JP6915832B2 - 還元型アルブミンの安定化剤及びその使用 - Google Patents

還元型アルブミンの安定化剤及びその使用 Download PDF

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Description

本発明は、還元型生体分子の安定化剤、前記安定化剤を含有する試料採取及び保存用容器、前記安定化剤を用いた酸化型及び還元型生体分子の分析方法、並びに還元型アルブミン製剤に関する。
酸化ストレスは様々な原因で発生し、例えば、呼吸、白血球等による異物や細菌の処理、薬物の代謝処理等の生理的因子;虚血再還流、過度の運動、精神的又は肉体的ストレス、感染、炎症等の病的因子;喫煙、紫外線、放射線、大気汚染、重金属等の外的因子等が挙げられる。抗酸化防御機構の消去能力を上回る酸化ストレスは、タンパク質、脂質、糖、核酸等の生体分子を酸化修飾し、生理機能の低下、疾病の発症や進行、老化などの一因となることが報告されている。よって、酸化ストレスが一因とされる疾病の治療法や新規治療法開発に、レドックス制御機構が着目されている。
生体内のレドックス状態を評価する指標として、酸化型及び還元型アルブミンの測定値、又それらの比率(%)が有用であることが知られている。正常ヒト血清では還元型アルブミンが約80%、酸化型アルブミンが約20%の割合で存在するが、慢性腎不全患者、糖尿病患者や麻酔及び手術時の患者では酸化型アルブミンの割合が増加していることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、血液透析によって慢性腎不全患者の酸化型アルブミンが低下して還元型アルブミンが増加すると報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
しかしながら、現状の酸化型及び還元型アルブミンの測定には試料の安定性に大きな問題がある。採血後、又は試料採取後、還元型アルブミンは刻々と酸化型アルブミンへ変化する。例えば、血清、血漿を−20℃で保存した場合でもこの変化は起こり、保存温度が高いほど変化の速度は速くなる(例えば非特許文献3、及び非特許文献4参照)。
そのため正確な測定のためには採血直後あるいは試料採取直後に−70℃より低い温度で試料を凍結保存し、測定時には凍結溶解後速やかに測定しなければならない等、試料の保存管理、取り扱い条件が厳密でなければならない。さらに、測定のために試料を−70℃から融解する際にも、測定までの時間や室温により還元型アルブミンが酸化型アルブミンに変化するため、測定値に影響を与える。
また、現在市販されているアルブミン輸液は高度に酸化型アルブミンの比率が高く、輸液として用いた場合の有効性や安全性に問題がある可能性が示唆されている(例えば、非特許文献4参照)。
これまで還元型アルブミンから酸化型アルブミンへの変化を抑制するために、採血直後又は試料採取直後の試料をpH4〜9に調整し、緩衝液で50〜100000倍に希釈し−70℃に保存する安定化方法が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。さらに、試料から低分子量物質を除くために限外濾過等を行うことが好ましいとされ、HPLCやLCMSでの分析の前に4〜60℃で試料を0〜100時間、好ましくは2〜12時間インキュベーションすることも提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
特許第5024044号公報
恵良聖一、臨床検査、「血清アルブミンの多面的機能とその解析」、48(5)、501−511、2004。 Sogami,M.et al.,「HPLC−studies on nonmercapt−mercapt conversion of human serum albumin」,Int.J.Peptide Protein Res,25(4),398−402,1985. 村本良三、生物試料分析、「BCPを用いた新しい血清アルブミン定量法の特徴」、24(2)、105−112、2001. Hayashi,T, et al., 「The importance of sample preservation temperature for analysis of the redox state of human serum albumin」,Clinica Chimica Acta,316,175−178,2002. Miyamura,S、et al., 「Comparison of Posttranslational Modification and the Functional Impairment of Human Serum Albumin in Commercial Preparations」,Journal of Pharmaceutical Sciences,105,1043−1049,2016.
酸化型、還元型アルブミンの正確な測定、検査の普及のためには採血直後、又は試料 採取直後の試料の安定化が不可欠である。より正確な測定値を得るために、採血直後、又は試料採取直後に−70℃で保存することが推奨されている。
しかしながら、上述したように測定のために−70℃から融解する場合にも、測定に供するまでの時間や温度によって還元型アルブミンから酸化型アルブミンへ刻々と変化するため、測定可能な場所や条件が限られ、大量の試料の自動分析は不可能である。
また、特許文献1では−70℃から融解後の還元型アルブミンから酸化型アルブミンへの変化を抑制するために試料をpH4〜9、好ましくはpH5.8〜6.2に調整し緩衝液で50〜100000倍に希釈することが推奨されているが、手間がかかり、研究施設等においては有用であっても、実臨床の場等では実用性に欠ける。さらに、オートサンプラー等に予め試料をセットし自動分析を実施することも測定値の正確性から問題がある。
さらに、現在市販されているアルブミン製剤は、酸化型アルブミンの含有量が多く、輸液として用いる際の有効性等に関して問題がある可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、還元型生体分子から酸化型生体分子への試料採取直後からの経時変化を防止するための還元型生体分子の安定化剤、前記安定化剤を含有する容器、前記安定化剤を用いた分析方法、及び還元型アルブミン製剤を提供する。
本発明者らが鋭意検討した結果、採血及び試料採取時に、酸及びその塩を添加するのみで、室温において25時間程度、還元型生体分子を安定化させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]還元型アルブミンと混合後の最終濃度が50mM超となる酸及びその塩を含み、且つ、pH3.0以上pH7.5以下であることを特徴とする還元型アルブミンの安定化剤。
[2]前記酸がクエン酸又は酢酸である、[1]に記載の還元型アルブミンの安定化剤。
[3]前記塩がクエン酸塩又は酢酸塩である、[1]又は[2]に記載の還元型アルブミンの安定化剤。
[4]さらに、糖類を含む、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の還元型アルブミンの安定化剤。
[5][1]〜[4]のいずれか一つに記載の還元型アルブミンの安定化剤を含有することを特徴する試料採取及び保存用容器。
[6][1]〜[4]のいずれか一つに記載の還元型アルブミンの安定化剤を室温で用いることを特徴とする酸化型及び還元型アルブミンの分析方法。
本発明によれば、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぐことにより、還元型生体分子を安定化することができる。
参考例1における同一試料の時間経過に伴う還元型アルブミンの割合の低下を示す グラフである。 参考例2における市販採血管各種における冷蔵(4℃)保存の時間と還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。 試験例1における採血直後及び室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のpHの関係を示すグラフである。 試験例2における採血直後及び室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のクエン酸濃度との関係を示すグラフである。 (A)試験例3におけるクエン酸およびクエン酸ナトリウムをそれぞれpH6.0、6.5、又は7.0であって、且つ試料と混合後の最終クエン酸濃度が20、30、又は40mMになるように調整し、血液と混合した直後のpHと還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。(B)試験例3におけるクエン酸およびクエン酸ナトリウムをそれぞれpH6.0、6.5、又は7.0であって、且つ試料と混合後の最終クエン酸濃度が20、30、又は40mMになるように調整し、血液と混合後冷蔵(4℃)で24時間保存後のpHと還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。(C)試験例3におけるクエン酸およびクエン酸ナトリウムをそれぞれpH6.0、6.5、又は7.0であって、且つ試料と混合後の最終クエン酸濃度が20、30、又は40mMになるように調整し、血液と混合後冷蔵(4℃)で5日間保存後のpHと還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。(D)試験例3におけるクエン酸およびクエン酸ナトリウムをそれぞれpH6.0、6.5、又は7.0であって、且つ試料と混合後の最終クエン酸濃度が20、30、又は40mMになるように調整し、血液と混合後冷凍(−80℃)で24時間保存後のpHと還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。(E)試験例3におけるクエン酸およびクエン酸ナトリウムをそれぞれpH6.0、6.5、又は7.0であって、且つ試料と混合後の最終クエン酸濃度が20、30、又は40mMになるように調整し、血液と混合後冷凍(−80℃)で5日間保存後のpHと還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。
<還元型生体分子の安定化剤>
一実施形態において、本発明は、還元型生体分子と混合後の最終濃度が20mM以上となる酸及びその塩を含み、且つ、pH3.0以上pH7.5以下である還元型生体分子の安定化剤を提供する。
本実施形態の安定化剤によれば、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を室温以下で防ぐことにより、還元型生体分子を安定化することができる。さらに、室温以下で25時間の還元型生体分子の安定性を確保することができることにより、測定機器、設備を有する一般の研究施設、医療施設のみならず、検査センター等へ外注検査を実施している、開業医や健診施設においても検査が可能になる。
本明細書において、「還元型生体分子」とは、酸化の標的となり得る生物の体内に存在する分子を意味し、例えば、酵素、転写因子、シグナル伝達因子、抗体等のうち、遊離のメルカプト基を有するシステイン残基を含むタンパク質;DNA、RNA等の核酸;リノール酸、リン脂質、エステル型コレステロール、中性脂肪等の脂質;糖タンパク質、糖ペプチド、プロテオグライカン、糖脂質等の糖質等が挙げられる。中でも、遊離のメルカプト基を有するシステイン残基を含むタンパク質が好ましく、本実施形態の安定化剤によれば、還元型の状態で安定化することができる。さらに具体的には、チオレドキシン等のグルタチオン系分子、アルブミン等が挙げられ、中でも、アルブミンが好ましい。
本明細書において、「還元型生体分子の安定化」とは、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぎ、還元型生体分子のままの状態を保つことを意味する。
本実施形態の安定化剤は、目的の生体分子のみを含む試料に対し使用してよいが、目的の生体分子以外の生体分子も含む試料に対して使用してもよい。目的の生体分子以外の生体分子も含む試料としては、例えば、血液、髄液、歯肉溝液、リンパ液、唾液、涙液、汗等の体液、尿などの生体試料、細胞の懸濁液、細胞の破砕液、並びに目的の生体分子を含む各種細胞培養液、細胞培養培地、医薬品、化粧品、及び食品等が挙げられる。さらに、上記の生体分子の由来は、哺乳類(例えば、ヒト、サル、ウシ、ウサギ、マウス、ラット等)由来のものであれば、特に限定はない。
本実施形態の安定化剤は、還元型生体分子の分析時に試料に含まれる還元型生体分子の安定化を目的として用いる場合には、還元型生体分子と混合後の最終濃度が20mM以上となる酸及びその塩を含み、且つ、pHが酸性であることが好ましい。このとき、本実施形態の安定化剤のpHは、具体的には、pH3.0以上7.5以下であることが好ましく、pH4.0以上6.5以下であることがより好ましく、pH4.0以上6.0以下であることがさらに好ましく、pH4.0以上pH5.5以下であることが特に好ましい。
pHが上記範囲内であることにより、試料中に含まれる生体分子が変性又は分解せず、さらに、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぎ、還元型生体分子を安定化することができる。
また、製剤中の還元型生体分子を安定化するために用いる場合は、還元型生体分子と混合後の最終濃度が20mM以上となる酸及びその塩を含み、且つ、pHが3.0以上7.5以下であることが好ましい。このとき、本実施形態の安定化剤のpHは、具体的には、具体的には、pH4.0以上7.5以下であることが好ましく、pH5.0以上7.5以下であることがより好ましく、pH6.0以上7.5以下であることがさらに好ましく、pH6.5以上pH7.5以下であることが特に好ましい。
pHが上記範囲内であることにより、製剤中の生体分子が、経時的に還元型生体分子から酸化型生体分子へ変化することを防き、製剤中の還元型生体分子を安定化することができる。さらに、製剤のpHが血液のpH(7.4付近)に近いことから、そのまま体内に注入するのに実用的である。あるいは、製剤の使用直前にアルカリやアルカリ塩等などで血液と同じpH(7.4付近)に調整し体内に注入してもよい。
本実施形態の安定化剤において、pHを上記範囲内とするためにpH調整剤を使用してもよい。pH調整剤としては、酸及びその塩であることが好ましく、pHを調整できるものであれば、特に制限はない。例えば、酸としては、クエン酸、乳酸、リン酸、酢酸、グルコン酸、コハク酸、炭酸、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、ホウ酸、又はそれらの水和物等が挙げられる。中でも、酸としては、クエン酸又は酢酸であることが好ましい。
また、前記酸の塩としては、pHを上記範囲内に保ち、還元型生体分子を酸化する作用を有さないものであればよく、前記酸と同じ種類の酸由来の塩であることが好ましい。前記酸の塩としては、例えば、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩等が挙げられる。前記酸の塩としてより具体的には、例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、及びこれらの水和物等のクエン酸塩;乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等の乳酸塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸塩;酢酸ナトリウム等の酢酸塩;グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸塩;コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、及びこれらの水和物等のコハク酸塩;炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)等の重炭酸塩;塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩酸塩;硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等の硝酸塩;シュウ酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム等のシュウ酸塩;メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;乳酸グルコン酸カルシウム等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、前記酸の塩としては、クエン酸塩又は酢酸塩であることが好ましい。
本実施形態の安定化剤において、目的の還元型生体分子を含む試料と混合した後の酸及びその塩の合計の最終濃度の下限値としては、20mM以上であることが好ましく、50mM以上であることがより好ましく、100mM以上であることがさらに好ましい。また、目的の還元型生体分子を含む試料と混合した後の酸及びその塩の最終濃度の上限値としては、酸及びその塩の種類により溶解度が異なり、目的の還元型生体分子を含む試料に溶解する濃度であればよい。前記上限値として具体的には、200mM以下であることが好ましく、180mM以下であることがより好ましく、150mM以下であることがさらに好ましい。目的の還元型生体分子を含む試料と混合した後の酸及びその塩の最終濃度が上記範囲内であることにより、室温の保存においても経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぎ、還元型生体分子を安定化することができる。
本実施形態の安定化剤に含まれる酸及びその塩の濃度としては、目的の還元型生体分子を含む試料と混合した後の酸及びその塩の合計の最終濃度が上記範囲となる濃度であればよく、目的の還元型生体分子を含む試料との混合割合に応じて適宜調整すればよい。例えば、本実施形態の安定化剤と目的の還元型生体分子を含む試料とを1:1で混合する場合、本実施形態の安定化剤に含まれる酸及びその塩の濃度の下限値は、40mM以上であることが好ましく、100mM以上であることがより好ましく、200mM以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の安定化剤に含まれる酸及びその塩の濃度の上限値としては、酸とその塩の種類により溶解度が異なり、目的の還元型生体分子を含む試料に溶解する濃度であればよい。前記上限値として具体的には、400mM以下であることが好ましく、360mM以下であることがより好ましく、300mM以下であることがさらに好ましい。本実施形態の安定化剤に含まれる酸及びその塩の濃度が上記範囲内であることにより、目的の還元型生体分子を含む試料と混合する際に、室温の保存においても経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぎ、還元型生体分子を安定化することができる。
本実施形態の安定化剤は、さらに、糖類を含んでいてもよい。「糖類」としては、特に限定はなく、例えばデンプン、グリコーゲン等の多糖類;ラフィノース、スタキオース等の少糖類;スクロース、マルトース等の二糖類;六炭糖、五炭糖等の単糖類等が挙げられる。前記六炭糖としては、例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース等のアルドヘキソース;プリコース、フルクトース、ソルボース、タガロース等のケトヘキトース;フコース、フクロース、ラムノース等のデオキシ糖等が挙げられる。前記五炭糖としては、例えば、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等が挙げられる。
本実施形態の安定化剤において、目的の還元型生体分子を含む試料と混合した後の糖類の最終濃度は50mM未満であり、0.1mM以上50mM未満であることが好ましく、0.1mM以上30mM以下であることがより好ましく、0.1mM以上25mM以下であることがさらに好ましい。糖類の含有濃度が上記範囲内であることにより、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぎ、還元型生体分子を安定化することができる。
本実施形態の安定化剤は、粉体又は液体どちらの状態でもよい。粉体の状態である場合は、溶媒を用いてpH、並びに酸及びその塩の濃度(さらに、必要に応じて糖類の濃度)が上記範囲となるように溶解すればよい。溶媒としては、例えば蒸留水、減菌水又は生理学的に適合性の水性電解液等が挙げられる。「生理学的に適合性の水性電解液」としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール等、具体的にはエタノール、ポリアルコール等、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50等と併用してもよい。
<試料採取及び保存用容器>
一実施形態において、本発明は、上述の還元型生体分子の安定化剤を含有する試料採取及び保存用容器を提供する。
本実施形態の容器によれば、生体内における酸化型生体分子と還元型生体分子の存在、及び存在比を測定時まで安定に保つことが可能になる。
本実施形態の容器の材料としては、試料及び前記安定化剤の成分が変わることなく保持でき、液密性を有するものであればよく、通気性を有するものであってもよく、通気性を有さないものであってもよい。前記材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、バイコール(登録商標)ガラス、石英ガラス等のガラス材料;ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フッ素ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム等のエラストマー材料;ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル−共−無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン等の樹状ポリマーを含むプラスチック;ポリ(酢酸ビニル−共−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−共−無水マレイン酸)、ポリ(エチレン−共−アクリル酸)、又はこれらの誘導体等のコポリマー等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、容器の材料としては、壊れにくく、軽量であることから、プラスチックであることが好ましい。
本実施形態の容器の形態としては、試料及び前記安定化剤を保持することができるものであればよく、例えば、採血用の真空採血管、スクリューキャップ付のコニカルチューブ等があげられる。
本実施形態の容器に還元型生体分を含む試料を添加することにより、酸化型生体分子の経時的増加を防止することが可能になる。
<酸化型及び還元型生体分子の分析方法>
一実施形態において、本発明は、上記の還元型生体分子の安定化剤を用いた酸化型及び還元型生体分子の分析方法を提供する。
本実施形態の分析方法によれば、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を防ぐことにより、酸化型生体分子、及び還元型生体分子を簡便に精度良く分析することができ、生体内のレドックス状態を反映した測定結果を得ることができる。
本実施形態の分析方法において、分析対象となり得る生体分子は、上述したものと同様のものが挙げられる。中でも、遊離のメルカプト基を有するシステイン残基を含むタンパク質が好ましく、本実施形態の分析方法において、還元型で安定化された状態で分析することができる。さらに具体的には、チオレドキシン等のグルタチオン系分子、アルブミン等が挙げられ、アルブミンが好ましい。
本実施形態の分析方法において、目的の生体分子のみを含む試料を分析してよいが、目的の生体分子以外の生体分子も含む試料を分析してもよい。目的の生体分子以外の生体分子も含む試料としては、例えば、上述したものと同様のものが挙げられる。さらに、上記の生体分子の由来は、哺乳類由来のものであれば、特に限定はない。
本実施形態の分析方法において、使用可能な分析機器としては、酸化型及び還元型アルブミンを分析できるものであれば、特別な限定はない。使用可能な分析装置としては、例えば、分子ふるい(ゲルろ過)カラムをセットした高速液体クロマトグラフ(High performance liquid chromatograph:HPLC)、イオン交換カラムをセットしたHPLC、アフィニティーカラムを用いたHPLC、質量分析計、液体クロマトグラフィー質量分析計(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry:LC−MS)等が挙げられる。具体的な分析条件等については、分析対象の生体分子の種類及び量に応じて、公知の方法(例えば、免疫法、酵素法、比色法等)に従い、当業者が適宜決定できる。
<還元型アルブミン製剤>
一実施形態において、本発明は、pH3.0以上pH7.5以下であり、且つ、0.15mM以上16.00mM以下の還元型アルブミン、並びに酸及びその塩を含む還元型アルブミン製剤を提供する。
本実施形態の還元型アルブミン製剤によれば、安定化された還元型アルブミンを提供することができる。
従来のアルブミン製剤は、酸化型アルブミンからなる製剤である。現在市販されているアルブミン輸液、製剤は酸化型アルブミンの含有量が多く、輸液として用いる際の有効性、安全性等に関して問題が指摘されている。
これに対し、本発明者らにより、初めて還元型アルブミンからなる製剤を得ることができた。よって、本実施形態の還元型アルブミン製剤を、例えば慢性腎不全等の疾病のある患者に投与する場合において、体内のレドックス状態を健常者に近づけることができ、疾病の治療効果を高めることができる。
アルブミンは分子内に35個のシステイン残基(Cys)を有し、その内の34個のシステイン残基についてはシステイン残基同士が分子内でジスルフィド(S−S)結合を形成している。残りの1個のシステイン残基は、N末端から34番目のシステイン残基(Cys−34)であって、遊離のメルカプト基(SH基)を有するシステイン残基(として存在する。さらに、4個のリシン残基を有し、このリシン残基が糖化を受ける。
また、還元型アルブミンは上述の通り、Cys−34のSH基が遊離であり、酸化型アルブミンは、Cys−34にCys又はグルタチオン等が結合している。
よって、本実施形態の還元型アルブミン製剤において、「還元型アルブミン」とは、N末端から34番目のシステイン残基が遊離のメルカプト基を有するアルブミンである。
本実施形態の還元型アルブミン製剤において、アルブミンの由来は、哺乳類(例えば、ヒト、サル、ウシ、ウサギ、マウス、ラット等)由来のものであれば、特に限定はない。
本実施形態の還元型アルブミン製剤は、還元型アルブミンを0.15mM以上16.00mM以下含み、pHが、3.0以上7.5以下であることが好ましく、4.0以上7.5以下であることがより好ましく、5.0以上7.5以下であることがさらに好ましく、6.0以上7.5以下であることが特に好ましい。pHが上記範囲内であることにより、製剤中のアルブミンが変性せず、経時的に還元型アルブミンから酸化型アルブミンへ変化することを防き、製剤中の還元型アルブミンを安定化することができる。さらに、製剤のpHが血液のpH(7.4付近)に近いことから、そのまま体内に注入するのに実用的である。あるいは、本実施形態の還元型アルブミン製剤の使用直前にアルカリやアルカリ塩等などで血液と同じpH(7.4付近)に調整し体内に注入してもよい。
本実施形態の還元型アルブミン製剤において、pHを上記範囲内とするためにpH調整剤を使用してもよい。pH調整剤としては、酸及びその塩であることが好ましく、アルブミンを変性させることなく、pHを調整できるものであれば、特に制限はない。酸としては、上述の<還元型生体分子の安定化剤>において例示されたものと同様のもの等が挙げられる。中でも、酸としては、クエン酸又は酢酸であることが好ましい。
また、前記酸の塩としては、上述の<還元型生体分子の安定化剤>において例示されたものと同様のもの等が挙げられる。中でも、塩としては、クエン酸塩又は酢酸塩であることが好ましい。
本実施形態の還元型アルブミン製剤に含まれる酸及びその塩の合計の濃度の下限値としては、20mM以上であることが好ましく、50mM以上であることがより好ましく、100mM以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の還元型アルブミン製剤に含まれる酸及びその塩の合計の濃度の上限値としては、酸及びその塩の種類により溶解度が異なり、目的の還元型生体分子を含む試料に溶解する濃度であればよい。前記上限値として具体的には、200mM以下であることが好ましく、180mM以下であることがより好ましく、150mM以下であることがさらに好ましい。酸及びその塩の合計の濃度が上記範囲内であることにより、経時的な還元型アルブミンから酸化型アルブミンへの変化を防ぎ、還元型アルブミンを安定化することができる。
本実施形態の還元型アルブミン製剤は、さらに糖類を含んでいてもよい。糖類としては、例えば、上述したものと同様のもの等が挙げられる。
本実施形態の還元型アルブミン製剤において、糖類の濃度は1M未満であり、0.1mM以上50mM未満であることが好ましく、0.1mM以上30mM以下であることがより好ましく、0.1mM以上25mM以下であることがさらに好ましい。糖類の含有濃度が上記範囲内であることにより、経時的な還元型アルブミンから酸化型アルブミンへの変化を防ぎ、還元型アルブミンを安定化することができる。
本実施形態の還元型アルブミン製剤は、粉体又は液体どちらの状態でもよい。粉体の状態である場合は、溶媒を用いてpH、並びに、還元型アルブミンの濃度、酸及びその塩の濃度(さらに、必要に応じて糖類の濃度)を上記範囲とするように溶解すればよい。溶媒としては、例えば上述の<還元型生体分子の安定化剤>において例示されたものと同様のものが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例1]同一試料の時間経過に伴う還元型アルブミンの割合の低下
(1)試料の調製
市販真空採血管各種(EDTA−NaF管、EDTA−2K管、3.13%クエン酸Na管、EDTA−2Na管、又はヘパリンNa管)を用いて健常者から採血し、直ちに氷冷した。次いで、速やかに遠心分離し血清、血漿を得た。得られた血清、血漿は氷冷し、速やかに続く(2)におけるHPLCでの分析に供した。
(2)HPLCによるアルブミンの分析
得られた血清及び血漿を用いて、HPLC(島津製作所製)で測定を行った。HPLCには、イオン交換基としてDEAE基(Diethylaminoethyl)を有するイオン交換樹脂が充填された陰イオン交換カラム(7.5mmΦ×50mmL)をセットした。検出は励起波長280nm、検出波長340nmにて蛍光検出により行った。試料はオートサンプラー(装置内15℃)にセットし、20時間連続して測定した。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。図1は、同一試料の時間経過に伴う還元型アルブミンの割合の低下を示すグラフである。
図1から、同一試料をオートサンプラー(装置内15℃)にセットし連続して測定した場合、採血から4時間で絶対値として1.5%還元型アルブミンは低下することが確かめられた。
[参考例2]市販採血管各種における冷蔵(4℃)保存の時間と還元型アルブミンの割合との関係
(1)試料の調製
市販真空採血管各種(EDTA−NaF管、EDTA−2K管、3.13%クエン酸Na管、EDTA−2Na管、又はヘパリンNa管)、及びコントロールとして何も含まない採血管を用いて健常者から採血し、直ちに氷冷した。次いで、速やかに遠心分離し血清、血漿を得た。採血直後に分離した血清、血漿、並びにそれらの血清、血漿を22時間、及び48時間冷蔵(4℃)で保存したものを試料とした。
(2)HPLCによるアルブミンの分析
参考例1と同様の方法を用いて、HPLCによりアルブミンを分析した。それぞれの試料について2重測定を行い、平均値を用いた。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。図2は、市販採血管各種における冷蔵(4℃)保存の時間と還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。
図2から、市販されている各種の採血管を用いた場合、冷蔵においても還元型アルブミンの割合は低下することが確かめられた。
[参考例3]還元型アルブミンの割合の保存による変化と、試料の保存温度(4℃と37℃)との関係
(1)試料の調製
何も含まない採血管を用いて健常者から採血し、直ちに氷冷した。次いで、速やかに遠心分離し血清を得た。採血直後に分離した血清、並びにその血清を22時間、冷蔵(4℃)及び37℃で保存したものを試料とした。
(2)HPLCによるアルブミンの分析
参考例1と同様の方法を用いて、HPLCによりアルブミンを分析した。それぞれの試料について2重測定を行い、平均値を用いた。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。表1は、還元型アルブミンの割合の保存による変化と、試料の保存温度(4℃及び37℃)との関係を示す表である。
Figure 0006915832
表1から、還元型アルブミンの割合の低下は温度が高いほど大きくなることが確かめられた。また、試料を37℃で扱う場合、還元型アルブミンの割合は参考例2における冷蔵(4℃)保存時よりもさらに大きく低下することが確かめられた。
[試験例1]pHと還元型アルブミンの割合(HMA%)との関連性確認試験
(1)還元型生体分子の安定化剤の調製
160mMグルコースを含む140mMクエン酸ナトリウム溶液と140mMクエン酸溶液とを混合し、pHをそれぞれ5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.92に調整し、pHの異なる160mMグルコースを含む140mMクエン酸緩衝液の安定化剤を作製した。
(2)試料の調製
健常者から採血した血液と、(1)において調製された6つのpHの異なる安定化剤とが容量比1:1となるように速やかに混合し、氷冷した。次いで、速やかに遠心分離し血漿を得た。次いで、採血直後に分離した血漿及びその血漿を25時間、室温で保存したものを試料とした。
(3)HPLCによるアルブミンの分析
得られた血漿を用いて、HPLC(島津製作所製)で測定を行った。HPLCには、イオン交換基としてDEAE基(Diethylaminoethyl)を有するイオン交換樹脂が充填された陰イオン交換カラム(7.5mmΦ×50mmL)をセットした。検出は励起波長280nm、検出波長340nmにて蛍光検出により行った。それぞれの試料について2重測定を行い、平均値を用いた。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。図3は、室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のpHの関係を示すグラフである。また、表2は、採血直後(初期値)及び室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のpHの関係を示す表である。
Figure 0006915832
図3及び表2から、(1)において調製された安定化剤のうち、pH6.5未満において室温で25時間保存しても、還元型アルブミンの割合が安定化していることが明らかとなった。
[試験例2]クエン酸の最終濃度とHMA%との関連性確認試験
(1)還元型生体分子の安定化剤の調製
160mMグルコースを含む60、100、140、180、240、又は300mMクエン酸溶液と同濃度(60、100、140、180、240、又は300mM)のクエン酸ナトリウム溶液とを混合し、pHが5.0となるように調整し、クエン酸濃度の異なる160mMグルコースを含むクエン酸緩衝液の安定化剤を作製した。
(2)試料の調製
健常者から採血した血液と、(1)において調製された6つのクエン酸濃度の異なる安定化剤とが容量比1:1となるように速やかに混合し、氷冷した。(試料中に含まれるクエン酸最終濃度は、30、50、70、90、120、150mMとなった)。次いで、速やかに遠心分離し血漿を得た。次いで、採血直後に分離した血漿及びその血漿を25時間、室温で保存したものを試料とした。
(3)HPLCによるアルブミンの分析
試験例1と同様の方法を用いて、HPLCによりアルブミンを分析した。それぞれの試料について2重測定を行い、平均値を用いた。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。図4は、採血直後(初期値)及び室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のクエン酸濃度との関係を示すグラフである。また、表3は、採血直後(初期値)及び室温で25時間保存後の還元型アルブミンの割合の変化と全血と1:1で添加した安定化剤のクエン酸濃度との関係を示す表である。
Figure 0006915832
図4及び表3から、クエン酸最終濃度が50mMよりも高い場合では、室温で25時間保存しても、還元型アルブミンの割合が安定化していることが明らかとなった。
[試験例3]冷蔵及び冷凍保存におけるpH及びクエン酸濃度とHMA%との関連性確認試験
(1) 還元型生体分子の安定化剤の調製
安定化剤のpHが6.0、6.5、7.0になるようにクエン酸溶液とクエン酸ナトリウム溶液を用いてpHの調整を行った。 その際、それぞれのpHにおいて試料の血液と1;1で混合した場合にクエン酸最終濃度が20、30、40mMになるようにクエン酸溶液とクエン酸ナトリウム溶液の濃度と量を調整し、pHとクエン酸濃度の異なる9種類の安定化剤を調整した。
(2)試料の調製
(1)において調製された9種類の安定化剤を9本の試験管に予め1mL入れ、健常者から採血した血液を各試験管に1mLずつ入れた(試料中に含まれるクエン酸の最終濃度は、20、30、40mMとなった)。次いで、速やかに遠心分離し血漿を得、採血直後サンプルとした。続いて、採血直後に分離した血漿を24時間及び5日間、さら冷蔵(4℃)及び冷凍(−80℃))で保存したものを24時間後サンプル(冷蔵及び冷凍)、5日後サンプル(冷蔵及び冷凍)とした。また、9種類の各安定化剤と血漿と混合後のpHを測定した。
(3)HPLCによるアルブミンの分析
次いで、試験例1と同様の方法を用いて、HPLCによりアルブミンを分析した。それぞれの試料について2重測定を行い、平均値を用いた。得られたクロマトグラムの面積値から、アルブミン中の還元型アルブミンの割合を算出した。図5(A)〜(E)は、安定化剤と混合後の血漿のpH及びクエン酸最終濃度と還元型アルブミンの割合との関係を示すグラフである。
図5から、冷蔵(4℃)保存では、クエン酸の最終濃度が30mM以上40mM以下であって、pH6.0以上7.0以下の安定化剤を用いることで、血液と混合してから24時間後まで還元型アルブミンを安定化させることができることが明らかとなった。また、冷凍(−80℃)保存においては安定化剤等を添加しなくても長期に安定であることは報告されているが、クエン酸を添加し、pHを7.0以下にした場合でも血液と混合してから5日間、還元型アルブミンは変成等を起こさずに安定であった。さらに、詳細なデータは示さないが、3か月以上の長期保存においてもタンパクの変成等はなく還元型アルブミンは安定であった。
本発明によれば、経時的な還元型生体分子から酸化型生体分子への変化を室温以下で防ぐことにより、還元型生体分子を安定化することができる。さらに、室温で25時間の還元型生体分子の安定性を確保することができることにより、測定機器、設備を有する一般の研究施設、医療施設のみならず、検査センター等へ外注検査を実施している、開業医や健診施設においても検査が可能になる。

Claims (6)

  1. 還元型アルブミンと混合後の最終濃度が50mM超となる酸及びその塩を含み、且つ、pH3.0以上pH7.5以下であることを特徴とする還元型アルブミンの安定化剤。
  2. 前記酸がクエン酸又は酢酸である、請求項1に記載の還元型アルブミンの安定化剤。
  3. 前記塩がクエン酸塩又は酢酸塩である、請求項1又は2に記載の還元型アルブミンの安定化剤。
  4. さらに、糖類を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の還元型アルブミンの安定化剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の還元型アルブミンの安定化剤を含有することを特徴する試料採取及び保存用容器。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の還元型アルブミンの安定化剤を室温で用いることを特徴とする酸化型及び還元型アルブミンの分析方法。
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