以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。
まず、図1を参照して、油圧機械式変速機を搭載した車両1の全体構成について説明する。図1には、車両1の前後方向が描かれている。以下の説明では、車両前側を単に「前」、車両後側を単に「後」と呼ぶことがある。
車両1は、駆動源10と、ダンパ20と、差動機構30と、油圧変速部40と、有段変速部50と、制御装置80とを備えている。そして、有段変速部50の出力側に、プロペラシャフト61、デファレンシャル62およびドライブシャフト63を介して、駆動輪64が動力伝達可能に連結されている。なお、以下の説明において、差動機構30、油圧変速部40および有段変速部50を合わせて「変速機2」と呼ぶことがある。
駆動源10は、例えばディーゼルエンジンである。なお、駆動源10は、ガソリンエンジンでも構わない。駆動源10の出力軸11には、ダンパ20の入力側部材21が接続されている。なお、以下において、駆動源10はディーゼルエンジンであるとして説明を行う。また、以下の説明において、駆動源10をエンジン10という場合がある。
ダンパ20は、入力側部材21と、出力側部材22と、入力側部材21と出力側部材22とを弾性的に連結する弾性連結部材23とを備える。ダンパ20の出力側部材22は、差動機構30の入力軸31と接続されている。ダンパ20は、駆動源10の発生する回転振動が差動機構30に伝達されるのを抑制する機能を有する。ダンパ20の構造は一般的なダンパの構造と同様であるため、詳細な説明を省略する。
差動機構30は、円周方向に等配に設けられた複数のベベルギヤ32、第1差動出力ギヤ33および第2差動出力ギヤ34を備えている。ベベルギヤ32は、図1に示すように、入力軸31に相対回転可能に軸支されている。第1差動出力ギヤ33は、第1ポンプモータ41の第1入出力軸41aの前端に設けられている。第2差動出力ギヤ34は、差動出力軸35の前端に設けられている。
差動出力軸35は、第1入出力軸41aと同軸かつ第1入出力軸41aの外周側に設けられた円筒状の部材である。差動出力軸35の後端には、第1ギヤ36が設けられている。差動出力軸35は、不図示の軸受を介して、第1入出力軸41aに軸支されている。第1ギヤ36は、第2ポンプモータ42の第2入出力軸42aの前端に設けられた第2ギヤ37と噛合している。
なお、本実施形態では、第1差動出力ギヤ33の歯数は、第2差動出力ギヤ34の歯数と同一である。また、第1ギヤ36の歯数は、第2ギヤ37の歯数と同一である。差動機構30の構造は一般的なベベルギヤ型差動機構の構造と同様であるため、詳細な説明を省略する。
油圧変速部40は、第1ポンプモータ41と、第2ポンプモータ42と、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42を油圧接続する閉回路43とを備えている。閉回路43は、油路43aと油路43bとを含む。また、油圧変速部40には、図1において不図示の油圧エネルギー取り出し装置(油圧PTO。詳細は後述する。)が設けられている。なお、閉回路43の基本的な構成は、一般的なHST閉回路と同様であるため、図1では、閉回路43における一部の構成部品(チャージポンプ、チャージ油路、リリーフ油路、バイパス油路等)を省略している。
第1ポンプモータ41は、押し除け容積をゼロから正負の両方向に変化させることのできる、いわゆる両振り型のポンプモータである。第1ポンプモータ41としては、アキシャルピストン型、ラジアルピストン型等、各種の形式のものを採用することができる。第1ポンプモータ41の第1入出力軸41aは、第1ポンプモータ41を前から後へ貫通している。
第2ポンプモータ42は、押し除け容積をゼロから正負の両方向に変化させることのできる、いわゆる両振り型のポンプモータである。第2ポンプモータ42の第2入出力軸42aは、第2ポンプモータ42を前から後へ貫通している。
なお、本実施形態では、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42は同形式のものを用いている。また、第1ポンプモータ41の最大押し除け容積は、第2ポンプモータ42の最大押し除け容積と等しい。
有段変速部50は、第1入出力軸41aと、第1入出力軸41aと平行に配置された第2入出力軸42aと、副軸51と、出力軸52とを備えている。
第1入出力軸41aの前端には、上述のとおり、差動機構30の第1差動出力ギヤ33が設けられている。また、第1入出力軸41aの後端には、第1入力ハブ41bが、第1入出力軸41aと一体回転するように設けられている。
第1入力ギヤ41cは、第1入出力軸41aの外周側に、第1入出力軸41aに対して相対回転可能に設けられている。第1入力ギヤ41cは、副軸51と第1入力ハブ41bとの間に設けられている。
第2入出力軸42aの前端には、上述のとおり、差動機構30の第2ギヤ37が設けられている。また、第2入出力軸42aの後端には、第2入力ハブ42bが、第2入出力軸42aと一体回転するように設けられている。
第2入力ギヤ42cは、第2入出力軸42aと一体回転するように設けられている。第2入力ギヤ42cは、第2ポンプモータ42と第2入力ハブ42bとの間に設けられている。第2入力ギヤ42cは、第1副ギヤ51a(後述する)と噛合している。
副軸51は、第1入出力軸41aと同軸かつ第1入出力軸41aの外周側に設けられた円筒状の部材である。副軸51の前端には第1副ギヤ51aが設けられ、副軸51の後端には第2副ギヤ51bが設けられている。
出力軸52の前端には、出力ハブ52aが、出力軸52と一体回転するように設けられている。
第1出力ギヤ52bは、出力軸52の外周側に、出力軸52に対して相対回転可能に設けられている。第1出力ギヤ52bは、出力ハブ52aの後側に設けられている。第1出力ギヤ52bは、第2副ギヤ51bと噛合している。
第2出力ギヤ52cは、出力軸52と一体回転するように設けられている。第2出力ギヤ52cは、第1出力ギヤ52bの後側に設けられている。第2出力ギヤ52cは、第1入力ギヤ41cと噛合している。
有段変速部50には、第1入出力軸41aと第1入力ギヤ41cとを、選択的に一体回転可能に連結する第1連結機構71が設けられている。第1連結機構71は、第1入力ハブ41bと、第1入力ギヤ41cと一体に設けられた入力クラッチギヤ41dと、第1スリーブ72とを備えている。
第1スリーブ72は、第1入力ハブ41bの外周側に、第1入力ハブ41bと一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に設けられている。第1スリーブ72が図1に示す後位置の場合、第1入出力軸41aと第1入力ギヤ41cとは相対回転可能である。
第1スリーブ72を前位置とすることで、第1入力ギヤ41cは、第1入出力軸41aと一体に回転する。本実施形態では、第1連結機構71として一般的なシンクロナイザ方式のものを使用している。シンクロナイザ方式の連結機構は公知であるため、詳細な説明は省略する。
有段変速部50には、第2入出力軸42aと出力軸52、または、第1出力ギヤ52bと出力軸52とを、選択的に一体回転可能に連結する第2連結機構73が設けられている。第2連結機構73は、第2入力ハブ42bと、出力ハブ52aと、第1出力ギヤ52bと一体に設けられた出力クラッチギヤ52dと、第2スリーブ74とを備えている。
第2スリーブ74は、出力ハブ52aの外周側に、出力ハブ52aと一体回転可能かつ軸方向に相対移動可能に設けられている。第2スリーブ74が図1に示す中央位置の場合、第2入出力軸42aと出力軸52とは相対回転可能である。また、第2スリーブ74が図1に示す中央位置の場合、第1出力ギヤ52bと出力軸52とは相対回転可能である。
第2スリーブ74を前位置とすることで、出力軸52は、第2入出力軸42aと一体に回転する。また、第2スリーブ74を後位置とすることで、出力軸52は、第1出力ギヤ52bと一体に回転する。
制御装置80は、駆動源10、油圧変速部40(第1ポンプモータ41、第2ポンプモータ42)、有段変速部50(第1スリーブ72、第2スリーブ74)を制御する。
次に、図2を参照して、車両走行状態における有段変速部50の動作について説明する。図2は、有段変速部50の状態と、第1スリーブ72および第2スリーブ74の動作状態との関係を示す図表である。
第1スリーブ72が後位置とされ、第2スリーブ74が後位置とされる状態を、「1速」または「第1伝動状態」という。第1伝動状態では、第2入出力軸42aの回転が、第2入力ギヤ42c、第1副ギヤ51a、第2副ギヤ51bおよび第1出力ギヤ52bを経由して出力軸52へ伝達される。
第1スリーブ72が前位置とされ、第2スリーブ74が中央位置とされる状態を、「2速」または「第2伝動状態」という。第2伝動状態では、第1入出力軸41aの回転が、第1入力ギヤ41cおよび第2出力ギヤ52cを経由して出力軸52へ伝達される。
第1スリーブ72が後位置とされ、第2スリーブ74が前位置とされる状態を、「3速」または「第3伝動状態」または「直結状態」という。第3伝動状態では、第2入出力軸42aの回転が出力軸52へ直接伝達される。
(第1の実施形態)
図3を参照して、第1の実施形態に係る油圧PTO100について説明する。なお、図3では、油圧変速部40において、以下の説明に関係しない部品については符号を付していない。また、図3には、油圧機器90が記載されている。
油圧PTO100は、第1油路110と、切替弁120と、第2油路130と、第3油路140と、第4油路150と、第5油路160とを備える。
第1油路110の一端は、第2ポンプモータ42の高圧側と接続されている。また、第1油路110の他端は、切替弁120の第1ポート122(後述する)と接続されている。
切替弁120は、電磁作動式のスプールバルブである。切替弁120は、ソレノイド121、第1ポート122、第2ポート123、第3ポート124およびスプリング125を有する。第1ポート122は、上述のとおり、第1油路110と接続されている。第2ポート123は、第2油路130と接続されている。第3ポート124は、第3油路140と接続されている。
切替弁120は、スプリング125によって、図3の左方向へ付勢されている。そのため、ソレノイド121への通電が行われない場合、切替弁120は図3に示す右位置となる。この場合、第1ポート122と第3ポート124とが連通し、第2ポート123が閉塞される。
ソレノイド121へ通電されると、スプールがスプリング125の付勢力に抗して移動し、第1ポート122と第2ポート123とが連通するとともに第3ポート124が閉塞される左位置となる。ソレノイド121への通電/非通電は、制御装置80により制御される。
第2油路130の一端は、切替弁120の第2ポート123と接続されている。また、第2油路130の他端は、油圧機器90と接続されている。第2油路130を流通する高圧の作動油により、油圧機器90が駆動される。油圧機器90としては、例えば、油圧シリンダが挙げられる。なお、油圧機器90は油圧シリンダに限定されず、油圧を用いて作動する各種機器とすることができる。
第3油路140の一端は、切替弁120の第3ポート124と接続されている。また、第3油路140の他端は、第4油路150および第5油路160の境界部分に接続されている。
第4油路150の一端は、油圧機器90と接続されている。第4油路150は、油圧機器90での仕事に用いられた作動油の戻り流路としての役割を有している。第4油路150の他端は、第3油路140および第5油路160の境界部分に接続されている。
第5油路160の一端は、第3油路140および第4油路150の境界部分に接続されている。また、第5油路160の他端は、第1ポンプモータ41と接続されている。
車両走行状態では、制御装置80は、ソレノイド121への通電を行わない。これにより、切替弁120は、図3に示す右位置となる。そのため、第1ポンプモータ41と、第2ポンプモータ42とは、第1油路110、第3油路140および第5油路160を介して接続される。また、油圧機器90に対して高圧の作動油は供給されない。
車両停止状態において、油圧機器90を作動させる場合、制御装置80は、有段変速部50をニュートラル状態とする。また、制御装置80は、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42をポンプとして動作させる。さらに、制御装置80は、ソレノイド121への通電を行い、切替弁120を左位置とする。
これにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42から吐出された高圧の作動油は、第1油路110および第2油路130を流通して油圧機器90へ供給される。そして、油圧機器90での仕事に用いられた作動油は、第4油路150および第5油路160を流通して第1ポンプモータ41に至る。
この場合、第1ポンプモータ41、第2ポンプモータ42および油圧機器90は、閉回路43内において直列に配置されることになる。これにより、油圧機器90において必要とされる油圧を第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42で半分ずつ受け持つことができ、ポンプモータひとつ当たりの負荷トルクを低減することができる。そのため、油圧機器90において高い油圧が必要とされる場合にも、エンジン10は低トルクで済み、エンジン10を高トルク状態とする必要がない。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、油圧PTO100は、第2ポンプモータ42の高圧側と油圧機器90とを第1油路110および第2油路130を介して接続し、かつ、第1ポンプモータ41と油圧機器90とを第4油路150および第5油路160を介して接続する第1状態と、第1ポンプモータ41と第2ポンプモータ42とを油圧機器90を介さずに接続する第2状態とに切り替え可能な切替弁120を備える。
そのため、切替弁120を第1状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が吐出した高圧の作動油によって油圧機器90を駆動することができる。また、切替弁120を第2状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が油圧機器90に対して仕事をしない状態とすることができる。
(第2の実施形態)
図4を参照して、第2の実施形態に係る油圧PTO200について説明する。なお、図4では、油圧変速部40において、以下の説明に関係しない部品については符号を付していない。また、図4には、油圧機器90が記載されている。
第2の実施形態では、図4に示すように、油路43aが、切替弁220(詳細は後述する)により、第1ポンプモータ41寄りの油路43cと、第2ポンプモータ42寄りの油路43dとに分離されている。また、油路43bが、切替弁220により、第1ポンプモータ41寄りの油路43eと、第2ポンプモータ42寄りの油路43fとに分離されている。
上述の第1の実施形態では、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42の動作状態によって、閉回路43における油路43aおよび油路43bのいずれが高圧側となり、いずれが低圧側となるかが変化するものについて説明した。
これに対して、第2の実施形態では、第1ポンプモータ41に対して、油路43cが常に高圧側となり、油路43eが常に低圧側となる。また、第2ポンプモータ42に対して、油路43dが常に高圧側となり、油路43fが常に低圧側となる。
ここで、第2の実施形態において用いられる第1ポンプモータ41の構成について、図5を参照して詳細に説明する。なお、第2ポンプモータ42については、第1ポンプモータ41と同様の構成を有するため、説明を省略する。
図5には、第1ポンプモータ41における1つのシリンダ41eが描かれている。シリンダ41eは、低圧側逆止弁41fを介して低圧側の油路43eと接続されるとともに、高圧側逆止弁41gを介して高圧側の油路43cと接続されている。シリンダ41eには、ピストン41hが設けられている。
ピストン41hの下端付近は、リンク機構41jを介してクランク軸41kと接続されている。クランク軸41kは、第1入出力軸41aの一部をなす。リンク機構41jは、クランク軸41kの回転運動をピストン41hの往復運動に変換する。また、逆に、リンク機構41jは、ピストン41hの往復運動を、クランク軸41kの回転運動に変換する。
低圧側逆止弁41fは、第1の弁座41mと、第1の弁体41nと、第1の弁体41nを第1の弁座41mから離間させる方向へ押圧する第1のスプリング41pとを有する。低圧側逆止弁41fは、例えばポペットバルブである。
また、低圧側逆止弁41fは、所望のタイミングで閉弁可能に構成されている。具体的には、低圧側逆止弁41fに、制御装置80からの制御信号により第1の弁体41nを第1の弁座41mへ着座させる第1のソレノイド41rが設けられている。
第1のソレノイド41rは、制御装置80から電力を供給されている間だけ、第1の弁体41nを第1の弁座41mへ着座させる。制御装置80には、クランク角検出センサ(不図示)により検出されたクランク軸41kの回転角度が入力される。制御装置80は、入力されたクランク軸41kの回転角度に基づいて、第1のソレノイド41rを制御して、第1の弁体41nを第1の弁座41mへ着座させる。
高圧側逆止弁41gは、第2の弁座41sと、第2の弁体41tと、第2の弁体41tを第2の弁座41sに着座させる方向へ付勢する第2のスプリング41uとを有する。高圧側逆止弁41gは、例えばポペットバルブである。
また、高圧側逆止弁41gは、所定のタイミングで開弁する。さらに、高圧側逆止弁41gは、開弁状態を維持可能に構成されている。具体的には、高圧側逆止弁41gには、第2の弁座41sから離間した第2の弁体41tの離間状態を保持する第2のソレノイド41vが設けられている。第2のソレノイド41vは、制御装置80からの制御信号により制御される。
第2のソレノイド41vは、制御装置80から電力を供給されている間だけ、第2の弁体41tを第2の弁座41sから離間させる。制御装置80は、クランク軸41kの回転角度に基づいて、第2のソレノイド41vを制御して、第2の弁体41tを第2の弁座41sから離間させる。
次に、作動油を低圧側の油路43eから吸入して、高圧側の油路43cへ吐出する行程について簡単に説明する。クランク軸41kの回転に伴い、ピストン41hが上死点から下死点まで下降する吸入行程において、第1のソレノイド41rには、制御装置80から電力が供給されず、第1の弁体41nは第1の弁座41mから離間した状態となる。このようにして、吸入行程では、低圧側逆止弁41fが開弁し、低圧側の油路43eの作動油がシリンダ41e内に導入される。また、吸入行程では、高圧側逆止弁41gは閉弁している。
ピストン41hが下死点から上死点まで上昇する吐出行程における所定の期間、制御装置80は、第1のソレノイド41rに電力を供給しない。これにより、第1の弁体41nは第1の弁座41mから離間した状態を維持する。第1の弁体41nが第1の弁座41mから離間し、低圧側逆止弁41fが開弁した状態では、高圧側逆止弁41gは閉弁状態を維持し、シリンダ41e内の作動油は高圧側の油路43cには流れない。
吐出行程の途中で、第1のソレノイド41rへ電力を供給すると、低圧側逆止弁41fが閉弁するとともにシリンダ41e内の圧力が上昇し、高圧側逆止弁41gが開弁する。そして、シリンダ41e内の作動油は高圧側の油路43cへ導出される。なお、このとき、高圧側逆止弁41gの開弁状態を維持するために第2のソレノイド41vの推力は必ずしも必要ではないが、第2のソレノイド41vの推力により、第2の弁体41tに作用する第2のスプリング41uの荷重を打ち消してもよい。このように、低圧側逆止弁41を閉弁するタイミングを調整することで、第1ポンプモータ31の容量をゼロ容量〜最大容量まで調整することができる。
次に、作動油が高圧側の油路43cからシリンダ41e内へ流入して、低圧側の油路41eへ流出する行程について説明する。ピストン41hが上昇中であり、上死点に至る直前では、第1のソレノイド41rへ制御装置80から電力の供給はなく、低圧側逆止弁41fは、第1のスプリング41pにより開弁状態とされている。この状態で、制御装置80は、第1のソレノイド41rへ電力を供給する。これにより、低圧側逆止弁41fは閉弁し、その後のピストン41hの上昇行程では、高圧側逆止弁41gが開弁する。また、制御装置80は、第1のソレノイド41rへの電力の供給開始直後に、第2のソレノイド41vにも電力を供給する。これにより、ピストン41hが上死点に到達した状態では、高圧側逆止弁41gは開弁状態を維持する。続いて、高圧側の油路41c内の作動油がシリンダ41e内へ流入し、ピストン41hを押し下げる。
ピストン41hが下死点に至る直前で、制御装置80は、第1のソレノイド41rへの電力供給を停止するとともに、第2のソレノイド42vへの電力の供給を停止する。これにより、低圧側逆止弁41fは開弁し、その後のピストン41hの下降行程では、高圧側逆止弁41gが閉弁する。そのため、ピストン41hが下死点に到達した状態では、低圧側逆止弁41fは開弁し、高圧側逆止弁41gは閉弁した状態となる。ここから、ピストン41hがクランク軸41kの回転慣性によって上死点へ向けて上昇すると、シリンダ41e内の作動油は低圧側の油路43eへ流出することになる。
ピストン41hが下死点から上死点まで上昇する行程において、第1のソレノイド41rへの電力を供給して低圧側逆止弁41fを閉弁するタイミングを早めることで、それ以降、シリンダ41eから低圧側の油路43eへの作動油の流出を行わせないようにすることができる。このように、低圧側逆止弁41fを閉弁するタイミングを調整することで、第1ポンプモータ41の容量をゼロ容量〜最大容量まで調整することができる。
図4に戻って、油圧PTO200は、第1油路210と、切替弁220と、第2油路230と、第3油路240とを備える。
第1油路210の一端は、の油路43dと接続されている。また、第1油路210の他端は、切替弁220の第3ポート224(後述する)と接続されている。
切替弁220は、電磁作動式のスプールバルブである。切替弁220は、ソレノイド221、第1ポート222、第2ポート223、第3ポート224、第4ポート225、第5ポート226、第6ポート227およびスプリング228を有する。
第1ポート222は、油路43fと接続されている。第2ポート223は、油路43dと接続されている。第3ポート224は、上述のとおり、第1油路210と接続されている。第4ポート225は、油路43eと接続されている。第5ポート226は、油路43cと接続されている。第6ポート227は、第2油路230と接続されている。
切替弁220は、スプリング228によって、図4の左方向へ付勢されている。そのため、ソレノイド221への通電が行われない場合、切替弁220は図4に示す右位置となる。この場合、第1ポート222と第4ポート225とが連通する。また、第2ポート223と第5ポート226とが連通する。また、第3ポート224および第6ポート227はそれぞれ遮断される。
ソレノイド221へ通電されると、スプールがスプリング228の付勢力に抗して移動し、左位置となる。左位置では、第1ポート222と第5ポート226が連通し、第3ポート224と第6ポート227とが連通し、第2ポート223および第4ポート225はそれぞれ遮断される。ソレノイド221への通電/非通電は、制御装置80により制御される。
第2油路230の一端は、切替弁220の第6ポート227と接続されている。また、第2油路230の他端は、油圧機器90と接続されている。第2油路230を流通する高圧の作動油により、油圧機器90が駆動される。
第3油路240の一端は、油圧機器90と接続されている。第3油路240は、油圧機器90での仕事に用いられた作動油の残り流路としての役割を有している。第3油路240の他端は、油路43eと接続されている。
車両走行状態では、制御装置80は、ソレノイド221への通電を行わない。これにより、切替弁220は、図4に示す右位置となる。そのため、第1ポンプモータ41の高圧側と、第2ポンプモータ42の高圧側とは、油路43cおよび油路43dを介して接続される。また、油圧機器90に対して高圧の作動油は供給されない。
車両停止状態において、油圧機器90を作動させる場合、制御装置80は、有段変速部50をニュートラル状態とする。また、制御装置80は、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42をポンプとして動作させる。さらに、制御装置80は、ソレノイド221への通電を行い、切替弁220を左位置とする。
これにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42から吐出された高圧の作動油は、第1油路210および第2油路230を流通して油圧機器90へ供給される。そして、油圧機器90での仕事に用いられた作動油は、第3油路240および油路43eを流通して第1ポンプモータ41に至る。
この場合も、第1の実施形態と同様に、第1ポンプモータ41、第2ポンプモータ42および油圧機器90は、閉回路43内において直列に配置されることになる。これにより、油圧機器90において必要とされる油圧を第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42で半分ずつ受け持つことができ、ポンプモータひとつ当たりの負荷トルクを低減することができる。そのため、油圧機器90において高い油圧が必要とされる場合にも、エンジン10は低トルクで済み、エンジン10を高トルク状態とする必要がない。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、油圧PTO200は、第2ポンプモータ42の高圧側と油圧機器90とを第1油路210および第2油路230を介して接続し、かつ、第1ポンプモータ41と油圧機器90とを第3油路240および油路43eを介して接続する第1状態と、第1ポンプモータ41と第2ポンプモータ42とを油圧機器90を介さずに接続する第2状態とに切り替え可能な切替弁220を備える。
そのため、切替弁220を第1状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が吐出した高圧の作動油によって油圧機器90を駆動することができる。また、切替弁220を第2状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が油圧機器90に対して仕事をしない状態とすることができる。
(第3の実施形態)
図6を参照して、第3の実施形態に係る油圧PTO300について説明する。なお、図6では、油圧変速部40において、以下の説明に関係しない部品については符号を付していない。また、図6には、油圧機器90が記載されている。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態で用いた形式のポンプモータを用いることもできるし、第2の実施形態で用いた形式のポンプモータを用いることもできる。
油圧PTO300は、第1油路310と、切替弁320と、第2油路330と、第3油路340とを備える。
第1油路310の一端は、閉回路43における油路43aと接続されている。また、第1油路310の他端は、切替弁320の第1ポート322(後述する)と接続されている。
切替弁320は、電磁作動式のスプールバルブである。切替弁320は、ソレノイド321、第1ポート322、第2ポート323およびスプリング324を有する。第1ポート322は、上述のとおり、第1油路310と接続されている。第2ポート323は、第2油路330と接続されている。
切替弁320は、スプリング324によって、図6の右方向へ付勢されている。そのため、ソレノイド321への通電が行われない場合、切替弁320は図6に示す左位置となる。この場合、第1ポート322と第2ポート323とは遮断される。
ソレノイド321へ通電されると、スプールがスプリング324の付勢力に抗して移動し、第1ポート322と第2ポート323とが連通する右位置となる。ソレノイド321への通電/非通電は、制御装置80により制御される。
第2油路330の一端は、切替弁320の第2ポート323と接続されている。また、第2油路330の他端は、油圧機器90と接続されている。第2油路330を流通する高圧の作動油により、油圧機器90が駆動される。
第3油路340の一端は、油圧機器90と接続されている。第3油路340は、油圧機器90での仕事に用いられた作動油の戻り流路としての役割を有している。第3油路340の他端は、閉回路43における油路43bと接続されている。
車両走行状態では、制御装置80は、ソレノイド321への通電を行わない。これにより、切替弁320は、図6に示す左位置となる。そのため、油路43aから油圧機器90に対して高圧の作動油は供給されない。
車両停止状態において、油圧機器90を作動させる場合、制御装置80は、有段変速部50をニュートラル状態とする。また、制御装置80は、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42をポンプとして動作させる。さらに、制御装置80は、ソレノイド321への通電を行い、切替弁320を右位置とする。
これにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42から吐出された高圧の作動油は、第1油路310および第2油路330を流通して油圧機器90へ供給される。そして、油圧機器90での仕事に用いられた作動油は、第3油路340を流通して油路43bに至る。
この場合、第1ポンプモータ41と第2ポンプモータ42とは、閉回路43内において並列に配置されることになる。これにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42から吐出された作動油を油圧機器90へ供給することができる。そのため、第1および第2の実施形態に比べて低いエンジン回転で、第1および第2の実施形態と同量の作動油を油圧機器90へ供給することが可能となる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、油圧PTO300は、高圧側の油路43aと油圧機器90とを第1油路310および第2油路330を介して接続し、かつ、低圧側の油路43bと油圧機器90とを第3油路340を介して接続する第1状態と、高圧側の油路43aと油圧機器90とを遮断する第2状態とに切り替え可能な切替弁320を備える。
そのため、切替弁320を第1状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が吐出した高圧の作動油によって油圧機器90を駆動することができる。また、切替弁320を第2状態とすることにより、第1ポンプモータ41および第2ポンプモータ42が油圧機器90に対して仕事をしない状態とすることができる。
なお、上述の各実施形態では、第1ポンプモータまたは第2ポンプモータを選択的に出力軸と接続するHMTを例に説明を行ったが、これに限定されない。例えば、第1ポンプモータおよび第2ポンプモータのいずれか一方が出力軸と接続されるHMTでもよい。
また、上述の各実施形態では、車両停止状態で油圧機器を駆動し、車両走行状態では閉回路と油圧機器とを切り離すものを例に説明を行ったが、これに限定されない。車両走行状態で油圧機器を駆動させるようにしてもよい。