JP6867857B2 - 磁気共鳴撮像装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気共鳴撮像装置における磁化移動法または飽和移動法を用いた計測技術に関する。
磁気共鳴撮像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、強く安定した磁場(静磁場)中に置かれた被検体に含まれる水素原子核が、特定周波数の電磁波(高周波磁場)に共鳴する核磁気共鳴現象を利用し、被検体内部の情報を画像化する診断装置である。生体で検出できる水素原子核からの信号の殆どは、水から得られるものである。生体組織内の水密度や核磁気共鳴状態の変化速度(緩和時間)など様々な要因によって水の信号強度が変化する為、疾患等によって生じた生体内組織の構造変化や性状変化などの情報を水の信号の強度変化として計測して画像化することが可能である。検出対象とする情報の種類に応じて、様々なMR撮像法が提案されている。
近年、化学交換飽和移動(Chemical Exchange dependent Saturation Transfer:CEST)イメージングと呼ばれるMR撮像法が注目を集めており、生体内化合物(代謝物質)のマッピングやpH等の生体内情報の検出が可能に成ると期待されている。このCESTイメージングは、磁化移動法や飽和移動法として以前より知られていたコントラスト原理に基づく撮像法である。従来の代謝物質計測法であるMRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)やMRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)が低濃度物質である生体内代謝物質に関する情報を直接検出対象としているのに対して、CESTイメージングは高濃度物質である水の信号変化を通じて、間接的に高感度に生体内代謝物質が観測できる方法である。
CESTイメージングの具体的な計測方法としては、まずプリパルスとして、対象とする化合物に含まれる化学交換可能なプロトンの共鳴周波数をもつ高周波磁場パルス(選択飽和パルス)を複数発被検体に照射(狭帯域照射)し、化学交換可能なプロトンを飽和状態とさせる。例えば、パルス長35msのガウス型パルスを選択飽和パルスとして40発被検体に照射する。次に、選択的に飽和状態にされたプロトンが、化学交換によって周囲の自由水のプロトンと入れ替わり、自由水プロトンからの磁気共鳴信号が低下(ネガティブコントラスト)するので、それを通常のMRIパルスシーケンス(例えば1ショット2次元ファーストスピンエコー法のパルスシーケンス)により計測する。この計測を、選択飽和パルスの照射周波数を連続的に変化させながら繰り返すことにより、対象とする化合物に含まれる化学変換可能なプロトンの共鳴周波数と自由水の共鳴周波数とにおいて信号低下を示す二峰性(多峰性)の信号変化曲線(Zスペクトル)を得ることができる。
例えば、CESTシーケンスを用いて鶏卵の卵白に含まれるAmide基プロトンを計測する場合、プリパルス(選択飽和パルス)の送信周波数を「卵白に含まれるAmide基プロトンの共鳴周波数(平均値)である+3.5 ppm」に設定し、磁気共鳴信号の低下を計測する。この計測を選択飽和パルスの送信周波数を連続的に変化させながら繰り返すことにより、Amide基プロトンの共鳴周波数「+3.5ppm」と自由水プロトンの共鳴周波数「0ppm」とで信号低下を示す左右非対称な変化特性を有するZスペクトルが得られる。
また、CESTシーケンスを用いて鶏卵の卵白に含まれるAmide基プロトンを計測する場合、選択飽和パルスの送信周波数が−3.5 ppm時と+3.5 ppm時での信号の磁気共鳴信号の差分信号であるAPT(Amide Proton Transfer)信号を用いて、APT強調画像と呼ばれる画像を生成することも可能である。APT信号は、式(1)で表される。
(数1)
APT信号=(Ssat−3.5 ppm−Ssat+3.5 ppm)/S ・・・(1)
ここで、Ssat−3.5 ppmとSsat+3.5 ppmは、それぞれ飽和パルスの送信周波数が−3.5 ppm時と+3.5 ppm時に計測された磁気共鳴信号であり、Sは飽和パルスをオフにして撮像した信号である。
鶏卵についてCESTイメージングを行ってAPT強調画像を得た場合、APT強調画像において、卵白の部分にのみ強い信号値を示す画素が見られ、APTに起因する信号増加がAmide基プロトンを含む卵白部分でのみ生じていることを確認できる。
CESTイメージングで得られる磁気共鳴信号の強度は、完全な飽和状態に到る迄は選択飽和パルスの照射エネルギーに比例して低減するため、選択飽和パルスとして比較的照射時間の長いパルスが多数送信される。このとき、選択飽和パルスの送信間隔において非送信時間(デッドタイム)をできるだけ発生させないようにすることが望ましいため、非特許文献1には、送信コイルとして2チャンネル独立駆動型コイルを用い、各チャンネルを別々の電源装置に接続し、2チャンネルのコイルから交互送信を行わせる構成が開示されている。
J. Keupp et al.、Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.、19、2011.
上述したように、化学交換可能なプロトンの信号強度は、選択飽和パルスの照射エネルギーに比例して低減(飽和)するため、短時間で完全な飽和状態にするためには、照射エネルギーの大きな選択飽和パルスをデッドタイム(非照射時間)をほとんどなくして連続的に照射することが望ましい。
しかしながら、一般的なMRI装置の高周波電源は、エネルギーがあまり大きくない高周波パルスを送信コイルから連続的に照射させることはできるが、大電力の高周波パルスをデッドタイムをほどんどなくして連続的に照射させる仕様には設計されていない。そのため、一般的なMRI装置用の高周波電源は、CESTイメージング用の選択飽和パルス用の高周波電力パルスを連続的に出力させると、徐々に出力が低下する傾向がある。このように高周波電源の出力が徐々に低減すると、所望のエネルギーの選択飽和パルスを照射することができず、化学交換可能なプロトンを所定の時間内に飽和させることができない。
本発明の目的は、電源の最大出力の低下を防ぎながら、選択飽和パルスの連続照射を可能にするMRI装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のMRI装置は、被検体に高周波磁場パルスを照射する送信コイルと、送信コイルに接続されて高周波電力パルスを供給する電源とを有する。送信コイルは、複数チャンネルを含み、電源は、系統が複数あり、系統は、チャンネルの1以上にそれぞれ接続され、かつ、デューティ比に応じて最大出力に制限がある。このような系統から複数のチャンネルに順にそれぞれ高周波電力パルスを供給し、複数のチャンネルから順に高周波磁場パルスを照射させることにより送信コイル全体として所定値以下の非照射時間で複数発連続的に高周波磁場パルスを照射させた場合に、各系統のデューティ比が所定値以下になるように、系統の数が設定されている。
本発明によれば、電源の最大出力の低下を防ぎながら、選択飽和パルスの連続照射を可能にするMRI装置を提供することができる。
本発明の一実施形態のMRI装置の構成を示すブロック図である。 (a)は、実施形態の送信コイルの一例であって、4つのコイルが4チャンネルを構成している4チャンネルコイルと、それぞれのチャンネルに接続された電源の系統を示す図であり、(b)は、4つのエレメントが1つのチャンネルとして同期して動作を行う4チャンネルコイルを示す図である。 (a)は、比較例の4チャンネルコイルの全チャンネルから選択飽和パルスの同時照射を行う場合の、チャンネル毎の出力パルスを示すパルスシーケンスの図であり、(b)は、本実施形態の4チャンネルコイルを用いて各チャンネルから順繰りに選択飽和パルスを照射する場合の、チャンネル毎の出力パルスを示すパルスシーケンスの図であり、(c)は、本実施形態の4チャンネルコイルを用いて、2チャンネルづつ交互送信する場合の、チャンネル毎の出力パルスを示すパルスシーケンスの図である。 (a)は、実施形態の水平磁場方式のMRI装置の外観図であり、(b)は、実施形態の垂直磁場方式のMRI装置の外観図であり、(c)は、実施形態の開放感を高めたMRI装置の外観図である。 CESTパルスシーケンスの一例を示す図である。 本実施形態を実施する際のフローチャートである。 本実施形態を実施する際の操作者から入力を受け付ける表示装置での表示画面例を示す図である。 (a)および(b)は比較例の、(c)〜(f)は実施例の、選択飽和パルスの磁場分布をそれぞれ示す図である。
本発明の一実施形態について説明する。
<<第1の実施形態>>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
第1の実施形態のMRI装置は、図1に示したように、被検体1に高周波磁場パルスを照射する送信コイル5と、送信コイルに接続されて高周波電力パルスを供給する電源7とを少なくとも備えている。送信コイル5は、例えば図2(a)に示すように、複数チャンネル5−1〜5−4を含む。電源7は、複数の系統(例えば、7−1〜7−4)を有する。系統7−1〜7−4の数は、複数であれば、チャンネル5−1〜5−4の数と異なっていてもよい。系統7−1〜7−4は、チャンネル5−1〜5−4の1以上にそれぞれ接続されている。また、系統7−1〜7−4は、デューティ比に応じて最大出力に制限がある。
なお、ここでいう系統7−1〜7−4は、それぞれの出力値が相互に影響を与えない、すなわち、一つの系統が最大出力を出力中に、他の系統から最大出力を出力できる構造であればよい。よって、各系統が電気的に完全に独立な構成であってもよいし、一部が共有された構造であってもよい。
系統7−1〜7−4は、接続されているチャンネルにそれぞれ高周波電力パルスを供給する。このとき、例えば図3(b)に示すように、送信コイル5全体として、所定値以下の非照射時間Tで複数発連続的に高周波磁場パルスが照射されるように、系統7−1〜7−4から接続されているチャンネル(5−1〜5−4)に高周波電力パルスを供給した場合、各系統7−1〜7−4のデューティ比が所定値以下になるように、系統7−1〜7−4の数が設定されている。言い換えるならば、各チャンネル(5−1〜5−4)に供給される高周波電力パルスのデューティ比が、図3(b)のように所定値以下になるようにチャンネル(5−1〜5−4)の数が設定されている。上述のデューティ比は、25%以下であることが望ましい。
このように、本実施形態のMRI装置では、電源の系統から出力され、チャンネルに入力される高周波電力パルスのデューティ比に依存して、電源の系統の最大出力が変化することに着目し、デューティ比を所定値以下にして最大出力の低減を抑制する。その際、本実施形態では、高周波磁場パルスの非照射時間を増加させるのではなく、送信コイルのチャンネル数(系統数)を増加させる構成とする。これにより、CESTイメージングの選択飽和パルスのような大きなエネルギーの高周波磁場パルスを、送信コイル5全体として、複数発連続的に照射できる。
通常の高周波用電源7は、デューティ比(=τ/T,ただし、Tは、高周波電力パルスを連続送信する場合の1周期の時間、τは、高周波電力パルスの連続送信時間)の上限を50〜90%程度としている仕様のものが多い。しかしながら実際には、この上限は出力強度に依存し、CESTイメージング用の選択飽和照射パルスのように、エネルギーの大きな高周波磁場パルスを複数発連続送信させる場合には、出力可能な最大出力はデューティ比によって上限が決まる。出力可能な最大出力とデューティ比との関係の一例を表1に示す。表1から明らかなようにデューティ比が大きくなると、最大出力が大きく低下する。このため、大きなデューティ比で大出力の高周波電力パルスを電源から出力させると、実際には次第に出力エネルギーが低下してしまう。具体的には、表1に示した電源では、デューティ比10%の場合の最大出力を100%とした場合、デューティ比50%の最大出力は、10%にまで低下する。
Figure 0006867857
本実施形態のMRI装置では、この現象に考慮し、各系統(7−1〜7−4)のデューティ比が所定値以下になるように、系統(7−1〜7−4)の数が設定されているため、個々の系統のデューティ比を所定値以下に抑制でき、各系統(7−1〜7−4)からチャンネル(5−1〜5−4)に必要な出力の高周波電力パルスを出力することができる。これにより、CESTイメージングの選択飽和パルスとして所望するエネルギーの高周波磁場パルスを図3(b)のように、送信コイル5全体として複数発連続的に照射することができる。
本実施形態のMRI装置では、チャンネル(5−1〜5−4)の数および系統(7−1〜7−4)の数は、設計時に決定された固定の数であってもよいし、複数のチャンネルおよび系統の中から、所定のデューティ比の条件を満たすように、系統から高周波電力パルスを供給するチャンネルを選択部(後述する計算機9)が選択する構成であってもよい。チャンネル数および系統数が設計時に決定された固定数とする構成である場合、一例としては、系統数およびチャンネル数をそれぞれ4以上とし、チャンネルごとに系統に接続されている構成とする。また、系統から高周波電力パルスを供給するチャンネルを選択部(後述する計算機9)が選択する構成とする場合、一例としては、送信コイル5は複数チャンネルを含み、電源7は系統が複数あり、系統はチャンネルにそれぞれ接続された構成とし、選択部が、チャンネルに供給される高周波電力パルスのデューティ比が所定値以下になるように、系統から高周波電力パルスを供給するチャンネル数を設定するように構成する。
以下、本実施形態のMRI装置の全体の構造について説明する。
図1は、本実施形態のMRI装置の構成を示すブロック図である。MRI装置は、上述した送信コイル5および電源7の他に、被検体1が置かれる空間に静磁場を発生する静磁場コイル2と、互いに直交する3方向の傾斜磁場を与えるための傾斜磁場コイル3と、被検体1から発生する磁気共鳴信号を受信する受信用高周波コイル6(以下、単に受信コイルという)と、静磁場均一度を調整するシムコイル4と、を備える。なお、シムコイル4は、必ずしも備えていなくてもよい。
静磁場コイル2は、MRI装置の構造に応じて、種々の形態のものが採用される。例えば、図4(a)は、静磁場コイル2として、ソレノイドコイル(トンネル型磁石)を用いて静磁場を発生する水平磁場方式のMRI装置100の例である。図4(b)は、開放感を高めるために磁石(静磁場コイル2)を上下に分離したハンバーガー型(オープン型)の垂直磁場方式のMRI装置200の例である。また、図4(c)は、図4(a)と同じトンネル型磁石(静磁場コイル2)を用いるMRI装置であるが、磁石の奥行を短くし且つ斜めに傾けることによって、開放感を高めたMRI装置300の例である。なお、これらは一例であり、本実施形態のMRI装置はこれらの形態に限定されるものではなく、装置の形態やタイプを問わず、公知の各種のMRI装置の形態を採用することができる。
傾斜磁場コイル3及びシムコイル4には、それぞれ傾斜磁場用電源12及びシム用電源13が接続され、これらにより電力が供給されることにより、被検体1が配置された空間に傾斜磁場および静磁場均一度を補正する磁場をそれぞれ印加する。送信コイル5には、高周波用電源(送信機)7から高周波電力パルスが供給され、送信コイル5から高周波磁場パルスが被検体1に照射される。受信コイル6は、被検体1が発生した核磁気共鳴信号を検出し、検出した信号は、受信機8を通して計算機9に送られる。なお、本実施形態では送信コイル5と受信コイル6とに別個のものを用いる場合を例にあげて説明するが、送信コイル5と受信コイル6との機能を兼用する1つのコイルで構成してもよい。
計算機9は、予め登録されているプログラム、または、ユーザからの指示に従って、受信機8を介して得た磁気共鳴信号に対して様々な演算処理を行ないスペクトル情報や画像情報を生成する。計算機9には、表示装置10、記憶装置11、シーケンス制御装置14、および入力装置15などが接続されている。表示装置10は、計算機9が生成したスペクトル情報や画像情報をオペレータに表示するインタフェースである。入力装置15は、計計測条件や演算処理に必要な条件、パラメータ等をオペレータが入力するためのインタフェースである。記憶装置11には、計算機9が生成したスペクトル情報や画像情報、入力装置15を介して入力された情報等が必要に応じて記録される。
シーケンス制御装置14は、傾斜磁場用電源12、シム用電源13、高周波磁場用電源7及び受信機9の動作を制御し、傾斜磁場パルス、高周波磁場パルスの印加および核磁気共鳴信号の受信のタイミング、ならびに、印加量等を制御する。タイミングの制御は、撮像方法によって予め設定されているパルスシーケンスと呼ばれるタイムチャートに従って行う。使用するパルスシーケンスの選択、それぞれの印加量等の詳細な条件は、予めプログラムとして記憶装置11に登録されるか、または、ユーザから入力装置15を介して指示される。
つぎに、本実施形態の送信コイル5の構造例について説明する。本実施形態では、送信コイル5として、それぞれ独自に被検体1に高周波磁場(RF)を送信する複数のチャンネルを備えた多チャンネルコイルを用いる。上述した図2(a)の送信コイル5は、チャンネル5−1、5−2、5−3、5−4の4つのコイルが4チャンネルを構成している。この構成の送信コイル5を用いて、図2(a)のように配置された被検体1に対して高周波磁場パルスを照射した場合、被検体1の頭頂部側から見て、右上部はチャンネル5−1のコイルの発生する高周波磁場が支配的な領域となり、右下部はチャンネル5−2、左下部はチャンネル5−3、左上部はチャンネル5−4のコイルが各々発生する高周波磁場が支配的な領域となる。なお、チャンネル5−1、5−2、5−3、5−4の4つのコイルは、傾斜磁場コイル3と送信コイル5との間の磁場干渉を防止するRFシールド5−sにより覆われている。
図2(b)は、4チャンネルの送信コイル5の別の例である。図2(b)の送信コイル5は、チャンネル5−1a、5−1b、5−1c、5−1dが1チャンネル目(5−1)として同期して高周波磁場パルスを照射し、チャンネル5−2a、5−2b、5−2c、5−2dが2チャンネル目(5−2)、チャンネル5−3a、5−3b、5−3c、5−3dが3チャンネル目(5−3)、チャンネル5−4a、5−4b、5−4c、5−4dが4チャンネル目(5−4)として各々同期して高周波磁場パルスを照射するよう、それぞれ電源7から高周波電力パルスを動作を行う。この構成のコイルを用いて、例えば1チャンネル目(5−1)の5つのチャンネル5−1a、5−1b、5−1c、5−1dのコイルから同時に高周波磁場パルスを被検体1に照射した場合、各チャンネル5−1a、5−1b、5−1c、5−1dの発生する高周波磁場パルスが被検体1の全体に均等に照射される。
図2(a)、(b)の両コイルとも、各チャンネルから送信される高周波磁場パルスの振幅および位相は、個々独立に計算機9により設定される。本実施形態の電源(送信機)7を構成する系統7−1〜7−4は、計算機9からの制御(シーケンス制御装置14経由)に従って、各チャンネル5−1、5−2、5−3、5−4に独立に高周波電力パルスを送信する。この時、各チャンネル5−1、5−2、5−3、5−4に給電する高周波磁場電源7の系統7−1〜7−4は、少なくとも最大出力値が相互に影響を及ぼさない構造であるため、各系統7−1〜7−4のデューティ比や、デューティ比に応じた最大出力値は、系統ごとに独立に設定でき、最大出力値が表1のように制限を受ける際も系統ごとに独立に制限を受ける。
つぎに、本実施形態のMRI装置で実行するCEST用パルスシーケンスの一例を図5を用いて説明する。図5のパルスシーケンスの前半部分が、選択飽和を行う為のプリパルスシーケンス51である。図5のプリパルスシーケンス51は、パルス長35msのガウス型パルス(選択飽和パルス)151を40発連続的に照射する例を表している。このパルス長35msのガウス型パルス151の励起帯域(半値幅)は0.5ppm程度である。このプリパルスシーケンス51を照射された被検体1のプロトンのうち、このガウス型パルス151の送信周波数を中心周波数とする帯域幅0.5ppmの帯域を共鳴周波数とするプロトンが共鳴状態となり、高周波磁場のエネルギーを吸収する。これによって、各プロトンが持つ上向きのスピンと下向きのスピンの比に変化が生じる。この選択飽和パルス(ガウス型パルス)151を多数照射して、プロトンが吸収するエネルギー量が或る一定量を越えた場合、各プロトンが持つ上向きのスピンと下向きのスピンの比が1となり、磁気共鳴信号を発生する巨視的磁化がゼロとなる(この選択飽和パルス151を照射された狭帯域に共鳴周波数が含まれるプロトンは完全な飽和状態になる)。ガウス型パルス151の送信周波数を、Amide基(−NH)プロトンの共鳴周波数(平均値)である+3.5 ppmに設定した場合、「Amide基プロトン」が選択飽和パルス151が多数照射されることにより飽和状態になる。「Amide基プロトン」と「通常の殆どのMRI信号を発生している水(自由水)に含まれるプロトン」との間では常時一定の割合(速度)でプロトン交換が生じているため、飽和状態にあるプロトンが水に含まれるプロトンに置き換わり、水から発生するMRI信号が減少する。この減少したMRI信号を、図5のパルスシーケンスの後半の計測用パルスシーケンス52により計測する。図5のパルスシーケンスを、選択飽和パルス151の送信周波数を例えば+6.0ppmから−6.0ppmまで0.5ppm間隔で変化させながら繰り返す。
計測用パルスシーケンス52は、通常のMR像が計測可能なパルスシーケンスであれば何でもよく、基本的なパルスシーケンスであるスピンエコー法やグラジエントエコー法等を用いることができる。ただし、CESTイメージングでは上述のように選択飽和パルス151の送信周波数を少しづつ変化させて、その都度、図5のパルスシーケンス全体を行う必要があるため、計測用パルスシーケンス52は、出来るだけ短い計測時間で画像を得られるパルスシーケンスであることが望ましい。例えば、1ショット2次元ファーストスピンエコー法や1ショット2次元エコープラナー法等の1ショットで画像計測が可能なパルスシーケンスを計測用パルスシーケンス52として用いることができる。また、複数回計測を必要とするパルスシーケンスやマルチスライス用パルスシーケンス、3次元空間計測用パルスシーケンスを用いても構わない。
なお、上記プリパルスシーケンス51としては、「パルス長が35msで、波形種がガウス型の選択飽和パルス151で、照射数40発」という具体的な数値や名称を挙げたが、多少でも飽和状態に近付けることが可能なプリパルスシーケンスであれば、パルス長や波形種や照射数を自由に選択して組み合わせることが可能である。
次に、CEST用パルスシーケンスのプリパルスシーケンス51において、選択飽和パルス151を多数照射する際の、チャンネル毎の出力について図3(a)〜(c)を用いてさらに説明する。図3(a)〜(c)はいずれも、図2(a),(b)のような4チャンネル5−1〜5−4のコイルを用いてプリパルスシーケンス51を実行する場合のパルスシーケンスを示している。図3(a)は比較例であり、4チャンネルに1つの系統の電源を接続し、全てのチャンネルに同時に高周波電力パルスを供給し、選択飽和パルスの同時照射を行う場合のパルスシーケンスを表している。図3(b)は本実施形態のデューティ比を20%程度に低減したプリパルスシーケンスである。図3(c)は、デューティ比を50%以下に低減しつつ、かつ、選択飽和パルス151の磁場分布の均一度を向上させたプリパルスシーケンスである。なお、図3(a)〜(c)においては説明を分かり易くするために、選択飽和パルス151の波形としてガウス波の代わりに矩形波を用いる例を示している。また、電源7の各系統7−1〜7−4の最大出力が、デューティ比に依存して上述の表1のように制限を受けるため、選択飽和パルス151の出力も実際には時間経過とともに制限値(表1の最大出力値)まで徐々に低減するが、図3(a)〜(c)では一定の高さのパルスとして表している。
比較例の図3(a)のパルスシーケンスは、4チャンネル5−1〜5−4の全てから常に同時に連続照射を行う構成である。このため、高周波磁場電源7のデューティ比は70%等の高い比率となり、連続照射した場合には、最大出力値がデューティ比に応じて制限を受ける。例えば、電源7の性能が、上述した表1に示したものである場合、デューティ比70%であるため、デューティ比10%の場合の最大出力の7%の出力しか得られない。
これに対して、本実施形態の図3(b)のパルスシーケンスでは、4チャンネル5−1〜5−4のコイルにそれぞれ系統7−1〜7−4を接続し、各チャンネルから順繰りに選択飽和パルス151を照射する。これにより、電源7の各系統7−1〜7−4のデューティ比を20%程度の比較的低い比率とできるため、最大出力値による制限が緩和される。例えば、電源7の各系統7−1〜7−4の性能が、上述した表1に示したものである場合、デューティ比20%であるため、デューティ比10%の場合の最大出力の50%の出力を得ることができる。
なお、図3(b)のパルスシーケンスの場合、4チャンネル5−1〜5−4から順次選択飽和パルス151を照射するため、1回の照射で被検体1の全体に選択飽和パルス151を照射することはできず、4回の照射によってはじめて被検体1の全体に選択飽和パルス151を照射することになるが、CEST用のプリパルスシーケンス51としては問題ない。選択飽和パルス151が照射された領域のプロトンは、照射されたエネルギー量に応じた量のプロトンが飽和するため、飽和したプロトンが元に状態に戻る前に、すべてのプロトンを飽和させるのに十分な数(エネルギー)の選択飽和パルス151を照射できればよい。そのため、各チャンネルから順次選択飽和パルス151を照射しても、プリパルスシーケンス51の間にすべてのプロトンを飽和させることができる。
通常のMRI計測時には、プロトンスピンの励起用高周波磁場および反転用高周波磁場の空間均一度を向上させる為、高周波磁場分布を正負の符号付き値で足し合わせた結果の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として、所定値以上の均一度が得られるように高周波磁場パルスの振幅や位相を設定する。本実施形態のCEST用の選択飽和パルス151の場合、各選択飽和パルス151の高周波磁場分布の絶対値(二乗和の平方根)を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として、所定値以上の均一度が得られるように、選択飽和パルス151の照射条件(振幅および位相の少なくとも一方)を設定すればよい。
また、本実施形態では、図3(b)のように4チャンネルから順次選択飽和パルス151を送信するため、4回の照射を1セットと考えて、各照射時の高周波磁場分布の絶対値を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として、選択飽和パルス151の照射条件(振幅および位相の少なくとも一方)の最適化を行うことにより、均一性をより向上させることが可能となる。
なお、図3(b)の例では、4チャンネルから逐次送信を行う際に、「チャンネル1送信 → チャンネル2送信 → チャンネル3送信 → チャンネル4送信 → チャンネル1送信 → ・・・」の様にチャンネル番号の順に送信を繰り返す場合について述べたが、チャンネル番号とは関係なく、コイル特性に応じた最適な順番で逐次送信を行っても良い。
一方、図3(c)は、4チャンネル5−1〜5−4のコイルを用いて「チャンネル1+チャンネル3」のセット1と「チャンネル2+チャンネル4」のセット2をデューティ比50%以下で交互送信するパルスシーケンスである。これにより、各系統7−1〜7−4をデューティ比50%以下にしつつ、各セット内の2チャンネル間で振幅・位相の調整を行う事によってRFシミングを行うことができる。例えば、各セット内の2チャンネルから照射される高周波磁場分布の絶対値を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)等を均一度指標として、均一度の最適化(選択飽和パルスの振幅および位相の少なくも一方の調整)を行うことにより、均一性をより向上させることが可能となる。これにより、最大出力の低下を防ぎつつ、高周波磁場の空間均一度を改善することが可能となるため、CESTイメージングが実施される多くの高静磁場MRI装置(例えば、静磁場強度3.0T)で生じやすい高周波磁場パルスの磁場の空間分布に起因するCEST信号の分布を抑制することができる。
つぎに、本実施形態のMRI装置において、CESTイメージングを行う場合の各部の動作を図6のフローチャートを用いて説明する。計算機9は、予め内蔵するメモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図6のフローの動作を実現するように各部を制御する。まず、計算機9は、MRI計測を行う操作者に対して、MRI装置内に被検体1をセッティングするよう促す(ステップ601)。例えば、表示装置10に被検体1のセッティングを促す表示をする。これにより、操作者が被検体1をセッティングしたならば、計算機9は、入力装置15を介して、操作者から計測条件の設定を受け付ける。例えば、表示装置10に図7に示すような表示画面を計算機9が表示し、操作者から計測シーケンスの種類を受け付ける。具体的には、SEシーケンス、FSEシーケンス、CESTシーケンス等、受付可能なシーケンスを表示し、操作者による選択を計算機9が受け付ける。操作者が、計測シーケンスとしてCESTを選択した場合には、一般的な計測パラメータの入力を受け付ける。さらに、計算機9は、必要に応じて、CEST用選択飽和パルス151を送信する全チャンネル数や、選択飽和パルス151を送信する時のRFシミングの要否の選択を操作者から受け付ける(ステップ602)。
次に、操作者が計測ボタンをクリックしたことを計算機9が受け付けた場合(ステップ603)、計算機9は、シーケンス制御装置14に前計測を実行させる(ステップ604)。この前計測には、CEST用飽和選択パルス送信時の各チャンネルの送信条件(振幅・位相)を決定するのに必要な高周波磁場分布の計測が実施される。この前計測で得られた高周波磁場分布データ、選択飽和パルス151を送信する全チャンネル数およびRFシミングの要否等に基づき、計算機9は、CEST用飽和パルス送信時の各チャンネルの送信条件(振幅・位相)を算出する(ステップ605)。この調整後の送信条件を計算機9はシーケンス制御装置14に設定し、シーケンス制御装置がCESTイメージングの本計測を実行する(ステップ606,607)。RFシミングを行う場合、計算機(演算部)9は、高周波磁場パルスの高周波磁場分布から均一度指標を算出し、均一度指標に基づいて均一度が所定値以上になるように、高周波磁場パルスの振幅および位相の少なくとも一方を公知の手法により算出(最適化)する。
また、計算機9は、ステップ602において、操作者が所望するデューティ比の値または最大出力値の設定を操作者から受け付けてもよい。この場合、計算機(選択部)9は、ステップ602においてデューティ比の値を受け付けた場合には、ステップ605において、チャンネルに供給される高周波電力パルスのデューティ比が受け付けた値以下になるように、高周波電力パルスを供給するチャンネル数を設定(選択)する。また、計算機9は、ステップ602において最大出力値の設定を操作者から受け付けた場合には、予め内蔵するメモリに格納しておいた表1を参照して、設定された最大出力値に対応するデューティ比を求め、チャンネルに供給される高周波電力パルスのデューティ比が受け付けた値以下になるように、高周波電力パルスを供給するチャンネル数を設定(選択)すればよい。これにより、操作者が所望するデューティ比または最大出力で、CESTイメージングを行うことができる。
上記の例では、選択飽和パルス151にプリパルスシーケンス51の後に、計測シーケンス52として、通常のMRI計測を行う場合の例について述べたが、計測シーケンス52として、MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)やMRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)、アンギオグラフィー等の計測を行っても良い。
また上記の例では、選択飽和パルス151を複数チャンネルを有する送信コイルで照射する構成について述べたが、4チャンネル交互送信のRFシミング等に関しては、疑似飽和用高周波磁場パルスを照射する撮像パルスシーケンス(例えば、Magnetic Resonance Spectroscopy法、Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging法、Magnetization Transfer Magnetic Resonance Angiography法、Magnetic Resonance Decoupling法)に対しても適用することが可能である。
また上記の例では、複数チャンネルを有する送信コイルで照射する場合、磁場の均一度指標に関して、逐次照射(4チャンネル5−1〜5−4から順次選択飽和パルス151を照射すること)の際のチャンネル数と同数の高周波磁場分布を足し合わせる場合について述べたが、チャンネル数と異なる数の高周波磁場分布を足し合わせてもよい。例えば、4チャンネル逐次照射を行う際も、6回順繰りに繰り返す逐次照射を1セットと考えて、各照射時の高周波磁場分布の絶対値を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として、所定値以上の均一度が得られるように選択飽和パルスの振幅および位相の少なくとも一方を設定することにより、均一性をより向上させることが可能となる。
上述してきたように、本実施形態によれば、送信コイルとして複数チャンネルを有する独立駆動型コイルを用いるMRI装置において、高周波磁場パルスを複数発連続的に送信する際に、最大出力を所定値以下に低下させることなく、実質連続照射を可能となる。
また本実施形態によれば、送信コイルとして4チャンネル以上を有するコイルを備えたMRI装置において、高周波磁場パルスを複数発連続的に送信する際に、図3(c)のように2チャンネル以上をセットとして交互に照射もしくは順繰りに照射を行い、各セットの複数チャンネル間で高周波磁場の振幅・位相の調整を行うこと(RFシミング)によって、高周波磁場の空間均一度を改善することが可能となる。
さらに本実施形態によれば、選択飽和パルスの空間均一度を向上させる際に、各チャンネルの高周波磁場分布の絶対値(二乗和の平方根)を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として振幅および位相の少なくとも一方の設定を行うことにより、均一性をより向上させることが可能となる。4チャンネルからそれぞれ順番に送信を行う際も、4回の照射を1セットと考えて、各照射時の高周波磁場分布の絶対値を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差(もしくは、最大値と最小値など)を均一度指標として最適化を行うことにより、均一性をより向上させることが可能となる。
静磁場強度3.0テスラのMRI装置上で、人体頭部を対象に、上記図5に示すCESTパルスシーケンス(TR=5000ms、エコータイム=6ms、マトリクス数=128×128、エコー数:128エコー/ショット)を実行した際に得られた選択飽和パルス151の高周波磁場分布図をシミュレーションにより求めた。その結果を、図8に示す。
図8(a)は、比較例であり、送信コイル5として2チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に両チャンネルから同時照射した時の高周波磁場分布を表した画像である。選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として、「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた場合、計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差(USD)が0.1302であった。
図8(b)は、比較例であり、送信コイル5として図2(a)の4チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に全チャンネルを、図3(a)のように、同時照射した時の高周波磁場分布を表した画像である。選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として、「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた。計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差が0.1162となり、2チャンネルコイルを使用した場合に比べ、均一度が向上する事が示されている。
図8(c)は、送信コイル5として図2(a)の4チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に図3(c)に示した2チャンネルずつの交互照射(4チャンネル交互照射と呼ぶ)を行った時の高周波磁場分布を表した画像である。選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として、「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた。計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差が0.1031となり、4チャンネル同時照射を行った場合に比べ、均一度が向上する事が示されている。
図8(d)は、送信コイル5として図2(a)の4チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に図3(b)に示した逐次照射を行った時の高周波磁場分布を表した画像である。選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として、「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた。計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差が0.0774となり、図8(c)の4チャンネル交互照射を行った場合に比べ、均一度が向上する事が示されている。
図8(e)は、送信コイル5として図2(a)の4チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に図3(c)に示した2チャンネルずつの交互照射(4チャンネル交互照射)を行った時の高周波磁場分布を表した画像である。図8(c)の場合とは異なり、選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として「絶対値での和」の標準偏差を用いた。計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差が0.1012となり、均一度指標として「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた図8(c)の場合に比べ、僅かに均一度が向上する事が示されている。
図8(f)は、送信コイルとして図2(a)の4チャンネル型コイルを用い、選択飽和パルス151を複数発連続的に送信する際に図3(b)に示した逐次照射を行った時の高周波磁場分布を表した画像である。図8(d)の場合とは異なり、選択飽和パルス151の振幅および位相の少なくとも一方を調整して高周波磁場分布の均一度の最適化を行う際の均一度指標として、「絶対値での和」の標準偏差を用いている。計測結果から算出される高周波磁場分布の標準偏差が0.0629となり、均一度指標として「位相を考慮した和」の標準偏差を用いた4チャンネル逐次照射を行った場合(図8(d))に比べ、多少均一度が向上する事が示されている。
なお、上述したように、4チャンネル型コイルによる逐次照射を用いて、CESTパルスシーケンス(TR=5000ms、エコータイム=6ms、マトリクス数=128×128、エコー数:128エコー/ショット)を実行する図8(d)、(f)の場合(デューティ比25%)の高周波磁場の実際の出力は、表1を参照すると、2チャンネル型コイルによる交互照射を行う図8(a)の場合(デューティ比50%)に比べ、約3倍(すなわち約10%から約32%)に増大させることが可能となる。このため、選択飽和パルスの照射エネルギー(時間積分値)に比例するCEST信号(APT信号)も増加させることが可能となる。
1:被検体、2:静磁場コイル、3:傾斜磁場コイル、4:シムコイル、5:送信コイル、5−1〜5−4:チャンネル、5−s:シールド、6:受信コイル、7:電源、7−1〜7−4:系統、8:受信機、9:計算機、10:表示装置、11:記憶装置、12:傾斜磁場用電源、13:シム用電源、14:シーケンス制御装置、15:入力装置、100:MRI装置、151:選択飽和パルス、51:プリパルスシーケンス、52:計測用パルスシーケンス、200:MRI装置、300:MRI装置、RF:高周波磁場、Gz:Z軸方向の傾斜磁場、Gy:Y軸方向の傾斜磁場、Gx:X軸方向の傾斜磁場、TR:繰り返し時間、A/D:磁気共鳴信号を受信してA/D変換する時間。

Claims (3)

  1. 被検体に高周波磁場パルスを照射する送信コイルと、前記送信コイルに接続されて高周波電力パルスを供給する電源と、制御装置と、演算部とを有し、
    前記送信コイルは、4以上のチャンネルを含み、前記4以上のチャンネルには、前記被検体の頭頂部側から見て、右上部、右下部、左下部、および左上部にそれぞれ配置された4つのチャンネルが含まれ、
    前記電源は、4以上の系統を含み、前記系統は、前記チャンネルそれぞれ接続され、かつ、デューティ比に応じて最大出力に制限があり、
    前記制御装置は、前記系統から前記チャンネルに順にそれぞれ前記高周波電力パルスを供給し、前記4以上のチャンネルから1チャンネルずつ順番に前記被検体に含まれる所定の共鳴周波数のプロトンを選択的に飽和させる前記高周波磁場パルスを照射する動作を繰り返させることにより、前記各系統のデューティ比を所定値以下にし、
    前記演算部は、順番に照射された4以上の前記高周波磁場パルスを1セットとし、この1セットの高周波磁場パルスの高周波磁場分布から、予め定めておいた均一度指標を算出し、前記均一度指標に基づいて前記高周波磁場パルスの振幅および位相の少なくとも一方を調整し、
    前記制御装置は、前記4以上のチャンネルから順番に照射される前記高周波磁場パルス間に所定値以下の非照射時間T D を設けることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  2. 請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、前記演算部は、前記均一度指標として、前記各高周波磁場パルスの高周波磁場分布の絶対値を足し合わせ、得られた絶対値和の標準偏差もしくは最大値と最小値を求めることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  3. 請求項1または2に記載の磁気共鳴撮像装置であって、前記デューティ比は、25%以下であることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
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