JP6867640B2 - 殺菌又は除菌方法並びに抗菌剤及びそれを備えた物品 - Google Patents

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Description

本発明は、金被覆銀ナノ粒子を利用した殺菌又は除菌方法並びに抗菌剤及びそれを備えた物品に関する。
銀イオンは、菌類、細菌類、及びウイルスなどの広い範囲において抗菌活性を有することが知られている。このため、球状又はプレート状の銀ナノ粒子は、抗菌剤としての応用が検討されている(特許文献1及び非特許文献1)。
また、銀ナノプレートは、光との相互作用(局在表面プラズモン共鳴:LSPR)により光を吸収するため、その懸濁液はナノプレートの形状に応じて色を示すことが知られている。さらに、銀ナノプレートの大きさや形状を制御することにより、吸収する光を変化させること、すなわち色を変化させることができることも知られている。このため、金被覆銀ナノプレートは、種々の被験物質の検出試薬の標識(例えば、目的タンパク質の検出に用いられる抗体の標識)又は塗料としての応用が検討されている(特許文献2及び特許文献3)。
特表2016−505284号公報 国際公開第2015/182770号 特願2016−205995号
Kumar S.,et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects(2014),Vol.449,pp.82−86
一方、球状又はプレート状の銀ナノ粒子は、酸化に弱く、かつ凝集性が高いため、安定性が低く、抗菌剤としての応用が十分に進んでいなかった。また、金被覆銀ナノプレートの抗菌活性については、これまで検討されていなかった。したがって、本発明は、新規の抗菌剤を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、意外なことに、金被覆銀ナノ粒子が抗菌活性を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す殺菌又は除菌方法並びに抗菌剤及びそれを備えた物品を提供するものである。
〔1〕殺菌又は除菌方法であって、金被覆銀ナノ粒子の懸濁液で微生物を処理する工程を含むことを特徴とする方法。
〔2〕前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均が、0Åより大きく10Å以下である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記懸濁液が、前記金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記分散安定剤が、血清又は水溶性高分子である、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕金被覆銀ナノ粒子を含む抗菌剤。
〔6〕前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均が、0Åより大きく10Å以下である、前記〔5〕に記載の抗菌剤。
〔7〕前記金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤をさらに含む、前記〔5〕又は〔6〕に記載の抗菌剤。
〔8〕前記分散安定剤が、血清又は水溶性高分子である、前記〔7〕に記載の抗菌剤。
〔9〕前記〔5〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の抗菌剤を備えた物品であって、前記抗菌剤が、前記物品の表面の少なくとも一部に存在していることを特徴とする物品。
〔10〕前記物品が、医療機器、衛生用品、食品加工機器、医薬品若しくは医療機器の製造工場又は病院の備品又は壁面、衛生用品製造工場の備品又は壁面、及び、食品加工工場又は飲食店の備品又は壁面から成る群から選択される少なくとも1種である、前記〔9〕に記載の物品。
本発明に従えば、金被覆銀ナノ粒子を有効成分として使用することにより、微生物の殺菌又は除菌を行うことができる。金被覆銀ナノ粒子は、銀ナノ粒子と比較して、酸化に対して耐性があり、かつ凝集性も低いので、安定性の高い抗菌剤を提供することが可能となり、また、当該抗菌剤を備えた物品を提供することが可能となる。
銀ナノプレートの光学特性を示す。 金被覆銀ナノプレートの光学特性を示す。 金被覆銀ナノプレートの高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADF−STEM)による観察の写真を示す。 金被覆銀ナノプレートの光学特性を示す。 金被覆銀ナノプレートの光学特性を示す。 金被覆なし又はありの銀ナノプレートの大腸菌に対する抗菌活性を示す。 金被覆なし又はありの銀ナノプレートのサルモネラ菌及び緑膿菌に対する抗菌活性を示す。 金被覆なし又はありの銀ナノプレートの銀イオン放出能を示す。 血清なし又はありの条件下での金被覆銀ナノプレートのサルモネラ菌に対する抗菌活性を示す。 金被覆なし又はありの球状銀ナノ粒子のサルモネラ菌に対する抗菌活性を示す。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の殺菌又は除菌方法は、金被覆銀ナノ粒子の懸濁液で微生物を処理する工程を含むことを特徴としている。
本明細書に記載の「銀ナノ粒子」とは、銀から製造されたナノ粒子のことをいい、本明細書に記載の「金被覆銀ナノ粒子」とは、金原子を表面に有する銀ナノ粒子のことをいう。銀ナノ粒子及び金被覆銀ナノ粒子は、被験物質の検出技術分野で着色標識としても用いられているものである。金被覆銀ナノ粒子は、銀ナノ粒子と比較して、酸化に対して耐性があり、かつ凝集性も低いので、懸濁液中での安定性が高い。本発明の方法に使用される金被覆銀ナノ粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状のナノ粒子(ナノコロイド)であってもいいし、プレート状のナノ粒子であってもよい。特に本明細書では、プレート状の銀ナノ粒子及び金被覆銀ナノ粒子を、それぞれ「銀ナノプレート」及び「金被覆銀ナノプレート」と呼び、これらは、三角形、五角形、及び六角形などの多角形ナノプレート又は角が丸くなった円形ナノプレートなどの形状であり得る。本発明では、単一種類(単一形状)の金被覆銀ナノ粒子を用いてもよく、形状の異なる複数種類の金被覆銀ナノ粒子の混合物を用いてもよい。
前記金被覆銀ナノ粒子の粒子径(ナノプレートの場合には主面の最大長さ;例えば、円形ナノプレートでは直径に相当し、三角形ナノプレートでは最大辺の長さに相当する)は、特に限定されず、例えば、10〜1000nmであってもよく、好ましくは10〜500nm又は10〜150nmである。前記金被覆銀ナノ粒子がプレート状のナノ粒子である場合には、その金被覆銀ナノプレートの厚さは、特に限定されず、例えば、40nm以下であってもよく、好ましくは5〜20nmであり、当該金被覆銀ナノプレートのアスペクト比(粒子径/厚み)は、特に限定されず、例えば、1.5以上、好ましくは1.5〜10である。前記金被覆銀ナノプレートのアスペクト比がこの範囲であると、可視光領域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の吸収波長が発現して、多色設計、すなわち、本発明の方法で使用する有効成分に所望の色を付与することが可能となる。前記金被覆銀ナノプレートの粒子径(主面の最大長さ)及び形状は、意図する色又は最大吸収波長に応じて適宜設定することができる。前記金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長は、430〜2000nmの範囲で調整してもよく、好ましくは430〜1500nm、特に好ましくは430〜1000nmの範囲で調整してもよい。
前記金被覆銀ナノ粒子は、市販品を用いてもよく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の方法に従って製造したものを用いてもよい。また、金による銀ナノ粒子の被覆方法についても、銀ナノ粒子の表面の金による被覆という目的を達成できるものであれば特に制限されない。
前記金被覆銀ナノ粒子は、銀ナノ粒子の表面の全て又は一部が金で被覆されているものであってもよく、銀ナノ粒子の表面の全て又は一部で金が合金化して存在しているものであってもよい。銀ナノ粒子の表面の全て又は一部が金で被覆されていること、あるいは銀ナノ粒子の表面の全て又は一部で金が合金化して存在していることは、物理化学的性質の測定又は電子顕微鏡による観察など、通常用いられる種々の方法によって確認することができる。例えば、銀ナノ粒子の表面の全て又は一部が金で被覆されていたり、銀ナノ粒子の表面の全て又は一部で金が合金化して存在していたりすると、当該銀ナノ粒子の酸又はナトリウム若しくは塩化物イオンに対する安定性が上昇し、酸化に対して安定なものとなる。そうすると、金被覆処理後に、酸性溶液(例えば、2%過酸化水素水)又は緩衝液(例えば、10mMのリン酸緩衝生理食塩水(二価イオンあり又はなし))中という銀ナノ粒子にとって過酷な条件下で銀ナノ粒子の懸濁液の分光特性(最大吸収波長)を測定しても、その分光特性が水中で測定したときと比較して僅かしか変化しない場合には、その銀ナノ粒子は金被覆銀ナノ粒子であると判断できる。そして、このときの金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均は、0Åより大きいといえる。
また、銀ナノ粒子の表面の全て又は一部が金で被覆されていること、あるいは銀ナノ粒子の表面の全て又は一部で金が合金化して存在していることは、金被覆銀ナノ粒子懸濁液中の金及び銀濃度を測定することによっても確認できる。具体的には、以下の手順に示すように、懸濁液を遠心分離後、上澄み液を除去し、得られた沈殿物を、除去した上澄み液と同量の超純水で再度懸濁する。そして、その懸濁液に王水を添加後、煮沸して、得られた溶液を、ICP発光分析装置を用いて分析する。
1.金被覆銀ナノ粒子懸濁液を遠心分離(25,000rpm、26,000g)後、上澄み液を除去し、得られた沈殿物を、除去した上澄み液と同量の超純水で再度懸濁する。
2.上記工程1で得られた懸濁液に王水を添加後、5分間煮沸して、金及び銀を王水中へ溶解させる。
3.上記工程2で得られた溶液を、ICP発光分析装置を用いて測定する。
(なお、各金属の濃度は、任意濃度の標準サンプルを上述と同様に測定することで作成した検量線より算出する。)
得られた各金属の濃度から、金と銀の比率が明らかとなり、銀ナノ粒子表面が金で被覆されていることを確認することができる。そして、このときの金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均も計算することができる。例えば、三角形の銀ナノプレート上の金の厚さは、以下のようにして算出することができる。
1.ICP発光分析結果(例)
金濃度:銀濃度=1:4
2.銀ナノプレートの体積(形状:正三角形、高さ:30nm、厚さ8nmの場合)
式:(三角形の面積)×(厚さ)
=(30nm×(30×2÷√3)nm÷2)×8nm
=4157nm3(=4157×10-21cm3
3.銀の比重
10.51g/cm3
4.三角形の銀ナノプレートの質量
式:(三角形の銀ナノプレートの体積)×(銀の比重)
=(4157×10-21cm3)×10.51g/cm3
=4.37×10-17
5.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の質量(X)
1:4=X:4.37×10-17
X=1.09×10-17
6.金の比重
19.32g/cm3
7.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積
式:(金の質量)÷(金の比重)
=1.09×10-17g ÷ 19.32g/cm3
=5.64×10-19cm3(=564nm3
8.三角形の銀ナノプレートの表面積
式:(三角形の面積)+(粒子側面の面積)
=(30×(60÷√3)÷2)×2+(8×(60÷√3))×3
=1871nm2
9.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の厚さ
式:(三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積)
÷(三角形の銀ナノプレートの表面積)
=564nm3÷1871nm2
=0.30nm(=3.0Å)
このように、ICP発光分析装置を用いた分析の結果、金濃度と銀濃度の比率が1:4であることがわかった場合には、金被覆処理を施した銀ナノプレート(形状:正三角形、高さ:30nm、厚さ8nmの粒子の場合)の表面の金の厚さは、3.0Åであると計算できる。これは、銀ナノプレートの表面が、1〜2層程度の金原子で被覆されていることを意味している。
電子顕微鏡観察により金の被覆を確認する場合には、例えば、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いることができる。HAADF−STEMを利用して金の厚さの平均を求めることもできる。具体的には、HAADF−STEMにより観察した任意の粒子10個について、各粒子の任意の部位10点における金の厚さを測定し、計100点のデータの内、上下10%を除いた80点の平均値を金の厚さの平均とすることができる。
本発明の方法で使用される前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均は、いずれの方法で測定及び計算してもよい。前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均は、0Åより大きいものであり、当該金被覆銀ナノ粒子の抗菌活性を損なわない限り特に制限されないが、例えば、ICP発光分析結果に基づいて計算したときの結果が、0.01Å以上又は0.1Å以上であってもよい。また、前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均は、例えば、ICP発光分析結果に基づいて計算したときの結果が、10Å以下であってもよく、好ましくは6Å以下、より好ましくは1.5Å以下、さらに好ましくは0.5Å以下である。特に、前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均が0Åより大きく1.0Å以下である金被覆銀ナノ粒子は、より厚い金被覆を有する銀ナノ粒子及び金被覆を有しない銀ナノ粒子と比較して、銀イオンの放出能が優れており、強力な抗菌活性を有する。金被覆銀ナノ粒子の高い銀イオン放出能は、特定の理論に拘束される必要はないが、例えば、金と銀のイオン化傾向の違いが関係していると考えられる。すなわち、銀ナノ粒子がその表面で金原子と接触していると、銀は金よりもイオン化傾向が高いため、銀ナノ粒子を構成している銀原子は、金に電子を渡して銀イオンになりやすくなっている可能性がある。加えて、金の被覆が薄いと、銀イオンが金被覆銀ナノ粒子の外側に放出されやすく、抗菌作用を発揮しやすい可能性がある。また、金が表面に存在することにより、分散安定性が高まり、懸濁液中における金被覆銀ナノ粒子の比表面積が高く保持されるため、銀イオンの放出が維持されることも考えられる。
本発明の方法が対象とする微生物は、銀イオンに対して感受性を有する微生物、すなわち、銀イオンによって殺菌又は除菌され得る微生物であり得る。前記微生物は、特に限定されないが、例えば、エシェリキア属の細菌(大腸菌など)、サルモネラ属の細菌(サルモネラ菌など)、シュードモナス属の細菌(緑膿菌など)、シゲラ属の細菌(赤痢菌など)、クレブシエラ属の細菌(クレブシエラ・ニューモニエなど)、及びレジオネラ属の細菌(レジオネラ・ニューモフィラなど)などのグラム陰性細菌、スタフィロコッカス属の細菌(ブドウ球菌など)、バシラス属の細菌(枯草菌など)、及びマイコバクテリウム属の細菌(結核菌など)などのグラム陽性細菌、アスペルギルス属の糸状菌(アスペルギルス・ニガー(黒コウジカビ)など)、ペニシリウム属の糸状菌(アオカビなど)、及びクラドスポリウム属の糸状菌(クロカビ)などの糸状菌類、サッカロミセス属の酵母(パン酵母及びビール酵母など)及びカンジダ属の酵母(カンジダ・アルビカンスなど)などの酵母類、並びに、ポリオウイルス、ロタウイルス、及びヘルペスウイルスなどのウイルスであってもよい。また、本発明に従えば、偏性細胞内寄生菌(結核菌及びチフス菌など)などの微生物が細胞へ感染した後であっても、当該微生物を殺菌又は除菌することができる。
本発明の方法で使用される前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液では、固体の金被覆銀ナノ粒子が、液体の分散媒中に懸濁している。前記分散媒としては、金被覆銀ナノ粒子を分散できる媒体であれば特に制限なく用いることができるが、例えば、水、及び水性緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、HEPES緩衝液など)などであってもよい。また、前記分散媒としては、例えば、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルなどの有機溶媒を使用してもよく、具体的には、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びテトラヒドロフランなどであってもよい。前記分散媒は、生化学実験において用いる場合には、水又は水性緩衝液が好ましく、塗料又はコーティングの形態で用いる場合には、有機溶媒が好ましい。前記分散媒は、一種類を単独で使用してもよく、複数種類を混合して使用してもよい。
前記懸濁液は、静置状態でも金被覆銀ナノ粒子が分散媒中に分散しているものであってもよく、静置状態では金被覆銀ナノ粒子は沈降しているが、振盪や超音波分散することにより金被覆銀ナノ粒子が分散媒中に分散するものであってもよい。前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液としては、金被覆銀ナノ粒子を製造した直後の懸濁液をそのまま用いてもよく、製造直後の懸濁液から金被覆銀ナノ粒子を分離し、別の分散媒中に再分散させたものを用いてもよい。前記懸濁液の製造方法に特に制限はなく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の製造方法を用いることができる。
前記懸濁液の銀含有率(銀濃度)は、前記金被覆銀ナノ粒子の抗菌活性が発揮される限り特に制限されないが、例えば、当該懸濁液の総質量に対して、1×10-6質量%(0.01ppm)以上であってもよく、好ましくは1×10-5質量%(0.1ppm)以上、より好ましくは1×10-4質量%(1ppm)以上である。前記懸濁液の銀含有率の上限値には特に制限はないが、例えば、1質量%(10,000ppm)以下又は0.1質量%以下(1,000ppm)であってもよい。
前記懸濁液は、前記金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤を任意に含んでもよい。本明細書に記載の「分散安定剤」とは、銀ナノ粒子又は金被覆銀ナノ粒子を酸化又は凝集から保護し、安定な分散状態を維持するために使用される物質のことをいう。前記分散安定剤としては、銀ナノ粒子又は金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤として使用され得るものを特に制限なく使用することができるが、例えば、血清又は水溶性高分子であってもよい。本明細書に記載の「水溶性高分子」とは、分子量が500〜1,000,000、好ましくは500〜100,000の水溶性物質のことをいい、ここでいう水溶性とは、常温常圧下で高分子が水に0.001質量%以上溶解することをいう。前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアリルアミン、デキストラン、ポリメタクリルアミド、ポリビニルフェノール、ポリ安息香酸ビニル、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ビス(p−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン、及びポリスチレンスルホン酸などを使用してもよい。これらの水溶性高分子を含有している、市販の分散剤を、前記水溶性高分子として使用してもよい。また、前記金被覆銀ナノ粒子と化学結合する官能基である水酸基、メルカプト基、ジスルフィド基、アミノ基、カルボキシル基などで、前記水溶性高分子が修飾されていてもよい。前記水溶性高分子の種類は、前記金被覆銀ナノ粒子の用途に応じて選択することができる。例えば、生体実験や細胞実験に使用する場合、生体適合性が良好なポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどを用いてもよい。
前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液中における前記血清の濃度は、例えば、1体積%以上90体積%以下であってもよく、好ましくは3体積%以上60体積%以下、さらに好ましくは5体積%以上30体積%以下である。前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液中における前記水溶性高分子の濃度は、例えば、0.001質量%以上10質量%以下であってもよく、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1%質量以下である。前記水溶性高分子の濃度の測定方法として、核磁気共鳴分光法(NMR)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)、示唆熱・熱重量測定(TG−DTA)などを使用してもよい。NMRの場合は、金被覆銀ナノプレートの懸濁液を乾燥させ、得られた固形分を重溶媒で溶解(分散)させて測定する。重溶媒には既知濃度の内部標準物質(例えば、マレイン酸)を予め添加し、得られたスペクトル中の水溶性高分子由来のシグナルの積分値と内部標準物質由来のシグナルの積分値を比較することで水溶性高分子の濃度を算出することができる。GPCの場合は、初めに複数の既知濃度の水溶性高分子水溶液を分析し、得られたチャート中の水溶性高分子由来のピーク面積より検量線を作成する。次に、金被覆銀ナノプレートの懸濁液を測定し、得られたチャート中の水溶性高分子由来のピーク面積より水溶性高分子の濃度を算出することができる。TG−DTAの場合、金被覆銀ナノプレート懸濁液の乾燥固形分を測定した際の、重量変化から水溶性高分子量を算出することができる。
本発明の方法で使用する前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液は、当該金被覆銀ナノ粒子へ悪影響を与えない限り、追加の抗菌剤を含んでもよい。また、前記懸濁液は、前記金被覆銀ナノ粒子の抗菌活性を損なわない限り、任意の成分を含んでもよい。前記任意成分は、例えば、前記金被覆銀ナノプレートの製造時に使用した試薬(例えば、水素化ホウ素ナトリウムやアスコルビン酸)や分散剤(例えば、クエン酸三ナトリウム)などであってもよい。
ある態様では、本発明は、前記金被覆銀ナノ粒子を含む抗菌剤に関する。本発明の抗菌剤は、銀イオンに対して感受性を有する微生物に対して抗菌作用を示し、当該微生物を殺菌又は除菌すること、及び、当該微生物の繁殖又は増殖を防止することができる。本発明の抗菌剤は、前記金被覆銀ナノ粒子の懸濁液の形態で、前記微生物が含まれる部位若しくは空間、又は、前記微生物の繁殖又は増殖を防ぐことが望まれる部位若しくは空間に適用してもよい。また、本発明の抗菌剤は、前記金被覆銀ナノ粒子を含むコーティング(すなわち抗菌性コーティング)の形態で、物品の表面に適用してもよい。
また別の態様では、本発明は、前記抗菌剤を備えた物品に関する。前記抗菌剤は、前記物品の表面の少なくとも一部に存在しており、抗菌性コーティングを形成し得る。本発明の物品は、特に限定されないが、例えば、医療機器、衛生用品、食品加工機器、医薬品若しくは医療機器の製造工場又は病院の備品又は壁面、衛生用品製造工場の備品又は壁面、及び、食品加工工場又は飲食店の備品又は壁面から成る群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記医療機器は、例えば、チューブ、注射器、カテーテル、ドレーン、シャント、コネクタ、透析用装置、インスリンポンプ、歯列矯正ピン、歯列矯正ワイヤー、インプラント、人工補装具、ペースメーカーのリード線、針、義歯、手術器具、創傷手当用器具、及び殺菌済容器などであってもよい。前記衛生用品は、例えば、包帯、ラップ、メッシュ、スポンジ、ガーゼ、マスク、絆創膏、靴下、下着、オムツ、失禁パッド、衛生パッド、及びシーツなどであってもよい。前記食品加工機器は、例えば、鍋、フライパン、包丁、及びお玉などの調理器具、並びに、食品加工のための各種機械などであってもよい。前記医薬品若しくは医療機器の製造工場又は病院の備品、前記衛生用品製造工場の備品、及び前記食品加工工場又は飲食店の備品は、例えば、白衣、手術着、及び防塵服などの作業着、サンダル及びスリッパなどの履物、机、椅子、テーブル、ベッド、容器、送風機、ダクト、並びに、送風フィルターなどであってもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
1.金被覆銀ナノプレートの作製
(1)銀ナノプレートの種粒子の作製
20mLのクエン酸ナトリウム水溶液(2.5mM)に、1mLのポリスチレンスルホン酸(分子量70,000)水溶液(0.5g/L)及び1.2mLの水素化ホウ素ナトリウム水溶液(10mM)を添加し、次いで、20mL/分で攪拌しながら、50mLの硝酸銀水溶液(0.5mM)を添加した。得られた溶液を30℃で60分間静置し、銀ナノプレートの種粒子の水懸濁液を作製した。作製した水懸濁液(原液)の光学特性を、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で測定した。最大吸収を示す波長は球状銀ナノ粒子のLSPRである396nm(消光度3.3)であった。なお、本明細書に記載の消光度とは、懸濁液を分光光度計で測定した際の吸光度の値である。また、株式会社日立製作所製の走査電子顕微鏡SU−70を用いたSEM観察より、作製した銀ナノプレート種粒子の粒子径は主に3nm以上10nm未満であることがわかった。
(2)銀ナノプレートの作製
200mLの蒸留水に、アスコルビン酸水溶液(10mM)を4.5mL添加し、更に上記(1)で作製した銀ナノプレート種粒子水懸濁液を1mL添加した。得られた溶液に、120mLの硝酸銀水溶液(0.5mM)を、30mL/分で攪拌しながら添加した。硝酸銀水溶液の添加が終了した4分後に攪拌を停止し、20mLのクエン酸ナトリウム水溶液(25mM)を添加し、得られた溶液を大気雰囲気下、30℃で100時間静置して、銀ナノプレートの水懸濁液(懸濁液A)を作製した。作製した水懸濁液を超純水で4倍容に希釈した水懸濁液の光学特性を、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で測定した。結果を図1に示す。銀ナノプレートの最大吸収波長は680nm(消光度1.16)だった。
(3)金被覆銀ナノプレートの作製
(3−1)金原子層が4層(金原子4つ相当の厚さ)の金被覆銀ナノプレートの作製
120mLの懸濁液Aに、ポリビニルピロリドン(PVP)(分子量:40,000)の水溶液(0.125mM)を9.1mL添加し、アスコルビン酸水溶液(0.5M)を1.6mL添加した後、9.6mLの塩化金酸水溶液(1.4mM)を、0.5mL/分で攪拌しながら添加した。得られた溶液を30℃で24時間静置し金被覆銀ナノプレートの水懸濁液(懸濁液B)を作製した。作製した水懸濁液を超純水で3.5倍容に希釈した水懸濁液の光学特性を、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で測定した。結果を図2に示す。この金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長は630nm(消光度1.05)であり、金被覆前の銀ナノプレートの特徴的なスペクトルを概ね維持していた。
懸濁液Bの主要分散媒は水であり、懸濁液Bの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して1.6×10-3質量%であった。懸濁液Bに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主に三角形状プレートであり、一部に他の多角形状又は円形状であるプレートも見られた。三角形状の金被覆銀ナノプレートの主面の最大長(粒子径)は平均70nmであり、厚さの平均は10nmであった。
懸濁液Bに含まれる金被覆銀ナノプレートの元素の濃度比率をICP発光分析装置によって測定すると、金1.00に対し、銀3.24だった。このICP発光分析結果に基づいて以下のように計算すると、前記金被覆銀ナノプレートの金の厚さの平均は5.6Åであった。
1.ICP発光分析結果
金濃度:銀濃度=1.00:3.24
2.銀ナノプレートの体積(形状:すべて正三角形であると仮定、一辺の長さ:70nm、厚さ10nm)
式:(三角形の面積)×(厚さ)
=(70nm×(70÷2×√3)nm÷2)×10nm
=21,218nm3(=21,218×10-21cm3
3.銀の比重
10.51g/cm3
4.三角形の銀ナノプレートの質量
式:(三角形の銀ナノプレートの体積)×(銀の比重)
=(21,218×10-21cm3)×10.51g/cm3
=2.23×10-16
5.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の質量(X)
1.00:3.24=X:2.23×10-16
X=6.88×10-17
6.金の比重
19.32g/cm3
7.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積
式:(金の質量)÷(金の比重)
=6.88×10-17g÷ 19.32g/cm3
=3.562×10-18cm3(=3,562nm3
8.三角形の銀ナノプレートの表面積
式:(三角形の面積)+(粒子側面の面積)
=(70nm×(70÷2×√3)nm÷2)×2+(10×70)×3
=6,344nm2
9.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の厚さ
式:(三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積)
÷(三角形の銀ナノプレートの表面積)
=3,562nm3÷6,344nm2
=0.56nm(=5.6Å)
また、金被覆銀ナノプレート1粒子を観察したHAADF−STEM観察写真を図3に示す。この粒子の最表面に、金の層がコントラストの異なる層として観察された。任意の金被覆ナノプレート粒子10個をHAADF−STEMにより観察し、各粒子の任意の部位10点における金の厚みを測定した計100点のデータの内、上下10%を除いた80点の平均値を計算すると、前記金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は6Åとなった。HAADF−STEMによる観察に基づく計算結果は、上述のICP発光分析結果に基づく計算結果と概ね一致し、このような金の厚さは、金原子4つ分に相当するので、懸濁液Bに含まれる金被覆銀ナノプレートの表面は、4層の金原子に被覆されていると考えられる。
(3−2)金原子層が薄い金被覆銀ナノプレートの作製
塩化金酸水溶液の濃度を0.14mMとした以外は、上記(3−1)に記載の方法に従って金被覆銀ナノプレートの水懸濁液(懸濁液C)を作製した。作製した水懸濁液を超純水で3.5倍容に希釈した水懸濁液の光学特性を、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で測定した。結果を図4に示す。この金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長は662nm(消光度0.78)であり、金被覆前の銀ナノプレートの特徴的なスペクトルを概ね維持していた。
懸濁液Cの主要分散媒は水であり、懸濁液Cの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して1.6×10-3質量%であった。懸濁液Cに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主に三角形状プレートであり、一部に他の多角形状又は円形状であるプレートも見られた。三角形状の金被覆銀ナノプレートの主面の最大長(粒子径)は平均70nmであり、厚さの平均は10nmであった。
懸濁液Cに含まれる金被覆銀ナノプレートの元素の濃度比率をICP発光分析装置によって測定すると、金1.00に対し、銀16.92だった。このICP発光分析結果に基づいて計算すると、前記金被覆銀ナノプレートの金の厚さの平均は1.1Åであった。
(3−3)金原子層がさらに薄い金被覆銀ナノプレートの作製
塩化金酸水溶液の濃度を0.014mMとした以外は、上記(3−1)に記載の方法に従って金被覆銀ナノプレートの水懸濁液(懸濁液D)を作製した。作製した水懸濁液を超純水で3.5倍容に希釈した水懸濁液の光学特性を、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で測定した。結果を図5に示す。この金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長は686nm(消光度1.10)であり、金被覆前の銀ナノプレートの特徴的なスペクトルを概ね維持していた。
懸濁液Dの主要分散媒は水であり、懸濁液Dの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して1.6×10-3質量%であった。懸濁液Dに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主に三角形状プレートであり、一部に他の多角形状又は円形状であるプレートも見られた。三角形状の金被覆銀ナノプレートの主面の最大長(粒子径)は平均70nmであり、厚さの平均は10nmであった。
懸濁液Dに含まれる金被覆銀ナノプレートの元素の濃度比率をICP発光分析装置によって測定すると、金1.00に対し、銀44.52だった。このICP発光分析結果に基づいて計算すると、前記金被覆銀ナノプレートの金の厚さの平均は0.4Åであった。
2.金被覆銀ナノプレートの抗菌活性
(1)大腸菌に対する抗菌活性
銀ナノプレート以外の成分を取り除くために、ユニバーサル冷却遠心機5922(久保田商事株式会社製)を使用して、上記懸濁液A〜Dを12,000×gで10分間遠心分離した。上清を取り除き、超純水に再分散して、銀濃度が10.25×10-5M(11.06ppm)の、金被覆を有さない銀ナノプレート(Au(0))、5.6Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(5.6))、1.1Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(1.1))、及び0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(0.4))の水懸濁液を作製した。また、グリセロールストックしておいた大腸菌を寒天LB培地上にまき、37℃で一晩培養してコロニーを生成した。生成したシングルコロニー1つを2mLの液体LB培地に移し、37℃で16時間培養した。この培養溶液を液体LB培地で1000倍に希釈したものを大腸菌培養液として用いた。上記水懸濁液(Au(0)、Au(0.4)、Au(1.1)、又はAu(5.6)を含む)の2倍希釈系列を作製し、96穴マイクロプレート上で、25μLの各種濃度の水懸濁液と100μLの大腸菌培養液とを混合して、37℃で16時間培養した。その後、マイクロプレートリーダーで濁度(595nmでの吸光度)を測定し、バックグラウンドの値(銀ナノプレート又は金被覆銀ナノプレートに由来する595nmでの吸光度)を差し引いた。対照(銀含有率0%)としては、上記水懸濁液に代えて超純水を使用した。結果を図6に示す。
金の被覆なし又はありの銀ナノプレートが存在すると、大腸菌培養液の濁度が減少したので、銀ナノプレートだけでなく金被覆銀ナノプレートも抗菌活性を有することがわかった。特に、Au(0.4)の水懸濁液を使用した場合には、銀ナノプレート及び他の金被覆銀ナノプレートを使用した場合よりも大きく濁度が減少したので、0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレートは、特に強い抗菌活性を有していることがわかった。
(2)サルモネラ菌及び緑膿菌に対する抗菌活性
銀ナノプレート以外の成分を取り除くために、ユニバーサル冷却遠心機5922(久保田商事株式会社製)を使用して、上記懸濁液A及びDを12,000×gで10分間遠心分離した。上清を取り除き、超純水に再分散して、金被覆を有さない銀ナノプレート(Au(0))及び0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(0.4))の水懸濁液をそれぞれ作製した。これらの水懸濁液(Au(0)又はAu(0.4)を含む)の銀濃度を、サルモネラ菌に対する抗菌活性の評価用としては400μM(43.04ppm)に調節し、緑膿菌に対する抗菌活性の評価用としては1.35μM(0.146ppm)に調節した。
また、グリセロールストックしておいたサルモネラ菌又は緑膿菌を寒天LB培地上にまき、37℃で一晩培養してコロニーを生成した。生成したシングルコロニー1つを2mLの液体LB培地に移し、37℃で一晩、前培養した。前培養液を液体LB培地で100倍に希釈し、37℃で4時間、本培養した。本培養液を液体LB培地で10,000倍に希釈したものを菌体培養液として用いた。96穴マイクロプレート上で、50μLの上記水懸濁液(Au(0.4)、Au(1.1)、又はAu(5.6)を含む)と200μLのサルモネラ菌培養液又は緑膿菌培養液とを混合し、37℃で6時間培養した。その後、培養液をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)で2倍に希釈し、その希釈した溶液を寒天LB培地上に100μLずつ均等にまいて、37℃で一晩培養した。寒天LB培地上に生成したコロニー数をカウントすることにより、金被覆銀ナノプレートのサルモネラ菌、及び緑膿菌に対する抗菌活性を評価した。対照としては、上記水懸濁液に代えて超純水を使用した。結果を図7に示す。
Au(0)の水懸濁液では、対照と比較してサルモネラ菌及び緑膿菌の生存率が低下したが、Au(0.4)の水懸濁液では、サルモネラ菌及び緑膿菌の生存率がさらに大きく低下したので、金被覆銀ナノプレートは、大腸菌だけでなくサルモネラ菌及び緑膿菌に対しても抗菌活性を有していることがわかった。
(3)放出された銀イオンの測定
銀ナノプレート以外の成分を取り除くために、ユニバーサル冷却遠心機5922(久保田商事株式会社製)を使用して、上記懸濁液A〜D(3mL)を12,000×gで10分間遠心分離した。上清を取り除き、3mLのPBSに再分散して、金被覆を有さない銀ナノプレート(Au(0))、5.6Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(5.6))、1.1Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(1.1))、及び0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(0.4))のPBS懸濁液をそれぞれ作製した。室温で72時間静置した後、12,000×gで10分間遠心分離し、上清を採取した。採取した水溶液中の銀イオンを、SPS7800卓上型ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメンツ(株))を使用して、誘導結合プラズマ(ICP)−発光分光分析法(AES)により測定した。結果を図8に示す。
すべてのPBS懸濁液で銀イオンの存在が確認されたが、Au(0.4)のPBS懸濁液における銀イオンの濃度は、Au(0)のPBS懸濁液における銀イオンの濃度よりも高かったので、0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレートは、まったく金被覆を有しない銀ナノプレートよりも銀イオン放出能が高いことがわかった。
(4)ウシ胎児血清(FBS)による金被覆銀ナノプレートの抗菌活性の増強
試験群として、0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆銀ナノプレート(Au(0.4))の水懸濁液及び12.5体積%のFBSを含むAu(0.4))の水懸濁液を使用した以外は、上記(2)と同様にして、血清なし又はありの条件下における、金被覆銀ナノプレートのサルモネラ菌に対する抗菌活性を評価した。結果を図9に示す。
Au(0.4)の水懸濁液を使用した場合、血清存在下では、血清がない場合と比較して、サルモネラ菌の生存率がさらに低下したので、分散安定剤の存在下では、金被覆銀ナノ粒子の抗菌活性が増強されることがわかった。なお、FBS自体は、抗菌活性を有さない。
3.金被覆球状銀ナノ粒子の抗菌活性
ヒーター付きマグネットスターラーを用いて、100mLの硝酸銀溶液(1×10-3M)を沸点まで加熱した。次に1mLのクエン酸三ナトリウム溶液(1質量%)をゆっくりと加え、30分間沸点付近で攪拌して、約80nmの平均粒子径を有する球状銀ナノ粒子の水懸濁液を作製した。20mLの球状銀ナノ粒子の水懸濁液に、10mLのヒドロキシルアミン(6.25mM)を加え、撹拌した。そして、6mLの塩化金酸水溶液(0.465mM)を加え、30分間撹拌して、金被覆球状銀ナノ粒子の水懸濁液を作製した。
また、グリセロールストックしておいたサルモネラ菌を寒天LB培地上にまき、37℃で一晩培養してコロニーを生成した。生成したシングルコロニー1つを2mLの液体LB培地に移し、37℃で一晩、前培養した。前培養液を液体LB培地で100倍に希釈し、37℃で4時間、本培養した。本培養液を液体LB培地で10,000倍に希釈したものをサルモネラ菌培養液として用いた。96穴マイクロプレートのウェルに、サルモネラ菌培養液を200μLずつ入れ、金被覆なし又はありの球状銀ナノ粒子の水懸濁液を50μLずつ加えて、37℃で6時間培養した。このときの各ウェル中の銀濃度は、20ppmだった。その後、各培養液をPBSで104、105、又は106に希釈し、その希釈した溶液を寒天LB培地上に100μLずつ均等にまいて、37℃で一晩培養した。寒天LB培地上に生成したコロニー数をカウントすることにより、金被覆球状銀ナノ粒子のサルモネラ菌に対する抗菌活性を評価した。対照としては、上記水懸濁液に代えて超純水を使用した。結果を図10に示す。
金被覆を有さない球状銀ナノ粒子の水懸濁液では、対照と比較してサルモネラ菌の生存率が低下したが、0.4Åの厚さの金被覆を有する金被覆球状銀ナノ粒子の水懸濁液では、サルモネラ菌の生存率がさらに大きく低下したので、当該金被覆球状銀ナノ粒子は、特に強い抗菌活性を有していることがわかった。
以上より、金被覆銀ナノ粒子が、その形状と関係なく、種々の細菌に対して抗菌活性を有することがわかった。特に、薄い金被覆を有する銀ナノ粒子は、より厚い金被覆を有する銀ナノ粒子及び金被覆を有さない銀ナノ粒子と比較して顕著な抗菌活性を有しており、銀ナノ粒子及び金被覆銀ナノ粒子の抗菌活性は、銀イオンの放出能と対応していることがわかった。金被覆銀ナノ粒子は、銀ナノ粒子と比較して、酸化に対して耐性があり、かつ凝集性も低いので、扱いが容易であり応用性が高い。したがって、本発明により、銀イオンに対して感受性を有する微生物への効果的な抗菌剤の開発及び物品への抗菌性の効果的な付与が可能となる。

Claims (10)

  1. 被覆銀ナノ粒子の懸濁液で微生物を処理する工程を含む殺菌又は除菌方法であって、前記金被覆銀ナノ粒子が、金被覆銀ナノプレートであることを特徴とする方法。
  2. 前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均が、0Åより大きく10Å以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記懸濁液が、前記金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記分散安定剤が、血清又は水溶性高分子である、請求項3に記載の方法。
  5. 金被覆銀ナノ粒子を含む抗菌剤であって、前記金被覆銀ナノ粒子が、金被覆銀ナノプレートであることを特徴とする抗菌剤
  6. 前記金被覆銀ナノ粒子の表面の金の厚さの平均が、0Åより大きく10Å以下である、請求項5に記載の抗菌剤。
  7. 前記金被覆銀ナノ粒子の分散安定剤をさらに含む、請求項5又は6に記載の抗菌剤。
  8. 前記分散安定剤が、血清又は水溶性高分子である、請求項7に記載の抗菌剤。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載の抗菌剤を備えた物品であって、前記抗菌剤が、前記物品の表面の少なくとも一部に存在していることを特徴とする物品。
  10. 前記物品が、医療機器、衛生用品、食品加工機器、医薬品若しくは医療機器の製造工場又は病院の備品又は壁面、衛生用品製造工場の備品又は壁面、及び、食品加工工場又は飲食店の備品又は壁面から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の物品。
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