以下、本発明の実施の形態に係る蓄電デバイス,電極端子部品,電気機器等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態や各具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
図1の平面図に、電極端子部品1及び蓄電デバイス10の一実施の形態を示す。蓄電デバイス10は、電極端子部品1,蓄電セル2,外装部材3等を備えている。図1(A)は外装部材3で覆われる前の蓄電セル2に電極端子部品1が取り付けられた状態を示しており、図1(B)はその蓄電セル2が外装部材3で覆われて蓄電デバイス10が構成された状態を示している。図2及び図3に、電極端子部分Tにおける電極端子部品1と外装部材3とのヒートシール状態を示す。図2は図1(B)のL−L’線断面図であり、図3は図1(B)のM−M’線断面図である。
蓄電デバイス10は、平板状の蓄電セル2(ここでは単数で示すが複数でもよい。)が外装部材3で覆われた構成を有する薄型の二次電池である。蓄電セル2内の構造は図示を省略するが、蓄電セル2内には、セパレータを介して正極板と負極板とが対向配置され、正極板と負極板との間には電解液(電解液に限らず、固体電解質,ゲル電解質等の電解質を用いてもよい。)が充填されている。外装部材3は、例えば、金属箔及び熱接着性樹脂層を有する積層体2つで構成されており、2つの外装部材3の外周縁でのヒートシールによって蓄電セル2が封止されている。封止されている蓄電セル2の正極板及び負極板には、後で説明する電極端子1aが接続されており、その電極端子1aを通して蓄電デバイスの充放電が行われる。
蓄電デバイス10の具体例としては、リチウムイオン電池,リチウムイオンポリマー電池,リチウムイオン全固体電池,鉛蓄電池,ニッケル水素蓄電池,ニッケルカドミウム蓄電池,ニッケル鉄蓄電池,ニッケル亜鉛蓄電池,酸化銀亜鉛蓄電池,金属空気電池,多価カチオン電池等の電池類;電解コンデンサー、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシター等のキャパシター類等が挙げられる。また、蓄電デバイス10が搭載される電気機器としては、電動自動車,電動飛行機,電動船,電動衛星,蓄電設備,スマートフォン,パソコン,カメラ,ロボット,3C製品等が挙げられる。
電極端子部品1は、金属製の電極端子1aと、樹脂製の被覆帯1bと、を有する構成になっており、蓄電セル2の両端部に配置されている(図1)。電極端子1aは、外装部材3から突出するように、例えば溶接等によって蓄電セル2に接続されている。被覆帯1bは、電極端子1aの表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように(図2,図3等)、インサートインジェクション成形により形成されている。なお、各図示の蓄電デバイス10等における方向は、電極端子1aを基準としている。つまり、電極端子1aの先端から蓄電セル2に対する接続位置への方向を電極長さ方向xとしており、その電極長さ方向xと電極幅方向yと電極厚さ方向zとを互いに直交する3方向としている。そして、各方向(x,y,z)のサイズ(Dx,Dy,Dz)は(電極長さ,電極幅,電極厚さ)である。
電極端子1aは板状を成しており、そのy−z断面形状(図2)は長方形になっている。蓄電デバイス10の多くの性能(充放電性能,長期信頼性,長期寿命,低劣化性,冷却性,電動自動車の走行性能等)は、電極端子1aのy−z断面積に比例して向上する。例えば、電極端子1aのy−z断面積が大きいほど、充放電の高速化が可能になり発熱も少なくなる。電極端子1aのy−z断面積は電極端子1aが厚いほど大きくなるため、電極厚さDzは一般的な電極端子の厚さよりも大きく設定されている。また、電極端子1aのy−z断面積は電極端子1aの横幅(電極幅Dy)が長いほど大きくなるが、蓄電デバイス10のサイズとして一般的な電池をカバーできるサイズ(例えば、スマートフォン用電池から車載用電池までのサイズ)を想定することにより、電極幅Dyは適正な範囲に設定されている。
具体的には、図2において、電極幅Dyは1〜2000mmとなっており、電極厚さDzは0.07mmよりも大きくなっている。例えば、車載用の蓄電デバイス10(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、前述の観点から、電極幅Dyは30〜1000mmが好ましく、30〜120mmが更に好ましい。電極厚さDzは0.1〜10mmが好ましく、0.2〜5mmが更に好ましい。
被覆帯1bは樹脂で構成されているため、空気中の水蒸気が被覆帯1bを透過して蓄電セル2内に浸入する可能性がある。そこで、水蒸気に対する被覆帯1bのバリア性を高めるため、図3に示すように、電極端子1aの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD1は、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD2よりも小さくなっている。例えば、車載用の蓄電デバイス10(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、上記の観点から、電極端子1aの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD1は0.095〜4.75mmが好ましく、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD2は0.1mm〜5.0mmが好ましい。また、電極端子1aの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向の被覆帯断面積と、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向の被覆帯断面積と、の差が95%以下であることが好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。
上記のように、先端側の被覆帯厚さD1が接続位置側の被覆帯厚さD2よりも小さくなっているため、空気中の水蒸気に対する被覆帯1bのバリア性は高い。したがって、空気中の水蒸気が被覆帯1bを透過して蓄電セル2内に浸入するのを効果的に防止することができる。さらに、蓄電セル2内の電解液が揮発して被覆帯1bを透過するのも抑制することができる。
外装部材3に対する被覆帯1bの接合面は、x−z断面(図3)において斜めに形成されており、y−z断面(図2)においても電極端子1aの両側面側で斜めに形成されている。このため、外装部材3と被覆帯1bとの密着性は高くなり、結果として、電極端子部分Tでの密封性が効果的に向上することになる。y−z断面(図2)に関しては、被覆帯側面厚dy(つまり、被覆帯1bが電極端子1aの側面から電極幅方向yに離れるに従って薄くなる部分の長さ)が1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることが更に好ましい。このように被覆帯1bの側面厚dyを設定すると、被覆帯側面厚dyが長いほど傾斜がなだらかとなり、電極厚さDzが0.4mm以上であっても、外装部材3の外周縁でのヒートシールが容易かつ良好になり、電極端子部分Tにおいて蓄電セル2を高い密封性で封止することが可能になる。
次に、電極端子部品1の製造方法を説明する。図4(A)に、上述した電極端子部品1(図1〜図3)のインサートインジェクション成形の様子を模式的に示す。まず、金属からなる電極端子1aをインサートインジェクション用の金型4内にセットする。金型4には、電極端子1aの左右両側面側にゲート4a(例えば、ゲート厚さ100μm程度)が設けられている。電極端子1aの表裏面及び両側面の所定範囲が樹脂で取り囲まれるように、ゲート4aから金型4内に樹脂を注入する。射出成形された樹脂の硬化後、金型4から電極端子1aを取り出すと、インサートインジェクション成形により被覆帯1bが形成された電極端子部品1が得られる(図1〜図3)。なお、採用するインサートインジェクション成形法としては、縦型方式,横型方式等を問わない。
前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図23)を採用した場合、電極端子31が厚いほど、その両側においてタブフィルム32との間に隙間S(図23(B)〜(D))が発生し易くなる。隙間Sが大きいほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性が高くなる。それに対し、図4(A)に示すインサートインジェクション成形法を採用した場合、被覆帯1bを構成する樹脂が電極端子1aの側面側に回り込むため(図2)、電極厚さDzの段差に起因する隙間Sの発生が抑えられ、電極端子部分Tにおける密封性が良くなる。例えば、電極厚さDzが0.4mm以上であっても良好な密封性を得ることが可能となり、電極端子1aが複雑な形状を有する様々な場合にも対応することが可能となる。
インサートインジェクション成形法は、肉厚の被覆帯1bを形成するのに有効であり、電極端子1aの材質,表面処理,厚み,長さ,複雑な形状を問わず、様々な電極端子1aに対してフレキシブルに対応することができ、かつ、搭載製品の密封性を十分に確保することができる。樹脂選定に関しても、熱溶融性があるものであれば、熱可塑性,熱硬化性のいずれの樹脂も選択可能であり、樹脂種類も自由に選択・組み合わせが可能である。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド(酸変性ポリプロピレン(PPA)、酸変性ポリエチレン(PEA)、PP又はPEの群から選ばれる樹脂の少なくとも1種と、PPS又はPBTとのブレンド等)等で被覆帯1bを構成してもよく、ガラス繊維を含む樹脂で被覆帯1bを構成してもよい。このようなブレンド樹脂やガラス繊維を用いることにより、被覆帯1bの耐熱性,絶縁性,強度等を向上させることができる。
前述したタブフィルム32(図23)は、例えば、ポリプロピレン(PP,融点:160℃)やポリエチレン(PE,融点:150℃)のような耐熱性の材料に使用が限られることが多いため、シール条件はタブの厚みが厚いほど難しいものとなる。それに対し、インサートインジェクション用の金型4を用いると、成形条件が容易になる。その結果、耐熱性の高いPPS(融点:260℃以上),PBT(融点:220℃以上)等の材料の使用が可能になって、選択可能な材料が多くなる。また、ガラス繊維を含めることも可能になる。したがって、耐熱性,耐収縮性,絶縁性,強度等の向上により、被覆帯1bの最適化が可能となる。
タブフィルム32付きの電極端子31(図23(B))に対してインサートインジェクション成形を行うことにより、タブフィルム32を内部に有する被覆帯1bを構成してもよい。例えば、図4(B)に示すように、タブフィルム32を金型4内に配置し、ゲート4aから金型4内に樹脂(例えば耐熱性樹脂)を注入して、タブフィルム32と共に電極端子1aの表裏面及び両側面の所定範囲が樹脂で取り囲まれるようにする。このとき、タブフィルム32を予め金型4内に配置しておいてもよく、タブフィルム32が予め溶着された電極端子1aを金型4内に配置してもよい。射出成形された樹脂の硬化後、金型4からの取り出しを行うと、2層構造を有する被覆帯1bが形成された電極端子部品1が得られる。このように素材の異なるフィルムと成形樹脂とで被覆帯1bを多層化すれば、被覆帯1bを多機能化(高耐熱性,高シール性等)することが可能である。
異なる樹脂を用いた複数回のインサートインジェクション成形を行うことによっても、被覆帯1bを多層化して前記と同様の多機能化を実現することは可能である。図5の要部断面図に、2層構造を有する被覆帯1bが形成された電極端子部品1Aを示す。図5(A)はy−z断面図であり、図5(B)はx−z断面である。この電極端子部品1Aを構成している被覆帯1bは、第1被覆帯1b1と第2被覆帯1b2との2層からなっている。
2層構造の被覆帯1bとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)との積層からなるものが挙げられる。このような樹脂との組み合わせは、似たような特性の材料の組み合わせ(酸変性PEとPEの組み合わせ、酸変性PPとPPの組み合わせ)よりも、耐熱性等の向上に有効である。例えば、第1被覆帯1b1を酸変性PP(融点140℃)で射出成形し、第2被覆帯1b2をPBT(融点:220℃以上)で射出成形することにより、被覆帯1bを多層化すれば、高い耐熱性等を有する被覆帯1bを構成することができる。
図6の平面図に、電極端子部品1の異なる2つのタイプの蓄電デバイス10A,10Bを示す。図6(A)は、電極幅Dyの短い電極端子部品1を有する蓄電デバイス10Aを示しており、図6(B)は、電極幅Dyの長い電極端子部品1を有する蓄電デバイス10Bを示している。蓄電デバイス10A,10Bの蓄電セル2は、x−y平面に対して平行な長方形平面(最大面)を有している。蓄電セル2の側面のうち、蓄電デバイス10Aでは長方形平面の短辺側の側面に電極幅Dyの短い(例えば、Dy:30〜1000mm、好ましくは30〜300mm)電極端子1aが接続されており、蓄電デバイス10Bでは長方形平面の長辺側の側面に電極幅Dyの長い(例えば、Dy:50〜1000mm、好ましくは100〜700mm)電極端子1aが接続されている。なお、被覆帯1bのサイズは各電極端子1aに応じたサイズに設定されている。
搭載される電気機器に応じたタイプの蓄電デバイス10A,10Bを選択して用いることにより、電気機器の性能を最適化することができる。例えば蓄電デバイス10Bは、蓄電デバイス10Aと比べて電極端子1aのy−z断面積が大きいため、蓄電デバイス10Bを使用することによって、急速充放電,充放電効率向上,発熱・劣化の抑制,リサイクルの容易化等が可能になる。また、蓄電デバイス10Bのように電極幅Dyが長い場合、前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図23)ではシールヘッド33が長くなり過ぎてシールが困難になるが、インサートインジェクション成形法では容易に対応可能である。
図7の平面図に、電極端子部品1C及び蓄電デバイス10Cの実施の形態を示し、図10の平面図に、電極端子部品1D及び蓄電デバイス10Dの実施の形態を示す。蓄電デバイス10Cは、電極端子部品1C,蓄電セル2,外装部材3等を備えており、蓄電デバイス10Dは、電極端子部品1D,蓄電セル2,外装部材3等を備えている。図7(A)は外装部材3で覆われる前の蓄電セル2に電極端子部品1Cが取り付けられた状態を示しており、図7(B)はその蓄電セル2が外装部材3で覆われて蓄電デバイス10Cが構成された状態を示している。また、図10(A)は外装部材3で覆われる前の蓄電セル2に電極端子部品1Dが取り付けられた状態を示しており、図10(B)はその蓄電セル2が外装部材3で覆われて蓄電デバイス10Dが構成された状態を示している。
図8及び図9に、電極端子部分Tにおける電極端子部品1Cと外装部材3とのヒートシール状態を示す。図8は図7(B)のL1−L1’線断面図であり、図9は図7(B)のM1−M1’線断面図である。また、図11及び図12に、電極端子部分Tにおける電極端子部品1Dと外装部材3とのヒートシール状態を示す。図11は図10(B)のL2−L2’線断面図であり、図12は図10(B)のM2−M2’線断面図である。
蓄電デバイス10C,10Dは、平板状の蓄電セル2(ここでは単数で示すが複数でもよい。)が外装部材3で覆われた構成を有する薄型の二次電池である。蓄電セル2内の構造は図示を省略するが、蓄電セル2内には、セパレータを介して正極板と負極板とが対向配置されており、正極板と負極板との間には電解液(電解液に限らず、固体電解質,ゲル電解質等の電解質を用いてもよい。)が充填されている。外装部材3は、例えば、金属箔及び熱接着性樹脂層を有する積層体2つで構成されており、2つの外装部材3の外周縁でのヒートシールによって蓄電セル2が封止されている。封止されている蓄電セル2の正極板及び負極板には、後で説明する電極端子1c,1dが接続されており、その電極端子1c,1dを通して蓄電デバイス10C,10Dの充放電が行われる。
蓄電デバイス10C,10Dの具体例としては、リチウムイオン電池,リチウムイオンポリマー電池,リチウムイオン全固体電池,鉛蓄電池,ニッケル水素蓄電池,ニッケルカドミウム蓄電池,ニッケル鉄蓄電池,ニッケル亜鉛蓄電池,酸化銀亜鉛蓄電池,金属空気電池,多価カチオン電池等の電池類;電解コンデンサー、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシター等のキャパシター類等が挙げられる。また、蓄電デバイス10C,10Dが搭載される電気機器としては、電動自動車,電動飛行機,電動船,電動衛星,蓄電設備,スマートフォン,パソコン,カメラ,ロボット,3C製品等が挙げられる。
電極端子部品1Cは(図7〜図9)、金属製の電極端子1cと、樹脂製の被覆帯1bと、を有する構成になっており、蓄電セル2の両端部に配置されている。電極端子部品1Dも同様であり(図10〜図12)、金属製の電極端子1dと、樹脂製の被覆帯1bと、を有する構成になっており、蓄電セル2の両端部に配置されている。電極端子1c,1dは、外装部材3から突出するように、例えば溶接等によって蓄電セル2に接続されている。
なお、各図示の蓄電デバイス10C,10D等における方向は、電極端子1c,1dを基準としている。つまり、電極端子1c,1dの先端から蓄電セル2に対する接続位置への方向を電極長さ方向xとしており、その電極長さ方向xと電極幅方向yと電極厚さ方向zとを互いに直交する3方向としている。そして、各方向(x,y,z)のサイズ(Dx,Dy,Dz)は(電極長さ,電極幅,電極厚さ)であり、後述する他の実施の形態に関しても同様である。
電極端子1c,1dは板状を成しており、そのy−z断面形状(図8,図11)は長方形になっている。蓄電デバイス10C,10Dの多くの性能(充放電性能,長期信頼性,長期寿命,低劣化性,冷却性,電動自動車の走行性能等)は、電極端子1c,1dのy−z断面積に比例して向上する。例えば、電極端子1c,1dのy−z断面積が大きいほど、充放電の高速化が可能になり発熱も少なくなる。電極端子1c,1dのy−z断面積は電極端子1c,1dが厚いほど大きくなるため、電極厚さDzは一般的な電極端子の厚さよりも大きく設定されている。また、電極端子1c,1dのy−z断面積は電極端子1cの横幅(電極幅Dy)が長いほど大きくなるが、蓄電デバイス10C,10Dのサイズとして一般的な電池をカバーできるサイズ(例えば、スマートフォン用電池から車載用電池までのサイズ)を想定することにより、電極幅Dyは適正な範囲に設定されている。
具体的には、図8,図11において、電極幅Dyは0.5〜2000mmとなっており(例えば10〜1000mm)、電極厚さDzは0.1mmよりも大きくなっている(例えば0.11mm〜10mm)。例えば、車載用の蓄電デバイス10C,10D(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、前述の観点から、電極幅Dyは30〜500mmが好ましく、30〜120mmが更に好ましい。電極厚さDzは0.15〜10mmが好ましく、0.2〜5mmが更に好ましく、0.4〜3mmが更に好ましい。
被覆帯1bは、外装部材3と電極端子1c,1dの両方にヒートシール性を有しており、かつ、電極端子1c,1dの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲を取り囲むように形成されている(図8,図9,図11,図12)。被覆帯1bは、前述したインサートインジェクション成形により樹脂で形成されている。被覆帯1bの代わりにタブフィルム32(図23)を用いると、前述したように隙間Sが生じ易くなる。インサートインジェクション成形によって被覆帯1bを形成した場合でも、ヒートシール時の外装部材3に対する加熱・加圧によって、電極端子1c,1dから被覆帯1bを引き剥がす力(図23(D)中の矢印m0)が発生するため、隙間Sが生じる可能性はある。ヒートシール時に隙間Sが生じていなくても、被覆帯1bの経時的な劣化によって、隙間Sが発生したり増大したりする傾向となる。したがって、電極端子1c,1dが厚いほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性が高くなる。
電極端子1c,1dは、隙間Sの発生・増大や電解液の漏れ(液漏れ)を抑制するための特殊な面形状を有している。電極端子1cでは、表裏面7a,7bが平面状になっているが、両側面8a,8bには凹凸構造5が形成されている(図7〜図9)。電極端子1dでは、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成されており、表裏面7a,7bに凹凸構造6が形成されている(図10〜図12)。
上記液漏れ等の抑制効果を、図13,図14の平面図を用いて説明する。図13(A),図14(A)は、図7(B),図10(B)の各要部拡大図であり、蓄電デバイス10C,10Dの電極端子部分Tにおける電極端子部品1C,1Dと外装部材3とのヒートシール状態をそれぞれ示している。図13(B),図14(B)は、表裏面7a,7bと両側面8a,8bが平面状の電極端子1nを有する電極端子部品1Nの要部拡大図であり、蓄電デバイス10Nの電極端子部分Tにおける電極端子部品1Nと外装部材3とのヒートシール状態を示している。
蓄電セル2を封止する際のヒートシールは、蓄電デバイス10C,10D,10Nのいずれにおいても、外装部材3の外周縁に設定されているシール領域ARにおいて行われる。電極端子部分Tにおけるシール領域ARは、被覆帯1bよりも電極長さ方向xのサイズが小さくなっているため、電極端子1c,1dと外装部材3とのヒートシールは被覆帯1bを介した部分のみで行われることになる(図8等)。電極長さ方向xのサイズを、例えば、被覆帯1bで7mmとし、シール領域ARで5mmとすると、電極長さ方向xの両端に1mmずつ余裕を持たせてヒートシールを行うことができる。したがって、被覆帯1bを介したヒートシールを確実に行うことができる。また、被覆帯1bを外装部材3からわずかに突出させており、これにより、電極端子1c,1dと被覆帯1bとの境界部分を保護することができる。
蓄電デバイス10C,10Dでは(図13(A),図14(A))、板状の電極端子1c,1dの両側面8a,8bに、凹部5a及び凸部5bが0.1mm以上のピッチp(図9,図12)で複数形成(溝加工)されており、その複数の凹部5a及び凸部5bで凹凸構造5が構成されている。さらに蓄電デバイス10Dでは(図14(A))、電極端子1dの表裏面7a,7bに、凹部6a及び凸部6bが0.1mm以上のピッチq(図12)で複数形成(溝加工)されており、その複数の凹部6a及び凸部6bで凹凸構造6が構成されている。凹部5a及び凸部5bは電極厚さ方向zに沿って長い直線状に形成されており、凹部6a及び凸部6bは電極幅方向yに沿って長い直線状に形成されている。つまり、凹凸構造5,6は、電極長さ方向xに対して非平行な平面(つまり、傾斜した平面)からなる凹部5a,6a及び凸部5b,6bでそれぞれ構成されている。
電極端子1c,1dの両側面8a,8bに形成されている凹部5a及び凸部5bの電極幅方向yのサイズδは0.1mm以上であり(図8,図11)、電極端子1dの表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bの電極厚さ方向zのサイズΔは0.1mm以上である(図11)。なお、凹部5aの電極幅方向yのサイズδと凹部6aの電極厚さ方向zのサイズΔは凹部5a,6aの深さであり、凸部5bの電極幅方向yのサイズδと凸部6bの電極厚さ方向zのサイズΔは凸部5b,6bの高さである。
電極端子1c,1dの材料としては、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni),ステンレス(Sus),スズ(Sn),チタン(Ti)が挙げられ、単体でもよく、クラッド材でもよい。電極端子1c,1dの形状加工(凹部5a,6a及び凸部5b,6bの溝加工等)には、機械加工,圧延,エッチング,注型,サンドブラスト加工等のあらゆる方法を採用することが可能であり、加工方式を問わない。機械加工,エッチング処理,溶融注型式加工,プレス加工、それらの複合加工も採用可能であり、陽極酸化や酸アルカリエッチング、その他のあらゆるエッチング処理も採用可能である。また、電解・無電解Niによる各種メッキ,化成処理等の表面処理、その他のあらゆる処理を、電極端子1c,1dの形状加工の先に行ってもよく、後加工で行うようにしてもよい。
蓄電デバイス10C,10D,10Nのいずれにおいても(図13,図14)、電極端子部分T以外の部分での電解液の流れU0は、シール領域ARで止めることができる。しかし、蓄電デバイス10Nでは(図13(B),図14(B))、電解液の流れV1で示すように、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性がある。それに対して、蓄電デバイス10C,10Dでは(図13(A),図14(A))、電解液の流れU1を凹凸構造5によりシール領域ARで止めることができる。
電極端子1c,1dの両側面8a,8bは、凹凸構造5によって被覆帯1bとの密着面積が大きくなっているため、強く安定した接着強度によって被覆帯1bから剥がれにくくなっている(アンカー効果)。結果として、隙間Sが発生しにくくなるため、シール領域ARで液漏れを防止することができる。もし隙間Sが発生したとしても、凹凸構造5によって電解液の流れU1が妨げられると共に、隙間Sを通って電極端子部品1C,1D外へ電解液が漏れ出るまでの経路が凹凸構造5によって(ジグザグ状に)長くなっているため、液漏れは生じにくくなる。つまり、凹部5a及び凸部5bは、電極長さ方向xに対して非平行な面形状を有しているため、電解液の流れU1を妨げるように作用する。
したがって、電極端子部品1C,1Dを用いることにより、蓄電デバイス10C,10Dの高性能化を図りながら、高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。また、電解液を含まない全固体電池等においても、隙間Sは蓄電デバイスの劣化原因となるため、凹凸構造5を有することにより高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。なお、蓄電セル2を封止する際のヒートシール時には、電極端子1c,1dの両側面8a,8b側からも加熱することが好ましい。その加熱により、被覆帯1bを構成する樹脂が凹凸構造5に流れ込みやすくなるため、隙間Sが発生しにくくなると共に高いアンカー効果が得られる。したがって、電極端子1c,1dが厚いほど、両側面8a,8b側からの加熱は有効である。
蓄電デバイス10C(図13(A))のように電極端子1cの表裏面7a,7bが平面状であっても、表裏面7a,7bと被覆帯1bとの間には、液漏れが生じるほどの隙間は発生しにくい。例えば、電極幅Dyが40〜50mm程度であれば、シール領域ARで液漏れを防止することができる。しかし、電極幅Dyが100mm以上、更には500mm以上であれば、図14(B)に示すように、電解液の流れV2をシール領域ARで止めることは難しくなって、液漏れが生じる可能性がある。また、電極長さDxが大きい場合、電解液の浸透性が高い場合、シール領域ARが電極長さ方向xに狭い場合等でも、液漏れは生じ易くなる。それに対して蓄電デバイス10Dでは(図14(A))、電解液の流れU2を凹凸構造6によりシール領域ARで止めることができる。
凹凸構造6は、前述の凹凸構造5と同様に機能する。電極端子1dの表裏面7a,7bは、凹凸構造6によって被覆帯1bとの密着面積が大きくなっているため、強く安定した接着強度によって被覆帯1bから剥がれにくくなっている(アンカー効果)。結果として、表裏面7a,7bと被覆帯1bとの間に隙間が発生しにくくなるため、シール領域ARで液漏れを防止することができる。もし隙間が発生したとしても、凹凸構造6によって電解液の流れU2が妨げられると共に、隙間を通って電極端子部品1D外へ電解液が漏れ出るまでの経路が凹凸構造6によって(ジグザグ状に)長くなっているため、液漏れは生じにくくなる。つまり、凹部6a及び凸部6bは、電極長さ方向xに対して非平行な面形状を有しているため、電解液の流れU2を妨げるように作用する。
したがって、電極端子部品1Dを用いることにより、蓄電デバイス10Dの高性能化を図りながら、高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。また、電解液を含まない全固体電池等においても、表裏面7a,7bと被覆帯1bとの間に隙間が発生すると蓄電デバイスの劣化原因となるため、凹凸構造6を有することにより高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。なお、蓄電デバイス10D(図12,図14(A))では、凹凸構造5のピッチpと凹凸構造6のピッチqが同じになっているが、異なったピッチp,q(例えば、電解液の流れU1,U2に対する作用等に応じたピッチ)に設定してもよい。
電極端子1dの表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bは、電極幅Dyや電極長さDxが大きい場合の液漏れ防止に有効である。つまり、電極幅Dyが100mm以上、更には500mm以上であっても、液漏れを効果的に防止することができる。また図14(A)に示すように、電極端子部分Tにおいて凹部6a及び凸部6bとシール領域ARとが平行(電極幅方向yに沿って長い形状)に並んだ配置になっているため、表裏面7a,7bと被覆帯1bとをより一層密着した状態にすることができる。したがって、液漏れを効果的に防止することができる。
両側面8a,8bに形成されている凹部5a及び凸部5bは、電極端子1c,1dに設けられているものに限らない。また、表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bも、電極端子1dに設けられているものに限らない。図15の平面図に、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成された電極端子1c,1eを示す。図16の平面図に、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成され、表裏面7a,7bに凹凸構造6が形成された電極端子1d,1fを示す。
図15(A)に示す電極端子1cや図15(B)に示す電極端子1eでは、表裏面7a,7bが平面からなっており、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されている。図16(A)に示す電極端子1dでは、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されており、表裏面7a,7bに凹部6a及び凸部6bが形成されている。図16(B)に示す電極端子1fでは、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されており、表裏面7a,7bに凹部6a及び平面部6cが形成されている。
図15中の(A)と(B)を比較すると分かるように、電極端子1cの凹部5a及び凸部5bが(三角柱の周面に相当する)平面で形成されているのに対し、電極端子1eの凹部5a及び凸部5bは波形の曲面で形成(アール付きの溝加工)されている。また、図16中の(A)と(B)を比較すると分かるように、電極端子1dの凹部6aが平面状の溝で形成されているのに対し、電極端子1fの凹部6aはディンプルで形成されている。つまり、電極端子1e,1fのように凹部5a,6a,凸部5b,6b,平面部6cを必要に応じた形状(例えば、電解液の流れU1,U2に対する作用等に応じた形状)に設定してもよく、複数種類の形状の組み合わせ(例えば、ディンプルと溝の組み合わせ)に設定してもよい。
被覆帯1bは樹脂で構成されているため、空気中の水蒸気が被覆帯1bを透過して蓄電セル2内に浸入する可能性がある。そこで、水蒸気に対する被覆帯1bのバリア性を高めるため、図9及び図12に示すように、電極端子1c,1dの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD1は、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD2よりも小さくなっている。
例えば、車載用の蓄電デバイス10C,10D(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、上記の観点から、電極端子1c,1dの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD1は0.095〜4.75mmが好ましく、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯厚さD2は0.1mm〜5.0mmが好ましい。また、電極端子1c,1dの先端側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯断面積と、蓄電セル2に対する接続位置側の被覆帯端部における電極厚さ方向zの被覆帯断面積と、の差が95%以下であることが好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。
上記のように、先端側の被覆帯厚さD1を接続位置側の被覆帯厚さD2よりも小さくすると、被覆帯1bの露出面積が小さくなるため、空気中の水蒸気に対する被覆帯1bのバリア性が高くなる。したがって、空気中の水蒸気が被覆帯1bを透過して蓄電セル2内に浸入するのを効果的に防止することができる。さらに、蓄電セル2内の電解液が揮発して被覆帯1bを透過するのも抑制することができる。
外装部材3に対する被覆帯1bの接合面は、x−z断面(図9,図12)において斜めに形成されており、y−z断面(図8,図11)においても電極端子1c,1dの両側面8a,8b側で斜めに形成されている。このため、外装部材3と被覆帯1bとの密着性は高くなり、結果として、電極端子部分Tでの密封性が効果的に向上することになる。y−z断面(図8,図11)に関しては、被覆帯1bの側面厚dy(つまり、被覆帯1bが電極端子1c,1dの側面から電極幅方向yに離れるに従って薄くなる部分の長さ)が1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることが更に好ましい。このように被覆帯1bの側面厚dyを設定すると、側面厚dyが長いほど傾斜がなだらかとなり、電極厚さDzが0.4mm以上であっても、外装部材3の外周縁でのヒートシールが容易かつ良好になり、電極端子部分Tにおいて蓄電セル2を高い密封性で封止することが可能になる。
次に、電極端子部品1Cの製造方法を説明する。図17(A)に、上述した電極端子部品1C(図7〜図9等)のインサートインジェクション成形の様子を模式的に示す(電極端子部品1Dを製造する場合も同様である。)。まず、金属からなる電極端子1cをインサートインジェクション用の金型4内にセットする。金型4には、電極端子1cの左右両側面8a,8b側にゲート4a(例えば、ゲート厚さ100μm程度)が設けられている。電極端子1cの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲が樹脂で取り囲まれるように、ゲート4aから金型4内に樹脂を注入する(矢印m1)。射出成形された樹脂の硬化後、金型4から電極端子1cを取り出すと、インサートインジェクション成形により被覆帯1bが形成された電極端子部品1Cが得られる(図7〜図9)。なお、採用するインサートインジェクション成形法としては、縦型方式,横型方式等を問わない。
前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図23)を採用した場合、電極端子31が厚いほど、その両側においてタブフィルム32との間に隙間S(図23(B)〜(D))が発生し易くなる。隙間Sが大きいほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性が高くなる。それに対し、図17(A)に示すインサートインジェクション成形法を採用した場合、被覆帯1bを構成する樹脂が電極端子1cの側面側に回り込むため(図8)、電極厚さDzの段差に起因する隙間Sの発生が抑えられ、電極端子部分Tにおける密封性が良くなる。例えば、電極厚さDzが0.4mm以上であっても良好な密封性を得ることが可能となり、電極端子1c,1d,1e,1f(図15,図16)やその他の複雑な形状を有する電極端子にも対応することが可能となる。
インサートインジェクション成形法は、肉厚の被覆帯1bを形成するのに有効であり、電極端子1cの材質,表面処理,厚さ,長さ,複雑な形状を問わず、様々な電極端子に対してフレキシブルに対応することができ、かつ、搭載製品の密封性を十分に確保することができる。樹脂選定に関しても、熱溶融性があるものであれば、熱可塑性,熱硬化性のいずれの樹脂も選択可能であり、樹脂種類も自由に選択・組み合わせが可能である。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド(酸変性ポリプロピレン(PPA)、酸変性ポリエチレン(PEA)、PP又はPEの群から選ばれる樹脂の少なくとも1種と、PPS又はPBTとのブレンド等)等で被覆帯1bを構成してもよく、ガラス繊維を含む樹脂で被覆帯1bを構成してもよい。このようなブレンド樹脂やガラス繊維を用いることにより、被覆帯1bの耐熱性,絶縁性,強度等を向上させることができる。
前述したタブフィルム32(図23)は、例えば、ポリプロピレン(PP,融点:160℃)やポリエチレン(PE,融点:150℃)のような耐熱性の材料に使用が限られることが多いため、シール条件はタブの厚さが厚いほど難しいものとなる。それに対し、インサートインジェクション用の金型4を用いると、成形条件が容易になる。その結果、耐熱性の高いPPS(融点:260℃以上),PBT(融点:220℃以上)等の材料の使用が可能になって、選択可能な材料が多くなる。また、ガラス繊維を含めることも可能になる。したがって、耐熱性,耐収縮性,絶縁性,強度等の向上により、被覆帯1bの最適化が可能となる。
タブフィルム32付きの電極端子31(図23(B))に対してインサートインジェクション成形を行うことにより、タブフィルム32を内部に有する被覆帯1bを構成してもよい。例えば、図17(B)に示すように、タブフィルム32を金型4内に配置し、ゲート4aから金型4内に樹脂(例えば耐熱性樹脂)を注入して(矢印m1)、タブフィルム32と共に電極端子1cの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲が樹脂で取り囲まれるようにする。このとき、タブフィルム32を予め金型4内に配置しておいてもよく、タブフィルム32が予め溶着された電極端子1cを金型4内に配置してもよい。射出成形された樹脂の硬化後、金型4からの取り出しを行うと、2層構造を有する被覆帯1bが形成された電極端子部品1Cが得られる。このように素材の異なるフィルムと成形樹脂とで被覆帯1bを多層化すれば、被覆帯1bを多機能化(高耐熱性,高シール性等)することが可能である。
異なる樹脂を用いた複数回のインサートインジェクション成形を行うことによっても、被覆帯1bを多層化して前記と同様の多機能化を実現することは可能である。図18の要部断面図に、2層構造を有する被覆帯1bが形成された電極端子部品1E及び蓄電デバイス10Eを示す。図18(A)はy−z断面図であり、図18(B)はx−z断面である。この電極端子部品1Eを構成している被覆帯1bは、第1被覆帯1b1と第2被覆帯1b2との2層からなっている。
2層構造の被覆帯1bとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)との積層からなるものが挙げられる。このような樹脂との組み合わせは、似たような特性の材料の組み合わせ(酸変性PEとPEの組み合わせ、酸変性PPとPPの組み合わせ)よりも、耐熱性等の向上に有効である。例えば、第1被覆帯1b1を酸変性PP(融点140℃)で射出成形し、第2被覆帯1b2をPBT(融点:220℃以上)で射出成形することにより、被覆帯1bを多層化すれば、高い耐熱性等を有する被覆帯1bを構成することができる。
図19の平面図に、電極端子部品1Cの異なる2つのタイプの蓄電デバイス10F,10Gを示す。図19(A)は、電極幅Dyの短い電極端子部品1Cを有する蓄電デバイス10Fを示しており、図19(B)は、電極幅Dyの長い電極端子部品1Cを有する蓄電デバイス10Gを示している。蓄電デバイス10F,10Gの蓄電セル2は、x−y平面に対して平行な長方形平面(最大面)を有している。蓄電セル2の側面のうち、蓄電デバイス10Fでは長方形平面の短辺側の側面に電極幅Dyの短い(例えば、Dy:30〜1000mm、好ましくは30〜300mm)電極端子1cが接続されており、蓄電デバイス10Gでは長方形平面の長辺側の側面に電極幅Dyの長い(例えば、Dy:50〜1000mm、好ましくは100〜700mm)電極端子1cが接続されている。なお、被覆帯1bのサイズは各電極端子1cに応じたサイズに設定されている。
搭載される電気機器に応じたタイプの蓄電デバイス10F,10Gを選択して用いることにより、電気機器の性能を最適化することができる。例えば蓄電デバイス10Gは、蓄電デバイス10Fと比べて電極端子1cのy−z断面積が大きいため、蓄電デバイス10Gを使用することによって、急速充放電,充放電効率向上,発熱・劣化の抑制,リサイクル(2次利用・3次利用等)の容易化等が可能になる。また、蓄電デバイス10Gのように電極幅Dyが長い場合、前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図23)ではシールヘッド33が長くなり過ぎてシールが困難になるが、インサートインジェクション成形法では容易に対応可能である。
図20に第1の実施の形態に係る電動自動車11Aを模式的に示し、図21に第2の実施の形態に係る電動自動車11Bを模式的に示し、図22に第3の実施の形態に係る電動自動車11Cを模式的に示す。図20〜図22において、(A)は電動自動車11A〜11Cのドア側外観を示す正面図であり、(B)は電動自動車11A〜11Cのルーフ側外観を示す上面図である。電動自動車11A,11B,11Cは、車輪12、その車輪12を駆動する動力源としてのモーター13、そのモーター13に電力を供給する蓄電デバイス10,10A〜10G等を搭載しており、ここでは、車載用の蓄電デバイス10,10A〜10Gとして、最大面(図1,図6,図7,図10,図18,図19等におけるx−y平面に対して平行な長方形平面)のサイズが100×500mmの車載用電池を想定している。蓄電デバイス10,10A〜10Gは、電動自動車11A,11B,11Cの車体のフロア下に設置されているが、ルーフに設置してもよく、座席内に設置してもよい。
電動自動車11A,11Bでは、その底面に対して蓄電デバイス10,10A〜10Gの最大面が垂直になるように、蓄電デバイス10,10A〜10Gが複数配置されている(縦型配置)。つまり、電動自動車11A,11Bでは、蓄電デバイス10,10A〜10Gを積み重ねずに電動自動車11A,11Bに設置して、所望の電力を供給することができる。したがって、積み重ねた際の加重による外装部材3の破損を防止することができる。結果として、蓄電デバイス10,10A〜10G及び電動自動車11A,11Bの信頼性が向上するという効果が得られる。
電動自動車11Cでは、その底面に対して蓄電デバイス10,10A〜10Gの最大面が平行になるように、蓄電デバイス10,10A〜10Gが複数配置されている(横型配置)。したがって、蓄電デバイス10,10A〜10Gは電動自動車11Cの動きや振動に対する安定性が高いため、外装部材3の破損を防止することができる。結果として、蓄電デバイス10,10A〜10G及び電動自動車11Cの信頼性が向上するという効果が得られる。
前述したように電極端子部品1,1A等によれば、電極端子1aのy−z断面積が大きくなるように電極幅Dyと電極厚さDzが設定されているため、蓄電デバイス10,10A,10Bの多くの性能を向上させることができる。その電極端子1aの表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように、被覆帯1bがインサートインジェクション成形により形成されているため、電極端子1aのy−z断面積が大きくても、電極端子1aの両側において被覆帯1bとの間に隙間Sが生じるのを防止することができる。したがって、高い性能を保持しながら電極端子部分Tでの密封性を良好にすることが可能である。
前述したように電極端子部品1,1A等によれば、被覆帯1bの露出面積が小さくなるように被覆帯厚さD1,D2が設定されているため、被覆帯1bの水蒸気に対するバリア性が高く、空気中の水蒸気が被覆帯1bを透過して蓄電セル2内に浸入するのを防止することができる。また、電極端子1aの表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように、被覆帯1bがインサートインジェクション成形により形成されているため、電極端子1aのy−z断面積が大きくても、電極端子1aの両側において被覆帯1bとの間に隙間Sが生じるのを防止することができる。したがって、高い性能を保持しながら電極端子部分Tでの密封性を良好にすることが可能である。
前述したように電極端子部品1C〜1Eによれば、電極端子1c,1d,1e,1fの両側面に適正なサイズの凹部5a又は凸部5bが形成されているため、電極端子1c,1d,1e,1fの断面積が大きくても、電極端子1c,1d,1e,1fの両側において被覆帯1bとの間に隙間Sが生じるのを抑えることができる。そのような隙間Sが生じたとしても、その隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れるのを防止することができる。したがって、高い性能を保持しながら電極端子部分Tでの密封性を良好にすることが可能である。そして、蓄電デバイス10C〜10Gを使用することによって、急速充放電,充放電効率向上,発熱・劣化の抑制,リサイクル(2次利用・3次利用等)の容易化等が可能になる。
凹部5a,6aや凸部5b,6bの数や配置に制限はなく、単数でも複数でもよく、連続でも不連続でもよい。凹部5a,6aや凸部5b,6bの数が多いほど効果は大きくなり、凹部5a,6aや凸部5b,6bを連続的に形成すれば安定した効果を得ることができる。また、凹部5a,6aの深さ、凸部5b,6bの高さ、ピッチ等も制限はなく、0.001mm以上であれば、それらに応じた効果を得ることは可能である。ただし、一般的な蓄電デバイスのサイズを考慮した場合、凹部5a,6aの深さや凸部5b,6bの高さは0.1mm以上であることが好ましく、それらのピッチも0.1mm以上であることが好ましい。
スマートフォン等に用いられる蓄電デバイスの電極厚さDzは0.05〜0.1mmであることが多く、自動車等に用いられる蓄電デバイスの電極厚さDzは0.2〜0.4mmであることが多い(例えば、Alの電極端子(正極)が0.4mm、CuのNiメッキ端子(負極)が0.2mmである。)。上記のように凹部5a,6aや凸部5b,6bを設定すれば、それらの電極厚さDzに対応可能であり、電極厚さDzが更に大きい場合(電極厚さDzが0.5〜3mm、更には10mm以上の場合)でも対応可能である。また、電極幅Dyが20〜70〜100mmの標準的な場合に対応可能であり、電極幅Dyが更に大きい場合(電極幅Dyが500〜1000mmの場合)でも対応可能である。