JP6944394B2 - 非水系電解液電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水系電解液電池に関し、詳しくは特定の物性を有する負極と、特定の化合
物を含有しかつ特定の物性を有する非水系電解液を用いた非水系電解液電池に関する。
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源
や定置用大型電源等の広範な用途において、リチウム二次電池等の非水系電解液を用いた
非水系電解液電池が実用化されている。
例えば、リチウム非水系電解液電池においては、エチレンカーボネートやプロピレンカ
ーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートやエ
チルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトンやγ−バレロラク
トン等の環状カルボン酸エステル類、酢酸メチルや酢酸エチルやプロピオン酸メチル等の
鎖状カルボン酸エステル類の非水溶媒と、LiPFやLiBF等の溶質(電解質)と
を含有する非水系電解液が用いられる。
このような非水系電解液電池では、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるた
め、非水系電解液により特性が大きく変わることになる。エネルギーデバイスの負荷特性
、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めた
りするために、非水系電解液中の非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、ジフルオロリン酸リチウムを含む電解液を用いることで、非
水系電解液の分解を抑制し保存後の容量維持率(容量残存率)の改善を得る技術が開示さ
れている。
一方、非水系電解液電池の実用化に際しては、電池特性の改善とともに、特に今後の市
場拡大が予想される自動車用途において、より生産効率の高い非水系電解液電池の製造が
要求される。
通常非水系電解液電池は、円筒、角型のような電池外装体に負極、正極、セパレータな
どから成る極板群を収納した後、電解液を注液し、電池外装体の開口部を密閉する工程を
経て製造される。極板群は、高密度に積層または積層状態で捲回したものであるため、非
水系電解液の注液工程では、極板群の小さな隙間に非水系電解液を浸透させる必要がある
が、極板群が高密度になるほど非水系電解液は浸透しにくくなり、所定量の非水系電解液
を極板群に含浸させるには長時間を要すことになる。本発明の非水系電解液の負極への吸
液係数を高めることは、この注液工程における、極板群への非水系電解液含浸速度を速め
ることに繋がるため、注液工程時間を短くすることができ、非水系電解液電池の生産性も
向上することになる。
吸液係数の改善には、負極と電解液のマッチングが重要と考えられるが、このような観
点からの検討はこれまでなされていなかった。
特開平11−67270号公報
本発明はかかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、非水系電解液電池
の製造時において生産効率を高めること、すなわち、電解液の負極への吸液係数を高める
ことにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性を有する負極と、特
定の化合物を含有しかつ特定の物性を有する非水系電解液を組み合わせることにより、高
い吸液係数を実現できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[7]に示す具体的態様等を提供する。
[1]正極、負極及び非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該負極の活物質
層の平均毛管半径が44nm以下であり、該非水系電解液が、ジフルオロリン酸塩を含有
し、粘度が4.4mPa・s以下であることを特徴とする、非水系電解液電池。
[2]前記負極が、Liと合金化可能な金属と、黒鉛と、を含有する負極活物質を含むこ
とを特徴とする、[1]に記載の非水系電解液電池。
[3]前記Liと合金化可能な金属が、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWから
なる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその金属化合物である、[2]に記載の非
水系電解液電池。
[4]前記Liと合金化可能な金属が、Si又はSi金属酸化物である、[2]または[
3]に記載の非水系電解液電池。
[5]前記Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質が、金属及び/又は
金属化合物と黒鉛との複合体及び/又は混合体である、[2]乃至[4]のいずれか1に
記載の非水系電解液電池。
[6]前記Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質の合計に対する、前
記Liと合金化可能な金属の含有量が、0.1〜25質量%である、[2]乃至[5]の
いずれか1に記載の非水系電解液電池。
[7]前記非水系電解液の全量に対する前記ジフルオロリン酸塩の含有量が0.001質
量%以上10質量%以下である、[1]乃至[6]のいずれか1に記載の非水系電解液電
池。
本発明によれば、電解液の負極への吸液係数が高い非水系電解液電池を得ることが出来
る。それにより、非水系電解液電池を高い生産効率で製造することが可能となる。
実施例及び比較例において、吸液係数の値を非水系電解液粘度でプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実
施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発
明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
<1.非水系電解液>
<1−1.ジフルオロリン酸塩>
本発明の非水系電解液は、ジフルオロリン酸塩を含有することを特徴としている。
ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナト
リウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び
、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭
素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に
限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子
又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基
で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等
が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シク
ロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
ジフルオロリン酸塩の具体例としては、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸
ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウムが好ま
しい。
ジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率
で併用してもよい。
また、ジフルオロリン酸塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわ
ない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ま
しくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以
下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%
以下、最も好ましくは1質量%以下である。
この範囲内であれば、負極への吸液係数を高めることができるとともに、充放電に伴う
非水系電解液電池の膨れを好適に抑制できる。
<1−2.非水系電解液の物性について>
<1−2−1.非水系電解液の粘度>
本発明の非水系電解液の粘度としては、通常6mPa・s以下、好ましくは5mPa・
s以下、より好ましくは4mPa・s以下、さらに好ましくは3mPa・s以下、最も好
ましくは2mPa・s以下、また、通常0.1mPa・s以上、好ましくは0.3mPa
・s以上、より好ましくは0.5mPa・s以上、さらに好ましくは0.7mPa・s以
上、最も好ましくは0.8mPa・s以上である。この範囲内であれば、負極への吸液係
数を高めることができるとともに、充放電における入出力抵抗を好適に下げることができ
る。
非水系電解液の粘度の制御方法としては、後述するリチウム塩の含有量調整、電解液を
構成する溶媒種、またその組成比を変えることなどがある。
本発明における液体の粘度の測定方法は、以下の通りである。ブルックフィールド社製
の回転粘度計、コーンプレート型LVDV3TCPを用い、コーンスピンドルCPA−4
0Zを装着し、25℃で速度20rpmで剪断を行い、測定する。
<1−2−2.非水系電解液の表面張力>
本発明の非水系電解液の表面張力としては、通常20mN/m以上、好ましくは22m
N/m以上、より好ましくは24mN/m以上、さらに好ましくは26mN/m以上、最
も好ましくは28mN/m以上、また、通常50mN/m以下、好ましくは48mN/m
以下、より好ましくは46mN/m以下、さらに好ましくは44mN/m以下以下、最も
好ましくは42mN/m以下である。この範囲内であれば、負極への吸液係数を高めるこ
とができるとともに、注液工程における作業性も確保することができる。
非水系電解液の表面張力の制御方法としては、リチウム塩の含有量調整、電解液を構成
する溶媒種、またその組成比を変えることなどがある。
本発明における液体の表面張力の測定方法は、以下の通りである。協和界面科学社製の
動的接触角解析装置DCA−700を用い、白金プレートを装着し、表面張力測定Wil
helmy法にて室温で測定する。
<1−2−3.非水系電解液の基準バインダー膜に対する接触角>
本発明の非水系電解液の基準バインダー膜に対する接触角としては、通常5°以上、好
ましくは10°以上、より好ましくは13°以上、さらに好ましくは16°以上、最も好
ましくは19°以上、また、通常65°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは5
6°以下、さらに好ましくは53°以下、最も好ましくは50°以下である。この範囲内
であれば、負極への吸液係数を高めることができるとともに、注液工程における作業性も
確保することができる。
非水系電解液の基準バインダー膜に対する接触角の制御方法としては、後述するリチウ
ム塩の含有量調整、電解液を構成する溶媒種、またその組成比を変えることなどがある。
本発明における液体の基準バインダー膜に対する接触角の測定方法は、以下の通りであ
る。協和界面科学社製の接触角計DMs−401を用い、以下に記載する基準バインダー
膜の作製方法にて作製したカルボキシメチルセルロース(CMC):スチレン・ブタジエ
ンゴム(SBR)=1:1膜を基板にし、液滴法にて室温で測定する。
基準バインダー膜の作製方法としては、CMCとして日本製紙社製MAC500LCを
用い、1質量%のCMC水溶液を日立製ミキサーVA−W07にて作製し、そこにSBR
としてJSR社製TRD102Aを先に投入したCMCと1:1の質量比になるよう加え
、このCMC:SBR=1:1分散液を古河産業社製電解銅箔NC−WSに、膜厚10μ
mになるよう塗布を行い作製する。
<1−3.電解質>
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常は電解質を含有する。
<1−3−1.リチウム塩>
本発明に係る非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。
リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく
、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、L
iWF等の無機リチウム塩;LiPF等のフルオロリン酸リチウム塩類;LiWOF
等のタングステン酸リチウム塩類;HCOLi、CHCOLi、CHFCO
Li、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCF
COLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等の
カルボン酸リチウム塩類;CHSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;LiN(FC
、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO
(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム
環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオ
ロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウ
ムイミド塩類;LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(C
等のリチウムメチド塩類;リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビ
ス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウ
ムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォス
フェート等のリチウムオキサラート塩類;その他、LiPF(CF、LiPF
(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、L
iBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF
LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO
等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
充放電レート充放電特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、無機リ
チウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩
類、リチウムオキサラート塩類、の中から選ばれるものが好ましい。
中でも、LiPF、LiBF、LiSbF、LiTaF、LiN(FSO
、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(C
SO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム
環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC
(CFSO、LiC(CSO、リチウムジフルオロオキサラトボレ
ート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォス
フェート又はリチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(
オキサラト)フォスフェートが、低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス
特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から好ましく、特にLi
PFが好ましい。また、上記電解質塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であ
れば特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8
.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、また、通常18質量%以下、好ま
しくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の総濃度が上記範
囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向
にある。
<1−4.非水系溶媒>
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上
述した電解質を溶解する非水系溶媒を含有する。ここで用いる非水系溶媒について特に制
限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネ
ート類、鎖状カーボネート類、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられるが、
これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いる
ことができる。
<1−4−1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、通常炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げ
られ、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から炭素数2〜3の飽和
環状カーボネートが好ましく用いられる。
飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブ
チレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート又はプロピレンカー
ボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートがより好ましい。飽和
環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率
で併有してもよい。
また、飽和環状カーボネートの含有量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば
特に制限はないが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水系電解液の溶媒全量
に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、
非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の
大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなり、また
、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下であ
る。この範囲とすることで、非水系電解液の酸化・還元耐性が向上し、高温保存時の安定
性が向上する傾向にある。
なお、本発明における体積%とは25℃、1気圧における体積を意味する。
<1−4−2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、通常炭素数3〜7のものが用いられ、電解液の粘度を適切
な範囲に調整するために、炭素数3〜5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
具体的には、鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネー
ト、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプ
ロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、
n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカー
ボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブ
チルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネー
ト、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチ
ルカーボネート又はメチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメ
チルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」
と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有
するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好まし
くは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それら
は互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化
鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチ
ルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、
ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(
フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフ
ルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。 フッ素化エチルメチルカーボネート誘導
体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネー
ト、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチル
カーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル
メチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フル
オロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が
挙げられる。
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カー
ボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエ
チル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,
2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロ
エチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボ
ネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート
、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの含有量は所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限はな
いが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体
積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、また、通常90体積%以下、好ましく
は85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を
上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低
下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の出力特性を良好な範囲としやすくなる。
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組
み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネ
ートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、所望の電解液の粘度が得られる
範囲であれば特に制限はないが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上
、好ましくは20体積%以上、また、通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下で
あり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常20体
積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積
%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は通常20体積%以上、好ましくは3
0体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を
上記範囲内とすることで、高温安定性に優れ、ガス発生が抑制される傾向がある。
<1−4−3.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状
エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル
)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロ
エチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリ
フルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル
、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオ
ロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフ
ルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロ
ピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−
トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n
−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)
エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−
フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオ
ロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオ
ロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフ
ルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエー
テル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、
(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エー
テル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プ
ロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタ
フルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロ
ピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピ
ル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ
−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,
3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチ
ル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピ
ルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピ
ル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2
,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,
3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)
エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル
)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−
プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフ
ルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エー
テル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ
−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3
,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフル
オロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(
2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,
3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメ
タン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(
2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロ
エトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エト
キシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラ
フルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキ
シ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1
,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メ
タン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキ
シ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン
、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,
2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエ
トキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキ
シ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフ
ルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ
)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,
2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エ
タン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキ
シ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコー
ルジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレン
グリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エ
チレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテ
ル又はジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く
、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝
導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン又はエトキシメトキシメタ
ンである。
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロ
フラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジ
オキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ
素化化合物が挙げられる。
エーテル系化合物の含有量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限は
ないが、非水系溶媒100体積%中、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より
好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より
好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であ
れば、エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上
効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイ
オンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適
正な範囲とすることができる。
<1−4−4.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、環状スルホン、鎖状スルホンであっても特に制限されない
が、環状スルホンの場合、通常炭素数が3〜6、好ましくは炭素数が3〜5であり、鎖状
スルホンの場合、通常炭素数が2〜6、好ましくは炭素数が2〜5である化合物が好まし
い。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常
1又は2である。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメ
チレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジ
スルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる
。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホ
ン類、ヘキサメチレンスルホン類又はヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テト
ラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも
含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体として
は、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアル
キル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3
−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン
、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロ
スルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラ
ン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−
フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ
−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルス
ルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフ
ルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチル
スルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3
−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スル
ホラン又は5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホランがイオン伝導度が高く
入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルス
ルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピル
スルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピル
スルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルス
ルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメ
チルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルス
ルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタ
フルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロ
メチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホ
ン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(ト
リフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プ
ロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−
プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピ
ルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロ
ピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−
プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−
n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル
−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピル
メチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチル
メチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン
、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロ
エチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチ
ルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エ
チルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフ
ルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチ
ルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチ
ル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン又はトリフルオロメ
チル−t−ブチルスルホンが電解液の高温保存安定性が向上する点で好ましい。
スルホン系化合物の含有量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限は
ないが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体
積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは
35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前
記範囲内であれば、高温保存安定性に優れた電解液が得られる傾向にある。
<1−5.助剤>
本発明の非水系電解液において、本発明の効果を奏する範囲で以下の助剤を含有しても
よい。
<1−5−1.不飽和結合を有する環状カーボネート化合物>
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」
と記載する場合がある)としては、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有す
る環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いること
ができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含さ
れることとする。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環または炭素−炭素
二重結合または炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類
、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコール
カーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネー
ト、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−
ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレ
ンカーボネート、4,5−ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート
、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フ
ルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボ
ネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビ
ニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環または炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換され
たエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジ
ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリ
ル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチ
ニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニ
ル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−エチニルエチレンカーボネー
ト、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フ
ェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネ
ート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチ
ル−5−アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、好ましい不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビ
ニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネ
ート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジ
アリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレン
カーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニル
エチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカ
ーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニ
ルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカー
ボネート又は4−メチル−5−アリルエチレンカーボネートが挙げられる。
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート又はエチニルエチレンカー
ボネートはさらに安定な界面保護被膜を形成するので、特に好ましい。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわな
い限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であ
れば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の
効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85
以上であり、また、より好ましくは150以下である。不飽和環状カーボネートの製造方
法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併用してもよい。
また、不飽和環状カーボネートの配合量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれ
ば特に制限はないが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好まし
くは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.
5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5
質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。この範
囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、
高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態
を回避しやすい。
<1−5−2.ハロゲン化環状カーボネート>
ハロゲン原子を有する環状カーボネート化合物の例として、主にフッ素原子で置換され
た酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素
原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
ハロゲン原子を有する環状カーボネート化合物としては、炭素原子数2〜6のアルキレ
ン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレ
ンカーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフ
ッ素化物の誘導体としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキ
ル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素原子
を1〜8個有するエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボ
ネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレン
カーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−
5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネー
ト、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチ
レンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオ
ロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオ
ロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,
5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5
−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネー
ト及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種
が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上
を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の非水系電解液全体に対するハロゲン化環状カーボネートの配合量は、所
望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限はないが、非水系電解液100質量%
中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1
質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、ま
た、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に
好ましくは3質量%以下である。ただし、モノフルオロエチレンカーボネートは溶媒とし
て用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。
<1−5−3.過充電防止剤>
本発明の非水系電解液において、非水系電解液電池が過充電等の状態になった際に電池
の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニ
ルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン
、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3−トリ
メチル−3−フェニルインダン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロ
ヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物
の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2
,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化
合物等;3−プロピルフェニルアセテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフ
ェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニ
ルアセテート等の芳香族アセテート類;ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボ
ネート等の芳香族カーボネート類が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニ
ル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチル
ベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシク
ロヘキサン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン、3−プロピルフェニルア
セテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニ
ルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート、ジフェニルカーボ
ネート又はメチルフェニルカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2
種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt
−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェ
ニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチ
ルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なく
とも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる
少なくとも1種を併用するのが、過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ま
しい。
過充電防止剤の含有量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限はない
。過充電防止剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.1質量%以上、好ま
しくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質
量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4.8質量%以下、より好ましく
は4.5質量%以下である。この範囲であれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させや
すく、また、高温保存特性等の電池の特性が向上する。
<1−5−4.その他の助剤>
本発明の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤
としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキ
シエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;メチル−2−プロピニルオギザ
レート、エチル−2−プロピニルオギザレート、ビス(2−プロピニル)オギザレート、
2−プロピニルアセテート、2−プロピニルホルメート、2−プロピニルメタクリレート
、ジ(2−プロピニル)グルタレート、メチル−2−プロピニルカーボネート、エチル−
2−プロピニルカーボネート、ビス(2−プロピニル)カーボネート、2−ブチン−1,
4−ジイル−ジメタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジエタンスルホネー
ト、2−ブチン−1,4−ジイル−ジホルメート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジアセ
テート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジプロピオネート、4−ヘキサジイン−1,6−
ジイル−ジメタンスルホネート、2−プロピニル−メタンスルホネート、1−メチル−2
−プロピニル−メタンスルホネート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−メタンスルホ
ネート、2−プロピニル−エタンスルホネート、2−プロピニル−ビニルスルホネート、
2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1−メチル−2−プロピニ
ル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−2
−(ジエトキシホスホリル)アセテート等の三重結合含有化合物;2,4,8,10−テ
トラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラ
オキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、フルオロ
スルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホ
ン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、硫酸エチレン、硫酸ビニレン、ジフェニルスル
ホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド
、メチル硫酸トリメチルシリル、エチル硫酸トリメチルシリル、2−プロピニル−トリメ
チルシリルスルフェート等の含硫黄化合物;2−イソシアナトエチルアクリレート、2−
イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルクロトネート、2−(2−
イソシアナトエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル
メタクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルクロトネート等のイソシアネ
ート化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル
−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスク
シンイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等
の炭化水素化合物;フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、
ベンゾトリフルオライド、オルトフルオロトルエン、メタフルオロトルエン、パラフルオ
ロトルエン、1,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−
2−ジフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−ト
リフルオロメチル−3−ジフルオロメチルベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル
)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−ジフルオロメチルベンゼン、1,3,5−ト
リス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペ
ンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、
トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート
等の含フッ素芳香族化合物;ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメ
トキシシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリ
ル)、ジメトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジエトキシアルミノキシトリエトキ
シシラン、ジプロポキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリ
メトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、チタンテトラキス(トリ
メチルシロキシド)、チタンテトラキス(トリエチルシロキシド)、等のシラン化合物;
2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニル
オキシ)プロピオン酸2−メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−エ
チル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−プロピニル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−メ
チル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−エチル等のエステル化合物;リチウムエチルメチ
ルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチルエチルオキシカルボニルホスホネート
、リチウムエチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−1
−メチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−1,1−ジ
メチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート等のリチウム塩;等が挙げられる
。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加する
ことにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
その他の助剤の含有量は、所望の電解液の粘度が得られる範囲であれば特に制限はない
。その他の助剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.01質量%以上、好
ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量
%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲であれ
ば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高温保存安定性が向上する傾向にある。
<2.非水系電解液電池>
本発明の非水系電解液電池は、集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有す
る正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有しかつイオンを吸蔵及び
放出し得る負極と、上述した本発明の非水系電解液とを備えるものである。
<2−1.電池構成>
本発明の非水系電解液電池は、上述した本発明の非水系電解液以外の構成については、
通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負
極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明
の非水系電解液電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型
、コイン型、大型等の何れであってもよい。
<2−2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を
逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合し
て用いることも可能である。
<2−3.負極>
負極は、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は負極活物質を含
有する。以下、負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、
特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属合金系材料、リチウム含有金属
複合酸化物材料等が挙げられ、炭素質材料として黒鉛を含むことが好ましい。これらは1
種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
<2−3−1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で一回以上熱処
理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち
かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち
かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。
また、(1)〜(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み
合わせ及び比率で併用してもよい。
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、
石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチ
を酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭
素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解
物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエ
ン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれら
の炭化物等が挙げられる。
<2−3−2.炭素質負極の構成、物性、調製方法>
炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、
非水系電解液電池については、次に示す(1)〜(13)の何れか1項又は複数項を同時
に満たしていることが望ましい。
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が
、通常0.335〜0.340nmであり、特に0.335〜0.338nm、とりわけ
0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求め
た結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ま
しくは2nm以上である。
(2)体積基準平均粒子径
炭素質材料の体積基準平均粒子径(メジアン径d50)は、特に限定されないが、通常
1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が
特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以
下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
なお、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められ
る。
体積基準平均粒子径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタ
ンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザ
ー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該
測定で求められるメジアン径d50を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒子径と定義
する。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定
した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ま
しく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、
0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴っ
てLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場
合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合
に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方
、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効
率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常
10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下
であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下がさらに好ましく、40cm
以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴
ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する
場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場
合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一
方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、
効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用
いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオ
ンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行
なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度I
Aと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=I
B/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明における炭素質材料の
ラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピー
クPAの半値幅を測定し、これを本発明における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.
1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1
上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m
−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下がさらに好
ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチ
ウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が
低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電
解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合
がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装
置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大
気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガ
スを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められ
る比表面積を、本発明における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
(5)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ま
しい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/
(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒子径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく
、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに
好ましく、0.85以上が特に好ましく、0.9以上が最も好ましい。
高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を
下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充
放電特性が低下する場合がある。
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用
いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタン
モノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を
出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒子径が3〜
40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明における
炭素質材料の円形度と定義する。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたもの
が、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては
、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子を
バインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法
等が挙げられる。
(6)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3
以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に
好ましく、また、通常2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに
好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、
高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒
子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が
得られにくい場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセ
ルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セ
イシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを100
0回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出され
るタップ密度を、本発明における炭素質材料のタップ密度として定義する。
(7)配向比
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.0
15以上がより好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回る
と、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配
向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径1
7mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測
定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭
素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(
004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発
明における炭素質材料の配向比と定義する。
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
(8)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ま
しく、5以下がより好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引
きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上
記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、炭素質材料粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ
50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれに
ついて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素
質材料粒子の最長となる径Pと、それと直交する最短となる径Qを測定し、P/Qの平均
値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P/Q)を、本発明における炭素質材料
のアスペクト比と定義する。
(9)電極作製
負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知の何れの方法を用いること
ができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、
充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによ
って形成することができる。
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常
15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、また、通
常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しに
くいため、高電流密度充放電特性が低下する場合があるためである。またこの範囲を下回
ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合があるた
めである。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形により
ペレット電極としてもよい。
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負
極の集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属
材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属
コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げら
れる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延
法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることが
できる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅
、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm
以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μ
m以下がより好ましい。金属皮膜の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため
塗布が困難となる場合がある。また、1mmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形さ
せる場合がある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
(11)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前
の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値は、通常150以下、20以下が
好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上、0.4以上が好ましく、1
以上がより好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電
体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質
に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
(12)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在してい
る負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより
好ましく、1.3g・cm−3以上がさらに好ましく、また、通常2.2g・cm−3
下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさら
に好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物
質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や
、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特
性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、
電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に
対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
メチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高
分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素
ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴ
ム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;E
PDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエ
ン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素
添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエ
ン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重
合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ
素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素
系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組
成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及
び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じ
て使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類
に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチル
ケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,
N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセト
ン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチ
ルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキ
サン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテック
スを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いて
も、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、0.1質量%以上が好
ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、
通常20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさら
に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上
記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電
池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く
場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に
対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく
、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好
ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場
合、負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3
質量%以上がより好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好まし
く、8質量%以下がより好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に
制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキ
シメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸
化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても
、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定され
ないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上
がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%
以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著し
く塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極
活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合
がある。
<2−3−3.金属化合物系材料、及び金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、
調製方法>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能で
あれば、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、
窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物の何れであっても特に限定はされない。この
ような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、
Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも
、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、13族又は14
族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く)を含む材料あることがより好ましく、さら
には、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「特定
金属元素」という場合がある。)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、又は、それ
らの金属(特定金属元素)の化合物であることが好ましく、ケイ素の単体金属、合金及び
化合物、並びにスズの単体金属、合金及び化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独
で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何
れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2
種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、
1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、又は、その化合物の酸化物・炭化物
・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれ
らの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑
に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばケイ素やスズ
では、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例
えばスズでは、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作し
ない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用
いることができる。
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから
、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素
の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金
、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位質量当りの容量には劣るものの、サイクル
特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズの酸素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0
.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3
以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの酸化物」。
・ケイ素及び/又はスズの窒素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0
.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3
以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの窒化物」。
・ケイ素及び/又はスズの炭素に対する元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0
.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3
以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの炭化物」。
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み
合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液電池における負極は、公知の何れの方法を用いて製造することが
可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や
導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形して
ペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」と
いう場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の
負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、
上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負
極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極
活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙
げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好まし
い。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、また、通常10
0μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体
の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるため
である。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電
体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラ
スト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、
鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化
学研磨法等が挙げられる。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を
加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合
わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上が
好ましく、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。負極活物質の含
有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過
ぎると相対的に結着剤等の含有量が不足することにより、得られる負極の強度が不足する
傾向にあるためである。なお、2以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合
計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラッ
ク等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材
料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3
質量%以上、特に5質量%以上が好ましく、また、通常30質量%以下、特に25質量%
以下が好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎる
と相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向
となるためである。なお、2以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範
囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な
材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポ
リテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム
・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン・メタク
リル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して
通常0.5質量部以上、特に1質量部以上が好ましく、また、通常10質量部以下、特に
8質量部以下が好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する
傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量
や導電性が不足する傾向となるためである。なお、2以上の結着剤を併用する場合には、
結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、
ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ
、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すれば
よいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%
以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や
結着剤、増粘剤を混合し、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系
溶媒としては、通常は水が用いられるが、エタノール等のアルコール類やN−メチルピロ
リドン等の環状アミド類等の水以外の溶媒を、水に対して30質量%以下程度の割合で併
用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状ア
ミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミ
ド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキ
サノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類
、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等
が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み
合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーの粘度は、集電体上に塗布することが可能な粘度であれば、特に制限されない
。塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて、適宜調
製すればよい。
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより
、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用い
ることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知
の手法を用いることができる。
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体
上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3
以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、通常2.2g・
cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3
以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、活物質粒子が破壊され
、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下によ
る高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、活物質間の
導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
<2−3−4.炭素質材料と金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として、金属化合物系材料と前記炭素質材料を含有してもよい。ここで、金
属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質とは、リチウム合金を形成する単体金
属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物の何
れかと、炭素質材料が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合体でもよいし、リ
チウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪
化物、硫化物等の化合物が炭素質材料の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本
明細書において、複合体とは、特に、金属化合物系材料および炭素質材料が含まれていれ
ば特に制限はないが、好ましくは、金属化合物系材料および炭素質材料が物理的及び/又
は化学的な結合によって一体化している。より好ましい形態としては、金属化合物系材料
および炭素質材料が、少なくとも複合体表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各
々の固体成分が分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結
合によって一体化させるために、炭素質材料が存在しているような形態である。
このような形態は、走査型電子顕微鏡による粒子表面観察、粒子を樹脂に包埋させて樹
脂の薄片を作製し粒子断面を切り出す、あるいは粒子からなる塗布膜をクロスセクション
ポリッシャーによる塗布膜断面を作製し粒子断面を切り出した後、走査型電子顕微鏡によ
る粒子断面観察等々の観察方法にて、観察が可能である。
金属化合物系材料と炭素質材料とを含有する負極活物質の合計に対する、金属化合物系
材料の含有割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以
上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは
3質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ま
しくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以
下、最も好ましくは15質量%以下である。この範囲であると、十分な容量を得ることが
可能となる点で好ましい。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる炭素質材料について
は、前記<2−3−2>に記載の要件を満たすことが好ましい。また、金属化合物系材料
については、下記を満たすことが望ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金としては、従来公知のいずれのものも使
用可能であるが、容量とサイクル寿命との点から、リチウム合金を形成する単体金属は、
例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、
V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又
はその化合物が好ましい。また、リチウム合金を形成する合金としては、Si、Sn、A
s、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物
、珪化物、硫化物等の化合物とは、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属珪化物、
金属硫化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。この
中でも、Si又はSi化合物が高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi
化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、一般式で表すと
、SiO,SiN,SiC、SiZ(Zは、C又はNである。)などが挙げ
られ、好ましくはSiOxである。なお、上記一般式中のxの値は特に限定されないが、
通常、0≦x<2である。上記SiOは、二酸化ケイ素(SiO)と金属ケイ素(S
i)とを原料として得られる。SiOは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、さらに非
晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入り
がしやすく、高容量を得ることが可能となる。
SiO中のxの値は特に限定されないが、通常、xは0≦x<2であり、好ましくは
0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上であり、また、好
ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。
この範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減
させることが可能となる。
なお、金属化合物系材料が、リチウムと合金化可能な金属材料であることを確認するた
めの手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察
および元素分析、蛍光X線による元素分析などが挙げられる。
金属化合物系材料の体積基準平均粒子径(メジアン径d50)は、特に限定されないが
、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より
好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、また、通常10μ
m以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50
)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、
良好なサイクル特性の得ることができる。
なお、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められ
る。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の
BET法により比表面積は、特に限定されないが、通常0.5m/g以上、好ましくは
1m/g以上、また、通常、60m/g以下、好ましくは40m/gである。Li
と合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電
効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性
に優れるので好ましい。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の
含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%
以上、また、通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。粒子内の酸素分布状態
は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に
表面近傍に存在していることが好ましい。金属化合物系材料の含有酸素量が前記範囲内で
あると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に
優れるので好ましい。
また、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系
材料の負極作成については、前記<2−3−1>炭素質材料に記載のものを用いることが
できる。
<2−3−5.負極に対する非水系電解液の吸液係数について>
本発明における非水系電解液の負極に対する吸液係数としては、通常0.1×10−7
/s以上、好ましくは0.5×10−7/s以上、より好ましくは1×10−7
/s以上、さらに好ましくは2×10−7/s以上、最も好ましくは3×10
/s以上である。この範囲内であれば、後述するように非水系電解液電池の生産性
を高めることができるとともに、充放電における入出力抵抗を好適に下げることができる
本発明における液体の負極に対する吸液係数の測定方法は、以下の通りである。協和界
面科学社製の動的接触角解析装置DCA−700を用い、紙類接触角測定における重量変
化測定にて、負極を測定する液体に300秒間浸させ、横軸に時間、縦軸に浸透距離の2
乗のグラフを作成し、測定時間200〜300秒の間における傾きの値を求めることで吸
液係数を算出する。
<2−3−6.負極の活物質層の平均毛管半径について>
本発明の負極の活物質層の平均毛管半径としては、通常44nm以下、好ましくは30
nm以下、また通常5nm以上、好ましくは6nm以上、より好ましくは7nm以上、さ
らに好ましくは8nm以上、最も好ましくは10nm以上である。この範囲内であれば、
負極に対する非水系電解液の吸液係数を高めることができるとともに、充放電における入
出力抵抗を好適に下げることができる。
本発明における負極の活物質層の平均毛管半径は以下のようにして測定する。
・ドデカン、ヘキサデカン、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールの4種類の測定液につ
いて、25℃における、X:表面張力(単位:mN/m)、Y:粘度(単位:mPa・s
)、Z:基準バインダー膜に対する接触角(単位:°)、を測定する。X、Y、Zの測定
方法は前述の通りである。
・次に、上記4種類の測定液に対する、W:当該負極の活物質層の吸液係数(単位:m
/s)、を測定する。Wの測定方法は前述の通りである。
・各測定液に対する、V(単位:nm)の値を、以下の式により算出する。
V=2×W×Y/(X×cos(Z))×10
・各測定液について算出したVの平均値Va(単位:nm)を、当該負極の活物質層の平
均毛管半径とする。
負極の活物質層の平均毛管半径の制御方法としては、負極材の粒径や表面積といった粉
体物性、結着材の割合やその種類を変えることなどがある。また、平均毛管半径を小さく
する具体的な方法として、活物質層を、ローラを用いてロールプレスすることにより加圧
し、活物質粒子間の隙間を低減させることなどがある。
<2−4.正極>
以下に本発明の非水系電解液電池に使用される正極について説明する。
<2−4−1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
(1)組成
本発明の非水系電解液二次電に用いる正極は、組成式(1)で表されるリチウム遷移金
属酸化物が使用される。
Lia1Nib1Coc1d1・・・(1)
(式(1)中、0.90≦a1≦1.10、0.50≦b1≦0.98、0.01≦c1
<0.50、0.01≦d1<0.50の数値を示し、b1+c1+d1=1を満たす。
MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1
種の元素を表す。)
組成式(1)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、L
iNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.80Co0.15Al0.
05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.50Mn
.29Co0.21、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8
0.1Mn0.1等が挙げられる。
組成式(1)である遷移金属酸化物が下記組成式(2)で示されることが好ましい。ア
ルカリ不純物と一般式(A)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス抑制効
果がより高まるからである。
Lia2Nib2Coc2d2・・・(2)
(式(2)中、0.90≦a2≦1.10、0.50≦b2≦0.90、0.05≦c2
≦0.30、0.05≦d2≦0.30の数値を示し、かつb2+c2+d2=1を満た
す。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくと
も1種の元素を表す。)
組成式(1)である遷移金属酸化物が下記組成式(3)で示されることがさらに好まし
い。アルカリ不純物と一般式(A)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス
抑制効果がさらに高まるからである。
Lia3Nib3Coc3d3・・・(3)
(式(3)中、0.90≦a3≦1.10、0.50≦b3≦0.80、0.10≦c3
≦0.30、0.10≦d3≦0.30の数値を示し、かつb3+c3+d3=1を満た
す。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくと
も1種の元素を表す。)
組成式(3)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、L
iNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co
.21、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn
0.1等が挙げられる。
組成式中、MはMn、Alが好ましい。遷移金属酸化物の構造安定性が高まり、繰り返
し充放電した際の構造劣化が抑制される。中でも、Mnがさらに好ましい。
また、上記の正極活物質のうち2種類以上を混合して使用してもよい。同様に、上記の
正極活物質のうち少なくとも1種以上と他の正極活物質とを混合して使用してもよい。他
の正極活物質の例としては、上記に挙げられていない遷移金属酸化物、遷移金属燐酸化合
物、遷移金属ケイ酸化合物、遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
中でも、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物やオリビン型構造を有す
るリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。具体的にはスピネル型構造を有するリチ
ウムマンガン複合酸化物として、LiMn、LiMn1.8Al0.2、Li
Mn1.5Ni0.5等が挙げられる。中でも最も構造が安定であり、非水系電解液
電池の異常時にも酸素放出しにくく、安全性に優れるためである。
また、リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、
Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO、Li
Fe(PO、LiFeP等の燐酸鉄類、LiCoPO等の燐酸コバル
ト類、LiMnPO等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体
となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、C
u、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの
等が挙げられる。
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であ
り、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePO
より好ましい具体例として挙げることができる。
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物
質(以後、適宜「表面付着物質」という)が付着したものを用いることもできる。表面付
着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸
化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化
物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム
、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の
炭酸塩、炭素等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させ
た後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸
添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成す
る方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場
合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いること
ができる。
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、
好ましくは0.1ppm以上であり、1ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更
に好ましい。また、好ましくは20%以下であり、10%以下がより好ましく、5%以下
が更に好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することがで
き、電池寿命を向上させることができる。また、付着量が上記範囲内にあると、その効果
を十分に発現することができ、リチウムイオンの出入りを阻害することなく抵抗も増加し
難くなる。
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、
板状、針状、柱状等が用いられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り
、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であってもよい。
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g・cm−3以上であり、1.0g・c
−3以上がより好ましく、1.5g・cm−3以上が更に好ましい。また、好ましくは
4.0g・cm−3以下であり、3.7g・cm−3以下がより好ましい。
タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形
成することができる。正極活物質のタップ密度が上記範囲内にあると、正極活物質層形成
時に必要な分散媒の量が適度なものとなるため、導電材やバインダーの量も適量となるた
め、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約されることなく、電池容量への影響も少
なくなる。
正極活物質のタップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm
タッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セ
イシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを100
0回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタッ
プ密度を、本発明における正極活物質のタップ密度として定義する。
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場
合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することが
できる。
メジアン径d50は、好ましくは0.1μm以上であり、0.5μm以上がより好まし
く、1μm以上が更に好ましく、3μm以上が特に好ましく、また、好ましくは30μm
以下であり、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下
が特に好ましい。メジアン径d50が上記範囲内であると、高嵩密度品を得易くなり、さ
らに、粒子内のリチウムの拡散に時間がかからないため、電池特性が低下し難くなる。ま
た、電池の正極作製すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜
状に塗布する際には、スジ引き等も生じ難くなる。
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合する
ことで、正極作製時の充填性を更に向上させることもできる。
正極活物質のメジアン径d50の測定は、0.1質量%ヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶
液を分散媒として用い、粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−920)を用いて、
正極活物質の分散液に対して5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定
する。
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、好
ましくは0.01μm以上であり、0.05μm以上がより好ましく、0.08μm以上
が更に好ましく、0.1μm以上が特に好ましく、また、好ましくは3μm以下であり、
2μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.6μm以下が特に好ましい
。上記範囲内であると、球状の二次粒子を形成し易くなり、粉体充填性が適度なものとな
り、比表面積を十分確保できるため、出力特性等の電池性能の低下を抑制することができ
る。
なお、正極活物質の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察によ
り測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次
粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平
均値をとることにより求められる。
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、好ましく
は0.2m・g−1以上であり、0.3m・g−1以上がより好ましく、0.4m
・g−1以上が更に好ましく、また、好ましくは4.0m・g−1以下であり、2.5
・g−1以下がより好ましく、1.5m・g−1以下が更に好ましい。BET比表
面積の値が、上記範囲内であると、電池性能の低下を防ぎ易い。さらに、十分なタップ密
度を確保でき、正極活物質形成時の塗布性が良好となる。
正極活物質のBET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置
)を用いて測定する。具体的には、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾
燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した
窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定す
る。該測定で求められる比表面積を、本発明における正極活物質のBET比表面積と定義
する。
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、
いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばそ
の1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の
原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状
の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、Li
NO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属
原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、
それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにL
iOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法
が挙げられる。
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原
料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原
料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥
成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙
げられる。
<2−4−2.正極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成し
て作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製すること
ができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を
乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体
媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することに
より、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量
%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量
%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であ
ると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、本発
明における正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物
性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上の活物質を組み合
わせて用いる際は、前記リチウムとマンガンを含有する複合酸化物を粉体の成分として用
いることが好ましい。コバルト又はニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動
車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コ
ストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いること
が望ましいためである。
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニ
ッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラッ
ク等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられ
る。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率
で併用してもよい。
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質
量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以
下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。含有量が上
記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対
して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれ
ば特に限定されないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン
テレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセ
ルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニ
トリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・
プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又
はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン
・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック
共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−
1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン
・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、
ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチ
レン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン
)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を
単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量
%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下
であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以
下が特に好ましい。バインダーの割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持で
き、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さら
に、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質
、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが
可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用い
てもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒体等が挙げられる。有
機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン
、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセ
トン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メ
チル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等
のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メ
チルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類
;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等
を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任
意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン
ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤
は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセ
ルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれら
の塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及
び比率で併用してもよい。
増粘剤を使用する場合には、正極活物質に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質
量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、
また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更
に好ましい。増粘剤の割合が、上記範囲内であると、塗布性が良好となり、さらに、正極
活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、電池の容量が低下する問題や正
極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の
充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ま
しい。正極活物質層の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.5g・cm−3以上
が更に好ましく、2g・cm−3以上が特に好ましく、また、4g・cm−3以下が好ま
しく、3.5g・cm−3以下が更に好ましく、3g・cm−3以下が特に好ましい。正
極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の
浸透性が低下することなく、特に高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物
質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。
具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の
金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属
材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金
属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場
合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。
なお、薄膜は、適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好まし
く、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下が
より好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集
電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の
片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下が
より好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以
上がより好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範
囲内であると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さ
らに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐこと
ができる。
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケース
の外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液電池の外装の
表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく
、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状
の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの
寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた
発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面
積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電
体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する
面積の総和をいう。
(放電容量)
本発明の非水系電解液を用いる場合、非水系電解液電池の1個の電池外装に収納される
電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)
が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるた
め好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ahであり、より
好ましくは4Ah以上、また、好ましくは100Ah以下であり、より好ましくは70A
h以下であり、特に好ましくは50Ah以下になるように設計する。非水系電解液電池の
1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、上記範囲内であると、大電流の
取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐこ
とができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず
、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対
して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、
集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上
が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μ
m以下がより好ましい。
<2−5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この
場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない
限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し
安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔
性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィ
ルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンで
あり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよ
く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく
、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好まし
く、30μm以下がより好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機
械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性
能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液電池全体としてのエネルギー密度が
低下する場合がある。
セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの
空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がよ
り好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がより好
ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化
する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、
絶縁性が低下する傾向にある。
セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が
好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡
が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する
場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化ア
ルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ
、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄
膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。
前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて、前記無機物の粒子を含有する
複合多孔層を、正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることがで
きる。例えば、フッ素樹脂を結着剤として用いて、90%粒子径が1μm未満のアルミナ
粒子を含有する複合多孔層を、正極の両面の表層に形成させることが挙げられる。
<2−6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、
及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもの
の何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する
。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、
80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。
また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が
膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての
充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃
がすガス放出弁が作動する場合がある。
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向
上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが
好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は
特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形
成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大
きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電
極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端
子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
[外装ケース]
外装ケースの材質は、用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば、特に限定
されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又は
アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィル
ム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニ
ウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属
同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属
類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケ
ースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。
シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異な
る樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする
場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極
性基を導入した変性樹脂が好適に用いられる。
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Po
sitive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サ
ーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流
を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動し
ない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常
発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
[外装体]
本発明の非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等
を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損な
わない限り公知のものを任意に採用することができる。
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、
ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の
何れであってもよい。
<2−7.非水系電解液電池の製造方法>
本発明の非水系電解液電池は、円筒、角型のような電池外装体に負極、正極、セパレー
タなどから成る極板群を収納した後、非水系電解液を注液し、電池外装体の開口部を密閉
する工程を経て製造される。極板群は、高密度に積層または積層状態で捲回したものであ
るため、非水系電解液の注液工程では、極板群の小さな隙間に非水系電解液を浸透させる
必要があるが、極板群が高密度になるほど非水系電解液は浸透しにくくなり、所定量の非
水系電解液を極板群に含浸させるには長時間を要すことになる。非水系電解液の負極への
吸液係数を高めることは、この注液工程における、極板群への電解液含浸速度を速めるこ
とに繋がるため、注液工程時間を短くすることができ、非水系電解液電池の生産性も向上
することになる。
非水系電解液の負極に対する吸液係数は、基本的に非水系電解液の粘度が低いほど、ま
た負極の平均毛管半径が大きいほど、負極に浸透する電解液の流動性は良くなるため、吸
液係数は改善される方向だが、本願発明の負極と非水系電解液の組み合わせのように、特
定のサイズ以下の負極の毛管半径の流路になると、特定の粘度以下のジフルオロリン酸塩
を含む非水系電解液においては、負極の平均毛管半径が小さいほどジフルオロリン酸塩が
特異的に負極に浸透していくと考えられ、ジフルオロリン酸塩を含まない非水系電解液よ
りも吸液係数が良くなることが分かった。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要
旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、本願発明は負極と電解液の組合せに特徴を有し、電解液の負極への吸液係数の改
善を課題とする非水系電解液電池であるため、以下では、負極と電解液のみを作製し、吸
液係数改善効果について検証を行った。
<電極シートの作製>
平均粒径17.5μmの球形化天然黒鉛質粒子95重量%と、平均粒径5.2μmのS
iO粒子(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ)5重量%からなる負極活物質を用い
、平均毛管半径26nm、45nmの活物質層を有する極板を作製した。具体的には、活
物質粒子50.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
水溶液を50.00±0.02g(固形分換算で0.500g)、及び重量平均分子量2
7万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン1.00±0.05g(固形分換
算で0.5g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡して
スラリーを得た。
このスラリーを、集電体である厚さ10μmの銅箔上に、負極材料が30.00±0.
3mg/cm2付着するように、サンク社製コーターを用いて幅10cmに塗布し、直径
20cmのローラを用いてロールプレスして電極シートを得た。この際、ローラ間の隙間
を調整することで加圧量を変更し、活物質粒子間の隙間を制御することで、活物質層の平
均毛管半径がそれぞれ26nm、45nmである複数の電極シートを得た。
(参考例1)
<非水系電解液の調製>
非水系溶媒として、エチレンカーボネート(30体積%)とエチルメチルカーボネート
(70体積%)の混合溶媒を準備し、この非水系溶媒に電解質としてLiPFを1.0
mol/Lになるように溶解させ、さらに、ジフルオロリン酸リチウムを1wt%添加し
て非水系電解液を調製した。非水系電解液の粘度を先に記載の方法で測定したところ、3
.78mPa・sであった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、先に記載の方法で吸液係数の測定を行った。
結果を表1に示す。
(参考例2)
<非水系電解液の調製>
LiPFを1.2mol/Lになるよう溶解させたこと以外は、参考例1と同様に非
水系電解液を調製した。参考例1と同様に非水系電解液の粘度を測定したところ、4.3
9mPa・sであった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
<非水系電解液の調製>
LiPFを1.5mol/Lになるよう溶解させたこと以外は、参考例1と同様に非
水系電解液を調製した。参考例1と同様に非水系電解液の粘度を測定したところ、6.1
5mPa・sであった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
<非水系電解液の調製>
ジフルオロリン酸リチウムを添加しなかったこと以外は、参考例1と同様に非水系電解
液を調製した。参考例1と同様に非水系電解液の粘度を測定したところ、3.45mPa
・sであった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
<非水系電解液の調製>
ジフルオロリン酸リチウムを添加しなかったこと以外は、参考例2と同様に非水系電解
液を調製した。参考例2と同様に非水系電解液の粘度を測定したところ、3.98mPa
・sであった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例2と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
<非水系電解液の調製>
ジフルオロリン酸リチウムを添加しなかったこと以外は、比較例1と同様に電解液を調
製した。比較例1と同様に非水系電解液の粘度を測定したところ、5.48mPa・sで
あった。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が26nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、比較例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
<非水系電解液の調製>
参考例1と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例6)
<非水系電解液の調製>
参考例2と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、参考例2と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例7)
<非水系電解液の調製>
比較例1と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、比較例1と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例8)
<非水系電解液の調製>
比較例2と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、比較例2と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例9)
<非水系電解液の調製>
比較例3と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、比較例3と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例10)
<非水系電解液の調製>
比較例4と同様に電解液を調製した。
<吸液係数の測定>
先に作製した活物質層の平均毛管半径が45nmの電極シートに、上記調製した非水系
電解液を組み合わせ、比較例4と同様に吸液係数の測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006944394
上記参考例1、2及び比較例1〜10で得られた結果を、横軸に非水系電解液粘度、縦
軸に吸液係数をプロットしたグラフを図1に示す。ジフルオロリン酸リチウムの有無、及
び平均毛管半径26/45nmでグラフ上のマークを変更した(グラフ中、ジフルオロリ
ン酸リチウムをDFLと記載した)。
図1より、非水系電解液粘度を低くすることで、吸液係数が大きくなる傾向にあること
が判る。また、平均毛管半径を小さくすることでも、吸液係数を増大させることができる
が、平均毛管半径が44nmを超える場合は、非水系電解液にジフルオロリン酸リチウム
を添加しても吸液係数はほとんど変わらないことが判る。一方、平均毛管半径が44nm
以下で、かつ、非水系電解液の粘度が4.4mPa・s以下の領域においては、非水系電
解液にジフルオロリン酸リチウムを添加することで、吸液係数を明らかに増大させること
が可能であることが判った。
本発明の非水系電解液電池によれば、非水系電解液電池の製造時の生産効率を高めるこ
とができる。
また、本発明の非水系電解液電池は、非水系電解液電池を用いる公知の各種用途に用い
ることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モ
バイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯
プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナ
ー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード
、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、バイク、原動機付自転
車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用
バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵
電源等が挙げられる。

Claims (7)

  1. 正極、負極及び非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、
    該負極の活物質層の平均毛管半径が44nm以下であり、
    該非水系電解液が、ジフルオロリン酸塩を含有し、粘度が4.4mPa・s以下である
    ことを特徴とする、非水系電解液電池。
  2. 前記負極が、Liと合金化可能な金属と、黒鉛と、を含有する負極活物質を含むことを
    特徴とする、請求項1に記載の非水系電解液電池。
  3. 前記Liと合金化可能な金属が、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる
    群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその金属化合物である、請求項2に記載の非水
    系電解液電池。
  4. 前記Liと合金化可能な金属が、Si又はSi金属酸化物である、請求項2または3に
    記載の非水系電解液電池。
  5. 前記Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質が、金属及び/又は金属
    化合物と黒鉛との複合体及び/又は混合体である、請求項2乃至4のいずれか1項に記載
    の非水系電解液電池。
  6. 前記Liと合金化可能な金属と黒鉛と、を含有する負極活物質の合計に対する、前記L
    iと合金化可能な金属の含有量が、0.1〜25質量%である、請求項2乃至5のいずれ
    か1項に記載の非水系電解液電池。
  7. 前記非水系電解液の全量に対する前記ジフルオロリン酸塩の含有量が0.001質量%
    以上10質量%以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水系電解液電池。
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