JP6910039B1 - mRNAの解析方法、情報処理装置、コンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
ヒトを含む真核生物を例にとって説明すると、真核生物の細胞核は、全遺伝情報をDNAに有する。個々の遺伝子は、必要に応じて転写され、mRNA前駆体が生成される。mRNA前駆体は、体内で作られる蛋白質の設計図の元になるもので、蛋白質合成の情報を持つ部分であるエキソンと、エキソン間に存在するイントロンとを含む。
また、仮にmRNA状態が真核生物にとって好ましくない状態であった場合の当該真核生物に固有となる対応策については、未だ研究されていない。
本発明は上記背景の下になされたものであり、生体信号あるいはmRNAやDNAを解析することで生体状態を解析する技術を提供することを主たる課題とする。
本発明は、また、mRNAの状態を簡易に解析し、それが好ましくない状態であった場合の対応策の提案などを容易にする技術を提供することを課題とする。
<第1実施形態>
本発明者らは、真核生物におけるmRNAの解析とmRNAの状態が好ましくない場合(例えばmRNAの状態が、老化あるいはその他の望ましくない生体状態を示す場合)の改善策(老化等の望ましくない状態からの生体の回復)の実験を行った。
第1実施形態では、その概要とその結果について説明する。この実験では、真核生物の生体状態が望ましくない状態にある例として、老化に着目した。ただし、本発明は、老化に限定されるものではなく、その他の生体状態ないし人体状態、例えば第2実施形態で説明する未病状態などについても広く適用できるものである。
真核生物の例として、第1実施形態では、クロトーマウス(klotho mouse)という老化のモデルマウスと、比較例となる野生のマウス(Wild type mouse)とを用いた。クロトーマウスは、ヒト早発性老化症候群マウスとも呼ばれ、野生のマウスより老化が早く進む。クロトーマウスの寿命は平均60日程度であり、野生のマウスよりも短期間での実験が可能なことなどから、ヒトの代用として様々な実験に使用されている。これらのマウスを特に区別する必要がない場合は「被検体」と呼ぶ。また、被検体における真核生物にとって好ましくないmRNAの状態を変化させ、回復させるための対策の一例として、被検体に薬学的に許容される物質を摂取させた。
前者の遺伝子は、スプライシングの調節を通して後者の遺伝子群を支配しているので「ドライバー遺伝子」又は「上流遺伝子」と呼ぶ。一方、後者の遺伝子群を「ターゲット遺伝子(標的遺伝子)」又は「上流遺伝子」に対する「下流遺伝子」と呼ぶ。上流遺伝子は、例えば老化とともにスプライシングパターンを徐々に老化型に変えていき、その下流遺伝子のスプライシングパターンも必然的に老化する。そのため、スプライシングパターンが変化する遺伝子は、上流遺伝子であることが望ましい。
図1に示されているのは、常に使われるエキソン(Constitutive exon)、選択的にスプライスされるエキソン(Alternatively spliced exon)、そして、本来は除去されるべきであるイントロンが示されている。図1の最上段に示されるNormalパターンでは、先頭のconstitutive exonと2番目のconstitutive exonとの間にイントロンが存在し、かつ、2番目のconstitutive exonと3番目のconstitutive exonとの間にもイントロンが存在する。Normalパターンでは、これら2つのイントロンが除去され、3つのconstitutive exonが接続される。この状態が最も一般的なスプライシングパターンである。
図1の三段目に示されているAlternative 5' Splice Site(A5SS)パターンでは、2番目のconstitutive exonと3番目のconstitutive exonとの間にあるイントロンについては、その一部が除去されずに残る。そのため、スプライシング後には、2番目のconstitutive exonと3番目のconstitutive exonとの間のイントロンの一部が残される。
図1の四段目に示されているAlternative 3' Splice Site(A3SS)パターンでは、先頭のconstitutive exonと2番目のconstitutive exonとの間にあるイントロンについては、その一部が除去されずに残る。従って、スプライシング後には、先頭のconstitutive exonと2番目のconstitutive exonとの間のイントロンの一部が残される。
図1の五段目に示されているRetained Intron(RI)パターンでは、先頭のconstitutive exonと2番目のconstitutive exonとの間にあるイントロンは除去されず、2番目のconstitutive exonと3番目のconstitutive exonとの間にあるイントロンのみが除去される。
図1の六段目に示されているMutually eXclusive Exons(MXE)では、スプライシング前において先頭のconstitutive exonの次に第1のAlternatively spliced exon、第2のAlternatively spliced exon、2番目のconstitutive exonが接続されており、スプライシング後には、先頭のconstitutive exon、第1のAlternatively spliced exon及び2番目のconstitutive exonが接続されたmRNAと、先頭のconstitutive exon、第2のAlternatively spliced exon及び2番目のconstitutive exonが接続されたmRNAとの2つのmRNAが生成される。
その際、本実験では、スプライシングパターンを調べるために、mRNA前駆体のスプライシング後におけるイントロンインクルーディングジャンクション(IJC)とスキップジャンクションとを以下のように定義した。
IJC:mRNA前駆体スプライシング後のエキソン接合部であって、エキソン間にイントロンが存在する接合部
SJC:mRNA前駆体のスプライシング後のエキソン接合部であって、エキソン間のイントロン除去されている接合部
試験例1では、漢方薬として十全大補湯を被検体に摂取させたときの選択的スプライシング(それにより得られるスプライシングパターン)に与える影響を被検体から取得した検体データに基づいて解析した。十全大補湯は、十種類の生薬を配合したものであり、食欲不振、疲労倦怠、病後の体力低下などに処方される漢方薬とされる。十全大補湯は、株式会社ツムラ製の「ツムラ十全大補湯 エキス顆粒(医療用)」を用いた。その成分は、以下の通りである。なお、各成分における数字は重量比(重量の相対比率)を示す。
黄耆(オウギ) 3.0
人参(ニンジン) 3.0
桂皮(ケイヒ) 3.0
当帰(トウキ) 3.0
川キュウ(センキュウ) 3.0
芍薬(シャクヤク)3.0
熟地黄(ジオウ) 3.0
蒼朮(ソウジュツ) 3.0
茯苓(ブクリョウ) 3.0
甘草(カンゾウ) 1.5
試験例1では、以下に示すように第1グループから第4グループの被検体に7週間にわたって給餌を行い、心臓、腎臓、肝臓の各器官及び血液について、mRNAの生成時におけるスプライシングパターンを解析した。十全大補湯は、同一量の通常の餌に同一量を添加した。そして、十全大補湯を添加した場合と添加しない場合とにわけて給餌を行うことで、遺伝子発現の変化が生じるか否かを確認した。説明の便宜上、十全大補湯を添加しない給餌を「通常給餌」、添加した給餌を「添加給餌」と呼ぶ。
第2グループ:5匹のクロトーマウスに対して3.5週間にわたって通常給餌を行い、その後の3.5週間も同様に通常給餌を行った。
第3グループ:5匹の野生マウスに対して3.5週間にわたって通常給餌を行い、その後、3.5週間にわたって、第1グループで用いた添加給餌を行った。
第4グループ:5匹の野生マウスに対して4週間にわたって通常給餌を行い、その後の4週間も同様に通常給餌を行った。
また、添加給餌を続けた第1グループのクロトーマウスでは、より多数の上流遺伝子について、スプライシングパターンが健康型に回復したことが認められた。
以下、そのようなmRNAについて、回復した状態をより詳細に調べるために、上流遺伝子のうち公知のSirt7遺伝子に関する解析結果を説明する。Sirt7遺伝子は、mycの活性を抑え、ER stressを抑制することで、脂肪肝を防ぐことが知られている(Cell reports, 2013)。また、Sirt7遺伝子は、ユビキチン・プロテオームを介して肝臓の脂肪酸代謝を制御 する(Cell Metabol. 2014)ことが知られている。
一方、十全大補湯を給餌したクロトーマウスKL+のlog2IJC/SJC値は、クロトーマウスKL−のlog2IJC/SJC値に比較して非常に小さく、かつ、野生のマウスWT−のlog2IJC/SJC値に類似した分布を示す。このことから、添加給餌を続けたクロトーマウスの場合、Sirt7遺伝子の老化が抑えられ、log2IJC/SJC値は正常な野生のマウスに近い分布となることが明らかになった。
一方、野生のマウスWT−と、添加給餌を続けたクロトーマウスKL+では、イントロンとエキソンの差がはっきりしており、正しくエキソンが結合されている。特に、図4(a)の2段目に示されるように、通常給餌のみのクロトーマウスKL−のIJCのread値では、エキソンE1、イントロンI1、エキソンE2がともに同じような分布となって区別が付きにくいが、添加給餌を続けた最上段のグラフでは、野生のマウスWT−に対応する3段目のグラフと同様、イントロンとエキソンとの区別が明瞭になっている。つまり、添加給餌によるスプライシングパターンの回復の効果が一層明瞭になっている。
この事実は、Cyp27a1遺伝子においても、クロトーマウスであっても添加給餌を続けることで、選択的スプライシングを正常に保って老化の進行を抑え、野生のマウスと同様にスプライシングが行われることが裏付けられる。
また、252種の遺伝子について、JTTの投与によりイントロンリテンションが回復するかを調べた。その結果を図8に示す。図示されるように、complete recovery(完全回復)は70、partial recovery (部分回復)は62、no recovery(回復しない老化遺伝子)は120であった。
また、JTTの投与により完全回復した遺伝子のリストを以下に示す。なお、Acadmについてchr3:153939069-153939167とあるが、これはマウスの染色体番号と、ゲノム上での位置を示す。Adck5等のその他の遺伝子についても同様である。
Acadm, chr3:153939069-153939167
Adck5, chr15:76594152-76594447
Adipor1, chr1:134424750-134424922
Aldh4a1, chr4:139642076-139642273
Aldh4a1, chr4:139633896-139633989
Alg6, chr4:99752816-99752885
Anapc5, chr5:122800450-122800593
Anxa11, chr14:25874670-25874784
Atg9a, chr1:75182591-75182737
Atp11b, chr3:35839048-35839214
Bsdc1, chr4:129466822-129466990
Camk1, chr6:113339506-113339581
Cct3, chr3:88300928-88300991
Chkb, chr15:89428713-89428827
Cln3, chr7:126575343-126575412
Cnbp, chr6:87845464-87845557
Ctdsp1, chr1:74393796-74393901
Cyp27a1, chr1:74735863-74736036
Ddx5, chr11:106783958-106784018
Enpp5, chr17:44085204-44086567
Faah, chr4:116000786-116000827
Fastkd2, chr1:63735844-63735968
Ftcd, chr10:76584169-76584299
Gaa, chr11:119274214-119274311
Gatad2b, chr3:90355674-90355785
Galt, chr4:41756681-41756811
Gdi1, chrX:74308129-74308261
Ghdc, chr11:100768217-100768289
Gnb2l1, chr11:48802272-48802420
Gnmt, chr17:46726268-46726411
Hpd, chr5:123181860-123181923
Hsd3b7, chr7:127802785-127803802
Jmjd8, chr17:25830138-25830206
Kctd2, chr11:115430312-115431274
Las1l, chrX:95950336-95950446
Maged1, chrX:94537973-94538065
Med24, chr11:98717909-98718142
Men1, chr19:6338825-6338961
Metap1d, chr2:71511411-71511560
Mrps2, chr2:28468820-28468950
Mtfr1l, chr4:134530679-134530789
Ndufs2, chr1:171238286-171238372
Neu1, chr17:34934002-34934185
Npdc1, chr2:25408904-25409001
Nr1i3, chr1:171217313-171217430
Nxf1, chr19:8766796-8766833
Pde9a, chr17:31460178-31460261
Phc1, chr6:122322324-122322472
Phykpl, chr11:51593915-51594141
Rnf167, chr11:70649911-70650017
Rnpepl1, chr1:92917633-92917746
Rnpepl1, chr1:92917146-92917746
Rpl3, chr15:80081614-80081783
Rsrp1, chr4:134926734-134926818
Saal1, chr7:46701780-46701961
Selenbp1, chr3:94937954-94938075
Sirt7, chr11:120620646-120620883
Slc25a11, chr11:70645349-70645440
Slc35f6, chr5:30655887-30656100
Slc6a9, chr4:117864753-117864888
Spsb3, chr17:24890832-24890935
Spsb3, chr17:24891010-24891136
Srsf5, chr12:80949094-80949168
Srsf6, chr2:162933425-162933550
Timm44, chr8:4266555-4266680
Tmem208, chr8:105328607-105328692
Ugdh, chr5:65422634-65422782
Uros, chr7:133691085-133691166
Wbp1, chr6:83120771-83120873
Zfp26, chr9:20444893-20444985
試験例1では、Cyp27a1遺伝子等について、添加給餌を続けることがスプライシングに与える影響を解析した。試験例2では、さらに、driver 遺伝子の重点的な解析の結果、選択的スプライシングが正しく行われていない座位について、十全大補湯の効果を調べた。詳細には、試験例2では、肝臓の遺伝子での368座位(Liver 368 loci)のうち、上流遺伝子である20座位について、スプライシングが正常に行われているか否かを調べた。図9に、被検体の肝臓の上流遺伝子の説明図を示す。図中のDriver Geneは上流遺伝子を示す。
図9に示された上流遺伝子(Driver Gene)Aqr, Ddx39, Ddx5, Fmr1, Hnrnpa2b1, Kdm4b, Luc7l2, Mbnl1, Nxf1, Prpf38b, Ptbp1, Rnps1, Sf3b1, Son(2), Srrm1, Srsf11, Srsf5, Srsf6, Thoc2, のうち、Mbnl1及びFmr1を除く上流遺伝子においてクロトーマウスへの添加給餌によりスプライシングパターンが老化型から健康型へ回復している事実が確認された。つまり、スプライシングが正常に行われるようになったことが確認された。
図9において、スプライシングパターンの回復が認められた座位については、「Recovery Level」の項目を「+」と表現し、特に大きな回復の効果が確認された座位については、「Recovery Level」の項目を「++」と表現している。例えばAqrについて、「chr2:114158869-114161684」とあるが、これはマウスの染色体番号と、ゲノム上での位置を示す。(2)というのは、同じ遺伝子上での異なる座位でスプライシングが回復していることを示す。
ただし、異なるタイプの老化、例えばアルツハイマー型老化やその他の疾病などでは、異なる上流遺伝子についての変化が起こる可能性がある。そのため、スプライシングにおけるIJC及び/又はSJCをより詳細に調べて個々の遺伝子のmRNA前駆体におけるスプライシングパターンの変化を分析することにより、老化のみならず、健康状態の変化、例えば疾病に対しても、どの遺伝子においてスプライシングパターンが変化するかを特定することができると考えられる。
様々な物質に対して試験例1と同様の試験を行ってこれら二つの座位Mbnl1及びFmr1に対してスプライシングパターンを回復させる物質を特定することができた場合、その物質と十全大補湯とを合わせて給餌することで、このような老化や疾病の原因となる座位をいずれも正常化することができると考えられる。
また、十全大補湯以外の漢方薬(例えば補中益気湯)、あるいは薬剤等の、ヒトや動物が摂取可能な物質について、試験例1と同様な分析を行うことで、遺伝子のどの座位について、どの物質がスプライシングパターンの回復効果を有するのかを求めるための分析が可能である。
つまり、本実験の結果は、プレシジョン・メディシン(precision medicine:個人の病気や老化に合わせて投薬するシステム)にも応用できるものである。
[情報処理装置の構成]
図10は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウエア構成図である。情報提供装置10は、コンピュータであるCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、及びRAM(Random Access Memory)13と、ストレージ14と、入力I/F(I/Fはインタフェースの略)(1)15と、入力I/F(2)16と、出力I/F17と、通信I/F18とを備える。
薬学的に許容される物質については、本実験において上述した通りである。なお、この物質は、通常は摂取可能な物質であるが、一の摂取可能な物質に対して相性が良くない他の摂取可能な物質を関連付けておき、一の物質が索出されるときに、他の物質も読み出し可能にしておくこともできる。これにより、一の物質では第2スプライシングパターンが第1スプライシングパターンに近づくが、他の物質では逆効果になる等の情報を得ることが可能になる。
物質DB1131には、頻繁に検索される第2スプライシングパターンについて、それを第1スプライシングパターンに近づけるための上記物質の情報を記録したリスト(物質リスト)が格納されている。そのため、第2スプライシングパターンがリストアップされているときは、薬学的に許容される物質の情報(上記の一の物質、及び/又は他の物質の情報)を迅速に索出することができる。
検体データは、本実施形態では、被検体から採血した血液を検体データ処理装置で分析したデータを用いるが、これに限らず、採血機関や病院で採血した血液の分析データを検体データ処理装置を介して取得しても良い。検体データには、被検体の内蔵や細胞の状態を表す情報が含まれている。
なお、解析部112は、上述した「rMATS」とR言語とを用いて実現することができる。そのため、解析部112は、選択的スプライシングの結果情報を可視化する可視化手段として動作させることも可能となる。
出力部114は、索出したこれらの情報を、被検者に固有の情報として出力デバイスに出力する。なお、出力部114は、選択的スプライシングの結果情報だけを出力することも可能である。
S3において変化しているスプライシングパターンが無いと判定した場合(S3:N)、S4において上流遺伝子でないと判定した場合(S4:N)は、直ちに処理を終える。
選択的スプライシングにおける全体的な変化が、癌により誘発されることは従来より知られている。それと同様に、本実験により、老化のような望ましくない状態もまた、選択的スプライシングにおける全体的な変化を誘発することが確認された。
多くの遺伝子の選択的スプライシングにおける老化に起因するスプライシングパターンの変化は、スプライシング因子の発現の変化によって引き起こされる。選択的スプライシングは転写と結び付いているので、転写を制御するメカニズムはまた選択的スプライシングを制御し得る。
ただし、イントロンの除去状態に代えて、クロマチン成分、ならびにヒストン修飾及びDNAメチル化に関連するものなどのエピジェネティックファクターを用いて、遺伝子が老化したか、また、老化した遺伝子が十全大補湯等により健康型に戻ったかを確認することもできる。
特に、伸長が速いと、より強いスプライス部位が利用できることから、より弱い(上流)スプライス部位よりも、より強いスプライス部位の使用が促進され、その結果エキソンが除去される。一方、伸長が遅いと、より強い下流側スプライス部位が合成され得る前に、より弱い上流側スプライス部位への標準的なスプライシングファクターの補充(リクルートメント)を促進し、その結果、エキソンが包含される。
以上のような理論的背景からも、遺伝子が老化型であるか、健康型であるかを知るためにDNAメチル化等の適用が可能であることが示される。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、人体についての生体状態の解析例を説明する。すなわち、生体状態としての人体の状態を測定対象の測定結果に基づいて解析する例を説明する。測定対象としては、心拍、脳波、脈拍、呼吸、発汗などの生体現象によって体内から発せられる生体信号(Biosignal)が挙げられるが、その他の対象を用いることもできる。第2実施形態では遺伝子の発現を例にとり、「未病」という概念を用いて人体の生体状態を解析した。
ここで、未病とは、生物が健康な状態から僅かな代謝の変化やその他の要因により何らかの異変が生じているがその影響が顕在化してはいない状態をいう。つまり、未病とは、健康と病気の中間にある状態であるともいえる。便宜上、このような状態を「未病状態」と呼ぶ場合がある。
未病状態では、既存の基準では病気と診断されないが、何らかの病気の発症危険が有意に高くなっている。また、図示されるように、時間が経過するにつれてホメオタシス(恒常性)の乱れが大きくなっていることが示される。
次に、ソフトウェアMaxEntScanを使用してこれらのスプライスサイトのスコアを計算することにより、5 'および3'スプライスサイトの強度を調べた。
RI(イントロンリテンション)遺伝子座のイントロンのこれらの特徴は、他の3つの器官で観察され(図15A〜図15Dを参照)、これは従来に報告されたデータと一致している(Braunschweig et al., 2014)。
実際に、「イントロン長が短くかつGCコンテンツが高く、弱い5’スプライスサイトを持つイントロン」という条件でイントロンリテンションを起こしうるエキソンには、第1実施形態で用いたエキソンである、図8に示した70の「完全回復」の遺伝子全てが対応する。
また、上記の条件で絞り込まれたエキソンである70遺伝子に対して第1実施形態のようにイントロンリテンションの有無を調べ、健康状態におけるエキソンと比較することで、未病検査を行うことが可能であった。
その結果、イントロンリテンションを回復させて未病状態を健康状態に戻すことができる。このように、第2実施形態によれば、未病状態を定量的に検出するだけでなく、未病状態を回復させる具体的な手法が提供される。また、このように第1実施形態を応用して幾つかの遺伝子座について未病状態を検出して健康状態に回復させることが可能であることから、上述の絞り込まれた1万の遺伝子座の情報を格納してイントロンリテンションの検査を行う検査用カスタムマイクロアレイを製造することも可能であることが確かめられた。
なお、以上の説明では、図8のように肝臓において「完全回復」が確認された70の遺伝子について記載したが、本発明はこの70の遺伝子に限定されるものではなく、イントロンリテンションを起こしうるすべての遺伝子について適用可能なものである。
Claims (8)
- 真核生物のmRNA前駆体におけるイントロンの除去状態を定量的に解析することにより、基準となる遺伝子発現パターンよりも前記イントロンが有意に多く残る現象であるイントロンリテンションが起きているスプライシングパターンの有無を検出し、
前記スプライシングパターンが有るときは、前記イントロンを減少させる漢方薬又は漢方薬が溶け込んだ液状体の情報を前記真核生物に固有の情報として出力することを特徴とする、mRNA前駆体の解析方法。 - 前記スプライシングパターンが、前記真核生物の老化に関わる遺伝子発現パターンを導出する老化型スプライシングパターン又は前記真核生物の未病に関わる遺伝子発現パターンを導出する未病型スプライシングパターンであることを特徴とする、請求項1に記載の解析方法。
- 真核生物から当該真核生物のmRNA前駆体のデータを含む検体データを取得する取得手段と、
取得した前記検体データに対してmRNA前駆体におけるイントロンの除去状態を定量的に解析することにより、基準となる遺伝子発現パターンよりも前記イントロンが有意に多く残る現象を表すイントロンリテンションが起きているスプライシングパターンの有無を検出する解析手段と、
前記スプライシングパターンが検出されたときに、前記イントロンを減少させる漢方薬又は漢方薬が溶け込んだ液状体の情報を前記真核生物に固有の情報として出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする、情報処理装置。 - 前記スプライシングパターンが、前記真核生物の老化に関わる遺伝子発現パターンを導出する老化型スプライシングパターン又は前記真核生物の未病に関わる遺伝子発現パターンを導出する未病型スプライシングパターンであることを特徴とする、請求項3に記載の情報処理装置。
- 前記解析手段は、取得した前記検体データのスプライシングの調節因子のうち下流遺伝子を制御する上流遺伝子における前記スプライシングパターンの有無を検出することを特徴とする、請求項3又は4に記載の情報処理装置。
- 前記解析手段は、同一の真核生物から複数回取得した前記検体データに対して前記解析を行い、それぞれ選択的スプライシングの結果情報を時系列に蓄積するとともに、蓄積された結果情報のうち基準となる真核生物による選択的スプライシングの結果情報と最も類似する結果情報を導出した選択的スプライシングの結果情報を前記真核生物における前記基準となる遺伝子発現パターンとして保存する、請求項3から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
- 前記出力手段は、前記イントロンリテンションが起きている遺伝子発現パターンを前記基準となる遺伝子発現パターンに近づけるためのアクションの情報を所定のアクションデータベースから索出することを特徴とする、請求項3から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
- コンピュータを請求項3から7のいずれか一項に記載された情報処理装置として動作させるためのコンピュータプログラム。
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