JP6863482B2 - 解析装置および解析方法 - Google Patents

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Description

本技術は、試料電極とその試料電極の表面に存在するイオン種との間において発生する電荷移動反応を解析する解析装置および解析方法に関する。
電極は、電荷を放出および授受することにより、その電極の表面に存在するイオン種の酸化還元反応(電荷移動反応)を引き起こす。この電荷移動反応時の挙動(電流と過電圧との関係)は、Butler−Volmer式により表される。
Butler−Volmer式には、電極の電荷移動特性を表す2つのパラメータが含まれている。1つ目のパラメータは、電荷移動反応の反応障壁を表す交換電流密度であると共に、2つ目のパラメータは、電荷移動反応の対称性を表す電荷移動係数である。交換電流密度および電荷移動係数は、電極の特性を知る上で重要であるため、電極およびその電極に用いられる材料の研究開発分野および製造管理分野などにおいて広く活用されている。
交換電流密度および電荷移動係数を求める方法としては、既にいくつかの方法が提案されている。
具体的には、物質輸送を十分に無視できる条件下において電流および過電圧を測定したのち、電流をiおよび過電圧をηとしてlog[i/(1−efη)]とηとの関係をプロットすることにより、切片および傾きに基づいて交換電流密度および電荷移動係数を算出している(例えば、非特許文献1参照。)。ただし、f=nF/RTであり、nは反応電子数、Fはファラデー定数、Rは気体定数、Tは絶対温度である。この方法は、Allen−Hickling法と呼ばれている。また、Butler−Volmer式が簡略化されたTafel式を利用して、log(i)とηとの関係をプロットすることにより、切片および傾きに基づいて交換電流密度および電荷移動係数を算出してもよい。
また、電流と過電圧との関係を線形近似することにより、交換電流密度および電荷移動係数を算出してもよい(例えば、非特許文献2参照。)。この方法は、Stern−Geary法と呼ばれている。
この他、乱数探索法、遺伝的アルゴリズム法および逐次探索法などを用いて交換電流密度および電荷移動係数を算出することも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
なお、電流と過電圧との関係を調べる方法としては、ポテンショスタットを用いて電位規制下または電圧規制下において電流および過電圧を測定する方法と、ガルバノスタットを用いて電流規制下において電流および過電圧を測定する方法とが知られている(例えば、特許文献2参照。)。両者の方法は、さらに、測定値が安定するまで定電位状態、定電圧状態または定電流状態を維持し続ける方法と、過度応答の解析を行うことにより定常値を予測する方法とに分類される。
P.L.Allen and A.Hickling,Trans.Faraday Soc.53,1957,1626 M.Stern and A.L.Geary,J.Electrochem.Soc.104,1957,56
特許第3669669号明細書 特許第6026055号明細書
交換電流密度および電荷移動係数を求めるためにいくつかの方法が提案されているが、いずれの方法も電流と過電圧との関係を用いている。この場合には、電流と過電圧との関係を調べるために、その過電圧の測定値が安定するまで電流を流し続ける必要があると共に、過度応答の解析を行うことにより定常値を予想する場合においても相当の電流を流す必要がある。このため、電流を流すことに起因して組成が変化する電極を用いる場合には、過電圧の測定中において電極の組成が経時的に変化するため、交換電流密度および電荷移動係数を求めることができない。よって、組成が変化する電極を含む多様な電極に関して、交換電流密度および電荷移動係数を求めることが要望されている。
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、多様な試料電極の電荷移動特性を解析することが可能な解析装置および解析方法を提供することにある。
本技術の一実施形態の解析装置は、試料電極に交流電流を供給する電流供給部と、その電流供給部による交流電流の供給に応じて試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算する演算部とを備えたものである。
本技術の一実施形態の解析方法は、試料電極に交流電流を供給し、その交流電流の供給に応じて試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算するものである。
本技術の一実施形態の解析装置または解析方法によれば、試料電極に交流電流を供給し、その交流電流の供給に応じて試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算しているので、多様な電極材料の電荷移動特性を解析することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるわけではなく、本技術中に記載されたいずれの効果であってもよい。
本技術の一実施形態の解析装置の構成を表すブロック図である。 図1に示した試料電極を含む試料の構成を模式的に表す断面図である。 電気化学インピーダンス法(線形交流インピーダンス法)を用いて測定された試料電極の抵抗特性(Bodeプロット)を各抵抗成分に分離したイメージを表す図である。 本技術の一実施形態の解析方法を説明するための流れ図である。 試料電極の抵抗特性(Cole−Coleプロット)を表す図である。 試料電極の抵抗特性(Bodeプロット)を表す図である。
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.解析装置
1−1.全体構成
1−2.試料電極を含む試料の構成
1−3.試料電極の形成材料
2.演算理論
3.交流電流の周波数の設定方法
4.動作(解析方法)
5.作用および効果
6.変形例
<1.解析装置>
まず、本技術の一実施形態の解析装置に関して説明する。
ここで説明する解析装置は、後述する試料12に含まれている試料電極121(図1参照)を解析することにより、その試料電極121に関する重要な特性である電荷移動特性を解析する装置である。
この解析装置は、特に、試料電極121の電荷移動特性を表す指標である交換電流密度i0 (A/m2 )および電荷移動係数αを演算する。この場合には、解析装置は、後述する新規の演算理論に基づいて導出された新規の演算式を用いることにより、試料電極121の過電圧応答に基づいて交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算する際に、その過電圧応答のうちの非線形成分の影響を加味する。
なお、試料12の種類は、解析対象である試料電極121を含んでいれば、特に限定されない。具体的には、試料12は、例えば、電池およびキャパシタなどである。電池の種類は、特に限定されないが、例えば、一次電池、二次電池、燃料電池および色素増感太陽電池などである。
<1−1.全体構成>
最初に、解析装置の全体構成に関して説明する。図1は、解析装置のブロック構成を表している。
この解析装置は、例えば、図1に示したように、試料電極121を含む試料12と、その試料12(試料電極121)に交流電流Iを供給する電流供給部14と、その電流供給部14による交流電流Iの供給に応じて試料12(試料電極121)において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極121に関する交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算する演算部17とを備えている。
より具体的には、解析装置は、例えば、上記した試料12、電流供給部14および演算部17と共に、制御部11と、関数発生部13と、過電圧測定部15と、過電圧振幅測定部16と、波形表示部18と、解析表示部19と、記憶部20とを備えている。
[制御部]
制御部11は、解析装置の全体の動作を制御する。この制御部11は、例えば、中央演算処理装置(CPU)および各種メモリなどを含んでいる。具体的には、制御部11は、例えば、パーソナルコンピュータなどを含んでおり、後述する解析装置の動作(解析方法)を実行させるための制御プログラムを内蔵している。
[試料電極を含む試料]
試料12は、試料電極121とその試料電極121の表面に存在するイオン種との間において電荷移動反応を進行させる素子である。この試料12は、電流供給部14から試料電極121に交流電流Iが供給されることにより、上記した電荷移動反応を進行させる。試料12の数は、特に限定されない。なお、試料電極121を含む試料12の詳細な構成に関しては、後述する(図2参照)。
[関数発生部]
関数発生部13は、電流供給部14から試料電極121に供給される交流電流Iの周波数f(Hz)を設定すると共に、その交流電流Iの周波数fに対応する交流信号を電流供給部14に送信する。この関数発生部13は、例えば、ロックインアンプなどを含んでいる。
交流電流Iの周波数fは、特に限定されないが、中でも、特定の範囲(後述する特定周波数範囲Rf)内の周波数fであることが好ましい。後述するように、拡散抵抗に起因する抵抗成分の影響が抑制されるため、試料電極121の解析精度、すなわち交換電流密度i0 および電荷移動係数αの演算精度が向上するからである。
具体的には、関数発生部13は、例えば、試料電極121の電荷移動特性が解析される前に、あらかじめ電気化学インピーダンス法(線形交流インピーダンス法)を用いて試料電極121の抵抗特性を調べることにより、特定周波数Rfを特定する。
この場合には、関数発生部13は、例えば、周波数fを変化させながら試料電極121のインピーダンスZを測定する。この結果、関数発生部13は、例えば、インピーダンスZが周波数fの増加に応じて略一定になるまで減少したのちに再び減少した際に、そのインピーダンスZが略一定になる範囲(特定周波数範囲Rf)内の値となるように、交流電流Iの周波数fを設定する。
すなわち、関数発生部13は、例えば、上記した電気化学インピーダンス法を用いて調べられた試料電極121の抵抗特性(インピーダンスZの変化パターン)に基づいて特定周波数範囲Rfを特定したのち、その特定周波数範囲Rfの範囲内の値となるように、交流電流Iの周波数fを設定する。
なお、関数発生部13により設定される周波数fの値は、上記した特定周波数範囲Rfの範囲内における任意の値であれば、特に限定されない。
この関数発生部13は、例えば、特定周波数範囲Rfを特定することにより、その特定周波数範囲Rfに基づいて交流電流Iの周波数fを設定すると、上記したように、その交流電流Iの周波数fに対応する交流信号を電流供給部14に送信する。
なお、具体的な交流電流Iの周波数fの設定手順(特定周波数範囲Rfの詳細を含む。)に関しては、後述する(図3参照)。
[電流供給部]
電流供給部14は、試料電極121に交流電流Iを供給する。この電流供給部14は、例えば、ガルバノスタットなどの電流制御装置を含んでいる。
電流供給部14が試料電極121に交流電流Iを供給するのは、解析装置を用いた解析時(電荷移動反応の進行時)において試料電極121の組成が変化しにくくなるからである。
詳細には、試料電極121の形成材料としては、後述するように、炭素材料などの非合金化材料の他、電荷移動反応の進行時において合金を形成するケイ素などの合金化材料も用いられる。試料電極121に合金化材料が含まれている場合において、その試料電極121に直流電流が供給されると、その直流電流の符号に応じて酸化反応および還元反応のうちのいずれか一方だけが進行する。これにより、電荷移動反応が進行する過程において試料電極121の組成が変化するため、本来の組成における試料電極121の電荷移動特性を解析することができない。なお、ここで説明した合金化材料は、電荷移動反応の進行過程において組成が変化する材料の一例である。
これに対して、試料電極121に合金化材料が含まれている場合において、その試料電極121に交流電流Iが供給されると、ちょうどN周期(Nは、自然数である。)分の交流電流Iが供給されたのち、その交流電流Iの時間積分値はゼロになる。すなわち、酸化反応に要したモル数と還元反応に要したモル数とは、互いに等しくなる。これにより、電荷移動反応が進行する過程において試料電極121の組成が変化しないため、本来の組成における試料電極121の電荷移動特性を解析することができる。
電流供給部14により試料電極121に供給される交流電流Iの周波数fは、特に限定されないが、中でも、上記したように、その交流電流Iの周波数fの値は、関数発生部13により設定される特定周波数範囲Rfの範囲内の値であることが好ましい。試料電極121の解析精度が向上するからである。
[過電圧測定部]
過電圧測定部15は、電流供給部14により試料電極121に交流電流Iが供給された際に、その試料電極121において発生した過電圧Eを測定する。この過電圧測定部15は、例えば、ガルバノスタットなどを含んでいる。なお、過電圧測定部15は、例えば、過電圧Eを測定すると、その過電圧Eの測定結果を過電圧振幅測定部16に送信する。
[過電圧振幅測定部]
過電圧振幅測定部16は、過電圧測定部15により測定された過電圧Eのうちの2以上の周波数成分の過電圧振幅を測定する。より具体的には、過電圧振幅測定部16は、上記した2以上の周波数成分の過電圧振幅として、2以上のn次(nは、2以上の整数である。)の非線形成分を抽出することにより、その2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn (V)を測定する。この過電圧振幅測定部16は、例えば、ロックインアンプなどの信号抽出装置を含んでいる。なお、2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn を測定するために、2個以上のロックインアンプが併用されてもよい。
過電圧振幅測定部16により測定されるn次の非線形成分の過電圧振幅Vn の種類は、特に限定されない。中でも、過電圧振幅測定部16は、上記した2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn として、1以上の奇数次の非線形成分の過電圧振幅Vn および1以上の偶数次の非線形成分の過電圧振幅Vn を測定することが好ましい。試料電極121の解析精度が向上するからである。奇数次の非線形成分とは、例えば、3次の非線形成分、5次の非線形成分、7次の非線形成分および9次の非線形成分などである。偶数次の非線形成分とは、例えば、2次の非線形成分、4次の非線形成分、6次の非線形成分および8次の非線形成分などである。
この場合には、過電圧振幅測定部16は、より低次である2以上の非線形成分の過電圧振幅Vn を測定することが好ましく、より具体的には、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を測定することが好ましい。低次の非線形成分ほど高次の非線形成分を含みにくくなるため、試料電極121の解析精度がより向上するからである。
なお、過電圧振幅測定部16は、例えば、2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn を測定すると、その2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn の測定結果を演算部17に送信する。
[演算部]
演算部17は、電流供給部14による交流電流Iの供給に応じて試料電極121において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極121に関する交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算する。
具体的には、演算部17は、例えば、過電圧振幅測定部16により測定された2以上の周波数成分の過電圧振幅(2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn )に基づいて、交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算する。より具体的には、過電圧振幅測定部16により2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 が測定された場合には、演算部17は、例えば、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 に基づいて、交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算する。
過電圧振幅測定部16により2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 が測定された場合には、演算部17は、例えば、下記の式(1)を用いて電荷移動係数αを演算する。また、演算部17は、例えば、先に演算された電荷移動係数αの演算値に基づいて、下記の式(2)または式(3)を用いて交換電流密度i0 を演算する。
Figure 0006863482
(αは電荷移動係数、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
ここで演算される電荷移動係数αは、式(1)から明らかなように、線形成分の過電圧振幅V1 ではなく、2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn (2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 )を用いて演算される。
後述する式(18)から明らかなように、電荷移動係数αは、線形成分の過電圧振幅V1 から独立しているため、その線形成分の過電圧振幅V1 は、電荷移動係数αの従属パラメータでない。よって、線形成分の過電圧振幅V1 に基づいて電荷移動係数αを演算することはできない。
これに対して、後述する式(19)〜式(21)から明らかなように、電荷移動係数αは、n次の非線形成分の過電圧振幅Vn に依存しているため、そのn次の非線形成分の過電圧振幅Vn は、電荷移動係数αの従属パラメータである。よって、n次の非線形成分の過電圧振幅Vn に基づいて電荷移動係数αを演算することができる。
また、ここで演算される交換電流密度i0 は、式(2)または式(3)から明らかなように、上記した式(1)を用いて演算された電荷移動係数αの演算値を用いて演算される。
なお、式(1)では、電荷移動係数α、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 以外の全てのパラメータ(気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数F)が定数(既知の値)である。このため、演算部17は、例えば、過電圧振幅測定部16から得られる2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 の実測値に基づいて、式(1)を用いて電荷移動係数αを演算することができる。
また、式(2)では、電荷移動係数αおよび2次の非線形成分の過電圧振幅V2 以外の全てのパラメータ(気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数F)が定数である。このため、演算部17は、例えば、過電圧振幅測定部16から得られる2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値と、先に演算した電荷移動係数αの演算値とに基づいて、式(2)を用いて交換電流密度i0 を演算することができる。
同様に、式(3)では、電荷移動係数αおよび3次の非線形成分の過電圧振幅V3 以外の全てのパラメータ(気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数F)が定数である。このため、演算部17は、例えば、過電圧振幅測定部16から得られる3次の非線形成分の過電圧振幅V3 の実測値と、先に演算した電荷移動係数αの演算値とに基づいて、式(3)を用いて交換電流密度i0 を演算することができる。
なお、上記した式(1)〜式(3)の演算理論、すなわち式(1)〜式(3)の導出経緯に関しては、後述する。
[波形表示部]
波形表示部18は、過電圧測定部15により測定された過電圧Eの波形を表示する。この波形表示部18は、例えば、オシロスコープなどを含んでいる。
[解析表示部]
解析表示部19は、解析用の操作画面および解析結果などが表示される表示装置である。解析用の操作画面は、例えば、各種パラメータの入力画面などである。解析結果は、例えば、交換電流密度i0 および電荷移動係数αの演算結果などである。
[記憶部]
記憶部20は、解析に必要な情報を記憶しており、例えば、リード・オンリー・メモリ(ROM)およびランダム・アクセス・メモリ(RAM)などを含んでいる。記憶部20に記憶されている情報の種類は、特に限定されない。具体的には、情報は、例えば、上記した気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数Fなどの各種定数を含んでいる。また、情報は、後述する換算表(表1参照)などを含んでいてもよい。もちろん、記憶部20に記憶されている情報は、例えば、随時変更可能である。
<1−2.試料電極を含む試料の構成>
次に、試料電極121を含む試料12の構成に関して説明する。図2は、試料電極121を含む試料12の断面構成を模式的に表している。
この試料12は、例えば、図2に示したように、上記した試料電極(作用極)121と、対極122と、電解質123とを含んでいる。試料12には、試料電極121および対極122を介して電流供給部14により交流電流Iが供給される。
なお、図2では、試料電極121および対極122により電解質123が挟まれた構成を示しているが、その構成はあくまで一例にすぎない。このため、試料12の構成は、例えば、電解質123の構成などに応じて任意に変更可能である。
試料電極121は、解析装置を用いて電荷移動特性が解析される電極である。試料電極121の形成材料の詳細に関しては、後述する。
対極122は、試料電極121と共に電荷移動反応を進行させるための電極であり、その電荷移動反応の進行時において試料電極121と対極122との間において電荷(イオン)を移動させる。この対極122は、例えば、電荷を授受および放出することが可能である材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その材料に関する詳細は、例えば、後述する試料電極121の形成材料に関する詳細と同様である。
電解質123は、試料電極121と対極122との間において電荷(イオン)を移動させる媒質である。電解質123の構成は、試料電極121と対極122との間において電荷を移動させることが可能であれば、特に限定されない。具体的には、電解質123は、例えば、液状の電解質(電解液)でもよいし、ゲル状の電解質(ゲル電解質)でもよい。
電解液は、例えば、溶媒および電解質塩などを含んでおり、その電解液中では、例えば、溶媒中において電解質塩が溶解または分散されている。なお、電解液は、例えば、試料電極121と対極123との間に介在するセパレータなどに含浸されていてもよい。
ゲル電解質は、例えば、上記した電解液(溶媒および電解質塩)と共に高分子化合物などを含んでおり、そのゲル電解質では、例えば、高分子化合物により電解液が保持されている。
なお、試料12は、例えば、さらに、図示しない参照極などの他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
<1−3.試料電極の形成材料>
次に、試料電極121の形成材料に関して説明する。
試料電極121の形成材料の種類は、その試料電極121の表面において電荷を放出および授受することが可能である材料のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。具体的には、試料電極121の形成材料は、例えば、炭素材料および金属系材料などである。
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。
金属系材料は、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料である。この金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。また、金属系材料は、例えば、インサーション材料(またはインターカレーション材料)でもよいし、固溶体でもよいし、共晶(共融混合物)でもよいし、金属間化合物でもよいし、それらの2種類以上の共存物でもよい。ただし、合金は、例えば、2種類以上の金属元素からなる材料でもよいし、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料でもよい。なお、合金は、例えば、1種類以上の非金属元素を含んでいてもよい。ここで説明したインサーション材料、固溶体および金属間化合物などは、上記した合金化材料と同様に、電荷移動反応の進行過程において組成が変化しやすい材料の代表例である。
金属元素および半金属元素の種類は、特に限定されないが、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
<2.演算理論>
次に、上記した式(1)〜式(3)の演算理論に関して説明する。
[Butler−Volmer式]
電荷移動律速状態における電極反応(電荷移動反応)時の挙動は、上記したように、Butler−Volmer式により表される。このButler−Volmer式は、下記の式(4)に示した通りである。
Figure 0006863482
(jは電流密度(A/m2 )、j0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、ηは過電圧(V)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)である。)
このButler−Volmer式では、全電流密度がアノードの電流密度とカソードの電流密度との和により表される。ここで、アノードの電流密度は、exp関数により表されるため、大きな非線形性を有している。同様に、カソードの電流密度は、exp関数により表されるため、大きな非線形性を有している。このため、アノードの電流密度とカソードの電流密度との和も、大きな非線形性を有している。なお、アノードの電流密度とカソードの電流密度とのバランスは、電荷移動係数αにより表される。α=0.5である場合において、電流密度jと過電圧ηとの相関を表す曲線は、原点を中心として点対称な曲線(=奇関数)になる。
Butler−Volmer式の非線形性を議論するために、まず、Butler−Volmer式のTaylor級数展開を行う。指数関数のTaylor級数展開は、下記の式(5)のように表されるため、その指数関数の差のTaylor級数展開は、下記の式(6)のように表される。
Figure 0006863482
Figure 0006863482
式(6)を式(4)と比較することにより、Butler−Volmer式は、下記の式(7)のように表される。
Figure 0006863482
ところで、Butler−Volmer式は、電流密度に関して解かれた式であり、すなわち電極に過電圧を印加した場合においてどのような電流が流れるかを表した式である。言い替えれば、Butler−Volmer式は、過電圧を原因とすると共に電流を結果とした式である。
ここで、Butler−Volmer式を過電圧ηに関して解くことにより、電極に電流を流した場合においてどのような過電圧が発生するかを表す式にすることを考える。
[Butler−Volmer式の逆関数]
Butler−Volmer式は、下記の式(8)のように簡略化して表すことができる。
Figure 0006863482
上記したように、Butler−Volmer式を過電圧ηに関して解くために、まずは、簡略化された式(8)をxに関して解くことを考える。このButler−Volmer式は、2つのexp関数を含んでいる。そこで、もしもα=0.5である場合には、Butler−Volmer式が1つのsinh関数により表されるため、そのButler−Volmer式の逆関数は1つのsinh-1関数により表される。
一方、α≠0.5である場合には、Butler−Volmer式が1つのsinh関数により表されないため、そのButler−Volmer式の逆関数も1つのsinh-1関数により表されない。しかしながら、MorseおよびFeshbackにより報告された公式を用いて、無限級数という形式により、下記の式(9)のように表される。
Figure 0006863482
なお、上記したMorseおよびFeshbackにより報告された公式は、ある関数に関するTaylor級数展開の係数から、その関数の逆関数に関するTaylor級数展開の係数を直接求める公式である(P.M.Morse and H.Feshbach,Methods of Theoretical Physics,Part 1,New York:McGraw-Hill,pp.411-413,1953)。
上記した簡略化されていない式(1)に式(9)の関係を適用することにより、過電圧ηは、下記の式(10)のように表される。ただし、η(i) (iは、1以上の整数である。)のうちの最初の4項(η(1) 、η(2) 、η(3) およびη(4) )は、下記の式(11)〜式(14)により表される。
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
[Taylor級数展開の係数と交流測定時における高次歪みとの関係]
次に、Taylor級数展開の係数とFourier級数展開の係数との関係に関して議論する。ここでは、式(11)〜式(14)のような非線形現象の式を多項式にTaylor級数展開した場合におけるn乗の項の係数をTn(nは、1以上の整数である)とする。また、交流刺激を与えた場合における非線形応答のn次の高調波成分の振幅、すなわちFourier級数展開の係数をFn(nは、1以上の整数である。)とする。TnとFnとの関係は、下記の式(15)のように表される。
Figure 0006863482
この場合には、Tn≠Fnであることに注意しなければならない。高調波成分の振幅は、Taylor級数展開の係数とは異なるからである。ここでは具体的な導出の過程を省略するが、式(15)に示した関係が全てのθに対して恒等的に成立している場合には、下記の式(16)のように、FnはTnを用いて表される。
Figure 0006863482
n k は二項係数であるため、n k =n!/{k!(n−k)!}である。)
一例として、F1〜F4のそれぞれがTaylor級数展開された場合には、下記の式(17)のように表される。
Figure 0006863482
ここで、nとTnとの関係をグラフ化した場合には、nが増加するにしたがってTnが次第に減少する。すなわち、F1〜F4では、F1よりもF2においてTnの裾野が広がり、F2よりもF3においてTnの裾野が広がり、F3よりもF4においてTnの裾野が広がる。高次の高調波成分ほど、高次の項の影響を受けやすいからである。
この結果から、試料電極121に供給される電圧および電流は、大きければ大きいほどよいというわけではなく、むしろ逆に、信号がノイズの影響を受けすぎない程度において、できるだけ小さいことが望ましい。
電極反応(電荷移動反応)は、本来的に非線形性が大きいため、入力(電圧および電流)が小さくても、十分に大きな非線形成分の応答が得られる。入力が必要以上に大きいと、信号がより高次の項の影響うけやすくなるため、注意が必要である。やむを得ず入力を大きくする場合には、入力値を変更しながら信号の変化を調べることにより、外挿法を用いて入力値がゼロになる場合のインピーダンスを求めるなどの工夫を行うことが望ましい。
[交流測定時における高次歪みに基づいてButler−Volmer式中のj0 およびαを算出]
上記した一連の議論を総括することにより、電極に交流電流Iを流した場合におけるn次の非線形成分の応答(過電圧応答である過電圧振幅)を式で表すことができる。この場合において基礎となるのは、式(11)〜式(14)に示したTaylor級数展開の係数である。Taylor級数展開の係数をFourier級数展開の係数にするために定数を掛けると共に、交流測定時の実効値(rms:root mean square value)がピーク値の1/(21/2 )であることを考慮すると、式(11)〜式(14)は、下記の式(18)〜式(21)のように表される。
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
式(18)〜式(21)では、交換電流密度j0 および電荷移動係数α以外の全てのパラメータ(気体定数R、絶対温度T、反応電子数n、ファラデー定数Fおよび電流密度振幅(実効値)jrms)の値が既知である。このため、式(18)〜式(21)のうちの任意の2つの式を用いて連立方程式を解くことにより、交換電流密度j0 および電荷移動係数αを演算することができる。これらの演算理論に基づいた交換電流密度j0 および電荷移動係数αの演算方法は、新規の演算方法である。
なお、簡略化するために、電流密度振幅(実効値)jrmsの代わりに交流電流(実効値)I=irms=Ajrms(Aは、電極の面積である。)を用いると共に、交換電流密度j0 の代わりに交換電流密度i0 を用いる。電気化学測定機では、電極の面積を知ることができないからである。この場合には、電流密度振幅(実効値)jrmsをゼロまで外挿した場合の過電圧ηに関するn次の高調波成分の振幅(η(n) rmsjrms0)をVn (nは、1以上の整数である。)と表す。ただし、逆位相の振幅は負とする。
過電圧ηに関する線形成分の応答(電圧応答である電圧振幅)は、電極が本来的に有する受動素子成分(電気抵抗R、キャパシタンスCおよびインダクタンスL)を含んでいる。よって、ここでは、上記した受動素子成分を含んでいない2次の非線形成分の応答および3次の非線形成分の応答に着目する。そこで、式(19)および式(20)を交換電流密度i0 に関して解くと、正の実数解は、上記した式(2)および式(3)のように表される。
よって、式(2)および式(3)を用いて連立方程式を解くことにより、交換電流密度i0 および交流電流Iを消去すると、上記した式(1)が導き出される。
この式(1)を用いれば、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を実測することにより、電荷移動係数αを算出することができる。
電荷移動係数αを具体的に算出する手順は、以下の通りである。まず、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 に基づいて、下記の式(22)により定義されるβを計算する。このβは、式(1)の左辺である。なお、定数(=0.7346)は、(23/4 ×181/3 )/6に由来する値である。
Figure 0006863482
ただし、式(1)により表される値、すなわちβの値は、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 が正であるか負であるかに応じて、実数または虚数になる。しかしながら、ここでは、簡略化するために、βを実数に限定する。その代わりに、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 がゼロ以上であるか、その2次の非線形成分の過電圧振幅V2 がゼロ未満であるかに応じて、場合分けする。
2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値がゼロ以上である場合(V2 ≧0)には、電荷移動係数αは、下記の式(23)を満たすと共に、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値がゼロ未満である場合(V2 <0)には、電荷移動係数αは、下記の式(24)を満たす。ただし、式(23)または式(24)を電荷移動係数αに関して解くことは、困難である。そこで、式(23)または式(24)を数値的に解析することにより、βを電荷移動係数αに換算してもよい。または、下記の表1に示した換算表を用いることにより、βの値を電荷移動係数αの値に換算してもよい。
Figure 0006863482
Figure 0006863482
Figure 0006863482
表1では、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値がゼロ以上である場合(V2 ≧0)と、その2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値がゼロ未満である場合(V2 <0)とに場合分けした上で、βの値と電荷移動係数αの値との対応関係が表されている。このため、βを算出すれば、表1に示した換算表を用いて、迅速かつ正確にβの値を電荷移動係数αの値に換算することができる。
なお、電荷移動係数αを算出すれば、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 または3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を実測することにより、上記した式(2)または式(3)を用いて交換電流密度i0 を算出することができる。
<3.交流電流の周波数の設定方法>
次に、交流電流Iの周波数fの設定方法に関して説明する。この交流電流Iの周波数fは、例えば、上記したように、関数発生部13により設定される。
図3は、電気化学インピーダンス法(線形交流インピーダンス法)を用いて測定された試料電極121の抵抗特性(Bodeプロット)を各抵抗成分に分離したイメージを表している。図3では、インピーダンスの絶対値|Z|(Ωcm2 )と周波数f(Hz)との相関を表している。
交流電流Iの周波数fを変化させながら試料電極121のインピーダンスの絶対値|Z|を測定すると、そのインピーダンスの絶対値|Z|は、図3に示したように、周波数fが増加するにしたがって次第に減少する。より具体的には、インピーダンスの絶対値|Z|は、周波数fが増加すると、緩やかに減少してから(傾きが大きい領域L1)、略一定になったのち(傾きが小さい領域L2)、急激に減少してから(傾きが大きい領域L3)、再び略一定になる(傾きが小さい領域L4)。なお、領域L2に関して説明した「略一定」とは、領域L1,L3のそれぞれにおけるインピーダンスの絶対値|Z|の傾きに対して、領域L2におけるインピーダンス|Z|の傾きが十分に小さくなることを意味する。
この場合には、インピーダンスの絶対値|Z|は、主に、以下で説明する4種類の抵抗成分R1〜R4を含んでいる。
抵抗成分R1は、例えば、試料電極121の表面に存在する電荷(イオン)が電解質123に向かう方向に濃度拡散する拡散抵抗に起因する成分である。なお、抵抗成分R1は、例えば、周波数fが増加すると、領域L1において次第に減少することにより、領域L2〜L4において消滅する。
抵抗成分R2は、例えば、試料電極121の表面に存在する電荷(イオン)が試料電極121の内部に向かう方向に濃度拡散する拡散抵抗に起因する成分である。なお、抵抗成分R2は、例えば、上記した抵抗成分R1と同様に、周波数fが増加すると、領域L1において次第に減少することにより、領域L2〜L4において消滅する。
抵抗成分R3は、例えば、試料電極121とその試料電極121の表面に存在する電荷(イオン)との間において発生する電荷移動反応に起因する電荷移動抵抗成分である。なお、抵抗成分R3は、例えば、周波数fが増加すると、領域L1,L2において略一定になったのち、領域L3において急激に減少することにより、領域L4において消滅する。
抵抗成分R4は、例えば、溶液抵抗、電極被膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)抵抗および電子抵抗に起因する成分である。溶液抵抗は、電解質123が電解液を含んでいる場合において、その電解液自体の抵抗である。SEI抵抗は、電荷移動反応時において電解質123の分解反応などに起因して試料電極121などの表面に形成される被膜の抵抗である。電子抵抗は、電解質123中を電子が移動する場合の抵抗である。なお、抵抗成分R4は、例えば、周波数fに依存せずに、領域L1〜l4において略一定である。
これらの抵抗成分R1〜R4を踏まえると、インピーダンスの絶対値|Z|は、周波数fが増加するにしたがって、以下で説明するように変化する。最初に、領域L1では、インピーダンスZが抵抗成分R1〜R4を含みながら緩やかに減少する。続いて、領域L2では、抵抗成分R1,R2のそれぞれが既に消滅したことに伴い、インピーダンスの絶対値|Z|が抵抗成分R3,R4を含みながら略一定になる。続いて、領域L3では、インピーダンスの絶対値|Z|が引き続き抵抗成分R3,R4を含みながら急激に減少する。この場合には、抵抗成分R4が略一定である一方で、抵抗成分R3が急激に減少する。最後に、領域L4では、抵抗成分R3が既に消滅したことに伴い、インピーダンスZが抵抗成分R4だけを含みながら略一定になる。
ここで、周波数fが増加することに応じて、抵抗成分R1,R2のそれぞれが消滅する周波数f(f1)と、抵抗成分R3が減少し始める周波数f(f2)とに着目すると、上記した特定周波数範囲Rfは、周波数f1,f2の間の範囲である。関数発生部13により設定される周波数fが特定周波数範囲Rfの範囲内であれば、電荷の拡散に起因する抵抗成分R1,R2が解析精度に影響を及ぼしにくくなるため、その解析精度が向上するからである。
なお、関数発生部13により設定される周波数fの値は、上記したように、特定周波数範囲Rfの範囲内の値であれば、特に限定されない。中でも、周波数fの値は、周波数f1,f2の間においてn次の非線形成分の過電圧振幅Vn を測定した際に、そのn次の非線形成分の過電圧振幅Vn の虚部がゼロに近くなる値であることが好ましい。電荷移動抵抗のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn は理論的にはゼロであるため、上記した虚部がゼロに近いということは、その周波数fにおける抵抗成分がほぼ電荷移動抵抗だけになると考えられるからである。
<4.動作(解析方法)>
次に、解析装置の動作に関して説明する。
なお、本技術の一実施形態の解析方法は、以下で説明する解析装置の動作により説明される。よって、本技術の一実施形態の解析方法に関しては、以下で併せて説明する。以下では、上記した図1〜図3と共に、図4を参照する。
図4は、解析装置を用いた解析方法の流れを説明している。この解析装置は、例えば、図4に示した手順により、試料電極121の電荷移動特性(交換電流密度i0 および電荷移動係数α)を解析する。
最初に、関数発生部13は、後工程において試料12(試料電極121)に供給される交流電流Iの周波数fを設定する(図4:ステップS1)。
この場合には、関数発生部13は、例えば、上記したように、電気化学インピーダンス法を用いて試料電極121のインピーダンスの絶対値|Z|の変化挙動(図3)を調べることにより、特定周波数範囲Rfを特定したのち、その特定周波数範囲Rfの範囲内の値となるように周波数fの値を設定する。
続いて、電流供給部14は、関数発生部13により設定された周波数fに基づいて、試料電極(作用極)121および対極122を介して試料12に周波数fの交流電流Iを供給する(図4:ステップS2)。
これにより、試料電極121の表面に存在するイオン種の電荷移動反応が進行する。より具体的には、交流電流Iの供給に応じて、試料電極121の表面に存在するイオン種の酸化反応および還元反応が繰り返される。
続いて、過電圧測定部15は、交流電流Iの供給に応じて試料電極121において発生した過電圧Eを測定する(図4:ステップS3)。
続いて、過電圧振幅測定部16は、過電圧Eに基づいて、2以上の周波数成分の過電圧振幅(2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn )として、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を測定する(図4:ステップS4,S5)。なお、過電圧振幅測定部16により測定された過電圧Eの波形は、波形表示部18に表示される。以下では、2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn (2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 )を測定する方法を「非線形交流インピーダンス法」と呼称する。
続いて、演算部17は、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 の実測値に基づいて、式(1)を用いて電荷移動係数αを演算する(図4:ステップS6)。この場合には、演算部17は、記憶部20に記憶されている一連の定数(気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数F)を読み込む。また、演算部17は、必要に応じて、記憶部20に記憶されている換算表(表1)を読み込むことにより、βの値を電荷移動係数αの値に換算する。なお、電荷移動係数αの演算結果は、解析表示部19に表示される。
最後に、演算部17は、交流電流Iと、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 の実測値と、3次の非線形成分の過電圧振幅V3 の実測値とに基づいて、式(2)または式(3)を用いて交換電流密度i0 を演算する(図4:ステップS7)。この場合には、演算部17は、記憶部20に記憶されている一連の定数(気体定数R、絶対温度T、反応電子数nおよびファラデー定数F)を読み込む。なお、交換電流密度i0 の演算結果は、解析表示部19に表示される。
これにより、試料電極121の電荷移動特性(交換電流密度i0 および電荷移動係数α)が解析される。
<5.作用および効果>
最後に、解析装置の作用および効果に関して説明する。
本実施形態の解析装置によれば、試料電極121に交流電流Iを供給し、その交流電流Iの供給に応じて試料電極121において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極121に関する交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算している。よって、以下で説明する理由により、多様な電極材料の電荷移動特性を解析することができる。
試料電極121の電荷移動特性を解析する他の解析装置(比較例の解析装置)としては、例えば、上記したように、試料電極121に直流電流を供給すると共に電流と過電圧との関係を調べることにより、Tafel式を用いて試料電極121の電荷移動特性を解析する装置が挙げられる。
しかしながら、試料電極121に直流電流を供給する比較例の解析装置では、上記したように、電荷移動反応の進行過程において試料電極121の組成が変化するため、本来の組成における試料電極121の電荷移動特性を解析することができない。よって、電荷移動特性を解析できる試料電極121は、電荷移動反応の進行過程において組成が変化しない試料電極121だけに限定されるため、多様な試料電極121の電荷移動特性を解析することができない。
これに対して、試料電極121に交流電流Iを供給する本実施形態の解析装置では、上記したように、電荷移動反応の進行過程において試料電極121の組成が変化しないため、本来の組成における試料電極121の電荷移動特性を解析することができる。よって、電荷移動特性を解析できる試料電極121は、電荷移動反応の進行過程において組成が変化しない試料電極121だけに限定されないため、多様な試料電極121の電荷移動特性を解析することができる。
特に、本実施形態の解析装置では、過電圧応答(過電圧E)に基づいて2以上の周波数成分の過電圧振幅(2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn )を測定することにより、その2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn に基づいて交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算すれば、その2以上のn次の非線形成分の過電圧振幅Vn の影響を加味することにより交換電流密度i0 および電荷移動係数αが演算される。よって、解析精度がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
この場合には、2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を測定することにより、その2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 に基づいて交換電流密度i0 および電荷移動係数αを演算すれば、解析精度がさらに向上するため、さらに高い効果を得ることができる。
また、式(1)を用いて電荷移動係数αを演算したのち、その電荷移動係数αの演算値に基づいて式(2)または式(3)を用いて交換電流密度i0 を演算すれば、解析精度が十分に向上するため、十分に高い効果を得ることができる。
また、電気化学インピーダンス法(線形交流インピーダンス法)を用いて試料電極121のインピーダンスの絶対値|Z|の変化挙動(図3)を調べることにより、特定周波数範囲Rfの範囲内の値となるように交流電流Iの周波数fを設定すれば、上記したように、電荷の拡散に起因する抵抗成分R1,R2が解析精度に影響を及ぼしにくくなる。よって、解析精度が向上するため、より高い効果を得ることができる。
なお、上記した本実施形態の解析装置に関する一連の作用および効果は、本実施形態の解析方法においても同様に得られる。
<6.変形例>
上記した解析装置の構成および解析方法の手順などは、適宜、変更可能である。
具体的には、上記した解析、すなわちn次の非線形成分の過電圧振幅Vn の影響が加味された交換電流密度i0 および電荷移動係数αの演算処理を行うことが可能であれば、解析装置の構成は、任意に変更可能である。以下で説明する場合においても、同様の効果を得ることができる。
例えば、解析装置が関数発生部13、電流供給部14、過電圧測定部15および過電圧振幅測定部16を備えるようにしたが、それらのうちの1つが2つ以上の役割を兼ねるようにしてもよい。具体的には、例えば、ガルバノスタットを用いれば、そのガルバノスタットが電流供給部14および過電圧測定部15のそれぞれの役割を兼ねることができる。また、例えば、ロックインアンプを用いれば、そのロックインアンプが関数発生部13および過電圧振幅測定部16のそれぞれの役割を兼ねることができる。
また、例えば、解析装置が制御部11と共に演算部17などを備えるようにしたが、その制御部11が演算部17などのうちのいずれか1種類または2種類以上の役割を兼ねるようにしてもよい。この場合には、例えば、制御部11が中央演算処理装置などを含んでいるため、その制御部11が演算部17などのうちのいずれか1種類または2種類以上の役割を兼ねることができる。
この他、例えば、特定周波数範囲Rfが既知であるため、関数発生部13による交流電流Iの周波数fの設定作業を行わなくても、あらかじめ適正な値となるように交流電流Iの周波数fを設定できる場合には、その関数発生部13による交流電流Iの周波数の設定作業を省略してもよい。この場合には、例えば、交流電流Iの周波数fの適正値(特定周波数範囲Rf内の値)があらかじめ記憶部20に記憶されていてもよいし、解析装置の使用者が解析表示部19を用いて交流電流Iの周波数fの適正値を入力してもよい。
本技術の実施例に関して説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.本技術の解析方法
2.比較例の解析方法
3.本技術の解析方法と比較例の解析方法との比較
<1.本技術の解析方法>
本技術の解析方法を用いて、試料電極の電荷移動特性(交換電流密度i0 および電荷移動係数α)を解析した。
試料電極の電荷移動特性を解析する場合には、最初に、その試料電極を含む試料を準備した。ここでは、試料として、試料電極(白金ディスク電極,直径=5mm)と、参照極(銀/塩化銀電極、内部溶液は濃度=3mol/dm3 である塩化ナトリウム水溶液)と、対極(白金線,直径=0.5mm×長さ=3cm)と、電解液(硫酸鉄(II)と硫酸鉄(III)と硫酸マグネシウムと硫酸とを含む水溶液)とを含む電気化学測定システムを用いた。電解液中における各成分の濃度は、硫酸鉄(II)の濃度=0.05mol/dm3 、硫酸鉄(III)の濃度=0.05mol/dm3 、硫酸マグネシウムの濃度=1mol/dm3 、硫酸の濃度=1mol/dm3 とした。なお、電解液を調製する場合には、硫酸鉄(II)が空気中の酸素に起因して酸化しないように、調製途中の電解液に水飽和窒素ガスを十分に吹き込んだ。
続いて、電気化学インピーダンス法(線形交流インピーダンス法)を用いて試料電極の抵抗特性を調べたところ、図5および図6に示した結果が得られた。図5は、Cole−Coleプロット(横軸:インピーダンスの実数部ReZ(Ωcm2 ),縦軸:インピーダンスの虚数部ImZ(Ωcm2 ))を表していると共に、図6は、Bodeプロット(横軸:周波数f(Hz),縦軸:インピーダンスの絶対値|Z|(Ωcm2 ))を表している。この場合には、周波数fの開始値=100kHz、周波数fの終了値=100mHz、電流振幅=0.5mAとした。
Cole−Coleプロット(図5)では、高周波数領域に半円弧状の曲線P1が得られると共に、低周波数領域に傾きが45°である直線P2が得られた。すなわち、Cole−Coleプロットでは、典型的なRandles型等価回路の形状が描かれた。半円弧状の曲線P1が得られた高周波数領域は、電荷移動抵抗に帰属する領域であると共に、直線P2が得られた低周波数領域は、拡散抵抗に帰属する領域であると考えられる。
一方、Bodeプロット(図6)では、図3を参照しながら説明したように、周波数fの変化に応じて、インピーダンスの絶対値|Z|が領域L1〜L4を含みながら変化した。この場合には、周波数fが約1Hzよりも小さい周波数領域が領域L1に対応しており、周波数fが約1Hz〜100Hzである周波数領域が領域L2に対応しており、周波数fが約100Hzよりも大きい周波数領域が領域L3,L4に対応していた。このBodeプロットに基づいて、特定周波数範囲Rfが約1Hz〜100Hzであると共に、Cole−Coleプロット中において高周波数領域と低周波数領域との境界は約1Hz〜100Hzであることが確認された。
すなわち、周波数fが約100Hzよりも大きい周波数領域(領域L3,L4)において生じる抵抗成分は、主に、電子抵抗および電荷移動抵抗である。周波数fが約1Hzよりも小さい周波数領域(領域L1)において生じる抵抗成分は、主に、電子抵抗、電荷移動特性および拡散抵抗である。周波数fが約1Hz〜100Hzである周波数領域(領域L2)において生じる抵抗成分は、主に、電子抵抗および電荷移動抵抗である。
最後に、上記した構成を有する試料を用いて、上記した非線形交流インピーダンス法を用いて2次の非線形成分の過電圧振幅V2 および3次の非線形成分の過電圧振幅V3 を測定した。この場合には、周波数fの開始値=100Hz、周波数fの終了値=1Hz、電流振幅=1mAとした。これにより、上記した式(1)〜式(3)を用いて交換電流密度i0 および電荷移動係数αを算出したところ、表2に示した結果が得られた。
Figure 0006863482
表2に示したように、上記した演算理論(式(1)〜式(3))を用いた本技術の解析方法により、電荷移動係数αが演算されたのち、その電荷移動係数αの演算値を利用して交換電流密度i0 が算出された。電荷移動係数αおよび交換電流密度i0 は、電荷移動素子に供給される交流電流Iの周波数fに応じて変動した。
<2.比較例の解析方法>
比較のために、同様の構成を有する試料を用いて、上記したAllen−Hickling法を用いたことを除いて同様の手順により、試料電極の電荷移動特性(交換電流密度i0 および電荷移動係数α)を解析した。
この場合には、開始電位=410mV、終了電位=550mV、電位の測定間隔=10mVとして、各電位において200秒間ずつ保持したのちの電流を測定し、その電流をiおよび過電圧をηとしてlog[i/(1−efη)]とηとの関係をプロットすることにより、切片および傾きに基づいて交換電流密度i0 および電荷移動係数αを算出した。この結果、平衡電位=485mV、電荷移動係数α=0.54、交換電流密度i0 =0.24mA/cm2 であった。
<3.本技術の解析方法と比較例の解析方法との比較>
本技術の解析方法による解析結果と比較例の解析方法による解析結果とを互いに比較したところ、以下の傾向が得られた。
まず、比較例の解析方法により演算された電荷移動係数αは、上記したように、0.54であったのに対して、本技術の解析方法により演算された電荷移動係数αは、交流電流Iの周波数fが特定周波数範囲Rfの範囲内である約10Hzの近傍において、約0.50であった。このため、本技術の解析方法により演算された電荷移動係数αの値は、比較例の解析方法により演算された電荷移動係数αの値にほぼ近い値となった。
また、比較例の解析方法により演算された交換電流密度i0 は、上記したように、0.24mA/cm2 であったのに対して、本技術の解析方法により演算された交換電流密度i0 (周波数f=10Hz)は、約0.79mA/cm2 であった。このため、本技術の解析方法により演算された交換電流密度i0 の値は、比較例の解析方法により演算された交換電流密度i0 の値にほぼ近い値、すなわち同じ桁の値となった。
これらの結果から、試料電極に交流電流を供給し、その交流電流の供給に応じて試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、その試料電極に関する電荷移動特性(交換電流密度i0 および電荷移動係数α)を解析することにより、多様な試料電極の電荷移動特性が解析された。
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
試料電極に交流電流を供給する電流供給部と、
前記電流供給部による前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、前記試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算する演算部と
を備えた、解析装置。
(2)
さらに、
前記電流供給部による前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧を測定する過電圧測定部と、
前記過電圧測定部により測定された前記過電圧のうちの2以上の周波数成分の過電圧振幅を測定する過電圧振幅測定部と
を備え、
前記演算部は、前記過電圧振幅測定部により測定された前記2以上の周波数成分の過電圧振幅に基づいて、前記交換電流密度および前記電荷移動係数を演算する、
上記した(1)に記載の解析装置。
(3)
前記過電圧振幅測定部は、前記2以上の周波数成分の過電圧振幅として、2次の非線形成分の過電圧振幅および3次の非線形成分の過電圧振幅を測定する、
上記した(2)に記載の解析装置。
(4)
前記演算部は、下記の式(1)を用いて前記電荷移動係数を演算したのち、前記電荷移動係数の演算値に基づいて下記の式(2)または式(3)を用いて前記交換電流密度を演算する、
上記した(3)に記載の解析装置。
Figure 0006863482
(αは電荷移動係数、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
(5)
さらに、電気化学インピーダンス法を用いて前記試料電極のインピーダンスを測定した結果、前記インピーダンスが略一定になるまで減少したのちに再び減少した際に、前記インピーダンスが略一定になる範囲内の値となるように前記交流電流の周波数を設定すると共に、前記交流電流の周波数に対応する交流信号を前記電流供給部に送信する関数発生部を備えた、
上記した(1)ないし(4)のいずれかに記載の解析装置。
(6)
試料電極に交流電流を供給し、
前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、前記試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算する、
解析方法。
(7)
さらに、前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧を測定し、
前記過電圧のうちの2以上の周波数成分の過電圧振幅を測定することにより、
前記2以上の周波数成分の過電圧振幅に基づいて、前記交換電流密度および前記電荷移動係数を演算する、
上記した(6)に記載の解析方法。
(8)
前記2以上の周波数成分の過電圧振幅として、2次の非線形成分の過電圧振幅および3次の非線形成分の過電圧振幅を測定する、
上記した(7)に記載の解析方法。
(9)
下記の式(1)用いて前記電荷移動係数を演算したのち、前記電荷移動係数の演算値に基づいて下記の式(2)または式(3)を用いて前記交換電流密度を演算する、
上記した(8)に記載の解析方法。
Figure 0006863482
(αは電荷移動係数、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
Figure 0006863482
(i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
(10)
さらに、電気化学インピーダンス法を用いて前記試料電極のインピーダンスを測定した結果、前記インピーダンスが略一定になるまで減少したのちに再び減少した際に、前記インピーダンスが略一定になる範囲内の値となるように、前記交流電流の周波数を設定する、
上記した(6)ないし(9)のいずれかに記載の解析方法。

Claims (10)

  1. 試料電極に交流電流を供給する電流供給部と、
    前記電流供給部による前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、前記試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算する演算部と
    を備えた、解析装置。
  2. さらに、
    前記電流供給部による前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧を測定する過電圧測定部と、
    前記過電圧測定部により測定された前記過電圧のうちの2以上の周波数成分の過電圧振幅を測定する過電圧振幅測定部と
    を備え、
    前記演算部は、前記過電圧振幅測定部により測定された前記2以上の周波数成分の過電圧振幅に基づいて、前記交換電流密度および前記電荷移動係数を演算する、
    請求項1記載の解析装置。
  3. 前記過電圧振幅測定部は、前記2以上の周波数成分の過電圧振幅として、2次の非線形成分の過電圧振幅および3次の非線形成分の過電圧振幅を測定する、
    請求項2記載の解析装置。
  4. 前記演算部は、下記の式(1)を用いて前記電荷移動係数を演算したのち、前記電荷移動係数の演算値に基づいて下記の式(2)または式(3)を用いて前記交換電流密度を演算する、
    請求項3記載の解析装置。
    Figure 0006863482
    (αは電荷移動係数、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
    Figure 0006863482
    (i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
    Figure 0006863482
    (i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
  5. さらに、電気化学インピーダンス法を用いて前記試料電極のインピーダンスを測定した結果、前記インピーダンスが略一定になるまで減少したのちに再び減少した際に、前記インピーダンスが略一定になる範囲内の値となるように前記交流電流の周波数を設定すると共に、前記交流電流の周波数に対応する交流信号を前記電流供給部に送信する関数発生部を備えた、
    請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の解析装置。
  6. 試料電極に交流電流を供給し、
    前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧応答に基づいて、前記試料電極に関する交換電流密度および電荷移動係数を演算する、
    解析方法。
  7. さらに、前記交流電流の供給に応じて前記試料電極において発生した過電圧を測定し、
    前記過電圧のうちの2以上の周波数成分の過電圧振幅を測定することにより、
    前記2以上の周波数成分の過電圧振幅に基づいて、前記交換電流密度および前記電荷移動係数を演算する、
    請求項6記載の解析方法。
  8. 前記2以上の周波数成分の過電圧振幅として、2次の非線形成分の過電圧振幅および3次の非線形成分の過電圧振幅を測定する、
    請求項7記載の解析方法。
  9. 下記の式(1)用いて前記電荷移動係数を演算したのち、前記電荷移動係数の演算値に基づいて下記の式(2)または式(3)を用いて前記交換電流密度を演算する、
    請求項8記載の解析方法。
    Figure 0006863482
    (αは電荷移動係数、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
    Figure 0006863482
    (i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V2 は2次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
    Figure 0006863482
    (i0 は交換電流密度(A/m2 )、αは電荷移動係数、Iは交流電流(A)、V3 は3次の非線形成分の過電圧振幅(V)、Rは気体定数(J/[K・mol])、Tは絶対温度(K)、nは反応電子数、Fはファラデー定数(C/mol)である。)
  10. さらに、電気化学インピーダンス法を用いて前記試料電極のインピーダンスを測定した結果、前記インピーダンスが略一定になるまで減少したのちに再び減少した際に、前記インピーダンスが略一定になる範囲内の値となるように、前記交流電流の周波数を設定する、
    請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の解析方法。
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