JP6931871B2 - 調光素子、及びこれを用いた調光ガラス - Google Patents

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Description

本発明は、調光素子、及びこれを用いた調光ガラスに関する。
近年、カーテンやブラインドなどの遮光機能を電気スイッチひとっで切り替えられるスマートウィンドウと呼はれる調光窓が注目されており、エレクトロクロミック材料や高分子分散型液晶材料を用いた調光デバイスがオフィスや航空機で使用されている(特許文献1〜3)。
エレクトロクロミック材料は酸化還元による着色を利用した吸収型であるのに対して、高分子分散型液晶は液晶と高分子の屈折率差を利用した散乱型であるため、太陽光など強い光に対しては熱の発生を抑制できるので、高分子分散型液晶材料を用いたスマートウィンドウは長期安定性の観点から有利である。
特開2011−170364号公報 特開2011−074304号公報 特開2011−105908号公報
吉野和樹,他3名、"リエントラント液晶の粘弾性挙動"、[online]、日本液晶学会討論会講演予稿集 (2001), 301-302, 2001-09-24、日本液晶学会、[平成29年2月20日検索]、インターネット <http://ci.nii.ac.jp/naid/110001464680>
しかしながら、これらの材料を用いた調光デバイスでは、透明電極や電界印加が必須とするため、高価かつ電気エネルギーの消費が避けられない。また、大面積化には大型の装置の導入が必須である。
本発明が解決しようとする課題は、透明電極や電界印加が不要であり、大面積化が容易で、簡易な装置として安価に製造することができ、エネルギー消費の低減を図ることができる、熱応答型の調光素子、及びこれを用いた調光ガラスを提供することにある。
多くの液晶組成物ではネマチック相(N相)を呈するが、その低温側でスメクチックA相(SmA相)を呈する液晶組成物も広く知られている。そして、ネマチック相(N相)が透明であるのに対して、スメクチックA相(SmA相)は半透明となることが知られている。そのような液晶組成物を熱応答型の調光素子として窓ガラスに用いても、夏期の暑い時期に高温側で透明で太陽の熱を取り入れてしまい、冬期の寒い時期に低温側で半透明で太陽の熱を遮断することになり、調光素子として適用することは難しい。
一方、2種以上の特定の混合比の液晶組成物において、ネマチック相(N相)と、スメクチックA相(SmA相)と、更にその低温側に、リエントラントネマチック相(RN相)を呈することも知られている(非特許文献1等)。
本発明は、上記課題を解決するために、スメクチックA相(SmA相)と、更にその低温側でリエントラントネマチック相(RN相)を呈する液晶組成物を熱応答型の調光素子に用いることによって、夏期の暑い時期に高温側で半透明又は不透明で太陽の熱を遮断し、冬期の寒い時期に低温側で透明で太陽の熱を取り入れることができることに着目して鋭意研究を重ねた結果、本発明を提供するに至った。
即ち、本発明は、リエントラントネマチック相を呈する液晶組成物を用いた調光素子を提供する。
本発明の調光素子は、前記液晶組成物が、さらにスメクチックA相を呈することが好ましい。
本発明の調光素子は、前記スメクチックA相から前記リエントラントネマチック相への相転移温度が10〜50℃であることが好ましい。
本発明の調光素子は、セルギャップを3〜300μmとする2枚の基板を備えることが好ましい。
本発明の調光素子は、前記2枚の基板のうちの少なくとも一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であることが好ましい。
本発明の調光素子は、前記2枚の基板のうちの一方の基板の前記液晶組成物に対する濡れ性が、他方の基板の前記液晶組成物に対する濡れ性と異なることが好ましい。
本発明の調光素子は、前記一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であり、前記2枚の基板のうちの他方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がシランカップリング処理されていることが好ましい。
本発明の調光素子は、前記一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であり、他方の基板の前記液晶組成物に接触する表面が未処理のガラス基板表面であることが好ましい。
本発明は、前記調光素子を用いた調光ガラスを提供する。
本発明によれば、透明電極や電界印加が不要であり、大面積化が容易で、簡易な装置として安価に製造することができ、エネルギー消費の低減を図ることができる、熱応答型の調光素子、及びこれを用いた調光ガラスが提供される。
本発明の調光素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。 リエントラントネマチック相(RN相)、スメクチックA相(SmA相)、ネマチック相(N相)を示す概略図である。
図3(A)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、未処理ガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持した調光素子を介して、埼玉工業大学の校章を撮影した実物画像であって、15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているもの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。図3(B)は、同じ調光素子のオルソスコープ観察画像であって、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。図3(C)は、同じ調光素子のコノスコープ観察画像であって、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。
図4(A)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、片方の面にポリイミド膜が形成されたガラス基板とシランカップリング処理されたガラス基板との間に挟持した調光素子を介して、埼玉工業大学の校章を撮影した実物画像であって、15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているもの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。図4(B)は、同じ調光素子のオルソスコープ観察画像であって、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。図4(C)は、同じ調光素子のコノスコープ観察画像であって、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。
400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフであって、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、未処理ガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持したときの、図5(A)は15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているもの、図5(B)は20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、図5(C)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、図5(D)は60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものである。
400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフであって、図6(A)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、片方の面にポリイミド膜が形成されたガラス基板とシランカップリング処理されたガラス基板との間に挟持したときの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、図6(B)は、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、図6(C)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、片方の面にポリイミド膜が形成されたガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持したときの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、図6(D)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものである。
400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフであって、図7(A)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、シランカップリング処理されたガラス基板とシランカップリング処理されたガラス基板との間に挟持したときの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、図7(B)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、図7(C)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(25質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(75質量%)からなる液晶組成物を、片方の面にポリイミド膜が形成されたガラス基板と片方の面にポリイミド膜が形成されたガラス基板との間に挟持したときの、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているもの、図7(D)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものである。
図8(A)は、4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)(23質量%)及び4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)(77質量%)からなる液晶組成物を、未処理ガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持した調光素子を用いて、液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により相転移温度を調べたものである。図8(B)は、6OCB(25質量%)及び8OCB(75質量%)からなる液晶組成物を、未処理ガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持した調光素子を用いて、液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により相転移温度を調べたものである。図8(C)は、6OCB(27質量%)及び8OCB(73質量%)からなる液晶組成物を、未処理ガラス基板と未処理ガラス基板との間に挟持した調光素子を用いて、液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により相転移温度を調べたものである。
<<調光素子>>
本発明の調光素子は、リエントラントネマチック相を呈する液晶組成物を用いたことを特徴とする。すなわち、従来、知られているリエントラントネマチック相を呈する液晶組成物を調光素子として利用するものである。
本発明の調光素子に用いる液晶組成物としては、従来知られた液晶組成物のうち、図2に示されるような、リエントラントネマチック相(RN相)を呈するものであれば限定されない。本発明の調光素子に用いる液晶組成物として、例えば、液晶分子相互にミクロな強い会合性が認められるポジ型ネマチック液晶組成物が挙げられ、シアノ基を有するポジ型ネマチック液晶組成物であってもよい。シアノ基を有するビフェニル系あるいはフェニルシクロヘキサン系のポジ型ネマチック液晶組成物であってもよく、シアノフェニル構造を骨格構造として有する2環性若しくは3環性のポジ型ネマチック液晶組成物であってもよい。
より具体的には、下記の式(1)〜(8)に示される液晶化合物の2種以上を含有する液晶組成物が挙げられる。
Figure 0006931871
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式(1)〜(8)において、nは1以上の整数である。nは1〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、3〜8であることが特に好ましい。
これらの液晶化合物は、特定の混合比及び特定の温度範囲において、液晶分子相互にミクロな強い会合性が認められ、スメクチックA相(SmA相)の低温側に、リエントラントネマチック相(RN相)を呈する。すなわち、図2に示されるように、ネマチック相(N相)と、スメクチックA相(SmA相)と、更にその低温側に、リエントラントネマチック相(RN相)を呈する。そして、半透明又は不透明なスメクチックA相(SmA相)と、透明なリエントラントネマチック相(RN相)との間の、透明性の違いを利用して、調光素子として利用することができる。より高温側のスメクチックA相(SmA相)が半透明又は不透明であることで、周辺環境が高温時には透光性が低くなって熱を遮ることができ、より低温側のリエントラントネマチック相(RN相)が透明であることで、周辺環境が低温時には透光性が高くなって熱を通し易くする効果が期待できる。
本発明の調光素子は、前記スメクチックA相から前記リエントラントネマチック相への相転移温度が10〜50℃であることが好ましく、15〜45℃であることがより好ましく、20〜40℃であることが特に好ましい。これにより、室温付近で、前記相転移温度よりも高い温度のときは、透光性が低くなって光と熱を遮り、室温付近で、前記相転移温度よりも低い温度のときは、透光性が高くなって光と熱を透過させる調光素子とすることができる。
例えば、図1は、本発明の調光素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。
調光素子1は、一方の基板3及び他方の基板4の2枚の基板を備え、一方の基板3と他方の基板4との間に注入された液晶組成物2が、特定の温度範囲で、リエントラントネマチック相を呈する。
調光素子1においては、一方の基板3と他方の基板4との間のセルギャップdを、3〜300μmとすることが好ましい。
調光素子1の液晶組成物2において、スメクチックA相(SmA相)が半透明又は不透明であることにより、透明なリエントラントネマチック相(RN相)との間の透明性の違いを利用することができる。
調光素子1の前記2枚の基板のうちの少なくとも一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aがポリイミド膜であることが好ましい。
少なくとも一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aをポリイミド膜とすることにより、表面3aのポリイミド膜に接触する液晶組成物2の液晶分子が、一方の基板3に対して概水平方向に配向する。
少なくとも一方の基板3の表面3aの近傍の液晶分子が概水平方向に配向すると、液晶組成物2がスメクチックA相(SmA相)を呈するとき、配向欠陥に基づく散乱が生じて半透明又は不透明になると考えられる。
液晶組成物2が結晶相(K相)を呈するとき、液晶組成物2は不透明であり、ネマチック相(N相)を呈するとき、液晶組成物2は透明である。液晶組成物2がリエントラントネマチック相(RN相)を呈するときも、液晶組成物2は透明であるので、液晶組成物2を用いることにより、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能させることができる。
例えば、一方の基板3のうち、基材31の液晶組成物2に接触する表面3a側に、公知の配向膜用ポリイミド材料を塗布し、加熱処理することにより、所定の厚さのポリイミド膜32を形成することができる。
スメクチックA相(SmA相)が半透明又は不透明であるためには、前記2枚の基板のうちの一方の基板3の液晶組成物2に対する濡れ性が、他方の基板4の液晶組成物2に対する濡れ性と異なることが好ましい。両者の濡れ性が異なることにより、基板界面に存在する液晶分子の配向の影響を受け、スメクチックA相(SmA相)に配向欠陥が生じることで散乱が誘発されて、半透明又は不透明になると考えられる。
液晶組成物2がネマチック相(N相)を呈するとき、液晶組成物2は透明である。液晶組成物2がリエントラントネマチック相(RN相)を呈するときも、液晶組成物2は透明であるので、液晶組成物2を用いることにより、リエントラントネマチック相(RN相)とスメクチックA相(SmA相)との間の相転移を利用して、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能させることができる。
基板に対する濡れ性は、式(9)で表される基板の表面自由エネルギーγにより評価することができる。表面自由エネルギーγは、固体物質の表面状態を数値化したものであり、固体物質間の濡れ性の順位を知る場合などの指標となる値である。また、表面自由エネルギーは、固体表面の分子同士が引っ張りあう力であり、この力は分子間力(ファンデルワールス力)と呼ばれ、原子の間で電子が移動するイオン結合や共有結合等の化学結合ではなく、分子同士の引っ張り合う力である。
γ=γd+γp+γh (9)
(式(9)中、γは物質の表面自由エネルギー、γdは分散成分、γpは極性成分、γhは水素結合成分をそれぞれ表す)
固体表面における表面自由エネルギーの解析は、固体表面の接触角の測定結果から算出する方法が用いられ、この算出方法には幾つかの理論が存在する。表面自由エネルギーが既知の2種類の溶媒を使用して得られた接触角を用いてOwens−Wendt理論から算出する方法、表面自由エネルギーが既知の3種類の溶媒を使用して得られた接触角を用いてKitazaki−Hata理論から算出する方法等が使用される。なお、固体表面の接触角とは、固体表面に液滴が存在する場合、接液部分において固体と液滴とがなす角度である。
本発明の調光素子において、2枚の基板のうちの少なくとも一方の基板の液晶組成物に接触する表面の表面自由エネルギーは、基板界面に対して液晶分子のチルト角をより小さくするため、55mN/m以下が好ましく、40mN/m以下が好ましく、37mN/m以下が特に好ましい。
調光素子1の前記2枚の基板のうちの一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aがポリイミド膜であり、前記2枚の基板のうちの他方の基板4の前記液晶組成物に接触する表面がシランカップリング処理されていてもよい。
例えば、他方の基板4のうち、基材41の液晶組成物2に接触する表面4a側に、公知のシランカップリング剤を塗布し、加熱処理することにより、基材41の液晶組成物2に接触する表面4aをシランカップリング処理することができる。
調光素子1の前記2枚の基板のうちの一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aがポリイミド膜であり、前記2枚の基板のうちの他方の基板4の前記液晶組成物に接触する表面が未処理のガラス基板表面であってもよい。
調光素子1の前記2枚の基板のうちの一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aがポリイミド膜であり、前記2枚の基板のうちの他方の基板4の前記液晶組成物に接触する表面もポリイミド膜であってもよい。
<<調光ガラス>>
上述の実用に供する調光素子としては、調光ガラスを挙げることができる。
本発明の調光ガラスとして、例えば、図1で示した調光素子1のうち、基材31及び/又は基材41がガラス基板であるものが挙げられる。
基材31及び/又は基材41をガラス基板とすることにより、耐久性のある熱応答型のスマートウィンドウに利用可能である。
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<液晶の観察>
液晶を、偏光顕微鏡(Olympus社製BX50)にて実物観察し、オルソスコープ観察し、また、コノスコープ観察し、それぞれ、顕微鏡用デジタルカメラ(Olympus社製DP20)にて撮影した。
<透過光スペクトル観察>
オーシャンオプティクス社製紫外可視光光度計USB4000にて、オーシャンオプティクス社製照明光源HL−2000−LLの透過光量変化を評価した。
<表面自由エネルギーの評価>
松浪硝子工業社製のスライドガラス(縦25mm、横25mm、厚さ1.3mm)を中性洗剤で洗浄して、表面未処理のスライドガラスとして評価に供した。
松浪硝子工業社製のスライドガラス(縦25mm、横25mm、厚さ1.3mm)を中性洗剤で洗浄したのち、UVオゾン処理を5分間行った。その後、スライドガラスの一方の側に、JSR(株)製の配向膜用ポリイミド材料であるオプトマーAL1254をスピンコート法で塗布し、100℃で2時間加熱処理して膜厚50nmのポリイミド膜を形成した。
松浪硝子工業社製のスライドガラス(縦25mm、横25mm、厚さ1.3mm)を中性洗剤で洗浄したのち、オクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)を0.1質量%含有するエタノール溶液に6時間浸漬した。その後、100℃で2時間加熱処理することによりスライドガラス表面にシランカップリング処理を行った。
基板のうち液晶組成物に接触する側の表面の表面自由エネルギーを接触角測定により算出した。未処理基板の表面、シランカップリング処理された基板の表面、及び、ポリイミド膜が形成された基板の表面において、超純水(HO)、ジヨードメタン(CH)、およびn−ヘキサデカン(C1634)の接触角を、DropMaster500(協和界面科学社製)を用いて、テフロン(登録商標)コート針18G(もしくは22G)、液量3μLで5点測定し、その平均値とした。得られた接触角からKitazaki−Hata理論を用い、その基板の表面の表面自由エネルギーを算出した。用いた溶媒の表面自由エネルギーは、超純水:72.8mN/m、ジヨードメタン:50.8mN/m、n−ヘキサデカン:27.6mN/mである。結果を表1に示す。
Figure 0006931871
[参考例1]
4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)と4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)を25:75の質量組成比で混合した液晶組成物試料を調製した。2枚の表面未処理のガラス基板(松浪硝子工業社製、スライドガラスS1214、縦25mm、横25mm、厚さ1.3mm)を、厚さ100μmの両面テープをスペーサーとして使用し向い合せ作製したセルに、前記液晶組成物試料を60℃にて注入して、参考例1の調光素子を作成した。
液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により調べた。このうち、リエントラントネマチック相(RN相)、スメクチックA相(SmA相)、及びネマチック相(N相)の偏光顕微鏡観察画像を図8(B)に示す。82℃以上で等方相(I相)を示し、降温過程において、50.2℃でネマチック相(N相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、24.6℃でスメクチックA相(SmA相)からリエントラントネマチック相(RN相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における降温速度は1℃/minである。ただし、放冷のため、室温付近では1℃/min以下であった。
また、昇温過程においては、26.1℃でリエントラントネマチック相(RN相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、56.1℃でスメクチックA相(SmA相)からネマチック相(N相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における昇温速度は1℃/minである。
参考例1の調光素子を介して、埼玉工業大学の校章の実物画像を撮影した。図3(A)は、15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているもの、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。液晶組成物が結晶相(K相)の温度では不透明であったが、ネマチック相(N相)、スメクチックA相(SmA相)及びリエントラントネマチック相(RN相)のいずれも透明であり、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間で、実物画像の見え方に変化は観察されなかった。
図3(B)は、同じ調光素子のオルソスコープ観察画像であって、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。
図3(C)は、同じ調光素子のコノスコープ観察画像であって、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。
オルソスコープ観察画像及びコノスコープ観察画像のいずれも、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間で、変化は観察されなかった。
参考例1の調光素子の調光特性を、400〜1000nmの波長範囲で、紫外可視分光光度計により、透過光量を測定することにより評価した。
図5は、400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフである。図5(A)は15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で不透明である。図5(B)は20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図5(C)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図5(D)は60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。
ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、変化は観察されなかった。スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、変化は観察されなかった。
[参考例2]
4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)と4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)を23:77の質量組成比で混合した液晶組成物試料を調製した。参考例1で作製したものと同じセルに、前記液晶組成物試料を注入して、参考例2の調光素子を作成した。
液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により調べた。このうち、リエントラントネマチック相(RN相)、スメクチックA相(SmA相)、及びネマチック相(N相)の偏光顕微鏡観察画像を図8(A)に示す。降温過程において、52.6℃でネマチック相(N相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、20.0℃でスメクチックA相(SmA相)からリエントラントネマチック相(RN相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における降温速度は1℃/minである。ただし、放冷のため、室温付近では1℃/min以下であった。
また、昇温過程においては、23.5℃でリエントラントネマチック相(RN相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、56.6℃でスメクチックA相(SmA相)からネマチック相(N相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における昇温速度は1℃/minである。
[参考例3]
4’−シアノ−4−ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)と4’−シアノ−4−ノニルオキシビフェニル(8OCB)を27:73の質量組成比で混合した液晶組成物試料を調製した。参考例1で作製したものと同じセルに、前記液晶組成物試料を注入して、参考例3の調光素子を作成した。
液晶組成物試料の液晶性を、偏光顕微鏡観察により調べた。このうち、リエントラントネマチック相(RN相)、スメクチックA相(SmA相)、及びネマチック相(N相)の偏光顕微鏡観察画像を図8(C)に示す。降温過程において、45.7℃でネマチック相(N相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、31.0℃でスメクチックA相(SmA相)からリエントラントネマチック相(RN相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における降温速度は1℃/minである。ただし、放冷のため、室温付近では1℃/min以下であった。
また、昇温過程においては、31.4℃でリエントラントネマチック相(RN相)からスメクチックA相(SmA相)への相転移が観察でき、47.2℃でスメクチックA相(SmA相)からネマチック相(N相)への相転移が観察できた。これらの相転移温度測定における昇温速度は1℃/minである。
[実施例1]
表面自由エネルギーの評価で記載した方法で、片方の面にポリイミド膜が形成されたスライドガラスを準備した。
また、表面自由エネルギーの評価で記載した方法で、片方の面にシランカップリング処理されたスライドガラスを準備した。
片方の面にポリイミド膜が形成されたスライドガラス及び片方の面にシランカップリング処理されたスライドガラスを、厚さ100μmの両面テープをスペーサーとして使用し向い合せたセルに、参考例1の液晶組成物試料を60℃にて注入して、実施例1の調光素子を作成した。実施例1の調光素子の、2枚の基板のうちの一方の基板の前記液晶組成物試料に接触する表面がポリイミド膜であり、他方の基板の前記液晶組成物試料に接触する表面はシランカップリング処理されている。
実施例1の調光素子を介して、埼玉工業大学の校章の実物画像を撮影した。図4(A)は、15℃にて、液晶組成物が結晶相(K相)を呈しているもの、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。液晶組成物が結晶相(K相)の温度では不透明であったが、ネマチック相(N相)及びリエントラントネマチック相(RN相)のいずれも透明であった。またスメクチックA相(SmA相)では、半透明であり、ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、実物画像の見え方に明らかな変化が観察され、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、実物画像の見え方に明らかな変化が観察された。
すなわち、ネマチック相(N相)及びリエントラントネマチック相(RN相)を示す60℃及び20℃において、実施例1の調光素子を介して埼玉工業大学の校章の実物画像が鮮明に写るのに対し、40℃のときは校章が白濁して実物画像は写らなかった。この白濁はスメクチックA相(SmA相)の配向欠陥に基づく散乱に起因すると考えられる。したがって、実施例1の調光素子は室温付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して良好な透明性を有し、おおよそ30℃程度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することがわかった。
図4(B)は、実施例1の調光素子のオルソスコープ観察画像であって、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、オルソスコープ観察画像の見え方に明らかな変化が観察され、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、オルソスコープ観察画像の見え方に明らかな変化が観察された。
図4(C)は、同じ実施例1の調光素子のコノスコープ観察画像であって、60℃にて、液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものである。ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、コノスコープ観察画像の見え方に明らかな変化が観察され、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、コノスコープ観察画像の見え方に明らかな変化が観察された。
実施例1の調光素子の調光特性を、400〜1000nmの波長範囲で、紫外可視分光光度計により、透過光量を測定することにより評価した。
図6(A)及び図6(B)は、実施例1の調光素子について、400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフである。図6(A)は、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図6(B)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で半透明である。なお、実施例1の調光素子の結晶相(K相)を呈しているものは不透明であり、実施例1の調光素子のネマチック相(N相)を呈しているものは透明であり、図面は省略している。
図6(A)及び図6(B)、並びに図8(B)の結果から、参考例1の液晶組成物試料を用いた実施例1の調光素子は、おおよそ24℃以下の比較的低い温度付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して良好な透明性を有し、おおよそ27℃以上の比較的高い温度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することを確認できた。
図8(A)の参考例2の結果から、参考例2の液晶組成物試料を用いた調光素子では、おおよそ20℃以下の比較的低い温度付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して高い透明性を有し、おおよそ24℃以上の温度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することが予想できる。
また、図8(C)の参考例3の結果から、参考例3の液晶組成物試料を用いた調光素子では、おおよそ31℃以下の室温付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して良好な透明性を有し、おおよそ32℃以上の温度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することが予想できる。
このように、液晶組成物の組成を調整することにより、リエントラントネマチック相(RN相)とスメクチックA相(SmA相)との間の相転移温度を調整するが可能である。
[実施例2]
松浪硝子工業社製のスライドガラス(縦25mm、横25mm、厚さ1.3mm)を中性洗剤で洗浄して、表面未処理のスライドガラスとした。
表面自由エネルギーの評価で記載した方法で、片方の面にポリイミド膜が形成されたスライドガラスを準備した。
片方の面にポリイミド膜が形成されたスライドガラス、及び、表面未処理のスライドガラスを、厚さ100μmの両面テープをスペーサーとして使用し向い合せ作製したセルに、参考例1の液晶組成物試料を60℃にて注入して、実施例2の調光素子を作成した。実施例2の調光素子の、2枚の基板のうちの一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であり、他方の基板の前記液晶組成物に接触する表面は未処理のガラス基板表面である。
実施例2の調光素子を介して、埼玉工業大学の校章の実物画像を撮影した。実施例1の調光素子のときと同様、60℃にて液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、及び、20℃にて液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものは、いずれも透明であった。40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものは半透明であり、ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、実物画像の見え方に明らかな変化が観察され、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、実物画像の見え方に明らかな変化が観察された。15℃にて液晶組成物が結晶相(K相)を呈している温度では不透明であった。
ネマチック相(N相)を呈する60℃、及び、リエントラントネマチック相(RN相)を呈する20℃において、実施例2の調光素子を介して埼玉工業大学の校章の実物画像が鮮明に写るのに対し、スメクチックA相(SmA相)を呈する40℃のときは校章が白濁して実物画像は写らなかった。この白濁はスメクチックA相(SmA相)の配向欠陥に基づく散乱に起因すると考えられる。実施例2の調光素子は、実施例1の調光素子と同様、室温付近では良好な透明性を有し、おおよそ30℃程度から不透明性を有する熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することがわかった。
実施例2の調光素子の調光特性を、400〜1000nmの波長範囲で、紫外可視分光光度計により、透過光量を測定することにより評価した。
図6(C)及び図6(D)は、実施例2の調光素子について、400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフである。図6(C)は、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図6(D)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で半透明である。なお、実施例2の調光素子の結晶相(K相)を呈しているものは不透明であり、実施例2の調光素子のネマチック相(N相)を呈しているものは透明であり、図面は省略している。
図6(C)及び図6(D)の結果からも、実施例2の調光素子は、室温付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して良好な透明性を有し、おおよそ30℃程度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することを確認できた。
[参考例4]
片方の面がシランカップリング処理された2枚のマイクロカバーガラスを準備し、厚さ100μmの両面テープをスペーサーとして使用し前記シランカップリング処理された2枚のマイクロカバーガラスを向い合せたセルに、参考例1の液晶組成物試料を60℃にて注入して、参考例4の調光素子を作成した。
参考例4の調光素子を介して、埼玉工業大学の校章の実物画像を撮影した。60℃にて液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、40℃にて液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているもの、並びに、20℃にて液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものは、いずれも透明であった。15℃にて液晶組成物が結晶相(K相)を呈している温度では不透明であったが、ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、実物画像の見え方に変化は観察されず、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、実物画像の見え方に変化が観察されなかった。
オルソスコープ観察画像及びコノスコープ観察画像のいずれも、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間で、変化は観察されなかった。
参考例4の調光素子の調光特性を、400〜1000nmの波長範囲で、紫外可視分光光度計により、透過光量を測定することにより評価した。
図7(A)及び図7(B)は、参考例4の調光素子について、400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフである。図7(A)は、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図6(B)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。なお、参考例4の調光素子の結晶相(K相)を呈しているものは不透明であり、参考例4の調光素子のネマチック相(N相)を呈しているものは透明であり、図面は省略している。
図7(A)及び図7(B)の結果からも、参考例4の調光素子は、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間で、透明性の変化は観察されなかった。
[実施例3]
表面自由エネルギーの評価で記載した方法で、片方の面にポリイミド膜が形成された2枚のスライドガラスを準備し、厚さ100μmの両面テープをスペーサーとして使用し前記2枚のスライドガラスを向い合せたセルに、参考例1の液晶組成物試料を60℃にて注入して、実施例3の調光素子を作成した。実施例3の調光素子の、2枚の基板のうちの一方の基板の前記液晶組成物試料に接触する表面がポリイミド膜であり、他方の基板の前記液晶組成物試料に接触する表面もポリイミド膜である。
実施例3の調光素子を介して、埼玉工業大学の校章の実物画像を撮影した。実施例1の調光素子のときと同様、60℃にて液晶組成物がネマチック相(N相)を呈しているもの、及び、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものは、いずれも透明であった。40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものは半透明であり、ネマチック相(N相)とスメクチックA相(SmA相)との間で、実物画像の見え方に明らかな変化が観察され、スメクチックA相(SmA相)とリエントラントネマチック相(RN相)との間でも、実物画像の見え方に明らかな変化が観察された。15℃にて液晶組成物が結晶相(K相)を呈している温度では不透明であった。
実施例3の調光素子においては、液晶組成物試料を60℃にて注入してからネマチック相(N相)⇒スメクチックA相(SmA相)⇒リエントラントネマチック相(RN相)と降温させてからリエントラントネマチック相(RN相)を観察している。このとき、リエントラントネマチック相(RN相)はスメクチックA相(SmA相)の配向履歴を受けやすい。
少なくとも一方の基板3の液晶組成物2に接触する表面3aをポリイミド膜とすることにより、表面3aのポリイミド膜に接触する液晶組成物2の液晶分子が、一方の基板3に対して概水平方向に配向し、液晶組成物2がスメクチックA相(SmA相)を呈するとき、基板上部から観察したとき液晶分子はいろいろな方向に向いており、ポリドメインが形成して、結果、配向欠陥に基づく散乱が生じて半透明になったと考えられる。
ネマチック相(N相)を呈する60℃、及び、リエントラントネマチック相(RN相)を呈する20℃において、実施例3の調光素子を介して埼玉工業大学の校章の実物画像が鮮明に写るのに対し、スメクチックA相(SmA相)を呈する40℃のときは校章が白濁して実物画像は写らなかった。この白濁はスメクチックA相(SmA相)の配向欠陥に基づく散乱に起因すると考えられる。実施例3の調光素子は、実施例1の調光素子と同様、室温付近では良好な透明性を有し、おおよそ30℃程度から不透明性を有する熱応答型の調光素子・調光ガラスとして機能することがわかった。
実施例3の調光素子の調光特性を、400〜1000nmの波長範囲で、紫外可視分光光度計により、透過光量を測定することにより評価した。
図7(C)及び図7(D)は、実施例3の調光素子について、400〜1000nmの透過光スペクトルを示すグラフである。図7(C)は、20℃にて、液晶組成物がリエントラントネマチック相(RN相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で透明である。図7(D)は40℃にて、液晶組成物がスメクチックA相(SmA相)を呈しているものであって、400〜1000nmの波長範囲で半透明である。なお、実施例3の調光素子の結晶相(K相)を呈しているものは不透明であり、実施例3の調光素子のネマチック相(N相)を呈しているものは透明であり、図面は省略している。
図7(C)及び図7(D)の結果からも、実施例3の調光素子は、室温付近ではリエントラントネマチック相(RN相)を呈して良好な透明性を有し、おおよそ30℃程度からスメクチックA相(SmA相)を呈して不透明性を有する、熱応答型の調光素子・調光ガラス・調光ガラスとして機能することを確認できた。
本発明の調光素子及び調光ガラスは熱応答型のスマートウィンドウに利用可能である。
1・・・調光素子、2・・・液晶組成物、3・・・一方の基板、3a・・・一方の基板の液晶組成物に接触する表面、31・・・基材、32・・・処理膜、4・・・他方の基板、4a・・・他方の基板の液晶組成物に接触する表面、41・・・基材、42・・・処理膜、d・・・セルギャップ

Claims (7)

  1. リエントラントネマチック相を呈する液晶組成物を用いた調光素子であって、
    セルギャップを3〜300μmとする2枚の基板を備え、
    前記2枚の基板のうちの一方の基板の前記液晶組成物に対する濡れ性が、他方の基板の前記液晶組成物に対する濡れ性と異なる、調光素子。
  2. 前記液晶組成物が、さらにスメクチックA相を呈する請求項1に記載の調光素子。
  3. 前記スメクチックA相から前記リエントラントネマチック相への相転移温度が10〜50℃である請求項2記載の調光素子。
  4. 前記2枚の基板のうちの少なくとも一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜である請求項記載の調光素子。
  5. 前記一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であり、前記2枚の基板のうちの他方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がシランカップリング処理されている請求項記載の調光素子。
  6. 前記一方の基板の前記液晶組成物に接触する表面がポリイミド膜であり、他方の基板の前記液晶組成物に接触する表面が未処理のガラス基板表面である請求項記載の調光素子。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の調光素子を用いた調光ガラス。
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