JP6924470B2 - 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法 - Google Patents

光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6924470B2
JP6924470B2 JP2016243236A JP2016243236A JP6924470B2 JP 6924470 B2 JP6924470 B2 JP 6924470B2 JP 2016243236 A JP2016243236 A JP 2016243236A JP 2016243236 A JP2016243236 A JP 2016243236A JP 6924470 B2 JP6924470 B2 JP 6924470B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
photon
polarization state
photons
polarization
measurement
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016243236A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018096903A (ja
Inventor
竹内 繁樹
繁樹 竹内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyoto University
Original Assignee
Kyoto University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyoto University filed Critical Kyoto University
Priority to JP2016243236A priority Critical patent/JP6924470B2/ja
Publication of JP2018096903A publication Critical patent/JP2018096903A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6924470B2 publication Critical patent/JP6924470B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Testing Of Optical Devices Or Fibers (AREA)

Description

本開示は、光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法に関する。
光子の偏光状態推定は、近年では量子暗号通信等の量子情報処理に限らず、分子生物学で用いられる単一分子分光などの様々な分野において重要な技術となっている。量子力学によれば、光子の偏光状態の測定結果は確率的にしか予測することができない。そのため、光子の偏光状態推定においては、一般に、偏光状態が同じ複数の光子が準備され、複数回の測定が行なわれる。
一例として、ある光子源から発せられる光子が直線偏光を有することは分かっているものの、その偏光方向は未知である場合を想定する。このような場合には、偏光ビームスプリッタを用いた以下のようなシンプルな手法により、光子の偏光方向を推定可能であることが知られている。すなわち、複数の光子が偏光ビームスプリッタに順次入力されると、一部の光子は透過し、残りの光子は反射する。偏光ビームスプリッタを透過した光子数Nを測定するとともに、偏光ビームスプリッタにより反射された光子数Nを測定し、たとえば全光子数に対する透過光子数の比(N/(N+N))を算出することにより、上記光子源の光子の偏光方向を推定することができる。
しかしながら、量子力学によれば、各光子は偏光ビームスプリッタを確率的に透過または反射するため、すべての光子の偏光状態が同じであったとしても、光子数の比(N/(N+N))の測定結果は本質的に揺らぐ。このように、特に、測定に用いられる光子数が比較的少数(たとえば数個〜100万個程度)の場合に、最も高精度に偏光状態を推定することは、重要であるが難しい問題である。
Ryo Okamoto, Minako Iefuji, Satoshi Oyama, Koichi Yamagata, Hiroshi Imai, Akio Fujiwara, and Shigeki Takeuchi, Experimental Demonstration of Adaptive Quantum State Estimation, Phys. Rev. Lett. 109, 130404 (2012) H. Nagaoka, Proc. Int. Symp. on Inform. Theory (1988), p. 109 H. Nagaoka, Proc, 12th Symp. on Inform. Theory and its Appl. (1989), pp. 577-582 H. Nagaoka, Asymptotic Theory of Quantum Statistical Inference (World Scientific, Singapore, 2005) A. Fujiwara, Journal of Physics A: Mathematical and General 390, 12489 (2006) A. Fujiwara, Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical 44, 079501 (2011) K. Yamagata, International J. Quant. Info. Vol. 9, (2011) 1167
様々な技術分野への応用の観点からは、できるだけ短い期間内に、できるだけ高い精度で光子の偏光状態を推定することが求められる。その一方で、光子の偏光状態推定においては、偏光状態の推定値の分散が偏光状態の真値(つまり、推定しようとする値)に依存することが明らかになっている(詳細については、たとえば非特許文献1参照)。このことは、推定値の分散が最小となるような推定を実現するためには、真値を予め知っていなければならないことを意味する。したがって、そのままでは未知の偏光状態を高精度に推定することはできない。このように、光子の偏光状態の推定には、量子力学に起因するジレンマが存在する。
そこで、非特許文献2〜4には、量子状態の測定毎に測定系を適応的に変化させる「適応量子状態推定(AQSE:Adaptive Quantum State Estimation)」と称される手法(数学的理論)が提案されている。また、無限回の測定を行なった場合にAQSEを用いることで理論的に最高精度の推定が可能であること(より詳細には、AQSEが強一致性および漸近有効性を有すること)が非特許文献5,6により数学的に証明されている。
このような経緯の下、非特許文献1は、AQSEの世界初の物理系での実証実験を開示する。詳細は後述するが、非特許文献1に開示された測定系においては、偏光ビームスプリッタの前段に半波長板が設けられる。そして、単一光子源から発せられた光子1個1個の偏光状態が測定される度に、それまでの全測定結果を反映させた尤度関数が算出され、算出された尤度関数から求められた角度となるように、半波長板の角度が調整される(半波長板を回転させる)。このように、光子の偏光状態を測定する度に、その測定結果に応じて測定系を変化させることによって、偏光状態の推定値の分散を最小化することができる。その結果、理論限界となる推定精度を実現することが可能になる。
ここで、光子源から発せられる光子の偏光状態が時間的に変化する(動的に変化する)系を推定対象とすることも考えられる。そのような測定としては、上述の単一分子分光を用いた細胞内の蛍光タンパク質の測定(および、それによるダイナミクス解析)などが挙げられる。しかしながら、非特許文献1に開示された手法(AQSE)では、光子の偏光状態が時間的に一定の系を推定対象とすることしか想定されていない。このため、もし、非特許文献1に開示の手法を偏光状態が動的に変化する系に適用した場合、後に示すように、偏光状態の推定結果が偏光状態の変化に追従することができず、正しい推定がなされ得ない。この点において、非特許文献1に開示の手法には改善の余地がある。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、光子の偏光状態推定システムおよびそれに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法において、光子の偏光状態が動的に変化する系を推定対象とする場合であっても、光子の偏光状態を高精度に推定可能な技術を提供することである。
本開示のある局面に従う光子の偏光状態推定システムは、光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するためのシステムであって、測定基底部と、検出装置と、制御装置とを備える。測定基底部は、光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータを調整可能に構成され、上記パラメータに応じて光子源からの光子を2つの偏光成分に分離する。検出装置は、測定基底部により分離された光子を上記2つの偏光成分毎に検出する。制御装置は、第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、光子源から発せられる光子の偏光状態を推定する。
第1の処理は、光子源から発せられる光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる最尤推定値と、検出装置により検出された偏光成分から定まる偏光状態の測定結果と、所定数前以降の第1の処理での測定結果とから、尤度関数を更新する処理である。
第2の処理は、第1の処理により更新された尤度関数に基づいて、偏光状態の最尤推定値を算出する処理である。
第3の処理は、第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を光子源から発せられる光子が有する場合に当該光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、上記パラメータを調整する処理である。
好ましくは、第3の処理における光子の偏光状態が最も高精度に推定される値は、光子の偏光状態の推定値の分散がクラメル・ラオ(Cramer-Rao)不等式の下限を達成する値である。
好ましくは、制御装置は、検出装置により光子が検出される度に、第1〜第3の処理を実行する。
好ましくは、制御装置は、検出装置により光子が検出される度に第1の処理を実行する一方で、第2および第3の処理については、2以上の規定数の光子が検出装置により検出されると実行する。
本開示の他の局面に従う光子の偏光状態推定方法は、光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するための方法であって、以下の3つのステップA〜Cを含む。(1)ステップAは、光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータに応じて、光子源からの光子を2つの偏光成分に分離するステップである。(2)ステップBは、分離するステップ(ステップA)により分離された光子を上記2つの偏光成分毎に検出するステップである。(3)ステップCは、第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するステップである。
(3−1)第1の処理を実行するステップは、光子源から発せられる光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる最尤推定値と、検出するステップ(ステップB)において検出された偏光成分から定まる偏光状態の測定結果と、所定数前以降の第1の処理を実行するステップでの測定結果とから、尤度関数を更新するステップである。
(3−2)第2の処理を実行するステップは、第1の処理を実行するステップにより更新された尤度関数に基づいて、光子の偏光状態の最尤推定値を算出するステップである。
(3−3)第3の処理を実行するステップは、第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を光子源から発せられる光子が有する場合に当該光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、上記パラメータを調整するステップである。
好ましくは、光子源から発せられる光子の偏光状態は、時間的に変化する。
好ましくは、上記所定数は、光子源から発せられる光子の偏光状態の時間変化率に応じて定められる。
本開示のさらに他の局面に従う制御プログラムは、光子の偏光状態推定システムに以下の3つのステップA〜Cを実行させる。(1)ステップAは、光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータに応じて、光子源からの光子を2つの偏光成分に分離するステップである。(2)ステップBは、分離するステップ(ステップA)により分離された光子を上記2つの偏光成分毎に検出するステップである。(3)ステップCは、第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するステップである。
(3−1)第1の処理を実行するステップは、光子源から発せられる光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる最尤推定値と、検出するステップ(ステップB)において検出された偏光成分から定まる偏光状態の測定結果と、所定数前以降の第1の処理を実行するステップでの測定結果とから、尤度関数を更新するステップである。
(3−2)第2の処理を実行するステップは、第1の処理を実行するステップにより更新された尤度関数に基づいて、光子の偏光状態の最尤推定値を算出するステップである。
(3−3)第3の処理を実行するステップは、第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を光子源から発せられる光子が有するときに当該光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、上記パラメータを調整するステップである。
本開示によれば、光子の偏光状態推定システムおよびそれに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法において、光子の偏光状態が動的に変化する系を推定対象とする場合であっても、光子の偏光状態を高精度に推定することができる。
実施の形態1に係る偏光状態推定システムの構成を概略的に示す図である。 測定基底部の構成をより詳細に説明するための図である。 比較例(AQSE)における対数尤度関数の一例を示す図である。 実施の形態1における連続適応量子状態推定法(SAQSE)を示すフローチャートである。 図4に示したS130,S135,S140の処理の実装例を説明するための概念図である。 図4に示したS130,S135,S140の処理の他の実装例を説明するための概念図である。 SAQSEによるシミュレーション結果の一例を示す図である。 図7に示したシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。 SAQSEによるシミュレーション結果とAQSEによるシミュレーション結果とを比較するための図である。 図9に示したSAQSEによるシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。 実施の形態2におけるSAQSEを示すフローチャートである。 実施の形態2におけるSAQSEによるシミュレーション結果の一例を示す図である。 図12に示したシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。 変形例におけるSAQSEを示すフローチャートである。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
本実施の形態に係る光子の偏光状態推定システムにおける推定対象の例としては、直線偏光の偏光方向(偏光角度)、右回り円偏光と左回り円偏光との位相差などが挙げられる。また、部分的または完全に偏光が解消した脱偏光状態なども考えられる。以下の実施の形態では、直線偏光の偏光方向を推定する構成を例に説明するが、本開示の構成は、光子の任意の偏光状態の推定に適用可能である。
[実施の形態1]
<システム構成>
図1は、実施の形態1に係る偏光状態推定システムの構成を概略的に示す図である。本実施の形態では、シグナル光子を準備することが可能に構成された準備系10が設けられる。しかし、準備系10は、光子の偏光状態の推定精度の検証(後述)に用いられるものであり、偏光状態推定システム1に必須の構成ではない。偏光状態推定システム1は、準備系10により準備されたシグナル光子の偏光状態を推定するための測定系20を含む。
準備系10は、単一光子源11と、偏光子12と、半波長板13とを含む。単一光子源11は、レーザ光源111と、非線形光学結晶112と、干渉フィルタ113と、検出器114と、干渉フィルタ115と、光ファイバ116とを含む。測定系20は、測定基底部21と、第1の検出器221および第2の検出器222と、論理積回路231,232と、先着判定回路24と、制御装置25とを含む。
レーザ光源111は、連続波のレーザ光を発する。レーザ光源111としては、たとえば波長402nmの半導体レーザを用いることができる。非線形光学結晶112としては、たとえば、長さが3mmであり、かつ結晶方位がタイプIであるバリウムボーレート(BBO)結晶を用いることができる。レーザ光源111および非線形光学結晶112は、自発パラメトリック下方変換過程により、シグナル光子およびトリガ光子の光子対を生成する。本実施の形態において、シグナル光子の波長は780nmであり、トリガ光子の波長は830nmである。
干渉フィルタ113,115は、各々に特定の波長範囲内の光子を選択的に通過させる。より具体的には、干渉フィルタ113は、非線形光学結晶112と検出器114との間に設けられる。干渉フィルタ113は、830nmの中心波長を有し、トリガ光子を通過させる一方で、シグナル光子を遮蔽する。
検出器114は、単一光子検出器であって、干渉フィルタ113を通過したトリガ光子を検出可能に構成される。検出器114は、トリガ光子を検出すると、所定のパルス幅(たとえば30ns幅)のトリガ信号Tを測定系20の論理積回路231,232に出力する。
干渉フィルタ115は、非線形光学結晶112と光ファイバ116の一方端との間に設けられる。干渉フィルタ115は、780nmの中心波長を有し、シグナル光子を通過させる一方で、トリガ光子を遮蔽する。
光ファイバ116は、干渉フィルタ115を通過したシグナル光子を一方端から受け、そのシグナル光子を他方端から偏光子12に向けて出力する。光ファイバ116は、たとえば偏波保持ファイバ(PMF:Polarization Maintaining Fiber)であるため、光ファイバ116の伝播前後でシグナル光子の偏光状態は保持される。
偏光子12は、光ファイバ116からシグナル光子を受けると、特定の方向(本実施の形態では水平方向)の直線偏光を有するシグナル光子のみを通過させる。偏光子12の消光比は、たとえば10−5である。偏光子12を通過した光子は半波長板13に達する。
半波長板13は、その光学軸が水平方向に対して角度θとなるように設けられる。これにより、半波長板13を通過したシグナル光子の偏光方向は2θだけ回転する。以上のように、準備系10においては、偏光方向が2θのシグナル光子が準備され、測定系20の測定基底部21に順次出力される。
なお、シグナル光子の入力状態(|Ψ>で示す)は、右回り偏光と左回り偏光との位相差φを用いて下記式(1)のように表される。式(1)では、右回り円偏光の状態を|R>で示し、左回り円偏光の状態を|L>で示し、水平偏光の状態を|H>で示し、垂直偏光の状態を|V>で示している。
Figure 0006924470
シグナル光子の入力状態が位相差φにより表されるところ、位相差φと半波長板13の角度θとの間には、φ=4θの関係が成り立つ。そのため、角度θを推定することは、単一光子源11からのシグナル光子の偏光状態を推定することに相当する。本実施の形態では、角度θは測定者により設定される。しかし、以下では角度θが未知であるとして、測定系20により角度θを推定し、その推定値と、測定者による設定値(真値θとも記載する)とを比較する。そして、その比較結果から、偏光状態推定システム1による角度θの推定精度を定量的に検証する。
図2は、測定基底部21の構成をより詳細に説明するための図である。測定基底部21は、半波長板211と、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)212とを含む。図2では、半波長板13を順次通過したシグナル光子(以下「光子」と略す場合がある)のうち、n(nは自然数)回目、(n+1)回目および(n+2)回目の測定に用いられる光子をそれぞれP,Pn+1,Pn+2で示している。また、図2では、図面が煩雑になるのを防ぐため、論理積回路231,232および先着判定回路24(図1参照)の図示を省略している。
半波長板13により偏光方向を2θだけ回転させられた光子は、半波長板211に達する。半波長板211には、図示しないアクチュエータが設けられている。このアクチュエータは、制御装置25からの制御信号CTRに応答して、水平方向に対する半波長板211の光学軸の角度を調整することが可能に構成されている。半波長板211の角度の調整手法については後に詳細に説明する。
偏光ビームスプリッタ212は、水平偏光成分を透過する一方で、垂直偏光成分は反射する。偏光ビームスプリッタ212を透過した光子は、第1の検出器221により検出される。一方、偏光ビームスプリッタ212により反射した光子は、第2の検出器222により検出される。なお、水平偏光成分および垂直偏光成分は、本開示に係る「2つの偏光成分」に相当する。
準備系10から測定系20に入射した光子の偏光状態(偏光方向)は、半波長板211および偏光ビームスプリッタ212を用いて測定される。半波長板211を通過することにより、光子P,Pn+1,Pn+2の偏光方向は、半波長板211の角度に応じて回転する。本実施の形態では、半波長板211の角度が本開示に係る「パラメータ」に相当し、半波長板211の角度を調整することが、光子P,Pn+1,Pn+2の偏光状態を測定するための測定基底を変化させることに相当する。
ただし、半波長板211は測定基底部21に必須の構成ではなく、測定基底部21は、光子の偏光状態を測定するための測定基底を変化させることが可能であれば(本実施の形態では、光子P,Pn+1,Pn+2の偏光方向を回転可能であれば)、半波長板211を含まなくてもよい。たとえば、測定基底部21は、偏光ビームスプリッタ212を回転できるように構成されてもよい。また、測定基底部21は、半波長板211に代えて、液晶リターダまたは電気光学素子などの他の偏光デバイスを含んで構成されてもよい。さらに、それら偏光デバイスと偏光ビームスプリッタ212とを一体化させた構成を採用することも可能である。
図1を再び参照して、第1の検出器221は、シグナル光子を検出すると、シグナル信号S1を論理積回路231に出力する。論理積回路(AND回路)231は、準備系10の検出器114からのトリガ信号Tと、第1の検出器221からのシグナル信号S1との両方を受けた場合に、検出信号D1を先着判定回路24に出力する。同様に、第2の検出器222は、シグナル光子を検出すると、シグナル信号S2を論理積回路232に出力する。論理積回路232は、検出器114からのトリガ信号Tと、第2の検出器222からのシグナル信号S2との両方を受けた場合に、検出信号D2を先着判定回路24に出力する。なお、第1の検出器221および第2の検出器222は、本開示に係る「検出装置」に相当する。
先着判定回路24は、検出信号D1,D2のうちのどちらを先に受けたかを判定し、その判定結果を示す信号を制御装置25に出力する。先着判定回路24は、最小で2.5nsの間隔のパルス信号を区別することができる。
制御装置25は、たとえばマイクロコンピュータであって、CPU(Central Processing Unit)251と、メモリ252と、入出力バッファ(図示せず)とを含んで構成される。制御装置25は、先着判定回路24からの信号およびメモリ252に記憶されたプログラムに基づいて測定基底部21を制御する。詳細については後述するが、制御装置25は、先着判定回路24からの信号を受けると、後述する手法に従って半波長板13の角度θを推定する。さらに、制御装置25は、半波長板211の角度が、半波長板13の角度θの推定値に対応する角度となるように、制御信号CTRを出力することによって半波長板211のアクチュエータ(図示せず)を制御する。
なお、本実施の形態では、検出器114からトリガ信号Tが出力される単一光子源11(いわゆる伝令付き単一光子源)が光子源として用いられる構成を例に示す。しかし、蛍光タンパク質、半導体量子ドットまたは結晶欠陥などの一般の光子源には、トリガ信号Tは存在しない。このような場合、測定系20には、論理積回路231,232および先着判定回路24を設けなくてよい。図示しないが、第1の検出器221からのシグナル信号S1と、第2の検出器222からのシグナル信号S2とは、制御装置25に向けて直接出力される。制御装置25は、シグナル信号S1,S2のいずれを受けたのかを判定する。
以下では、n個目の光子Pの偏光状態の測定(以下「n回目の測定」とも略す)において、光子Pが第1の検出器221および第2の検出器222のうちのどちらの検出器により検出されたかをxで表す。光子Pが第1の検出器221により検出された場合にはx=1であり、光子Pが第2の検出器222により検出された場合にはx=2である。
<比較例(AQSE)>
本実施の形態に係る偏光状態推定システム1の理解を容易にするために、まず、比較例としての適応量子状態推定(AQSE)について簡単に説明する。AQSEのシステム構成は、図1に示した構成と基本的に同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
測定基底部21を用いた測定は、正作用素値測度(POVM:Positive Operator Valued Measure)M(θ)により記述される。たとえば非特許文献1に記載されているように、光子の偏光状態を最も高精度に推定可能な正作用素値測度M(θ)は、以下のように与えられる。すなわち、数理統計学によれば、光子の偏光状態の推定値(半波長板13の角度θの推定値)の分散に関し、下記式(2)に示すクラメル・ラオ(Cramer-Rao)不等式が成立するところ、光子の偏光状態を最も高精度に推定可能な正作用素値測度M(θ)とは、式(2)において等号が成り立つときの測定に対応する。クラメル・ラオ不等式の等号が成り立つことを「クラメル・ラオ不等式の下限(クラメル・ラオ限界)を達成する」とも言う。なお、式(2)では、角度θの推定値の分散をVθで示し、量子フィッシャー情報量をJθで示している(非特許文献1の式(2)の下の段落を参照)。
Figure 0006924470
半波長板13の角度θの真値が分かっている場合(あるいは真値が分かっていると仮定した場合)には、角度θの推定値の分散がクラメル・ラオ不等式の下限を達成する最適な測定を実現可能である。本実施の形態において、最適な測定を実現するための正作用素値測度M(θ)は、恒等作用素Iを用いて下記式(3)で与えられる(非特許文献1の式(5)参照)。式(3)において、<ξ|は、下記式(4)の状態を表す。
Figure 0006924470
図1に示したシステム構成との関係において具体的に説明すると、式(3)および式(4)に示す正作用素値測度M(θ)を光子の入力状態|Ψ>に作用させた場合、第1の検出器221による光子の検出(x=1)と、第2の検出器222による光子の検出(x=2)とが等しい確率で生じる。つまり、偏光ビームスプリッタ212により、光子が水平偏光成分と垂直偏光成分とに等しい確率(1/2)で分離される。図1に示した構成では、この状態が最も高精度に半波長板13の角度θを推定可能な状態である。そのため、半波長板211の角度は、式(3)および式(4)により定義される角度に調整される。このことが、半波長板13の角度θの推定値(光子の偏光状態の推定値)の分散がクラメル・ラオ不等式の下限を達成する値に近付くように、半波長板211の角度を調整することに相当する。
なお、本実施の形態では、正作用素値測度Mのパラメータが角度θの1つのみである例について説明するが、複数のパラメータが用いられる場合の正作用素値測度Mは、非特許文献7の式(11)により与えられる。
このように、もし、半波長板13の角度θの真値が分かっているのであれば、最適な正作用素値測度M(θ)を実現することが可能である。しかしながら、実際には、角度θの真値は、推定対象のパラメータであって未知である。よって、最適な正作用素値測度M(θ)が真値に依存するというジレンマが存在し、このままでは未知の角度θを推定することはできない。そのため、AQSEにおいては、光子の偏光状態を測定する度に、以下に説明するように、半波長板211の角度を適応的に変化させることによって、未知の角度θに対する最適な測定を実現する。
n回目の測定時における半波長板211の角度は、(n−1)回目の測定結果に応じた正作用素値測度M(θn−1)が実現される角度に設定されている。その状態で光子Pの検出が行なわれ、光子Pが第1の検出器221または第2の検出器222により検出されると、1個目からn個目までの光子P〜Pの測定結果に応じて、その時点で最も確からしい半波長板13の角度θの推定値である「最尤推定値(MLE:Maximum Likelihood Estimate)」θが算出される。そして、(n+1)回目の測定に用いられる半波長板211の角度は、最尤推定値θに応じた正作用素値測度M(θ)が実現される角度に設定される。
より詳細には、(n+1)回目の測定に用いられる半波長板211の角度の算出には、下記式(5)に示す対数尤度関数l(θ)が用いられる。
Figure 0006924470
式(5)から分かるように、半波長板211の角度を決定するための対数尤度関数l(θ)は、n回目の測定に用いられた対数尤度関数ln-1(θ)に対数項(右辺第2項)を加算することにより算出される。この対数項により、n回目の測定時における測定結果、すなわち、半波長板13の角度θの最尤推定値θn−1と、半波長板211の角度が最適な正作用素値測度M(θn−1)が実現される角度に設定された状態で光子Pがどちらの検出器により検出されたかを示すxとが、対数尤度関数l(θ)に反映される。
図3は、比較例(AQSE)における対数尤度関数の一例を示す図である。図3において、横軸は半波長板13の角度θを示し、縦軸は尤度を示す。図3(A)は、n回目の測定に用いられた対数尤度関数ln-1(θ)の一例を示す。図3(B)は、対数項fの一例を示す。図3(C)は、(n+1)回目の測定に用いられる対数尤度関数l(θ)を示す。
上記式(5)に示したように、対数尤度関数ln−1(θ)(図3(A)参照)に対数項f(図3(B)参照)を加算することにより、対数尤度関数l(θ)(図3(C)参照)が更新される。このようにして更新された対数尤度関数l(θ)を用いて、下記式(6)に従って半波長板13の角度θの最尤推定値θが算出される。なお、数式中および図中ではθにハット(^)を付すが、明細書本文中ではハットを付さずに表記する。
Figure 0006924470
最尤推定値θの算出後、半波長板211の角度は、最尤推定値θに応じた正作用素値測度M(θ)が実現される角度となるように調整される。言い換えると、最尤推定値θに対応する偏光状態を有する光子が準備系10から発せられ、その光子を測定基底部21が受けた場合(受けたと仮定した場合)に、当該光子の偏光状態の推定にあたって測定基底部21が最適化されるように、半波長板211の角度が調整される。このことは、式(6)の処理により算出された最尤推定値θに対応する偏光状態を光子が有する場合に当該光子の偏光状態が最も高精度に推定可能な値に近付くように、半波長板211の角度が調整されることに相当する。図1に示した構成においては、半波長板211の角度は、上記光子が第1の検出器221により検出される確率と、第2の検出器222により検出される確率とが等しくなるような角度に調整される。その後は、(n+1)個目の光子Pn+1が第1の検出器221および第2の検出器222のうちの一方により検出され、以降、同様の処理が繰り返し実行される。
このように、AQSEにおいては、光子の偏光状態が測定される度に、過去の測定結果に基づいて対数尤度関数が更新される。そして、更新後の対数尤度関数から半波長板13の角度θの最尤推定値が算出される。さらに、算出された最尤推定値に応じた正作用素値測度M(θ)が実現される角度に、半波長板211の角度が調整される。
AQSEでは、漸化式である式(5)から分かるように、(n+1)回目の測定に用いられる対数尤度関数l(θ)は、初期状態での対数尤度関数l(θ)からn回目の測定に用いられた対数尤度関数ln−1(θ)までを順次加算し、さらに、n回目の測定結果により定まる対数項fを加算することにより算出される。よって、対数尤度関数l(θ)には、1個目の光子Pの偏光状態の測定結果から、n個目の光子Pの偏光状態の測定結果までの全測定結果が反映される。
ここで、図1に示した構成では、光子源(準備系10)により発生する光子の偏光状態が時間的に変化しない場合が想定されている。一方で、偏光状態が時間的に変化する系(動的に変化する系)を推定対象とすることも考えられる。たとえば、生体中の蛍光タンパク質等から順次放出される光子では、偏光状態が動的に変化する場合がある。しかしながら、AQSEでは、光子の偏光状態が時間的に一定であることを前提としているので、偏光状態が動的に変化し得る系を推定対象とする場合には、後に図8にて示すように偏光状態の推定結果が偏光状態の変化に追従せず、正しい推定を行なうことができない。
そこで、本実施の形態においては、(n+1)回目の測定時の半波長板211の角度(すなわち測定基底)を決定するための対数尤度関数l 、過去の全測定結果に代えて、直近のS回の測定結果のみから算出される。より具体的には、下記式(7)に示すように、(n+1)回目の測定時の対数尤度関数lは、(n−S+1)回目の測定結果により定まる対数項fn−S+1から、n回目の測定結果により定まる対数項fまでを加算することで算出される。なお、対数項fの算出には、後述する式(8)または式(9)が用いられる。
Figure 0006924470
測定結果の使用数を示すSは、光子数nよりも小さな自然数であり、たとえば推定対象に応じて測定者により適宜設定される。なお、使用数Sは、本開示に係る「所定数」に相当する。以下では、使用数Sを設定した上で光子の偏光状態(より一般的には量子状態)を推定する手法を「連続適応量子状態推定法(SAQSE:Sequential Adaptive Quantum State Estimation)」とも称する。
<処理フロー>
図4は、実施の形態1におけるSAQSEを示すフローチャートである。図4ならびに後述する図11および図14に示すフローチャートの処理は、たとえば、所定条件が成立した場合(たとえば測定者が測定を開始するための操作を行なった場合)に、図示しないメインルーチンから呼び出されて実行される。これらのフローチャートに含まれる各ステップ(以下「S」と略す)は、基本的には制御装置25によるソフトウェア処理によって実現されるが、その一部または全部が制御装置25内に作製されたハードウェア(電子回路)によって実現されてもよい。
なお、図4に示すフローチャートの処理開始時には、対数尤度関数は初期化されているものとする。本実施の形態では、初期状態での対数尤度関数l(θ)は0に設定される。また、図4では、測定結果の使用数Sが予め設定されている場合について説明する。この設定手法は特に限定されるものではなく、たとえば測定者が図示しないキーボードを操作して所望の値を設定することができる。
S110において、制御装置25は、n回目の測定を実施する。より具体的には、制御装置25は、第1の検出器221または第2の検出器222により光子Pが検出されたことを示す先着判定回路24からの信号を受けるまで待機する。ここで、(n−1)回目の演算周期のS150の処理(後述)にて半波長板13の角度の最尤推定値θn−1が算出されているので、n回目の測定時の半波長板211の角度は、最尤推定値θn−1に応じた正作用素値測度M(θn−1)が実現される角度(光子Pの偏光状態を最も高精度に推定可能な角度)に設定されている。なお、1個目の光子P測定時における半波長板211の角度は、測定者により適宜設定される。
S120において、制御装置25は、先着判定回路24からの信号に基づいて、第1の検出器221および第2の検出器222のうちのどちらの検出器により光子Pが検出されたかを判定する。第1の検出器221により光子Pが検出された場合(S120においてD1)、制御装置25は、処理をS130に進め、下記式(8)に従って対数項fを算出する。一方、第2の検出器222により光子Pが検出された場合(S120においてD2)には、制御装置25は、処理をS135に進め、下記式(9)に従って対数項fを算出する。
Figure 0006924470
S140において、制御装置25は、(n+1)回目の測定に用いられる半波長板211の角度を決定するための対数尤度関数l(θ)を上記式(7)に従って算出する。
このように、n回目の測定時のS130,S135の処理は、第1の検出器221または第2の検出器222により光子Pが検出されたときの半波長板13の角度の最尤推定値θn−1と、光子Pの偏光成分の検出結果xとから定まる測定結果を用いて、対数項fを算出する処理である。また、n回目の測定時のS140の処理は、S130またはS135の処理により算出された対数項fと、S回前((n−S+1)回目)の測定から前回((n−1)回目)の測定までに算出された対数項fn−S+1,・・・,fn−1とから対数尤度関数lを更新する処理である。したがって、S130,S135,S140の処理は、本開示に係る「第1の処理」に相当する。
S130,S135,S140の処理に代えて、演算周期毎に、直近のS回の測定結果(xn−S+1,・・・,xおよび半波長板13の角度θの最尤推定値θn−S,・・・,θn−1)を漸化式である式(7)に代入し、式(7)を直接解くことで対数尤度関数l(θ)を算出することも原理的には可能である。しかし、それには多大な演算時間を要し、実用的ではない。よって、本実施の形態では、以下のような実装上の工夫により演算時間を短縮する。
図5は、図4に示したS130,S135,S140の処理の実装例を説明するための概念図である。制御装置25のメモリ252には、対数項の算出結果を格納するためのメモリ領域(たとえば配列変数に割り当てられたメモリ領域)が準備される。
図5(A)は、n回目の測定時のメモリ領域を示す。推定対象のパラメータである半波長板13の角度θが、推定の要求精度に応じて仮想的に分割される。たとえば、0°以上90°以下である角度θが10,000個の範囲に分割される。各測定での対数項の算出結果を格納するために、メモリ252には、角度θの分割数である10,000個のメモリ領域が準備される(横方向参照)。さらに、メモリ252には、測定者により設定された測定結果の使用数Sに対応して、S回分の対数項の算出結果を格納可能なメモリ領域が準備される(縦方向参照)。
n回目の測定終了後のメモリ領域には、角度θの範囲毎に、直近の(S−1)回の測定での対数項の算出結果(fn−S+1,・・・,fn−1で示す)と、n回目の測定のS130またはS135の処理にて算出された対数項(fで示す)とが格納されている。そして、角度θの範囲毎に、対数項fn−S+1,・・・,fn−1と対数項fとを加算することによって、対数尤度関数l(θ)が更新される(S140)。
図5(B)は、(n+1)回目の測定時のメモリ領域を示す。(n+1)回目の測定終了後には、S130またはS135の処理により対数項(fn+1で示す)が新たに算出され、メモリ領域に格納される。一方で、直近の(S−1)回よりも前の測定での対数項(fn−s+1で示す)は、メモリ領域から削除(除去、消去)される。このように、実施の形態1においては、直近のS回の測定によりメモリ領域に格納された測定結果のみを用いて対数尤度関数が算出される。
図6は、図4に示したS130,S135,S140の処理の他の実装例を説明するための概念図である。この実装例においても、図5にて説明した実装例と同様に、半波長板13の角度θが、たとえば10,000個の範囲に分割される。その一方で、この実装例では、S回の測定を実施した場合の対数項の全算出結果を格納するためのメモリ領域(図5参照)に代えて、偏光状態の測定結果を格納するためのメモリ領域が準備される。
図6(A)に示すように、n回目の測定終了後(n回目のS110〜S140の処理後)のメモリ252には、n回目のS140の処理にて算出された対数尤度関数lが角度θの範囲毎に格納されているとともに、偏光状態の測定結果(x,・・・,xおよびθ,・・・,θn−1で示す)が格納されている。
(n+1)回目の測定が行なわれると、図6(B)に示すように、(n+1)回目の測定結果(xn+1およびθで示す)がメモリ領域にさらに格納される。制御装置25は、(n+1)回目の測定結果を用いることで、式(8)または式(9)に従って対数項fn+1を角度θの範囲毎に算出する。さらに、制御装置25は、S回前の測定結果、すなわち(n−S+1)回目の測定結果(図示しないがxn−S+1およびθn−S)をメモリ領域から読み出し、式(8)または式(9)に従って対数項fn−S+1を角度θの範囲毎に算出する。そして、制御装置25は、角度θの範囲毎に、対数項fn+1を対数尤度関数lに加算する一方で、対数項fn−S+1については対数尤度関数lから減算する。このようにすることで、(n+1)回目の測定終了後の対数尤度関数ln+1を算出することができる。
図6に示した実装手法によれば、図5に示した実装手法と比べて、メモリ領域を節約することができる。一方、図5に示した実装手法では、減算される対数項がメモリ領域に格納されており、当該対数項の演算が不要になるので、演算負荷を低減することができる。なお、図6では、過去の全測定結果がメモリ領域に格納されていく例を説明したが、実際に必要なのはS回前から今回までの情報のみであるため、S回前よりもさらに古い測定結果については順次削除してもよい。
図4に戻り、S150において、制御装置25は、S130,S135,S140の処理により更新された対数尤度関数lに基づいて、半波長板13の角度の最尤推定値θを算出する(上記式(6)参照)。より詳細には、10,000個に分割された角度範囲毎に尤度を算出し、尤度の最大値を与える角度を最尤推定値θとして算出する(図3参照)。この処理は、本開示に係る「第2の処理」に相当する。
S160において、制御装置25は、半波長板211に設けられたアクチュエータ(図示せず)を制御することによって、S150の処理により算出された最尤推定値θに応じた正作用素値測度M(θ)が実現される値に、半波長板211の角度を調整する。この処理は、本開示に係る「第3の処理」に相当する。
S170において、制御装置25は、その時点での最尤推定値θを出力する。たとえば、制御装置25は、図示しないモニタに最尤推定値θを表示したり、最尤推定値θのデータログを取ったりする。これにより、偏光状態推定システム1の精度検証時(図7〜図10参照)などに、最尤推定値θと真値θとを比較し、最尤推定値θが真値θに近い値となっているかどうかを検証することが可能になる。
S180において、制御装置25は、測定回数nを1だけインクリメントし(n→n+1)、インクリメント後の測定回数(n+1)が所定の終了回数Nに達したか否かを判定する(S190)。終了回数Nとしては、測定者により予め設定された値を用いることができる。
測定回数(n+1)が終了回数Nに達していない場合(S190においてNO)、制御装置25は、処理をメインルーチンに戻す。これにより、図4に示した一連の処理が繰り返し実行される。そして、測定回数が終了回数Nに達すると(S190においてYES)、制御装置25は処理を終了する。
<シミュレーション結果>
図7は、SAQSEによるシミュレーション結果の一例を示す図である。図7ならびに後述する図9および図12において、横軸は、測定された光子数(測定回数)nを示す。縦軸は、半波長板13の角度θ(真値θまたは最尤推定値)を示す。
図7には、半波長板13の角度θ(真値θ)が30°に固定された状態で、図4に示した一連の処理を500回繰り返した場合(1,000個の光子の偏光状態のSAQSEによる測定を500回実施した場合)に、測定結果の使用数Sに応じて角度θの最尤推定値がどのように変化したかが示されている。このシミュレーションでは、使用数SをS=100,200,300,500,1000の5通りに設定した。
図8は、図7に示したシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。図8ならびに後述する図10および図13において、横軸は、測定された光子数(測定回数)nを示す。縦軸は、半波長板13の角度θの算出結果の標準偏差を示す。図8より、測定回数nが増加するに従って標準偏差が減少することが分かる。また、使用数Sが大きいほど標準偏差が小さいことが分かる。
図9は、SAQSEによるシミュレーション結果とAQSEによるシミュレーション結果とを比較するための図である。図10は、図9に示したSAQSEによるシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。
図9および図10には、真値θが動的に変化した場合が示されている。より具体的には、図1には示していないが、半波長板13にもアクチュエータを設けることにより、光子数nが300だけ増加する間に真値θが正弦関数に従って最大で0.54°増加するように、真値θの変化率を設定した。
図9に示すように、AQSEでは、半波長板13の角度θの最尤推定値が真値θに追従できておらず、光子数nが増加するに従って最尤推定値と真値θとの乖離が大きくなる。このように、光子の偏光状態(ここでは真値θ)が動的に変化する系を推定対象とする場合、AQSEでは、正しく推定を行なうことができない。これに対し、SAQSEによれば、光子の偏光状態が動的に変化する場合であっても、角度θの最尤推定値が真値θに追従するように変化していることが分かる。さらに、図10より、標準偏差が十分に小さく、高精度の推定が実現されていることが確認される。
以上のように、本実施の形態(SAQSE)によれば、光子の偏光状態の測定毎に、測定系を適応的に変化させるための対数尤度関数が算出される。この対数尤度関数からは直近のS回よりも過去の偏光状態に関する測定結果は削除されており、直近のS回の測定結果のみを含むものとなっている。これにより、光子の偏光状態が動的に変化する光子源を推定対象とする場合であっても、変化前の偏光状態に関する測定結果が対数尤度関数から遂次削除されるので、変化後の偏光状態に関する測定結果の割合が相対的に高くなる。その結果、動的に変化する光子の偏光状態を、理論的に最適な精度で推定することが可能になる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、光子が測定される度に、その測定結果に応じて対数尤度関数を更新し(第1の処理)、更新された対数尤度関数に基づいて半波長板13の角度θの最尤推定値を算出し(第2の処理)、算出された最尤推定値に応じた正作用素値測度M(θ)が実現されるように半波長板211を回転させる(第3の処理)構成について説明した。実施の形態1に係る偏光状態推定システム1の構成では、光子の検出がナノ秒オーダーで可能であるのに対し、測定基底の変化(半波長板211の回転)(第3の処理)にはミリ秒オーダーの相対的に長い時間を要する。しかし、ミリ秒オーダーよりも短い時間間隔で光子が発せられる系も存在し、そのような系を推定対象とする場合、実施の形態1にて説明した構成では、多くの光子が測定に用いられないことになる。
そこで、実施の形態2においては、光子が測定される度に対数尤度関数の更新(第1の処理)を行なう一方で、半波長板13の角度θの最尤推定値の算出(第2の処理)および半波長板211の回転(第3の処理)については、光子の測定毎には行なわない構成について説明する。実施の形態2では、角度θの最尤推定値の算出(第2の処理)および半波長板211の回転(第3の処理)は、X個の光子の測定結果に基づいて更新された対数尤度関数を用いて行なわれる。なお、実施の形態2に係る偏光状態推定システムの構成は、実施の形態1に係る偏光状態推定システム(図1参照)と基本的に同等であるため、説明は繰り返さない。
図11は、実施の形態2におけるSAQSEを示すフローチャートである。このフローチャートは、S245の処理をさらに含む点において、実施の形態1におけるフローチャート(図4参照)と異なる。他のS210〜S240,S250〜S290の処理は、実施の形態1におけるフローチャートの対応するS110〜S190の処理とそれぞれ同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
S240にて対数尤度関数l(θ)を更新すると、制御装置25は、処理をS245に進め、光子の測定回数nが規定回数Xの倍数であるか否かを判定する。規定回数Xは、後述する例では、X=5,10,20,50に設定される。ただし、規定回数Xは、2以上の自然数であれば特に限定されず、単位時間当たりに光子源から発せられる光子数および測定基底の調整に要する時間(半波長板211の回転に要する時間)などに応じて、測定者により適宜定められる。なお、規定回数Xは、本開示に係る「規定数」に相当する。
測定回数nが規定回数Xの倍数である場合(S245においてYES)、制御装置25は、S250,S260,S270の処理を実行する。その後、処理がS280に進められ、測定回数nが1だけインクリメントされる。
これに対し、測定回数nが規定回数Xの倍数でない場合(S245においてNO)には、制御装置25は、S250,S260,S270の処理をスキップして処理をS280に進める。これにより、S250,S260,S270の処理を実行することなく、測定回数nが1だけインクリメントされることになる(S280)。
このように、実施の形態2においては、対数尤度関数の算出(S240)が光子の測定毎に行なわれるのに対し、半波長板13の角度θの最尤推定値の算出(S250)および半波長板211の角度の調整(S260)は、規定回数であるX回毎にしか行なわれない。言い換えると、測定回数nが規定回数Xの倍数でない場合、対数尤度関数は継続的に更新されるものの(S240)、半波長板211の角度(測定基底)は固定される(S260)。なお、図11では規定回数Xに固定値が用いられる例を示すが、規定回数Xを可変に設定し、処理の途中に規定回数Xを変更してもよい。
また、実施の形態2では規定回数Xに基づく処理を説明するが、所定時間τが経過する度にS250,S260,S270の処理を実行するようにしてもよい。この場合、S245においては、前回の最尤推定値の出力時(S270)からの経過時間が図示しないタイマーを用いて測定され、所定時間τが経過したか否かが判定される。そして、所定時間τが経過するまではS250,S260,S270の処理がスキップされる一方で、所定時間τが経過すると、S250,S260,S270の処理が実行されるとともに、タイマーのカウント値がリセットされる。
図12は、実施の形態2におけるSAQSEによるシミュレーション結果の一例を示す図である。図13は、図12に示したシミュレーション結果における標準偏差を示す図である。
図12および図13では、実施の形態1と同様に、図11に示した一連の処理を500回繰り返した場合に、測定結果の使用数Sに応じて角度θの最尤推定値および標準偏差がどのように変化したかが、それぞれ示されている。このシミュレーションでは、測定結果の使用数SをS=500に設定するとともに、光子数nが500増加する間に真値θが線形に0.07°増加するように、真値θの変化率を設定した。また、規定回数XをX=5,10,20,50の4通りに設定した。
図12より、光子の測定回数nが規定回数Xの倍数に達するまでは半波長板211の角度が固定される構成であっても、光子の測定毎に半波長板211の角度が調整される構成と同様に、半波長板13の角度θの最尤推定値が真値θに追従することが分かる。また、図8(特にS=500が付されたカーブを参照)と図13とを対比すると、標準偏差が同程度に小さく、高精度の推定が実現されていることが分かる。
以上のように、実施の形態2によれば、測定回数nが規定回数Xの倍数でない場合には、半波長板211の角度の調整が抑制される。このような測定手法を採用した場合にも、半波長板13の角度θの最尤推定値が真値θに追従することから、光子の偏光状態を高精度に推定可能であることが分かる。さらに、半波長板211の角度の調整頻度が低くなる(単位時間当たりの調整回数が少なくなる)ことで、半波長板211の角度調整に要する時間が短くなるので、測定時間を短縮することができる。言い換えると、所定時間内に、より多くの光子の偏光状態を測定することが可能になる。
[変形例]
実施の形態1,2では、測定開始前に測定者が設定した値に測定結果の使用数Sが固定される例について説明したが、使用数Sは適宜変更されてもよい。
図14は、変形例におけるSAQSEを示すフローチャートである。このフローチャートは、S302〜S306の処理をS110またはS210の処理の前に含む点において、実施の形態1,2におけるフローチャート(図4および図11参照)と異なる。
S302において、制御装置25は、光子の測定回数nが所定回数(たとえば100の倍数)に達したか否かを判定する。測定回数nが所定回数に達していない場合(S302においてNO)、制御装置25は、以下のS304,S306の処理をスキップして処理をS110またはS210に進める。
測定回数nが所定回数に達すると(S302においてYES)、制御装置25は、光子の偏光状態の時間変化率(たとえば直近の100回の測定での最尤推定値の時間変化率)を算出する(S304)。この時間変化率は、たとえば図9のタイムチャートにおいて、SAQSEによる推定結果を示す曲線の微分により求めることができる。
S306において、制御装置25は、S2にて算出した時間変化率に応じて測定結果の使用数Sを設定する。より具体的には、制御装置25は、たとえば時間変化率と使用数Sとの対応を示す所定の関係式またはマップ(図示せず)を参照することにより、時間変化率が大きくなるに従って使用数Sが小さくなるように使用数Sを定める。あるいは、制御装置25は、適切な使用数Sの候補をモニタ(図示せず)に表示させ、使用数Sを測定者に選択させてもよい。なお、図14に示すフローチャートの他の処理(S110またはS210以降の処理)は、実施の形態1,2におけるフローチャートの対応する処理と同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
以上のように、変形例によれば、偏光状態の時間変化率に応じて測定結果の使用数Sが設定される。使用数Sが小さいほど、過去の測定結果が削除されやすくなる。そのため、対数尤度関数l(および、それに基づいて算出される最尤推定値θ)が偏光状態の速い変化に追従しやすくなり、偏光状態の時間変化率が大きい推定対象の推定に適するようになる。逆に、偏光状態があまり変化しない推定対象の場合には、使用数Sを大きく設定することにより、より高精度の推定が可能となる。
なお、実施の形態1,2および変形例では、単一光子源11から発せられた光子の偏光状態を推定する構成を例に説明したが、本開示に係る「光子源」は、光子を発するものであれば特に限定されない。「光子源」は、たとえば、細胞内の蛍光タンパク質等の分子であってもよいし、発光する天体であってもよい。また、準備系10は、光子を準備するための構成に過ぎず、光子の偏光状態の推定に必須の構成要素ではない。たとえば、測定系20が単一光子分光に適用される場合には、準備系10に代えて、蛍光タンパク質からの光子を測定系20へと導くための構成が別途準備される。
また、測定基底部21が半波長板211および偏光ビームスプリッタ212を含む構成を例に説明した。しかし、推定対象の光子の偏光状態によっては、測定基底部21は、たとえば半波長板と、偏光ビームスプリッタと、それらの間に設けられた1/4波長板との組合せ(図示せず)を含んで構成されてもよい。
また、本実施の形態では、光子の偏光状態を推定する構成を例に説明したが、本明細書に開示の推定手法は、他の粒子(たとえば電子、陽子、中性子)の量子状態の推定全般に適用可能である。たとえば、この推定手法を用いることで、中性子のスピンの向きを最高精度で推定することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本開示によれば、光子の偏光状態を理論的に最高の精度で推定可能であるため、量子計測、量子情報処理または光量子回路(たとえば量子暗号通信、量子コンピュータ等)に応用することができる。さらに、本開示によれば、光子の偏光状態が動的に変化する系を推定対象とすることが可能であるため、たとえば、細胞内分子(蛍光タンパク質等)から発せられた光子の偏光状態を測定することで、細胞内分子のダイナミクスを解明するための情報を得ることができる。また、たとえば、自力発光天体から発せられる光子の偏光状態を測定することで、新たな天体観測の手法が実現される。
1 偏光状態推定システム、10 準備系、11 単一光子源、12 偏光子、13,211 半波長板、20 測定系、21 測定基底部、24 先着判定回路、25 制御装置、111 レーザ光源、112 非線形光学結晶、113,114 干渉フィルタ、115 検出器、116 光ファイバ、212 偏光ビームスプリッタ、221 第1の検出器、222 第2の検出器。

Claims (11)

  1. 光子源から発せられる光子の偏光状態を推定する、光子の偏光状態推定システムであって、
    前記光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータを調整可能に構成され、前記パラメータに応じて前記光子源からの光子を2つの偏光成分に分離する測定基底部と、
    前記測定基底部により分離された光子を前記2つの偏光成分毎に検出する検出装置と、
    第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、前記光子源から発せられる光子の偏
    光状態を推定する制御装置とを備え、
    nを自然数とし、所定数Sをnよりも小さな自然数として、
    前記第1の処理は、
    入力されたn個目の光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる前記n個目の光子の偏光状態の最尤推定値、および、前記検出装置により検出された前記n個目の光子の偏光成分から定まる、前記n個目の光子の偏光状態の測定結果と、
    前記第1の処理による(n−S+1)個目以降の光子の偏光状態の測定結果とに基づいて、(n+1)個目の光子の偏光状態の測定に用いられる尤度関数を更新する処理であり、
    前記第2の処理は、前記第1の処理により更新された尤度関数に基づいて、前記(n+1)個目の光子の偏光状態の最尤推定値を算出する処理であり、
    前記第3の処理は、前記第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を前記(n+1)個目の光子が有する場合に前記(n+1)個目の光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、前記パラメータを調整する処理である、光子の偏光状態推定システム。
  2. 前記尤度関数は、対数尤度関数であり、
    前記第1の処理は、前記(n−S+1)個目以降の光子の測定結果により定まる対数項から、前記n個目の光子までの測定結果により定まる対数項までを加算することで、前記(n+1)個目の光子の偏光状態の測定に用いられる対数尤度関数を更新する処理を含む、請求項に記載の光子の偏光状態推定システム。
  3. 前記第3の処理において前記(n+1)個目の光子の偏光状態が最も高精度に推定される値は、前記(n+1)個目の光子の偏光状態の推定値の分散がクラメル・ラオ(Cramer-Rao)不等式の下限を達成する値である、請求項1または2に記載の光子の偏光状態推定システム。
  4. 前記制御装置は、前記検出装置により光子が検出される度に、前記第1〜第3の処理を実行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光子の偏光状態推定システム。
  5. 前記制御装置は、前記検出装置により光子が検出される度に前記第1の処理を実行する一方で、前記第2および第3の処理については、2以上の規定数の光子が前記検出装置により検出されると実行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光子の偏光状態推定システム。
  6. 前記制御装置は、前記検出装置により光子が検出される度に前記第1の処理を実行する一方で、前記第2および第3の処理については、所定時間が経過した場合に実行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光子の偏光状態推定システム。
  7. 光子源から発せられる光子の偏光状態を推定する、光子の偏光状態推定方法であって、
    前記光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータに応じて、前記光子源からの光子を2つの偏光成分に分離するステップと、
    前記分離するステップにより分離された光子を前記2つの偏光成分毎に検出するステップと、
    第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、前記光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するステップとを含み、
    nを自然数とし、所定数Sをnよりも小さな自然数として、
    前記第1の処理を実行するステップは、
    入力されたn個目の光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる前記n個目の光子の偏光状態の最尤推定値、および、前記検出するステップにおいて検出された前記n個目の光子の偏光成分から定まる、前記n個目の光子の偏光状態の測定結果と、
    前記第1の処理による(n−S+1)個目以降の光子の偏光状態の測定結果とに基づいて、(n+1)個目の光子の偏光状態の測定に用いられる尤度関数を更新するステップであり、
    前記第2の処理を実行するステップは、前記第1の処理を実行するステップにより更新された前記尤度関数に基づいて、前記偏光状態の最尤推定値を算出するステップであり、
    前記第3の処理を実行するステップは、前記第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を前記光子源から発せられる光子が有する場合に当該光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、前記パラメータを調整するステップである、光子の偏光状態推定方法。
  8. 前記光子源から発せられる光子の偏光状態は、時間的に変化する、請求項に記載の光子の偏光状態推定方法。
  9. 前記所定数は、前記光子源から発せられる光子の偏光状態の時間変化率に応じて定められる、請求項7または8に記載の光子の偏光状態推定方法。
  10. 前記所定数は、前記時間変化率が大きくなるに従って小さくなるように定められる、請求項に記載の光子の偏光状態推定方法。
  11. 光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するための偏光状態推定システムの制御プログラムであって、
    前記制御プログラムは、前記偏光状態推定システムに、
    前記光子源から発せられた光子の偏光状態を測定するための測定基底を規定するパラメータに応じて、前記光子源からの光子を2つの偏光成分に分離するステップと、
    前記分離するステップにより分離された光子を前記2つの偏光成分毎に検出するステップと、
    第1〜第3の処理を繰り返し実行することにより、前記光子源から発せられる光子の偏光状態を推定するステップとを実行させ、
    nを自然数とし、所定数Sをnよりも小さな自然数として、
    前記第1の処理を実行するステップは、
    入力されたn個目の光子の偏光状態の尤度を表す尤度関数から求まる前記n個目の光子の偏光状態の最尤推定値、および、前記検出するステップにおいて検出された前記n個目の光子の偏光成分から定まる、前記n個目の光子の偏光状態の測定結果と、
    前記第1の処理による(n−S+1)個目以降の光子の偏光状態の測定結果とに基づいて、(n+1)個目の光子の偏光状態の測定に用いられる尤度関数を更新するステップであり、
    前記第2の処理を実行するステップは、前記第1の処理を実行するステップにより更新された前記尤度関数に基づいて、前記偏光状態の最尤推定値を算出するステップであり、
    前記第3の処理を実行するステップは、前記第2の処理により算出された最尤推定値に対応する偏光状態を前記光子源から発せられる光子が有する場合に当該光子の偏光状態が最も高精度に推定される値に近付くように、前記パラメータを調整するステップである、制御プログラム。
JP2016243236A 2016-12-15 2016-12-15 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法 Active JP6924470B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016243236A JP6924470B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016243236A JP6924470B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018096903A JP2018096903A (ja) 2018-06-21
JP6924470B2 true JP6924470B2 (ja) 2021-08-25

Family

ID=62633451

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016243236A Active JP6924470B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6924470B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020047661A1 (en) 2018-09-04 2020-03-12 Lumerical Inc. System and method for simulating and analyzing quantum circuits
CN109932679B (zh) * 2019-02-28 2020-11-06 南京航空航天大学 一种传感器列系统最大似然角度分辨率估计方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5828168B2 (ja) * 2012-03-27 2015-12-02 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法
US9036992B2 (en) * 2012-10-09 2015-05-19 Nec Laboratories America, Inc. LDPC-coded modulation for ultra-high-speed optical transport in the presence of phase noise
US20140126328A1 (en) * 2012-11-06 2014-05-08 Schlumberger Technology Corporation Methods and Systems for Improving Microseismic Event Detection and Location
JP6256879B2 (ja) * 2014-06-06 2018-01-10 国立大学法人 筑波大学 偏光感受型光画像計測システム及び該システムに搭載されたプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018096903A (ja) 2018-06-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Islam et al. Reproducibility of benchmarked deep reinforcement learning tasks for continuous control
Bernhard et al. Quantifying properties of hot and dense QCD matter through systematic model-to-data comparison
Bartsch et al. Dynamical typicality of quantum expectation values
US10560096B2 (en) Method for decreasing entropy in a quantum system
JP2022536063A (ja) ロバストな振幅推定のための工学的尤度関数を用いたベイズ推論のためのハイブリッド量子古典コンピュータ
Mey et al. xTRAM: Estimating equilibrium expectations from time-correlated simulation data at multiple thermodynamic states
Blatman et al. Sparse polynomial chaos expansions of vector-valued response quantities
Hotta et al. Grand canonical finite-size numerical approaches: A route to measuring bulk properties in an applied field
Peeters et al. Engineering of two-photon spatial quantum correlations behind a double slit
JP6924470B2 (ja) 光子の偏光状態推定システム、および、それに用いられる制御プログラム、ならびに光子の偏光状態推定方法
AU2019454998B2 (en) Bayesian quantum circuit fidelity estimation
Williams et al. Quantum state estimation when qubits are lost: a no-data-left-behind approach
Dong et al. Random circuit block-encoded matrix and a proposal of quantum LINPACK benchmark
US20240185114A1 (en) TECHNIQUES FOR CONTROLLING SMALL ANGLE MøLMER-SøRENSEN GATES AND FOR HANDLING ASYMMETRIC SPAM ERRORS
CN111062482A (zh) 一种量子态重构方法、装置、系统和存储介质
CN113537501A (zh) 电磁串扰的标定和缓释方法、装置及电子设备
Kaufman et al. The hong–ou–mandel effect with atoms
Somhorst et al. Quantum photo-thermodynamics on a programmable photonic quantum processor
La Cour et al. Emergence of the Born rule in quantum optics
Berry et al. Adaptive phase measurements for narrowband squeezed beams
WO2020257124A1 (en) Amplifying, generating, or certifying randomness
CN108507606A (zh) 用于参量估值的自适应弱测量方法及系统
Samanta et al. Response formalism within full configuration interaction quantum Monte Carlo: Static properties and electrical response
US20190246484A1 (en) Plasma simulation with non-linear optics
Kachman et al. Numerical implementation of the multiscale and averaging methods for quasi periodic systems

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190926

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200720

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200901

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201019

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210423

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210706

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210726

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6924470

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250