JP6941721B2 - 栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材 - Google Patents

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Description

本発明は、栽培作物の鉄含有量の向上及び低減機能を有する調節材に関する。
野菜を中心とした農作物に対し、鉄分を増加させる技術は少なからず存在する。加工時に鉄分を添加させるような加工食品を除いた場合において、例えば栽培後期に、葉面に硫酸第一鉄などの鉄分溶液を散布する、いわゆる葉面散布技術はすでに実用化されている。これは植物の葉面の気孔から鉄分を吸収させる技術である。
他には、育苗期間中に鉄含有液に浸漬することで、根から鉄分を吸収促進させる技術が、特許文献1に記載されている。しかしながら土壌での栽培における鉄分増強技術は見当たらない。
鉄バクテリアの生成付着物と樹皮との混合物を土壌に混ぜて、チューリップを栽培した例が特許文献2に記載されているが、作物中の鉄分の多寡には一切触れられていない。
特願平02-229442号公報 特開2009-72702号公報 特許第6518854号公報 特開2009-723687号公報
「土と肥料の新知識」 全国肥料商連合会編 p.99、p.102、p.109、p.201 日本工業規格 JIS K 0350-80-10:2005
人類はじめ生物が生きていくうえで、鉄分はとても重要である。
血液中の鉄分は酸素と結合し、体の隅々にまで酸素を運ぶという、生命維持に不可欠な役割を担っている。鉄分が不足することは、いわゆる貧血症状と言われ、倦怠感、だるさ、めまいなどを引き起こす。世界保健機関(WHO)の報告によると、貧血は世界で20億人、全人口の30%以上で見られる世界で最も一般的な栄養不足で、その95%は 鉄分の乏しい食生活に関連すると言われている。つまり鉄分の豊富な作物の摂取が不可欠であって、鉄分の増強された作物の開発が望まれている。
一方で、人類にとって、鉄分が多いことが不都合なケースも存在する。鉄は特に酸素との親和性に富んでおり、活性酸素を発生させる大きな要因とされ、この活性酸素が体内臓器、特に肝臓を攻撃することが知られている。
自らの血液を定期的に抜き取って、結果的に体内の鉄分を低減させる、いわゆる瀉血療法という治療法がある。特に中重度のC型肝炎患者に用いられるこの治療法では、適用患者は瀉血のみならず、当然食事においても鉄分摂取をできる限り少なくすることが求められる。患者らの生活の質の向上という観点からすると、鉄分の含有量を低減した食材や野菜等の作物を提供することが望まれている。
鉄分低減化技術としては、すでに本願出願人が特許文献3において記載している。これは、鉄バクテリアを含むろ材を栽培土壌中に少量含ませることで、イネ科以外の作物に対して作物中の鉄含有量を2割程度低減せしめる技術である。
このように、摂取作物の鉄分というのは、増強することも、低減することも必要とされている。
栽培作物中の鉄分の増強、低減を自由に調節すること、しかも簡単で低コストな手段での実現が切に望まれていた。
植物にとっての鉄とは、その成長過程において不可欠な微量必須元素の中の一つである。光合成に必要な葉緑素の形成に不可欠で、欠乏すると葉の生長点が黄化してきて十分な成育ができなくなる。これは鉄欠乏症と称されている。
一方過剰の場合は、鉄過剰症と称され、根の成長がうまくいかず、さらにはリンやマンガンの吸収が阻害されてしまい、十分な成長ができなくなる。
一般的な土壌や培養土には、鉄分は数十ppmのオーダーで含まれていることが多い。
ここで、一般的な植物の鉄分の吸収の仕組みを以下に説明する。
植物における鉄吸収の仕組みは、その植物がイネ科であるか、それ以外であるかによって大きく異なる。
まずイネ科の場合について述べる。
畑土壌では、鉄分は水酸化第二鉄のような水に溶けにくい鉄化合物として存在しているために、植物はそのままでは吸収することができない。
そこで、イネ科の植物は根からムギネ酸という酸性の物質を出すことで、土壌中の根圏に存在する不溶性の鉄を、水に可溶な3価の鉄イオンに変え、その鉄イオンとムギネ酸とで、ムギネ酸-鉄キレート複合体を生成させることで、根の細胞膜を通して植物体内に吸収している。
一方、イネ科以外の場合には、さらに複雑になる。
イネ科の場合のように3価の鉄イオンのままでは吸収できず、2価の鉄イオンにまで還元して初めて吸収することができる。
つまり、根からクエン酸をはじめとする酸性の物質を出すことで、土壌中の根圏に存在する不溶性の鉄を、水に可溶な3価の鉄イオンに変える。次にこの3価の鉄イオンが、根細胞の表面に存在する酵素によって、2価の鉄イオンに還元されることではじめて、根の細胞膜を通して植物体内に吸収することが可能となる。
この両者のメカニズムは非特許文献1に詳述されている。
仮に作物中の鉄分を増加させる目的で、鉄分を過剰に含む土壌を使用して栽培を実施すれば、作物は鉄過剰症を引き起こして十分な成育ができなくなってしまう。
植物の根が吸収可能な鉄分、いわゆる鉄イオンを一般土壌で増加させる為には、土壌のpHを酸側に下降させて、鉄化合物の土中水分への溶解度を向上させるという方法が思いつく。しかし、pHを酸側にシフトさせると、鉄イオンの生成は増加するものの、植物にとって有害なアルミニウムイオンも顕在化してきて、大きな成長阻害要因となる。
さらにはそのアルミニウムが既存のリンやマンガンを不動態化させ、植物の吸収を妨げ、成育不良となってしまう。
一方、仮に作物中の鉄分を減らす目的で、鉄分を一切含まない土壌を使用して栽培を実施すれば、作物は鉄欠乏症を引き起こして十分な成育ができなくなってしまう。植物の根が吸収可能な鉄分、いわゆる鉄イオンを一般土壌から低減する為には、土壌のpHをアルカリ側に上昇させて、鉄化合物の土中水分への溶解度を低下させるという方法が考えられる。しかし、pHをアルカリ側にシフトさせると、鉄イオンの生成が減少してしまうばかりでなく、その他のマンガン、ホウ素、銅、亜鉛などの微量必須元素までもが吸収しづらくなり、いわゆる欠乏症となって、成育不良となってしまう。
従って、土壌で作物を栽培する場合には、適度に鉄分を含んだ土壌であって、かつ作物に適したpH等の一般的性質を備えた土壌を使用することは不可避である。
昨今の環境意識の高まりから、全ての産業・生活面において廃棄物の削減または利活用が広く求められている。浄水場に限らず、さまざまな産業で発生する廃棄物を、単に産業廃棄物として埋め立て処分するのではなく、有用な用途を見出し、利活用することは全国的な共通の課題である。この産業廃棄物を利活用して、鉄分の増強および低減させた作物を提供することができれば、非常に有意なこととなる。
つまり、一般的な土壌を使用して作物栽培する際に、成育を阻害すること無く作物中の鉄含有量を調節することが課題となる。しかもそれを、産業廃棄物を活用して行うことができれば人類への貢献は大きいといえる。
本発明は、基体と、基体の主として空隙部に、鉄バクテリアと、鉄バクテリアが産出する金属化合物、即ち付着物を有する付着済ろ材であって、栽培作物中の鉄含有量調節機能を有することを特徴とする。
また、前記材料の基体には、少なくとも鉄及び/又はマンガンの、酸化物及び/又は水酸化物を主体とする付着物の重量が100ml当たり5g以上であることを特徴とする。
イネ科の作物において、付着済ろ材の土壌への混入使用量が作物一株当たり100vol%未満であって、栽培作物中の鉄含有量向上機能を有することを特徴とする。
イネ科の作物において、付着済ろ材の土壌への混入使用量を作物一株当たり0.3〜3vol%とすることで、栽培作物中の鉄含有量を2〜17%向上させることを特徴とする。
イネ科以外の作物において、鉄バクテリアが死滅しておらず、付着済ろ材の土壌への混入使用量が作物一株当たり20vol%未満であって、栽培作物中の鉄含有量低減機能を有することを特徴とする。
イネ科以外の作物において、付着済ろ材の土壌への混入使用量を作物一株当たり0.3〜1vol%とすることで、栽培作物中の鉄含有量を10〜21%低減させることを特徴とする。
付着済ろ材を土壌へ混入することで、1%以上の収穫量向上効果、及び/又は1日以上の、出穂日または果菜開花日の生育促進効果を有することを特徴とする。
本発明においては、浄水工程の使用済みのろ材が適用しうることを見出し、具体的には生物ろ過法で使用した使用済ろ材を用いる。使用済ろ材は、基体と、基体の主として空隙部に存在する鉄バクテリアと、鉄バクテリアが産出する金属化合物を主体とする、即ち付着物から構成される。このろ材を用いることで、作物の吸収可能な土壌中の鉄分すなわち鉄イオンの増減が可能となる。
ろ材には様々な基体がある。合成繊維の集合体や粒状活性炭、アンスラサイトと呼ばれる無煙炭、珪砂と呼ばれるケイ酸質の鉱物粒など、バクテリアが住み着ける微小空間を有することが必須条件となる。アンスラサイトはろ過砂より比重が軽く、洗浄性に富んでいることから、珪砂と同様多くの浄水場で使用されている。
生物ろ過法におけるろ材は、原水中に含まれる鉄バクテリアを捕集し、それらを活動させ、また繁殖させる役割を持つ。捕集された鉄バクテリアは、原水中に含まれる鉄イオンやマンガンイオンを酸化することでエネルギーを得ながらそれらの金属の酸化物や水酸化物を産出する。使用済ろ材には鉄バクテリアと、産出物であるそれらの酸化物や水酸化物が主として付着している。
本文では浄水場から排出された使用済ろ材を用いているが、鉄バクテリア及び又はその産出付着物さえ含んでいれば制約はない。
例えば、特許文献2に記載されているような、鉄分回収装置を用いて鉄バクテリア及び又はその産出付着物を回収、活用してもかまわない。また特許文献4に記載のように、河川や湖沼に一定期間、木質担体を埋没させたのち回収し、鉄バクテリア及び又はその産出付着物として活用してもかまわない。つまり、付着済ろ材とは、鉄バクテリア及び又はその産出付着物を含んだろ過材料をいい、本文中の使用済ろ材も含む。
鉄の酸化物等の付着したこの使用済ろ材を土壌に混入させることは、土壌中に含まれる見かけ上の鉄分を増加させることになる。
イネ科の作物では、根圏に存在する鉄化合物をムギネ酸の働きのよって、3価の鉄イオンとムギネ酸との化合物、いわゆるムギネ酸-キレート複合体とし、そのままの形で吸収できるという特徴を持つ。よって、使用済ろ材の土壌への混入がない場合に比べ、作物中の鉄分の増加させることが可能となる。
一方イネ科以外の作物では、吸収可能な鉄分は2価の鉄イオンである。
これは、自らの根から出すクエン酸などにより根圏の鉄酸化物等を一旦3価のイオンに変化させる。それからさらに酵素の働きで2価の鉄イオンに変化させてから漸く吸収される。
しかし、ろ材に含まれる鉄ハ゛クテリアによって2価の鉄イオンが部分的に奪われ消費されてしまうために、結果的に作物が取り込める2価の鉄イオン量が低下する。従って、作物中に含まれる鉄含有量を低減させることが可能となる。
今回、出願人は作物をイネ科とイネ科以外の作物に分けて、その効果を実証した。
すなわち、同一材料を土壌に混入させることで、イネ科の作物においてはその鉄分含有量が増強され、イネ科以外の作物では鉄分を低減できるという、鉄分含有量調節機能を有する鉄分含有量調節材を見出した。
そこで実際に、浄水工程における使用済ろ材を用いてイネ科の作物を栽培し、作物中に含まれる鉄含有量の多寡を調べた。鉄含有量とは、作物の可食部100g当たりの鉄含有量を示す。作物には、イネ科の植物としては世界三大穀物として知られているトウモロコシ、小麦そして米を選んだ。基本的には、37Lサイズの大型フ゜ランターで栽培し、比較した。さらにトウモロコシについては、路地においても実証栽培を実施した。これらの生育栽培結果の概要を表1に示した。各々鉄分向上率が最大であった際の使用済ろ材混入率も記載している。
Figure 0006941721
表1で示したように、いずれも適量の使用済ろ材を栽培土壌に混在させることで、ろ材を使用しないいわゆる一般的な栽培法に比べて、収穫重量が向上し、栽培期間の短縮も図れ、5〜75%の鉄含有量向上が可能となった。さらには、露地栽培においても同様の結果の得られることを明らかにできた。
生育が促進し、収穫量が向上するのは、使用済ろ材による土壌改質効果によると考えている。ろ材の付着物に対しICP発光分析を行った結果は、含有量の多い順で、マンガン、鉄、ケイ素であり、微量のリン、アルミニウム、マグネシウムも含まれていた。従って、ろ材を土壌に混入させることは、栽培生育に必須微量元素といわれているマンガンや鉄、有用元素と称されているケイ素を土壌に導入することにもなり、さらには土中に適度な空隙を与えるという土壌改質効果が生じるためと考えている。
この使用済ろ材とは、生物ろ過法を用いた浄水工程において使用されたろ材をいい、何らかの理由で使用されなくなった使用済みのろ材のことを示す、つまり産業廃棄物の活用といえる。
また本発明においては、浄水工程から取り出された使用済ろ材に対し、何ら新しい加工や材料の追加を必要とせずそのまま使用できる。
この使用済ろ材は、浄水工程から取り出した後の保管において、何ら特別な管理は必要としない。鉄バクテリアを死滅させない為には、強酸強塩基等の薬品類や過剰な乾燥状況さえ避けられればよい。
例えば最も簡便な保管方法として、単にフレコンバッグへ詰め込むだけでよい。その場合、4か年の屋外保管後であっても、その向上や低減効果に劣化は見られなかったことから、本使用済ろ材は安定な材料といえる。
また、この使用済ろ材はそれ自体が無臭であることから、臭気面においても特別な管理を必要としない。
さらに、使用済ろ材には基本的に原水中に含まれている物質以外を含むことはなく、使用済ろ材の利用によって新たな土壌汚染を引き起こすことはない。
加えて、使用済ろ材は長期間に渡って使用することができる。
使用済ろ材の拡大外観写真 未使用のろ材の拡大外観写真 使用済ろ材の拡大断面写真 使用済ろ材の拡大断面写真 使用済ろ材の拡大断面写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 使用済ろ材の懸濁液の拡大写真 作物中の鉄分調節結果概要
以下実施例について詳細に説明する。
ただし、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
実験には生物ろ過法によって原水のろ過処理を継続的に行ってきたろ材をろ過工程から取り出した後、フレコンバッグ内で保管中の使用済ろ材を用いた。基体は、ポリエステル繊維の集合体で、未使用時の空隙率は93%、粒径は5〜7mmのものを使用した。
使用したろ材の光学顕微鏡写真を図1から図5に示す。撮影にはキーエンス社マイクロスコープVR3200を使用した。
まず図1は、使用済ろ材の外観拡大写真である。直径は5mm程度で球状である。直径0.05mm程度の繊維1の球状の集合体に、0.1から0.6mm程度の茶色の小さな塊状の多数の付着物2が観察された。
図2には、未使用のろ材、即ちろ材の基体の外観拡大写真を示している。倍率は図1と同じである。直径5mm程度の球状の、繊維の集合体であって、直径0.05mm程度の繊維1で構成されている。
図3、図4および図5は、使用済ろ材の断面拡大写真を示している。図3は図1、図2と同じ拡大倍率である。0.1から0.6mm程度の茶色の小さな塊状の付着物層3が、使用済ろ材の表面層部分の0.5mm厚程度に局在化していることが明らかとなった。図4と図5は表面層部分の拡大写真で、図5は拡大尺度をさらに大きくしている。図4からは、表面層部分に付着物2が局在化していること、また図5からも、表面層以外の内部には繊維1ばかりであって付着物が殆ど存在しないことが明らかとなった。
次に鉄バクテリアの存在について述べる。
非特許文献2の「工業用水中の鉄細菌試験方法」には、鉄細菌とは、「鉄分の多い地下水及び伏流水に広く生息し、鉄(2)又はその化合物を鉄(3)に酸化し菌体の内に蓄積、菌体の外に沈着する性質を持つ細菌類の総称」と定義されている。
さらに備考欄では、鉄細菌の外形を顕微鏡によって確認することで直接的な判定が可能である、との記載があり顕微鏡観察を実施した。以下詳細について述べる。
サンプル瓶に、使用済ろ材と純水各1mlを入れ攪拌した際に生じた懸濁液の顕微鏡観察を行った。
具体的には、Olympus社光学顕微鏡BX51を用い、懸濁液の一部をスライドガラス上に載せてプレパラートを作製し、微分干渉観察を含め実施した。グラム染色には日水製薬製フェイバーG「ニッスイ」を染色液として用いた。結果の写真を図6から図11に示した。写真の短辺長は、図6及び図9が約185μm、図7、図8、図10及び図11が約93μmである。
図6の微分干渉像の矢印部には、鉄バクテリアのGallionella属を、図7および図8のグラム染色像の矢印部には、鉄バクテリアのGallionella属を示している。
図9および図10の微分干渉像の矢印部には、鉄バクテリアのLeptothrix属を示している。図10ではLeptothrix属の鞘の表面に酸化鉄や酸化マンガン等で覆われている様子を示している。
Gallionella属ではねじったリボン状の、Leptothrix属では鞘状の、それぞれに特徴的な外形が見て取れる。観察からはこれらが多数確認された。つまり、使用済ろ材にはこれらの鉄バクテリアが多数存在することを表している。
また鉄バクテリア以外にも、図11の微分干渉像に示すように、多数の一般細菌の存在も確認された。
次に、使用済ろ材について述べる。実験に用いた使用済ろ材は、100mlあたり26gの付着物質を有している。ここで付着物重量は以下のように測定した。
S1.使用済ろ材を100ml採取し、5分間流水洗を実施しゴミを取り除いた。
S2.この使用済ろ材を取り出し軽く水切り後、アセトン中への15分間の浸漬を2回繰り返した。
S3.取り出した使用済ろ材をキッチンタオル上にて20時間風乾させ、重量測定(Wa)を実施した。
S4.7%塩酸溶液の入ったビーカーに、S3の使用済ろ材を徐々に添加、4時間攪拌し、20時間放置した。
S5.一旦S4の使用済ろ材を取り出した後、再度7%塩酸溶液の入ったビーカーに、上記使用済ろ材を徐々に添加、4時間攪拌し、20時間放置した。
S6.上記使用済ろ材を取り出し、5分間の流水洗を2回繰り返した。
S7.茶色であった使用済ろ材が白色となって付着物がほぼ完全に除去されたことを確認後、アセトン中への15分間の浸漬を2回繰り返した。
S8.取り出した使用済ろ材をキッチンタオル上にて20時間風乾させ、重量測定(Wb)を実施した。
このWaからWbを差し引いた重量を、使用済ろ材の付着物重量と定義した。
また上記S4の塩酸溶液をICP発光分光分析法にて分析の結果、最も多い元素は、マンガン、鉄、次いでケイ素であった。以下実施例においては、これと同梱の使用済ろ材を使用した。
イネ科の植物の代表として、トウモロコシを選び、プランターにて実栽培し比較を行った。栽培土は自作した。
大型フ゜ランターは、アイリスオーヤマ製ヘ゛シ゛タフ゛ルフ゜ランター680:37Lタイフ゜を使用、実際の培養土量は32Lとした。培養土組成は、赤玉土と腐葉土とハ゛ーミキュライトを7:2:1の比率とし、肥料は苦土石灰と化成肥料とした。
それぞれの混入比率と量を表2 に示す。
Figure 0006941721
赤玉土(小)と腐葉土はともに株式会社プロトリーフ製で、ハ゛ーミキュライトは株式会社ニチリウ永瀬製、苦土石灰はシーシーエフジャパン有限会社製の15炭酸苦土石灰で、化成肥料は、青島共生有限公司製の共生8号(8・8・8化成)を用いた。
栽培に用いた培養土は、まず表2に示す分量の材料3成分と使用済ろ材を別途大型プラスチック容器に入れて撹拌したのち、肥料2成分を追加投入、十分撹拌したのち、それぞれのフ゜ランターに移載することで栽培土壌とした。使用済ろ材の滅菌は、(株)平山製作所製の高圧蒸気滅菌器HV-50LBを使用し、滅菌条件の、2気圧、121℃、20分間を2回実施したものを用いた。
次に播種と育苗について述べる。
まず、表2のRefと同じ組成の培養土を調整し、3号ポリポット16個へ各250mlずつ入れた。そこへ、トウモロコシの種として、早生タイプで、(株)トーホク製 早どりあまいハ゛ンタ゛ムを各ポットへ2粒ずつ埋め込み、水道水で潅水した。4月17日に播種した各ポットは日当たりの良い室内の窓際に設置し、毎日潅水した。4月22日には全ポット発芽し、そのまま室内で育苗した。
本場が4枚になった5月5日に、外観と草丈の同等な苗を持つポットを選び、1フ゜ランターあたり 2ポットの計4本の苗をプランターの南側と北側に2本ずつ移植し潅水した。
各プランターは大和郡山市内の鉄筋コンクリート製ビルの3F屋上で、南向きに並べて設置した。さらに公平を期すために、5つのプランターの両サイドにも同型のプランターをダミーとして設置した。
活着を確認後、5月10日に一本立ちとした。追肥には前出の化成肥料を用い、5月21日と、6月6日の2回施用した。1回の施用量は各フ゜ランター当たり20gとし、フ゜ランターの縁沿いに埋め込んだ。農薬には三井化学アグロ(株)製トレボン粉剤DLを用い、5月13日と6月3日、6月12日の3回、均等な使用量にて散布、使用した。
栽培のための灌水は、降雨を含めて2日に1回で、降雨以外は水道水を使用し、1回当たり如露を用いて各1Lとした。
代表として北側の株の収穫直前の生育状況を表3に示した。
Figure 0006941721
いずれも果実数や着果位置に差は見られなかったが、着果節の高さや草丈に若干の差が見られた。雌穂の出穂はろ材を混入させることで最大3日促進された。
播種から80日後、収穫期を迎えた果実を手でもぎ取って、皮と絹糸を除去後、重量、サイズを測定した。そして果実中に含まれる鉄含有量の測定を行った。結果を表4に示した。
Figure 0006941721
まず、ろ材を混入させることで、果実の重量、長さ、太さのサイズがいずれも増大し、ろ材の20vol%混入時には果実重量はRefに比べ26%も増大した。
滅菌ろ材では、含有鉄分の向上は得られなかった。これはろ材に対し高温高圧の条件を2回通過させたために、鉄バクテリアが死滅するのみならず、付着物の鉄化合物の酸化など不溶化が大いに進行し、トウモロコシの根からの吸収が難しくなったためと考えている。
測定分析の結果、可食部100g当たりの鉄(Fe)含有量は、Refが0.41mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培ではいずれも鉄含有量が向上し、ろ材量が2vol%の時には、0.47mgと、15%の鉄含有量の向上を得た。
鉄分含有量の分析方法はICP発光分析法である。
測定装置は、アシ゛レント・テクノロシ゛ー株式会社製で、機種が725-ES。
高周波出力は1200W、フ゜ラス゛マカ゛ス、キャリアカ゛ス、補助カ゛スは全てアルコ゛ンカ゛スを使用、流量は各々15、0.7、1.5L/minであって、鉄の測定波長は238.204nmである。測定の作業手順は、作物の可食部を秤量し、灰化、蒸発乾固後塩酸で溶解しろ過し、ろ液と残渣に分離。残渣にはさらに灰化、蒸発乾固を繰り返し、ろ液を得る。ろ液を合わせて、塩酸希釈溶液としICP発光分析に供した。
ここでは実施例1に対し、種子の種類と栽培場所を変えて実施した。
トウモロコシの種子としては、中晩生タイプで、(株)サカタのタネ製 ハニーハ゛ンタ゛ムを用いた。
栽培場所は、実施例1と同じビルの、2Fベランダとした。
その他栽培方法は実施例1に準じた。
5月15日に播種、5月20日に発芽し、6月3日に各プランターへ移植した。
活着を確認後、6月6日に一本立ちとした。追肥には前出の化成肥料を用い、6月6日、7月1日の2回施用した。農薬には前出のトレボンを用い、6月6日、7月1日と7月8日の3回、均等な使用量にて散布、使用した。
代表として北側の株の収穫直前の生育状況を表5に示した。
Figure 0006941721
いずれも果実数や着果位置に大きな差は見られなかったが、着果節の高さや草丈に若干の差が見られた。雌穂の出穂はろ材を混入させることで最大3日促進した。
播種から92日後、収穫期を迎えた果実を手でもぎ取って、皮と絹糸を除去後、重量、サイズを測定した。そして果実中に含まれる鉄含有量の測定を行った。結果を表6に示した。
Figure 0006941721
まず、ろ材を混入させることで、果実の重量、長さ、太さのサイズが概ね増大し、ろ材の20vol%混入時には果実重量はRefに比べ52%も増大した。
分析の結果、可食部100g当たりの鉄含有量は、リファレンスが0.54mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培では概ね鉄含有量が向上し、ろ材量が20vol%の時には、0.67mgと、24%の鉄含有量の向上を得た。
滅菌ろ材では、含有鉄分の向上は得られなかった。これは実施例1と同様、ろ材に対し高温高圧の条件を2回通過させたために、鉄バクテリアが死滅するのみならず、付着物の鉄化合物の酸化など不溶化が大いに進行し、トウモロコシの根からの吸収が難しくなったためと考えている。
ここでは実施例1に対し、種子の種類を変えるとともに、ホ゜ット育苗に加え、直播でも実施した。ホ゜ットにおいては、これまでの実施例とは異なり、プランター組成の土を使用した。つまり播種時からろ材入り環境での育苗となる。
トウモロコシの種子としては、抑制栽培タイプで、(株)武蔵野種苗園製 夏まき味甘ちゃんを用いた。
その他栽培方法は実施例1に準じた。ろ材量は、ゼロのRefと、70%と100%の3水準とした。
直播は各プランターの南側に2粒播きとした。ホ゜ット、直播共に、8月1日に播種、8月5日に発芽した。ホ゜ットでは、8月12日に各プランターの北側へ移植し、活着を確認後、8月19日に一本立ちとした。直播の一本立ちは8月16日である。
追肥には前出の化成肥料を用い、8月19日、9月6日の2回施用した。農薬には前出のトレボンを用い、8月20日、9月3日と9月20日の3回、均等な使用量にて散布、使用した。
南側の直播株の収穫直前の生育状況を表7に示した。
Figure 0006941721
直播において100%ろ材の培養土では、発芽はするけれども、その後の生育が徐々に悪化して、本葉5枚程度、つまり播種後ひと月程度で成長がほぼ停止した。雄穂も雌穂も形成できなかった。その際の草丈は28cmでしか無かった。
一方、育苗において100%ろ材の培養土では、発芽も初期生育も比較的順調であったが、時間の経過とともに生育が遅れてきた。雄穂も雌穂も出るには出て結実にも至ったが、果実重量がわずか6gとあまりにも小さく、やはり栽培組成としては不良との評価となった。つまり100%ろ材培養土というのは、生育には適さないことが明らかとなった。
さらに、実施例3において、余分になった100%ろ材のポット苗を、 大和高田市内の一般的畑土に移植し、栽培を行ったところ、問題なく成長し一般的な果実が得られた。
つまり、100%ろ材培養土の場合は、発芽や初期生育には問題はないものの、生育の後期、いわゆる水分吸収が旺盛な時期に充分な生育が難しくなるという問題を有す。これは、ろ材同士の物理的な隙間が大きく、また多く、排水性が良好すぎて必要な水分を保てないためだと考えている。
70%ろ材においては、草丈は短いものの、茎の周囲が大きい、つまりがっちりした株となっていることがわかる。雄穂、雌穂共にろ材を混入させることで出穂は4日間促進された。
播種から76日後、収穫期を迎えた果実を手でもぎ取って、皮と絹糸を除去後、重量、サイズを測定した。そして果実中に含まれる鉄含有量の測定を行った。結果を表8に示した。
Figure 0006941721
まずろ材70%混入において、果実の重量、長さ、太さのサイズが増大し、果実重量はRefに比べ15%増大した。
さらには分析の結果、可食部100g当たりの鉄(Fe)含有量は、Refが0.63mgであったのに対し、1.10mgと、75%もの鉄含有量の向上を得た。
一方、プランター栽培ではなく、実際の露地栽培を考えたときに、ろ材の混入は3vol%程度以下に抑えることが望ましい。これは実際の作付け作業をする際に、ろ材の混入量が多くなると耕運する際に畝の形状を保つのが難しくなってくる。つまりろ材量が多くなるに従い畝からこぼれ出し、通路に散らばるとともに、畝の角が潰れやすくなり、後工程のマルチングと称されるフィルム張り工程での手修正や畝間通路の清掃など、通常にはない手間が増えてしまう場合がでてくる。混入量を3vol%程度以下とすることで、従来の顆粒肥料を播くのと同じ感覚で作業が行え、これらの作業面での不具合は気にならなくなるためである。
ここでは、実施例3の収穫後の土壌の鉄分測定を行った。
具体的には、各プランターのトウモロコシ株を引き抜いたのち、培養土全体を鍬で撹拌混合し20g程度の培養土を採取、風乾させたのち分析測定を行った。
測定に使用した機器は、市販のト゛クターソイルである。この機器については非特許文献1に詳述されている。この機器によって測定される各成分は、植物が吸収しうる養分濃度であって、特に注目している鉄分については、TPTZ法(トリヒ゜リシ゛ルトリアシ゛ン法)という、一般的な鉄濃度測定法が使用されている。これをト゛クターソイルでは可給態鉄と称している。この方法は溶液中の2価の鉄イオンを発色させることで比色分析を行って濃度を導出する方法である。比色分析には、ト゛クターソイルテ゛シ゛タル検定器を使用している。また試薬には、3価の鉄イオンを2価の鉄イオンに還元する還元剤も含まれている。
結果、可給態鉄は、Ref、70%ろ材、100%ろ材の順に、7(ppm)、25、38であった。
これは主として使用済ろ材に付着している鉄化合物が、栽培土壌中へ混入されることで、鉄分の供給源になっていることを示している。つまり栽培土壌中の鉄分が、ろ材を混入させることで増加し、それが栽培期間中を通して保たれ、したがって、作物が大いに吸収し、作物中の鉄含有量も増加したものと考えている。
ここでは、実施例3の収穫後の土壌のpHおよびEC(電気伝導度)測定を行った。採土は実施例4に同じである。
一般的には栽培土壌のpHおよびECの値には最適範囲が存在し、大半の作物ではpHが6から6.5程度、ECが0.1から0.4mS/cm程度と示されている(非特許文献1)。
pH測定は、土壌と純水との重量比が1対2.5の方法で、EC測定は同1対5の方法で実施した。各々の測定は(株)堀場製作所製pHメーター B-712及び(株)竹村電気製作所製ECメーター CM-53を使用した。
結果、pH値は、Ref、70%ろ材、100%ろ材の順に、6.66、6.71、6.68 であった。
いずれも最適値からは若干のずれはあるものの、使用済ろ材を栽培土壌に混入させても、pH値にはほとんど変化のないことが明らかである。
またEC値は同順で、0.32 (mS/cm)、0.43、0.50 であり、いずれも最適値範囲であった。
また、使用済ろ材の量につれEC値が若干増加する傾向が見られた。この現象は肥料成分である硝酸態窒素が増えていることを示唆しており、作物栽培にはむしろ有利であるといえる。これは鉄バクテリアとともに生息している一般細菌の硝化菌の働きによるものと考えている。
この結果から、使用済ろ材を栽培土壌に混入させることによって、pH値、EC値共に最適範囲から大きくずれることは無い、即ち少なくとも使用済ろ材が土壌に悪影響を及ぼすことはないことを示している。
これまでは大型プランターでの栽培について実施してきた。ここでは露地栽培を実施した。
路地の畑土の場所は奈良県大和高田市内で、ほぼ一日中日射の得られる場所である。当該畑土の前作はにんにくであり、土壌のpH(H2O)は7.0であった。この畑土の一畝長さ約8mに対して、真ん中から東西の2区画に分け栽培比較を行った。
各区に対し、市販の牛糞堆肥15L、苦土石灰180g、化成肥料400gを投入した。牛糞堆肥は、兵庫アグリメイト製、他は実施例1に同じである。さらにサンプル区の西側にのみ使用済ろ材5Lを投入、両区とも鍬ですき込んだのち、黒フィルムでマルチングを行った。畝幅が約50cm、作土深さが約20cm、長さ3m区に対する投入ろ材量5Lは1.7vol%に相当する。以上の畝準備は3月24日に実施した。
4月20日に播種を行った。種子は実施例3と同じ夏まき味甘ちゃんである。ピッチを30cmとしマルチに穴を開け、深さ約3cmの2粒播きで、各区それぞれ10か所とした。水道水で潅水した。
全発芽はサンプル区が4月29日、リファレンス区が4月28日であった。5月7日には全て一本立ちとした。追肥は5月18日と6月3日の2回、各株間に前出の化成肥料7gを埋め込み、害虫防除は、5月20日、6月9日と6月16日の3回、実施例1同様にトレボン粉剤の散布にて行った。栽培期間中の潅水は降雨および水道水とした。表9に生育状況を示した。
Figure 0006941721
雄穂出穂直前の草丈比較において、C1.7との表示であるサンプル区がリファレンス区に比べ、最大、最小ともに大きくなっていることがわかる。さらには全株出穂日が雄穂では2日、雌穂では5日早い、即ち生育が促進されていることがわかる。果実数には違いは見られなかった。
7月1日前後に収穫期を迎えた果実を手でもぎ取って、皮と絹糸を除去後、重量を測定した。そして果実中に含まれる鉄含有量の測定を行った。結果を表10に示した。
Figure 0006941721
まず、ろ材を混入させることで、果実の10本重量はリファレンスに比べ6%も増大した。
分析の結果、可食部100g当たりの鉄(Fe)含有量は、リファレンスが0.47mgであったのに対し、サンプル区では、0.55mgと、17%の鉄含有量の向上を得た。
結局、露地栽培においてもプランター栽培同様、ろ材を土壌に混入させることで、作物の生育を促進させつつ、肥大化させ、さらに果実中の鉄含有量を増加させることが明らかとなった。
これまではイネ科の代表としてトウモロコシについての実施例を述べてきた。
ここではトウモロコシ以外の代表として、小麦を選び実施した。栽培期間は約半年と、トウモロコシの約3か月に比べ倍増する。
実施の方法は実施例1に準じた。すなわち、大型フ゜ランターを用い、実際の培土量は31Lとした。培養土組成は、赤玉土と腐葉土を6:4の比率とし、肥料は苦土石灰と化成肥料とした。ろ材混入量は、0.3vol%と3vol%およびリファレンスの3水準とした。
それぞれの混入比率と量を表11に示す。
Figure 0006941721
上記プランターの準備を11月7日に終え、11月13日に播種を行った。
用いた種は、野口種苗研究所製の農林61号で、一般的な品種として広く知られている。
各プランターに対し、ピッチ6cmで、深さ約3cm、10か所、計40粒を播種し、鎮圧した。
11月25日時点で全プランターでの発芽状況は、リファレンス、0.3、3vol%の順に、36、39、39本であった。
12月13日には、より正確な比較のため間引きし、各プランター当たり20本に統一した。
麦踏みは12月20日、1月6日及び2月6日の3回行った。3月24日には土寄せを行った。4月3日には害虫予防としてトレボン散布を実施した。
生育状況と分析結果を表12に示した。
Figure 0006941721
第1回目の麦踏時直前の、本葉4枚にまで生育した株数を比較すると、リファレンス、0.3、3vol%の順に、14、18、20本であり、ろ材混入によって生育が促進されていた。出穂日は同様に5日促進された。5月7日の刈り取り直前の着穂本数は、3vol%においては98本とリファレンスよりも21本多かった。
刈り取った全茎は5月11日まで納屋内で、はざがけ乾燥させた。
乾燥後これら3本ずつ穂をしごき脱穀した。さらに屋外の風のあるところで空籾や汚れを除いた。さらに、ゴム手袋をしてこれらの麦籾をこすり合わせ、籾殻を外し屋外で風選別した。
得られた玄小麦の重量は、リファレンスに比べて重く、3vol%では5%の増量が見られた。
これらの鉄(Fe)含有量を測定した結果、ろ材混入によりいずれも向上し、0.3vol%では3%の、3vol%では6%の鉄含有量の増加を得た。
つまり、小麦の栽培においてもトウモロコシ栽培と同様、ろ材を土壌に混入させることで、生育を促進させつつ、肥大化させ、さらに作物中の鉄含有量を増加させうることが明らかとなった。
これまではイネ科の代表として世界3大穀物中、トウモロコシおよび小麦についての実施例を述べてきた。
ここでは残る一つの米について栽培を実施した。一般に栽培期間とは、播種から刈取りまでを称するが、ここでは田植えを終えて活着を確認後、ろ材を投入してから刈取りまでの期間とした。栽培期間は4ヶ月弱で、トウモロコシの約3か月より長い。
実施の方法は実施例7に準じた。すなわち、大型フ゜ランターを用い、実際の培土量は31Lとした。培土組成は、赤玉土と黒土、鹿沼土、培養土を30:55:10:5の比率とし、肥料は化成肥料とした。ろ材混入量は、0.3vol%と3vol%およびリファレンスの3水準とした。小粒赤玉土および鹿沼土はプロトリーフ製、黒土は刀川平和農園製、培養土はジュンテンドー社製のいずれも市販品を使用した。湛水のためプランター底にゴム栓をした。
それぞれの混入比率と量を表13に示す。
Figure 0006941721
上記プランターの準備を6月1日に終え、6月5日に湛水代掻きをし、6月9日に田植えを行った。
苗はヒノヒカリで、奈良県農協製種籾を専業農家が育苗した苗を田植え直前に入手、使用した。苗丈は約15cm程度のものを選んだ。そしてピッチ17cm、深さ約3cmで4ヶ所に、3本ずつ手植した。1プランター当たり苗12本とした。
以降、水管理を行い、苗の浸水深さは概ね2cmを保った。
6月15日に活着を確認後、それぞれのろ材量を壁沿いに埋め込んだ。
追肥は7月20日、8月11日と8月28日の3回、各々化成肥料8gを各プランターの壁に沿わせて施した。7月31日、8月19日と9月1日には害虫予防としてトレボン散布を実施した。7月30日には5日間の中干しを行った。
8月15日にはサンプルプランターで出穂があった、リファレンスよりも1日早かった。栽培期間中、適正な水管理を継続し、10月1日には落水、10月7日に全て刈り取った。
生育状況と分析結果を表14に示した。
Figure 0006941721
田植え2週間後の6月22日および8週間後の7月27日の草丈には、大きな違いは見られなかった。ここで草丈とは最長から2番目の高さを示す。一方、出穂日は1日促進された。
刈り取った全稲は10月15日まで納屋内で、はざがけ乾燥させた。乾燥後これらは3本ずつ穂をしごき脱穀した。得られた全籾重量には大きな違いは見られなかった。
空洞籾を除去するため、得られた籾を水道水に浸漬し、沈んだ籾のみを取り出し1日風乾させた。
ケツト社製実験用もみすり器TR-30を用い、籾を2回通過させることで玄米とすると同時に、欠けや変色米を取り除くことで、各玄米重量とした。
3vol%ろ材混入プランターでは玄米重量で8%の増量が得られた。
これらの鉄(Fe)含有量を測定した結果、ろ材混入によりいずれも向上し、0.3vol%では2%の、3vol%では5%の鉄含有量の増加を得た。
つまり、米の栽培においてもトウモロコシや小麦栽培と同様、ろ材を土壌に混入させることで、生育を促進させつつ、肥大化させ、さらに作物中の鉄含有量を増加させうることが明らかとなった。
今回、出願人は作物をイネ科とイネ科以外の作物に分けて、その効果を実証している。
すなわち、同一材料を土壌に混入させることで、イネ科の作物においてはその鉄分含有量が増強され、イネ科以外の作物では鉄分を低減できるという、鉄分含有量調節効果である。
これまでの実施例1から実施8においてはイネ科の作物に対する含有鉄分向上効果について記した。
以下はイネ科以外の作物における含有鉄分の低減効果について記す。
まずイネ科以外作物として5種類を選び、実際に栽培し、その生育状況および鉄含有量の多寡を調べた。結果の概要を表15に示した。各作物一株あたりの栽培土壌見積量に対する使用済ろ材の使用量も示した。一般に栽培期間とは、播種から刈取り収穫までを称するが、モロヘイヤにおいては苗の移植以降収穫までを、ブルーベリーにおいてはろ材の投入以降収穫までを栽培期間とした。
Figure 0006941721
栽培期間は1ヶ月弱の空心菜から、6ヶ月のスナッフ゜豌豆まで、栽培場所はプランターから路地、果樹園まで広範囲に実施した。結果、表15に示すように適量のろ材を土壌に混入させることで、いずれの場合にも収穫重量が向上し、鉄含有量も低減していることがわかる。
生育が促進し、収穫量が向上するのは、ろ材による土壌改質効果によると考えている。ろ材の付着物に対しICP発光分析を行った結果は、含有量の多い順で、マンガン、鉄、ケイ素であり、微量のリン、アルミニウム、マグネシウムも含まれていた。従って、ろ材を土壌に混入させることは、栽培生育に必須微量元素といわれているマンガンや鉄、有用元素と称されているケイ素を土壌に導入することにもなり、さらには土中に適度な空隙を与えるという土壌改質効果が生じるためと考えている。
ここではまず、使用済ろ材の混入適量の検討を実施した。
作物としては、コマツナとハツカダイコンを用いプランターにて成育状況を比較した。栽培場所はほぼ一日中日射の得られる地面上である。プランターサイズは、18×58×12cmで、実容量は約8Lである。
そこに、使用済ろ材の混入量は、比較としての0%から、20%、40%、60%、そして100%までの5水準とした。
使用した培養土は、市販の(株)フ゜ロトリーフ製「花と野菜の培養土」で、土壌のpH(H2O)は6.5であった。
各プランターに規定量の使用済ろ材と合わせて8Lとなるように土壌を混入した。プランターの奥半分をコマツナ域、手前半分をハツカダイコン域とし、各々1条で計20粒播きとした。種子はそれぞれ市販の松永種苗(株)および(株)ク゛リーンフィールト゛フ゜ロシ゛ェクト製を使用した。
その後定期観察を実施した結果、ハツカダイコンでは20%混入までは比較と同じ成育と重量が得られたのに対し、コマツナでは20%混入では若干成育が劣り、20%を越えると極端に成育が劣勢になることが判った。
一方、プランター栽培ではなく、実際の露地栽培を考えたときに、ろ材の混入は3vol%程度以下に抑えることが望ましい。これは実際の作付け作業をする際に、ろ材の混入量が多くなると耕運する際に畝の形状を保つのが難しくなってくる。つまりろ材量が多くなるに従い畝からこぼれ出し、通路に散らばるとともに、畝の角が潰れやすくなり、後工程のマルチングと称されるフィルム張り工程での手修正や畝間通路の清掃など、通常にはない手間が増えてしまう場合がでてくる。混入量を3vol%程度以下とすることで、従来の顆粒肥料を播くのと同じ感覚で作業が行え、これらの作業面での不具合は気にならなくなるためである。
作物としては、空心菜(エンサイ)を用いプランターにて栽培比較した。栽培場所は、鉄筋ビルの2階ベ1ランダでほぼ一日中日射の得られる場所である。プランターサイズは、18×58×12cmで、実容量は約8L、使用した培養土は、市販の(株)フ゜ロトリーフ製「花と野菜の培養土」で、2つのプランターに8Lずつ投入した。土壌のpH(H2O)は6.5であった。
種子は、市販の(株)トーホク製エンサイを使用し、約8cmの間隔で2粒ずつ播種し、薄く覆土し、軽く押圧したのち、各1Lの純水を灌水した。虫害を防ぐために栽培期間中はネット掛けを行った。
4日後に発芽を確認。本葉が出始めた8日目までに間引きを実施し、各プランターでの株数を6株に揃えた。2つのプランターで発育に有意差の無いことを目視確認の後、片方のプランターにのみ、使用済ろ材約40mlを作物の両側に設置し埋め込んだ。
栽培のための灌水は、降雨を含めて2日に1回で、降雨以外は純水を使用し、1回当たり如露を用いて各1Lとした。
播種から24日後、株元からハサミでカットし、茎葉6本ずつの重量を測定した。結果、リファレンスが23.3gであったのに対し、ろ材含有培土栽培では24.7gと、6%の収穫重量向上を得た。
ついで、これらの鉄含有量についての分析を実施した。
分析方法はICP発光分析法である。
測定装置は、アシ゛レント・テクノロシ゛ー株式会社製で、機種が725-ES。
高周波出力は1200W、フ゜ラス゛マカ゛ス、キャリアカ゛ス、補助カ゛スは全てアルコ゛ンカ゛スを使用、流量は各々15、0.7、1.5L/minであって、鉄の測定波長は238.204nmである。測定の作業手順は、作物の可食部を秤量し、灰化、蒸発乾固後塩酸で溶解しろ過し、ろ液と残渣に分離。残渣にはさらに灰化、蒸発乾固を繰り返し、ろ液を得る。ろ液を合わせて、塩酸希釈溶液としICP発光分析に供した。
分析の結果、可食部100g当たりの鉄含有量は、リファレンスが1.27mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培では1.06mgと、16.5%の低減を得た。
ここでは、実施例10の実験を、作物の種類を変えて実施した。
作物としては春菊を用いた。栽培場所および栽培方法は実施例10に同じとした。種子は、市販の(株)アタリア農園製の中葉しゅんぎくを使用し、条播きし、ごく薄く覆土し、軽く押圧したのち、各1Lの純水を灌水した。虫害を防ぐために栽培期間中はネット掛けを行った。
7日後には発芽を確認。本葉が出始めた13日目に間引きを実施し、2つのプランターで発育に有意差の無いことを目視確認の後、片方のプランターにのみ、使用済ろ材約40mlを実施例12と同様に、作物の両側に設置し埋め込んだ後、溜めていた雨水を灌水した。使用済ろ材施用後の灌水には、純水または汲み置き水を使用した。
19日目には2回目の間引きを実施、各プランターでの株数を6株に揃えた。23日目には、追肥として市販の住友化学園芸(株)製ベジフル液肥を純水で1%に希釈し、各プランターに330mlずつ与えた。
30日目には、2回目追肥として同上の液肥を、各プランターに330mlずつ与えた。
播種から34日後、約20cm程度の草丈になっており、2つのプランターで発育に異常の無いことを目視確認の後、株元からハサミでカットし、茎葉6本ずつの重量を測定した。結果、リファレンスが73.1gであったのに対し、ろ材含有培土栽培では76.0gと、4%の収穫重量向上を得た。
ついで、これらの分析を実施した。分析は実施例10に同じである。
可食部100g当たりの鉄含有量は、リファレンスが5.70mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培では4.92mgと、14.7%の低減を得た。
ここでは、実施例10の実験を、作物の種類と栽培場所を変えて実施した。
作物としては、モロヘイヤを用い、露地栽培とした。まずはホ゜ットで育苗を行った。種子は市販のタキイ種苗(株)製モロヘイヤを使用した。6cmホ゜ットに2粒ずつ播種し、薄く覆土し、軽く押圧したのち水道水を灌水し育苗を行った。7日後には発芽を確認、本葉2~3枚となった時に1本立とし、本葉5枚で畑土に移植を行った。
路地の畑土の場所は奈良県大和高田市内で、ほぼ一日中日射の得られる場所である。当該畑土の前作はサツマイモであり、土壌のpH(H2O)は7.0であった。この畑土の黒マルチフィルムを張った畝1本に対し、本葉5枚の成長した苗11株を30cmの間隔で一列に移植、栽培した。本葉が約20枚、草丈約18cmとなったときに、西端から4,5,6番目のサンフ゜ルク゛ルーフ゜と、西端から8,9,10番目の比較対象ク゛ルーフ゜のク゛ルーフ゜分けをした。
サンフ゜ルク゛ルーフ゜には、各株の根元4カ所に黒マルチフィルムを破って各約30mlの使用済ろ材を埋込み覆土した。つまり3株で計12カ所に各30mlの使用済ろ材を埋め込んだ。一方、比較の方にも、公平を期すために3株の株元12カ所において黒マルチフィルムを破ってスコッフ゜で掘って埋め戻すという、サンフ゜ルク゛ルーフ゜と同様な作業を行っている。路地での栽培を継続、灌水は降雨のみとした。3回の収穫を経て、移植から45日目、草丈が約60cm程度となった時に、2つのグループで発育に異常の無いことを目視確認の後、食用に供する枝先を25cmの長さで3本ずつハサミでカットし重量を測定した。結果、リファレンスが18.5gであったのに対し、ろ材含有培土栽培では19.5gと5%の収穫重量向上を得た。
ついで、これらの分析を実施した。分析は実施例10に従った。
可食部100g当たりの鉄含有量は、リファレンスが2.32mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培では2.14mgと、7.8%の低減を得た。
ここでは、実施例10の実験を、作物の種類と栽培場所を変えて実施した。
作物としては、果樹のブルーベリーを用い、場所は、奈良県明日香村のブルーベリー果樹園で、ほぼ一日中日射の得られる場所である。
果樹園は概ね2反程度の面積で長方形であり、畝数は13。東西方向の畝に、畝当たり10~15本のフ゛ルーヘ゛リーが斜交いに栽培されている、総計150本程度の果樹園である。樹木ピッチは概ね1mで、樹齢は8年程度である。
この中で、樹形の似通った3本ずつの組合せを、同じ畝かもしくは隣接した畝から3ペア選んだ。
一方、使用済ろ材は、約1Lを市販のキッチン用水切りネットへ入れ、口を縛ったものを15袋準備した。
サンプルグループには、株元から約40cmの距離で、約20cmの深さにスコップで穴を掘って、そこに1袋ずつ埋め込んだ。具体的には計5袋を、なるだけ3本に対して均等になるようにして、3本当たり5袋を埋め込んだ。
リファレンスグループには、公平を期すために、同様にスコップで穴を掘って埋め戻した。3月3日に埋込作業を実施し、それ以降は特別な管理はしていない。果樹1本当たり3つの花が咲いた日を開花日とした。サンプルグループで最も早かった株では3月24日で、リファレンスグループの3月26日に比べ2日早かった。4ヶ月後通常の収穫時期となった時、自主出荷基準の直径1cm以上の果実をすべて収穫し、重量を測定した。結果、リファレンスが95gであったのに対し、ろ材含有培土栽培では190gと収穫重量は200%に達した。
ついで、これらのサンプルとリファレンスに対し分析を実施した。分析は実施例10に従った。
可食部100g当たりの鉄含有量を以下に示した。
ペア一組目:リファレンスが0.21mgで、サンプルが0.19mg(10%の低減)
ペア二組目:リファレンスが0.23mgで、サンプルが0.18mg(12%の低減)
ペア三組目:リファレンスが0.22mgで、サンプルが0.18mg(18%の低減)
で、平均16.7%の低減を得た。
ここでは使用済ろ材の混入量を一定とし、ろ材の付着量依存についての検討を実施した。実験は、実施例12に従った。使用済ろ材の混入量はプランター当たり40ml一定とし、使用済ろ材100ml当たりの付着物量がこれまで使用してきた26gろ材に加え、5gと2gを用いた。Refは使用済ろ材なしとした。
播種から28日後、4つのプランターで収穫適期を迎えた発育に異常の無いことを目視確認の後、空芯菜を株元からハサミでカットし、分析を実施した。分析方法も実施例10に従った。
結果を表16に示した。
Figure 0006941721
可食部100g当たりの鉄含有量は、Refが1.21mgであったのに対し、26gろ材では1.03mg、5gろ材では1.11mgおよび2gろ材では1.22mgであった。つまりS1、S2ではそれぞれ14.9%および8.3%の低減が得られたが、2gろ材では低減が得られなかった。すなわち鉄含有量低減には、使用済ろ材100ml当たりの付着物量が5g以上有することが望ましいことが判った。
ここでは使用済ろ材の混入条件に対する作物の鉄含有量についての検討を実施した。実験は、実施例12に従った。 ただしプランターサイズは13×31×8cmで実容量約4Lのものとした。混入条件としては、使用済ろ材の混入する時期を播種時と、本葉が2枚になってからの2水準、混入形態としては使用済ろ材をそのまま混入する場合と、使用済ろ材の純水との攪拌懸濁液を灌水する場合の2水準、加えて滅菌済の使用済ろ材も比較として使用した。懸濁液作製時の純水量が300mlであるのは、プランター当たりの1回の灌水量を300mlとしたためである。
播種から33日後、6つのプランターで発育に異常の無いことを目視確認の後、株元からハサミでカットし、分析を実施した。分析方法は実施例10に従った。滅菌は(株)平山製作所製の高圧蒸気滅菌器HV-50LBを使用し、滅菌条件は、2気圧、121℃、20分間で3回実施した。
結果を表17に示した。
Figure 0006941721
滅菌した使用済ろ材においてのみ、鉄含有量低減効果があまり見られなかったが、それ以外では1割程度の低減が図れた。
使用済ろ材の土壌への混入時期は、播種時でも本葉が出てきてからでもどちらでも有効であること、また混入には使用済ろ材そのままの形態でも、懸濁液としての灌水でも有効であることが判明した。つまり通常の農作業に比べてなんら煩雑な作業や管理が不要であること、ただ鉄バクテリアを死滅させないように注意するだけで鉄分低減作物が栽培可能であることが明らかとなった。
ここでは、実施例10の実験を、作物の種類と栽培場所を変えて実施した。
これまでは栽培期間が概ね1か月と短く、最も長かったブルーベリーにしても、ろ材投入後の期間が4ヶ月程度であった。ここでは、栽培期間が6か月と長期となるスナップ豌豆を選び、かつ露地栽培とした。
路地の畑土の場所は奈良県大和高田市内で、ほぼ一日中日射の得られる場所である。当該畑土の前作はタマネギであり、土壌のpH(H2O)は6.9であった。この畑土の一畝長さ約8mに対して、真ん中から東西の2区画、各1.2m長さにて栽培比較を行った。
11月10日に各区に対し、市販の化成肥料20gを投入し鍬ですき込んだ。11月15日にはさらにサンプル区の西側にのみ使用済ろ材0.44Lを列状に投入した。つまり播種予定の畝中央列の南側約10cmの所に一列に埋め込んだ。Ref区にも公平を期すために同様の列を掘って埋め戻すという作業を行っている。黒フィルムでマルチングを行った。
畝幅が約60cm、作土深さが約20cm、長さ1.2m区に対する投入ろ材量0.44Lは0.3vol%に相当する。11月17日に播種を行った。種子は市販の(株)サカタのタネ製のスナックエンドウ753である。ピッチを12cmとしカッターナイフでマルチに穴を開けながら、深さ約2cmで1粒播き、覆土した。各区それぞれ9か所とした。水道水で潅水した。
全発芽は両区とも11月29日で、欠株はなかった。追肥は4月4日に各区ともに前出の化成肥料20gを株間に埋め込んだ。栽培期間中の潅水は降雨のみとした。
一本の株から2輪咲いた日を開花開始日とし、サンプル区では3月24日と、Ref区の3月25日より1日早かった。初収穫は共に4月19日で1莢ずつ、共に5g重であった。以降ほぼ毎日収穫を継続し、5月15日に収穫を終えた。
収穫開始4日目の4月23日からサンプル区の収穫莢数が少しずつ増加し、5月2日にはRef区が累計で997gに対し、サンプル区では1,100gと明らかに増加していた。5月4日に草丈比較を行った、測定は最長から2番目の草丈にて行った。リファレンス区では181cmで、生育葉の状態は比較的疎であるのに対し、サンプル区では195cmで比較的密であった。すなわちろ材を混入させることで、生育が促進されていることが外観からもわかった。
結局、最終収穫日の5月15日比較を終えての総計比較では、リファレンス区が541莢、2,763gに対し、サンプル区では675莢、3,599gと、莢数で125%、重量比で130%一莢当たりの重量も104%と生育促進と生育増大効果が見られた。
ついでこれらの分析を行った。分析方法は実施例10に従った。
可食部100g当たりの鉄含有量は、リファレンスが0.78mgであったのに対し、ろ材含有培土栽培では0.98mgと、21.4%の低減を得た。
以上述べてきた実施例の結果をまとめたのが、図12である。
イネ科については鉄含有量が増加し、イネ科以外について鉄含有量が低減する。そしてこれらの調節効果は栽培期間の長短に関わらず発揮されることが解る。
さらにはこれらの作物はイネ科かそれ以外かによらず生育は促進され、収穫量は増大する効果を有した。
ろ材の混入は3vol%程度以下に抑えることが望ましい。これは実際の作付け作業をする際に、ろ材の混入量が多くなると耕運する際に畝の形状を保つのが難しくなってくる。つまりろ材量が多くなるに従い畝からこぼれ出し、通路に散らばるとともに、畝の角が潰れやすくなり、後工程のマルチングと称されるフィルム張り工程での手修正や畝間通路の清掃など、通常にはない手間が増えてしまう場合がでてくる。混入量を3vol%程度以下とすることで、従来の顆粒肥料を播くのと同じ感覚で作業が行え、これらの作業面での不具合は気にならなくなるためである。
土壌への混入方法については、従来の施肥をする際に、使用済ろ材を追加撒布すればよく、複雑な作業は不要と言える。また溝施肥の要領をそのまま活用できる。つまり、機械耕耘しながら必要な溝を掘り進め、そこに従来の肥料投入とともに、使用済ろ材を追加投入すればよい。使用済ろ材をそのまま投入する以外に、水切りネットなど、使用済ろ材の付着物等を保持できるものであれば使用可能である。
さらには、予め使用済ろ材を水などの液体と混合攪拌し、付着物等を抽出させた溶液を土壌へ撒液してもよい。この場合は、当該溶液が肥料分を含んでいてもよく、使用済ろ材の設置または必要に応じ回収の手間が省ける。
水切りネット中へ使用済ろ材を入れて、実際に土壌へ投入し、作物収穫後掘り出してみた場合には、ブルーベリーや雑草の根がネット中に入り込んで本来の土壌と一体化の様相を呈していたこと、またネット内からミミズが這い出してきたことから、植物や土中への悪影響は見受けられない。さらには、この掘り出した使用済ろ材に対し一般細菌培養試験を行った。細菌培養には標準寒天培地を用い、滅菌済シャーレにサンプルをセットし培養液を振りかけて放冷1時間後、36±1℃で24時間培養した。比較には、室内保管の使用済ろ材を用いた。
結果、室内保管ろ材ではシャーレ当たり10個と殆ど細菌は存在しなかったが、掘り出しろ材では数百個と多くの細菌の存在が明らかとなった、即ち多くの土中細菌が使用済ろ材に住み着いていたことを示した。以上のことから、使用済ろ材を土中に投入した場合、ミミズなど小動物のみならず、細菌レベルにおいても悪影響は見られず、安心な材料といえる。
この使用済ろ材は、使用済であっても使用前であっても適度な空隙を有することから、土壌の保水性と気相性の向上を図ることができるとともに、使用済ろ材の粒同士あるいは土壌との間で形成させる隙間によって排水性の向上をも図ることができる。
この使用済ろ材は主として、マンガン、鉄、ケイ素を、そして、微量のリン、マグネシウムを含む付着物を有することから、栽培必須微量元素や有用元素の供給源となり作物の生育促進、肥大化が図れる。
このろ材は滅菌することでさらに肥料としての効果が向上する。
具体的には、使用済ろ材に対し、鉄バクテリア類を死滅させた場合の変化を、電気伝導度(EC)および全有機体炭素(TOC)を用いて調べた。
実験には、奈良県大和郡山市内の地下水を原水として用い、その水質変化を見ている。具体的には、200mlの原水を入れたコニカルビーカーを3つ準備し、一つ目は滅菌なしの使用済ろ材200mlを、二つ目は滅菌処理有りの使用済ろ材200mlをそれぞれビーカーへ投入する。三つ目は比較例として何も投入していない。各々22時間放置後に、全てNo.1ろ紙でろ過し溶液を得た。
滅菌は(株)平山製作所製の高圧蒸気滅菌器HV-50LBを使用し、滅菌条件は、2気圧、121℃、20分間で3回実施した。ECは東亜電波工業社製WM-50EGを、TOCは島津製作所製の全有機体炭素計TOC-Vcshを使用した。結果を表11に示した。参考として水道水質基準値も併記している。
Figure 0006941721
電気伝導度ECは滅菌の有無、さらには使用済ろ材の有無にかかわらず有意差は見られなかった。一方、全有機体炭素TOCについては、滅菌処理のない使用済ろ材の場合は、比較例と同様、水質基準値の範囲内であり問題は見られなかったが、滅菌済ろ材においては、原水よりも一桁以上の大きな数値を示した。さらには、この滅菌済ろ材の試料は悪臭がした。これは細菌の死骸が全有機体炭素としてカウントされたものと考えられる。つまり全有機炭素が増大し、窒素肥料効果の向上が見込める。
本文では、鉄バクテリアと一般細菌との共存について述べているが、特にそれらの組み合わせを限定するものでは無く、例えば硝化菌など記載以外の細菌を含んでいてもかまわない。

Claims (5)

  1. ろ材基体の表面と空隙部に、鉄バクテリアが産出する金属化合物を主体とする付着物と鉄バクテリアが付着する、即ち付着済ろ材から成る栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材。
  2. 前記付着済ろ材は、少なくとも鉄及び/又はマンガンの、酸化物及び/又は水酸化物を主体とし、他にケイ素、リン、アルミニウム、マグネシウム及び鉄バクテリアを含む付着物の重量が100ml当たり5g以上であることを特徴とする請求項1に記載の栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材。
  3. イネ科の作物において、付着済ろ材の土壌への混入使用量が作物一株当たり100vol%未満であって、作物中の鉄含有量向上機能を有することを特徴とする請求項1および請求項2に記載の栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材。
  4. イネ科の作物において、付着済ろ材の土壌への混入使用量を作物一株当たり0.3〜3vol%とすることで、栽培作物中の鉄含有量を2〜17%向上させることを特徴とする請求項3に記載の栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材。
  5. 付着済ろ材を土壌へ混入することで、1%以上の収穫量向上効果、及び/又は1日以上の、出穂促進効果を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の栽培作物含有鉄分向上用土壌改質材。

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