本発明の磁気変形部材について実施形態に基づいて詳しく説明する。各実施形態において重複する材料、材質、大きさ、製造方法、作用効果、機能等については重複説明を省略する。
第1実施形態:[図1〜図4]
第1実施形態の磁気変形部材10として、次の3種類の磁気変形部材10a,10b,10cについて順次説明する。まず、磁気変形部材10aは、図1の平面図や図2の断面図で示すように、可撓性シート11と硬質材でなるバックプレート12とが積層した内側に、ゲル13が充填されており、当該可撓性シート11の表面11aに対する垂直方向となる平面視で環状であり当該垂直方向に長さを有する磁性部材14が設けられている。この磁性部材14は、前記可撓性シート11に固着する一方で前記バックプレート12からは隔てられて前記ゲル13中に配置されている。また、バックプレート12の外側には、「磁力発生部材」としての磁石15を備えている。そして、磁石15により磁気変形部材10aに磁場が印加されると、図3で示すように、磁性部材14が可撓性シート11と固着する境界部11bとその外側となる周辺部11cに対して境界部11bより内側となる囲繞部11dが盛り上がった凸部が形成される部材である。こうした磁気変形部材10aを構成する各部位について以下に詳細に説明する。
環状の外形を有する磁性部材14は、磁石15による磁場を生じさせたとき、磁石15に引き付けられる材質でなり、可撓性シートの表面に対する垂直方向となる平面視で環状を為し、その垂直方向に延びた円柱状に形成されている。
磁性部材14は、強磁性体であれば良く、例えば強磁性体金属や金属酸化物そのものとすることもできる他、こうした強磁性体の粉末をバインダーに分散したゲル状部材とすることができる。この磁性部材14は、硬質材としても良いが変形可能なゲル状部材とすることが好ましい。第1に、磁性部材14を可撓性シート11に固着させるとき、可撓性シート11の表面に固着部位の段差が表出しやすく、美観に優れなくなるおそれがあることに加え、部分的に硬い触感となるおそれがあるからである。第2には、磁性部材14は磁場中で変位、または変位および変形するが、このとき磁性部材14が硬質材でなる場合には、変位はするものの変形し難くなる。一方、ゲル状部材で構成することで、変位に加えて容易に変形する。例えば、磁石15として小さい磁石を用いると、磁性部材14は環が縮径する方向に引き寄せられ変形する。こうした変形の結果、可撓性シート11の突出をより際立たせることができる。
そうした一方で、磁性部材14を剛体とすれば、強磁性体粉末をバインダーに分散した磁性部材よりも磁力を高めることができる。したがって、例えばゲル13に対して同等の応力を与え同等の凸部を可撓性シート11の表面11aに形成しようとした際に、硬質の磁性部材14は、柔らかな弾性部材でなる磁性部材14よりも小さな磁石とすることができる。
強磁性体としては、具体的には、鉄、ニッケル及びコバルトなどの金属軟磁性体や、鉄珪素合金やパーマロイ、センダスト、パーメンジュールなどの軟磁性合金、ソフトフェライトなどの磁性粉を用いることができる。バインダーは高分子材料からなり、柔軟性の高い高分子ゲル、ゴム及び熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。高分子ゲルとして、シリコーンゲル、及びポリウレタンゲルなどが挙げられる。また、ゴムとして、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、及びアクリルゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、磁性体を高充填でき、硬化して柔軟なゲルを形成することができるシリコーンゲルを用いることが好ましい。なお、これらの高分子材料は、単独で用いず、二種以上を組合せて用いてもよい。
強磁性体をバインダーに分散する場合は、磁性体やバインダー以外にもその機能を損なわない範囲で種々の添加剤を含ませることができる。例えば、可塑剤、分散剤、カップリング剤、粘着剤などの有機成分を含んでも良い。またその他の成分として難燃剤、酸化防止剤、着色剤などを適宜添加してもよい。
磁性部材14の上下方向長さ(平面視での奥行き方向の長さ)は、可撓性部材11とバックプレート12との間隔に相当するゲル13の厚みに対して95%以下とすることができ、85%以下とすることが好ましい。磁性部材14の長さが85%を超えると、磁性部材14によって圧縮される、磁性部材14の下方に位置するゲル13の容積が小さくなり、大きな膨らみを形成できないおそれが生じ、95%を超えるとそのおそれが大きくなる。一方、磁性部材14の上下方向長さの下限は、磁性部材14が強磁性体の粉末をバインダーに分散したゲル状部材でなる場合には、0.5mm以上とすることが好ましい。0.5mm未満では、磁石15と磁性部材14の引き付け合う力が弱くなり、囲繞部11dに膨らみ(凸部)を形成する応力が充分でなく、大きな膨らみを形成できないおそれがある。また、強磁性体等の硬質材で磁性部材14を形成した場合には、上下方向長さを0.1mm以上とすることが好ましい。強磁性体の粉末をバインダーに分散した場合と比較して強磁性体そのものを用いる場合には、0.1mm程度で、囲繞部11dに膨らみ(凸部)を形成する応力を生じさせることができるためである。
続いてゲル13について説明する。ゲル13は磁気変形部材10aの内部の大部分を占め、磁気変形部材10aに柔軟な触感を与える部材である。より具体的には、ゲル13の一方側に可撓性シート11が積層し、他方側にバックプレート12が積層している。また内部に磁性部材14が配置されている。そして、図4で示すように、この磁性部材14の環状に囲まれる内部にあるゲル13を内部ゲルGiとし、残余の部分を外部ゲルGoと呼ぶものとする。ゲル13は全体として単一の部材で構成しても良いが、内部ゲルGiと外部ゲルGoを別の部材を組合せて構成することもできる。
ゲル13の材質には、柔軟性の高い高分子ゲル、ゴム及び熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。高分子ゲルとして、シリコーンゲル、及びポリウレタンゲルなどが挙げられる。また、ゴムとして、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、及びアクリルゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、極めて柔軟なゲルを形成することができるシリコーンゲルを用いることが好ましい。なお、これらの高分子材料は、単独で用いず、二種以上を組合せて用いてもよい。
上記ゲル13の材質は、日本工業規格であるJIS K 6253のタイプEの硬度計によって測定される値(以下「E硬度」)で50以下であることが好ましい。硬さがE50を超えると、磁場を印加したときの形状の変化が小さくなるおそれがある。また、E硬度の下限を限定しないのは、測定限界以下(E0以下)であっても好ましい範囲に含まれるからである。このE0以下を別の尺度である針入度でみると、針入度が概ね100から320程度の範囲で好ましく用いることができ、340までは利用可能である。但し、これよりも柔らかくなり、針入度が340を超えると、自重で変形して磁気変形部材10aとしての形状を維持できないおそれがある。この針入度は、JIS K 2220記載の装置を用いて、以下の試験条件で試験片の表面に対して測定した結果である。即ち、JIS K 2207に規定される形状の針を用い、針と針固定具全体の重さ(すなわち試験片にかかる重さ)は50gとしたときの値である。
ゲル13の硬さは、磁性部材14の硬さと同じとすることも異なるものとすることもできる。ゲル13と磁性部材14の硬さを同じにすれば、磁場を印加しないときには、磁性部材14とゲル13の硬さの違いを感じることがなくその境界がわからない一体感のある磁気変形部材10aとすることができる。そうした一方で磁場を印加すれば、磁性部材14の下方には外部ゲルGoが積層していることから、磁性部材14が硬い場合であって、下方にある外部ゲルGoが変形できるため、ある程度の柔軟性を発揮することができる。そうした意味では、磁性部材14の硬さは種々のものを用いることができるが、ゲル13には、柔軟な材料を用いることが特に好ましいといえる。
ゲル13は、磁場中でまったく磁化しない性質であることが好ましいが、磁性が大きくならない程度の少量の磁性を有する充填材の含有を除外するものではなく、磁性部材14との比較で磁化の程度が小さく実質的に非磁性であればよい。
可撓性シート11は、一方面が外部に露出して磁気変形部材10aの表面11aとなる部材である。この露出している表面11aは、ヒトが触る接触面でもあり、磁場の影響で凸部が形成される面でもある。また、他方面は、磁気変形部材10aの内部に向いており、磁性部材14、内部ゲルGi、外部ゲルGoと接している。
可撓性シート11の形状は限定されないが、比較的薄いシート状のものを用いることが好ましく、具体的には、10〜1000μm程度の樹脂シートを用いることが好ましい。10μm未満の場合には、接触面としての耐久性に懸念が生じるおそれがある。また、1000μmを超える場合には、容易に変形しにくくなり凸部の形成を阻害するおそれがあるか、または1000μmを超える厚みでありながら容易に変形可能な場合には、材質が過度に柔軟なため耐久性の点で懸念が生じる。
こうした可撓性シートの材質としては、ある程度の柔軟性と耐久性を合せ持つ材質が好ましい。具体的には、ゴム及び熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。ゴムとして、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、及びアクリルゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、柔軟でありながら、耐久性の高いブチルゴム、ウレタンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。なお、これらの高分子材料は、単独で用いず、二種以上を組合せて用いてもよい。
バックプレート12は、磁気変形部材10aの芯となる部材であり、部品としての形状を保つ役割を持つ。また、磁石15と磁性部材14の間に配置され、磁性部材14の影響でゲル13が下方へ変形することを抑制する部材でもある。このため、バックプレート12は剛性のある材質とすることが好ましい。例えば、ゲル13や可撓性シート11よりも硬いゴムや熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属やセラミック等の無機材料を挙げることができる。ただし、こうした材質の中で、磁石15の磁気に悪影響のある磁性材料の使用は制限される。具体的には、全面に磁性材料を用いると、磁気シールドとなり磁石15による磁性部材14への作用が極めて弱くなるか、全く無くなるおそれがあるため、全面に磁性材料を使用することはできない。一方、バックプレート12中に磁場の集中する箇所を設けるために、凸部を形成する磁性部材14の中心下方に相当する位置に部分的に磁性材料を用いる等とすることはできる。
「磁力発生部材」としての磁石15は、バックプレート12の外側に配置される。磁石15は、磁気変形部材10aの1要素として一体化してもよいし、別体としても良い。磁石15を備えない磁気変形部材10aとする場合には、磁気変形部材10aを取り付ける機器に磁石15を備え付けておくことで、同様の機能を発現できる。磁石15の種類としては、永久磁石を用いることができ、またコイルを使った電磁石を用いることもできる。電磁石を用いる場合には、電流のON/OFFで磁力を制御できるため、磁石15はバックプレート12の裏面に固定して備えることができる。また、永久磁石を用いる場合には、磁石15を移動する方法や、磁石15とバックプレート12の間に磁路となるヨークを設け、このヨークを移動させることで磁場を制御するようにしても良い。
磁石15の外形は限定されないが、平面視で磁性部材14の外形と略同じ大きさとすることができる。こうした構成とした場合は、磁性部材14は、磁石15に向かって垂直に引き付けられる。したがって、主に磁性部材14の下方に位置するゲル13の変形によって、内部ゲルGiが応力を受け、可撓性シート11の囲繞部11dに膨らみ(凸部)が形成されることになる。
磁気変形部材11aを構成する上記各部材の大きさは任意の大きさとすることができるが、一例として以下の態様を採用することができる。磁性部材14は、内径(直径)が10mm、外径が16mm、長さ(高さ)が2mmの円柱状とすることができる。磁性部材14の内径を指先と同程度の大きさにすれば、指で操作するときの触感の変化を示し易いためである。磁性部材14の周囲を覆うゲル13は、磁気変形部材11aの長さ方向(可撓性シート11の表面11aに対する垂直方向)で、可撓性シート11とバックプレート12の間隔となる3mm厚とし、その周囲長さを30mmとすることができる。可撓性シート11は厚みを300μm、その周囲長さを40mmとすることができる。バックプレート12は厚みを1mm、その周囲長さを40mmとすることができる。
続いて、磁気変形部材10aへ磁場を印加したときの作用について説明する。
改めて図2および図3を参照して説明すると、図2は、磁石15に電磁石を用いて磁場を印加していない状態を示し、図3は磁場を印加した状態を示す。磁場を印加しないときは、図2で示すように、磁気変形部材10aの表面11aは平坦面となっている。この状態から磁場を印加すると、図3で示すように表面11aが変形する。より具体的にこうした構造変化を説明すると、磁場を印加することで、磁性部材14が磁石15に引き付けられ、磁性部材14がバックプレート12側(下方)へ変位する。このとき、磁性部材14の内側の内部ゲルGiと外側の外部ゲルGoはせん断応力を受ける。一方、磁性部材14の円環と重なる下方の外部ゲルGoは、圧縮応力を受ける。
こうした応力により内部ゲルGiは中央付近のバックプレート12を押圧する方向の応力を生じさせると考えられるが、バックプレート12が変形し難いため、応力を下方へ緩和することができない。また、側方は磁性部材14によって応力の緩和が抑制されている。したがって、前記応力は上方へ逃されることとなり、この応力により可撓性シート11が押圧され、可撓性シート11の表面11aに凸部が形成される。このとき、可撓性シート11の境界部11bは、磁性部材14に引っ張られ上方に変形することができないため、囲繞部11dが大きく突出した膨らみが形成される。
一方、境界部11bの外側となる周辺部11cも、外部ゲルGoの応力によってやや突出する。しかし、磁性部材14の外周については、側面方向へも応力が緩和できるため、周辺部11cの突出は、やや低く形成され、相対的に中央に形成される凸部を際立せることができる。こうして構成される磁気変形部材10aの凸部は、内部にゲル13を有するため、表面を大きく突出させながらも、柔軟な触感を維持することができる。また、下方に磁石15を配置しながら、磁石15のある方向とは反対方向となる上方に突出した凸部を形成することができる。
なお、この膨らみの形成については、磁性部材14の長さや可撓性シート11とバックプレート12との間隔の影響を受け、磁性部材14の長さが長い方が、磁場から大きな力を受ける。一方で、磁性部材14が長すぎるとバックプレート12に突き当たり、柔らかな磁性部材14であっても、磁性部材14の変位は起こし難い。
第1実施形態の変形例1:[図5]
本実施形態の磁気変形部材10bは、図5の断面図で示すように、磁場をかけない状態で磁性部材14がバックプレート12に接触しており、磁性部材14とバックプレート12との間が隔てられていない点で先の実施形態で示す磁気変形部材10aと異なる。また、磁気変形部材10bでは、磁性部材14が柔軟で磁場が印加された際に変形可能な柔らかさを有するものである必要がある。
磁性部材14が、変形可能な弾性部材であるため、この磁性部材に磁場が印加されると磁性部材が圧縮され、また、バックプレート12に接触して配置されることで、環状の磁性部材の環内にあるゲルをその外に逃がし難くすることができ、圧縮される環内のゲルの応力を可撓性シート表面に作用させ易くすることができる。
第1実施形態の変形例2:[図6,図7]
本実施形態の磁気変形部材10cは、図6の断面図で示すように、磁石15の大きさが異なり、平面視で磁性部材14の外形よりも小さい相似形としている。磁気変形部材10cでは、磁場が印加されると図7で示すように、磁性部材14は、磁石15に向かって垂直に引き付けられると共に、内側である縮径方向にも引き付けられる。したがって、磁性部材14の下方に位置するゲル13の変形に加えて、磁性部材14の環状の内側に在る内部ゲルGiを直接圧縮する応力が生じ、その結果、囲繞部11dに凸部が大きく形成されることになり、周辺部11cの突出は抑制されるようになる。したがって、囲繞部11dの突出がより際立ち、磁気変形部材10cに対する磁場のON/OFFによる視覚的変化を大きなものとすることができる。
第2実施形態:[図8,図9]
本実施形態の磁気変形部材20は、図8の断面図で示すように、その外周に外壁26を備える。その他の構成は、第1実施形態の磁気変形部材10aと同じである。
外壁26の材質は、バックプレート12と同様とすることができる。また、外壁26は、バックプレート12と一体にして、その外周から立ち上がるように構成しても良いし、バックプレート12とは別の部材で構成してもよい。こうした外壁26を備えることで、磁気変形部材20に磁場を印加としとき、外部ゲルGoの側面への変形を抑制することができる。そうすると、外部ゲルGoが受ける応力も上方へ向く他、内部ゲルGiから外部ゲルGoへ逃げる応力も緩和できる。したがって、全応力を上方へ向けることができ、図9で示すように、可撓性シート11の表面11aに表れる膨らみをより大きなものとすることができる。
また、外壁26を備えることで、可撓性シート11、バックプレート12、そして外壁26によって、ゲル13を完全に密封する密閉空間を形成することができる。ゲル13は、相対的に物性が弱いため、密閉空間内に保持することで、磁気変形部材20の耐久性を高めることができる。
本実施形態の磁気変形部材20においても、第1実施形態の磁気変形部材10と同様に、磁性部材14がバックプレート12に接触する構成や、平面視での磁石15の外形を磁性部材14よりも小さくする構成を採用することができる。
第3実施形態:[図10]
上記実施形態で示した各磁気変形部材には、接触や押圧を感知するセンサを備えるものとすることができる。第3実施形態として説明する磁気変形部材30は、これまで説明した磁気変形部材で用いた可撓性シート11の代わりに、柔軟なベースシート38a中にセンサ38bを設けた可撓性シート38を用いたものである。センサ38bは、図示しない配線によって制御IC等に接続している。
センサ38bとしては、磁場がかけられたときに囲繞部11dに膨らみが形成される機能を損なわないセンサであればよく、換言すれば、囲繞部11dの膨らみを阻害しない柔軟性を有するセンサを用いることができる。こうしたセンサ38bとしては、例えば弾性導電材料でなる電極を備える伸張可能なセンサや、伸張性の低い部分と伸張性の高い部分とを組合せることで全体として伸張可能としたセンサを挙げることができる。また、センサの方式としては感圧センサや静電容量センサを挙げることができる。なお、柔軟なベースシート38aとしては、第1実施形態で可撓性シート11として説明した材質を用いることができる。
可撓性シート38にセンサ38bを備える磁気変形部材30は、後述するバックプレートにセンサを備える磁気変形部材と比べて、センサ感度を高めることができる。したがって、磁気変形部材30は、感度の優れたタッチセンサとして利用できる。
センサ38bは、可撓性シート38内に設ける他、先の実施形態で説明した可撓性シート11の表面にセンサ38bを設け、さらにその上に柔軟性のある保護層48aを設けてセンサ38bを覆うようにしても良い。なお、センサ38bは図示しない配線によって制御IC等に接続している。
第4実施形態:[図11]
第4実施形態の磁気変形部材40として、次の2種類の磁気変形部材40a,40bについて順次説明する。まず、磁気変形部材40aは、図11の断面図で示すように、これまで説明した磁気変形部材で用いたバックプレート12の磁石15側(下側)にセンサ48bを設けたものである。そして、センサ48bを設けた側のバックプレート12の表面には保護層48aを設けるとともに、図示しない配線によってセンサ48bは制御IC等に接続している。センサ48bとしては、バックプレート49の機能を損なわないセンサを用いることができるが、第3実施形態で説明したセンサのように柔軟性を特に要求するものでもなく、種々の感圧センサや静電容量センサを用いることができる。
磁気変形部材40aでは、磁性部材14または内部ゲルGiの少なくとも何れか一方に導電性を持たせることが好ましい。可撓性シート11からバックプレート12までの間隔が広がりゲル13が厚くなると、可撓性シート11の表面11aからセンサ48bまでの距離が長くなるため、静電容量センサを採用したときはその感度が悪くなることが懸念される。しかしながら、これらの部位に導電性を持たせることで感度の低下を抑えることができるからである。さらに磁性部材14またはゲル13の最下部と、センサ48bまでの間の距離および磁性部材14またはゲル13と、センサ48bとの重なり面積に着目すると、ゲル13に導電性を持たせることがより好ましい。
磁性部材14に導電性を持たせる場合には磁性導電ゲルを用い、内部ゲルGiに導電性を持たせる場合には、強磁性を示さない導電ゲルを用いることができる。また、外部ゲルGoを含めたゲル13全体を導電性としても良い。こうした導電ゲルは、導電性を有しないバインダーにカーボンや金属粒子等の導電性フィラーを添加する方法や、導電性高分子を用いる方法で得ることができる。導電性フィラーとして繊維状導電体を用いるとバインダーの柔軟性を大きく損なわずに導電性を付与できる点で好ましい。導電性は、100Ω・cm以下の体積抵抗率であることが好ましい。
磁気変形部材40aでは、可撓性シート11についても導電性の材料とすることが好ましい。センサとして静電容量センサを採用するときに可撓性シート11の厚みが厚くなると感度の低下が懸念されるが、導電性であれば感度の低下を抑えることができるからである。導電性の可撓性シート11としては、例えば、表裏に導電層を形成して、それらをスルーホールで電気的に導通させた樹脂フィルムや、導電性フィラーを添加した樹脂でなる導電性フィルム等を用いることができる。
バックプレート12にセンサ48bを備える磁気変形部材40は、可撓性シート38にセンサ38bを備える磁気変形部材30と比べて、センサの変形や摩耗の懸念がないものとすることができる。したがって、耐久性に優れた磁気変形部材40とすることができる。
センサとして静電容量センサを採用する場合には、可撓性シート11と、磁性部材14とゲル13の少なくとも一方を導電性とすることにより、可撓性シート11の表面11aからバックプレート12の表面までが電気的に導通しているため、可撓性シート11の表面11aを触ったときにバックプレート12の表裏両面間の静電容量の変化を検知することができる。したがって、可撓性シート11やゲル13の厚みの影響を受け難く、それらが厚い場合でもあっても、感度の低下を抑えることができる。
第4実施形態の変形例1:[図12]
本実施形態の磁気変形部材40bは、図12の断面図で示すように、バックプレート12のゲル13側(上側)にセンサ48bを設けた点で、磁気変形部材40aがバックプレート12の磁石15側(下側)にセンサ48bを設けたのと異なる。
センサとして静電容量センサを採用する場合には、磁性部材14および内部ゲルGiの少なくとも何れか一方を導電ゲルで形成することが好ましい点は磁気変形部材40aと同じである。そうした一方で可撓性シート11については絶縁性のシートとする。こうした構成とすれば、磁性部材14とゲル13の少なくとも一方とセンサ48bが電気的に導通するため、可撓性シート11の表面11aを触ったとき、可撓性シート11の表裏両面間の静電容量の変化を検知することができる。したがって、ゲル13の厚みの影響を受け難く、可撓性シート11からバックプレート12までの間隔が広く厚い場合でもあっても、感度の低下を少なくすることができる。なお、厚みが300μm以下の可撓性シート11を用いれば静電容量センサの感度への悪影響はほとんどない。本実施形態でも磁性部材14またはゲル13の最上部と、指先との間の距離および重なりに着目すると、可撓性シート11の囲繞部11dを触ったときの感度を高めるために、ゲル13を導電性とすることは好ましい態様である。
第5実施形態:[図13,図14]
本実施形態の磁気変形部材50は、図13で示すように、磁性部材14と可撓性シート11が接しておらず、その間にゲル13が入り込んだ緩衝部59が設けられている点である。上記各実施形態では、磁性部材14と可撓性シート11とが固着していたが、磁性部材14と固着する境界部11bの形状が可撓性シート11の表面11aに表出するおそれがあったが、緩衝部59を有すると、可撓性シート11における境界部11bの変位を緩和して、なだらかな境界部11bとすることができる。
より具体的にこうした構造変化を説明すると、磁場を印加することで、磁性部材14が磁石15に引き付けられ、磁性部材14がバックプレート12側(下方)へ変位する。このとき、磁性部材14の内側の内部ゲルGiと外側の外部ゲルGoはせん断応力を受けることは第1実施形態と同様である。このとき磁性部材14は変位に伴って可撓性シート11を下方に変位させるが、このとき緩衝部59が介在すると、特に応力が集中する境界付近において緩衝部59が伸びることができ、なだらかな境界部11bとなるのである。このとき緩衝部59が厚すぎると、緩衝力が大きくなりすぎて可撓性シート11の境界部11bを下方に変位させることができなくなり、結果として凸部を目立たせることができなくなってしまう。こうした観点から緩衝部59の上下方向長さ(平面視での奥行き方向の長さ)は、可撓性部材11とバックプレート12との間隔に相当するゲル13の厚みに対して1〜10%の範囲とすることが好ましい。こうした緩衝部59を適用すれば、磁場を印加した際に、図14で示すように、磁性部材14の存在を目立たせず、美観に優れた磁気変形部材50とすることができる。
その他の変形例:[図15]
磁性部材14の形状は、平面視で環状である例として先の実施形態では図1で示したような無端環状である閉環した円環状を挙げていたが、環状の例としてはこれに限定されない。例えば、図15で示すように、開環した環状でも良い。また、円形に限らず、多角形状や、その他の任意形状の環状であっても良い。
さらに磁性部材14は、剛体でなる複数の磁性片を環状に配列したものとすることができる。剛体で形成しても複数の磁性片を環状に配列すると、磁石15の外形を小さくした場合に、磁性片の全体として縮径方向の変形が可能となる。閉環されてないため、内部ゲルGiの応力は、磁性片どうしの隙間から緩和されるが、そうした緩和の影響よりも、可撓性シート11の囲繞部11dに対する応力を大きくする効果の方が大きいため、凸部の現出させる効果を奏する。したがって、複数とせずに、単純に剛体でなる一つの磁性部材14とした場合に、磁石15の外形を小さくした際に縮径方向の変形が生じないのと比べて好ましい。
また、剛体でなる複数の磁性片を使うメリットとして、バインダーに強磁性体粉末を分散した構成よりも同一材質のみで構成することから磁性を飛躍的に高めることができる点がある。したがって、より小さな磁石(あるいは磁力の小さな磁石)でバインダーに強磁性体粉末を分散した場合と同等の膨らみを囲繞部11dにもたらすことができる。あるいは、同等の膨らみを得るために磁性部材14を小さくすることができ、磁気変形部材の小型化に効果的である。
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更または公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。