以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
図1は、実施の形態に係る車両用灯具の概略構造を示す断面図である。図1には、説明の便宜上、車両正面方向と車両側方(外側)をそれぞれ矢印で示す。図2は、図1に示される車両用灯具の発光部のA−A線断面を概略的に示す。図3は、実施の形態に係る車両用灯具を車両正面から見た模式図である。
車両用灯具10は、例えば、車両前方の左側に取り付けられ、デイタイムランニングランプとして使用される。車両用灯具10は、クリアランスランプとしても使用可能である。なお、車両前方の右側には、左右対称の構造をもつもう1つの車両用灯具10が取り付けられる。
車両用灯具10は、発光により灯具内に図形を表現するよう構成されている。車両用灯具10は、例えばL字形状、矢じり形状、リング形状など任意に設計された形状をもつ発光部11を備える。この発光部11が発光するとき、L字形状、矢じり形状、リング形状などの任意に設計された形状の図形が灯具内に現れる。
灯具内に表現される図形は、直線状または曲線状の発光ラインのような一次元的なものであってもよいし、あるいは二次元または三次元であってもよい。表現される図形は、単一の図形のみから成る必要はない。表現される図形は、複数の図形要素(例えば、点、線、またはその他の要素)から構成されていてもよい。複数の図形要素は、それら全てが互いにつながっている必要はなく、少なくとも1つの図形要素が他の少なくとも1つの図形要素から離れていてもよい。よって例えば、表現される図形が、複数の点(または線)の配列を含んでもよい。
車両用灯具10は、前方に開口された凹部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口を閉塞するアウターレンズ14(または透光性をもつカバー)とを備えている。ランプボディ12とアウターレンズ14とによって灯具筐体16が構成されている。灯具筐体16の内部空間は、灯室18として形成されている。
灯室18内には、車両用灯具10の発光部11が収容されている。発光部11は二種類の光源ユニットを組み合わせて構成されている。発光部11は、第1光源ユニット20と第2光源ユニット22とを備える。
第1光源ユニット20は、その出射光が車両正面方向に対し斜め外側または車両の側方に向かうように配置されている。第2光源ユニット22は、その出射光が車両正面方向に向かうように配置されている。第2光源ユニット22は、第1光源ユニット20に対し車幅方向に中央側に配置されている。
第1光源ユニット20は、励起光を発する複数の第1発光素子24と、複数の第1発光素子24から離間して配置され、励起光を受けるとき励起光と異なる波長の光を発する光波長変換部材26と、を備える。第1光源ユニット20は、車両用灯具10内に表現されるべき図形またはその一部を、複数の第1発光素子24の点灯に伴う光波長変換部材26の発光により形成する。
また、第2光源ユニット22は、複数の第1発光素子24に比べて高光度の発光を可能とする少なくとも1つの第2発光素子28を備える。第2光源ユニット22は、高輝度発光デバイスと呼ぶこともできる。第2光源ユニット22は、少なくとも1つの第2発光素子28の点灯により第1光源ユニット20と協働して図形を形成する。
第1光源ユニット20の複数の第1発光素子24は、車両用灯具10によって表現されるべき図形に従って配列されている。例えば、複数の第1発光素子24は、直線、円弧などの曲線、または、直線と曲線の任意の組み合わせに沿って配列されていてもよい。複数の第1発光素子24は、一列にまたは複数列に配列されていてもよい。第1光源ユニット20は、図示される例においては、11個の第1発光素子24を有する。ただし、第1発光素子24の個数はこれに限られず、任意である。
第1発光素子24は、例えばLED素子またはその他の半導体発光素子である。複数の第1発光素子24は、第1実装基板25上に実装されている。複数の第1発光素子24は、電源(図示せず)から第1実装基板25を介して給電される。
第2光源ユニット22の少なくとも1つの第2発光素子28は、第1発光素子24と同様に、車両用灯具10によって表現されるべき図形に従って配列されている。第2発光素子28は、第1発光素子24に対し車幅方向に中央側に配置されている。第2発光素子28は、車幅方向に中央側の端部に位置する。第2発光素子28の発光面は、車両正面方向に向けられている。第2光源ユニット22は、図示される例においては、第2発光素子28を1つだけ有するが、第2光源ユニット22は、複数の第2発光素子28を有してもよい。
第2発光素子28は、例えばLED素子またはその他の半導体発光素子である。第2発光素子28は、第2実装基板29上に実装されている。第2発光素子28は、電源(図示せず)から第2実装基板29を介して給電される。第2実装基板29は、第2発光素子28の発光面を車両正面方向に向けるように配置されている。
第2発光素子28は、点光源状に発光可能であることが望ましい。必要とされる場合には、図1に破線で示されるように、集光レンズ34またはその他の光学部材が、第2発光素子28と光波長変換部材26との間またはその他の場所に設けられてもよい。
第1実装基板25及び第2実装基板29は、車両用灯具10によって表現されるべき図形に従って延在する形状を有する。第1実装基板25は、第2実装基板29に対し傾斜して配置されている。第2実装基板29が第2発光素子28を支持する支持面は、概ね平面であり、その法線が車両正面方向と概ね平行となっている。第2実装基板29の支持面に対する第1実装基板25の支持面がなす傾斜角度αは、例えば30°またはその他の傾斜角度であってもよい。第1実装基板25が第1発光素子24を支持する支持面は、概ね平面であり、その法線が車両正面方向に対し斜め外側に向かう。第1実装基板25及び第2実装基板29は、フレキシブルプリント基板であってもよい。
第2実装基板29は第1実装基板25から分離されている。しかし、第2実装基板29が第1実装基板25と一体の基板であってもよい。この一体の基板は、フレキシブルプリント基板とされ、第1実装基板25と第2実装基板29の境界で折り曲げ可能であってもよい。
第1実装基板25は、図示される例においては、複数の第1発光素子24の全てを搭載する単一の基板である。しかし、第1実装基板25は、各々が少なくとも1つの第1発光素子24を搭載する複数の基板に分割されていてもよい。同様に、複数の第2発光素子28が設けられている場合には、第2実装基板29も複数の基板に分割されていてもよい。
第1光源ユニット20の全体、つまり全ての第1発光素子24が傾斜配置とされることは必須ではない。一部の第1発光素子24及びそれを支持する第1実装基板25が車両正面方向を向くように配置されていてもよい。例えば、第1光源ユニット20のうち車幅方向に中央側に位置し第2光源ユニット22と隣接する部分が、車両正面方向に向けられていてもよい。また、第2光源ユニット22の全体が車両正面方向に向けられることは必須ではない。複数の第2発光素子28が設けられる場合、一部の第2発光素子28及びそれを支持する第2実装基板29が傾斜配置とされてもよい。
図1及び図2に示されるように、車両用灯具10は、灯室18内に収容された発光素子筐体30を備える。発光素子筐体30は、第1光源ユニット20と第2光源ユニット22に共通に設けられている。発光素子筐体30の内部には、複数の第1発光素子24が第1実装基板25とともに収容され、少なくとも1つの第2発光素子28が第2実装基板29とともに収容されている。発光素子筐体30の第1筐体底面30aに第1実装基板25が設置され、第2筐体底面30bに第2実装基板29が設置されている。第1実装基板25の傾斜配置のために、第1筐体底面30aは第2筐体底面30bに対し傾斜している。また第2実装基板29を正面に向けて配置するために、第2筐体底面30bは正面に向けられている。
発光素子筐体30は前方に開口しており、その開口部に蓋をするように光波長変換部材26が取り付けられている。発光素子筐体30は、第1発光素子24及び第2発光素子28と光波長変換部材26との間に空間部32を形成する。発光素子筐体30は、例えば金属またはその他の適する材料で形成されている。
第1発光素子24及び第2発光素子28から発せられる光の有効利用のために、第1筐体底面30a及び第2筐体底面30bを含む発光素子筐体30の内面は、高反射率の表面(例えば、白色表面、または金属鏡面)とされている。同様に、第1実装基板25及び第2実装基板29も高反射率の表面を有する。このようにして、第1発光素子24及び第2発光素子28から発せられる光の大部分または全てが光波長変換部材26に向かうように、発光素子筐体30が構成されている。
図3に示されるように、第1光源ユニット20及び第2光源ユニット22に加えて、車両用灯具10は、灯室18内に収容されたロービームランプ40及びハイビームランプ42を備える。図3には理解のために、第1光源ユニット20と第2光源ユニット22の境界を破線で示す。
図1及び図2を再び参照して説明する。光波長変換部材26は、車両用灯具10によって表現されるべき図形に従って成形された形状を有する。光波長変換部材26は、第1光源ユニット20と第2光源ユニット22とに共通する単一の部材として設けられており、第1光源ユニット20から第2光源ユニット22へと延出している。
光波長変換部材26は、一方の表面が第1発光素子24に対向する励起光入射面としての第1入射面26aとされ、その反対側の表面が所望の幾何学的な発光形状を有する光波長変換部材26の第1発光面26bとされている。第1発光面26bは、車両正面方向に対し斜め外側または車両の側方に向けられている。
また光波長変換部材26は、第1入射面26aに連続する第2入射面26cと、第1発光面26bに連続する第2発光面26dとを備える。第2入射面26cは、第2発光素子28に対向し、第2発光面26dは、第2入射面26cの反対側にある。第2発光面26dは、車両正面方向に向けられている。第2発光素子28から発せられた光は第2入射面26cから光波長変換部材26に入射し、第2発光面26dを通じて光波長変換部材26から出射される。
光波長変換部材26は、アウターレンズ14の背後に配置され、アウターレンズ14の形状に概ね沿って車幅方向に中央側から側方へと延びている。第1発光面26b及び第2発光面26dは、アウターレンズ14の背面に対向する。
光波長変換部材26は、第1発光素子24から発せられた励起光を受けて、励起光の波長より長い少なくとも1つの波長をもつ光を発する蛍光体を含む。光波長変換部材26は、例えば、透明シリコーン樹脂などの基材に蛍光体材料の粒子が分散されたシート状またはその他の適する形状の部材として形成されている。光波長変換部材26は、柔軟性を有し変形可能な部材であってもよいし、あるいは剛性部材であってもよい。
第1発光素子24の発光波長、つまり励起光波長は、470nm以下の範囲、好ましくは380〜420nmの範囲から選択される。380nm以下の波長をもつ紫外光は、樹脂材料を劣化させやすい。樹脂材料で形成された灯具構成要素(例えば光波長変換部材26)への影響を防止するために、紫外光の利用は避けることが望ましい。また、420〜470nmの光を励起光とする蛍光体はたいてい、そのボディカラーが赤、黄、または緑など有色である。ここで、ボディカラー(母体色とも呼ばれる)とは、励起光を受けていない状況での蛍光体の素材そのものの色をいう。有色の蛍光体は灯具の意匠に制約を与える。これに対し、380〜420nmの光を励起光とする蛍光体は、ボディカラーが白色のものを入手することができる。光波長変換部材26が白色であることは、表面の反射率を高めるのに有効であるとともに、より洗練された灯具意匠を実現することにも役立つ。
第1発光素子24の発光波長が380〜420nmの範囲にある場合、第1発光素子24は励起光として紫色光を発することになる。この場合、光波長変換部材26は、紫色光を青色光に波長変換する第1蛍光体と紫色光を黄色光に波長変換する第2蛍光体とを含んでもよい。入射する紫色光が青色光および黄色光に波長変換され、それらの混合により白色光が得られる。
第1発光素子24の発光波長と光波長変換部材26の材料との具体的な組み合わせは、上記のものには限られず、白色光またはその他の所望の標識灯色(例えばアンバー色、または赤色)をもつ光を得るためのそのほか種々の公知の構成を適宜採用することができる。
上述のように複数の第1発光素子24が光波長変換部材26の背後に光波長変換部材26から離間して配置され、第1光源ユニット20は、いわゆるリモートフォスファー方式で構成されている。この方式によれば、光波長変換部材26がいわゆるランバーシアンで発光するので、輝度の均一性を得やすいという利点がある。
良好な輝度均一性をもつ面発光光源として第1光源ユニット20を構成するためには、第1発光素子24の発光面と光波長変換部材26の励起光入射面との間の離間距離は、2〜20mmの範囲から選択されることが好ましい。第1発光素子24の発光面から光波長変換部材26の励起光入射面への距離は、約10mmであってもよい。離間距離が2mmを下回ると、光波長変換部材26の輝度の均一性が低下する。言い換えれば、第1発光素子24と光波長変換部材26が過剰に接近すると、光波長変換部材26のうち第1発光素子24に至近の部位と離れた部位とで輝度差が大きくなる。発光素子間の領域が暗くなり、極端な場合、車両用灯具10により表現されるべき図形が点線状に見えてしまう。一方、離間距離が20mmを超えて拡大すると、光波長変換部材26が全体的に暗くなりがちである。つまり光波長変換部材26の輝度が、性能上必要とされる基準を下回って低くなりがちである。
第1実装基板25が光波長変換部材26に沿って傾斜して配置され、第1入射面26aと第1発光素子24の発光面が概ね平行となっている。しかし、光波長変換部材26に対する第1発光素子24の向きは、第1光源ユニット20の出射光を方向付けるうえで、それほど本質的ではない。第1発光素子24から光波長変換部材26への入射光の向きにかかわらず、第1光源ユニット20の出射光は光波長変換部材26の発光面からランバーシアンで出射するからである。よって、光波長変換部材26に対する第1発光素子24の配置は、図示の例に限られず、種々可能である。例えば、複数の第1発光素子24の発光面がそれぞれ車両正面方向に向けられてもよい。複数の第1発光素子24は、光波長変換部材26との離間距離が概ね保持されるように階段状に配置されてもよい。
光波長変換部材26は、第2発光素子28から発せられた光を透過するよう構成されている。光波長変換部材26の基材及び蛍光体材料は、第2発光素子28から発せられた光を透過可能な材料が使用される。そのため、光波長変換部材26は、第2発光素子28の出射光をほとんど又はまったく吸収しない。換言すれば、第2発光素子28の発光波長は、光波長変換部材26をほとんど又はまったく励起しないように選択される。よって、第2発光素子28の光は光波長変換部材26によって遮蔽されることなく外部に照射され、第2発光素子28による高光度の発光を効率的に利用することができる。
なお、第2発光素子28の光について光波長変換部材26の透過性を高めるために、光波長変換部材26のうち第2発光素子28の光が通過する部位が、透明材料で形成され、または、当該部位に開口部が形成されていてもよい。
第2発光素子28から光波長変換部材26までの距離は、2〜20mmの範囲から選択されることが好ましい。離間距離が2mmを下回ると、光波長変換部材26のうち第2発光素子28の直上の部位で点光りが目立ちうる。言い換えれば、第2発光素子28と光波長変換部材26が過剰に接近している場合、光波長変換部材26のうち第2発光素子28に至近の部位が局所的に過度に明るくなり、車両用灯具10の美観が損なわれうる。一方、離間距離が20mmを超えて拡大すると、十分な光度を確保し難くなる。
第2発光素子28の発光波長は、第2光源ユニット22の出射光が所望の標識灯色をもつように選択される。第2発光素子28が生成する光自体が所望の標識灯色を有してもよい。あるいは、第2発光素子28が生成する光は、所望の標識灯色と異なる色を有してもよい。その場合、第2光源ユニット22は、第2発光素子28が生成する光から波長変換により所望の標識灯色をもつ光を得るために、光波長変換部材26とは別の光波長変換部材を備えてもよい。
第2光源ユニット22は、第1光源ユニット20と同時に点灯されることができる。第1発光素子24が第1光度で点灯され、第2発光素子28が第1光度より高い第2光度で点灯される。そのために例えば、第1発光素子24が第1駆動電流で駆動され、第2発光素子28が第1駆動電流より大きい第2駆動電流で駆動される。
このようにすれば、第2光源ユニット22は車両正面方向に向けられているから、車両用灯具10は、正面光度についての配光要件を満たすことが可能となる。この構成は、例えば、デイタイムランニングランプまたはフロントターンシグナルランプとして車両用灯具10が用いられる場合に適する。
他の状況においては、第1発光素子24と第2発光素子28がほぼ同じ光度で点灯されてもよい。あるいは、第1光源ユニット20が点灯されるとき、第2光源ユニット22は消灯されてもよい。このようにすれば、第2光源ユニット22の点灯による眩しさを緩和することができる。これは例えばクリアランスランプとして車両用灯具10が用いられる場合に適する。
複数の第1発光素子24は、すべて同じ光度で同時に点灯されてもよい。このようにすれば、光波長変換部材26を均一な輝度及び/また均一な色で発光させることができる。ただし、複数の第1発光素子24は、同時に点灯されるのではなく、それぞれ異なるタイミングで点灯されてもよい。例えば、複数の第1発光素子24は、一端から他端へと順番に連続して点灯されてもよい。このようにすれば、いわゆるシーケンシャル点灯が可能になる。
複数の第1発光素子24は、異なる光度で点灯されてもよい。例えば、複数の第1発光素子24は、一端から他端へと徐々に変化する(または段階的に異なる)光度で点灯されてもよい。このようにすれば、グラデーション状の点灯が可能になる。
また、複数の第1発光素子24は、少なくとも1つの第1発光素子24からなる第1グループ36と、少なくとも1つの第1発光素子24からなる第2グループ38と、を含んでもよい。第1グループ36の第1発光素子24は、第2グループ38の第1発光素子24に比べて少なくとも1つの第2発光素子28から離れて配置されていてもよい。
第1光源ユニット20は、第1グループ36の第1発光素子24が第1光度で点灯し、第2グループ38の第1発光素子24が第1光度より高い第2光度で点灯するよう構成されてもよい。第2光源ユニット22は、少なくとも1つの第2発光素子28が第2光度より高い第3光度で点灯するよう構成されてもよい。そのために例えば、第1グループ36の第1発光素子24が第1駆動電流で駆動され、第2グループ38の第1発光素子24が第1駆動電流より大きい第2駆動電流で駆動されてもよい。少なくとも1つの第2発光素子28が第2駆動電流より大きい第3駆動電流で駆動されてもよい。このようにすれば、光波長変換部材26の第1発光面26bと第2発光面26dの輝度差が低減され、輝度むらの違和感を低減することができる。
複数の第1発光素子24のグループ分けは、第1グループ36と第2グループ38の2つには限られない。第1発光素子24は、3つ以上のグループに分けられ、グループごとに駆動されてもよい。第2光源ユニット22が複数の第2発光素子28を備える場合には、複数の第2発光素子28が複数のグループに分けられてもよい。また、各グループに含まれる発光素子の個数はとくに限定されない。
第2光源ユニット22が複数の第2発光素子28を備える場合、第1発光素子24と同様に、複数の第2発光素子28は、すべて同じ光度で同時に点灯されてもよい。複数の第2発光素子28は、それぞれ異なるタイミングで点灯されてもよい。複数の第2発光素子28は、異なる光度で点灯されてもよい。
以下に、本発明者により試作された具体的な実施例をいくつか例示する。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されないことは言うまでもない。
(実施例1)
実施例1に係る車両用灯具10は、デイタイムランニングランプユニットである。二種類の蛍光体、具体的には、青色蛍光体であるCa5(PO4)3Cl:Eu2+と黄色蛍光体である(CA,Sr,Eu)7(SiO3)6Cl2を重量比6:4で混合し、色度(cx,cy)=(0.33,0.33)の白色で発光する混合蛍光体を用意した。この混合蛍光体を透明シリコーン樹脂に重量比10:1(=シリコーン:蛍光体)で配合してシート状に成形した。このシート状の光波長変換部材26は、長さ200mm、幅10mm、厚さ2mmである。このようにして光波長変換部材26が製造された。
第1光源ユニット20には、第1発光素子24として、0.5mm□のInGaN系LED素子を実装した表面実装タイプのパッケージを用いた。第1発光素子24の発光波長は、405nmである。第1実装基板25として、反射率の高い白色レジストを施したアルミ基板(幅7mm×長さ180mm)を用いた。このアルミ基板に11個の第1発光素子24を15mmのピッチではんだ実装した。
第2光源ユニット22には、第2発光素子28として、1mm□のInGaN系LED素子(460nm発光)を2個AlN基板(1.2×3mm)に実装し、LED素子の直上にセリウム付活したアルミイットリウムガーネットの蛍光体焼結板(1×2.2mm)を搭載した高輝度発光デバイスを用意した。この高輝度発光デバイスを、第2実装基板29としてのアルミナ基板(幅7mm×長さ10mm)に実装した。
第1光源ユニット20、第2光源ユニット22、及び光波長変換部材26は、図1に示される配置に組み付けた。第1発光素子24を実装した第1実装基板25、及び第2発光素子28を実装した第2実装基板29は、深さ10mmの発光素子筐体30(白色)の底部に設置され、筐体開口面が光波長変換部材26で覆われている。その他の配置及び構造は上述の実施の形態の通りである。
第2発光素子28には1Aの電流を印加して駆動することで、実施例1に係るデイタイムランニングランプユニットの正面光度が確保された。各第1発光素子24は、350mAの電流で駆動した(第1グループ36)。ただし、第2発光素子28と隣接する3個の第1発光素子24については500mAの電流で駆動した(第2グループ38)。その結果、デイタイムランニングランプの全体が均一に発光し、設計された図形の形状を発光により良好に表現できた。とくに、第2発光素子28の近傍に位置する第1発光素子24の駆動電流を、第2発光素子28から離れて位置する第1発光素子24に比べて増加したことにより、実施例1に係るデイタイムランニングランプユニットは輝度むらの違和感を解消できた。
(実施例2)
実施例2に係る車両用灯具10は、フロントターンシグナルランプユニットである。光波長変換部材26に用いる蛍光体の種類と第2発光素子28が実施例1と異なるほかは、実施例1に係るデイタイムランニングランプユニットと同様である。
蛍光体として、アンバー色に発光するCa0.75Si9.375O0.875N15.125:Eu2+ 0.083を用いた。第2発光素子28としては、1mm□のInGaN系LED素子(405nm発光)を2個AlN基板(1.2×3mm)に実装し、LED素子の直上にアンバー色に発光するCa0.75Si9.375O0.875N15.125:Eu2+ 0.083を搭載した高輝度発光デバイスを用意した。光波長変換部材26の蛍光体と第2発光素子28に搭載された蛍光体は同じ種類である。LED素子の発光波長は第1発光素子24と同じである。この高輝度発光デバイスを、第2実装基板29としてのアルミナ基板(幅7mm×長さ10mm)に実装した。第1発光素子24と第2発光素子28には等しい駆動電流を与えた。実施例2に係るフロントターンシグナルランプユニットにおいても、実施例1と同様に、正面光度の確保と良好な発光形状とを両立できた。
(実施例3)
実施例3に係る車両用灯具10は、フロントターンシグナルランプユニットである。第2発光素子28が実施例2と異なるほかは、実施例2と同様である。第2発光素子28としては、0.8mm□のInGaAlP系の発光素子(595nm発光)をAlN基板(1.2mm□)に実装し、透明シリコーン樹脂で封止したものを用いた。よって第2発光素子28それ自体には蛍光体が搭載されていない。この高輝度発光デバイスを4個、第2実装基板29としてのアルミナ基板(幅7mm×長さ10mm)に実装した。第1発光素子24の駆動条件は実施例1と共通であり、第2発光素子28はデバイス1個あたり700mAの電流で駆動した。実施例3に係るフロントターンシグナルランプユニットにおいても、実施例1及び実施例2と同様に、正面光度の確保と良好な発光形状とを両立できた。
説明したように、実施の形態によると、第1光源ユニット20及び第2光源ユニット22の点灯に伴って光波長変換部材26が発光し、光波長変換部材26の光がアウターレンズ14を通じて灯具外に出射される。主として第1光源ユニット20によって、光波長変換部材26を均一な輝度及び均一な色で発光させることができる。任意に設計された形状の図形が車両用灯具10内に明瞭に表現され、いわゆるシグネチャー点灯を美しく行うことができる。また第2光源ユニット22は高光度の発光により必要な光度の確保を可能とする。このようにして、車両用灯具10は、意匠性向上と配光要件を両立することができる。また、必要な方向についてのみ局所的に高光度としているので、あらゆる方向または広範囲に強い光を発するようにした灯具構成と比べて、省エネルギー性に優れる。
第2光源ユニット22は、その出射光が車両正面方向に向かうように配置されている。したがって、第2光源ユニット22の点灯により正面光度についての配光要件を満たすことができる。
第1光源ユニット20は、その出射光が車両正面方向に対し斜め外側または車両の側方に向かうように配置されている。第1光源ユニット20は、車両正面方向に対し斜め外側または車両の側方から見て車両用灯具10内の発光図形を美しく描くことに役立つ。車両が道路を走行しまたは停車しているとき、歩行者または車両外部からの観者は、車両を横または斜めから見ることが多い。よって、車両用灯具10は、こうした観者への訴求力に優れる。
第2発光素子28は、その出射光が光波長変換部材26を通過して灯具外に出射するように、光波長変換部材26の背後に光波長変換部材26から離間して配置されている。光波長変換部材26が第1光源ユニット20から第2光源ユニット22へと延出し、2つの光源ユニット間で連続しているので、車両用灯具10は、切れ目のない一体的な発光図形を提供することができる。
第2光源ユニット22は、第1光源ユニット20に対し車幅方向に中央側に配置されている。車両のボディ表面は一般に中央側のほうが側方に比べて正面を向いているから、第2発光素子28を車両正面方向に向けて配置することが容易になる。また、このような配置によれば、第2発光素子28が強く光ったとしても、それによる違和感が少ないという利点もある。
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
上述の実施の形態では、一体の光波長変換部材26が第1光源ユニット20と第2光源ユニット22に共有されている。しかし、本発明は、これに限られない。個々の光源ユニットごとに光波長変換部材が設けられていてもよい。そうした例を図4を参照して後述する。
図4は、他の実施の形態に係る車両用灯具の概略構造を示す断面図である。図4に示される車両用灯具10は、2つの光波長変換部材を有することを除いて、図1に示される車両用灯具10と同様の構成を有する。よって冗長を避けるため同様の構成についての説明は適宜省略する。
図4に示されるように、第1光源ユニット20と第2光源ユニット22は個別に分割されている。第1光源ユニット20は、第1光波長変換部材44及び第1筐体48を備える。第1光波長変換部材44は、第2光源ユニット22から独立していることを除き、図1に示される光波長変換部材26と同様である。第1光波長変換部材44は、第1入射面26a及び第1発光面26bを有する。第1光波長変換部材44は、第1筐体48の上方開口部を覆うように第1筐体48に取り付けられている。第1筐体48は、第1発光素子24及び第1実装基板25を収容する。
また、第2光源ユニット22は、第2光波長変換部材46及び第2筐体50を備える。第2光波長変換部材46は、第1光源ユニット20から独立していることを除き、図1に示される光波長変換部材26と同様である。第2光波長変換部材46は、第2入射面26c及び第2発光面26dを有する。第2光波長変換部材46は、第2筐体50の上方開口部を覆うように第2筐体50に取り付けられている。第2筐体50は、第2発光素子28及び第2実装基板29を収容する。
図4に示される車両用灯具10のように光源ユニットが2つに分割されていても、図1に示される車両用灯具10と同様に、意匠性向上と配光要件を両立することができる。なお、第1光源ユニット20(または第2光源ユニット22)が、複数の光源ユニットに分割されていてもよい。
上述の実施の形態では、車両用灯具10がデイタイムランニングランプ(及びクリアランスランプ)である場合を例に挙げて説明したが、車両用灯具10はこの具体例に限られない。車両用灯具10は、ターンシグナルランプ、テールランプ等のその他の標識灯や、ヘッドランプ、ブレーキランプ等であってもよい。