(本開示にかかる一態様を発明するに至った経緯)
まず、本開示に係る一態様の着眼点を説明する。
本発明者らは、目に見えないストレスを客観的に把握する手法を研究している。
即ち、鬱病などの精神疾患を発症すると精神科医による治療に委ねることになるが、鬱病などの精神疾患を発症する前にその兆候を把握して鬱病などの精神疾患を予防することを研究している。
本発明者らは、ストレスと鬱との間には一応の因果関係があるという仮説を置いている。即ち、ストレスは、必ずしも心身に有害とは限らない。しかし、ストレスが蓄積すると、心身に悪影響を与える傾向にあり、その悪影響の一つに鬱が含まれると考えている。
鬱は、原因別に、(1)「身体因性」、(2)「内因性」、(3)「心因性」という三つに分類される。「身体因性」の鬱とは、脳または身体の器官の特質または薬物を原因とする鬱である。「内因性」の鬱とは、遺伝子レベルに原因がある鬱、または、生来脳内に精神疾患を引き起こす原因がある鬱である。「心因性」の鬱とは、心理的なストレスを経験したことを原因とする鬱である。これらの三つを厳密に分けることが難しく、三つが相互に作用し発症する可能性が高いとも言われている(日本国内閣府「平成20年版国民生活白書」第1章 第3節「2.ストレス社会と現代的病理」 http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/10_pdf/01_honpen/pdf/08sh_0103_03.pdf)。妊婦について考えると、上記の(1)〜(3)のすべての原因を満たしやすい環境下にあると言える。妊娠期間は、薬が飲めず、運動にも制約があるため、ストレスを解消しにくい。そのため、妊婦は、鬱病などの精神疾患を発症する可能性がある。
また、産後鬱は、出産後2週間以内に発症しやすいという報告がある(平成25年度総会学会・特別講演「妊産婦の精神面の問題の把握と育児支援」、吉田敬子,沖縄の小児保健 第41号(2014)p.3−8,http://www.osh.or.jp/in_oki/pdf/41gou/kouen.pdf)。そのため、妊娠期間中に産後鬱の兆候を把握して産後鬱を予防することが重要になる。また、妊婦に限らず、一般の人も、仕事のストレスなどによって、鬱病などの精神疾患を発症する可能性はある。
以上を踏まえ、本発明者らは、鬱病などの精神疾患を発症する前において、人のストレスの蓄積の程度を客観的に把握するツールを開発し、鬱病などの精神疾患を予防することを研究している。
ここで、ストレスとの関係で、一般によく知られているコルチゾールに言及する。コルチゾールは、過度なストレスを受けると分泌量が増加するホルモンである。このため、コルチゾールの濃度を検査することで、検査時点におけるストレス量を把握することができる。コルチゾールの濃度は、唾液の採取、採血又は尿検査によって測定することができる。例えば、24時間にわたって蓄尿を行うことで1日のコルチゾールの累積分泌量を測定でき、1日のストレス量を評価することもできる。
コルチゾールの濃度が高値の場合、クッション症候群、ストレス、鬱病、神経性食欲不振症などが疑われる。一方、コルチゾールの濃度が低値の場合、アジソン病、先天性副腎皮質過形成、ACTH不心症、下垂体性副腎皮質機能低下症などが疑われる。
このようにコルチゾールの濃度は、ストレスを評価する上で有効ではあるが、唾液の採取、採血又は尿検査を連続して行うことは現実的ではないので、上記コルチゾールの濃度の時間変化を把握することは困難である。このため、被験者のストレスの時間変化を把握することも難しい。
そこで、本発明者らは、上記コルチゾールに代わるストレスの評価指標として、心身にストレスがかかったときに、人の皮膚表面から放出される生体ガスが存在すると仮説を置いた。その仮説を実験によって証明するため、本発明者らはストレスと相関関係がみられる生体ガスを特定する実験を行った。
具体的には、本発明者らは、30人の被験者に対してそれぞれストレスを感じさせるためのタスクを実行させ、そのタスクを実行する前後の一定期間において、所定の時間間隔で各被験者から唾液が採取されるとともに各被験者の脇及び手から生体ガスが採取された。そして、本発明者らは、上記で採取された唾液からコルチゾール濃度の時間変化をグラフ化し、コルチゾール濃度の時間変化が顕著に見られた被験者を特定した。ここで特定された被験者は、上記タスクでストレスを感じていると認定された。
次に、本発明者らは、上記実験でストレスを感じた被験者の脇の下から採取された約300種類の生体ガスを分析することで、ストレスと相関がありそうな複数の生体ガスを選定した。ここで選定された生体ガスにおいて、タスクを実行している最中及びタスク実行後の生体ガスの放出量を調べると、ストレスを感じた時に7種類の生体ガスが皮膚から放出されることが確認された。上記生体ガスを特定するまでの実験の手順を以下に詳述する。
まず、本発明者らは心理実験室を作った。この心理実験室は、隔離された狭い部屋を内部に有している。この隔離された部屋は、外部から内部を観察できるガラス張りの窓を唯一有している。また、この隔離された部屋は、ストレスタスク実施時に被験者に心理的圧迫を与えるよう設計されている。
本発明者らは、20〜40代の30名の日本人女性を被験者とし、一人ずつ上記心理実験室内に案内した。そして、心理実験室内で被験者の唾液が採取された。被験者の唾液が採取されてから10分後に、被験者は計算問題やスピーチ等のストレスタスクを20分間取り組んだ。上記ストレスタスクの終了直後から30分間、10分ごとに1回ずつ計4回、被験者の唾液が採取された。ここで採取した唾液に対し、唾液コルチゾール定量キット(サリメトリックス社)を用いて各唾液中のコルチゾールの濃度が測定された。
また、上記唾液の採取と平行して、ストレスタスク中の20分間と、ストレスタスクを終えた後10〜30分後の20分間とにおいて、被験者の手と脇の下の2箇所から生体ガスが回収された。手からの生体ガスの捕集は、ガスサンプリング用のバックを被験者の手に被せて手首部分をゴムバンドで固定し、このバック内に生体ガスを吸着する吸着剤を投入することによって行われた。脇の下からの生体ガスの捕集は、被験者の脇の下に吸着剤を挟むことによって行われた。脇の下に挟まれた吸着剤は、コットンに包まれており、吸着剤の位置が脇の下でずれないように包袋で固定された。このように生体ガスの捕集箇所を手及び脇とした理由は、手及び脇に汗腺が集中しているからである。生体ガスを捕集する部位は、上述の手及び脇に限られず、皮膚の表面であればいずれの部位であってもよい。
上記ストレスタスクを行った日とは別の日に、ストレスタスクに代えてリラックスタスクを行ったことが異なる他は、上記ストレスタスクを行った日と同様の手順で被験者の唾液及び生体ガスがそれぞれ回収された。ここでのリラックスタスクは、被験者が自然風景DVDを鑑賞するだけの作業とした。
図1は、ストレスタスク前後及びリラックスタスク前後の上記被験者の唾液中のコルチゾールの濃度の時間変化を示すグラフである。縦軸はコルチゾールの濃度(μg/dL)を示し、横軸はストレスタスク又はリラックスタスクを開始してからの時間(分)を示す。図1の縦軸の上側ほどコルチゾールの濃度が高いことを示し、上述の通り、コルチゾールの濃度が高いほど被験者がストレスを感じていることを示す。図1のグラフ中の網掛けを付した部分(横軸の0分〜20分)がストレスタスクまたはリラックスタスクが行われた期間である。なお、公知の事実として、被験者がストレスを感じてから15分程度で唾液中のコルチゾールの濃度が高まることが知られている。
図1のグラフでは、ストレスタスクを開始してから20分後(つまりストレスタスク終了直後)にコルチゾールの濃度が急上昇しているのに対し、リラックスタスクの前後では、コルチゾールの濃度に変化がほとんど見られない。このことから、図1のコルチゾールの濃度の時間変化を示す被験者は、ストレスタスクによってストレスを感じていたと考えられる。
一方、図1のようなコルチゾールの濃度の時間変化を示さない被験者も存在した。このような被験者は、ストレスタスクによってストレスを感じなかったため、唾液中にコルチゾールが分泌されなかったものと考えられる。このようにストレスを感じなかった被験者の生体ガスを評価しても、ストレスと生体ガスとの因果関係を把握することはできない。このため、ストレスを感じなかった被験者は、生体ガスの評価対象から除外された。このようにして被験者30人のうち、ストレスタスク前後でコルチゾールの濃度が顕著に上昇した上位20人(被験者No.1〜20)の被験者が特定された。
上記で特定された各被験者の脇の下から回収された各吸着剤(ストレスタスク中、ストレスタスク後、リラックスタスク中、リラックスタスク後)をそれぞれ加熱することによって各吸着剤に吸着された被験者の生体ガスが脱離された。ここで脱離された生体ガスをガスクロマトグラフィー質量分析装置(Gas Chromatography−Mass spectrometry:GC/MS(アジレントテクノロジー社製))で分析することによって生体ガスのマススペクトルデータが得られた。このマススペクトルデータを同社の解析ソフトを用いてアメリカ国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)データベースと比較することで、7種類の生体ガス[こはく酸ジメチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、グルタル酸ジメチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート、及び2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン]が特定された。
図2は、被験者の脇の下から回収されたこはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)のマススペクトルデータであり、図3は、NISTデータベースのButanedioic acid,dimethyl ester(「こはく酸ジメチル」と同義)のマススペクトルデータである。図2及び図3におけるマススペクトルを対比すると、ほぼ同一の質量電荷(m/z)において同様のスペクトルピークが観察された。このようにしてこはく酸ジメチルが生体ガスとして含まれることが特定された。同様の手法により他の6種類の生体ガスが含まれていることが特定された。
参考までに、図4、図6、図8、図10、図12、及び図14はそれぞれ、被験者の脇の下から回収された2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、グルタル酸ジメチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート、及び2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンのマススペクトルデータであり、図5、図7、図9、図11、図13及び図15はそれぞれ、上記各生体ガスのNISTデータベースのマススペクトルデータである。すなわち、図5は、NISTデータベースのEthanol,2−(2−butoxyethoxy)(「2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール」と同義)のマススペクトルデータであり、図7は、NISTデータベースのEthanol,1−(2−butoxyethoxy)(「1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール」と同義)のマススペクトルデータであり、図9は、NISTデータベースのEthanol,2−(2−methoxyethoxy)(「2−(2−メトキシエトキシ)エタノール」と同義)のマススペクトルデータであり、図11は、NISTデータベースのPentanedioic acid,dimethyl ester(「グルタル酸ジメチル」と同義)のマススペクトルデータであり、図13は、NISTデータベースのEthanol,2−(2−butoxyethoxy)−,acetate(「2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート」と同義)のマススペクトルデータであり、図15は、NISTデータベースの2,5−cyclohexadiene−1−one,2,6−bis(1,1―dimethylethyl)―4―hydroxy―4―methylのマススペクトルデータである。
次に、本発明者らは、上記20人の被験者それぞれにおいて、ストレスタスク中及びその後、並びにリラックスタスク中及びその後における各被験者(被験者No.1〜20)の脇から放出された各生体ガスのマススペクトルのピーク面積を算出し、各生体ガスのピーク面積をストレスタスク中・後とリラックスタスク中・後とでそれぞれ対比した。その結果、300を超える生体ガス成分の中から、ストレスと関連する候補として複数の物質が選定された。これらの候補物質の中で、7種の生体ガス、すなわち、こはく酸ジメチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、グルタル酸ジメチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート、及び2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンは、ストレスとの相関関係が明確に確認できた。各生体ガスの化学式はそれぞれ以下の化学式に示される通りである。
次に、上述の各条件においてGC/MSで得られたマススペクトルから上記各生体ガスのピーク面積が算出された。図16〜図21に示す表は、ストレスタスク中、ストレスタスク後、リラックスタスク中、及びリラックスタスク後において、各被験者(被験者No.1〜20)の脇から放出された生体ガスをGC/MSで分析した時に得られたマススペクトルにおける各生体ガスのピーク面積の一覧表である。
なお、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノールおよび、1−(2−ブトキシエトキシ)エタノールは、分子量が同じで、構造が一部異なっている物質である。図5と図7を見て分かるように、マススペクトルもほぼ同様のパターンを示しており、本実験におけるGC/MSによる分析では明確な区別ができない。図17に示すピーク面積は、クロマトグラムの保持時間などから、各被験者間で同一の物質が検出されていると想定され、その物質は、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、もしくは1−(2−ブトキシエトキシ)エタノールのいずれか一方であると考えられる。そのため、図17は、GC/MSで得られたいずれか一方の生体ガスのマススペクトルから算出されたピーク面積を示している。
図16〜図21に示すマススペクトルにおけるピーク面積の値が大きいほど脇の下から放出された生体ガスの分量が多いことを示す。図22〜図27は、図16〜図21の一覧表から得られた各生体ガスのピーク面積の平均値及び誤差範囲を表した棒グラフである。
図22〜図27において、ストレスタスクにおける各生体ガスのピーク面積と、リラックスタスクのそれとを比較すると、リラックス条件よりもストレス条件の方が各生体ガスのピーク面積が大きかった。また、図22〜図27におけるストレスタスク中の各生体ガスのピーク面積と、ストレスタスク後のそれとを比較すると、ストレスタスク中の各生体ガスのピーク面積は、ストレスタスクを終えた後のそれよりも大きい傾向が見られた。一方、リラックスタスク中とリラックスタスクを終えた後では、各生体ガスのピーク面積に顕著な差が確認されなかった。
上記結果から、リラックスタスク中よりもストレスタスク中の方が被験者の脇から上記各生体ガスがより多く放出される点、及びストレスタスクを終えた後よりもストレスタスク中の方が被験者の脇から上記各生体ガスがより多く放出される傾向がある点が明らかとなった。これらの結果から各生体ガスの放出量は、被験者のストレスと相関関係があると言える。したがって、各生体ガスは、被験者のストレス量を客観的に評価する指標になり得る。なお、本発明者らの認識によると、前記選定した生体ガスをストレスと関連づけて研究した論文などの事例は本出願前に存在していない。
上記実験結果に基づき、本発明者らは以下のストレス由来の生体ガスを特定することに成功した。これらの知見は、本出願前にはなかったと本発明者らは信じている。また、ストレス由来の生体ガスは、年齢、食べ物、及び人種により、異なると考えられるため、いずれか1つの絞ることはせず、それぞれが有力な候補であると考えている。
次に、上記各生体ガスのいずれかを検知するデバイスを開発し、これにより、これまで主観的に感じていたストレスを、客観的に捉えることに成功した。すなわち、人の皮膚表面から放出される生体ガスを、センサなどのデバイスにて測定する方法によると継続測定が可能となる。この場合、一日の中で、いつストレス反応が生じたのか、ストレス反応を生じたときにその人は何をしていたのか等も把握できるようになる。これによりストレスの時間変化を客観的に把握することができ、ストレスをコントロールできるようになることが期待される。
さらに、本発明者らは、ストレス由来の生体ガスを測定し、ストレスを客観的に把握できるようにしたことを、最終目的である鬱病などの精神疾患の予防につなげなければならない。本開示に係る発明の各態様はそのことに関わるものである。
以上のような、本発明者らの鋭意研究の結果得られた新規な知見に基づき、本発明者らは以下のような各態様に係る発明を想到するに至った。
本開示に係る発明の一態様は、情報処理システムにおける情報提供方法であって、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得された前記ユーザにおける前記所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を複数のタイミングで、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報と共にネットワークを介して取得し、
単位期間当たりの前記所定の生体ガスの正常範囲の上限を表す情報を記憶するメモリから前記正常範囲の上限を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記ユーザの所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限を超える時間帯を判断し、
前記判断された時間帯を示す情報を前記ユーザの情報端末に出力し、
前記情報端末において前記情報が示した時間帯が表示され、
前記所定の生体ガスは、
こはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(1−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Methoxyethoxy)ethanol)、
グルタル酸ジメチル(Dimethyl glutarate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート(2−(2−Butoxyethoxy)ethyl acetate)、または、
2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン(2,6−Di(tert−butyl)−4−hydroxy−4−methyl−2,5−cyclohexadiene−1−one)、のいずれか1つである。
特許文献1は、発汗、脈拍、血流、瞬目及び顔の表情などの情報を用いている。しかし、これらの情報が示す値は、人が階段を登り降りした場合、変化する。従って、これらの情報は、ストレスとは無関係ではないものの、ストレスとは無関係な要因によっても変化する。そのため、ストレス量を客観的に判断するための判断材料としては、必ずしも十分ではなく、誤判断の恐れがある。
これに対し、本態様では、ストレスとの関係が推定される所定の生体ガスを用いてストレス量を客観的に判断している。そのため、人の主観的な感覚に左右されず、ストレスの累積度合いを客観的に把握できる。前記所定の生体ガスとは、以下のいずれか1つを指す。
こはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(1−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Methoxyethoxy)ethanol)、
グルタル酸ジメチル(Dimethyl glutarate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート(2−(2−Butoxyethoxy)ethyl acetate)、または、
2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン(2,6−Di(tert−butyl)−4−hydroxy−4−methyl−2,5−cyclohexadiene−1−one)
その結果、前記生体ガス情報に基づき、前記ユーザにおける所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限を超える時間帯を判断し、前記判断された時間帯を示す情報を前記ユーザの情報端末に出力する。これにより、その人自身のストレスの状態を本人が客観的に認識できるので、鬱病などの精神疾患の予防が期待できる。
さらに、ユーザは、何が自分にとってのストレッサー(ストレス要因)なのか把握していない場合も多い。前記情報端末において正常範囲の上限を超える時間帯を表示させることで、例えば、一日を振り返って、その日にどれだけストレスを感じていたのかを客観的に把握でき、また、本態様では、正常範囲の上限を超える時間帯にそのユーザに生じた出来事をヒントに、そのユーザのストレッサーを見つけ出すことができる。
このように、例えば、一日の中で、いつストレス反応が生じたのか、ストレス反応を生じたときにそのユーザは何をしていたのか等も、把握できるようになる。これにより、ストレスの客観的な把握が可能となり、ストレスをコントロールできるようになることが期待される。
また、本態様では、前記単位期間当たりの前記所定の生体ガスの濃度の正常範囲の上限は、
事前の設定期間において取得された前記生体ガス情報に基づき前記ユーザに個別の情報として設定されてもよい。
この場合、前記ユーザ自身のデータを基準値として用いることになる。所定の生体ガスの放出量は、年齢、食べ物、体重などの影響を受け、個人差があるため、正確な判断をするためには前記ユーザ自身のデータを用いることが好ましい。
これに対し、特許文献1では、参照情報をどう持つかについて一切開示がない。
本態様によると、前記ユーザ自身のデータを基準値としてストレスの程度を判断する。そのため、一人一人に適した判断が可能となる。
また、本態様では、前記単位期間当たりの前記所定の生体ガスの濃度の正常範囲の上限は、
前記ユーザを含む複数のユーザに共通して使用される情報として前記メモリに予め記憶されていてもよい。
この場合、基準値が複数のユーザに共通して使用されるので、ユーザ毎に基準値を生成及び管理する手間が省かれる。
また、本態様では、前記情報端末において前記情報が示した時間帯は、
前記ユーザのスケジュール情報に重畳されて表示されていてもよい。
この場合、ユーザはスケジュール情報とストレスが高い時間帯とを照合することで、ストレスと自身の行動との因果関係を容易に確認できる。
また、本態様では、前記所定の生体ガスを検出するセンサは、
前記ユーザに装着されるデバイスに内蔵されていてもよい。
この場合、所定の生体ガスを検出するセンサが、ユーザが装着するデバイスに内蔵されているので、例えば、ユーザが日常生活において装着する物体にセンサの機能を持たせることができる。その結果、センサを装着することに対するユーザの煩わしさを低減できる。
また、本態様では、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報は、前記生体ガスを前記センサにて取得した各時刻に対応していてもよい。
この場合、生体ガスがセンサにて取得された時刻に生体ガスの濃度が正常範囲の上限を超えたか否かの判定が行われているので、ユーザに対してストレスのあった時間帯を正確に通知できる。なお、本態様において、「前記生体ガスを前記取得した各時刻に対応する」とは、センサが生体ガス情報を計測した時刻を指してもよいし、サーバ等の処理装置がネットワークを介してセンサから生体ガス情報を取得した時刻を指してもよい。
本開示の別の一態様に係る情報処理システムは、
サーバ装置と情報端末とを含む情報処理システムであって、
前記サーバ装置は、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得された前記ユーザにおける前記所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を複数のタイミングで、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報と共にネットワークを介して取得し、
単位期間当たりの前記所定の生体ガスの正常範囲の上限を表す情報を記憶するメモリから前記正常範囲の上限を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記ユーザの所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限を超える時間帯を判断し、
前記判断された時間帯を示す情報を前記情報端末に出力し、
前記情報端末は、
前記判断された時間帯を示す情報を前記情報端末のディスプレイに表示し、
前記所定の生体ガスは、
こはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(1−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Methoxyethoxy)ethanol)、
グルタル酸ジメチル(Dimethyl glutarate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート(2−(2−Butoxyethoxy)ethyl acetate)、または、
2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン(2,6−Di(tert−butyl)−4−hydroxy−4−methyl−2,5−cyclohexadiene−1−one)、のいずれか1つである。
また、本開示の別の一態様に係る情報端末は、上記情報処理システムに使用されるものであってもよい。
また、本開示の別の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータを用いた情報処理方法であって、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得された前記ユーザの所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を取得し、
単位期間当たりの前記所定の生体ガスの正常範囲の上限を表す情報を記憶するメモリから前記正常範囲の上限を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記ユーザの所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限を超えたと判断した場合、前記ユーザのストレスが所定の正常範囲を超えている旨の情報をディスプレイに表示するために出力し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記ユーザの所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限以下であると判断した場合、前記ユーザのストレスは前記所定の正常範囲内にある旨の情報を前記ディスプレイに表示するために出力し、
前記所定の生体ガスは、
こはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(1−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Methoxyethoxy)ethanol)、
グルタル酸ジメチル(Dimethyl glutarate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート(2−(2−Butoxyethoxy)ethyl acetate)、または、
2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン(2,6−Di(tert−butyl)−4−hydroxy−4−methyl−2,5−cyclohexadiene−1−one)、のいずれか1つである。
本態様によれば、所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限を超えた場合、ユーザのストレスが正常範囲を超えている旨の情報がディスプレイに表示される。一方、所定の生体ガスの濃度が前記正常範囲の上限以下の場合、ユーザのストレスは正常範囲内にある旨の情報がディスプレイに表示される。そのため、ユーザに対して、現在、ストレス状態にあるか否かの客観的な判断結果を知らせることができる。
(実施の形態1)
(予想データ)
図28A、図28Bは、本開示の実施の形態1において取り扱われる生体データの予想データを示すグラフである。図28A、図28Bにおいて、縦軸は生体ガス濃度(生体ガス情報の一例)を示し、横軸は時間を示している。この予想データは実際に測定された生体データの測定値を示すものではなく、あくまで、生体データを予測したデータである。生体データとは、後述するようにユーザに装着されたセンサによって測定された生体データである。生体データは、ユーザの皮膚表面から放出される生体ガスのうち計測対象の生体ガスの濃度(生体ガス濃度)の計測値を示す。本開示では、計測対象となる生体ガスは下記の7種の生体ガスである。生体ガス濃度の単位は例えばμg/dLである。
すなわち、計測対象となる生体ガスは、
こはく酸ジメチル(Dimethyl succinate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
1−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(1−(2−Butoxyethoxy)ethanol)、
2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(2−(2−Methoxyethoxy)ethanol)、
グルタル酸ジメチル(Dimethyl glutarate)、
2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセタート(2−(2−Butoxyethoxy)ethyl acetate)、または、
2,6−ジ(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン(2,6−Di(tert−butyl)−4−hydroxy−4−methyl−2,5−cyclohexadiene−1−one)のいずれか1つである。
図28Aでは、ストレスがないときのユーザの生体データの時間的な推移が示されており、図28Bでは、ストレスがあるときのユーザの生体データの時間的な推移が示されている。図28Aに示されるように、ストレスがないときの生体データは、生体ガス濃度が正常範囲内にある。一方、図28Bに示されるように、ストレスがあるときの生体データは、生体ガス濃度が正常範囲の上限DHを超える頻度が高くなる。図28Bの例では、6時から24時までの時間帯において、4回生体ガス濃度が上限DHを超えている。
本開示は、生体ガス濃度が上限DHを超える時間帯を判断し、判断された時間帯を示す情報をユーザに通知することで、鬱病などの精神疾患の予防を図る。
(センサ)
図29は、本開示の実施の形態1において、生体データを測定するセンサ3の構成の一例を示すブロック図である。
本開示では、センサ3として、例えば、電界非対称性イオン移動度分光計(FAIMS:Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry)の技術を利用するセンサが採用される。電界非対称性イオン移動度分光計は、2種類以上の物質を含有する混合物から少なくとも1種類の物質を選択的に分離するために用いられる。
センサ3は、検出部33、制御部31、及び通信部34を備える。検出部33は、イオン化装置301、フィルタ302、検出器303、電源304、及び高周波アンプ305を備える。なお、図29において、矢印線は電気信号の流れを示し、イオン化装置301、フィルタ302、及び検出器303を繋ぐ線は生体ガスの流れを示す。
電源304及び高周波アンプ305はそれぞれイオン化装置301及びフィルタ302を駆動するために用いられる。イオン化装置301を用いてイオン化された生体ガスの中から、所望の生体ガス(本開示では上記7種の生体ガスのいずれか1つ)のみをフィルタ302によって分離し、フィルタ302を通過したイオン量を検出器303で検出することによって生体ガス濃度を示す情報を取得する。取得された情報は通信部34を介して出力される。センサ3の駆動は制御部31によって制御される。
図30は、図29に示すセンサ3の動作をより詳細に説明する図である。イオン化装置301に供給される混合物は、ユーザの皮膚表面から放出された生体ガスである。イオン化装置301は、ユーザの皮膚表面から放出された生体ガスを取り込む取込口を備えていてもよい。また、この取込口には生体ガスを吸着する吸着剤が設けられてもよい。更に、吸着剤に吸着した生体ガスを吸着剤から脱離させるヒータが設けられてもよい。図30の例では、説明の便宜上、混合物は、3種類のガス202〜204を含有することとする。ガス202〜204は、イオン化装置301を用いてイオン化される。
イオン化装置301は、コロナ放電源や、放射線源などを含み、ガス202〜204をイオン化させる。イオン化されたガス202〜204は、イオン化装置301に隣接して配置されたフィルタ302に供給される。なお、イオン化装置301を構成するコロナ放電源や放射線源は、電源304から供給される電圧によって駆動される。
フィルタ302は、互いに平行に配置された平板状の第1電極201a及び平板状の第2電極201bを備える。第1電極201aは接地されている。一方、第2電極201bは、高周波アンプ305に接続されている。
高周波アンプ305は、非対称な交流電圧を生成する交流電圧源205aと、直流電圧である補償電圧CVを生成する可変電圧源205bとを備える。交流電圧源205aは、非対称な交流電圧を生成し、第2電極201bに印加する。可変電圧源205bは、一端が第2電極201bに接続され、他端が接地されている。これにより、交流電圧源205aで生成された非対称な交流電圧は、補償電圧CVが重畳され、第2電極201bに供給される。
第1電極201a及び第2電極201b間には、イオン化された3種類のガス202〜204が供給される。3種類のガス202〜204は、第1電極201a及び第2電極201bの間で生じた電場の影響を受ける。
図31は、電場の強度及びイオン移動度の比の関係を示すグラフであり、縦軸はイオン移動度の比を示し、横軸は電場の強度(V/cm)を示す。αはイオンの種類によって決まる係数である。イオン移動度の比は、低電界極限での移動度に対する高電界中での移動度の比を示す。
曲線701に示されるように、係数α>0のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、より活発に移動する。300未満の質量電荷比(mass−to−charge ratio)を有するイオンは、このような動きを示す。
曲線702に示されるように、係数αがほぼ0のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、より活発に移動するが、さらに電場の強度を増すと、移動度が低下する。
曲線703に示されるように、係数αが負のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、移動度が低下する。300以上の質量電荷比(mass−to−charge ratio)を有するイオンは、このような動きを示す。
このような移動度の特性の違いのため、図30に示されるように、3種類のガス202〜204がフィルタ302の内部で異なる方向に進行する。図30の例では、ガス203のみがフィルタ302から排出される一方、ガス202は第1電極201aの表面にトラップされ、かつガス204は第2電極201bの表面にトラップされる。このようにして、3種類のガス202〜204からガス203のみが選択的に分離され、フィルタ302から排出される。すなわち、センサ3は、電場の強度を適切に設定することで、所望のガスをフィルタ302から排出させることができる。なお、電場の強度は、補償電圧CVの電圧値及び交流電圧源205aが生成する非対称な交流電圧の波形により決定される。そのため、センサ3は、補償電圧CVの電圧値及び非対称な交流電圧の波形を計測対象となる生体ガスの種類(本開示は、上記7種の生体ガスのいずれか1つ)に応じて予め定められた電圧値及び波形に設定することで、計測対象となる生体ガスをフィルタ302から排出させることができる。
検出器303は、フィルタ302に隣接して配置される。すなわち、フィルタ302は、イオン化装置301及び検出器303間に配置される。検出器303は、電極310及び電流計311を備え、フィルタ302を通り抜けたガス203を検出する。
検出器303に到達したガス203は、電極310に電荷を受け渡す。受け渡された電荷の量に比例して流れる電流の値が電流計311によって測定される。電流計311によって測定された電流の値から、ガス203の濃度が測定される。
(ネットワーク構成)
図32は、本開示の実施の形態1に係る情報処理システムのネットワーク構成の一例を示す図である。情報処理システムは、ユーザU1のストレスをケアするケアサービスを提供する。このケアサービスは、例えば、ユーザU1が加入する保険会社等によって提供される。なお、ケアサービスの実際の運用は、例えば、保険会社から委託を受けたセンサ3を製造するメーカが行ってもよい。また、このケアサービスは、ケアサービス自身を提供する保険会社とは異なるサービスプロバイダによって提供されてもよい。
保険会社は、例えば、生命保険や医療保険等の保険サービスをユーザU1に提供する。そして、保険会社は、例えば、ユーザU1にセンサ3を貸与し、ユーザU1の生体データを取得して、ユーザU1のストレス状態を管理することで、ユーザU1の精神疾患に基づく病気を予防する。これにより、保険会社は保険金の支出の節約を図る。このケアサービスは、ユーザU1に、センサ3の装着を強いるものなので、負担と感じるユーザU1もいる。そこで、保険会社は、このケアサービスの見返りとして、ユーザU1が負担する保険料を割り引くといった保険プランを提供することもできる。
情報処理システムは、サーバ1(サーバ装置の一例)、ユーザ端末2(情報端末の一例)、センサ3を備える。
サーバ1及びユーザ端末2は、ネットワークNTを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNTとしては、インターネット通信網、携帯電話通信網、及び公衆電話回線網を含むネットワークで構成される。センサ3及びユーザ端末2は、例えば、IEEE802.11bの無線LANや、ブルーツース(登録商標:IEEE802.15.1)等の近距離無線通信を介して通信可能に接続されている。
サーバ1は、例えば、1又は複数のコンピュータを含むクラウドサーバで構成されている。サーバ1は、CPU、FPGA等のプロセッサとメモリとを含む。サーバ1は、センサ3で測定されたユーザU1の生体データをユーザ端末2及びネットワークNTを介して取得し、生体ガス濃度が正常範囲内にあるか否かを判定する。
ユーザ端末2は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の携帯可能な情報処理装置で構成されている。なお、ユーザ端末2は、据え置き型のコンピュータで構成されてもよい。ユーザ端末2は、ユーザU1によって所持される。
センサ3は、ユーザU1の例えば腕に装着され、ユーザU1の脇から放出される生体ガスの濃度を検出する。センサ3は、例えば、装着ベルトを備え、ユーザはこの装着ベルトを脇の近傍の腕に巻くことで、センサ3を脇の近傍に取り付ける。これにより、センサ3は脇から放出される生体ガスを検出できる。脇の近傍の腕の位置としては、例えば、腕と胴体の付け根からやや肘側の腕の位置が採用できる。なお、センサ3は、生体ガスが脇から多く放出されることを考慮して、例えば、生体ガスを取得する取込口が腕の裏側に位置するように取り付けられればよい。ここで、センサ3の取り付け位置として脇の近傍の腕の位置が採用されたのは、脇自体にセンサ3を取り付けることは困難だからである。但し、これは一例である。例えば、センサ3は、ユーザU1が着るシャツの脇の部分に取り付けられても良い。これにより、センサ3は脇と対面するので、より確実に生体ガスを取得できる。なお、このシャツは、ユーザに装着されるデバイスの一例である。
図33は、図32に示す情報処理システムの詳細な構成の一例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、メモリ12、及び通信部13を備える。制御部11は、プロセッサで構成され、データ解析部111を備える。データ解析部111は、例えば、プロセッサがメモリ12に記憶された本開示の情報提供方法をコンピュータに実行させるプログラムを実行することで実現される。なお、本開示の情報提供方法をコンピュータに実行させるプログラムは、ネットワークを通じてダウンロードすることで提供されてもよいし、コンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体に記憶させることで提供されてもよい。
データ解析部111は、センサ3が取得した生体データを通信部13が受信すると、その生体データを通信部13から取得する。そして、データ解析部111は、メモリ12から生体ガス濃度の正常範囲の上限DHを示す情報を読み出し、生体データが示す生体ガス濃度が上限DHを超える時間帯を判定する。そして、データ解析部111は、その生体データを判定結果と対応付けてメモリ12が記憶する生体データテーブルT4(図34)に登録する。更に、データ解析部111は、規定期間(例えば、1日、半日、2日、1週間、1ヶ月)の生体データが蓄積されると規定期間の生体データにおいて、生体ガス濃度が上限DHを超えた時間帯を示す情報(以下、「時間帯情報」と記述する。)をユーザ端末2に通信部13を介して送信する。
メモリ12は、生体ガス濃度の正常範囲を示す情報を記憶する。本開示では、メモリ12は、図34に示すように、正常範囲データテーブルT2及び生体データテーブルT4を記憶する。図34は、メモリ12が記憶するテーブルのデータ構成の一例を示す図である。
正常範囲データテーブルT2は、ケアサービスを受ける1又は複数のユーザの生体ガス濃度のストレスの正常範囲を記憶するテーブルである。正常範囲データテーブルT2は、1のユーザに対して1つのレコードが割り当られてており、「ユーザID」、「計測日時」、及び「正常範囲」を対応付けて記憶する。
「ユーザID」フィールドには、ケアサービスを受けるユーザを一意的に識別するための識別子が記憶されている。「計測日時」フィールドには、正常範囲の算出に使用された生体データの計測日時の時間帯が記憶されている。「正常範囲」フィールドには「計測日時」フィールドに記憶された生体データを用いて算出された正常範囲が記憶されている。「正常範囲」フィールドには、正常範囲の下限DLと上限DHとが記憶されている。
例えば、ユーザID「S00001」のユーザは、2017年1月20日の20時から21時までの時間帯に計測された生体データを用いて正常範囲が算出されている。
このように、本開示では、ユーザ毎の正常範囲が算出されているので、各ユーザに適した正常範囲を用いて各ユーザのストレスを判定することができ、判定精度を高めることができる。本開示では、ユーザ毎の正常範囲が算出されているが、これは一例であり、全ユーザの中の一部のユーザにおいて算出された正常範囲の平均値が全ユーザの正常範囲として適用されてもよい。或いは、全ユーザの正常範囲の平均値が全ユーザの正常範囲として適用されてもよい。これらの場合、ユーザ毎に正常範囲を記憶及び算出する必要がないので、メモリ消費量の節約及び処理ステップの低減を図ることができる。
生体データテーブルT4は、センサ3が取得した生体データを記憶するテーブルである。生体データテーブルT4は、1の生体データに対して1つのレコードが割り当てられており、「ユーザID」、「日」、「時間」、「濃度」、及び「判定結果」を対応付けて記憶する。
「ユーザID」フィールドには、正常範囲データテーブルT2が記憶するユーザIDと同じユーザIDが記憶されている。「日」フィールドには、生体データの測定日が記憶されている。「時間」フィールドには、生体データが測定された時間帯が記憶されている。「濃度」フィールドには、生体データが示す生体ガス濃度が記憶されている。「判定結果」フィールドには、生体ガス濃度が正常範囲内であるか否かの判定結果が記憶されている。なお、「時間」フィールドには、生体データをサーバ1が取得した時間帯が記憶されてもよい。
例えば、生体データテーブルT4において1行目のレコードには、ユーザID「S00001」のユーザの2017年2月15日の10時〜11時の時間帯に測定された、生体ガス濃度「○○」の生体データが記憶されている。また、この1行目のレコードには、生体ガス濃度が正常範囲内にあったので、「判定結果」フィールドには「正常」が記憶されている。一方、2行目のレコードでは、生体ガス濃度が正常範囲外であったので、「判定結果」フィールドには、「異常」が記憶されている。
なお、生体データテーブルT4では、ユーザID「S00001」のユーザのみの生体データが示されているが、これは一例であり、生体データテーブルT4には、ケアサービスを受ける全ユーザの生体データが記憶されている。
図33に参照を戻す。通信部13は、例えば、サーバ1をネットワークNTに接続させる通信回路で構成され、センサ3で計測された生体データを受信したり、時間帯情報をユーザ端末2に送信したりする。
ユーザ端末2は、制御部21、メモリ22、表示部23(ディスプレイの一例)、及び通信部24を備える。制御部21は、CPU等のプロセッサで構成され、ユーザ端末2の全体制御を司る。メモリ22は、種々のデータを記憶する。本開示では、メモリ22は、特に、ユーザU1にケアサービスを受けさせるためにユーザ端末2で実行されるアプリケーションを記憶する。また、メモリ22は、生体データに対応付けて送信されるユーザIDを記憶する。
表示部23は、例えば、タッチパネルを備えるディスプレイで構成され、種々の情報を表示する。本開示では、表示部23は、特に、時間帯情報を表示する。通信部24は、ユーザ端末2をネットワークNTに接続させると共に、ユーザ端末2をセンサ3と通信させるための通信回路で構成される。本開示では、通信部24は、特に、センサ3から送信された生体データを受信し、受信した生体データにメモリ22に記憶されたユーザIDを対応付けてサーバ1に送信する。また、本開示では、通信部24は、特に、サーバ1から送信された時間帯情報を受信する。なお、表示部23は、タッチパネルで構成されなくてもよい。この場合、ユーザ端末2は、ユーザからの操作を受け付ける操作部を備えればよい。
センサ3は、制御部31、メモリ32、検出部33、及び通信部34を備える。制御部31は、CPUやDSP等のプロセッサで構成され、センサ3の全体制御を司る。メモリ32は、例えば、検出部33が計測した生体データを一時的に記憶する。また、メモリ32は、交流電圧源205aが非対称な交流電圧を生成するために必要になるデータ(例えば、周波数やプラス側の振幅、及びマイナス側の振幅)を記憶する。また、メモリ32は、補償電圧CVの電圧値を記憶する。
通信部34は、無線LANやブルーツース(登録商標)等の通信回路で構成され、検出部33が計測した生体データをユーザ端末2に送信する。この生体データは、ユーザ端末2の通信部24によって受信され、ネットワークNTを介してサーバ1に送信される。
(シーケンス)
図35は、図33に示す生体情報システムの処理の一例を示すシーケンス図である。このシーケンス図は、S101からS106までの初期フェーズと、S201以降の通常フェーズとに分けられる。初期フェーズは、ユーザの正常範囲を算出するためのフェーズであり、ケアサービスの導入直後に行われる。通常フェーズは、初期フェーズで算出された正常範囲を用いてユーザのストレス状態を監視するフェーズである。
初期フェーズは、例えば、ケアサービスを受けるためのユーザ端末2用のアプリケーションをユーザがユーザ端末2において初めて起動させたときに実行される。
まず、ユーザ端末2の表示部23は、ユーザ情報の入力を受け付ける(S101)。ここで、表示部23は、ユーザID、電話番号、メールアドレス、及びSNSアカウント等のユーザ情報をユーザに入力させるための登録画面を表示することで、ユーザ情報をユーザに入力させればよい。ここで、ユーザIDは、例えば、ユーザが保険会社と保険契約を結んだ際に発行されたユーザIDが採用されてもよい。或いは、ユーザIDは、サーバ1が後述のS102でユーザ情報を受信した際にユーザIDを発行し、ユーザ端末2に通知されるものであってもよい。この場合、ユーザは、登録画面においてユーザIDを入力する必要はない。
次に、ユーザ端末2の制御部21は入力されたユーザ情報を通信部24を用いてサーバ1に送信する(S102)。送信されたユーザ情報は、サーバ1の制御部41によって、ケアサービスを受ける1又は複数のユーザのユーザ情報を管理するユーザ情報テーブル(図略)に記憶される。
次に、センサ3の検出部33は、ユーザの初期生体データを計測する(S103)。次に、センサ3の制御部31は、計測した初期生体データを通信部34を用いてユーザ端末2に送信する(S104)。
ユーザ端末2において、通信部24が初期生体データを受信すると、制御部21は、初期生体データをユーザIDと対応付けてサーバ1に送信する(S105)。
初期生体データは、ユーザの正常範囲を算出するために用いられるので、ユーザはストレス状態にないことが前提となる。そこで、ユーザ端末2は、ユーザ情報の送信(S102)が終了すると、例えば、「生体データを計測しますので、センサを装着してしばらく安静にして下さい。」というようなメッセージを表示部23に表示させてもよい。サーバ1のデータ解析部111は、正常範囲を設定する(S106)。設定された正常範囲は、サーバ1のデータ解析部111によって、ユーザIDと対応付けて正常範囲データテーブルT2に記憶される。
以上で、初期フェーズが終了される。以降、通常フェーズが実行される。
まず、センサ3において、検出部33は生体データを計測し(S201)、制御部31は、生体データを通信部34を用いてユーザ端末2に送信する(S202)。
次に、ユーザ端末2において、通信部24が生体データを受信すると、制御部21は生体データをユーザIDと対応付けて通信部24を用いてサーバ1に送信する(S203)。
次に、サーバ1において、通信部13が生体データを受信すると、データ解析部111は、生体データを正常範囲と比較し、判定結果を蓄積する(S204)。ここで、判定結果は、ユーザIDをキーにして、正常範囲データテーブルT2の該当するユーザのレコードの「判定結果」フィールドに蓄積される。
次に、データ解析部111は、規定期間が経過すると、規定期間内において、生体ガス濃度が正常範囲の上限を超えた時間帯情報を、通信部13を用いて、ユーザ端末2に送信する(S205)。
次に、ユーザ端末2において、通信部24が時間帯情報を受信すると、制御部21は、表示部23に時間帯情報を表示する(S206)。
なお、規定期間に到達していなければ、S205以降の処理は実行されず、S201〜S204が繰り返される。
図36は、本開示の実施の形態1に係る初期フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートはサーバ1で行われる。まず、通信部13は、ユーザ端末2から送信されたユーザ情報を受信する(S301)。
次に、通信部13は、ユーザ端末2から送信された初期生体データを受信する(S302)。次に、データ解析部111は、初期生体データの取得が完了していなければ(S303でNO)、処理をS302に戻す。一方、データ解析部111は、初期生体データの取得が完了すれば(S303でYES)、処理をS304に進める。ここで、データ解析部111は、受信した初期生体データの個数が正常範囲を算出するのに十分な所定個数に到達した場合、或いは、初期生体データの計測を開始してから所定の計測期間が経過したときに初期生体データの取得を完了すればよい。本開示では、初期フェーズの計測期間としては、生体データの計測間隔にもよるが、例えば、1時間、2時間、3時間、・・・、1日、2日、3日等が採用される。例えば、生体データの計測間隔が短ければ、短時間で多くの初期生体データが得られるので、その分、初期生体データの計測期間は短くされる。例えば、生体データの計測間隔として1時間が採用されるのであれば、初期生体データの計測期間は、例えば、半日、1日、2日、3日等が採用され、生体データの計測間隔として、1分や1秒が採用されるのであれば、初期生体データの計測期間は、例えば、10分、20分、1時間、2時間、3時間等が採用できる。但し、これらの数値はほんの一例であり、適宜変更される。
なお、初期生体データの計測期間は、事前の設定期間の一例に相当する。
次に、データ解析部111は、取得した初期生体データを用いて正常範囲を設定する(S304)。例えば、図28Aに示すような初期生体データが得られたとする。この場合、データ解析部111は、得られた初期生体データを解析し、生体ガス濃度の上限ピークと下限ピークとを抽出する。そして、データ解析部111は、上限ピークに所定のマージンを加えた値を上限DHとして算出し、下限ピークに所定のマージンを差し引いた値を下限DLとして算出すればよい。或いは、データ解析部111は、上側のピークの平均値に所定のマージンを加えた値を上限DHとして算出し、下側のピークの平均値に所定のマージンを差し引いた値を下限DLとして算出してもよい。以上により、ユーザ毎の正常範囲が設定される。
図37は、本開示の実施の形態1に係る通常フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。なお、図37のフローチャートは、センサ3による生体データの計測間隔でサーバ1において周期的に実行される。
まず、通信部13は、ユーザ端末2から生体データを受信する(S401)。次に、データ解析部111は、生体データが示す生体ガス濃度を該当するユーザの正常範囲と比較して、ストレス状態が正常であるか異常であるかを判定し、判定結果を生体データテーブルT4に蓄積する(S402)。詳細には、データ解析部111は、判定結果を、ユーザID、計測日時、及び生体ガス濃度と対応付けて生体データテーブルT4に記憶させればよい。図34の生体データテーブルT4を参照する。1行目のレコードには、「日」フィールドに「2017.2.15」、「時間」フィールドに「10:00−11:00」と記載されている。これは、生体データの計測間隔が1時間に設定されており、この生体データは、2017年2月15日の10時台に計測されたからである。
本開示では、計測対象の生体ガスとして上記7種の生体ガスのいずれか1つが採用されている。上記7種の生体ガスは、ストレスの高さと正の相関がある。よって、データ解析部111は、生体ガス濃度が正常範囲の上限DHより大きければストレス状態は異常と判定し、生体ガス濃度が上限DH以下であればストレス状態は正常と判定すればよい。
次に、データ解析部111は規定期間分(例えば、1日分)の生体データを取得すると(S403でYES)、処理をS404に進め、1日分の生体データを取得していなければ(S403でNO)、処理をS401に戻し、次に計測される生体データを取得する。
ここで、データ解析部111は、規定期間として1日が採用されるのであれば、「0:00」になった場合に、S403でYESと判定し、前日に取得された1日分の生体データを処理対象の生体データとして取り扱えばよい。
次に、データ解析部111は、時間帯情報を通信部13を用いてユーザ端末2に送信する(S404)。ここで、データ解析部111は、規定期間で取得された生体ガス濃度の時間的推移を示すデータと、正常範囲を外れた時間帯とを時間帯情報に含めて送信すればよい。ここで、時間帯情報の送信するタイミングとしては、例えば、翌朝の所定時刻(例えば7時)が採用されてもよい。S404が終了すると処理はS401に戻る。
以上により、ストレスが正常範囲を超えたか否かが判断される。
(時間帯情報)
図38は、時間帯情報として、ユーザ端末2に表示される表示画面G1の一例を示す図である。表示画面G1は、グラフG11及びメッセージ表示欄G12を備える。
グラフG11は、規定期間(ここでは、2月19日の1日)に取得された生体データにおいて、ストレス度の時間的推移が示されている。グラフG11において、縦軸はストレス度を示し、横軸は時間を示す。ストレス度は、生体ガス濃度に対応している。グラフG11では、ストレス度が正常範囲の上限を超えた箇所に三角形のマーカが表示されている。これにより、生体ガス濃度が正常範囲の上限を超えた時間帯がユーザに示されている。これにより、ユーザは規定期間での自身の生活を振り返り、ストレスが高くなった原因(ストレッサー)を確認することができる。
メッセージ表示欄G12には、三角形のマーカがストレス度が高い時間帯であることをユーザに通知するためのメッセージが表示されている。
(スケジュール情報)
ここで、図38に示す表示画面G1において、該当するユーザのスケジュール情報が表示されてもよい。この場合、サーバ1は、ユーザのスケジュール情報を管理するデータベースを備えればよい。
スケジュール情報を管理するデータベースは、例えば、「ユーザID」と、「予定」と、「日時」等の情報を対応付けて記憶する。「予定」は、ユーザの行動予定(例えば、「会議」等)であり、例えば、ユーザ端末2を介してユーザに入力される。「日時」は「予定」に記載された行動予定が行われる予定日時であり、ユーザ端末2を介してユーザに入力される。
サーバ1は、時間帯情報を送信する際、該当するユーザの規定期間でのスケジュール情報を時間帯情報に含ませて、ユーザ端末2に送信する。
ユーザ端末2は、このスケジュール情報を用いて表示画面G1を生成すればよい。スケジュール情報の表示態様としては、グラフG11にユーザのスケジュール情報を時間帯と関連付けて表示させる態様が採用できる。例えば、グラフG11が示す時間に対応付けてユーザの予定を表示する態様が採用されればよい。これにより、ユーザはストレスと自身の行動との因果関係を容易に確認できる。
このように、実施の形態1によれば、ストレスとの関係が推定される上記7種の生体ガスのいずれか1つの生体ガスを用いてストレス量が客観的に判断されている。そのため、人の主観的な感覚に左右されず、ストレスの累積度合いを客観的に把握できる。
また、実施の形態1では、ユーザ端末2において正常範囲の上限を超える時間帯を表示させることで、例えば、一日を振り返って、その日にどれだけストレスを感じていたのかをユーザは客観的に把握できる。また、実施の形態1では、正常範囲の上限を超える時間帯にユーザに生じた出来事をヒントに、そのユーザのストレッサーを見つけ出すことができる。
(実施の形態2)
実施の形態2は、サーバ1の機能をユーザ端末2に組み込んだものである。なお、実施の形態2において実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省く。図39は、本開示の実施の形態2に係る情報処理システムの処理を示すシーケンス図である。
図39において、図35との相違点はサーバ1が省かれ、情報処理システムがセンサ3とユーザ端末2とで構成されている点にある。S501〜S504は初期フェーズに相当する。
S501、S502、S503は、図35のS101、S103、S104と同じである。S504は、処理主体がサーバ1ではなくユーザ端末2である点以外は図35のS106と同じである。
S601〜S604は、通常フェーズに相当する。S601、S602は、図35のS201、S202と同じである。S603は、処理主体がサーバ1ではなくユーザ端末2である点以外は図35のS204と同じである。
S604では、ユーザ端末2の制御部21は、S603の判定結果が異常であれば、ユーザのストレスが正常範囲外にある旨の情報を表示部23に表示させる。一方、S604では、ユーザ端末2の制御部21は、S603の判定結果が正常であれば、ユーザのストレスが正常範囲内である旨の情報を表示部23に表示させる。
なお、実施の形態2において、初期フェーズのフローチャートは、図36と同じである。図40は、本開示の実施の形態2に係る通常フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、ユーザ端末2で実行される。
まず、通信部24は、センサ3から生体データを受信する(S701)。次に、制御部21は、生体データが示す生体ガス濃度を該当するユーザの正常範囲と比較して、ストレス状態が正常であるか異常であるかを判定し、判定結果を生体データテーブルT4に蓄積する(S702)。
次に、制御部21は、S703の判定結果が異常であれば(S703でYES)、ストレス度(生体ガス濃度)が正常範囲を外れた旨の情報を表示部23に表示させる(S705)。ここで、ストレス度が正常範囲を外れた旨の情報としては、例えば、「ストレスが高いです。」といったメッセージが採用されればよい。
一方、S703の判定結果が異常でない、すなわち、正常であれば(S703でNO)、ストレス度(生体ガス濃度)が正常範囲内である旨の情報を表示部23に表示させる(S704)。ここで、正常範囲内である旨の情報としては、例えば、「ストレスは正常です。」といったメッセージが採用できる。
S704、S705が終了すると、処理はS701に戻る。
このように、実施の形態2に係る情報処理システムによれば、表示部23にストレス度が正常範囲内であるか否かを示す情報が表示されるため、ユーザに対して、現在、ストレス状態にあるか否かの客観的な判断結果を知らせることができる。
本開示は、下記の変形例が採用できる。
(1)上記説明では、センサ3は一体構成されているが、本開示はこれに限定されない。図41は、本開示の変形例に係るセンサ3の一例を示す図である。変形例に係るセンサ3は、ユーザに装着される装着部3Aと、本体部3Bとが別体で構成されている。装着部3Aは、ユーザの脇の近傍の腕に取り外し可能な装着バンドで構成されている。装着部3Aは、生体ガスを吸着する吸着剤が取り付けられている。
装着部3Aは、本体部3Bに対しても着脱自在に構成されている。本体部3Bは、図29で示す検出部33、制御部31、及び通信部34を備えている。本体部3Bは、装着部3Aが装着されると、例えば、ヒータで吸着剤を加熱することで吸着剤から生体ガスを脱離させ、その生体ガスを分析し、計測対象の生体ガス(ここでは、上記7種の生体ガスのいずれか1つ)を抽出し、生体ガス濃度を測定する。そして、本体部3Bは、測定した生体ガス濃度を含む生体データをユーザ端末2に送信する。この変形例では、装着部3Aがコンパクト化されるので、ユーザの負担を軽減できる。
(2)実施の形態2において、ユーザ端末2はユーザを診察する医師が使用するコンピュータで構成されてもよい。この場合、診察時において医師はユーザにセンサ3を装着させて、生体データをユーザ端末2に取得させ、ユーザ端末2にユーザのストレスを判定させればよい。
或いは、医師は事前に規定期間(例えば、1、2、3日)、センサ3で計測された生体データをユーザ端末2に取得させることで、ユーザ端末2にユーザのストレスを判定させてもよい。この場合、ユーザは医師から事前にセンサ3を装着するように指示されている。センサ3は、規定期間に測定された生体データを計測時刻と対応付けてメモリ32に記憶させておく。ここで、メモリ32は、センサ3に対して着脱可能なメモリである。
ユーザは来院時にメモリ32を病院に持って行く。医師はこのメモリ32をユーザ端末2に接続し、規定期間内に取得された生体データをユーザ端末2に取得させる。そして、ユーザ端末2は、取得した生体データが示す生体ガス濃度が正常範囲の上限を超えていれば、そのことを示す情報を表示部23に表示させる。一方、ユーザ端末2は、取得した生体データが示す生体ガス濃度が正常範囲の上限以下であれば、そのことを示す情報を表示部23に表示させる。
この変形例では、通院するユーザの状態を診察する医師に対して、精神疾患を防止するための有用なデータを提供することができる。なお、この変形例は定期健康診断に適用されてもよい。