JP6865672B2 - 風力発電装置の評価方法および設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、風力発電装置の評価方法および設計方法に関する。
風車設計においては、風車のライフタイムにおいて経験することが想定される様々な状況において、安全性を有することを確認する必要がある。
風車を評価する際は乱流を考慮した風向を入力するが、例えば特許文献1や特許文献2に乱流モデルについて記載がある。
特開2016−188612号公報 特開2009−138523号公報
現在風力発電の分野においては、発電時に風車の受風面であるロータをタワーの風上側に位置するアップウィンド型風車が主流であるが、近年、ロータをタワーの風下側に位置するダウンウィンド型風車が開発されており、注目を集めつつある。
強風時に発電を停止して待機する状況(以下“暴風待機時”と呼ぶ)は風車にとって最も厳しい状況の一つである。暴風待機時に荷重を低減しうる方策の一つとして、風による力を利用して受動的にロータ面を風に正対させるパッシブヨー制御がある。パッシブヨー制御を実施するにはロータをタワーの後方に位置する必要があるが、アップウィンド型風車でその状態に移行するにはヨーを180deg.旋回する必要がある。一方、ダウンウィンド型風車ではヨー旋回することなくパッシブヨー制御に移行可能であるというメリットがある。
現行の国際規格(IEC およびGL )においては、暴風待機時に、アクティブヨー制御に対しては定常風モデルで±15deg.、乱流風モデルで±8deg.のヨーミスアライメントを考慮することが規定されている。一方、パッシブヨー制御に対しては、乱流風モデルを使うことや、ヨーミスアライメントは風向変化と風車ヨーの動的な応答に支配されることを指摘しているのみで、具体的な評価方法についての記載が無い。
また特許文献1や2に記載の乱流モデルは、特にパッシブヨーにおける評価精度や評価負荷を考慮したものとなっていない。
以上のことから本発明においては、風況及び風力発電装置に関する入力条件を設定し、前記入力条件に基づ応答解析による風車の挙動から風車の強度を評価応答解析する風力発電装置の評価方法であって、前記風況として、風向の短周期と、該短周期の変動よりも長い暴風時に想定される長周期の変動を設定し、前記長周期の変動は、前記風向の変化速度が一定若しくは略一定であることを特徴とする。
本発明によれば、高精度で評価負荷の低い風車の評価方法を提供できる。
本発明の実施例1に係る風力発電装置の構成概要を示す側面図。 図1の風力発電装置の上面図(平面図)。 ヨーブレーキシステムの構造図。 アクティブヨー制御の風車の評価フロー図。 パッシブヨー制御の風車の評価フロー図。 ナセル風速・風向およびナセル方位角の変化図。 10分間毎の風況の統計図。 評価入力条件の表。 ヨーミスアライメント評価値の推移図。 ヨーミスアライメントの実測と評価結果の比較図。 フラップ方向曲げモーメントの推移図。 風速に対するフラップ曲げの実測値と評価値の比較図。 高風速での評価入力条件の表。
以下本発明の実施例について図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る風力発電装置の構成概要を示す側面図である。
図1に示す風力発電装置1は、複数のブレード2と、ブレード2を接続するハブ3とで構成されるロータ4を備える。ロータ4は、ナセル5に回転軸(図1では省略する)を介して連結されており、回転することでブレード2の位置を変更可能である。ナセル5は、ロータ4を回転可能に支持している。ナセル5は、発電機6を備え、ブレード2が風を受けることでロータ4が回転し、その回転力が発電機6を回転させることで電力を発生させることができる。
ナセル5は、タワー7上に設置されており、ヨー駆動機構8によって垂直軸方向にヨー回転可能である。制御装置9は、風向と風速とを検出する風向風速センサ10から検出した風向や、風速Vwに基づいて、ヨー駆動機構8を制御する。風向風速センサ10は、Lidar等であってもよく、ナセルやタワー等の風力発電装置に取り付けられていてもよいし、風車発電装置とは別構造物でマスト等に取り付けられていてもよい。
なお、ヨー駆動機構8は、ヨーベアリングやヨーギア(ヨー駆動用歯車)、ヨー駆動モータ、ヨーブレーキ等から構成されている。また、ハブ3に対するブレード2の角度を変更可能なピッチアクチュエータ、発電機6が出力する有効電力や無効電力を検出する電力センサ等を適宜位置に備えている。
図2は、図1の上面図(平面図)である。所定の基準方向となす風向をΘw、所定の基準方向となすナセル方向角をΘr、風向Θwからナセル方向角Θrまでの偏差角であるヨーミスアラインメントをΔΘと定義し、これらの関係を図示している。風向Θwは、計測周期ごとに取得された値であってもよいし、所定期間の平均方向であってもよいし、周辺の風況分布に基づき算出された方向であってもよい。また、ナセル方向角Θrは、ロータ回転軸の向く方向であってもよいし、ナセルの方向であってもよいし、ヨー駆動部のエンコーダにより計測された値等であってもよい。
制御装置9は、ヨーミスアラインメントΔΘが所定の閾値以上若しくはそれよりも大きくなったときに、ヨー駆動機構8を駆動開始して、ヨーミスアラインメントΔΘが低減するように制御する。
ロータがタワーやナセルの風下側に位置するダウンウィンド型風車は、ナセル方向角Θrを変更させるように制御装置9がヨー駆動機構8に指令をしていない、制御装置9によるヨー駆動装置の制御がなされていない、ヨー駆動装置9の駆動力伝達が経路の途中で解除されている、あるいはヨー制御装置9やヨー駆動機構8の電源がオフの状態にあるいわゆるパッシブヨーの状態で運転することができる。この際に、主に、風を受けるにより生じる力によりナセル方向の向きが変わる状態であれば、必要に応じてヨーブレーキやヨー駆動機構8によりアシストがあってもよい。なお、ロータがタワーやナセルの風上側に位置するアップウィンド型風車であっても、強風時に一時的にダウンウィンド状態にしてパッシブヨー運転をすることもできる。
図3に、風車のヨー応答において重要となるヨーブレーキシステムの構造を示す。タワー34とナセル31はベアリング35を介して接続されており、タワー側に固定されたブレーキディスク33をナセル31フレームに固定されたブレーキキャリパ32で挟み込むことで、制御値に応じたブレーキが生じる。
上述のような風力発電設備の評価方法について説明する。
まず、図4及び図5を用いて、風車の評価の流れを説明する。まず解析のために所定の入力条件41、51を準備する。具体的には風況と風車の制御条件等のデータを設定する。次に、入力条件に基づき時刻歴応答解析42、52を行う。その後、結果の分析43、53を行う。具体的には強度評価する際に除外すべきデータの選定と、風車挙動データの分析をする。それら選定したデータに基づき強度評価44、54を行う。これを風車の設計に反映する場合は、強度評価に基づき不足した箇所を補うような構造強化、制御へ変更することができる。
比較例として、図4を用いてアクティブヨー制御の風車の評価方法について説明する。
アクティブヨー制御の風車においては、ヨーミスアライメントを計測し、それが閾値を超えたらヨーミスアライメントを小さくするようにヨーアクチュエータによりナセル方位角を変えることにより、ヨーミスアライメントを閾値以下に抑える制御が能動的に行われる。従って、平均的な風向変化速度がヨーアクチュエータにより実現されるヨー速度以下の場合は、ヨーミスアライメントの最大値はほぼ一定に保たれるため、それを考慮した評価を実施している。その場合には、風向の入力としては長周期(平均的な)の風向変化はアクチュエータにより追従されキャンセルされるため、入力条件設定41のステップにおいて、風向として短周期の風向変化のみを考慮したデータを入力し、長周期の風向変化を考慮しない。また、風車の制御パラメータに関する入力値として、アクティブヨー制御をしているとき以外はナセル方位角を固定に設定する。
次に、図5を用いてパッシブヨー制御の評価方法について説明する。
パッシブヨー制御の風車においては、ナセル方位角は風に受動的に制御され、風による駆動力であるヨートルクが風車の制動力を上回った時にヨーが旋回する。上記、アクティブヨー制御の風車と同様に長周期の風向変化を考慮しない場合には、初期ヨーミスアライメントを考慮したとしても、評価の時間が進むにつれて風によるヨートルクの時間平均がゼロになるヨーミスアライメントで安定化することになる。そのように評価することは、暴風時に風向の長周期変化が小さいサイトにおいては問題とならないが、特に熱帯低気圧等が襲来するサイトにおいては暴風時に風向の長周期の変化速度が比較的大きいことが想定され、その場合にはパッシブヨー制御は長周期の変化に遅れて追従するために、ヨーミスアライメントを過小評価することになる。
そのため本実施例では、以下のような方法でそれを考慮した評価を行う。
(1)応答解析の入力条件として、風向は、乱流モデルより算出される短周期の変動に加え、長周期変動として、暴風時に想定される平均風向の変化を一定若しくはほぼ一定(略一定)の速度として与える。
(2)解析する風車挙動として、ヨーミスアライメントを、風速、風向、風車ヨー応答等の設定に基づき算出し、評価する。
(3)平均風向の変化を一定若しくはほぼ一定の速度として与える場合に、評価開始より一定時間経過後には、ヨーミスアライメントはほぼ一定となる。ヨーミスアライメントが安定する前のデータを除外し、風車の挙動や荷重の評価は、安定した後のデータに対して実施する。
(4)初期ヨーミスアライメントを、ヨーミスアライメントが安定する時間を短縮する値に設定する。
(5)風向変化の方向に基づき評価をする。
上述の風車評価方法について、詳細を以下に説明する。
まず、風速風向の実測データについて説明する。台風通過時に実測されたナセル風速・風向およびナセル方位角の時刻歴を図6に示す。風速は徐々に増大し、時刻14.4時頃に瞬間最大風速61.2m/sを観測した後に、時刻14.5時以降は減少に転じている。風向は時刻13.2時までは約130deg.でほぼ一定であり、その後南東から南西に転じ、時刻15.1時以降は約240deg.でほぼ一定となっている。ナセル方位角はパッシブヨー制御により風向に少し遅れて追従している。以降の評価では、基本的に、風速が高く風向がほぼ一定割合で変化している時刻13.5〜14.5時を対象とする。その期間の10分間毎の風況の統計値を図7に示す。
次に、図8に評価入力条件を示す。
条件は、図7のようなサイトデータを元に作成し、データが得られていない風況条件についてはサイトの地形特性より推定する。風速や風向の時刻歴は、設計段階では風況の統計値のみが得られると考えられるため、本実施例では再現することはせず、Kaimalスペクトルを想定し統計値のみの合わせ込みを実施し、評価は6つの乱数シードの評価結果に対して統計的に行う。
平均風速は40および44m/sとし、乱流強度は対象期間の平均値とした。風向の標準偏差は、実測は矢羽根式の風向計であり、変動成分は信用できないため、風速の標準偏差3成分の比を対象サイトの地形(平坦地)において標準値である1:0.8:0.5となるように設定した。平均風向の変化速度は対象期間の平均値を一定値として与え、初期ヨーミスアライメントはヨーミスアライメントの安定化時間を低減するため、風向の変化速度の逆符号として与えた。ウィンドシア(べき指数α)は暴風時に一般的な0.11とし、流れの傾きは海風であるため、0deg.とした。ヨーブレーキトルクは動摩擦および静摩擦に対して設定したが、静摩擦の影響は余り大きくない。評価時間は910秒間とし、評価にはヨーミスアライメントが安定した後の310〜910秒のデータを用いた。
次に、ヨーミスアライメントの評価として、時刻歴の評価例を図9に示す。風向は短周期で変動しながら平均的にはプラス方向に変化している。ナセル方位角はそれに遅れて追従している。時刻100秒以降はヨーミスアライメントがほぼ一定値となっている。
10分間平均風速に対するヨーミスアライメントの実測と評価結果の比較を図10に示す。40m/s未満の低い風速においては、パッシブヨー制御によるヨーの風向追従性が弱いために比較的大きなヨーミスアライメントが発生しているが、風速が高くなるにつれて小さい値に収束している。評価対象とした13.5〜14.5時では、評価結果は実測値とよく一致している。
次に風車の荷重について評価する。風車の主要荷重であり、暴風待機時がクリティカルになることが多いブレードのフラップ方向曲げモーメント(以下“フラップ曲げ”と呼ぶ)に対して、評価と実測との比較検討を行う。実測は、ブレードルート部の正圧側と負圧側に光ファイバ式歪みゲージを設置し、その計測データからフラップ曲げを算出した。図11と図12にある数値は、風車設計時の極大値で正規化した。
実測および評価におけるフラップ方向曲げモーメントの時刻歴の例を図11に示す。主にロータの回転周期で変動しており、それにブレードの振動による高周波数の変動が付加されている。
風速に対するフラップ曲げの10分間統計値の実測と評価の比較を図12に示す。各点が3つずつあるのはブレード3本に対応する。平均値と最小値の予測値は実測値とよく一致しているが、最大値の予測値は実測値よりも若干大きな値を示しており、評価は若干安全側の評価となっていることが分かる。このような精度の高い予測値に基づき、設計に反映することができる。
最後に、平均風向の変化速度の影響について説明する。パッシブヨー制御の設計パラメータとして風向の変化速度を追加し、ヨーミスアライメントと極値荷重への影響を空力弾性評価により調べた。
図8に示す評価入力条件から、より高風速での評価とするための変更点を図13に示す。平均風速および乱流強度は50年再現期待値として起こりうる大きな値はそれぞれ55m/s, 11%とした。風向の変化速度は±0.5deg./sの間で変化させた。初期ヨーミスアライメントは、絶対値は10deg.とし、符号は風向の変化速度の逆符号とした。
風向の変化速度に対するヨーミスアライメントの10分間平均値を計算すると、ロータの空気力の左右のアンバランスにより、風向の変化速度を考慮しない場合(0deg./s)においてヨーミスアライメントは約-1.5deg.であり、風向の変化速度を考慮すると、そこからずれた角度となる。ヨーミスアライメントの最大値は約4deg、最小値は約-8degである。
さらに、風向の変化速度に対するフラップ方向曲げモーメントの10分間最大値を計算すると、風向の変化速度が大きくなるとフラップ方向曲げモーメントも大きくなる傾向がみられる。また、風向の変化速度が負よりも正の場合にフラップ曲げモーメントが大きくなる傾向がみられ、これはヨーミスアライメントの影響が考えられる。また、風向の変化速度が±0.5deg.以下においてはアクティブヨー制御時よりも荷重が小さく、暴風待機時におけるパッシブヨー制御の有効性が確認された。なお、数値は、平均ヨーミスアライメントを-8, 0, 8deg.として解析したアクティブヨー制御時の値で正規化した。
本実施例では、平均風向の変化速度を設定することにより、パッシブヨー制御時の風荷重を評価する。それにより、空気弾性モデルにより求めたヨーミスアライメントは実測により得られた値と良く一致し、ブレードのフラップ方向曲げモーメントの平均値と極大値も実測値と一致した制度の良い予測が得られる。
なお、本実施例において、風車の評価方法として暴風時の平均風向変化を略一定にすることは、風車の状態診断において予測条件として採用することで、精度の高い診断とすることができる。
1:風力発電装置
2:ブレード
3:ハブ
4:ロータ
5:ナセル
6:発電機
7:タワー
8:ヨー駆動機構
9:制御装置
10:風向風速センサ

Claims (6)

  1. 風況及び風力発電装置に関する入力条件を設定し、
    前記入力条件に基づく応答解析による風車の挙動から風車の強度を評価する風力発電装置の評価方法であって、
    前記風況として、風向の短周期の変動と、該短周期の変動よりも長い暴風時に想定される長周期の変動を設定し、
    前記長周期の変動は、前記風向の変化速度が一定若しくは略一定であることを特徴とする風力発電装置の評価方法。
  2. 請求項1に記載の風力発電装置の評価方法であって、
    前記風力発電装置がパッシブヨー制御で動作している際の評価を行うことを特徴とする風力発電装置の評価方法。
  3. 請求項1に記載の風力発電装置の評価方法であって、
    前記応答解析により計算されたデータのうち、ヨーミスアライメントが安定する前のデータを除外することを特徴とする風力発電装置の評価方法。
  4. 請求項1に記載の風力発電装置の評価方法であって、
    前記入力条件として初期ヨーミスアライメントを設定し、
    前記初期ヨーミスアライメントを、前記風向の変化速度の逆符号に設定することを特徴とする風力発電装置の評価方法。
  5. 請求項1に記載の風力発電装置の評価方法であって、
    前記入力条件として初期ヨーミスアライメントを設定し、
    前記初期ヨーミスアライメントを、前記風向の変化速度の逆符号に設定することを特徴する風力発電装置の評価方法。
  6. 請求項1に記載の風力発電装置の評価方法に基づく風力発電装置の設計方法。
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