<第1の実施形態>
本実施形態の評価装置は、生体表面上に配置した紫外線光を吸収及び/又は散乱する機能を有する生体用の紫外線防御剤の性能を評価するために利用される。まず、本実施形態の評価モデル及び要求される精度について説明する。
本発明の評価装置は、図1に示すように、生体3の表面上に紫外線防御剤2を配置した被験体を評価対象とする。紫外線防御剤2は、紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン等)及び/又は紫外線散乱剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)を含有する製剤が挙げられる。製剤としては、液状、ゲル状、半固形状、固形状、泡状、ミスト状及びシート状などの形態が挙げられる。生体3の表面には、皮膚、毛髪、爪、目等の生体の外表面が挙げられる。また、配置とは、生体3表面上に紫外線防御剤が接して位置しておれば良く、塗布、貼り付け、付着等の状態を区別なく表すものとする。そして、矢印で示すように、紫外線防御剤2の上から紫外線光(入射光)を照射し、その反射光を検出する。入射光の強さはI(λ)で示される。
ここで、反射光の強さIR(λ)は、図1に示す紫外線防御剤2と生体3の表面のモデルより、下記式(3)で示すことができる。
S(λ)は、波長λの入射光が紫外線防御剤2の表面で反射・散乱される割合である。(1−S(λ))は、波長λの入射光が紫外線防御剤2の表面で反射・散乱されない割合である。Ts(λ)は、波長λの入射光が紫外線防御剤2で吸収されず生体との界面に到達する割合である。β(λ)は、波長λの入射光が生体と紫外線防御剤2の界面で反射する割合である。Rs(λ)は、波長λの入射光が生体3で反射する割合である。
上記式(3)は、図1に示すような、紫外線防御剤2が生体3と分離して散乱性の無い均質な層を形成する場合にのみ成立する。しかしながら実際には、紫外線防御剤2の生体3への浸透や、紫外線散乱剤の配合等による紫外線防御剤2そのものの散乱性により、図2に示すような層構造を形成していると考えられる。この時、紫外線防御剤2内での光路長が変化していると考えられ、反射光の強さIR(λ)は下記式(4)で近似できる。
ここでγ(λ)は、光路長の変化を考慮するための、波長λの透過率の補正パラメータである。
本実施形態で推定する「紫外線防御剤2の紫外線光の透過率T(λ)」は、波長λの入射光が紫外線防御剤2で吸収・散乱等されずに生体3に到達する割合であり、T(λ)=(1−S(λ))(1−β(λ))Ts(λ)で示される。
ここで、波長λの入射光の強さI(λ)と反射光の強さIR(λ)の比率である反射率R(λ)は、R(λ)=IR(λ)/I(λ)で表される。当該式のIR(λ)に式(4)の右辺を代入することで、下記式(5)が得られる。
そして、式(5)を変形することで下記式(6)が得られる。
式(6)の両辺を1/γ(λ)乗すると、左辺が上記T(λ)の算出式の右辺と一致する。すなわち、下記式(1)が得られる。
本実施形態では、式(1)等に基づき、図2に示すモデルでの測定値を利用することで紫外線防御剤2の透過率T(λ)を算出する。
次に、紫外線防御剤2の評価方法について説明する。本実施形態で、透過率から得られる評価値として、例えばin vitro SPFが挙げられる。
紫外線防御剤2の性能評価指標の一つとして、SPF(Sun Protection Factor)が用いられているが、一般的に、生体表面上に配置された紫外線防御剤2の性能評価には、in vivo SPFが利用されている。in vivo SPF値は、紫外線防御剤2を使用した場合と使用しない場合での、かすかに赤みを起こさせるために必要な紫外線のエネルギー量である最小紅斑量の比率で定義される。例えばin vivo SPF値が15のサンスクリーンであれば、紫外線防御剤を使用しない場合に比べてかすかな赤みを起こすための紫外線量が15倍であったことを示す。
上記in vivo SPF値は紫外線防御剤2の客観的な評価方法として有効である。しかしながら、人で評価を行うことが前提であるため、所定の肌タイプの被験者の協力が不可欠であり、また侵襲的な評価方法であり、測定には多大な費用と日数を要するため、簡便な評価方法とは言い難い。
そこで、紫外線防御剤2の透過率からSPFを推定する、in vitro SPF評価法の利用が期待されているが、生体表面上に配置された紫外線防御剤2の透過率の測定精度が低く、上記in vivo SPFとの解離が問題視されていた。しかしながら、本発明の評価装置を用いることで、生体表面上に配置された紫外線防御剤2の透過率を精度良く測定できるようになり、in vitro SPFにおいても、in vivo SPFと同等の評価値が得ることができる。
in vitro SPFの算出式を下記式(7)に示す。
Eは、波長λにおける紅班作用スペクトルである。ε(λ)は、基準とする太陽光スペクトルの波長λの強さである。T(λ)は、紫外線防御剤2の波長λの紫外線光の透過率である。なお、280nm≦M1<M2≦400nmである。
本実施形態においては、上記式(1)を用いて、1つ以上の波長λについて透過率T(λ)を取得し、下記式(2)を用いてin vitro SPFを推定することができる。in vitro SPFを推定する際に用いる透過率T(λ)を取得する波長λとして、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を併用している製剤でのin vitro SPFの推定精度を高める観点から、280nm以上400nm以下の波長のうち、290nm以上360nm以下の波長から選択される1又は2以上の波長であることが好ましく、290nm以上330nm以下の波長から選択される1又は2以上の波長であることがより好ましく、290以上320nm以下の波長から選択される1又は2以上の波長であることがさらに好ましい。
また、紫外線カメラを用いるなどして、透過率T(λ)の空間的な分布を同時に合わせて評価したい場合、カメラ特性にもよるが、330nm以下の波長帯域の画像は暗く、紫外線防御剤2を配置した被験体の状態を確認しにくいため、340nm以上360nm以下の波長帯域を用いることで、所定のin vitro SPFの推定精度を維持しつつ、画像による測定箇所の状態確認も容易にできる利点があり、好ましい。
ここでNは測定波長数、iは測定波長のインデックス(1,2,...,N)、aiは乗算係数、Cは定数項である。
aiおよびCの決定方法としては、例えば上記式(2)の両辺の逆数をとり、左辺を従属変数とした重回帰分析で決定する方法が考えられる。そのほか、PLS回帰や判別分析などの多変量解析手法で決定してもよいし、非線形最適化手法で最適解を探索しても良い。また紅斑作用スペクトルE(λ)や太陽光のスペクトルε(λ)から決定しても良い。
また上記式(2)において、測定波長の刻み幅を280nm以上400nm以下の範囲で十分に細かくしてほぼ連続的な透過率スペクトルが得られている場合、ai=E(λ)ε(λ)/∫E(λ)ε(λ)dλ、C=0と置くことで、上記式(7)に示される従来のin vitro SPF算出法に沿った値を得ることができる。
また、透過率T(λ)から算出される評価値は、上記式(2)で得られるin vitro SPFの推定に用いる以外に例えば吸光度(吸光度(A)=−log10(T(λ))の推定、UVAPF(UVA protection factor of a product)の推定に用いることもできる。また、紫外線カメラを用いるなどして、透過率T(λ)の空間的な分布が取得できているならば、空間的な平均、分散、歪度、尖度などの画像統計量を算出し、紫外線防御剤2の塗膜の分布評価値としてもよい。
また、異なる紫外線防御剤2を配置した時の透過率や、配置した直後と一定時間経過後の透過率など、条件の異なる複数の透過率が得られている場合、これらの差分や比率などで比較した結果を評価値としてもよい。例えば、紫外線防御剤2を配置した直後と一定時間経過後の透過率の比率から、紫外線防御剤2の紫外線防御効果の耐久性を評価することができる。
次に、要求性能について説明する。SPFは、デイリー用の低SPF(SPF20以下)、中SPF(SPF30近傍)、レジャー用の高SPF(SPF50、50+)と用途で大別されている。紫外線防御剤2を当該指標で評価する場合、上記SPFを識別できるだけの評価性能が評価装置には必要不可欠である。
In vitro SPFの算出式(式(7))より、SPFは、基本的には紫外線防御剤2がないときの透過光量と、紫外線防御剤2があるときの透過光量の比率であり、透過率の逆数であることが分かる。すなわち、SPF20、SPF30、SPF50を判別するには、透過率T(λ)がそれぞれ5%、3%、2%の紫外線防御剤2を判別できる精度を有さなければならない。
本実施形態の評価モデルの場合、図1及び図2、上記式(3)及び式(4)から明らかなように、検出対象紫外線光は、紫外線防御剤2に侵入した光は、紫外線防御剤2を透過し、生体3で反射し、その後、紫外線防御剤2を再び透過した後に、検出される。このため、このようなルートを経た紫外線光の検出量は著しく小さくなる。
紫外線帯域におけるRs(λ)は人種等で異なるが、例えばSkin Phototype I~IIIの平均的なUVA反射率は40%程度であるという知見を我々はもっている。紫外線防御剤2が散乱性の無い均質な層だと仮定し、SPF20、SPF30、SPF50を判別するためには、その透過率T(λ)がそれぞれ5%、3%、2%であることから、式(3)より、理論上、上記ルートを経た後に検出される紫外線光の強さは、入射光の強さI(λ)の0.1%、0.036%、0.016%となる。
SPF20、SPF30、SPF50を判別するには、上述のような非常に小さい差を検出する必要があり、計測におけるノイズの原因となる外乱要素を、入射光の強さI(λ)の0.03%以下とすることが好ましく、0.02%以下とすることがより好ましく、0.01%以下とすることがさらに好ましい。
「外乱要素」として、大きく分けて以下の3つが考えられる。
(1)カメラノイズ
(2)測定波長以外の波長光(波長漏れ光)
(3)空気と紫外線防御剤2との界面で反射している鏡面反射光
カメラノイズについては、暗電流成分の減算処理やローパスフィルタなどのノイズ低減処理といったソフトウェア処理である程度対応可能である。しかしながら、反射光に直接混入する(2)(3)の光については、ソフトウェア処理での除外が難しく、評価装置の光学系の設計が重要となる。
本実施形態の評価装置は、上記要求性能を満たす構成を備える。以下、詳細に説明する。
図3に、本実施形態の評価装置1の機能ブロック図を示す。図示するように、評価装置1は、照明部10と、検出部20とを有する。評価装置1は、さらに、分析部30を有してもよい。なお、評価装置1と物理的及び/又は論理的に分かれた他の装置が分析部30を備えてもよい。この場合、評価装置1の検出部20により検出されたデータは、任意の手段で、分析部30を備える他の装置に入力されることになる。
照明部10は、生体3の表面上に紫外線防御剤2を配置した被験体に、紫外線光を照射する。例えば、生体3の表面上に紫外線防御剤2を塗布することで、上記被験体が得られる。
図4に、照明部10の構成の一例を示す。照明部10は、照明装置と、第1のフィルター12と、第1の偏光板14とを有する。
照明装置は、波長280nm以上400nm以下の紫外線光を含む波長帯域の光を発する。照明装置の光量としては、検出部20で検出される反射光の強度を強くし、透過率の測定精度を高める観点から、各測定波長の被験体被照射部における照射照度(中心部)は、0.3mW/cm2以上であることが好ましく、0.4mW/cm2以上であることがより好ましく、0.5mW/cm2以上であることがさらに好ましい。また、生体への紫外光の影響を低減する観点から、8mW/cm2以下であることが好ましく、5mW/cm2以上であることがより好ましく、3mW/cm2以上であることがさらに好ましく、2mW/cm2以上であることがさらに好ましく、1mW/cm2以上であることがさらに好ましい。
このような照明装置は、所定の紫外線光の強度が得られれば、例えば、広い波長帯域(紫外線帯域を含む)の光を発する照明ユニット11や、狭い波長帯域(紫外線帯域内)の光を発する照明ユニット11のいずれも用いることができる。
具体的な照明ユニット11として、例えば、広い波長帯域の光を発するハロゲンランプ、キセノンランプ等、狭い波長帯域の光を発する紫外線LED、紫外線レーザー等を採用できる。なかでも、紫外線光のエネルギーが強いキセノンランプを採用するのが好ましい。紫外線帯域の入射光の強度を強くすることで、紫外線防御剤2を透過後に検出部20で検出される反射光の強度を強くすることができる。
なお、入射光の強度を強くする観点から、複数の光源を用いてもよい。例えば、複数のキセノンランプを分岐ファイバーで連結したものを照明ユニット11としてもよい。
第1のフィルター12は、光源(照明装置)からの光のうち所定の波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルターである。第1のフィルター12は、280nm以上400nm以下の中の少なくとも一部の波長帯域の光を透過させる。
バンドパスフィルターを実現する方法として、誘電体による多層膜で透過波長以外を反射する多層膜フィルター(または多層膜ミラー。以下、多層膜フィルターと総称する。)を形成する方法と、染料等で透過波長以外を吸収する色ガラスフィルターを形成する方法がある。
前者(多層膜フィルター)は透過波長の透過率の高さおよびカットオフ波長の急峻さ、更に余分な光を反射するため耐熱性・耐久性に優れる。しかしながら、透過波長から離れた帯域が漏れてしまう特性があり、あまり幅広い帯域を高い阻止率で阻止することができない。つまり、波長漏れ光が高い。
一方後者(色ガラスフィルター)は、染料の種類や併用の仕方によって幅広い帯域を高い阻止率で阻止することが可能となる。しかしながら急峻なカットオフの実現が難しく、透過波長の狭帯域化を図れば透過波長の透過率も低くなる。また、染料で光を吸収するという特徴から、耐熱性が低い。
本実施形態では、入射光を強くすることが望まれる。このため、照明装置やその周辺に設置される部材においては、高い耐熱性が要求される。そこで、本実施形態では、照明装置の近くに設置される第1のフィルター12として、耐熱性に優れる多層膜フィルターを採用する。
第1のフィルターに用いる多層膜フィルターは、検出部20で検出される反射光の強度を強くし、透過率の測定精度を高める観点から、透過帯域における半値幅における平均透過率が40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
第1のフィルター12は、透過帯域幅の異なる複数の多層膜フィルターを用いることができる。図4に、第1のフィルター12の光透過特性の一例を示している(「照明側フィルター後」のデータ)。図4の例では、紫外線領域で透過波長帯域の狭い多層膜フィルター(多層膜フィルター13a)及び紫外線領域で透過波長帯域の広い多層膜フィルター(UV抽出ユニット13b)を採用している。
第1の偏光板14は、特定方向に偏光又は偏波した光を通過させる。第1の偏光板14は、無機偏光板である。例えば、アルミなどの金属でワイヤーグリッドを形成する無機偏光板を第1の偏光板14として採用できる。
無機偏光板以外に、ヨウ素化合物を延伸させ、イオンを基板上に整列させた偏光フィルターがある。このような偏光フィルターは、整列したイオンの配列が乱れると偏光性能が失われるため、紫外線光や熱線に弱いという性質を持つ。また、紫外線光に対しては吸光特性を持つ場合が多い。
上述の通り、本実施形態では、外乱要素を十分に除去する必要があるため、紫外線光の偏光特性、透過特性、および耐熱性において高い性能が要求される。本実施形態は、上述のようなヨウ素化合物を用いた偏光フィルターを使用せず、無機偏光板を用いることで、当該要求性能を実現している。
このような照明部10を用いる本実施形態の場合、照明装置から発せられた紫外線光のうち、第1のフィルター12及び第1の偏光板14を透過した光が、入射光として紫外線防御剤2及び生体3の被験体に照射される。ここで、第1のフィルター、第1の偏光板の配置は、図4においては、照明装置から発生せられた紫外光が、第1のフィルターを透過し、その後、第1の偏光板を透過するよう配置しているが、第1のフィルター及び第1の偏光板の照明部10内の配置順序は特に制限されない。
図3に戻り、検出部20は、照明部10により照射された紫外線光の反射光を検出する。検出部20が検出する反射光には、空気と紫外線防御剤2の界面で反射した紫外線光、及び、紫外線防御剤2を透過し、生体3で反射し、その後、紫外線防御剤2を再び透過した紫外線光が含まれる。図5に、検出部20の構成の一例を示す。検出部20は、UVカメラ(紫外線カメラ)21と、第2のフィルター22と、第2の偏光板23とを有する。ここで、第2のフィルター、第2の偏光板の配置は、図5においては、被験体から反射した紫外光が、第1の偏光板を透過し、その後、第2のフィルターを透過するよう配置しているが、第2のフィルター及び第2の偏光板の検出部20内の配置順序は特に制限されない。
第2の偏光板23は、特定方向に偏光又は偏波した光を通過させる。第2の偏光板23は、無機偏光板である。第1の偏光板14と第2の偏光板23は、同じ無機偏光板であってもよいし、異なってもよい。第1の偏光板14と第2の偏光板23を適切に設計(偏光方向を交差させる)することで、空気と紫外線防御剤2との界面での鏡面反射光を除去できる。
第2のフィルター22は、反射光のうち所定の波長帯域の光を透過させる。第2のフィルター22は、280nm以上400nm以下の中の少なくとも一部の波長帯域の光を透過させる。第2のフィルター22は、広い波長域を阻止波長域とすることができる色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターである。色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターであれば、例えば、色ガラスフィルターの片面又は両面に誘電体による多層膜を形成した複合フィルター、色ガラスフィルターと多層膜フィルターを接合した複合フィルター等を採用することができる。
図5に、第2のフィルター22の光透過特性の一例を示している(「受光側フィルター後」のデータ)。図より、急峻なカットオフの実現は難しいが、広い波長帯域を阻止波長帯域とすることができることが分かる。
上述の通り、本実施形態では、高い耐熱性が要求される第1のフィルター12として、多層膜フィルターを採用する。しかしながら、それでもなお生じている微弱な波長漏れ光、及び、透過波長の光が励起する蛍光などの外乱光を、検出部20で除去しなければならない。そこで、第2のフィルター22として、広い波長帯域を阻止波長帯域とする色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターを採用することで、第1のフィルター12からの漏れた透過波長から離れた帯域の光、及び、その他外乱光を遮断する。なお、第2のフィルター22は、光源からの距離が第1のフィルター12よりも遠いため、第1のフィルター12に比べて、要求される耐熱性が低い。このため、第2のフィルター22として、色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターを採用できる。
なお、第1のフィルター12(複数の多層膜フィルターを用いている場合には、最も透過波長帯域の狭い多層膜フィルター)の透過波長帯域と、第2のフィルター22の透過波長帯域とは、測定対象範囲において少なくとも一部が重なることが必要である。波長漏れを低減するため、第1のフィルター12の透過波長帯域中に第2のフィルターの透過波長帯域が完全に含まれることが好ましく、第1のフィルター12の透過波長帯域と第2のフィルターの透過波長帯域が一致していることがより好ましい。
図4の第1のフィルター12の光透過特性の一例(「照明側フィルター後」のデータ)、及び、図5の第2のフィルター22の光透過特性の一例(「受光側フィルター後」のデータ)より、本実施形態の評価装置1を要求性能などに応じて上述のように最適化すると、第2のフィルター22は、第1のフィルター12(複数の多層膜フィルターを用いている場合には、最も透過波長帯域の狭い多層膜フィルター)よりも広い阻止波長帯域(光を透過する透過波長帯域を除く波長帯域。なお、本発明においては、光を透過するとは、透過率が0.1%超であることを意味する。)を有する構成とすることが必要である。
図5に戻り、UVカメラ21は、複数の固体撮像素子を有し、画素毎に、受光した光の強さに応じた電気信号(画素値)を出力する。画素値は、受光した光の強さを示す。出力は、紫外線防御剤2の検出対象紫外線光を精度良く撮影するため、16ビット以上の出力とすることが好ましい。UVカメラ21は、マルチスペクトル画像(各波長の光の強さ)を撮影可能に構成されてもよい。例えば、第1のフィルター12及び第2のフィルター22の透過波長帯域を切り換えながら、複数回撮影することで、マルチスペクトル画像が撮影できる。
ここで、露光時間を長くしたり、撮影の繰り返し回数を増やしたりという計測上の工夫により、上述した外乱要素を抑制することができる。しかし、紫外線光を照射される被験者の負担や、高精細な画像の取得のためには、測定時間が短い方が良い。
照射波長を変えながら複数回照射、検出を繰り返すことでマルチスペクトル画像を撮影する場合、被験者の負担はさらに大きくなる。被験者の拘束時間の観点から、マルチスペクトル画像の撮影時間は10秒以内に収まることが望ましく、1枚あたりの撮影時間は1秒程度が望ましい。UVカメラ21の感度や光源の照明光強度は、上記の撮影時間を満たすように選択する必要があり、ハイパワーの光源と、ペルチェ冷却などの冷却機構、露光時間設定機能、Binning処理機能を併せ持った高感度のUVカメラ21を用いることが望ましい。
ここで、第1のフィルター12及び第2のフィルター22の要求性能について、説明する。特定の波長を観察するためのフィルターのカットオフ波長を、短波長側カットオフ波長λSと長波長側カットオフ波長λLで表すものとし、当該フィルターの透過率をTF(λ)とおく。このとき、観察したい波長の光の総量PIは、下記式(9)で示される。また、波長漏れ光の総量P0は、下記式(10)で示される。なお積分範囲はUVカメラの感度特性などを考慮して、200nm以上1200nm以下としている。
波長漏れ光の総量はP0/P1と考えることができ、上記要求性能の説明で述べた通り、0.03%以下であるが好ましく、0.02%以下であるがより好ましく、下記式(11)で示される通り、0.01%(10−4)以下であることがさらに好ましい。
第1のフィルター12及び第2のフィルター22を一般的に狭帯域干渉フィルターとして良く使用される半値幅(例:10nm)のバンドパスフィルターとした場合、観察対象光の帯域幅が10nmに対して、波長漏れ光の波長帯域幅は200nm以上1200nmをUVカメラの感度特性とすると990nmとなり、およそ100倍である。よって、式(11)より、P0はすべての波長で10−6以下を満たすように第1のフィルター12及び第2のフィルター22を選択することで、常に式(11)に示す要求仕様が満たされることになる。第1のフィルター12及び第2のフィルター22をこのように構成することで、波長漏れ光を十分に抑制できる。
具体的には、第1のフィルターとしては所望する透過波長領域を有する狭帯域干渉フィルター LXシリーズ(朝日分光社製)、第2のフィルターとしては所望する透過波長領域を有する干渉フィルター MXシリーズ、MZシリーズ(いずれも朝日分光社製)、FBシリーズ、FLシリーズ(いずれもTHORLABS社製)などを挙げることができる。
上述したように、第1のフィルター12は、透過帯域幅の異なる複数の多層膜フィルターを用いることができる。当該多層膜フィルターは、透過波長帯域の光透過性の高さ及びカットオフ波長の急峻さというメリットを有するが、透過波長帯から離れた波長帯に透過帯域が生じてしまうという特性がある。そこで、紫外線領域で透過波長帯域の広い多層膜フィルター(UV抽出ユニット13b)を用いることで、阻止域の広い多層膜フィルターを設計することができる。一方、透過波長帯域が広いと、その帯域内に生体3による自家蛍光が生ずる可能性がある点、及び、生体3に対する紫外線光の影響を最小限にする観点から、評価に必要な波長帯域を含む、なるべく狭い透過波長帯域の多層膜フィルターを用いることが好ましい。従って、生体3に対する紫外線の影響を最小限とし、波長漏れ光を抑制する観点から、これらを組み合わせて用いることが好ましい。
具体的には、UV抽出ユニット13bとして所望する透過波長領域を有する、UV光用広帯域干渉フィルター PBシリーズ、UVミラーユニットなどを挙げることができる。
また、ある波長λについて測定する場合、第1のフィルター12(複数の多層膜フィルターを用いている場合には、最も透過波長帯域の狭い多層膜フィルター)及び第2のフィルター22の透過特性は、評価に必要な波長帯域が包含されていれば良いが、生体3に対する紫外線光の影響を最小限にする観点から、中心波長λに対して半値幅が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。また、5nm以上であることが好ましい。
第1のフィルター12において複数の多層膜フィルターを用いている場合、最も透過波長帯域の広い多層膜フィルターの透過波長の帯域は、200nm以上1200nmのUVカメラの感度特性内で波長漏れ光を抑制するために、評価に必要な波長帯域全域にわたり広く設定することが好ましく、具体的には、270nm以上が好ましく、260nm以上がより好ましく、250nm以上がさらに好ましく、また、360nm以下が好ましく、380nm以下がより好ましく、400nm以下がさらに好ましい。
例えば、多層膜フィルターの阻止域の透過率が、0.1%以下であれば、所定の透過波長以外の波長帯域を入射光強度の10−3レベルで阻止できる。また、250nmから400nmの透過波長帯を有する多層膜フィルター(UV抽出ユニット13b)及び250nmから400nmの範囲の所定の透過波長帯を有する多層膜フィルター(多層膜フィルタ−13a)を組み合わせることで、200nmから1200nmまでの領域で、所定の透過波長以外の波長帯域を入射光強度の10−3レベルで阻止できる。
色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターの阻止域の透過率が、0.1%以下であれば、第2のフィルター22により、検出部20で検出される反射光は、所定の透過波長以外の波長帯域を入射光強度の10−6レベルで阻止できる。
次に、第1の偏光板14及び第2の偏光板23の要求性能について、説明する。入射光が紫外線防御剤2の表面で反射・散乱される鏡面反射光は、偏光板を照明側と受光側の両方に設置し、2つの偏光板の偏光方向を交差させることで除去できる。しかしながら、実際の偏光板は偏光面に垂直な光の透過率が0%に到達せず、わずかながら偏光漏れによる鏡面反射光が生じる。この現象は偏光板の性能指標として、消光比(Parallel / Crossed)やContrast比(Crossed:Parallel)といったパラメータで表現される。
入射光に対する鏡面反射光の比率は、フレネルの式({(n1−n2)/(n1+n2)}2)で算出することができる(入射角および波長依存性は無視するものとする)。ここでn1、n2は反射界面を作る二つの物質の屈折率である。
今回の場合、一方は空気のためn1=1と考えることが出来る。もう一方の塗膜(紫外線防御剤2)の屈折率は、一般的な油剤等の屈折率より、1.2〜2.0の範囲をとると考えられる。よって、偏光漏れによる鏡面反射光比率は、1%〜11%程度である。
この偏光漏れによる鏡面反射光成分を0.01%以下にするためには、第1の偏光板14及び第2の偏光板23として、測定する全波長で消光比が0.1%以下を満たすことが好ましく、0.09%以下を満たすことがより好ましく、0.06%以下を満たすことがさらに好ましい。例えば、第1の偏光板14及び第2の偏光板23をこのように構成することで、鏡面反射光を十分に抑制できる。
具体的には、ProFlux UVD260A(波長範囲260nm〜400nm、消光比0.003%(300nm)、MOXTEK社製)、UVD240A(波長範囲240nm〜400nm、消光比0.008%(300nm)、MOXTEK社製)等を挙げることができる。
図3に戻り、分析部30は、検出部20の検出結果に基づき、紫外線防御剤2の紫外線光の透過率T(λ)を推定(算出)する。
まず、分析部30を備える装置のハードウエア構成の一例について説明する。図6に示すように、分析部30を備える装置は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路には、様々なモジュールが含まれる。
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、他の装置と情報の送受信を行うためのインターフェイスなどを含む。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行う。
分析部30は、下記式(1)に基づき、透過率T(λ)を算出する。
ここで、R(λ)、S(λ)、Rs(λ)、β(λ)、γ(λ)の値を取得する処理例について説明する。
R(λ)は、下記式(8)に基づき算出される。
反射光の強さIR(λ)は、検出部20により検出された反射光の強さの値(UVカメラ21が出力する画素値)である。入射光の強さI(λ)は、所定の評価モデルで測定した実測値とすることができる。例えば、反射光の強さIR(λ)を検出する上記評価モデルにおいて、被験体を「標準白色板(反射率=1)」に置き代えたモデルで入射光の照射、UVカメラ21での検出を行うことで、入射光の強さI(λ)(UVカメラ21が出力する画素値)を測定してもよい。
S(λ)は、波長λの入射光が紫外線防御剤2の表面で散乱される割合であり、所定の評価モデルで測定した実測値とすることができる。例えば、反射光の強さIR(λ)を検出する上記評価モデルにおいて、被験体を「透明基板(PMMA板)の一方の主面(おもて面)に紫外線防御剤2を配置し、当該透明基板の他方の主面(うら面)に紫外線吸収体(反射率≒0)を設置した」評価モデルに置き代えたモデルで入射光の照射、UVカメラ21での検出を行うことで、紫外線防御剤2で散乱された反射光の強さ(UVカメラ21が出力する画素値)を測定してもよい。測定値を入射光の強さI(λ)で割ることで、S(λ)が算出される。
Rs(λ)は、入射光が生体3で反射する割合であり、所定の評価モデルで測定した実測値とすることができる。例えば、反射光の強さIR(λ)を検出する上記評価モデルにおいて、被験体を「生体3表面上に紫外線防御剤2を配置していない」評価モデルに置き代えたモデルで入射光の照射、UVカメラ21での検出を行うことで、生体3で反射された反射光の強さ(UVカメラ21が出力する画素値)を測定してもよい。測定値を入射光の強さI(λ)で割ることで、Rs(λ)が算出される。
入射光が紫外線防御剤2と生体の界面で反射する割合β(λ)、および、透過率の補正パラメータγ(λ)は、所定の評価モデルで測定した上記R(λ)、S(λ)、Rs(λ)および評価値から推定することができる。例えば生体の代替として透明基板を用いるものとし、当該透明基板の表面に紫外線防御剤2を塗布し、上記R(λ)、S(λ)、Rs(λ)を測定する。また紫外線分光器やUVカメラ等を用いて当該基板の透過率T(λ)を測定する。得られたR(λ)、S(λ)、Rs(λ)およびT(λ)を、式(1)、もしくは式(1)および式(2)に当てはめ、透過率T(λ)またはT(λ)から得られる評価値の推定精度が最大化されるようにβ(λ)およびγ(λ)を最適化することで、最適なβ(λ)およびγ(λ)を算出することができる。最適化手法としては、一般的な非線形最適化手法を用いることができる。一般的な非線形最適化手法としては、例えば、総当たり法、勾配法、Simulated Annealing、遺伝的アルゴリズムなどがある。
上記のように基板の透過率が実測可能であれば、実測したT(λ)を使用して最適化を行えるが、例えば皮膚のような透過計測が困難な基板の場合、別の評価モデルで取得した評価値を使用して最適化を行っても良い。例えば同じ紫外線防御剤2を透明基板に配置した時の透過率T(λ)やin vitro SPF、または当該紫外線防御剤を使用して測定したin vivo SPFなどが使用できる。
なお、上述したI(λ)、S(λ)、Rs(λ)、β(λ)、γ(λ)の値の取得方法は一例であり、その他の評価モデルでの測定により取得してもよい。また、これらの値は、文献値等を利用してもよい。このようにしても、一定の評価結果は得られる。しかし、評価の精度を高める観点から、予め上述した取得方法により取得しておく方が好ましい。
分析部30には、IR(λ)、I(λ)、S(λ)、Rs(λ)、β(λ)、γ(λ)の値が入力される。分析部30は、入力された値と、上記式(1)及び(8)とに基づき、紫外線防御剤2の紫外線光の透過率T(λ)を算出する。
検出部20が、マルチスペクトル画像(各波長の光の強さ)を撮影・出力する本実施形態の場合、分析部30は、波長ごとに透過率T(λ)を算出することで、紫外線防御剤2の透過率T(λ)のスペクトルを得ることができる。
なお、分析部30は、画素毎に、透過率T(λ)を算出してもよい。そして、分析部30は、複数の画素の透過率T(λ)の統計値(平均値、最頻値、中間値等)を算出してもよい。
また、分析部30は、算出した透過率T(λ)に基づき、紫外線防御剤2のSPFを推定してもよい。分析部30は、下記式(2)に基づき、SPFを算出することができる。
その他、分析部30は、算出した透過率T(λ)に基づき、吸光度(吸光度(A)=−log10(T(λ)))等を算出してもよい。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態の評価装置1では、検出される反射光を強くするため、入射光を強くすることが望まれる。このため、照明部10の近くに設置される部材において、高い耐熱性が要求される。本実施形態の評価装置1は、このような制限下で、(2)測定波長以外の波長光(波長漏れ光)、及び、(3)空気と紫外線防御剤2との界面で反射している鏡面反射光を十分に抑制する構成を備える。
波長漏れ光の抑制は、第1のフィルター12及び第2のフィルター22により実現される。
測定対象以外の波長をカットするフィルターの設置位置としては、照明側(照明部10)、カメラ側(検出部20)の両方に配置する。
本実施形態では、図1に示すように、紫外線光を吸収及び/又は散乱する機能を有する紫外線防御剤と、該紫外線防御剤を表面に配置した生体からなる被験体に紫外線光を照射する。このため、生体3に対する紫外線光の影響が懸念される。照明側に第1のフィルター12を設置し、測定対象以外の波長の紫外線光を軽減することで、生体3への影響を軽減できる。
また、生体3の皮膚には自家蛍光特性が存在することが知られている。このため、受光側でも分光しなければ蛍光と反射光が混在した状態でUVカメラ21に検出されることとなり、解析精度に影響する。カメラ側にもフィルターを設置し、測定に不要な波長の光をカットすることで、上記蛍光に起因した精度の劣化を抑制することができる。
なお、上述の通り、照明部10の第1のフィルター12は、高い耐熱性を要求される。このため、本実施形態では、第1のフィルター12として、金属膜及び/又は誘電体膜を含む多層膜(多層膜フィルター)を採用する。この多層膜フィルターは、広い波長帯域を高い阻止率で阻止することができない。そこで、それほど高い耐熱性を要求されない第2のフィルター22として、広い波長帯域を高い阻止率で阻止することができる色ガラスフィルターを含むバンドパスフィルターを採用し、第1のフィルター12による漏れ光をさらにカットする。
次に、鏡面反射光の抑制は、第1の偏光板14及び第2の偏光板23により実現される。
鏡面反射光は、偏光板を照明側と受光側の両方に設置し、2つの偏光板の偏光方向を交差させることで除去できる。しかしながら、実際の偏光板は偏光面に垂直な光の透過率が0%に到達せず、わずかながら偏光漏れの鏡面反射光が生じる。紫外線防御剤この鏡面反射光を消光比の高い第1の偏光板14及び第2の偏光板23を用いた交差偏光によって低減させ、偏光漏れ成分を0.01%以下に構成することで、鏡面反射光を十分に抑制できる。
このように、外乱要素を十分に抑制できる本実施形態によれば、紫外線防御剤2を透過し、生体3で反射し、その後、再び紫外線防御剤2を透過した紫外線光の強さ(量)の違いを精度よく検出することが可能となる。結果、紫外線防御剤2の透過率の違いを精度よく検出し、紫外線防御剤2の性能を精度よく評価することが可能となる。
また、本実施形態では、検出部20として、複数の固体撮像素子(CCD)を有するUVカメラ21を採用する。このため、生体3に配置した広い範囲の紫外線防御剤2を一度に評価することができる。また、この評価結果の統計値(平均値、最頻値、中間値等)を得ることで、信頼性の高い評価結果とすることができる。
なお、本実施形態によれば、以下の評価方法の説明がなされている。
紫外線光を吸収及び/又は散乱する機能を有する紫外線防御剤の評価方法において、
280nm以上400nm以下の中の少なくとも一部を含む波長の紫外線光を、生体と、上記生体の表面に位置する上記紫外線防御剤との被験体に照射する工程1;
上記工程1で照射された紫外線光の反射光を検出する工程2;
上記工程2の検出結果、及び、上記式(1)に基づき、上記紫外線防御剤の紫外線光の透過率を推定する工程3;
上記工程3で得た紫外線光の透過率から、上記式(2)に基づき、前記紫外線防御剤の評価値を得る工程4;
を有する評価方法。
なお、これらの評価方法は、本実施形態の評価装置1を用いて実行することができる。工程1及び工程2は、太陽光や他の照明の影響を受けない環境で行うのが望ましい。例えば、太陽光が侵入しない室内で、他の照明をオフにした環境等が考えられる。
<第2の実施形態>
本実施形態の評価装置1も、第1の実施形態と同様、図3に示すように照明部10と、検出部20とを有する。さらに、分析部30を有してもよい。
第1の実施形態の検出部20は、マルチスペクトル画像(各波長の光の強さ)を撮影・出力した。そして、第1の実施形態の分析部30は、波長ごとに透過率T(λ)を算出することで、紫外線防御剤2の透過率T(λ)のスペクトルを得ることができた。また、第1の実施形態の分析部30は、当該透過率T(λ)のスペクトル、及び、上記式(2)に基づき、SPFを算出することもできた。
これに対し、本実施形態の検出部20は、測定対象の狭波長の光の強さを検出・出力する。そして、本実施形態の分析部30は、紫外線防御剤2の狭波長の紫外線光の透過率T(λ)を算出する。なお、本実施形態の分析部30は、当該透過率T(λ)、及び、下記式(12)に基づき、SPFを算出することができる。狭波長とすることで、撮影時間を短時間とすることができ、被験者への負担を軽くすることができる。なお、狭波長の波長帯域は、紫外線吸収剤の評価に適した波長帯域であれば良い。
ここで、aはT(λ)の乗算係数である。
ここでの「狭波長」とは、15nm以下の狭い波長帯域であり、単一波長であってもよいし、10nm幅の波長帯域であってもよい。
このような本実施形態の照明部10は、紫外線LEDや紫外線レーザー等、単波長の紫外線光を照射できる照明ユニット11を有する。本実施形態の照明部10は、第1の実施形態同様、第1の偏光板14を有する。第1の偏光板14の構成は、第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態の照明部10は、第1のフィルター12を有さなくとも良い。
本実施形態の検出部20は、第1の実施形態と同様、UVカメラ21、第2のフィルター22及び第2の偏光板23を有する。第2のフィルター22及び第2の偏光板23の構成は、第1の実施形態と同様である。
第2のフィルター22により、生体3からの蛍光等の波長漏れ光をカットする。また、第1の偏光板14及び第2の偏光板23により、鏡面反射光をカットする。
なお、本実施形態においては、マルチスペクトル画像(各波長の光の強さ)の撮影は不要であり、狭波長の紫外線光の強さを検出できればよい。このような要求性能の違いにより、UVカメラ21の設計が、第1及び第2の実施形態で異なる。
分析部30は、第1の実施形態と同様にして、紫外線防御剤2の透過率T(λ)を算出する。なお、第1の実施形態では、分析部30は、紫外線防御剤2の紫外線光の透過率T(λ)のスペクトルを得たが、本実施形態の場合、紫外線防御剤2の所定の波長λ(狭波長)の紫外線光の透過率T(λ)を算出する。
なお、分析部30は、当該透過率T(λ)及び上記式(12)に基づき、SPFを算出できる。
以上説明した本実施形態によれば、狭波長の紫外線光を照射できる光源を利用し、かつ、第2のフィルター22を採用することで、波長漏れ光を十分に抑制できる。また、本実施形態によれば、第1の偏光板14及び第2の偏光板23により、鏡面反射光を十分に抑制できる。
このように、外乱要素を十分に抑制できる本実施形態によれば、紫外線防御剤2を透過し、生体3で反射し、その後、再び紫外線防御剤2を透過した紫外線光の強さ(量)の違いを精度よく検出することが可能となる。結果、紫外線防御剤2の透過率の違いを精度よく検出し、紫外線防御剤2の性能を精度よく評価することが可能となる。
なお、本実施形態によれば、以下の評価方法の説明がなされている。
紫外線光を吸収及び/又は散乱する機能を有する紫外線防御剤の評価方法において、
280nm以上400nm以下の中の少なくとも一部を含む波長の紫外線光を、生体と、上記生体の表面に位置する上記紫外線防御剤との被験体に照射する工程1;
上記工程1で照射された紫外線光の反射光を検出する工程2;
上記工程2の検出結果、及び、上記式(1)に基づき、上記紫外線防御剤の紫外線光の透過率を推定する工程3;
を有する評価方法。
また、上記評価方法において、上記工程1では、単波長の紫外線光を照射し、
上記工程3により得られる上記紫外線防御剤の紫外線光の透過率、及び、上記式(12)に基づき、上記紫外線防御剤のSPFを算出する工程4;
をさらに有する評価方法。
なお、これらの評価方法は、本実施形態の評価装置1を用いて実行することができる。工程1及び工程2は、太陽光や他の照明の影響を受けない環境で行うのが望ましい。例えば、太陽光が侵入しない室内で、他の照明をオフにした環境等が考えられる。
<実施例1 サンスクリーンのin vitro SPF評価および耐久性評価>
本実施形態では、生体もしくは生体試料にサンスクリーンを塗布して測定することで、サンスクリーンのSPFを評価することができる。また、塗布直後と水浴などの外的刺激後のSPF評価結果を比較することで、塗布されたサンスクリーンの耐久性を評価することができる。本実施例について詳細を述べる。
上記を検証するために、市販のSPF訴求を行っている製剤を用いた評価試験を行い、本評価方法で得られるSPFと実測したin vivo SPFの相関性を評価した。
レジャー活動での使用を推奨している中〜高SPFのサンスクリーン4品について、塗布直後のSPFおよびレジャー活動後のSPFを評価した。剤型はO/W型乳化製剤、W/O型乳化製剤の二種類である。選択された製剤は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含有されたものを用いた。
実施例1では、キセノン光源(MAX−303、UVランプ使用、朝日分光社製300Wキセノン光源)2台を分岐石英ファイバーで連結したものを照明ユニットとして用いた。第1のフィルター12としては、多層膜フィルター13aとして、ハイパワーUV光用狭帯域干渉フィルター(LX0350、中心波長350nm、半値幅10nm、透過帯域透過率65%以上(半値幅での平均透過率)、阻止域200〜720nm(透過帯域を除く)、阻止域透過率0.1%以下、朝日分光社製)、及びUV抽出ユニット13bとして前記キセノン光源用のUVミラーユニット(透過波長帯:250〜385nm、阻止域200〜1200(透過帯域を除く)、阻止域透過率0.1%以下)を用いた。
第2のフィルター22には、多層膜フィルター13aと透過帯域の中心波長が同じで、多層膜フィルター13aよりも透過帯域幅が狭く阻止域の阻止精度に優れる、紫外線用の色ガラスフィルター(MX0350、中心波長350nm、半値幅10nm、透過帯域透過率45%以上(半値幅での平均透過率)、阻止域200〜1200nm(透過帯域を除く)、朝日分光社製)を採用した。また第1の偏光板14および第2の偏光板23として、消光比に優れる無機偏光板(ProFlux UVD260A、MOXTEK社製)を採用し、鏡面反射光を除去した。またUVカメラ21として、ペルチェ冷却機構を有する超高感度のUVカメラ(BU54−DUV;Bitran社製)を採用した。
被験者10名について、まず暗室にてサンスクリーンを塗布していない背部のUV分光画像(中心波長350nm、半値幅10nm)を撮影した。続いて背部に4か所の塗布領域を設定し、被験試料4品を各2mg/cm2塗布した。塗布する位置は被験者ごとにランダムに設定した。サンスクリーン塗布後、15分の乾燥時間をおき、塗布直後条件のUV分光画像を撮影した。撮影後は水浴、陸上運動などのレジャー活動から被験者自身が任意の活動を選択し、レジャー活動を行った。途中の休憩を除いて4時間活動した後、レジャー活動後の背部のUV分光画像を撮影した。
まず塗布直後の分光画像について、実際に測定したin vivo SPFとの相関を検証した。サンスクリーン塗布前のUV分光画像をRs(λ)、塗布後のUV分光画像をR(λ)とおき、それぞれ被験者10名の平均値を算出した。S(λ)は第1の偏光板14および第2の偏光板23による消光比が非常に高いため、ほぼゼロとみなすことができることから、S(λ)=0とした。また、製剤と生体表面の屈折率が1.2〜1.7程度に収まっており、屈折率差によって生じる塗膜と生体の界面での反射β(λ)は微弱であることから、β(λ)=0とした。また、塗膜内の散乱や皮膚への浸透は考慮しないものとし、γ(λ)=2とおいた。これらのパラメータを式(1)及び式(2)に当てはめて、塗膜のin vivo SPFを算出した。ここで式(2)の乗算係数および定数項は、既知のin vivo SPFを従属変数とする線形回帰分析で算出した。
得られたin vivo SPF推定精度を図8に示す。決定係数0.98という本実施例の推定精度は、十分に高精度であるといえる。
上記の推定式を使用し、レジャー活動後のUV分光画像からレジャー活動後のSPFの推定を行った。R(λ)を10名のレジャー活動後のUV分光画像から得られる反射率の平均値とした。それ以外のパラメータは上に示したものと同じである。
レジャー活動後の推定SPFを図9に示す。図より、製剤P乃至SいずれもSPFが低下しているが、低下後もSPF15〜20程度の水準を維持されていることが分かる。
実使用環境での紫外線防御効果は、塗布直後のSPFと活動後のSPFのいずれも重要である。本実施形態を用いることで、生体表面上に配置される紫外線防御剤の性能を精度良く、簡易に評価でき、実使用環境化で高い紫外線防御効果を有するサンスクリーンの開発が期待できる。