JP6887665B2 - 新規免疫抑制剤 - Google Patents
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Description
このことから,カルシニューリン阻害とは異なるメカニズムを有する免疫抑制剤の開発が望まれている。そのような薬剤として,11R-VIVITと称される薬剤が開発されている(特許文献1)。
NFATには,NFAT1,NFAT2,NFAT3,NFAT4など複数のサブタイプが存在し,活性化されたカルシニューリンにより脱リン酸化され,活性化される。活性化したNFATは,核内に移動し,IL-2の発現を誘導する。NFATは,これら一連のメカニズムにより,免疫系において,転写調節因子として機能する。
すなわち,11R-VIVITは,上述のような優れた効果を有するものの,免疫抑制作用を発揮する有効濃度の10倍の濃度で細胞毒性を有してしまう。そのため,薬物としての安全濃度域が非常に狭い点において,11R-VIVITは,課題を有するものである。
本発明の第一の構成は,下記式からなる化合物を有効成分とすることを特徴とする免疫抑制剤である。
(式) X1-Sp-mR
式中,X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,Spはスペーサーを,Rはアルギニンを,mは9から13の整数を表す。
本発明の第三の構成は,Spがnyで表され,yが任意の天然アミノ酸,nが0から5の整数で表されることを特徴とする第一又は第二の構成に記載の免疫抑制剤である。
本発明の第四の構成は,前記化合物が,配列番号4からなるペプチドであることを特徴とする第一の構成に記載の免疫抑制剤である。
すなわち,本発明にかかる免疫抑制剤において用いられる化合物は,11R-VIVITやFK506と同様に免疫抑制作用を発揮するとともに,11R-VIVITよりも薬物としての有効濃度範囲が広く,また,FK506で見られるような耐糖能障害などが見られないことから,より安全性の高い薬剤として期待できる。
1.カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する配列として,RCANの複数のサブタイプからなる配列番号1から3に表されるアミノ酸配列が発明者により見出されるとともに,これらの配列においては,共通するアミノ酸配列を有することに発明者は着目した。
2.配列番号3に基づくアミノ酸配列に,複数のアルギニン残基を導入した配列番号4に示す化合物(以下,「RCAN-11R」)が,下記の効果を有することを実験的に明らかにした。
(1) RCAN-11Rは,細胞内に取り込まれ,NFATの核内移行を阻害するとともに,NFATレポーター活性を抑制することにより,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する。
(2) 加えて,RCAN-11Rは,mRNAレベルにおいて,IL-2産生を抑制する。
(3) これらのメカニズムにより,RCAN-11Rは,免疫抑制作用を発揮する。
(4) 加えて,RCAN-11Rは,11R-VIVITが細胞毒性を発揮する濃度において細胞毒性を発揮せず,また,FK506にみられるような耐糖能障害を引き起こさない。
(式) X1-Sp-mR
式中,X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,Spはスペーサーを,Rはアルギニンを,mは9から13の整数を表す。また,mについて,最も好ましくは11の整数とすることができる。
加えて,X1,Sp,mRは,これらそれぞれの役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の結合様式をとることができる。すなわち,化合物全体としてX1を,N末端ないしC末端,いずれの様式として構成してもよい。
本発明において,xを所定のアミノ酸とし,X1を,配列番号1から3に示されるアミノ酸配列とすることが好ましい。これにより,化合物が,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害するRCAN1からRCAN3の配列の一部を含むこととなり,より確実な免疫抑制効果の発揮が期待できる。
すなわち,化合物全体としてカルシニューリン-NFATシグナリング阻害や細胞透過性を損なわないよう,疎水性や化合物自体の大きさを考慮して設計すればよい。このようなリンカー化合物として,メチレン鎖などの低分子化合物やアミノ酸化合物などが挙げられる。
1.下記に示される各ペプチドについて,ペプチド合成装置(BIOSYNTHESIS,Lewisville社製)により合成を行った。なお,各ペプチドにおけるRCANとの関係については,図1に示す。
配列番号4(RCAN-11R):KYELHAATDTTPSVVVHVCESGGRRRRRRRRRRR
配列番号5(scRCAN-11R):SAVTHKLESVDPATVYCETHVGGRRRRRRRRRRR
配列番号6(11R-VIVIT):RRRRRRRRRRRGGMAGPHPVIVITGPHEE
2.各ペプチドについては,FITCをコンジュゲートすることより,蛍光標識したものを合わせて合成した。
3.合成した各ペプチドについては,HPLCにより精製した。精製後の各ペプチドについて,アミノ酸組成分析ならびにMassにより,95%以上の純度であることを確認し,以降の検討に用いた。
1.Jurkat cellを,FITCで標識したRCAN-11R,10μMを含む培地中で培養を行った。
2.結果を図2に示す。Jurkat cellから,FITCの蛍光とみられる緑色の発色が確認された。
3.これより,RCAN-11Rが,細胞内に取り込まれていることが確認された。
1.GFP-NFAT-1プラスミドを移植したHEK293細胞を,それぞれ,1μM FK506,10μM RCAN-11RもしくはscRCAN-11Rの存在下,500nM ionomycinを含む培地で培養を行った。
2.結果を図3,図4に示す。
(1) コントロールで示される通り,通常,GFP-NFAT-1のシグナルは,細胞におけるサイトゾル中に広く拡散し,核では欠損像として現れる(図3,control 0min)。
(2) ionomycinにより20分の培養後,コントロールもしくはscRCAN-11Rでは,HEK293細胞の核において蛍光が増加していた(図3,control 20min,scRCAN-11R 20min)。
(3) これに対しRCAN-11Rでは,核での蛍光はほとんど見られず,細胞質から核へのGFP-NFAT-1の移動が抑制されていることが分かった。(図3,図4,RCAN-11R)。
(4) また,FK506においても,核での蛍光はほとんど見られず,細胞質から核へのGFP-NFAT-1の移動が強く抑制されていることが分かった。(図3,図4,FK506)。
3.これらより,RCAN-11Rは,FK506と同様に,NFATの核内移行を抑制することが分かった。
1.pNFAT-SEAP 5μgを,Jurkat cellにエレクトロポレートし,これを,各ペプチドもしくはFK506存在下,PMAおよびionomycinを含む培地で培養を行った。
2.結果を図5に示す。
(1) PMAならびにionomycinによる刺激により,NFATレポーター活性は向上していた(図5,Medium)。
(2) FK506では,NFATレポーター活性は有意に抑制されていた(図5,FK506)。
(3) 同様に,RCAN-11Rでも,有意にレポーター活性は抑制されていた(図5,RCAN-11R)。
(4) 一方,scRCAN-11Rでは,NFATレポーター活性は抑制されておらず,刺激されたもの(Medium)との有意な差はなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506と同様,NFATレポーターの活性を抑制することが分かった。
1.Jurkat cellを,各ペプチドもしくはFK506存在下,200nM PMAおよび4μM ionomycinを含む培地で,12時間,培養を行った。培養後,培地中に含まれるIL-2を,ELISA kitにより,測定した。
2.結果を図6に示す。
(1) PMAならびにionomycinによる刺激により,IL-2産生は上昇していた(図6,Medium)。
(2) FK506では,IL-2産生が優位に抑制されていた(図6,FK506)。
(3) RCAN-11Rは,FK506ほどではないものの,有意にIL-2産生は抑制されていた(図6,RCAN-11R)。
(4) 一方,scRCAN-11Rでは,IL-2産生は抑制されておらず,刺激されたもの(Medium)との有意な差はなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506ほどではないものの,IL-2産生を抑制することが分かった。
1.Jurkat cellを,FK506もしくは各濃度でのRCAN-11R存在下,1時間培養後,さらにPMAおよびionomycinを加え,12時間,培養を行った。培養後,IL-2 mRNAを,RT-PCRにより,測定した。
2.結果を図7に示す。
(1) FK506により,IL-2 mRNA産生が抑制されていた(図7,FK506)。
(3) 一方,RCAN-11Rは,0.1μMでは抑制効果は見られなかったものの,濃度を増すごとにその抑制効果が上がっていった(図7,RCAN-11R)。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,濃度依存的に,IL-2 mRNAの産生を抑制することが分かった。また,実験5で見られたIL-2産生抑制は,mRNAレベルでの産生抑制により起こっていることが示された。
1.Jurkat cellを,FK506で1時間,もしくは20μM RCAN-11Rで各時間培養後,さらにPMAおよびionomycinを加え,12時間,培養を行った。培養後,IL-2 mRNAを,RT-PCRにより,測定した。
2.結果を図8に示す。
(1) FK506により,実験6と同様,IL-2 mRNA産生が抑制されていた(図8,FK506)。
(2) 一方,RCAN-11Rは,培養時間が経過するごとにIL-2 mRNA産生抑制が徐々に減少していた(図8,RCAN-11R)。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,その効果を徐々に失っていくことが分かった。
1.C57BL/6マウスをドナー,BALB/cマウスにレシピエントとして実験を行った。なお,BALB/cマウスについては,STZの腹腔内投与により,糖尿病モデルとしたものを用いた。
2.C57BL/6マウスの膵島を,BALB/cマウスの左腎皮膜下に移植を行った。
3.Kaplan-Meier log-rank testに基づき,膵島生着率の評価を行った結果を図9に示す。
(1) scRCAN-11Rでは,11日目から膵島拒絶される個体が発生し,20日後にはすべての個体において膵島が拒絶された。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,25日に初めて膵島が拒絶される個体が発生し,scRCAN-11Rと比較して,明らかな移植膵島の延命効果が確認された。
4.これらの結果から,RCAN-11Rは,インビボにおいて免疫抑制効果を発揮していることが示された。
(1) scRCAN-11Rでは,投与後,血中グルコース濃度が上昇し,その後,なだらかに減少していった。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,投与後,血中グルコース濃度は上昇するものの,その後,比較的速やかに減少していった。その減少度合いについては,scRCAN-11Rと比較して,有意な減少であった。
6.この結果から,移植10日目においてRCAN-11Rでは,多くの膵島が生着していることが確認された。
1.βTC6細胞を,50000個/ウェルで96穴プレートに加え,FK506もしくはRCAN-11R存在下,培養を行った。加えて,FK506ならびにRCAN-11Rを加えていないものについて,同様の操作を行い,コントロールサンプルとした。
2.培地については,24時間毎に交換を行った。96時間後の培地交換から1時間後,培地をサンプルとして採取し,インシュリンの測定を行った。
3.結果を図11に示す。
(1) コントロールと比較して,FK506では,濃度依存的に,単位DNAあたりのインシュリン量が低下していた。これについては,従来知られているFK506の耐糖能障害を示す結果であった。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,全ての濃度においてコントロールと変わらなかった。
4.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506で見られるような耐糖能障害を引き起こさないことが示された。
1.RCAN-11Rもしくは11R-VIVITで処置した後のβTC6細胞について,24時間後の生存率の評価を行った。
2.結果を図12に示す。
(1) コントロールと比較して,11R-VIVITでは,濃度依存的に,細胞生存率が低下していた。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,全ての濃度においてコントロールと変わらなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,11R-VIVITで見られるような細胞障害を起こさない可能性が示された。
Claims (3)
- 下記式からなる化合物を有効成分とすることを特徴とする免疫抑制剤。
(式) X1-Sp-mR
X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,
アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,
Spは,nyで表されるスペーサーであって,yが任意の天然アミノ酸,nが0から5の整数であり,
Rは,アルギニンを,
mは,9から13の整数を表す。
- X1が,配列番号1から3に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の免疫抑制剤。
- 前記化合物が,配列番号4からなるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の免疫抑制剤。
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