(本開示にかかる一態様を発明するに至った経緯)
まず、本開示に係る一態様の着眼点を説明する。
本発明者らは、目に見えないストレスを客観的に把握する手法を研究している。
即ち、鬱病などの精神疾患を発症すると精神科医による治療に委ねることになるが、鬱病などの精神疾患を発症する前にその兆候を把握して鬱病などの精神疾患を予防することを研究している。
本発明者らは、ストレスと鬱との間には一応の因果関係があるという仮説を置いている。即ち、ストレスは、必ずしも心身に有害とは限らない。しかし、ストレスが蓄積すると、心身に悪影響を与える傾向にあり、その悪影響の一つに鬱が含まれると考えている。
鬱は、原因別に、(1)「身体因性」、(2)「内因性」、(3)「心因性」という三つに分類される。「身体因性」の鬱とは、脳または身体の器官の特質または薬物を原因とする鬱である。「内因性」の鬱とは、遺伝子レベルに原因がある鬱、または、生来脳内に精神疾患を引き起こす原因がある鬱である。「心因性」の鬱とは、心理的なストレスを経験したことを原因とする鬱である。これらの三つを厳密に分けることが難しく、三つが相互に作用し発症する可能性が高いとも言われている(日本国内閣府「平成20年版国民生活白書」第1章 第3節「2.ストレス社会と現代的病理」 http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/10_pdf/01_honpen/pdf/08sh_0103_03.pdf)。妊婦について考えると、上記の(1)〜(3)のすべての原因を満たしやすい環境下にあると言える。妊娠期間は、薬が飲めず、運動にも制約があるため、ストレスを解消しにくい。そのため、妊婦は、鬱病などの精神疾患を発症する可能性がある。
また、産後鬱は、出産後2週間以内に発症しやすいという報告がある(平成25年度総会学会・特別講演「妊産婦の精神面の問題の把握と育児支援」、吉田敬子,沖縄の小児保健 第41号(2014)p.3−8,http://www.osh.or.jp/in_oki/pdf/41gou/kouen.pdf)。そのため、妊娠期間中に産後鬱の兆候を把握して産後鬱を予防することが重要になる。
以上を踏まえ、本発明者らは、鬱病などの精神疾患を発症する前において、人のストレスの蓄積の程度を客観的に把握するツールを開発し、鬱病などの精神疾患を予防することを研究している。
ここで、ストレスとの関係で、一般によく知られているコルチゾールに言及する。コルチゾールは、過度なストレスを受けると分泌量が増加するホルモンである。このため、コルチゾールの濃度を検査することで、検査時点におけるストレス量を把握することができる。コルチゾールの濃度は、唾液の採取、採血又は尿検査によって測定することができる。例えば、24時間にわたって蓄尿を行うことで1日のコルチゾールの累積分泌量を測定でき、1日のストレス量を評価することもできる。
コルチゾールの濃度が高値の場合、クッション症候群、ストレス、鬱病、神経性食欲不振症などが疑われる。一方、コルチゾールの濃度が低値の場合、アジソン病、先天性副腎皮質過形成、ACTH不心症、下垂体性副腎皮質機能低下症などが疑われる。
このようにコルチゾールの濃度は、ストレスを評価する上で有効ではあるが、唾液の採取、採血又は尿検査を連続して行うことは現実的ではないので、上記コルチゾールの濃度の時間変化を把握することは困難である。このため、被験者のストレスの時間変化を把握することも難しい。
そこで、本発明者らは、上記コルチゾールに代わるストレスの評価指標として、心身にストレスがかかったときに、人の皮膚表面から放出される生体ガスが存在すると仮説を置いた。その仮説を実験によって証明するため、本発明者らはストレスと相関関係がみられる生体ガスを特定する実験を行った。
具体的には、本発明者らは、30人の被験者に対してそれぞれストレスを感じさせるためのタスクを実行させ、そのタスクを実行する前後の一定期間において、所定の時間間隔で各被験者から唾液が採取されるとともに各被験者の脇および手から生体ガスが採取された。そして、本発明者らは、上記で採取された唾液からコルチゾール濃度の時間変化をグラフ化し、コルチゾール濃度の時間変化が顕著に見られた被験者を特定した。ここで特定された被験者は、上記タスクでストレスを感じていると認定された。
次に、本発明者らは、上記実験でストレスを感じた被験者の手から採取された約300種類の生体ガスを分析することで、ストレスと相関がありそうな複数の生体ガスを選定した。ここで選定された生体ガスにおいて、タスクを実行している最中およびタスク実行後の生体ガスの放出量を調べると、ストレスを感じたときに4種類の生体ガスの手からの放出量が相対的に減ることが確認された。上記生体ガスを特定するまでの実験の手順を以下に詳述する。
まず、本発明者らは心理実験室を作った。この心理実験室は、隔離された狭い部屋を内部に有している。この隔離された部屋は、外部から内部を観察できるガラス張りの窓を唯一有している。また、この隔離された部屋は、ストレスタスク実施時に被験者に心理的圧迫を与えるよう設計されている。
本発明者らは、20〜40代の30名の日本人女性を被験者とし、一人ずつ上記心理実験室内に案内した。そして、心理実験室内で被験者の唾液が採取された。被験者の唾液が採取されてから10分後に、被験者は計算問題やスピーチ等のストレスタスクを20分間取り組んだ。上記ストレスタスクの終了直後から30分間、10分ごとに1回ずつ計4回、被験者の唾液が採取された。ここで採取した唾液に対し、唾液コルチゾール定量キット(サリメトリックス社)を用いて各唾液中のコルチゾールの濃度が測定された。
また、上記唾液の採取と平行して、ストレスタスク中の20分間と、ストレスタスクを終えた後10〜30分後の20分間とにおいて、被験者の手と脇の下の2箇所から生体ガスが回収された。手からの生体ガスの捕集は、ガスサンプリング用のバックを被験者の手に被せて手首部分をゴムバンドで固定し、このバック内に生体ガスを吸着する吸着剤を投入することによって行われた。脇の下からの生体ガスの捕集は、被験者の脇の下に吸着剤を挟むことによって行われた。脇の下に挟まれた吸着剤は、コットンに包まれており、吸着剤の位置が脇の下でずれないように包袋で固定された。このように生体ガスの捕集箇所を手および脇とした理由は、手および脇に汗腺が集中しているからである。生体ガスを捕集する部位は、上述の手および脇に限られず、皮膚の表面であればいずれの部位であってもよい。
上記ストレスタスクを行った日とは別の日に、ストレスタスクに代えてリラックスタスクを行ったことが異なる他は、上記ストレスタスクを行った日と同様の手順で被験者の唾液および生体ガスがそれぞれ回収された。ここでのリラックスタスクは、被験者が自然風景DVDを鑑賞するだけの作業とした。
図1は、ストレスタスク前後およびリラックスタスク前後の上記被験者の唾液中のコルチゾールの濃度の時間変化を示すグラフである。縦軸はコルチゾールの濃度(μg/dL)を示し、横軸はストレスタスク又はリラックスタスクを開始してからの時間(分)を示す。図1の縦軸の上側ほどコルチゾールの濃度が高いことを示し、上述の通り、コルチゾールの濃度が高いほど被験者がストレスを感じていることを示す。図1のグラフ中の網掛けを付した部分(横軸の0分〜20分)がストレスタスクまたはリラックスタスクを行った期間である。なお、公知の事実として、被験者がストレスを感じてから15分程度で唾液中のコルチゾールの濃度が高まることが知られている。
図1のグラフでは、ストレスタスクを開始してから20分後(つまりストレスタスク終了直後)にコルチゾールの濃度が急上昇しているのに対し、リラックスタスクの前後では、コルチゾールの濃度に変化がほとんど見られない。このことから、図1のコルチゾールの濃度の時間変化を示す被験者は、ストレスタスクによってストレスを感じていたと考えられる。
一方、図1のようなコルチゾールの濃度の時間変化を示さない被験者も存在した。このような被験者は、ストレスタスクによってストレスを感じなかったため、唾液中にコルチゾールが分泌されなかったものと考えられる。このようにストレスを感じなかった被験者の生体ガスを評価しても、ストレスと生体ガスとの因果関係を把握することはできない。このため、ストレスを感じなかった被験者は、生体ガスの評価対象から除外された。このようにして被験者30人のうち、ストレスタスク前後でコルチゾールの濃度が顕著に上昇した上位20人(被験者No.1〜20)の被験者が特定された。
上記で特定された各被験者の手から回収された各吸着剤(ストレスタスク中、ストレスタスク後、リラックスタスク中、リラックスタスク後)をそれぞれ加熱することによって各吸着剤に吸着された被験者の生体ガスが脱離された。ここで脱離された生体ガスをガスクロマトグラフィー質量分析装置(Gas Chromatography−Mass spectrometry:GC/MS(アジレントテクノロジー社製))で分析することによって生体ガスのマススペクトルデータが得られた。
このマススペクトルデータを同社の解析ソフトを用いてアメリカ国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)データベースと比較することで、皮膚から放出される生体ガスが特定された。例えば図2は、フルフラールのマススペクトルデータであり、図3は、NISTデータベースのFurfuralのマススペクトルデータである。図2および図3におけるマススペクトルを対比すると、ほぼ同一の質量電荷(m/z)において同様のスペクトルピークが観察された。このようにしてフルフラールが生体ガスとして含まれていることが特定された。同様の手法によりアセトフェノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンおよびナフタレンがそれぞれ、生体ガスとして含まれていることが特定された。
参考までに、図4、図6および図8はそれぞれ、アセトフェノン、6−メチル−5−へプテン−2−オンおよびナフタレンのマススペクトルデータであり、図5、図7および図9はそれぞれ、NISTデータベースのacetophenone、5−Hepten−2−one,6−methyl−およびNaphthaleneのマススペクトルデータである。
次に、本発明者らは、上記20人の被験者それぞれにおいて、ストレスタスク中およびその後、並びにリラックスタスク中およびその後における各被験者(被験者No.1〜20)の手から放出された各生体ガスのマススペクトルのピーク面積を算出し、各生体ガスのピーク面積をストレスタスク中・後とリラックスタスク中・後とでそれぞれ対比し、300を超える生体ガス成分の中から、ストレスと関連する候補として複数の物質が選定された。これらの候補物質の中で、上述のフルフラール、アセトフェノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンおよびナフタレンは、ストレスとの相関関係が明確に確認できた。フルフラール、アセトフェノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンおよびナフタレンの化学式はそれぞれ以下の化1〜化4に示される通りである。
次に、上記生体ガスの放出量とストレスとの関係をより詳細に把握するために、ストレスタスクの前後での上記各生体ガスの放出量の相対変化と、リラックスタスクの前後での各生体ガスの放出量の相対変化とをそれぞれ調べた。具体的には、ストレスタスク後の各生体ガスのピーク面積をストレスタスク中の各生体ガスのピーク面積で除することにより、ストレスタスク中の各生体ガスのピーク面積に対するストレスタスク後の各生体ガスのピーク面積の相対値が算出された。ここで算出された相対値を「ストレスタスク前後の変化勾配」と記す。同様に、リラックスタスク後の各生体ガスのピーク面積をリラックスタスク中の各生体ガスのピーク面積で除することにより、リラックスタスク中の各生体ガスのピーク面積に対するリラックスタスク後の各生体ガスのピーク面積の比率が算出された。ここで算出された相対値を、「リラックスタスク前後の変化勾配」と記す。
図10に示す表は、各被験者(被験者No.1〜20)の手から放出された上記4種の各生体ガスのストレスタスク前後の変化勾配およびリラックスタスク前後の変化勾配を示す一覧表である。図11〜図14は、図10の一覧表に示す変化勾配の生体ガスごとの平均値をそれぞれグラフ化することによって得られたグラフである。図10の一覧表における各変化勾配の平均値が1に近いほど、図11〜図14のグラフの変化勾配が緩やかとなる(横軸に平行に近づく)。図10に示す一覧表における各変化勾配の平均値が0に近いほど図11〜図14の折れ線グラフの変化勾配が急峻となる(横軸に垂直に近づく)。また各変化勾配が1を超える場合は、図11〜図14のグラフが時間の経過とともに上昇する。逆に、図10の表中の各変化勾配が1未満の場合、図11〜図14のグラフが時間の経過とともに下降する。
図11〜図14において、ストレスタスク前後の変化勾配とリラックスタスク前後の変化勾配とを比較すると、上記4種の生体ガスの全てにおいてストレスタスク前後の方が、リラックスタスク前後よりも変化勾配が緩やかになっている。この結果から、被験者がストレスを感じたときに上記各生体ガスの放出量の変化勾配が緩やかになる傾向があると言える。したがって、上記各生体ガスのタスク前後の変化勾配は、被験者のストレス量を客観的に評価する指標になり得る。
上記実験結果に基づき、本発明者らはフルフラール、アセトフェノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンおよびナフタレンがストレス由来の生体ガスであることを特定した。これらの知見は、本出願前にはなかったと本発明者らは信じている。また、ストレス由来の生体ガスは、年齢、食べ物、及び人種により、異なると考えられるため、いずれか1つに絞ることはせず、それぞれが有力な候補であると考えている。
次に、上記生体ガスのいずれかを検知するデバイスを開発し、これにより、これまで主観的に感じていたストレスを、客観的に捉えることに成功した。すなわち、人の皮膚表面から放出される各生体ガスを、センサなどのデバイスにて測定する方法によると継続測定が可能となる。この継続測定により上記生体ガスの放出量の時間変化を把握することができる。この放出量の時間変化をグラフ化し、そのグラフの変化勾配から被験者のストレスを把握することができる。
この場合、一日の中で、被験者にいつストレス反応が生じたのか、ストレス反応を生じたときにその被験者が何をしていたのか等を把握できる。これによりストレスを感じた時間を客観的に把握することができ、ストレスをコントロールできるようになることが期待される。
さらに、本発明者らは、ストレス由来の生体ガスを測定し、ストレスを客観的に把握できるようにしたことを、最終目的である鬱病などの精神疾患の予防につなげなければならない。本開示に係る発明の各態様はそのことに関わるものである。
以上のような、本発明者らの鋭意研究の結果得られた新規な知見に基づき、本発明者らは以下のような各態様に係る発明を想到するに至った。
本開示に係る発明の一態様は、
情報処理システムにおける情報提供方法であって、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得されたユーザにおける前記所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を複数のタイミングにて、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報と共にネットワークを介して取得し、
単位期間における前記所定の生体ガスの正常な濃度の参照変化勾配を表す情報を記憶するメモリから前記参照変化勾配を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記参照変化勾配と比較して、前記ユーザの生体ガスの濃度の変化勾配が緩やかな時間帯を判断し、
前記判断された時間帯を示す情報を前記ユーザの情報端末に出力し、
前記情報端末において前記情報が示した時間帯が表示され、
前記所定の生体ガスは、フルフラール(Furfural)、アセトフェノン(Acetophenone)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(6−Methyl−5−hepten−2−one)、または、ナフタレン(Naphthalene)、のいずれか一つである。
特許文献1は、発汗、脈拍、血流、瞬目及び顔の表情などの情報を用いている。しかし、これらの情報が示す値は、人が階段を登り降りした場合、変化する。従って、これらの情報は、ストレスとは無関係ではないものの、ストレスとは無関係な要因によっても変化する。そのため、ストレス量を客観的に判断するための判断材料としては、必ずしも十分ではなく、誤判断の恐れがある。
これに対し、本態様では、ストレスとの関係が推定される所定の生体ガスを用いてストレス量を客観的に判断している。そのため、人の主観的な感覚に左右されず、ストレスの累積度合いを客観的に把握できる。ここで、所定の生体ガスとは、フルフラール(Furfural)、アセトフェノン(Acetophenone)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(6−Methyl−5−hepten−2−one)、または、ナフタレン(Naphthalene)、のいずれか一つを指す。
その結果、前記生体ガス情報に基づき、前記参照変化勾配と比較して、前記ユーザにおける生体ガスの濃度の変化勾配が緩やかな時間帯を判断し、前記判断された時間帯を示す情報を前記ユーザの情報端末に出力する。これにより、その人自身のストレスの状態を本人が客観的に認識できるので、鬱病などの精神疾患の予防が期待できる。
さらに、ユーザは、何が自分にとってのストレッサー(ストレス要因)なのか把握していない場合も多い。前記情報端末において生体ガスの濃度の変化勾配が緩やかな時間帯を表示させることで、例えば、一日を振り返って、その日にどれだけストレスを感じていたのかを客観的に把握でき、また、本態様では、変化勾配が緩やかな時間帯にそのユーザに生じた出来事をヒントに、そのユーザのストレッサーを見つけ出すことができる。
このように、例えば、一日の中で、いつストレス反応が生じたのか、ストレス反応を生じたときにそのユーザは何をしていたのか等も、把握できるようになる。これにより、ストレスの客観的な把握が可能となり、ストレスをコントロールできるようになることが期待される。
また、本態様では、前記単位期間における前記所定の生体ガスの正常な濃度の参照変化勾配は、
事前の設定期間において取得された前記ユーザの生体ガス情報に基づき前記ユーザに個別の情報として算出されてもよい。
この場合、前記ユーザ自身のデータを基準値として用いることになる。生体ガスでの放出量は、年齢、食べ物、体重などの影響を受け、個人差があるため、正確な判断をするためには前記ユーザ自身のデータを用いることが好ましい。
これに対し、特許文献1では、参照情報をどう持つかについて一切開示がない。
本態様によると、前記ユーザ自身のデータを基準値としてストレスの程度を判断する。そのため、一人一人に適した判断が可能となる。
また、本態様では、前記単位期間における前記所定の生体ガスの正常な濃度の参照変化勾配は、
前記ユーザを含む複数のユーザに共通して使用される情報として前記メモリに予め記憶されていてもよい。
この場合、基準値が複数のユーザに共通して使用されるので、ユーザ毎に基準値を生成及び管理する手間が省かれる。
また、本態様では、前記情報端末において前記情報が示した時間帯は、
前記ユーザのスケジュール情報に重畳されて表示されいてもよい。
この場合、ユーザはスケジュール情報とストレスが高い時間帯とを照合することで、ストレスと自身の行動との因果関係を容易に確認できる。
また、本態様では、前記所定の生体ガスを検出するセンサは、
前記ユーザの腕に装着されるデバイスに内蔵されていてもよい。
この場合、所定の生体ガスを検出するセンサが、ユーザの腕に装着されるデバイスに内蔵されているので、例えば、ユーザが日常生活において腕に装着する物体にセンサの機能を持たせることができる。その結果、センサを装着することに対するユーザの煩わしさを低減できる。
また、本態様では、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報は、前記所定の生体ガスを前記センサにて取得した各時刻に対応していてもよい。
この場合、生体ガスがセンサにて取得された時刻に所定の生体ガスの濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかであるか否かの判定が行われているので、ユーザに対してストレスのあった時間帯を正確に通知できる。なお、本態様において、「前記生体ガスを前記取得した各時刻に対応する」とは、センサが生体ガス情報を計測した時刻を指してもよいし、サーバ等の処理装置がネットワークを介してセンサから生体ガス情報を取得した時刻を指してもよい。
本開示の別の一態様に係る情報処理システムは、サーバ装置と情報端末とを含む情報処理システムであって、
前記サーバ装置は、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得されたユーザにおける前記所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を複数のタイミングにて、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報と共にネットワークを介して取得し、
単位期間における前記所定の生体ガスの正常な濃度の参照変化勾配を表す情報を記憶するメモリから前記参照変化勾配を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記参照変化勾配と比較して、前記ユーザの生体ガスの濃度の変化勾配が緩やかな時間帯を判断し、
前記判断された時間帯を示す情報を前記情報端末に出力し、
前記情報端末は、
前記情報が示した時間帯を前記情報端末のディスプレイに表示し、
前記所定の生体ガスは、フルフラール(Furfural)、アセトフェノン(Acetophenone)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(6−Methyl−5−hepten−2−one)、または、ナフタレン(Naphthalene)、のいずれか一つである。
また、本開示の別の一態様に係る情報端末は、上記情報処理システムに使用されるものであってもよい。
また、本開示の別の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータを用いた情報処理方法であって、
ユーザの皮膚表面から放出される所定の生体ガスを検出するセンサにて取得されたユーザにおける前記所定の生体ガスの濃度を示す生体ガス情報を複数のタイミングにて、前記複数のタイミングの各時刻に対応する時間情報と共に取得し、
単位期間における前記所定の生体ガスの正常な濃度の参照変化勾配を表す情報を記憶するメモリから前記参照変化勾配を表す情報を読み出し、
前記取得した生体ガス情報に基づき、前記参照変化勾配と比較して、前記ユーザの生体ガスの濃度の変化勾配が緩やかな時間帯を判断し、
前記判断された時間帯では前記ユーザのストレスが所定の正常範囲を超えている旨の情報をディスプレイに表示するために出力し、
前記所定の生体ガスは、フルフラール(Furfural)、アセトフェノン(Acetophenone)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(6−Methyl−5−hepten−2−one)、または、ナフタレン(Naphthalene)、のいずれか一つである。
本態様によれば、所定の生体ガスの濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかな時間帯があると判断された場合、ユーザのストレスが所定の正常範囲を超えている旨の情報がディスプレイに表示される。そのため、ユーザに対して、現在、ストレス状態にあるか否かの客観的な判断結果を知らせることができる。
(実施の形態1)
(予想データ)
図15A、図15Bは、本開示の実施の形態1において取り扱われる生体データの予想データを示すグラフである。図15A、図15Bにおいて、縦軸は生体ガス濃度(生体ガス情報の一例)を示し、横軸は時間を示している。この予想データは実際に測定された生体データの測定値を示すものではなく、上記の実験結果の知見から予想される生体データの時間的推移を示したデータである。生体データとは、後述するようにユーザに装着されたセンサによって測定された生体データである。生体データは、ユーザの皮膚表面から放出される生体ガスのうち計測対象の生体ガスの濃度(生体ガス濃度)の計測値を示す。本開示では、計測対象となる生体ガスはフルフラール(Furfural)、アセトフェノン(Acetophenone)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(6Methyl−5−hepten−2−one)、または、ナフタレン(Naphthalene)、のいずれか一つである。生体ガス濃度の単位は例えばμg/dLである。
図15Aでは、ストレスがないときの起床から就寝するまでの覚醒状態にあるユーザの生体データの時間的な推移が示されており、図15Bでは、ストレスがあるときの起床から就寝するまでの覚醒状態にあるユーザの生体データの時間的な推移が示されている。
ストレスと相関があることがよく知られているコルチゾールの分泌量は、ユーザがストレスを感じていなければ、図15Aに示すような時間的推移を示すことが知られている。すなわち、起床直後の一定の増加時間帯TA(例えば、30分、1時間程度の時間)は上昇するが、増加時間帯TAを過ぎると減少に転じ、就寝するまでの減少時間帯TBではほぼ一定の変化勾配で減少することが知られている。
したがって、上記4種の生体ガス濃度も、ストレスとの相関があるので、図15Aに示されるように、ユーザがストレスを感じていなければ、増加時間帯TAでは上昇し、増加時間帯TAを過ぎると減少に転じ、就寝するまでの減少時間帯TBではほぼ一定の変化勾配で減少すると予想される。
一方、上述の実験結果から、上記4種の生体ガスの変化勾配は、ユーザがストレスを感じている場合、ユーザがストレスを感じていない場合に比べて緩やかになるとの知見が得られた。
したがって、図15Bの時間帯TB1,TB2,TB3に示されるように、ユーザがストレスを感じた場合の生体ガス濃度の変化勾配は、ユーザがストレスを感じた場合の生体ガス濃度の変化勾配に比べて緩やかになると予想される。
そこで、本開示は、ユーザがストレスを感じていないときの上記4種の生体ガスの濃度の変化勾配を参照変化勾配として予め設定しておく。そして、本開示は、センサで検出された上記4種の生体ガス濃度の変化勾配が、参照変化勾配と比較して緩やかな時間帯を検出する。そして、本開示は、検出した時間帯が増加傾向にあれば、ユーザは産後鬱の予兆があると判断し、産後鬱の予兆があることをユーザに認識させたり、相談事業者に対してユーザのケアを促したりすることで、ユーザが産後鬱になることを防止する。
(センサ)
図16は、本開示の実施の形態1において、生体データを測定するセンサ3の構成の一例を示すブロック図である。
本開示では、センサ3として、例えば、電界非対称性イオン移動度分光計(FAIMS:Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry)の技術を利用するセンサが採用される。電界非対称性イオン移動度分光計は、2種類以上の物質を含有する混合物から少なくとも1種類の物質を選択的に分離するために用いられる。
センサ3は、検出部33、制御部31、及び通信部34を備える。検出部33は、イオン化装置301、フィルタ302、検出器303、電源304、及び高周波アンプ305を備える。なお、図16において、矢印線は電気信号の流れを示し、イオン化装置301、フィルタ302、及び検出器303を繋ぐ線は生体ガスの流れを示す。
電源304及び高周波アンプ305はそれぞれイオン化装置301及びフィルタ302を駆動するために用いられる。イオン化装置301を用いてイオン化された生体ガスの中から、所望の生体ガス(本開示では上記4種の生体ガスのいずれか1つ)のみをフィルタ302によって分離し、フィルタ302を通過したイオン量を検出器303で検出することによって生体ガス濃度を示す情報を取得する。取得された情報は通信部34を介して出力される。センサ3の駆動は制御部31によって制御される。
図17は、図16に示すセンサ3の動作をより詳細に説明する図である。イオン化装置301に供給される混合物は、ユーザの皮膚表面から放出された生体ガスである。イオン化装置301は、ユーザの皮膚表面から放出された生体ガスを取り込む取込口を備えていてもよい。また、この取込口には生体ガスを吸着する吸着剤が設けられてもよい。更に、吸着剤に吸着した生体ガスを吸着剤から脱離させるヒータが設けられてもよい。図17の例では、説明の便宜上、混合物は、3種類のガス202〜204を含有することとする。ガス202〜204は、イオン化装置301を用いてイオン化される。
イオン化装置301は、コロナ放電源や、放射線源などを含み、ガス202〜204をイオン化させる。イオン化されたガス202〜204は、イオン化装置301に隣接して配置されたフィルタ302に供給される。なお、イオン化装置301を構成するコロナ放電源や放射線源は、電源304から供給される電圧によって駆動される。
フィルタ302は、互いに平行に配置された平板状の第1電極201a及び平板状の第2電極201bを備える。第1電極201aは接地されている。一方、第2電極201bは、高周波アンプ305に接続されている。
高周波アンプ305は、非対称な交流電圧を生成する交流電圧源205aと、直流電圧である補償電圧CVを生成する可変電圧源205bとを備える。交流電圧源205aは、非対称な交流電圧を生成し、第2電極201bに印加する。可変電圧源205bは、一端が第2電極201bに接続され、他端が接地されている。これにより、交流電圧源205aで生成された非対称な交流電圧は、補償電圧CVが重畳され、第2電極201bに供給される。
第1電極201a及び第2電極201b間には、イオン化された3種類のガス202〜204が供給される。3種類のガス202〜204は、第1電極201a及び第2電極201bの間で生じた電場の影響を受ける。
図18は、電場の強度及びイオン移動度の比の関係を示すグラフであり、縦軸はイオン移動度の比を示し、横軸は電場の強度(V/cm)を示す。αはイオンの種類によって決まる係数である。イオン移動度の比は、低電界極限での移動度に対する高電界中での移動度の比を示す。
曲線701に示されるように、係数α>0のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、より活発に移動する。300未満の質量電荷比(mass−to−charge ratio)を有するイオンは、このような動きを示す。
曲線702に示されるように、係数αがほぼ0のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、より活発に移動するが、さらに電場の強度を増すと、移動度が低下する。
曲線703に示されるように、係数αが負のイオン化されたガスは、電場の強度が増すと、移動度が低下する。300以上の質量電荷比(mass−to−charge ratio)を有するイオンは、このような動きを示す。
このような移動度の特性の違いのため、図17に示されるように、3種類のガス202〜204がフィルタ302の内部で異なる方向に進行する。図17の例では、ガス203のみがフィルタ302から排出される一方、ガス202は第1電極201aの表面にトラップされ、かつガス204は第2電極201bの表面にトラップされる。このようにして、3種類のガス202〜204からガス203のみが選択的に分離され、フィルタ302から排出される。すなわち、センサ3は、電場の強度を適切に設定することで、所望のガスをフィルタ302から排出させることができる。なお、電場の強度は、補償電圧CVの電圧値及び交流電圧源205aが生成する非対称な交流電圧の波形により決定される。そのため、センサ3は、補償電圧CVの電圧値及び非対称な交流電圧の波形を計測対象となる生体ガスの種類(本開示は、上記4種の生体ガスのいずれか1つ)に応じて予め定められた電圧値及び波形に設定することで、計測対象となる生体ガスをフィルタ302から排出させることができる。
検出器303は、フィルタ302に隣接して配置される。すなわち、フィルタ302は、イオン化装置301及び検出器303間に配置される。検出器303は、電極310及び電流計311を備え、フィルタ302を通り抜けたガス203を検出する。
検出器303に到達したガス203は、電極310に電荷を受け渡す。受け渡された電荷の量に比例して流れる電流の値が電流計311によって測定される。電流計311によって測定された電流の値から、ガス203の濃度が測定される。
(ネットワーク構成)
図19は、本開示の実施の形態1に係る情報処理システムのネットワーク構成の一例を示す図である。情報処理システムは、ユーザU1のストレスをケアするケアサービスを提供する。このケアサービスは、例えば、ユーザU1が加入する保険会社等によって提供される。なお、ケアサービスの実際の運用は、例えば、保険会社から委託を受けたセンサ3を製造するメーカが行ってもよい。また、このケアサービスは、ケアサービス自身を提供する保険会社とは異なるサービスプロバイダによって提供されてもよい。
保険会社は、例えば、生命保険や医療保険等の保険サービスをユーザU1に提供する。そして、保険会社は、例えば、ユーザU1にセンサ3を貸与し、ユーザU1の生体データを取得して、ユーザU1のストレス状態を管理することで、ユーザU1の精神疾患に基づく病気を予防する。これにより、保険会社は保険金の支出の節約を図る。このケアサービスは、ユーザU1に、センサ3の装着を強いるものなので、負担と感じるユーザU1もいる。そこで、保険会社は、このケアサービスの見返りとして、ユーザU1が負担する保険料を割り引くといった保険プランを提供することもできる。
情報処理システムは、サーバ1(サーバ装置の一例)、ユーザ端末2(情報端末の一例)、センサ3を備える。
サーバ1及びユーザ端末2は、ネットワークNTを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNTとしては、インターネット通信網、携帯電話通信網、及び公衆電話回線網を含むネットワークで構成される。センサ3及びユーザ端末2は、例えば、IEEE802.11bの無線LANや、ブルーツース(登録商標:IEEE802.15.1)等の近距離無線通信を介して通信可能に接続されている。
サーバ1は、例えば、1又は複数のコンピュータを含むクラウドサーバで構成されている。サーバ1は、CPU、FPGA等のプロセッサとメモリとを含む。サーバ1は、センサ3で測定されたユーザU1の生体データをユーザ端末2及びネットワークNTを介して取得し、生体ガス濃度の変化勾配が緩やかな時間帯が増加傾向にあるか否かを判定する。
ユーザ端末2は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の携帯可能な情報処理装置で構成されている。なお、ユーザ端末2は、据え置き型のコンピュータで構成されてもよい。ユーザ端末2は、ユーザU1によって所持される。
センサ3は、ユーザU1の例えば腕に装着され、ユーザU1の手から放出される生体ガスの濃度を検出する。センサ3は、例えば、装着ベルトを備え、ユーザはこの装着ベルトを手首(腕の一例)に巻くことで、センサ3を手の近傍に取り付ける。これにより、センサ3は手から放出される生体ガスを検出できる。但し、これは一例である。例えば、センサ3は、例えば、腕時計型のウェアラブル端末に内蔵されても良い。この腕時計型のウェアラブル端末は、ユーザに装着されるデバイスの一例である。
図20は、図19に示す情報処理システムの詳細な構成の一例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、メモリ12、及び通信部13を備える。制御部11は、プロセッサで構成され、データ解析部111を備える。データ解析部111は、例えば、プロセッサがメモリ12に記憶された本開示の情報提供方法をコンピュータに実行させるプログラムを実行することで実現される。なお、本開示の情報提供方法をコンピュータに実行させるプログラムは、ネットワークを通じてダウンロードすることで提供されてもよいし、コンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体に記憶させることで提供されてもよい。
データ解析部111は、センサ3が取得した生体データを通信部13が受信すると、その生体データを通信部13から取得し、取得した生体データから生体ガス濃度の変化勾配を算出する。そして、データ解析部111は、メモリ12から参照変化勾配を表す情報を読み出し、算出した変化勾配が参照変化勾配に比べて緩やかになった時間帯を判定する。そして、データ解析部111は、その生体データを判定結果と対応付けてメモリ12が記憶する生体データテーブルT4(図21)に登録する。更に、データ解析部111は、規定期間(例えば、1日、半日、2日)の生体データが蓄積されると規定期間の生体データにおいて、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に比べて緩やかになった時間帯を示す情報(以下、「時間帯情報」と記述する。)をユーザ端末2に通信部13を介して送信する。
メモリ12は、生体ガス濃度の参照変化勾配を示す情報を記憶する。本開示では、メモリ12は、図21に示すように、正常範囲データテーブルT2及び生体データテーブルT4を記憶する。図21は、メモリ12が記憶するテーブルのデータ構成の一例を示す図である。
正常範囲データテーブルT2は、ケアサービスを受ける1又は複数のユーザのストレスが正常範囲にあるか否かの指標となる参照変化勾配を記憶するテーブルである。正常範囲データテーブルT2は、1のユーザに対して1つのレコードが割り当てられており、「ユーザID」、「計測日時」、及び「参照変化勾配」を対応付けて記憶する。
「ユーザID」フィールドには、ユーザ情報テーブルT1のユーザIDと同じユーザIDが記憶されている。「計測日時」フィールドには、参照変化勾配の算出に使用された生体データの計測日時の時間帯が記憶されている。「参照変化勾配」フィールドには「計測日時」フィールドに記憶された生体データを用いて算出された参照変化勾配が記憶されている。図21の例では、「参照変化勾配」フィールドには、各ユーザの覚醒状態における参照変化勾配の時間的推移を示すデータ群が記憶されている。詳細には、図15Aに示すグラフにおいて、減少時間帯TBの開始時刻を基準としたときの、減少時間帯TBにおける、複数の時刻と、各時刻に対応する参照変化勾配とが対応付けられたデータ群が「参照変化勾配」フィールドに記憶されている。
例えば、ユーザID「S00001」のユーザは、2017年1月20日から2017年1月22日の3日間の時間帯に計測された生体データを用いて参照変化勾配が算出されている。
このように、本開示では、ユーザ毎の参照変化勾配が算出されているので、各ユーザに適した参照変化勾配を用いて各ユーザのストレスを判定することができ、判定精度を高めることができる。本開示では、ユーザ毎の参照変化勾配が算出されているが、これは一例であり、全ユーザの中の一部のユーザにおいて算出された参照変化勾配の平均値が全ユーザの参照変化勾配として適用されてもよい。或いは、全ユーザの参照変化勾配の平均値が全ユーザの参照変化勾配として適用されてもよい。これらの場合、ユーザ毎に参照変化勾配を記憶及び算出する必要がないので、メモリ消費量の節約及び処理ステップの低減を図ることができる。
生体データテーブルT4は、センサ3が取得した生体データを記憶するテーブルである。生体データテーブルT4は、1の生体データに対して1つのレコードが割り当てられており、「ユーザID」、「日」、「時間」、「濃度」、及び「判定結果」を対応付けて記憶する。
「ユーザID」フィールドには、ユーザ情報テーブルT1が記憶するユーザIDと同じユーザIDが記憶されている。「日」フィールドには、生体データの測定日が記憶されている。「時間」フィールドには、生体データが測定された時間帯が記憶されている。「濃度」フィールドには、生体データが示す生体ガス濃度が記憶されている。「判定結果」フィールドには、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかであるか否かの判定結果が記憶されている。なお、「時間」フィールドには、生体データをサーバ1が取得した時間帯が記憶されてもよい。
例えば、生体データテーブルT4において1行目のレコードには、ユーザID「S00001」のユーザの2017年2月15日の10時〜11時の時間帯に測定された、生体ガス濃度「○○」の生体データが記憶されている。また、この1行目のレコードには、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に比べて緩やかでなかったので、「判定結果」フィールドには「正常」が記憶されている。一方、2行目のレコードでは、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に比べて緩やかであったので、「判定結果」フィールドには、「異常」が記憶されている。
なお、生体データテーブルT4では、ユーザID「S00001」のユーザのみの生体データが示されているが、これは一例であり、生体データテーブルT4には、ケアサービスを受ける全ユーザの生体データが記憶されている。
図20に参照を戻す。通信部13は、例えば、サーバ1をネットワークNTに接続させる通信回路で構成され、センサ3で計測された生体データを受信したり、時間帯情報をユーザ端末2に送信したりする。
ユーザ端末2は、制御部21、メモリ22、表示部23(ディスプレイの一例)、及び通信部24を備える。制御部21は、CPU等のプロセッサで構成され、ユーザ端末2の全体制御を司る。メモリ22は、種々のデータを記憶する。本開示では、メモリ22は、特に、ユーザU1にケアサービスを受けさせるためにユーザ端末2で実行されるアプリケーションを記憶する。また、メモリ22は、生体データに対応付けて送信されるユーザIDを記憶する。
表示部23は、例えば、タッチパネルを備えるディスプレイで構成され、種々の情報を表示する。本開示では、表示部23は、特に、ストレスに関連する情報を表示する。通信部24は、ユーザ端末2をネットワークNTに接続させると共に、ユーザ端末2をセンサ3と通信させるための通信回路で構成される。本開示では、通信部24は、特に、センサ3から送信された生体データを受信し、受信した生体データにメモリ22に記憶されたユーザIDを対応付けてサーバ1に送信する。また、本開示では、通信部24は、特に、サーバ1から送信されたストレスに関連する情報を受信する。なお、表示部23は、タッチパネルで構成されなくてもよい。この場合、ユーザ端末2は、ユーザからの操作を受け付ける操作部を備えればよい。
センサ3は、制御部31、メモリ32、検出部33、及び通信部34を備える。制御部31は、CPUやDSP等のプロセッサで構成され、センサ3の全体制御を司る。メモリ32は、例えば、検出部33が計測した生体データを一時的に記憶する。また、メモリ32は、交流電圧源205aが非対称な交流電圧を生成するために必要になるデータ(例えば、周波数やプラス側の振幅、及びマイナス側の振幅)を記憶する。また、メモリ32は、補償電圧CVの電圧値を記憶する。
通信部34は、無線LANやブルーツース(登録商標)等の通信回路で構成され、検出部33が計測した生体データをユーザ端末2に送信する。この生体データは、ユーザ端末2の通信部24によって受信され、ネットワークNTを介してサーバ1に送信される。
(シーケンス)
図22は、図20に示す生体情報システムの処理の一例を示すシーケンス図である。このシーケンス図は、S101からS106までの初期フェーズと、S201以降の通常フェーズとに分けられる。初期フェーズは、ユーザの参照変化勾配を算出するためのフェーズであり、ケアサービスの導入直後に行われる。通常フェーズは、初期フェーズで算出された参照変化勾配を用いてユーザのストレス状態を監視するフェーズである。
初期フェーズは、例えば、ケアサービスを受けるためのユーザ端末2用のアプリケーションをユーザがユーザ端末2において初めて起動させたときに実行される。
まず、ユーザ端末2の表示部23は、ユーザ情報の入力を受け付ける(S101)。ここで、表示部23は、ユーザID、電話番号、メールアドレス、及びSNSアカウント等のユーザ情報をユーザに入力させるための登録画面を表示することで、ユーザ情報をユーザに入力させればよい。ここで、ユーザIDは、例えば、ユーザが保険会社と保険契約を結んだ際に発行されたユーザIDが採用されてもよい。或いは、ユーザIDは、サーバ1が後述のS102でユーザ情報を受信した際にユーザIDを発行し、ユーザ端末2に通知されるものであってもよい。この場合、ユーザは、登録画面においてユーザIDを入力する必要はない。
次に、ユーザ端末2の制御部21は入力されたユーザ情報を通信部24を用いてサーバ1に送信する(S102)。送信されたユーザ情報は、サーバ1の制御部41によって、ケアサービスを受ける1又は複数のユーザのユーザ情報を管理するユーザ情報テーブル(図略)に記憶される。
次に、センサ3の検出部33は、ユーザの初期生体データを計測する(S103)。次に、センサ3の制御部31は、計測した初期生体データを通信部34を用いてユーザ端末2に送信する(S104)。
ユーザ端末2において、通信部24が初期生体データを受信すると、制御部21は、初期生体データをユーザIDと対応付けてサーバ1に送信する(S105)。
初期生体データは、ユーザの参照変化勾配を算出するために用いられるので、ユーザはストレス状態にないことが前提となる。そこで、ユーザ端末2は、ユーザ情報の送信(S102)が終了すると、例えば、「生体データを計測しますので、センサを装着して数日間、ゆったりとして過ごして下さい。」というようなメッセージを表示部23に表示させてもよい。サーバ1のデータ解析部111は、参照変化勾配を設定する(S106)。設定された参照変化勾配は、サーバ1のデータ解析部111によって、ユーザIDと対応付けて正常範囲データテーブルT2に記憶される。
以上で、初期フェーズが終了される。以降、通常フェーズが実行される。
まず、センサ3において、検出部33は生体データを計測し(S201)、制御部31は、生体データを通信部34を用いてユーザ端末2に送信する(S202)。
次に、ユーザ端末2において、通信部24が生体データを受信すると、制御部21は生体データをユーザIDと対応付けて通信部24を用いてサーバ1に送信する(S203)。
次に、サーバ1において、通信部13が生体データを受信すると、データ解析部111は、生体データから生体ガス濃度の変化勾配を算出し、算出した変化勾配を参照変化勾配と比較し、判定結果を蓄積する(S204)。ここで、判定結果は、ユーザIDをキーにして、正常範囲データテーブルT2の該当するユーザのレコードの「判定結果」フィールドに蓄積される。
次に、データ解析部111は、規定期間が経過すると、規定期間内において、生体ガス濃度の変化勾配が緩やかになった時間帯を示す時間帯情報を、通信部13を用いて、ユーザ端末2に送信する(S205)。
次に、ユーザ端末2において、通信部24が時間帯情報を受信すると、制御部21は、表示部23に時間帯情報を表示する(S206)。
なお、規定期間に到達していなければ、S205以降の処理は実行されず、S201〜S204が繰り返される。
図23は、本開示の実施の形態1に係る初期フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートはサーバ1で行われる。まず、通信部13は、ユーザ端末2から送信されたユーザ情報を受信する(S301)。
次に、通信部13は、ユーザ端末2から送信された初期生体データを受信する(S302)。次に、データ解析部111は、初期生体データの取得が完了していなければ(S303でNO)、処理をS302に戻す。一方、データ解析部111は、初期生体データの取得が完了すれば(S303でYES)、処理をS304に進める。ここで、データ解析部111は、受信した初期生体データの個数が参照変化勾配を算出するのに十分な所定個数に到達した場合、或いは、初期生体データの計測を開始してから所定の計測期間が経過したときに初期生体データの取得を完了すればよい。本開示では、1又は複数の日での生体ガス濃度の変化勾配から参照変化勾配が算出されるので、初期フェーズの計測期間としては、例えば、1日、2日、3日等が採用される。
なお、初期生体データの計測期間は、事前の設定期間の一例に相当する。
次に、データ解析部111は、取得した初期生体データを用いて参照変化勾配を設定する(S304)。データ解析部111は、例えば、下記の処理により参照変化勾配を設定すればよい。まず、データ解析部111は、初期生体データの計測日時から初期生体データを日毎に分類する。そして、初期フェーズにおいてユーザに常時、センサ3を装着させる態様が採用されるのであれば、データ解析部111は、日毎に分類した初期生体データから覚醒状態のうち減少時間帯TB(図15A参照)での初期生体データを抽出する。
ここで、データ解析部111は、ユーザに起床したことを示す起床信号と就寝したことを示す就寝信号とを送信させることで、起床時刻と就寝時刻とを特定し、特定した起床時刻から就寝時刻までの初期生体データを覚醒状態での初期生体データとして抽出すればよい。そして、データ解析部111は、覚醒状態での初期生体データのうち予め定められた初期の一定の時間帯で計測された初期生体データを増加時間帯TAで計測された初期生体データとして除去することで減少時間帯TBでの初期生体データを抽出すればよい。
起床信号及び送信信号を送信させる一例としては、例えば、ユーザ端末2の表示部23に起床ボタン及び就寝ボタンを表示させ、これらのボタンをユーザに押させる態様が採用できる。
また、他の一例としては、ユーザの目覚まし時計と連動させて起床信号と就寝信号とを送信する態様が採用されてもよい。この態様では、ユーザの目覚まし時計とユーザ端末2とがブルーツース(登録商標)等により通信可能に接続されている。そして、起床時にユーザが目覚まし時計に設けられた目覚まし音の消音ボタンを押すと、起床信号がユーザ端末2を介してサーバ1に送信され、データ解析部111は起床時刻を認識すればよい。また、この態様では、就寝時にユーザが目覚まし時計に起床時刻をセットすると、就寝信号がユーザ端末2を介してサーバ1に送信され、データ解析部111は就寝時刻を認識すればよい。
また、更に他の一例として、センサ3に加速度センサやジャイロセンサ等のセンサ要素を内蔵させ、初期生体データと合わせてセンサ3にセンサ要素の計測値を送信させる態様が採用されてもよい。この態様では、データ解析部111は、初期生体データと合わせて送信されたセンサ要素の計測値が起床したことを示す閾値以上の値を一定時間以上示せば、計測値が閾値以下になったときの初期生体データの計測時刻をユーザの起床時刻と判定すればよい。また、この態様では、データ解析部111は、センサ要素の計測値が閾値以下である状態が一定時間以上継続すれば、計測値が閾値以下になったときの初期生体データの計測時刻をユーザの就寝時刻として判定してもよい。
センサ要素としては、ミリ波センサ等の生体センサが採用されてもよい。この場合、データ解析部111は、ミリ波センサの計測値からユーザの呼吸数や心拍数や体動値等を抽出し、抽出結果からユーザが覚醒状態にある時間帯を特定すればよい。
なお、これらの態様において、就寝信号の送信は省かれても良い。この場合、データ解析部111は、起床時刻からユーザが就寝することが想定される一定時間が経過した時刻を就寝時刻として判定すればよい。
更に別の一例として、初期生体データが示す生体ガス濃度の値からデータ解析部111は、ユーザが覚醒状態にある時間帯を特定してもよい。図15Aに示すように、就寝中は低い値を示すと予想される。そこで、データ解析部111は、生体ガス濃度が所定の閾値以上になった時刻を起床時刻と判定し、生体ガス濃度が閾値未満になった時刻を就寝時刻と判定してもよい。
また、就寝時にはユーザがセンサ3を取り外す対象が採用されるのであれば、データ解析部111は、ユーザがセンサ3が装着した時刻を起床時刻、ユーザがセンサ3を取り外した時刻を就寝時刻と判定してもよい。この場合、データ解析部111は、センサ3から初期生体データの送信が開始された時刻を起床時刻、初期生体データの送信が停止された時刻を就寝時刻と判定すればよい。
次に、データ解析部111は、日毎に抽出した減少時間帯TBの初期生体データを用いて、各時刻での生体ガス濃度の変化勾配を算出する。
ある時刻t(i)で取得された初期生体データが示す生体ガス濃度をD(i)とする。iは時刻tを特定するためのインデックスであり、1以上、n以下の整数値を採る。t(1)は減少時間帯TBにおいて1番最初に取得された初期生体データを示し、t(n)は減少時間帯TBの最後に取得された初期生体データを示す。
データ解析部111は、時系列に隣接する生体ガス濃度同士の差分を算出する、すなわち、D(i)−D(i−1)の演算を行うことで、時刻t(i)での変化勾配K(i)を算出する。なお、データ解析部111は、初期生体データの計測間隔をΔt=t(i)−t(i−1)とすると、(D(i)−D(i−1))/Δtの演算により時刻t(i)の変化勾配K(i)を算出してもよい。データ解析部111は、このような処理を日毎に実行し、日毎の時刻t(i)における生体ガス濃度の変化勾配K(i)を算出する。
次に、データ解析部111は、1又は複数の日における時刻(i)についての1又は複数の変化勾配K(i)の平均値を算出し、時刻t(i)の参照変化勾配K0(i)を算出する。そして、データ解析部111は、算出した参照変化勾配K0(i)を正常範囲データテーブルT2の「参照変化勾配」フィールドに記憶させる。以上により、各ユーザの参照変化勾配の時間的推移を示すデータ群が算出される。
図24は、本開示の実施の形態1に係る通常フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。なお、図24のフローチャートは、センサ3による生体データの計測間隔でサーバ1において周期的に実行される。
まず、通信部13は、ユーザ端末2から生体データを受信する(S401)。次に、データ解析部111は、受信した生体データが減少時間帯TBの生体データであれば(S402でYES)、処理をS403に進め、受信した生体データが減少時間帯TBの生体データでなければ(S402でNO)、処理をS401に戻す。
ここで、データ解析部111は、上述した減少時間帯TBの初期生体データを抽出する手法を用いて、S402の処理を行えばよい。例えば、データ解析部111は、ユーザ端末2から起床信号が送信された時刻を基準に減少時間帯TBの開始時刻を決定し、減少時間帯TBの開始時刻から就寝信号が送信されるまでの時間帯(減少時間帯TB)において、センサ3から送信された生体データを減少時間帯TBの生体データと判定すればよい。
次に、データ解析部111は、生体データが示す生体ガス濃度から変化勾配を算出し、算出した変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかであるか否かを判定し、緩やかであれば、「異常」の判定結果を、緩やかでなければ「正常」の判定結果を生体データテーブルT4に蓄積する(S403)。
ここで、生体データにおける変化勾配の算出手法は、上述した初期生体データにおける参照変化勾配の算出手法が採用されればよい。すなわち、減少時間帯TBにおいてi番目に取得された時刻t(i)における、生体ガス濃度をDx(i)、変化勾配をKx(i)とすると、データ解析部111は、Dx(i)−Dx(i−1)の演算により時刻t(i)の変化勾配Kx(i)を算出すればよい。なお、変化勾配Kx(i)は(Dx(i)−Dx(i−1))/Δtの演算で算出されてもよい。そして、データ解析部111は、変化勾配Kx(i)を時刻t(i)の参照変化勾配K0(i)と比較し、Kx(i)<K0(i)であれば、変化勾配が参照変化勾配よりも緩やかであるので、判定結果を「異常」と判定すればよい。一方、データ解析部111は、Kx(i)≧K0(i)であれば、変化勾配が参照変化勾配よりも緩やかでないので、判定結果を「正常」と判定すればよい。
なお、データ解析部111は、参照変化勾配K0(i)に一定のマージンδkを設定してもよい。この場合、データ解析部111は、Kx(i)<K0(i)+δk、或いは、Kx(i)<K0(i)−δkならば、変化勾配は参照変化勾配よりも緩やかと判定してもよい。
なお、参照変化勾配K0(i)として時系列データではなく1つの固定値(参照変化勾配K0)が採用されてもよい。この場合、データ解析部111は、変化勾配Kx(i)を参照変化勾配K0と比較すればよい。
そして、データ解析部111は、判定結果を、ユーザID、計測日時、及び生体ガス濃度と対応付けて生体データテーブルT4に記憶させればよい。図21の生体データテーブルT4を参照する。1行目のレコードには、「日」フィールドに「2017.2.15」、「時間」フィールドに「10:00−11:00」と記載されている。これは、生体データの計測間隔が1時間に設定されており、この生体データは、2017年2月15日の10時台に計測されたからである。ここで、生体データテーブルT4において、「判定結果」フィールドに「異常」と記憶された生体データの「時間」フィールドに記憶された時間帯が、生体ガス濃度の変化勾配が緩やかな時間帯となる。例えば、2行目の生体データは判定結果「フィールド」に「異常」が記憶され、「時間」フィールドに「11:00−12:00」が記憶されているので、「11:00−12:00」の時間帯が変化勾配が緩やかな時間帯となる。
次に、データ解析部111は規定期間分(例えば、1日分)の生体データを取得すると(S404でYES)、処理をS405に進め、1日分の生体データを取得していなければ(S404でNO)、処理をS401に戻し、次に計測される生体データを取得する。
ここで、データ解析部111は、規定期間として1日が採用されるのであれば、「0:00」になった場合に、S404でYESと判定し、前日に取得された1日分の生体データを処理対象の生体データとして取り扱えばよい。
次に、データ解析部111は、時間帯情報を通信部13を用いてユーザ端末2に送信する(S405)。ここで、データ解析部111は、規定期間で取得された生体ガス濃度の時間的推移を示すデータと、正常範囲を外れた時間帯とを時間帯情報に含めて送信すればよい。ここで、時間帯情報の送信するタイミングとしては、例えば、翌朝の所定時刻(例えば7時)が採用されてもよい。S405が終了すると処理はS401に戻る。
以上により、生体ガス濃度の変化勾配が緩やかな時間帯が判断される。
(時間帯情報)
図25は、時間帯情報として、ユーザ端末2に表示される表示画面G1の一例を示す図である。表示画面G1は、グラフG11及びメッセージ表示欄G12を備える。
グラフG11は、規定期間(ここでは、2月19日の1日)に取得された生体データにおいて、ストレス度の時間的推移が示されている。グラフG11において、縦軸はストレス度を示し、横軸は時間を示す。ストレス度は、生体ガス濃度に対応している。グラフG11では、ストレス度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかな箇所に三角形のマーカが表示されている。これにより、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかになった時間帯がユーザに示されている。これにより、ユーザは規定期間での自身の生活を振り返り、ストレスが高くなった原因(ストレッサー)を確認することができる。
メッセージ表示欄G12には、三角形のマーカがストレス度が高い時間帯であることをユーザに通知するためのメッセージが表示されている。
(スケジュール情報)
ここで、図25に示す表示画面G1において、該当するユーザのスケジュール情報が表示されてもよい。この場合、サーバ1は、ユーザのスケジュール情報を管理するデータベースを備えればよい。
スケジュール情報を管理するデータベースは、例えば、「ユーザID」と、「予定」と、「日時」等の情報を対応付けて記憶する。「予定」は、ユーザの行動予定(例えば、「会議」等)であり、例えば、ユーザ端末2を介してユーザに入力される。「日時」は「予定」に記載された行動予定が行われる予定日時であり、ユーザ端末2を介してユーザに入力される。
サーバ1は、時間帯情報を送信する際、該当するユーザの規定期間でのスケジュール情報を時間帯情報に含ませて、ユーザ端末2に送信する。
ユーザ端末2は、このスケジュール情報を用いて表示画面G1を生成すればよい。スケジュール情報の表示態様としては、グラフG11にユーザのスケジュール情報を時間帯と関連付けて表示させる態様が採用できる。例えば、グラフG11が示す時間に対応付けてユーザの予定を表示する態様が採用されればよい。これにより、ユーザはストレスと自身の行動との因果関係を容易に確認できる。
このように、実施の形態1によれば、ストレスとの関係が推定される所定の生体ガスを用いてストレス量が客観的に判断されている。そのため、人の主観的な感覚に左右されず、ストレスの累積度合いを客観的に把握できる。
また、実施の形態1では、ユーザ端末2において生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかな時間帯を表示させることで、例えば、一日を振り返って、その日にどれだけストレスを感じていたのかをユーザは客観的に把握できる。また、実施の形態1では、生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配に対して緩やかな時間帯にユーザに生じた出来事をヒントに、そのユーザのストレッサーを見つけ出すことができる。
(実施の形態2)
実施の形態2は、サーバ1の機能をユーザ端末2に組み込んだものである。なお、実施の形態2において実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省く。図26は、本開示の実施の形態2に係る情報処理システムの処理を示すシーケンス図である。
図26において、図22との相違点はサーバ1が省かれ、情報処理システムがセンサ3とユーザ端末2とで構成されている点にある。S501〜S504は初期フェーズに相当する。
S501、S502、S503は、図22のS101、S103、S104と同じである。S504は、処理主体がサーバ1ではなくユーザ端末2である点以外は図22のS106と同じである。
S601〜S604は、通常フェーズに相当する。S601、S602は、図22のS201、S202と同じである。S603は、処理主体がサーバ1ではなくユーザ端末2である点以外は図22のS204と同じである。
S604では、ユーザ端末2の制御部21は、S603の判定結果が異常であれば、ユーザのストレスが正常範囲外にある旨の情報を表示部23に表示させる。一方、S604では、ユーザ端末2の制御部21は、S603の判定結果が正常であれば、ユーザのストレスが正常範囲内である旨の情報を表示部23に表示させる。
なお、実施の形態2において、初期フェーズのフローチャートは、図23と同じである。図27は、本開示の実施の形態2に係る通常フェーズの処理の詳細を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、ユーザ端末2で実行される。
まず、通信部24は、センサ3から生体データを受信する(S701)。次に、制御部21は、生体データが示す生体ガス濃度を該当するユーザの参照変化勾配と比較して、変化勾配が緩やかであるかを判定し、判定結果を生体データテーブルT4に蓄積する(S702)。
次に、制御部21は、S702の判定結果が異常であれば(S703でYES)、ストレス度(生体ガス濃度)が正常範囲を外れた旨の情報を表示部23に表示させる。ここで、ストレス度が正常範囲を外れた旨の情報としては、例えば、「ストレスが高いです。」といったメッセージが採用されればよい。
一方、S702の判定結果が異常でない、すなわち、正常であれば(S703でNO)、ストレス度(生体ガス濃度)が正常範囲内である旨の情報を表示部23に表示させる。ここで、正常範囲内である旨の情報としては、例えば、「ストレスは正常です。」といったメッセージが採用できる。
S704、S705が終了すると、処理はS701に戻る。
このように、実施の形態2に係る情報処理システムによれば、表示部23にストレス度が正常範囲内であるか否かを示す情報が表示されるため、ユーザに対して、現在、ストレス状態にあるか否かの客観的な判断結果を知らせることができる。
本開示は、下記の変形例が採用できる。
(1)上記説明では、センサ3は一体構成されているが、本開示はこれに限定されない。図28は、本開示の変形例に係るセンサ3の一例を示す図である。変形例に係るセンサ3は、ユーザに装着される装着部3Aと、本体部3Bとが別体で構成されている。装着部3Aは、ユーザの手首に取り外し可能な装着バンドで構成されている。装着部3Aは、生体ガスを吸着する吸着剤が取り付けられている。
装着部3Aは、本体部3Bに対しても着脱自在に構成されている。本体部3Bは、図16で示す検出部33、制御部31、及び通信部34を備えている。本体部3Bは、装着部3Aが装着されると、例えば、ヒータで吸着剤を加熱することで吸着剤から生体ガスを脱離させ、その生体ガスを分析し、計測対象の生体ガス(ここでは、上記4種の生体ガスのいずれか1つ)を抽出し、生体ガス濃度を測定する。そして、本体部3Bは、測定した生体ガス濃度を含む生体データをユーザ端末2に送信する。この変形例では、装着部3Aがコンパクト化されるので、ユーザの負担を軽減できる。
(2)実施の形態2において、ユーザ端末2はユーザを診察する医師が使用するコンピュータで構成されてもよい。この場合、診察時において医師はユーザにセンサ3を装着させて、生体データをユーザ端末2に取得させ、ユーザ端末2にユーザのストレスを判定させればよい。
或いは、医師は事前に規定期間(例えば、1、2、3日)、センサ3で計測された生体データをユーザ端末2に取得させることで、ユーザ端末2にユーザのストレスを判定させてもよい。この場合、ユーザは医師から事前にセンサ3を装着するように指示されている。センサ3は、規定期間に測定された生体データを計測時刻と対応付けてメモリ32に記憶させておく。ここで、メモリ32は、センサ3に対して着脱可能なメモリである。
ユーザは来院時にメモリ32を病院に持って行く。医師はこのメモリ32をユーザ端末2に接続し、規定期間内に取得された生体データをユーザ端末2に取得させる。そして、ユーザ端末2は、取得した生体データが示す生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配と比べて緩やかであれば、ストレスが正常範囲外であることを示す情報を表示部23に表示させる。一方、ユーザ端末2は、取得した生体データが示す生体ガス濃度の変化勾配が参照変化勾配と比べて緩やかでなければ、ストレスが正常範囲内であることを示す情報を表示部23に表示させる。
この変形例では、通院するユーザの状態を診察する医師に対して、精神疾患を防止するための有用なデータを提供することができる。なお、この変形例は定期健康診断に適用されてもよい。