以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態として、ロール紙を紙送りする紙送り装置について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る紙送り装置の外観構成を概念的に示す図である。図2は、紙送り装置の部品組み立て図である。図3は、引張コイルバネを駆動源とする紙送り装置[第1紙送り装置]における断面構造を示す図である。図4は、圧縮コイルバネを駆動源とする紙送り装置[第2紙送り装置]における断面構造を示す図である。以下に記述される回転方向については、ロール紙100(図7)が引き出される方向を正回転方向(第1の回転方向)とし、正回転方向とは反対方向でロール紙100が巻き込まれる方向を反回転方向(第2の回転方向)として説明する。上述の第1紙送り装置と第2紙送り装置は、実質的に同等の構成部位により構成されるが、構成の主たる差は、弾性部材として用いる、例えば、コイルバネと回転部の配置が異なり、駆動源として利用する引張するコイルバネの引張した形態から元の形態(自然長)に戻る際に発生する弾性力が作用する構成と、圧縮するコイルバネの圧縮した形態から元の形態(自然長)に戻る際に発生する弾性力が作用する構成との違いである。
また、以下の説明において、紙送りとは、ロール紙の切り取り後に、回転方向に関係なく、ロール紙を回転させて、結果的に、ロール紙の先端部分がホルダーの蓋板先端からはみ出して、露出している状態になることを紙送りと称している。即ち、紙送りのために、ロール紙が引き出される正回転方向に回転してもよいし、ロール紙が引き出される正回転方向とは反対の反回転方向に回転してもよい。
本実施形態の紙送り装置は、後述する適用例として、ロール紙の芯に直に差し込む第1タイプ[第1適用例]と、ロール紙ホルダー(以下、ホルダーと称する)のロール紙を支持する支持バーに組み込み一体的に構成される第2タイプ[第2適用例]がある。第1タイプと第2タイプの紙送り装置自体の基本構成は、同等である。紙送り装置の大きさは、適用するロール紙がトイレットペーパーの場合には、ロール紙の芯径Φ(略38mm)に基づいて設定され、例えば、後述する紙送り装置のロール紙保持部6本体の外径Φ1が35mmであり、変形可能な保持部42を含む外径Φ2は、40mm〜45mm程度である。また回転軸方向の長さは、略120mm程度である。これらの寸法は、限定されるものではない。
この紙送り装置1は、大別して、ホルダー支持バーに装着して固定するための装着部2と、管形状のベース部3と、ロール紙100を回転させるための駆動力を供給する駆動源4と、駆動源4の外周側に設けられる回転機構5と、ロール紙100を保持するロール紙保持部6と、で構成される。尚、装着部2は、前述した第2適用例のロール紙を支持する支持バーに組み込む構成の場合には、不要である。
この紙送り装置1において、利用者がロール紙100を引き出すと、ロール紙保持部6がロール紙100と一体的に回転する。ロール紙保持部6の回転により、回転機構5が回転し、駆動源4に弾性力を蓄えるように作用(ここでは、引張又は圧縮)する。引き出されたロール紙100が切り取られた後、駆動源が元の状態に戻るために発生する弾性力を利用して、回転機構5を回転(正回転又は反回転)させる。回転機構5の回転は、ロール紙保持部6と一体的に、ロール紙100を回転させて、ロール紙100の先端部分をホルダーの蓋板先端から露出させた状態となる。
図2に示すように、装着部2は、ゴム又は樹脂等の弾性材料を用いて、円錐形状又は、円錐台形状に形成される。装着部2は、先端側又は上底側から切り込まれて鰐口状に開口され、ベース部3の両側からそれぞれに内部に差し入れるように設けられる。装着部2は、ロール紙100のホルダーの支持バーに装脱着可能である。装着部2は、ホルダーの支持バーに差し込み、支持バーを咥えこむように装着され、ベース部3に回転やがたつきが生じないように固定する。装着部2の他の形状としては、円盤形状(蓋形状)の弾性部材に、スリットを形成したものであってもよい。この場合、ホルダーの支持バーをスリットに差し込むことで、ホルダーの支持バーに固定する構造である。
ベース部3は、硬質部材、例えば、硬質な樹脂材料、金属材料又はセラミック材料により、両端が開口された円筒の管形状に形成される。この実施形態では、断面が円形の筒形状のベース部3を例としているが、これに限定されず、ベース部の断面は、矩形を含む他の形状であってもよい。その際に、後述するコイルバネ7及び移動部9は、ベース部3の断面形状と同様な形状となる。
このベース部3は、滑らかな外表面を有する。ベース部3の開口の一端には、鍔状に張り出したフランジ部3aが設けられている。このフランジ部3aには、後述する回転機構5の反転部14が固定される。
さらに、ベース部3の外周面には、後述する移動部9に設けられている回転防止突起8bを摺動させるための回転防止ガイド溝(又は、回転防止ガイドスリット)3cが設けられている。回転防止ガイド溝3cは、ベース部3の長手軸(中心軸)の方向に沿った少なくとも1つの直線の溝又はスリットである。尚、本実施形態では、ベース部3の一端に平板形状のフランジ部3aを設けているが、回転機構5が径方向に厚みを要した場合には、回転機構5を軸方向の内側(中央側)に配置し、その外側に円筒状の筒部材(図示せず)を増設した形状であってもよい。これは、装着部2が径方向に小型化し、ホルダーの支持バーに装着できなくなることを防止するためである。
また、装着部2をベース部3に対して着脱自在な構造として、装着部2で挟まれたベース部3内部の空きスペースを芳香剤容器が収納されるスペースとして用いてもよい。この芳香剤容器は、例えば、ベース部3内部へ収納可能な径の筒形状であり、筒表面に複数の孔が開口され、筒内にスポンジ等が収容されたカプセルが好適する。孔からスポイト等を差し込み、スポンジに所望する芳香液を染みこませることで、ベース部3に芳香機能を持たせることができる。また、粒状の芳香剤をカプセル内に収納するタイプであってもよい。他には、芳香剤に代わって、消臭剤を利用しても良い。他にも、ロール紙保持部6又は、ロール紙保持部6の表面に凹部を形成し、その凹部内にスポンジを貼付し、芳香液を染みこませてもよい。また、ベース部3に芳香機能を持たせる場合には、ロール紙保持部6においても、筒表面に複数の孔が開口され、ロール紙の芯との隙間から香りが放出される。
また、フランジ部3aを設けているベース部3の反対側の開口の他端には、フランジ部3bが取り付けられている。フランジ部3bは、構成部位の駆動源4、回転機構5及びロール紙保持部6をベース部3に組み付けた後、これらの構成部位が抜け出ないように、ストッパとして機能する。さらに、フランジ部3bは、後述するロール紙保持部6の紙送り角度調整部として機能するバー形状の移動部停止部材3eが設けられている。この移動部停止部材3eは、回転防止ガイド溝3c内に嵌め込まれており、移動部停止部材3eの先端が回転防止突起8bに当接することで、移動部9の移動を任意の位置に停止させる。
さらに、既存のホルダーの支持バーの形状が、一本の円形棒形状で長手方向に伸縮し、両端に設けられた突起でホルダーに着脱可能に支持される構成であれば、ベース部3は、その支持バー中央に一体的となるように組み入れられた構成でもよい。尚、このような支持バーは、ホルダーに回転可能な状態で装着されている場合が多いため、別途、ベース部3とホルダー間に回転防止用部材を設ける必要がある。回転防止用部材としては、例えば、L型金具を用いて、一端をホルダーの縁に掛けるように設け、他端を支持バーに固定する構成であってもよい。
本実施形態の駆動源4は、弾性部材が発生する弾性力を駆動力として用いる。弾性部材として、例えば、引張コイルバネ7A又は圧縮コイルバネ7Bの何れかのコイルバネ7を用いる。駆動源4は、コイルバネ7の駆動力を伝達するための移動部9を有している。駆動源4は、コイルバネ7を一旦、引張させて、そのコイルバネ7が自然長に戻るように縮むことで弾性力を発生させる。又は、コイルバネ7を一旦、圧縮させて、そのコイルバネ7が自然長に戻るように伸長することで弾性力を発生させる。
本実施形態において、コイルバネ7は、均一な巻きピッチ(巻き間隔)でもよいが、巻きピッチが異なる組み合わせ、例えば、巻きピッチが狭い密巻きと、巻きピッチが広い疎巻きを組み合わせた不等間隔コイルバネを用いてもよい。このような密巻きと疎巻きを組み合わせたコイルバネは、自然長の状態から引張される際に、最初に疎巻き部分が伸び、後に密巻き部分が伸びるように構成される。反対に、自然長の状態から圧縮される際に、最初に疎巻き部分が縮み、後に密巻き部分が縮むように構成される。但し、密巻きと疎巻きの組み合わせは、徐々にピッチが変化する構成でもよいし、明確に異なるピッチに区分する構成でもよい。
つまり、コイルバネ7が不等間隔コイルバネであれば、ロール紙100の引き出し開始時には、引張又は圧縮が弱い弾性力であるため、引き出されたロール紙100が千切れることなく引き出され、ロール紙100に回転の勢い(慣性)が付いた後に、密巻き部分により弾性力を強くすることで、弾性力を蓄え、紙送り時に回転機構5へ与える駆動力を高めることができる。
さらに、コイルバネの巻き線の太さ(直径)を変えることで、部分的に弾性力を変化させてもよい。また、ばね定数(または、弾性力)が異なる材料により形成されたコイルバネを組み合わせて繋ぎ、弾性力を変化させてもよい。
コイルバネ7が引張コイルバネ7Aの場合は、筒状のベース部3の外周側面に沿うように長手方向に嵌め込まれている。コイルバネ7の一端7aは、ベース部3のフランジ部3aに固定され、コイルバネ7の他端7bは、ベース部3に嵌め込まれた移動部9に固定されている。引張コイルバネは、通常、両端に掛け用のフックが設けられているが、本実施形態では、構造上、フックを設けることができないため、バネ両端に複数のツメにより取り付けられる環形状のバネ固定部を配置し、これらのバネ固定部をフランジ部3a及び移動部9に固定してもよい。
一方、コイルバネ7が圧縮コイルバネ7Bの場合は、筒状のベース部3の外周側面に沿うように長手方向に嵌め込まれている。コイルバネ7の一端7aは、ベース部3のフランジ部3aに当接している。この時、コイルバネ7の一端7aは、ベース部3のフランジ部3aに固定されなくともよい。また、コイルバネ7の他端7bは、ベース部3に嵌め込まれた移動部9に当接している。この時、コイルバネ7の他端7bと移動部9とは、固定されても固定されなくともよい。
また、移動部9は、ベース部3に移動可能に嵌め込まれるリング形状(又は、環形状)を成し、金属部材又は硬質樹脂部材により形成されている。尚、剛性を考慮した金属材料と樹脂材料の貼り合わせ構造であってもよい。また、後述するストッパ部を組み入れる場合には、磁力が作用する金属部材を含む導電部材により形成される。移動部9は、断面形状が円形(楕円を含む)又は矩形であってもよい。図2に示すように、移動部9のリング外周面には、複数のガイド突起8aが設けられ、リング内周面には、少なくとも1つの回転防止突起8bが設けられている。但し、ガイド突起8aの数は、限定されるものではない。回転防止突起8bは、前述したベース部3の回転防止ガイド溝3cに摺動可能に嵌め込まれている。
移動部9のガイド突起8aは、例えば、円柱形状又は滴形状であり、リング外周面において、リング中心を中心点として等角度で等分割する位置に設けられる。即ち、偶数個、例えば、2個のガイド突起8aであれば、中心を通る直径方向で対向する対の位置に配置される。また、奇数個、例えば3個のガイド突起8aであれば、中心点に向かい3つの等角度(120°)に等分割した位置に配置される。また、ガイド突起8aが滴形状の場合には、滴形状は、円形部分と尖形部分とで構成され、コイルバネ7の自然長に戻る方向に対して、尖形部分が先頭の位置になるように配置される。
これらのガイド突起8aは、後述する回転機構5の回転部11に螺旋状に形成された複数のスリット(以下、螺旋スリット又は、螺旋溝と称する)12に移動可能に嵌め入れられる。この移動部9は、後述する回転部11の回転に伴い、後述する図5(b)乃至図5(g)に示すように、螺旋スリット12内をガイド突起8aが移動して、移動部9がコイルバネ7をベース部3の長手方向に引張又は圧縮させる。ガイド突起8aは、移動部9とは別部材で形成して、移動部9に直接、立設するように形成してもよい。また、移動部9に穴を形成し、穴の中にスプリングを入れて、その上からガイド突起8aを填め入れて、上下に移動可能に構成してもよい。
また、移動部9のリング内周側に少なくとも1つの回転防止突起8bが設けられている。回転防止突起8bは、ベース部3の外周面上に形成された直線状の回転防止ガイド溝3cに嵌め込まれてスライド移動する。回転防止突起8bは、移動部9がベース部上を回転せずにベース部3の軸方向に移動させる機能を有する。即ち、回転防止突起8bを設けなかった場合には、回転部11に形成された複数の螺旋スリット12内をガイド突起8aが移動する際に、移動部9がコイルバネ7に固定されていれば、移動部9がコイルバネ7を縮ませる共に、回転によるねじれを発生させることが考えられる。このコイルバネ7に生じるねじれは、コイルバネ7が自然長に戻る際に、ロール紙100の紙送り回転角度に変化を与える可能性が有り、結果、ロール紙100の先端が設定された位置に停止しない事態を発生させる場合がある。又は、回転防止突起8bを設けていない移動部9がコイルバネ7に固定されていない場合には、コイルバネ7に対する引張や圧縮を行わずに、移動部9のみが、その位置で回転する事態が想定される。
そこで、移動部9の回転防止突起8bを回転防止ガイド溝3cに沿って直線的にスライド移動させることで、移動部9の回転を防止し、及びコイルバネ7に回転によるねじれが生じないように、引張及び圧縮させることができる。尚、ガイド突起8a及び回転防止突起8bに極小ボールベアリング等を嵌め込み、後述する螺旋スリットを摺動移動する際に生じる摩擦抵抗を低減する構造であってもよい。
また、コイルバネ7の弾性力の代わりとなる駆動源として、例えば、永久磁石の反発力を利用してもよい。本実施形態では、複数のリング形状の磁石を用いることができる。このリング形磁石は、同極どうしを向き合わせる配列で複数段をベース部に填め入れて、圧縮コイルバネと同様に使用することも可能である。駆動源として磁石を用いる場合には、ベース部3及び後述する回転部11は、磁場の影響を受けない材料により形成される。さらに別の駆動源として、反発弾性を有する部材、例えば、ゴム材、ウレタン材を筒形状に形成して用いることも可能である。
本実施形態の回転機構5は、回転部11及び、反転部14により構成されている。この回転部11は、筒形状を成し、駆動源4であるコイルバネ7の外側を覆うように嵌め込まれている。図5(a)は、紙送り装置の回転部11の構成を示し、図5(b),(c),(d),(e),(g)は、回転部11による紙送り動作を説明するための回転部11の螺旋スリット12と移動部9のガイド突起の位置関係を示している。この回転部11は、コイルバネ7が元の状態に復帰する際の弾性力による移動部9の押し戻し(又は、引き戻し)の移動により回転することで、ロール紙100を保持するロール紙保持部6を回転させる。即ち、回転部11は、ロール紙100を回転させる。
以下の説明の中で、螺旋スリット12の長手軸に対する螺旋の傾き角度を螺旋角度とする。コイルバネ7が自然長に戻る時に、長手軸と直交する垂直面(回転部11の断面)における回転部11の回転が開始する角度から停止する角度までの角度を旋回角度とする。コイルバネ7が自然長に戻る時にロール紙保持部6(又は、ロール紙100)が回転する角度を紙送り回転角度とする。
回転部11は、両端が開口された真円の管形状を成す硬質な樹脂部材又は金属部材により形成される。回転部11は、図5(a)に示すように、長手軸方向に対して、外周面上を螺旋状に延びる複数の螺旋スリット(又は、螺旋溝)12及び、回転部11の円周一周に渡る制限スリット(又は、制限溝)13が設けられている。前述した移動部9の複数のガイド突起8aがこれらの螺旋スリット12内を摺動移動し、制限スリット13に入り込む。この制限スリット13は、回転部11の螺旋スリット12内から移動部9が抜け出た以降、移動部9によるコイルバネ7に対する引張や圧縮を停止し、回転部11を空回りさせる機能を有する。即ち、制限スリット13は、コイルバネ7に対して一定の引張や圧縮を与えた後、移動部9に対して回転部11を空回りさせることで、ロール紙100の引き出される長さの制限を無くし、引き出される長さを自由にするものである。
また、回転部11は、ガイド突起8aの数に対して、複数倍の数の螺旋スリット12を形成しており、後述する制限スリット13から螺旋スリット12に入り込みやすくしてもよい。また、回転部11の両端には、外周側にギヤ歯を設けたリング形状のリングギヤ(太陽ギヤ)16が嵌め込まれる。勿論、リングギヤ16のギヤ歯を、回転部11の両端の外周面上に直接、形成し、リングギヤ16と回転部11を一体化させた構造であってもよい。
この螺旋スリット12は、筒状の回転部11の外周面に形成される螺旋状に旋回する旋回角度(回転部1の径方向の断面から見た螺旋スリットが形成されている角度)が、後述するロール紙の紙送りするためのロール紙保持部6の紙送り回転角度を設定する。以下、螺旋スリット12による旋回角度の一例について説明する。
回転部11とロール紙保持部6の間に介在する反転部14とのギヤ比にも規定されるが、例えば、ロール紙保持部6の紙送り回転角度と、回転部11の旋回角度とが5対4の場合には、ロール紙保持部6が1回転すると、回転部11は、1.25倍の5/4回転する。即ち、ロール紙100を引き出した際に、ロール紙100を1回転させると、ロール紙保持部6も一体的に1回転され、回転部11は5/4回転して、コイルバネ7を圧縮又は引張する。ここで、前述したように、制限スリット13により、回転部11の1回転以上においては、空回りさせて、コイルバネ7に対して1回転分の引張や圧縮による弾性力を蓄えさせる。そして、紙送り時には、螺旋スリット12を利用して、コイルバネ7の弾性力により回転部11を1回転させると、ロール紙保持部6及びロール紙100は一体的に4/5回転する。
具体的には、ホルダーに装着されるロール紙100を垂直方向(重力方向)の頂上部を0度とし、最下部を180度と仮定した場合で、ホルダーの蓋板の先端がロール紙100の水平位置(紙切り位置)となる90度で接しているものと仮定する。ここで、例えば、ロール紙100の引き出し時に、ロール紙100を正回転方向に1回転(360度回転)させると、ロール紙保持部6も一体的に1回転する。この時、回転部11は、反回転方向に5/4回転(450度回転)して、コイルバネ7を圧縮又は引張しようとする。ここで、制限スリット13により、回転部11の1回転以上においては空回りさせて、コイルバネ7に対して、回転部11の1回転分の引張や圧縮による弾性力を蓄えさせる。ロール紙100を切り取った後の紙送り時には、コイルバネ7の自然長に戻るときの弾性力により、回転部11が正回転方向に1回転(360度)すると、ロール紙保持部6が反回転方向に4/5回転(288度回転)する。この4/5回転は、コイルバネ7が自然長に戻る時にロール紙保持部6が回転する角度であり、前述した紙送り回転角度である。
このロール紙保持部6の回転により、ロール紙100も一体的に反回転方向に4/5回転するため、ロール紙の切り取られた端面もホルダーの蓋板の先端(90度)から反回転方向に288度回転し、ホルダーのロール紙100の最下部(180度)よりも正面側で停止する。つまり、ロール紙100を使用した後に、水平位置にあるホルダーの蓋の先端から最下部のロール紙の端面まで紙部分が露出しており、次の引き出しに利用する掴み部分となる。
螺旋スリット12による旋回角度は、ホルダーの蓋板の先端から露出させるロール紙の端面からの長さを考慮することで設定される。また、螺旋スリット12の螺旋の傾きである螺旋角度は、回転部11の長手方向の長さと、コイルバネ7の弾性力、可動する部材間の移動時に係る摩擦力と、使用対象となるロール紙100の破れ易さ等を考慮して適宜、設定される。
また、本実施形態における螺旋スリット12の螺旋の傾きを示す螺旋角度は、スリットの先端(外側)12aから終端(開口)12bまで同じ角度であっても異なってもよい。この螺旋角度は、長手軸に対して一定の傾き角度はなく、例えば、制限スリット13に向かう長手軸に対して交差する螺旋スリットの傾き角度が徐々に小さくなるように設定する。この螺旋角度の調整は、最初、長手軸に対して交差する螺旋角度を大きくすることで、ロール紙100の引き出し開始時のコイルバネ7の圧縮又は引張が小さくなり、ロール紙100が破れることを抑制し、ある程度、引き出されるロール紙100が回転してから、長手軸に対する螺旋角度を小さくして、螺旋角度に対する移動部9の移動する距離を大きくすることで、コイルバネ7の圧縮又は引張を大きくする。
このように、ロール紙100の紙送り回転角度は、回転部11の周面に形成される螺旋スリット12の螺旋角度により設定される。しかし実際の構成においては、紙送り回転角度の設定が螺旋スリット12の旋回角度のみでは、構成部品の製造誤差や個体差により、ロール紙100の端面の停止位置に誤差が生じる場合がある。そこで、ロール紙100の紙送り回転角度は、回転角度調整部を設けて設定する。この回転角度調整部は、樹脂製からなるバー形状の移動部停止部材3eをフランジ部3bに設けて、回転防止ガイド溝3cに嵌め込まれる。この移動部停止部材3eの長さにより回転防止突起8bの停止位置を規定することで、移動部9の移動を強制的に停止させて、螺旋スリット12による旋回角度を設定する。この旋回角度が設定されると、予め設定された反転部14を考慮した回転部11のリングギヤ16と外装部41の内歯ギヤ43のギヤ比により、紙送り回転角度が設定される。
また、移動部停止部材3eが設けられたフランジ部3bは、ベース部3から取り外し可能に構成する。移動部停止部材3e上に長さにより規定された回転角度の角度(例えば、5度)が記載された目盛りを形成する。移動部停止部材3eの長さが短くなるほど、ロール紙100が反回転する紙送り回転角度が大きくなり、ホルダーの蓋板の先端(カッター部)にロール紙100の端面が近づく。出荷時は、前述したように、ロール紙100の端面がホルダーの下方で停止するように設定する。ユーザがベース部3からフランジ部3bを取り外し、カッター等を用いて、移動部停止部材3e上に設けられた所望する紙送り回転角度が記された目盛りの位置で、移動部停止部材3eを切り取る。これにより、ユーザが所望する位置にロール紙100の端面を停止させることができる。つまり、移動部停止部材3eの長さを調整することで、移動部9の停止位置を調整し、回転部11の紙送り時にロール紙100の回転する角度を設定することができる。
さらに、本実施形態の紙送り装置において、構造上、紙送り装置1を差し込んだロール紙100をホルダーに装着する方向が限定されている。図8(a)に示すように、ロール紙100をロール紙保持部6の右側からに差し込む。この紙送り装置1を差し込んだロール紙100を正面から見て、フランジ部53(フランジ部3a)がホルダーの左側に来るようにロール紙100をホルダーに装着する。回転角度調整部を備えることにより、ユーザーが間違えて、フランジ部53が右側に来るようにホルダーに装着し、ロール紙100を引き出そうとしても逆回転を防止できるため、逆回転による紙送り装置への損傷を防止することができる。
また、これらのガイド突起8aと螺旋スリット12との間の接触する箇所は、摺動抵抗を減少させるために、スリットの壁面の断面形状を半円又は蒲鉾形に凸形状に形成し、互いが点で接するようにしてもよい。同様に、回転防止突起8bと回転防止ガイド溝3cの間の接触する箇所においても、摺動抵抗を減少させるために、溝両壁面を半円又は蒲鉾形に突出するように形成して、互いが点で接するようにしてもよい。または、溝両壁面に微小な半球形のドットを一様に形成して、摺動抵抗を減少させてもよい。
さらに、前述したように、ガイド突起8aにボールベアリング等を嵌め込み、ベアリングの外側リングをスリット面又は溝面と接するように構成して、ガイド突起8aと、螺旋スリット12及び後述する制限スリット13との間の摺動抵抗を減少させてもよい。同様に、回転防止突起8bにボールベアリング等を嵌め込み、回転防止ガイド溝3cと接触するようにしてもよい。
さらに、回転部11の制限スリット13に接する側の複数の螺旋スリット12の開口12b間のそれぞれの間には、回転部11の外周一周に渡り、振幅が小さいジグザグ形状又は波形状に形成される凸部の開口端12cが設けられている。ここでは、開口端12cが左右に斜面を持つ三角の山形形状であるが、一方向の片斜面のノコギリ刀形状であってもよい。この制限スリット13は、ガイド突起8aの移動範囲、即ち、コイルバネ7の引張量又は縮み量を制限するものである。尚、制限スリット13は、構成上、回転部11を径方向で分断するため、制限スリット13を覆うように連結部材(外周層)11aを設けて連結する2層構造とするか、回転部11の厚みを増して制限スリット13を溝として形成する。
各螺旋スリット12の開口12bは、開口端12cの波形状の谷側に接続する。即ち、開口端12cの谷の数と螺旋スリット12の数が一致している。開口端12cの凸部は、コイルバネ7の自然長に戻る際に、ガイド突起8aが谷側に落ち込むように移動するだけでよいため、凸部の突出する長さ(高さ)は短くてもよく、ガイド突起8aが開口端へ移動可能であれば、例えば、1〜3mm程度であってもよい。螺旋スリット12の開口12bは、開口端12cに向かい、間口が広がるようにテーパーに形成されてもよい。
このような螺旋スリット12と制限スリット13によるスリット構成においては、ロール紙100の引き出し時に、回転部11が回転することで、移動部9のガイド突起8aが螺旋スリット12に沿って、コイルバネ7を引張又は圧縮しながら回転部11の端側から中央側に移動し、制限スリット13に到達する。その後、回転部11の回転が継続した場合には、ガイド突起8aは、制限スリット13内を開口端12cの波形状に沿って移動し、回転部11が空回りした状態となり、移動部9の移動が停止し、コイルバネ7の引張又は圧縮を停止する。
また、ガイド突起8aが螺旋スリット12から制限スリット13にガイド突起8aが入った際に、コイルバネ7が引張状態又は圧縮状態から自然長に戻る状態に変わる。しかし、制限スリット13に入ったガイド突起8aは、回転部11の回転が停止しない限り、螺旋スリット12に入り込んでも制限スリット13側に押し出される。このため、ガイド突起8aは、螺旋スリット12内には戻れず、開口端12cに沿ってジグザグを移動する状態で制限スリット13内に留まっている。
その後、使用者がロール紙の引き出しが終わり、回転部11の回転が停止すると、コイルバネ7の自然長に戻るための弾性力が移動部9を回転部11へ押しつける。ガイド突起8aは、開口端12cの山から谷に移動するように、僅かに回転部11を回転させる、又は、コイルバネ7が僅かに捩れる。ガイド突起8aは、開口端12cの谷に開口する螺旋スリット12に入り込む。その後、コイルバネ7の自然長に戻る弾性力により、移動部9が非回転で回転防止突起8bが直線的に戻るように移動する。この時、ガイド突起8aは、螺旋スリット12内を戻るように移動するため、回転部11が螺旋スリット12の旋回角度に応じて回転する。
制限スリット13の機能は、回転部11を空回りさせることで、使用者によってロール紙100の引き出し量(引き出されたロール紙100の長さ)が異なっても、一定の紙送り量、即ち、紙送りの回転におけるロール紙の先端の停止位置(後述する、送り出されるロール紙の長さ)を同じ位置にするためである。つまり、使用者がロール紙の引き出した長さが規定された長さ以上であれば、どのような長さを引き出しても、制限スリット13により、コイルバネ7の引張又は圧縮をほぼ一定にすることで、紙送り時のロール紙100の回転停止位置が同じ位置となり、ロール紙100の先端から一定の長さのロール紙を露出させることができる。さらに、前述した移動部停止部材3eを利用することで、正確な回転停止位置でロール紙100の先端を停止する。
反転部14は、複数のギヤ31と、ギヤ31を回転可能に両側から挟む環状ガイド板32とで構成される。この例では、3個のギヤ31を環状ガイド板32に等角度(120°)で配置する。但し、ここでは、3個のギヤ31を用いたことを例としているが、3個に限定されるものではなく、設計により適宜、個数を設定することができる。
反転部14は、回転部11のリングギヤ16と、ロール紙保持部6の後述する外装部41の内歯ギヤ43の両方の間に介在し、リングギヤ16と内歯ギヤ43に歯合する。反転部14は、外装部41の回転方向(正回転方向)を反転(逆転)させて、回転部11へ回転(反回転方向)を伝達する。2つの環状ガイド板32の一方は、ベース部3のフランジ部3a及び、フランジ部3bにそれぞれ取り付けられて固定される。固定方法としては、例えば、環状ガイド板32側の所定位置に複数の固定用孔を開口し、フランジ部3a,3bに所定位置の固定用孔に対応する同数の突起を形成する。これらの突起に固定用孔を嵌め合わせて、突起を潰すことで、取り付け位置の位置決め及び、フランジ部3aへの環状ガイド板32の固定を行うことができる。他の方法として、環状ガイド板32に突起を形成し、フランジ部3aに固定用孔を形成してもよい。この固定された反転部14は、回転部11のリングギヤ16と、外装部41の内歯ギヤ43の両方に歯合することで、ベース部3に回転部11と外装部41が回転可能に保持している。
これらのギヤ構造は、回転部11のリングギヤ16を太陽ギヤ、反転部14のギヤ31を遊星ギヤ、外装部41の内歯ギヤ43を内ギヤとすれば、遊星ギヤ構造となる。よって、それぞれのギヤ数を調整することにより、回転部11の回転数と外装部41の回転数の比を設定でき、コイルバネ7の圧縮の程度及び、送り出されるロール紙100のロール紙端までの長さ(回転角)を設定することが可能である。また、遊星ギヤ構造とすることで、回転中心となる回転軸が不要であり、ベース部3に中空の円筒管を用いることができる。
この遊星ギヤ構造を用いた構成であれば、使用者がロール紙100を引き出すことで、ロール紙100を保持する後述するロール紙保持部6の外装部41の内歯ギヤ43が正回転方向に回転すると、遊星ギヤである反転部14のギヤ31が正回転の方向で従回転する。この時、外装部41の内歯ギヤ43と対向する位置関係で反転部14のギヤ31と歯合する回転部11のリングギヤ16は、反転部14によって、外装部41の正回転が反転(逆転)された反回転方向に回転する。回転部11の反回転により、螺旋スリット12がガイド突起8aを移動させて、移動部9がコイルバネ7を引張又は、圧縮する。
このような構成によって、ロール紙100を引き出す際に、一体的に大径の外装部41を回転させて、小径の回転部11によりコイルバネ7を引張又は、圧縮する遊星ギヤ構造であるため、コイルバネの弾性力が減少化されてロール紙100に伝達される。このため、柔らかで破れやすい紙質のロール紙100であっても本実施形態に用いることができる。
尚、前述した反転部14は、環状ガイド板32にギヤ31を設けた例であったが、ギヤ31をフランジ部3a,3bに直接、設けてもよい。即ち、ギヤ31のための軸をフランジ部3a,3bに立てて、ギヤ31を嵌め込んでもよい。また、反転部14をフランジ部3a,3bの両方に配置した例を示したが、これに限定されず、フランジ部3a又はフランジ部3bの何れか一方に反転部14を配置し、他方にリング形状のベアリングを配置する構成であってもよい。
回転部11の外周側には、ロール紙保持部6が設けられている。ロール紙保持部6は、円筒形状の外装部41と、弾性を有する樹脂材料又は、金属材料を用いて、ワイヤ形状又は細板形状に形成される保持部42とを備えている。このロール紙保持部6は、ロール紙100が嵌め込まれ、保持部42がロール紙100の芯を内側から押して、ロール紙100を保持する。
ロール紙保持部6の保持部42は、両側の先端部が外装部41の外周面から内周面に貫通するように埋め込まれて、中央部分が弓なり状に張り出ている。これらの保持部42は、外装部41の円筒の中心軸を中心として、外周面を等角度で例えば、3分割(ここでは、120度に等分割)して、3箇所に設けられている。尚、保持部42は、ロール紙100の芯の中心と外装部41における中心が略一致するようにロール紙100を配置し、回転部11が安定して回転するためには、少なくとも3箇所以上に設けられることが望ましい。また、保持部42を後述する適用例に用いる場合には、ロール紙の支持バーの長手方向に間隔を空けて2列(周回方向の配置を列とする)で、各1列において周面方向の3箇所に保持部42を配置する。即ち、ロール紙100の芯と外装部41とが平行になるように配置して、ロール紙100の芯の回転軸と外装部41の回転軸とを一致させる。
これらの保持部42は、外力が加わった箇所を中心に撓み、外力が外れると元の弓なりの形状に戻ることができる。従って、保持部42にロール紙100の芯が填め入れられると、複数の保持部42は、それぞれに芯内部で均等な弾性力で押し出す力によりロール紙100を保持する。
また、保持部42の変形例としては、弾性を有する材料、樹脂や金属によりL型形状に形成する。このL型の一端(垂直部)を外装部41に形成した窓(孔)を貫通して内側が外側に延び出るように配置し、他端(水平部)の先端を部分的に外装部41に固定する構成であってもよい。この構成においては、一端の先端部分にロール紙100の芯(内面)が当接して、外装部41の内部に押し込み、他端(水平部)の撓みによる弾性力でロール紙100を保持する。
図2、図3及び図5(a)乃至図5(g)を参照して、本実施形態の紙送り装置の動作について説明する。図5(a)は、長手軸方向に延びる螺旋スリット12と、螺旋スリット12のジグザグ形状の開口端側に設けられる制限スリット13とが形成された回転部11の構成を示す図、図5(b)乃至図5(g)は、紙送り装置の紙送り動作を説明するための回転部の螺旋スリットと移動部の開度突起の位置関係を示す図である。以下の説明において、紙送り装置1は、後述するホルダーの支持バーに適用されている状態として説明する。また、図内のPは、説明のための基準位置であり、回転部11に対する、回転しない移動部9のガイド突起8aの位置(ベース部3の長手方向における定位置)とする。
まず、使用者は、紙送り装置1をロール紙100の芯内に差し入れて装着する。さらに、ロール紙100をホルダーの支持バーに取り付ける。この時、紙送り装置1の装着部2が支持バーに対してベース部3の回転やがたつきが無いように、上下左右に振って微調整するように固定する。
その取り付け後、使用者によるロール紙100の引き出し動作が開始される。この時、コイルバネ7は自然長であり、図5(b)に示すように、ガイド突起8aが回転部11の螺旋スリット12の先端12a側に位置する第1の状態(P位置)になる。この第1の状態から、使用者によってロール紙100が引き出されて、ロール紙保持部6が回転される。ロール紙保持部6の回転(正回転)は、内歯ギヤ43から反転部14のギヤ31に同じ正回転方向に伝達される。さらに、反転部14のギヤ31から回転部11のリングギヤ16に反転された反回転方向で伝達されて、回転部11が反回転する。
図5(c)に示すように、回転部11がP位置から矢印に示すように反回転されると、螺旋スリット12内を移動部9のガイド突起8aが制限スリット13側に移動される。移動部9の移動により、コイルバネ7が引張又は、圧縮されてバネの長さが伸びる又は縮む。ロール紙100の引き出し動作が継続されると、さらに、コイルバネ7が引張又は、圧縮されて、図5(d)に示すように、ガイド突起8aは、螺旋スリット12から制限スリット13に入り込む。このため、ガイド突起8aの長手軸方向の移動がなくなり、コイルバネ7の引張又は圧縮が停止する第2の状態となる。ガイド突起8aが螺旋スリット12から制限スリット13に入った際に、コイルバネ7が引張状態又は圧縮状態から自然長に戻ろうとする復帰状態に変わる。しかし、それ以後も、ロール紙100の引き出し動作が続いた場合、回転部11の反回転が継続し、ガイド突起8aは、螺旋スリット12に入り込めずに、制限スリット13内に留まっている。また、ガイド突起8aが螺旋スリット12に入り込んでも制限スリット13内に押し返される。
使用者によって所望する長さまでのロール紙100の引き出された後、ホルダーの蓋板のカッター部でロール紙100が切り取られると、ロール紙100を引っ張っていた引圧が無くなる。これにより、コイルバネ7の自然長に復帰する弾性力を駆動源として、制限スリット13内の移動部9のガイド突起8aが凸部の斜面から谷に向かうように移動する。そして、図5(e)に示すように、ガイド突起8aは、開口端12cの谷から螺旋スリット12内に入り込み、第3の状態となる。
さらに、図5(f)に示すように、コイルバネ7の自然長に戻る弾性力により、移動部9は、ガイド突起8aが螺旋スリット12の先端12a側へ向かい、回転防止ガイド溝3cによって回転されずに直線的に戻ることで、回転部11を矢印で示すように正回転側に回転させる、第4の状態となる。さらに、ガイド突起8aが螺旋スリット12の先端12a側へ到達した場合には、図5(g)に示すように螺旋の長さ分(角度分)だけ回転部11を旋回させて、元の第1の状態に戻る。
回転部11が正回転で回転した時、反転部14を介して外装部41を反転方向に回転させる。このため、ロール紙保持部6が外装部41と共に一体的に反回転方向に回転する。この反回転方向の回転により、螺旋スリット12の旋回角度に従い、ロール紙100を紙送り回転角度を反回転させる。この紙送り回転角度を反回転して、ロール紙100が停止すると、結果的に、ロール紙100の端面が蓋板の先端から露出された状態となる。
ロール紙100が紙送りされて、ホルダーの蓋板の先端から露出するロール紙100の長さ(紙送り量とする)は、前述したように、主として、螺旋スリット12の旋回角度と、反転部14による回転部11と外装部41の回転比によって定まる。
このロール紙100の紙送り量は、紙送り回転角度に従う量(長さ)となる。紙送り量としては、例えば、ロール紙100の径が芯の径に近づいた時に、少なくとも指でつまめる長さ、例えば、4cm〜5cm程度が露出するように、螺旋スリット12の旋回角度が設定される。尚、1つの回転部11では、ロール紙100を回転させる力が弱かった場合には、ロール紙100の支持バーに複数の紙送り装置1を配置してもよい。
以上説明したように第1の実施形態の紙送り装置1は、簡易な構造であり、低いコストで実現することができる。
紙送り装置1は、駆動源4にモータでは無く、弾性部材であるコイルバネ7を用いているため、電源や電池等が不要で有り、電源供給ができない場所や電池交換の管理ができ難い環境下、例えば、山間部のトイレであっても設置することが可能であり、維持コストが発生しない。尚、モータを駆動源4としていた場合に、モータの故障、停電又は電池切れが発生した場合には、ロール紙100が回転し難くなり、ロール紙100の引き出しに支障を発生させる。第1の実施形態の紙送り装置1は、上述の支障が生じない。
紙送り装置1は、使用する際にロール紙100の引き出された長さの長短にかかわらず、ロール紙100を一定の角度で回転させて、ホルダーの蓋板の先端から所定の長さのロール紙100を露出させることができる。
また、紙送り装置1へロール紙100を装填する場合にも、ロール紙保持部6の保持部42が撓むことで差し込むだけでよく、ロール紙100の装着が容易である。ロール紙100の製造誤差や種別の違いにより、ロール紙100の芯の内径に多少の違いがあっても、ロール紙保持部6の撓み具合でその内径の違いを吸収するため、がたつきや緩みが無いように適正に密接して、ロール紙100を保持できる。
さらに、ロール紙保持部6は、ロール紙100の芯の端部より内側に入った箇所で保持するため、ロール紙100の芯の端部がロール紙保持部6から浮いて、芯とは接触していない状態となる。このため、ロール紙100の芯の変形や、芯の端部に変形や凹みが生じていた場合でも、ロール紙100が引き出されて回転した際に、ロール紙100の芯の端部がホルダーのロール紙支持バーに接触せず、ホルダー50の蓋板66を上下に煽らないため、大きなカタカタ音の発生を防止できる。
また、ロール紙100を引き出して切り取る際に、ロール紙100にコイルバネ7による弾性力が加わった状態であるため、ロール紙100の側端をホルダー50の蓋板66のカッターに宛がい、引き上げるだけで容易に切り取ることができる。よって、ウイルスによる感染においても、トイレ内の備品に手で接触する機会を少なくすることで、接触感染を抑制することに繋がる。
[第2の実施形態]
次に、図6を参照して、第2の実施形態に係る紙送り装置について説明する。
前述した第1の実施形態では、紙送り時には、ロール紙を使用する際の引き出す方向とは、逆方向に反回転させて、ロール紙の端面をホルダーの下方で停止させて、結果的に、ロール紙の端面がホルダーの蓋板の先端より露出した状態にしている。
本実施形態の紙送りは、ロール紙100の切り取り後に、ロール紙100を引き出した方向(正回転方向)と同じ方向に回転させて、ロール紙100の端面がホルダーの蓋板の先端より露出させて停止する紙送り装置である。以下の説明において、前述した第1の実施形態と同等の構成部材には、同じ参照符号を付して、その詳細な説明は、省略する。尚、以下のストッパ部15を備える回転機構5は、引張コイルバネを駆動源とする紙送り装置[第1紙送り装置]に適用することを想定している。
本実施形態の回転機構5は、回転部11及び反転部14に加えて、ストッパ部15を備えている。このストッパ部15は、リング基板24と、係止用貫通孔24aと、I形係止部材25と、支持部材26と、スプリング27と、磁石28と、係止穴3dと、反回転防止部29とで構成される。
ベース部3のフランジ部3aと反転部14の環状ガイド板32の間に、平板リング形状のリング基板24が回転可能に配置される。このリング基板24には、環状ガイド板32が固定され、後述するようにフリーの状態となった際に、環状ガイド板32と一体的に、ベース部3の周囲を回転可能になる。
I形係止部材25は、直線的な硬質な棒材からなり、先端には係止用半球体25aが設けられ、他端には、磁石28が設けられている。ここでは、I形係止部材25の先端に設けられた係止用半球体25aは、半球体を例としているが限定されるものではなく、先端側が丸みを帯びていればよく、球体または、上底を丸めた円錐台であってもよい。フランジ部3aには、後述するI形係止部材25の係止用半球体25aが出入りする1つの係止穴3dが形成される。リング基板24には、係止穴3dと対向する位置に、1つの係止用貫通孔24aが形成され、I形係止部材25が移動可能に貫通して配置される。
さらに、リング基板24には、I形係止部材25を軸方向にスライド可能に支持するコ(U)の字型の櫓形状を成す支持部材26が設けられている。支持部材26内でI形係止部材25には、スプリング27が填められており、I形係止部材25のストッパ部25bと支持部材26のフレームとの間で弾性力が働くように構成されている。この構成において、I形係止部材25は、矢印で示すベース部3の長手軸方向にスライド移動可能である。
I形係止部材25は、磁石28が、ロール紙100の引き出しにより移動して、制限スリット13内に留まっている移動部9に届く長さを有している。つまり、制限スリット13内に留まっている移動部9に磁石28が磁力で吸着する。この吸着においては、移動部9に磁石28が磁力で近接(非接触)して吸引された状態であってもよく、必ずしも磁石28と移動部9が接触していなくともよい。この吸着により、コイルバネ7が自然長に復帰する際に、移動部9が移動すると、移動部9に吊られてI形係止部材25がスライド移動する。このI形係止部材25のスライド移動に伴い、通常時は、係止穴3dに嵌合している係止用半球体25aが係止穴3dから引き出される。この引き出しと共に、スプリング27を縮めることで、スプリング27には、元の嵌合状態に戻す方向の弾性力が発生する。係止用半球体25aが係止穴3dから引き出されると、フランジ部3aに対して、リング基板24がフリー状態となり、回転可能になる
反回転防止部29は、カンチレバー形状を成し、少なくとも1つのギヤ31に設けられており、ギヤ歯に歯合して、ロール紙100が引き出される際の回転方向(正回転方向)のみに回転するように規制している。即ち、反回転防止部29は、外装部41が反回転方向に回転しないように、正回転方向のみに回転するように制限する。勿論、ギヤ31ではなく、反回転防止部29をリングギヤ16側に設けてもよい。また、反回転防止部29のカンチレバー専用に、別途、カンチレバーと歯合するノコギリ歯のリングギヤを設けてもよい。
ロール紙100が引き出されるのに伴い、移動部9は、ガイド突起8aにより螺旋スリット12から制限スリット13内に移動する。この時、ストッパ部15において、磁石28は、制限スリット13内に留まっている移動部9に磁力により吸着する。ロール紙100の引き出しが継続する時には、制限スリット13の凸部を乗り越える移動部9と一体的に前後に移動する。
ロール紙100の引き出し後の紙送り時には、移動部9がコイルバネ7の自然長に戻ろうとする復帰により移動した際に、吸着する磁石28を引き連れて移動することで、I形係止部材25が引っ張られて、係止穴3dから係止用半球体25aが引き抜かれると、反転部14がフランジ部3aに対して係合が解除されて、回転可能なフリー状態となる。
移動部9が復帰による移動を開始すると共に、回転部11の回転が開始されるため、フリー状態のリング基板24と共に反転部14も連れられて回転する。この時、反回転防止部29によりギヤ31が反回転することが規制されてロックされた状態であるため、ロール紙保持部6と回転部11が係合された状態となり、ロール紙保持部6は、回転部11の回転に従って一体的に回転する。
また、移動部9が復帰する方向にある程度、移動すると、支持部材26に阻まれて磁石28が移動部9から離れ、スプリング27の弾性力により、引き戻される。その後、係止穴3dから抜け出た係止用半球体25aは、スプリング27に付勢されてフランジ部3aの表面に当接した状態で滑り、反転部14が一回転すると、係止穴3dに再度、差し込まれる。係止用半球体25aが係止穴3dに差し込まれると、フランジ部3aにリング基板24が係合し、反転部14が固定された状態となる。尚、I形係止部材25の係止用半球体25aが係止穴3dから抜け出た状態で紙送りが終了したとしても、次に、ロール紙100が引き出される際に、フリー状態のリング基板24と反転部14が回転部11又はロール紙保持部6の回転に連れられて回転するため、係止用半球体25aは、係止穴3dに再度、差し込まれる。
よって、前述したように螺旋スリット12の旋回角度に従って、ロール紙100を正回転方向に回転させて、ロール紙100の端面をホルダーの蓋板の先端から露出するように紙送りを行う。この時の紙送り回転角度は、45度程度である。勿論、前述した移動部停止部材3eを設けて、移動部9の移動距離を設定することで、紙送り回転角度を調整することは可能である。このストッパ部15を設けて、ロール紙保持部6の外装部41が正回転方向のみに回転するように制限することで、紙送り時に回転部11が正回転する際に、回転部11と外装部41が一体的に正回転する。
よって、本実施形態においては、前述した第1の実施形態と同等の作用効果を奏する。
次に、図7に示す第1及び第2の実施形態の紙送り装置に組み合わせて用いられる従紙送り装置について説明する。図7は、従紙送り装置における断面構造を示す図である。
従紙送り装置21は、簡易にいえば、図1に示した前述した紙送り装置1における装着部2と、ベース部3と、ロール紙保持部6と、これらの間をつなぐリング形状のボールベアリング22とで構成される。前述した紙送り装置より、駆動源であるコイルバネ7、移動部9、回転部11、反転部14、ストッパ部15、リングギヤ16及び、内歯ギヤ43を取り外した構成である。ベース部3及びロール紙保持部6は、第1の実施形態の紙送り装置を参照することで、構成の説明は省略する。
この従紙送り装置21は、基本的には、紙送り装置1と組で利用するが、単独で使用してもよい。従紙送り装置21は、紙送り装置1を簡素化した構成であり、低コストで製造できる。この従紙送り装置21は、ロール紙100の芯の端部より内側に入った箇所で保持するため、ロール紙100の芯の端部に変形や凹みが生じていた場合でも、カタカタ音を発生させずに、静かにロール紙100を引き出すことができる。このため、紙送りが不要で、カタカタ音のみが気になるユーザであれば、従紙送り装置を単独で用いることで、カタカタ音の発生を防止することができる。
[第1適用例]
以下に説明する第1適用例は、ロール紙100に直に紙送り装置を取り付けた後、ホルダーの支持バーに装着する構成例である。図8(a)は、第1適用例における紙送り装置の斜めから見た外観構成を示す図、図8(b)は、紙送り装置を正面から見た外観構成を示す図である。
ロール紙100の装着対象となるホルダーの支持バーは、例えば、ホルダーの左右両側に一対で配置され、共に先端が上方に回動可能に片持ち支持するように構成される。即ち、これらの支持バーは、ロール紙100の芯の両側から入り込み、ロール紙100を水平に支持する、跳ね上げ式の支持バーである。この跳ね上げ式の支持バーは、支持バーの支持壁(ホルダーの壁部)と、装着されたロール紙100の側面と隙間が狭く、ロール紙100の装着時に、支持バーを下側から跳ね上げた際に支持バーがホルダーの内壁の溝内に入り込む構造もある。図7は、第1適用例における紙送り装置の外観構成に示す図である。
第1適用例の紙送り装置51は、胴体部52、フランジ部53及び、差し込み型固定具54で構成される。
胴体部52は、ロール紙100の幅(芯の長さ)に相当する長さを有し、その先端面がロール紙の芯内を貫通し、フランジ部53がロール紙100の側面に達するまで差し入れられる。胴体部52には、少なくとも1台の紙送り装置1に相当する内側胴体部52aと、筒形状の先端側胴体部52bと、基端側胴体部52cとで構成される。
この構成例では、先端側胴体部52b及びフランジ部53は、前述したベース部3に一体的に連結し非回転部である。内側胴体部52a及び基端側胴体部52cは、一体的に連結し、先端側胴体部52b及びフランジ部53に対して回転可能である。先端側胴体部52bは、内側胴体部52aのロール紙100への差し込み先端側に設けられる。尚、先端側胴体部52bを設けることは必須ではなく、内側胴体部52aが先端の位置まで延伸された構成であってもよい。さらに、この内側胴体部52aの周面上には、長手方向に間隔を空けて、紙送り装置1における保持部42が周面に配置されている。ロール紙100は、基端側胴体部52cに当接するまで差し込むことで正しい装着位置となる。
胴体部52は、ベース部3と同様に中空な管形状を成し、両端に開口が設けられている。胴体部52の断面形状は、真円が好ましいが、紙送り装置1以外の箇所は、特に限定されるものではなく、楕円や矩形であっても適用することは可能である。胴体部52の外装及び、フランジ部53は、例えば、樹脂や金属により形成されている。
この例では、ロール紙保持部6(図1に示す符号41)の保持部42は、2組(例えば、1組3個)で、周方向に2列に配置される。フランジ部53は、中央に穴が開口される平坦なワッシャー形状であり、胴体部52の一方の端部に設けられる。フランジ部53は、ロール紙100の装着時のストッパとして機能し、ロール紙100の芯の径よりも僅かに大きい径に設定される。フランジ部53は、前述したストッパ部15のリング基板24であってもよい。
一般に、ホルダーに設けられているカッターを有する蓋板は、引き出されたロール紙100を端から切り込みを入れるために、ホルダーのロール紙装着スペースのほぼ全幅を覆う幅で設けられている構成が多い。また、ロール紙100は、引き出されて使用されるに従い、その径が小さくなる。この時、フランジ部53の径が大きければ、ホルダーの蓋板がフランジ部53の縁に当接した以降は、ロール紙の径100が小さくなっても、蓋板が下がらず、ロール紙100から浮いた状態となり、ロール紙100が切り取りにくくなる。このロール紙が切り取りにくくなることを防止するために、芯の径を考慮して、フランジ部53の径がなるべく小さくなるように設定する。
さらに、フランジ部53は、紙送り装置1におけるロール紙100の紙送り方向を確認するための識別部材としても利用される。即ち、構成上、紙送り装置1の回転方向が規定されているため、ホルダーの支持バーに装着する際に、フランジ部53がロール紙の右側に来るように装着されるか、ロール紙100の左側に来るように装着されるかは、紙送り装置1の正回転方向により予め設定されている。前述した実施形態では、ホルダーに取り付ける際に、フランジ部53がロール紙100の左側(図8(a)参照)に来るように設定している。尚、ロール紙保持部6の表面にロール紙100の嵌め込み方向を示す矢印及び注意書き等を記載することが好ましい。
また、差し込み型固定具54がフランジ部53及び先端側胴体部52bの筒の開口の両方に差し込まれている。この構成においては、先端側胴体部52bに差し込まれる差し込み型固定具54の方がフランジ部53に差し込まれる差し込み型固定具54よりも鍔部の径が小さくなっている。
差し込み型固定具54は、装着部2と同等であり、弾性材料を用いて、上底が開口された円錐台形状、コーン形状、又は、鰐口形状に形成され、胴体部52の両側から内部に差し入れるように設けられる。
差し込み型固定具54は、ホルダー50に装着した際に、ホルダー50の支持バーの先端が開口を貫通する状態となる。つまり、差し込み型固定具54は、上底の開口が支持バーの先端を貫通する状態で取り付けられることで、フランジ部53と先端側胴体部52bが支持バーに対して開口部分で挟み込んで固定される。紙送り装置51の内側胴体部52aと基端側胴体部52cが一体的に回転し、ロール紙100の紙送りを行う。差し込み型固定具54は、支持バーの形状に合わせて形成でき、交換可能である。
また、差し込み型固定具54は、前述した円盤形状(蓋形状)の弾性部材に、スリットを形成したものであってもよい。さらに、前述したベース部3と同様に、胴体部52において、両端から差し込まれた差し込み型固定具54間の中央の空きスペースを芳香剤を収納する収納スペースとして用いてもよい。この収納スペースの位置の胴体部52は、複数の孔を形成してメッシュ状にしてもよい。また、この場合、いずれか一方の差し込み型固定具54が胴体部52から着脱可能に構成される。
この第1適用例では、胴体部52に、2列の保持部42を配置した例を示している。これは、ロール紙100の芯が、長手方向の2箇所の位置で保持部42により、支持バーと平行に安定して保持されるように、2列に並設している。尚、1台の紙送り装置を設けて2列の保持部を設けた構成例を示したが、1列の保持部を有する紙送り装置を2台並設する構成、又は、それぞれに1列の保持部を有する、1台の紙送り装置及び1台の従紙送り装置と組み合わせて構成してもよい。
以上説明した第1適用例による紙送り装置は、ロール紙100の芯に直に差し込んで固定した後、ロール紙100と一体的にホルダーに装脱着して利用できる。また通常、ホルダーは、一旦トイレ壁面に設置された後には、破損等により使用することに支障が生じない限りは、交換されない場合が多い。第1適用例による紙送り装置は、これらの既設及び既存のホルダーに対して、大抵の構造の支持バーにも対応でき、適用範囲が広く、効率的である。例えば、第1適用例の紙送り装置は、ホルダーのロール紙100の装着スペースがロール紙100の幅に対して余分なスペースが少なく、ロール紙100の芯を両側から支持する跳ね上げ式の支持バーであっても、紙送り装置を差し入れたロール紙100を容易に装脱着できる。
さらに、跳ね上げ式の支持バー以外では、伸縮可能な一本の真っ直ぐな筒状を成し、ロール紙100の芯を貫通して、ホルダーの両方の壁部に突っ張り支持する支持バーであっても同様に利用することが可能である。即ち、上述したように、支持バーがロール紙100の芯に両側から差し込まれるタイプ及び、ロール紙100の芯を貫通するタイプであっても、又はロール紙100を支持する支持部が芯の端部を両側から挟み込むタイプであっても、差し込み型固定具54の形状を装着対象の支持バー又は、支持部の形状に合わせて変更することにより、どのようなホルダーにおいても適用することが可能である。尚、紙送り装置が組み込まれたロール紙100の芯を貫通するタイプの支持バーに対しては、前述したように、ホルダーに対して支持バーが回転できないように固定する固定具が別途、必要である。
紙送り装置は、ロール紙100が全て使用されて芯のみとなった際に、ホルダーの支持バーから芯ごと取り外した後、フランジ部53を掴み、芯から胴体部52を引き抜き、新たなロール紙100の芯に胴体部52を差し替えるだけで、容易にロール紙100の交換ができる。
さらに、ウイルスが付着しやすいトイレ内においては、ロール紙100を引き出す際に、他人が触っていると想定されるホルダーの蓋板に触らずに、ロール紙100の先端を掴むことができ、衛生的である。また、使用する長さを引き出した際に、ロール紙100にコイルバネ7による引力が生じているため、素早く斜め上に引き上げれば、蓋板の先端に設けられたカッターにより蓋板に触ることなく切り取ることも可能である。蓋板の先端面の端に突起部材を後から貼り付けて、ロール紙100の切り取り時に切り込みを発生させてもよい。また、ミシン目が付いたロール紙100であれば、カッターの先にミシン目が見えた時点で引き上げれば、容易に切断することができる。
[第2適用例]
前述した第1適用例では、紙送り装置がロール紙100に直に装着する構造であるため、公共施設やビル内の共有施設、例えば、公共トイレ及び共有トイレに利用する場合、持ち去りや紛失等が懸念される。第2適用例は、ロール紙ホルダーの支持バーに紙送り装置を組み入れた構成例である。図9は、第2適用例における紙送り装置が搭載されたホルダーの外観構成に示す図である。
図9に示すように、ロール紙100のホルダー61は、背部62と、背部62の一方の側端に設けられる固定形壁部63と、固定形壁部63に一端側が固定される支持バー64と、前記背部62に回動可能に設けられた先端にカッターを有する蓋板66とで構成される。背部62と固定形壁部63とで、L形のホルダー本体を構成する。背部62と固定形壁部63は、一体的な構造であってもよい。背部62は、室内の壁等に取り付けるための背面側が平坦な形状である。尚、この第2適用例の固定形壁部63は、後述する第3適用例の開閉形壁部73に変更することも可能である。
この第2適用例においては、支持バー64に、少なくとも1台の前述した紙送り装置1が組み込まれ、長手方向に間隔を空けて2列に配置される複数の保持部42が設けられている。また、1列の保持部42を有する紙送り装置を2台配置する構成、又は、それぞれに1列の保持部42を有する、1台の紙送り装置及び1台の従紙送り装置の組み合わせて構成してもよい。尚、ホルダーに紙送り装置1に組み入れる構成においては、装着部2は、不要である。支持バー64は、固定形壁部63に回転可能に設けられている回転取り付け台65に取り付けられている。支持バー64に装着されるロール紙100は、ストッパとして機能する回転取り付け台65(基端側胴体部52cに相当)にロール紙側面が当接する位置まで差し込まれる。支持バー64は、回転取り付け台65と共に固定形壁部63に対して回転可能である。勿論、支持バー64と回転取り付け台65とは、一体的に回転可能な構成であっても、個別に回転可能な構成であってもよい。
また、蓋板66は、背部62の上側に配置され、ロール紙100の交換を容易にするために、手で先端を上方に持ち上げた際に、一時的にロックする構成を有する。例えば、固定形壁部63に半球状の突起部63aを形成し、持ち上げた蓋板66の側端が突起部63aに一時的に引っ掛かる構成でもよい。
この第2の適用例においては、ロール紙100の装着は、蓋板66の先端を持ち上げて上方にロックした後、固定形壁部63が設けられていない側方から、支持バー64にロール紙100の芯を差し込み、紙送り機構の外装部41の保持部42に固定する。
また、ロール紙100の交換の際には、蓋板66の先端を持ち上げて、突起部63aを一旦超えた後に、蓋板66を離すと、蓋板66の側端が突起部63aに掛かり、蓋板66が跳ね上げられた状態となる。その後、ロール紙100の芯を支持バー64の保持部42から側方に抜き取り、新たなロール紙100の芯を保持部42に差し込み装着する。その後、蓋板66の先端を押し下げて、係止を解除して、蓋板66をロール紙100に当接させる。
この第2適用例によれば、紙送り装置がロール紙100のホルダーと一体的に構成されているため、盗難や紛失の虞がなく、公共施設及び共有施設のトイレ等に適用することができる。また、電源供給や電池交換が難しい環境下の施設においても簡易に設置することができ、電源及び電池交換に関する管理も不要である。
さらに、ロール紙100の芯の端部に変形や凹みが生じていた場合でも、カタカタ音を発生させずに、静かにロール紙100を引き出すことができ、公共施設及び共有施設のトイレに好適する。
[第3適用例]
前述した第2適用例では、ロール紙100のホルダー61の背部62の一方に固定形壁部63を設けた構成であったが、この第3の適用例では、背部の両側端に、それぞれ壁部を設けたコの字型形状である。図10は、第3適用例における紙送り装置が搭載されたホルダーの外観構成に示す図である。
図10に示すように、ロール紙100のホルダー71は、コの字型の外観形状を成し、背部72と、背部72の一方の側端に回動可能に設けられる開閉形壁部73と、背部72の他方の側端に張り出すように設けられる固定形壁部74と、開閉形壁部73から一端側が固定される支持バー75と、先端にカッターが設けられた蓋板77とで構成される。尚、固定形壁部74は、必須な構成部位では無く、第2適用例と同じ形の背部72と開閉形壁部73による、L形の構成であってもよい。
この支持バー75には、第2適用例と同様に、少なくとも1台の前述した紙送り装置1が組み込まれ、長手方向に間隔を空けて2列に配置される複数の保持部42が設けられている。また、1列の保持部を有する紙送り装置を2台配置する構成、又は、それぞれに1列の保持部を有する、1台の紙送り装置及び1台の従紙送り装置を組み合わせて構成してもよい。この支持バー75も前述した第2適用例と同様に、開閉形壁部73に回転可能に設けられている回転取り付け台78に取り付けられている。この回転取り付け台78は、ロール紙100を支持バー75へ装着する際のストッパとして機能する。
背部72は、壁等に取り付けるための背面側が平坦な形状である。開閉形壁部73は、背部72の端部にヒンジ76等で接続され、側方に例えば、90°までの範囲で回動可能に設けられている。この回動構造は、ロール紙100の交換のための構造である。
また、蓋板77は、背部72の上側に配置される。ロール紙100の交換を容易にするために、開閉形壁部73を開けた際に、蓋板77を突き上げて、先端側(カッター側)を上方に上げて、一時的にロックさせる突き上げ機構81が背部72に設けられている。または、前述した第2の適用例と同様に、手で蓋板77を先端を上方に持ち上げた際に、先端が上方に向いた状態で係止する突起部63aと同様な突起部を固定形壁部74に形成してもよい。
この突き上げ機構81は、突き上げピン83と、スプリング(コイルバネ)84と、永久磁石85とで構成される。突き上げ機構81は、背部72の開閉形壁部73と近接する位置に形成されたブロック82の孔の中に、金属又は磁石からなる突き上げピン83と、突き上げピンを押し上げるスプリング84とが配置され、開閉形壁部73に永久磁石85が配置される。永久磁石85は、開閉形壁部73側に配置される。
開閉形壁部73を背部72に閉じた状態の時に、突き上げピン83と永久磁石85とが近接する位置に配置され、永久磁石85の磁力により、背部72内の突き上げピン83を吸着して移動しないように、その位置を保持する。通常の使用時においては、突き上げピン83は、蓋板77に押し下げられて、永久磁石85に吸着され、スプリング84が縮んだ状態となっている。
ロール紙100の交換時に、開閉形壁部73を背部72から開くように回動させると、永久磁石85が突き上げピン83から離れ、磁力による束縛から開放されて、縮んだスプリング84が延びて、突き上げピン83が突き出され、ホルダー71の蓋板77の先端側が上方に押し上げられる。
次に、ロール紙100を支持バー75に装着した後、開閉形壁部73を背部72に戻し、蓋板77を手で押し下げる。この時、蓋板77により突き上げピン83がブロック82内に押し戻されてスプリング84が縮んだ状態となる。この状態において、永久磁石85が突き上げピン83を磁力により吸着して、突き上げピン83の位置を保持し、ホルダー71の蓋板77がロール紙100に接した状態を保持する。
また、突き上げ機構81の変形例としては、スプリング84に代わって、ワイヤを用いた構成であってもよい。即ち、金属等の重量がある材料により突き上げピン83を形成し、突き上げピンの底部にワイヤの一端を連結する。背部72のブロック82の孔に、底部側から突き上げピン83を差し入れて、孔の開口からワイヤが延び出た状態にする。ワイヤの他端を開閉形壁部73に連結する。この構成により開閉形壁部73が開かれた際に、ワイヤが引かれて、突き上げピン83が底側から引き上げられて突出し、蓋板77を押し上げる。開閉形壁部73を元の位置に閉じると、突き上げピン83の自重により、ワイヤと共にブロック82の孔内で下降し、元の位置に復帰する。
尚、この第3適用例の開閉形壁部73は、前述した第2適用例の固定形壁部63に適用することが可能であり、開閉形壁部73に変更することもできる。即ち、第3適用例の開閉形壁部73を設けることは、必須ではなく、開閉形壁部73の一方を設けた構成であってもよい。
この第3適用例によれば、紙送り装置1がロール紙100のホルダー71と一体的に構成されているため、盗難や紛失の虞がなく、公共施設及び共有施設のトイレ等に適用することができる。また、電源供給や電池交換が難しい環境下の施設においても簡易に設置することができる。さらに、開閉形壁部73が前方に開き、且つ全開しなくとも、ロール紙100の交換が容易にできるため、狭い設置スペースでもホルダーを設置することができる。
さらに、ロール紙100の芯の端部に変形や凹みが生じていた場合でも、カタカタ音を発生させずに、静かにロール紙100を引き出すことができ、周囲の利用者に対して気を使うことないため、公共施設及び共有施設のトイレに好適する。
また、ホルダー71は、固定形壁部74を無くして、開閉形壁部73によるL形に構成した場合には、開閉形壁部73を開いた状態で、前方からロール紙100の交換ができるため、固定形壁部74を設ける側が室壁であっても設置することができる。
さらに、突き上げピン83とホルダー71の蓋板77とを連結部材(図示せず)で連結すれば、ロール紙100を使用する状態のホルダーにおいては、永久磁石85が突き上げピン83を吸着していることで、ホルダー71の蓋板77が固定されることとなるため、使用者が蓋板77を手で押さえなくとも引き出したロール紙100を切り取ることができる。よって、ウイルスが付着しやすいトイレ内においては、ロール紙を引き出す際に、他人が触っていると想定されるホルダーの蓋板に触らずに、ロール紙の先端を掴み、切り取ることができ、衛生的である。
[第4適用例]
また第4の適用例として、図10に示すように、前述したホルダー71の固定形壁部74内には、音声部86が備えられる。勿論、ホルダー61の固定形壁部63又は、ホルダー71の開閉形壁部73に対しても適用することができる。音声部86は、音楽や音声ガイダンスを発する。図11に示すように、音声部86は、筐体87に収納され、固定形壁部63又は固定形壁部74内に脱着できる構成である。この音声部86は、コネクタ部90、制御部91、記憶部92、音声再生部(増幅)93、電源部94、スピーカ95、スイッチ96、表示部97、及び赤外線センサ98を備えている。筐体87は、固定形壁部74に対して、一体的になるように取り付けることができる。筐体87にカギ部を設けて、カギの所有者のみが脱着することができるようにしてもよい。音声再生部(増幅)93は、制御部91に含まれてもよい。
音声部86の構成について説明する。まず、コネクタ部90は、例えば、USBコネクタであり、外部パソコン300や図示しないUSBメモリと接続し、データの通信を行う。制御部91は、音声部の各構成部を制御し、例えば、CPU等で構成され、データのやり取りや電源管理を行う。記憶部92は、音楽データ、音声ガイダンスデータ及び、制御データの書き込み、読み出し、消去が可能な不揮発性の半導体メモリ素子であり、例えば、EEPROM(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory)[登録商標]やフラッシュメモリ等が適用できる。尚、音声部86のデータ源としてUSBメモリを利用し、USBメモリを差し込んだまま使用する場合には、記憶部92は必須ではない。音声再生部93は、記憶部92から読み出された音楽データや音声ガイダンスデータを増幅して、スピーカ95に出力する。
さらに、電源部94は、電源として、乾電池又は充電池を用いている。リチウムイオン電池等の充電池の場合には、コネクタ部90に接続された外部のパソコン又は、外部の充電器により充電を行う。また、アンテナ等を設けて、ワイヤレス充電を可能にしてもよい。スピーカ95は、小型スピーカであり、音声再生部93から出力された音楽データや音声ガイダンスデータを音として発する。スイッチ96は、例えば、電源スイッチ機能と、再生するデータを選択する選択スイッチ機能、及び、スピーカ95から出力される音量を調整する音量調整機能を有する。また、使用者がスイッチ96をオン・オフすることも可能である。表示部97は、簡易な構成であれば、例えば、複数の発光ダイオードで構成されたインジケータであり、電源部94における電池の残容量や充電状態と、スイッチ96のオン・オフを示している。電池の残容量が閾値以下になった場合には、点滅灯により、充電又は電池交換を促す。または、表示部97を液晶ディスプレイにより構成してもよく、再生するデータの選択表示(文字・数字表示)や電池の残量、充電状態等を表示してもよい。
赤外線センサ98は、ロール紙100のホルダーがトイレ内に配置された場合には、検出対象である利用者がトイレ内に入室(近接)したこと及び退出(離間)したことを検知する。赤外線センサ98が検出対象を検出した後、制御部91が待機状態から起動状態へ移行し、自動的に音楽データや音声データを再生し、音をスピーカ95から出力する。その後、赤外線センサ98が検出対象を検出しなくなった際には、再生を停止し、起動状態から待機状態に移行して、消費電力を低減する。基本的には、赤外線センサ98が近接した検出対象を検出している間は、音声再生部93が音楽データや音声ガイダンスデータを含む音声データを再生し、検出対象が離間して、検出されなくなった時に、音楽データや音声データの再生を停止する。例えば、トイレ室内に利用者が入室すると共に、音楽データや音声データの再生を開始し、トイレ室内から利用者が退室すると共に、その再生を停止する。尚、前述したように、使用者がスイッチ96をオフして、再生される音楽やガイダンスの出力を停止させることもできる。
このように構成された音声部86は、ロール紙のホルダーから取り外されて、外部パソコン300にコネクタ部90を通じて、例えば、USBケーブル等でケーブル接続される。記憶部92には、所望する音楽の音楽データを記憶させることができる。また、排便時に発生する音を目立たなくするために重畳させる打ち消し音の音データを記憶させてもよい。さらに、記憶部92に記憶される音声データとして、例えば、空港や公共施設のトイレにホルダーを設置した場合であれば、複数国の言語でトイレの使用方法、諸注意等を音声ガイダンスしてもよい。また、音声データは、商店や飲食店の店舗トイレにホルダーを設置した場合であれば、推奨する商品紹介、特売案内や店舗コマーシャル等をガイダンスしてもよい。また、音楽データは、音楽だけではなく、自然界に発生する音(例えば、波の音、虫や鳥等の鳴く音等)、及び人工的に作成した音等のデータを含むものとする。
さらに、通信部として、無線LAN機能又は、ブルートゥース(登録商標:Bluetooth)機能を備えさせて、ケーブル接続せずに無線通信によって、記憶部92に記憶される音楽データや音声データを書き換えることも可能である。
以上説明した実施形態及び適用例の紙送り装置は、ロール紙100(トイレットペーパーやキッチンペーパー等)に適用できるだけではなく、他にも、外側から引き出すように巻回されたものに対して適用することが可能であり、例えば、テープ(紙、布、樹脂等)、シート、粘着テープ、ロール状食品用ラップ、さらには、スプールに巻回されたもの、例えば、糸、線材(導線や針金等)、ケーブル、紐、ロープ、ホース及び電線等を含む。
以上説明した本発明の実施形態及びいくつかの適用例は、限定されるものではない。実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上述した実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出される。また、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出される。