以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。すなわち、図1は、一実施形態に係る電子機器によって被検者が生体情報を測定している様子を示す図である。
図1に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば被検者の手首のような箇所を被検部位として、被検者の生体情報を測定することができる。図1に示す例において、電子機器1は、被検者の左手首の被検部位に当接された状態にある。図1に示す例において、電子機器1は、被検者の左手の掌から肘側に向かう途中の手首部分を被検部位として、当該被検部位に当接された状態にある。
図1に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、筐体10と、立掛け部20とを備えている。筐体10は、電子機器1の電源をオン/オフするスイッチ13などを備えてもよい。筐体10は、後述のように、被検者の被検部位における脈動を検出可能なセンサ50を含んでいる。また、立掛け部20は、被検者などに押圧される個所である押圧部22を備えてもよい。さらに、立掛け部20は、伸長可能な伸長部24を備えてもよい。電子機器1を構成する各機能部は、さらに後述する。
図1に示すY軸の正方向を、適宜、「上」方向とも記す。また、図1に示すY軸の負方向を、適宜、「下」方向とも記す。すなわち、図1に示す上方向及び下方向は、被検者の視点から見た上方向及び下方向と、それぞれほぼ同じ方向としてよい。
図1において、Z軸の正方向に向く視点から見られる電子機器1の部分を、電子機器1の「背面」と記す。すなわち、図1において、電子機器1の背面とは、電子機器1の立掛け部20において押圧部22が平面視される部分である。また、図1において、Z軸の負方向に向く視点から見られる電子機器1の部分を、電子機器1の「正面」と記す。すなわち、図1において、すなわち、図1において、電子機器1の正面とは、電子機器1の筐体10において被検者の被検部位に当接する面が平面視される部分である。
図1に示すような電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定するための準備として、例えば以下のようにしてよい。まず、被検者は、生体情報を測定する方の腕(図1に示す例においては被検者の左腕)を、例えばテーブル又はデスクのような安定した台などの上に乗せてよい。図1において、上述のテーブル又はデスクのような台は、例えば図に示すXZ平面に平行な(つまりY軸に垂直な)甲板(天板)を有するものとしてよい。すなわち、被検者は、生体情報を測定する方の腕を、図に示すY軸に垂直な天板を有する台などの上に乗せてよい。この際、被検者の生体情報を測定する方の手(図1に示す左手)の掌は、図に示すZ軸の負方向側に向くか、又はZ軸の負方向側から幾分Y軸の正方向側に向くようにしてよい。
次に、被検者は、電子機器1の立掛け部20を被検部位側に立て掛けて、電子機器1の筐体10が被検者の被検部位に当接した状態になるようにしてよい。電子機器1の立掛け部20を立て掛ける際は、例えば立掛け部20の伸長部24が、上述のテーブル又はデスクのような台の甲板(天板)の上に立てられるようにしてよい。この時、被検者は、電子機器1のセンサ50が被検部位における脈動を良好に検出できる位置に配置されるように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。この場合、被検者は、生体情報を測定しない方の手(図1に示す例においては被検者の右手)を用いて、電子機器1の位置決めをしてよい。
次に、被検者は、図1に示すように、生体情報を測定しない方の手(図1に示す例においては被検者の右手)の指などを用いて、電子機器1を被検部位側に押圧してよい。図1に示す例において、電子機器1は、被検者の右手の人差し指によって被検部位側に押さえつけられている。図1に示すように、一実施形態に係る電子機器1の立掛け部20は、被検者などによって押圧される押圧部22を備えてもよい。一実施形態に係る電子機器1は、図1に示すように、被検部位側に押さえつけられている状態で、被検者の生体情報を測定する。被検者が電子機器1を被検部位側に押さえつける指は、右手の人差し指に限定されない。電子機器1は、適度な押圧力で被検部位側に押さえつけられることができれば、任意の態様で押圧されてよい。
電子機器1は、被検者の被検部位に当接されることにより、当該被検部位における脈動を検出することができる。ここで、被検者の被検部位とは、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位としてよい。また、被検者の被検部位とは、被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に限定されず、被検者の脈動が検出可能な部位であれば任意の部位としてもよい。図1は、被検者の手首の皮下において橈骨動脈が配置された部位を被検部位として、電子機器1が当該被検部位に当接された状態を示している。
図2は、被検者の被検部位について説明する図である。より詳細には、図2は、被検者が、電子機器1を使用して生体情報を測定する前に、自らの被検部位において脈動が良好に検出可能な個所を探っている様子の例を示している。すなわち、図2は、被検者が、自らの左手の被検部位において脈動が良好に検出可能な箇所を、自らの右手の指を用いて探っている様子を示している。図2において、被検者は、図1の場合と同様に、自らの左腕をテーブル又はデスクのような台などの上に乗せているものとしてよい。また、図2において、被検者の腕の皮下に存在する橈骨動脈及び筋は、破線又は鎖線などによって示されている。
上述のように、被検者は、電子機器1のセンサ50が脈動を良好に検出可能な位置に配置されるように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。被検者の被検部位において脈動が良好に検出可能な位置は、被検者によって個体差(個人差)がある。そこで、被検者は、電子機器1を使用して生体情報を測定する前に、自らの被検部位において脈動が良好に検出可能な位置を探るようにしてよい。
多くの場合、被検者の手首付近において脈動が良好に検出可能な位置は、皮下に橈骨動脈が走る位置であって、さらに皮下に橈骨茎状突起が存在する位置、又はその近傍になる。橈骨茎状突起の上を橈骨動脈が走っている箇所において、橈骨動脈は比較的硬い橈骨茎状突起の上に載置される。このような位置において、橈骨動脈が脈動により収縮する際の動きは、比較的硬い橈骨茎状突起の側よりも、比較的柔らかい被検者の皮膚の側に伝わり易くなる。したがって、一実施形態に係る電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定する際は、上述のような位置を被検部位としてよい。
図2に示すように、被検者は、自らの右手の指先によって、自らの左手の手首周辺の例えば図に示す位置において、良好な脈動を探り当てたとする。この場合、被検者は、自らの右手の指先によって良好な脈動を探り当てた位置を被検部位としてよい。このようにして、被検者は、図1に示すように、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させてよい。また、図2に示す筋の位置が被検部位に多く含まれるようにすると、橈骨動脈の脈動が電子機器1の筐体10(及びセンサ50)に良好に伝わりにくくなり得る。したがって、被検者は、電子機器1の筐体10を被検部位に当接させる際は、電子機器1の筐体10(及びセンサ50)が、なるべく筋を避けて橈骨動脈に押し当てられるように配置してよい。電子機器1の筐体10において、被検者の被検部位に当接させる箇所については、さらに後述する。また、図1に示すように、電子機器1を使用して被検者の生体情報を測定する際には、被検者は、全身をリラックスさせるような心理状態を心掛けてよく、生体情報を測定する方の手(例えば左手)の掌を軽く開いた状態としてよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1の構成について、さらに説明する。図3及び図4は、図1に示したような電子機器1が、X軸の負方向に向く視点から見られた状態を示す図である。すなわち、図3及び図4は、図1に示したような電子機器1の右側面を示す図である。また、図5及び図6は、図1に示したような電子機器1が、Z軸の負方向に向く視点から見られた状態を示す図である。すなわち、図5及び図6は、図1に示したような電子機器1の正面を示す図である。
図3乃至図6に示すように、電子機器1は、筐体10及び立掛け部20を含んで構成される。電子機器1において、筐体10と立掛け部20とは、後述のように弾性部材を介して接続される。筐体10及び/又は立掛け部20は、例えば、セラミック、鉄その他の金属、樹脂、プラスチック又はアルミのような材料によって形成されてよい。筐体10及び/又は立掛け部20は、硬質かつ軽量の材料によって形成されてよい。筐体10及び/又は立掛け部20の素材は特に限定されないが、測定装置としての機能を果たす程度の強度を有してよい。また、筐体10及び/又は立掛け部20の素材は、重量が過度に大きいものではなく、比較的軽量のものとしてよい。
電子機器1の筐体10及び立掛け部20のサイズは、特に限定されないが、持ち運ぶ際の利便性及び/又は測定の容易性などを考慮して、比較的小型としてよい。例えば、電子機器1の全体は、例えば1辺が7cm前後の立方体又は直方体に含まれる程度のサイズとしてよい。しかしながら、一実施形態において、電子機器1の全体のサイズは、上述の大きさよりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。また、電子機器1の筐体10及び立掛け部20などの各部の形状も、図に示したような形状に限定されるものではなく、測定装置としての機能性及び/又は意匠的な観点などを考慮して、種々の形状としてよい。
後述のように、筐体10と立掛け部20とは、互いにある程度自由に動くことができる。すなわち、電子機器1において、筐体10が固定された状態でも、立掛け部20はある程度自由に動くことができる。また、電子機器1において、立掛け部20が固定された状態でも、筐体10はある程度自由に動くことができる。例えば、図3及び図4に示すように、電子機器1において、筐体10は、図に示す矢印DU及び/又は矢印DLの方向に、ある程度自由に動くことができる。
図3乃至図6に示すように、電子機器1の立掛け部20は、例えばその下端に伸長部24を備えてもよい。伸長部24は、立掛け部20から伸長可能に構成される。図3及び図5は、伸長部24を立掛け部20から伸長させていない状態を示している。一方、図4及び図6は、伸長部24を立掛け部20から伸長させた状態を示している。すなわち、図3及び図5において伸長部24を矢印E1の方向に伸長させると、図4及び図6に示すように、立掛け部20から延在するように伸長部24を伸長させることができる。一方、図4及び図6において伸長部24を矢印E2の方向に収縮させると、図3及び図5に示すように、伸長部24を元の位置に戻すことができる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、伸長部24を伸長又は収縮させることにより、立掛け部20の上下方向の長さを調整可能にしてもよい。
また、立掛け部20の上下方向の長さが伸長部24によって調整可能になることにより、筐体10の上下方向(高さ方向)の位置が調整可能になる。したがって、図1に示すような被検者の左手首の太さにある程度の個人差があったとしても、被検者の被検部位の上下方向の位置に応じて、筐体10が被検者の被検部位に当接する位置は調整可能になる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、立掛け部20は、矢印E1及び/又は矢印E2のような所定の方向に伸長可能又は収縮可能に構成されることにより、筐体10の高さ方向の位置を調整し得るようにしてもよい。
伸長部24は、立掛け部20から無段階に伸長可能に構成されてもよい。すなわち、伸長部24は、例えば所定の長さまで、任意の位置において位置決め可能に構成されてもよい。このように構成すれば、被検者の被検部位を含む手首の太さに個人差があったとしても、電子機器1において筐体10が被検者の被検部位に当接する位置を細かく調整することができる。
また、伸長部24は、立掛け部20から段階的に伸長可能に構成されてもよい。すなわち、伸長部24は、例えば所定の長さまで、予め定められた複数の所定の位置において位置決めし易い機構を含んで構成されてもよい。例えば、伸長部24は、立掛け部20から伸縮する際に多段階でロックされる多段式ステーのような機構を含んでもよい。このように構成すれば、被検者が電子機器1を使用して生体情報を測定する際に、例えば前回の測定と同じ測定環境が再現し易くなる。このように、一実施形態に係る電子機器1において、立掛け部20は、例えば伸長部24を備えることにより、矢印E1及び/又は矢印E2のような所定の方向に段階的に伸長可能又は収縮可能に構成されてもよい。
図3乃至図6に示すように、電子機器1の筐体10は、被検者の被検部位に当接させる部分として、第1当接部11を備えてもよい。第1当接部11は、筐体10の被検部位側に設置されてよい。第1当接部11は、例えば脈あて部のような部材として機能してもよい。また、図3乃至図6に示すように、電子機器1の筐体10は、被検者の被検部位又は当該被検部位の近傍に当接させる部分として、第2当接部12を備えてもよい。第2当接部12は、被検者の被検部位において第1当接部11が当接する位置の近傍に当接させてもよい。第2当接部12も、筐体10の被検部位側(被検者の手首側)に設置されてよい。
第1当接部11は、上述のように、電子機器1によって被検者の生体情報を測定する際に、被検者の被検部位に適切に当接させる部材である。したがって、第1当接部11は、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に適切に当接するような大きさとしてよい。例えば、第1当接部11は、図5及び図6に示すように、X軸方向又はY軸方向の幅が1cm乃至1.5cm程度としてもよい。また、第1当接部11は、X軸方向又はY軸方向の幅が1cm乃至1.5cm程度以外でもよい。
第1当接部11及び第2当接部12は、例えば、セラミック、鉄その他の金属、樹脂、プラスチック又はアルミのような材料によって形成されてよい。第1当接部11及び第2当接部12は、硬質かつ軽量の材料によって形成されてよい。第1当接部11及び第2当接部12の素材は特に限定されない。第1当接部11及び第2当接部12の素材は、筐体10及び/又は立掛け部20と同様に、測定装置としての機能を果たす程度の強度を有し、比較的軽量のものとしてよい。
また、図3乃至図6に示すように、電子機器1の筐体10は、スイッチ13を備えてもよい。スイッチ13は、例えば電子機器1の電源のオン/オフを切り替えるスイッチとしてよい。また、スイッチ13は、例えば電子機器1に生体情報の測定を開始させるスイッチとしてもよい。図3乃至図6は、スイッチ13がスライドスイッチによって構成される例を示している。しかしながら、スイッチ13は、例えば押しボタンスイッチなど、任意のスイッチによって構成されてよい。例えば、スイッチ13が押しボタンスイッチによって構成される場合、スイッチ13が押される回数及び/又は押されている時間などに基づいて、電子機器1の各種の動作を対応させてよい。スイッチ13が配置される個所は、図3乃至図6に示す例に限定されず、任意の箇所に配置してよい。例えば、スイッチ13は、立掛け部20に配置してもよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1によって生体情報の測定が行われる態様について説明する。
図7は、被検者が電子機器1によって生体情報の測定を行う際の様子を示している。図7は、図1に示した電子機器1を側方から見た状態を、被検者の手首の断面とともに示す図である。すなわち、図7は、図1に示したような電子機器1が、X軸の負方向に向く視点から見られた状態を、被検者の手首の断面とともに示す図である。
図7に示すように、被検者の左手首は、テーブル又はデスクのような台の甲板(天板)100の上面に載せられている。また、図7に示すように、電子機器1は、立掛け部20の下端の伸長部24がテーブル又はデスクのような台の甲板(天板)100の上面に接するようにして、被検者の被検部位側に立て掛けられている。図7に示す例は、電子機器1の立掛け部20において、伸長部24がいくぶん伸長されている状態を示している。このように配置された状態で、電子機器1は、例えば被検者の右手などによって図7に示す矢印Pの方向に押圧されるようにして、生体情報の測定を開始することができる。本開示の電子機器1は、立掛け部20の下端の伸長部24がテーブル又はデスクのような台の甲板(天板)100の上面に接しないで利用されるとしてもよい。
図7に示すように、第1当接部11は、被検者の被検部位に直接的又は間接的に接触してよい。また、第2当接部12は、図7に示すように、第1当接部11が被検者の被検部位に接触している部位の近傍に直接的又は間接的に接触してよい。一般的な被検者の手首の被検部位を含む表面は、図7に示すように、曲面的な形状を有する。このため、筐体10において第1当接部11と第2当接部12とのZ軸方向の長さを同じにすると、第2当接部12が被検者の手首に接触した状態で、第1当接部11が被検者の手首(被検部位)から浮いた状態になり得る。そこで、一実施形態において、図7に示すように、第1当接部11のZ軸方向の長さは、第2当接部のZ軸方向の長さよりも長くなる形状としてもよい。このようにすれば、第2当接部12が被検者の手首の一部(例えば図7に示すSの部分)に接触した状態で、第1当接部11を被検者の被検部位に適切に当接させることができる。
このように、一実施形態において、第1当接部11は、例えば図7に示すZ軸方向に、第2当接部12よりも、筐体10から突出しているようにしてもよい。すなわち、第1当接部11が筐体10からZ軸正方向に突出する長さは、第2当接部12が筐体10からZ軸正方向に突出する長さよりも大きくしてもよい。
第1当接部11の形状は、図3乃至図7に示したような形状に限定されず、被検者の被検部位に適切に当接させることができる任意の形状としてよい。同様に、第2当接部12の形状も、図3乃至図7に示したような形状に限定されず、被検者の手首の一部(例えば図7に示すSの部分)に適切に当接させることができる任意の形状としてよい。
図7に示すように、電子機器1の立掛け部20は、押圧部22を備えてよい。押圧部22は、電子機器1において、被検者の指先などによって押圧される箇所としてよい。すなわち、被検者などは、押圧部22を見る(又は触る)ことによって、指先などによって押圧部22を押圧すべきことを認識することができる。図7に示すように、押圧部22は、立掛け部20の背面(Z軸負方向側を向く面)側に形成されてよい。図7に示す例においては、押圧部22は、立掛け部20の中央よりもやや上方向(Y軸正方向)の位置に形成されている。しかしながら、押圧部22は、例えば立掛け部20のほぼ中央に形成するなど、電子機器1が生体情報を測定する態様に応じて、種々の位置に形成されてよい。
また、図7に示す例においては、押圧部22は、立掛け部20に形成された浅い凹部として示してある。しかしながら、押圧部22の形状は浅い凹部に限定されない。例えば、押圧部22は、立掛け部20に形成された浅い凸部などとして形成してもよい。また、押圧部22は、例えば、立掛け部20に塗料などでペイントされた単なるマークとしてもよい。押圧部22は、電子機器1において、被検者の指先などによって押圧される箇所を示すものであれば、任意に構成してよい。
電子機器1は、第1当接部11が被検者の手首などの被検部位に当接されて、押圧部22が被検者の指先などによって押圧されることにより、図1又は図7に示したような生体情報の測定時の状態になる。電子機器1が被検者の手首などの被検部位に当接される際は、第1当接部11が被検者の被検部位に当接するように位置決めされてよい。この時、図7に示すように、第1当接部11は、例えば被検者の尺骨動脈又は橈骨動脈が皮下に存在する部位に当接するように位置決めされてよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1が被検者の生体情報を測定する被検部位とは、例えば被検者の橈骨動脈又は尺骨動脈が皮下に流れる位置としてよい。
図8及び図9は、電子機器1の断面を、被検者の手首の断面とともに示す図である。図8は、図7に示した電子機器1の断面を、被検者の手首の断面とともに示す図である。図9は、図8に示した電子機器1の押圧部22が、図に示す矢印Pの方向に押圧された状態を示す断面図である。
図8及び図9に示すように、電子機器1は、外観上、筐体10及び立掛け部20を備えている。また、上述のように、筐体10は第1当接部11及び第2当接部12を備えている。また、立掛け部20は押圧部22及び伸長部24を備えている。
さらに、電子機器1の筐体10は、図8及び図9に示すように、基板30備えてもよい。基板30は、各種電子部品などを配置することができる一般的な回路基板としてよい。一実施形態において、電子機器1の筐体10は、基板30を内蔵してよい。
基板30のZ軸負正向側の面には、各種の電子部品を配置してよい。図8及び図9に示す例において、基板30のZ軸負正向側の面には、報知部40、センサ50、制御部52、記憶部54、及び通信部56が配置されている。また、上述したスイッチ13なども、基板30に配置してもよい。
報知部40は、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知する。報知部40は、例えば発光ダイオード(LED)などによる発光部としてよい。また、報知部40は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等の表示デバイスとしてもよい。これらのような表示デバイスを報知部40として採用すれば、例えば、被検者の糖代謝又は脂質代謝の状態のような、比較的詳細な情報を表示することもできる。
報知部40は、生体情報の測定結果などの情報のみならず、例えば電子機器1の電源のオン/オフ、又は、生体情報の測定中か否かなどのような情報を、被検者に報知してもよい。この時、報知部40は、例えば生体情報の測定結果などの情報を報知する際とは異なる態様の発光によって、電子機器1の電源のオン/オフ、又は、生体情報の測定中か否かなどのような情報を報知してもよい。
一実施形態において、報知部40は、発光部によって構成されていなくてもよい。例えば、報知部40は、スピーカ又はブザーのような音出力部によって構成されてもよい。この場合、報知部40は、各種の音又は音声などによって、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知してよい。
また、一実施形態において、報知部40は、例えばバイブレータ又は圧電素子のような触感呈示部によって構成されてもよい。この場合、報知部40は、各種の振動又は触感フィードバックなどによって、被検者などに例えば生体情報の測定結果などの情報を報知してよい。
センサ50は、例えば角速度センサを含み、被検部位から脈動を検出して脈波を取得する。センサ50は、被検者の脈波に基づく第1当接部11(脈あて部)の変位を検出してもよい。また、センサ50は、例えば、加速度センサとしてもよいし、ジャイロセンサのようなセンサとしてもよい。また、センサ50は、角速度センサとしてもよい。センサ50については、さらに後述する。
図8及び図9に示すように、センサ50は基板30に固定される。また、基板30は、筐体10の内部に固定される。さらに、筐体10の外部には第1当接部11が固定される。このため、第1当接部11の動きは、筐体10、及び基板30を経て、センサ50に伝達される。したがって、センサ50は、第1当接部11、筐体10、及び基板30を介して、被検者の被検部位における脈動を検出することができる。
図8及び図9に示す例において、センサ50は、筐体10に内蔵された状態で配置されている。しかしながら、一実施形態において、センサ50は、筐体10に全体として内蔵されていなくてもよい。一実施形態において、センサ50は、筐体10の少なくとも一部に含まれていてもよい。センサ50は、第1当接部11、筐体10、及び基板30の少なくともいずれかの動きが伝達される任意の構成としてもよい。
制御部52は、電子機器1の各機能ブロックをはじめとして、電子機器1の全体を制御及び管理するプロセッサである。また、制御部52は、取得された脈波から、脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプロセッサである。制御部52は、制御手順を規定したプログラム及び脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成され、かかるプログラムは、例えば記憶部54等の記憶媒体に格納される。また、制御部52は、算出した指標に基づいて、被検者の糖代謝又は脂質代謝等に関する状態を推定する。制御部52は、報知部40へのデータの報知を行ったりしてもよい。
記憶部54は、プログラム及びデータを記憶する。記憶部54は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。記憶部54は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。記憶部54は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部54は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。記憶部54は、各種情報及び/又は電子機器1を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部54は、例えばセンサ50により取得された脈波の測定結果を記憶してもよい。
通信部56は、外部装置と有線通信又は無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。通信部56は、例えば、健康状態を管理するために被検者の生体情報を記憶する外部装置と通信を行い、電子機器1が測定した脈波の測定結果、及び/又は電子機器1が推定した健康状態を、当該外部装置に送信する。通信部56は、例えばBluetooth(登録商標)又はWi−Fiなどに対応した通信モジュールとしてもよい。
基板30のZ軸負方向側の面には、図8及び図9に示すように、バッテリ60が配置されてよい。この場合、基板30のZ軸負方向側の面には、バッテリ60を固定するためのバッテリホルダが配置されてもよい。バッテリ60は、例えばCR2032のようなボタン型電池(コイン型電池)など、任意の電源としてよい。また、バッテリ60は、例えば充電可能な蓄電池としてもよい。バッテリ60は、例えばリチウムイオン電池並びにその充電及び放電のための制御回路等を適宜備えてもよい。バッテリ60は、電子機器1の各機能部に電力を供給してよい。
報知部40、センサ50、制御部52、記憶部54、通信部56、及びバッテリ60の配置は、図8及び図9に示す例に限定されない。例えば、前述の機能部は、基板30の任意の位置に配置してよい。また、前述の機能部は、基板30の両面のいずれかに適宜配置してよい。また、電子機器1が外部機器と有線又は無線により接続される場合、例えばスイッチ13、報知部40、制御部52、記憶部54、及び通信部56などの機能部の少なくとも一部は、適宜、外部機器に備えてもよい。
図8及び図9に示すように、電子機器1において、筐体10のZ軸負方向側の端部は、立掛け部20のZ軸正方向側の端部に接続されている。図8及び図9に示すように、筐体10は、Z軸の負方向側に、立掛け部20に接続される接続部を有する。また、図8及び図9に示すように、立掛け部20は、Z軸の正方向側に、筐体10の接続部が挿入される開口部を有する。図8及び図9に示す例において、筐体10の接続部は、立掛け部20の開口部よりも小さなサイズにして、筐体10の接続部を立掛け部20の開口部に挿入した構成にしてある。しかしながら、一実施形態において、筐体10が開口部を有するとともに、立掛け部20が挿入部を有するような構成としてもよい。この場合、筐体10の開口部を立掛け部20の挿入部よりも大きなサイズにして、立掛け部20の挿入部を筐体10の開口部に挿入した構成にしてもよい。Sどちらの場合も、筐体10と立掛け部20とは、互いに干渉せずにある程度自由に動くことができるように構成してよい。
図8及び図9に示すように、電子機器1において、筐体10と立掛け部20は、弾性部材70によって互いに接続されている。図8及び図9に示す例においては、筐体10と立掛け部20とが、弾性部材70によって直接接続されている。しかしながら、弾性部材70は、例えば筐体10と、立掛け部20とを間接的に接続してもよい。例えば、一実施形態において、弾性部材70は、筐体10側の任意の部材と、立掛け部20側の任意の部材とを互いに接続してよい。弾性部材70は、互いに直交する3つの軸(例えば、Y軸、Y軸、Z軸)のうちの少なくともいずれか1つの軸に沿って変形可能な弾性部材であるとしてよい。弾性部材70は、3次元で変形可能な部材である。
図8及び図9は、弾性部材70が圧縮コイルばねのようなスプリングである例を示している。しかしながら、一実施形態において、弾性部材70は、例えば、ばね、樹脂、スポンジ、又はシリコンシート等のような、適度な弾性を有する任意の弾性体により構成されてもよいし、これらを任意に組み合わせたものとしてもよい。弾性部材70は、例えば、所定の弾性を有する所定の厚さのシリコンシートを形成したものとしてもよい。
図8は、立掛け部20の押圧部22が被検者などによって矢印Pの方向に押圧されていない状態を示している。すなわち、図8は、立掛け部20が被検部位側に押圧されていない状態を示している。一方、図9は、立掛け部20の押圧部22が被検者などによって矢印Pの方向に押圧されている状態を示している。すなわち、図9は、立掛け部20が被検部位側に押圧されている状態を示している。このような押圧力によって弾性部材70は変形するため、図9に示す弾性部材70のZ軸方向の長さは、図8に示す弾性部材70のZ軸方向の長さよりも短くなっている。
図8に示す例では、電子機器1は、筐体10と立掛け部20とが所定以上の長さの距離に変位しないように、ストッパ機構を備えている。すなわち、図8に示す電子機器1は、図に示す矢印Pの方向に押圧されていない状態においても、筐体10が立掛け部20から外れたり脱落したりしないような機構を備えている。図8は、弾性部材70の復元力がある程度維持されたまま、筐体10と立掛け部20との距離が固定された状態を示している。この状況においては、筐体10と立掛け部20との距離は、それ以上の長さの距離に変位しないようになっている。
一方、図8に示す状況において、図に示す矢印Pの方向に押圧力が加わると、図9に示すように、弾性部材70が縮む方向に変形する。図9に示す状況において、筐体10の突出部14は、立掛け部20の受け部26に到達して接している。この状態よりも図に示す矢印Pの方向の押圧力を弱めると、弾性部材70が幾分縮んだまま、筐体10の突出部14が立掛け部20の受け部26に接しない状態を実現できる。このような状態においては、筐体10は、弾性部材70を介して接続される立掛け部20に対してある程度自由に変位することができる。したがって、電子機器1は、被検者の被検部位における脈動を良好に検出することができる。
図8及び図9においては、弾性部材70が圧縮コイルばねのようなスプリングであるとした。しかしながら、上述のように、例えば弾性部材70を所定の厚さのシリコンシードなどで構成してもよい。この場合、筐体10及び立掛け部20と、弾性部材70とは、接着剤又は両面テープなどで接着してもよい。ここで、弾性部材70と他の部材との接着は、弾性部材70の変形に与える影響が少なくなるようにしてよい。すなわち、弾性部材70と他の部材とを接着したとしても、弾性部材70は適度に変形することができるように構成してよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、筐体10と、立掛け部20と、センサ50と、弾性部材70とを備える。筐体10は、少なくとも一部にセンサ50を含む。センサ50は、被検者の被検部位における脈動を検出可能に構成される。立掛け部20は、筐体10を支持するとともに筐体10を介して被検部位側に立て掛けられるように構成される。弾性部材70は、筐体10と立掛け部20との間に介在する。
図8及び図9に示すように、電子機器1が被検者の被検部位に立て掛けられた状態において、筐体10の第1当接部11は、被検者の被検部位、すなわち被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触している。また、立掛け部20の押圧部22は、例えば被検者の右手の指などによって、被検部位側すなわち矢印Pの方向に押圧される。さらに、押圧部22によって押圧される立掛け部20とセンサ50を含む筐体10との間に配置される弾性体140の弾性力により、(筐体10及び第1当接部11とともに)センサ50は、被検者の被検部位側に付勢される。また、弾性部材70の弾性力により付勢される第1当接部11は、被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触している。この場合、第1当接部11は、被検者の橈骨動脈の動き、すなわち脈動に応じて変位する。このため、第1当接部11に連動するセンサ50も、被検者の橈骨動脈の動きすなわち脈動に応じて変位する。例えば、図8及び図9に示すように、押圧部22が被検者によって矢印Pの方向に押圧された状態で、軸Sを中心として、矢印DU又は矢印DLに示すような方向に変位することができる。ここで、軸Sは、筐体10の第2当接部12が被検者の手首に接する部分としてよい。この場合、矢印Pの方向に押圧される位置(すなわち押圧部22の位置)は、XY平面上において、軸Sと第1当接部11(被検部位)との間の位置としてよい。
本実施形態において、第1当接部11に連動するセンサ50は、弾性部材70を介して立掛け部20(押圧部22)に結合されている。このため、センサ50は、弾性部材70の柔軟性によって、ある程度自由な可動域を与えられる。また、弾性部材70の柔軟性によって、センサ50の動きは妨げられにくくなる。さらに、弾性部材70は、適度な弾性を有することにより、被検者の被検部位における脈動に追従して変形する。したがって、本実施形態に係る電子機器1において、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を敏感に検出することができる。さらに、本実施形態に係る電子機器1は、脈波に追従して変位することで、被検者のうっ血を無くし、苦痛を無くすことができる。このように、本実施形態では、弾性部材70は、被検者の被検部位における脈動に応じて変形可能であるようにしてよい。また、弾性部材70は、センサ50が被検者の被検部位における脈動を検出可能な程度に弾性変形するようにしてもよい。
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1は、小型かつ軽量な測定機器として機能し得る。一実施形態に係る電子機器1は、携帯性に優れるのみならず、被検者の生体情報を極めて簡単に測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、他の外部機器などと連携せずとも、電子機器1の単独で生体情報を測定することができる。また、この場合、他のケーブルなどのような付属物を形態する必要もない。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、利便性を高めることができる。
一実施形態において、電子機器1は、筐体10と立掛け部20との間にストッパのような機構を備えてもよい。図8及び図9においては、例として、筐体10が突出部14を備え、立掛け部20が受け部26を備える構成を示してある。すなわち、筐体10は、立掛け部20に接続される接続部の一部において、突出部14を備えている。また、立掛け部20は、筐体10の接続部が挿入される開口部の一部において、突出部14を受け得る受け部26を備えている。以下、突出部14及び受け部26をまとめて、「ストッパ(14,26)」とも記す。
図8及び図9に示すように、筐体10と立掛け部20とが接続される筐体10の挿入部及び立掛け部20の開口部の一部のみにおいて、ストッパ(14,26)が形成される。例えば、図8及び図9に示す例では、筐体10と立掛け部20とが接続される部分の下端にのみストッパ(14,26)が形成されている。一方、筐体10と立掛け部20とが接続される部分の上端などにはストッパ(14,26)が形成されていない。一実施形態において、筐体10と立掛け部20とが接続される部分の上端のみならず、筐体10と立掛け部20とが接続される部分の下端以外の部分には、ストッパ(14,26)が形成されなくてもよい。
上述のように、一部分にのみストッパ(14,26)を備えることにより、被検者などが立掛け部20(押圧部22)を比較的強めに押圧した場合であっても、立掛け部20に対する筐体10の動きが抑制されにくくなる。例えば、図8に示す状況では、被検者などが立掛け部20(押圧部22)を図に示す矢印Pの方向に強めに押圧していないため、突出部14と受け部26とは当接していない。一方、図9に示す状況では、被検者などが立掛け部20(押圧部22)を図に示す矢印Pの方向に強めに押圧している。このため、弾性部材70の変形により筐体10が立掛け部20に対して変位した結果、突出部14と受け部26とが当接している。このような場合であっても、筐体10と立掛け部20とは、突出部14と受け部26とが当接している部分以外の部分においては当接していない。このため、立掛け部20に対する筐体10の動きとして、図に示す矢印DLのような動きは幾分抑制されたとしても、図に示す矢印ULのような動きはほとんど抑制されない。したがって、被検者などが立掛け部20(押圧部22)を比較的強めに押圧した場合であっても、立掛け部20に対する筐体10の動きが抑制されにくくなる。
図8及び図9においては、筐体10が突出部14を備え、立掛け部20が受け部26を備える構成を示したが、これらを逆にする構成としてもよい。すなわち、一実施形態において、筐体10が受け部26を備え、立掛け部20が突出部14を備える構成としてもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、ストッパ(14,26)を備えてもよい。ストッパ(14,26)は、突出部14と、受け部26と、を備えてよい。突出部14は、筐体10及び立掛け部20の一方側に形成されてもよい。受け部26は、筐体10及び立掛け部20の他方側に形成されてもよい。そして、ストッパ(14,26)において、受け部26は、突出部14を受け得るように構成されてもよい。また、一実施形態において、ストッパ(14,26)は、弾性部材70の変形により筐体10が立掛け部20に対して変位する際に、筐体10が立掛け部20に部分的に当接し得るように構成されてもよい。
本実施形態において、センサ50は、例えば、ジャイロセンサ(ジャイロスコープ)のような、物体の角度(傾き)、角速度、及び角加速度の少なくともいずれかを、複数の軸について検出するセンサとしてもよい。この場合、センサ50は、被検者の被検部位における脈動に基づく複雑な動きを、複数の軸についてのそれぞれのパラメータとして検出することができる。また、センサ50は、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサとを組み合わせた6軸センサとしてもよい。
図10は、電子機器1の使用態様の一例を示す図である。図10は、図1に示した状況が別の視点から見られた様子を拡大して示す図である。
例えば、図10に示すように、電子機器1の筐体10に内蔵されたセンサ50は、α軸、β軸、及びγ軸の3軸のそれぞれを中心とする回転運動を検出してよい。α軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。また、β軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ平行な方向に沿う軸としてよい。また、γ軸は、例えば、α軸及びβ軸の双方にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。
このように、本実施形態では、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出してもよい。また、センサ50は、被検者の被検部位における脈動を、少なくとも2軸の回転運動として検出してもよく、3軸の回転運動として検出してもよい。本開示において、「回転運動」とは、必ずしも円の軌道上を1周以上変位するような運動でなくてもよい。例えば、本開示において、回転運動とは、例えば円の軌道上における1周に満たない部分的な変位(例えば弧に沿うような変位)としてもよい。
図10に示すように、本実施形態に係る電子機器1は、例えば3軸のそれぞれを中心とする回転運動を、センサ50によって検出することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1は、センサ50によって検出された複数の結果を合算するなどして合成することにより、被検者の脈波の検出感度を高めることができる。このような合算などの演算は、例えば制御部52によって行ってもよい。この場合、制御部52は、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出してよい。
例えば、図10に示す例において、α軸及びβ軸を中心とするセンサ50の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、それぞれ被検者の脈波に基づく顕著なピークを有している。このため、制御部52は、例えばα軸、β軸、及びγ軸についての検出結果をそれぞれ合算することにより、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
一実施形態において、電子機器1の制御部52は、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出してもよい。この場合、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動(例えば3軸の回転運動)として検出した結果を合成(例えば合算)してもよい。本実施形態に係る電子機器1によれば、複数の方向の脈波信号を検出することができる。このため、本実施形態に係る電子機器1によれば、複数の軸についての検出結果を合成することで、1つの軸についての検出結果に比べて、信号強度が高まる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、SN比の良好な信号を検出することができ、検出感度を高めることができ、安定した測定が可能となる。
また、図10に示したγ軸についての検出結果において、被検者の脈波に基づくピークは、他のα軸又はβ軸についての検出結果に比べて顕著に現れないことも想定される。このように、γ軸についての検出結果のように信号レベルが低い検出結果を、他の軸についての検出結果に合算すると、SN比が低下することもあり得る。また、信号レベルが低い検出結果は、ほとんどがノイズ成分と見なせる場合もある。このような場合、信号レベルが低い検出結果は、良好な脈波成分を含んでいないこともある。そこで、本実施形態において、制御部52は、複数の軸についての検出結果のうち、検出結果が所定の閾値に満たない軸がある場合、その軸の検出結果を合算しなくてもよい。
例えば、ある被検者の脈動を、α軸、β軸、及びγ軸のそれぞれを中心とする回転運動として、センサ50によって検出した場合を想定する。この結果として、α軸、β軸、γ軸についての検出結果におけるピーク値は、それぞれ所定の閾値を超えているものとする。このような場合、制御部52は、α軸についての検出結果、β軸についての検出結果、及びγ軸についての検出結果の全てを合算したものを、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
一方、例えば、ある被検者の脈動を検出した結果として、α軸及びβ軸についての検出結果におけるピーク値は、それぞれ所定の閾値を超えているものとする。しかしながら、γ軸についての検出結果におけるピーク値は、所定の閾値を超えていないものとする。このような場合、制御部52は、α軸についての検出結果及びβ軸についての検出結果のみを合算したものを、センサ50が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
このような処理を行う場合、制御部52は、各軸についての検出結果を合算に含むか否かの基準となる閾値は、それぞれの軸について別個に設定してもよいし、それぞれの軸について同じものを決定してもよい。いずれの場合も、各軸についての検出結果において、被検者の脈動がそれぞれ適切に検出されるような閾値を、適宜設定してよい。
このように、本実施形態に係る電子機器1において、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果のうち、所定の閾値以上の成分を有するもののみを合成してもよい。このため、本実施形態に係る電子機器1によれば、検出結果のSN比の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
また、上述のように、複数の軸についての検出結果を合算する際に、それぞれの軸についての検出結果を単にこのまま合算すると、不都合が生じることも想定される。これは、被検者の脈動の向きと、センサ50との位置関係によって、センサ50による検出される結果の極性が整合しないことに起因すると想定される。例えば、センサ50を用いて被検者の右手の脈動を検出した場合と、左手の脈動を検出した場合とで、ある軸についての検出結果の極性が逆転することも想定される。
例えば、被検者の脈動を検出した場合、ある軸についての検出結果において、ほぼ周期的に上向きのピークが検出されるとする。しかしながら、同時に、他の軸についての検出結果において、逆に、ほぼ周期的に下向きのピークが検出されることも想定される。このように、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、このまま単に合算すると、ピークが打ち消し合って良好な結果が得られないことも想定される。
そこで、本実施形態において、制御部52は、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させてから、他の軸についての検出結果と合算してもよい。例えば、制御部52は、2つの軸についての検出結果において極性が逆転する場合、一方の軸についての検出結果の極性を他方の軸に合わせて反転させてよい。
このように、本実施形態に係る電子機器1において、制御部52は、センサ50が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果を、それぞれの極性が揃うようにしてから合成してもよい。本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
上述のように、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させることにより、複数の軸についての検出結果の極性を揃える処理を行う場合、それぞれの検出結果における極性の向きを判定する必要がある。このような極性の向きの判定は、種々の手法で行うことができる。例えば、制御部52は、各軸についての検出結果のピークが信号強度の正方向側に向いているか、又は負方向側に向いているかを判定してもよい。また、例えば制御部52は、各軸についての検出結果のピークが、信号の平均値よりも大きいか小さいかを判定してもよい。また、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させる際には、制御部52は、極性を反転させる検出結果にマイナス1を乗算してもよい。
さらに、制御部52は、上述のように検出結果の極性を適宜反転させた後、当該検出結果の全体に所定値を加減してから、他の軸についての検出結果に合算してもよい。また、制御部52は、複数の軸についての検出結果を合算する前に、それぞれの軸についての検出結果に適宜重み付けなどをしたり、それぞれの軸についての検出結果を適宜補正したりしてもよい。
図11は、電子機器1の概略構成を示す機能ブロック図である。図11に示す電子機器1は、報知部40と、スイッチ13と、センサ50と、制御部52と、記憶部54と、通信部56と、バッテリ60とを備える。これらの機能部については既に説明したとおりである。
図12は、電子機器1を用いて手首で取得された脈波の一例を示す図である。図12は、脈動を検知するセンサ50として、角速度センサを用いた場合について示してある。図12は、角速度センサで取得された角速度を時間積分したものであり、横軸は時間、縦軸は角度を表す。取得された脈波は、例えば被検者の体動が原因のノイズを含む場合があるので、DC(Direct Current)成分を除去するフィルタによる補正を行い、脈動成分のみを抽出してもよい。
取得された脈波から、脈波に基づく指標を算出する方法を、図12を用いて説明する。脈波の伝播は、心臓から押し出された血液による拍動が、動脈の壁又は血液を伝わる現象である。心臓から押し出された血液による拍動は、前進波として手足の末梢まで届き、その一部は血管の分岐部、血管径の変化部等で反射され反射波として戻ってくる。脈波に基づく指標は、例えば、前進波の脈波伝播速度PWV(Pulse Wave Velocity)、脈波の反射波の大きさPR、脈波の前進波と反射波との時間差Δt、脈波の前進波と反射波との大きさの比で表されるAI(Augmentation Index)等である。
図12に示す脈波は、利用者のn回分の脈拍であり、nは1以上の整数である。脈波は、心臓からの血液の駆出により生じた前進波と、血管分岐又は血管径の変化部から生じた反射波とが重なりあった合成波である。図12において、脈拍毎の前進波による脈波のピークの大きさをPFn、脈拍毎の反射波による脈波のピークの大きさをPRn、脈拍毎の脈波の最小値をPSnで示す。また、図12において、脈拍のピークの間隔をTPRで示す。
脈波に基づく指標とは、脈波から得られる情報を定量化したものである。例えば、脈波に基づく指標の一つであるPWVは、上腕と足首等、2点の被検部位で測定された脈波の伝播時間差と2点間の距離とに基づいて算出される。具体的には、PWVは、動脈の2点における脈波(例えば上腕と足首)を同期させて取得し、2点の距離の差(L)を2点の脈波の時間差(PTT)で除して算出される。例えば、脈波に基づく指標の一つである反射波の大きさPRは、反射波による脈波のピークの大きさPRnを算出してもよいし、n回分を平均化したPRaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つである脈波の前進波と反射波との時間差Δtは、所定の脈拍における時間差Δtnを算出してもよいし、n回分の時間差を平均化したΔtaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つであるAIは、反射波の大きさを前進波の大きさで除したものであり、AIn=(PRn−PSn)/(PFn−PSn)で表わされる。AInは脈拍毎のAIである。AIは、例えば、脈波の測定を数秒間行い、脈拍毎のAIn(n=1〜nの整数)の平均値AIaveを算出し、脈波に基づく指標としてもよい。
脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIは、血管壁の硬さに依存して変化するため、動脈硬化の状態の推定に用いることができる。例えば、血管壁が硬いと、脈波伝播速度PWVは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、反射波の大きさPRは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、前進波と反射波との時間差Δtは小さくなる。例えば、血管壁が硬いと、AIは大きくなる。さらに、電子機器1は、これらの脈波に基づく指標を用いて、動脈硬化の状態を推定できると共に、血液の流動性(粘性)を推定することができる。特に、電子機器1は、同一被検者の同一被検部位、及び動脈硬化の状態がほぼ変化しない期間(例えば数日間内)において取得された脈波に基づく指標の変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。ここで血液の流動性とは、血液の流れやすさを示し、例えば、血液の流動性が低いと、脈波伝播速度PWVは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、反射波の大きさPRは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなる。例えば、血液の流動性が低いと、AIは小さくなる。
本実施形態では、脈波に基づく指標の一例として、電子機器1が、脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIを算出する例を示したが、脈波に基づく指標はこれに限ることはない。例えば、電子機器1は、脈波に基づく指標として、後方収縮期血圧を用いてもよい。
図13は、算出されたAIの時間変動を示す図である。本実施の形態では、脈波は、角速度センサ131を備えた電子機器1を用いて約5秒間取得された。制御部52は、取得された脈波から脈拍毎のAIを算出し、さらにこれらの平均値AIaveを算出した。本実施の形態では、電子機器1は、食事前及び食事後の複数のタイミングで脈波を取得し、取得された脈波に基づく指標の一例としてAIの平均値(以降AIとする)を算出した。図13の横軸は、食事後の最初の測定時間を0として、時間の経過を示す。図13の縦軸は、その時間に取得された脈波から算出されたAIを示す。被検者は安静の状態で、脈波は橈骨動脈上で取得された。
電子機器1は、食事前、食事直後、及び食事後30分毎に脈波を取得し、それぞれの脈波に基づいて複数のAIを算出した。食事前に取得された脈波から算出されたAIは約0.8であった。食事前に比較して、食事直後のAIは小さくなり、食事後約1時間でAIは最小の極値となった。食事後3時間で測定を終了するまで、AIは徐々に大きくなった。
電子機器1は、算出されたAIの変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。例えば血液中の赤血球、白血球、血小板が団子状に固まる、又は粘着力が大きくなると、血液の流動性は低くなる。例えば、血液中の血漿の含水率が小さくなると、血液の流動性は低くなる。これらの血液の流動性の変化は、例えば、後述する糖脂質状態、又は熱中症、脱水症、低体温等の被検者の健康状態によって変化する。被検者の健康状態が重篤化する前に、被検者は、本実施の形態の電子機器1を用いて、自らの血液の流動性の変化を知ることができる。図13に示す食事前後のAIの変化から、食事後に血液の流動性は低くなり、食事後約1時間で最も血液の流動性は低くなり、その後徐々に血液の流動性が高くなったことが推定できる。電子機器1は、血液の流動性が低い状態を「どろどろ」、血液の流動性が高い状態を「さらさら」と表現して報知してもよい。例えば、電子機器1は、「どろどろ」「さらさら」の判定を、被検者の実年齢におけるAIの平均値を基準にして行ってもよい。電子機器1は、算出されたAIが平均値より大きければ「さらさら」、算出されたAIが平均値より小さければ「どろどろ」と判定してもよい。電子機器1は、例えば、「どろどろ」「さらさら」の判定は、食事前のAIを基準にして判定してもよい。電子機器1は、食事後のAIを食事前のAIと比較して「どろどろ」度合いを推定してもよい。電子機器1は、例えば、食事前のAIすなわち空腹時のAIとして、被検者の血管年齢(血管の硬さ)の指標として用いることができる。電子機器1は、例えば、被検者の食事前のAIすなわち空腹時のAIを基準として、算出されたAIの変化量を算出すれば、被検者の血管年齢(血管の硬さ)による推定誤差を少なくすることができるので、血液の流動性の変化をより精度よく推定することができる。
図14は、算出されたAIと血糖値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図13に示した実施の形態と同じである。図14の右縦軸は血中の血糖値を示し、左縦軸は算出されたAIを示す。図14の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された血糖値を示す。血糖値は、脈波取得直後に測定された。血糖値は、テルモ社製の血糖測定器「メディセーフフィット」を用いて測定された。食事前の血糖値と比べて、食事直後の血糖値は約20mg/dl上昇している。食事後約1時間で血糖値は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、血糖値は徐々に小さくなり、食事後約3時間でほぼ食事前の血糖値と同じになった。
図14に示す通り、食前食後の血糖値は、脈波から算出されたAIと負の相関がある。血糖値が高くなると、血液中の糖により赤血球及び血小板が団子状に固まり、又は粘着力が強くなり、その結果血液の流動性は低くなることがある。血液の流動性が低くなると、脈波伝播速度PWVは小さくなることがある。脈波伝播速度PWVが小さくなると、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなることがある。前進波と反射波との時間差Δtが大きくなると、前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRは小さくなることがある。前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRが小さくなると、AIは小さくなることがある。食事後数時間内(本実施の形態では3時間)のAIは、血糖値と相関があることから、AIの変動により、被検者の血糖値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の血糖値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器1は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することができる。
食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPの発生時間に基づいて、電子機器1は被検者の糖代謝の状態を推定できる。電子機器1は、糖代謝の状態として、例えば血糖値を推定する。糖代謝の状態の推定例として、例えば食事後に最初に検出されるAIの最小極値AIPが所定時間以上(例えば食後約1.5時間以上)経ってから検出される場合、電子機器1は、被検者が糖代謝異常(糖尿病患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPとの差(AIB−AIP)に基づいて、電子機器1は被検者の糖代謝の状態を推定できる。糖代謝の状態の推定例として、例えば(AIB−AIP)が所定数値以上(例えば0.5以上)の場合、被検者は糖代謝異常(食後高血糖患者)であると推定できる。
図15は、算出されたAIと血糖値との関係を示す図である。算出されたAIと血糖値とは、血糖値の変動が大きい食事後1時間以内に取得されたものである。図15のデータは、同一被検者における異なる複数の食事後のデータを含む。図15に示す通り、算出されたAIと血糖値とは負の相関を示した。算出されたAIと血糖値との相関係数は0.9以上であり、非常に高い相関を示した。例えば、図15に示すような算出されたAIと血糖値との相関を、あらかじめ被検者毎に取得しておけば、電子機器1は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することもできる。
図16は、算出されたAIと中性脂肪値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図13に示した実施形態と同じである。図16の右縦軸は血中の中性脂肪値を示し、左縦軸はAIを示す。図16の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された中性脂肪値を示す。中性脂肪値は、脈波取得直後に測定した。中性脂肪値は、テクノメディカ社製の脂質測定装置「ポケットリピッド」を用いて測定された。食事前の中性脂肪値と比較して、食事後の中性脂肪値の最大極値は約30mg/dl上昇している。食事後約2時間後に中性脂肪は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、中性脂肪値は徐々に小さくなり、食事後約3.5時間でほぼ食事前の中性脂肪値と同じになった。
これに対し、算出されたAIの最小極値は、食事後約30分で第1の最小極値AIP1が検出され、食事後約2時間で第2の最小極値AIP2が検出された。食事後約30分で検出された第1の最小極値AIP1は、前述した食後の血糖値の影響によるものであると推定できる。食事後約2時間で検出された第2の最小極値AIP2は、食事後約2時間で検出された中性脂肪の最大極値とその発生時間がほぼ一致している。このことから、食事から所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2は中性脂肪の影響によるものであると推定できる。食前食後の中性脂肪値は、血糖値と同様に、脈波から算出されたAIと負の相関があることがわかった。特に食事から所定時間以降(本実施の形態では約1.5時間以降)に検出されるAIの最小極値AIP2は、中性脂肪値と相関があることから、AIの変動により、被検者の中性脂肪値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の中性脂肪値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器1は、算出されたAIから被検者の中性脂肪値を推定することができる。
食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2の発生時間に基づいて、電子機器1は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。電子機器1は、脂質代謝の状態として、例えば脂質値を推定する。脂質代謝の状態の推定例として、例えば第2の最小極値AIP2が食事後所定時間以上(例えば4時間以上)経ってから検出される場合、電子機器1は、被検者が脂質代謝異常(高脂血症患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2との差(AIB−AIP2)に基づいて、電子機器1は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。脂質代謝異常の推定例として、例えば(AIB−AIP2)が0.5以上の場合、電子機器1は、被検者が脂質代謝異常(食後高脂血症患者)であると推定できる。
また、図14乃至図16で示した測定結果から、本実施の形態の電子機器1は、食事後に最も早く検出される第1の最小極値AIP1及びその発生時間に基づいて、被検者の糖代謝の状態を推定することができる。さらに、本実施の形態の電子機器1は、第1の最小極値AIP1の後で所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2及びその発生時間に基づいて、被検者の脂質代謝の状態を推定することができる。
本実施形態では脂質代謝の推定例として中性脂肪の場合を説明したが、脂質代謝の推定は中性脂肪に限られない。電子機器1が推定する脂質値は、例えば総コレステロール、善玉(HDL:High Density Lipoprotein)コレステロール及び悪玉(LDL:Low Density Lipoprotein)コレステロール等を含む。これらの脂質値も、上述の中性脂肪の場合と同様の傾向を示す。
図17は、AIに基づいて血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する手順を示すフロー図である。図17を用いて、実施の形態に係る電子機器1による血液の流動性、並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定の流れを説明する。
図17に示すように、電子機器1は、初期設定として、被検者のAI基準値を取得する(ステップS101)。AI基準値は、被検者の年齢から推定される平均的なAIを用いてもよいし、事前に取得された被検者の空腹時のAIを用いてもよい。また、電子機器1は、ステップS102〜S108において食前と判断されたAIをAI基準値としてもよいし、脈波測定直前に算出されたAIをAI基準値としてもよい。この場合、電子機器1は、ステップS102〜S108より後にステップS101を実行する。
続いて、電子機器1は、脈波を取得する(ステップS102)。例えば電子機器1は、所定の測定時間(例えば、5秒間)に取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたか否かを判定する。取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたら、ステップS103に進む。所定の振幅以上が得られなかったら、ステップS102を繰り返す(これらのステップは図示せず)。ステップS102において、例えば電子機器1は、所定の振幅以上の脈波を検出すると、自動で脈波を取得する。
電子機器1は、ステップS102で取得された脈波から、脈波に基づく指標としてAIを算出し記憶部54に記憶する(ステップS103)。電子機器1は、所定の脈拍数(例えば、3拍分)毎のAIn(n=1〜nの整数)から平均値AIaveを算出して、これをAIとしてもよい。あるいは、電子機器1は、特定の脈拍におけるAIを算出してもよい。
AIは、例えば脈拍数PR、脈圧(PF−PS)、体温、被検出部の温度等によって補正を行い算出してもよい。脈拍とAI及び脈圧とAIは共に負の相関があり、温度とAIとは正の相関があることが知られている。補正を行う際は、例えばステップS103において、電子機器1はAIに加え脈拍、脈圧を算出する。例えば、電子機器1は、センサ50に温度センサを搭載し、ステップS102における脈波の取得の際に、被検出部の温度を取得してもよい。事前に作成された補正式に、取得された脈拍、脈圧、温度等を代入することにより、AIは補正される。
続いて、電子機器1は、ステップS101で取得されたAI基準値とステップS103で算出されたAIとを比較して、被検者の血液の流動性を推定する(ステップS104)。算出されたAIがAI基準値より大きい場合(YESの場合)、血液の流動性は高いと推定され、電子機器1は例えば血液の流動性が高いことをと報知する(ステップS105)。算出されたAIがAI基準値より大きくない場合(NOの場合)、血液の流動性は低いと推定され、電子機器1は例えば血液の流動性が低いことを報知する(ステップS106)。
続いて、電子機器1は、糖代謝及び脂質代謝の状態を推定するか否かを被検者に確認する(ステップS107)。ステップS107で糖代謝及び脂質代謝を推定しない場合(NOの場合)、電子機器1は処理を終了する。ステップS107で糖代謝及び脂質代謝を推定する場合(YESの場合)、電子機器1は、算出されたAIが食前、食後いずれかに取得されたものかを確認する(ステップS108)。食後ではない(食前)場合(NOの場合)、ステップS102に戻り、次の脈波を取得する。食後の場合(YESの場合)、電子機器1は、算出されたAIに対応する脈波の取得時間を記憶する(ステップS109)。続いて脈波を取得する場合(ステップS110のNOの場合)、ステップS102に戻り、次の脈波を取得する。脈波測定を終了する場合(ステップS110のYESの場合)ステップS111以降に進み、電子機器1は被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定を行う。
続いて、電子機器1は、ステップS104で算出された複数のAIから、最小極値とその時間を抽出する(ステップS111)。例えば、図16の実線で示すようなAIが算出された場合、電子機器1は、食事後約30分の第1の最小極値AIP1、及び食事後約2時間の第2の最小極値AIP2を抽出する。
続いて、電子機器1は、第1の最小極値AIP1とその時間から、被検者の糖代謝の状態を推定する(ステップS112)。さらに、電子機器1は、第2の最小極値AIP2とその時間から、被検者の脂質代謝の状態を推定する(ステップS113)。被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定例は、前述の図16と同様であるので省略する。
続いて、電子機器1は、ステップS112及びステップS113の推定結果を報知し(ステップS114)、図17に示す処理を終了する。報知部40は、例えば「糖代謝は正常です」、「糖代謝異常が疑われます」、「脂質代謝は正常です」、「脂質代謝異常が疑われます」等の報知を行う。この場合、報知部40は、例えば発光部が点灯又は点滅することにより、前述のような報知を行ってもよい。また、報知部40は「病院で受診しましょう」、「食生活を見直しましょう」等のアドバイスを報知してもよい。そして、電子機器1は、図17に示す処理を終了する。
本実施形態において、電子機器1は、脈波に基づく指標から被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。このため、電子機器1は、非侵襲かつ短時間で被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
本実施形態において、電子機器1は、脈波に基づく指標の極値とその時間から、糖代謝の状態の推定と、脂質代謝の状態の推定とを行うことができる。このため、電子機器1は、非侵襲かつ短時間で被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
本実施形態において、電子機器1は、例えば、食事前(空腹時)の脈波に基づく指標を基準にして、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。このため、短期的に変化しない血管径又は血管の硬さ等を考慮せずに、被検者の血液の流動性及び糖代謝及び脂質代謝の状態を正確に推定できる。
本実施形態において、電子機器1は、脈波に基づく指標と血糖値、脂質値とのキャリブレーションを取っておけば、被検者の血糖値、脂質値を非侵襲かつ短時間に推定することができる。
図18は、一実施形態に係るシステムの概略構成を示す模式図である。図18に示したシステムは、電子機器1と、サーバ151と、携帯端末150と、通信ネットワークを含んで構成される。図18に示したように、電子機器1で算出された脈波に基づく指標は、通信ネットワークを通じてサーバ151に送信され、被検者の個人情報としてサーバ151に保存される。サーバ151では、被検者の過去の取得情報、及び/又は様々なデータベースと比較することにより、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する。サーバ151はさらに被検者に最適なアドバイスを作成する。サーバ151は、被検者が所有する携帯端末150に推定結果及びアドバイスを返信する。携帯端末150は受信した推定結果及びアドバイスを携帯端末150の表示部から報知する、というシステムを構築することができる。電子機器1の通信機能を利用することで、サーバ151には複数の利用者からの情報を収集することができるため、さらに推定の精度が上がる。また、携帯端末150を報知手段として用いるため、電子機器1は報知部40が不要となり、さらに小型化される。また、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定をサーバ151で行うために、電子機器1の制御部52の演算負担を軽減できる。また、被検者の過去の取得情報をサーバ151で保存できるために、電子機器1の記憶部54の負担を軽減できる。そのため、電子機器1はさらに小型化、簡略化が可能となる。また、演算の処理速度も向上する。
本実施形態に係るシステムはサーバ151を介して、電子機器1と携帯端末150とを通信ネットワークで接続した構成を示したが、本発明に係るシステムはこれに限定されるものではない。サーバ151を用いずに、電子機器1と携帯端末150を直接通信ネットワークで接続して構成してもよい。
本開示を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施例に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。
例えば、上述の実施形態においては、センサ50として角速度センサを備える場合について説明したが、電子機器1の形態はこれに限ることはない。センサ50は、発光部と受光部を含む光学脈波センサを備えていてもよいし、圧力センサを備えていてもよい。また、電子機器1が生体情報を測定する被検部位は、被検者の手首に限らない。首、足首、太もも、耳等、動脈上にセンサ50が配置されていればよい。
例えば、上述の実施形態においては、脈波に基づく指標の第1の極値及び第2の極値とこれらの時間とに基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定したが、電子機器1が実行する処理はこれに限ることはない。一方の極値しか表れない場合、極値が表れない場合もあり、電子機器1は、算出された脈波に基づく指標の時間変動の全体傾向(例えば積分値、フーリエ変換等)に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。また、電子機器1は、脈波に基づく指標の極値を抽出するのではなく、脈波に基づく指標が所定の値以下になった時間範囲に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。
例えば、上述の実施形態においては、食事前後の血液の流動性を推定する場合について説明したが、電子機器1が実行する処理はこれに限ることはない。電子機器1は、運動前後及び運動中の血液の流動性を推定してもよいし、入浴前後及び入浴中の血液の流動性を推定してもよい。
上述の実施形態において、電子機器1が脈波を測定すると説明したが、脈波は必ずしも電子機器1により測定されなくてもよい。例えば、電子機器1は、コンピュータ又は携帯電話機等の情報処理装置と有線又は無線で接続され、センサ50で取得された角速度の情報を情報処理装置に送信してもよい。この場合、情報処理装置が、角速度の情報に基づいて脈波を測定してもよい。情報処理装置は、糖代謝及び脂質代謝の推定処理等を実行してもよい。各種情報処理を電子機器1に接続された情報処理装置が実行する場合、電子機器1は、制御部52、記憶部54、報知部40等を備えていなくてもよい。また、電子機器1が有線により情報処理装置に接続されている場合、電子機器1は、バッテリ60を有さず、情報処理装置から電力が供給されてもよい。
また、一実施形態において、電子機器1の筐体10及び立掛け部20などは、図3乃至図6に示した形状に限定されない。例えば、一実施形態において、電子機器1の筐体10は、円盤型又は三角型などのような形状として構成されてもよい。また、電子機器1の立掛け部20は、テーブル又はデスクのような台の甲板(天板)の上面に載せることができる任意の形状としてよい。一実施形態において、電子機器1は、少なくとも一部にセンサ50を含む筐体と、筐体10を支持するとともに筐体10を介して被検部位側に立て掛けられるように構成される立掛け部20とを備える各種の構成としてよい。
また、電子機器1の制御部52は、脈波の指標から、糖脂質代謝、血糖値及び脂質値のうちの少なくともいずれか1つを推定するとしてよい。また、電子機器1は、被検者のダイエットの進行状況を監視するダイエットモニタ、若しくは、被検者の血糖値を監視する血糖計として機能してもよい。