JP6900422B2 - オゾン層の観測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地球大気の成層圏に存在するオゾン層(成層圏オゾン)を観測する方法、特に、専用測定機器を必要とせず、簡単な方法で地上からオゾン層を観測する方法に関する。
地球大気の鉛直構造における成層圏には大気中のオゾンの9割が存在しており、それゆえ、この高度約10km〜50km付近に存在する高濃度オゾン分布帯はオゾン層と呼ばれている。このオゾン層は生物にとって有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護するという重要な役割を担っている。しかしながら、1970年代に冷蔵設備等の冷媒やプリント基板の洗浄剤、スプレーガス等に含まれているフロンによってオゾン層が破壊される可能性が指摘され、1980年代には南極上空でオゾンホールが確認されるなど、オゾン層の破壊は国際的な問題となった。これらを受けて、オゾン層を保護するため、フロン等のオゾン層破壊物質の世界的な規制が行われているほか、オゾン層の状況を把握するため、世界中でオゾン層の観測が定期的に行われている。
オゾン層の観測方法としては、ドブソン分光光度計による全量観測及び反転観測、気球を用いたオゾンゾンデによる直接観測(非特許文献1参照)、そして、人工衛星に搭載したオゾン層観測装置による観測(特許文献1及び非特許文献1参照)等がある。
他方、図7に示すように、月食の際に、月の欠け際、すなわち、本影Uと半影Pとの間の境界が青緑色の帯状に輝いて見える「ターコイズフリンジ」という現象が知られている。この現象は1978年に本発明者により発見され、報告された現象である(非特許文献2参照)。このターコイズフリンジTFは、月食の際、太陽光SBが成層圏のオゾン層OLを通過するときに、選択的に赤色を示す波長の光が吸収された結果、赤色の捕色関係にある青緑色の光が本影(地球の影部分)の縁に沿って見える現象である。
特開2003−84075号公報
"オゾン層の観測"、[online]、国土交通省 気象庁ウェブページ、[平成30年5月21日検索]、インターネット<URL:http://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-15ozone_observe.html> 三浦修、"月食の緑色異常色調"、第12回 日本アマチュア天文研究発表大会研究発表集録、日本アマチュア天文研究発表大会運営委員会、1979年10月、p.25−26
しかしながら、非特許文献1及び特許文献1に記載された従来のオゾン層の観測方法は、特別な専用測定機器や気球、人工衛星等を必要とするため、いずれも極めて高コストかつ専門的であり、その観測が実施できるのは気象台又は環境研究所等の一部の機関に限られている。それゆえ、個人的に又は学校等の教育現場等の身近な場において、手軽にオゾン層を観測することができず、オゾン層自体及びオゾン層をとりまく地球環境問題に対する興味や関心を持つことが難しくなっている。
他方、非特許文献2に記載された月食の際にみられる「ターコイズフリンジ」については、月食時の天文現象として観測されているのみである。
本発明は上述した点に鑑みなされたもので、その目的は、極めて低コストかつ簡単にオゾン層を観測することができるオゾン層の観測方法を提供すること、及び、それによって、オゾン層自体及びオゾン層の保護に対する関心を高めることにある。
本発明者は月食の際に生じるターコイズフリンジを初めて観測して以降、この現象に着目し、継続して観測を行ってきた。このターコイズフリンジは、1978年の時点では口径10cm程度の小型の天体望遠鏡を介した肉眼で容易に観測できていたが、1990年代以降は肉眼での観測は困難になっていた。近年では、高解像度のデジタルカメラが普及したことにより、肉眼に代えてデジタルカメラを介した画像によってターコイズフリンジを観測することができるようになった。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ターコイズフリンジが1990年代以降に肉眼では観測できなくなったことと、オゾン層の破壊が1980年代半ば以降から急激に進み、オゾン濃度が減少したことの関連性を見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するため、本発明のオゾン層の観測方法は、ターコイズフリンジを有する地球周回天体を、520〜650nmの緑色〜赤色系光の波長領域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第1のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影し、第1の撮像画像データを取得する第1の撮像工程と、ターコイズフリンジを有する地球周回天体を、400〜470nmの青色系光の波長帯域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第2のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影し、第2の撮像画像データを取得する第2の撮像工程と、第1の撮像画像データのRGB画素画像データのうち、R画素画像データを取得する工程と、第2の撮像画像データのRGB画素画像データのうち、B画素画像データを取得する工程と、第1の撮像画像データのR画素画像データにおいて、地球周回天体のターコイズフリンジを含む少なくとも一部の領域A1を選択し、選択領域A1のR画素の輝度値から選択領域A1の等級を第1の等級m1として求める工程と、第2の撮像画像データのB画素画像データにおいて、R画素画像データの選択領域A1と対応する領域A2を選択し、選択領域A2のB画素の輝度値から選択領域A2の等級を第2の等級m2として求める工程と、次式(1):
Figure 0006900422
(式(1)中、nはオゾンの濃度、αは光度比を吸光度に補正する係数、σは第1のバンドパスフィルタの通過帯域におけるオゾンのモル吸光断面積、lは太陽光線がオゾン層を通過した距離である。)により、オゾンの濃度nを求める工程と、を備えている。
ターコイズフリンジを有する地球周回天体を、オゾンによる弱い吸収のある緑色系光、橙色系光又は赤色系光の520〜650nmの波長の一部を通過帯域とする第1のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影することで、太陽光のうち、オゾン層を通過した際にオゾンに吸収されて減衰した光による第1の撮像画像データが得られる。他方、ターコイズフリンジを有する地球周回天体を、オゾンによる吸収がほとんどない青色系光の400〜470nmの波長の一部を通過帯域とする第2のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影することで、太陽光のうち、オゾンに吸収されることなくオゾン層を通過した光による第2の撮像画像データが得られる。そして、第1の撮像画像データから赤色系画素であるR画素画像データを選択的に取得することにより、オゾンに吸収されて減衰した光の輝度データを高い精度で得ることができる。また、第2の撮像画像データから青色系画素であるB画素画像データを選択的に取得することにより、オゾンに吸収されずにオゾン層を通過した光の輝度データを高い精度で得ることができる。得られた各画素画像データにおいて、ターコイズフリンジを有する地球周回天体に対応する部分の光を測光して等級を求めることにより、オゾンに吸収されて減衰した光の明るさ(光度)とオゾンに吸収されることなく、オゾン層を通過した光の明るさ(光度)との光度比がポグソンの式によって得られる。この光度比は、入射光の強度と媒質を通過した後の光の強度の比である吸光度に比例するものであることから、式(1)が導出され、この式(1)よりオゾンの濃度を求めることができる。
また、本発明のオゾン層の観測方法は、地球周回天体が国際宇宙ステーション(ISS)又は月であることも好ましい。地球周回天体として、周回軌道が正確に予測されており、観測も容易な天体が選択される。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する成層圏オゾンの観測方法を提供することができる。
(1)天体写真を撮影し、その撮像画像について天体画像解析ソフトウェアで画像処理を行うことでオゾン層の濃度を求めることができるため、非常に容易である。
(2)大掛かりな設備や専用測定機器が不要であるため、低コストにオゾン層の観測を行うことができる。
(3)地球周回天体として、月だけでなくISSも選択することができるため、地上からオゾン層の定期的な観察が可能である。
(4)水平方向に入射する太陽光の反射光を利用してオゾンの濃度を求めるため、オゾン層におけるオゾンの高度分布(鉛直方向の分布)を把握することができる。
本発明の第一の実施形態に係るオゾン層の観測方法を概略的に示すフローチャートである。 第一の実施形態に係るオゾン層の観測装置を概略的に示す図である。 第一の実施形態に係るオゾン層の観測方法を概略的に示す説明図である。 本発明の第二の実施形態に係るオゾン層の観測方法を概略的に示すフローチャートである。 第二の実施形態に係るオゾン層の観測装置を概略的に示す図である。 第二の実施形態に係るオゾン層の観測方法を概略的に示す説明図である。 月食の際のターコイズフリンジを示す説明図である。 実施例における測光工程で得られた(a)ISSのカウント値の変化を示すグラフ、(b)比較星ベガのカウント値の変化を示すグラフである。
以下、図1〜図3を参照し、本発明の第一の実施形態に係るオゾン層の観測方法について説明する。本実施形態では、地球周回天体9として、地上から約400kmの上空を周回する国際宇宙ステーション(ISS)を選択している。図1に示すように、本実施形態に係るオゾン層の観測方法は、ISSのターコイズフリンジ出現時刻を算定する工程S0、第1のバンドパスフィルタを用いて撮影されたISSの第1の撮像画像データに係る画像解析工程S1(工程S1a〜工程S1f)、第2のバンドパスフィルタを用いて撮影されたISSの第2の撮像画像データに係る画像解析工程S2(工程S2a〜工程S2f)、太陽光のオゾン層の通過距離を算定する工程S3及び上述した工程S1〜S3で得られたデータに基づいて、オゾンの濃度を算出する工程S4とから概略構成されている。また、各画像解析工程S1及びS2は、ISS及び比較星の撮影工程S1a及びS2a、各撮像画像データ取得工程S1b及びS2b、特定の画素画像データ取得工程S1c及びS2c、各画素画像データの一次処理工程S1d及びS2d、各画素画像データに基づくISSと比較星の測光工程S1e及びS2e、並びに、ISSの各等級算出工程S1f及びS2fとから構成される。
(ISSのターコイズフリンジ出現時刻の算定)
まず、ISSのターコイズフリンジ出現時刻を算定する工程S0について説明する。ISSは、地上から約400kmの上空を周回する地球周回天体であり、その周回軌道を計算することにより、地上の特定の場所でISSを観測可能な時刻及び方角を算定することができる。一例として、宇宙ステーション「きぼう」の観測に関する情報は、宇宙航空研究開発機構のウェブサイト(http://kibo.tksc.jaxa.jp/)で得ることができ、ウェブサイト画面上で観測地を選択すると、観測可能な時刻(見え始め・最大仰角・見え終わり)とその方角に関する情報を得ることができる。そして、ISSのターコイズフリンジ出現時刻については、月食同様にISSが地球の影に入った際又はISSが地球の影から出る際にISSにターコイズフリンジが現れることから、ISSの観測可能な時刻のうち、見え始め又は見え終わりの近傍の時刻が選択される。
(ISS及び比較星の撮影)
次に、ISSの撮影工程S1a及びS2aについて説明する。図2には、本実施形態で用いられる観測装置1が示されている。本工程S1a及びS2aで用いる撮像手段としては、デジタルカメラ2が選択されている。デジタルカメラ2は三脚5に固定して用いられるが、天体の日周運動により星が線状に流れるのを防ぐため、図2に示すように、赤道儀4を介してデジタルカメラを三脚5に固定することが好ましい。また、本実施形態では、撮影対象である地球周回天体9はISSであることから移動速度が速く、ターコイズフリンジが出現している時間は数秒間と短くなっている。そのため、図2に示すように、三脚5に固定されたデジタルカメラ2からなる撮像手段を2台用意し、各デジタルカメラ2に後述するパンドパスフィルタ3a、3bをそれぞれ取り付け、2台同時のタイミングでターコイズフリンジが出現しているISSを撮影する必要がある。2台のデジタルカメラ2の撮影タイミングを正確に同期させると共にブレを防ぐため、リモートレリーズ22を用いることが好ましい。また、撮影の際には、デジタルカメラ2内部のミラーの跳ね上げによるブレを防ぐため、ミラーアップ機能を設定して撮影を行うことが好ましい。また、後述する測光工程及び等級算出工程において、撮像画像データ中の等級が判明している恒星を比較星として利用するため、ターコイズフリンジが出現しているISSと比較星とが同じ写野に入るように各デジタルカメラ2で撮影する。比較星は、各デジタルカメラ2とも同じ星とする。なお、ターコイズフリンジが出現しているISSの周囲に適当な比較星がみられない場合には、別途、等級が判明している比較星を各デジタルカメラ2で撮影し、その撮像画像データを取得することにより測光工程及び等級算出工程で使用することができる。
本発明では、ターコイズフリンジを有する地球周回天体9について、所定の2種類のバンドパスフィルタ3(3a、3b)を介した撮像画像をそれぞれ取得することが重要である。そのため、本実施形態では、図2に示すように、各デジタルカメラ2のレンズ21に第1のバンドパスフィルタ3a又は第2のバンドパスフィルタ3bをそれぞれ取り付けて、地球周回天体9からの反射光RLのうち、特定の波長の光のみ通過した撮像画像を取得できるように構成している。所定の2種類のバンドパスフィルタ3とは、520〜650nmの緑色系光、橙色系光又は赤色系光の波長領域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第1のバンドパスフィルタ3a、400〜470nmの青色系光の波長帯域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第2のバンドパスフィルタ3bである。第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域は、オゾンによる弱い吸収がみられるシャピュイ帯の吸収ピーク(約570nm・約600nm)近傍の波長に相当する。それゆえ、図3に示すように、この第1のバンドパスフィルタ3aを介してISS9のターコイズフリンジを含む反射光RLを撮影することによって、太陽光SBのうち、オゾン層OLを通過した際にオゾンに吸収されて減衰した光による撮像画像データを得ることができる。第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域としては、シャピュイ帯の吸収ピークが約570nm及び約600nmであることから、通過帯域の中心波長が570±30nm及び600±30nmであるものが好ましく、後述するR画素画像データにおける輝度値への変換が精度よくなされる観点から、より赤色側の600〜620nmであることがさらに好ましい。なお、本実施形態においては、一例として、通過帯域の中心波長が600nmのバンドパスフィルタを第1のバンドパスフィルタ3aとして用いている。他方、第2のバンドパスフィルタ3bの通過帯域は、オゾンによる吸収がほとんどないか、非常に弱い波長である。そのため、この第2のバンドパスフィルタ3bを介してISS9のターコイズフリンジを含む反射光RLを撮影することによって、太陽光SBのうち、オゾンに吸収されることなくオゾン層OLを通過した光による撮像画像データを得ることができる。第2のバンドパスフィルタ3bの通過帯域としては、後述するB画素画像データにおける輝度値への変換が精度よくなされる観点から、通過帯域の中心波長がより青色側の450±20nmであるものが好ましく、オゾンのシャピュイ帯の低波長側に含まれないようにする観点から、440〜460nmであることがさらに好ましい。なお、本実施形態においては、一例として、通過帯域の中心波長が450nmのバンドパスフィルタを第2のバンドパスフィルタ3bとして用いている。なお、デジタルカメラ2のレンズ21の代わりに小型の望遠鏡を用いることもでき、その場合には、第1のバンドパスフィルタ3a及び第2のバンドパスフィルタ3bは望遠鏡とデジタルカメラ2との間、望遠鏡の接眼レンズ部分に取り付けて使用される。
ISS及び比較星の撮影に関する撮像手段2の設定は、通常の天体写真の設定と同様でよく、撮影環境や使用機材等により調整される。一例として、本実施形態では、デジタルカメラ2としてペンタックス(登録商標)K−5(リコーイメージング株式会社)に、35mmレンズを取り付けた機材を用いており、ISSのターコイズフリンジ出現時刻近傍に、ISO1600、撮影時間2秒、撮影間隔2秒にて連続撮影(インターバル撮影)を36回行っている。なお、撮像手段2の設定は2台の撮像手段2とも同じ設定であり、撮影時間及び撮影間隔についても2台の撮像手段2が同期しており、同時のタイミングでターコイズフリンジが出現しているISSを撮影している。また、デジタルカメラ2には、一般的なデジタルカメラのほか、冷却CCDカメラや冷却CMOSカメラ等の冷却カメラも含まれる。
(第1及び第2の撮像画像データの取得)
次に、第1の撮像画像データ取得工程S1b及び第2の撮像画像データ取得工程S2bについて説明する。この工程では、上述した撮影工程S1a及びS2aにおいて撮影されたISS及び比較星の撮像画像データが得られる。図2に示すように、本発明の観測装置1は、撮像手段2と、この撮像手段2に接続可能なデータ処理・演算手段6と、データ各種を格納するためのメモリ7とが備えられている。撮像手段2であるデジタルカメラにも通常メモリが備えられているので、デジタルカメラ2で撮影された画像データはカメラ内部にいったん格納され、その後の画像解析時に演算手段6及びメモリ7に格納されて使用される。ここで、第1の撮像画像データ及び第2の撮像画像データは、いずれも画像解析における精度を高めるため、RAWフォーマット形式によるRAW画像として取得することが好ましい。なお、本実施形態において、第1の撮像画像データ及び第2の撮像画像データという用語は、2台の撮像手段2によって同時のタイミングで撮影されて取得された一組の撮像画像データのことをいう。
(R画素画像データの取得)
次に、R画素画像データの取得工程S1cについて説明する。この工程では、上述した工程S1bで取得された第1の撮像画像データのRGBの各受光素子のデータから、R画素画像データが選択的に取得される。これによって、太陽光SBのうち、オゾン層OLを通過した際にオゾンに吸収されて減衰した赤色の光の輝度データを得ることができる。このR画素画像データは、後述するISSの測光等の解析を容易とするため、FITSフォーマット(天体画像用のフォーマット)形式で取得することが好ましい。一例として、raw2fits(星空公団、https://www.kodan.jp/)というソフトウェアを用いることにより、RAWフォーマット形式のデータをFITSフォーマット形式の画像データとして取得することができる。raw2fitsを用いて第1の撮像画像データ等のRAW画像をFITSフォーマット形式に変換すると、RAW画像のRGB画素画像データが受光素子ごとのデータに分割されてFITS形式に変換される。具体的には、RAW画像がベイリー配列(RGGB)によるRGB画素画像データの場合には、FITSフォーマット形式に変換すると、red(R画素)、blue(B画素)、green1(G1画素)、green2(G2画素)、green(G画素)の5つのフォルダに格納されたデータとして得られる。このデータのうち、red(R画素)のファイルには、FITSフォーマット形式に変換されたR画素画像データのみが格納されるので、このようにして、R画素画像データを取得することができる。
(B画素画像データの取得)
次に、B画素画像データの取得工程S2cについて説明する。この工程では、上述した工程で取得された第2の撮像画像データのRGBの各受光素子のデータから、B画素画像データが選択的に取得される。これによって、太陽光SBのうち、オゾンに吸収されることなくオゾン層OLを通過した光の輝度データを得ることができる。このB画素画像データは、上述した工程S1cにおけるR画素画像データと同様の方法により取得することができ、raw2fitsソフトウェアを用いることにより、第2の撮像画像データがFITSフォーマット形式に変換され、B画素画像データがblue(B画素)のファイルに格納されて得られる。
(R画素画像データの一次処理)
次に、R画素画像データの一次処理工程S1dについて説明する。本工程では、画像解析の精度を高めるため、R画素画像データ中に含まれるノイズや画像ムラの除去が行われる。まず、撮像手段2であるデジタルカメラの撮像画像には、暗電流によるノイズ(ダークノイズ)が含まれているため、ダークノイズの除去を行うことが好ましい。ダークノイズの除去方法としては、第1の撮像画像データを取得したときと同じ条件において、カメラレンズ21にキャップをかぶせるなど入射光がない状態で撮影したダークノイズの撮像画像データを取得し、この撮像画像データをFITS形式に変換してダークノイズのR画素画像データを取得する。以下式(2)に示すように、前述した第1の撮像画像データから得られたR画素画像データから、このダークノイズのR画素画像データを減算することによりダークノイズの除去が行われる。一方で、デジタルカメラの撮像画像には、デジタルカメラ2の受光素子やレンズ等に起因する画像ムラも含まれているため、この画像ムラの除去を行うことも好ましい。この画像ムラの除去としては、十分かつ均一な光が入射したときの画像(フラット画像)を撮影してフラット画像データを取得し、このフラット画像データをFITS形式に変換してフラット画像のR画素画像データを取得する。また、このフラット画像にもダークノイズが含まれているため、フラット画像の撮影と同じ条件でフラット画像のダークノイズの撮像画像データを取得し、この撮像画像データをFITS形式に変換してフラット画像のダークノイズのR画素画像データを取得する。以下式(2)に示すように、フラット画像のR画素画像データからフラット画像のダークノイズのR画素画像データを減算することにより、画像ムラに基づくR画素画像データが得られるので、この値でダークノイズが除去されたR画素画像データを除することにより、ノイズや画像ムラが除去されたR画素画像データが得られる。なお、一次処理工程S1dは実行することが望ましいが、画像解析を簡略的に行う場合には省略することも可能である。
Figure 0006900422
(B画素画像データの一次処理)
次に、B画素画像データの一次処理工程S2dについて説明する。本工程では、上述した工程S1d同様に、B画素画像についても画像解析の精度を高めるため、B画素画像データ中に含まれるノイズや画像ムラの除去を行う。除去方法については、上述したR画素画像データの一次処理工程S1dで説明した方法と同様に行うことができる。ダークノイズの除去方法としては、第2の撮像画像データを取得したときと同じ条件において撮影したダークノイズの撮像画像データを取得し、この撮像画像データをFITS形式に変換してダークノイズのB画素画像データを取得する。以下式(3)に示すように、前述した第2の撮像画像データから得られたB画素画像データから、このダークノイズのB画素画像データを減算することによりダークノイズの除去が行われる。また、画像ムラの除去としては、フラット画像を撮影してフラット画像データを取得し、このフラット画像データをFITS形式に変換してフラット画像のB画素画像データを取得する。また、フラット画像の撮影と同じ条件でフラット画像のダークノイズの撮像画像データを取得し、この撮像画像データをFITS形式に変換してフラット画像のダークノイズのB画素画像データを取得する。以下式(3)に示すように、フラット画像のB画素画像データからフラット画像のダークノイズのB画素画像データを減算することにより、画像ムラに基づくB画素画像データが得られるので、この値でダークノイズが除去されたB画素画像データを除することにより、ノイズや画像ムラが除去されたB画素画像データが得られる。なお、一次処理工程S2dは実行することが望ましいが、画像解析を簡略的に行う場合には省略することも可能である。
Figure 0006900422
上述した一次処理工程S1d及びS2dは、一例として、Makali`i(マカリ、国立天文台、http://makalii.mtk.nao.ac.jp/)というソフトウェアを用いることにより、各画素画像データの減算及び除算をアプリケーション上で容易に実行することができる。
(ISS及び比較星の測光)
次に、ISS及び比較星の測光工程S1e及びS2eについて説明する。天体画像において、指定した範囲内における天体の光量を測定することを測光という。本工程では、ISS及び比較星の光量を一次処理された各画素画像データの輝度値(カウント値)として得る。工程S1eとしては、一次処理されたR画素画像データについて、ISS及び比較星に該当する領域をそれぞれ選択し、その領域の輝度値(カウント値)を算出することにより、ISS及び比較星の光量を求めることができ、工程S2eとしては、一次処理されたB画素画像データについて、ISS及び比較星に該当する領域をそれぞれ選択し、その領域の輝度値(カウント値)を算出することにより、ISS及び比較星の光量を求めることができる。なお、このISS及び比較星の測光は、上述したソフトウェア「マカリ」によって容易に行うことができる。
(第1の等級m1の算出)
次に、第1の等級(m1)の算出工程S1fについて説明する。本工程では、ISS及び比較星の測光工程S1eで得られたR画素画像データのカウント値に基づき、ISSの等級(m1)を以下式(4)により算出することができる。なお、この式(4)は2つの天体の等級(ma、mb)とその明るさ(F、F)との関係を示すポグソンの式(以下式(5))に基づくものである。
Figure 0006900422
Figure 0006900422
(第2の等級m2の算出)
次に、第2の等級(m2)の算出工程S2fについて説明する。本工程では、ISS及び比較星の測光工程S2eで得られたB画素画像データのカウント値に基づき、ISSの等級(m2)を以下式(6)により算出することができる。
Figure 0006900422
ここで、後述する工程S4では、第1の等級(m1)の値と、第2の等級(m2)の値とからオゾン濃度を算出するところ、第1の等級(m1)を求める際に用いるR画素画像データのカウント値(輝度値)と、第2の等級(m2)を求める際に用いるB画素画像データのカウント値(輝度値)とは、異なる波長の光に基づく値である。すなわち、R画素画像データのカウント値は、第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域(520〜650nmの緑色〜赤色系光の波長領域のうちの一部の波長帯域)の波長の光によるものであり、B画素画像データのカウント値は、第2のバンドパスフィルタ3bの通過帯域(400〜470nmの青色系光の波長帯域のうちの一部の波長帯域)の光によるものである。光の波長が異なると黒体輻射のエネルギー密度も異なることから、第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域の波長と第2のバンドパスフィルタ3bの通過帯域の波長とのエネルギー密度の差が大きい場合にはその差を補正することが好ましい。この場合、上述した第1の等級(m1)を求める式(4)に替えて以下式(7)を用いることができる。
Figure 0006900422
式(7)のうち、γは、ISSについての第1のバンドパスフィルタの通過帯域の波長における黒体輻射の放出エネルギー量と、第2のバンドパスフィルタの通過帯域の波長における黒体輻射の放出エネルギー量との比を示す(式(8)参照)。また、γaは、比較星についての第1のバンドパスフィルタの通過帯域の波長における黒体輻射の放出エネルギー量と、第2のバンドパスフィルタの通過帯域の波長における黒体輻射の放出エネルギー量との比を示す(式(8)参照)。式(8)におけるE(λ)の値は式(9)で算出される。式(9)のうち、E(λ):放出エネルギー量(W/m)、λ:波長、c:光速、h:プランク定数、k:ボルツマン定数、T:絶対温度を示す。γを求める際の式(9)における絶対温度Tの値は太陽の表面温度である6000Kである。他方、γaを求める際の式(9)における絶対温度Tの値は比較星として選択した恒星の表面温度が選択される。
Figure 0006900422
Figure 0006900422
なお、黒体輻射の波長別エネルギー分布が太陽と類似する恒星を比較星として選択することにより、式(7)におけるγはγ≒γaとなるため、式(7)による補正を不要とすることができる。波長別エネルギー分布が太陽と類似する恒星としては、具体的には、主系列星で、スペクトル型がG〜Gの恒星が好適に選択され、さらに色指数が0.60〜0.70の恒星がより好適に選択される。これらに該当する恒星を選択することにより、式(7)による補正が不要となり、シンプルな式(4)での第1の等級(m1)の算出を行うことができる。さらに、比較星として、測光システムによって定められる複数の波長帯において、電磁波の強度が綿密に測光されており、変光星ではない恒星の一群である、ベガ(0等級)のような測光標準星を選択することによっても、黒体輻射の式による補正は不要となるため、シンプルな式(4)での第1の等級(m1)の算出を行うことができる。
(オゾン濃度の算出)
次に、オゾン濃度(n)の算出工程S4について説明する。まず、ランバート・ベールの法則による式(10)によれば、媒質に入射する前の光の強度をI、長さlの媒質を透過した後の光の強度をIとしたときの吸光度Aは、媒質の濃度nと媒質の通過距離(光路長)lに比例している。なお、σはモル吸光断面積を示す。
Figure 0006900422
他方、上述の工程S1f及びS2fで得られた第1の等級(m1)及び第2の等級(m2)を、式(5)のポグソンの式に代入すると以下式(11)に示すとおりとなり、以下式(12)に変形できる。
Figure 0006900422
Figure 0006900422
ここで、媒質であるオゾンに吸収されることなく、オゾン層OLを通過した光の明るさ(光度)はFであり、オゾン層OLを通過した際にオゾンに吸収されて減衰した光の明るさ(光度)Fである。それゆえ、この光度比は吸光度と同様に式(10)で示すランバート・ベールの法則に適用することができ、その結果、この光度比は媒質であるオゾンの濃度nとオゾン層の通過距離lに比例する。吸光度Aと、オゾン層OLを通過した光の光度F、オゾン層OLを通過した際にオゾンに吸収されて減衰した光の光度Fとの関係は以下式(13)で表わすことができる。なお、αは光度比を吸光度に補正する係数である。
Figure 0006900422
上述した式(13)に、式(10)と式(12)の右辺をそれぞれ代入すると、以下式(14)が得られ、媒質であるオゾンの濃度(n)を求める式(1)が導出される。また、σは第1のバンドパスフィルタの通過帯域におけるオゾンのモル吸光断面積、lは太陽光線がオゾン層を通過した距離である。この式(1)に基づき、オゾン濃度(mol/cm)が算出される。本実施形態の撮像手段2によって、複数のタイミングで撮影された、第1の撮像画像データ及び第2の撮像画像データのセットについて、上述した工程に基づき、それぞれオゾン濃度を算出することによって、オゾン層におけるオゾンの鉛直分布を把握することができる。
Figure 0006900422
Figure 0006900422
(太陽光のオゾン層の通過距離lの算定)
次に、太陽光のオゾン層の通過距離lの算定工程S3について説明する。太陽光のオゾン層の通過距離lとは、図3に示すように、太陽光SBがISS9に到達するまでに通過したオゾン層の通過距離lをいい、ランバート・ベールの法則による式(7)における光路長に該当する。ISS9の軌道計算を行うことにより、ISSに照射される太陽光が地球上空のどの部分を通過したかを算出することができ、通過距離を算定することができる。
なお、本実施形態では、地球周回天体9として、国際宇宙ステーションが選択されているが、上述したように、地球周回天体の等級等に基づいてオゾンの濃度を求めていることから、精度を高めるため、地球周回天体の等級は少なくとも10等以上であることが好ましく、6等以上であることがより好ましい。また、地球周回天体としては、国際宇宙ステーションのほか人工衛星を選択することもでき、人工衛星の場合には低軌道のものを選択することが好ましい。
次に、図4〜図6を参照し、本発明の第二の実施形態に係るオゾン層の観測方法について説明する。本実施形態では、地球周回天体として月を選択している。図4に示すように、本実施形態に係るオゾン層の観測方法は、月食のターコイズフリンジ出現時刻を算定する工程S10、第1のバンドパスフィルタを用いて撮影された月食の第1の撮像画像データに係る画像解析工程S11(工程S11a〜工程S11f)、第2のバンドパスフィルタを用いて撮影された月食の第2の撮像画像データに係る画像解析工程S12(工程S12a〜工程S12f)、太陽光のオゾン層の通過距離を算定する工程S13及び上述した工程S11〜S13で得られたデータに基づいて、オゾンの濃度を算出する工程S14とから概略構成されている。また、各画像解析工程S11及びS12は、月食及び比較星の撮影工程S11a及びS12a、各撮像画像データ取得工程S11b及びS12b、特定の画素画像データ取得工程S11c及びS12c、各画素画像データの一次処理工程S11d及びS12d、各画素画像データに基づく月食のターコイズフリンジ部分と比較星の測光工程S11e及びS12e、並びに、月食の選択部分の各等級算出工程S11f及びS12fとから構成される。
(月食のターコイズフリンジ出現時刻の算定)
まず、月食のターコイズフリンジ出現時刻を算定する工程S10について説明する。月食は月が地球の影に入ることによって生じるため、月と地球の軌道計算を行うことによって月食の日程を確認することができる。月食の日程や詳細な時刻については、例えば、国立天文台のウェブサイトなどで発表されており、手軽に確認することができる。月食のターコイズフリンジ出現時刻については、月が半影から本影に入った際又は月が本影から半影に入った際に現れるが、第一の実施形態のISSとは異なり、月の動きはゆっくりであることから月食のターコイズフリンジ出現時刻は比較的長時間(皆既月食であれば約1時間程度)となり、所望の時間を選択することができる。
(月食及び比較星の撮影)
次に、月食の撮影工程S11a及びS12aについて説明する。図5には、本実施形態で用いられる観測装置10が示されている。本工程S11a及びS12aで用いる撮像手段としては、レンズの代わりに小口径望遠鏡8を取り付けたデジタルカメラ2が選択されている。デジタルカメラ2と望遠鏡8との間にはアダプター81とバンドパスフィルタ3(3a、3b)とが配置されている。また、本実施形態では、撮影対象である地球周回天体90は月であることから、第一の実施形態のISSよりも移動速度が遅く、ターコイズフリンジが出現している時間も比較的長い。そのため、図5に示すように、撮像手段は1台のデジタルカメラ2とし、2種類のパンドパスフィルタ3(3a、3b)を1種類ずつ数十秒程度で取り換えて撮影を行うことができる。なお、第一の実施形態で示すように、撮像手段を2台準備し、2台同時のタイミングで撮影を行うことも可能である。また、後述する測光工程及び等級算出工程において、撮像画像データ中の等級が判明している恒星を比較星として利用するため、月と比較星とが同じ写野に入るようにデジタルカメラ2で撮影する。なお、月の周囲に適当な比較星がみられない場合には、別途、等級が判明している比較星をデジタルカメラ2で撮影し、その撮像画像データを取得することにより測光工程及び等級算出工程で使用することができる。また、撮像手段2及びバンドパスフィルタ3(3a、3b)を含めた観測装置10の構成、使用方法等についてのその他の説明は上述した第一の実施形態のものと同様であり、その機能や作用効果も同様である。
(第1及び第2の撮像画像データの取得)
次に、第1の撮像画像データ取得工程S11b及び第2の撮像画像データ取得工程S12bについて説明する。この工程では、上述した撮影工程S11a及びS12aにおいて撮影された月食及び比較星の撮像画像データが得られる。図5に示すように、本発明の観測装置10は、撮像手段2と、この撮像手段2に接続可能なデータ処理・演算手段6と、データ各種を格納するためのメモリ7とが備えられている。撮像手段2であるデジタルカメラにも通常メモリが備えられているので、デジタルカメラ2で撮影された画像データはカメラ内部にいったん格納され、その後の画像解析時に演算手段6及びメモリ7に格納されて使用される。ここで、第1の撮像画像データ及び第2の撮像画像データは、いずれも画像解析における精度を高めるため、RAWフォーマット形式によるRAW画像として取得することが好ましい。なお、本実施形態においては、第1の撮像画像データ及び第2の撮像画像データという用語は、撮影手段2における2種類のバンドパスフィルタ3(3a、3b)を数十秒程度で交換して撮影を行うことにより、実質的に同じ時間に撮影されたとみなすことができる一組の撮像画像データのことをいう。
引き続いて行われる、第1の撮像画像データからのR画素画像データの取得工程S11c及びその画像の一次処理工程S11d並びに第2の撮像画像データからのB画素画像データの取得工程S12c及びその画像の一次処理工程S12dについては、上述した第一の実施形態の工程と同様であり、その方法や作用効果も同様である。
(月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の測光)
次に、月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の測光工程S11e及びS12eについて説明する。本工程では、月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の光量を一次処理された各画素画像データの輝度値(カウント値)として得る。工程S11eとしては、一次処理されたR画素画像データについて、月食のターコイズフリンジ部分における一定領域及び比較星に該当する範囲をそれぞれ選択し、その範囲の輝度値(カウント値)を算出することにより、選択領域における月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の光量を求めることができ、工程S12eとしては、一次処理されたB画素画像データについて、月食のターコイズフリンジ部分における一定領域及び比較星に該当する範囲をそれぞれ選択し、その範囲の輝度値(カウント値)を算出することにより、選択領域における月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の光量を求めることができる。R画素画像データにおける月食のターコイズフリンジ部分の選択領域と、B画素画像データにおける月食のターコイズフリンジ部分の選択領域とは互いに対応する領域とする。なお、この月食のターコイズフリンジ部分及び比較星の測光は、上述したソフトウェア「マカリ」によって容易に行うことができる。また、この測光工程S11e及びS12eにおいて、月食のターコイズフリンジ部分の選択領域を決定するにあたり、一次処理されたR画素画像データ及びB画素画像データのコントア(天体画像の輝度分布を示す等光度曲線)を作成することが好ましい。これにより、ターコイズフリンジ部分の輝度の分布状況が視覚的に一覧できるため、ターコイズフリンジ部分のどの部分を選択領域とすればよいか判別しやすくなる。さらに、第1のバンドパスフィルタを介して撮影された第1の撮像画像データに基づくR画素画像データのコントアと、第2のバンドパスフィルタを介して撮影された第2の撮像画像データに基づくB画素画像データのコントアとを比較することにより、オゾン層におけるオゾンの立体的な分布を視覚的に確認することができる。
引き続いて行われる、第1の等級(m1)の算出工程S11f、第2の等級(m2)の算出工程S12f、太陽光のオゾン層の通過距離を算定する工程S13及びオゾンの濃度を算出する工程S14については、上述した第一の実施形態の工程と同様であり、その方法や作用効果も同様である。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
ターコイズフリンジを有する国際宇宙ステーション(ISS)をデジタルカメラで撮影し、その撮像画像データからオゾンの濃度nを求める実験を行った。宇宙航空研究開発機構のウェブサイト(http://kibo.tksc.jaxa.jp/)にて、ISS「きぼう」の撮影可能な時刻(見え始め・最大仰角・見え終わり)とその方角に関する情報を得た。ISSのターコイズフリンジ出現時刻については、月食同様にISSが地球の影に入った際又はISSが地球の影から出る際にISSにターコイズフリンジが現れることから、ISSの観測可能な時刻のうち、見え始めの近傍の時刻を選択した。ISSの撮影は以下条件にて行った。撮影日時:2019年4月29日、3時52分、撮影場所:京都市左京区、方位:南南西、仰角30度、ISSまでの直線距離:約500km。比較星としては、測光標準星であるベガ(こと座α星、−0等級)を選択した。
ISS撮影のための観測装置は、図2に示す観測装置と同様に組んだものを使用し、デジタルカメラとしては冷却CCDカメラを2台使用した。一方の冷却CCDカメラのレンズには、第1のバンドパスフィルタ3aとして、通過帯域の中心波長が550nm、半値幅33nm、ネジ径M27(型番:Bi550E、Midopt社製品)のバンドパスフィルタを取り付け、もう一方の冷却CCDカメラのレンズには、第2のバンドパスフィルタ3bとして、通過帯域の中心波長が450nm、半値幅35nm、ネジ径M27(型番:Bi450E、Midopt社製品)のバンドパスフィルタを取り付けた。ISSと比較星であるベガが同じ写野に入るようにし、撮影(露光)時間0.1秒、撮影間隔2秒にて、カメラ2台同時のタイミングで5回の連続撮影を行い、デジタルカメラ毎に5つの撮像画像データを得た。各撮像画像データはRAWフォーマット形式によるRAW画像として取得した。
第1のバンドパスフィルタ3aを取り付けた冷却CCDカメラによる5つの撮像画像データから、R画素画像データをそれぞれ取得した。R画素画像データは、ソフトウェアraw2fits(星空公団、https://www.kodan.jp/)を用いて取得した。具体的には、撮像画像データの5つのRAW画像をFITSフォーマット形式にそれぞれ変換することにより、形成されたred(R画素)フォルダに格納されたデータとして5つのR画素画像データを得た。同様に、第2のバンドパスフィルタ3bを取り付けた冷却CCDカメラによる5つの撮像画像データから、B画素画像データをそれぞれ取得した。B画素画像データも同様にソフトウェアraw2fitsを用いて取得し、撮像画像データの5つのRAW画像をFITSフォーマット形式にそれぞれ変換することにより、形成されたblue(B画素)フォルダに格納されたデータとして5つのB画素画像データを得た。
次に、ソフトウェアMakali`i(マカリ、国立天文台、http://makalii.mtk.nao.ac.jp/)を用いて、5つのR画素画像データ及び5つのB画素画像データにおける、ISS及び比較星ベガの測光を行った。ソフトウェアの画面上にR画素画像データ又はB画素画像データを画像として表示し、画面上に表示されたISSに該当する星と比較星ベガに該当する星をそれぞれ選択し、そのカウント値(輝度値)を得た。以下表1にR画素画像データから得られたカウント値及びB画素画像データから得られたカウント値を示す。撮像画像NO.は連続撮影された撮像画像の順番を表しており、NO.1が最初に撮影された1つめの画像であり、NO.5が連続撮影の最後に撮影された5つめの画像である。
Figure 0006900422
また、図8にISSのカウント値及びベガのカウント値の変化を示すグラフを示す。破線はR画素画像データに基づいて測光されたカウント値であり、実線はB画素画像データに基づいて測光されたカウント値である。これによれば、比較星ベガのカウント値は、R画素画像データのカウント値もB画素画像データのカウント値もほぼ一定であり、撮影中に亘り目立った変化は見られなかった。これに対し、ISSのカウント値は、NO.1、2及び5については、R画素画像データのカウント値もB画素画像データのカウント値もほぼ同程度であったが、NO.3とNO.4のカウント値に大きな差が見られた。具体的には、R画素画像のカウント値はB画素画像のカウント値と比べて著しく低い値を示しており、これはオゾン層を通過した際にオゾンに吸収されて減衰した光がR画素画像のカウント値として得られたことによるものである。このことから、NO.3とNO.4の撮像画像において、ターコイズフリンジを有するISSが撮影されたことが明らかとなった。
次に、R画素画像データのカウント値に基づき、ISSの第1の等級(m1)を上述の式(4)に基づき、算出した。他方、B画素画像データのカウント値に基づき、第2の等級(m2)を上述の式(6)に基づき、算出した。結果を以下表2に示す。なお、比較星ベガの等級は−0である。なお、ベガは測光標準星であるため、黒体輻射の式による補正は不要である。また、上述の式(1)に基づき、第1の等級から第2の等級を減じた値である光度差(m1−m2)を以下表2に示す。
Figure 0006900422
この結果より、ターコイズフリンジを有するISSが撮影されたNO.3とNO.4の光度差(m1−m2)の値は、1.57及び1.42を示した。最も光度差が大きい撮像画像NO.3の値を選択し、オゾン濃度を求める式(1)に代入すると、オゾン濃度n(mol/cm)は、n=0.628α/σlとなった。なお、αは光度比を吸光度に補正する係数である。また、σは第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域におけるオゾンのモル吸光断面積(cm/mol)であるところ、第1のバンドパスフィルタ3aの通過帯域は、中心波長が550nm、半値幅33nmであるので、約10−20(cm/mol)である(島崎達夫著、“成層圏オゾン”、財団法人東京大学出版会、1989年、p.17参照)。さらに、l(cm)は太陽光線がオゾン層を通過した距離であり、図3に示すように、太陽光SBがISS9に到達するまでに通過したオゾン層の通過距離lである。lは、ISSの軌道計算よりも求めることができるが、概算としておおまかな値を算出すると以下のとおりである。地球の半径(a):6371km、地表から対流圏界面までの距離(b):10km、対流圏界面から成層圏界面までの距離(c):40kmとすると、ピタゴラスの定理により、(l/2)+(a+b)=(a+b+c)となる。これよりlを求めると、約1430kmとなる。n=0.628α/σlに、これらの値、σ=10−20(cm/mol)、l=1.43×10(cm)を代入してnの値を求めたところ、オゾン濃度nは4.4α×1011(mol/cm)として得られた。
以上のように、ISSを撮影した撮像画像を解析することにより、オゾン層の状態を観測することができることが示された。本実施例では、解析を行った撮像画像は5つであったが、さらに画像の数を増やすことにより、より精度を高めた観測を行うことができる。また、定期的な定点観測を行うことにより、オゾン層の変化を観測することができる。このように、本発明のオゾン層の観測方法は、従来のような専用測定機器を必要とせず、簡単な方法で行うことができるものである。
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
1、10 オゾン層観測装置
2 デジタルカメラ
21 レンズ
22 リモートレリーズ
3 バンドパスフィルタ
3a 第1のバンドパスフィルタ
3b 第2のバンドパスフィルタ
4 赤道儀
41 赤道儀操作部
5 三脚
6 データ処理・演算手段(画像解析手段・演算手段)
7 メモリ
8 望遠鏡
81 アダプター
9、90 地球周回天体
SB 太陽光
l 太陽光SBがオゾン層を通過した距離
RL 反射光
TF ターコイズフリンジ
OL オゾン層(成層圏)
AL 大気の層(対流圏)
P 月の半影
U 月の本影

Claims (2)

  1. 地上の特定の場所から観測される、ISS(国際宇宙ステーション)又は人工衛星から選択される地球周回天体のターコイズフリンジ出現時刻及び方角を算定する工程と、
    前記場所における、前記地球周回天体のターコイズフリンジ出現時刻及び方角にて、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体と、測光標準星から選択される等級が判明している比較星とが、同じ写野に入るように520〜650nmの緑色〜赤色系光の波長領域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第1のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影し、第1の撮像画像データを取得する第1の撮像工程と、
    前記場所における、前記地球周回天体のターコイズフリンジ出現時刻及び方角にて、前記第1の撮像工程における撮影と同時のタイミングで、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体と、前記比較星とが、同じ写野に入るように400〜470nmの青色系光の波長帯域のうちの一部の波長帯域を通過帯域とする第2のバンドパスフィルタを取り付けた撮像手段で撮影し、第2の撮像画像データを取得する第2の撮像工程と、
    前記第1の撮像画像データのRGB画素画像データのうち、R画素画像データを取得する工程と、
    前記第2の撮像画像データのRGB画素画像データのうち、B画素画像データを取得する工程と、
    前記第1の撮像画像データの前記R画素画像データにおいて、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体に該当する領域A1と、前記比較星に該当する領域と、をそれぞれ選択し、前記地球周回天体に係る選択領域A1のR画素の輝度値及び前記比較星に係る選択領域のR画素の輝度値から、式(1)により、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体の等級を第1の等級m1として求める工程と、
    Figure 0006900422
    前記第2の撮像画像データの前記B画素画像データにおいて、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体に該当する領域A2と、前記比較星に該当する領域と、をそれぞれ選択し、前記地球周回天体に係る選択領域A2のB画素の輝度値及び前記比較星に係る選択領域のB画素の輝度値から、式(2)により、ターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体の等級を第2の等級m2として求める工程と、
    Figure 0006900422
    次式():
    Figure 0006900422
    (式()中、nはオゾンの濃度、αは光度比を吸光度に補正する係数、σは第1のバンドパスフィルタの通過帯域におけるオゾンのモル吸光断面積、lは太陽光が地球表層のオゾン層をターコイズフリンジが出現している前記地球周回天体に到達するまでに通過したオゾン層の通過距離である。)
    により、オゾンの濃度nを求める工程と、を備えることを特徴とするオゾン層の観測方法。
  2. 前記第1の撮像画像データ及び前記第2撮像画像データは、RAWフォーマット形式によるRAW画像データであることを特徴とする請求項1に記載のオゾン層の観測方法。
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