JP6920685B2 - 新規なメタロ超分子ポリマー含有組成物、並びにマイクロ波を用いたメタロ超分子ポリマー含有組成物の高効率製造法 - Google Patents

新規なメタロ超分子ポリマー含有組成物、並びにマイクロ波を用いたメタロ超分子ポリマー含有組成物の高効率製造法 Download PDF

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Description

本発明は、新規なメタロ超分子ポリマー(いわゆるオリゴマーを含む)含有組成物、および、マイクロ波を用いてメタロ超分子ポリマー含有組成物を高効率に製造する方法に関する。
さらに、本発明は、メタロ超分子ポリマー含有組成物を含むエレクトロクロミック素子に関する。
メタロ超分子ポリマー(metallo−supramolecular polymer)は、金属イオンと有機配位子とが配位結合で交互に繋がった高分子である。メタロ超分子ポリマーは、金属の電気化学的酸化還元に応答して、優れたエレクトロクロミック特性(電気化学的に色が変わる特性)を示す。このようなエレクトロクロミック特性を有するため、メタロ超分子ポリマーは、スマートウインドーなど様々な省エネルギーデバイスへの応用が期待されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、優れたエレクトロクロミック特性を有する材料として、良好な酸化還元安定性、高いコントラスト比、高い着色効率、スイッチングの調節機能、高い加工性を併せ持つメタロ超分子ポリマーの開発が望まれている。
しかし、これまでの合成方法を用いたメタロ超分子ポリマーの合成には限界があった。150℃以上、特に200℃以上の高い錯形成温度を必要とするメタロ超分子ポリマーの合成は、高い反応温度および長い反応時間に起因して、原料である配位子の構造や生成物の錯構造が破壊されることが多く、また反応系内の水や酸素が結合するなどの不都合があった。従って、そのような不都合を生じない新たなメタロ超分子ポリマーの合成方法の開発が求められている。
一方、マイクロ波によるポリマー合成は、反応時間の大幅短縮や溶剤などの廃棄物の低減の観点から、次世代の材料合成法として期待されている(例えば非特許文献1参照)。例えば、ポリ乳酸やポリエステルの製造へのマイクロ波適用技術が開発されている。しかし、一般に高い構造規則性を有する物質を得ることが困難であると一般的に認識されているメタロ超分子ポリマーの合成のために、この手法を用いることは報告されていない。
特許第5062712号
マイクロ波を利用した高分子合成プロセスの実用化(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20091104/pr20091104.html(2009年11月4日掲載)
本発明の目的の一つは、従来技術にないメタロ超分子ポリマー(いわゆるオリゴマーを含む)含有組成物の新規な製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、従来技術にない新規なメタロ超分子ポリマー含有組成物それ自体を提供することである。
本発明による上記課題の解決手段は、以下のとおりである。
[1].
構造規則性が高められたメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法であって、
複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとを、マイクロ波照射による内部加熱で反応させて、両者が交互に配位結合したメタロ超分子ポリマーを形成することを含む、上記方法。
[2].
少なくとも1種の有機配位子が、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基、アセチルアセトナート基、およびそれらの誘導体のいずれかを2つ以上有する有機配位子を含む、上記[1]項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
[3].
遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウム、およびテルビウムから選択される金属を含む、上記[1]または[2]項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
[4].
マイクロ波照射による内部加熱反応に供される、少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとのモル比が、1:1〜2:1である、上記[1]〜[3]項のいずれかの1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
[5].
少なくとも1種の有機配位子が、以下の少なくとも1つの式で表される構造を有する有機配位子を含む、上記[1]〜[4]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法:
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ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R、R、R、Rは、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基である。
[6].
マイクロ波照射による内部加熱反応が、150℃以上の温度で行われる、上記[1]〜[5]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
[7].
メタロ超分子ポリマー含有組成物が、下記構造式で表されるオリゴマーのいずれかを含む、上記[1]〜[6]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
Figure 0006920685

[8].
複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
この組成物についての、溶媒CDOD、所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルAが、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CDOD、同じ所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する、吸収シグナルAに対応する吸収シグナルA’と比べてブロードニングが小さいという状態によって示される高められた構造規則性を有する、上記メタロ超分子ポリマー含有組成物。
[9].
複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)および/または着色効率η(cm/C)が、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT’(%)および/または着色効率η’(cm/C)と比べて大きいという状態によって示される高められた構造規則性を有する、上記メタロ超分子ポリマー含有組成物。
[10].
複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり、および/または、着色効率η(cm/C)が320cm/C以上である、上記メタロ超分子ポリマー含有組成物。
[11].
上記組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり、および/または着色効率η(cm/C)が320cm/C以上である、上記[9]項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
[12].
少なくとも1種の有機配位子が、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基、アセチルアセトナート基、およびそれらの誘導体のいずれかを2つ以上有する有機配位子を含む、上記[8]〜[11]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
[13].
遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウムおよびテルビウムから選択される金属を含む、上記[8]〜[12]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
[14].
少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとのモル比が、1:1〜2:1である、上記[8]〜[13]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
[15].
以下の少なくとも1つの式で表される構造およびカウンターアニオンを有するメタロ超分子ポリマーを含む、上記[8]〜[14]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物:
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ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R、R、R、Rは、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基であり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数であり、カウンターアニオンは、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CFSONイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせである。
[16].
下記構造式で表されるオリゴマーのいずれかを含む、上記[8]〜[15]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
Figure 0006920685

[17].
第1の透明電極と、第2の透明電極と、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に位置する上記[8]〜[16]項のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物とを含む、エレクトロクロミック素子。
本発明の製造方法によれば、適当な条件下、マイクロ波照射を用いることで、原料の配位子が有する化学構造の欠損が小さい、すなわち構造の規則性が高いメタロ超分子ポリマー(いわゆるオリゴマーを含む)含有組成物を、短時間で効率的に(エネルギーの浪費を抑制しながら)得ることが可能になる。
また、そのような構造規則性が高いメタロ超分子ポリマー含有組成物は、向上したエレクトロクロミック特性を有し、エレクトロクロミック素子の原料として好適に用いることができる。
合成例1(ポリマー合成)における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を示す。 (a)合成例2(10量体オリゴマー合成)における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を示す。(b)合成例3(5量体オリゴマー合成)における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を示す。(c)合成例4(単量体オリゴマー合成)における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を示す。 合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を示す。 (a)合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=310nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。(b)合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=515nmの条件で、フォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。 合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を示す。 (a)合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=310nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。(b)合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られた10量体オリゴマー、5量体オリゴマー、単量体オリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=510nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。 合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を示す。 合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、走査速度10℃/分、窒素下の条件においてTGA(熱重量分析)を行った結果を示す。 (a)比較合成例で得られたポリマーについて、電圧0.0Vおよび+1.8Vを印加したときのITO電極の発色変化を目視観察した際の外観写真を示す。(b)キャストされたままの状態、ならびに0.0Vおよび+1.8V印加したときのぞれぞれの同ポリマーの光透過度(%)を縦軸に、波長(nm)を横軸として示す。(c)挿引間隔を10秒、5秒または2秒に変化させて繰り返し電圧を印加したときの同ポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。 (a)電圧印加間隔を10秒にしたときの0〜100秒に至るまでの比較合成例で得られたポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。(b)電圧印加間隔を10秒にしたときの20〜40秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。 (a)合成例1で得られたポリマーについて、電圧0.0Vおよび+1.8Vを印加したときのITO電極の発色変化を目視観察した際の外観写真を示す。(b)キャストされたままの状態、ならびに0.0V時および+1.8V印加したときのぞれぞれの同ポリマーの光透過度(%)を縦軸に、波長(nm)を横軸として示す。(c)挿引間隔を10秒、5秒または2秒に変化させて繰り返し電圧を印加したときの同ポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。 (a)電圧印加間隔を10秒にしたときの0〜100秒に至るまでの合成例1で得られたポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。(b)電圧印加間隔を10秒にしたときの20〜40秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。(c)合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーの各サンプルについての電流(A)に対する透過度損失(%)を示す。 合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を示す。 合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を示す。 (a)合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=310nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。(b)合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=515nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。 (a)合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=310nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。(b)合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=510nmの条件でフォトルミネセンススペクトルを測定した結果を示す。 合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、走査速度10℃/分、窒素下の条件においてTGA(熱重量分析)を行った結果を示す。 合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマーについて、走査速度0.02/step、CuKαの条件下でX線回折を行った結果を示す。 合成例4にて得られた単量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号を示す。 合成例4にて得られた単量体オリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMR(COSY−NMR)を測定した結果を示す。 合成例3にて得られた5量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのオリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を示す。 合成例2にて得られた10量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのオリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を示す。 合成例2にて得られた10量体オリゴマーについてのCOSY−NMR測定結果を、各水素の参照符号と共に示す。 合成例2〜4にて得られた10量体オリゴマー、5量体オリゴマー、単量体オリゴマーについてのNMR測定結果を併記する。 合成例1にて得られたポリマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのポリマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を示す。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法において、原料として用いられる複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子は、複数の金属配位部位を有する限り特に限定されるものではない。典型的には、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基、アセチルアセトナート基、およびそれらの誘導体のいずれかを2つ以上有する有機配位子が挙げられる。
これらの有機配位子は、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、置換基の構造は特に限定されるものではないが、例えば、分枝鎖又は直鎖の炭素数1〜20のアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてよい炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法において、原料として用いられる遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンは、これらの族に属する金属イオンである限り特に限定されるわけではない。典型的には、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウム、およびテルビウムから選択される金属が挙げられる。また、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンは、カウンターアニオンと共に形成された塩の形で用いることができる。カウンターアニオンの例としては、特に限定されないが、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CFSONイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
マイクロ波照射による内部加熱反応に供される、少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとのモル比は、特に限定されないが、通常1:1〜2:1である。より典型的には、このモル比は、1:1〜1.5:1である。
マイクロ波は、一般的な定義によると、300MHzから3THzの周波数を有する電磁波とされている。典型的に使用可能なマイクロ波照射のマグネトロン周波数は、特に限定されるものではないが、300MHz〜30GHz程度であり、入手容易性の観点からみて、好ましくは900〜6,000MHz程度であってよい。
マイクロ波は、通常連続的に照射されるが、照射により反応系内は速やかに所定の温度に上昇するため、必ずしも連続してマイクロ波を照射せずに間欠的に照射することも可能である。また、最適な重合反応温度に達した後、一定の温度を保持できるようにマイクロ波出力を制御してもよい。
本発明による製造方法は、通常、マイクロ波照射による内部加熱のみを用いて(外部加熱を用いずに)行うことができる。また、マイクロ波照射による内部加熱に加え、一般的な外部加熱による加熱方法を併用することも可能である。
マイクロ波照射による内部加熱反応の反応温度は、目的とするメタロ超分子ポリマーの錯構造に依るものであり、特に限定されるわけではないが、通常100℃以上の温度で行われる。この反応温度は、150℃以上であってよく、あるいは180℃以上であってよく、さらには200℃以上であってもよい。
目的とするメタロ超分子ポリマーの錯構造を得るために求められる反応温度がこのような高温の場合、従来の外部加熱法によれば、長い反応時間中に原料である配位子の構造や生成物の錯構造が破壊されることが多く、また反応系の水や酸素が結合するなどの不都合があったところ、本発明によればマイクロ波照射による内部加熱反応を採用することによりこのような不都合が解消し、短時間で効率的に(省エネルギー的に)、高度な構造規則性を有するポリマーを得ることができる。従って、錯形成に必要な温度が高い場合ほど、本発明の利点は大きくなる。
マイクロ波照射による内部加熱反応の反応時間(理論的には原料消費が定常状態に達する反応完了までに要する時間)は、特に限定されないが、例えば、3時間以下であってよい。また、反応時間は、好ましくは1時間以下であり、さらに好ましくは30分以下であり、最も好ましくは10分以下である。反応時間の下限としては、特に限定されないが、例えば30秒以上、1分以上、または2分以上である。
マイクロ波照射による内部加熱反応は、上記原料を適当な有機溶媒に分散させて、還流下で行うことができる。有機溶媒は、必要とされる反応温度より高い沸点を有するものが適宜選択されるが、特に限定されない。溶媒の例として、エチレングリコール等が挙げられる。反応後は、通常、有機溶媒を留去して濃縮し、次いで再沈殿させることによって固形物が得られる。
本製造方法の原料として用いられる複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子は、例えば、以下の式(1−1)で表される少なくとも1種のビスターピリジン誘導体、以下の式(1−2)で表される少なくとも1種のビピリジン誘導体、以下の式(1−3)で表される少なくとも1種のピリジン誘導体、以下の式(1−4)で表される少なくとも1種のフェナンスロリン誘導体、以下の式(1−5)で表される少なくとも1種のアセチルアセトン誘導体、またはこれらの複数の組み合わせであってよい。
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ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R、R、R、Rは、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基である。
このビスターピリジン誘導体の代替態様として、隣接する2つのピリジン環の間(の少なくとも1箇所)をメチレン基が架橋した構造の化合物を用いることもできる。
式(1−1)〜(1−5)中のスペーサは、分枝鎖又は直鎖の炭素数1〜20のアルキレン基、ヘテロ原子を含んでいてよい炭素数6〜20のアリーレン基であってよい。スペーサは、例えば、以下の式(2)〜(5)のいずれかで表されるアリーレン基であってよい。
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、R、RおよびRが水素原子以外のアリール基またはアルキル基の場合、分枝鎖又は直鎖の炭素数1〜20のアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてよい炭素数6〜20のアリール基であってよい。アルキル基またはアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トルイル基であってよいが、これらに限定されない。また、これらアリール基またはアルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、および、塩素、臭素等のハロゲン基などが挙げられる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、上述した本発明による製造方法によって得ることができる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物における複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンについては、特に限定されないが、本発明による製造方法について上述したとおりのものであってよい。
この組成物に含まれるメタロ超分子ポリマー(製造目的である構造を有するポリマー)の一例は、有機配位子がビスターピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリジン誘導体、フェナンスロリン誘導体、またはアセチルアセトン誘導体である場合において、以下の一般式(6−1)〜(6−5)で表すことができる。式中の符号R、R、R、R、Rの意味は、式(1−1)で表されるビスターピリジン誘導体等について説明したものと同じであり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数である。これらの一般式(6−1)〜(6−5)の構造には、金属イオンMの価数に相当するカウンターアニオン(式中に示されていない)がイオン結合している。カウンターアニオンは、特に限定されないが、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CFSONイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせであってよい。
Figure 0006920685

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メタロ超分子ポリマーの上記具体例は、2置換体であるが、これに限定されることなく、用いる金属イオンの種類および価数に依り、3置換体や4置換体以上の配位構造も製造し得る。
本明細書において用語「メタロ超分子ポリマー」は、いわゆるオリゴマー(例えば、金属イオン1個に所定数の有機配位子が配位した構造部分を1つの繰り返し単位とした場合において単量体から10量体等)を含めたポリマー類を意味するものとする。
例えば、有機配位子として4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)を用い、金属錯体としてRuCl(dmso)を用いて得られた単量体オリゴマー、5量体オリゴマー、10量体オリゴマーは、以下の一般式(7)で表すことができる。
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本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物について、いわゆるオリゴマーを除くポリマー製造の場合において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、通常5000〜30万程度であるが、特に限定されない。また、この重量平均分子量Mwは、1万〜20万程度であってよい。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、通常、目的構造を有するメタロ超分子ポリマー(すなわち有機配位子と金属イオンとが交互に配位結合した構造を有するポリマー)を過半量で含むものであるが、それ以外に、製造中に生成した目的外の構造を有するメタロ超分子ポリマー等の不純物を不可避的に含んでいる。
外部加熱による従来の製造方法では、150℃以上、特に200℃以上の高い錯形成温度を必要とするメタロ超分子ポリマーを合成する際、高い反応温度および長い反応時間に起因して、原料配位子の構造や生成物の錯構造が破壊されることが多く、また反応系内の水や酸素が結合するなどの不都合があった。本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、好ましくはマイクロ波照射を用いて製造されることによって、原料配位子の構造や生成物の錯構造の破壊、反応系内の水や酸素の結合が抑制され、高い構造規則性を有する。このような構造規則性が高いメタロ超分子ポリマー含有組成物は、向上したエレクトロクロミック特性を有し、エレクトロクロミック素子の原料として好適に用いることができる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物の構造規則性の改善度(換言すれば、有機配位子と金属イオンとが交互に配位結合した目的構造を有するメタロ超分子ポリマーの含有率が従来技術と比べてどの程度改善されたか)は、主に、H−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルの比較によって、またはエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)、着色効率η(cm/C)の比較によって、客観的に把握することができる。
従って、一実施態様において、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であり、この組成物についての、溶媒CDOD、所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルAが、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CDOD、同じ所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する、吸収シグナルAに対応する吸収シグナルA’と比べてブロードニングが小さい(あるいはシグナルがより鋭い、好ましくはシグナル(ピーク)高さがより大きい、あるいはシグナル(ピーク)の積分面積がより大きい、好ましくはシグナル(ピーク)の積分面積が約5%大きい、より好ましくはシグナル(ピーク)の積分面積が約10%大きい)という状態によって示される高められた構造規則性を有する。
ここでの「ポリマー末端の有機配位子の各プロトン」は、ポリマー末端の有機配位子の少なくとも1つのプロトンを指し、好ましくはポリマー末端の有機配位子の2以上のプロトンを指し、より好ましくはポリマー末端の有機配位子の全てのプロトンを指す。
また、この実施態様における、「同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られたメタロ超分子ポリマー含有組成物」の製造条件は、ここに規定された因子以外に、用いる溶媒の種類、反応温度、反応圧力、反応時間等の諸因子の一部または全てについても、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造条件(マイクロ波による内部加熱を用いる点を除く)と同じ条件を採用することが望ましい(以下の実施態様にても同様である)。
ここでの「同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行う」場合の「所定温度」は、一態様において、錯形成のための活性化エネルギーを与え得る最低温度又はそれを超える温度であり、他の一態様において、錯形成反応が還流下にて行われる際には還流状態にし得る最低温度又はそれを超える温度である。この説明は、以下の実施態様にも同様に適用される。
また、他の実施態様において、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であり、この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)および/または着色効率η(cm/C)が、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT’(%)および/または着色効率η’(cm/C)と比べて大きい(好ましくはコントラストΔT(%)のほうが5%以上大きく、より好ましくはコントラストΔT(%)のほうが10%以上大きく、さらに好ましくはコントラストΔT(%)のほうが15%以上大きく、および/または、着色効率η(cm/C)のほうが5%以上大きく、より好ましくは着色効率η(cm/C)のほうが10%以上大きく、さらに好ましくは着色効率η(cm/C)のほうが15%以上大きい)という状態によって示される高められた構造規則性を有する。
更なる他の実施態様において、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であり、この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり、および/または着色効率η(cm/C)が320cm/C以上である。このコントラストΔT(%)は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは78%以上である。この着色効率η(cm/C)は、好ましくは340cm/C以上であり、より好ましくは360cm/C以上である。
更なる他の実施態様において、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であり、この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)および/または着色効率η(cm/C)が、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT’(%)および/または着色効率η’(cm/C)と比べて大きいという状態によって示される高められた構造規則性を有し、かつ、この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり(好ましくは75%以上であり、より好ましくは78%以上)、および/または着色効率η(cm/C)が320cm/C以上(好ましくは340cm/C以上であり、より好ましくは360cm/C以上)である。
エレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)および着色効率η(cm/C)に関連した他の指標として、消色率Tbleached(%)、着色率Tcolored(%)、消色時間tbleaching(秒)、着色時間tcoloring(秒)があり、これらの指標に基づいて、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物の構造規則性の改善度を客観的に把握することができる。
メタロ超分子ポリマー含有組成物についてのH−NMR測定条件、エレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)、着色効率η(cm/C)の測定条件は、上記各態様にて説明した所定条件に限定されるわけではない。それらの測定条件は、客観的に特定された条件である限り、また、外部加熱法を用いた生成物と同条件にて比較可能である限り、上記と異なる条件を適宜設定することができる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、目的に応じて、適当量の任意成分を含んでよい。そのような任意成分の例としては、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、及び界面活性剤等の添加剤が挙げられる。このような任意成分の量は、通常5質量%以下とすることができる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、第1の透明電極と、第2の透明電極との間に位置させることによって、エレクトロクロミック素子を形成することができる。透明電極は、公知の任意のものを用いることができるが、例えば、SnO膜、In膜、これらの混合物であるITO膜が挙げられる。第1の透明電極および第2の透明電極は、任意の物理的または化学的気相成長法によって、ガラス基板等の透明基板上に形成され得る。メタロ超分子ポリマー含有組成物の第1の透明電極上への塗布は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング等によって行われ得る。エレクトロクロミック素子は、第1の透明電極とメタロ超分子ポリマー含有組成物との間に、高分子固体電解質を更に含んでよい。高分子固体電解質は、マトリクス用高分子に電解質を溶解して形成され、コントラストを向上させるため着色剤を有し得る。エレクトロクロミック素子の作動時には、第1の透明電極と第2の透明電極とが、電源に接続され、メタロ超分子ポリマー含有組成物と高分子固体電解質とに所定の電圧を印加する。これにより、メタロ超分子ポリマー含有組成物の酸化還元(発色および消色)を制御できる。
本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、構造規則性の改善度を客観的に把握し、それによって発明の外延を規定するものであるが、有機合成反応によって得られるものである以上、上述のとおり、通常、目的構造を有するメタロ超分子ポリマー以外に、製造中に生成した目的外の構造を有するメタロ超分子ポリマー等の不純物を不可避的に含んでいる。そして、この組成物に含まれるそれらの全成分を同定・分析し、その全成分の構造および割合によって当該組成物に係る発明を規定することは、技術的、経済的、労力的に極めて困難である。そのような観点から、本発明によるメタロ超分子ポリマー含有組成物は、一態様として、上記特定の製造方法によって製造された組成物それ自体を指すと表現することもできるであろう。
合成例1:マイクロ波照射によるRu系メタロ超分子ポリマーの合成
有機配位子4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)50.0mg(0.0925mmol)及び金属錯体RuCl(dmso)44.8mg(0.0925mmol)の混合物を、エチレングリコール50ml中、設定温度197℃にて、2.45GHzのマイクロ波照射下、60分反応させた。マイクロ波照射は、SMW−087(μReactor(登録商標)、四国計測工業株式会社製)を用いて行った。反応温度の測定は、蛍光ファイバー温度計AMOTH FL−2000(安立計器株式会社製)を用いて行った。
上記混合物およびエチレングリコールを、頂部に凝縮器を接続した耐熱ガラス容器に投入し、マグネチックスターラで撹拌しながら、反応物中にマイクロ波を照射した。電力は設定温度に応じ自動制御した。溶媒を還流させながら反応を行い、反応終了後、約10mlになるまで溶媒を留去して濃縮し、次いで濃縮物を200mlのTHFに撹拌しながら加え再沈殿させた。沈殿物は濾別して収集した。収量は72.4mgであった。この合成における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を、図1に示す。
合成例2:マイクロ波照射によるRu系メタロ超分子の10量体オリゴマーの合成
有機配位子4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)50.0mg(0.0925mmol)及び金属錯体RuCl(dmso)40.7mg(0.0841mmol)の混合物を、エチレングリコール50ml中、設定温度197℃にて、2.45GHzのマイクロ波照射下、60分反応させて、Ru系メタロ超分子の10量体オリゴマーを得た。合成手順ならびにマイクロ波照射および反応温度の測定は、合成例1と同様とした。合成例1と同様に再沈殿し、生成物を単離した。収量は75.1mgであった。この合成における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を、図2(a)に示す。
合成例3:マイクロ波照射によるRu系メタロ超分子の5量体オリゴマーの合成
有機配位子4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)50.0mg(0.0925mmol)及び金属錯体RuCl(dmso)37.3mg(0.0770mmol)の混合物を、エチレングリコール50ml中、設定温度197℃にて、2.45GHzのマイクロ波照射下、60分反応させて、Ru系メタロ超分子の5量体オリゴマーを得た。合成手順ならびにマイクロ波照射および反応温度の測定は、合成例1と同様とした。合成例1と同様に再沈殿し、生成物を単離した。単離収量は27.0mgであった。処理した濾液の溶媒を留去させて乾燥し、THFにより再結晶したところ、40.2mgの固体を追加で得た。この合成における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を、図2(b)に示す。
合成例4:マイクロ波照射によるRu系メタロ超分子の単量体オリゴマーの合成
有機配位子4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)50.0mg(0.0925mmol)及び金属錯体RuCl(dmso)22.4mg(0.0462mmol)の混合物を、エチレングリコール50ml中、設定温度197℃にて、2.45GHzのマイクロ波照射下、60分反応させた、Ru系メタロ超分子の単量体オリゴマーを得た。合成手順ならびにマイクロ波照射および反応温度の測定は、合成例1と同様とした。反応生成物の溶媒を留去して乾燥し、THFにより再結晶したところ、52.3mgの固体を得た。この合成における反応器の電力(W)と温度(℃)の推移を、図2(c)に示す。
比較合成例:外部加熱によるRu系メタロ超分子ポリマーの合成
10Lの4つ口フラスコに、有機配位子4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)6.80g(12.6mmol)、エチレングリコール6.8Lを加え、メカニカルスターラーで室温下、撹拌翼を用いて撹拌した。次いで金属錯体RuCl(dmso)46.09g(12.6mmol)を加え、マントルヒーターで加熱し、還流条件下で24時間反応させた。反応液を室温まで放冷した後、10倍量のTHF中に投じて一晩静置し、固体を析出させた。この溶液から遠心分離(9000rpm×10min)で固体を回収した。回収した固体をTHF中へ投じ懸濁洗浄した後、孔径1.0μmのPTFEフィルターを用いて減圧ろ過した。ろ物を回収し、減圧乾燥器で80℃、12時間乾燥し、総収量7.50g(収率93%)の黒色固体を得た。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を、図3に示す。合成例1で得られたポリマーのほうが、510nm付近の電荷移動吸収においてシャープで吸光度の大きい吸収ピークを示した。なお図3中、「Ru−MEPE−mw」は「マイクロ波照射で得られたRuポリマー」を意味し、「Ru−MEPE−NARD」は「外部加熱で得られたRuポリマー」を意味する(以降の図面でも同様の意味である)。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=310nmの条件、ならびに、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=515nmの条件で、フォトルミネセンススペクトルを測定した結果を、図4(a)、(b)に示す。後者の条件では、合成例1で得られたポリマーの発光強度のほうが、比較合成例で得られたポリマーの発光強度よりも顕著に高かった。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を、図5に示す。合成例1で得られたポリマーのほうが、520nm付近の電荷移動吸収においてシャープで吸光度の大きい吸収ピークを示した。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=310nmの条件で、ならびに、合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られた10量体オリゴマー、5量体オリゴマー、単量体オリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=510nmの条件で、フォトルミネセンススペクトルを測定した結果を、図6(a)、(b)に示す。後者の条件では、合成例2〜4で得られた10量体オリゴマー、5量体オリゴマー、単量体オリゴマーの発光強度が、比較合成例で得られたポリマーの発光強度よりも顕著に高かった。なお図6(b)中、「Ru−DP−1」は「マイクロ波照射で得られたRuオリゴマー単量体」を意味し、「Ru−DP−5」は「マイクロ波照射で得られたRuオリゴマー5量体」を意味し、「Ru−DP−10」は「マイクロ波照射で得られたRuオリゴマー10量体」を意味する(以降の図面でも同様の意味である)。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を、図7に示す。合成例1で得られたポリマーがよりシャープなシグナルを示した(より高い構造規則性を有していた)一方で、比較合成例で得られたポリマーのシグナルは不純物に起因するより大きなブロードニングを示した。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、走査速度10℃/分、窒素下の条件においてTGA(熱重量分析)を行った結果を、図8に示す。合成例1で得られたポリマーは、比較合成例で得られたポリマーよりも、構造規則性が高く不純物が少ないため、重量損失(%)が大きくなったと考えられる。
サイクリックボルタモグラム測定装置CV50W(BAS製、Japan)を用いて、合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーの電気化学応答について調べた。測定用の作用電極は、GCE(グラッシーカーボン)電極およびITO電極それぞれに上記各ポリマー(1mg、0.5ml)が溶解したメタノール溶液20μlを滴下し、乾燥させて調製した。対極としてPtカウンター電極を、参照電極としてAg/Ag+/ACN/TBAPを用いた。いずれも電極は、BAS製であった。電圧は0.0Vから+1.8Vの範囲で印加し、電圧の挿引間隔は10秒、5秒または2秒とした。
比較合成例で得られたポリマーについて、電圧0.0Vおよび+1.8Vを印加したときのITO電極の発色変化を目視観察した(図9(a)参照)。0.0V印加のときは淡橙色、+1.8V印加のときは淡緑色が観察された。
図9(b)に、キャストされたままの状態、ならびに0.0Vおよび+1.8V印加したときのぞれぞれの同ポリマーの光透過度(%)を縦軸に、波長(nm)を横軸として示す。また、図9(c)に、挿引間隔を10秒、5秒または2秒に変化させて繰り返し電圧を印加したときの同ポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。このポリマーの電気化学応答性は、電圧印加間隔を10秒から5秒に変化させたときに、低下することがわかった。
電圧印加間隔を10秒にしたときの0〜100秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を、図10(a)に示す。また、同じく電圧印加間隔を10秒にしたときの20〜40秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を、図10(b)に示す。図中、t(2.43秒)は消色に要した時間、t(0.65秒)は着色に要した時間である。
合成例1で得られたポリマーについて、電圧0.0Vおよび+1.8Vを印加したときのITO電極の発色変化を目視観察した(図11(a)参照)。0.0V印加のときは鮮明な橙色、+1.8V印加のときはやや薄い緑色が観察された(それぞれ図9(a)の発色より鮮明であった)。
図11(b)に、キャストされたままの状態、ならびに0.0V時および+1.8V印加したときのぞれぞれの同ポリマーの光透過度(%)を縦軸に、波長(nm)を横軸として示す。また、図11(c)に、挿引間隔を10秒、5秒または2秒に変化させて繰り返し電圧を印加したときの同ポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を示す。図9(c)と異なり、このポリマーの電気化学応答性は、電圧印加間隔を10秒から5秒に変化させたときにも低下しなかった。
電圧印加間隔を10秒にしたときの0〜100秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を、図12(a)に示す。また、同じく電圧印加間隔を10秒にしたときの20〜40秒に至るまでのこのポリマーの光透過度(%)の経時変化(電気化学応答性)を、図12(b)に示す。図中、t(2.38秒)は消色に要した時間、t(1.18秒)は着色に要した時間である。それぞれピークの鋭さ、すなわち応答速度は、図10(a)、(b)より速いことが分かった。
図12(c)には、合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーの各サンプルについての電流(A)に対する透過度損失(%)の形で、電気化学応答性の対照を示す。この図からも、合成例1で得られたポリマーのほうが優れた電気化学応答性を有することが証明される。
合成例1で得られたポリマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔にて印加、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO作業領域1.5cm×1.5cmの条件で測定されたエレクトロクロミック特性を以下の表に示す。特に、コントラストΔTについて、比較合成例で得られたポリマーが67.73%であったのに対して、合成例1で得られたポリマーが81.21%であったこと、ならびに、着色効率ηについて、比較合成例で得られたポリマーが318.6cm/Cであったのに対して、合成例1で得られたポリマーが379.3cm/Cであったことが注目される。これらの特性の結果は、合成例1で得られたポリマーのほうが高い構造規則性を有することに起因して、より優れたエレクトロクロミック特性が奏されたことを実証していると考えられる。
Figure 0006920685
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を、図13に示す。合成例1〜4で得られたポリマー、オリゴマーのほうが、比較合成例で得られたポリマーよりも510nm付近の電荷移動吸収においてシャープで吸光度の大きい吸収ピークを示した。
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μMの条件でUV−Visスペクトルを測定した結果を、図14に示す。合成例1〜4で得られたポリマー、オリゴマーのほうが、比較合成例で得られたポリマーよりも520nm付近の電荷移動吸収においてシャープで吸光度の大きい吸収ピークを示した。
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒メタノール、濃度25μM、λex=310nmの条件、ならびに溶媒メタノール、濃度25μM、λex=515nmの条件で、フォトルミネセンススペクトルを測定した結果を、図15(a)、(b)に示す。後者の条件では、合成例2〜4で得られたオリゴマーの発光強度が、比較合成例で得られたポリマーの発光強度よりも顕著に高かった。
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマーおよび比較合成例で得られたポリマーについて、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=310nmの条件、ならびに、溶媒DMSO、濃度25μM、λex=510nmの条件で、フォトルミネセンススペクトルを測定した結果を、図16(a)、(b)に示す。後者の条件では、合成例2〜4で得られたオリゴマーの発光強度が、比較合成例で得られたポリマーの発光強度よりも顕著に高かった。
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマー、および比較合成例で得られたポリマーについて、走査速度10℃/分、窒素下の条件においてTGA(熱重量分析)を行った結果を、図17に示す。合成例1で得られたポリマー、合成例2〜3で得られたオリゴマーは、比較合成例で得られたポリマーよりも、構造規則性が高く不純物が少ないため、重量損失(%)が大きくなったと考えられる。一方、合成例4で得られたオリゴマーは、単量体であり分子量が相対的に低いため、重量損失は小さくなった。
合成例1で得られたポリマー、合成例2〜4で得られたオリゴマーについて、走査速度0.02/step、CuKαの条件下でX線回折を行った結果を、図18に示す。
合成例4にて得られた単量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号を図19に、この単量体オリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMR(COSY−NMR)を測定した結果を図20に示す。この結果から、高度な構造規則性を有する所望の単量体オリゴマーが得られていることがわかった。
合成例3にて得られた5量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのオリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を図21に示す。この結果から、高度な構造規則性を有する所望の5量体オリゴマーが得られていることがわかった。
合成例2にて得られた10量体オリゴマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのオリゴマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を図22に示す。またこのオリゴマーについてのCOSY−NMR測定結果を、各水素の参照符号と共に図23に示す。この結果から、高度な構造規則性を有する所望の10量体オリゴマーが得られていることがわかった。
合成例2〜4にて得られた10量体オリゴマー、5量体オリゴマー、単量体オリゴマーについてのNMR測定結果を、図24に併記する。
合成例1にて得られたポリマーについて、NMR測定に関する各水素の参照符号、およびこのポリマーについて、溶媒CDOD、周波数300MHz、室温の条件においてH−NMRを測定した結果を図25に示す(図7の上方のNMR測定結果と同一)。この結果から、高度な構造規則性を有する所望のポリマーが得られていることがわかった。
本発明の製造方法によれば、マイクロ波による内部加熱法にて錯形成に必要な大きな化学エネルギーを容易に供給することが可能であるため、反応時間が短くかつ反応条件が穏和であり、また反応手順も簡便であるため、Ru以外の遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンのいずれかを用い、かつ、4’,4’ ’ ’−(1,4−フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)以外の少なくとも1種の有機配位子のいずれかを用いたときでも、上記同様、簡便・効率的に、過剰な試行錯誤を要することなく、発明を実施することが可能である(課題の一つである「新規な製造方法を提供すること」が解決され得る)と同時に、所望の構造についての高い構造規則性を有するメタロ超分子ポリマーを含む組成物が得られると期待される。ひいては、そのような高い構造規則性を有するメタロ超分子ポリマー含有組成物を用いて、効率的に良好なエレクトロクロミック素子を得ることができると考えられる。

Claims (15)

  1. 構造規則性が高められたメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法であって、
    複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとを、マイクロ波照射による内部加熱で反応させて、両者が交互に配位結合したメタロ超分子ポリマーを形成することを含み、
    このメタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CDOD、所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルAが、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CDOD、同じ所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する、吸収シグナルAに対応する吸収シグナルA’と比べてブロードニングが小さいという状態によって示される高められた構造規則性を有
    このメタロ超分子ポリマーが、以下の少なくとも1つの式で表される構造およびカウンターアニオンを有するメタロ超分子ポリマーを含む、
    上記方法
    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R 、R 、R 、R は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基であり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数であり、カウンターアニオンは、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CF SO Nイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせである
  2. 遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウムおよびテルビウムから選択される金属を含む、請求項1に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
  3. マイクロ波照射による内部加熱反応に供される、少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとのモル比が、1:1〜2:1である、請求項1または2に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
  4. マイクロ波照射による内部加熱反応が、150℃以上の温度で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
  5. メタロ超分子ポリマー含有組成物が、下記構造式で表されるオリゴマーのいずれかを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
    Figure 0006920685
  6. マイクロ波照射による内部加熱反応におけるマイクロ波の周波数が900〜6,000MHzの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法。
  7. 複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
    この組成物についての、溶媒CDOD、所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルAが、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CDOD、同じ所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定されたH−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する、吸収シグナルAに対応する吸収シグナルA’と比べてブロードニングが小さいという状態によって示される高められた構造規則性を有
    このメタロ超分子ポリマーが、以下の少なくとも1つの式で表される構造およびカウンターアニオンを有するメタロ超分子ポリマーを含む、
    上記メタロ超分子ポリマー含有組成物
    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R 、R 、R 、R は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基であり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数であり、カウンターアニオンは、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CF SO Nイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせである
  8. 複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
    この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)および/または着色効率η(cm/C)が、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT’(%)および/または着色効率η’(cm/C)と比べて大きいという状態によって示される高められた構造規則性を有
    このメタロ超分子ポリマーが、以下の少なくとも1つの式で表される構造およびカウンターアニオンを有するメタロ超分子ポリマーを含む、
    上記メタロ超分子ポリマー含有組成物
    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R 、R 、R 、R は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基であり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数であり、カウンターアニオンは、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CF SO Nイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせである
  9. 複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとが、交互に配位結合したメタロ超分子ポリマー含有組成物であって、
    この組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり、および/または、着色効率η(cm/C)が320cm/C以上であ
    このメタロ超分子ポリマーが、以下の少なくとも1つの式で表される構造およびカウンターアニオンを有するメタロ超分子ポリマーを含む、
    上記メタロ超分子ポリマー含有組成物
    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    Figure 0006920685

    ここで、Rは、炭素原子および水素原子を含むスペーサであるか、または、ターピリジル基、ビピリジル基、ピリジル基、フェナンスロリル基およびアセチルアセトナート基のいずれかを直接接続するスペーサであり、R 、R 、R 、R は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基であり、Mは、遷移金属および/またはランタノイド系金属である1種または複数種の金属イオンであり、nは重合度を示す2以上の整数であり、カウンターアニオンは、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(CF SO Nイオン、ポリオキシメタレート、またはこれらの組み合わせである
  10. 上記組成物についての、印加電圧+1.8Vおよび0V、5秒間隔、電解質溶液0.1MのLiClO/ACN、ITO電極上の作業領域1.5cm×1.5cmで測定されたエレクトロクロミック特性のコントラストΔT(%)が70%以上であり、および/または着色効率η(cm/C)が320cm/C以上である、請求項8に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
  11. 遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金、ユウロピウムおよびテルビウムから選択される金属を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
  12. 少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとのモル比が、1:1〜2:1である、請求項7〜11のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
  13. 下記構造式で表されるオリゴマーのいずれかを含む、請求項7〜12のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物。
    Figure 0006920685
  14. 第1の透明電極と、第2の透明電極と、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に位置する請求項7〜13のいずれか1項に記載のメタロ超分子ポリマー含有組成物とを含む、エレクトロクロミック素子。
  15. 構造規則性が高められたメタロ超分子ポリマー含有組成物の製造方法であって、
    複数の金属配位部位を有する少なくとも1種の有機配位子と、遷移金属および/またはランタノイド系金属の少なくとも1種のイオンとを、マイクロ波照射による内部加熱で反応させて、両者が交互に配位結合した直鎖状のメタロ超分子ポリマーを形成することを含み、
    このメタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CD OD、所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定された H−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する吸収シグナルAが、同一の有機配位子と同一の金属イオンとを用い、錯形成に必要とされる所定温度による外部加熱によって原料消費が定常状態に至るまで反応を行うことによって得られた参照用メタロ超分子ポリマー含有組成物についての、溶媒CD OD、同じ所定濃度、周波数300MHz、室温の条件で測定された H−NMRにおけるポリマー末端の有機配位子の各プロトンに起因する、吸収シグナルAに対応する吸収シグナルA’と比べてブロードニングが小さいという状態によって示される高められた構造規則性を有する、
    上記方法。
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