JP6918751B2 - 地盤の安定性評価方法及び地盤の安定性評価のためのコンピュータプログラム - Google Patents

地盤の安定性評価方法及び地盤の安定性評価のためのコンピュータプログラム Download PDF

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Description

本発明は、地盤を掘削したときの掘削面付近、トンネル等の地下空間の内面付近、盛土・切土による斜面付近等の地盤が崩壊することなく安定した状態にあるか否かを評価する方法及び評価のためのコンピュータプログラムに関するものである。
土木構造物、建築構造物等を構築する際に地盤を掘削すること、又は盛土や切土を施すこと等が広く行われている。このような工事を行う前には、掘削又は盛土等を行ったときの地盤の崩壊に対する安全性を確認しておかなければならない。例えばトンネル、地下空洞を掘削する場合の地盤の安定性、立坑、斜坑、深いトレンチを形成する場合の壁面の安定性、切土・盛土によって形成される斜面の安定性等の評価が必要となる。そして地盤は、砂、砂礫、シルト、粘土等で形成されている場合、岩盤となっている場合(ここで 岩盤とは無数に亀裂のある亀裂性岩盤を含む)等があり、これらのいずれの場合であっても崩壊に対する安定性の評価は必要となる。
地盤が安定しているか否かを評価する方法としては、地盤の特性を調査し、これらの特性値に基づいて有限要素法、有限差分法等の数値解析法によって評価する方法が広く行われている。これらは地盤を複数の要素の集合からなるモデルに置き換えて解析を行うものであり、各要素は弾性体として仮定する方法、弾塑性体と仮定する方法が広く行われている。このうち、弾塑性体と仮定して解析を行うことによって実際の地盤の安定性をより正確に評価できることが知られている。
地盤を複数に分割された要素の集合体として弾塑性解析を行う方法については、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4等に記載されている。
田中忠治、鵜飼恵三、河邑眞、阪上最一、大津宏康、1996年、地盤の3次元弾塑性有限要素解析、丸善 田中忠治、1992年、有限要素法による変形・安定解析、わかりやすい土質力学原論(第1回改訂版)、地盤工学会、109ページ〜154ページ 久田俊明、野口裕久、1995年、非線形有限要素法の基礎と応用、丸善 山上拓男、鵜飼恵三、2001年、斜面の安定と変形解析総説(LEMとFEMの応用)、地すべり、Vol.38、No.3、9ページ〜19ページ
地盤の安定性について、数値解析法によって弾塑性解析を行うときには、調査又は推定によって得られた土又は岩の特性値から、応力度とひずみとの関係が設定される。また、土又は岩の特性値から、作用する応力度の増加によって土又は岩が降伏して塑性域となる降伏基準が設定される。そして、演算の過程で得られる応力度は逐次に降伏基準と対比され、降伏基準を超える過剰の応力度は周辺の塑性化していない領域に分配される。
このように弾塑性解析によって演算された応力度の分布は、塑性化した領域で降伏基準を超えることはない。そして、過剰の応力度が周囲に残存する弾性域で支持されると、一見安定しているかのような状態となる。
しかしながら、実際の地盤の掘削等を行う現場では、上記のような弾塑性解析で安定しているような結果が得られた場合にも、トンネルの天井部分が崩落したり、立坑の壁面が滑り落ちたりすることが生じている。つまり、弾塑性解析によって得られた応力度の分布のみからは、地盤の一部が自らの重量によって崩落することについて評価できていない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の弾塑性解析に基づく方法に比べて、実際に地盤を掘削する現場又は盛土や切土を行う現場の状況に合致した地盤の安定性評価方法及び評価のためのコンピュータプログラムを提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 評価対象となる地盤の調査によって得られたデータ又は類似する調査済地盤のデータに基づいて特定又は推定された、評価対象となる前記地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて地盤の安定性を評価する方法であって、 前記地盤の形状及び前記特性値に対応し、xy平面上における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する工程と、 前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた2次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する工程と、 前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(1)に基づく判別を行う工程と、 下記の式(1)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置については不安定と評価する工程とを含む地盤の安定性評価方法を提供する。
Figure 0006918751
一般に地盤の土又は岩に作用する応力度は、2次元で考えると 式(2)に示す平衡方程式を常に満足する。なお、この式に示す応力度は、構造物等が地表面上又は地盤中にあるときには、それらに作用する重力の影響によって地盤内に引き起こされる応力度も含めた応力度である。
Figure 0006918751
しかしながら、土又は岩に作用する重力の影響を考慮して地盤又は構造物の力学的挙動を解析する際には、土又は岩に作用する重力の影響を外力として考慮し、式(3)に示す平衡方程式を満足するものとして解析するのが一般的である。そして、土又は岩の自重が作用したときの応力度が演算されると、この応力度を初期応力度として、その後の掘削等による応力度の変化が演算される。つまり、土又は岩に作用する重力の影響を初期応力度に置き換えるのが一般的である。この置き換えは、地盤が線形弾性体の場合には重ね合わせの原理が常に成立するので問題ない。したがって、その場合には 式(3)に示す平衡方程式が常に満足することになる。すなわち、式(3)は 式(2)と比較して土又は岩の単位体積重量が消滅している。これは単位体積重量が初期応力度に置き換えられたからである。
Figure 0006918751
一方、弾塑性解析では一般に、土又は岩の特性値に基づいて応力度とひずみとの関係を弾塑性体として設定するとともに、土又は岩の特性値に基づいて降伏基準が設定される。そして、地盤に作用する応力度が降伏基準を超えるときに、過剰な応力度が周辺の地盤に分配された状態の演算が行われる。このとき、応力度とひずみの関係は非線形となっており、土又は岩に作用する重力を考慮した平衡方程式(2)を満足していないことがある。つまり、地盤が弾性体として挙動する範囲内であれば、演算された応力度は平衡方程式(2)を常に満足するものであるが、弾塑性体では応力度が降伏基準を超えないように低減されており、応力度分布が平衡方程式(2)を満足しない場合が生じる。そして、降伏基準を満足するように低減された応力度は、地盤に作用する重力を支持できないものとなっている場合がある。
本発明の評価方法では、弾塑性解析によって演算された応力度分布について、応力度が塑性域となっている位置において 作用している応力度と土又は岩の単位体積重量との釣り合いを判別する。つまり式(1)によって判別を行うことができる。即ち、EE≧0となる領域では、地盤に作用する応力度が土又は岩に作用する重力を支持し得るものと評価することができるが、EE<0となる領域では 式(2)に示す平衡方程式が満足されないことになる。即ち、塑性化した状態の土又は岩に作用している応力度によってその重量を支持することができず、崩落が生じ得る状態になっていると評価される。
なお、EE<0となる領域つまり不安定領域が存在する場合には、その補強のためにロックアンカーやロックボルトを用い、その長さを不安定領域の重量を支持できるに十分な長さにすることによって 不安定領域を安定化させることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の地盤の安定性評価方法において、 前記数値解析用のモデルを設定する工程は、前記地盤の掘削を行う前の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、 前記地盤の応力度分布を演算する工程は、 前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している掘削前の前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、 前記初期モデルから前記地盤を掘削する部分に対応する要素を削除した掘削後モデルを設定する工程と、 掘削部分の土又は岩の重量が除荷されることによる応力度分布の変動及び掘削によって生じる掘削面に作用していた応力度が解放されることによる応力度分布の変動が生じた後の応力度分布を演算する工程と、を含み、 前記掘削による変動後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うものとする。
この地盤の安定性評価方法では、掘削前の地盤の初期応力度分布を演算し、この初期応力度分布から掘削によって変化する応力度を弾塑性解析によって推定する。掘削による応力度の変化は、掘削部分の土又は岩の重量が消失、すなわち除荷されることと、掘削前に作用していた応力度が掘削面で解放されることを考慮して、これらを外力として作用させることによって演算される。この応力度の変化量を初期応力度分布と重ね合わせることによって掘削後の応力度分布が演算される。
重ね合わされた応力度の分布は、地盤が弾性的に挙動している時は 平衡方程式(2)を常に満足しているが、塑性的に挙動している時は 平衡方程式(2)を満足していないことがある。このように演算された応力度分布は、塑性化した領域においては土又は岩の単位要素について重力の作用が適正に評価されていないことを示している。したがって、重力を考慮したつり合いの条件、つまり上記式(1)で示されるEEの正負を判別することにより 演算された応力度が塑性域となった位置の地盤の安定性を適正に評価することが可能となる。
請求項3に係る発明は盛土の場合である。 請求項1に記載の地盤の安定性評価方法において、前記数値解析用のモデルを設定する工程は、盛土を行う前の前記地盤の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、前記地盤の応力度分布を演算する工程は、 前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、前記地盤上に盛土をする部分に対応する要素を前記初期モデルに付加した盛土後モデルを設定し、該盛土後モデルを用いて、前記盛土によって変動した後の応力度分布を演算する工程と、を含み、前記盛土を行った後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うものとする。
この地盤の安定性評価方法では、盛土前の地盤の応力度分布つまり初期応力度分布を演算し、この初期応力度分布から盛土を行うことによって変化する応力度を弾塑性解析によって推定する。なお、盛土を行う前の地盤は一般的に安定しているものと仮定することができる。盛土による応力度の変化は、初期モデルに盛土部分に相当する要素を付加し、この部分の自重を作用させて演算する。そして、初期応力度に盛土による応力度の変化量を加算することによって盛土後の応力度分布が得られる。この応力度分布に基づき地盤が塑性化している位置について、式(1)の判別を行うことによって応力度が塑性域となった位置に相当する地盤の安定性を適正に評価することができる。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の地盤の安定性評価方法において、 前記数値解析用のモデルを設定する工程は、荷重が載荷される前の前記地盤の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、 前記地盤の応力度分布を演算する工程は、前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、前記初期モデルに、地盤上に載荷又は除荷される荷重に相当する力を作用させ、荷重の載荷又は除荷によって変動する応力度を前記初期応力度分布と足し合わせて、荷重の載荷又は除荷後の応力度分布を演算する工程と、を含み、前記載荷又は除荷後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うものとする。
この地盤の安定性評価方法は、既存の地盤に作用している初期応力度分布を演算し、さらに地盤に構造物等による荷重が載荷されることによる応力度分布の変化又は構造物等が除去されることによる応力度分布の変化を演算するものである。荷重の載荷又は除荷によって塑性化する位置について、式(1)の判別を行うことによって地盤の安定性を適正に評価することができる。
請求項5に係る発明は不安定領域があり それが崩落する場合である。 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の地盤の安定性評価方法において、前記判別においてEE<0と判別された位置の要素を崩落部分として、該判別に用いる応力度を演算した数値解析用のモデルから除去した崩落後モデルを設定する工程と、該崩落後モデルを用いて、自重が作用している前記崩落部分を除去することによって変動した崩落後の応力度分布を演算する工程と、前記崩落後の応力度分布において応力度が塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行う工程と、前記式(1)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置では不安定と評価する工程とを含むものとする。
地盤内の応力度が塑性領域となり、EE<0と判別された範囲では崩落する可能性があり、崩落が生じると崩落部分が地盤から離脱する。これに対応して崩落部分の要素を除去した崩落後モデルを設定して崩落後の応力度分布を演算する。崩落後の応力度分布の演算は、自重が作用している土塊又は岩塊が離脱(崩落)することで生じる自重による影響、及び崩落する土塊又は岩塊が離脱することによって崩落面で応力度が解放されることによる影響を考慮して演算することができる。そして、崩落後の応力度分布において、式(1)に基づく判別を行うことによって崩落後にさらに不安定になる範囲を判別することが可能となる。したがって、崩落が及ぶ領域を推定することが可能となる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の地盤の安定性評価方法において、 前記崩落によって変動した後の応力度分布を演算する工程は、前記崩落部分の判別に用いた応力度分布に、前記崩落部分の土又は岩の自重が除荷されることによる応力度分布の変動及び崩落部分の要素を除去することによって生じる崩落面に作用していた応力度が解放されることによる応力度分布の変動を加算した応力度分布として演算することができる。
この地盤の安定性評価方法では、崩落後の応力度分布の演算において、崩落が生じると地盤から離脱した土塊又は岩塊の自重が地盤には作用しなくなることを考慮する。つまり、崩落が生じる土塊又は岩塊の自重に相当する力を逆方向に載荷することによって自重の作用を消去することを数値解析用のモデル上で再現する。
さらに、土塊又は岩塊が離脱した面すなわち崩落面に作用していた応力度は、崩落面が自由表面となることよって解放される。これは崩落前の状態で崩落面に作用していた応力度に相当する力を逆方向に外力として作用させることによって演算することができる。これらの荷重による応力度の変化を演算することにより崩落後の応力度分布を得ることができる。
請求項7に係る発明は3次元の場合である。評価対象となる地盤の調査によって得られたデータ又は類似する調査済地盤のデータに基づいて特定又は推定された、評価対象となる前記地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて地盤の安定性を評価する方法であって、 前記地盤の形状及び前記特性値に対応し、xyz空間内における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する工程と、 前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた3次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する工程と、 前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(2)に基づく判別を行う工程と、 下記の式(2)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置については不安定と評価する工程とを含む地盤の安定性評価方法を提供するものである。
Figure 0006918751
この評価方法は、地盤の応力度分布を三次元の弾塑性解析によって演算するものであり、地盤の塑性化した領域が崩壊に対して安定性を維持しているか否かを、三次元的に評価することが可能となる。
請求項8に係る発明は、 評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて該地盤の安定性評価のための処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、 前記地盤の形状及び前記特性値に基づき、xy平面上における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する処理と、 前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた2次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する処理と、 前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(3)におけるEEの値の演算を行う処理と、 前記EEの演算の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを提供するものである。
Figure 0006918751
このコンピュータプログラムでは、評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値に基づくEEの値の演算結果により、地盤が安定した状態であるか、又は不安定な状態つまり崩落が生じ得る状態であるかを評価した結果を得ることができる。すなわち、出力されたEEの値がEE≧0のときには地盤が安定であり、EE<0のときには不安定と評価することができる。また、EE≧0又はEE<0の判別を行って結果を出力する処理を付加すれば、これによってさらに容易に地盤の安定性を評価することができる。
請求項9に係る発明は、 評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて該地盤の安定性評価のための処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、 前記地盤の形状及び前記特性値に基づき、xyz空間内における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する処理と、 前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた3次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する処理と、 前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(4)におけるEEの演算を行う処理と、 前記EEの演算の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを提供するものである。
Figure 0006918751
このコンピュータプログラムでは、評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値に基づくEEの値の演算結果により、地盤が安定した状態であるか、又は不安定な状態つまり崩落が生じ得る状態であるかを、3次元で評価した結果を得ることができる。また、EE≧0又はEE<0の判別結果を出力する処理を付加することができ、これによってさらに容易に地盤の安定性を評価することが可能となる。
以上説明したように、本発明に係る地盤の安定性評価方法では、地盤の安定性を弾塑性解析によって適正に評価することが可能となる。また、本発明に係る地盤の安定性評価のためのコンピュータプログラムでは、弾塑性解析によって地盤の安定性を適正に評価することができる。
本発明に係る方法によって地盤の掘削面付近の安定性を評価した例を説明するために地盤の掘削前の状態と要素モデルを示す図であって、掘削する前の地盤の概略断面図及びこの地盤の応力度を解析するための初期モデルを示す概略図である。 図1に示す地盤に断面形状が矩形のトンネルを掘削した状態を示す概略断面図 及びトンネルを掘削した状態を解析するための掘削後モデルを示す概略図である。 これはトンネルを掘削したときの掘削面の安定性を本発明に係る方法によって評価する工程を示すフロー図である。 図1に示す地盤について設定した応力度とひずみの関係を示す概略図である。 図1に示す地盤について設定した降伏基準と演算された過剰の応力度との関係を示す概略図である。 本発明に係る方法によってトンネル掘削面付近の安定性を評価した結果を示す概略図である。 地盤の不安定な部分を除去した崩落後モデルを示す概略図である。 トンネルを段階的に掘削するときの例を示す概略図である。 本発明に係る方法によって地盤の掘削面付近の安定性を評価した他の例を説明するための図であって、地盤に深い溝を掘削したときの概略断面図及びこの地盤の応力度を解析するための数値解析用のモデルである掘削後モデルを示す概略図である。 図9に示すように地盤に溝を掘削したときの壁面の安定性を評価した結果を示す概略図である。 本発明に係る方法によって安定性を評価することができる地盤の他の例を示す概略断面図である。 本発明に係る方法によって安定性を評価することができる地盤の他の例を示す概略断面図である。 本発明に係る方法によって安定性を評価することができる地盤の他の例を示す概略断面図である。 本発明に係る方法によって安定性を評価することができる地盤の他の例を示す概略断面図及び対応する数値解析用のモデルの概略図である。 本発明に係る方法によって安定性を評価することができる地盤の他の例に対応した数値解析用のモデルを示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る方法によって地盤の掘削面付近の安定性を評価した例を説明するための図であって、掘削する前の地盤の概略断面図及びこの地盤の応力度を解析するための初期モデルを示す概略図である。また、図2は同じ地盤に断面形状が矩形のトンネルを掘削した状態を示す概略断面図及びトンネルを掘削した状態を解析するための掘削後モデルを示す概略図である。
この例は、図2に示すようにほぼ水平な地表面1を有する地盤2の地表面下に断面形状が矩形のトンネル3を掘削したときの、トンネル内面付近の崩落に対する安定性を評価するものである。応力度の解析には有限要素法を用いるものとし、2次元解析を行う。
なお、応力度の解析方法は有限要素法に限定されるものではなく、地盤を複数の要素に分割して応力度を解析するものであれば適用することができ、有限差分法等を用いることもできる。
この評価方法では、図3のフローに示すように、まずトンネルを掘削しようとする地盤の調査を行い、地盤を構成する土又は岩の特性値を推定する(ST1)。また、地質等の情報から類似する地盤の特性値に基づいて推定するものであってもよい。
特性値は土又は岩の単位体積重量、弾性係数、ポアソン比、粘着力、内部摩擦角、側圧係数を含むものである。本実施例では、これらの特性値を次にように推定している。
単位体積重量ρ= 22.0 kN/m3
弾性係数E = 200 Mpa
ポアソン比ν = 0.35
粘着力c = 0.30 Mpa
内部摩擦角φ = 35°
側圧係数 = 0.54
また、上記特性値に基づいて降伏基準及び応力度とひずみとの関係を設定する。
降伏基準は、例えば、土あるいは岩の破壊がせん断応力度と垂直応力度によって生じることに基づき、下記モール・クーロン式(7)によって設定することができる。
τ = c + σtanφ ・・・・・・(7)
τ:せん断応力度
σ:垂直応力度
c:粘着力
φ:土の内部摩擦角
なお、地盤の引張強度がゼロの場合には、上記モール・クーロン式において垂直応力度σがマイナス(引張応力度)のときに、 τ=0 とする「No Tentionモデル」を破壊基準として採用することもできる。また、本実施形態は2次元で評価を行っているが、3次元の解析を行って評価するときには、破壊が正八面体せん断応力度と平均応力度によって生じることに基づいた「Drucker-Prager式」を降伏基準として採用することができる。さらに、弾塑性解析を行うときの降伏基準又は破壊基準は、これらに限定されるものではない
一方、応力度とひずみとの関係は、例えば図4に示すような弾塑性体として設定することができる。
次に実際の地盤に対応する数値解析用のモデルを設定する(ST2)。このモデルはトンネルを掘削する前の初期モデルであり、図1(a)に示すように地表面1がほぼ平坦な地盤 2(平坦であることは必要条件ではない)に対応させて図1(b)に示すように多数の四角形の要素(四角形である必要はなく三角形でもよい)の集合である初期モデルを設定する。そして、各要素に土又は岩の自重による鉛直下方への単位体積重量ρgが作用するものとし、上記特性値に基づいて地盤内の応力度の状態、すなわち初期応力度分布を有限要素法によって解析する(ST3)。ここでρは密度、gは重力の加速度である。
次に、図2(a)に示すように、一例として断面形状が矩形のトンネル3を地盤内に掘削したときの掘削後モデルを設定する(ST4)。この掘削後モデルは、図2(b)に示すように初期モデルから掘削するトンネル3に対応する領域の要素を切り離して取り除いたものとなる。
トンネル3を掘削したときには、掘削部分の土塊又は岩塊の自重が取り除かれるとともに、掘削面4は自由表面になるため、その表面には法線方向に作用する垂直応力度 及び掘削面に沿った方向に作用するせん断応力度は存在しないことから、掘削面4の位置に作用していた応力度が掘削によって解放される。これによって掘削したトンネル付近に生じる応力度の変化を演算する。この演算を行う工程は線形弾性体に対して行う演算の方法と同様であり、広く知られている手法である。
このように掘削土塊又は岩塊の自重の除荷及び掘削面における応力度の解放による地盤の応力度分布の変化量を初期応力度分布に重ね合わせて、つまり要素ごとに地盤の応力度の変化量と初期応力度とを加算することによって掘削後の応力度分布が得られる(ST5)。
掘削後の応力度分布の演算は、推定された土又は岩の特性値に基づいて弾塑性解析によって演算を行う。弾塑性解析は次のように行うことができる。
逆方向に作用させる自重に相当する力及び掘削面で解放される応力度に相当する力は、その力を複数に分割し、段階的に載荷して繰り返し応力度を演算する。
分割した上記力の一つを載荷して行う演算は弾性解析と同様に行うことができるが、応力度を演算するごとに、設定された応力度とひずみとの関係に基づき、逐次に応力度とひずみとの関係を見直しながら繰り返し演算を行う。そして、逆方向に載荷された自重に相当する力及び掘削面で解放される力によって初期応力度から変化した応力度が降伏基準を超えるか否かについて照査する(ST6)。
モール・クーロン式(7)で示される降伏基準は図5に示すように直線で示され、各要素について演算された応力度をモールの応力円として図5上の降伏基準と対比する。そして、降伏基準を超えるか否かを照査する。図5中に符号5で示すようにモールの応力円が降伏基準を超える位置ではせん断破壊が生じていると推定され、塑性的な変形が生じている。また、図5中に符号6で示すモールの応力円のように降伏基準を超えない位置では弾性域にあると推定することができる。
一般に塑性化した領域は、掘削したトンネルの周辺、特に初期応力が高く、地盤の強度が低い領域に生じやすい。
応力度が降伏基準を超える領域ではせん断破壊が生じるため、降伏基準を超える応力度は実際には生じ得ず、降伏基準を超える過剰な応力度は塑性化した領域の周囲にある弾性領域に分配される(ST7)。この過剰な応力度の分配は広く知られている弾塑性解析の手法であり、次のように演算することができる。
図5においてモールの応力円5が降伏基準を超えるときに、図中に符号7で示すモールの応力円で示されるように降伏基準を満たす応力度に低減する。そして降伏基準を超える過剰の応力度を算出し、この応力度に対応する等価な節点力を数値解析用のモデルの各節点に載荷して応力度を演算する。この等価な節点力を載荷して演算された応力度は周辺部に分配され、分配前の応力度に加算することにより過剰の応力度を分配した後の応力度を演算することができる。過剰の応力度を分配した後にも、応力度が降伏基準を超えることがあり、分配後の応力度が降伏基準を超えるか否かの判別を行う(ST8)。降伏基準を超える過剰の応力度が生じているときには同様の演算を繰り返し、過剰の応力度が生じないか、又は無視できる程度とされる所定の値以下となるまで行う。このような演算を分割した荷重のすべてを載荷するまで繰り返す(ST9)。
このようにして演算される、地盤が掘削された後の応力度分布σijは、式(8)に示すように初期応力度の分布σij,0と、弾塑性解析によって演算された応力度の変化量Δσijとの和となっている。
σij = σij,0 + Δσij ・・・・・(8)
本発明に係る地盤の安定性評価方法は、上記弾塑性解析によって得られた応力度の分布σijに基づき、図3中に示す工程群Aを行うことを要部とするものであり、具体的には次のような工程を行う。
地盤を掘削した後の応力度の分布σijの演算において、降伏基準を超える過剰の応力度を分配することによって演算結果は非線形となっており、上記のように演算された地盤掘削後の応力度分布σijは平衡方程式(2)を満足していない可能性がある。そこで本発明の評価方法では、掘削後の応力度分布で塑性域に達している各要素において応力度と重力とのつり合いの条件を考え、式(1)のパラメーターEEについて、次の判別を行う(ST10)。
EE≧0 or EE<0
そして、EEが正の値又は0であれば地盤は安定した状態であると評価することができる。つまり地盤内には自重を支持することができる応力度が作用していると推定される。また、EEが負の値であるときには、地盤内に作用している応力度で自重を支持することができない状態にあると推定することができる。このときには塑性化した領域が不安定となり、重力によって崩落する危険性を有しているものと評価することができる(ST11)。
なお、EE=0であるときには、平衡方程式つまり式(2)を満足する状態であって安定した状態と考えることができる。
図6は、図1および図2に示すように地盤2に断面形状が矩形のトンネル3を掘削したときに掘削面4の付近で安定性が維持されているか否かを上記判別に基づいて評価した結果を示す概略図である。この図は、応力度の分布が対称であるため中心線の片側のみについてトンネル3の上部のパラメーターEEの値を示すものである。
パラメーターEEの値が負となる領域10は、トンネル3の上面付近に現れており、トンネルの上面は不安定な状態で崩落の危険があると評価することができる。
上記の実施例では、トンネルの掘削面付近で不安定となる領域が生じたが、上記判別によってEE<0となる位置が存在するか否かの判断(ST12)により、その後の工程は次にように行うことができる。
まずEE<0となる位置が存在しないときは、掘削後の地盤は安定しており、安全に掘削することが可能であると評価することができる。そして、これ以上に掘削領域を拡大しないとき(ST15)には評価を終了する。
一方、パラメーターEEの判別(ST10)で、図6に示すようにEE<0となる領域が存在するとき(ST12)には、掘削面が不安定となっていることがあり、安全な掘削のための対策工の検討が必要である(ST13)。
また、掘削によって不安定な領域がどのように拡大するかを確認するために、次のように数値解析を続行することができる。
評価を続行するときには、パラメーターEEの判別(ST10)でEE<0となる領域10は崩落するものとして要素を取り除き、図7に示すように新たな崩落後モデル11を設定する(ST14)。そして、トンネルを掘削したときと同様に、崩落によって崩落部分の土塊又は岩塊が地山から離脱すること、つまり離脱した土塊又は岩塊の自重の消滅することを考慮するとともに、崩落によって現れた表面つまり崩落面に作用していた応力度が解放されることを考慮して崩落後の応力度を演算することができる。
この演算は掘削によって土塊又は岩塊が除去されるときと同様の手順(ST5〜ST9)によって行うことができる。
このような演算を行い、応力度が塑性域となっている位置について、式(1)のパラメーターEEの判別を行う(ST10)。
EE<0となる領域が生じているときには、その領域にまで崩落が及ぶ可能性があると判別される。そして、さらにその部分の要素を取り除いた崩落後モデルを設定して、同様の演算を繰り返す。このような演算によってEE<0となる領域がなくなったときの状態まで崩落が生じる可能性があると判断することができる。
パラメーターEEの判別は、次のように行うことができる。
有限要素法による数値解析によって数値解析モデルのそれぞれの要素についてy方向の応力度σy及びせん断応力度τxyが演算されている。これらの値から(Δσy/Δy)の値及び(Δτxy/Δx)の値を求める。
(Δσy/Δy)については、弾塑性有限要素解析によって求められた各要素のy方向の応力度σyから、(Δσy/Δy)を求めようとする要素のy方向(この場合は上下方向)に隣接する幾つかの要素の値を抽出する。これらの値を多項式による連続関数として近似し、その式をyによって微分するとσyのy方向の勾配(Δσy/Δy)がyの関数として求められる。その式に(Δσy/Δy)を求めようとする要素の座標値yを代入することによってその要素の(Δσy/Δy)の値が得られる。
一方、(Δτxy/Δx)の値は(Δσy/Δy)の演算と同様に、x方向(この場合は水平方向)に隣接する幾つかの要素のτxyをxの多項式による連続関数として近似する。この多項式をxによって微分し、(Δτxy/Δx)を求めようとする要素の座標値xを代入することによってその要素の(Δτxy/Δx)の値が得られる。
これらの値を加算し、さら地盤材料の単位体積重量を加えることによってEEの値を求めることができ、このEEの値により式(1)の判別を行う。
また、簡易的には、多項式による連続関数で近似する工程及び連続関数を微分する工程に代えて、複数の要素で得られたσy、τxyの値と各要素の大きさからσy、τxyの変化量すなわち(Δσy/Δy),(Δτxy/Δx)を近似的に演算することもできる。
なお、上記実施の形態では掘削するトンネルの全断面を掘り進めるものとして評価を行っているが、トンネルが断面を複数に分割して段階的に掘削されるときには、掘削の過程にしたがって評価を行うことができる。例えば、図8に示すように先進導坑8を掘削し、その後に掘削する断面を拡大してトンネル3の本坑とするときには、まず先進導坑8の断面を掘削したときの掘削面付近の安定性を上述の工程で評価する。そして、図3のフローに示すように掘削面付近が安定していることを確認した後に(ST12)、掘削領域を拡大するものとし(ST15)、拡大した掘削領域9の要素を取り除いた新たな掘削後モデルを設定する(ST16)。この新たな掘削後モデルによって符号ST5で示す工程から符号ST12で示す工程までを繰り返す。掘削領域を拡大しても掘削面付近が安定していると評価されたときには、段階的な掘削を安全に行うことが可能と判断することができる。
図9は、本発明の評価方法によって地盤の掘削面付近の安定性を評価することができる他の例を示す図であって、地盤を掘削した後の概略断面図及び掘削後の地盤と対応した解析用の掘削後モデルを示す概略図である。掘削後モデルは、掘削した地盤が対称であるため中心線の片側のみについて設定したものである。
この例は、図9(a)に示すように地表面12から深い溝13を掘削したときの壁面の安定性を評価するものであり、地盤の特性値は、図1及び図2に示す評価例と同じ値としている。また、掘削前の状態に相当する初期モデル(図示を省略する)及び掘削後モデルは四角形の要素の集合とするものであり、解析には有限要素法を用いている。
掘削後の応力度の解析は、図1及び図2に示す例と同様に掘削前の実際の地盤と対応する解析用の初期モデルを設定し、初期応力度分布を演算する。そして、図9(b)に示すように掘削した後の地盤と対応する掘削後モデルを設定し、掘削部分の土塊又は岩塊の自重が除荷されるとともに、掘削面の位置に作用している応力度が解放されたときの応力度分布を演算する。つまり、自重に相当する上方への力を作用させるとともに、掘削面で解放される力に相当する等価な節点力を掘削後モデルにおける掘削面の位置に作用させ、土又は岩を弾塑性体として掘削後の応力度分布を演算する。
掘削後の応力度分布の演算において、応力度が降伏基準を超えた要素については塑性領域となっており、これらの要素について演算された掘削後の応力度から式(1)で示されるパラメーターEEについての判別を行う。本例では塑性域となった要素に限定せず、掘削した各深さにおける壁面近くの要素について判別を行っており、その結果を図10に示す。
図10(b)に示すパラメーターEEの値は、図10(a)中のB−B線の位置における値を示すものである。この図に示されるように地表面よりの深さが小さい位置では、塑性変形は生じておらず、応力度は弾性域となっている。したがって、パラメーターEEの値は0となって平衡方程式を満足する状態となっている。深い位置では塑性域となっており、パラメーターEEの値は負の値となり、さらに溝の底付近では、パラメーターEEは正の値に転じる。パラメーターEEの値が負の領域では、壁面が重力による崩落に対して安定性を欠いていると評価することができる。
なお、図9に示す掘削例の評価では、溝を掘削する前の初期状態と溝の掘削が完了したときに解放される応力度を考慮して掘削後の応力度分布を演算するものとしているが、溝を段階的に掘り下げてゆく過程に対応して、応力度の変化量を逐次に演算するものであってもよい。
上記実施の形態は、地盤にトンネル又は溝を掘削したときの掘削面付近の安定性を評価するものであるが、本発明に係る評価方法は、これらに限定されるものではなく、図11(a)に示すように、すでに地下空洞14が形成されている地盤15について、図11(b)に示すように掘削又は切土16を行う場合、図12に示すように地下空洞17に近接して新たな地下空洞18を掘削する場合についても適用することができる。また、すでに形成されている溝に近接して切土や地下空洞の掘削を行う場合についても同様に適用することができる。
このような場合では、すでに地下空洞又は溝が形成されている地盤に対応した数値解析用のモデルつまり初期モデルを設定し、初期応力度分布を演算する。そして、この状態から新たな掘削を行ったときの状態に対応した掘削後モデルを設定し、掘削にともなう応力度の変化を弾塑性解析によって演算して式(1)に基づく判別を行う。これにより、新たな掘削面付近に加え、既に形成されていた地下空洞又は溝の周辺部における地盤の安定性を評価することができる。
また、図13に示すように切土19によって形成される斜面20の安定性を評価する場合にも適用することができる。このときには、切土を行う前の地盤の形状に対応して初期モデルを設定し、切土を行った後の地盤の形状に対応して掘削後モデルを設定することができる。
以上に説明した実施の形態は、いずれも地盤の掘削を行ったときの地盤の安定性を評価するものであるが、掘削を行うことなく又は掘削を行うとともに盛土を行う場合又は地盤上への荷重の載荷もしくは除荷を行う場合についても適用することができる。
例えば、地下空洞、溝、立坑等が設けられている地盤に盛土を行ったときに既存の地下空洞等の周辺部の地盤について安定性を評価することができる。
図14(a)は、既存の地下空洞21が存在する地盤上に盛土22を施す場合を示すものであり、既に形成されている地下空洞の周辺部における地盤について安定性を評価することができる。
このような場合には、既に地下空洞21が形成されている地盤に対応した初期モデルを設定し、初期応力度分布を演算する。そして、図14(b)に示すように盛土部分に対応して新たな要素が付加された盛土後モデルを設定し、盛土22の自重が作用することによる応力度の変化を演算する。演算された盛土後の応力度分布において塑性域に達している位置について式(1)の判別を行うことによって地盤の安定性を評価することができる。このとき、地盤が塑性化した領域は、地下空洞21の周辺に生じる場合の他、盛土自体に生じることもあり、これらの位置において式(1)に基づく判別を行うことによって、地下空洞21の周辺部の地盤の安定性及び盛土22の安定性の双方について評価することができる。
また、地下空洞、溝又は立坑が形成されている地盤の地表面上に構造物等の構築による荷重が作用するときの地下空洞、溝又は立坑の安定性を評価する場合、斜面の上部に近接して荷重が作用する場合の法面の安定性を評価する場合等に適用することもできる。
このような場合にも、図15(a)に示すように、既に地下空洞23が形成されている地盤に対応した初期モデルを設定し、初期応力度分布を演算する。そして、荷重24を載荷した時の応力度分布は、図15(b)に示すように数値解析モデルは変更せず、荷重を作用させて応力度の変化を演算することができる。このように演算された応力度分布における塑性域について式(1)の判別を行うことにより、地下空洞、溝、立坑等の周辺地盤の安定性を評価することができる。
以上に説明した実施の形態は、いずれも2次元問題として数値解析を行っているが、数値解析モデルとして3次元モデルを設定して解析を行うこともできる。
このときには、互いに直交するx軸、y軸、z軸で規定される空間内で複数の要素の集合である数値解析モデルを設定し、2次元で行った解析と同様に土又は岩を弾塑性体として弾塑性解析を行うことができる。そして、数値解析によって得られた応力度が塑性域となっている位置について、式(4)の判別を行うことができる。これにより、3次元的に地盤の安定性を評価することができ、さらに崩壊が及ぶ範囲を推定することも可能となる。
また、以上に説明した実施の形態は方法として説明しているが、上記の方法はコンピュータの動作によって行うことができるものであり、本発明に係るコンピュータプラグラムは、上記の方法をコンピュータに実行させるものである。
1:地表面, 2:地盤, 3:掘削するトンネル, 4:トンネルの掘削面, 5,6,7:モールの応力円, 8:先進導坑, 9:拡大した掘削領域, 10:不安定となる領域, 11:崩落後モデル, 12:地表面, 13:掘削する溝, 14:地下空洞, 15:地下空洞が設けられている地盤, 16:切土, 17:地下空洞, 18:新たに掘削する地下空洞, 19:切土, 20:斜面, 21:地下空洞, 22:
盛土, 23:地下空洞, 24:地盤上に載荷される荷重


Claims (9)

  1. 評価対象となる地盤の調査によって得られたデータ又は類似する調査済地盤のデータに基づいて特定又は推定された、評価対象となる前記地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて地盤の安定性を評価する方法であって、
    前記地盤の形状及び前記特性値に対応し、xy平面上における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する工程と、
    前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた2次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する工程と、
    前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(1)に基づく判別を行う工程と、
    下記の式(1)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置については不安定と評価する工程とを含むことを特徴とする地盤の安定性評価方法。
    Figure 0006918751
  2. 前記数値解析用のモデルを設定する工程は、前記地盤の掘削を行う前の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、
    前記地盤の応力度分布を演算する工程は、
    前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している掘削前の前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、
    前記初期モデルから前記地盤を掘削する部分に対応する要素を削除した掘削後モデルを設定する工程と、
    掘削部分の土又は岩の重量が除荷されることによる応力度分布の変動及び掘削によって生じる掘削面に作用していた応力度が解放されることによる応力度分布の変動が生じた後の応力度分布を演算する工程と、を含み、
    前記掘削による変動後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の地盤の安定性評価方法。
  3. 前記数値解析用のモデルを設定する工程は、盛土を行う前の前記地盤の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、
    前記地盤の応力度分布を演算する工程は、
    前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、
    前記地盤上に盛土をする部分に対応する要素を前記初期モデルに付加した盛土後モデルを設定し、該盛土後モデルを用いて、前記盛土によって変動した後の応力度分布を演算する工程と、を含み、
    前記盛土を行った後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の地盤の安定性評価方法。
  4. 前記数値解析用のモデルを設定する工程は、荷重が載荷される前の前記地盤の形状に対応した初期モデルを設定する工程を含み、
    前記地盤の応力度分布を演算する工程は、
    前記初期モデルを用いて、土又は岩の自重が作用している前記地盤の初期応力度分布を演算する工程と、
    前記初期モデルに、地盤上に載荷又は除荷される荷重に相当する力を作用させ、荷重の載荷又は除荷によって変動する応力度を前記初期応力度分布と足し合わせて、荷重の載荷又は除荷後の応力度分布を演算する工程と、を含み、
    前記載荷又は除荷後の応力度分布において塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の地盤の安定性評価方法。
  5. 前記判別においてEE<0と判別された位置の要素を崩落部分として、該判別に用いる応力度を演算した数値解析用のモデルから除去した崩落後モデルを設定する工程と、
    該崩落後モデルを用いて、自重が作用している前記崩落部分を除去することによって変動した崩落後の応力度分布を演算する工程と、
    前記崩落後の応力度分布において応力度が塑性域に達している位置について、前記式(1)に基づく判別を行う工程と、
    前記式(1)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置では不安定と評価する工程とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれに記載の地盤の安定性評価方法。
  6. 前記崩落によって変動した後の応力度分布を演算する工程は、
    前記崩落部分の判別に用いた応力度分布に、前記崩落部分の土又は岩の自重が除荷されることによる応力度分布の変動及び崩落部分の要素を除去することによって生じる崩落面に作用していた応力度が解放されることによる応力度分布の変動を加算した応力度分布として演算することを特徴とする請求項5に記載の地盤の安定性評価方法。
  7. 評価対象となる地盤の調査によって得られたデータ又は類似する調査済地盤のデータに基づいて特定又は推定された、評価対象となる前記地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて地盤の安定性を評価する方法であって、
    前記地盤の形状及び前記特性値に対応し、xyz空間内における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する工程と、
    前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた3次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する工程と、
    前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(2)に基づく判別を行う工程と、
    下記の式(2)に基づく判別で、EE≧0となる位置では前記地盤が安定で、EE<0となる位置については不安定と評価する工程とを含むことを特徴とする地盤の安定性評価方法。
    Figure 0006918751
  8. 評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて該地盤の安定性評価のための処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
    前記地盤の形状及び前記特性値に基づき、xy平面上における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する処理と、
    前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた2次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する処理と、
    前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(3)におけるEEの値の演算を行う処理と、
    前記EEの演算の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
    Figure 0006918751
  9. 評価対象となる地盤を構成する土又は岩の特性値を用いて該地盤の安定性評価のための処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
    前記地盤の形状及び前記特性値に基づき、xyz空間内における複数の要素の集合である数値解析用のモデルを設定する処理と、
    前記土又は岩を弾塑性体として前記数値解析用のモデルを用いた3次元の数値解析法により、前記土又は岩の自重が作用している前記地盤の応力度分布を演算する処理と、
    前記演算において応力度があらかじめ設定された基準を超えて塑性域に達した位置について、前記応力度分布から下記の式(4)におけるEEの演算を行う処理と、
    前記EEの演算の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
    Figure 0006918751
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