JP6870629B2 - バイオリアクターバッグのスケールアップ方法 - Google Patents
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Description
使い捨てのバッグを利用した培養方法として、シーソー運動で培養液が入ったバイオリアクターを揺動させることで、培養液に供給された栄養源等を混合するとともに液表面から酸素の供給及び炭酸ガスの供給あるいは除去を行うウェーブ式攪拌培養があり、動物細胞や昆虫細胞の培養、抗体医薬やワクチンの種培養などに用いられている。
本発明は、スケールアップする際の手間を低減し、汚染リスクを低減することができるバイオリアクターバッグ及びバイオリアクターバッグのスケールアップ方法を提供することを目的とする。
(1)膜ろ過モジュールが取り付けられた、ボトムシート、トップシート、4つの面からなる側壁シートで形成された直方体型のバイオリアクターバッグであって、
前記側壁シートは、ボトムシートから垂直方向に伸縮可能であり、
前記側壁シートの少なくとも対向する2つの面は、伸長時はボトムシートの面積よりも大きな面積を有し、
ボトムシートを底面にした培養と、前記伸長時にボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートを底面にした培養のどちらも可能であるバイオリアクターバッグ。
(2)前記伸長時はボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートは、伸長時にボトムシートの面積の3倍以上の面積となる前記(1)に記載のバイオリアクターバッグ。
(3)前記膜ろ過モジュールがATF式膜ろ過モジュールである前記(1)または(2)に記載のバイオリアクターバッグ。
(4)前記バイオリアクターバッグをウェーブ式攪拌培養に用いる前記(1)〜(3)の何れか一項に記載のバイオリアクターバッグ。
(5)前記(1)〜(4)の何れか一項に記載のバイオリアクターバッグを用いたバイオリアクターバッグのスケールアップ方法であって、以下のstep1〜5の工程を有するバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
step1.バイオリアクターバッグに、培地を入れ、細胞を播種し、側壁シートを収縮した状態で、ボトムシートを底面にした培養を行う(小スケール培養)
step2.培地を、膜ろ過モジュールを用いて膜ろ過し、膜ろ過によって膜を透過した培地は系外へ排出し、膜ろ過により膜を透過しなかった細胞および培地をバイオリアクターバッグに返送する
step3.側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させ、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートが底面となるように、90度倒して設置する
step4.前記小スケール培養の培地よりも多い容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する
step5.培養を再開する(大スケール培養)
(6)前記step3において、側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させた際に、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートの面積がボトムシートの面積の3倍以上であり、前記step4において、小スケールの培地の3倍以上の容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する前記(5)に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
(7)前記膜ろ過モジュールが、ATF式膜ろ過モジュールである前記(5)または(6)に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
(8)前記培養がウェーブ式攪拌培養である前記(5)〜(7)の何れか一項に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
前記伸長時はボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートは、伸長時にボトムシートの面積の3倍以上の面積となることが好ましく、3倍以上5倍以下の面積となることがより好ましい。
側壁シートは、伸縮可能とするために、折り畳み可能なものが好ましく、例えば、プラスチックフィルム又はラミネート材料のようなポリマー材料が挙げられ、可撓性であり、また、中が見えるように透明であるシートを有することが好ましい。
前記バイオリアクターバッグのボトムシート、トップシート、側壁シートとしては、好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。
前記直方体型としては、伸長時はボトムシートの面積よりも大きな面積となる少なくとも対向する2つの側壁シートを有する。伸長時に、ボトムシートの面積よりも大きな面積となる側壁シートを有することにより、前記側壁シートを底面にした場合、面積が増加し、培地の容量を増やすことができる。
前記蛇腹折り構造部分は、バイオリアクターバッグのトップシートに近い部分に設けることが好ましい。
ボトムシートを底面とした培養を行う際は、蛇腹折り構造部分の蛇腹を折りたたんだ状態で培養を行い、側壁シートを底面とした培養を行う際は、蛇腹折り構造部分の蛇腹を引き伸ばし、伸長させて、培養を行う。蛇腹折り構造部分は伸長させて、ガスを入れることにより膨らみ、膨らんだ状態で培養を行うことができる。
蛇腹折り構造部分を伸長させた際のバイオリアクターバッグの容量は5L〜50Lとなることが好ましい。
また、バイオリアクターバッグを用いた培養において、液体部分(培地+細胞)と空間の部分は、体積比で、液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1が好ましい。従って、垂直方向に伸縮可能とする部分の長さは、液体部分:空間の部分が、前記の範囲となるように設けることが好ましい。
伸縮可能とする部分の長さが短いと、側壁シートを伸長した際の容量を大きくしようとする場合、ボトムシートを底面とした際の、バイオリアクターバッグ内の培地上の空間の部分が大きくなり、CO2等を多く入れる等の無駄が生じるので、好ましくない。
伸縮可能とする部分の長さは、ボトムシートを底面とした際のバイオリアクターバッグ内の液体部分と空間の部分を、前記液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1の範囲にすることができ、伸長時に側壁シートの面積がボトムシートの面積よりも大きくなり、液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1の範囲としても、収縮時の5倍程度の容量の液体を入れることができるような長さであることが好ましい。
前記側壁シートが、ボトムシートから垂直方向に伸縮可能とすることにより、ボトムシートを底面とした際のバイオリアクターバッグ内の空間部分を小さくし、前記液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1の範囲にすることができ、ガス空間の無駄を省くことができる。また、伸長時に側壁シートの面積がボトムシートの面積よりも大きくなることにより、液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1の範囲であっても、収縮時の5倍程度の容量の液体を入れることができ、スケールアップすることができる。
前記蛇腹折り構造は、予め、側壁シートに折り目を設けておき、ボトムシートおよびトップシートと継ぎ合わせた後に折り畳み、蛇腹折り構造とすることが好ましい。
膜ろ過モジュールは、ボトムシートを底面にした培養、及び側壁シートを底面にした培養の際に、培地上の空間部分となる位置であり、ボトムシートを底面にした培養の際に、前記蛇腹折り構造となる部分以外の位置に取り付けられることが好ましい。
膜ろ過モジュールの取り付け方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
膜ろ過モジュールにより、操作中に細胞が外気に触れることなく、培地の交換が可能となる。膜ろ過モジュールとしては、ATF(交互接線流)膜ろ過モジュールが一般的に広く使用されており、好ましい。
前記ガスの注入口/排出口、細胞・培地注入口、サンプリング口は、ボトムシートを底面にした培養、及び側壁シートを底面にした培養の際に、培地上の空間となる位置であり、ボトムシートを底面にした培養の際に、前記蛇腹折り構造となる部分以外の位置に取り付けられることが好ましい。
また、前記膜ろ過モジュール等に取り付けられ、バイオリアクターバッグ内部の培地中に導かれているチューブは、チューブ先端に重量物がついており、バッグ内部でチューブが垂れ下がっているような構造にすることにより、ボトムシートを底面にした場合と、側壁シートを底面にした場合、どちらにおいても、重力によってチューブが液面に漬かる状態にすることができる。
step1.バイオリアクターバッグに、培地を入れ、細胞を播種し、側壁シートを収縮した状態で、ボトムシートを底面にした培養を行う(小スケール培養)
step2.培地を、膜ろ過モジュールを用いて膜ろ過し、膜ろ過によって膜を透過した培地は系外へ排出し、膜ろ過により膜を透過しなかった細胞および培地をバイオリアクターバッグに返送する
step3.側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させ、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートが底面となるように、90度倒して設置する
step4.前記小スケール培養の培地よりも多い容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する
step5.培養を再開する(大スケール培養)
前記step3において、側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させた際に、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートの面積がボトムシートの面積の3倍以上であり、前記step4において、小スケールの培地の3倍以上の容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入することが好ましい。
図1A〜図1Cは本発明のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法の一例である。図1Aは、step1を、図1Bはstep2を、図1Cはstep3〜step5を示す。
図1Aに示すstep1では、バイオリアクターバッグ1は、ATF式膜ろ過モジュール2が取り付けられており、ボトムシート3、トップシート4、側壁シート5で形成された直方体型のバイオリアクターバッグであって、前記側壁シートは、ボトムシートから垂直方向に伸縮可能な部分6を有する。
前記細胞としては、CHO細胞をはじめとする、浮遊培養が可能な細胞が挙げられ、NSO細胞も含まれる。
小スケールの際の培地の深さは、液体部分:空間の部分=0.3:1〜1:1となるようにすることが好ましく、細胞密度は、1.0〜2.0×105cells/mLとなるように播種することが好ましい。
細胞が増殖(あるいはその後、細胞濃度が停滞)して、培地の栄養が不足してきたらスケールアップを行う。培地を、膜ろ過モジュール2を用いて膜ろ過し、膜ろ過によって膜を透過した培地は系外へ排出し、膜ろ過により膜を透過しなかった細胞および培地をバイオリアクターバッグに返送する(図1B、step2)。
ATF膜ろ過モジュールにおけるろ過プロセスにおいて、細胞と培地が、チューブ11を透過して膜ろ過され、膜を透過した培地はチューブ12を通過し、系外へ排出される。膜を透過せず残った細胞と培地は、再びチューブ11を通り、培養バッグへ返送される。このチューブ11内を(培地+細胞)が往復を繰り返し、古い培地を排出する。
側壁シートをボトムシートの垂直方向に引き伸ばし、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートが底面となるように、90度倒して設置する(図1C、step3)。
この時、膜ろ過モジュールの取り付け位置が、培地を注入した際に空間部分となるようにする。
次に、前記小スケール培養の培地よりも多い容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する(図1C、step4)。
新しい培地は、細胞・培地注入口に取り付けられたチューブを用いて注入することができる。
そして、培養を再開する(図1C、step5)。
例えば、前記step1.及びstep5において、液体部分:空間部分=1:1の状態を想定した場合、伸長時の側壁のシート面積が伸長前の側壁シート面積の5倍となるような面積となる側壁シートを有し、伸長時にボトムシートの面積の5倍とすることにより、新しい培地の容量を5倍とすることができる。
本発明のバイオリアクターバッグにより、ボトムシートを底面として小スケール培養を行った後、側壁シートを底面として大スケール培養を行うことができる。従って、ボトムシートを底面とした際と、側壁シートを底面とした際の底面は、同じ長さの辺を有する。ウェーブ式攪拌培養において、小スケール培養、大スケール培養の際に、バイオリアクターバックを揺り動かす方向を、前記同じ長さの辺の方向に揃えることにより、攪拌条件を同じにしやすくなる。
しかし、本発明のバイオリアクターバッグを用いることにより、培養した細胞を移し変ええる操作が減少し、コンタミネーションするリスクも低減することができる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)で作製された、10cm×10cmのトップシートおよびボトムシート(2枚)と、10cm×50cmの側壁シート(4枚)を準備した。前記側壁シートのトップシート側に折り目を入れ、継ぎ合わせ、直方体に成形した。
次に側壁シートのトップシート側に折り目に沿って、蛇腹折り構造部分を設け、伸縮可能とした。収縮時の大きさは、高さが10cmとした。
10cm×50cmの側壁シートの蛇腹折り構造部分の下に、ATF式膜ろ過モジュール、二酸化炭素(5%)注入口/排出口、細胞・培地注入口、サンプリング口を取り付けた。
1.5×105cells/mlとなるように細胞を、培養液の入ったバッグに播種し、ボトムシートを底面としたWAVE式攪拌培養で培養した(小スケール培養)。この時、液体部分の深さは5cmであり、バイオリアクターバッグの液体部分(培地+細胞)と空間の部分は、体積比で、液体部分:空間の部分=1:1であった。2日目終了時に、細胞濃度が増大し、栄養成分が枯渇したことを確認し、膜ろ過により培地を排出し、細胞と一部の培地を返送した上で、側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長し、面積がボトムシートよりも大きくなる側壁シートが底面となるように、90度倒して設置した。新しい培地を継ぎ足し、液体部分の深さを5cm、前記液体部分:空間の部分=1:1とし、細胞密度を2.0×105cells/mlに調整した。以降、細胞濃度が増大し、栄養成分が枯渇するまで、WAVE式攪拌培養を行った(大スケール培養)。
前記小スケール培養、及び大スケール培養は、底面の10cmとなる辺がロッキング方向となるように設置して培養を行った。
側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させた際に、側壁シートの面積がボトムシートの面積の5倍であり、小スケールの培地の5倍の容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入することができた。
図2に、培養時間と細胞密度の関係を示す。
2 ATF式膜ろ過モジュール
3 ボトムシート
4 トップシート
5 側壁シート
6 伸縮可能な部分
11、12 チューブ
Claims (4)
- バイオリアクターバッグを用いたバイオリアクターバッグのスケールアップ方法であって、
前記バイオリアクターバッグは、膜ろ過モジュールが取り付けられた、ボトムシート、トップシート、4つの面からなる側壁シートで形成された直方体型であって、
前記側壁シートは、前記ボトムシートから垂直方向に伸縮可能であり、
前記側壁シートの少なくとも対向する2つの面は、伸長時は前記ボトムシートの面積よりも大きな面積を有し、
前記ボトムシートを底面にした培養と、前記伸長時に前記ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する前記側壁シートを底面にした培養のどちらも可能であるバイオリアクターバッグであり、
以下のstep1〜5の工程を有するバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
step1.バイオリアクターバッグに、培地を入れ、細胞を播種し、側壁シートを収縮した状態で、ボトムシートを底面にした培養を行う(小スケール培養)
step2.培地を、膜ろ過モジュールを用いて膜ろ過し、膜ろ過によって膜を透過した培地は系外へ排出し、膜ろ過により膜を透過しなかった細胞および培地をバイオリアクターバッグに返送する
step3.側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させ、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートが底面となるように、90度倒して設置する
step4.前記小スケール培養の培地よりも多い容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する
step5.培養を再開する(大スケール培養) - 前記step3において、側壁シートをボトムシートの垂直方向に伸長させた際に、ボトムシートの面積よりも大きな面積を有する側壁シートの面積がボトムシートの面積の3倍以上であり、前記step4において、小スケールの培地の3倍以上の容量となる新しい培地をバイオリアクターバッグ内に注入する請求項1に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
- 前記膜ろ過モジュールが、ATF式膜ろ過モジュールである請求項1または2に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
- 前記培養がウェーブ式攪拌培養である請求項1〜3の何れか一項に記載のバイオリアクターバッグのスケールアップ方法。
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