JP6903317B2 - 神経障害性の疼痛治療支援システム及び疼痛治療支援用画像生成方法 - Google Patents

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本発明は、神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に生成する四肢の画像によって、視覚フィードバックを提供する疼痛治療支援システム及び疼痛治療支援用画像生成方法に関するものである。
一般に、痛みには、火傷、打撲などの侵害受容性疼痛と、いわゆる幻肢痛、視床痛など、神経の切断・圧迫に起因する神経障害性疼痛がある。後者については、痛みの発生機序が完全に解明されていないものの、脳内の知覚系と運動系の情報交換の異常であると考えられている。
前記神経障害性の疼痛緩和の治療方法としては、痛み止めの薬剤投与による薬物療法のほか、外科的な手術による治療法がある。しかし、前者は対処療法であり、副作用等の懸念もあり、後者は、侵襲性の高い治療となるため、患者の身体的負担が大きい。そこで、副作用の懸念がなく、非侵襲性の治療方法としてリハビリ治療が注目されている。
この種の治療方法として、古くは「ミラーセラピー」という鏡を用いたリハビリ療法が提案されていた。これは、鏡に映した健肢の反転像の動作を患者が観察することにより、当該患者の脳内で、あたかも患肢が健肢同様に動いているという視覚フィードバック情報を伝達し、前記情報交換の異常を是正するというものである。
従来、かかる「ミラーセラピー」の原理を応用して、仮想空間内に健肢と患肢を生成する治療支援装置又は治療支援方法が提案されていた。
例えば、位置センサによって患者の姿勢等を検出し、これに基づいて所定作業を実行する当該患者の動きに対応する幻視画像を、仮想空間において提示し、患者は、幻視画像を高い臨場感で視覚的に認識する一方で、視覚と触覚等とのギャップを学習することにより、患者の脳が「幻肢は存在しない」と結論付けることを誘導させることができる疼痛治療支援装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。 この構成によれば、前記ミラーセラピーのように、健肢と患肢が鏡像対称な単純かつ恣意的な動きに限定されず、臨場感があり、より自然でかつ多様なリハビリ環境を設定することがで、高い治療効果が期待できる。
また、麻痺した手に設置されたマークを撮影し撮影した撮影画像を出力するカメラと、撮影画像を入力しマークを用いて麻痺した手の位置を認識する位置認識部と、麻痺した手が動く動画を出力する画像形成部と、麻痺した手に重ねて動画を表示するヘッドマウントディスプレイと、を備えたリハビリ装置が提案されていた(例えば、特許文献2参照。)。この構成では、直接的にミラー相当の画像を使用していないものの、麻痺した手の画像に健肢状態の手の画像を重ねて表示する点では、基本的にミラーセラピーの原理を応用したものと考えられる。
なお、いわゆる前記ミラーセラピーの原理を応用し、拡張現実、仮想現実技術によって、運動遂行にかかわる中枢と抹消の神経回路を再活性化し、上肢切断後に書き換えられた大脳皮質のマップを修正することにより、幻肢痛の軽減を試みた実験によれば、評価指標として、Nemerical rating scale(NSR、スコアは0〜10)を用いた評価を行ったところ、所定のセッションの終了時、32%の改善が見られたとの報告がなされている。(例えば、非特許文献1参照。)
特許第4025230号公報 特開2015−39522号公報
Max Ortiz-Catalan et al.「The LANCET Vol.388/Phantom motor execution facilitated by machine learning and augmented reality as treatment for phantom limb pain: a single group, clinical trial in patients with chronic intractable phantom limb pain」December 10,2016,2885-2894
当該患者の脳内で、あたかも患肢が健肢同様に動いているという視覚フィードバック情報を伝達し、前記情報交換の異常を是正するという前記ミラーセラピーの原理が、神経障害性の疼痛改善に効果があるとすれば、先行技術のように、臨場感、リアリティがあって、没入感がある仮想空間内でのリハビリは非常に有効な手段と考えられる。
ところで、前記神経障害性の疼痛を有する患者が、脳内で捉えている患肢の形状のイメージは患者によって異なる。したがって、この形状イメージは、欠損前の健肢の状態、又は欠損した断端に単純に手足部が結合された状態とは限らない。また、形状のみならず、患肢の動きも、健肢同様の動きを意図していても、前記患者の脳内では、異なる動きとなる場合がある。さらに、リハビリの進度に応じて前記イメージも変化するため、常時、同じ状態とは限らない。リハビリ中も、患肢のイメージが、あらかじめ設定された形状のままでは、リアルタイムで変化する患肢のイメージ、あるいはリハビリの目的に合致しない患肢でリハビリを進めることとなる。
しかし、前記先行技術は、ミラーセラピーの原理を踏襲しており、仮想空間で患肢を表示する場合、基本的に健肢の反転画像を前提としている。特許文献1にかかる先行技術では、患肢(幻肢)のイメージをあらかじめ患者からヒアリングして形状を決定することが示唆されているが、具体的にどのような構成、又は方法で形状を決定するのかについて開示はされていない。前記した通り、仮想空間を利用した前記疼痛治療は、臨場感、リアリティが有効な効果を奏することが確認されているため、仮想空間内の患肢が、患者のイメージと異なる場合、十分な改善効果が期待できないおそれがあった。
本発明は、上記課題を解消させるためのものであり、患者の脳内でイメージする患肢の形状、動きを仮想空間内で正確に再現するとともに、リハビリ中に、リアルタイムで、所望の形状、動きに患肢を調整可能とする疼痛治療支援システム及び疼痛支援用画像生成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成させるために、本発明にかかる疼痛治療支援システムは、神経障害性の疼痛を訴える患者が立体視可能な仮想空間を生成し、前記患者の現実空間における肢体を検出して前記仮想空間内で再現するために位置及び大きさを算出し、算出された位置及び大きさに基づいて、前記仮想空間内に、前記健肢と非対称であって、前記患者の脳内で知覚する仮想患肢を設定することにより、前記肢体の画像を生成し、生成された画像は、前記仮想空間内で前記患者が視認可能に表示され、患肢は現実空間における健肢の動作に対応して動画として表示されるとともに、その動作範囲を調整可能とすることを最も主要な特徴とする。
すなわち、幻肢痛、視床痛、その他神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に生成する肢体の画像によって、視覚フィードバックを提供する疼痛治療支援システムであって、
前記患者が立体視可能な仮想空間を生成する仮想空間生成手段と、
前記患者の現実空間における患肢及び患肢に相対する健肢から構成される肢体を検出する検出手段と、
前記検出された肢体の位置及び大きさを前記仮想空間内で視認可能に再現するために算出する演算手段と、
前記算出された位置及び大きさに基づいて前記仮想空間内に前記肢体の画像を生成するとともに、少なくとも、前記健肢と非対称であって、前記患者の脳内で知覚する患肢を前記患者の主訴又は愁訴に基づいて設定する画像生成手段と、
前記画像生成手段によって生成された前記肢体の画像データは、各患者にユニークなIDデータと対応させて記憶するとともに、患肢の現状の位置と健肢としての理想の位置を示すデータを対応させて記憶する記憶手段と、
前記患者の現実空間における健肢の動きに対応した患肢の動きを、前記仮想空間内において、前記設定された画像に基づいて動画として表示する表示手段と、
前記表示手段で表示された前記仮想空間内の画像環境、肢体の位置、大きさ及び患肢の動作を調整可能とする調整手段と、
を有し、
前記画像生成手段は、前記記憶手段に記憶されている画像データがある場合は、前記IDデータによって対応する画像データを読み出し、前記患者の主訴又は愁訴に変更がある場合に再設定を行うとともに、前記再設定された画像データを、前記記憶手段に記憶させる画像データとして更新し、前記記憶手段から前記患肢の現状の位置及び前記健肢としての理想の位置のデータを読み出し、両者を識別可能に重畳的に合成させ、前記表示手段は、前記合成させたデータを可視的に表示させることを特徴とする。
この構成によれば、健肢の反転画像をそそまま使用せず、患者の主訴・愁訴によって、仮想空間内の患肢を設定し、患肢の動作の調整が可能となる。通常、この種のリハビリは、複数回行われるため、この構成によれば、常に、患者の脳内にある最新の患肢のイメージに合致した患肢でリハビリを行うことができる。
前記演算手段は、前記現実空間における前記肢体のうち、少なくも、腕脚部の位置及び大きさを検出する第1検出手段と、手足部の位置及び大きさを検出する第2検出手段とから検出結果を受け取り、前記検出された各々の位置及び大きさから前記仮想空間内で視認可能に再現するための位置及び大きさを算出し、前記画像生成手段は、前記各々算出された位置及び大きさの腕脚部及び手足部の画像を合成させて前記肢体の画像を生成すればよい。
この構成によれば、仮想空間内の患肢を高精細に再現することが可能となる。
前記画像生成手段の設定は、少なくとも、前記仮想空間内の患肢の関節角度設定、患肢の腕脚部又は手足部の長手方向伸縮による長さ設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定のいずれか一つで設定可能であるとともに、前記設定された患肢の前記表示手段による表示後に、随時、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定ができるようにすればよい。
患者が脳内でイメージする患肢の形状は、例えば、健肢をモデルケースとして生成する場合、健肢に対して、角度、伸縮、拡縮のいずれかによって加工、修正して生成可能と考えられるため、この構成により、仮想空間内に、正確な患肢を再現することが可能になる。
前記調整手段は、前記仮想空間内で、現実空間の健肢の動作と同期して作動する患肢の可動域又は運動量を前記健肢の可動域又は運動量との関係で相対的に規制するようにしてもよい。
仮想空間内で、患者が、健肢の動きを模して患肢を動かす場合でも、患者の脳内では、健肢の動作と完全に一致しない。この構成によれば、患肢の動きを規制して調整するようにしているため、患者の脳内でイメージされた正確な患肢の再現を実現することができる。
上記目的を達成させるために、本発明にかかる疼痛治療支援用画像生成方法は、
幻肢痛、視床痛、その他神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に生成する肢体の画像によって、視覚フィードバックを提供する疼痛治療支援方法であって、
前記患者が立体視可能な仮想空間を生成するステップと、
前記患者の現実空間における患肢及び患肢に相対する健肢から構成される肢体のうち、腕脚部の位置及び大きさを第1検出とするとともに、手足部の位置及び大きさを第2検出として検出するステップと、
前記第1検出と第2検出の結果を受け取り、検出された各々の位置及び大きさを前記仮想空間内で視認可能に再現するために位置及び大きさを算出するステップと、
前記仮想空間内の患肢を設定する画像生成手段が、前記算出された位置及び大きさの腕脚部及び手足部の画像を合成させて前記仮想空間内に前記肢体の画像を生成するとともに、少なくとも、前記健肢と非対称であって、前記患者の脳内で知覚する患肢を前記患者の主訴・愁訴に基づいて設定した画像を生成するステップと、
前記生成された肢体の画像データを各患者にユニークなIDデータと対応させて記憶するとともに、患肢の現状の位置と健肢としての理想の位置を示すデータを対応させて記憶するステップと、
前記患者の現実空間内における健肢の動きに対応した患肢の動きを、前記仮想空間内において、前記設定された画像に基づいて動画として表示するとともに、前記設定されて仮想空間内に表示された患肢の位置、大きさ及び動作を調整するステップと、
を有し、
前記画像生成手段前記記憶されている画像データがある場合は、前記IDデータによって対応する画像データを読み出し、前記患者の主訴又は愁訴に変更がある場合に再設定を行うステップと、
前記再設定された画像データを前記記憶する画像データとして更新するステップと、
前記患肢の現状の位置及び前記健肢としての理想の位置のデータを読み出し、両者を識別可能に重畳的に合成させるステップと、
前記合成させたデータを可視的に表示させるステップとを有することを最も主要な特徴とする。
前記画像生成手段の設定は、少なくとも、前記仮想空間内の患肢の関節角度設定、患肢の腕脚部又は手足部の長手方向伸縮による長さ設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定のいずれか一つで設定するとともに、前記設定された患肢の表示手段による表示後に、前記患者が、設定された患肢を視認している状態で、随時、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定の変更を行うようにしてもよい。
この構成によれば、例えば、患者のリハビリ中に、患者の患肢を注視しているときに、リアルタイムで患肢を健肢の形状に近づけることができる。
本発明にかかる疼痛治療支援システム及び疼痛治療支援用画像生成方法は、患者の脳内でイメージする健肢とは非対称な患肢の形状、動きを仮想空間内で正確に再現することができるため、臨場感、リアリティのある画像が表示でき、飛躍的な疼痛改善が期待できるという効果を奏する。
さらに、リハビリ中に、リアルタイムで、所望の形状、動きに患肢を修正可能とするため、理想的な形状、動きへの到達を促進し、リハビリ期間の短縮にも貢献するという効果を奏する。
図1は、本発明にかかる疼痛治療支援システムのブロック構成図である。 図2は、本発明にかかる疼痛治療支援システムで生成される仮想空間の構成例を示した図である。 図3は、仮想空間内の患肢の設定作業画面を示した図である。 図4は、肢体の三次元モデル画像例を示した図である。 図5は、仮想空間の画像上に患肢の位置、動作を調整するスライダを設けた例を示した図である。 図6は、患肢の動作調整を示した図であり、(a)は、患肢の可動域の調整例を示したもの、(b)は、患肢の運動量の調整例を示したものである。 図7は、患肢について、リハビリの到達目的画像と脳内イメージの画像とを重畳的に表示した図である。 図8は、本発明にかかる疼痛治療支援方法のフロー図である。
図1を参照して、1は、本発明にかかる疼痛治療支援用画像生成システムである。疼痛治療支援システム1は、幻肢痛、視床痛等、神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に当該患者が、恰も、自分の意思によって患肢を動かしているように視認できる動画を再生し、これを視認した前記患者の脳に視覚フィードバックを提供するものである。
疼痛治療支援システム1は、前記神経障害性の疼痛を訴える患者Pの動きを捕捉するモーションキャプチャ技術を利用したものである。モーションキャプチャ技術は、人など動体の動きをデジタル化して、現実空間の動作を仮想空間上でリアルタイムに再現するものである。モーションキャプチャ技術は、多様な方式があるが、本発明にかかる疼痛治療システムは、特定の方式に限定するものではない。ただし、神経障害性の疼痛治療という目的から、患者Pの動きを捕捉して、仮想空間上でリアルタイムかつ高精細に再現し、直ちに患者Pが、その動きを視認できるように視覚フィードバックする必要があるため、光学式のものが好適である。光学式のモーションキャプチャ技術としては、動体の動作の特徴点(人の場合、例えば、関節部分)にマーカを付け、これを光学式に検出して計測するものが一般的であるが、近年、動体にマーカを付さずに、赤外線レーザを一定範囲に照射し、細かな点が分布した環境を生成し、動体が動くことにより、前記照射エリアの点の分布が変化するため、かかる変化から、動きを捕捉する深度センサを利用するモーションキャプチャ技術がある。以下、本実施形態では、一例として、かかるマーカレスのモーションキャプチャ技術を前提として説明する。
また、以下では説明の便宜上、明示的に特定しない限り、上肢の一方に患肢がある場合について説明するが、四肢いずれが患肢の場合であっても、本発明にかかる疼痛治療支援システム及び疼痛治療支援方法を適用することができ、同様の手法で治療(リハビリ)を実行することができる。
疼痛治療支援システム1は、患者Pの肢体を検出する検出手段を有するが、本実施の形態では、第1検出部11と第2検出部12とを備える。第1検出部11及び第2検出部12は、検出対象となる四肢の動きから、現実空間における当該四肢の存在を検出するものである。ここで、第1検出部は、上肢のうち、腕部の動き、すなわち、肩の屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋、肘の屈曲・伸展、前腕の回内・回外等、比較的大きな動きを検出するものである。一方、第2検出部は、手部の動き、即ち、掌の屈曲・伸展・橈屈・尺屈、各指の屈曲・伸展・屈曲等、比較的細かな動き(個々の指の動き)を検出するものである。なお、下肢の場合は、第1検出部11が脚部の動き、第2検出部12が足部の動きを検出する。第1検出部11及び第2検出部12は、ともに、前記した通り、モーションキャプチャ技術を利用したものであり、好ましくは赤外線照射部と赤外線受光部によって患者Pの腕部及び手部の動きを捕捉するものであればよい。ただし、例えば、第1検出部11は、有効距離を0.8乃至4mレベル、認識精度を1mm単位レベルとし、第2検出部12は、有効距離を2.5乃至60cmレベル、認識精度を1/100mmレベルとするように、検出対象によってセンサの認識範囲は異なるものとなる。
前記検出された肢体は、仮想空間生成部13で生成された仮想空間内において再現される。図2に、仮想空間Vの構成例を示す。仮想空間Vは、患者Pが立体視可能に形成されており、後述するように、生成された仮想上肢Vhが動画として反映される。そして、仮想空間Vに臨む患者Pの視線を仮想上肢Vhに誘導させる仮想誘導ボックスVbと、健肢と患肢を仕切る仮想仕切体Vpと、仮想上肢Vhの動きを客観的に視認する仮想ミラーVmと、仮想上肢Vhで掴む、転がす、等の動作支援用の仮想ツールVsと、リハビリ時間を確認するための仮想時計Vwと、から構成されている。なお、仮想空間Vは、リハビリの訓練メニューなどによって多様であるため、複数の異なる仮想空間を生成し、後述する記憶部16に登録しておいてもよい。さらに、視覚だけではなく、聴覚刺激機能として、集中力をあげる効果音を生成してもよい。効果音を出すことにより、副交感神経を優位にし、リハビリへの集中力を促進する効果が期待できる。具体的には、雨音、雑踏音のほか、仮想ツールVsを転がしたとき、落としたときの音を生成してもよい。
図1に戻り、第1検出部11及び第2検出部12で検出された上肢の動きに基づき、演算部14は、患者Pの上肢を仮想空間Vで仮想上肢Vhとして再現するために、患者Pの現実空間における肢体の位置及び大きさを算出する。算出方法は、仮想上肢Vhが、仮想空間V内で立体画像として違和感なく再現できるようにするものであれば特に限定しないが、前記深度センサによって検出された平面上の上肢の情報を3次元画像として再現する透視投影変換に従って算出すればよい。すなわち、あらかじめ前記深度センサの視野角で設定したパラメータを用いて、前記検出した画像上の点の深度(奥行)を三角測量によって算出すればよい。
演算部14で算出された位置、大きさに基づいて、仮想空間生成部13で生成された仮想空間Vに仮想上肢Vhを表示するために、画像生成部15で仮想上肢Vhの設定を行う。
一般に、神経障害性の疼痛を訴える患者Pが自己の脳内でイメージする患肢の外形は、相対する健肢と同じではなく、非対称である。(ここで、「相対する健肢」とは、例えば、右上肢が患肢の場合、左上肢の健肢を指す、というように、左右四肢のうち、左右一方の患肢に対応する左右他方の健肢を意味する。)従って、従来、例えば、疼痛緩和の手法として提案されていたミラーセラピーのように、健肢の反転画像で患肢を表示しても、患者Pの脳内の患肢のイメージとの間にギャップが生じる結果、前記反転画像を見ても効果的な視覚フィードバックが得られないという問題があった。そこで、画像生成部15の仮想上肢Vhの設定は、患者Pの脳内で知覚する患肢を、患者Pの主訴、愁訴に基づいて相対する健肢とは非対称的に設定する。なお、患者Pの主訴、愁訴に基づくこととしたのは、患者Pが、脳内でイメージする患肢を必ずしも、的確に表現できるとは限らないため、場合によっては主訴・愁訴に対して、過去の設定事例を参考にしつつ、設定内容を補足する可能性もあるからである。
図3は、前記患肢の設定を行うための画面例である。前記検出された患者Pの肢体は、演算部14で算出され、画像生成部15で生成されたグラフィック画像で再現され、グラフィック化された肢体の画像上に重ねて、肢体の動作ポイントを明確にするために、関節部分を球体(ジョイント)とし、関節間をつなぐ上腕骨、大腿骨のような部分を棒状体(ジョイントチェーン)とし、全体を簡略化したスケルトン画像に変換する。患肢として設定するジョイントの色を赤色とし、患者Pの主訴・愁訴をヒアリングしながら、例えば、ジョイントチェーンを長手方向に伸縮させて、肢体全体のバランスから見て、患者Pが脳内でイメージする患肢の長さを設定する。図3のC1は正面斜視図、C2は背面図、C3は患肢側(右上肢)側面図を例示的に示したものであるが、画面上で、マウスなどのポインティングデバイスを用いて任意の方向から見えるように回転自在に操作可能になっている。
C2の背面図からも明らかなとおり、本実施の形態では、右側上肢が、健肢である左側上肢よりも長いイメージで設定されているが、当然に、左右上肢、下肢いずれも、患肢として設定することができる。また、本実施例では、前記ジョイントチェーンの長手方向の伸縮例を示したが、他に、患肢の関節角度設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定も可能であり、これらの設定を複数組み合わせた設定(例えば、関節角度、ジョイントチェーンの伸縮・拡縮を合わせて行う設定)も可能である。さらに、本実施例では、第1検出部11による腕部の検出に基づく設定であるが、第2検出部12による手足部の検出基づく設定においても、上記各種設定が可能である(図示せず)。
上記実施形態では、患者Pの主訴・愁訴をヒアリングして患肢の設定の操作を行うようにしているが、仮想空間V内で図3のような設定画面を表示し、患者Pがこの仮想の設定画面上で患者P自らが仮想上肢Vhを使って患肢を設定するようにしてもよい。また、前記設定後、後述する表示部17で表示している状態で、随時、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定ができるようにしてもよい。
画像生成部15は、演算部14で算出された位置及び大きさの腕脚部及び手足部の画像を合成させて患者Pの肢体の画像を生成する。
前記画像生成部15で設定された患肢を含む肢体の画像は、表示部17によって仮想空間V内に表示さる。表示部17では、患者Pが現実空間で健肢を動かすと、仮想空間Vでも、同様に健肢が動き、表示部17を見ている患者Pは、恰も、現実空間の健肢の動きを見ているようになる。このとき、仮想空間V内では、前記設定した患肢が、前記健肢の動きに対応した動きをする。
図4で示す通り、表示部17で表示された患者Pの上肢は、左側上肢Vhlが患肢であり、右側上肢Vhrが健肢となる。左側上肢Vhlと右側上肢Vhrは、左右非対称であり、患者Pが脳内でイメージする患肢を再現したものとなっている。本実施の形態では、左側上肢Vhlの肩付近からすぐに手部が付いた状態のものを表示しているが、患者によっては、例えば、手部が胸部や腹部などに埋没している状態の患肢が脳内のイメージになっている場合もある。また、腕部が、健肢とは異なる方向に屈曲している状態の患肢が脳内イメージになっている場合などもある(図示せず)。
なお、表示部17を構成する機器は、立体映像の動画を表示できるものであればよく、特に限定しないが、効果的な視覚フィードバックが期待できるものとしては、動画を見る患者Pに没入感を付与する立体映像表示可能なヘッドマウントディスプレイが好適である。特に、広角視野で装着した頭部の動きに表示が追従するヘッドトラッキング機能を有するものが好ましい。立体映像の仕組みは、液晶パネルを左右分割し、左右の目で試聴するものであればよい。ただし、これに限定する趣旨ではなく、例えば、大型のスクリーンを使用したものであってもよい。
前記設定で患者Pの脳内にイメージされた患肢は、表示部17で再現されるが、仮想空間V内の画像環境、肢体の位置及び大きさの微調整を要する場合がある。例えば、表示部17での表示前に、前記第1検出部11と表示部17(ヘッドマウントディスプレイ)装着時の患者Pの目線との高さを水平位置に設置するために、三脚等で第1検出部11の高さ調節をするが、実際に表示部17で表示したときに、患者Pの目線から、上肢Vhの視認性を良好なものとするためにさらなる微調整が必要となる場合がある。また、仮想空間V内で仮想上肢Vhを表示した状態で、仮想上肢Vhを載せる机の位置などを前後左右に微調整する必要が生じる場合もある。
そこで、仮想空間V内の画像環境、肢体の位置、大きさを調整部18によって行うことができる。調整部18は、例えば、図5で示す通り、仮想空間V内の患者Pの肢体を表示した画面上にスライダを設け、スライダの操作によって調整すればよい。本実施の形態では、画面下方の左右に、画面に対して縦方向と横方向にスライド可能な1対のスライダA1とA2を設けた例を示している。スライダA1とスライダA2は、例えば、一方が机の高さと奥行などの画像環境、他方が頭、肩などの肢体の位置、大きさを調整するものとすればよい。
ところで、前記した通り、一般に、患者Pの脳内でイメージする患肢は、相対する健肢と非対称であるが、その可動範囲、運動量も健肢と異なる。通常、ダメージを受けている患肢の可動範囲、運動量ともに、相対する健肢に比べて小さくなる。従って、表示部17で表示された画像(動画)は、仮想空間V内で患肢の動きを現実空間の健肢の動作と同期させて作動させる場合に、単純に健肢の動きを模した動きにすると、患者Pの脳内でイメージする患肢の動きを正確に表現したものにならず、効果的な視覚フィードバックを提供できない可能性がある。
そこで、調整部18は、患肢の動作も調整可能としている。本実施の形態では、図5で示す通り、1対のスライダA3を設けて、患肢の動作を調整できるようにしている。より具体的な例として図6で説明する。
図6では、患肢の動作を可動域と運動量の2つのパラメータで制限するようにしている。仮想空間V内の上肢Vhとして、右側上肢(健肢)Vhrと左側上肢(患肢)Vhlを示し、患肢Vhlは、健肢Vhrよりも腕部の長手方向の尺が短く非対称に表示されている。
図6(a)は、スライダA31によって、患肢Vhlの動作の可動域を設定する。健肢Vhrで肘関節Vjrを支点として動く前腕部の可動域をθ1とすると、患肢Vhlの肘関節Vjlを支点として動かす前腕部の動きを見ながら、スライダA31で調整して、可動域θ2をθ1よりも狭い可動域(θ1>θ2)となるように患肢Vhlの可動域を制限する。本実施の形態では、スライダA31のポインタが、可動域θ2がなす角度が100°であることを示している。(なお、健肢Vhrの可動域θ1は、例えば145°程度とする。)
図6(b)は、スライダ32によって、患肢Vhlの運動量を設定する。現実空間の健肢の動きを仮想空間Vの健肢Vhrから、肘関節Vjrを支点として前腕部が健肢Vhr’の位置まで動く運動量として再現されると、これに同期して患肢Vhlも肘関節Vjlを支点として前腕部が動くようになっている。この運動量を患者Pの脳内でイメージする患肢の運動量に設定するために、スライダA32を調整する。本実施の形態では、前記運動量の設定を50%に設定すると、健肢VHr’の動きに同期しながらも、患肢Vhlは、50%の運動量で患肢Vhl’の位置までしか動かないようになっている。
なお、スライダA31、A32は、無段階式にしているが、段階式のものであってもよい。ただし、無段階式に設定できるようにした方が、微調整できるため、患肢のリアルな動きを再現するためには好適である。
以上の通り、調整部18は、仮想空間V内の画像環境、肢体の位置、大きさの調整とともに、現実空間の健肢の動作と同期して作動する仮想空間V内の患肢の可動域又は運動量を前記現実空間の健肢の動きを再現した仮想空間V内の健肢の可動域又は運動量との関係で相対的に規制することができる。従って、患者Pの脳内でイメージしている患肢の外形、動作双方を正確に再現するため、良好な視覚フィードバックを提供することが可能になる。
図1に戻り、画像生成部15によって生成された肢体の画像データは、各患者PにユニークなIDデータと対応させて記憶部16で記憶される。画像生成部15は、記憶部16に記憶されている画像データがある場合は、前記IDデータに対応する画像データを読み出し、患者Pの主訴又は愁訴に変更がある場合に再設定を行う。前記再設定された画像データは、記憶部16に記憶させる画像データとして更新される。
なお、記憶部16に、仮想空間V内に設定した患肢の現状の位置と健肢としての理想の位置を示すデータを対応させて記憶し、画像生成部15が、記憶部16から前記現状の位置及び理想の位置のデータを読み出し、両者を識別可能に重畳的に合成させ、表示部17で、前記合成させたデータを可視的に表示させるようにしてもよい。具体的には、図7で示す通り、例えば、患肢が、上肢の長手方向で短いイメージである場合、患肢となる上肢Vh1を示すとともに、健肢の長さの上肢Vh2を重畳的に合成した画像で表示するようにすればよい。この場合は、上肢Vh1を着色又は半透明で表示し、上肢Vh2を透明で輪郭のみを実線又は破線で表示すれば前記識別可能な表示になる。このような画像を表示することにより、リハビリの目標として、患肢を上肢Vh2の位置、すなわち、健肢の位置に近づけるようにイメージすることができる。そして、患者Pの脳内の患肢のイメージを疼痛発症前の健肢に近い状態にし、脳内のイメージと視認するイメージを近づけることで、疼痛が改善される。
本実施の形態では、上肢又は下肢のいずれか一方が患肢で、相対する他方は健肢を例として説明したが、神経障害性の疼痛は、上肢双方又は下肢双方、あるいは四肢すべてが患肢の場合も発症する。そこで、仮想空間V内の肢体のうち、健肢については、現実空間の健肢に代えて、患者Pの所定のデータに基づいて生成された仮想健肢とし、前記仮想健肢の動きは、現実空間の患肢断端で筋電位信号を取得し、取得された筋電位信号に対応する動きを健肢の動きとして前記仮想空間内で再現するようにしてもよい(図示せず)。患者Pの前記所定のデータは、具体的には、例えば、患者Pの神経障害性の疼痛前の健肢の写真や動画から、健肢のサイズをデータ化したものなどであればよい。
疼痛治療支援システム1の具体的なハードウェア構成例としては、前記の通り、第1検出部11、第2検出部12として、赤外線照射部と赤外線受光部によって患者Pの腕部及び手部の動きを捕捉する深度センサであればよい。また、表示部17として、立体映像の動画が表示可能なヘッドマウントディスプレイなどであればよい。上記以外の仮想空間生成部13、演算部14、画像生成部15、記憶部16、調整部18は、各々の諸機能を発揮させる専用装置であってもよいが、好適には、中央処理装置(CPU)、メインメモリ、磁気ディスク、ディスプレイその他周辺機器から構成されるパーソナルコンピュータであればよい。前記CPUは、主として前記の各構成要素の動作を制御する。メインメモリは、CPUが実行する制御プログラムを格納し、CPUによるプログラム実行時の作業領域を提供する。磁気ディスクは、オペレーティングシステム、周辺機器のデバイスドライブ、本発明にかかる各種処理を行うプログラムを含む各種アプリケーションを格納する。なお、前記ディスプレイは、画像生成部15で実行する前記設定画面、調整部18で行う前記調整画面を表示する。
ただし、本発明では、比較的高精度の動きが要求される画像処理が必要となるため、立体映像の描画性能が高いグラフィックボード(GPU)を搭載したものが必要となる。また、CPUの負荷を分散させるため、第1検出部11、第2検出部12、及び表示部17側にもCPUを有するものを使用してもよい。
図8は、本発明にかかる疼痛治療支援用画像生成方法のフロー図である。まず、疼痛治療支援システム1を立ち上げると、すでに患者Pの仮想上肢が登録されているかどうか、すなわち、新規画像かどうかを判断する(S1)。新規画像の場合(S1のY)、仮想空間Vが生成される(S2)。仮想空間Vは、患者Pが行うリハビリメニューなどによって個々に生成するものであってもよい。仮想空間Vが生成されると、患者Pの肢体の検出を行う。本発明では、比較的大きな動きの腕部又は脚部と、比較的精細な動きの手部又は足部を各々の検出精度に応じて別個に検出する。腕脚部の検出の場合(S3のY)、腕脚部の動きを検出する第1検出を行い(S4)、腕脚部の位置・大きさを算出する(S5)。一方、腕脚部の検出ではない場合(S3のN)、手足部の動きを検出する第2検出を行い(S6)、手足部の位置・大きさを算出する(S7)。なお、第1検出、第2検出ともにモーションキャプチャ技術を利用し、好ましくは赤外線照射部と赤外線受光部によって患者Pの腕部及び手部の動きを捕捉するものであればよい。
S5、S7で算出された各々位置・大きさに基づき検出画像を合成し、仮想空間Vで表示できるように肢体の画像を生成する(S8)。生成された画像に対し、患者Pの脳内でイメージする患肢画像を設定する(S11)。
なお、新規画像ではない場合(S1のN)、当該患者PのIDを入力し(S9)、登録画像を読み出し(S10)、読み出された登録画像に対して、その時点で患者Pの脳内でイメージする患肢画像を再設定すればよい(S11)。
仮想空間V内に前記設定された患肢を動画として表示する(S12)。すなわち、設定された患肢を仮想空間V内で肢体の動作とともに動画として表示する。患肢の動作は、当該患肢に相対する健肢の動作と同期させたものである。
次いで、仮想空間V内の環境と前記肢体との位置関係を調整するとともに、健肢の動作と同期して作動する患肢の可動域及び運動量を前記健肢の可動域及び運動量との関係で相対的に規制する調整を行う。すなわち、仮想空間V内の画像環境、肢体の位置、大きさの調整の要否を判断し、調整が必要な場合(S13のN)、位置・大きさ等、具体的には、机の高さと奥行などの画像環境、頭、肩などの肢体の位置、大きさを調整する(S14)。調整が不要な場合(S13のY)、又は、位置・大きさ等の調整後、患肢の動作の調整の要否を判断する(S15)。患肢の動作の調整が必要な場合(S15のN)、患肢の動作、具体的には、患肢の可動域、運動量を調整する(S16)。
患肢の動作の調整が不要な場合(S15のY)、又は患肢の動作の調整後、リハビリを開始する(S17)。なお、本実施の形態では、位置・大きさ等の調整の要否判断の後に患肢の動作調整の要否を判断しているが、この工程は前後入れ替わってもよい。
所定時間のリハビリ後、患肢画像の設定の変更の有無について判断し、設定に変更があれば(S18のN)、登録画像を更新し(S19)、記憶させる。なお、S1において、新規画像の場合、S19の前記更新に代えて、当該患者PにユニークなIDを付して新規登録する(図示せず)。
患肢画像の設定変更がない場合(S18のY)、又は、前記登録を更新登録した場合、リハビリを終了する(S20)。
なお、前記患肢の設定は、少なくとも、仮想空間V内の患肢の関節角度設定、患肢の腕脚部又は手足部の長手方向伸縮による長さ設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定のいずれか一つで設定するとともに、前記設定された患肢の表示後に、患者Pが、設定された患肢を視認している状態、すなわち、リハビリの開始後、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定の変更を行うようにしてもよい。このような操作を行うことにより、リハビリ開始時点で、患者Pの脳内のイメージに対応した患肢を患者Pが見ている状態で強制的に健肢に近づけるように動かすことができ、前記脳内のイメージが健肢の状態の動作に近づき、良好な視覚フィードバックをもたらし、疼痛緩和に貢献するものと考えられる。
ここで、前記リハビリは、まず、患者Pが、前記設定した仮想空間V内の患肢の位置に、脳内でイメージしている患肢を重ねるようにする。本発明にかかる疼痛治療支援方法は、患者Pのイメージ通りの患肢を仮想空間V内に再現するため、患者Pは、脳内でイメージしている患肢が、あたかも実在しているものとして視認できる。このため、従来の仮想現実を利用した方法に比べて、違和感なくリハビリに集中でき、飛躍的なリハビリ効果が期待できる。次いで、患肢に集中しつつ、現実空間で健肢を動かす。仮想空間V内では、かかる現実空間の健肢の動きに同期して、患肢が動くため、患肢に注目して患肢を動かすイメージを持ち、患肢の動きを追いかける。このとき、患肢の動きを見失わないように、頭の位置を動かさず、なるべく目線のみを動かして追尾するとともに、仮想ミラーVmがある場合は、仮想空間V内の自己の患肢と仮想ミラーVm越しの患肢の双方を見ながら、動かして訓練を行う。
以上のような訓練を行うことで、患者Pはスムーズなリハビリを進めることができるため、高い疼痛緩和の効果が期待できる。
前記非特許文献1によれば、この種のシステムを利用したリハビリで疼痛緩和の効果は、前記のとおり、所定の痛み指数評価で32%の痛み軽減効果があるという報告がなされている。この数値は、従来技術の通り、患肢の生成を患者の脳内のイメージ通りに生成しないもの、すなわち、患肢を健肢の反転画像として生成し、患肢の可動範囲も健肢と同程度のものとした場合の評価である。この評価は、当該疼痛の軽減効果の指標値となる。ここで、本発明にかかる疼痛治療支援システム(方法)を利用した場合、表1で示す通り、30%以上の痛み軽減効果を得た被験者が46%となり、そのうちの半数以上が、痛み軽減率40%以上であり、前記指標値を大きく上回っていた。
Figure 0006903317
また、表2で示す通り、本発明にかかる疼痛治療支援システム(方法)を継続的に利用することにより、確実に痛み指数の合計が低くなっている。なお、訓練の11回目から14回目にかけて一時的に痛み指数の合計値が上がっているが、この時期は台風が到来していた。一般に、台風等、低気圧が近づくと交感神経が強まり、血管の収縮が引き起こされる。血管の収縮により、患肢の端面部分のカルシウムを中心とした塊がさらに血行を悪くさせ、筋肉の緊張が高まり、血流を悪くするため、周囲の細胞は酸素不足になり、ブラジキニンが溜まって、痛みが増強すると言われている。従って、上記一時的な痛み指数の合計値の上昇は、全体傾向から見て、異常値と考えられる。
Figure 0006903317
1 疼痛治療支援システム
11 第1検出部
12 第2検出部
13 仮想空間生成部
14 演算部
15 画像生成部
16 記憶部
17 表示部
18 調整部
V 仮想空間
Vh 仮想上肢

Claims (8)

  1. 幻肢痛、視床痛、その他神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に生成する肢体の画像によって、視覚フィードバックを提供する疼痛治療支援システムであって、
    前記患者が立体視可能な仮想空間を生成する仮想空間生成手段と、
    前記患者の現実空間における患肢及び患肢に相対する健肢から構成される肢体を検出する検出手段と、
    前記検出された肢体の位置及び大きさを前記仮想空間内で視認可能に再現するために算出する演算手段と、
    前記算出された位置及び大きさに基づいて前記仮想空間内に前記肢体の画像を生成するとともに、少なくとも、前記健肢と非対称であって、前記患者の脳内で知覚する患肢を前記患者の主訴又は愁訴に基づいて設定する画像生成手段と、
    前記画像生成手段によって生成された前記肢体の画像データは、各患者にユニークなIDデータと対応させて記憶するとともに、患肢の現状の位置と健肢としての理想の位置を示すデータを対応させて記憶する記憶手段と、
    前記患者の現実空間における健肢の動きに対応した患肢の動きを、前記仮想空間内において、前記設定された画像に基づいて動画として表示する表示手段と、
    前記表示手段で表示された前記仮想空間内の画像環境、肢体の位置、大きさ及び患肢の動作を調整可能とする調整手段と、
    を有し、
    前記画像生成手段は、前記記憶手段に記憶されている画像データがある場合は、前記IDデータによって対応する画像データを読み出し、前記患者の主訴又は愁訴に変更がある場合に再設定を行うとともに、前記再設定された画像データを、前記記憶手段に記憶させる画像データとして更新し、前記記憶手段から前記患肢の現状の位置及び前記健肢としての理想の位置のデータを読み出し、両者を識別可能に重畳的に合成させ、前記表示手段は、前記合成させたデータを可視的に表示させることを特徴とする疼痛治療支援システム。
  2. 前記検出手段は、前記現実空間における前記肢体のうち、少なくも、腕脚部の位置及び大きさを検出する第1検出手段と、手足部の位置及び大きさを検出する第2検出手段とから構成され、前記演算手段は、各々の前記検出結果から、前記仮想空間内で視認可能に再現するための位置及び大きさを算出し、前記画像生成手段は、前記各々算出された位置及び大きさの腕脚部及び手足部の画像を合成させて前記肢体の画像を生成することを特徴とする請求項1記載の疼痛治療支援システム。
  3. 前記画像生成手段の設定は、少なくとも、前記仮想空間内の患肢の関節角度設定、患肢の腕脚部又は手足部の長手方向伸縮による長さ設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定のいずれか一つで設定可能であるとともに、前記設定された患肢の前記表示手段による表示後に、随時、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定が可能であることを特徴とする請求項1または請求項に記載の疼痛治療支援システム。
  4. 前記調整手段の患肢の動作の調整は、現実空間の健肢の動作と同期して作動する前記仮想空間内の患肢の可動域又は運動量を前記現実空間の健肢の動きを再現した仮想空間内の健肢の可動域又は運動量との関係で相対的に規制するものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の疼痛治療支援システム。
  5. 前記肢体のうち、健肢については、現実空間の健肢に代えて、前記患者の所定のデータに基づいて生成された仮想健肢とし、前記仮想健肢の動きは、現実空間の患肢断端で筋電位信号を取得し、取得された筋電位信号に対応する動きを健肢の動きとして前記仮想空間内で表示することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の疼痛治療支援システム。
  6. 幻肢痛、視床痛、その他神経障害性の疼痛を訴える患者に対して、仮想空間に生成する肢体の画像によって、視覚フィードバックを提供する疼痛治療支援用画像生成方法であって、
    前記患者が立体視可能な仮想空間を生成するステップと、
    前記患者の現実空間における患肢及び患肢に相対する健肢から構成される肢体のうち、腕脚部の位置及び大きさを第1検出とするとともに、手足部の位置及び大きさを第2検出として検出するステップと、
    前記第1検出と第2検出の結果を受け取り、検出された各々の位置及び大きさを前記仮想空間内で視認可能に再現するために位置及び大きさを算出するステップと、
    前記仮想空間内の患肢を設定する画像生成手段が、前記算出された位置及び大きさの腕脚部及び手足部の画像を合成させて前記仮想空間内に前記肢体の画像を生成するとともに、少なくとも、前記健肢と非対称であって、前記患者の脳内で知覚する患肢を前記患者の主訴・愁訴に基づいて設定した画像を生成するステップと、
    前記生成された肢体の画像データを各患者にユニークなIDデータと対応させて記憶するとともに、患肢の現状の位置と健肢としての理想の位置を示すデータを対応させて記憶するステップと、
    前記患者の現実空間内における健肢の動きに対応した患肢の動きを、前記仮想空間内において、前記設定された画像に基づいて動画として表示するとともに、前記設定されて仮想空間内に表示された患肢の位置、大きさ及び動作を調整するステップと、
    を有し、
    前記画像生成手段は、前記記憶されている画像データがある場合は、前記IDデータによって対応する画像データを読み出し、前記患者の主訴又は愁訴に変更がある場合に再設定を行うステップと、
    前記再設定された画像データを前記記憶する画像データとして更新するステップと、
    前記患肢の現状の位置及び前記健肢としての理想の位置のデータを読み出し、両者を識別可能に重畳的に合成させるステップと、
    前記合成させたデータを可視的に表示させるステップと、を有することを特徴とする疼痛治療支援用画像生成方法。
  7. 前記画像生成手段の設定は、少なくとも、前記仮想空間内の患肢の関節角度設定、患肢の腕脚部又は手足部の長手方向伸縮による長さ設定、患肢の短手方向拡縮による幅設定のいずれか一つで設定するとともに、前記設定された患肢の表示手段による表示後に、前記患者が、設定された患肢を視認している状態で、随時、前記関節角度設定、長さ設定、幅設定の変更を行うことを特徴とする請求項6記載の疼痛治療支援用画像生成方法。
  8. 前記調整は、前記仮想空間内の環境と前記肢体との位置関係を調整するとともに、健肢の動作と同期して作動する患肢の可動域を前記健肢の可動域との関係で相対的に規制することを特徴とする請求項6または請求項に記載の疼痛治療支援用画像生成方法。



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