱放射線の強度と25箇所のピクセル位置が示されている。歯列部分に相当するのは点7と点12の間、点8と点13の間、点9と点14の間である。図18は図16中の点2、点7、点12、点17、点22を通るピクセルライン上における全放射線の強度と4次曲線から計算した散乱放射線の強度のプロファイルを図示したものである。
図18より、ピクセルNo.200 から300 の間(この部分は点9と点14の間に該当する)で双方の強度がほぼ等しくなっているピクセルがあることが分かる。これは直接放射線が検出されておらず、X線が透過していないことになり、金属などX線減弱係数の大きい物質がなければこのようなことは起こらないので矛盾する。
したがって、この部分の散乱線補正を厳密に行うため、上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>に基づいて、上記2点間の強度のプロファイルの計算を追加でそれぞれ行い、散乱放射線の強度を修正する必要がある。
この各2点間のピクセルにおいても、鉛円板を用いた実験を行うことは可能である。しかし、矢印部分の領域においては、上記の式(3)のパラメータはあまり変化しないと考えることができる。例えば、フレームNo. 23 における点9と点14の両方について、白画像に対する全放射線の強度の比を横軸に、全放射線に対する散乱放射線の強度の比を縦軸にとって図示したグラフ(図10〜図15のグラフと同等)を図19に示す。これらはいずれも1本の曲線に沿って分布しており、式(3)のパラメータは共通の値を適用できることが分かる。この曲線で算出される値を利用して、図18の散乱放射線による強度のプロファイルを修正する。実際には、上記で示した2点間だけでなく、4点(例えば、点8、点9、点14、及び点14)で囲まれる領域内にX線減弱の大きい部分が位置する場合があるため、これを2次元に展開していく必要がある。以下、その方法について説明する。
点8、点9、点14、及び点13の4点で囲まれる領域R1(図20参照)内にX線減弱の大きい部位があるので、その部位における散乱放射線の強度は、上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>で計算した散乱放射線の強度よりも小さくなっており、その影響はその周囲の領域の強度にも及んでいると考えられる。
領域R1を含む縦方向の4つの各領域R1〜R4すなわち10点(点3、点8、点13、点18、点23、点24、点19、点14、点9、及び点4 )で囲まれる領域を考え、図20の領域R1〜R4の縦方向の境界を示すピクセルラインL1及びL2と領域R1〜R4を8等分するピクセルラインL11〜L17における散乱線の強度のプロファイルを考える。
各ピクセルラインL1、L2、及びL11〜L17上で、各領域R1〜R4における散乱放射線の割合(全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比)が最大となるピクセルを探し、そのときの散乱放射線の強度を図19等に示す曲線で算出される値を利用して計算する。この強度を上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>で計算した散乱放射線の強度から差し引いたときの強度差を各領域R1〜R4で計算する。このとき、5点(点4、点9、点14、点19、及び点24) を結ぶピクセルラインL2上において該当するピクセル座標と強度差の関係を図21(a)に示す。本実施形態では、両端のピクセルの強度差は一例として0に設定している。散乱放射線の強度はピクセルが移動するにつれて緩やかに変化するのと同様、これらの強度差も緩やかに変化するので、各ピクセルの強度差の値を、上記の値からSinカーブを利用して計算することにした。その詳細を以下に示す。なお、Sinカーブは一例であって、他の滑らかな曲線であってもよい。滑らかな曲線としては、例えば両端のピクセル間(ただし、両端は含まない)に極値が1つしか存在しない曲線を用いることができる。
まず、縦軸方向のピクセルラインにおける各領域上で求めたピクセルの内、強度差が最大となるピクセルが振幅の正の頂点(位相1/2π+2nπ、n は整数)となり、最小輝度値差となる両端の座標ピクセルが振幅の負の頂点(位相3/2π+2nπ、n は整数)となるように、他のピクセルにおける強度差を、周期の異なる2つのSinカーブを利用してそれぞれ計算する。その周期の異なる2つのSinカーブを図21(b)に示す。
Sinカーブの頂点となっている3つのピクセルを除いた3点の内、強度差がSinカーブより小さいピクセルは除き、他の2つのピクセルについてさらにSin カーブで計算した値との差を取ってグラフ化すると図21(c)に示す菱形のようになる。これらについては、頂点の両隣のピクセルを振幅の負の頂点としてSinカーブにより各ピクセルにおける値を計算すると図21(c)に示すSin カーブのようになる。
図21(c)に示すSin カーブは、算出されるべき強度差から図21(b)に示すSinカーブを差し引いたものについて計算されていると考えることができるから、これらの和を取ると図21(d)に示す曲線のようになり、これが算出された強度差である。上記の<1−3. ディテクタ上の全ピクセルにおける散乱放射線の強度の計算>で計算した散乱放射線の強度からこれらの強度差を差し引くことにより、縦方向のピクセルラインにおける散乱放射線の強度を修正することができる。
以上の計算を、図20中の縦方向4つの領域R1〜R4に属する各ピクセルラインL1、L2、及びL11〜L17上のピクセルについて、さらには残りの3箇所についても同様に縦軸方向のピクセルラインを設定して散乱放射線の強度を修正することができる。
そして、上述した縦軸方向の各ピクセルラインの間に位置するピクセルについては、横軸方向のピクセルライン上のピクセルにおける散乱放射線の輝度値が横軸方向に沿って線形に変化すると仮定して修正を行うものとする。
この修正後の散乱放射線の強度は図22に示すような分布になった。5点(点4、点9、点14、点19、及び点24)のピクセルラインL2上における、投影画像の強度、修正前の散乱放射線の強度、修正後の散乱放射線の強度のプロファイルはそれぞれ図23に示すようになり、歯列部分で散乱放射線除去後の強度が極端に小さくなるということは回避されている。しかし、図22において縦方向に筋が入っており、図中の横軸方向のピクセルラインL21における散乱放射線の強度のプロファイルは図24のようになった。プロファイルは滑らかになっておらず、散乱放射線が低周波であるという点に矛盾している。そこで、横方向については以下の手順で修正する。なお、以下に説明する横方向の修正は、上記の通り修正を行ってきた散乱放射線強度のデータのみならず、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の各ピクセル位置における1フレーム分の散乱放射線強度のデータ全般に適用可能である。
まず、図24中における横軸のピクセル座標 i(i=1,2,…)に対する縦軸の強度をBV(i)とする。また、N 個のピクセル座標X(n)(n=1,2,…,N)を考え、そのときの強度をY(n)とする。ピクセル座標 0 がX(1)に対応するとしてプロファイル上のピクセルの強度を調べていき、(BV(i)−Y(1))/(i−X(1))が最小となるピクセル座標をX(2)、強度をY(2)とする。同様に、次はピクセルX(2)から始めて(BV(i)−Y(2))/(i−X(2))が最小となるピクセル座標をX(3)、強度をY(3)とする。
これを繰り返すと、図25に示すように散乱放射線の強度のプロファイルを特徴づけるN=7つのピクセル座標(以下、特徴ピクセルと呼ぶ)を見つけることができる。ただし、X(7)、Y(7)だけは上記の方法にしたがっておらず、ピクセル座標が設定した値よりも大きくなったためピクセルNo.の最大値imaxをX(7)、BV(imax)をY(7)としている。一般的にディテクタの中央付近のピクセルは被写体の厚みが大きく、散乱線の強度が小さくなることからこの方法を採用した。
ただし、ピクセルNo. imax における全放射線の強度が白画像の当該ピクセルの強度と同程度である場合は、あらかじめ、ピクセル座標を小さくしていったときに全放射線の強度が明らかに白画像の強度よりも小さくなり始める手前のピクセル座標をX(7)、BV(X(7))をY(7)として以下の計算を行う。ピクセル座標X(7)からX(imax)の間のピクセルでは全放射線に対する直接放射線の強度の割合が等しいと考えて散乱放射線を算出する。ピクセルNo.0 が上記に該当する場合も同様である。
以上を一般化して、特徴ピクセルがN個あるとすると、その座標と強度は(X(n), Y(n))(n=1,2,…,N)となる。これらから強度がピクセル座標の変化に対して滑らかに変化するように修正したピクセルNo. iにおける強度BVr(i)を計算する。強度が滑らかに変化するためには、強度の変化量も滑らかに変化しなければならない。そこで、ピクセル座標X(i)における強度の変化をdBV(X(i))として、これが座標X(n)からX(n+1)まで変化する間dBV(X(n))からdBV(X(n+1))まで単調に変化すると仮定すると、ピクセルNo. i における強度および強度の変化量は下記の式(5)〜式(10)で表わすことができる。
Figure 0006947424
ここで、dbv(X(n))は、隣接する特徴ピクセルにおける強度の変化量、r(n)は、その強度の変化量がピクセル座標X(n)からX(n+1)まで単調に変化したと仮定した場合の強度の変化量と、実際の輝度値変化BV(n+1)−BV(n)の割合である。
X(1) ≦ i ≦ X(2)の場合においては、dbv(X(n))の計算ができないので、n=2 の場合分けで使用した式(5)にこの範囲のi の値を代入して計算して得られるBVr(i)に補正項を加えることにより、BVr(i)を計算する。その補正項は、指数関数を使用し、ピクセル座標X(2)では強度変化dBV(i)が滑らかに変化し、かつ、座標X(1)においては強度が一致するように係数の値を調整した。X(N - 1) ≦ i ≦ X(N)の場合も同様の計算を行う。
このようにして修正することにより、図24に示された散乱放射線の強度は、図26に示す破線のようになる。
以上の計算を、縦軸方向と同様に、25箇所のピクセル位置で囲まれる横方向の4つの領域のそれぞれについてさらに縦方向に8 等分する横軸方向のピクセルライン上で行う。横軸方向の各ピクセルライン間に位置するピクセルについては、縦軸方向のピクセルライン上のピクセルにおける散乱放射線の輝度値が縦軸方向に沿って線形に変化すると仮定して修正を行うものとする。
そして、最後に画像全体の平滑化を行うことにより散乱放射線の強度の修正を行う。この散乱放射線の強度を現すイメージは図27のようになる。そして、図27中の縦軸方向のピクセルラインL2及び横軸方向のピクセルラインL21上の各ピクセルにおける散乱放射線の強度のプロファイルは図28(a)及び図28(b)のようになった。縦軸方向、横軸方向ともに強度変化が滑らかになっている。
<8.散乱線補正装置>
図29は、本発明の一実施形態に係る散乱線補正装置100の構成を示す図である。
散乱線補正装置100は、ROM12やHDD17に格納されているプログラムに従って散乱線補正装置100全体を制御するCPU11と、固定的なプログラムやデータを記録するROM12と、作業メモリを提供するRAM13と、外部との通信を行うための通信インターフェース部14と、画像データを一時的に記憶するVRAM15と、VRAM15に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部16と、詳細は後述するHDD17と、キーボード、ポインティングデバイス等の操作部18とを備えている。
散乱線補正装置100の通信インターフェース部14と外部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。散乱線補正装置100としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。
HDD17は、画像再構成処理プログラム、散乱線補正プログラム等の各種プログラム、及び、歯科用X線撮影装置によるCT撮影の撮影データ(測定画像)、上記画像再構成処理プログラムによって生成された再構成ボリュームデータ、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値等の各種データを記憶する。
また、散乱線補正装置100は、ディテクタからの情報を取得して測定画像を生成し、その生成した測定画像をHDD17に記憶してもよく、通信インターフェース部14を用いて外部から測定画像を取得し、その取得した測定画像をHDD17に記憶してもよい。外部の装置がCT再構成をおこなってもよい。この場合、本実施形態とは異なりHDD17が画像再構成処理プログラムを記憶しない構成にすることが可能であり、散乱線補正装置100が散乱線補正後の測定画像を、CT再構成を行う外部の装置に送信すればよい。
画像再構成処理プログラムは、歯科用X線撮影装置によるCT撮影の撮影データを再構成して再構成ボリュームデータを生成するためのプログラムである。散乱線補正プログラムは、散乱線補正を行うためのプログラムである。なお、散乱線補正プログラムは、散乱線強度を算出し修正する散乱線強度算出プログラムを含む。
HDD17に記憶されている各プログラムは、散乱線補正装置100にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて散乱線補正装置100にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて散乱線補正装置100にインストールされてもよい。HDD17に記憶されている各プログラム及び各データの一部を、HDD17ではなくROM12に記憶するようにしてもよい。
HDD17は、被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置(例えば図4に示す25箇所の黒丸部分)の特定のフレーム(例えば上述した510個のフレーム)における全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果(例えば上述した外挿データ)の比と、特定のフレームでの被写体を設けないX線撮影で特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する特定のフレームでの被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータ(例えば上述したパラメータa及びパラメータb)を記憶する。HDD17に記憶されている散乱線補正プログラムは、CPU11で実行されることで散乱線補正装置100のハードウェアを、特定のピクセル位置の特定のフレームにおいて、被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を算出する算出部、修正部、並びに、当該算出部の算出結果及び当該修正部の修正結果に基づいて測定画像に対して散乱線補正を行う補正部、として機能させる。さらに、HDD17は、例えば上述した式(2)又は当該式(2)から算出される補間データを記憶する。なお、HDD17に記憶されている散乱線強度算出プログラムは、CPU11で実行されることで散乱線補正装置100のハードウェアを、上記の算出部及び修正部として機能させる。すなわち、散乱線補正プログラムのうち散乱線強度算出プログラムのみを実行した場合、散乱線補正装置100は、散乱線強度を算出し修正する散乱線強度算出装置となる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、鉛円板の代わりに、円形状以外の形状(例えば矩形形状)である鉛板材を用いてもよい。また、鉛以外のX線吸収材を用いてもよい。また、上述した実施形態のように散乱放射線の外挿データを求めるのではなく、微小な貫通孔を有するX線吸収材を用いて特定のピクセル位置の直接放射線を求めるようにしてもよい。
例えば、上述した実施形態では、頭部ファントムにインプラント等の金属を含めていないが、頭部ファントムにインプラント等の金属を含めてもよい。
100 散乱線補正装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 通信インターフェース部
15 VRAM
16 表示部
17 HDD
18 操作部

Claims (5)

  1. 被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶する記憶部と、
    前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出部と、
    前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、
    4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、
    前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、
    前記各領域において、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線それぞれの線上で前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比が最大になるピクセルを探し出し、前記探し出したピクセルの散乱放射線強度を4つの前記特定のピクセル位置の前記パラメータを用いて算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記探し出したピクセルの散乱放射線強度から差し引いたときの強度差を算出し、
    前記各領域のうち前記第1方向に沿って並ぶ複数の領域において、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセルの前記強度差に基づき、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの強度差を算出し、
    その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度から差し引いて、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度を修正する修正部と、
    を備える、散乱線強度算出装置。
  2. 被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶する記憶部と、
    前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出部と、
    前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、
    4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、
    前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、
    前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線の各間に位置するピクセルについて、前記第2方向に沿った直線上のピクセルにおける散乱放射線強度の変化量が前記第2方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正し、
    さらに、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、
    前記第2方向に沿った直線を複数設定し、
    複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する修正部と、
    を備える、散乱線強度算出装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の散乱線強度算出装置と、
    前記散乱線強度算出装置によって算出された散乱線強度に基づいて前記被写体のX線撮影で得られる測定画像に対して散乱線補正を行う補正部と、
    を備える、散乱線補正装置。
  4. 被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータ、及び、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶媒体から読み出す読出ステップと、
    前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記読出ステップで読み出された前記パラメータによって定まる前記曲線式を用いて算出する算出ステップと、
    前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、
    4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、
    前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、
    前記各領域において、前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線それぞれの線上で前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比が最大になるピクセルを探し出し、前記探し出したピクセルの散乱放射線強度を4つの前記特定のピクセル位置の前記パラメータを用いて算出し、その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記探し出したピクセルの散乱放射線強度から差し引いたときの強度差を算出し、
    前記各領域のうち前記第1方向に沿って並ぶ複数の領域において、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセルの前記強度差に基づき、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの強度差を算出し、
    その算出結果を前記補間式又は前記補間データを用いて求めた前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度から差し引いて、前記第1方向に沿って同一直線上に位置する前記探し出したピクセル以外のピクセルの散乱放射線強度を修正する修正ステップと、
    を備える、散乱線強度算出方法。
  5. 被写体のX線撮影で用いられるディテクタ上の特定のピクセル位置の特定のフレームにおける全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の算出結果の比と、前記特定のフレームでの前記被写体を設けないX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度に対する前記特定のフレームでの前記被写体のX線撮影で前記特定のピクセル位置で検出される全放射線強度の比との関係を示す曲線式のパラメータを記憶し、且つ、前記ディテクタ上の前記特定のピクセル以外のピクセル位置における散乱放射線強度を、前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおける散乱放射線強度の算出結果に基づいて補間する補間式又は前記補間式から算出される補間データを記憶媒体から読み出す読出ステップと、
    前記特定のピクセル位置の前記特定のフレームにおいて、前記被写体のX線撮影で検出される全放射線強度又は直接放射線強度に対する散乱放射線強度の比を前記曲線式を用いて算出する算出ステップと、
    前記特定のピクセル位置は、第1方向に沿って第1等間隔に並び、第2方向に沿って第2等間隔に並び、
    4つの前記特定のピクセル位置で囲まれ、前記第1方向に沿って延びる前記第1等間隔と同じ長さの第1辺及び第2辺と前記第2方向に沿って延びる前記第2等間隔と同じ長さの第3辺及び第4辺とが外縁となる各領域を仮想的に設定し、
    前記第1方向に沿って延び前記第1辺と前記第2辺との間を等分する複数の等分線を仮想的に設定し、
    前記第1辺、前記第2辺、及び前記複数の等分線の各間に位置するピクセルについて、前記第2方向に沿った直線上のピクセルにおける散乱放射線強度の変化量が前記第2方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正し、
    さらに、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイル上の所定点に基づき、前記第2方向に沿った直線上に位置するピクセルにおける散乱放射線強度のプロファイルを修正し、
    前記第2方向に沿った直線を複数設定し、
    複数の前記第2方向に沿った直線の各間に位置するピクセルについて、散乱放射線強度の変化量が前記第1方向に沿って修正前よりも滑らかに変化するように散乱放射線強度を修正する修正ステップと、
    を備える、散乱線強度算出方法。
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