JP6886657B2 - Qcmを用いた香料調製物の評価方法 - Google Patents

Qcmを用いた香料調製物の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、QCM(水晶振動子マイクロバランス)を用いる香料調製物の特性の評価方法に関し、より具体的には、香料調製物の口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測するための方法に関する。
香料物質の多くは油溶性成分であり、飲料などに使用するためには、油溶性の香料を水溶性に製剤化(可溶化)する必要がある。水溶性製剤化した香料の代表的なものに、水溶性香料(エッセンス:エチルアルコールを含む水溶性香料)と乳化香料があるが、水溶性香料と乳化香料では香味の発現性が異なり、水溶性香料の香味は前半に強く発現し、乳化香料の香味は中盤乃至後半に強く発現することが知られている。また、乳化香料は使用する乳化剤の種類によっても、香味の発現性に差が生じることも知られているが、これらの原因については解明できていない。
一方、水晶振動子(又は発信子)マイクロバランス(QCM)法を用いるバイオセンサが知られており(非特許文献1)、香料物質に関連性を有し得るものとして、匂い化合物を識別するためのQCMセンサー用の感応膜やかような感応膜を備えた揮発性化合物の識別装置、ガスセンサが提供されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、緩衝液中において水晶振動子を固定させ測定試料と接触させることにより、振動周波数の変化を測定することが見出されている。例えば、被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを緩衝液中において接触させ、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定する方法が提案されている(特許文献4)。またさらに、水晶振動子センサーを用いてビールや麦芽発泡酒等の酒類の味の評価をする試みがされている(特許文献5)。
しかしながら、香料組成物の状態やその特性を水晶振動子マイクロバランス法により検討しようとする試みはされていなかった。
特開2000−074808号公報 特開2004−061391号公報 特開2011−080983号公報 特開2009−180584号公報 特開2001−215183号公報
電気論E,123巻11号、2003年459−464頁
本発明の目的は、仮に、同一の香料分子を有するにもかかわらず、香料調製物の組成の相違によっては、口腔内及び鼻腔内における香味の発現性の差異を客観的に予測するための手段を提供することにある。
本発明者等は、上記の目的を達成するために、口腔内及び鼻腔内における香味の発現性
の差異を予測するためにQCM法の適用の可否について検討してきた。その結果、QCMであって、水晶振動子の金電極上に細胞膜を模したリン脂質含有層を備えたQCMを用い、当該リン脂質含有層と試験すべき香料調製物を水性媒体中で接触させたとき、当該水晶振動子に交流電場を印加することにより振動する振動数(共鳴振動数)の変化が、香料調製物の香料物質又は香料分子以外の組成や形態によって有意に識別でき、しかも、かような変化は香料調製物についての時間強度曲線法(TI法)での官能評価の結果と相関性があることが、ここに見出された。
したがって、本発明によれば、次の、主たる態様又は特徴を有する手段が提供される。
・態様1:香料調製物の口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測するための方法であって、
電極を備えた水晶振動子マイクロバランス(QCM)の電極上に固定された真核性生物の細胞膜に由来するリン脂質含有層を口腔内の細胞膜モデルとして用意する工程、
前記モデルと香料組成物を水性媒体中で接触させて、前記モデルへの香料組成物の結合の程度を測定する工程、
前記結合の程度の強乃至中乃至弱を前記香味発現が後半乃至中盤乃至前半であるものとして評価する工程
を含んでなる、方法。
・態様2:態様1に記載の方法であって、リン脂質含有層が炭素原子数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸に由来する部分を含むジアシルグリセロリン脂質であるホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールから選ばれる1種以上のリン脂質を含有する、方法。
・態様3:態様2に記載の方法であって、リン脂質がジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上である、方法。
・態様4:態様1〜3のいずれかに記載の方法であって、細胞膜モデルと香料組成物の接触が水性媒体を含有するセル中において水晶振動子の一方の電極上にリン脂質が固定されたQCM上で実施される、方法。
・態様5:態様1〜3のいずれかに記載の方法であって、細胞膜モデルへの香料組成物の結合の程度がQCMにおける共振周波数振動数の変化により決定される、方法。
本発明によれば、香料調製物の口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測することができるので、例えば、香料含有飲食品を製造する際に、必要により、各種香味発現時期の異なる香料調製物を単独で、又は、組み合わせて使用することにより、香味の発現時期を制御した飲食品の提供が可能になる。
本発明に関するQCMの一使用態様を示す概念図である。 レモンエッセンス、およびレモン乳化組成物をセンサーセル内に添加した時の振動周波数の経時変化を示す。 レモン乳化組成物の粒径を変えた場合のそれぞれをセンサーセル内に添加した時の振動周波数の経時変化を示す。 水晶発振子センサーに固定したリン脂質膜を変えた場合においてレモン乳化組成物を添加した時の振動周波数の経時変化を示す。 レモンエッセンス、およびレモン乳化組成物の香味発現について、TI法により評価した評価結果を示す。
発明の詳細な記述
本発明に関して使用される用語は、特記しない限り、当該技術分野で通常使用される意味内容を有するものであるが、特に、主要な用語等については以下説明する。
香料調製物(又は香料製剤)は、香料物質又は香料分子と他の希釈剤若しくは担体等を含有し、さらには乳化剤又は界面活性剤又は懸濁剤や他の可溶化剤を含んでいてもよい組成物である。希釈剤若しくは担体としては、限定されるものでないが、水、エタノール又はこれらの混合物が挙げられ、乳化剤又は界面活性剤又は懸濁剤や他の可溶化剤としては、飲食品で添加剤又は助剤として常用されているものであって、本発明の目的に沿うものであればそれらの起源や種類を問うことなく用いることができる。典型的な乳化剤又は界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、平均重合度3以上のポリグリセリンと炭素数8以上の脂肪酸とのエステル、例えば、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノミリステートなどを挙げることができる。典型的な懸濁剤及び/又は他の可溶化剤としてはプロピレングリコール、エチレングリコール、レシチン、サポニン、アラビアガム、ゼラチン、化工デンプン、モノグリセリド有機酸エステルを挙げることができる。このような調製物は、仮に、トップノートとされる揮発性を有する香料類であっても、組み合わされる助剤等の成分や調製物の形態(例えば、エッセンス、乳化物の乳化粒子の粒径の大小)により香味発現性を異にする。
口腔内及び鼻腔内における香味(又は風味)とは、香料又はにおい成分を含有する飲食品を口に入れたときに口内や鼻腔内にひろがる味と香りの両方を総合的に表した用語である。
電極を備えた水晶振動子マイクロバランスにいう水晶振動子は、上記の非特許文献1や特許文献において公知である、水晶の結晶を極薄い板状に切り出した切片の両側に金属薄膜を取り付けた電気素子であり、両金属薄膜(電極)を通じて水晶切片に交流電場を印加すると一定の振動数(共鳴振動数)で振動する性質を有する電気素子である。かような素子はその金属薄膜表面上にナノ・グラム程度の微量物質が吸着するとその質量に応じて共鳴振動数が減少することからマイクロバランスとして機能することが知られている。したがって、上記の電気素子やQCMの用語は、本明細書では、交換可能なものとして用いることもある。また、かようなQCMは市販されているものであって、本発明の目的に沿うQCMであれば特に限定されず、AT−カットという角度で切り出した水晶板薄膜の両面に電極を設けた水晶振動子を使用することができる。市販されているものとしては、後述する[実施例]で用いている物性変化・分子間相互作用定量QCM装置(イニシアム社製
AFFINIX QN μ)に等価の動作、機能等を具備するものを選択使用することができる。
本発明にいうQCMの電極は、水晶振動子の電極上に細胞膜を模した真核性生物、特に哺乳動物の細胞膜に由来するリン脂質含有層が固定されている点に特徴があり、しかも、かようなリン脂質含有層の表面は、水性媒体が注入されたQCMセル中に存在するように構成される。かようなQCMの一使用態様の概念図を図1に示す。本明細書にいう、電極は、例えば、水晶の極薄い板状物の表面に金、銀、白金、チタン等の蒸着された金属薄膜から構成することができ、さらに金属の極薄い板状物であってもよい。かような電極への細胞膜を模したリン脂質含有層の固定は、限定されるものでないが、リン脂質含有水溶液をQCMの金電極部分に滴下後、溶液を乾燥させてリン脂質含有層を形成・固定させる滴下法、またはリン脂質等の溶液を高回転させたQCM基板上に滴下し、均一なリン脂質含
有層を作製するスピンコート法などによって実施できる。
リン脂質は、本発明の目的に沿うものである限り限定されるものでないが、一般的に、真核性生物、特に哺乳動物の細胞膜に由来するリン脂質又はその類縁体である。このようなリン脂質としては、炭素原子数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸に由来する部分を含むジアシルグリセロリン脂質であることができ、限定されるものでないが、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールを挙げることができる。これらのより具体的な脂質としては、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、等を例示できる。これらのリン脂質を含有する層は、記載したリン脂質の1種以上を混合物として含有することができ、さらに、本発明の目的に沿う限り、各種タンパク質や糖脂質を含むこともできる。混合物としては、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリンのように塩基性部分(コリン部)を有するものとかような塩基性部分とは異なるセリン部分又は当該部分を有さないグリセロール型の脂質の混合物であることができる。このように異なるリン脂質は、相互に、1〜10対10〜1、又は2〜10対10〜2であることができる。
本発明の一態様では、上記のリン脂質含有層は水性媒体が注入されたQCMセル中に存在するように構成される水晶板薄膜上の2種の電極の一方の電極上に固定される。かようなQCMセル中の水性媒体は、口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測しようとする被験物たる香料調製物のセル中での移動を媒介するものであって、純水若しくはイオン交換水又はこれらに1%未満の各種分解酵素等を含有せしめ、pHがほぼ中性付近に緩衝化されていてもよい唾液類似液であることができる。前記QCMセル中でリン脂質含有層は水性媒体中の被験物たる香料調製物と37℃又は周囲温度(室温若しくは約30℃)下で、通常、1秒〜5分間、必要により穏和な振盪を加え、相互作用せしめることにより結合し、又は前記リン脂質含有層上に香料調製物が吸着されることにより、両電極を通じて水晶切片に交流電場を印加することによる一定の振動数が結合又は吸着質量の多寡に依存して変動する。このような変動性は、香料調製物の香味発現について、従来から官能的に評価されてきたTI法(Time−Intensity法:新触感辞典、サイエンスフォーラム、p.420−421(1999))の結果を考慮すると、口腔内及び鼻腔内における膜又は粘膜上での香料調製物の滞留性や滞留した香料調製物からの香料成分の放出挙動を模擬するものと評価できる。こうして、本発明に従えば、電極を備えた水晶振動子マイクロバランス(QCM)の電極上に固定された真核性生物の細胞膜に由来するリン脂質含有層は、口腔内の細胞膜モデルとして用いることができる。また、前記結合又は結合の程度の強弱(多少)、より具体的には、強乃至中乃至弱は、TI法により評価される香料調整物の香味発現の遅(又は後半)乃至中程度(又は中盤)乃至早(又は前半)に対応(匹敵)するものと、関連付けることもできる。したがって、上記の評価に際し、香味発現性についてTI法により一定の評価がなされているか、或いは予め評価されている香料組成物又は香料調製物(例えば、本出願人から市販されている、香料調製物、エッセンス、ハセクリア(登録商標)、クラウディ)に対する前記振動数の変動値を比較対照として用いることにより、評価の客観性を高めることもできる。
以下、本発明を特定の態様によりさらに具体的に説明するが、本発明をかような態様に限定することを意味するものでない。
参考例1:レモンエッセンスの製造
レモン精油10gに60質量%のエタノール水溶液90gと混合し、静置して浮上する油層を分離した後、アルコール層を濾紙濾過して、レモンエッセンス(参考品1)を調製した。
参考例2:レモン乳化組成物の製造(平均粒径80nm)
グリセリン75g、イオン交換水10gの混合液にデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製DECAGLYN 1−50SV)の精製品5gを溶解し水相とする。そこに参考例1で使用したレモン精油10gをTK−ホモミキサー(プライミクス社製)により8000rpmで攪拌しながら混合し、10分間の乳化を行って、レモン乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物は平均粒径80nm(参考品2)であった。
参考例3:レモン乳化組成物の製造(平均粒径120nm)
グリセリン75g、イオン交換水10gの混合液に参考例2で使用したのと同じデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製DECAGLYN 1−50SV)5gを溶解し水相とする。そこに参考例1で使用したレモン精油10gをTK−ホモミキサー(プライミクス社製)により6000rpmで攪拌しながら混合し、10分間の乳化を行って、レモン乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物は平均粒径120nm(参考品3)であった。
参考例4:レモン乳化組成物の製造(平均粒径250nm)
グリセリン61g、イオン交換水32gの混合液に参考例2で使用したのと同じデカグリセリンモノステアレート(日光ケミカルズ社製DECAGLYN 1−50SV)1gを溶解し水相とする。そこに参考例1で使用したレモン精油5gをTK−ホモミキサー(プライミクス社製)により5000rpmで攪拌しながら混合し、10分間の乳化を行って、レモン乳化組成物を調製した。得られた乳化組成物は平均粒径250nm(参考品4)であった。
参考例5:水晶振動子センサーの洗浄および調製
市販の水晶発振子センサー(イニシアム社製・アクリル素材セル 27MHzの金電極部分に、ピランハ溶液(過酸化水素:濃硫酸=1:3混合液)を2μl滴下し、5分間静置し、その後純水にて表面を洗浄した。表面に残った水分を紙に吸い取って除去し、センサーの洗浄を行った。
クロロホルム溶液10ml中に10mgのジミリストイルホスファチジルコリン(以下DMPCと記す)を溶解し、DMPCクロロホルム溶液を調製した。この溶液を前記の操作にて洗浄した水晶振動子センサーの金電極部分に滴下し、窒素にて乾燥させたものをDMPC固定化水晶振動子センサーとした(センサー1とする)。
また同様に水晶振動子センサーの金電極部分に、DMPCおよびジミリトイルホスファチジルグリセロール(以下DMPGと記す)を1:1で混合した計10mgを、クロロホルム10ml中に溶解させ調製し、この溶液を水晶振動子センサーの金電極部分に滴下し窒素にて乾燥させたものをDMPC:DMPG(1:1)固定化水晶振動子センサーとした(センサー2とする)。
さらに、水晶振動子センサーの金電極部分に、DMPCおよびDMPGを1:2で混合した計10mgを、クロロホルム10ml中に溶解させ調製し、この溶液を水晶振動子センサーの金電極部分に滴下し窒素にて乾燥させたものをDMPC:DMPG(1:2)固定化水晶振動子センサーとした(センサー3とする)。
実施例1:エッセンスと乳化組成物との比較
物性変化・分子間相互作用定量QCM装置(イニシアム社製 AFFINIX QN μ)に参考例5のセンサー1を装着した。センサー装着後、センサーセルに500μlの純水を加え、センサー部分に浸漬させ、振動数が安定するまで放置しておいた。
次に、レモンエッセンス(参考品1)を純水にて100倍に希釈した。同様に、レモン乳化組成物(参考品2)を純水にて500倍に希釈し、レモン乳化組成物(参考品4)を純水にて250倍に希釈した。これらの純水の希釈液をQCM装置に供し、水晶振動子の振動周波数変化を測定した。
QCM装置の振動数が安定した後、前記参考品1、2および4の希釈液1μlをそれぞれセンサーセルの純水中に添加した。また、適宜振動周波数の測定中に前記の添加操作を行い、添加後の振動周波数の経時変化について測定した。測定結果について図2に示す。
図2より、参考品1のレモンエッセンスを添加した場合では周波数変化はほとんど見られなかった。一方で、参考品2のレモン乳化組成物では振動周波数の減少が見られ、参考品4のレモン乳化組成物ではさらに振動周波数の減少が顕著であったことが示された。すなわち、エッセンスでは口腔内のモデル細胞膜であるDMPCとほとんど結合しないが、乳化組成物ではDMPCと容易に結合し、香味発現が遅れている可能性が示唆された。
実施例2:粒径の異なる乳化組成物の比較
実施例1と同様に、QCM装置にセンサー1を装着し、センサー装着後、センサーセルに500μlの純水を加え、センサー部分に浸漬させ、振動数が安定するまで放置しておいた。
次にレモン乳化組成物(参考品3)を純水にて500倍に希釈し、実施例1で調製したレモン乳化組成物(参考品2)の純水の希釈液の2品をQCM装置に供し、水晶振動子の振動周波数変化を測定した。
QCM装置の振動数が安定した後、前記参考品2および3の希釈液1μlをそれぞれセンサーセルの純水中に添加した。また、適宜振動周波数の測定中に前記の添加操作を行い、添加後の振動周波数の経時変化について測定した。測定結果について図3に示す。
図3より、参考品2および参考品3のレモン乳化組成物では振動周波数の減少が見られ、参考品3のレモン乳化組成物では振動周波数の減少値が参考品2より大きいことが示された。実施例1の結果とあわせて、乳化組成物の粒径が大きいほど振動周波数の減少値が大きいことが示され、粒径の大きい乳化組成物ではDMPCと結合しやすく、香味発現が遅れている可能性が示唆された。
実施例3:センサーの感応膜の違いによる比較
QCM装置に参考例1で調製したセンサー1(DMPC)、センサー2(DMPC:DMPG(1:1))またはセンサー3(DMPC:DMPG(1:2))を装着し、センサー装着後、センサーセルに500μlの純水を加え、センサー部分に浸漬させ、振動数が安定するまで放置しておいた。
次いで、実施例1で調製したレモン乳化組成物(参考品2)の純水の希釈液をQCM装置に供し、水晶振動子の振動周波数変化を測定した。
QCM装置の振動数が安定した後、前記参考品2の希釈液1μlをセンサーセルの純水中に添加した。この操作をセンサー1〜3について行い、添加後の振動周波数の経時変化
について測定した。測定結果について図4に示す。
図4より、センサー1に参考品2のレモン乳化組成物を添加したときは振動周波数の減少が見られることが示されたが、センサー2およびセンサー3についても振動周波数の減少が見られ、センサー1よりも減少値が大きいことが示された。すなわち、周波数の変化はDMPCに特化しているのではなく、他の口腔内のモデル細胞膜であるDMPGをセンサーの感応膜に使用した場合においても周波数の変化が見られ、乳化組成物では口腔内の細胞膜の作用により香味発現が遅れている可能性が示唆された。
実施例4:TI法による香味発現の評価
実施例1で使用したレモンエッセンス(参考品1)、レモン乳化組成物(参考品2)およびレモン乳化組成物(参考品4)を蒸留水にて希釈し、参考品1、参考品2および参考品4の水溶液を、TI法にて香味を評価した。TI法は官能評価の一手法であり、経時的な味の強さを評価し、味の強度を時間軸上にプロットして曲線を得て、この曲線を基に、評価するサンプルの味の経時的な変化の特性や味質改良効果を評価する手法である。
TI法は、以下の手順で行った。(1)試料(10g)を口に入れてすぐ飲み込み、同時に時間計測を始める、(2)香味強度を経時的に記録し、グラフにする。香味強度の数値が大きいほど、香味が強いことを表す。
TI法による評価は、7名のパネルにより行った。その平均的な評価結果を図5に示す。
図5に示すとおり、参考品1と比較して、参考品2および参考品4は香味が遅れて発現され、香味の発現が持続することが示された。よって、エッセンスと比較して乳化香料は香味が遅れて発現され、香味の発現が持続することがTI法より確認された。また、乳化香料の粒径が大きいほど香味発現が遅れて発現され、香味の発現が持続することが示された。
実施例1と実施例4の結果により、TI法の結果とリン脂質を用いた水晶発振子センサーの周波数変化には相関関係があることが示された。これにより水晶振動子の振動周波数変化を測定することにより、官能評価を実施しなくても香味発現の時間をある程度予測できることが示された。
本発明によれば、電極を備えた水晶振動子マイクロバランス(QCM)の電極上に固定された真核性生物の細胞膜に由来するリン脂質含有層を口腔内の細胞膜モデルとして用いる、香料調製物の口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測するための方法が提供できる。したがって、本発明は香料調製物の製造、利用する技術分野で利用できる。

Claims (5)

  1. 香料調製物の口腔内及び鼻腔内における香味発現の傾向を予測するための方法であって、
    電極を備えた水晶振動子マイクロバランス(QCM)の電極上に固定された真核性生物の細胞膜に由来するリン脂質含有層を口腔内の細胞膜モデルとして用意する工程、
    前記モデルと香料組成物を水性媒体中で接触させて、前記モデルへの香料組成物の結合の程度を測定する工程、
    前記結合の程度の強乃至中乃至弱を前記香味発現が後半乃至中盤乃至前半であるものとして評価する工程
    を含んでなり、
    前記香料組成物が乳化組成物である、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、リン脂質含有層が炭素原子数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸に由来する部分を含むグリセロリン脂質であるホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールから選ばれる1種以上のリン脂質を含有する、方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、グリセロリン脂質が、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上である、方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、細胞膜モデルと香料組成物の接触が水性媒体を含有するセル中において水晶振動子の一方の電極上にリン脂質が固定されたQCM上で実施される、方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、細胞膜モデルへの香料組成物の結合の程度がQCMにおける共振周波数振動数の変化により決定される、方法。
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